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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】検体検査装置及び検体検査方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240311BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240311BHJP
   G01N 21/82 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12Q1/6844 Z
G01N21/82
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020016033
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021122197
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 明日香
(72)【発明者】
【氏名】東野 一郎
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513869(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145702(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189753(WO,A1)
【文献】特開2007-295811(JP,A)
【文献】特開2004-283161(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159197(WO,A1)
【文献】特表2011-513040(JP,A)
【文献】特開2012-215553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00ー3/10
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/48-33/98
G01N 21/75-21/83
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に収容された試料の検査を行う検体検査装置であって、
前記反応容器内に収容された試料に含まれる核酸の増幅反応を制御する制御部と、
前記増幅反応によって生成された副産物と結合する複数のリンカーを表面に固定した検出部材と、
前記検出部材への前記副産物の結合状態を計測する計測部と、
を備え
前記副産物は、前記核酸の増幅反応によって生成されたピロリン酸であり、
前記検出部材は、一価の官能基を含む化学物質を有するリンカーが固定され、金属イオンを介して前記一価の官能基と前記ピロリン酸とを結合させる、検体検査装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記副産物が結合される表面のエバネッセント波を用いた光学システムにより、前記検出部材への前記副産物の結合状態を計測する、請求項1に記載の検体検査装置。
【請求項3】
前記検出部材は、前記反応容器における光導波路センサ表面に前記副産物を結合させ、
前記計測部は、光導波路センサによって取得された光の伝播結果に基づいて、前記検出部材への前記副産物の結合状態を計測する、請求項2に記載の検体検査装置。
【請求項4】
前記計測部は、表面プラズモン共鳴によって取得された共鳴角度に基づいて、前記検出部材への前記副産物の結合状態を計測する、請求項2に記載の検体検査装置。
【請求項5】
前記複数のリンカーは、金属イオンを介して前記副産物と結合する、請求項1~4のいずれか1つに記載の検体検査装置。
【請求項6】
前記検出部材は、前記金属イオンを介した結合により前記副産物を不溶化させる、請求項5に記載の検体検査装置。
【請求項7】
前記化学物質は、アミノ基又はチオール基を含み、前記検出部材の表面に固定されたカルボキシル基と結合することで、前記検出部材の表面に固定される、請求項1~6のいずれか1つに記載の検体検査装置。
【請求項8】
前記反応容器は、毛細管構造を有し、前記試料を前記毛細管構造に収容し、
前記制御部は、前記毛細管構造に収容された試料に含まれる核酸の増幅反応を制御する、請求項1~のいずれか1つに記載の検体検査装置。
【請求項9】
反応容器内に収容された試料の検査を行う検体検査装置によって実行される検体検査方法であって、
前記反応容器内に収容された試料に含まれる核酸の増幅反応を制御し、
前記増幅反応によって生成された副産物と結合する複数のリンカーを表面に固定した検出部材への前記副産物の結合状態を計測する、
ことを含み、
前記副産物は、前記核酸の増幅反応によって生成されたピロリン酸であり、
前記検出部材は、一価の官能基を含む化学物質を有するリンカーが固定され、金属イオンを介して前記一価の官能基と前記ピロリン酸とを結合させる、検体検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、検体検査装置及び検体検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者から採取した試料に含まれる標的物質について、抗原抗体反応を利用して分析する検体検査装置が知られている。このような検体検査装置は、例えば、標的物質(抗原)と特異的に結合する抗体が固定された磁性微粒子と、標的物質と特異的に結合する抗体が固定された光導波路センサと、磁場を発生させる磁場印加部とを有し、抗原抗体反応によって標的物質を光導波路センサ表面に結合させ、標的物質が結合した後の光導波路センサを介して受光した光の光量に基づいて測定を行う。これにより、検体検査装置は、被検者から採取した試料中の標的物質の有無を簡易に検査することができる。
