(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電子部品の実装装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240311BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2020056461
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正規
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-128384(JP,A)
【文献】特開2013-102016(JP,A)
【文献】特開2015-204349(JP,A)
【文献】特開2013-065802(JP,A)
【文献】特表2008-522417(JP,A)
【文献】特開2008-085322(JP,A)
【文献】特開平05-198623(JP,A)
【文献】特開2013-055207(JP,A)
【文献】特開2003-318228(JP,A)
【文献】特開2003-297880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を保持する実装ヘッドが、実装位置において前記電子部品を基板に実装する実装機構と、
前記電子部品が実装される前記基板を支持する基板支持機構と、
前記電子部品を供給する供給部と、
前記電子部品を前記供給部から前記実装位置に移送する移送部と、
を有し、
前記移送部は、
前記供給部における前記電子部品の載置面から前記電子部品をピックアップし、前記実装ヘッドへ渡す移送ヘッドと、
一端に前記移送ヘッドが設けられたアーム部と、
平面視で前記載置面に重なりの無い位置に設けられた摺動部を有し、前記摺動部の摺動に従って前記アーム部を駆動することにより、前記供給部と前記実装位置との間で前記移送ヘッドを移動させる移送機構と、
を有し、
前記移送ヘッドは、モータにより駆動され、前記電子部品を反転させる反転ヘッドであ
り、
前記モータに電力を供給するケーブルが、前記アーム部に内蔵されていることを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項2】
前記摺動部は、前記載置面の高さ位置よりも低い位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項3】
前記移送ヘッドは、負圧により前記電子部品を吸着する吸着ノズルを有し、
前記吸着ノズルに負圧を供給するチューブが、前記アーム部に内蔵されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品の実装装置。
【請求項4】
前記摺動部は、
直交する2軸に沿って直線状にスライド移動する第1の摺動部及び第2の摺動部を有し、
前記第1の摺動部及び前記第2の摺動部は、共通の移動体の2側面に配置されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の電子部品の実装装置。
【請求項5】
前記実装ヘッドは、前記実装機構に設けられ、前記電子部品を保持した状態で、前記基板のマークを透過して認識可能とする透過部を有し、
前記実装ヘッドが前記電子部品を前記基板に実装する実装位置において前記基板支持機構よりも下側に配置され、前記基板が前記実装位置から退避された状態で、前記実装ヘッドに保持された前記電子部品のマークを撮像する第1の撮像部と、
前記実装位置において前記実装ヘッドよりも上側に配置され、前記基板のマークを、前記透過部を通して撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部及び前記第2の撮像部により撮像されたマークの画像から求められた前記基板と前記電子部品の位置に基づいて、前記基板と前記電子部品との位置決めを行う位置決め機構と、
を有することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の電子部品の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品である半導体チップの基板に対する実装方法には、フェイスアップ、フェイスダウンがある。半導体チップの半導体層が形成された面をフェイスと呼ぶ。このフェイス側を基板と反対側にして実装する方法がフェイスアップである。例えば、半導体チップをリードフレームなどにマウントし、電極とフレームとの間をワイヤーで配線する場合には、フェイスアップによる実装となる。
【0003】
フェイス側を基板に向けて実装する方法がフェイスダウンである。例えば、半導体層の表面にバンプ電極を設けて、バンプ電極を基板の配線に押し付けることにより、固定と電気接続を行うフリップチップ接続の場合には、フェイスダウンによる実装となる。
【0004】
半導体チップなどの電子部品を基板に実装する際には、基板に対して電子部品を精密に位置決めしなければならない。これに対処するため、例えば、電子部品を吸着保持した実装ツールと基板との間に、上下両方向を同時に撮像できるカメラを進入させる。このカメラによって撮像された画像に基づいて、基板と電子部品との水平方向の相対位置を認識する。そして、認識された相対位置に基づいて、実装ツールの位置を補正した後、電子部品を基板に実装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体チップを多層に配置することにより集積度を高める3Dパッケージやハイブリッドボンディングでは、非常に狭いピッチの電極同士を接合する必要がある。このため、基板に対して電子部品を実装する際には、より高い精度、例えば、サブミクロンオーダーの精度が要求されるようになってきている。さらに、実装時に、実装のための機構部分の動作による誤差や、動作により発生する塵埃が、接合不良を招く可能性があるため、機構部分が動作する距離は、極力短くすることが好ましい。
【0007】
