(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/163 20060101AFI20240311BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240311BHJP
G02B 15/20 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
G02B15/163
G02B13/18
G02B15/20
(21)【出願番号】P 2020034805
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】山中 久幸
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-121021(JP,A)
【文献】特開昭62-112115(JP,A)
【文献】特開2012-220827(JP,A)
【文献】特開2018-025572(JP,A)
【文献】国際公開第2020/157801(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0043693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群M及び前記後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成され、隣り合うレンズ群の間隔が変化することで変倍するズームレンズであって、
前記中間群Mは、物体側から順に、像側が凹形状のレンズ面を有するレンズを少なくとも1枚含む物体側部分群Aと、開口絞りと、少なくとも1枚のレンズを含む像側部分群Bとから構成され、
前記後群Rは、少なくとも1枚の正レンズと、少なくとも1枚の負レンズとを含むと共に負の屈折力を有する空気レンズを含み、
広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなり、前記前群Fを構成するレンズ群間の間隔が変化し、
無限遠から近距離への合焦時、前記中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.15 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(1)
0.2 ≦ Ra/ft ≦ 1.3 ・・・・・(2)
-3.0 ≦(Rrf+Rrb)/(Rrf-Rrb) ≦ 2.0 ・・・・・(3)
但し、
Hm:望遠端において無限遠合焦時での、前記中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs:望遠端において無限遠合焦時での、前記開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Ra:前記物体側部分群Aに含まれる前記像側が凹形状のレンズ面のうち最も曲率半径の小さいレンズ面の曲率半径
ft : 前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小であるときの当該ズームレンズの焦点距離
Rrf:前記空気レンズを形成する物体側面の曲率半径
Rrb:前記空気レンズを形成する像側面の曲率半径
【請求項2】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群M及び前記後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成され、隣り合うレンズ群の間隔が変化することで変倍するズームレンズであって、
前記中間群Mは、物体側から順に、像側が凹形状のレンズ面を有するレンズを少なくとも1枚含む物体側部分群Aと、開口絞りと、少なくとも1枚のレンズを含む像側部分群Bとから構成され、
広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなり、前記前群Fを構成するレンズ群間の間隔が変化し、
無限遠から近距離への合焦時、前記中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.15 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(1)
0.2 ≦ Ra/ft ≦
1.1 ・・・・・(2)
0.954 ≦ Rmf/ft ≦ 2.1 ・・・・・(6)
但し、
Hm:望遠端において無限遠合焦時での、前記中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs:望遠端において無限遠合焦時での、前記開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Ra:前記物体側部分群Aに含まれる前記像側が凹形状のレンズ面のうち最も曲率半径の小さいレンズ面の曲率半径
ft : 前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小であるときの当該ズームレンズの焦点距離
Rmf:前記中間群Mにおいて最も物体側に配置されるレンズ面の曲率半径
【請求項3】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群M及び前記後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成され、隣り合うレンズ群の間隔が変化することで変倍するズームレンズであって、
前記中間群Mは、物体側から順に、像側が凹形状のレンズ面を有するレンズを少なくとも1枚含む物体側部分群Aと、開口絞りと、少なくとも1枚のレンズを含む像側部分群Bとから構成され、 広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなり、前記前群Fを構成するレンズ群間の間隔が変化し、
前記後群Rは、変倍時及び合焦時のいずれにおいても像面に対して固定であり、
無限遠から近距離への合焦時、前記中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.15 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(1)
0.2 ≦ Ra/ft ≦ 1.3 ・・・・・(2)
0.5 ≦ fa/fb ≦ 3.0 ・・・・・(5)
但し、
Hm:望遠端において無限遠合焦時での、前記中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs:望遠端において無限遠合焦時での、前記開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Ra:前記物体側部分群Aに含まれる前記像側が凹形状のレンズ面のうち最も曲率半径の小さいレンズ面の曲率半径
ft : 前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小であるときの当該ズームレンズの焦点距離
fa:前記物体側部分群Aの焦点距離
fb:前記像側部分群Bの焦点距離
【請求項4】
物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、
前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群M及び前記後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成され、隣り合うレンズ群の間隔が変化することで変倍するズームレンズであって、
前記中間群Mは、物体側から順に、像側が凹形状のレンズ面を有するレンズを少なくとも1枚含む物体側部分群Aと、開口絞りと、少なくとも1枚のレンズを含む像側部分群Bとから構成され、
前記後群Rは、少なくとも1枚の正レンズと、少なくとも1枚の負レンズとを含むと共に負の屈折力を有する空気レンズを含み、
広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなり、前記前群Fを構成するレンズ群間の間隔が変化し、
前記後群Rは、変倍時及び合焦時のいずれにおいても像面に対して固定であり、
無限遠から近距離への合焦時、前記中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.15 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(1)
0.2 ≦ Ra/ft ≦ 1.3 ・・・・・(2)
但し、
Hm:望遠端において無限遠合焦時での、前記中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs:望遠端において無限遠合焦時での、前記開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Ra:前記物体側部分群Aに含まれる前記像側が凹形状のレンズ面のうち最も曲率半径の小さいレンズ面の曲率半径
ft : 前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小であるときの当該ズームレンズの焦点距離
【請求項5】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.3 ≦ BF/Y ≦ 1.5 ・・・・・(4)
但し、
BF:広角端における当該ズームレンズのバックフォーカス
Y :当該ズームレンズの最大像高
【請求項6】
前記中間群Mにおいて最も物体側に配置されるレンズは正レンズである請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
-1.8 ≦ Rmr/ft ≦ -0.2 ・・・・・(7)
但し、
Rmr:前記中間群Mにおいて最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
【請求項8】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