【0003】
また、被検者から採取した試料に含まれる核酸の塩基配列に基づく、遺伝的な特徴を利用した遺伝子検査が知られている。このような遺伝子検査では、例えば、標的核酸に含まれる特定の塩基配列をもとにした標的核酸の増幅反応を行うことで、被検者から採取した試料中の標的核酸の有無を検査することができる。核酸の増幅反応としては、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法や、Lamp(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4683811号
【文献】特許第5165177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、試料中の核酸の検出を迅速に行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る検体検査装置は、反応容器内に収容された試料の検査を行う検体検査装置であって、制御部と、検出部材と、計測部とを備える。制御部は、前記反応容器内に収容された試料に含まれる核酸の増幅反応を制御する。検出部材は、前記増幅反応によって生成された副産物と結合する複数のリンカーが表面に固定される。計測部は、前記検出部材への前記副産物の結合状態を計測する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る検体検査装置の構成の一例を示す図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係る検査カートリッジの一例を示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係る検査カートリッジの一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る核酸の検出方法を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るピロリン酸塩の生成の一例を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る計測機能によって計測された光強度の変化をグラフとして表した一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る検体検査装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、検体検査装置及び検体検査方法の実施形態について詳細に説明する。また、本願に係る検体検査装置及び検体検査方法は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る検体検査装置は、試料を収容する反応容器(検査カートリッジ)を用いて検査を行う検体検査装置であり、試料中の核酸の検出を迅速に行うことを可能にする。具体的には、本実施形態に係る検体検査装置は、核酸の増幅反応によって生成された副産物を、金属イオンを介して反応容器内の検出部材に結合させ、副産物の結合状態に基づいて、反応容器内の副産物に関する計測を行うことで、試料中の核酸の検出を迅速に行うことを可能にする。
【0010】
ここで、第1の実施形態では、試料に含まれる核酸の検出に、抗原抗体反応を利用して標的物質を分析する検体検査装置を用いる例について説明する。上述したように、このような検体検査装置は、例えば、標的物質(抗原)と特異的に結合する抗体を用いた抗原抗体反応によって標的物質を光導波路センサ表面に結合させ、抗原が結合した後の光導波路を介して受光した光の光量に基づいて検査を行う。また、この検体検査装置は、抗原抗体反応を促進させるための温度調整機能を有する。
【0011】
そこで、第1の実施形態では、検体検査装置のこれらの機能を応用して、核酸の検出を行う。まず、検体検査装置全体について説明する。図1は、第1の実施形態に係る検体検査装置1の構成の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、検体検査装置1は、第1の磁場印加部10と、第2の磁場印加部11と、保持部を有するマウント20と、温度調整部30と、光源41と、受光素子42と、入力インターフェース60と、ディスプレイ70と、メモリ80と、処理回路90とを有する。そして、検体検査装置1は、マウント20に保持された検査カートリッジ50を対象として検査を行う。
【0013】
第1の磁場印加部10は、処理回路90による制御のもと、磁場を生成し、生成した磁場を検査カートリッジ50内のセンシングエリアに印加することで、センシングエリア内の磁性微粒子の位置を変化させる。例えば、第1の磁場印加部10は、検査カートリッジ50に磁場を印加することで、第1の磁場印加部10側の方向に磁性微粒子を移動させる。
【0014】
第2の磁場印加部11は、処理回路90による制御のもと、磁場を生成し、生成した磁場を検査カートリッジ50内のセンシングエリアに印加することで、センシングエリア内の磁性微粒子の位置を変化させる。例えば、第2の磁場印加部11は、検査カートリッジ50に磁場を印加することで、第2の磁場印加部11側の方向に磁性微粒子を移動させる。