しかしながら、電子部品は、ウエーハシートに貼り付けられた状態から、移送ツール等によってピックアップされて反転された後、受取位置まで移動した実装ツールによる受け取りが行われ、実装位置まで搬送される。このように、実装ツールが電子部品を受け取る受取位置と、電子部品を基板に実装する実装位置との間で実装ツールが移動すると、実装位置において発生する塵埃の量が多くなる。これに対処するため、移送ツールによる移動距離を長くして、実装ツールの移動距離を抑えることが考えられる。しかし、移送ツールの移動距離を長くすると、移送ツールからの塵埃の発生により、ウエーハシートに貼り付けられた電子部品が影響を受ける可能性が高まる。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、発生する塵埃の影響を抑えて実装できる電子部品の実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子部品の実装装置は、電子部品を保持する実装ヘッドが、実装位置において前記電子部品を基板に実装する実装機構と、前記電子部品が実装される前記基板を支持する基板支持機構と、前記電子部品を供給する供給部と、前記電子部品を前記供給部から前記実装位置に移送する移送部と、を有し、前記移送部は、前記供給部における前記電子部品の載置面から前記電子部品をピックアップし、前記実装ヘッドへ渡す移送ヘッドと、一端に前記移送ヘッドが設けられたアーム部と、平面視で前記載置面に重なりの無い位置に設けられた摺動部を有し、前記摺動部の摺動に従って前記アーム部を駆動することにより、前記供給部と前記実装位置との間で前記移送ヘッドを移動させる移送機構と、を有し、前記移送ヘッドは、モータにより駆動され、前記電子部品を反転させる反転ヘッドであ
り、前記モータに電力を供給するケーブルが、前記アーム部に内蔵されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、発生する塵埃の影響を抑えて実装できる電子部品の実装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の実装装置の概略構成を示す正面図である。
【
図3】実装装置の平面図(A)、実装箇所の拡大平面図(B)である。
【
図4】電子部品の反転動作を示す拡大図であり、左側が正面図、右側が平面図である。
【
図5】電子部品のピックアップ動作を示す説明図である。
【
図6】電子部品の受け渡し動作を示す説明図である。
【
図8】電子部品のピックアップ動作と受け渡し動作の手順を示すフローチャートである。
【
図9】電子部品の実装手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、
図1及び
図2に示すように、電子部品Cを基板Sに実装する実装装置1である。
図1は実装装置1の概略構成を示す正面図である。
図2は、電子部品C及び基板Sを示す平面図である。なお、図面は模式的なものであり、各部のサイズ(以下、寸法とも呼ぶ)、形状、各部の相互のサイズの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0013】
[電子部品]
まず、本実施形態の実装対象となる電子部品Cは、例えば、ICやLSI等の半導体素子を挙げることができる。
【0014】
本実施形態は、
図2に示すように、電子部品Cとして、直方体形状の半導体チップを用いる。各半導体チップは、半導体ウエーハをさいの目状に切断するダイシングにより個片化したベアチップである。ベアチップは、むき出しの半導体にバンプ電極が設けられており、基板S上のパッドに接合するフリップチップ接続により実装される。
【0015】
電子部品Cには、位置決めのための複数のマークmが形成されている。本実施形態では、2つのマークmが、矩形状の電子部品Cの対角となる一対の角部に1つずつ形成されている。マークmは、電子部品Cの電極が形成された面、つまりフェイスに形成されている。本実施形態は、フェイス側を基板Sに向けて実装するフェイスダウン実装のための装置である。
【0016】
[基板]
上記のような電子部品Cが実装される基板Sは、
図2に示すように、プリント配線等が形成された樹脂製等の板状部材、或いは、回路パターンが形成されたシリコン基板等である。基板Sには、基板Sが実装される領域である実装領域Bが設けられ、実装領域Bの外側に、位置決めのための複数のマークMが設けられている。本実施形態では、2つのマークMが、実装領域Bの外側の位置であって電子部品Cのマークmに対応する位置に形成されている。
【0017】
[実装装置]
本実施形態の実装装置1は、高精度、例えば、±0.2μm以下の実装精度の実装を実現可能とする実装装置1で、
図1及び
図3に示すように、基板支持機構2、実装機構3、第1の撮像部4、第2の撮像部5、供給部6、移送部7、制御装置8を有する。
図3(A)は実装装置1の平面図、
図3(B)は実装ヘッド31を透過したマークMを示す平面図である。
【0018】
なお、以下の説明中において、実装機構3が電子部品Cを基板Sに実装するために移動させる方向をZ軸、これに直交する平面において互いに直交する2軸をX軸及びY軸とする。本実施形態では、Z軸は鉛直であり、重力に従う方向を下方、重力に抗する方向を上方とし、Z軸における位置を高さと呼ぶ。また、X軸及びY軸は水平面上にあり、
図1の正面側から見て、X軸は左右方向、Y軸は奥行方向である。但し、本発明は、この設置方向に限定するものではない。設置方向にかかわらず、基板S又は基板支持機構2を基準として、電子部品Cが実装される側を上側、その反対側を下側と呼ぶ。
【0019】
基板支持機構2は、電子部品Cが実装される基板Sを支持する機構であり、所謂、基板ステージである。実装機構3は、電子部品Cを基板Sに実装する機構である。実装機構3は、実装ヘッド31を有する。実装ヘッド31は、
図3(B)に示すように、電子部品Cを保持した状態で、電子部品Cに対向する基板SのマークMを、透過して認識可能とする透過部を有する。
【0020】
第1の撮像部4は、実装ヘッド31が電子部品Cを基板Sに実装する実装位置OAにおいて基板支持機構2よりも下側に配置されており、基板支持機構2によって基板Sが実装位置OAから退避された状態で、実装ヘッド31に保持された電子部品Cのマークmを、電子部品Cに対向する位置、つまり、下方から撮像する。実装位置OAは、基板Sに電子部品Cが実装される位置であり、図中、実装される電子部品Cの領域内のXY座標上の点(例えば、中心点)を通るZ軸に沿う方向の一点鎖線で示す。実装位置OAは、後述するように、第1の撮像部4、第2の撮像部5のカメラの光軸に一致する。第2の撮像部5は、実装位置OAにおいて実装ヘッド31よりも上側に配置されており、基板SのマークMを、実装ヘッド31の透過部を通して撮像する(以下、このことを「実装ヘッド31越しに撮像する」と言う)。このように撮像された画像に基づいて、マークm、Mの検知、つまりマークm、Mの認識が可能となる。
【0021】
なお、基板支持機構2、実装機構3は、それぞれ位置決め機構を有する。位置決め機構は、第1の撮像部4、第2の撮像部5が撮像したマークM、mの画像から求められた基板Sと電子部品Cの位置に基づいて、基板Sと電子部品Cとの位置決めを行う。以上のような実装装置1の各部は、設置面に設置された支持台11に搭載されている。支持台11の天面は水平面となっている。
