(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】感放射線性組成物の処理方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20240311BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240311BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240311BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20240311BHJP
C08F 220/32 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/40
G03F7/20 501
C08F220/04
C08F220/32
(21)【出願番号】P 2020070147
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 高英
(72)【発明者】
【氏名】新木 利治
(72)【発明者】
【氏名】藤井 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知識
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197361(JP,A)
【文献】特開2015-057633(JP,A)
【文献】特開2004-207343(JP,A)
【文献】特開2012-208453(JP,A)
【文献】特開2008-015504(JP,A)
【文献】特開2018-097084(JP,A)
【文献】特開2005-049720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/40
G03F 7/20
C08F 220/04
C08F 220/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感放射線性組成物の処理方法であって、
前記感放射線性組成物は、
酸基を有するラジカル重合性化合物(a)、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)、及び他のラジカル重合性化合物(c)の共重合体であるアルカリ水溶液に可溶な樹脂(A)と、
感放射線性酸生成化合物(B)とを有し、
前記感放射線性組成物に対して、LED素子から主ピーク波長が375nm以上395nm以下の範囲内にある紫外線を照射して、前記感放射線性組成物の
、波長400~800nmの範囲の光透過率の最低値を向上させる工程(α)を含むことを特徴とする、感放射線性組成物の処理方法。
【請求項2】
前記紫外線は、半値幅が20nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の感放射線性組成物の処理方法。
【請求項3】
前記紫外線は、波長365nmにおける光強度が、前記主ピーク波長の光強度に対して10%未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の感放射線性組成物の処理方法。
【請求項4】
前記工程(α)は、前記LED素子から波長365nm以下の光をカットするフィルタを介して前記紫外線を前記感放射線性組成物に照射する工程であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性組成物の処理方法。
【請求項5】
前記感放射線性酸生成化合物(B)は、1,2-キノンジアジド化合物であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の感放射線性組成物の処理方法。
【請求項6】
前記感放射線性組成物に占める、前記感放射線性酸生成化合物(B)の割合は、前記(樹脂(A)100質量部に対して15~30質量部であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の感放射線性組成物の処理方法。
【請求項7】
前記他のラジカル重合性化合物(c)が、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、及び複素環構造を有するビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の単量体に由来する構造単位であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性組成物の処理方法。
【請求項8】
下地膜を成膜する工程(β1)と、
前記工程(β1)によって成膜された前記下地膜の上層に、前記感放射線性組成物を塗布する工程(β2)と、
前記工程(β2)の後、前記感放射線性組成物に対して、プリベーク、露光、及び現像の各処理を順次実行する工程(β3)とを有し、
前記工程(α)は、前記工程(β3)の後に実行されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の感放射線性組成物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物の処理方法であって、より詳細には、感放射線性組成物の透過率を向上させるブリーチング処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや有機ELパネル等の表示装置には、各画素に対応して微細な半導体素子が設けられており、当該素子内の絶縁材料(レジスト材料)として光に感応する性質(感放射線性)を示す組成物が広く用いられている。
