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特許7451282印刷装置、印刷装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240311BHJP
   B41J 11/66 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B41J2/165 501
B41J2/165 207
B41J2/165 301
B41J2/165 211
B41J11/66
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020078333
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172030
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 淳史
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030529(JP,A)
【文献】特開2014-121845(JP,A)
【文献】特開2010-030184(JP,A)
【文献】特開2012-192556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 11/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記印刷媒体を切断可能な切断手段と、
前記印刷手段を回復させる回復動作を行う回復手段と、
前記搬送手段、前記印刷手段、前記切断手段、および前記回復手段を制御する制御手段と、
を有する印刷装置であって、
前記制御手段は、第1ページに続いて第2ページを印刷する場合において、
前記回復動作に関する所定の条件に合致した場合、前記第1ページの印刷終了後であって前記第2ページの印刷開始前に、前記切断手段に前記印刷媒体を切断させた後に前記回復手段に前記回復動作を実行させ、
前記所定の条件に合致しない場合、前記第1ページの印刷終了後に前記切断手段によって前記印刷媒体を切断させずに前記印刷手段に前記第2ページの印刷を開始させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記第2ページの印刷の前に前記回復動作が必要と判定される条件であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記第1ページの印刷終了時における、前回の回復動作の実行時からのインクの使用量に基づくことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記第1ページの印刷終了時における、前記第2ページの印刷に必要なインク量に基づくことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記第1ページの印刷終了時における、前記第2ページ以降の印刷ジョブの情報に基づくことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2ページ以降の印刷ジョブの情報は、印刷する画像の種類の情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第2ページ以降の印刷ジョブの情報は、印刷する画像の設定の情報を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第2ページ以降の印刷ジョブの情報は、印刷する画像の解像度の情報を含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、前記印刷装置に設定された印刷設定に基づくことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記所定の条件は、前記印刷装置における使用実績に基づくことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記所定の条件に合致しない場合、前記第2ページの印刷を前記印刷媒体の所定の位置まで行った後に、前記第1ページの後端位置を前記切断手段に切断させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記所定の位置は、前記搬送手段によって前記印刷媒体が搬送される搬送方向における、前記印刷手段と、前記切断手段と距離に基づき決定されることを特徴とする請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記所定の条件に合致した場合、前記切断手段に前記印刷媒体を切断させた後に、前記搬送手段に前記印刷媒体を退避位置まで搬送させた後に、前記回復手段に前記回復動作を実行させることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記回復手段は、予備吐出動作、ワイピング動作、および吸引回復動作のうちの少なくとも1つを実行することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記吸引回復動作は、前記印刷手段にインクを充填する動作を含むことを特徴とする