【0022】
供給部6は、電子部品Cを供給する。移送部7は、電子部品Cを供給部6から実装位置ОAに移送する。移送部7は、移送ヘッド71、移送機構73を有する。移送ヘッド71は、供給部6から電子部品Cをピックアップし、反転させて実装ヘッド31に渡す。移送機構73は、基板支持機構2が基板Sを実装位置ОAから退避させることでできた空間に、移送ヘッド71を移動させ実装位置ОAに位置付ける。
【0023】
制御装置8は、実装装置1の動作を制御する。この制御装置8は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成される。つまり、制御装置8は、PLCやCPUなどの処理装置が、記憶装置からプログラム及びデータ等を読み出して、実装装置1の制御を実行する。以下、各部を詳述する。
【0024】
(基板支持機構)
図1及び
図3(A)に示すように、基板支持機構2は、支持台11に配置され、ステージ21、駆動機構22を有する。ステージ21は、基板Sを載置する板状の部材である。駆動機構22は、例えば、X軸方向のガイドレール22a、Y軸方向のガイドレール22bを有し、図示しないモータを駆動源としてベルト又はボールねじによりステージ21を水平面内で移動させる2軸移動機構である。この駆動機構22は、基板Sを位置決めする位置決め機構として機能する。なお、駆動機構22は、図示を省略しているが、ステージ21を水平面内で回転移動させるθ駆動機構を備える。
【0025】
駆動機構22は、ガイドレール22bに沿ってY軸方向に移動する移動板23を含み構成されている。この移動板23には、第1の撮像部4が電子部品Cを撮像可能となるように、貫通孔23aが形成されている。
【0026】
なお、図示はしないが、基板支持機構2のステージ21のX軸方向における移動端の一方(具体的には、図示右側の移動端)には、基板Sをステージ21に供給/格納するローダ/アンローダが設けられている。そこで、基板支持機構2は、上記移動端にステージ21を移動させた状態で、ローダから基板Sの供給を受けたり、アンローダに基板Sを渡したりする。
【0027】
(実装機構)
実装機構3は、実装ヘッド31、駆動機構32を有する。実装ヘッド31は、概略、直方体形状であり、透過部としての、中空部31a及び保持部31bを有する。中空部31aは、Z軸方向を軸として形成された円柱形状の貫通孔である。保持部31bは、撮像のための光を透過可能な板状部材であり、中空部31aにおける基板Sに向かう側の開口を塞ぐように取り付けられている。例えば、透明なガラス板を保持部31bとして用いる。保持部31bは、所謂、実装ツールであり、電子部品Cを保持する。
【0028】
保持部31bの中央には、
図3(B)に示すように、電子部品Cを吸着保持するための吸着領域Dが設けられている。吸着領域Dには、図示はしないが、吸着孔が形成されている。保持部31bの内部には吸着孔を負圧源に連通させるための流路が形成されており、吸着孔に負圧を発生させることにより、電子部品Cを吸着保持可能に設けられている。保持部31bの吸着領域Dの周囲は、電子部品Cを吸着した場合であっても、基板SのマークMを透過して撮像可能な透過領域Tとなっている。つまり、実装ヘッド31は、第2の撮像部5によって、基板SのマークMを撮像可能となるように、透明な部分を有する。なお、保持部31bの電子部品Cを保持する保持面(吸着面)を、下端面と呼ぶ。
【0029】
駆動機構32は、移動体33、34、35を含み構成され、実装ヘッド31を駆動する機構である。移動体33は、支持台11に設けられたY軸方向のガイドレール33aに沿って移動可能に設けられている。移動体34は、移動体33の天面に設けられたX軸方向のガイドレール34aに沿って移動可能に設けられている。移動体35は、移動体34の正面に設けられたZ軸方向のガイドレール35aに沿って移動可能に設けられている。移動体35は、平面視で概略凹形状に形成されている。これらの移動体33、34、35は、モータを駆動源とするボールねじやリニアモータ又はシリンダ等により駆動される。
【0030】
実装ヘッド31は、Z軸方向に移動する移動体35の下部に設けられている。このため、移動体35は、実装ヘッド31の保持部31bに保持された電子部品Cを基板Sに実装するための動作を行う。また、実装ヘッド31が設けられた移動体35は、移動体33、34の移動により、X軸方向、Y軸方向に移動する。このため、駆動機構32は、実装ヘッド31が保持する電子部品Cを位置決めする位置決め機構として機能する。なお、駆動機構32は、図示を省略しているが、実装ヘッド31を水平面内で回転移動させるθ駆動機構を備える。
【0031】
なお、本実施形態においては、駆動機構32によるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動量は、移動誤差を防止する観点から極力短く設定することが好ましい。例えば、移動体33、34によるX軸方向、Y軸方向の移動量を、それぞれ数mm~十数mmに設定する。また、移動体35によるZ軸方向の移動量も、数mm~十数mm程度に設定する。すなわち、実装ヘッド31は、ステージ21に載置された基板Sの上面に対して、保持部31bの下端面が数mm、例えば、1~2mmの対向間隔(上下方向の離間距離)となる高さ位置において、電子部品Cの受け取りや、受け取った電子部品Cのマークmの撮像が行われるようになっている。そのため、移動体35のZ軸方向の移動量に関しては、少なくとも、この高さ位置から、保持部31bに保持した電子部品Cを基板Sに所定の加圧力で加圧して実装させることができる移動量が確保できればよい。
【0032】
(第1の撮像部)
第1の撮像部4は、カメラ、レンズ、鏡筒、光源等を有し、支持台11に設けられた収容孔11aに固定されている。第1の撮像部4は、カメラの光軸が、実装ヘッド31に保持された電子部品Cのマークmを、撮像可能となる方向で配置されている。具体的には、光軸が垂直方向となるように配置されている。第1の撮像部4は、電子部品Cの実装位置OAに対して不動である。本実施形態において、第1の撮像部4は、基板支持機構2の下側の位置である支持台11の収容孔11a内に、カメラの光軸を実装位置OAに一致させた状態で、上向きで配置されている。第1の撮像部4は、電子部品Cが位置決めのために最大限移動したとしても、2つのマークmが撮像視野から外れることのない大きさと位置関係で支持台11に固定されている。つまり、第1の撮像部4の撮像視野は、光軸を実装位置OAに一致させて固定した状態で、位置決めのために電子部品Cの2つのマークmが最大限移動し得る範囲を考慮して設定される。