【0003】
例えば、表示装置の製造過程において、感放射線性組成物を塗布してプリベークした後、露光及び現像したパターンに紫外線を照射することで、当該パターンの光透過性や耐久性(耐熱性)を向上させることが知られている。このように、パターニングされた対象膜に対して紫外線を照射することで、可視光に対する透過性を向上させる処理のことを、「ブリーチング処理」と称することがある。この処理は、感放射線性組成物に含まれる感光材を紫外線で分解することにより引き起こされる。
【0004】
例えば下記特許文献1には、レジストパターンにi線、すなわち波長365nmの紫外線を照射してブリーチング処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブリーチング処理用の光源には、高圧水銀ランプ等のランプが一般的に用いられている。上記特許文献1においても「i線」という記載があることから、水銀スペクトルが想定されているところ、文言上の記載はないものの高圧水銀ランプの利用が予定されていると理解される。
【0007】
これに対し、近年の固体光源の技術進歩に伴って、UV-LEDを用いたブリーチング処理の検討が進められている。
【0008】
しかしながら、本発明者らの鋭意研究によれば、ブリーチング処理にLED光源を用いた場合、所望の透過率(ブリーチング能)が得られないという問題や、感放射線性組成物の内部で発泡が生じるという問題が生じやすいことが分かった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、LED光源を用いながらも、感放射線性組成物に対する高い透過性を付与し、更には気泡の発生を抑制することができる、感放射線性組成物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、感放射線性組成物の処理方法であって、
前記感放射線性組成物は、
酸基を有するラジカル重合性化合物(a)、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)、及び他のラジカル重合性化合物(c)の共重合体であるアルカリ水溶液に可溶な樹脂(A)と、
感放射線性酸生成化合物(B)とを有し、
前記感放射線性組成物に対して、LED素子から主ピーク波長が375nm以上395nm以下の範囲内にある紫外線を照射して、前記感放射線性組成物の透過率を向上させる工程(α)を含むことを特徴とする。
【0011】
感放射線性組成物を含んでなる膜に対してブリーチング処理を行う場合には、「発明が解決しようとする課題」の項で上述したように、従来は一般的に水銀ランプが利用されていた。これは、感放射線性酸生成化合物が、水銀ランプから出射される光のピーク波長の1つである365nm(i線)に対して高い感光性を示すことが経験的に知られていたためである。
【0012】
本発明者らは、上記の知見から、まず主ピーク波長が365nm近傍を示すLED素子を準備し、このLED素子から出射された紫外線を、感放射線性組成物を含んでなる処理対象膜(以下、適宜「対象膜」と称することがある。)に対して照射してブリーチング処理を行った。すると、かかる処理を行った後の対象膜の透過率は、所望値よりも低いものであり、満足する透過性能を実現しないことが確認された。
【0013】
なお、上記において、主ピーク波長が「365nm近傍」という表現をしているのは、主ピーク波長が365nmのLED素子として入手されたものであっても、素子間には個体差が存在し、主ピーク波長に±10nm程度の製造時の誤差が生じることがあるためである。
【0014】
更に、処理後の対象膜内には、いくつかの気泡が存在することが確認された。感放射線性組成物を含んでなる対象膜は、上述したように液晶パネルや有機ELパネルなどにおいて絶縁膜として機能するため、光取り出し面側から気泡が視認されてしまうと、装置の表示性能などに影響を及ぼすことが考えられる。
【0015】
これに対し、本発明者らは、i線(365nm)よりも長波長側に波長を意図的にシフトさせた、主ピーク波長が375nm以上395nmの光を発するLED素子を準備し、このLED素子からの紫外線を、前記対象膜に照射することを試みた。すると、驚くべきことに、主ピーク波長が365nm近傍のLED素子からの紫外線を照射した場合と比べて、透過率が向上すると共に膜内に発生する気泡の量を大幅に低下できることが分かった。この事実は、キノンジアジド化合物を初めとする感放射線性酸生成化合物が、365nmに対して高い感光性を示すと考えられていた従来の知見に鑑みると、極めて驚くべき効果である。
【0016】
本明細書において「主ピーク波長」とは、スペクトル上において光強度が最も高い波長を指す。
【0017】
前記紫外線は、半値幅が20nm以下であるものとしても構わない。
【0018】
半値幅が20nmのスペクトルを示す紫外線を発するLED素子を用いることで、紫外線に含まれる365nmの成分の光強度を、主ピーク波長の光強度に対して十分低くすることができる。これにより、透過率の向上と気泡の発生の抑制を両立できる。
【0019】
前記紫外線は、波長365nmにおける光強度が、前記主ピーク波長の光強度に対して10%未満であるものとしても構わない。
【0020】
前記工程(α)は、前記LED素子から波長365nm以下の光をカットするフィルタを介して前記紫外線を前記感放射線性組成物に照射する工程であるものとしても構わない。
【0021】
前記感放射線性酸生成化合物(B)は、1,2-キノンジアジド化合物であるものとしても構わない。
【0022】
