(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240311BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240311BHJP
B41J 11/68 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/165 209
B41J2/01 305
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J11/68
(21)【出願番号】P 2020037062
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】祖家 健児
(72)【発明者】
【氏名】東 悟史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】横澤 琢
(72)【発明者】
【氏名】国峯 昇
(72)【発明者】
【氏名】愛知 晶子
(72)【発明者】
【氏名】平 寛史
(72)【発明者】
【氏名】川藤 洋志
(72)【発明者】
【氏名】茂木 紗衣
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-091200(JP,A)
【文献】特開2007-268826(JP,A)
【文献】特開2009-155004(JP,A)
【文献】特開2019-104214(JP,A)
【文献】特開2015-174211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
B41J 11/68-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段で搬送された記録媒体を支持するプラテンと、
前記プラテンと対向し、前記第1の搬送手段で搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する交差方向に移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドの前記搬送方向における下流の所定の位置において、前記第1の搬送手段で記録媒体を搬送する際に前記搬送方向に記録媒体を切断するスリッターと、
前記スリッターで記録媒体を切断して、画像が記録された記録物と前記交差方向において記録物から切断された切断片とを排出する制御を行う制御手段と、を備える記録装置であって、
前記切断片となる領域において、記録媒体を挟持領域で挟持して記録媒体を搬送する第2の搬送手段を備え、
前記制御手段は、前記切断片となる領域
における前記挟持領域でない領域に前記記録ヘッドによってインクを吐出する
第1の予備吐出を実行することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御
手段は、記録媒体の幅と、記録媒体に記録される画像領域と
、前記挟持領域とに基づいて、
前記切断片となる領域における前記挟持領域でない領域にインクを吐出することを決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記挟持領域に前記記録ヘッドによってインクを吐出する第2の予備吐出を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御
手段は、記録媒体の幅と、画像領域と、記録媒体で予備吐出を行う吐出領域とに基づいて、画像の記録位置を決定することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記プラテンに配され、前記記録ヘッドから吐出されたインクを受ける受け部を有することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記切断片となる領域にインクを吐出するか、前記受け部にインクを吐出するかを選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記交差方向において、記録媒体の一方の端部側は、前記受け部にインクを吐出し、他方の端部側は、前記切断片となる領域にインクを吐出することを特徴とする請求項5または6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記第2の搬送手段は前記スリッターに設けられ、
前記スリッターを前記交差方向に移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記搬送方向において前記記録
