IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸音構造 図1
  • 特許-吸音構造 図2A
  • 特許-吸音構造 図2B
  • 特許-吸音構造 図3
  • 特許-吸音構造 図4A
  • 特許-吸音構造 図4B
  • 特許-吸音構造 図5
  • 特許-吸音構造 図6A
  • 特許-吸音構造 図6B
  • 特許-吸音構造 図7
  • 特許-吸音構造 図8
  • 特許-吸音構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】吸音構造
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20240311BHJP
   B63H 21/30 20060101ALI20240311BHJP
   B63G 8/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G10K11/16 130
B63H21/30 Z
B63G8/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020069742
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021165811
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北川 大葵
(72)【発明者】
【氏名】大和 禎
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑樹
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-180559(JP,A)
【文献】国際公開第2004/061817(WO,A1)
【文献】特開昭55-157797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/178
B63H 21/30
B63G 8/00- 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板と、
前記外板の内側に取り付けられた補強リブと、
前記補強リブによって前記外板の内側に支持され、前記外板との間にバックキャビティを介して配置される多孔板と、
前記外板の内側に取り付けられ、前記外板に沿って厚さが変化する壁面と、
を備え、
前記多孔板は、前記外板に沿って異なる厚さを有する、吸音構造。
【請求項2】
前記多孔板は、前記多孔板の厚さ方向に沿って開口し、前記外板に沿って異なる間隔で配列された複数の多孔穴を有する、請求項1に記載の吸音構造。
【請求項3】
前記複数の多孔穴の少なくとも一部は、互いに異なる内径を有する、請求項2に記載の吸音構造。
【請求項4】
前記多孔板の内側表面が前記外板と略平行である、請求項1からのいずれか一項に記載の吸音構造。
【請求項5】
前記バックキャビティは、前記外板に沿って異なる厚さを有する、請求項に記載の吸音構造。
【請求項6】
前記多孔板の内側表面又は外側表面の少なくとも一方が段差状に形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の吸音構造。
【請求項7】
前記外板は船体を構成する船殻である、請求項1からのいずれか一項に記載の吸音構造。
【請求項8】
外板と、
前記外板の内側に取り付けられた補強リブと、
前記補強リブによって前記外板の内側に支持され、前記外板との間にバックキャビティを介して配置される多孔板と、
を備え、
前記多孔板は、前記外板に沿って異なる厚さを有し、
前記多孔板の内側表面が前記外板と略平行であり、
前記バックキャビティは、前記外板に沿って異なる厚さを有する、吸音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雑音を吸収可能な吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音などの雑音を吸収するための吸音構造が知られている。例えば特許文献1には、船体内部で発生する雑音を吸収するための吸音構造の一例が示されている。この文献では、船体の外殻を構成する外板の内側に、多孔穴が貫通形成された鋼板からなる多孔板を、補強リブを介して支持された吸音構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-180559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、略同形状を有する多孔穴が形成され、略均一な厚さを有する多孔板を用いているため、ある特定の周波数成分に対して良好な吸音作用が得られるが、他の周波数成分に対して吸音作用が低下してしまう。そのため、様々な周波数成分を含む雑音に対して、十分な吸音作用を得られないおそれがある。例えば、船体内部には様々な機器類(例えばエンジンなど)が設置されるため、船体内部で発生する雑音には様々な周波数成分が含まれる。しかしながら、上記特許文献1の構成では、このような船内雑音を十分に吸収できないおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一態様は上述の事情に鑑みなされたものであり、様々な周波数帯を含む雑音を効果的に吸収可能な吸音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る吸音構造は、上記課題を解決するために、