前記感放射線性組成物に占める、前記感放射線性酸生成化合物(B)の割合は、前記樹脂(A)100質量部に対して15~30質量部であるものとしても構わない。
【0023】
前記他のラジカル重合性化合物(c)が、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、及び複素環構造を有するビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位であるものとしても構わない。
【0024】
樹脂を構成する化合物に、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、又は複素環構造を有するビニル化合物等の環状構造が含まれることで、紫外線照射時に発泡を抑制する作用を高めることができる。
【0025】
前記樹脂(A)は、架橋性基を含む構造単位を含むものとしても構わない。かかる構成によれば、紫外線照射時に発泡を抑制する作用を更に高めることができる。
【0026】
また、上記感放射線性組成物の処理方法は、
下地膜を成膜する工程(β1)と、
前記工程(β1)によって成膜された前記下地膜の上層に、前記感放射線性組成物を塗布する工程(β2)と、
前記工程(β2)の後、前記感放射線性組成物に対して、プリベーク、露光、及び現像の各処理を順次実行する工程(β3)とを有し、
前記工程(α)は、前記工程(β3)の後に実行されるものとしても構わない。
【0027】
上記方法によれば、例えば表示装置等に形成される、パターニングされた絶縁膜に対する透過率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の方法によれば、LED光源を用いながらも、感放射線性組成物を含んでなる対象膜に対する高い透過性を付与しつつ膜内での気泡の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る感放射線性組成物の処理方法の一工程を模式的に示す図面である。
【
図2】LED素子から出射される紫外線のスペクトルの一例を示す図面である。
【
図3】主ピーク波長が365nm、385nm、405nmの紫外線のスペクトルを重ね合わせた図面である。
【
図4】本発明に係る感放射線性組成物の処理方法の一工程を模式的に示す別の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明に係る感放射線性組成物の処理方法の一工程を模式的に示す図面である。ただし、
図1は、あくまで模式的に図示されたものであって、実際の寸法比と図面上の寸法比とは必ずしも一致しない。
【0031】
処理対象となる膜(以下、「対象膜1」と称する。)は、層2の上層に積層されており、パターニング処理が施されている。対象膜1は感放射線性を示す材料(感放射線性組成物)を含んでなる。材料の詳細な説明は後述される。なお、層2は「下地膜」に対応する。
【0032】
対象膜1に対して、LED素子4を搭載した光源3から、主ピーク波長が375nm以上395nm以下の紫外線L1を照射する(工程(α)に対応。)。
図2は、紫外線L1のスペクトルの一例を示す。
図2に示すスペクトルは、LED素子4が主ピーク波長が385nmの紫外線L1を発する素子である場合に対応する。
図2に示すスペクトルでは、半値幅dλが13nmである。なお、半値幅dλは20nm以下であるのが好ましい。
【0033】
このようなLED素子4は、例えば、InGaN又はAlInGaNからなる井戸層と、GaN又は井戸層よりIn組成比の低いInGaN若しくはAlInGaNからなる障壁層とを有した活性層を含んで実現される。
【0034】
対象膜1に対して主ピーク波長が375nm以上395nm以下の紫外線L1が照射されることで、対象膜1の透過率が向上すると共に、対象膜1内での気泡の発生が抑制される。この点については、実施例を参照して後述される。
【0035】
次に、対象膜1の材料について説明する。
【0036】
対象膜1は、感放射線性組成物を含む。この感放射線性組成物は、樹脂(A)及び感放射線性酸生成化合物(B)を含有し、必要に応じてその他の配合剤(C)を含有する。
【0037】
《樹脂(A)》
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有し、好ましくは加熱によって硬化する性質を示す材料からなる。かかる樹脂(A)は、酸基を有するラジカル重合性化合物(a)、及びエポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)を、他のラジカル重合性化合物(c)と共に溶媒中でラジカル共重合することで得られる。
【0038】
酸基を有するラジカル重合性化合物(a)の具体例としては、
カルボキシ基を有する構造単位を構成する単量体として、例えば(メタ)アクリル酸クロトン酸、4-ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸を;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸を;
スルホン酸基を有する構造単位を構成する単量体として、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルイルオキシエチルスルホン酸等を;
フェノール性水酸基を有する構造単位を構成する単量体として、例えば4-ヒドロキシスチレン、o-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、p-イソプロペニルフェノール、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等を、それぞれ挙げることができる。また、単量体としてマレイミドを用いることができる。