ヘッドの下流に設けられ、前記交差方向に記録媒体を切断するカッターを備えることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送方向に切断する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートの幅方向に移動可能なスリッターを有する記録装置が開示されている。この記録装置では、スリッターによってシートを搬送方向に切断することができる。この結果、シートから幅方向の余白を切断して、所望の画像が記録された任意のサイズの記録物を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録装置には、記録ヘッドからインクをシートに吐出させて画像を記録するインクジェット記録装置がある。このようなインクジェット記録装置では、記録ヘッドからのインクの吐出性能を維持回復するためにシートの外側のインクの受け部にインクを吐出する予備吐出を行う場合がある。このとき、記録ヘッドはシートから切断される余白を超えて移動して予備吐出を行うことになる。このため、予備吐出のための記録ヘッドの移動距離が長くなり、所望の画像を記録するための時間が長くなるという課題がある。本発明の目的は、予備吐出のための記録ヘッドの移動距離を短くする記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の記録装置は、記録媒体を搬送方向に搬送する第1の搬送手段と、前記第1の搬送手段で搬送された記録媒体を支持するプラテンと、前記プラテンと対向し、前記第1の搬送手段で搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する交差方向に移動するキャリッジと、前記記録ヘッドの前記搬送方向における下流の所定の位置において、前記第1の搬送手段で記録媒体を搬送する際に前記搬送方向に記録媒体を切断するスリッターと、前記スリッターで記録媒体を切断して、画像が記録された記録物と前記交差方向において記録物から切断された切断片とを排出する制御を行う制御手段と、を備える記録装置であって、前記切断片となる領域において、記録媒体を挟持領域で挟持して記録媒体を搬送する第2の搬送手段を備え、前記制御手段は、前記切断片となる領域における前記挟持領域でない領域に前記記録ヘッドによってインクを吐出する第1の予備吐出を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予備吐出のための記録ヘッドの移動距離を短くする記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】スリッターとカッターの構成を示す上面図である。
【
図4】記録装置の制御系を説明するブロック図である。
【
図5】記録画像の位置を決定するフローチャートである。
【
図6】記録画像の位置を決定するフローチャートである。
【
図7】画像の記録およびシートの切断の様子を示す図である。
【
図8】画像の記録およびシートの切断の様子を示す図である。
【
図9】画像の記録およびシートの切断の様子を示す図である。
【
図10】画像の記録およびシートの切断の様子を示す図である。
【
図11】記録画像の位置および予備吐出の位置を決定するフローチャートである。
【
図12】記録パス数と吐出領域L2の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状等は、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
なお、以下の実施形態の説明において、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広くシート上に画像、模様、パターン等を形成する場合も含まれる。また、本発明の実施形態では記録媒体としてロールシートを想定しているが、カット紙、布、プラスチック・フィルム、ボード等であってもよい。
【0010】
[第1の実施形態]
<インクジェット記録装置>
ここで
図1から
図4を用いて本発明のインクジェット記録装置について説明をする。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す断面図である。インクジェット記録装置100(以下、記録装置100)は、長尺のシート状の記録媒体に画像の記録を行う。本実施形態において記録媒体は、シートが巻回されたロールシートである。インクジェット記録装置100に保持されたロールシートは、1枚の厚みのシート1として上ガイド6及び下ガイド7で形成される搬送路を通り、搬送方向(Y方向)に送られる。その後、シート1は、搬送ローラ8とピンチローラ9とによって挟持され、画像記録部に搬送される。画像記録部は、記録ヘッド2と、記録ヘッド2を搭載するキャリッジ3と、記録ヘッド2に対向する位置に配置されたプラテン10とを含む構成である。シート1は、搬送ローラ8によって、プラテン10へと搬送される。画像記録部に搬送されたシート1はプラテン10で支持される。記録ヘッド2は、プラテン10で支持されたシート1にインクが吐出して画像を記録する。