請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
印刷媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記印刷媒体を切断可能な切断手段と、
前記印刷手段を回復させる回復動作を行う回復手段と、
を有する印刷装置の制御方法であって、
第1ページに続いて第2ページを印刷する場合において、
前記回復動作に関する所定の条件に合致した場合、前記第1ページの印刷終了後であって前記第2ページの印刷開始前に、前記切断手段に前記印刷媒体を切断させた後に前記回復手段に前記回復動作を実行させ、
前記所定の条件に合致しない場合、前記第1ページの印刷終了後に前記切断手段によって前記印刷媒体を切断させずに前記印刷手段に前記第2ページの印刷を開始させる、工程を有することを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項17】
コンピュータを請求項1乃至15のいずれか一項に記載の印刷装置の制御手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール形状の印刷用紙に印刷をする印刷装置がある。また、印刷全般のスループットの向上のために、複数ページの印刷を行う際に、1ページ分の印刷の終了後に直ちに印刷用紙を切断せず、所定位置まで2ページ目の印刷を実行した後で、1ページ目の印刷用紙の切断を行う印刷装置がある。
【0003】
また、特許文献1には、ロール紙に印刷する印刷装置において、複数ページに連続して印刷する連続印刷の途中で、印刷動作の回数が閾値を超えている場合、印刷装置内部で割込み処理によりノズルチェックを実行し、クリーニングを行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-30184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スループット向上のためにロール紙に複数ページを連続印刷する途中で、特許文献1のように割込み処理によってクリーニングを行うと、クリーニングによって生じるミストが印刷用紙に付着し、印刷結果に影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明は、連続印刷時のスループットを向上させつつ、印刷精度を維持することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る印刷装置は、印刷媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、前記印刷媒体を切断可能な切断手段と、前記印刷手段を回復させる回復動作を行う回復手段と、前記搬送手段、前記印刷手段、前記切断手段、および前記回復手段を制御する制御手段と、を有する印刷装置であって、前記制御手段は、第1ページに続いて第2ページを印刷する場合において、前記回復動作に関する所定の条件に合致した場合、前記第1ページの印刷終了後であって前記第2ページの印刷開始前に、前記切断手段に前記印刷媒体を切断させた後に前記回復手段に前記回復動作を実行させ、前記所定の条件に合致しない場合、前記第1ページの印刷終了後に前記切断手段によって前記印刷媒体を切断させずに前記印刷手段に前記第2ページの印刷を開始させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連続印刷時のスループットを向上させつつ、印刷精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】印刷装置の構成を示すブロック図。
図2】印刷装置の構成を示す模式図。
図3】印刷装置の用紙搬送構成の断面を示す模式図。
図4】処理を示すフローチャート。
図5】印刷装置の回復動作のための構成を示す模式図。
図6】記録ヘッドとインクタンクとの間のインク供給系を示す模式図。
図7】印刷装置の印刷後カットの実行順序を示す図。
図8】印刷装置の印字中カットの実行順序を示す図。
図9】印刷設定を選択する入力画面の一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付画像を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されていると特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置および形状などは、あくまで例示である。
【0011】