【0015】
なお、第1の磁場印加部10及び第2の磁場印加部11は、検査カートリッジ50が抗原抗体反応を利用した標的物質(抗原)の分析を行うものである場合に、それぞれ磁場を生成するものであり、核酸の検出においては制御されず、磁場を発生させない。
【0016】
マウント20は、第1の磁場印加部10と第2の磁場印加部11との間に配置され、検査カートリッジ50を保持する。具体的には、マウント20は、検査カートリッジを固定保持するための保持部を有し、保持部に装着された検査カートリッジ50を保持する。
【0017】
温度調整部30は、検査カートリッジ50内に注入された試料の温度を調整する。例えば、温度調整部30は、図1に示すように、マウント20上に搭載される。ここで、温度調整部30は、検査カートリッジ50と温度調整部30とを接触または近接させる抵抗加熱(ジュール熱)や誘導加熱(電磁誘導)、或いは、検査カートリッジ50と温度調整部30とを非接触とする誘電加熱や赤外線加熱などによって実現することができる。
【0018】
また、温度調整部30は、温度が設定温度となるように出力を調整することもできる。例えば、温度調整部30は、温度センサを有し、温度センサによって取得される温度が設定温度となるように、出力を調整する。なお、温度調整部30は、試料の温度を直接調整しても、あるいは反応容器(検査カートリッジ50)の温度を調整することで結果として試料の温度を調整してもよい。
【0019】
例えば、温度調整部30は、核酸の増幅に適した温度に検査カートリッジ50内の試料の温度を調整することができる。なお、温度調整部30は、抗原抗体反応においても温度を調整することで、抗原抗体反応の効率をあげることができる。
【0020】
光源41は、処理回路90による制御のもと、検査カートリッジ50に向けて光を出射する。例えば、光源41は、発行ダイオード(LED)や、レーザダイオード(LD)である。受光素子42は、検査カートリッジ50からの光を受光し、光強度を測定する。受光素子111は、例えば、フォトダイオードである。
【0021】
入力インターフェース60は、検体の選択や、数値の入力、モードの切り替え等を行うための操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース60は、設定温度の入力操作を受け付ける。入力インターフェース60は、スイッチ、ボタン、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース60は、処理回路90に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路90へと出力する。
【0022】
ディスプレイ70は、検査者が入力インターフェース60を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、検体検査装置1における表示情報等を表示したりする。また、ディスプレイ70は、検体検査装置1の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。
【0023】
メモリ80は、処理回路90に接続されており、各種のデータを記憶する。具体的には、メモリ80は、検体検査装置1によって実行される各種処理に用いられるデータ及び処理結果などを記憶する。例えば、メモリ80は、核酸の増幅反応の反応条件や、核酸の増幅反応によって生成した副産物の解析結果などを記憶する。
【0024】
また、メモリ80は、処理回路90が読み出して実行することで各種機能を実現するための種々のプログラムを記憶する。例えば、メモリ80は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0025】
処理回路90は、入力インターフェース60を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、検体検査装置1の動作を制御する。例えば、処理回路90は、プロセッサによって実現される。図1に示すように、処理回路90は、制御機能91、及び、計測機能92を実行する。ここで、制御機能91は、制御部の一例である。また、計測機能92は、計測部の一例である。
【0026】
制御機能91は、入力インターフェース10bによって受け付けられた種々の要求に応じて、検体検査装置1における全体を制御する。具体的には、制御機能91は、第1の磁場印加部10及び第2の磁場印加部11による磁場の印加、温度調整部30による温度調整、光源41による光の出射、ディスプレイ70への情報の表示などを制御する。ここで、本実施形態に係る制御機能91は、反応容器(検査カートリッジ50)内に収容された試料に含まれる核酸の増幅反応を制御するが、この点については、後に詳述する。
【0027】
計測機能92は、受光素子42によって受光された光の情報に基づいて、種々の計測を行い、計測結果を示す種々の情報を生成する。具体的には、計測機能92は、副産物が結合される表面のエバネッセント波を用いた光学システムにより、反応容器内の副産物に関する計測を行う。例えば、計測機能92は、光導波路センサ53によって取得された光の伝播結果に基づいて、反応容器内の副産物に関する計測を行う。一例を挙げると、計測機能92は、光源41から出射された出射光と受光素子42に入射された入射光との強度比の値や、受光素子42に入射された入射光の強度の値など生成する。また、例えば、計測機能92は、受光素子42に入射された入射光のリアルタイムの変化を示すグラフなどを生成する。