【0011】
キャリッジ3は、インクジェット記録装置100に互いに平行に配置されたガイドシャフト4と不図示のガイドレールとに沿って摺動可能に支持されている。キャリッジ3は、プラテン10に対向する反射型の検出センサ12を有しており、スポット位置の反射率を検出できる。すなわち、プラテン10が黒色、シート1が白色の場合、両者の反射率は大きく異なるので、スポット位置にプラテン10があるかシート1があるかを判定できる。したがって、搬送ローラ8でシート1を搬送中にシート1の搬送方向における先端部が検出センサ12のスポット位置を通過すると反射率が大きく変化することを利用して、シート1の先端部を検出することができる。
【0012】
キャリッジ3は、記録ヘッド2を搭載してガイドシャフト4に沿ってX方向に走査する。記録ヘッド2は、キャリッジ3によるシートの幅方向への走査とともにインクを吐出することによってシート1に画像を記録する。キャリッジ3を走査してシート1に画像の記録を行う記録動作の後に、搬送ローラ8はシート1を所定量搬送する搬送動作を行う。この記録動作と搬送動作とを繰り返すことで所望の画像の記録が完成する。また、検出センサ12は、キャリッジ3に搭載されているので、キャリッジ3の往復動作によってシート1の幅方向(X方向)の側端部の位置も検出することができる。
【0013】
図2は、スリッターとカッターの構成を示す上面図である。ここで、プラテン10において、シート1の幅によらずシート1の一方の側端部が所定位置となる-X方向を基準側とする。一方、シート1の幅に応じてシートの他方の側端部の位置が変わる+X方向を非基準側とする。また、シート1に対する画像を記録する記録位置は、所定位置を基準とする。シート1から切断される記録物の基準側の端部をX3、非基準側の端部をX4とする。なお、シート1の幅に対して画像領域(幅方向のX3~X4間)が小さい場合は、基準側であるX3に対して、X4の位置および切断片81Lの幅が変わる。
【0014】
シート1の搬送方向における記録ヘッド2の下流には、搬送方向と交差する交差方向(X方向)にシート1を切断するためのカッター5が設けられ、さらにその下流にシート1を所定位置において搬送方向に切断するためのスリッター13が設けられている。スリッター13の下流には、切断されたシート1を排出する排出ガイド17が設けられている。カッター5は、シート1を切断する切断手段としてのカッターユニット300と、カッターユニット300をX方向に沿って移動させるためのユニットとを有する。また、スリッター13は、シート1を切断する切断手段としてのスリッターユニット303L、303Rと、スリッターユニット303L、303RをX方向に沿って移動させるためのユニットとを有する。
【0015】
スリッターユニット303L、303Rは、スリッターガイドレール107に沿ってシート1の搬送方向と交差する交差方向(X方向)に移動可能であり、シート1の切断の必要がない場合はプラテン10の外側まで退避する。スリッターユニット303L、303Rはそれぞれスリッター移動モータ106L、106Rが設けられ、ギアを介してスリッター移動ローラ306L、306Rに駆動が伝達される。このため、スリッターユニット303L、306Rは、それぞれ独立に移動可能である。またスリッターユニット303L、303Rにはスリッター駆動モータ108L、108Rが設けられており、ギアを介して回転可動する刃に駆動が伝達される構成になっている。
【0016】
図3は、スリッターの構造を示す正面図である。スリッターユニット303L、303Rは左右対称の構成であるため、スリッターユニット303Lを用いて説明する。スリッター駆動モータ108Lは、ギアを介してスリッター上搬送ローラ320Lと、同軸上のスリッター上可動刃304Lを回転させている。スリッター上搬送ローラ320Lの+Z方向にはスリッター下搬送ローラ321Lが設けられており、ローラ対として外径で当接し、スリッター下搬送ローラ321L側が従動ローラとして摩擦によって駆動が伝達される。スリッター下搬送ローラ321Lの-X方向にはスリッター下可動刃305Lを設けられており、スリッター下搬送ローラ321Lと回転一体として動くようになっている。したがって、シート1は、スリッター上搬送ローラ320L及びスリッター下搬送ローラ321Lによってシート1の挟持領域L1(