-4.0 ≦ ff/fm ≦ -1.0 ・・・・・(8)
但し、
ff:広角端における前記前群Fの焦点距離
fm:前記中間群Mの焦点距離
【請求項9】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.8 ≦ fm/fw ≦ 2.5 ・・・・・(9)
但し、
fm:前記中間群Mの焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズの焦点距離
【請求項10】
前記前群Fは少なくとも1つの負レンズ群を有し、広角端から望遠端への変倍時、前記負レンズ群は像側に移動する請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子と、を備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関し、特に、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の固体撮像素子(CCDやCMOS等)を用いた撮像装置に好適なズームレンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフレックスカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置のズームレンズとして、Fナンバーがズーム全域で2.8程度の明るさを有した大口径比のズームレンズがよく知られている。近年、ミラーレス一眼カメラ等の小型の撮像装置においても、35mm判フルサイズ(以下、フルサイズと称する。)等のサイズの大きな撮像素子を搭載することが行われている。このような大きな撮像素子を搭載した撮像装置についても、Fナンバーのより小さいズームレンズが求められている。
【0003】
しかしながら、監視カメラ等の比較的小さな撮像素子を有する撮像装置では、ズーム全域でFナンバーが2.0よりも小さい明るいズームレンズも用いられているものの、フルサイズ等のサイズの大きい撮像素子を用いたレンズ交換式撮像装置用のズームレンズではズーム全域でFナンバーが2.0よりも小さいものはあまり実現されていない。
【0004】
ところで、ズームレンズの構成として、ポジティブリード型のものと、ネガティブリード型のものが知られている。ポジティブリード型のズームレンズでは、最も物体側に正の屈折力の第1レンズ群を配置し、その像側に強い負の屈折力の第2レンズ群を配置して、第2レンズ群に大きな変倍作用を持たせることが一般的である。ポジティブリード型のズームレンズでは、このようにテレフォト型の屈折力配置とすることが容易であり、高変倍比を実現しやすく、焦点距離に比して光学全長を短くすることができる。
【0005】
一方、ネガティブリード型のズームレンズでは、最も物体側に負の屈折力の第1レンズ群を配置し、その像側に正の屈折力の第2レンズ群を配置して、第2レンズ群により変倍作用を持たせることが行われている。ネガティブリード型のズームレンズは、ポジティブリード型のズームレンズに比べて大きな変倍比を得ることは困難であるものの、広角ズーム等と称される画角の広いズームレンズを得るのに適した構成として知られている。ネガティブリード型のズームレンズとして、物体側から順に負・正・正又は負・正・負の屈折力配置を採用した特許文献1-特許文献3に開示のものがある。
【0006】
上記いずれのタイプのズームレンズにおいても、Fナンバーの小さい大口径比のズームレンズを実現しようとすると、レンズ径や絞り径が大きくなったり、光学全長が長くなる他、これらに伴う各機構部品やアクチュエータも大型化し、ズームレンズシステム全体が大型化するという問題が生じる。
【0007】
特に、大口径化を図ろうとすれば、像側に強い正の屈折力を有するレンズ群を配置する、いわゆるレトロフォーカス型の屈折力配置が採用される場合が多くなる。その場合、絞り径が大きくなりやすく、それを抑制するには、各レンズ群に対するパワー配置や、各レンズ群のレンズ構成、開口絞り位置などを適切に設定することが重要となる。さらに、大口径化を図ったときに、レンズの敏感度が増大し、それに伴い製造難易度が飛躍的に高くなる。そのため、変倍時に移動させるレンズ群の数を可能限り少なくして、簡素な変倍機構とすることが求められる。
【0008】
これらの観点から従来のズームレンズについてみると、上記特許文献1に記載のズームレンズではFナンバーが1.6程度を実現している。また、第2レンズ群の最も物体側に配置された凸レンズの像側に、比較的大きな空気間隔を空けて開口絞りを配置することで、絞り径の小型化を達成している。しかしながら、対応する撮像素子のサイズが小さく、より大きなサイズの撮像素子に対応させるには第2レンズ群内に配置される発散面となるレンズ面の作用が小さいため、像面湾曲や非点収差を十分に補正することが困難となる。また、第1レンズ群に配置される負の屈折力に対して第2レンズ群及び第3レンズ群に配置される正の合成屈折力が弱いため、光学全長の小型化が十分ではない。
【0009】
特許文献2に記載のズームレンズでは、第3レンズ群が正レンズ及び負レンズをそれぞれ少なくとも1枚備え、可視光域から近赤外領域までの広範な波長領域に対して発生する諸収差を良好に補正可能としている。しかしながら、望遠端におけるFナンバーは2.26(実施例4)と暗く、大口径化が十分ではない。また、第1レンズ群と第2レンズ群との間に開口絞りが配置されており、望遠端において絞り径の小型化を図ることが困難である。さらに、特許文献1と同様に、第1レンズ群に配置される負の屈折力に対して第2レンズ群及び第3レンズ群に配置される正の合成屈折力が弱いため、光学全長の小型化が十分ではない。
【0010】
特許文献3に記載のズームレンズでは、広角端における半画角が90°以上であり、広い画角を達成している。しかしながら、Fナンバーが望遠端で4程度と暗く、大口径化が十分ではない。また、当該ズームレンズでは広角化を図るために第1レンズ群に強い負の屈折力を配置しているため、特許文献1及び特許文献2の場合と同様に、第1レンズ群に対して、第2レンズ群及び第3レンズ群に配置される正の合成屈折力が弱いため、光学全長の小型化が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-66879号公報
【文献】特開2017-129825号公報
【文献】特開2012-194238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正又は負の屈折力を有する後群Rとから構成され、前記前群Fは1つ以上のレンズ群を有し、前記中間群M及び前記後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成され、前記中間群Mは、物体側から順に、像側が凹形状のレンズ面を有するレンズを少なくとも1枚含む物体側部分群Aと、開口絞りと、少なくとも1枚のレンズを含む像側部分群Bとから構成され、広角端において前記前群Fと前記中間群Mとの間の空気間隔は最大となり、広角端から望遠端への変倍時、前記前群Fと前記中間群Mとの間隔は小さくなり、前記中間群Mと前記後群Rとの間隔は広くなり、前記前群Fを構成するレンズ群間の間隔が変化し、無限遠から近距離への合焦時、前記中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
1.15 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(1)
0.2 ≦ Ra/ft ≦ 1.3 ・・・・・(2)
但し、
Hm:望遠端において無限遠合焦時での、前記中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs:望遠端において無限遠合焦時での、前記開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Ra:前記物体側部分群Aに含まれる前記像側が凹形状のレンズ面のうち最も曲率半径の小さいレンズ面の曲率半径
ft:前記前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離
【0014】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記ズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換にする撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本件発明によれば、大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本件発明の実施例1のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図2】実施例1のズームレンズの広角端における諸収差図である。
【
図3】実施例1のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
【
図4】実施例1のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
【
図5】本件発明の実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図6】実施例2のズームレンズの広角端における諸収差図である。
【
図7】実施例2のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
【
図8】実施例2のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
【
図9】本件発明の実施例3のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図10】実施例3のズームレンズの広角端における諸収差図である。
【
図11】実施例3のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
【
