(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】湯水混合装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/00 20060101AFI20240311BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20240311BHJP
F24D 17/00 20220101ALI20240311BHJP
【FI】
F16K11/00 B
E03C1/044
F24D17/00 L
(21)【出願番号】P 2020031606
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 高賀夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 真樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成吾
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-021635(JP,A)
【文献】特開2014-149126(JP,A)
【文献】特開2018-003950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00
E03C 1/044
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水及び冷水を取り入れ、温水及び冷水の混合比を変化させて、水栓に供給する水の温度を調整する混合弁と、
前記混合弁から前記水栓に送られる水の温度を検出する温度センサと、
前記水栓からの吐水温度を設定する温度設定部と、
前記温度センサにより検出される水温が前記温度設定部により設定された温度となるように前記混合弁における前記混合比をフィードバック制御する制御部と
を備える湯水混合装置において、
前記混合弁は、該混合弁からの吐水温度の変動に対して吐水温度が適正温度となるように、前記制御部による制御とは独立して吐水温度を感知して前記混合弁における前記混合比を変化させる感温作動部を備え、
前記混合弁から前記水栓に水を送る
単一の管路中に設けられ、前記混合弁から前記水栓に送られる水を所定量貯めて流出させるチャンバーを備える
湯水混合装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記温度センサは、前記混合弁より下流、前記チャンバーより上流の水の温度を検出するようにされている
湯水混合装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御部は、感温作動部の応答性に対して応答性を良くするように、フィードバック制御における制御周期を設定しており、
前記制御部は、感温作動部が温度変化に応答して作動する期間では、フィードバック制御を休止する
湯水混合装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記混合弁に取り入れられる温水及び冷水は、前記水栓とは別の他の水栓と共用されている
湯水混合装置。
【請求項5】
温水及び冷水を取り入れ、温水及び冷水の混合比を変化させて、水栓に供給する水の温度を調整する混合弁と、
前記混合弁から前記水栓に送られる水の温度を検出する温度センサと、
前記水栓からの吐水温度を設定する温度設定部と、
前記温度センサにより検出される水温が前記温度設定部により設定された温度となるように前記混合弁における前記混合比をフィードバック制御する制御部と
を備える湯水混合装置において、
前記混合弁は、該混合弁からの吐水温度の変動に対して吐水温度が適正温度となるように、前記制御部による制御とは独立して吐水温度を感知して前記混合弁における前記混合比を変化させる感温作動部を備え、
前記混合弁から前記水栓に水を送る管路中に設けられ、前記混合弁から前記水栓に送られる水を所定量貯めて流出させるチャンバーを備え、
前記制御部は、感温作動部の応答性に対して応答性を良くするように、フィードバック制御における制御周期を設定しており、
前記制御部は、感温作動部が温度変化に応答して作動する期間では、フィードバック制御を休止する
湯水混合装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記温度センサは、前記混合弁より下流、前記チャンバーより上流の水の温度を検出するようにされている
湯水混合装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記混合弁に取り入れられる温水及び冷水は、前記水栓とは別の他の水栓と共用されている
湯水混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合弁により温度調整された水をカラン、シャワー等の水栓に供給する湯水混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、混合弁からの吐水温度が設定された温度となるように、混合弁に取り入れる温水及び冷水の混合比をフィードバック制御する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
