(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20240311BHJP
B41J 35/36 20060101ALI20240311BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20240311BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
B41J35/36
B41J2/325 A
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2020015606
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝基
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-299163(JP,A)
【文献】特開2018-176672(JP,A)
【文献】特開2018-083295(JP,A)
【文献】特開2006-007701(JP,A)
【文献】特開2012-030499(JP,A)
【文献】特開2008-080647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0216095(US,A1)
【文献】特開平10-138590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32-2/325
B41J 35/36
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンに塗布されたインクを用紙に転写するサーマルヘッドと、
プラテンローラと、
用紙積載部に積載された用紙を給紙して当該用紙を搬送する給紙
ローラと、
前記給紙
ローラにより給紙された前記用紙を検知する用紙検知手段と、
前記インクリボンを巻き取るインクリボン巻取り手段と、
前記インクリボンの印刷開始位置を検知するインクリボン検知手段と、
印刷時に、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとで前記インクリボンと前記用紙とが圧接された状態で、当該用紙を搬送するための搬送ローラであって、前記給紙ローラとは異なる搬送ローラと、
前記給紙
ローラにより前記用紙積載部から用紙を給紙し、当該給紙された用紙
が前記搬送ローラに挟持される前に前記用紙検知手段
により前記用紙を検知したことに応じて
、前記給紙
ローラによる前記用紙の搬送を一時停止させ、その後、前記インクリボン巻き取り手段により前記インクリボンを巻き取り、前記インクリボン検知手段により前記インクリボンの印刷開始位置を検知したことに応じて前記インクリボン巻き取り手段によるインクリボンの巻取りを停止させ、その後、前記給紙
ローラによる前記用紙の搬送を再開させ
て前記用紙を前記搬送ローラまで搬送させるように制御する制御手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記給紙
ローラは、給紙方向と逆方向にも用紙を搬送可能であり、
前記制御手段は、前記インクリボン検知手段により前記インクリボンの印刷開始位置を検知できない場合は、
前記給紙ローラにより前記用紙積載部から給紙された用紙を前記給紙
ローラにより前記逆方向に搬送させる
ことにより、前記用紙を前記搬送ローラに挟持されることなく前記用紙積載部に戻すように制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記インクリボン巻取り手段により前記インクリボンの巻取りを開始してから所定時間内に前記インクリボン検知手段によりインクリボンの印刷開始位置を検知できない場合に、
前記給紙ローラにより前記用紙積載部から給紙された用紙を前記給紙
ローラにより前記逆方向に搬送させる
ことにより、前記用紙を前記搬送ローラに挟持されることなく前記用紙積載部に戻すように制御することを特徴とする請求項
2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記給紙
ローラにより給紙された用紙を前記用紙検知手段で検知したことに応じて前記給紙
ローラによる前記用紙の搬送を一時停止させる際に、前記用紙の後端が前記用紙積載部にある状態で前記用紙の搬送を一時停止させるように制御することを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記給紙ローラは、用紙に当接して用紙を搬送可能とする給紙位置と、用紙から離間する退避位置とに移動可能であり、
前記制御手段は、前記給紙
ローラにより給紙された用紙を前記用紙検知手段で検知したことに応じて、前記給紙
ローラによる前記用紙の搬送を一時停止させると共に、前記給紙ローラを前記退避位置に移動させるように制御することを特徴とする請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記インクリボン巻取り手段により前記インクリボンを巻き取る間は、前記給紙ローラを前記退避位置に移動させ、前記給紙
ローラによる前記用紙の搬送を再開させる際に、前記給紙ローラを前記給紙位置に移動させて前記用紙の搬送を再開させるように制御することを特徴とする請求項
5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記用紙検知手段は、前記用紙積載部と前記サーマルヘッドの間に配置されることを特徴とする請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記用紙検知手段は、前記用紙積載部よりも給紙方向の下流であって、前記サーマルヘッドの印刷位置よりも給紙方向の上流に配置されることを特徴とする請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記給紙