【0033】
ここで、不動とは、第1の撮像部4(後述する第2の撮像部5も同様)がマークm、Mの撮像を行なうときに移動しないことを意味する。例えば、撮像部4、5がX、Y軸方向(水平方向)の駆動装置やZ軸方向(上下方向)の駆動装置を備えていて、これらの駆動装置によって装置の稼働準備作業として撮像部4、5の水平方向位置の調整や上下方向位置の調整を行ない、その後の装置の稼働中には移動しないような構成は、不動に含まれる。
【0034】
(第2の撮像部)
第2の撮像部5は、カメラ、レンズ、鏡筒、光源等を有し、支持台11の上方、より具体的には、実装ヘッド31の上方の位置に、図示しないフレーム等により支持されて固定されている。第2の撮像部5は、カメラの光軸が、実装ヘッド31の保持部31bを透過して、基板Sの実装領域Bの周囲のマークMを、撮像可能となる方向で配置されている。すなわち、本実施形態において、第2の撮像部5は、実装ヘッド31の直上の位置に、カメラの光軸を実装位置OAに一致させた状態で、下向きで配置されている。第2の撮像部5は、第1の撮像部4と同様に、電子部品Cの実装位置OAに対して不動である。つまり、第2の撮像部5の撮像視野は、基板Sの実装領域Bに対して付された2つのマークが、位置決めのために最大限移動し得る範囲を考慮して設定されている。このため、実装ヘッド31の透過部の大きさは、第2の撮像部5の撮像視野に合わせて設定する。
【0035】
ここで、本実施形態の第1の撮像部4、第2の撮像部5の配置について説明する。本実施形態の実装装置1は、0.2μm以下の実装精度を得ることが好ましい。そのためには、第1の撮像部4及び第2の撮像部5は、その精度に見合う高倍率、高精細な撮像が可能な性能を有する必要がある。
【0036】
一般的に、高精細な画像を撮像するには、撮像対象である電子部品Cや基板Sに近い位置に撮像部を配置する必要があることが知られている。そこで、第1の撮像部4や第2の撮像部5についても、できるだけ電子部品Cや基板Sの近くに配置する、つまり、撮像距離を短くすることが好ましい。
【0037】
しかしながら、本実施形態の実装装置1においては、実装時の電子部品Cの下降移動量を極力短くするため、基板Sの上面高さに近接する位置に電子部品Cを位置付けた状態で、電子部品Cのマークmの撮像や基板SのマークMの撮像を行なうものとなっている。そのため、第1の撮像部4と電子部品Cとの間には、ステージ21と駆動機構22の移動板23が存在し、第2の撮像部5と基板Sとの間には、実装ヘッド31が存在する。すると、移動板23及び実装ヘッド31との干渉を避ける必要があるため、第1の撮像部4と電子部品Cとの距離を短くすること、第2の撮像部5と基板Sとの距離を短くすることには限界がある。
【0038】
そこで、本願発明者は、上記の実装精度を実現できる画像を撮像可能な撮像距離の最大値を検討した。その結果、概ね100mm程度であることを導き出した。この結果から、本実施形態では、第1の撮像部4を、電子部品Cからの距離が100mm以内となる高さ位置に不動に配置し、第2の撮像部5を基板Sからの距離が100mm以内となる高さ位置に不動に配置した。
【0039】
なお、第2の撮像部5と基板Sの間に位置する実装ヘッド31は、剛性を確保する等の都合上、高さ寸法(Z軸方向寸法)が比較的大きな部材である。そのため、通常の構成では干渉を生じることが考えられる。そこで、本願発明者は、鋭意検討の結果、実装ヘッド31に要求される機能や剛性を維持しつつ、高さ寸法を最少化することに成功した。具体的には、実装ヘッド31の高さ寸法(保持部31bの下端から中空部31aの上側開口までの寸法)を70mm程度に構成した。これにより、第2の撮像部5を基板Sに対して100mm以下の高さ位置に配置することを可能とした。
【0040】
(供給部)
供給部6は、支持機構61、駆動機構62を有する。支持機構61は、電子部品Cが貼り付けられたウエーハシートWSを支持する装置である。駆動機構62は、支持機構61をX軸方向およびY軸方向に沿って移動させる。電子部品Cは、ダイシングにより個片に分割されている。供給部6において、電子部品Cが搭載された面を載置面Fと呼ぶ。本実施形態では、ウエーハシートWSの電子部品Cが貼り付けられた面が、載置面Fである。ウエーハシートWSは、図示しないウエーハリングに貼り付けられている。支持機構61は、ウエーハリングを装着するリングホルダ61aを有する。つまり、支持機構61におけるウエーハシートWSを支持する面が載置面Fとも言える。
【0041】
なお、図示はしないが、支持機構61のY軸方向における移動端の一方(具体的には、図示正面側の移動端)には、ウエーハリングをリングホルダ61aに供給/格納するローダ/アンローダが設けられている。支持機構61は、上記移動端に移動した状態で、ローダからウエーハリングの供給を受けたり、アンローダにウエーハリングを渡したりする。
【0042】
また、図示はしないが、支持機構61は、ウエーハシートWSを伸張することにより、電子部品Cの間に隙間を空けるエキスパンド機構、伸張したウエーハシートWSを挟んで、電子部品Cを個別に突き上げることにより分離する突上機構を有する。さらに、支持機構61は、リングホルダ61aを水平面内で回転移動させるθ駆動機構を備える。なお、突上機構は、支持台11上に固定配置されていて、移送部7による供給部6からの電子部品Cの受け取り、つまりピックアップは、この位置(ピックアップ位置)で行われる。
【0043】
駆動機構62は、支持機構61を所定の方向に移動させる。例えば、駆動機構62は、X軸方向のガイドレール62aおよびY軸方向のガイドレール62bを有し、図示しないモータを駆動源としてベルト又はボールねじにより支持機構61を水平面内でX軸、Y軸方向に移動させる機構である。この駆動機構62は、電子部品Cを移送ヘッド71に対して位置決めする位置決め機構として機能する。なお、駆動機構62は、載置面Fの高さ位置L(
図5参照)よりも低い位置に配置されている。
【0044】
(移送部)
移送部7は、移送ヘッド71、アーム部72、移送機構73を有する。移送ヘッド71は、
図4の拡大図に示すように、吸着ノズル71a、反転駆動部71bを有する。吸着ノズル71aは、図示しない空気圧回路にチューブを介して接続され、負圧により先端に電子部品Cを吸着し、負圧の解除又は正圧により電子部品Cを解放する。反転駆動部71bは、
図4(A)、(B)に示すように、吸着ノズル71aが吸着した電子部品Cを上下方向に反転させる。つまり、吸着ノズル71aは、反転駆動部71bによって、ウエーハシートWSに向く方向と、実装ヘッド31に向く方向との間で回動可能に設けられている。反転駆動部71bは、例えばモータである。
【0045】