混合弁に取り入れる水圧の急激な変動のような外乱があると、それに伴う混合弁の吐水温度の急激な変化にフィードバック制御が追随できず、混合弁からの吐水温度が設定温度に対して変動することがある。
【0005】
本発明の課題は、混合弁の吐水温度を設定温度となるようにフィードバック制御して水栓に供給する湯水混合装置において、混合弁から水栓に供給される水の温度変化を緩やかにすることにより、混合弁に取り入れる水圧の急激な変動のような外乱に関わらず、混合弁から水栓に供給される水の温度が設定温度に対して変動するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、温水及び冷水を取り入れ、温水及び冷水の混合比を変化させて、水栓に供給する水の温度を調整する混合弁と、前記混合弁から前記水栓に送られる水の温度を検出する温度センサと、前記水栓からの吐水温度を設定する温度設定部と、前記温度センサにより検出される水温が前記温度設定部により設定された温度となるように前記混合弁における前記混合比をフィードバック制御する制御部とを備える湯水混合装置において、前記混合弁は、該混合弁からの吐水温度の変動に対して吐水温度が適正温度となるように、前記制御部による制御とは独立して吐水温度を感知して前記混合弁における前記混合比を変化させる感温作動部を備え、前記混合弁から前記水栓に水を送る管路中に設けられ、前記混合弁から前記水栓に送られる水を所定量貯めて流出させるチャンバーを備える。
【0007】
第1発明において、水栓は、カラン、各種シャワー等を含む。また、温度設定部は、温度設定を手動で行うもの、自動で行うものどちらでもよい。更に、フィードバック制御としては、PID制御を採用してもよい。また、感温作動部は、混合弁における温水及び冷水の混合比を、形状記憶合金、バイメタル、サーモワックス等により変化させる構成とすることができる。また、チャンバーは、水を貯めるのみでなく攪拌するものとしてもよい。
【0008】
第1発明によれば、混合弁からの水は直接水栓へは送られず、チャンバーに流入し、それ以前からチャンバー内に貯められている水と混合されて水栓に供給される。そのため、外乱により混合弁からの吐水温度が急変したとき、水栓に供給される水温の変化は、混合弁から吐出される水温の変化に対して緩やかにされる。従って、混合弁から水栓に供給される水の温度が設定温度に対して変動するのを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記温度センサは、前記混合弁より下流、前記チャンバーより上流の水の温度を検出するようにされている。
【0010】
第2発明によれば、温度センサは、チャンバーで温度変化を緩やかにされる前で、混合弁により調整されたままの水の温度を検出する。そのため、混合弁のフィードバック制御を応答良く行うことができる。
【0011】
本発明の第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記制御部は、感温作動部の応答性に対して応答性を良くするように、フィードバック制御における制御周期を設定しており、前記制御部は、感温作動部が温度変化に応答して作動する期間では、フィードバック制御を休止する。
【0012】
第3発明によれば、設定温度に対する混合弁の吐水温度の偏差が大きくなったとき以外は、感温作動部により混合弁の温度調整が行われる。そのため、フィードバック制御が行われる期間は少なくされ、フィードバック制御によるエネルギ消費を少なくすることができる。
【0013】
本発明の第4発明は、上記第1~第3発明のいずれかにおいて、混合弁に取り入れられる温水及び冷水は、前記水栓とは別の他の水栓と共用されている。
【0014】
第4発明によれば、混合弁に取り入れる温水及び冷水は、他の水栓にも供給されている。そのため、温水及び冷水の供給容量が複数の水栓に同時に供給するには充分でない場合、混合弁に温水及び冷水が取り入れられている状態で、同時に他の水栓からも吐水されると、混合弁に取り入れる温水及び冷水の圧力が低下する。その結果、温水及び冷水の混合比が急変して混合弁による温度調整が間に合わず、混合弁の吐水温度は設定温度に対して変動する。しかし、このときチャンバーにより水栓へ供給される水の温度変化が緩やかされる。従って、混合弁から水栓に供給される水の温度が設定温度に対して変動するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のシステム構成図である。
【
図2】上記実施形態における混合弁の拡大断面図である。
【
図3】上記実施形態における制御部による制御内容を示すフローチャートである。
【
図4】混合弁の吐水温度の変化とフィードバック制御及び感温作動部による温度調整作動の状態を示すタイムチャートである。
【
図5】上記混合弁に取り入れる温水及び冷水の水圧変化、及び水栓からの吐水温度の変化を示すグラフである。
【
図6】
図5と同様のグラフであり、チャンバーを備えない場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<一実施形態の構成>