【0028】
検査カートリッジ50は、試料と反応液とを混合した混合液が収容される。図1に示すように、検査カートリッジ50は、外筐部51と、光導波路センサ53と、透明基板54とを含む。外筐部は、上面に孔部51aと孔部51bとが設けられ、下面に光導波路センサ53と透明基板54とが配置される。また、外筐部51には、外筐部51及び光導波路センサ53によって、内部に反応空間51cが形成される。
【0029】
光導波路センサ53は、透明基板54の上面に積層され、光源41から出射され、透明基板54を介して入射された光を伝播する。光導波路センサ53によって伝播された光は、受光素子42に対して出射される。なお、図示していないが、検査カートリッジ50は、光源41から出射されて透明基板54を介して入射された光の光路を、光導波路センサ53によって光導波可能となるように偏向させるグレーティング部と、光導波路センサ53によって光導波された光の光路を、受光素子42にて受光可能となるように偏向させるグレーティング部とを有する。
【0030】
透明基板54は、光導波路センサ53の下面に配置される。透明基板54は、光源41から出射された光をグレーティング部へ透過させ、かつ、光導波路センサ53を介して伝播された後にグレーティング部によって偏向された光を受光素子42に透過させるとともに、光導波路センサ53をコアとするコア・クラット構造のクラットとして機能する。なお、反応空間51c側では、図示しない保護部及び反応液がクラットとして機能する。
【0031】
反応空間51cは、孔部51a及び孔部51bを介して、外筐部51の外部に連通される。反応空間51cは、孔部51aを介して、試料と反応液とを混合された混合液が注入される。混合液が収容されると、反応空間51c内の空気が、孔部51bを介して外部に排出される。
【0032】
反応空間51cにおいては、光導波路センサ53の表面から表面近傍に至る領域が、エバネッセント(evanescent)領域52となる。エバネッセント領域52は、近接場光が生じる領域である。近接場光は、光が光導波路センサ53と反応空間51cとの界面において全反射する際、その界面に発生する光である。近接場光は、光導波路センサ53の表面に結合している物質によって吸収、散乱される。ここで、近接場光の吸収及び散乱効率は、結合された物質の量に応じて高まる。すなわち、光導波路センサ53の表面に結合している物質が多いほど、光導波路センサ53にて伝播される光の強度が低下することとなる。したがって、光導波路センサ53の表面に結合している物質が増加するほど、計測機能92によって計測される光の強度が低下していくことなる。
【0033】
なお、抗原抗体反応を利用して標的物質を分析する場合、検査カートリッジの光導波路センサの表面には、標的物質と特異的に結合する第1の抗体が固定される。そして、磁性微粒子が固定された第2の抗体と試料とを混合することで、標的物質(抗原)と第2の抗体とを抗原抗体反応させた混合液が、検査カートリッジに注入され、標的物質と第1の抗体との抗原抗体反応が行われる。
【0034】
ここで、制御機能91は、第1の抗体と標的物質との抗原抗体反応を促進させるために、第2の磁場印加部11で磁場を印加させ、第2の磁場印加部11の方向の磁力を発生させることにより、磁性微粒子を第1の抗体側に引き寄せる。その結果、標的物質と抗原抗体反応した第2の抗体に固定された磁性微粒子が、光導波路センサ53の表面側に移動することとなり、標的物質と第1の抗体との抗原抗体反応を促進させることができる。
【0035】
さらに、制御機能91は、抗原抗体反応しなかった抗体に固定された磁性微粒子を第1の抗体付近から引き離すため、第1の磁場印加部10で磁場を印加させ、第1の磁場印加部10の方向の磁力を発生させる。これにより、第1の抗体と、標的物質を介して第2の抗体が結合している磁性微粒子のみが光導波路センサ53近傍のエバネッセント領域52に残る。
【0036】
そして、計測機能92は、受光素子42によって受光された光量の変化に基づいて、抗原抗体反応の有無、すなわち、標的物質の有無を測定する。光導波路センサ53上の第1の抗体付近のエバネッセント光は、第1の抗体と、標的物質を介して第2の抗体が結合している磁性微粒子がエバネッセント領域52に残っていると、光の吸収もしくは散乱効率が高まるので、受光素子42による受光光量が低下する。検体検査装置1は、この特性を用いて抗原抗体反応の有無を測定する。
【0037】
本実施形態に係る検体検査装置1は、このような光学システムを用いて、核酸の検出を行う。具体的には、検体検査装置1は、検査カートリッジ50内に収容された試料に対して核酸の増幅反応を行い、核酸の増幅に伴って生成された副産物の不溶性塩を、光導波路センサ53の表面に結合させ、光導波路センサ53を伝播される光の強度の変化を計測することで、核酸の検出を行う。ここで、例えば、試料内に増幅反応の標的核酸が含まれる場合には、標的核酸の増幅に伴って副産物が生成されるため、光導波路センサ53の表面に副産物が結合される。すなわち、核酸の有無が、光の強度の低下として現れることとなる。
【0038】
ここで、核酸を検出するための検査カートリッジ50は、抗原抗体反応による標的物質を検出するための検査カートリッジ50と同様の反応空間51cを有する場合でもよいが、反応空間51cを、キャピラリー(毛細管)またはそれに準じた微細な管構造とすることで、反応液の容量を少なくしてコストを低減させることができる。