【0039】
エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル(メタ)アクリレート、(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)(メタ)アクリレート、(オキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書では、オキシラニル基及びオキセタニル基を包含して「エポキシ基」ともいう。
【0040】
上記樹脂(A)(以下、「共重合体(I)」と示す。)を得る際に、上述した酸基を有するラジカル重合性化合物(a)と、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)との2成分系でのラジカル重合では、重合反応中にエポキシ基と酸基を有するラジカル重合性化合物が反応を起こし、架橋が起こり重合系がゲル化してしまう場合がある。
【0041】
そこで共重合体(I)を得るためには、第三成分として他のラジカル重合性化合物(c)を用いて、エポキシ基と酸基を有するラジカル重合性化合物との反応を抑制するのが好適である。このような他のラジカル重合性化合物(c)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸芳香族エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、複素環含有ビニル化合物、共役ジエン化合物、窒素含有ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物等が挙げられる。
【0042】
他のラジカル重合性化合物(c)の具体例としては、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等を;
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,5]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等を;
芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を;
芳香族ビニル化合物として、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、t-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等を;
N-置換マレイミド化合物として、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-(2-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-エチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルシクロヘキシル)マレイミド、N-ノルボルニルマレイミド、N-トリシクロデシルマレイミド、N-アダマンチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-エチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等を;
複素環構造を有するビニル化合物として、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラニル、(メタ)アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸5-メチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、2-(メタ)アクリロイルオキシメチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4,6]ウンデカン、(メタ)アクリル酸(γ-ブチロラクトン-2-イル)、(メタ)アクリル酸グリセリンカーボネート、(メタ)アクリル酸(γ-ラクタム-2-イル)、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等を;
共役ジエン化合物として、1,3-ブタジエン、イソプレン等を;
窒素含有ビニル化合物として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等を;
不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物として、イタコン酸ジエチル等を、それぞれ挙げることができる。また、その他の単量体としては、上記のほか、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等の単量体が挙げられる。
【0043】
他のラジカル重合性化合物(c)は、重合体成分のガラス転移温度を調整して熱硬化時のメルトフローを抑制する観点から、これらのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、及び複素環構造を有するビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位であることが好ましい。
【0044】
また、共重合体(I)の、酸基を有するラジカル重合性化合物(a)の共重合割合は、好ましくは5~40質量%、特に好ましくは10~30質量%である。5質量%未満であると、得られる共重合体がアルカリ水溶液に溶解しにくくなるので現像残りを生じ易く十分なパターンを作り難い。逆に40質量%を超えると、得られる共重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性が大きくなりすぎて放射線照射部の溶解、即ち膜減り現像を防ぐことが難しくなる。