ローラによる前記用紙の搬送を再開させ
て前記用紙を前記搬送ローラまで搬送させた後、
前記搬送ローラにより前記用紙を印刷開始位置まで搬送させるように制御することを特徴とする請求項1ないし
8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記用紙積載部に積載されている用紙を1枚だけ給紙するための分離板と、
前記分離板側に付勢される用紙ガイドと、をさらに有し、
前記給紙
ローラにより給紙された用紙は、前記用紙ガイドと前記分離板に保持されることを特徴とする請求項1ないし請求項
9のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記用紙が前記用紙ガイドと前記分離板とに保持されている状態で、前記給紙
ローラによる前記用紙の搬送を一時停止させるように制御することを特徴とする請求項
10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記搬送ローラにより搬送される用紙を検知する第2の用紙検知手段を有し、
前記第2の用紙検知手段は、印刷時の用紙搬送方向において、前記用紙検知手段、前記サーマルヘッド、及び、前記搬送ローラよりも下流側に設けられている、ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記搬送ローラによる印刷時の用紙搬送方向と、前記給紙ローラによる給紙時の用紙搬送方向は、同じ方向であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記搬送ローラは、前記用紙積載部、前記用紙検知手段、及び、前記サーマルヘッドよりも印刷時及び給紙時の搬送方向の下流側に設けられており、
前記制御手段が、前記給紙ローラにより給紙された用紙の先端を前記用紙検知手段により前記用紙を検知したことに応じて前記給紙ローラによる前記用紙の搬送を一時停止させるように制御ことにより、前記用紙が前記搬送ローラに挟持される前に前記給紙ローラによる前記用紙の搬送を一時停止させる、
ことを特徴とする請求項13に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドによりインクリボンのインクを用紙に転写する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやスマートフォン等で得られた画像データから、簡単に印刷物を得るための印刷装置が普及している。
【0003】
従来、これらの印刷装置のひとつであり、簡潔な構造で高画質な画像記録が得られる方法として、サーマルヘッドを用いる熱転写記録方法が用いられている。熱転写記録方式では、サーマルヘッドとプラテンローラにより用紙等の記録媒体とインクリボンを圧接し、サーマルヘッドに通電することでサーマルヘッド上の発熱体を発熱させインクリボンに塗布されている染料を昇華させ用紙に転写することにより印刷を行う。特にフルカラー印刷を行う熱転写記録方式の印刷装置では、インクリボンに順に塗布されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色を順に重ねて印刷する事によりフルカラーの印刷物を生成する構成になっている。
【0004】
インクリボンは印刷装置から容易に着脱可能にするためにインクリボンカセット内にインクリボンが巻かれた円筒状の供給ボビンと巻き取りボビンが収納されるように構成され、インクリボンカセット内で供給ボビン及び巻き取りボビンが回転可能に保持される。
【0005】
インクリボンカセットを印刷装置に装着した際に、供給ボビンと巻き取りボビンの間にサーマルヘッドが位置し、インクリボンと用紙を重ねた状態でサーマルヘッドをプラテンローラに圧接させながらサーマルヘッドを駆動させて印刷するようになっている。
【0006】
用紙は、包装袋などに梱包された形態で供給され、用紙を重ねて印刷装置に設けられた用紙トレイ内に収容可能に構成され、印刷指示を受けると印刷装置内に用紙が給紙されることが一般的である。
【0007】
例えば、特許文献1では印刷装置の前方に用紙トレイが設けられ、用紙トレイ内に用紙を収納可能にし、インクリボンカセットは印刷装置の側面から装着可能とした印刷装置が開示されている。特許文献1に開示された印刷装置はインクリボンカセット内のインクリボンを印刷開始位置まで巻き取った(イエローの頭出し)後に、用紙を用紙トレイから給紙して用紙の印刷開始位置を合わせてから印刷している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、用紙トレイ内に用紙が収容されてない状態で印刷を開始すると、まずインクリボンを巻き取りイエローの頭出しを完了する。そして、用紙トレイ内に用紙が収容されていないので、用紙を用紙トレイから給紙することができずに印刷が一時中止される。この状態で、用紙トレイに用紙を収容し印刷を再開すると通常通り印刷することができるが、用紙トレイに収容する用紙が手元にない場合は印刷を完全に中止する必要があり、印刷装置は初期状態に戻る。そのため、印刷装置からインクリボンカセットを取り出すことが可能になる。インクリボンカセットを一旦取り出し、再度同じインクリボンカセットを装着すると、印刷装置は再度装着されたインクリボンカセットのイエローの頭出しが完了しているか否かを判断できない。よって印刷装置は、次の印刷指示を受けると再度インクリボンを巻き取りイエローの頭出しをする必要がある。以上の動作によりインクリボンを一画面無駄にしてしまう。
【0010】