図12】実施例3のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
【
図13】本件発明の実施例4のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図14】実施例4のズームレンズの広角端における諸収差図である。
【
図15】実施例4のズームレンズの中間焦点距離状態における諸収差図である。
【
図16】実施例4のズームレンズの望遠端における諸収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明するズームレンズ及び撮像装置は本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0018】
1.ズームレンズ
1-1.光学構成
当該ズームレンズは物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正または負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0019】
(1)前群F
前群Fは全体で負の屈折力を有し、1つ以上のレンズ群を有する限り、その具体的な群構成は特に限定されるものではない。前群Fが1つのレンズ群から構成される場合、そのレンズ群は負レンズ群であるものとする。前群Fが2つ以上のレンズ群から構成される場合、前群Fには少なくとも1つの負レンズ群を有する限り、他のレンズ群は負の屈折力を有していてもよいし、正の屈折力を有していてもよい。
【0020】
ここで、レンズ群は、変倍の際に光軸に沿って同じ軌跡で同じ移動量だけ移動する1枚又は互いに隣接する複数枚のレンズからなる群をいい、一つのレンズ群が複数枚のレンズから構成される場合、その一つのレンズ群に含まれる各レンズ間の光軸上の距離は変倍の際には変化しないものとする。また、隣接するレンズ群の光軸上の距離は変倍の際に変化するものとする。
【0021】
前群Fを2つ以上のレンズ群から構成すれば、各レンズ群間の光軸上の間隔を変倍時に変化させることができるため、変倍時の各レンズ群の移動可能な位置についての設計自由度が高くなる。その結果、収差変動を抑制することが容易になり、光学性能の高いズームレンズを得ることができる。また、前群Fにおいて最も物体側に配置されるレンズ群に正の屈折力を配置した場合は、ポジティブリード型の屈折力配置となり、高変倍比化や絞り径の小型化、及び光学全長の小型化が容易な構成となる。また、前群Fの最も物体側に配置されるレンズ群に負の屈折力を配置した場合は、ネガティブリード型の屈折力配置となり画角の広いズームレンズを得るのに容易な構成となる。
【0022】
(2)中間群M
中間群Mは正の屈折力を有するレンズ群であり、1つのレンズ群から構成される。当該ズームレンズでは開口絞りは中間群M内に配置される。ここで、開口絞りよりも物体側に配置されるレンズよりなる群を物体側部分群Aと称し、開口絞りよりも像側に配置されるレンズよりなる群を像側部分群Bと称する。当該中間群Mは、物体側部分群A、開口絞り及び像側部分群Bが一体となって変倍時に光軸上を移動する。すなわち、物体側部分群A及び像側部分群Bを含んで当該中間群Mは1つのレンズ群として構成されている。また、開口絞りも物体側部分群A及び像側部分群Bと一体となって変倍時に光軸上を移動し、物体側部分群Aと開口絞り、開口絞りと像側部分群Bとの光軸上の間隔は変倍時に変化しないものとする。中間群Mをこのような構成とし、変倍時に中間群Mを一体に移動させることで、変倍時に移動させるレンズ群の数が少なくなり変倍機構の簡素化を図ることができる。これと同時に、製造誤差を生じさせにくくすることができる。
【0023】
物体側部分群A及び像側部分群Bのいずれも正の屈折力を有する。それにより、Fナンバーが1.4程度と大口径比で明るいズームレンズを実現しつつ、絞り径の小型化を図り、開口絞りを開閉するための絞り機構の小型化及び軽量化が容易になり、ズームレンズ全体の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0024】
物体側部分群Aは像側が凹形状のレンズ面を有するレンズを少なくとも1枚含む。中間群Mにおいて開口絞りよりも物体側に配置される物体側部分群Aにこのようなレンズを配置することで、球面収差及び像面湾曲を良好に補正することが容易となる。また、物体側部分群Aの最も物体側レンズ面は物体側に凸形状であることが好ましい。このようなレンズ形状とすることで、絞り径の小型化が容易になる。
【0025】
像側部分群Bの具体的なレンズ構成についても特に限定されるものではないが、少なくとも2枚の負レンズと、少なくとも2枚の正レンズとから構成されることが好ましい。像側部分群Bをこのような構成とすることで、物体距離全般に亘り、球面収差及び像面湾曲等の収差変動の少ないズームレンズを実現することが容易になる。
【0026】
(3)後群R
後群Rも中間群Mと同様に1つのレンズ群から構成される。すなわち、後群Rを構成する各レンズの光軸上の間隔は変倍の際に変化しないものとする。後群Rの屈折力は正でも負でもよいが、負であることがより好ましい。後群Rを負の屈折力とすることで、中間群Mで発生したアンダー方向の像面湾曲を良好に補正することが容易となる。
【0027】
後群Rの具体的なレンズ構成は特に限定されるものではないが、少なくとも正レンズ1枚と、少なくとも負レンズ1枚とを有することが好ましい。後群Rをこのような構成とすることで、軸外光束に対する像面湾曲を良好に補正することができる。また、後群Rは負の屈折力を有する空気レンズを含むことが好ましい。当該空気レンズは光軸上の間隔を空けて隣接配置される2枚のレンズの互いに対向する2つのレンズ面によって形成されるものをいう。後群Rを負の屈折力を有する空気レンズを含む構成とすることで、中間群Mで発生したアンダー方向の像面湾曲を良好に補正することが容易になる。
【0028】
1-2.動作
(1)変倍
当該ズームレンズは、上記構成を採用し、変倍に際して、前群Fと中間群Mと後群Rの光軸上の間隔を変化させることにより変倍する。その際、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となるように各レンズ群を移動させる。このように各レンズ群を移動させることで、前群Fのパワーを無理に強くすることがなく、変倍全域で良好な光学性能を得ることが容易となる。
【0029】
前群Fが2つ以上のレンズ群を有する場合は、上述したとおり、変倍時に各レンズ群間の光軸上の間隔が変化する。このとき、前群Fを構成する全てのレンズ群が光軸方向に移動してもよいし、その一部のレンズ群が光軸方向に固定されていてもよい。ただし、前群Fを構成するレンズ群のうち最も負の屈折力が強いレンズ群は、広角端から望遠端への変倍に際して、像側に移動させることが好ましい。このように移動させることで、各レンズ群の変倍負担に無理が生じにくくなり、高変倍比と高性能化の両立を図ることが容易になる。
【0030】
中間群Mは上述したとおり、物体側部分群A及び像側部分群Bにより一つのレンズ群が構成されるため、変倍時にはこれらが一体となって光軸方向に移動する。
後群Rも変倍時に光軸方向に移動させてもよいが、固定であることがより好ましい。後群Rを固定群とすることで、変倍時に移動させるレンズ群の数が少なくなり変倍機構の簡素化を図ることができる。これと同時に、製造誤差を生じさせにくくすることができる。
【0031】
(2)合焦
当該ズームレンズでは、無限遠から近距離への合焦時、中間群M全体が光軸上を物体側へ移動させる。開口絞りを有する中間群M全体をフォーカス群とすることで、無限遠から近距離の物体距離全域に亘って、像面湾曲変動の少ないズームレンズを得ることが容易になる。このとき、前群F及び後群Rは合焦時に光軸方向に固定することが好ましい。特に後群Rを変倍時及び合焦時共に光軸方向に固定すれば、当該ズームレンズの最も像側に配置されるレンズ群を光軸方向に移動させるための機構が不要になるため、機構の簡素化を図り、製造誤差の少ないズームレンズを実現することがより容易になる。
【0032】
1-3. 条件式
当該ズームレンズは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することが望ましい。
【0033】
1-3-1.条件式(1)
1.15 ≦ Hm/Hs ≦ 2.0 ・・・・・(1)
但し、
Hm : 望遠端において無限遠合焦時での、前記中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
Hs : 望遠端において無限遠合焦時での、前記開口絞りを通る軸上マージナル光線の光軸からの高さ
【0034】
上記条件式(1)は望遠端において無限遠合焦時での、中間群Mの最も物体側のレンズ面を通る軸上マージナル光線の高さと、開口絞りを通る軸上マージナル光線の高さとの比を規定した条件式である。条件式(1)を満足させることで、開口絞りの小型化を図り、絞り機構の小型化及び軽量化を図ることが容易となる。
【0035】
これに対して、条件式(1)の値が下限値未満になると、開口絞りの径を小さくすることが困難になるため、開口絞り及び絞り機構が大型化する。一方、条件式(1)の値が上限値を超えると、物体側部分群Aの正の屈折力が強くなり過ぎて、球面収差を良好に補正することが困難となる。
【0036】
上記効果を得る上で、条件式(1)の上限値は1.8であることが好ましく、1.7であることがより好ましく、1.6であることがさらに好ましい。また、条件式(1)の下限値は1.2であることが好ましく、1.25であることがより好ましく、1.3であることがさらに好ましい。なお、これらの好ましい下限値又は上限値を採用する場合、条件式(1)において等号付不等号(≦)を不等号(<)に置換してもよい。他の条件式についても原則として同様である。
【0037】
1-3-2.条件式(2)
0.2 ≦ Ra/ft ≦ 1.3 ・・・・・(2)
但し、
Ra : 物体側部分群Aに含まれる像側が凹形状のレンズ面のうち最も曲率半径の小さいレンズ面の曲率半径
ft : 前群Fと前記中間群Mとの光軸上の間隔が最小であるときの当該ズームレンズの焦点距離
【0038】