【0045】
共重合体(I)の、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)の共重合割合は、好ましくは10~70質量%、特に好ましくは20~50質量%である。10質量%未満であると、酸基を有するラジカル重合性化合物(a)又は感放射線性酸生成化合物(B)に放射線を照射することによって生成する酸との反応が十分に進行し難く、組成物から得られるパターンの耐熱性が十分なものとなり難くなる。また、70質量%を超えると、共重合体(I)の保存安定性に問題が生じやすくなる。
【0046】
共重合体(I)の、他のラジカル重合性化合物(c)の共重合割合は、好ましくは10~70質量%、特に好ましくは30~50質量%である。10質量%未満であると、重合反応中にゲル化が起こりやすくなる。また70質量%を超えると、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)や、酸基を有するラジカル重合性化合物(a)の量が相対的に少なくなることから、アルカリ水溶液に対する樹脂の溶解度が減じたり、組成物から得られるパターンの耐熱性が不十分になることがある。
【0047】
共重合体(I)を重合する際に用いられる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;その他に芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。
【0048】
ラジカル重合における重合触媒としては通常のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1-ビス-(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物及び過酸化水素等を挙げることができる。過酸化物をラジカル重合開始剤に使用する場合、還元剤を組み合せてレドックス型の開始剤としてもよい。
【0049】
以上の共重合体(I)の分子量及びその分布は、対象膜1を形成する感放射線性組成物の溶液を均一に塗布することが可能である限り、特に限定されるものではない。
【0050】
《感放射線性酸生成化合物(B)》
感放射線性酸生成化合物(B)は、光が照射されることで酸を生成する化合物である。一例として、感放射線性酸生成化合物はキノンジアジド化合物(B1)である。キノンジアジド化合物(B1)は、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物と、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物である。
【0051】
より詳細には、キノンジアジド化合物(B1)は、1,2-ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2-ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド等の1,2-キノンジアジド化合物を挙げることができる。
【0052】
これらの中で、キノンジアジド化合物(B1)は、放射線を照射した後の400~800nmの可視光線領域における透明性が良好な化合物、例えば2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、3′-メトキシ-2,3,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,5,5′-テトラメチル-2′,4,4′-トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール及び2,4,4-トリメチル-2′,4′,7-トリヒドロキシ-2-フェニルフラバン等の1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステルを好ましいものとして挙げることができる。
【0053】
キノンジアジド化合物(B1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
なお、感放射線性酸生成化合物(B)は、光が照射されることで酸を生成する化合物であれば、キノンジアジド化合物(B1)には限られず、他の酸発生剤(B2)であっても構わない。酸発生剤(B2)としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。
【0055】
感放射線性酸生成化合物(B)の添加量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5~100質量部であり、より好ましくは10~50質量部であり、特に好ましくは15~30質量部である。5質量部未満であると、光を吸収して生成する酸の量が少なくなるので、光照射前後のアルカリ水溶液に対する溶解度に差をつけることができず、パターニングが困難となり、更に、共重合体(I)のエポキシ基との反応においても、関与する酸の量が少なくなるので、組成物から得られるパターンの耐熱性に不具合が生じる恐れがある。また、100質量部を超えると、短時間の放射線照射では添加した感放射線性酸生成化合物の大半が未だそのままの形で残存するため、アルカリ水溶液への不溶化効果が高過ぎて現像することが困難となる場合がある。
【0056】