図5参照)を挟持されて搬送される。この際、スリッター上可動刃320L及びスリッター下可動刃321Lの刃が共に回転しながらシート1を搬送方向に切断する。
【0017】
記録ヘッド2は、インクの吐出性能を維持回復する目的として、記録データが送信されるまでの間や画像を記録している間に記録に寄与しないインクを吐出する予備吐出動作を行う。受け部70は、記録ヘッド2に対向して、予備吐出の際にインクを受けるための開口である。プラテン10の基準側に受け部70aが、非基準側に受け部70bがそれぞれ設けられている。受け部(70a、70b)は、不図示のインク回収容器につながっている。予備吐出動作の際に、記録部は受け部または切断片にインクを吐出する。この際、記録ヘッド2は受け部(70a、70b)、およびシート1からスリッターユニット303L、303Rによって切断される切断片(81L、81R)のいずれかに対向する位置に移動する。記録ヘッド2は、画像を記録するためにインクを吐出してからの経過時間を計時手段80(
図4参照)によって計測し、所定時間が経過した後に予備吐出を行う。なお、記録ヘッドからのインクの吐出数または吐出量に基づいて予備吐出動作を実行しても良い。
【0018】
図4は、記録装置100の制御構成を示す概略ブロック図である。記録装置100は、制御部400を備えている。また、制御部400は、CPU411、ROM412、RAM413、モータドライバ414、及びストレージ415を備えている。制御部400は、搬送モータ51、カッターモータ103、スリッター移動モータ106L/R、スリッター駆動モータ108L/R、キャリッジモータ52、及び記録ヘッド2の制御を実行する。また、制御部400は、搬送ローラエンコーダ112、カッターエンコーダ104、スリッター移動エンコーダ309、スリッター駆動エンコーダ310、キャリッジエンコーダ21、検出センサ12、および計時手段80からの信号を取得する。そして、制御部400は、これらの信号に基づいて、各種モータ及び記録ヘッド2を制御し、記録動作、搬送動作、予備吐出動作を行う。
【0019】
<画像の記録位置>
ここで、シート1に画像を記録する記録位置を決定するフローチャートについて
図5および
図6を用いて説明をする。また、
図7から
図9は、シート1への画像の記録およびシート1の切断の様子を示す図である。シート上の記録物の幅となる画像領域Wの端部の位置X3、X4が決まると、スリッターユニット303L,303Rは、画像領域Wの端部X3、X4の位置に合わせて移動する。フローチャートの各処理は、CPU411がROM412に記憶されているプログラムコードをRAM413に展開して実行することにより行われる。なお、処理の一部または全部の機能をASICや電子回路などのハードウェアで実現してもよい。
【0020】
S101工程において、制御部400は記録データと記録物の幅となる画像領域Wを取得する。記録データと画像領域Wは、不図示の外部のホスト装置から送信される記録ジョブに含まれている。なお、不図示の外部メディアを記録装置100に装着して外部メディアから記録データと画像領域を取得してもよい。また、不図示の操作パネル等を通じてユーザーが記録装置100に指示することによって記録データと画像領域Wを取得してもよい。
【0021】
S102工程において、制御部400は記録装置100に保持されたシート1のサイズの情報をストレージ415から取得する。ここで、シート1のサイズの情報は、シート1の幅である。なお、シート1の幅の情報は、キャリッジ3の往復動作によって検出センサ12で検出して取得しても良い。また、不図示の操作パネル等を通じてユーザーが記録装置100にシート1の幅を入力してもよい。
【0022】
S103工程において、制御部400はシート1をスリッター13によって切断するかを判定する。具体的にはシートの幅が画像領域W+挟持領域L1×2より大きいか比較する。
図7に示すように、スリッターユニット303L、303Rは切断片となるシートの挟持領域L1を挟持しながら搬送する。このため、画像領域W+挟持領域L1×2よりシートの幅が小さい場合はシート1をスリッター13によって挟持できない。画像領域Wとシート1の幅が一致する場合も、シート1を切断する必要はない。この場合、スリッター13による切断は行わない。したがって、切断片81L、81Rへの予備吐出も行わない。この場合、S109工程に進む。シート1を切断する場合は、S104工程に進む。
【0023】