本実施形態の具体的な説明に先立って、ロール形状の印刷用紙を用いた連続印刷時のスループットを向上させる技術の補足説明をする。ロール形状の印刷用紙を切断するためのカッターの位置が、印刷に用いるヘッド(以下、記録ヘッドと呼ぶ)とインクタンクとを含むキャリッジから離れた位置に配されている印刷装置がある。このような印刷装置において、複数ページの印刷ジョブを実行する際に、1ページ分のデータの受信、印刷、用紙の切断、用紙の搬送動作、次ページ分の処理、という順で制御が行われると、カッター位置まで印刷用紙を搬送する動作に時間がかかってしまう。
【0012】
そこで、スループット向上を目的として、印刷終了後、印刷用紙を切断せずに次のページの印刷を継続して行い、カッター位置までに印刷可能な数バンド分の印刷が行われる。その後、印刷用紙がカッター位置まで達した時点で、印刷を一時的に停止して前ページ分の用紙の切断を行い、続けて印刷を再開する制御が行われている(以下、本制御を印字中カットと呼ぶ)。
【0013】
一方で、印刷装置においては、複数ページを伴う印刷ジョブにおいて、印刷精度の維持(かすれ印字といった印字不良の軽減)のために、1ページ分の印刷終了後に記録ヘッドのクリーニングを行うことがある。ここで、複数ページを伴う印刷ジョブとは、例えば異なる印刷画像のページをそれぞれ印刷する印刷ジョブ、および、同一の印刷画像を複数部数印刷する印刷ジョブの両方を含むものである。クリーニングにおいては、記録ヘッドのノズルからの予備吐出および印刷に必要なインクの吸引などが行われる。
【0014】
ここで、印字中カットを含む連続印刷時に、クリーニングが必要になると、印刷動作の途中で印刷以外の要因によるノズルからのインク吐出が行われることがある。このインク吐出により、細かなインクが印刷装置内部にミスト状に散らばることが生じ得る。するとそのミストが印刷用紙に付着し、印刷結果に影響を及ぼしてしまうことがある。
【0015】
以下で説明する実施形態では、上記の点を鑑みて、ロール形状の印刷用紙を用いて連続印刷をする際に、印刷精度の維持をしつつ、スループットの向上を実現させる例を説明する。
【0016】
<<第1実施形態>>
<印刷装置の構成>
図1は、本実施形態における印刷装置1の内部構成を示すブロック図である。印刷装置1は、CPU101によって制御され、印刷を行うプリンタユニット110を有する。ROM106には、印刷装置1の制御実行コード(プログラム)が記憶されている。RAM107は、印刷に用いられる画像データを一時的に記憶したり印刷装置1の制御に関するデータを一時的に記憶したりする記憶部として機能する。NVRAM108は、不揮発メモリであり、印刷装置1の保守に必要な各種情報を記憶する。ハードディスク109は、プリンタユニット110の印刷に用いられる画像データを記憶する。
【0017】
印刷装置1は、LCD、LED、キー、またはタッチパネルなどのユーザーインターフェースとしての機能を有する表示部・操作部112を有し、表示部・操作部112を用いて、ユーザによる印刷装置1の各機能の実行操作または設定操作などが行われる。コントローラ111は、表示部・操作部112とCPU101との間で、これらの操作指示の伝達および表示内容の制御を行う。
【0018】
印刷装置1は、外部接続機器と接続するためのLANユニット114を有する。CPU101は、ネットワークドライバ113を介してLANユニット114と接続される。LANユニット114によって、ホスト装置またはサーバーなどの外部機器と印刷装置1との間で印刷の実行命令および印刷ジョブ(印刷データ)のやり取りなどが行われる。例えば、プリンタユニット110によって印刷が実行される場合、外部機器から印刷用の画像データを含む印刷ジョブがネットワークドライバ113を介して転送される。
【0019】
図2は、本実施形態における印刷装置1(より詳細には、プリンタユニット110)の構成を示す模式図である。
【0020】
印刷装置1には、印刷媒体である印刷用紙201が取り付けられている。本実施形態における印刷用紙201は、ロール紙である。印刷用紙201は、搬送ローラー204により上下から挟まれている。搬送ローラー204が回転することにより、印刷用紙201の送り動作及び巻き戻し動作が行われる。印刷装置1は、搬送ローラー204の回転軸にモータ(不図示)を備えており、搬送ローラー204の回転は、そのモータによる駆動によって行われる。また、印刷用紙201は、プラテン205によって下側より支えられている。
【0021】
キャリッジ203は、図2の右側から左側、および、左側から右側へ移動(走査)する。キャリッジ203には記録ヘッドが搭載されている。記録ヘッドからインクを吐出することにより印刷媒体への記録が行われる。本実施形態では、図2の右側を基準側、左側を非基準側と呼ぶ。尚、本実施形態における記録とは、印刷と等価である。記録ヘッドは、図2において不図示であり、後述する図5および図6にて説明をすることとする。
【0022】