なお、図示はしないが、移送ヘッド71は、吸着ノズル71aを上下方向に駆動するとともに、吸着ノズル71aの先端が電子部品Cに接触したときに、適切な荷重を加え、過大な荷重を吸収する緩衝部材を有する。緩衝部材としては、例えばボイスコイルモータを用いる。
【0046】
アーム部72は、一端に移送ヘッド71が設けられた部材である。アーム部72は、
図3(A)に示すように、延出部72a、基体部72bを有する。延出部72aは、正面に向かうY軸方向に、直線状に延びた直方体形状の部材と、実装機構3に向うX軸方向に、直線状に延びた直方体形状の部材によって、L字状に形成された部材である。延出部72aの実装機構3に向かう一端には、反転駆動部71bが、回動軸がY軸方向となるように設けられている。反転駆動部71bの回動軸に、吸着ノズル71aが取り付けられることにより、吸着ノズル71aが回動可能に設けられている。基体部72bは、X軸方向に平行な板状体であり、延出部72aの他端に固定されている(
図5参照)。
【0047】
吸着ノズル71aに接続された負圧の供給のためのチューブ、反転駆動部71b、緩衝部材に接続された電気的な接続のためのケーブルは、アーム部72に内蔵されている。内蔵されているとは、アーム部72の外装に覆われることにより、外部に露出していないことをいう。本実施形態においては、アーム部72の内部に形成された中空部に、チューブ及びケーブルが挿入されている。
【0048】
移送機構73は、アーム部72を駆動することにより、供給部6と実装位置OAとの間で移送ヘッド71を移動させる。移送機構73は、平面視で載置面Fに重なりの無い位置に設けられた摺動部を有する。言い換えれば、移送機構73の摺動部は、支持機構61の移動範囲の外側に設けられる。移送機構73は、摺動部の摺動に従って、アーム部72を駆動する。ここでいう摺動部とは、部材同士が接触しながら移動する構成部をいう。このような摺動部は、塵埃の発生源となる。本実施形態の摺動部は、
図5に示すように、後述する第1の摺動部732b、第2の摺動部734bを含み構成されている。第1の摺動部732b、第2の摺動部734bは、載置面Fの高さ位置Lよりも低い位置(下方)に設けられている。
【0049】
移送機構73は、
図5に示すように、固定体731、第1の駆動部732、移動体733、第2の駆動部734を有する。固定体731は、
図1及び
図3(A)に示すように、支持台11に固定され、X軸方向に延びた直方体形状の部材である。固定体731の位置は、実装位置OAに対して固定である。
【0050】
第1の駆動部732は、アーム部72をX軸方向に駆動する。第1の駆動部732は、第1の駆動源732a、第1の摺動部732bを有する。第1の駆動源732aは、X軸方向に延びたリニアモータであり、固定体731の上面に沿って設けられている。第1の摺動部732bは、X軸方向に延びたリニアガイドであり、固定体731の正面に設けられている。なお、リニアモータは、可動子が固定子と非接触で移動するため、摺動部を有していない。
【0051】
移動体733は、直方体形状のブロックであり、第1の駆動源732aの可動子が取り付けられるとともに、第1の摺動部732bのスライダが取り付けられることにより、第1の駆動源732aの作動に従って、X軸方向にスライド移動可能に設けられている。
【0052】
第2の駆動部734は、アーム部72をZ軸方向に駆動する。第2の駆動部734は、第2の駆動源734a、第2の摺動部734bを有する。第2の駆動源734aは、Z軸方向に延びたリニアモータであり、移動体733に設けられている。第2の摺動部734bは、Z軸方向に延びたリニアガイドであり、移動体733に設けられている。
【0053】
アーム部72の基体部72bは、第2の駆動源734aの可動子が取り付けられるとともに、第2の摺動部734bのスライダが取り付けられることにより、Z軸方向にスライド移動可能に設けられている。このように、本実施形態の摺動部は、直交する2軸に沿って直線状にスライド移動する第1の摺動部732b及び第2の摺動部734bを有している。そして、第1の摺動部732b及び第2の摺動部734bは、共通の移動体733の表裏で向かい合う2側面に高さ方向に重なる位置関係で配置されている。つまり、直交する2軸の位置は、接近した位置となっている。また、移動体733の2側面の距離が短い、つまり移動体733は薄いことが好ましい。
【0054】
(ステージ上の基板及び実装ヘッドの対向間隔と、移送ヘッドの寸法との関係)
本実施形態では、
図1に示すように、移送ヘッド71が実装位置OAに移動するために、基板Sの退避が必要となるように、実装位置OAにある基板Sと実装ヘッド31との対向間隔が設定されている。言い換えれば、移送ヘッド71が実装位置OAに移動するために、基板Sの退避が必要となるほどに、基板支持機構2に支持された基板Sの上面の高さ位置に近接して、実装位置OAにおいて電子部品Cを受け取る際の実装ヘッド31の高さ位置が設定されている。より具体的には、実装位置OAにある基板支持機構2のステージ21に載置された基板Sの上面の高さ位置と、電子部品Cを受け取る際の実装ヘッド31の下端面とが対向したときの間隔hが、アーム部72の先端の移送ヘッド71の高さ方向の寸法Hよりも短い(h<H)。ここで、上記のように、保持部31bの下端面から基板Sの上面の高さ位置までの距離は、例えば、数mmである。
【0055】
(アーム部の寸法)
アーム部72の延出部72aは、
図1、
図3(A)、
図4(A)に示すように、Y軸方向に直線状に延びた部材の幅w、X軸方向に直線状に延びた部材の幅dが、いずれもZ軸方向の厚さtよりも長くなっている(w>t、d>t)。これにより、アーム部72の高さ方向の寸法の拡大を抑えつつ、比較的長くなるアーム部72の剛性を確保して、移送ヘッド71によって移送される電子部品Cの位置を安定させることができる。アーム部72の高さ方向の寸法の拡大を抑えることにより、実装ヘッド31の受取位置を高くする必要がなくなる。
【0056】
(制御装置)
制御装置8は、第1の撮像部4及び第2の撮像部5により撮像されたマークm、Mに基づいて、基板Sと電子部品Cとが位置決めされるように、位置決め機構を制御する。つまり、制御装置8には、電子部品Cが正確に実装されるべき位置に対応して、電子部品CのマークmのXY座標上の位置、基板SのマークMのXY座標上の位置が、基準位置として記憶装置に記憶されている。
【0057】
この基準位置は、あらかじめ電子部品Cの基板Sへの実装を試行した結果、正確に実装された場合のマークm、Mの位置とすることができる。制御装置8は、第1の撮像部4により撮像されたマークmと、第2の撮像部5により撮像されたマークMと、基準位置とのずれを求め、ずれが補正される方向と移動量で電子部品C及び基板Sが移動するように、位置決め機構(駆動機構22および駆動機構32)を制御する。