【0039】
図2A及び図2Bは、第1の実施形態に係る検査カートリッジ50の一例を示す図である。図2A及び図2Bにおいては、検査カートリッジ50の内部に含まれる反応空間51cと、孔部51aと、孔部51bとを示す。また、図2Aにおいては、光導波路センサ53の表面51dを示すために、管構造で形成した反応空間51cを不図示としている。例えば、本実施形態に係る検査カートリッジ50は、図2Aに示すように、2つの光導波路センサ53の表面51dが内部に露出している。すなわち、検査カートリッジ50は、2か所で計測することができるように形成される。そして、検査カートリッジ50は、図2Bに示すように、光導波路センサ53の各表面51dを底面とした管構造で形成された反応空間51cが2つ配置される。但し、反応空間51cの数については必ずしも2つに限定されるものではなく、ひとつまたは3つ以上であっても構わない。
【0040】
ここで、管構造で形成された反応空間51cは、表面51dを完全に覆うように形成される。すなわち、反応空間51cの管構造は、光導波路センサ53を伝播される光が全反射されるように形成される。そして、各反応空間51cには、孔部51a及び孔部51bがそれぞれ設けられる。各反応空間51cは、被検者から採取した試料と、核酸の増幅反応のための反応液とを混合した混合液が注入される。混合液は、表面51dを完全に満たす程度の液量で毛細管現象などにより、反応空間51c内に注入される。
【0041】
混合液が反応空間51cに注入されると、温度調整部30による温度調整により、核酸の増幅反応が実行される。ここで、試料中に標的核酸が含まれる場合、核酸が増幅され、それに伴い副産物が増加して、光導波路センサ53の表面に副産物が結合することとなる。以下、図3を用いて、核酸の検出方法について説明する。図3は、第1の実施形態に係る核酸の検出方法を説明するための図である。なお図3においては、反応空間51c内の表面51d付近及び光導波路センサ53を伝播される光L1について示す。
【0042】
図3の1段目(最上段)の図に示すように、本実施形態に係る核酸の検出方法では、光導波路センサ53の表面51dにリンカー101が設けられる。すなわち、表面51dは、増幅反応によって生成された副産物と結合する複数のリンカー101が固定される。ここで、リンカー101は、一価の官能基を有する化学物質(例えば、リン酸基)であり、予め光導波路センサ53の表面51dに固定される。このようなリンカー101が表面51dに固定された反応空間51c内に、予め被験者から採取された試料と反応液(反応プレミックス)とを混合した混合液が注入される。なお、光導波路センサ53の表面51dは、検出部材の一例である。
【0043】
試料は、被験者から採取した唾液や、鼻腔ぬぐい液などである。ここで、試料は、前処理により核酸が露出した状態となっており、核酸増幅の対象となる鋳型ポリヌクレオチドが液中に遊離した状態となっている。この前処理は、検査対象に応じて、既知の種々の手法を用いることができる。検査対象は、感染症に関する種々のウイルスや細菌などであり、例えば、RSウイルスや、ヒトメタニューモウイルスなどである。すなわち、被験者から採取した唾液や、鼻腔ぬぐい液などが前処理されることにより、これら検査対象の核酸が鋳型ポリヌクレオチドとして調整される。なお、鋳型ポリヌクレオチドは、DNA(deoxyribonucleic acid)及びRNA(ribonucleic acid)を含む。
【0044】
このように前処理された試料が、核酸増幅の反応プレミックスと混合される。ここで、反応プレミックスは、鋳型ポリヌクレオチドの相補鎖合成反応を触媒するポリメラーゼ、鋳型ポリヌクレオチドにおける特定の塩基配列をもとに設計されたプライマー、基質となるヌクレオチド、緩衝液などを含み、核酸の増幅方法、検査対象の種別に応じて調整される。本実施形態では、等温での核酸増幅が可能なLamp法による核酸増幅が好ましい。なお、Lamp法の場合、反応プレミックスは、鎖置換型ポリメラーゼ、検査対象の塩基配列をもとに設計された4種のプライマー、基質、緩衝液を含む。
【0045】
上述したように試料と反応プレミックスとが混合されると、混合液が管構造の反応空間51cに注入され、温度調整部30による温度制御によって核酸の増幅反応が行われる。例えば、Lamp法の場合、温度調整部30は、制御機能91による制御のもと、反応空間51c内の混合液を一定温度(例えば、60~65℃付近の一定温度)に調整する。これにより、試料中に検査対象の核酸が含まれていた場合、混合液中で核酸が増幅されることとなる。
【0046】
本実施形態に係る検体検査装置1では、この核酸増幅の副産物をターゲットにして、核酸の有無を判定する。具体的には、光導波路センサ53の表面51dに固定されたリンカー101が、増幅反応によって生成された副産物を、金属イオンを介して検査カートリッジ50内に結合させる。より具体的には、リンカー101は、金属イオンを介した結合により副産物を不溶化させ、検査カートリッジ50内に結合させる。核酸の増幅反応では、基質のヌクレオチドが核酸鎖の末端に取り込まれる際にピロリン酸を発生させる。そこで、リンカー101は、金属イオンを介して一価の官能基とピロリン酸とを結合させることで、不溶化したピロリン酸を表面51dに結合させる。
【0047】