条件式(2)は物体側部分群Aに含まれる像側が凹形状のレンズ面のうち最も曲率半径の小さいレンズ面の曲率半径を規定するための条件式である。条件式(2)を満足させることで、Fナンバーが1.4程度と大口径比で明るいズームレンズを実現しつつ、球面収差を良好に補正することが容易になる。
【0039】
これに対して条件式(2)の値が下限値未満となると、当該レンズ面による発散作用が強くなり過ぎて、球面収差を良好に補正することが困難になる。一方、条件式(2)の値が上限値を超えると、当該レンズ面による発散作用が弱くなるため、物体側部分群Aの正の屈折力を強くすることができなくなるため、開口絞りの径を小さくすることが困難になり、それに伴い絞り機構も大型化する。
【0040】
上記効果を得る上で、条件式(2)の上限値は1.2であることが好ましく、1.1であることがより好ましく、1.0であることがさらに好ましい。また、条件式(2)の下限値は0.35であることが好ましく、0.4であることがより好ましく、0.45であることがさらに好ましい。
【0041】
ここで、当該ズームレンズでは望遠端において前群Fと中間群Mの光軸上の間隔が最小となることが好ましい。すなわち、上記「ft」は望遠端における当該ズームレンズの焦点距離であることが好ましい。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔が最小となる状態のとき、前群Fと中間群Mとの光軸上の間隔を「D」とし、このときの光学全長を「L」とすると、両者の比「D/L」が0.12以下であることが好ましい。この条件を満足することで、当該ズームレンズによれば大口径でありながら、所望の変倍比を確保することが容易となる。このとき、「D/L」は0.10以下であることが好ましい。なお、ftについては、ftを含む他の式においても同様である。
【0042】
1-3-3.条件式(3)
-3.0 ≦(Rrf+Rrb)/(Rrf-Rrb) ≦ 2.0 ・・・・・(3)
但し、
Rrf : 前記空気レンズを形成する物体側面の曲率半径
Rrb : 前記空気レンズを形成する像側面の曲率半径
【0043】
上述したとおり、後群Rは負の屈折力を有する空気レンズを含むことが好ましい。後群Rがそのような空気レンズを含む場合、当該空気レンズは上記条件式(3)を満足する形状であることが好ましい。条件式(3)を満足する形状の空気レンズを後群Rに配置することで、変倍全域に亘って、像面湾曲を良好に補正することが容易となる。
【0044】
これに対して、条件式(3)の値が下限値未満になると、当該空気レンズの発散作用が弱くなり、中間群Mで発生したアンダー方向の像面湾曲を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(3)の値が上限値を超えると、当該空気レンズの発散作用が強くなり過ぎて、ズームレンズ全系で像面湾曲がオーバー傾向となるため好ましくない。
【0045】
上記効果を得る上で、条件式(3)の上限値は1.7であることが好ましく、1.4あることがより好ましく、1.2であることがさらに好ましい。また、条件式(3)の下限値は-2.5であることが好ましく、-2.0であることがより好ましく、-1.7であることがさらに好ましい。
【0046】
1-3-4.条件式(4)
0.3 ≦ BF/Y ≦ 1.5 ・・・・・(4)
但し、
BF:広角端における当該ズームレンズのバックフォーカス
Y :当該ズームレンズの最大像高
【0047】
上記条件式(4)は当該ズームレンズの最大像高に対する広角端のバックフォーカスを規定するための条件式である。条件式(4)を満足することで、広角端でバックフォーカスが短くなり、光学全長の短縮化を図り小型のズームレンズを実現できる。
【0048】
これに対して、条件式(4)の値が下限値未満になると、バックフォーカスが短くなり過ぎて、撮像センサへの入射光に対する傾斜角度が大きくなり過ぎる。そのため、撮像センサにおいて入射光を効率的に受光するために設けられるオンチップマイクロレンズと、ズームレンズの射出瞳とのミスマッチによる周辺減光(シェーディング)が目立ち易くなる問題がある。一方、条件式(4)の値が上限値を超えると、バックフォーカスが長くなり過ぎて、広角端における当該ズームレンズの光学全長の短縮化が困難になる。
【0049】
上記効果を得る上で、条件式(4)の上限値は1.3であることが好ましく、1.2であることがより好ましく、1.1であることがさらに好ましい。また、条件式(4)の下限値は0.4であることが好ましく、0.5であることがより好ましい。
【0050】
1-3-5.条件式(5)
0.5 ≦ fa/fb ≦ 3.0 ・・・・・(5)
但し、
fa:物体側部分群Aの焦点距離
fb:像側部分群Bの焦点距離
【0051】
条件式(5)は像側部分群Bの焦点距離に対する物体側部分群Aの焦点距離の比を規定するための条件式である。条件式(5)を満足させることで、開口絞りの径を小さくすることができ、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0052】
これに対して条件式(5)の値が下限値未満になると、開口絞りの径を小さくする上では有利であるが、物体側部分群Aで発生するアンダー方向の像面湾曲を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(5)の値が上限値を超えると、開口絞りの径を小さくすることが困難となる。
【0053】
上記効果を得る上で、条件式(5)の上限値は2.7であることが好ましく、2.4であることがより好ましく、2.2であることがさらに好ましく、2.0であることが一層好ましい。また、条件式(5)の下限値は0.55であることが好ましく、0.6であることがより好ましく0.65であることがさらに好ましい。
【0054】
1-3-6.条件式(6)
0.5 ≦ Rmf/ft ≦ 2.2 ・・・・・(6)
但し、
Rmf:中間群Mにおいて最も物体側に配置されるレンズ面の曲率半径
【0055】
上記条件式(6)は前群Fと中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離(ft)に対する中間群Mの最も物体側レンズ面の曲率半径の比を規定するための条件式である。条件式(6)を満足することで、開口絞りの径を小さくすることができ、且つ、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0056】
これに対して、条件式(6)の値が下限値未満となると、開口絞りの径を小さくする上では有利であるが、球面収差のアンダー作用が強くなり過ぎて、その補正が困難となる。一方、条件式(6)の値が上限値を超えると、開口絞りの径を小さくすることが困難となる。
【0057】
上記効果を得る上で、条件式(6)の上限値は2.3であることが好ましく、2.1であることがより好ましく、2.0であることがさらに好ましく、1.9であることがさらに好ましい。また、条件式(6)の下限値は0.6であることが好ましく、0.65であることがより好ましく、0.7であることがさらに好ましい。
【0058】
1-3-7. 条件式(7)
-1.8 ≦ Rmr/ft ≦ -0.2 ・・・・・(7)
但し、
Rmr:中間群Mにおいて最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
【0059】
条件式(7)は前群Fと中間群Mとの光軸上の間隔が最小となる状態における当該ズームレンズの焦点距離(ft)に対する中間群Mの最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径の比を規定するための条件式である。条件式(7)を満足させることで、大口径化を図りつつ、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0060】
これに対して、条件式(7)の値が下限値未満となると、球面収差とコマ収差のバランスを保つことは容易になるが、中間群Mの像側NA(開口数)を小さくすることが困難になるため、当該ズームレンズのFナンバーを小さくすることが困難となる。一方、条件式(7)の値が上限値を超えると、当該ズームレンズのFナンバーを小さくすることは容易になるが、球面収差とコマ収差のバランスを保ちながらこれらの補正を行うことが困難になる。
【0061】
上記効果を得る上で、条件式(7)の上限値は-0.25であることが好ましく、-0.3であることがより好ましく、-0.35であることがさらに好ましい。また、条件式(7)の下限値は-1.6であることが好ましく、-1.5であることがより好ましく、-1.4であることがさらに好ましい。
【0062】
1-3-8.条件式(8)
-4.0 ≦ ff/fm ≦ -1.0 ・・・・・(8)
但し、
ff:広角端における前群Fの焦点距離
fm:中間群Mの焦点距離
【0063】
上記条件式(8)は中間群Mの焦点距離に対する前群Fの焦点距離の比を規定するための条件式である。条件式(8)を満足させることで、光学全長の短縮化を図りつつ、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0064】
これに対して、条件式(8)の値が下限値未満になると、特に広角端で光学全長が長くなると共に、前群Fを構成するレンズの有効径が大きくなるため当該ズームレンズの小型化が困難になる。一方、条件式(8)の値が上限値を超えると、当該ズームレンズの小型化を図る上では有利であるが、物体距離の変化に伴う像面湾曲の変動を抑制することが困難となる。
【0065】
上記効果を得る上で、条件式(8)の上限値は-1.1であることが好ましく、-1.2であることがより好ましく、-1.3であることがさらに好ましい。また、条件式(8)の下限値は-3.6であることが好ましく、-3.3であることがより好ましく、-3.0であることがさらに好ましい。
【0066】
1-3-9.条件式(9)
0.8 ≦ fm/fw ≦ 2.5 ・・・・・(9)
但し、
fm:中間群Mの焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズの焦点距離
【0067】
