(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】再生脱硝触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 38/00 20060101AFI20240311BHJP
B01J 27/199 20060101ALI20240311BHJP
B01J 27/28 20060101ALI20240311BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240311BHJP
B01D 53/88 20060101ALI20240311BHJP
B01D 53/90 20060101ALI20240311BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240311BHJP
B01J 23/92 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B01J38/00 C ZAB
B01J27/199 A
B01J27/28 A
B01D53/86 222
B01D53/88
B01D53/90
B01D53/96 500
B01J23/92 A
(21)【出願番号】P 2020015042
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 聡
(72)【発明者】
【氏名】占部 祐
(72)【発明者】
【氏名】倉井 琢麻
(72)【発明者】
【氏名】加古 博
(72)【発明者】
【氏名】野地 勝己
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-153139(JP,A)
【文献】特開2004-209354(JP,A)
【文献】特開2004-209355(JP,A)
【文献】特開2018-176079(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102974366(CN,A)
【文献】特開2005-087815(JP,A)
【文献】特開2013-180282(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105854869(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤を用いてガス中の窒素酸化物を窒素および水に分解する脱硝反応に
使用した使用済みのハニカム状構造の脱硝触媒を粉砕して得た、第1の酸化チタンを主成分として含む使用済みの脱硝触媒粉体と、前記第1の酸化チタンよりも単位重量当たりの比表面積が大きい第2の酸化チタンと、
モリブデンと、を混合した混合粉体を用い、
前記混合粉体と溶媒とを混練した混練物を、板状基材上に塗布して
、ハニカム状構造ではない板状構造の再生脱硝触媒を製造する脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法。
【請求項2】
前記第2の酸化チタンは、前記第1の酸化チタンおよび前記第2の酸化チタンの総重量に対して10重量%以上90重量%以下で混合する請求項1に記載の脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法。
【請求項3】
前記混合粉体に、所定量のリンまたはリンを含む化合物を添加する請求項1または請求項2に記載の脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法。
【請求項4】
前記板状基材上に塗布された前記混練物の表面に、バナジウムと、モリブデンおよびタングステンの少なくとも一方と、をコーティングする工程を含む請求項1に記載の脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法。
【請求項5】
前記第1の酸化チタンおよび前記第2の酸化チタンの総重量は、再生脱硝触媒の全重量に対して60重量%から85重量%の範囲である請求項1から請求項4のいずれかに記載の再生脱硝触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再生脱硝触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラ、ガスタービンおよび燃焼炉等から排出される燃焼排ガス中には、窒素酸化物(以下、NOx)が含まれる。排ガス中のNOxを除去する方法としてアンモニア接触還元法が広く知られている。アンモニア接触還元法では、脱硝触媒の存在下で、アンモニア(NH3)を還元剤として用いて、NOxを無害な窒素および水に分解する脱硝反応を行う。
【0003】
脱硝反応を促進させる脱硝触媒としては、酸化チタンを主成分として含有する触媒が広く用いられている。脱硝触媒は、長期間の使用の間に、脱硝反応の反応率となる脱硝性能が低下する。脱硝性能の低下は、微粉状物質を含んだ燃焼排ガスに暴露されることによる摩耗、例えば350℃以上の脱硝反応温度で触媒自身のシンタリングによる触媒粒子の粗大化、燃焼排ガス中に含まれる触媒毒成分(アルカリ成分、ヒ素、リンなど)および/またはカルシウムの付着などに起因する。触媒毒成分とは、触媒と作用してその性能を低下させる物質である。脱硝性能が低下した脱硝触媒は新しい脱硝触媒に交換され、使用済みの脱硝触媒は廃棄される。