例えば、試料に検査対象の標的核酸が含まれている場合(被験者が検査対象に感染している場合)、図3の上から2段目の図に示すように、核酸の増幅反応によってピロリン酸(副産物)103が生成される。リンカー101は、図3の上から3段目の図に示すように、金属イオン102を介してピロリン酸103と結合して、不溶化されたピロリン酸塩をエバネッセント領域52に生成させる。そして、図3の上から4段目に示すように、核酸の増幅に伴いピロリン酸が継続して生成され続けるため、エバネッセント領域52に生成されるピロリン酸塩は、順次増加することとなる。
【0048】
光導波路センサ53を伝播される光L1の強度は、エバネッセント領域52に生成されるピロリン酸塩の量が増加するに従い、徐々に減衰する。計測機能92は、表面51dへの副産物(ピロリン酸)の結合状態を計測する。計測機能92は、受光素子42によって受光される光L1の強度に基づいて、核酸の有無、すなわち、検査対象の感染の有無を計測する。
【0049】
ここで、ピロリン酸と結合する金属イオン102は、多価陽イオンであり、例えば、マグネシウム(II)イオン、マンガン(II)イオン、ニッケル(II)、鉄(II)イオン、亜鉛(II)イオンなどである。核酸の増幅反応の場合、ポリメラーゼの活性化剤としてマグネシウムイオンが反応液中に十分量含まれている。したがって、金属イオンを新たに加えることなく、ピロリン酸塩をエバネッセント領域52に生成させることができる。
【0050】
なお、マグネシウム(II)イオンとは別に、さらに金属イオンを加えることで、ピロリン酸とマグネシウム(II)イオンとの結合を低減させ、ポリメラーゼ活性の低下を抑止するようにしてもよい。かかる場合には、ポリメラーゼ活性を阻害する金属イオンを使用しない、あるいは、使用したとしても阻害の影響が小さい範囲で使用する。
【0051】
以下、図4を用いて、ピロリン酸塩の生成の一例を説明する。図4は、第1の実施形態に係るピロリン酸塩の生成の一例を説明するための図である。ここで、図4では、金属イオンとしてマグネシウム(II)イオンが用いられる場合について示す。また、図4では、リンカー101としてエタノールアミンリン酸を用いる場合について示す。また、図4では、光導波路センサ53の表面51d付近を示す。
【0052】
例えば、光導波路センサ53の表面51dには、図4に示すように、カルボキシル基が固定され、リンカー101としてのエタノールアミンリン酸が、カルボキシル基とアミノ基を介して結合する。ここで、光導波路センサ53の表面51dのカルボキシル基は、例えば、光導波路センサ53の表面51dに対する紫外線の照射により形成される。かかる場合には、光導波路センサ53が有機系の材料によって生成され、表面51dに対する紫外線照射によって、表面51dの化学結合が切断されるとともに、紫外線で発生したオゾンから分離した活性酸素がその切断された表面51dの分子に結合する。これにより、表面51dに、親水性の高い官能基(例えば、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基)が固定される。
【0053】
そして、エタノールアミンリン酸を含むコーティング剤によって光導波路センサ53の表面51dをコーティングすることで、エタノールアミンリン酸が、光導波路センサ53の表面51dに固定される。
【0054】
このようにエタノールアミンリン酸が固定された反応空間51cに対して試料と反応プレミックスの混合液が注入されて、温度調整されると、図4に示すように、核酸の増幅反応の副産物であるピロリン酸が生成される。ピロリン酸は、マグネシウム(II)イオンを介してエタノールアミンリン酸と結合することで不溶化して、光導波路センサ53の表面51d付近(エバネッセント領域52付近)に結合される。核酸の増幅反応が進むと、反応液中のピロリン酸が表面51dのエタノールアミンリン酸‐マグネシウム‐ピロリン酸塩に金属イオンを介して次々と結合し、光導波路センサ53の表面51dにリンカー101を核とした不溶塩の結合が生じる。その結果、エバネッセント光の激しい散乱が生じるようになり、光導波路センサ53内を伝播する光の強い減衰が生じる。なお、図4では、リンカー101としてアミノ基を有するエタノールアミンリン酸を用いる例を示したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、リンカー101としてチオール基を含む化学物質を用いる場合でもよい。
【0055】
計測機能92は、受光素子42によって受光された光の情報に基づいて、光源41から出射された出射光の強度と、受光素子42に入射された入射光の強度との強度比の値や、入射光の値などを計測する。また、計測機能92は、入射光の強度のリアルタイムの変化を計測する。図5は、第1の実施形態に係る計測機能92によって計測された光強度の変化をグラフとして表した一例を示す図である。ここで、図5においては、横軸に時間、縦軸に光強度を示す。
【0056】
リアルタイムの変化を計測、判定する場合、検査カートリッジ50がマウント20に載置され、反応を開始するための操作が実行されると、制御機能91は、温度調整部30による温度調整を実行するとともに、光源41から光を出射させるように制御する。計測機能92は、核酸の増幅反応中に受光素子42によって受光された光強度を継続的に取得して、図5に示す光強度の経時変化を計算する。計測機能92は、光強度を取得するごとに得られた値から核酸の増幅をリアルタイムに計算し、制御機能91は、核酸の量がリアルタイムで変化しているかどうかを判定し、増幅結果を表示する。一方、ディスプレイ70に計測機能92による計算結果のグラフを表示する場合、核酸増幅のリアルタイムの変化を観察することができる。