条件式(9)は広角端における全系の焦点距離に対する中間群Mの焦点距離の比を規定するための条件式である。条件式(9)を満足させることで、中間群Mの変倍負担を適正化し、光学性能のより高いズームレンズを得ることができる。
【0068】
これに対して、条件式(9)の値が下限値未満となると、フォーカス群である中間群Mの屈折力が強くなり過ぎて、物体距離の変化に伴う球面収差及び像面湾曲の変動を抑制することが困難となる。一方、条件式(9)の値が上限値を超えると、中間群Mの変倍負担が小さくなるため、要求される変倍比を実現することが困難になる。変倍比を大きくするには前群Fに配置する負の屈折力を大きくする必要が生じる。前群Fに配置される負の屈折力が大きくなりすぎると、物体距離の変化に伴う像面湾曲変動が大きくなる。
【0069】
上記効果を得る上で、条件式(9)の上限値は2.4であることが好ましく、2.3であることがより好ましく、2.2であることがさらに好ましい。また、条件式(9)の下限値は0.9であることが好ましく、1.0であることがより好ましく、1.1であることがさらに好ましい。
【0070】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子はズームレンズの像側に設けられることが好ましい。
【0071】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ドローン搭載用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。また、これらの撮像装置はレンズ交換式の撮像装置であってもよいし、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。特に本発明に係るズームレンズはフルサイズ等のサイズの大きな撮像素子を搭載した撮像装置のズームレンズに好適である。当該ズームレンズは変倍全域でFナンバーが1.4程度の大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するため、このような撮像装置用のズームレンズとしたときにも高画質な撮像画像を得ることができる。
【0072】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0073】
(1)光学構成
図1に実施例1のズームレンズのレンズ断面図を示す。
図1に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0074】
実施例1のズームレンズでは、前群Fは負の屈折力を有する第1レンズ群G1のみから構成される。中間群M及び後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成されている。広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1は像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。また、無限遠から近距離への合焦時、中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0075】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3とから構成される。負メニスカスレンズL1は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。
【0076】
中間群Mは、物体側から順に、両凸レンズL4と、両凸レンズL5及び両凹レンズL6を接合した接合レンズと、両凸レンズL7及び両凹レンズL8を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL9及び両凹レンズL10を接合した接合レンズと、両凸レンズL11及び両凹レンズL12を接合した接合レンズと、両凸レンズL13とから構成される。両凸レンズL5は、物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL13は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。開口絞りSは、両凹レンズL8と正メニスカスレンズL9との間に配置されており、中間群Mにおいて開口絞りSの物体側に配置されるレンズにより本件発明にいう物体側部分群Aが構成され、開口絞りSの像側に配置されるレンズにより本件発明にいう像側部分群Bが構成される。
【0077】
後群Rは、物体側から順に、両凸レンズL14と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL15と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL16とから構成される。負メニスカスレンズL15は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。後群Rは、負メニスカスレンズL15の像側面と負メニスカスレンズL16の物体側面とにより形成される両凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0078】
なお、
図1において、「IP」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、IPの物体側にはカバーガラスCG等を備える。この点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0079】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。以下に、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、各条件式の値(表1)及び各条件式の値を求めるために用いる諸数値等(表2)は実施例4の後にまとめて示す。
【0080】
「レンズデータ」において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」は光軸上のレンズ肉厚又は空気間隔、「nd」はd線(波長λ=587.6nm)における屈折率、「νd」はd線におけるアッベ数を示している。また、「面番号」の欄において面番号の次に付した「ASPH」はそのレンズ面が非球面であることを示し、「S」はその面が開口絞りであることを示す。「d」の欄において、「d(0)」、「d(6)」等と示すのは、当該レンズ面の光軸上の間隔が変倍時に変化する可変間隔であることを意味する。また、曲率半径の欄の「∞」は無限大を意味し、そのレンズ面が平面であることを意味する。
【0081】
「諸元表」において、「f」は当該ズームレンズの焦点距離、「FNo.」はFナンバー、「ω」は半画角、「Y」は最大像高である。それぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端における値を示している。
【0082】
「可変間隔」において、広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時と、有限物体合焦時(物体距離500mm)との値をそれぞれ示している。なお、物体距離は物体面から像面までの距離をいう。他の実施例についても同じである。
【0083】
「非球面係数」は、次のようにして非球面形状を定義したときの非球面係数を示す。但し、xは光軸方向の基準面からの変位量、rは近軸曲率半径、Hは光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、kは円錐係数、Anはn次の非球面係数とする。また「非球面係数」の表において「E±XX」は指数表記を表し「×10±XX」を意味する。
【0084】
【0085】
これらの各表における事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0086】
また、
図2、
図3及び
図4に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、それぞれ球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差図は実線がd線(波長587.56nm)、破線がC線(波長656.28nm)、一点鎖線がg線(波長435.84nm)における球面収差をそれぞれ示す。非点収差図は縦軸が半画角(ω)、横軸がデフォーカスであり、実線がd線のサジタル像面(ds)を示し、破線がd線のメリディオナル像面(dm)をそれぞれ示す。歪曲収差図は、縦軸が半画角(ω)、横軸が歪曲収差である。これらの事項は、他の実施例において示す各収差図においても同じであるため、以下では説明を省略する。
【0087】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1ASPH 208.0366 2.5000 1.69350 53.18
2ASPH 43.1440 14.7464
3 -170.0000 2.5000 1.48749 70.44
4 -500.0000 0.1500
5 75.4314 4.4049 1.91082 35.25
6 135.3954 d(6)
7 52.9863 7.4329 1.92286 20.88
8 -587.2022 0.1500
9ASPH 131.9915 6.7000 1.85135 40.10
10 -69.0480 1.5000 1.76182 26.52
11 26.6232 0.1500
12 26.9862 10.6601 1.87070 40.73
13 -81.6597 1.5000 1.76182 26.52
14 29.3525 5.9088
15S ∞ 1.7455
16 -470.2024 7.2585 1.55032 75.50
17 -22.0352 1.3000 1.80518 25.46
18 72.0913 0.1500
19 43.6868 6.8300 1.77250 49.62
20 -67.0118 1.3000 1.84666 23.78