【0004】
廃棄に伴う環境負荷および廃棄処理費用の観点から、使用済み脱硝触媒の廃棄量の低減が望まれる。廃棄量を減らすには、脱硝触媒の寿命を延ばす、または、使用済み脱硝触媒を再利用することが考えられる。
【0005】
特許文献1では、BiとP2O5を含む脱硝触媒成分の量を規定して、SO2酸化率の上昇を低減しつつ従来よりも長期間使用できる脱硝触媒を開示している。
【0006】
使用済の脱硝触媒に付着したケイ素化合物は、SO2酸化率上昇の要因となる阻害物質である。特許文献2では、使用済みの脱硝触媒に付着したケイ素化合物をアルカリ水溶液で除去した後、酸水溶液で活性化してスラリ状の触媒成分を使用済の脱硝触媒の表面に塗布する。これにより、使用済みの脱硝触媒のSO2酸化率の上昇を抑制しつつ脱硝性能を回復させている。
【0007】
特許文献3では、使用済み脱硝触媒を粉砕した粉体を、新たな脱硝触媒の原料の一部として再利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/093713号
【文献】特開2013-56319号公報
【文献】特開2004-209355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、脱硝性能の低下は、脱硝触媒表面の摩耗、シンタリングによる触媒粒子の粗大化、触媒毒成分(アルカリ成分、ヒ素、リンなど)および/またはカルシウムの付着などに起因して発生する。使用済み脱硝触媒は、使用前の脱硝触媒に比べて脱硝性能が低下しているため、特許文献1および特許文献2に記載された、BiとP2O5を含む脱硝触媒成分の調整、およびスラリ状の触媒成分の塗布では、摩耗によって表面積が減少した使用済の脱硝触媒の触媒性能を回復させることは難しい。特許文献3に記載された、新たな脱硝触媒の原料との混合でも、所望の脱硝性能の回復に不十分となるおそれがある。
【0010】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、使用済み脱硝触媒の再生時において、再生前の使用済み脱硝触媒に比べて脱硝性能が回復された脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法は以下の手段を採用する。
【0012】
本開示の参考態様は、第1の酸化チタンを主成分として含む、還元剤を用いてガス中の窒素酸化物を窒素および水に分解する脱硝反応に使用済みの脱硝触媒と、前記第1の酸化チタンよりも単位重量当たりの比表面積が大きい第2の酸化チタンと、が混在する脱硝反応用の再生脱硝触媒を提供する。
【0013】
本開示の一態様は、還元剤を用いてガス中の窒素酸化物を窒素および水に分解する脱硝反応に使用した使用済みのハニカム状構造の脱硝触媒を粉砕して得た、第1の酸化チタンを主成分として含む使用済みの脱硝触媒粉体と、前記第1の酸化チタンよりも単位重量当たりの比表面積が大きい第2の酸化チタンと、モリブデンと、を混合した混合粉体を用い、前記混合粉体と溶媒とを混練した混練物を、板状基材上に塗布して、ハニカム状構造ではない板状構造の再生脱硝触媒を製造する脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、使用済み脱硝触媒の再生時において、使用済み脱硝触媒よりも比表面積が大きな新たな脱硝触媒(第2の酸化チタン)を用いることで、摩耗によって減少した使用済み脱硝触媒の表面積を補い、再生前の使用済み脱硝触媒に比べて脱硝性能が回復された再生脱硝触媒となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る一例としての再生脱硝触媒の部分縦断面図である。
【
図3】板状の再生脱硝触媒を備えた触媒ユニットの概略図である。
【
図4】第1実施形態に係る再生脱硝触媒の製造工程を示すフロー図である。
【
図5】第2実施形態に係る一例としての再生脱硝触媒の部分縦断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る再生脱硝触媒の製造工程を示すフロー図である。
【
図7】高比表面積TiO
2含有率と、脱硝性能および強度との関係を示す図である。
【
図8】リンの添加と、再生脱硝触媒の脱硝性能およびSO
2酸化との関係を示す図である。
【
図9】リンの添加と、再生脱硝触媒の強度との関係を示す図である。
【
図10】バナジウム化合物の添加と、再生脱硝触媒の脱硝性能およびSO
2酸化との関係を示す図である。
【
図11】本開示の幾つかの実施形態に係る一実施例の脱硝装置を備える燃焼ガス発生装置の主要部を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法に関する。「再生脱硝触媒」は、使用済み脱硝触媒に由来する粉体を原料として用いて新たに製造された脱硝触媒である。脱硝反応は、ガス中の窒素酸化物を、還元剤を用いて窒素および水に分解する反応である。
【0017】
「使用済み脱硝触媒」は、石炭焚ボイラ等の設備で使用されて脱硝性能が劣化し、交換対象となった脱硝触媒である。交換基準は、設備毎で定義され得る。石炭焚きボイラ等の設備で使用される脱硝触媒は、酸化チタンを主成分とした公知の脱硝触媒であってよい。
【0018】