【0057】
ここで、検査カートリッジ50は、図2A、2Bに示すように、2つの反応空間51cを有する。そこで、一方の反応空間51cで被験者から採取した試料の核酸検出を行い、他方の反応空間51cでコントロールをとるようにしてもよい。かかる場合には、例えば、検体検査装置1は、ウイルスや細菌などの検査対象から抽出した核酸、或いは、化学合成した対応するポリヌクレオチドを鋳型とした増幅反応をコントロールとして実行する。そして、検体検査装置1は、各反応空間51cを対象にした光導波路センサ53による計測結果を比較表示させる。
【0058】
次に、第1の実施形態に係る検体検査装置1による処理の手順について、図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係る検体検査装置1による処理の手順を示すフローチャートである。ここで、図6におけるステップS101及びS102は、検査者によって実行されるステップである。また、ステップS103及びS105は、処理回路90が、制御機能91に対応するプログラムをメモリ80から読みだして実行することで実現されるステップである。また、S104は、処理回路90が、計測機能92に対応するプログラムをメモリ80から読みだして実行することで実現されるステップである。
【0059】
図6に示すように、検査者が前処理済みの試料を反応液(反応プレミックス)と混合させて(ステップS101)、混合液を反応空間51cに収納すると(ステップS102)、処理回路90は、温度調整部30を制御することで、混合液の温度制御を行い、試料に含まれる核酸を増幅させる(ステップS103)。
【0060】
そして、処理回路90は、光源41を制御して光を出射させ、光導波路センサ53による計測を開始する(ステップS104)。その後、処理回路90は、計測結果をディスプレイ70に表示させる。
【0061】
上述したように、第1の実施形態によれば、制御機能91は、検査カートリッジ50に収容された試料に含まれる核酸の増幅反応を制御する。光導波路センサ53の表面51dは、増幅反応によって生成された副産物と結合する複数のリンカーが表面に固定される。計測機能92は、表面51dへの副産物の結合状態を計測する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置1は、核酸の増幅反応によって生成される副産物を反応空間51c内の特定の部分に結合させることで、検出を早めることができ、試料中の核酸の検出を迅速に行うことを可能にする。
【0062】
また、第1の実施形態によれば、計測機能92は、副産物が結合される表面のエバネッセント波を用いた光学システムにより、表面51dへの副産物の結合状態を計測する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置1は、抗原抗体反応を利用した分析を行う検体検査装置で実現することができ、免疫的な検査と、遺伝的な検査と使い分けることを可能にする。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、表面51dは、検査カートリッジ50における光導波路センサ53の表面51dに副産物を結合させる。計測機能92は、光導波路センサ53によって取得された光の伝播結果に基づいて、表面51dへの副産物の結合状態を計測する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置1は、抗原抗体反応を利用した分析を行う検体検査装置において、核酸の有無を容易に検出することを可能にする。
【0064】
また、第1の実施形態によれば、複数のリンカー101は、金属イオンを介して副産物と結合する。また、表面51dは、金属イオンを介した結合により副産物を不溶化させる。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置1は、核酸を容易に検出することを可能にする。
【0065】
また、第1の実施形態によれば、副産物は、核酸の増幅反応によって生成されたピロリン酸であり、表面51dは、一価の官能基を含む化学物質を有するリンカー101が固定され、金属イオンを介して一価の官能基とピロリン酸とを結合させる。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置1は、ピロリン酸の結合を容易に行うことを可能にする。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、化学物質は、アミノ基又はチオール基を含み、表面51dに固定されたカルボキシル基と結合することで、表面51dに固定される。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置1は、リンカー101の形成を容易に行うことを可能にする。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、検査カートリッジ50は、毛細管構造を有し、試料を毛細管構造に収容する。制御機能91は、毛細管構造に収容された試料に含まれる核酸の増幅反応を制御する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置1は、反応液の容量を少なくしてコストを低減させるとともに、副産物の結合を早めることができ、核酸の検出をより迅速に行うことを可能にする。
