(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】パウチ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/24 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
B65D33/24
(21)【出願番号】P 2020018832
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019022328
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】登尾 英浩
(72)【発明者】
【氏名】高原 誠治
(72)【発明者】
【氏名】居敷 俊生
(72)【発明者】
【氏名】檀 有馬
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴博
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-505640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が外面及び内面を有し、且つ互いの前記内面同士が対向するように配置された一対の外装シートと、
前記一対の外装シートの一部ずつが接合されたシール部と、
前記一対の外装シート及び前記シール部によって規定された収容部と、
各々が前記一対の外装シートの前記内面に各別に固定され、且つ互いの接着及び剥離が可能であることにより前記収容部の封緘及び開封に用いられる、一対の接着シートと、
前記各接着シートと前記外装シートとが固定された固定部と、
前記各接着シートと前記各外装シートとの間に設けられた空隙部と、
を備え
、
前記接着シートは、第一方向を長手方向とし、第二方向を幅方向とする帯状であり、
前記固定部は、前記第二方向に離間して配置された一対の外側部を含み、
前記空隙部は、前記接着シートのうち前記一対の外側部の間に位置する非固定部と前記外装シートとの間に設けられている、パウチ容器。
【請求項2】
前記空隙部は、前記第一方向に連続して繋がった形状である、請求項1に記載のパウチ容器。
【請求項3】
前記外側部は、前記第一方向に連続して繋がった形状である、請求項
1または2に記載のパウチ容器。
【請求項4】
前記接着シートは、基材層および接着層を有し、
前記接着層は、前記接着シートの全面に設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のパウチ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パウチ容器は、飲料、食品及び医薬品等の容器として広く用いられている。特許文献1には、従来のパウチ容器の一例が開示されている。同文献に開示されたパウチ容器は、互いに対面するように配置された一対の外装シートと、一対の外装シートの一部ずつが接合されたシール部と、を備え、一対の外装シートおよびシール部によって規定された収容部に内容物が収容される。パウチ容器を開封した後に、内容物の一部を収容部に残存させた状態で、パウチ容器を再び封緘することが求められる場合がある。同文献に開示されたパウチ容器においては、一対の外装シートの内面に一対の接着シートが設けられている。パウチ容器を開封した後に、一対の接着シート同士を接着することにより、パウチ容器を封緘することができる。パウチ容器を再び開封する際には、一対の接着シート同士を剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パウチ容器の収容物を少しずつ使用する場合、開封と封緘とを交互に繰り返す。すなわち、一対の接着シートの接着と剥離とが繰り返される。この繰り返しにより、一対の接着シートの剥離強度が不当に低下してしまうと、内容物が意図せずパウチ容器外に漏れる等の不具合が懸念される。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、一対の接着シートの剥離強度の低下を抑制することが可能なパウチ容器を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるパウチ容器は、各々が外面及び内面を有し、且つ互いの前記内面同士が対向するように配置された一対の外装シートと、前記一対の外装シートの一部ずつが接合されたシール部と、前記一対の外装シート及び前記シール部によって規定された収容部と、各々が前記一対の外装シートの前記内面に各別に固定され、且つ互いの接着及び剥離が可能であることにより前記収容部の封緘及び開封に用いられる、一対の接着シートと、前記各接着シートと前記外装シートとが固定された固定部と、前記各接着シートと前記各外装シートとの間に設けられた空隙部と、を備える。