以下に、本開示に係る脱硝反応用の再生脱硝触媒の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る再生脱硝触媒は、第1の酸化チタンを主成分とした使用済み脱硝触媒と、第2の酸化チタンと、を含む。再生脱硝触媒において、使用済み脱硝触媒に含まれる第1の酸化チタンと、第2の酸化チタンとは混在している。酸化チタン(第1の酸化チタンと第2の酸化チタン)は、再生脱硝触媒の全重量に対して、例えば60重量%から85重量%の範囲、好ましくは70重量%から80重量%の範囲で再生脱硝触媒に含まれているとよい。
【0020】
「第1の酸化チタン」は、使用前の脱硝触媒に含まれていた酸化チタンの使用後での呼称である。「主成分」とは、対象物に最も多く含まれる成分のことを指す。使用前の脱硝触媒に含まれていた酸化チタンの単位重量あたりの比表面積は、例えば、100m2/g程度であってよい。使用前の脱硝触媒に含まれていた酸化チタンの単位重量あたりの比表面積は、例えば、200m2/g以上のものであってよい。
【0021】
第1の酸化チタンは、第2の酸化チタンよりも単位重量あたりの比表面積が小さい。第1の酸化チタンの多くの単位重量あたりの比表面積は、例えば、50m2/g以上100m2/g未満であってよい。なお、「多く」とは第1の酸化チタンの比表面積分布を想定した際に、平均比表面積に対して±標準偏差1.5σに入るもの、さらに好ましくは±標準偏差2σに入るものを示している。
【0022】
使用済み脱硝触媒は、公知の脱硝触媒に含まれる成分を含んでいてもよい。例えば、使用済み脱硝触媒は、活性成分を含み得る。活性成分は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、リン(P)、硫黄(S)などの元素を含む成分である。使用済み脱硝触媒は、活性成分以外に、結合材、補強材などの助剤が含まれていてもよい。助剤としては、シリカゾル、二水石膏、硫酸アルミニウム、無機繊維などが挙げられる。
【0023】
第2の酸化チタンは、第1の酸化チタンよりも単位重量あたりの比表面積が大きい。第2の酸化チタンの多くの単位重量あたりの比表面積は、例えば200m2/g以上400m2/g以下であり、さらに350m2/g以上400m2/g以下であることが触媒活性を向上させる点で好ましい。そのほか、第2の酸化チタンとして、比表面積がより大きいものを用いると、第1の酸化チタンを用いる場合と比較して少量の混合で表面積を増やすことができる。そのため、全酸化チタンに対する第1の酸化チタンの含有率を容易に増加させることができる。すなわち、再生できる使用済み触媒量を容易に増加させることができる。なお、「多く」とは第2の酸化チタンの比表面積分布を想定した際に、平均比表面積に対して±標準偏差1.5σに入るもの、さらに好ましくは±標準偏差2σに入るものを示している。第2の酸化チタンは、単位重量あたりの比表面積が大きいために第1の酸化チタンよりも脱硝性能が高い。
【0024】
再生脱硝触媒における全酸化チタンに対する第2の酸化チタンの含有率は、10重量%以上90重量%以下の範囲で選定する。なお、第2の酸化チタンは第1の酸化チタンと比較して脆い。よって、脱硝触媒の強度向上の観点から、第2の酸化チタンの含有率は、好ましくは25重量%以上50重量%以下の範囲内で選定することが好ましい。ここでは、第1の酸化チタンおよび第2の酸化チタンの総重量(全酸化チタンの重量)を100重量%としている。
【0025】
再生脱硝触媒は、所定量のリンまたはリンを含む化合物(リン化合物)を含んでもよい。
【0026】
再生脱硝触媒は、バナジウムまたはバナジウムを含む化合物(バナジウム化合物,例えば、五酸化バナジウム(V2O5))を含んでもよい。バナジウムまたはバナジウム化合物の含有量は、再生脱硝触媒の総重量に対して4重量%以下であることが好ましい。
【0027】
再生脱硝触媒は、例えばタングステン(タングステン化合物を含む)、酸化アルミニウム(例えば、アルミニウムなどのアルミニウム化合物を含む)、またはケイ素(例えば、二酸化ケイ素などのケイ素化合物を含む)などを含んでいてもよい。
【0028】
図1に、再生脱硝触媒の部分縦断面を例示する。
図1に示すように、再生脱硝触媒1は、板状基材2および該板状基材2に担持された触媒層3を備えた構成であってよい。
【0029】
板状基材2は、担持された触媒層3が剥がれ難い構造をしたものであればよい。例えば、メタルラス、パンチングメタルなどのように板面全体に孔が複数設けられたもの、ブラスト処理板のように表面に小さな凹凸が設けられたもの、または、不織布、金網などのように線条材を用いて板状に成形したものなどを、板状基材2として用いることができる。
【0030】
板状基材2は、ステンレス鋼、ガラス、セラミックスなどの耐熱性を有する材料で構成されていることが好ましい。本実施形態においては、板状基材2としてステンレス鋼製メタルラスが好ましく用いられる。
【0031】
図2に、板状の再生脱硝触媒の斜視図を例示する。
図3に、板状の再生脱硝触媒を備えた触媒ユニットを例示する。
【0032】
図2において、
再生脱硝触媒1(に含まれる板状基材2
)は、平坦部4と線条スペーサ部5とを有する。平坦部4と線条スペーサ部5は交互に配置される。板状基材2は、平坦な原板から製造できる。線条スペーサ部5は、平坦な原板を例えばプレス折り曲げ加工
などにより形成できる。
【0033】
触媒層3は、使用済み脱硝触媒の第1の酸化チタンおよび第1の酸化チタンよりも