【0068】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0069】
上述した実施形態では、エバネッセント波を用いた光学システムとして、抗原抗体反応を利用した分析を行う検体検査装置を用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、表面プラズモン共鳴を利用した装置によって実現する場合でもよい。
【0070】
かかる場合には、その他の実施形態に係る検体検査装置は、プリズムを有するバイオチップの表面にリンカー101を固定した反応空間において核酸の増幅反応を行う。そして、検体検査装置は、バイオチップ下部のプリズムに入射角を変えながら光を照射してプラズモン曲線を取得する。さらに、検体検査装置は、反射光の強度が最も小さくなる共鳴角度に基づいて、核酸の増幅反応における副産物の有無を検出する。共鳴角度はバイオチップ表面の金属及び表面に固定化された物質に固有であるため、表面に副産物が結合するとプラズモン曲線が変化し、共鳴角度も変化する。その他の実施形態に係る検体検査装置は、この共鳴角度の変化に基づいて、標的核酸の有無を検出する。
【0071】
また、上述した実施形態では、光導波路センサ53を用いて核酸を検出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、光透過型セルを用いて核酸を検出する場合でもよい。かかる場合には、例えば、検体検査装置は、光透過型セル内にリンカー101が設けられ、光透過型セル内で核酸を増幅させることで副産物を結合させる。そして、検体検査装置は、光透過型セルに対して光を照射して、透過した光の強度を計測し、計測した光の強度に基づいて、核酸を検出する。
【0072】
また、上述した実施形態では、副産物の結合状態を光の強度の変化に基づいて判別する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、画像によって判別する場合でもよい。ピロリン酸マグネシウムなどの不溶塩は、視覚的な濁度で存在の有無を判別することができる。そこで、画像を用いて判別する検体検査装置では、リンカー101が固定された表面を撮影するカメラを有し、核酸の増幅反応中の表面の画像を撮影する。そして、かかる検体検査装置は、画像解析によって、リンカー101が固定された表面における濁度の変化を検出する。ここで、検体検査装置は、核酸の増幅反応に伴い、濁度が上昇した場合に、不溶塩が生成されている、すなわち、標的核酸が存在すると判別する。
【0073】
また、上述した実施形態では、光導波路センサ53の表面51dにリンカー101を固定させ、副産物を結合させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、反応液中に加えた粒子にリンカー101を結合させ、副産物を結合させる場合でもよい。かかる場合に、例えば、ラテックス、磁性粒子、金コロイドなどの粒子にリンカー101を結合させ、反応プレミックスに添加する。試料中に標的核酸が含まれ、増幅反応によって副産物が生成されると、生成された副産物が金属イオンを介して粒子状のリンカー101に不溶化しながら結合することで、巨大結晶を作り、粒子同士が結合する。ここで、結合した粒子は、光導波路センサ53によって検出してもよく、或いは、光透過型セルによって検出してもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、処理回路90が有する各処理機能について説明した。ここで、例えば、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ80に記憶される。処理回路90は、各プログラムをメモリ80から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路90は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0075】
なお、図1では、単一の処理回路90によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路90は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路90が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0076】
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態で説明した検体検査方法は、あらかじめ用意された検体検査プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この検体検査プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このスキャン制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0078】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、試料中の核酸の検出を迅速に行うことができる。
【0079】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 検体検査装置
91 制御機能
92 計測機能
101 リンカー
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6