【0058】
また、制御装置8は、ウエーハシートWS上の電子部品Cの位置座標を示すマップ情報に基づいて、移送部7の移送機構73、供給部6の駆動機構62を制御することにより、ピックアップの対象となる電子部品Cをピックアップ位置に順次位置決めする。なお、ここでいうピックアップとは、電子部品Cが載置された部材、例えばウエーハシートWSから、電子部品Cを離脱させて受け取ることをいう。さらに、制御装置8は、移送ヘッド71の吸着ノズル71aによる電子部品Cの保持、反転駆動部71bによる吸着ノズル71aの反転、移送機構73による移送ヘッド71の実装ヘッド31への移動、吸着ノズル71aによる実装ヘッド31への電子部品Cの受け渡し等を制御する。
【0059】
[動作]
以上のような本実施形態の動作を、
図4~
図7の説明図、
図8及び
図9のフローチャートを参照して説明する。なお、初期状態において、基板Sはローダから基板支持機構2のステージ21に渡されているが、実装ヘッド31に対向する位置、つまり、実装位置OAからはステージ21とともに退避している。
【0060】
[電子部品の移送]
電子部品Cの移送動作を、
図4~
図6の説明図、
図8のフローチャートを参照して説明する。供給部6における支持機構61のリングホルダ61aには、オートローダによって、ウエーハシートWSが貼り付けられたウエーハリングが装着されている。このウエーハシートWSには、ダイシングにより個片に分割された電子部品Cが貼り付けられている。なお、
図5においては、ピックアップされる電子部品C以外は図示を省略している。
【0061】
まず、
図5(A)、
図3(A)に示すように、支持機構61がX軸、Y軸方向に移動し、実装対象となる電子部品Cをピックアップ位置に位置付ける。また、アーム部72をX軸方向に移動することにより、移送ヘッド71の吸着ノズル71aの先端を、実装対象となる電子部品Cの直上、つまり、ピックアップ位置に位置決めする(ステップS101)。
【0062】
このときのウエーハシートWSのX軸、Y軸方向の移動は、供給部6の駆動機構62により行われる。アーム部72のX軸方向の移動は、第1の駆動部732の第1の駆動源732aが作動することにより、第1の摺動部732bに沿って移動体733が移動することにより行われる。
【0063】
図5(B)に示すように、突上機構が、実装対象となる電子部品Cを突き上げる。そして、移送ヘッド71の吸着ノズル71aが、電子部品Cをピックアップする(ステップS102)。つまり、アーム部72及び緩衝部材が、ウエーハシートWSに接近する方向に移動して、電子部品Cを吸着保持した後、ウエーハシートWSから離れる方向に移動することにより、電子部品CをウエーハシートWSから離脱させる。
【0064】
このときのアーム部72の移動は、第2の駆動部734の第2の駆動源734aが作動して、第2の摺動部734bに沿って基体部72bが移動することにより行われる。そして、
図4(A)、(B)、
図5(C)、(D)に示すように、反転駆動部71bが、吸着ノズル71aを180°回動させて、電子部品Cを反転させる(ステップS103)。
【0065】
次に、
図6(A)、(B)に示すように、アーム部72がX軸方向に移動することにより、移送ヘッド71を、実装位置OAに位置決めする(ステップS104)。つまり、移送ヘッド71の吸着ノズル71aに保持された電子部品Cが、実装機構3における実装ヘッド31の保持部31bに対向する位置に来る。このときのアーム部72のX軸方向の移動は、第1の駆動部732の第1の駆動源732aが作動することにより、第1の摺動部732bに沿って、ピックアップ位置から実装位置ОAまでの距離を、移動体733が移動することにより行われる。なおこのとき、実装ヘッド31は、保持部31bの下端面と基板Sの上面との間の対向間隔が数mmの距離となる高さ位置で待機している。また、この高さ位置は、後述の、電子部品Cと基板Sの位置決めが完了して、実装ヘッド31が基板Sに向かって駆動される直前まで維持される。
【0066】
図6(C)に示すように、アーム部72が保持部31bに接近する方向に移動して、電子部品Cを保持部31bに押し付ける。
図6(D)に示すように、実装ヘッド31の保持部31bは、負圧により電子部品Cを吸着保持して受け取る(ステップS105)。これとともに、吸着ノズル71aは負圧を解除して、アーム部72が保持部31bから離れる方向に移動することにより電子部品Cを解放する。このときのアーム部72の移動は、第2の駆動部734の第2の駆動源734aが作動して、第2の摺動部734bに沿って基体部72bが移動することにより行われる。
【0067】
さらに、
図6(E)に示すように、アーム部72が、供給部6に向かって移動することにより、移送ヘッド71が保持部31bの直下から退避する。このときのアーム部72の移動は、第1の駆動部732の第1の駆動源732aが作動することにより、第1の摺動部732bに沿って移動体733がX軸方向に移動することにより行われる。なお、移送部7による保持部31bに対する電子部品Cの受け渡しは実装位置OAで行なわれるので、受け渡しの際には、ステージ21は、移送機構73との干渉を避けるため、待避したままである。
【0068】
[電子部品の実装]
次に、電子部品Cの実装動作を、
図7の説明図、
図9のフローチャートを参照して説明する。ここで、
図7(A)に示すように、上記のように電子部品Cを保持した実装ヘッド31の保持部31bは、第2の撮像部5の直下に位置している。第1の撮像部4は、実装ヘッド31に保持された電子部品Cのマークmを撮像する(ステップS201)。制御装置8は、第1の撮像部4により撮像されたマークmの位置と、基準位置との位置のずれ量を求め、ずれ量が解消されるように、駆動機構32を動作させることにより、電子部品Cを位置決めする(ステップS202)。
【0069】
次に、
図7(B)に示すように、基板支持機構2が、基板Sの実装領域B(今回、電子部品Cが実装される実装領域B)が、実装ヘッド31に保持された電子部品Cに対向する位置、つまり、実装領域Bの中心が実装位置OAに来るように、ステージ21を移動させる(ステップS203)。そして、
図3(B)に示すように、第2の撮像部5が、実装ヘッド31越しに、電子部品Cの周囲の透過領域Tに見える基板SのマークMを撮像する(ステップS204)。
【0070】
制御装置8は、第2の撮像部5により撮像されたマークMの位置と、基準位置との位置のずれ量を求め、ずれ量が解消されるように、駆動機構22を動作させることにより、基板Sを位置決めする(ステップS205)。さらに、