特に、感放射線性酸生成化合物(B)の添加量を、樹脂(A)100重量部に対して15~30質量部の範囲内とすることで、工程(α)実行後に生じる気泡の量を抑制する効果が高められる。
【0057】
《その他の配合剤(C)》
対象膜1の硬度や耐熱性を向上させる観点から、以下に示すような(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物等を併用することも可能である。
【0058】
(メタ)アクリル化合物は、最終加熱時に(メタ)アクリル化合物自身が重合することによって形成した塗膜の硬度、耐熱性等を更に向上させるために用いる。(メタ)アクリル化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。エポキシ化合物は、先述の共重合体(I)及び放射線照射により感放射線性酸生成化合物から生成する酸との反応点を最終加熱時に調整させるために用いられる。
【0059】
エポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。この中で加熱処理後も着色しにくい点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂及びグリシジルエステル系エポキシ樹脂が好ましい。
【0060】
配合剤(C)として、架橋性化合物を含むこともできる。架橋性化合物は、例えば、オキシラニル基(1,2-エポキシ構造)、オキセタニル基(1,3-エポキシ構造)、メチロール基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、環状カーボネート基等などの架橋性基を有する化合物を含む。
【0061】
架橋性基の中でも、オキシラニル基(エポキシ基)、オキセタニル基、メチロール基、及びこれらの組み合わせが好ましく、オキシラニル基及びオキセタニル基がより好ましく、オキシラニル基が更に好ましい。
【0062】
配合剤(C)として、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤、及びその他の界面活性剤を利用することができる。
【0063】
対象膜1に含まれる感放射線性組成物は、上述した各成分を均一に混合することによって容易に調製することができる。混合する際、通常適当な溶媒に溶解させて溶液の形で使用に供される。用いる溶媒としては、共重合体(I)及び感放射線性酸生成化合物(B)を均一に溶解させることができ、各成分と反応しないものが用いられる。
【0064】
かかる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類を用いることができる。
【0065】
更に、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。
【0066】
これらの溶剤の中では、溶解性、各成分との反応性及び塗膜の形成のし易さから、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類が好適である。
【0067】
また、組成物溶液の調製にあたっては、例えば共重合体(I)の溶液、感放射線性酸生成化合物の溶液及びその他の配合剤の溶液それぞれを別に調製しておき、使用直前にこれら溶液を所定の割合で混合することもできる。以上のようにして調製した組成物溶液は、孔径0.2μmのメンブレンフィルタ等を用いて瀘過した後、使用に供することもできる。
【0068】
対象膜1を作製するに際しては、上述した組成物溶液を、所定の基体表面(
図1では層2の上面)に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって所望の塗膜が形成される。基体表面への塗布方法は特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を採用することができる。
【0069】
感放射線性組成物の塗膜の加熱条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常は70~90℃で5~15分間程度である。次に、得られた塗膜に所定のパターンのマスクを介して、紫外線を照射した後、現像液を用いて現像し、不要な部分を除去しパターンを形成させる。
図1には、パターニングがされた後の塗膜(対象膜1)が図示されている。
【0070】
現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0071】
現像時間は通常30~180秒間であり、また現像の手法は液盛り法、ディッピング法等のいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を30~90秒間行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、不要な部分を除去し、パターンを形成させることができる。その後、例えば紫外線を照射することによって未露光部分であるパターン中に残存している酸生成化合物を酸に変化させる。更に、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて、所定の温度、例えば150~250℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5~30分間、オーブン中ならば30~90分間、加熱処理をすることによって耐熱性、透明性、硬度等に優れた対象膜1を得ることができる。
【実施例】
【0072】
次に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制約されるものではない。また、以下では、特に断りの無い限り、部は「質量部」を示す。