単位重量あたりの比表面積が大きい第2の酸化チタンを含む層である。触媒層3は、タングステン(タングステン化合物を含む)、アルミニウム(例えば、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物を含む)、ケイ素(例えば、二酸化ケイ素などのケイ素化合物を含む)等を含んでもよい。触媒層3は、モリブデン、またはガラス繊維等を含んでもよい。
図1において、触媒層3は、板状基材2の両面に担持されている。
【0034】
図3の触媒ユニット6は、ユニット枠7内に、複数の板状の再生脱硝触媒1が収納されてなるものである。触媒ユニット6では、任意の板状の再生脱硝触媒1の平坦部4に、隣り合う他の板状の再生脱硝触媒1の線条スペーサ部5が当接するように重ねられている。
【0035】
次に、本実施形態に係る再生脱硝触媒の製造方法について説明する。
図4に製造工程のフロー図を示す。
【0036】
本実施形態に係る製造方法は、(S1)使用済み脱硝触媒粉体の取得、(S2)混練物の作製、(S3)塗布、(S4)乾燥および(S5)焼成を含む。
【0037】
(S1)使用済み脱硝触媒粉体の取得
第1の酸化チタンを含む使用済み脱硝触媒から使用済み脱硝触媒粉体を得る。既に粉砕された使用済み脱硝触媒粉体を入手してもよい。
【0038】
使用済み脱硝触媒には、基材を含まない形態のものを用いることが好ましい。「基材」は、ステンレス等の金属板または金網である。使用済み脱硝触媒には、脱硝触媒成分のみで構成された脱硝触媒を用いることが好ましい。「脱硝触媒成分」は、脱硝反応の触媒として機能する主成分、脱硝反応を活性化させる活性成分および助剤などである。
【0039】
例えば、ハニカム状構造の脱硝触媒は、基材を含まない形態であり、脱硝触媒成分が押出成形されてなる。基材を含まない形態の脱硝触媒では、洗浄処理によりハニカム状構造の脱硝触媒の表面に付着した油分および硫黄分などの不純物を除去した後に粉砕する、もしくはそのまま粉砕することで使用済み脱硝触媒粉体を得ることができる。
【0040】
粉砕は、ハンマーミル、ローラーミル、ボールミルおよび気流粉砕機などを用いた方法で行うことができる。
【0041】
使用済み脱硝触媒粉体の粒度は、閾値以下であることが好ましい。閾値は、0.1mm以上1.0mm以下の範囲の任意の値である。使用済み脱硝触媒粉体の粒度は、小さいほど使用済み脱硝触媒に付着したダストと触媒粉体とが分離しやすくなるため好ましい。よって、使用済み脱硝触媒粉体の粒度は、0.1mm以下であることが好ましい。粒度が1.0mmより大きいと、ダストと触媒粉体とが分離しにくく、使用済み脱硝触媒粉体の性能が低くなり、焼成後に得られる再生脱硝触媒の強度が低下する恐れがある。
【0042】
(S2)混練物の作製
使用済み脱硝触媒粉体に、第2の酸化チタンまたは第2の酸化チタンを含む副脱硝触媒粉体を添加し、混合する。第2の酸化チタンは、第1の酸化チタンよりも単位重量あたりの比表面積が大きい。副脱硝触媒粉体は、モリブデン、またはガラス繊維等を含んでもよい。副脱硝触媒粉体は、タングステン(タングステン化合物を含む)、アルミニウム(例えば、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物を含む)、ケイ素(例えば、二酸化ケイ素などのケイ素化合物を含む)等を含んでもよい。
【0043】
第2の酸化チタンまたは副脱硝触媒粉体に含まれる第2の酸化チタンは、使用済み脱硝触媒粉体に含まれる第1の酸化チタンおよび第2の酸化チタンの総重量に対して10重量%以上90重量%以下、好ましくは25重量%以上50重量%以下となるよう添加されるとよい。
【0044】
使用済み脱硝触媒粉体と、第2の酸化チタンまたは第2の酸化チタンを含む副脱硝触媒粉体と、が混合された混合粉体には、さらにリンもしくはリン化合物を添加することが好ましい。後述の
図8と
図9に示すように、リンの添加量を増加させると再生脱硝触媒のSO
2酸化率
が低減
し、強度が向上する傾向にある。リン(もしくはリン化合物)の添加量は、所望の効果が得られるよう任意の量を選定してよい。混合粉体には、バナジウム(バナジウム化合物を含む)等の触媒活性成分をさらに添加してもよい。バナジウムの添加量は、混合粉体全量に対してバナジウム(バナジウム化合物を含む)が0重量%超4重量%以下で含まれるようにするとよい。
【0045】
混合粉体に、水等の溶媒を添加して混練する。溶媒量が多い場合、混練物はペースト状になる。溶媒量が少ない場合、混練物はスラリ状となる。
【0046】
(S3)塗布
板状基材上に、混練物のペーストを塗布する。(混練物がスラリ状の場合、「塗布」は、板状基材に含浸させることを意味する。)塗布された混練物の厚さは、0.5mm以上1.0mm以下にするとよい。「混練物の厚さ」は、板状基材の表面から塗布された混練物の外表面までの距離の平均である。
【0047】
(S4)乾燥
混練物が塗布された板状基材を乾燥させる。混練物は、例えば、常温で静置することで自然乾燥され得る。
【0048】
(S5)焼成
乾燥後、不活性ガス雰囲気下で、300℃以上の高温で焼成する。
【0049】
なお、上記(S1)において、粉砕前に使用済み脱硝触媒を公知の方法で水洗浄または薬液洗浄などの洗浄処理を実施してもよい。
【0050】
〔第2実施形態〕
図5に、本実施形態に係る再生脱硝触媒の部分断面を例示する。本実施形態に係る再生脱硝触媒10では、第1実施形態の触媒層3の表面に、触媒層3を活性化させる活性層11が設けられている。活性層11は、バナジウム(バナジウム化合物を含む)と、タングステン(タングステン化合物を含む)およびモリブデン(モリブデン化合物を含む)の少なくとも一方と、を含む。