外板と、
前記外板の内側に取り付けられた補強リブと、
前記補強リブによって前記外板の内側に支持され、前記外板との間にバックキャビティを介して配置される多孔板と、
を備え、
前記多孔板は、前記外板に沿って異なる厚さを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一態様によれば、様々な周波数帯を含む雑音を効果的に吸収可能な吸音構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る吸音構造を模式的に示す断面図である。
図2A】多孔板の厚さが異なる吸音構造における垂直音響インピーダンスの周波数分布を示すシミュレーション結果である。
図2B】多孔板の厚さが異なる吸音構造における吸音率の周波数分布を示すシミュレーション結果である。
図3】第2実施形態に係る吸音構造を模式的に示す断面図である。
図4A】異なるピッチで配置された多孔穴を有する吸音構造における垂直音響インピーダンスの周波数分布を示すシミュレーション結果である。
図4B】異なるピッチで配置された多孔穴を有する吸音構造における吸音率の周波数分布を示すシミュレーション結果である。
図5】第3実施形態に係る吸音構造を模式的に示す断面図である。
図6A】異なるバックキャビティの厚さを有する吸音構造における垂直音響インピーダンスの周波数分布を示すシミュレーション結果である。
図6B】異なるバックキャビティの厚さを有する吸音構造における吸音率の周波数分布を示すシミュレーション結果である。
図7】第4実施形態に係る吸音構造を模式的に示す断面図である。
図8】第5実施形態に係る吸音構造を模式的に示す断面図である。
図9】第6実施形態に係る吸音構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る吸音構造1Aを模式的に示す断面図である。吸音構造1Aは、吸音対象である雑音を発生する雑音発生源2を有する吸音対象物に対して適用される。吸音対象物の種類は限定されないが、以下の説明では、雑音発生源2としてエンジンなどの機器類を搭載する、水上又は水中を航行可能な船舶に適用された吸音構造1Aを例示的に述べる。この場合、雑音発生源2は、エンジンに限らず、雑音を発生可能な任意のデバイスを含んでもよい。
【0011】
吸音構造1Aは、吸音対象物の少なくとも一部を構成する外板3を有する。外板3は、雑音発生源2が配置される内部空間4の少なくとも一部を区画する。本実施形態では、外板3は船舶の船体を構成する船殻であり、エンジンなどの機器類である雑音発生源2が配置された内部空間4を、船外にある外部空間6に対して区画する。外板3は、例えば、十分な船体強度を実現可能な鋼板から構成される。
【0012】
外板3の内側(内部空間4側)には、複数の補強リブ8が取り付けられる。補強リブ8は、外板3に対して平行に延在するフランジ部8aと、フランジ部8aと外板3との間に設けられるリブ部8bとを含み、略T字形状を有するT形鋼が用いられている。リブ部8bのうち、フランジ部8aと反対側の端部は、外板3に対して溶接により接合されている。
【0013】
外板3上には、少なくとも1つの補強リブ8が外板3の延在方向に沿って、所定の間隔で配置されている。このような補強リブ8は、例えば、外板3の内側面上において、第1方向に沿って延在する第1補強リブ10と、第1方向に交差する第2方向に沿って延在する第2補強リブ12、とを含む複数の補強リブ8から構成されていてもよい。また補強リブ8は、第1補強リブ10及び第2補強リブ12が互いに接合されることにより、外板3の内側面上において格子構造を形成するように一体的に構成されていてもよい。
尚、このような補強リブ8は、後述するバックキャビティ14を区画する部材の一つでもある。
【0014】
吸音構造1Aは、補強リブ8に対して外板3の反対側に設けられた多孔板16と、外板3、補強リブ8及び多孔板16によって区画されるバックキャビティ14と、を有する。多孔板16は、補強リブ8のフランジ部8aに対して溶接によって接合されている。これにより、多孔板16と補強リブ8との間は、溶接によって気密に封止されている。
【0015】
多孔板16は、例えば、複数の多孔穴16aが厚さ方向に沿って貫通形成された鋼板から構成される。第1実施形態では、複数の多孔穴16aは互いに等しい内径を有しており、外板3の延在方向に沿って略等ピッチで配列されている。
【0016】
バックキャビティ14は、外板3、補強リブ8及び多孔板16によって区画されており、多孔板16に設けられた多孔穴16aを介して、雑音発生源2が配置された内部空間4に連通している。雑音発生源2で発生した雑音は、内部空間4から多孔穴16aを介して、バックキャビティ14に伝搬する。このとき、雑音は多孔穴16aを通過することで、雑音のエネルギが減衰する。またバックキャビティ14は、その空間が所定の共鳴周波数で共鳴する共鳴空間となっている。そのため、バックキャビティ14に伝搬した雑音は、バックキャビティ14に対応する共鳴周波数で共鳴し、所定の周波数成分が減音される。