図1は、本発明の湯水混合装置の一実施形態をシステム構成図により示す。
【0017】
混合弁11は、常温の水を加熱して得られる温水を管路16から取り入れ、常温の冷水を管路17から取り入れて、それら温水及び冷水の混合比を変化させて下流へ送る水の温度を調整する。管路16、17には、台所、洗面所等に設けられた他の水栓23にも共通の温水及び冷水を送るように管路24、25が接続されている。混合弁11は、公知のものであり、温水及び冷水が混合されて温度調整された後の水は管路18へ吐出される。管路18の水は、チャンバー15を介して切替弁13に送られる。チャンバー15は、所定量の水を貯める容器である。チャンバー15は、所定量の水を常時貯めているため、混合弁11から水を受け入れると、それまで貯められていた水と混合して切替弁13に送る。そのため、混合弁11からの水の温度が急激に変化したとき、チャンバー15では、水温の変化を緩やかにして切替弁13に送る。切替弁13は、チャンバー15からの水を管路19に設けられた浴室のカラン21に流すか、管路20に設けられた浴室のシャワー22に流すかを切り替える。
【0018】
混合弁11及び切替弁13は、駆動部12、14を備え、駆動部12、14は、共にモータを含んで構成されている。混合弁11は、駆動部12によって温水及び冷水の混合比を変化される。また、切替弁13は、駆動部14によってチャンバー15からの水をカラン21かシャワー22かどちらかに流すように切り換えられる。駆動部14は、ソレノイドによって構成することもできる。
【0019】
駆動部12及び14は、制御部30の出力を受けて作動を制御される。制御部30は、コンピュータ(図示略)を含んで構成されている。制御部30には、操作部40及び温度センサ50の信号が入力されている。操作部40は、温度設定操作部41、吐水形態設定操作部42及び吐水量設定操作部43を含む。温度設定操作部41は、カラン21又はシャワー22からの吐水温度を使用者が任意に設定する際に操作されるものである。温度設定操作部41により設定温度に関する信号が制御部30に入力される。なお、温度設定操作部41は、外気温等の入力情報に基づいて自動的に設定されるように構成することもできる。また、吐水形態設定操作部42は、カラン21から吐水するか、シャワー22から吐水するかを使用者が任意に設定する際に操作されるものである。吐水形態設定操作部42によりカラン21又はシャワー22のどちらからの吐水が選択されたかの信号が制御部30に入力される。更に、吐水量設定操作部43は、カラン21又はシャワー22からの吐水量を使用者が任意に設定する際に操作されるものである。吐水量設定操作部43により吐水量に関する信号が制御部30に入力される。一方、温度センサ50は、混合弁11からチャンバー15に送られる水の温度を検出して、その水温に関する信号を制御部30に入力する。
【0020】
<混合弁の構成>
図2は、混合弁11の具体的構成例を示す。概ね円柱形状のケース11a内に弁体11bがケース11aの軸方向(
図2の左右方向)に摺動自在に設けられている。弁体11bは、ケース11a内を2つの部屋11l、11mに分割するように配置されており、一方の部屋11lには、接続口11iが形成されている。また、他方の部屋11mには、接続口11j及び11kが形成されている。接続口11iは管路16に連通され、接続口11jは管路17に連通されている。接続口11kは、管路18に連通されている。弁体11bには、弁体11bを貫通して開口11cが形成されており、開口11cにより2つの部屋11l、11mは連通されている。
【0021】
一方の部屋11lには、摺動体11hがケース11a内でケース11aの軸方向(
図2の左右方向)に摺動自在に設けられている。ここでは、摺動体11hがケース11a内で軸周りに回転しないように、摺動体11hの外周面とケース11aの内周面との間に、軸周りの回転を規制する係合構造が設けられている。摺動体11hは、ねじ軸11gと共に送りねじ機構を構成しており、ねじ軸11gの回転に応じて摺動体11hは摺動される。ねじ軸11gは、駆動軸11fを介して駆動部12のモータにより回転されるように構成されている。従って、摺動体11hは、駆動部12の駆動によりケース11a内を摺動し、一方の部屋11lの容積を拡縮する。
【0022】
一方の部屋11lには、摺動体11hに対して弁体11bを他方の部屋11m側へ押圧付勢する圧縮ばね11dが設けられている。また、他方の部屋11mには、ケース11a内壁に対して弁体11bを一方の部屋11l側へ押圧付勢する感温ばね11eが設けられている。そのため、弁体11bは、両ばね11d、11eの押圧付勢力がバランスする位置に保持される。
図2のように弁体11bが接続口11i、11jの両方を閉じていない状態では、管路16からの温水と管路17からの冷水が共に部屋11l、11mを介して接続口11kから管路18に吐水される。
【0023】
この状態から圧縮ばね11dによる付勢力が強くなると、弁体11bが
図2にて右側に移動して接続口11iからの温水量を増加させ、接続口11jからの冷水量を減少させる。そのため、接続口11kからの吐水温度が高くされる。このように圧縮ばね11dによる付勢力が強くなるのは、駆動部12によって摺動体11hが