インクリボンを無駄にしないためには、用紙トレイ内に用紙が収容されているか否かをセンサで検知し、用紙トレイ内に用紙が収容されていないときはインクリボンのイエロー頭出し動作を開始しないことが考えられる。しかしながら、用紙トレイ内にセンサを新たに追加する必要があるため、印刷装置のコストアップを招いてしまう。
【0011】
そこで、本発明は、用紙積載部内に用紙が収容されていない状態、または、インクリボンの残量がない状態で印刷処理を開始した場合であっても、インクリボンまたは用紙を無駄にせずに印刷処理を可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、
インクリボンに塗布されたインクを用紙に転写するサーマルヘッドと、プラテンローラと、用紙積載部に積載された用紙を給紙して当該用紙を搬送する給紙ローラと、前記給紙ローラにより給紙された前記用紙を検知する用紙検知手段と、前記インクリボンを巻き取るインクリボン巻取り手段と、前記インクリボンの印刷開始位置を検知するインクリボン検知手段と、印刷時に、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとで前記インクリボンと前記用紙とが圧接された状態で、当該用紙を搬送するための搬送ローラであって、前記給紙ローラとは異なる搬送ローラと、前記給紙ローラにより前記用紙積載部から用紙を給紙し、当該給紙された用紙が前記搬送ローラに挟持される前に前記用紙検知手段により前記用紙を検知したことに応じて、前記給紙ローラによる前記用紙の搬送を一時停止させ、その後、前記インクリボン巻き取り手段により前記インクリボンを巻き取り、前記インクリボン検知手段により前記インクリボンの印刷開始位置を検知したことに応じて前記インクリボン巻き取り手段によるインクリボンの巻取りを停止させ、その後、前記給紙ローラによる前記用紙の搬送を再開させて前記用紙を前記搬送ローラまで搬送させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の印刷装置は、さらに、制御手段は、インクリボン検知手段によりインクリボンの印刷開始位置を検知できない場合は、搬送を一時停止した用紙を、給紙手段により逆方向に搬送させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、用紙が収容されていない状態で印刷処理を開始した場合でも、インクリボンを無駄にすることを防ぐことができる。また、インクリボンの残量がない状態で印刷処理を開始した場合でも、用紙を無駄にすることを防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの全体を示した斜視図
【
図2】本発明の実施形態に係るインクリボンカセットの斜視図
【
図3】本発明の実施形態に係るインクリボンカセットの分解斜視図
【
図4】反発明の実施形態に係るインクリボンの展開図
【
図5】本発明の実施形態に係るプリンタの印刷動作を示す断面図
【
図6】本発明の実施形態に係るプリンタの印刷動作を示す断面図
【
図7】本発明の実施形態に係るプリンタの印刷動作を示す断面図
【
図8】本発明の実施形態に係るプリンタの印刷動作のフローチャートを示した図
【
図9】本発明の実施形態に係るプリンタのシステム構成を示した図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1乃至
図9を参照して、本発明の実施例を説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係るプリンタの全体を示した斜視図である。
図1(a)は天面側から見た斜視図、
図1(b)は底面側から見た斜視図である。100はプリンタであり、200はインクリボンカセットである。
図1(a)に示すようにプリンタ100の天面には、電源ボタン101と表示部102が配置され、電源ボタン101を操作することによりプリンタ100の電源を入れることができる。表示部102は点滅及び点灯することが可能であり、プリンタ100の電源が入ると表示部102は点灯する。表示部102は、黄色と赤色の2色で点灯可能であり、通常は黄色で点灯し、エラー時には赤色で点灯する。103は蓋であり、プリンタ100の側面に設けられ、矢印A方向に開閉可能に構成され、インクリボンカセット200は蓋103を開いた状態で、インクリボンカセット挿入口104へ矢印B方向に着脱可能である。
図1(b)に示すようにプリンタ100の底面には、矢印C方向に開閉可能に軸支された用紙カバー105が設けられ、用紙カバー105を開いた内部に用紙積載部106を有する。ユーザは用紙カバー105を開いた状態で既定の長さにカットされた用紙300を用紙積載部106に装填することができる。また、用紙積載部106に装填された用紙300は後述するプリンタ100に設けられた給紙機構により1枚ずつプリンタ100の内部に引き出される。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係るインクリボンカセット200の斜視図であり、
図2(a)はインクリボンカセット200を天面から見た斜視図、
図2(b)はインクリボンカセット200を底面から見た斜視図である。
図3は、本発明の実施形態に係るインクリボンカセット200の分解斜視図である。
【0019】
インクリボンカセット200の筐体部分は、
図2、
図3に示すように上ケース201と第1の下ケース202、第2の下ケース203から構成されている。上ケース201、第1の下ケース202、第2の下ケース203は樹脂で形成されている。
【0020】
205は供給ボビンであり、207は巻き取りボビン、210はインクリボンである。供給ボビン205と巻き取りボビン207は共に同一形状であり、樹脂で形成され、供給ボビン205にインクリボン210が巻きまわされている。