【0017】
ここで任意の角度θで入射する平面波に対する吸音構造1Aの吸音率α(θ)は、次式によって求められる。
尚、Z:垂直音響インピーダンス、ρ:空気の密度[kg/m]、c:音速[m/s]である。また垂直音響インピーダンスZは、次式により求められる。
尚、ν:ガスの動粘性係数[m2/s]、M0:音波の粒子速度のマッハ数[-]、M:板に沿う流れのマッハ数[-]、ω:音波の角周波数[rad/s]、k:音波の波数(=2π/λ)、b:バックキャビティ14の厚さ[m]、σp:多孔板16の開口率[-]、t:多孔板16の厚さ[m]、d:多孔穴16aの内径[m]、λ:音波の波長[m]、δ:開口端補正値[-]である。
【0018】
本実施形態の多孔板16は、図1に示すように、外板3に沿って異なる厚さtを有する。すなわち、多孔板16は外板3に沿って不均一な厚さt(例えばランダムな厚さt)を有する。上記(1)式及び(2)式によれば、吸音構造1Aの吸音率α(θ)は、多孔板16の厚さtをパラメータとして含んでおり、多孔板16の厚さtに依存することが示されている。
【0019】
ここで図2A及び図2Bは多孔板16の厚さtが異なる吸音構造1Aにおける垂直音響インピーダンスZ及び吸音率α(θ)の周波数分布を示すシミュレーション結果である。図2A及び図2Bでは、多孔穴16aの内径をd=0.05[m]、隣接する多孔穴16間のピッチをp=0.35[m]、バックキャビティ14の厚さをb=0.055[m]、開口率をσp=1.60(=78.5×d/p:並列型配列時の開口率)[-]、開口端補正値をδ=0.00185、ガスの動粘性係数をν=1.30E-05にそれぞれ設定してシミュレーションを行った結果が示されている。
尚、開口端補正値δは次式で表される。
【0020】
図2A及び図2Bでは、多孔板16の厚さがt=t1(0.01[m])である場合に対応する吸音率α1(θ)と、多孔板16の厚さがt=t2(0.05[m])である場合に対応する吸音率α2(θ)とがそれぞれ示されている。多孔板16の厚さtが比較的大きい場合に対応する吸音率α2(θ)は、多孔板16の厚さtが比較的小さい場合に対応する吸音率α1(θ)に比べて低周波側において良好な吸音率を示している。これは、吸音率α(θ)の周波数特性が多孔板16の厚さtに依存しており、多孔板16の厚さtが大きくなるに従って、低周波側における吸音率α(θ)が向上することを示している(逆に言えば、多孔板16の厚さtが小さくなるに従って、高周波側における吸音率α(θ)が向上することを示している)。
【0021】
本実施形態では、このように多孔板16の厚さtと吸音率α(θ)の周波数特性との相関に鑑みて、多孔板16の厚さが外板3に沿って異なるように構成される。これにより、吸音構造1Aは広い周波数範囲において良好な吸音率α(θ)を得ることができる。
【0022】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態に係る吸音構造1Bを模式的に示す断面図である。尚、第2実施形態では、前述の実施形態に対応する構成には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0023】
多孔板16は、略等しい内径を有する複数の多孔穴16aを有しており、多孔板16の厚さ方向に沿ってそれぞれ開口する。複数の多孔穴16aのうち少なくとも一部は、外板3に沿って異なる間隔で配列される。図3では、互いに隣接する第1多孔穴16a1及び第2多孔穴16a2間の第1ピッチp1と、互いに隣接する第3多孔穴16a3及び第4多孔穴16a4間の第2ピッチp2とが異なるように構成される。
【0024】
ここで図4A及び図4Bは異なるピッチpで配置された多孔穴16aを有する吸音構造1Bにおける垂直音響インピーダンスZ及び吸音率α(θ)の周波数分布を示すシミュレーション結果である。図4A及び図4Bでは、多孔板16が有する全ての多孔穴16a間のピッチpがそれぞれp1又はp2である場合におけるシミュレーション結果がそれぞれ示されている。尚、図4A及び図4Bでは、多孔板16の厚さをt=0.6[m]、多孔穴16aの直径をd=0.05[m]、バックキャビティ14の厚さをb=0.055[m]、ガスの動粘性係数をν=1.30E-05にそれぞれ設定してシミュレーションを行った場合の結果が示されている。
【0025】
図4A及び図4Bでは、ピッチp=p1(0.45[m])である場合に対応する吸音率α3(θ)と、ピッチp=p2(0.55[m])である場合に対応する吸音率α4(θ)とがそれぞれ示されている。ピッチpが比較的大きい場合に対応する吸音率α4(θ)は、ピッチpが比較的小さい場合に対応する吸音率α3(θ)に比べて低周波側において良好な吸音率を示している。これは、吸音率α(θ)の周波数特性がピッチpの大きさに依存しており、ピッチpが大きくなるに従って、低周波側における吸音率α(θ)が向上することを示している(逆に言えば、ピッチpが小さくなるに従って、高周波側における吸音率α(θ)がやや向上することを示している)。