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記接着シートは、第一方向を長手方向とし、第二方向を幅方向とする帯状であり、前記固定部は、前記第二方向に離間して配置された一対の外側部を含み、前記空隙部は、前記一対の外側部の間に位置する中間部を含む。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記外側部は、前記第一方向に連続して繋がった形状である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記接着シートは、前記外装シートよりも可撓性に優れている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記一対の接着シートは、互いの接着力が同じである。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記一対の接着シートは、互いの接着力が異なる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、剥離強度の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器の接着シートを示す平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器を示す要部拡大断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器の開封を示す平面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器の開封を示す断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器の開封を示す要部拡大断面図である。
【
図10】比較例のパウチ容器の開封を示す要部拡大断面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器と比較例のパウチ容器の剥離強度を示すグラフである。
【
図12】(a),(b)は、接着シートの変形例を示す平面図である。
【
図13】(a),(b),(c)は、接着シートの変形例を示す平面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係るパウチ容器を示す断面図である。
【
図15】本発明に係るパウチ容器の製造方法の一例の一工程を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
以下の説明において、上下方向の上側を「天」側、下側を「底」側と呼ぶ場合がある。また、上下方向、前後方向の語句は、構成を説明する便宜であり、パウチ容器用包材やパウチ容器包装体の姿勢が、常にその方向に拘束されるものではない。前後方向に位置する部材に「前面」または「背面」の語句を付するものがあるが、これは、説明の便宜であり、前後方向におけるそれぞれの位置が拘束されるものではない。
【0017】
<第1実施形態>
図1~
図9は、本発明の第1実施形態に係るパウチ容器を示している。本実施形態のパウチ容器A1は、一対の外装シート1、底ガゼットシート15、シール部2、収容部3、一対の接着シート4、固定部5及び空隙部6を備えている。パウチ容器A1の用途や種類は、特に限定されず、飲料、食品及び医薬品等の内容物8の容器として広く用いられる。また、内容物8は、液体、ゲル流体、粉粒体、固体等の、様々な形態の物質が採用される。以降の説明においては、内容物8が液体である場合を例に説明する。
【0018】
図1は、パウチ容器A1を示す斜視図である。
図2は、パウチ容器A1を示す平面図である。
図3は、パウチ容器A1の接着シートを示す平面図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5は、パウチ容器A1を示す要部拡大断面図である。
図6は、パウチ容器A1の開封を示す平面図である。
図7は、
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
図8は、パウチ容器A1の開封を示す断面図である。
図9は、パウチ容器A1の開封を示す要部拡大断面図である。
【0019】
図1、
図2及び
図4に示すように、一対の外装シート1は、y方向(第三方向)に並んで配置されている。外装シート1は、外面11及び内面12を有する。外面11及び内面12は、y方向において互いに反対側を向く面である。一対の外装シート1は、内面12同士が対向するように配置されている。外装シート1の形状は特に限定されず、矩形状、多角形状等の様々な形状が採用される。図示された例においては、外装シート1は、y方向視においてx方向(第一方向)またはz方向(第二方向)に沿う四辺を有する矩形状である。