21 70.2743 1.4367
22ASPH 78.6661 6.4470 2.00178 19.32
23ASPH -44.0721 d(23)
24 170.0607 5.0000 1.49700 81.61
25 -71.3608 0.1500
26ASPH 27.7497 1.5000 1.88202 37.22
27ASPH 21.7485 6.3203
28 -52.8123 2.0000 1.64769 33.79
29 -127.3247 13.5000
30 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
31 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0088】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 36.0000 41.9995 48.4990
FNo. 1.4497 1.4499 1.4501
ω 31.3763 27.0233 23.5165
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0089】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 320.0000 343.1586 361.0361
d(6) 56.9844 31.1762 10.4159 53.1128 25.6628 2.0714
d(23) 6.2746 8.9240 11.8069 10.1462 14.4374 20.1515
【0090】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
1 0.0000 -4.73868E-07 5.76767E-11 2.35266E-15 -8.19880E-19 0.00000E+00
2 0.0000 -8.98773E-07 -6.08068E-10 1.91595E-13 -2.25493E-16 0.00000E+00
9 0.0000 -2.04937E-06 -4.47485E-10 2.56633E-13 2.64628E-17 0.00000E+00
22 0.0000 -3.67660E-06 3.92915E-10 -1.33523E-11 3.92607E-15 0.00000E+00
23 0.0000 -4.65247E-07 1.75590E-09 -1.19419E-11 0.00000E+00 0.00000E+00
26 0.0000 -5.19037E-05 7.29161E-08 -4.61509E-11 -8.66177E-14 0.00000E+00
27 0.0000 -5.68629E-05 7.56871E-08 -5.08331E-11 -1.76677E-13 0.00000E+00
【0091】
(レンズ群データ)
群番号 焦点距離
F -119.0535
M 53.6068
R -237.4300
【実施例2】
【0092】
(1)光学構成
図5に実施例2のズームレンズのレンズ断面図を示す。
図5に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0093】
実施例2のズームレンズでは、前群Fは負の屈折力を有する第1レンズ群G1のみから構成される。中間群M及び後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成されている。広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1は像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。また、無限遠から近距離への合焦時、中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0094】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、両凹レンズL3と、両凸レンズL4とから構成される。負メニスカスレンズL2は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。
【0095】
中間群Mは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL5と、両凸レンズL6及び両凹レンズL7を接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8及び物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL9を接合した接合レンズと、両凸レンズL10及び両凹レンズL11を接合した接合レンズと、両凸レンズL12及び両凹レンズL13を接合した接合レンズと、両凸レンズL14とから構成される。正メニスカスレンズL5は、物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL14は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。開口絞りSは、負メニスカスレンズL9と両凸レンズL10との間に配置されており、中間群Mにおいて開口絞りSの物体側に配置されるレンズにより本件発明にいう物体側部分群Aが構成され、開口絞りSの像側に配置されるレンズにより本件発明にいう像側部分群Bが構成される。
【0096】
後群Rは、物体側から順に、両凸レンズL15と、両凹レンズL16と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL17とから構成される。負メニスカスレンズL17は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。後群Rは、両凹レンズL16の像側面と負メニスカスレンズL17の物体側面とにより形成される両凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0097】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例として、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、
図6、
図7及び
図8に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。
【0098】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1 329.0942 2.5000 1.69680 55.46
2 45.6109 6.0000
3ASPH 99.8315 2.2000 1.69350 53.18
4ASPH 44.9764 12.9696
5 -808.0584 2.0000 1.49700 81.61
6 122.9480 0.1500
7 62.8322 10.0000 1.51742 52.43
8 -324.2464 d(8)
9ASPH 51.5805 5.8000 2.00178 19.32
10 334.9596 0.1500
11 53.8878 6.5000 1.88300 40.80
12 -174.7829 1.5000 1.75520 27.53
13 28.7542 2.5000
14 42.0953 3.9208 1.87070 40.73
15 114.8657 1.5000 1.72825 28.46
16 53.8149 3.9971
17S ∞ 1.5000
18 83.3970 7.9089 1.49700 81.61
19 -25.7217 1.3000 1.92286 20.88
20 44.8048 0.1500
21 39.5238 7.8409 1.72916 54.67
22 -43.6143 1.3000 1.85478 24.80
23 92.0109 4.1679
24ASPH 100.5923 6.8408 2.00178 19.32
25ASPH -40.1920 d(25)
26 29.3028 8.6958 1.49700 81.61
27 -85.5083 0.1500
28 -324.4041 1.3000 1.62004 36.26
29 25.2345 6.9795
30ASPH -92.8503 2.0000 1.88202 37.22
31ASPH -144.4884 13.5003
32 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
33 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0099】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 24.7005 32.0004 33.9997
FNo. 1.4497 1.4500 1.4501
ω 42.2378 33.3403 31.5208
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0100】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 320.0000 345.3090 349.9140
d(8) 49.6756 18.5628 12.3734 47.5262 14.4032 7.2487
d(25) 1.5031 7.3054 8.8915 3.6525 11.4651 14.0162
【0101】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
3 -7.0352 2.83823E-06 -4.76570E-09 4.39545E-12 -1.56944E-15 0.00000E+00
4 -4.1630 7.03826E-06 -8.66714E-09 7.63232E-12 -2.86431E-15 0.00000E+00