図7(C)に示すように、駆動機構32によって、実装ヘッド31が基板Sに向かって駆動され、実装ヘッド31に保持された電子部品Cが基板Sに実装される(ステップS206)。
【0071】
このように、ウエーハシートWSからの電子部品Cの移送、実装ヘッド31への電子部品Cの受け渡し、電子部品C及び基板Sの位置決め、実装の動作を繰り返すことで、基板Sの各実装領域Bには、電子部品Cが順次実装される。所定数の電子部品Cが実装された基板Sは、基板支持機構2によって搬送されて、アンローダに格納される。
【0072】
[作用効果]
(1)本実施形態の電子部品Cの実装装置1は、電子部品Cを保持する実装ヘッド31が、実装位置ОAにおいて電子部品Cを基板Sに実装する実装機構3と、電子部品Cが実装される基板Sを支持する基板支持機構2と、電子部品Cを供給する供給部6と、電子部品Cを供給部6から実装位置ОAに移送する移送部7と、を有する。
【0073】
そして、移送部7は、供給部6における電子部品Cの載置面Fから電子部品Cをピックアップし、実装ヘッド31へ渡す移送ヘッド71と、一端に移送ヘッド71が設けられたアーム部72と、平面視で前記載置面Fに重なりの無い位置に設けられた摺動部(732b、734b)を有し、摺動部の摺動に従ってアーム部72を駆動することにより、供給部6と実装位置ОAとの間で移送ヘッド71を移動させる移送機構73とを有する。
【0074】
このように、摺動部が電子部品Cの載置面Fに平面視で重ならない位置にあるため、アーム部72が摺動部の摺動に従って移動する際に、摺動部から発生する塵埃が載置面Fに落下し難くなり、電子部品Cに塵埃が付着することによる接合不良を抑制できる。
【0075】
(2)摺動部は、載置面Fの高さ位置よりも低い位置に設けられている。このため、摺動部から発生する塵埃が、載置面Fの下方に落下することになるので、載置面Fにほとんど達しなくなり、接合不良をより一層抑制できる。
【0076】
(3)移送ヘッド71は、負圧により電子部品Cを吸着する吸着ノズル71aを有し、吸着ノズル71aに負圧を供給するチューブが、アーム部72に内蔵されている。このため、アーム部72の移動に従って変形するチューブから、塵埃が発生しても、アーム部72の外部に出ないため、周囲に影響を与えない。
【0077】
(4)移送ヘッド71は、反転駆動部71bであるモータにより駆動され、電子部品Cを反転させる反転ヘッドであり、モータに電力を供給するケーブルが、アーム部72に内蔵されている。このため、アーム部72の移動に従って変形するチューブから、塵埃が発生しても、アーム部72の外部に出ないため、周囲に影響を与えない。
【0078】
(5)摺動部は、直交する2軸に沿って直線状にスライド移動する第1の摺動部732b、及び第2の摺動部734bを有し、第1の摺動部732b及び第2の摺動部734bは、共通の移動体733の表裏に向かい合う2側面に高さ方向に重なる位置関係で配置されている。
【0079】
このため、第1の摺動部732b及び第2の摺動部734bの2軸が、共通の部材を介して近接した位置に配置されることになり、第1の摺動部732b及び第2の摺動部734bが有するガタツキに起因して生じる移送ヘッド71の位置ずれが拡大することを防止することができる。従って、平面視で前記載置面Fに重なりの無い位置に摺動部を設けることにより、アーム部72が長尺となっても、電子部品Cに対する正確な位置決めと移送が可能となる。
【0080】
(6)移送部7は、供給部6から電子部品Cをピックアップし、反転させて実装ヘッド31へ渡す移送ヘッド71と、基板支持機構2が、基板S(ステージ21)を実装位置OAから退避させることでできた空間に、移送ヘッド71を移動させる移送機構73と、を有する。
【0081】
このため、移送機構73から電子部品Cを受け取るために、実装ヘッド31が移動する必要がなく、実装位置ОAにおける電子部品Cの位置を一定に維持することができ、また、基板Sの上面の高さ位置に近接した高さ位置で電子部品Cを受け取ることができ、高い実装精度を得ることができる。このように、実装ヘッド31の移動量を低減できるので、実装位置ОAにおいて発生する塵埃の量も低減できる。
【0082】
(7)移送ヘッド71が実装位置ОAに移動するために、基板Sの退避が必要となるように、実装位置ОAにある基板Sと実装ヘッド31との間隔が設定されている。このため、電子部品Cを受け取る際の実装ヘッド31の位置を、実装時の基板Sに接近した位置とすることができる。これにより、実装ヘッド31が電子部品Cを受け取ってから、実装のために実装ヘッド31が移動する距離を非常に短くすることができ、実装ヘッド31の移動による位置ずれを防止して、実装精度を向上させることができる。
【0083】
(8)実装ヘッド31は、電子部品Cを保持した状態で、基板SのマークMを透過して認識可能とする透過部を有し、実装位置OAにおいて基板支持機構2よりも下側に配置され、基板Sが実装位置OAから退避された状態で、実装ヘッド31に保持された電子部品Cのマークmを撮像する第1の撮像部4と、実装位置OAにおいて実装ヘッド31よりも上側に配置され、基板SのマークMを、透過部を通して撮像する第2の撮像部5と、第1の撮像部4及び第2の撮像部5により撮像されたマークm、Mの画像から求められた基板Sと電子部品Cの位置に基づいて、基板Sと電子部品Cとの位置決めを行う位置決め機構とを有する。
【0084】
このような実施形態によれば、実装ヘッド31に保持された電子部品Cを、基板Sを実装位置OAから待避させた状態で、実装位置OAにおいて基板支持機構2よりも下側に配置された第1の撮像部4によって撮像し、基板支持機構2に支持された基板Sを、実装位置OAにおいて実装ヘッド31よりも上側に配置された第2の撮像部5によって実装ヘッド31の透過部を通して撮像するので、電子部品Cと基板Sとを極力近付けた状態で、電子部品Cのマークmと基板SのマークMの撮像を行なうことが可能となる。
【0085】
このため、マークm、Mを撮像する際の電子部品C(実装ヘッド31)及び基板S(基板支持機構2)の移動量、および、マークm、Mの撮像後の電子部品C(実装ヘッド31)と基板S(基板支持機構2)の相対的な移動量を極力短くすることができる。従って、実装ヘッド31や基板支持機構2を、長い距離を移動させることによる誤差の拡大を抑えることができる。また、機構の移動距離が長いほど発塵が多くなるが、本実施形態では、移動距離を抑えることができるので、塵埃によって清浄度が低下して接合不良が発生することを防止できる。
【0086】