図3に示すように第1の下ケース202は供給ボビン205を収容する供給ボビン収納部206を備えている。また第1の下ケース202は上ケース201と係合するため、両端部にそれぞれ1対の係合爪211を備えている。第2の下ケース203は巻き取りボビン207を収容する巻き取りボビン収納部208を備えている。また第2の下ケース203は上ケース201と係合するために両端部にそれぞれ1対の係合爪212を備えている。
【0021】
供給ボビン205は上ケース201と第1の下ケース202により回転自在に保持され、巻き取りボビン207は上ケース201と第2の下ケース203により回転自在に保持されている。巻き取りボビン207を回転駆動することで、供給ボビン205に巻きまわされたインクリボン210を巻き取りボビン207に巻き取ることができる。
【0022】
図4は本発明の実施形態に係るインクリボン210の展開図である。インクリボン210は
図4に示すようにイエロー染料211、マゼンタ染料212、シアン染料213、オーバーコート層214が順番に塗布されており、各面の頭出し位置に帯状のマーカー215が塗布されている。マーカー215は黒色の線であり、後述するインクリボンセンサによって照射された光がマーカー215により遮断されたことを検知できるようになっている。イエロー染料211の先頭部分にはマーカー215が2本塗布されており、他の色の先頭部分のマーカーが1本であることと区別している。この区別は、インクリボンセンサによって識別されイエロー染料211の頭出し位置であることを認識することができる。
【0023】
図5乃至
図7は本発明の実施形態に係るプリンタ100の印刷動作を示す断面図である。
図5(a)は待機状態のときの様子を示す断面図、
図5(b)は給紙動作の様子を示す断面図、
図5(c)はインクリボン210の頭出し動作を示す断面図である。
図6(a)は給紙再開後の様子を示す断面図、
図6(b)は印刷開始時の様子を示す断面図、
図6(c)は印刷中の様子を示す断面図である。
図7は排紙後の様子を示す断面図である。
【0024】
図5(a)に示すように、110はサーマルヘッド、111はヘッドアーム、114は放熱板、115は剥離板、120はプラテンローラである。ヘッドアーム111はヘッド支持軸112を中心に回動可能に支持されている。サーマルヘッド110はヘッドアーム111に支持されており
図5(a)に示す待機位置から
図6(c)に示す印刷位置に回動可能であり、プラテンローラ120との間で圧接力を生じさせることができる。
【0025】
図5(a)に示すように、待機状態においてサーマルヘッド110は、不図示のヘッド付勢バネでヘッド支持軸112を中心に図中時計回り方向へ付勢されている。サーマルヘッド110はインクリボンカセット200の挿抜時干渉しない様に、プラテンローラ120との距離を最大限広く取った待機位置に規制されている。
【0026】
放熱板114はサーマルヘッド110に取り付けられており、サーマルヘッド110で発生した熱を放熱板114に移動することができるように構成されている。プラテンローラ120はプリンタ100に回転自在に配置されており、用紙300の搬送に合わせて回転するように構成されている。剥離板115はサーマルヘッド110に取り付けられており、剥離板115によりインクリボン210が略90°方向転換され、用紙300から剥離される。
【0027】
130は給紙ローラであり、給紙ローラ130は不図示の給紙駆動モータにより駆動され回転駆動することができる。また、給紙ローラ130は
図5(a)に示すように用紙積載部106に積載されている用紙300から離間した退避位置と、
図5(b)に示すように用紙積載部106に積載されている用紙300と当接する給紙位置とに移動可能である。
【0028】
131は分離板、132は用紙ガイドであり、用紙ガイド132は給紙時に用紙300により持ち上げられ、
図5(a)に示す位置から
図5(b)に示す位置に回動可能に支持されている。また、用紙ガイド132は常に下方向(分離板側)に付勢されており、
図5(a)に示す分離板131に当接した位置にある。
【0029】
141は給紙口センサ、142は排紙口センサ、150はインクリボンセンサである。給紙口センサ141及び排紙口センサ142は、用紙検知用のセンサであり、照射された光が用紙300の裏面により反射され、反射された光を検知することで用紙300の有無を検知することが出る。給紙口センサ141、排紙口センサ142は、用紙の搬送経路に設けられている。給紙口センサ141は、用紙積載部106と130とサーマルヘッド110の間に設けられている。詳しくは、給紙口センサ141は、用紙積載部106よりも、給紙方向及び印刷時の用紙搬送方向である矢印D方向の下流で、サーマルヘッド110の印刷位置(印画位置)よりも給紙方向の上流に設けられている。排紙口センサ142は、サーマルヘッド110の矢印D方向の下流であって、サーマルヘッド110及び搬送ローラ160と、排紙口との間に設けられている。
【0030】
インクリボンセンサ150は、インクリボン検知用のセンサであり、照射された光がインクリボンカセット200の壁面で反射された光を検知しており、照射された光がマーカー215により遮断されることでマーカー215の位置を検知することができる。
【0031】
160は搬送ローラ、161は従動ローラである。搬送ローラ160は不図示の用紙搬送モータにより駆動され回転駆動することができる。従動ローラ161は搬送ローラ160に対向している従動ローラであり、搬送ローラ160の回転に追従して回転するように構成されている。
【0032】
以下、
図5乃至
図9を用いてプリンタ100の印刷動作(印刷処理)を説明する。
【0033】
図9は、本発明の実施形態に係るプリンタ100のシステム構成図を示している。
【0034】