9 0.0000 -5.67200E-07 -4.50542E-11 -3.79457E-13 3.44884E-16 0.00000E+00
24 0.0000 -2.47743E-06 1.49290E-09 -9.20107E-12 3.26671E-15 0.00000E+00
25 0.0000 9.52507E-07 3.00697E-10 -5.70088E-12 0.00000E+00 0.00000E+00
30 0.0000 -2.65938E-05 4.25695E-08 -7.90330E-11 2.67121E-13 0.00000E+00
31 0.0000 -1.51357E-05 4.21053E-08 1.67665E-11 1.00172E-13 0.00000E+00
【0102】
(レンズ群データ)
群番号 焦点距離
F -67.4147
M 51.6675
R -241.5591
【実施例3】
【0103】
(1)光学構成
図9に実施例3のズームレンズのレンズ断面図を示す。
図9に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、正の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0104】
実施例3のズームレンズでは、前群Fは負の屈折力を有する第1レンズ群G1のみから構成される。中間群M及び後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成されている。広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1は像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。また、無限遠から近距離への合焦時、中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0105】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、両凹レンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3とから構成される。負メニスカスレンズL1は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。
【0106】
中間群Mは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5及び両凹レンズL6を接合した接合レンズと、両凸レンズL7及び両凹レンズL8を接合した接合レンズと、両凸レンズL9及び両凹レンズL10を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11及び両凹レンズL12を接合した接合レンズと、両凸レンズL13及び両凹レンズL14を接合した接合レンズと、両凸レンズL15とから構成される。正メニスカスレンズL4は、両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL15は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。開口絞りSは、両凹レンズL10と正メニスカスレンズL11との間に配置されており、中間群Mにおいて開口絞りSの物体側に配置されるレンズにより本件発明にいう物体側部分群Aが構成され、開口絞りSの像側に配置されるレンズにより本件発明にいう像側部分群Bが構成される。
【0107】
後群Rは、物体側から順に、両凸レンズL16と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL17と、両凹レンズL18及び両凸レンズL19を接合した接合レンズとから構成される。負メニスカスレンズL17は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。負メニスカスレンズL17の像側面と両凹レンズL18の物体側面とで形成される凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0108】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例として、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、
図6、
図7及び
図8に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。
【0109】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1ASPH 198.8974 2.5000 1.69350 53.18
2ASPH 40.5849 13.7317
3 -307.9897 2.0000 1.48749 70.44
4 361.8935 0.1500
5 68.2433 4.7487 1.91082 35.25
6 120.9279 d(6)
7ASPH 46.3704 6.0224 1.85135 40.10
8ASPH 156.4506 0.8709
9 59.3410 8.0191 1.87070 40.73
10 -115.6536 1.0000 1.67300 38.26
11 33.3190 1.9557
12 42.8689 6.6933 1.87070 40.73
13 -238.3599 1.0000 1.64769 33.79
14 26.4862 2.8681
15 50.3199 5.1426 1.87070 40.73
16 -133.5555 1.0000 1.69895 30.13
17 62.7002 3.3342
18S ∞ 2.0278
19 -196.4788 6.1739 1.49700 81.61
20 -22.2376 1.0000 1.78880 28.43
21 52.9706 0.1500
22 42.7152 10.8079 1.69680 55.46
23 -19.9107 1.0690 1.72825 28.46
24 56.8789 0.1500
25ASPH 58.5950 6.0314 2.00178 19.32
26ASPH -47.1385 d(26)
27 1501.3206 5.0000 1.48749 70.44
28 -59.5911 0.1500
29ASPH 33.1753 1.5000 1.85135 40.10
30ASPH 23.9536 4.7676
31 -111.7174 1.5000 1.80000 29.84
32 58.4075 6.5636 1.90043 37.37
33 -142.0609 13.5977
34 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
35 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0110】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 36.0007 41.9984 48.5931
FNo. 1.4800 1.4801 1.4800
ω 31.5822 27.1709 23.5671
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0111】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 320.0000 338.1045 351.8894
d(6) 51.8424 30.3910 12.9170 47.3384 23.6218 1.2458
d(26) 3.1320 6.4786 10.1681 7.6360 13.2477 21.8392
【0112】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
1 0.0000 -6.24256E-07 3.18906E-10 -2.00253E-13 5.51575E-17 0.00000E+00
2 0.0000 -1.14572E-06 -3.14935E-10 -6.57253E-14 -3.03110E-16 0.00000E+00
7 0.0000 -4.21603E-07 -9.68602E-11 6.83920E-14 7.85951E-16 0.00000E+00
8 0.0000 8.57444E-07 -6.72500E-11 8.36425E-13 7.52202E-17 0.00000E+00
25 0.0000 -1.26324E-06 -1.08689E-09 -1.64293E-12 1.04355E-14 0.00000E+00
26 0.0000 2.18065E-07 1.39808E-09 -1.17361E-11 2.81957E-14 0.00000E+00
29 0.0000 -7.19643E-05 1.69460E-07 -2.70814E-10 1.61170E-13 0.00000E+00
30 0.0000 -7.67922E-05 1.85884E-07 -3.28538E-10 1.97721E-13 0.00000E+00
【0113】
(レンズ群データ)
群番号 焦点距離
F -99.8218
M 54.9097
R 1499.5300
【実施例4】
【0114】
(1)光学構成
図13に実施例4のズームレンズのレンズ断面図を示す。
図13に示すように当該ズームレンズは、物体側から順に、全体で負の屈折力を有する前群Fと、正の屈折力を有する中間群Mと、負の屈折力を有する後群Rとから構成される。
【0115】