【0051】
図6に本実施形態に係る製造工程のフロー図を示す。本実施形態に係る製造方法は、(S11)使用済み脱硝触媒粉体の取得、(S12)混
練物の作製、(S13)塗布、(S14)コーティング処理(S15)
、乾燥および(S16)焼成を含む。
【0052】
上記(S11)から(S13),(S15)および(S16)は、第1実施形態の(S1)から(S5)と同様の工程であるため、説明を省略する。
【0053】
(S14)コーティング処理
板状基材上に塗布された混練物の上に、バナジウム(バナジウム化合物を含む)と、モリブデン(モリブデン化合物を含む)およびタングステン(タングステン化合物を含む)の少なくとも一方と、をコーティングする。
【0054】
コーティング厚さは、10μm以上400μm以下とするとよい。コーティング厚さが10μm未満では、触媒活性の効果を十分に得ることができなくなる。また、コーティング厚さが400μmを超えても、触媒活性の効果を更に上昇できなくなるとともに、第1の酸化チタンおよび第2の酸化チタンを含む触媒層による脱硝性能が低下する。そのため、例えば、一回のコーティング処理で所望のコーティング厚さが得られなかった場合などは、コーティング処理を複数回行っても良い。
【0055】
バナジウム(バナジウム化合物を含む)と、モリブデン(モリブデン化合物を含む)およびタングステン(タングステン化合物を含む)の少なくとも一方は、混合され、スラリ状に調整される。該スラリに混練物が塗布された板状基材を浸して再生脱硝触媒の表面をコーティングする。
【0056】
次に、第2の酸化チタンの含有率、リンおよびバナジウム等の添加による作用効果について説明する。
【0057】
(第2の酸化チタンの含有率)
上記第1実施形態に従って、酸化チタン(TiO2)、五酸化バナジウム(V2O5)およびリンなどにより、再生脱硝触媒を製造した。使用済み脱硝触媒、副脱硝触媒粉体および板状基材は、以下を用いた。
【0058】
使用済み脱硝触媒:
TiO2(第1の酸化チタン) 約75wt%,V2O5 約0.5wt%,他 約24.5wt%
TiO2(第1の酸化チタン)の比表面積 50~80m2/g
ハニカム形状
副脱硝触媒粉体:
TiO2(第2の酸化チタン) 約80wt%,他 20wt%
TiO2(第2の酸化チタン)の比表面積 200~300m2/g
板状基材:
ステンレス製(板厚0.5~1.0mm)
リン:(任意の量)
バナジウム(V2O5):(0.5~3.0wt%)
【0059】
使用済みハニカム状構造の触媒を粒度0.1mm以下に粉砕して使用済み脱硝触媒粉体を得た。使用済み脱硝触媒粉体に副脱硝触媒粉体、リンおよびバナジウムを添加して混合粉体を得た。混合粉体中の第2の酸化チタン(高比表面積TiO2)の添加量は、全TiO2中の高比表面積TiO2の含有率が所定の重量(wt)%となるようにした。混合粉体中のバナジウム(V2O5)およびリン添加量は一定とした。なお、バナジウムとして五酸化バナジウム(V2O5)を用いたが、用いた五酸化バナジウムに含まれるバナジウムと同量のバナジウム単体または同量のバナジウムを含む他のバナジウム化合物を用いてもよい。
【0060】
混合粉体を水と混練してペースト状の混練物を作製した。混練物を板状基材の表面に塗布(厚さ:0.5~1.0mm)した後、常温で自然乾燥させた。その後、不活性ガス雰囲気下、300℃以上の高温で焼成して再生脱硝触媒を得た。
【0061】
図7に、第2の酸化チタン(高比表面積TiO
2)含有率と、脱硝性能との関係を実線で、および耐摩耗性の強度との関係を破線で示す。同図において、横軸は混合粉体に含まれる全TiO
2中の高比表面積TiO
2の含有率(wt%)、縦軸(左)は脱硝性能を脱硝比で示し、縦軸(右)は脱硝触媒の耐摩耗性の強度を強度比で示したものである。
図7において、脱硝比および強度比は、高比表面積TiO
2の含有率が100wt%(新品)
の脱硝触媒の脱硝性能(脱硝率)および耐摩耗性の強度を1とした場合との差を比で表した規格値である。
【0062】
図7によれば、高比表面積TiO
2の含有率が上がるにつれて、脱硝性能は向上した。高比表面積TiO
2を10wt%以上含有させることで、高比表面積TiO
2の含有率が100wt%(新品)の95%以上の脱硝性能が得られた。さらに、高比表面積TiO
2を25wt%以上含有させると、脱硝性能は、高比表面積TiO
2の含有率が100wt%(新品)の98%以上になった。
【0063】
一方、
図7によれば、高比表面積TiO
2の含有率が上がるにつれて、耐摩耗性の強度は低下した。このことから、高比表面積TiO
2の添加量は、脱硝性能および耐摩耗性の強度のバランスを考慮して設定されるとよいことが示唆された。
【0064】
耐摩耗性の強度確保の観点によれば、高比表面積TiO2の含有率が90wt%を超えないようにすることが好ましい。使用済み脱硝触媒の再利用との観点によれば、高比表面積TiO2の含有率は50wt%以下にすることが好ましい。なお、排ガス中に燃焼灰等の固形物が含まれている場合では、より高い耐摩耗性の強度を確保するために、高比表面積TiO2の含有率を50wt%以下とすることが好ましい。
【0065】
以上より、高比表面積TiO2の含有量は、10wt%以上90wt%以下、好ましくは25wt%以上50wt%以下であることが好ましいといえる。高比表面積TiO2の含有量は、使用済み脱硝触媒の脱硝性能の低下具合、再生脱硝触媒が使用される設備で要求される脱硝性能および耐摩耗性の強度が満たされるよう上記範囲内で設定されるとよい。