印刷装置1は、カッターユニット202を備えている。カッターユニット202が基準側から非基準側へ移動しながら切断動作を行うことにより、印刷用紙201が切断される。キャリッジ203が移動する方向を主走査方向という。カッターユニット202も主走査方向に移動する。印刷用紙201が搬送ローラー204によって紙送り、及び、巻き戻しされる方向を副走査方向と呼ぶ。即ち、印刷用紙201が搬送される用紙搬送方向を副走査方向とも呼ぶ。
【0023】
図3は、本実施形態における印刷装置1の用紙搬送構成の断面を示す模式図である。図2と同様に、印刷装置1には、ロール紙である印刷用紙201が取り付けられている。搬送ローラー204は、詳細には搬送ローラー上部305と、搬送ローラー下部306とで構成される。印刷用紙201は、搬送ローラー上部305と搬送ローラー下部306とによって上下で挟まれる。搬送ローラー上部305および搬送ローラー下部306が回転することにより、図3に示す用紙搬送方向へ紙送りがされる。また、搬送ローラー上部305および搬送ローラー下部306が逆回転することにより、図3に示す用紙搬送方向と反対方向に印刷用紙201の巻き戻しが行われる。印刷用紙201は、プラテン205によって下側から支えられている。
【0024】
本実施形態では、用紙搬送経路のうち、図3の搬送ローラー上部305および搬送ローラー下部306に近い側を上流側、用紙搬送方向左側(図3における印刷用紙201左側)を下流側と呼ぶ。本実施形態の印刷装置1では、用紙搬送経路の上流側から順に、搬送ローラー204、キャリッジ203、カッターユニット202が配されている。このため、前述したように、キャリッジ203に搭載されている記録ヘッドによって第1ページの印刷が完了した時点では、印刷用紙201は、カッターユニット202による切断位置には達していない。このため、スループットを向上のために、第1ページの印刷に続けて第2ページの印刷が実施されることになる(印字中カットが実施される)。また、所定の条件に合致した場合には、印字中カットを実施せず、第1ページの切断後にクリーニング動作が行われることになる。詳細は後述する。
【0025】
キャリッジに搭載されている記録ヘッドには、複数のノズルが配されている。記録ヘッドに配されているノズルからインクを吐出することにより印刷媒体への記録が行われる。記録ヘッドのうち、最も上流側にあるノズルを最上流ノズル304、最も下流側にあるノズルを最下流ノズル302と呼ぶ。
【0026】
<フローチャート>
図4は、本実施形態の処理を示すフローチャートである。図4に示す処理は、印刷装置1のCPU101が、ROM106などに記憶されているプログラムを実行することで行われる。なお、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する(以下、本明細書において同様である)。印刷装置1に印刷データを含む印刷ジョブのデータが転送されることにより、S400の印刷処理開始が行われる。印刷ジョブは、印刷の書式およびジョブの情報を格納する印刷ジョブヘッダ部と、実際の画像データが格納されている画像データ部(印刷データ部)とを有する。
【0027】
S401においてCPU101は、先頭ページの印刷処理を行う。即ち、CPU101は、印刷用紙201を副走査方向に所定量だけ搬送し、インクが充填された記録ヘッドを搭載したキャリッジ203を主走査方向に駆動させながらインクを吐出させる。この動作を繰り返すことにより、先頭ページの印刷データに基づく画像を印刷用紙201に印刷する。
【0028】
S402においてCPU101は、当該ページ(即ち、先頭ページ)の印刷が終了したかを判定する。先頭ページの印刷が終了していない場合、印刷を続行する。先頭ページの印刷が終了した場合、S403に処理が進む。
【0029】
S403においてCPU101は、実行中の印刷ジョブにおいて次のページがあるかを判定する。即ち、次のページの印刷データがあるかを判定する。次のページがない場合、S440に進み、印刷終了となり、本フローチャートの処理を終了する。一方、次のページがある場合、S405に処理が進む。
【0030】
S405においてCPU101は、クリーニングの有無の判定を行う。本実施形態におけるクリーニングとは、キャリッジ203に搭載された記録ヘッドおよび記録ヘッドに配されているノズルを回復させる回復動作のことである。クリーニング動作としては、印刷品質を保持するために、記録を行うために必要なインクの充填動作、および、ノズルの拭き取りなどの動作が含まれる。このようなクリーニング動作により、記録時におけるインク不足またはノズル詰まり等に起因して生じる、印字かすれといった印字不良を抑制することができる。クリーニング動作の詳細は、図5および図6を用いて後述することにする。
【0031】
本実施形態では、基本的に、スループットを向上のために、上述した印字中カットを行う。即ち、印刷用紙を切断せずに次のページの印刷を継続して行い、カッター位置までに印刷可能な数バンド分の印刷が行われる。しかしながら、その次ページの印刷に際してクリーニングが必要になる場合がある。その場合には、本実施形態では、印字中カットを行わずに、クリーニング動作が行われる。即ち、次ページの印刷を行わずに印刷用紙201の切断が行われ、印刷用紙201を退避してクリーニング動作が行われる。S405では、そのような次ページの印刷処理を切り替えるために、クリーニングの有無の判定が行われる。