【0020】
一対の外装シート1は、互いに別体のシート材料から形成されてもよいし、互いに繋がったシート材料から形成されてもよい。本実施形態においては、一対の外装シート1は、1つのシート材料に折り曲げ加工や切断加工等を施すことによって形成されており、一対の外装シート1の底端同士が、底ガゼットシート15を介して繋がっている。
【0021】
底ガゼットシート15は、一対の外装シート1の底端同士を繋いでおり、パウチ容器A1の底部を構成している。図示された例においては、底ガゼットシート15は、折返し部151を有する。折返し部151は、一対の外装シート1の間において、底ガゼットシート15が山折りされた部位である。なお、
図4に示すように、底ガゼットシート15は、内容物8の自重によって平らな形状となりうるものである。
【0022】
一対の外装シート1及び底ガゼットシート15は、通常、樹脂フィルムから構成される。該樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性等、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、後述のシール部2は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シートにはヒートシール性も要求される。シートとしては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シートが好適であり、高いガスバリア性や遮光性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にバリア層を設けることが好適である。なお、ベースフィルム層そのものにバリア性を付与してもよい。この場合は、バリア層をベースフィルム層として用い、バリア層とシーラント層とを有する複層シートとなる。
【0023】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、共押出しラミネーション、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーション等により行うことができる。
【0024】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)等から構成される一層または二層以上の延伸または未延伸フィルムが例示できる。
【0025】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン-オレフィン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層または二層以上の延伸または未延伸フィルムが例示できる。本実施形態においては、外装シート1の内面12は、シーラント層によって構成されている。
【0026】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物等を蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0027】
シール部2は、一対の外装シート1及び底ガゼットシート15から適宜選択された部分同士が接合されたものである。シール部2を形成する手法は限定されず、収容部3を密閉状態とし得る手法であればよく、本実施形態においてはヒートシールが用いられている。図示された例においては、シール部2は、一対のサイドシール部21及び天側シール部22を含む。
【0028】
一対のサイドシール部21は、一対の外装シート1のx方向両端部同士が接合された部分と、一対の外装シート1のx方向両端部の底側部分と底ガゼットシート15のx方向両端部同士が接合された部分と、を含む。天側シール部22は、一対の外装シート1の天端部同士が接合された部分である。
【0029】
図示された例においては、一対の外装シート1には、一対の切り欠き部19が形成されている。一対の切り欠き部19は、一対の外装シート1(サイドシール部21)の天側シール部22寄りの部位に位置しており、x方向内方に凹んでいる。切り欠き部19の形状は特に限定されず、図示された例においては、三角形状である。一対の切り欠き部19のz方向における位置は、略同じであるが、これに限定されない。一対の切り欠き部19は、後述のパウチ容器A1の開封において、一対の外装シート1を切断するために用いられる。
【0030】
収容部3は、内容物8を収容するための空間であり、パウチ容器A1が開封前の状態においては、一対の外装シート1及びシール部2によって規定されており、本実施形態においては、収容部3は、さらに底ガゼットシート15によって規定されている。収容部3は、内容物8の漏洩防止や変質防止の観点から、密閉されることが好ましい。