【0066】
(リンの添加)
上記第1実施形態に従って再生脱硝触媒を製造し、リンの添加による影響について評価した。
【0067】
使用済み脱硝触媒:
TiO2(第1の酸化チタン) 約75wt%,V2O5 約0.5wt%,他 24.5wt%
TiO2(第1の酸化チタン)の比表面積 50~80m2/g
ハニカム形状
副脱硝触媒粉体:
TiO2(第2の酸化チタン) 約80wt%,他 20wt%
TiO2(第2の酸化チタン)の比表面積 200~300m2/g
板状基材:
ステンレス製(板厚0.5~1.0mm)
リン:(任意の量)
バナジウム(V2O5):(0.5~3.0wt%)
【0068】
使用済みハニカム状構造の触媒を粒度0.1mm以下に粉砕して使用済み脱硝触媒粉体を得た。使用済み脱硝触媒粉体に副脱硝触媒粉体、リンおよびバナジウムを添加して混合粉体を得た。混合粉体中の第2の酸化チタン(高比表面積TiO2)およびバナジウムの添加量は一定とした。混合粉体中のリン添加量は変化させた。
【0069】
混合粉体を水と混練してペースト状の混練物を作製した。混練物を板状基材の表面に塗布(厚さ:0.5~1.0mm)した後、常温で、自然乾燥させた。その後、不活性ガス雰囲気下、300℃以上の高温で焼成して再生脱硝触媒を得た。
【0070】
図8に、リンの添加と、再生脱硝触媒の脱硝性能との関係を一点鎖線で、およびSO
2酸化率との関係を実線で示す。同図において、横軸はリン(P)含有比、縦軸は変化比である。変化比は、任意の量のリンを添加した再生脱硝触媒の脱硝率およびSO
2酸化率を1とした場合の差を比で表した規格値である。
【0071】
再生脱硝触媒が適用される設備(ボイラ等)には、硫黄分の高い石炭あるいはC重油などを燃料として利用するものがある。これらの燃料を燃焼させて生じる排ガスには、二酸化硫黄(SO2)が含まれる。
【0072】
SO2が含まれる排ガスをアンモニア接触還元法で処理すると、NOxを還元して除去する反応と同時に、SO2からSO3への酸化反応が生じる。SO3の増加は、後流に配置されている熱交換器等の各種装置における排ガスとの接触部の腐食および閉塞の要因となりうる。そのため、SO2からSO3への酸化反応の進行を抑制することが望ましい。
【0073】
図9に、リンの添加量と、再生脱硝触媒の耐摩耗性の強度との関係を実線で示す。同図において、横軸はリン(P)含有比、縦軸は変化比である。変化比は、任意の量のリンを添加した再生脱硝触媒の耐摩耗性の強度を1とした場合の差を比で表した規格値である。
【0074】
図8によれば、リンが多く含まれるほど、脱硝性能およびSO
2酸化率は低下した。
図9によれば、リンが多く含まれるほど、耐摩耗性の強度は向上した。
【0075】
再生脱硝触媒においてSO
2酸化率は低い方が好ましいが、脱硝性能と耐摩耗性の強度は高い方がよい。
図8,9によれば、リンの添加量は、脱硝性能、SO
2酸化率および耐摩耗性の強度のバランスを考慮して設定すべきであることが示唆された。
【0076】
なお、本発明者らの鋭意検討によれば、再生脱硝触媒においてリンの添加量を調整することにより、SO2酸化率の増加を抑制しつつ、要求される脱硝性能およびの耐摩耗性の強度を確保できることが確認されている。
【0077】
(バナジウムの添加)
上記第1実施形態に従って再生脱硝触媒を製造し、バナジウム(バナジウム化合物を含む、本実施形態では、バナジウム化合物:V2O5)の添加による影響について評価した。
【0078】
使用済み脱硝触媒:
TiO2(第1の酸化チタン) 約75wt%,V2O5 約0.5wt%,他 24.5wt%
TiO2(第1の酸化チタン)の比表面積 50~80m2/g
ハニカム形状
副脱硝触媒粉体:
TiO2(第2の酸化チタン) 約80wt%,他 20wt%
TiO2(第2の酸化チタン)の比表面積 200~300m2/g
板状基材:
ステンレス製(板厚0.5~1.0mm)
リン:(任意の量)
バナジウム(V2O5):(0.5~3.0wt%)
【0079】
使用済みハニカム状構造の触媒を粒度0.1mm以下に粉砕して使用済み脱硝触媒粉体を得た。使用済み脱硝触媒粉体に副脱硝触媒粉体、リンおよびバナジウム(V2O5)を添加して混合粉体を得た。混合粉体中の第2の酸化チタン(高比表面積TiO2)およびリンの添加量は一定とした。混合粉体へのバナジウム(V2O5)の添加量は変化させた。
【0080】
混合粉体を水と混練してペースト状の混練物を作製した。混練物を板状基材の表面に塗布(厚さ:0.5~1.0mm)した後、常温で自然乾燥させた。その後、不活性雰囲気下、300℃の高温で焼成して再生脱硝触媒を得た。
【0081】
図10に、バナジウム化合物(例えば、五酸化バナジウム(V
2O
5))の添加と、再生脱硝触媒の脱硝性能(破線)およびSO
2酸化率(実線)との関係を示す。同図において、横軸は再生脱硝触媒の総重量中のV
2O
5(wt%)、縦軸は変化比である。脱硝の変化比は、V
2O
5 0.5wt%の脱硝率を1とした場合の差を比で表した規格値である。SO
2酸化の変化比は、V
2O
5 0.5wt%のSO
2酸化率を1とした場合の差を比で表した規格値である。
【0082】
図10によれば、V
2O
5の含有量が増えると、脱硝性能およびSO
2酸化率は上昇傾向を示した。これにより、V
2O