【0073】
[合成例1](共重合体(I-1)の合成)
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)200部を仕込んだ。引き続き、メタクリル酸15部、グリシジルメタクリレート20部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート15部、スチレン50部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、アルカリ可溶性樹脂である共重合体(I-1)を含有する重合体溶液を得た。得られた重合体をヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、共重合体(I-1)をPGMEAに溶解させ重合体濃度30質量%溶液とした。この共重合体(I-1)の重量平均分子量(Mw)は10,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.3であった。
【0074】
[合成例2~4](共重合体(I-2)~(I-4)の合成)
下記表1に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いたこと以外は合成例1と同様の手法にて、それぞれ共重合体(I-2)~(I-4)を含む重合体溶液を得た。表1において、「-」は該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0075】
【0076】
表1中の各記号の意味は以下のとおりである。
MA:メタクリル酸
GMA: グリシジルメタクリレート
ST:スチレン
M-100:3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(サイクロマーM100 (株)ダイセル製)
DCM: メタクリル酸ジシクロペンタニル
CHMI:N-シクロヘキシルマレイミド
PMI:N-フェニルマレイミド
PIPE:p-イソプロペニルフェノール
OXMA:(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート
【0077】
[感放射線性組成物の含有成分]
実施例及び比較例の感放射線性組成物の調製に用いた共重合体(I)(樹脂(A))、感放射線性酸生成化合物(B)、その他の配合剤としての有機溶媒(C)を以下に示す。
【0078】
〈共重合体(I)〉
共重合体I-1~I-4:合成例1~4で合成した共重合体(I-1)~(I-4)
【0079】
〈感放射線性酸生成化合物(B)〉
B-1:4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
B-2:1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
【0080】
〈有機溶媒(C)〉
C-1:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(EDM)
C-2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0081】
[評価]
実施例及び比較例の感放射線性組成物を用いて対象膜1を製造し、下記項目を評価した。
【0082】
〈実施例1〉
共重合体(I-1)を含有する濃度30質量%の重合体溶液に、共重合体(I-1)100部を基準として、感放射線性酸生成化合物(B-1)30部を混合した。更に、得られた混合物を溶媒以外の全成分濃度が30質量%となるように有機溶媒(C-1)に溶解させた後、孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過して、感放射線性組成物を調製した。
【0083】
〈実施例2~9、比較例1~4〉
下記表2に示す種類の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様に操作し、実施例2~9及び比較例1~4の感放射線性組成物を調製した。
【0084】
〈気泡の評価〉
シリコン基板上に、下記表2に示す実施例及び比較例の感放射線性組成物をスピンナを用いて塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして膜厚6.0μmの塗膜を形成した。続けて、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて23℃において60秒間液盛り法で現像した。
【0085】
次いで、超純水で1分間流水洗浄を行った後に乾燥を行い、対象膜1を模擬した発泡評価用基板を作成した。この評価用基板に対し、照度2000mW/cm2、露光量600mJ/cm2にて、LED素子4を搭載した光源3から、表2に記載の波長の紫外線L1を照射した。
【0086】
紫外線L1を照射後、塗膜表面上の気泡について、下記の基準に基づき6段階の目視評価を行った。
(評価基準)
0… 気泡の発生が確認できなかった。
1… 塗膜端部において部分的に気泡が確認された。
2… 塗膜端部において全面的に気泡が確認された。
3… 塗膜中央部において部分的に気泡が確認された。
4… 塗膜中央部において全面的に気泡が確認された。
5… 塗膜中央部において全面的に気泡が確認されるとともに、塗膜の一部において欠損が発生した。
【0087】
なお、上記のように、塗膜はスピンコートで塗布されているため、評価用基板の端部は中央部に比べて少し厚膜化される。気泡は膜厚が厚いほど発生しやすいことから、膜厚が比較的薄い領域である塗膜中央部で気泡が発生されることは、より気泡が発生しやすい状況であると判断できる。