S104工程において、制御部400は画像領域Wの両端に、挟持領域L1と、シート1に予備吐出に必要な吐出領域L2とを配置できるかを判定する。具体的にはW+(L1+L2)×2よりシートのサイズが大きいか比較する。条件を満たし、両端に挟持領域L1と吐出領域L2を配置できる場合、S105工程に進む。一方、両端に挟持領域L1と吐出領域L2を配置できない場合は、S107工程に進む。
【0024】
なお、記録装置100は、シート1の種類によって複数の吐出領域L2をストレージ415に記憶しておいてもよい。例えば、スリッター13による搬送精度および切断精度を確保するために、薄いシートやインクを吸収しにくいシートは吐出領域L2の幅を広くする。この結果、単位面積あたりの記録ヘッド2からのインクの吐出を少なくできる。一方、厚いシートやインクを吸収しやすいシートは、吐出領域L2を狭くする。
【0025】
S105工程において、制御部400は画像領域Wの端部X3、X4の位置を基準側のシートの側端部からL1+L2だけ非基準側へ移動させる。また、スリッターユニット303L、303Rを、端部X3、X4に移動する。
【0026】
S106工程において、制御部400は切断片81L、81Rの吐出領域L2の予備吐出を許可する両側フラグをONにする。両側フラグがONの場合、シートに画像を記録する記録動作の途中で、必要に応じてシートの両側の切断片81L,81Rの吐出領域に予備吐出を行う。
【0027】
S107工程において、制御部400は記録装置100の設定がスリッター上搬送ローラ320L、320Rの汚れを回避する回避モードかを判定する。回避モードがONの場合、記録ヘッド2は挟持領域L1に予備吐出を行わない。その結果、スリッター上搬送ローラ320L、320Rは吐出されたインクに接触することがないため、汚れを回避することができる。なお、回避モードはユーザーが不図示の操作パネル等を通じて変更可能である。インクの吸収性の良いシートでスリッター上搬送ローラ320L、320Rへのインクの付着が少ない場合は、回避モードをOFFに設定する。一方、インクの吸収性の悪いシートでは回避モードをONに設定する。回避モードがONの場合、S108工程に進む。一方回避モードがOFFの場合、S201工程(
図6参照)に進む。
【0028】
S108工程において、制御部400は、シート1上で画像領域Wの両端に挟持領域L1と、一端に吐出領域L2を設けられるかを判定する。シート1の一端に吐出領域L2を設けられる場合はS110工程に進む。一方、シート1の一端に吐出領域L2を設けられない場合は、S109工程へ進む。
【0029】
S110工程において、制御部400は画像領域Wの端部X3、X4の位置を基準側のシートの端部からL1だけ非基準側へ移動させる。また、スリッターユニット303L、303Rを、端部X3、X4の位置に移動する。
【0030】
S111工程において、制御部400は切断片81Lの吐出領域L2への予備吐出を許可する片側フラグをONする。片側フラグがONの場合、記録動作の際に必要に応じてシート1の基準側において受け部70aで予備吐出を行い、非基準側において切断片81Lの吐出領域で予備吐出を行う。
【0031】
S109工程において、制御部400は、シート1に予備吐出を行わないため、予備吐出フラグをOFFにする。スリッター13でシートを挟持できないためである。この場合、記録動作の際に、記録ヘッド2は受け部70a、70bに対してのみ予備吐出を行う。また、制御部400は、スリッターユニット303L、303Rをそれぞれ+X方向、-X方向に退避する。
【0032】
ここで、S107工程において回避モードがOFFの場合について
図6を用いて説明をする。回避モードがOFFの場合、記録ヘッド2は挟持領域L1で予備吐出を行う。ただし、フチなし記録の場合、挟持領域L1からフチなし記録におけるはみだした領域Eを除いた領域で予備吐出を行う。このため、フチなし記録とフチあり記録では予備吐出可能な幅が異なる。
【0033】
図8に示すように、フチなし記録の場合記録ヘッド2は画像領域W(X3~X4間)からL1の領域にはみだして記録を行う。S201工程以降、フチあり記録の場合はS205~S207工程、フチなし記録の場合はS202~S204工程である。はみ出し量Eの取り扱いが異なるだけであるため、S202~S204工程までの工程は、S205~S207工程のフチあり記録の場合で説明する。
【0034】
S205工程において、制御部400は、挟持領域L1の中に、吐出領域L2が入るかを判定する。具体的には挟持領域L1が吐出領域L2より大きいか比較する。入ると判定された場合、S208工程に進む。入らないと判定された場合S206工程へ進む。
【0035】