5の添加は、脱硝性能を向上させることができる反面、SO
2酸化率を増加させることが確認された。本発明者らの鋭意検討によれば、触媒層におけるバナジウムの含有量は、4wt%以下が好ましいとの結果が得られている。さらに好ましくは、触媒層におけるバナジウムの含有量は、単位量当たりの脱硝性能の向上量の大きい3wt%以下とする。なお、4wt%を超えてバナジウムの含有量を増加させても、脱硝性能がほぼ向上せずにSO
2酸化率が大幅に上昇するため、好ましくない。
【0083】
以下に、本開示の幾つかの実施形態に係る一実施例の再生脱硝触媒が採用された脱硝装置20について説明する。
図11には、一実施例に係る再生脱硝触媒を備える脱硝装置20およびそ
の周辺機器が示されている。
【0084】
図11において、脱硝装置20は、後述する燃焼ガス生成装置30で生成した燃焼ガスが、熱交換器31内を流通する媒体と熱交換を行った後に排ガスとして通過する経路であるダクト32に設置されている。つまり、脱硝装置20はダクト32内の燃焼ガス流れにおける熱交換器31の後流側に設置されている。
【0085】
燃焼ガス生成装置30は、燃焼用燃料を燃焼させることで窒素酸化物を含む燃焼ガスを生成させる装置である。燃焼ガス生成装置30は、例えばボイラ、ガスタービンおよび燃焼炉等である。
【0086】
ダクト32には、燃焼ガス生成装置30から排出された燃焼ガス(排気ガス)が導かれる燃焼ガス排出ライン33が接続されている。ダクト32には、排気ガス流れの上流側(
図11で示す左側)から順に熱交換器31、脱硝装置20が配置されている。ダクト32には、排気ガス流れの下流側で、さらに別の熱交換器を設けてもよい。
【0087】
熱交換器31は、内部に供給された媒体(給水や蒸気)と燃焼ガス生成装置30の燃焼ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。ダクト32内を通過する燃焼ガスは熱交換器31にて熱交換された後、脱硝装置20で燃焼ガスに含まれる有害物質(窒素酸化物)が除去され、浄化されるとともに熱回収される。温度が低下した排気ガスは脱硝装置20の排気ガス流れの下流側に接続された煙突(図示省略)から大気へ放出される。
【0088】
次に、本実施形態に係る脱硝装置20について説明する。
図11に示す脱硝装置20は、燃焼ガス流れの上流側から順に
アンモニア注入装置22および
再生脱硝触媒21を備えている。脱硝装置20は、ダクト32内部に設置され、燃焼ガスが再生脱硝触媒21を通過する構造とされている。
【0089】
アンモニア注入装置22には、アンモニアガスを供給するアンモニアガスライン23と、アンモニアガスを脱硝反応に適切な濃度に希釈するための空気(希釈用空気)を供給する希釈用空気供給ライン24が接続されている。アンモニアガスライン23にはバルブ25が設置されており、アンモニアガスの流量を調節できる。
【0090】
希釈用空気供給ライン24とアンモニアガスライン23とは合流部Xで合流しており、希釈用空気供給ライン24によって供給された希釈用空気と、アンモニアガスライン23によって供給されたアンモニアガスとは、合流部Xで混合されることでアンモニア混合気体となり、アンモニア注入装置22に供給される。
【0091】
アンモニア混合気体は、アンモニア注入装置22のノズル(図示省略)から噴射されることにより、ダクト32内に散布される。散布されたアンモニア混合気体は、ダクト32内を流通する燃焼ガスと混合され、アンモニア注入装置22の下流側に設置される再生脱硝触媒21を通過する。
【0092】
有害物質(窒素酸化物)の除去には、選択接触還元法(SCR;Selective Catalytic Reduction)が用いられ、アンモニア混合気体と混合された燃焼ガスが再生脱硝触媒21を通過することで、化学反応によって、燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)を環境負荷がない窒素や水蒸気へと分解する。
【0093】
<付記>
以上説明した各実施形態に記載の再生脱硝触媒およびその製造方法は例えば以下のように把握される。
【0094】
本開示に係る再生脱硝触媒では、第1の酸化チタンを主成分として含む、還元剤を用いてガス中の窒素酸化物を窒素および水に分解する脱硝反応に使用済みの脱硝触媒と、前記第1の酸化チタンよりも単位重量当たりの比表面積が大きい第2の酸化チタンと、が混在する。
【0095】
脱硝触媒に含まれる第1の酸化チタンは、例えば350℃以上の脱硝反応温度での脱硝反応に使用中のシンタリング等により触媒粒子の粗大化などが生じて、使用前よりも脱硝性能が低下している。第2の酸化チタンは、単位重量当たりの比表面積が大きいために第1の酸化チタンよりも脱硝性能が高い。第2の酸化チタンを混在させることで、第1の酸化チタンの脱硝性能の低下分を補い、再生脱硝触媒として脱硝性能を回復させることができる。
【0096】
上記開示の一態様において、前記第1の酸化チタンおよび前記第2の酸化チタンの総重量に対する前記第2の酸化チタンの含有率は、10重量%以上90重量%以下、好ましくは25重量%以上50重量%以下である。
【0097】
第2の酸化チタンを10重量%以上含ませることで、再生脱硝触媒は、第2の酸化チタンのみ(第1の酸化チタン不使用)で製造された新品の脱硝触媒の95%以上の脱硝性能を得られる。第2の酸化チタンを25重量%以上含ませると、得られる脱硝性能は第2の酸化チタンのみ(第1の酸化チタン不使用)で製造された新品の脱硝触媒の98%以上となる。