【0088】
〈透過率の評価〉
ガラス基板(コーニング社の「コーニング7059」)上に、下記表2に示す実施例及び比較例の感放射線性組成物をスピンナを用いて塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプリベークして膜厚3.0μm又は膜厚6.0μmの塗膜を形成した。続けて、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて23℃において60秒間液盛り法で現像した。
【0089】
次いで、超純水で1分間流水洗浄を行った後に乾燥を行い、対象膜1を模擬した硬化膜が形成されてなる評価用基板を作成した。この評価用基板に対し、照度2000mW/cm2、露光量600mJ/cm2にて、LED素子4を搭載した光源3から、表2に記載の波長の紫外線L1を照射した。その後、230℃で30分加熱した。この加熱は、対象膜1内に存在する架橋成分の架橋反応(硬化)を促進させる目的で行われたものである。
【0090】
評価用基板に対し、分光光度計(日立製作所製「150-20型ダブルビーム」)を用いて波長400nm~800nmの範囲の光透過率を測定し、各ガラス基板評価用基板について、波長400nm~800nmの範囲の光透過率の最低値(最低光透過率とも称する。)を評価した。
【0091】
また、下記表2に示す実施例及び比較例の感放射線性組成物を用いて、塗膜の膜厚を6.0μmとして同様の方法で作成された評価用基板に対して、同様の評価を行った。
【0092】
なお、塗膜の膜厚を3.0μmとして製造された評価用基板の、紫外線L1照射前における透過率は70%であり、塗膜の膜厚を6.0μmとして製造された評価用基板の、紫外線L1照射前における透過率は52%であった。
【0093】
各実施例1~9及び比較例1~4の感放射線性組成物、及び当該組成物を用いて生成された対象膜1の評価結果を下記表2に示す。
【表2】
【0094】
図3は、各実施例又は比較例で利用された光源3から出射される、主ピーク波長が365nm、385nm、405nmの紫外線L1のスペクトルを重ね合わせた図面である。実施例では、主ピーク波長が385nmであるLED素子4を搭載した光源3から、評価用基板に対して紫外線L1が照射された。また、比較例では、実施例で利用した光源3とは別に、主ピーク波長が365nmのLED素子4を搭載した光源3、又は405nmのLED素子4を搭載した光源3を準備し、各光源3から評価用基板に対して紫外線L1が照射された。
【0095】
表2によれば、感放射線性組成物が同一の材料組成で形成されている、実施例1、比較例1、及び比較例2を比較すると、主ピーク波長が365nm、又は405nmである紫外線L1が照射された場合(比較例1,比較例2)と比べて、主ピーク波長が385nmである紫外線L1が照射された場合(実施例1)は、対象膜1の膜厚にかかわらず、透過率が高く、膜内の発泡が抑制されていることが分かる。
【0096】
同様に、表2によれば、感放射線性組成物が同一の材料組成で形成されている、実施例3、比較例3、及び比較例4を比較すると、主ピーク波長が365nm、又は405nmである紫外線L1が照射された場合(比較例1,比較例2)と比べて、主ピーク波長が385nmである紫外線L1が照射された場合(実施例1)は、対象膜1の膜厚にかかわらず、透過率が高く、膜内の発泡が抑制されていることが分かる。
【0097】
更に、感放射線性組成物の組成を適宜変更して製造した、実施例1~9のいずれの場合においても、主ピーク波長が385nmである紫外線L1が照射されることで、対象膜1の膜厚にかかわらず、透過率が高く、膜内の発泡が抑制されていることが分かる。
【0098】
なお、感放射線性組成物を含んでなる対象膜1に対して紫外線L1を照射することで、対象膜1内に気泡が生じるのは、例えば下記(1)式の反応が生じ、窒素ガスが発生したことに由来すると考えられる。下記(1)式は、感放射線性酸生成化合物(B)を構成するナフトキノンジアジド化合物に紫外線L1(下記(1)式ではhνと表記)が照射された場合の反応が示されている。
【0099】
【0100】
上記(1)式の反応は、ナフトキノンジアジド化合物に対して高い感光性を示す波長の紫外線が照射されると生じやすい。すなわち、本発明では、意図的に感光性が少し低下するような波長帯の紫外線L1を、感放射線性酸生成化合物(B)を含む対象膜1に対して照射させることで、(1)式の反応の進行が緩やかになり、これによって窒素ガスの生成速度が低下したものと考えられる。そして、表2の結果によれば、感光性が少し低下するような波長帯、ここでは、主ピーク波長が385nmの紫外線L1を照射した場合であっても、対象膜1の透過率を向上できていることが確認された。
【0101】
なお、「課題を解決するための手段」の項で上述したように、LED素子4は、製造時の精度や利用時の環境によっては、主ピーク波長に対して、±10nm以内の範囲で個体差が存在する場合が考えられる。上記の事情に鑑みれば、対象膜1に対して、LED素子4から主ピーク波長が375nm以上395nm以下の範囲内にある紫外線L1を照射することで、各実施例と同様に、透過率の向上と発泡の抑制が両立できることが分かる。
【0102】
[別実施形態]
図4に示すように、光源3が波長365nm以下の光をカットするフィルタ5を搭載しており、LED素子4から出射された紫外線L1は、フィルタ5によって波長365nm以下の光がカットされた状態で、対象膜1に照射されるものとしても構わない。フィルタ5は、例えば誘電体多層膜で構成される。
【符号の説明】
【0103】
1 :対象膜
2 :層(対象膜の下層)
3 :光源
4 :LED素子
5 :フィルタ
L1 :紫外線