制御部901は、CPU等の1以上のプロセッサから構成され、プリンタ100の各部の制御や、各種演算処理などを実行する。RAM902は、データを一時的に保持したり、各種処理を行うためのワークメモリである。ROM903は、プログラムや各種データを保持する不揮発性メモリである。制御部901は、ROM903からプログラムを読み出し、読み出したプログラムに基づいて処理や演算を実行する。
【0035】
制御部901は、電源ボタン101への操作入力を監視し、電源ボタンへの操作入力に応じて、プリンタの電源をON/OFFする。また、制御部901は、表示部102の表示(点灯/点滅/消灯や表示色)を制御する表示制御処理も実行する。
【0036】
制御部901は、給紙口センサ141、排紙口センサ142、インクリボンセンサ150などの各種センサでの検知結果を監視し、検知結果に応じて各種処理を実行するように制御する。
【0037】
搬送駆動部904は、給紙ローラ130及び搬送ローラ160とそれぞれ接続される給紙駆動モータ、用紙搬送モータから構成され、これらのモータを駆動させて、給紙ローラ130、搬送ローラ160をそれぞれ回転させることにより、用紙を搬送させることができる。制御部901は、搬送駆動部904を制御することにより、給紙、印刷時の用紙搬送、排紙の処理を実行する。給紙駆動モータ、用紙搬送モータはそれぞれ個別に設けてもよいし、同じモータを給紙ローラ130及び搬送ローラ160の駆動源とするように構成してもよい。搬送駆動部904(用紙搬送モータ)は、搬送ローラ160の回転方向を制御することにより、給紙方向、印刷時の搬送方向、排紙方向である
図5、
図6、
図7中の矢印D方向と、これとは逆方向となる矢印E方向とに用紙を搬送可能である。
【0038】
インクリボン巻取り部は、巻取りボビン207に係合するボビン係合部(不図示)や、子のボビン係合部を回転させるためのインク巻取りモータ等から構成される。インク巻取りモータを駆動させてボビン係合部を回転させることにより、巻取りボビン207を回転させてインクリボンを巻き取ることができる。制御部901は、インクリボン巻取り部905を制御することにより、供給ボビン206のインクリボンを巻取りボビン207に巻き取るインクリボン巻取り処理を実行する。インク巻取りモータは、個別に設けてもよいし、給紙ローラ130、搬送ローラ160の駆動源となるモータと共用するようにしてもよい。
【0039】
通信部906は、外部装置と無線接続し、外部装置から印刷対象の画像データを印刷データとして取得したり、プリンタの状態(印刷中、エラー等)を外部装置に通知したりする。本実施形態では、通信部906は無線接続を行うものとするが、有線接続を行う通信部であってもよい。
【0040】
ヘッド駆動部907は、サーマルヘッド110を駆動させるための駆動部であり、通信部906が外部装置から受信した印刷データに基づいてサーマルヘッドを駆動させ、用紙にインクリボンに塗布されているインクを転写して、画像を印刷させる。
【0041】
図8は本発明の実施形態に係るプリンタ100の印刷動作のフローチャートを示した図である。この印刷動作は、制御部901が、ROM903から読み出したプログラムを実行することにより、実現される。
【0042】
プリンタ100は、ユーザによりインクリボンカセット200及び用紙300がプリンタ100に装填され、電源ボタン101が操作されると、プリンタの電源がONとなり、
図8に示す処理が開始される。
【0043】
ステップS101では、スマートフォン等の携帯端末(不図示)により印刷データ(印刷対象の画像データ)がプリンタ100に送信されると、通信部906は、携帯端末からの印刷データを受信する。そして、制御部901は、受信した印刷データをRAM902に保持すると共に、表示部102の表示を、データ読み込み(受信)状態を示す点滅表示に変更する。表示部102の点滅表示は、印刷データの受信が完了するまで継続し、印刷データの巡視が完了したら停止する。印刷データの受信が完了すると、制御部901は、表示部102の表示を点滅表示から点灯表示に変更し、ステップS102に進む。
【0044】
ステップS102では、制御部901は、給紙動作(給紙処理)を開始させる。給紙動作では、制御部901は、まず、不図示の駆動源によりヘッド支持軸112を中心に図中反時計回りに回動させ、サーマルヘッド110を、
図5(a)に示す待機位置から
図5(b)に示す中間位置へ移動させる。そして、給紙ローラ130を、
図5(a)に示す退避位置から
図5(b)に示す用紙300と当接する給紙位置まで移動させる。その後、制御部901は、搬送駆動部904(、給紙駆動モータ)により、給紙ローラ130を
図5中時計周りに回転させて、用紙積載部106に積載された用紙300をプリンタ100の内部へ向かって搬送(給紙)する。給紙ローラ130により搬送される用紙300は、プリンタ100に備えられた分離板131に当接し、用紙300の給紙方向(矢印D方向)の先端が用紙ガイド132を押し上げて、最上部に積載された一枚の用紙300のみがプリンタ100の内部に搬送される。このように、分離板131により、用紙積載部106に記載されている複数の用紙から、最上部の1枚だけを分離してプリンタ100内部に給紙することができる。
【0045】
ステップS103では、給紙口センサ141で用紙300の先端(給紙方向の先端)を検出したか否かを判断する。給紙口センサ141で用紙300を検出するとステップS104に進む。給紙ローラ130の回転を開始してから規定時間以内に給紙口センサ141で用紙300を検出できない場合は、制御部901は、プリンタ100に用紙300が用紙積載部106に装填されていないと判断して、ステップS105に進む。
【0046】