【0098】
単位重量当たりの比表面積が大きな酸化チタンを用いて脱硝触媒を製造するためには、製造過程で溶媒を多く入れる必要がある。溶媒を多く入れると、焼成後に得られる再生脱硝触媒はポーラス構造となる。気孔が多く含まれると、耐摩耗性の強度は低下する。よって、第2の酸化チタンの含有率が高くなりすぎると、触媒強度が低下する恐れがある。具体的には、第2の酸化チタンの含有率が90%を超えると、触媒強度が低下する恐れがある。上記開示では、第2の酸化チタンの含有量を50重量%以下とすることが好ましい。それにより、耐摩耗性の強度を維持しつつ、十分な脱硝性能を確保できる。
【0099】
さらに、使用済みの脱硝触媒の再利用率は高い方が製造コストおよび廃棄コストを抑えられる。すなわち、使用済みの脱硝触媒の含有量と第2の酸化チタンの含有量はトレードオフの関係にあるため、第2の酸化チタンの含有量が多くなると使用済みの脱硝触媒の含有量が少なくなり、使用済みの脱硝触媒の再利用率が低下する。そのため、第2の酸化チタンの添加量は少ない方が好ましい。上記開示では、第2の酸化チタンの含有量を90重量%以下、好ましくは50重量%以下とすることで、使用済み脱硝触媒を多くリサイクルできるため、製造コストおよび廃棄コストを抑えることができる。
【0100】
上記開示の一態様において、上記所定量のリンまたはリンを含む化合物を含んでもよい。
【0101】
リンまたはリンを含む化合物を含ませることで、触媒強度を向上させることができる。よって、比表面積が大きな第2の酸化チタンが含まれることによる耐摩耗性の強度低下を補うことができる。
【0102】
リンまたはリンを含む化合物を含ませることで、SO2酸化率の上昇を抑制できる。
【0103】
上記開示の一態様において、前記使用済みの脱硝触媒は、ハニカム状構造の脱硝触媒に由来することが望ましい。
【0104】
板状構造の脱硝触媒は、触媒内部に基材を含む。基材は金属板または金網などであり、そのまま粉砕するのは困難である。仮に粉砕を実施しても金属板表面からバナジウム等の触媒成分を回収することも困難である。一方、ハニカム状構造の脱硝触媒は、脱硝触媒成分のみからなる成形体である。金属板等の基材を含まないハニカム状構造の脱硝触媒は、洗浄処理によりハニカム状構造の脱硝触媒の表面の付着物などの不純物を除去した後に粉砕する、もしくはそのまま粉砕することで再生脱硝触媒の材料を容易に得られる。
【0105】
上記開示の一態様において、板状基材(2)と、前記板状基材に担持された触媒層(3)と、を備え、前記使用済みの脱硝触媒および前記第2の酸化チタンは、前記触媒層に含まれうる。
【0106】
上記開示の一態様における再生脱硝触媒では、形状維持の大部分を基材が担う。それにより、触媒層に要求される成形性の基準が、基材を含まないハニカム状構造の脱硝触媒に比べて緩くなるため、材料調整の自由度が増す。さらに、板状基材は、ハニカム状構造よりも構造がシンプルであるため、混練物の塗布が容易であり製造工程が簡易化する。
【0107】
上記開示の一態様において、前記触媒層の表面に活性層(11)が設けられ、前記活性層は、バナジウムと、モリブデンおよびタングステンの少なくとも一方と、を含んでもよい。
【0108】
バナジウムと、モリブデンおよびタングステンの少なくとも一方と、を表面に配置することで、脱硝性能を向上させることができる。
【0109】
本開示に係る再生脱硝触媒の製造方法では、第1の酸化チタンを主成分として含む、還元剤を用いてガス中の窒素酸化物を窒素および水に分解する脱硝反応に使用済みの脱硝触媒粉体と、前記第1の酸化チタンよりも単位重量当たりの比表面積が大きい第2の酸化チタンと、を混合した混合粉体を用いる(S2)。
【0110】
上記開示の一態様において、前記第2の酸化チタンは、前記第1の酸化チタンおよび前記第2の酸化チタンの総重量に対して10重量%以上90重量%以下で混合するとよい。
【0111】
上記開示の一態様において、前記混合粉体に、所定量のリンまたはリンを含む化合物を添加してもよい。
【0112】
上記開示の一態様において、使用済みのハニカム状構造の脱硝触媒を粉砕し、前記使用済みの脱硝触媒粉体を得るのが望ましい。
【0113】
上記開示の一態様において、前記混合粉体と溶媒とを混練した混練物を、板状基材上に塗布してもよい。
【0114】
上記開示の一態様において、前記板状基材上に塗布された前記混練物の表面に、バナジウム(バナジウム化合物を含む)と、モリブデン(モリブデン化合物を含む)およびタングステン(タングステン化合物を含む)の少なくとも一方と、をコーティングする工程を含んでもよい。
【0115】
本開示に係る脱硝装置は、窒素酸化物を含むガスが流れる経路内にアンモニアガスと希釈用空気とが混合されたアンモニア混合気体を散布するアンモニア注入装置(22)と、前記アンモニア注入装置の前記ガスの流れの下流側に設置され、前記ガスと前記アンモニア混合気体により脱硝反応を行う上記開示のいずれかに記載の脱硝反応用の再生脱硝触媒(1,10,21)と、を備える。
【符号の説明】
【0116】
1,10,21 再生脱硝触媒
2 板状基材
3 触媒層
4 平坦部
5 線条スペーサ部
6 触媒ユニット
7 ユニット枠
11 活性層
20 脱硝装置
22 アンモニア注入装置
23 アンモニアガスライン
24 希釈用空気供給ライン
25 バルブ
30 燃焼ガス生成装置
31 熱交換器
32 ダクト
33 燃焼ガス排出ライン