(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】搬送装置及び物品販売機
(51)【国際特許分類】
G07F 11/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G07F11/00 A
(21)【出願番号】P 2020020486
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】722012006
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 敬章
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-007150(JP,A)
【文献】特表2003-533804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 11/00 - 11/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を受け取る受け面を有する搬送部材と、
前記搬送部材
の下側に接続される可動子と、
前記可動子を前記搬送部材の搬送方向に沿った一軸方向に移動させる駆動部とを備
え、
前記搬送部材は、一対のプーリに巻き掛けられた無端状の搬送ベルトであり、
前記搬送ベルトの外周面のうち、前記受け面の下側に位置する面に、前記搬送ベルトの外側に突出する被嵌合部が接続され、
前記可動子は、前記被嵌合部に嵌合する嵌合部を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記可動子を設定範囲で往復移動させることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記搬送ベルトの下側に配置される、請求項1または請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記駆動部は、
前記可動子に係合するスパイラル軸と、
前記スパイラル軸の軸方向と同軸又は平行な駆動軸を有し、前記スパイラル軸を正逆転駆動するモータとを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の搬送装置を備えた物品販売機であって、
物品を収納する棚が上下方向に複数並べて配置された物品収納部と、
前記物品収納部に対して上下方向に移動可能に配備され、前記物品収納部から搬出された物品を受けて物品取出口に搬送するバケットを備え、
前記バケットにおける物品を受ける受け面を、前記搬送部材の受け面にしていることを特徴とする物品販売機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置とこれを備える物品販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送する搬送装置としては、無端状の搬送ベルトを駆動プーリと従動プーリに巻き掛け、駆動プーリをモータなどの駆動装置で駆動するベルトコンベヤ装置が一般に知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトコンベヤ装置のような従来の搬送装置は、駆動プーリを回転駆動するためのモータなどの駆動装置や搬送ベルトのテンションを確保するための機構が、搬送ベルトの幅方向(搬送方向に直交する方向)に沿った側方に配備されている。このため、駆動装置やその他の機構を含めたベルトコンベヤ装置全体の横幅が、搬送ベルト単体の横幅より大きくなり、搬送装置を設置する際に、搬送ベルトの幅に対して横幅方向に大きな設置スペースを要することが問題になっている。
【0005】
一方、物品販売機において、バケットを上下動させて、キャビネット内に設けられる多段の棚からバケットの受け面上に物品を受け取り、バケットを移動させて、受け取った物品を物品取出口に搬送するものが一般に知られている。このような物品販売機は、複数の物品をまとめ買いする場合に、複数の物品が順次バケットの受け面上に載せられることになり、受け面上で物品が重なってしまう問題や、物品取出口に物品が集まって対向することで、物品取出口から物品を取り出すことが困難になってしまう問題が生じる。
【0006】
この問題に対しては、バケットの受け面を、ベルトコンベヤ装置の搬送ベルトにして、物品を受け取る毎に、物品の位置を移動させることが考えられる。しかしながら、前述したように、ベルトコンベヤ装置は、搬送ベルトの幅に対して横幅方向に大きな設置スペースを要するので、これをバケットに利用するとバケットが大型になり、物品販売機内の物品収納スペースが圧迫されてしまう問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、搬送装置を設置する際の省スペース化を可能にすること、上下動するバケットを備える物品販売機において、まとめ買いを可能にする機構を設ける際に、バケットの大型化を避け、物品販売機内に十分な物品収納スペースを確保できるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
物品を受け取る受け面を有する搬送部材と、前記搬送部材における下面側に接続される可動子と、前記可動子を前記搬送部材の搬送方向に沿った一軸方向に移動させる駆動部とを備えることを特徴とする搬送装置。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を備える搬送装置は、搬送部材の下面側に駆動部を設けることで、搬送方向に直交する搬送部材の幅方向の外側に設置のための空きスペースを要さない。このため、搬送装置を設置する際の省スペース化が可能になる。