ステップS104では、搬送駆動部904(給紙駆動モータ)は、給紙ローラ130の回転を停止させる。用紙300の給紙方向(矢印D方向)の先端が給紙口センサ141に位置し、用紙300の給紙方向の後端が用紙積載部106内にある状態で、給紙動作を一時停止させる。そして、制御部901は、不図示の駆動源により、給紙ローラ130を、
図5(b)に示す給紙位置から
図5(c)に示す退避位置まで移動させ、給紙ローラ130を用紙300から離間させる。用紙ガイド132は常に下方向(分離板側)に付勢されているため、用紙300は
図5(c)に示す位置で分離板131と用紙ガイド132に挟まれた状態で安定して保持される。
【0047】
ステップS104において規定時間以内に用紙300を検出できない場合は、ステップS105に進み、搬送駆動部904(給紙駆動モータ)は、給紙ローラ130の回転を停止する。そして、制御部901は、不図示の駆動源により、給紙ローラ130を、
図5(b)に示す給紙位置から
図5(a)に示す退避位置まで移動し、給紙動作を停止。そして、制御部901は、サーマルヘッド110を、不図示の駆動源によりヘッド支持軸112を中心に図中反時計回りに回動し、
図5(b)に示す中間位置から
図5(a)に示す待機位置へ移動させる。このようにステップS105では、制御部901、搬送駆動部904は、給紙動作を停止し、プリンタ100を待機状態とするように、サーマルヘッド110、給紙ローラ130の位置を移動させる。そして、ステップS106において、制御部901は、プリンタ100の表示部102をエラー通知用の赤色で点灯させる。更にステップS101で印刷データを受信した携帯端末に、用紙を給紙できなかった旨の給紙エラーを示す内容を、通信部906を介して通知し、ユーザに用紙をプリンタ100の用紙積載部106に装填することを促す。ステップS107では、制御部906は、ユーザにより用紙が装填されたか否かを判断し、用紙が装填されたことを検出するとステップS102に進む。用紙300が装填されないことを検出した場合、または、所定時間内に用紙が装填されたことを検出しなかった場合には、ステップS101で受信した印刷データの印刷処理を中止し終了する。用紙積載部106に用紙を装填する際に、ユーザは、用紙蓋(不図示)をいったん開けてから用紙を装填し、再度用紙蓋を閉じ、用紙蓋を閉じなければ印刷を開始することができない。そこで、本実施形態では、用紙蓋の開閉を検知するセンサを設け、用紙蓋が一度開状態となったことを検出した後、用紙蓋が閉じ状態となったことを検出した場合に、用紙が装填されたと検出するものとするが、他の方法で検出するようにしてもよい。
【0048】
ステップS108では、インクリボン210のイエロー染料211の頭出し動作を開始する。インクリボンの頭出し動作を開始すると、ここではまず、インクリボン巻取り部905がプリンタ100に備えられた係合部と係合している巻き取りボビン207を、回転させて、供給ボビン205に巻き回されているインクリボン210を巻き取りボビン207に巻き取る。
図4で示したように、インクリボン210の各色先頭にはマーカー215が設けられており、特にイエロー染料211の先頭にはマーカー215が2本設けられている。インクリボンセンサ150がインクリボン210に設けられたマーカー215で反射光がさえぎられることを検出することにより、規定時間内に二本のマーカー215を連続して検出することでイエロー染料211の頭出しを行うことができる。
【0049】
ステップS109では、制御部901は、イエロー染料211の先頭にある2本のマーカー215をインクリボンセンサ150により検知したか否かを判断する。ステップS109で2本のマーカー215を検知するとステップS110に進み、インクリボン巻取り部905は、インクリボンの巻取り(巻取りボビンの回転)を停止し、イエロー染料211の頭出し動作を完了する。ステップS109で、インクリボン巻取り部905によりインクリボンの巻取りを開始してから所定時間以内に2本のマーカー215を検知できない場合は、制御部901は、プリンタ100に装填されているインクリボンカセット200内のインクリボン210の残量がないと判断し、ステップS111に進む。
【0050】
インクリボンの残量がなく2本のマーカー215を検知できない場合は、ステップS111において、インクリボン巻取り部905は、インクリボンの巻取り(巻取りボビンの回転)を停止させる。そして、ステップS112において、制御部901は、給紙ローラ130を不図示の駆動源により
図5(c)に示す退避位置から
図5(b)に示す給紙位置まで移動させ、用紙300と当接させる。その状態で、搬送駆動部904(給紙駆動モータ)が、給紙ローラ130を回転させ、用紙300を用紙積載部106に向かって、つまり、給紙方向(矢印D方向)とは逆方向(矢印E方向)に搬送する。用紙300を所定の距離分逆搬送させることにより、用紙300は用紙積載部106に完全に戻り、一度給紙した用紙を再び用紙積載部106に収納させることができる。ステップS104において用紙300の一部が用紙積載部106に収納されている状態(給紙方向の後端が用紙積載部内にある状態)で給紙を一時停止しているため、逆搬送させることにより、一度給紙した用紙を簡単に用紙積載部に戻すことができる。また、制御部901は、サーマルヘッド110は、不図示の駆動源によりヘッド支持軸112を中心に図中反時計回りに回動させ、
図5(b)に示す中間位置から