【0031】
一対の接着シート4は、一度開封したパウチ容器A1を封緘したり、再度開封したりするための開閉を実現するためのものである。一対の接着シート4は、一対の外装シート1の内面12に各別に固定されている。接着シート4の形状や大きさ、材質等は特に限定されない。図示された例においては、接着シート4は、x方向を長手方向とする帯状であり、一対のサイドシール部21及び一対の外装シート1のx方向両端に到達している。また、図示された例においては、接着シート4は、z方向において天側シール部22寄りに配置されている。また、後述のパウチ容器A1の開封状態においては、収容部3は、互いに接着された一対の接着シート4によっても規定される。
【0032】
接着シート4としては、
図5に示すように、たとえば基材層41及び接着層42を有するものが挙げられる。基材層41を構成するフィルムは特に限定されず、たとえば上述した樹脂フィルムのベースフィルム層に用いられるフィルムが挙げられる。接着層42は、基材層41に積層されており、接着シート4に接着力を付与する層である。接着層42の材質は特に限定されず、たとえば通常公知の粘着剤や接着剤が塗工されて形成された層でもよいが、これら粘着剤や接着剤を用いずに、それ自体が自己粘着性を備える樹脂層であることが特に好ましい。自己粘着性を備える樹脂層を備える接着シート4としては、例えば、フタムラ化学株式会社製自己粘着性OPPフィルム「FSA(登録商標)」、パナック株式会社製自己粘着性フィルム「ゲルポリ(登録商標)」シリーズ、アキレス株式会社製自己粘着性PVCフィルム「ハイタック(登録商標)」等が挙げられる。好ましくは、接着シート4は、外装シート1よりも可撓性に優れている。接着シート4の可撓性が外装シート1の可撓性よりも優れた構成としては、たとえば、外装シート1のベースフィルム層と接着シート4の基材層41とが、同程度の硬さの材質からなる場合であって接着シート4の方が1よりも薄い場合や、接着シート4と外装シート1とが同程度の厚さであって接着シート4の材質の方が外装シート1の材質よりも軟質である場合、等が挙げられる。また、後述の固定部5をヒートシールによって形成する場合、基材層41にヒートシール可能な樹脂フィルムを用いるか、或いは基材層41の接着層42とは反対側の面にシーラント層(図示略)が設けられていることが好ましい。
【0033】
図2~
図4に示すように、固定部5は、接着シート4が外装シート1に固定された部位である。固定部5の形状、大きさ、位置および形成手法は特に限定されない。本実施形態においては、固定部5は、一対の外側部51を含む。一対の外側部51は、接着シート4のz方向両端縁に沿って互いに離間している。図示された例においては、外側部51は、x方向に長く延びており、x方向に連続して繋がった形状である。図示された例においては、接着シート4のシーラント層と、外装シート1の内面12を構成するシーラント層とが互いにヒートシールされることによって一対の外側部51を含む固定部5が形成されている。なお、図示した例とは異なり、一対の外側部51の少なくともいずれかが、接着シート4のz方向両端縁からz方向内方に離間した構成であってもよい。また、図示された例においては、接着シート4のx方向両端において固定部5とシール部2とが重なっている。また、接着シート4のうち一対の外側部51に挟まれた部分は、外装シート1に対して固定されていない非固定部45とされている。なお、接着シート4の接着層42のうち固定部5と重なる部分(固定部5に対応する領域)は、たとえば固定部5を形成するためのヒートシールによって接着力が低下するか、ほとんど消失する場合がある。ただし、固定部5の形成手法や接着シート4の接着層42の材質等によっては、接着シート4の接着層42うち固定部5と重なる部分(固定部5に対応する領域)の接着力が、非固定部45と重なる部分(非固定部45に対応する領域)と同程度の接着力を維持していてもよい。すなわち、接着層42の全面にわたって、同程度の接着力を有していてもよい。また、接着シート4の固定部5と重なる部分(固定部5に対応する領域)に、接着層42が設けられていない構成であってもよい。すなわち、接着シート4のうち非固定部45と重なる部分(非固定部45に対応する領域)に、接着層42が部分的に設けられた構成であってもよい。
【0034】
空隙部6は、
図1~
図3及び
図5に示すように、接着シート4と外装シート1との間に設けられた隙間である。すなわち、空隙部6は、y方向において外装シート1の内面12と接着シート4の非固定部45との間の隙間である。図示された例においては、空隙部6は、z方向両端が一対の外側部51によって規定されており、x方向両端が一対のサイドシール部21によって規定されている。空隙部6を挟んで位置する外装シート1の内面12と接着シート4の非固定部45は、互いに接触及び離間が可能である。