【0032】
このように、S405で行われるクリーニングの有無の判定は、印刷処理中の印刷ジョブにおいて、次ページ以降の印刷を行うに際して、印字不良抑制のためにクリーニング動作(回復動作)を行うかどうかを判定することに相当する。このクリーニングの有無の判定を行う条件としては、例えば下記の例1から例5に示すようなものがある。例1から例5は、現在のページの印刷終了時において、これまでのインクの使用量、および、これからのインクの使用量の少なくとも一方を用いて判定をするものである。本実施形態の記録ヘッドでは、インク充填のため、および、印字精度向上のために、所定量のインクが使用されると、クリーニングが実行される。
【0033】
<例1>
例1は、前回のクリーニング実行時から、記録動作および回復動作によって使用したインク量(以下、ドットカウントと呼ぶ)から判定する例である。ドットカウントの値は、インク使用毎にNVRAM108に加算して記憶される。ドットカウントの値は、クリーニング実行時にリセットされる。ドットカウントの値を参照することで、前回のクリーニング実行時から、記録動作および回復動作によって使用したインク量を特定することができる。CPU101は、NVRAM108に記憶されたドットカウントの値を参照し、クリーニングの有無の判定を行う。詳細には、CPU101は、ドットカウントの値が所定値を上回っている場合、つまり、インク使用量が所定量を上回っている場合、クリーニングが必要であると判定する。そうでない場合、クリーニングは不要であると判定してよい。尚、記録ヘッドで使用されるインクが複数ある場合、いずれかのインクのドットカウントの値が所定値を上回っている場合に、クリーニングが必要であると判定してよい。
【0034】
<例2>
例2は、実行中の印刷ジョブにおいて次のページの印刷に必要なインク量から判定する例である。つまり、現在の記録ヘッド内部に貯留されているインク量が、次のページの印刷において十分な量であるかが判定される。例えば、CPU101は、前回のクリーニング実行時におけるドットカウントから、NVRAM108に記憶されている現在のドットカウントの値を差し引くことで、現在の記録ヘッド内部に貯留するインク量に相当するカウント値(第一値という)を決定する。また、CPU101は、S405において、次のページの印刷に用いられる印刷データを解析し、次のページの印刷に必要なドットカウントの値(第二値という)を決定する。次のページの印刷に必要なドットカウント値の決定方法としては、次の方法がある。まずCPU101は、次ページの印刷データを解析して、印刷対象となる面積を決定する。そして、CPU101は、印刷データの解析結果を用いて、印刷対象となる面積のうち、実際に印刷される部分(インクを吐出して印刷用紙に記録が行われる部分)の比率を決定する。そして、この比率にピクセルごとに必要なインクのドット数を掛ける算出を行うことで算出比率を求める。尚、ピクセルごとのインクのドット数は、例えば、印刷ジョブの情報のうち、印刷の濃度を参照することで決定することができる。こうして得られた算出比率をデューティと呼ぶ。つまり、デューティを参照することで第二値が得られることになる。
【0035】
そして、第一値が、第二値より上回っている場合は、次のページの印刷が可能であり、クリーニングは不要と判定してよい。一方、第一値が、第二値以下の場合は、次のページの印刷に必要なインクが不足している、または、不足となる可能性が高く、インク充填を含むクリーニングが必要であると判定する。
【0036】
<例3>
例3は、実行中の印刷ジョブにおいて次のページ以降の印刷に必要なインク量を、印刷ジョブの情報から判定する例である。印刷ジョブが複数ページにわたる場合、即ち、印刷ジョブに複数ページ分の印刷データが含まれている場合、印刷動作と並行して印刷データの解析が行われる。このため、数ページ先の印刷データ自体は、印刷装置1において未受信である場合が起こり得る。そこで、CPU101は、印刷ジョブの情報から、クリーニングの有無を判定する。
【0037】
印刷ジョブの情報には、例えば画像の種類の情報が含まれている。画像の種類とは、モノクロ、2色など特定の数色、フルカラーというような色の分け方の種類がある。また、線画、画像(写真など)、これらの混在、といったように、記録する内容による分け方がある。
【0038】
また、印刷ジョブの情報の他の例としては、画像の設定の情報がある。画像の設定には、例えば記録時に薄く記録する、濃く記録する、または、記録する濃度の複数の段階の設定値などがある。印刷ジョブの情報の他の例には、解像度、粗さ、または細かさなどの観点で複数の段階の設定値などがある。
【0039】