図5(a)に示す待機位置へ移動させ、プリンタ100を待機状態にする。ステップS113では、制御部901は、表示部102を赤色で点灯させてエラーであることをユーザに通知する。更に、制御部901は、ステップS101で印刷データを受信した携帯端末に、インクリボンカセットのインクリボン残量がない旨のインクエラーを示す内容を通信部905を介して通知し、ユーザにインクリボンカセット200の交換を促す。ステップS114では、制御部は、ユーザによりインクリボンカセット200が交換されたか否かを判断し、インクリボンカセット200が交換されたと判断するとステップS102に進み、インクリボンカセット200が交換されないと判断した場合は、ステップS101で印刷データを受信した印刷データの印刷処理を中止し終了する。本実施形態のプリンタは、インクリボンカセットがプリンタに装填されているか否かを検出するためのインクカセット検出センサを有している。制御部901は、インクカセット検出センサにより、インクカセットが取り外されて装填されていないことを検出した後に、インクカセットが装填されたことを検出した場合に、インクリボンカセットが交換されたと判断する。そして、所定時間インクリボンカセットが好感されない場合に、制御部901は、インクリボンカセットが交換されないと判断する。
【0051】
2本のマーカー215を検知できた場合、ステップS110、インクにおいてリボン巻取り部905は、インクリボンの巻取り(巻取りボビンの回転)を停止し、インクリボン頭出し動作を完了する。
【0052】
そして、ステップS115において、制御部901は、不図示の駆動源により給紙ローラ130を
図5(c)に示す退避位置から
図5(b)に示す給紙位置まで移動させ、給紙ローラ130を用紙300と当接させる。その状態で、搬送駆動部904(給紙駆動モータ)は、給紙ローラ130を回転させて用紙300を給紙方向(矢印D方向)に搬送し、給紙動作を再開する。この際、搬送駆動部904(用紙搬送モータ)は、搬送ローラ160を給紙ローラ130の回転速度に合わせて回転させ、用紙300の給紙方向先端が搬送ローラ160と従動ローラ161のニップ位置まで搬送されたときに負荷なく突入できるようにする。このように、給紙動作再開後は、用紙300が搬送ローラ160と従動ローラ161にニップされた状態で給紙方向(矢印D)に搬送される。
【0053】
そして、ステップS116において、用紙300の給紙方向の後端を給紙口センサ141が検知すると、制御部901は、ステップS103で給紙口センサ141により用紙の先端を検出してから後端を検出するまでの用紙の搬送量から、用紙の長さを判定する。用紙の長さ判定は、用紙の先端から後端までの搬送量が、所定の範囲以内である場合は、既定の用紙の長さであると判断し、ステップS117に進む。用紙の長さが既定の長さではないと判定される場合は、用紙サイズが不適切であり、プリンタ100に適した用紙ではないため、用紙300を排紙して、印刷処理を終了する。また、用紙300の後端を検知した際に、搬送駆動部904(給紙駆動モータ)は、給紙ローラ130の回転を停止する。そして、制御部901は、給紙ローラ130を、給紙位置から
図6(a)に示す退避位置まで不図示の駆動源により移動させる。また、ステップS116における給紙口センサ141による用紙後端の検知結果は、用紙の長さ判定だけでなく、ステップS116以降において、用紙の位置を判断するためにも使用される。つまり、ステップS116で用紙の後端を検知してからの用紙の搬送量を制御することにより、特定の位置まで用紙を搬送させたり、特定の位置(例えば、印刷開始位置や折り返し位置)で用紙の搬送を停止させたりできるようになる。
【0054】
給紙口センサ141により用紙300の後端を検知してから更に搬送ローラ160により用紙300が
図6(a)に示す折り返し位置まで搬送されると、制御部は、用紙300を給紙方向とは逆方向(矢印E方向)に搬送させる(ステップS117)。具体的には、用紙300が給紙方向(矢印D方向)に折り返し位置まで搬送されると、搬送駆動部904(用紙搬送モータ)は、搬送ローラ160の回転を停止した後に、逆方向に回転させ、用紙300を矢印E方向に搬送させる。用紙300を逆搬送させた場合、用紙ガイド132は、
図6(a)中下方向に付勢されているため、用紙300は、用紙ガイドの上を通り、用紙積載部106の上方の搬送路に向けて搬送される。
図6(b)に示す印刷開始位置まで用紙300が逆搬送されると、搬送駆動部904(用紙搬送モータ)は、搬送ローラ160の回転を止めて搬送を停止させ、給紙動作を完了する(ステップS118)。
【0055】
ステップS114では、イエロー印刷を行う。制御部901は、図示しない駆動源によりヘッドアーム111を回動させて、サーマルヘッド110を
図6(c)に示す印刷位置に移動させ、サーマルヘッド110とプラテンローラ120で用紙300とインクリボン210を圧接する。その後、搬送駆動部904(用紙搬送モータ)が搬送ローラ160により用紙300を印刷時の搬送方向(矢印D方向)に搬送させ、用紙を搬送しながら、ヘッド駆動部907が、サーマルヘッド110を駆動してイエローインクを用紙に転写させるイエロー印刷動作を行う。制御部901は、ステップS101で受信した印刷データに基づいて印刷信号を生成し、ヘッド駆動部907は、印刷信号に基づいてサーマルヘッド110の発熱体を発熱させ、インクリボン210上のイエロー染料211を用紙300へ熱転写させ、イエロー印刷を行う。印刷動作中のインクリボン210は、インクリボン巻取り部905により巻き取りボビン207が回転駆動され、用紙300と同じ搬送速度で矢印D方向に搬送が行われる。
【0056】
イエローの印刷動作が完了すると、次にマゼンタ印刷を行うため、ステップS120に進みリターン搬送動作を行う。ステップS120では、制御部901は、まず、ヘッドアーム111を回動させてサーマルヘッド110を
図6(a)に示す中間位置に移動させ、サーマルヘッド110とプラテンローラ120の圧接を解除する。そして、搬送駆動部904(用紙搬送モータ)は、搬送ローラ160を回転させて矢印E方向に用紙300をリターン搬送し、
図6(b)に示す印刷開始位置まで搬送と搬送を停止させる。また、同時に、インク巻取り部905は、巻き取りボビン207を回転させる。そして、インクリボンセンサ150がマゼンタ染料212の先頭に設けられたマーカー215を検出すると、インク巻取り部905は巻き取りボビン207の回転を止め、マゼンタ染料212の頭出しを完了させる。