【0035】
次に、パウチ容器A1の開封について、
図6~
図10を参照しつつ、以下に説明する。なお、
図10は、比較例としてのパウチ容器Xを示している。
【0036】
まず、パウチ容器A1の開封に際しては、
図6及び
図7に示すように、一対の切り欠き部19のいずれかを起点として、一対の外装シート1をx方向に切断する。これにより、天側シール部22が除去され、一対の外装シート1に開口部190が形成される。開口部190は、内容物8をパウチ容器A1外に注出するための部位である。
【0037】
ついで、一対の接着シート4を剥離することにより、
図8に示すように、収容部3を開放する。これにより、内容物8を注出することができる。なお、
図7は、未だ一対の接着シート4が互いに接着していることにより、収容部3が閉じられている状態を示しているが、開口部190を起点とした一対の外装シート1の切断の直後に、一対の接着シート4が互いに離れている構成であってもよい。
【0038】
パウチ容器A1に収容された内容物8の量が、複数回の使用量に相当する場合、内容物8の一部を注出した後に、残存した内容物8を保存するためにパウチ容器A1を再び封緘する必要がある。すなわち、内容物8の一部を使用する行為を複数回行うと、パウチ容器A1の開封と封緘とが繰り返される。この開封と封緘との繰り返しの度に、一対の接着シート4の剥離と接着とが繰り返される。
【0039】
図11は、パウチ容器A1の開封と封緘とを繰り返した場合の、一対の接着シート4の剥離強度を示すグラフである。横軸は、剥離回数であり、縦軸は、剥離強度である。ここで、剥離強度は、一対の外装シート1に接合された一対の接着シート4の接着層42の面同士を合わせた状態(封緘状態)から剥離したとき(開封したとき)にかかる最大荷重を示すものであり、オートグラフを用いて、JIS Z 0238に準じて測定される。また、パウチ容器Xは、比較例であり、接着シート4の全域が外装シート1にヒートシール等によって固定された例である。すなわち、接着シート4の全域に固定部5が形成されており、空隙部6が設けられていない例である。
【0040】
初回の開封(剥離回数=1)においては、パウチ容器A1及びパウチ容器Xの剥離強度に有意な差異は見られない。封緘後の2回目の開封(剥離回数=2)において、パウチ容器A1及びパウチ容器Xの剥離強度がともに明らかに低下する。しかし、パウチ容器Xの剥離強度が1.3N程度に低下しているのに対し、パウチ容器A1の剥離強度は3.4N程度で留まっている。また、引き続いて剥離回数を増やすと、パウチ容器Xの剥離強度は、概ね1.0N~1.9Nの範囲を推移するのに対し、パウチ容器A1の剥離強度は、概ね2.1N~3.5Nの範囲を推移しており、パウチ容器Xの剥離強度を明らかに上回っている。なお、発明者らの知見によれば、開封および封緘を繰り返す使用形態の場合には、剥離強度が2.0N以上を維持されていることが好ましい。
【0041】
なお、一対の接着シート4は、互いの接着力が同じであってもよいし、異なっていてもよい。一対の接着シート4の接着力が互いに同じである構成とは、互いの接着力が厳密に同じ数値であることまでを規定するものではない。たとえば上述した接着シート4を構成する自己粘着性フィルムとして、同銘柄および同仕様の自己粘着性フィルムを選択することにより、一対の接着シート4の接着力を同じとすることができる。
図1のパウチ容器A1の剥離強度は、一対の接着シート4の接着力が同じである場合の一例である。
【0042】
一方、一対の接着シート4の接着力が互いに異なる構成としては、たとえば、互いの銘柄あるいは仕様が異なる自己粘着性フィルムを一対の接着シート4として用いる構成が挙げられる。その一例としては、フタムラ化学株式会社製自己粘着性OPPフィルム「FSA(登録商標)300M」(相対的に接着力が強いフィルム)と、「FSA(登録商標)100MM」(相対的に接着力が弱いフィルム)とを、組み合わせて用いる構成が挙げられる。
【0043】
一対の接着シート4として、互いの接着力が異なる構成を採用することにより、
図11の剥離強度を適切に調整することができる。すなわち、比較的接着力が強い自己粘着性フィルムのみによって一対の接着シート4を用いると剥離強度が強すぎ、比較的接着力が弱い自己粘着性フィルムのみによって一対の接着シート4を用いると剥離強度が弱すぎる場合がある。このような場合に、一方の接着シート4を比較的接着力が強い自己粘着性フィルムによって構成し、他方の接着シート4を前記自己粘着性フィルムよりも接着力が弱い自己粘着性フィルムによって構成することにより、剥離強度を適切な大きさに調整することができる。
【0044】
次に、パウチ容器A1の作用について説明する。
【0045】