実施例4のズームレンズでは、前群Fは正の屈折力を有する第1レンズ群G1と負の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。中間群M及び後群Rはそれぞれ1つのレンズ群から構成されている。広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1は像側に移動し、第2レンズ群G2は像側に移動し、中間群Mは物体側へ移動し、後群Rは光軸方向に固定される。また、前群Fと中間群Mの光軸上の間隔は広角端で最大となり、中間群Mと後群Rの光軸上の間隔は望遠端で最大となる。また、無限遠から近距離への合焦時、中間群M全体が光軸上を物体側へ移動し、前群F及び後群Rは光軸方向に固定される。以下、各レンズ群の構成を説明する。
【0116】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL1から構成される。
【0117】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、両凹レンズL3と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL4とから構成される。
【0118】
中間群Mは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL5と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL7と、両凹レンズL8と、両凸レンズL9と、両凸レンズL10及び物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL11を接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12及び両凸レンズL13を接合した接合レンズとから構成される。正メニスカスレンズL5は、物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL13は像側を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。開口絞りSは、中間群M中の負メニスカスレンズL7と両凹レンズL8の間に配置されており、中間群Mにおいて開口絞りSの物体側に配置されるレンズにより本件発明にいう物体側部分群Aが構成され、開口絞りSの像側に配置されるレンズにより本件発明にいう像側部分群Bが構成される。
【0119】
後群Rは、物体側から順に、両凸レンズL14と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL15と、両凹レンズL16及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL17を接合した接合レンズとから構成される。負メニスカスレンズL15は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。負メニスカスレンズL15の像側面と両凹レンズL16の物体側面とで形成される凸形状の空気レンズを有する。当該空気レンズは負の屈折力を有する。
【0120】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例として、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「レンズ群データ」を示す。また、
図14、
図15及び
図16に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。
【0121】
(レンズデータ)
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1 165.7633 4.8202 1.72916 54.67
2 1333.9829 d(2)
3 695.3060 2.0000 1.90366 31.31
4 50.8534 10.1877
5 -203.5528 1.8000 1.49700 81.61
6 102.1706 5.2134
7 84.0300 5.2886 1.92286 20.88
8 454.9074 d(8)
9ASPH 52.0250 5.7206 1.88202 37.22
10 4869.8234 2.1420
11 39.3316 9.0000 1.87070 40.73
12 126.5072 0.1500
13 70.6711 1.3000 1.76182 26.52
14 22.7879 7.2053
15S ∞ 2.6637
16 -92.5922 1.0000 1.76182 26.52
17 48.0201 1.4024
18 123.2479 3.3071 1.72916 54.67
19 -114.9968 0.1500
20 125.9760 9.6753 1.43700 95.10
21 -18.5857 1.2000 1.67300 38.26
22 -88.3908 0.1500
23 64.8822 1.2000 1.65844 50.88
24 26.8647 11.7584 1.59201 67.02
25ASPH -29.7799 d(25)
26 102.7895 5.0000 1.92119 23.96
27 -171.4539 0.1500
28ASPH 27.3978 1.5000 1.85135 40.10
29ASPH 19.0852 6.5648
30 -59.7737 1.5000 1.67270 32.10
31 28.7451 5.4800 1.92286 20.88
32 100.0000 13.5001
33 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
34 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0122】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 36.0006 41.9999 48.6000
FNo. 1.4801 1.4801 1.4800
ω 31.7803 27.1832 23.4709
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0123】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 330.0000 339.7072 344.0992
d(2) 1.3000 8.4207 17.0478 1.3000 8.4207 17.0478
d(8) 42.6615 23.7995 8.8952 39.0309 18.6911 1.5476
d(25) 1.5090 3.5428 5.4283 5.1396 8.6512 12.7759
【0124】
(非球面係数)
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
9 0.0000 -1.43431E-06 -4.02444E-10 2.32652E-13 -1.91326E-16 0.00000E+00
25 0.0000 3.64806E-06 2.14907E-09 -3.46789E-13 3.27350E-15 0.00000E+00
28 0.0000 -5.83173E-05 2.04628E-07 -5.62437E-10 6.49865E-13 0.00000E+00
29 0.0000 -6.58835E-05 2.14413E-07 -6.16486E-10 4.86817E-13 0.00000E+00
【0125】
(レンズ群データ)
群番号 焦点距離
G1 259.1410
G2 -75.0877
M 52.1137
R -121.6650
【0126】
[表1]
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
条件式(1)Hm / Hs 1.481 1.329 1.576 1.429
条件式(2)Ra / ft 0.549 0.846 0.545 0.469
条件式(3)(Rrf+Rrb)/(Rrf-Rrb) -0.417 -0.573 -0.647 -0.516
条件式(4)BF / Y 0.746 0.746 0.751 0.746
条件式(5)fa / fb 1.382 0.950 0.761 1.163
条件式(6)Rmf / ft 1.093 1.517 0.954 1.070
条件式(7)Rmr / ft -0.909 -1.182 -0.970 -0.613
条件式(8)ff / fm -2.221 -1.305 -1.818 -2.035
条件式(9)fm / fw 1.489 2.092 1.525 1.448
【0127】
[表2]
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
Hm 22.698 21.199 23.202 21.230
Hs 15.331 15.950 14.723 14.858
Ra 26.623 28.754 26.486 22.788
Rrf 21.749 25.235 23.954 19.085
Rrb -52.812 -92.850 -111.717 -59.774
BF 16.148 16.149 16.246 16.148
Y 21.633 21.633 21.633 21.633
fa 73.868 57.850 55.994 61.059
fb 53.456 60.894 73.571 52.493
Rmf 52.986 51.581 46.370 52.025
Rmr -44.072 -40.192 -47.138 -29.780
ff -119.054 -67.415 -99.822 -106.052
fm 53.607 51.668 54.910 52.114
【産業上の利用可能性】
【0128】
本件発明によれば、大口径でありながら、全体的に小型で、簡素な変倍機構を採用することができ、且つ、高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0129】
G1 ・・・第1レンズ群
G2 ・・・第2レンズ群
S ・・・開口絞り
CG ・・・カバーガラス
IP ・・・像面