S208工程において、制御部400は、画像領域Wの端部X3、X4の位置を基準側のシートの端部からL2だけ非基準側へ移動させる。また、スリッターユニット303L、303Rを、端部X3、X4の位置に移動する。その後S106工程において制御部400は、切断片81L、81Rへの予備吐出を許可する両側フラグをONにする。
【0036】
S206工程において、制御部400は、画像領域Wの両端に挟持領域L1より幅の広い吐出領域L2を配置できるか判定する。配置できる場合は、S209工程に進む。
【0037】
S209工程において、制御部400は、画像領域Wの端部X3、X4の位置を基準側のシートの端部からL2だけ非基準側へ移動させる。また、スリッターユニット303L、303Rを、端部X3、X4の位置に移動する。その後S106工程において制御部400は、切断片81L、81Rへの予備吐出を許可する両側フラグをONにする。
【0038】
S207工程において、制御部400は、画像領域Wの一端に挟持領域L1、他端に吐出領域L2を配置できるか判定する。配置できる場合は、S110工程へ進む。その後S111工程において、片側フラグをONにする。なお、S207工程において、画像領域Wの幅方向一端に吐出領域L2を配置できないと判定された場合、S109工程へ進み、切断片への予備吐出を許可せず、記録ヘッド2は受け部70a、70bに対してのみ予備吐出を行う。
【0039】
本実施形態では、シートの片側の切断片に予備吐出を行う場合、画像領域Wの非基準側の端部に吐出領域L2を配置する制御を説明したが、基準側の端部に吐出領域L2を配置してもよい。
【0040】
以上のように、余白となる切断片を超えて受け部に予備吐出をしないため、予備吐出のための記録ヘッドの移動距離を短くする記録装置を提供することができる。また、切断片となる予備吐出領域にインクを吐出することによって廃インク回収容器にインクが溜まることを低減することができる。
【0041】
[第2の実施形態]
第2の実施形態においては、シートと受け部とに選択的に予備吐出を行うことで記録にかかる時間を短くする場合について説明をする。ここでは、第1の実施形態との差について主に説明をする。
【0042】
図10はシート1への画像の記録およびシート1の切断の様子を示す図である。ここでシート1の側端部から受け部70aまたは70bとの距離を受け部距離L3とする。一般的に、受け部70aおよび70bに予備吐出をするよりも、シートの吐出領域L2に予備吐出する方がキャリッジの移動距離が短い。キャリッジの移動距離が短くなれば、記録する時間が短くなる。しかし、特定条件においては、シートの両側の切断片81L、81Rに予備吐出する方が、一方の端部側で切断片に予備吐出し他方の端部側で受け部に予備吐出するよりも記録する時間が長くなる。具体的には吐出領域L2>受け部距離L3の関係となった場合である。L2>L3の関係となる場合として、画像品位を向上させるため記録パス数が大きい場合が挙げられる。パス数とは、シートの同一領域に対して記録ヘッドが走査する回数である。
図12は記録パス数と吐出領域L2の関係を示す図であり、
図12(a)は1パス、
図12(b)は4パスの例である。ここでは、記録ヘッド2を3回それぞれ走査する場合が示されている。NLはノズル長、YLは1パスあたりの予備吐出に必要な幅である。1パスあたりの予備吐出に必要な幅YLは、シート1上に単位面積あたりに吸収できるインク量の上限量を予備吐出するためである。そのため、記録パス数が大きくなるにつれて合計の吐出領域L2は増加し、L2=パス数×YLとなる。ところが、受け部上に予備吐出する場合にはそのような制限は存在しないため、受け部上に予備吐出を実行するために必要な移動距離(L3)は、パス数によらず一定である。なお、予備吐出は、走査ごとに毎回行っても良いし、一定の条件になった場合だけ行っても良い。
【0043】
図11は本実施形態におけるフローチャートである。第1の実施形態との差についてのみ説明をする。
図11(a)において、S301工程が追加されている。
【0044】
S104工程において、制御部400は画像領域Wの両端に、挟持領域L1と、シート1に予備吐出に必要な吐出領域L2とを配置できるかを判定する。具体的にはW+(L1+L2)×2よりシートのサイズが大きいか比較する。条件を満たし、両端に挟持領域L1と吐出領域L2を配置できる場合、S301工程に進む。
【0045】