本実施形態によれば、複数回の開封及び封緘を繰り返した場合に、一対の接着シート4の剥離強度の低下を抑制することができる。
図9に示すように、パウチ容器A1の開封において一対の接着シート4を剥離しようとすると、一対の外装シート1がまず引き離され、これに伴って一対の接着シート4が引き離されようとする。この際に、空隙部6が設けられていることにより、一対の接着シート4の非固定部45が一対の外装シート1から浮くような形態となる。これにより、一対の接着シート4の非固定部45同士が接着された状態がより長く維持されやすい。これは、一対の接着シート4の非固定部45が外装シート1から浮くような形態となることにより、一対の外装シート1に加えられた開封のための力が、一対の接着シート4の接着部分に直接的に作用しにくくなるためであると考えられる。一方、
図10に示す比較例のパウチ容器Xにおいては、接着シート4の全域が外装シート1に固定されている。このため、一対の外装シート1を引き離す力が、一対の接着シート4により直接的に作用することとなり、一対の接着シート4が速やかに剥離されてしまう。このような理由によって、パウチ容器Xの剥離強度と比べてパウチ容器A1の剥離強度の低下が抑制されると考えられる。
【0046】
また、接着シート4の可撓性が外装シート1の可撓性よりも優れている構成であれば、非固定部45が外装シート1に対してより大きく顕著に離間しやすくなる。したがって、パウチ容器A1の剥離強度の低下抑制に好ましい。
【0047】
固定部5の一対の外側部51は、各々がx方向に長く延びており、互いに連続した形状である。これにより、切り欠き部19からの切断によって開口部190が形成された後であっても、一対の接着シート4が接着されていれば、収容部3を密閉状態とすることが可能である。これは、内容物8の漏洩防止や変質防止に好ましい。
【0048】
図12~
図14は、本発明の変形例及び他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0049】
<第1実施形態 変形例>
図12(a),(b)および
図13(a),(b),(c)は、接着シート4および固定部5の変形例を示している。
【0050】
図12(a)に示す例においては、一対の外側部51の各々が、複数の小片部511から構成されている。複数の小片部511は、x方向に並んで配置されている。隣り合う小片部511は、互いに離間している。このような変形例によっても、パウチ容器A1の剥離強度の低下を抑制することができる。また、本変形例から理解されるように、外側部51は、x方向に連続した形状のものに限定されず、複数の部分によって構成されていてもよい。ただし、本変形例においては、z方向視において、一方の外側部51の隣り合う小片部511の間の隙間は、他方の小片部511のいずれかと重なっている。これにより、内容物8の漏洩を抑制することが可能である。外側部51の具体的な構成は、たとえば、内容物8の性状(液体、ゲル流体、粉粒体、固体等)や揮発の有無等によって適宜適切に設定されればよい。
【0051】
図12(b)に示す例においては、固定部5は、一対の外側部51に加えて中間部52を含む。中間部52は、z方向において一対の外側部51の間に位置しており、一対の外側部51から離間している。中間部52の形状や大きさ及び配置は特に限定されない。図示された例においては、中間部52は略矩形状である。また、3つの中間部52がx方向に互いに離間して配置されている。このような変形例によっても、パウチ容器A1の剥離強度の低下を抑制することができる。空隙部6が設けられていることにより接着シート4が非固定部45を有する構成であれば、剥離強度の低下抑制が期待できる。
【0052】
図13(a)に示す例においては、固定部5は、一対の外側部51に加えて中間部52を含む。中間部52は、z方向において一対の外側部51の間に位置しており、一対の外側部51から離間している。中間部52の形状や大きさ及び配置は特に限定されない。図示された例においては、中間部52は、外側部51と同様にx方向に長く延びており、x方向に連続して繋がった形状である。このような変形例によっても、パウチ容器A1の剥離強度の低下を抑制することができる。また、固定部5が本例の中間部52を含むことにより、一対の接着シート4の剥離強度が、意図せずに過度に強くなりすぎることを抑制することができる。
【0053】
図13(b)に示す例においては、固定部5は、一対の外側部51に加えて中間部52を含む。中間部52は、z方向において一対の外側部51の間に位置しており、一方の外側部51から離間している。中間部52の形状や大きさ及び配置は特に限定されない。図示された例においては、中間部52は、x方向を長手方向とし、z方向を振幅方向とする波線形状である。このような変形例によっても、パウチ容器A1の剥離強度の低下を抑制することができる。また、固定部5が本例の中間部52を含むことにより、一対の接着シート4の剥離強度が、意図せずに過度に強くなりすぎることを抑制することができる。また、本例から理解されるように、中間部52の形状は何ら限定されない。