ここで、実装ヘッド31越しにマークMを撮像するのではなく、実装ヘッド31に隣接して設けられたカメラによって撮像する場合、高倍率のカメラを用いて高い要求精度を実現することは、現実的に不可能である。つまり、基板SのマークMが付される領域は、電子部品Cが実装される領域よりも数ミリ程度の大きい範囲に過ぎず、実装ヘッド31の径もマークMが付される領域よりも数ミリ程度大きい径に過ぎない。このため、カメラの鏡筒を実装ヘッド31に隣接して配置したとしても、カメラの視野範囲に複数のマークMが入らず、複数のマークMをカメラで同時に撮像することはできない。
【0087】
すると、基板Sの複数(2つ)のマークMを撮像するためには、実装ヘッド31を2つのマークMの離間距離よりも大きくカメラ(実装ヘッド31)を移動させる必要があり、この移動の際に誤差が生じることになる。つまり、電子部品Cのマークmを認識して位置合わせした後に、基板SのマークMを認識するために、実装ヘッド31とともにカメラを移動させなければならず、その後、元の位置に戻したとしても、電子部品Cの位置にずれが生じる可能性がある。
【0088】
これに対処するため、基板SのマークMの認識と位置合わせを先に行なうと、基板Sが実装すべき位置にある状態では電子部品Cの位置認識ができないので、位置合わせをした後の基板Sを動かさなくてはならず、基板Sの位置ずれが生じる。
【0089】
さらに、実装すべき位置とは異なる位置に、基板SのマークMに対応するマークが付されたテンプレートを用意しておき、このテンプレートのマークと基板SのマークMの相対位置に基づいて、位置決めすることも考えられる。しかし、この場合には、電子部品Cを実装する度に、テンプレートのマークを認識するために実装ヘッド31とカメラを移動させなければならない。すると、テンプレートのマークの認識に要する時間と位置決めに要する時間が余計にかかるので、生産性が低下する。また、機構の移動距離が増大するため、発塵の量も増える。
【0090】
本実施形態では、マークm、Mの撮像後は、電子部品C及び基板Sの移動距離を抑えることができるので、位置ずれ、生産性の低下、発塵量のいずれも抑えることができる。
【0091】
(9)透過部は、透明な板状部材を有する。このため、微小な電子部品Cの大きさに対応する狭い領域において、電子部品Cの保持と基板SのマークMの透過的な撮像の確保を実現できる。
【0092】
(10)第1の撮像部4及び第2の撮像部5は、実装位置OAに対して不動に設けられている。このため、第1の撮像部4の撮像領域及び第2の撮像部5の撮像領域にずれが生じることがなく、移動による発塵も防止できる。
【0093】
[変形例]
供給部6は、ウエーハシートWSに貼り付けられた電子部品Cを供給する装置には限定されない。例えば、トレイ上に配列された電子部品Cを供給する装置であってもよい。また、移送機構73の構成についても、供給部6から電子部品Cを個別にピックアップして移送できればよい。このため、アーム部72がX軸及びY軸方向に移動する構成であっても、支持機構61がX軸及びY軸方向に移動する構成であってもよい。
【0094】
移送機構73において、アーム部72を駆動させる駆動部は、リニアモータを駆動源とする機構には限定されない。軸が回転するモータを駆動源とするボールねじやベルトによる機構であってもよい。このような機構の場合、摺動部を含むことになるので、平面視で載置面Fに重なりの無い位置に設けることが好ましい。さらに、摺動部を、載置面Fの高さ位置よりも低い位置に設けることが好ましい。なお、摺動部が複数ある場合に、一部の摺動部が、平面視で載置面Fに重なりの無い位置に設けられていなくてもよい。また、一部の摺動部が、載置面Fの高さ位置よりも低い位置に設けられていなくてもよい。このような場合、摺動部と載置面Fとの間に、外装、壁、他の構成部等の遮蔽物を設けることが好ましい。また、摺動部と載置面Fとの距離を長くすることが好ましい。
【0095】
実装ヘッド31は、第2の撮像部5が、基板SのマークMを撮像できる構成となっていればよい。このため、透明な材料で形成しなくても、マークMに対応する箇所に貫通孔が形成されていてもよい。より具体的には、保持部31bが不透明な部材で形成されていて、マークMに対応する箇所に貫通孔が形成されていてもよいし、中空部31aが存在せず、かつ、保持部31bが不透明な部材で形成されていて、実装ヘッド31及び保持部31bのマークMに対応する箇所に貫通孔が形成されていてもよい。また、電子部品Cの受け渡しのために、実装ヘッド31が移動してもよい。
【0096】
第1の撮像部4や第2の撮像部5は、電子部品Cが実装される位置(実装位置OA)に対して移動可能に設けられていてもよい。つまり、電子部品Cの複数のマークmや基板Sの複数のマークMを一括して撮像することができない場合には、第1の撮像部4や第2の撮像部5がマークm間又はマークM間を移動して撮像するように構成してもよい。すなわち、第1の撮像部4にマークm間で移動させるための移動装置を設けたり、第2の撮像部5にマークM間で移動させるためも移動装置を設けたりしてもよい。この場合であっても、移動距離は電子部品Cや基板Sの実装領域Bの大きさの範囲に留まり短いため、誤差や発塵を抑えることができる。
【0097】
また、電子部品Cのマークmの位置と基板Sの実装領域BのマークMの位置をそれぞれ基準位置に位置合わせするものとしたが、これに限られるものではなく、電子部品Cの位置に実装領域Bの位置を合わせたり、実装領域Bの位置に電子部品Cの位置を合わせたりしてもよい。要は、基板Sの実装領域Bの位置と電子部品Cの位置を合わせることができればよい。
【0098】
また、基板支持機構2のステージ21に対する基板Sの受け渡しは、実装位置OAで行なうようにしてもよい。この場合には、ステージ21に基板Sが供給された後、第1の撮像部4による電子部品Cのマークmの撮像に先立って、基板Sを実装位置OAから退避させるようにするとよい。
【0099】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1 実装装置
2 基板支持機構
3 実装機構
4 第1の撮像部
5 第2の撮像部
6 供給部
7 移送部
8 制御装置
11 支持台
11a 収容孔
21 ステージ
22 駆動機構
22a、22b、33a、34a、35a、62a、62b ガイドレール
23 移動板
23a 貫通孔
31 実装ヘッド
31a 中空部
31b 保持部
32 駆動機構
33、34、35 移動体
61 支持機構
61a リングホルダ
62 駆動機構
71 移送ヘッド
71a 吸着ノズル
71b 反転駆動部
72 アーム部
72a 延出部
72b 基体部
73 移送機構
731 固定体
732 第1の駆動部
732a 第1の駆動源
732b 第1の摺動部
733 移動体
734 第2の駆動部
734a 第2の駆動源
734b 第2の摺動部