【0010】
また、上下動するバケットを備える物品販売機のバケット受け面に、このような搬送装置における搬送部材の受け面を採用することで、物品販売機において、まとめ買いを可能にする機構を設ける際に、バケットの大型化を避け、物品販売機内に十分な物品収納スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】搬送装置の一例を示した説明図(横向き斜視図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、搬送装置1の基本構成を概念的に示している。搬送装置1は、物品Gを受け取る受け面10Aを有する搬送部材10と、搬送部材10における下面10B側に接続される可動子12と、可動子12を搬送部材10の搬送方向Aに沿った一軸方向に移動させる駆動部13とを備える。図示の例では、可動子12は接続部11を介して、搬送部材10の下面に接続されている。
【0014】
ここでの搬送部材10の下面10Bは、下向きの面である。搬送部材10の下面10Bの下側は、通常デッドスペースになるが、そのスペースを利用して可動子12と駆動部13を配備している。ここでの駆動部13は、搬送方向Aに沿って可動子12を直線的に移動できるものであればよく、各種のリニアアクチュエータを採用することができる。
【0015】
このような搬送装置1によると、搬送部材10の幅方向(搬送方向Aに直交する平面方向)には、駆動部13などの機構部の出っ張りがないので、搬送部材1の幅方向には、搬送部材1単体の幅が入るスペースがあれば、搬送装置1を設置することができる。これにより、搬送装置1を設置する際の省スペース化が可能になる。また、搬送部材10の下面側のデッドスペースを利用して駆動部13などを配備するので、搬送装置1を各種の機器内に配備する際に、機器内の占有スペースを必要最小限に抑えることができる。これにより、搬送装置1が内部に設置される機器のコンパクト化が可能になる。
【0016】
図2~
図5には、前述した搬送装置1のより具体的な構成例を示している。図示の搬送装置1は、搬送部材10としての搬送ベルト20と、駆動部13となる、スパイラル軸30、モータ31、歯車列32を備えている。ここでの可動子12は、スパイラル軸30に係合しており、スパイラル軸30の回転によって、搬送方向Aと同方向に延設されているスパイラル軸30に沿って直線的に移動する。
【0017】
駆動部13となるモータ31は、スパイラル軸30の軸方向と同軸又は平行な駆動軸を有し、スパイラル軸30を正逆転駆動する。これによって、スパイラル軸に係合された可動子12は、設定範囲で往復移動する。歯車列32は、モータ31の駆動軸の回転数に対して、スパイラル軸30の回転数を過減速するために設けられる。スパイラル軸30の回転数をモータ31の駆動軸の回転数と同じにする場合は、モータ31の駆動軸をスパイラル軸30と同軸上にして両者を直結しても良い。
【0018】
搬送部材10としての搬送ベルト20は、一対のプーリ21に巻き掛けられた無端状のベルトである。一対のプーリ21は、いずれも従動されるもので、必要に応じた支持部材を介して枠体24に支持されている。
【0019】
搬送ベルト20の下面10Bには、前述した接続部11に当たる被嵌合部22が直接接続されており、その被係合部22に可動子12の嵌合部12Aが嵌合することで、搬送ベルト20の下面10Bと可動子12が接続されている。被嵌合部22と嵌合部12Aは、簡易に嵌合して接続できるようになっており、予め枠体24に支持されている搬送ベルト20に対して、その下側にスパイラル軸30などを設置した後、可動子12と搬送ベルト20の下面10Bとの接続が簡易にできるようになっている。
【0020】
スパイラル軸30は、両端部が軸支部23に回転自在に支持されており、搬送ベルト20の下側で枠体24に支持されている。また、スパイラル軸30を回転駆動するモータ31も、搬送ベルト20の下側で枠体24に支持されている。
【0021】
このような搬送装置1は、
図5に示すように、モータ31を正逆回転駆動することで、スパイラル軸30に沿って可動子12を往復移動させることができ、この可動子12と下面10B側で接続されている搬送ベルト20の受け面10Aを、搬送方向Aに沿って往復移動させることができる。これによると、受け面10Aで物品Gを受け取った後に、受け面10Aを移動させることで、受け取った物品Gの位置を変えることができ、順次受け面10A上に複数の物品Gを受け取る際に、物品Gの受け取り位置を重なりが無いように分散させることができる。
【0022】
このような搬送装置1の組み付けは、前述したように、枠体24に設置された搬送ベルト20の下面10B側に、駆動部13の各部品を取り付け、簡易に下面10Bと可動子12を接続(嵌合)することができるが、この際、搬送ベルト20の駆動がプーリ21の駆動でなされないことで、搬送ベルト20にテンションを掛ける必要がない。このため、搬送ベルト20の設置等を更に簡易に行うことができる。
【0023】
このような搬送装置1は、各種の用途に用いることができるが、設置スペース効率が良いという利点を生かして、特に、機器の内部に設置される搬送手段として、好適に利用できる。
【0024】
搬送装置1が用いられる機器として、物品販売機を例に説明する。
図6は、物品販売機100を外観的且つ概略的に示しており、
図7は、その内部構造を示している。
【0025】
物品販売機100は、物品を収納する本体ユニット100Aに操作ユニット100Bが併設されている。本体ユニット100Aは、前面開口を覆うドア102を備えた箱状のキャビネット101を有しており、キャビネット101の内部には、物品を収納する物品収納部104が設けられている。
【0026】