図2にて右側に移動される場合である。
【0024】
一方、
図2の状態から感温ばね11eによる付勢力が強くなると、弁体11bが
図2にて左側に移動して接続口11jからの冷水量を増加させ、接続口11iからの温水量を減少させる。そのため、接続口11kからの吐水温度が低くされる。感温ばね11eは、形状記憶合金から成り、本発明の感温作動部に相当する。感温ばね11eは、部屋11m内の水温を感知して、水温が予め記憶した温度(本発明の適正温度に相当)より高くなると、弁体11bに対する付勢力を強くするように変形する。逆に、感温ばね11eは、部屋11m内の水温が予め記憶した温度より低くなると、弁体11bに対する付勢力を弱くするように変形する。従って、感温ばね11eは、圧縮ばね11dによる付勢力が一定の状態で、部屋11m内の水温に応じて弁体11bを
図2にて左右方向に摺動して接続口11kからの水の温度を調整している。
【0025】
<制御部による制御内容>
図3は、制御部30のコンピュータによる制御内容を示す。
図3の湯水混合制御ルーチンが実行されると、ステップS1において、温度設定操作部41による設定温度に関する信号を取り込む。次のステップS2では、温度設定操作部41による設定温度、並びに温度センサ50によって検出されている温度に基づいて予め決められた量だけ駆動部12を駆動して、混合弁11の弁体11bの位置を暫定的に設定する。駆動部12の駆動量は、所定の演算式若しくはマップに基づいて決定される。ステップS3では、吐水形態設定操作部42による設定状態に関する信号を取り込む。また、ステップS4では、吐水量設定操作部43による設定吐水量に関する信号を取り込む。そして、ステップS5では、吐水形態設定操作部42により設定された吐水形態に基づいて、カラン21若しくはシャワー22から吐水するように切替弁13の駆動部14を駆動する。また、吐水量設定操作部43による設定に基づいた量だけカラン21若しくはシャワー22から吐水するように駆動部14を駆動する。
【0026】
ステップS6では、温度センサ50により検出される水温に関する信号を取り込む。そして、ステップS7において、設定温度と検出された水温との偏差が所定値X以上か否かが判定される。偏差が所定値X以上の場合は、ステップS8において、ステップS6で取り込んだ温度センサ50の検出水温が温度設定操作部41により設定された設定温度以上か否かが判定される。検出水温が設定温度以上の場合は、ステップS8が肯定判断され、ステップS9において、混合弁11の弁体11bを
図2で左側へ動かすように駆動部12を所定量駆動する。その結果、混合弁11の部屋11l、11mには管路17からの冷水がそれまでより多く入るようになり、混合弁11から管路18を通じて吐出される水の温度がそれまでよりも低下される。一方、検出水温が設定温度未満の場合は、ステップS8が否定判断され、ステップS10において、混合弁11の弁体11bを
図2で右側へ動かすように駆動部12を所定量駆動する。その結果、混合弁11の部屋11l、11mには管路16からの温水がそれまでより多く入るようになり、混合弁11から管路18を通じて吐出される水の温度がそれまでよりも上昇される。このようにステップS8~S10の処理を繰り返すことにより混合弁11からの水の温度が設定温度と一致するようにフィードバック制御される。係るフィードバック制御は、チャンバー15により水の温度変化が緩やかにされる前の水の温度を温度センサ50により検出して制御している。そのため、混合弁11の吐水温度の変化に対して応答良く制御することができる。
【0027】
ステップS7において、偏差が所定値X未満の場合は、ステップS7が否定判断されてステップS8以降の処理はスキップされる。そのため、上述のフィードバック制御は行われず、上述の感温ばね11eによる混合弁11の吐水温度の調整が行われる。そのため、感温ばね11eによって弁体11bが摺動され、混合弁11の吐水温度が制御される。即ち、部屋11mの水温が感温ばね11eに記憶されている温度よりも高いときは、弁体11bを
図2で左側へ摺動して管路17からの冷水を増加させ、混合弁11の吐水温度を低下させる。一方、部屋11mの水温が感温ばね11eに記憶されている温度よりも低いときは、弁体11bを
図2で右側へ摺動して管路16からの温水を増加させ、混合弁11の吐水温度を上昇させる。
【0028】
このようにステップS8以降のフィードバック制御による混合弁11の吐水温度の調整が、感温ばね11eによる混合弁11の吐水温度の調整とは独立して行われる。そのため、感温ばね11eによる温度調整が行われている間は、フィードバック制御が抑制される。その結果、駆動部12の駆動機会が抑制され、駆動部12の消費エネルギを抑制することができる。
【0029】
<一実施形態の作用、効果>
図4は、設定温度SPに対する混合弁11の吐水温度(温度センサ50によって検出される温度)PVの変化と、フィードバック制御及び感温ばね11eの作動状態を示す。設定温度SPが設定され、制御部30による制御が開始されると、B1で示すようにフィードバック制御が開始される。この場合、フィードバック制御の制御周期は、感温ばね11eの応答性よりも充分に速くされており、フィードバック制御の開始後、遅れることなくフィードバック制御による温度調整が行われる。また、この場合のフィードバック制御はPID制御であり、混合弁11の吐水温度PVは滑らかに設定温度に向けて上昇する。