【0026】
本実施形態では、このように多孔板16が有する複数の多孔穴16aのピッチpと吸音率α(θ)の周波数特性との相関に鑑みて、複数の多孔穴16aが外板3に沿って異なる間隔で配列されるように構成される。これにより、吸音構造1Bでは、広い周波数範囲において良好な吸音率α(θ)を得ることができる。
【0027】
尚、第3実施形態では、多孔板16が有する複数の多孔穴16aのうち少なくとも一部におけるピッチpが異なるように構成されれば足りる。すなわち、多孔板16が有する全ての多孔穴16a間のピッチpが異なるように構成されていてもよいし、多孔板16が有する複数の多孔穴16aの一部におけるピッチpが異なるように構成されてもよい。
【0028】
また多孔板16が有する複数の多孔穴16aの少なくとも一部は、互いに異なる内径dを有してもよい。上記(2)式によれば、吸音率α(θ)の算出式中にパラメータとして多孔穴16aの内径dを含むため、吸音率α(θ)の周波数特性は多孔穴16aの内径dにも依存する。そのため、多孔板16が有する複数の多孔穴16aの内径dを異なるように構成することで、吸音構造1Bが吸収可能な周波数成分を広げてもよい。
【0029】
(第3実施形態)
図5は第3実施形態に係る吸音構造1Cを模式的に示す断面図である。尚、第3実施形態では、前述の実施形態に対応する構成には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0030】
第3実施形態に係る吸音構造1Cは、外板3の内側に取り付けられ、外板3に沿って厚さが変化する壁面20を更に備える。壁面20は、例えば金属、樹脂等から形成される。壁面20の厚さH(壁面20の外板3に対する高さ)は、外板3と多孔板16との間隔より小さく設定されており、外板3に沿って変化するように構成される。尚、バックキャビティ14の厚さは、外板3と多孔板16との間隔から壁面20の厚さを減算したものと等しいため、以下、バックキャビティ14の厚さと壁面20の厚さとは互いに対応(反比例)するものとして述べる。
【0031】
ここで図6A及び図6Bは異なるバックキャビティ14の厚さbを有する吸音構造1Cにおける垂直音響インピーダンスZ及び吸音率α(θ)の周波数分布を示すシミュレーション結果である。図6A及び図6Bでは、多孔板16の厚さをt=0.6[m]、多孔穴16aの内径をd=0.05[m]、隣接する多孔穴16間のピッチをp=0.45[m]、開口率をσp=0.96914[-]、開口端補正値をδ=0.00510、ガスの動粘性係数をν=1.30E-05にそれぞれ設定した場合にシミュレーションを行った結果が示されている。
【0032】
図6A及び図6Bでは、バックキャビティ14の厚さb=b1(0.15[m])である場合に対応する吸音率α5(θ)と、バックキャビティ14の厚さb=b2(0.05[m])である場合に対応する吸音率α6(θ)とがそれぞれ示されている。バックキャビティ14の厚さbが比較的小さい場合に対応する吸音率α5(θ)は、バックキャビティ14の厚さbが比較的大きい場合に対応する吸音率α6(θ)に比べて低周波側において良好な吸音率を示している。これは、吸音率α(θ)の周波数特性がバックキャビティ14の厚さbの大きさに依存しており、バックキャビティ14の厚さbが小さくなるに従って、低周波側における吸音率α(θ)が向上することを示している(逆に言えば、バックキャビティ14の厚さbが大きくなるに従って、高周波側における吸音率α(θ)が向上することを示している)。
【0033】
本実施形態では、このように壁面20の高さH又はバックキャビティ14の厚さbと吸音率α(θ)の周波数特性との相関に鑑みて、壁面20の高さH又はバックキャビティ14の厚さbを外板3に沿って変化させることで、吸音構造1Cが吸収可能な周波数成分を効果的に広げることができる。
【0034】
(第4実施形態)
図7は第4実施形態に係る吸音構造1Dを模式的に示す断面図である。尚、第4実施形態では、前述の実施形態に対応する構成には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0035】
第4実施形態に係る吸音構造1Dでは、第1実施形態と同様に多孔板16の厚さtが外板3に沿って異なるように構成されるが、多孔板16の内側表面が外板3と略平行に形成される。すなわち、多孔板16の内側表面(雑音発生源2に対向する面)がフラットに構成される。これにより、吸音構造1Dでは、多孔板16の内側のスペースを効率的に活用できる。
【0036】
尚、前述の第2実施形態に係る吸音構造1B及び第3実施形態に係る吸音構造1Cにおいても多孔板16の内側表面を外板3と平行(フラット)に構成してもよい。これらの場合も、同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態に係る吸音構造1Eを模式的に示す断面図である。尚、第5実施形態では、前述の実施形態に対応する構成には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0038】