【0054】
図13(c)に示す例においては、z方向において図中上側(
図7における開口部190側)の外側部51に、膨出部512が設けられている。膨出部512は、外側部51の一部であってz方向に膨らんだ部位である。図示された例においては、膨出部512は、外側部51のx方向の略中央に設けられており、底側に向けて膨らんでいる。このような変形例によっても、パウチ容器A1の剥離強度の低下を抑制することができる。また、膨出部512が設けられていることにより、一対の接着シート4を剥離させて開封する作業を、より容易に行うことができる。
【0055】
<第2実施形態>
図14は、本発明の第2実施形態に係るパウチ容器を示している。本実施形態のパウチ容器A2は、一対の外装シート1の底端同士が折返し部13を介して直接繋がっており、パウチ容器A1における底ガゼットシート15を備えていない。
【0056】
このような実施形態によっても、剥離強度の低下を抑制することができる。また、本実施形態から理解されるように、一対の外装シート1の具体的構成は何ら限定されない。たとえば、パウチ容器A1,A2と異なり、別体の2枚のシート材料からなる一対の外装シート1がシール部2によって接合されることにより、パウチ容器を構成していてもよい。この場合、シール部2は、一対のサイドシール部21及び天側シール部22に加えて、底側シール部を有する構成とすればよい。すなわち、本発明に係るパウチ容器の形状としては特に限定されず、所謂スタンディングパウチ、サイドガゼットパウチ、平パウチ、三方シールパウチ等、様々な形状のパウチが用いられる。
【0057】
図15は、本発明に係るパウチ容器の製造方法の一例の一工程を示している。図示された例においては、パウチ容器A1、A2を製造するためのシート材料10’を形成している。
【0058】
たとえば、一対の外装シート1の材料となるシート材料10を用意する。シート材料10は、たとえばロール状に巻き取られた状態で供給される。また、一対の接着シート4となる一対のシート材料40を用意する。シート材料40は、たとえばロール状に巻き取られた状態で供給される。シート材料10を順次繰り出しながら、一対のシート材料40を繰り出し、シート材料10と一対のシート材料40とを重ね合わせる。次いで、たとえば従来公知のヒートシールユニットU1によって、シート材料10と一対のシート材料40とをヒートシールにより接合し、固定部50を形成する。そして、シート材料10と一対のシート材料40とが固定部50によって固定されたシート材料10’を、ふたたびロール状に巻き取る。
【0059】
この後は、ロール状に巻き取られたシート材料10’を、適宜、保管、運搬等することを経て、パウチ容器A1,A2を製造するための次工程にシート材料10’が供給される。当該次工程としては、切断工程や折り畳み工程、ヒートシール工程等が含まれる。このような製造方法により、パウチ容器A1,A2が得られる。
【0060】
本発明においては、パウチ容器A1,A2の開封と封緘とを交互に繰り返すことを可能とするために、一対の接着シート4が用いられており、たとえば嵌合によって開封と封緘とを可能とするチャックシートは用いられていない。チャックシートは、外装シート1や接着シート4と比べて、顕著に厚い。このため、
図15に示したシート材料10にチャックシートを接合すると、その後にシート材料10’として巻き取ることは非常に困難であり、そのまま連続してパウチ容器を完成させることが強いられる。本発明によれば、接着シート4は、外装シート1と同等程度の厚さとすることが可能であり、シート材料10’の状態で一旦巻き取ることが可能である。これは、製造形態の多様化に好ましい。なお、シート材料10’を巻き取ることなく、次工程に供給してもよい。
【0061】
本発明に係るパウチ容器は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るパウチ容器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0062】
A1,A2:パウチ容器
1 :外装シート
2 :シール部
3 :収容部
4 :接着シート
5,50:固定部
6 :空隙部
8 :内容物
11 :外面
12 :内面
15 :底ガゼットシート
19 :切り欠き部
21 :サイドシール部
22 :天側シール部
41 :基材層
42 :接着層
45 :非固定部
51 :外側部
52 :中間部
151 :折返し部
190 :開口部
511 :小片部
512 :膨出部
10,40:シート材料
U1 :ヒートシールユニット