【0057】
ステップS121では、マゼンタ印刷動作を行う。マゼンタ印刷動作は前述したイエロー印刷動作と同様である。サーマルヘッド110を
図6(c)の印刷位置に移動させ、サーマルヘッド110とプラテンローラ120で用紙300とインクリボン210を圧接する。その後、搬送ローラ160により用紙300を矢印D方向に搬送しながら印刷信号に基づいてサーマルヘッド110の発熱体を発熱させ、インクリボン210上のマゼンタ染料212を用紙300へ熱転写させる。
【0058】
ステップS122では、ステップS120と同様にリターン搬送動作を行い、次のシアン印刷のためにシアン染料の頭出しも行う。まず、サーマルヘッド110を中間位置に移動させてサーマルヘッド110とプラテンローラ120の圧接を解除する。そして、搬送ローラ160により矢印E方向に用紙300をリターン搬送し、
図6(b)に示す印刷開始位置で搬送を停止する。また、同時に巻き取りボビン207を回転させる。そして、インクリボンセンサ150がシアン染料213の先頭に設けられたマーカー215を検出すると巻き取りボビン207の回転を止めシアン染料213の頭出しを行う。
【0059】
ステップS123ではシアン印刷動作を行う。シアン印刷動作は前述したイエロー印刷動作、マゼンタ印刷動作と同様である。サーマルヘッド110を
図6(c)の印刷位置に移動させ、サーマルヘッド110とプラテンローラ120で用紙300とインクリボン210を圧接する。その後、搬送ローラ160により用紙300を矢印D方向に搬送しながら印刷信号に基づいてサーマルヘッド110の発熱体が発熱させ、インクリボン210上のシアン染料213を用紙300へ熱転写させる。
【0060】
本実施例のプリンタ100は3色の印刷動作を行った後に、用紙300に印刷された画像が外的な要因により劣化することを低減するために、オーバーコート印刷を行う。
【0061】
ステップS124では、ステップS120と同様にリターン搬送動作を行う。まず、サーマルヘッド110を中間位置に移動させてサーマルヘッド110とプラテンローラ120の圧接を解除する。そして、搬送ローラ160により矢印E方向に用紙300をリターン搬送し、
図6(b)に示す印刷開始位置で搬送を停止する。また、同時に巻き取りボビン207を回転させる。そして、インクリボンセンサ150がオーバーコート層214の先頭に設けられたマーカー215を検出すると巻き取りボビン207の回転を止め、オーバーコート層214の頭出しを行う。
【0062】
ステップS125ではオーバーコート印刷動作を行う。オーバーコート印刷動作は前述したイエロー印刷動作と同様である。サーマルヘッド110を
図6(c)の印刷位置に移動させ、サーマルヘッド110とプラテンローラ120で用紙300とインクリボン210を圧接する。その後、搬送ローラ160により用紙300を矢印D方向に搬送しながら印刷信号に基づいてサーマルヘッド110の発熱体を発熱させ、インクリボン210上のオーバーコート層214を用紙300へ熱転写させる。
【0063】
オーバーコート印刷動作が終了すると、ステップS126において排紙動作を行う。搬送駆動部904(用紙搬送モータ)は、搬送ローラ160を回転駆動し、矢印D方向に用紙300を搬送させる。用紙300の搬送方向(排紙方向)の後端が搬送ローラ160と従動ローラ161とのニップから外れる
図7に示す位置まで搬送する。そして、制御部901は、図示しない駆動源によりヘッドアーム111を回動させてサーマルヘッド110を
図7に示す待機位置に移動させる。この際、用紙300は排紙口センサ142で検知された状態にある。そこで、制御部901は、表示部102を点灯させる。更に、通信部906は、S101で印刷データを受信した携帯端末に、印刷済みの用紙300を排紙口から取り除くように通知する。ユーザにより印刷済みの用紙300が取り除かれ、排紙口センサ142が用紙300が取り除かれたことを検知すると、制御部901は、表示部102を消灯し、印刷処理を終了する。
【0064】
上記のように、本実施形態のプリンタ100では、用紙積載部106に用紙300が装填されていない状態で印刷を開始した場合、ステップS103において、用紙300を給紙口センサ141で検出できずエラーとなる。そのため、手元に新しい用紙300がなかった場合においてもインクリボン210の頭出し動作をしていないために、インクを無駄にすることなく、印刷処理を中止または再開することが可能である。また、本実施形態のプリンタ100は、用紙の有無の検知を、給紙動作を開始した後に、用紙の搬送経路に設けられ、用紙の長さ判定や、用紙の搬送位置を制御するためにも用いられる給紙口センサ141により検知する。そのため、用紙積載部106に用紙300が装填されているか否かを検知するための専用のセンサを設ける必要がない。
【0065】
また、インクリボンカセット200内のインクリボン210の残量がない状態で印刷処理を開始した場合は、ステップS109においてインクリボンセンサ150でイエロー染料211の先頭にある2本のマーカー215を検出できなかったことによりエラーとなる。エラーとなった場合には、ステップS112において、用紙300を逆搬送して用紙積載部106に戻すため、用紙300を無駄にすることなく、印刷処理を中止または再開することが可能である。また、プリンタ100が自動で一度給紙された用紙300を用紙積載部106に戻すため、ユーザは、一度給紙された用紙を再利用するために、用紙をプリンタから取り出して用紙積載部106に戻すというような動作をしなくてもよい。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。