S301工程において、制御部400は、L2とL3の大きさの比較を行う。ここで、両側をシートに予備吐出した場合のキャリッジの移動距離をTAとして、非基準側のみシートに予備吐出して基準側を受け部70aに予備吐出した場合のキャリッジ3の移動距離をTBとする。このとき、TA=画像領域W+(L1+L2)×2であり、TB=画像領域W+L1×2+L2+L3であるから、L2>L3の条件ではTA>TBとなる。すなわち、予備吐出に必要な吐出領域L2が受け部距離L3を超えるような条件では、両側のシートに予備吐出をするよりも、非基準側のみシートに予備吐出して基準側を受け部70aに予備吐出した方がキャリッジの移動距離が短くなる。この結果、記録する時間が短くなる。一方、L2<L3の場合は、S105工程に進む。S105工程において、制御部は、記録データ位置をL1+L2だけ非基準側へ移動させる。その後、S106工程で、切断片81L、81Rへの予備吐出を許可する両側フラグをONとする。一方、L2≧L3の場合はS110工程に進み、記録データ位置をL1非基準側へ移動する。その後、S111工程で、切断片81Lへの予備吐出を許可する片側フラグをONとする。
【0046】
次に、本実施形態における汚れの回避モードがOFFでかつフチなし記録の条件について
図11(b)によって説明する。
図11(b)において、第1の実施形態と比べて、S302工程が追加されている。
【0047】
S206工程において、制御部400は、画像領域Wの両端に挟持領域L1より幅の広い吐出領域L2を配置できるか判定する。配置できる場合は、S302工程に進む。
【0048】
S302工程において、制御部400は、シートの両端に予備吐出した場合と、基準側を受け部に予備吐出し、非基準側をシートに予備吐出した場合のキャリッジ3の移動距離を比較する。ここで、両端でシートに予備吐出した場合のキャリッジの移動距離をTAとして、非基準側のみシートに予備吐出して基準側を受け部70aに予備吐出した場合のキャリッジ移動距離をTBとする。なお、汚れの回避モードがOFF、かつ、フチなし記録の条件かつ、L2≧L1である。このため、TA=画像領域W+L2×2であり、TB=画像領域W+L2+L1+L3である。L1+L3<L2の条件ではTA>TBとなる。すなわち、吐出領域L2が、受け部距離L3と挟持領域L1を超えるような条件では、両側をシートに予備吐出するよりも、非基準側のみシートに予備吐出して、基準側を受け部70aに予備吐出した方が、キャリッジの移動距離が短くなる。この結果、記録の時間が短くなる。
【0049】
L3+L1<L2の場合は、S209工程に進む。制御部400は、画像領域Wの端部X3、X4の位置を基準側のシートの端部からL2だけ非基準側へ移動させる。その後S106工程に進み切断片81L,81Rへの予備吐出を許可する両側フラグをONにする。L3+L1≧L2の場合はS110工程に進む。制御部400は画像領域Wの端部X3、X4の位置を基準側のシートの端部からL1だけ非基準側へ移動させる。その後S111工程に進み切断片81Lへの予備吐出を許可する片側フラグをONにする。
【0050】
なお、この記録装置では、全て受け部等に予備吐出するか、シートの両端に予備吐出するか、片端をシートで他端を受け部等に予備吐出するか、を選択できる。これら選択は、予め記録モードや用紙種類などに応じてルックアップテーブルとしてROM412に記憶しておいて適宜読み出して決定してもよい。また、ユーザーが不図示の操作パネル等を通じて適宜変更可能にしてもよい。なお、キャリッジの移動距離に着目して説明を行ったが、実際のキャリッジの加減速領域における速度低下なども考慮して、キャリッジの移動時間で同様の計算をしてもよい。また、非基準側はシートに予備吐出し、基準側は受け部上に予備吐出する例で説明したが、基準側と非基準側で受け部距離L3が同じであれば、それぞれ入れ替えても良い。また、基準側と非基準側で受け部距離L3が異なるならば、次のようにすればよい。すなわち、基準側の受け部距離をL3H、非基準側の受け部距離をL3Aとして、L3H>L3AかつL2>L3Aならば、基準側はシートに予備吐出して、非基準側は受け部に予備吐出すれば良い。
【0051】
なお、記録パス数、環境温湿度、キャリッジ移動速度プロファイル、シートの種類、シートの幅によって、吐出領域L2や、L2とL3の大小関係などが異なってくる。このため、CPU411を用いて最適な予備吐出の位置をその都度計算してもよいし、あらかじめテーブルとしてROM412に記憶しておいて適宜読み出してもよい。
【0052】
以上のように、予備吐出に必要な吐出領域L2と受け部距離L3を比較することによって、シートに両側に予備吐出が可能であっても、片側のみシートに予備吐出を行う。この結果、予備吐出のための記録ヘッドの移動距離を短くする記録装置を提供することができる。また、切断片となる予備吐出領域にインクを吐出することによって廃インク回収容器にインクが溜まることを低減することができる。
【符号の説明】
【0053】
2 記録ヘッド
3 キャリッジ
8 搬送ローラ
10 プラテン
13 スリッター
400 制御部