操作ユニット100Bは、図示省略しているが、物品の選択スイッチと、紙幣、硬貨等の受容や釣銭の払い出し、あるいは電子マネー等による料金の決済を行う課金部とを備えている。操作ユニット100Bは、課金部において料金の決済が行われ、選択スイッチにより物品の選択操作がされることで、販売指令を本体ユニット100Aに送信する。
【0027】
本体ユニット100Aのドア102の前面上部は、透明板103によって内部が視認可能な構成になっている。ドア102の下部には、物品取出口106が備えられ、物品取出口106には、取出口シャッタ105が設けられている。
【0028】
キャビネット101の内部の物品収納部104は、上下方向に間隔をおき、前部を開口した複数(例えば6個)の棚104A~104Fが配置されている。個々の棚104A~104Fには、左右方向に並べて複数個の搬出機構107が備えられている。搬出機構107は、例えばスパイラル状の金属棒を回転させる機構やベルトコンベアによって構成されている。棚104A~104Fには、搬出機構107毎に前後方向に並べて物品が収納されており、物品は、任意の搬出機構107の作動によって、1つずつ棚104A~104Fの前方に押し出されるようにして搬出される。
【0029】
棚104A~104Fの前端部とドア102の前面である透明板103との間には、バケット40が移動するスペース(バケット移動空間130)が設けられている。
【0030】
バケット40は、棚104A~104Fの左右方向と略同一の長さで構成され、バケット移動空間130を上下方向に移動可能に配置されている。バケット40は、キャビネット101の内部に設けられた図示しないアクチュエータによって上下方向に移動し、バケット40の受け面40Aの後端部が各棚104A~104Fの底板と略同一の高さとなる位置に移動可能であるとともに、最下方に移動した際にバケット40の天板42が最下段の棚104Fの底面よりも下方に位置するように移動可能となっている。なお、最下方に移動したバケット40の位置が待機・取出位置であり、この待機・取出位置において、バケット40の前面に物品取出口106が位置し、取出口シャッタ105を開けることで、バケット40内に手を入れることが可能となっている。
【0031】
本体ユニット100Aの内部には、物品収納部104の下方に機械室110が備えられている。機械室110には、凝縮器111、ファン112、圧縮機113などが備えられ、機械室110の前部及び後部は、外部と連通している。また、機械室110と最下段の棚104Fとの間には、下部ダクト120が備えられ、下部ダクト120には、蒸発器125、ファン124などが備えられている。下部ダクト120の後部は、物品収納部104の後方を上下方向に延びる後部ダクト121と連通している。更に物品収納部104の上方には、前後方向に延びる上部ダクト122が備えられている。
【0032】
上部ダクト122の前方の開口部は、バケット移動空間130の上部に向けて開口している。更に、上部ダクト122の前方の開口部の上部縁部には、前方に向かって下方に例えば45度の角度で傾斜する導風板123が設けられている。一方、下部ダクト120の前端部には、バックパネル41が設けられている。バックパネル41は、上下方向に延びて、下部ダクト120とその前方のバケット移動空間130とを区画する。
【0033】
このような物品販売機100において、バケット40の受け面40Aを、前述した搬送装置1の受け面10Aとする。この際、バケット40には、
図8に示すように、搬送部材10としての搬送ベルト20が傾斜した状態で配備される。そして、搬送ベルト20の上面側が受け面40A(10A)となり、下面10Bの下側に駆動部13となるモータ31などの各部品が配備される。この際に、駆動部13の各部品の配置は、斜めに配置されている搬送ベルト20下方の三角状のスペースを効率的に利用して、スペース効率よく配備することができる。
【0034】
バネット40は、図示の昇降帯43を駆動する図示省略のアクチュエータによって、前述したように、物品収納部104の棚104A~104F間を上下動する。
【0035】
このような物品販売機100にて、一回の料金決済で複数の物品を購入するまとめ買いを行う場合、バケット40は、複数の物品を受け取るように上下動することになるが、この際、搬送ベルト20の受け面10A(40A)を移動させることで、バケット40が受け取った物品の重なりを防ぐことができる。
【0036】
また、バケット40を最下方に移動させて、複数の物品を受け取った受け面10A(40A)を物品取出口106の前に位置する際には、受け面10A(40A)上の物品を分散した状態で載置させ、取出口シャッタ105を開けて物品取出口106から物品を取り出す際に、簡易に取り出せるようにすることができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1:搬送装置,
10:搬送部材,10A:受け面,10B:下面,
11:接続部,12:可動子,12A:嵌合部,13:駆動部,
20:搬送ベルト,21:プーリ,22:被嵌合部,
23:軸支部,24:枠体,
30:スパイラル軸,31:モータ,32:歯車列,
40:バケット,41:バックパネル,42:天板,43:昇降帯,
100:物品販売機,100A:本体ユニット,100B:操作ユニット,
101:キャビネット,102:ドア,
103:透明板,104:物品収納部,104A~104F:棚,
105:取出口シャッタ,106:物品取出口,107:搬出機構,
110:機械室,111:凝縮器,112:ファン,113:圧縮機,
120:下部ダクト,121:後部ダクト,122:上部ダクト,
123:導風板,124:ファン,125:蒸発器
130:バケット移動空間,A:搬送方向,G:物品