【0030】
設定温度SPに対する混合弁11の吐水温度PVの偏差が所定値X内となると、B1で示すようにフィードバック制御は終了する。このタイミングでは、感温ばね11eが温度調整可能な状態となり、以降の混合弁11の吐水温度の調整は、C1で示すように感温ばね11eによって行われる。
【0031】
その後、設定温度SPが変更される(高くされる)と、設定温度SPに対する混合弁11の吐水温度PVの偏差が所定値Xより大きくなるため、B2のように再びフィードバック制御が開始される。設定温度SPに対する混合弁11の吐水温度PVの偏差が所定値X内となると、B2で示すようにフィードバック制御は終了する。このタイミングでは、感温ばね11eが温度調整可能な状態となり、以降の混合弁11の吐水温度の調整は、C2で示すように感温ばね11eによって行われる。
【0032】
図5、6は、設定温度を40度に設定してカラン21若しくはシャワー22から全開の半分の量(例えば、毎分10リットル)で吐水させている状態で、管路16の温水の水圧及び管路17の冷水の水圧が変動した場合のカラン21若しくはシャワー22からの吐水温度の変化の様子を示している。
図5は、管路18にチャンバー15を備える場合であり、
図6はチャンバー15を備えない場合である。この場合、チャンバー15は、貯水容量が0.12リットルの容器とした。
【0033】
図5、6のように、管路16の温水の水圧及び管路17の冷水の水圧が変動すると、管路16、17から混合弁11に取り込まれる温水及び冷水の量が増減する。そのため、混合弁11から管路18に吐出される水温が変動する。管路18にチャンバー15がない場合は、管路18の水がそのままカラン21若しくはシャワー22から吐水されるため、
図6のように、カラン21若しくはシャワー22からの吐水温度は変動する。
図6から明らかなように、冷水と温水の水圧が同期して変動したときは、混合弁11からの吐水温度は大きく変動しないが、冷水と温水のいずれか一方のみの水圧が変動したときは、混合弁11からの吐水温度は大きく変動する。特に、冷水と温水の水圧が低い領域では、この傾向が顕著になる。
図6では、制御開始から3分経過時付近の水温の変動は10度を超えている。それに対し、管路18にチャンバー15を備える場合は、
図5のように、カラン21若しくはシャワー22からの吐水温度の変動が
図6に比べて小さくなっている。
図5では、同様に制御開始から3分経過時付近の水温の変動は5度以下となっている。
【0034】
図5、6では、カラン21若しくはシャワー22からの吐水量を全開の半分とした。また、管路16の温水の水圧及び管路17の冷水の水圧が共に変動し、その変動幅は、冷水に対して温水を約半分程度とした。これに対し、カラン21若しくはシャワー22からの吐水量を全開とした場合、管路16の温水の水圧及び管路17の冷水の水圧をいずれか一方のみが変動し、他方は変動しない場合、共に変動し、その変動幅が冷水、温水とお同程度とした場合、いずれの場合も、カラン21若しくはシャワー22からの吐水温度は、変動し、その変動がチャンバー15を備える場合には抑制されることが確認された。
【0035】
以上のとおり、上記実施形態では、混合弁11からの水は、カラン21若しくはシャワー22へは直接送られず、チャンバー15に流入し、それ以前からチャンバー15内に貯められていた水と混合されてカラン21若しくはシャワー22に供給される。そのため、水圧変動のような外乱により混合弁11からの吐水温度が急変したとき、カラン21若しくはシャワー22に供給される水温の変化は、混合弁11から吐出される水温の変化に対して緩やかにされる。従って、混合弁11からカラン21若しくはシャワー22に供給される水の温度が設定温度に対して変動するのを抑制することができる。
【0036】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、混合弁11の吐水温度の調整が感温ばね11eにより行われている期間では、フィードバック制御を休止するようにしたが、感温ばね11eによる温度調整が行われている間もフィードバック制御が同時に行われるようにしてもよい。また、上記実施形態では、混合弁11の温水及び冷水を送る管路16、17に他の水栓23が並列に接続されているが、このように他の水栓23が接続されるものに限定されない。
【符号の説明】
【0037】
11 混合弁
11a ケース
11b 弁体
11c 開口
11d 圧縮ばね
11e 感温ばね(感温作動部)
11f 駆動軸
11g ねじ軸
11h 摺動体
11i、11j、11k 接続口
11l、11m 部屋
12 駆動部
13 切替弁
14 駆動部
15 チャンバー
16、17、18、19、20、24、25 管路
21 カラン
22 シャワー
23 他の水栓
30 制御部
40 操作部
41 温度設定操作部(温度設定部)
42 吐水形態設定操作部
43 吐水量設定操作部
50 温度センサ