第5実施形態に係る吸音構造1Eでは、第1実施形態と同様に多孔板16の厚さが外板3に沿って異なるように構成されるが、多孔板16の内側表面(雑音発生源2に対向する面)が段差状に形成される。このような段差形状は、例えば吸音構造1Aが有する多孔板16のように外板3に沿って連続的に厚さが変化する形状に比べて、容易に加工できる。このように吸音構造1Eでは、多孔板16の厚さが外板3に沿って異なる構成を、より簡易な構成で実現できる。
【0039】
(第6実施形態)
図9は第6実施形態に係る吸音構造1Fを模式的に示す断面図である。尚、第6実施形態では、前述の実施形態に対応する構成には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0040】
第6実施形態に係る吸音構造1Fでは、第1実施形態と同様に多孔板16の厚さが外板3に沿って異なるように構成されるが、多孔板16の外側表面(外板3に対向する面)が段差状に形成される。このような段差形状は、例えば吸音構造1Aが有する多孔板16のように外板3に沿って連続的に厚さが変化する形状に比べて、容易に加工できる。このように吸音構造1Eでは、多孔板16の厚さが外板3に沿って異なる構成を、より簡易な構成で実現できる。
【0041】
以上説明した各実施形態によれば、広い周波数成分を含む雑音を効果的に吸収可能な吸音構造を実現することができる。
【0042】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)一態様に係る吸音構造は、
外板(例えば上記実施形態の外板3)と、
前記外板の内側に取り付けられた補強リブ(例えば上記実施形態の補強リブ8)と、
前記補強リブによって前記外板の内側に支持され、前記外板との間にバックキャビティ(例えば上記実施形態のバックキャビティ14)を介して配置される多孔板(例えば上記実施形態の多孔板16)と、
を備え、
前記多孔板は、前記外板に沿って異なる厚さを有する。
【0045】
上記(1)の態様によれば、多孔板の厚さが外板に沿って異なるため、多孔板の位置によって異なる周波数成分の雑音を吸収できる。その結果、様々な周波数帯を含む雑音を効果的に吸収可能な吸音構造を実現できる。
【0046】
(2)他の態様では上記(1)の態様において、
前記多孔板は、前記多孔板の厚さ方向に沿って開口し、前記外板に沿って異なる間隔で配列された複数の多孔穴(例えば上記実施形態の多孔穴16a)を有する。
【0047】
上記(2)の態様によれば、多孔板が有する複数の多孔穴が、外板に沿って異なる間隔で配置されることで、広い周波数成分を含む雑音をより効果的に吸収できる。
【0048】
(3)他の態様では上記(2)の態様において、
前記複数の多孔穴の少なくとも一部は、互いに異なる内径を有する。
【0049】
上記(3)の態様によれば、多孔板が有する複数の多孔穴が異なる内径を有することで、広い周波数成分を含む雑音をより効果的に吸収できる。
【0050】
(4)他の態様では上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記外板の内側に取り付けられ、前記外板に沿って厚さが変化する壁面(例えば上記実施形態の壁面20)を更に備える。
【0051】
上記(4)の態様によれば、外板の内側に取り付けられる壁面の厚さを外板に沿って変化させることで、広い周波数成分を含む雑音をより効果的に吸収できる。
【0052】
(5)他の態様では上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記多孔板の内側表面が前記外板と略平行である。
【0053】
上記(5)の態様によれば、多孔板の内側表面をフラットに構成できるため、多孔板の内側のスペースを効率的に活用できる。
【0054】
(6)他の態様では上記(5)の態様において、
前記バックキャビティは、前記外板に沿って異なる厚さを有する。
【0055】
上記(6)の態様によれば、バックキャビティの厚さを外板に沿って異ならせることで、多孔板の内側表面をフラットに構成しつつ、多孔板の厚さも外板に沿って異ならせることができる。これにより、多孔板の厚さの外板に沿った変化、及び、バックキャビティの厚さの外板に沿った変化によって、吸収可能な周波数成分を効果的に広げることができる。
【0056】
(7)他の態様では上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記多孔板の内側表面又は外側表面の少なくとも一方が段差状に形成される。
【0057】
上記(7)の態様によれば、簡易な加工によって多孔板の厚さが外板に沿って異なる吸音構造を実現できる。
【0058】
(8)他の態様では上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記外板は船体を構成する船殻である。
【0059】
上記(8)の態様によれば、船体内部で発生する様々な周波数成分を含む雑音を効果的に吸収できる。
【符号の説明】
【0060】
3 外板
4 内部空間
6 外部空間
8 補強リブ
8a フランジ部
8b リブ部
10 第1補強リブ
12 第2補強リブ
14 バックキャビティ
16 多孔板
16a 多孔穴
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9