以上説明したような各種の情報は、印刷ジョブの情報に付帯され、印刷開始時に印刷装置に送られてくることが一般的である。よって、CPU101は、先頭ページの印刷が終了したS405の時点で、これらの情報を取得することが可能である。そこで、CPU101は、これらの情報を参照して、必要とされるドットカウントの値(第三値という)を推定する。そして、上述した第一値と第三値とを比較して、第一値が第三値を上回っている場合は次のページ以降の印刷が可能と判定し、クリーニングは不要と判定してよい。一方、第一値が第三値以下の場合、クリーニングが必要であると判定する。
【0040】
<例4>
例4は、印刷装置1が、操作者による印刷設定を設定可能な構成の例である。CPU101は、表示部・操作部112として設けられているLCD画面に設定項目を表示し、操作パネルを通じて操作者によって設定された内容に基づいて、クリーニングの有無を判定する。例えば、操作者は、印刷品質の保持を優先するか、または、印刷速度を優先するかを設定することができる。設定は、このような2択に限らず、複数段階での設定でもよい。また、外部機器において設定した内容を印刷装置1がLANユニット114等により受信して設定してもよい。このように設定された内容は、RAM107またはNVRAM108の所定の領域に記憶される。この設定は、実行中の印刷ジョブに限定した設定であってもよいし、印刷装置1において実行するすべての印刷ジョブに適用する設定であってもよい。尚、設定画面の例は、図9にて後述する。
【0041】
<例5>
例5は、印刷装置1における使用実績によって決定する例である。CPU101は、例3で示した印刷ジョブの情報、および、例4で示した印刷設定の情報のうち、所定数をNVRAM108の所定の領域に蓄積し、傾向を特定する。例えば、画像の種類で最も高頻度で印刷されているもの、画像の設定の粗さ、画像の解像度、例4における印刷設定で最も高頻度で設定されている内容などの項目から、傾向を特定することができる。これらの組合せによって決定しても良い。そして、特定した傾向に従って、例3または例4で説明した処理と同等の処理を行ってよい。また、学習機能をROM106に保持し、学習機能によって学習した結果に基づいて傾向を決定してもよい。
【0042】
また、上記で説明した例1から例5の各例に従ってクリーニングの有無を判定してもよいし、例1から例5の判定条件を組み合わせることで、クリーニングの有無を判定してもよい。
【0043】
図4のフローチャートの説明に戻る。S405においてクリーニングの有無を判定が行われた後に、S406に進む。S406においてCPU101は、クリーニングが必要かを判定する。クリーニングが必要な場合、S410~S415に続く処理が行われる。クリーニングが必要でない場合、S420~S426に続く処理が行われる。
【0044】
クリーニングが必要な場合の処理を説明する。S410においてCPU101は、印刷用紙をカット位置まで搬送する。S411においてCPU101は、印刷用紙をカッターユニット202にカットさせる。S412においてCPU101は、印刷用紙を退避させる。S413においてCPU101は、クリーニングを実行する。S414は、印刷用紙を印刷開始先頭位置まで搬送する。S415においてCPU101は、次ページの印刷を開始する。これらのS410~S415の詳細は、具体的な例とともに、後述する図7において説明する。S415の動作後に、S430に進む。
【0045】
次に、クリーニングが必要でない場合の処理を説明する。クリーニングが必要でない場合には、前述した印字中カットの動作が行われる。即ち、印刷用紙をカット位置まで搬送せず、前ページの印刷に続けて次ページの印刷が行われることになる。S420においてCPU101は、次ページ印刷を開始する。S421においてCPU101は、カッター位置まで印刷したかを判定する。カッター位置まで印刷していない場合、印刷を続行する。カッター位置まで印刷した場合、S422に進み、CPU101は、印刷を中断する。S423においてCPU101は、印刷用紙をカット位置まで搬送する。S422で印刷を中断した位置は、必ずしも印刷用紙のカット位置と一致してない場合がある。例えば、印刷用紙の搬送量および印刷内容により、前ページの後端が、カッター位置となる箇所よりも搬送方向に超える場合がある。このような場合、S423における搬送が行われることになる。S424においてCPU101は、印刷用紙をカットする。S425においてCPU101は、印刷用紙を印刷位置まで搬送する。尚、S423で搬送が必要ない場合には、S425の処理はスキップしてよい。S426においてCPU101は、次ページの印刷を再開する。これらのS420~S426の詳細は、具体的な例とともに、後述する図8において説明する。S426の動作後に、S430に進む。
【0046】
S430においてCPU101は、印刷中のページが印刷終了したかを判定する。印刷が終了していない場合、印刷を続行して印刷終了するまで判定を繰り返す。印刷が終了した場合、S403に戻り、上述した処理を繰り返す。次の印刷ページがなければS440に進み、処理が終了となる。以上が一連の処理の説明である。S440の印刷終了後は、印刷装置1は印刷待機状態に遷移する。印刷装置1は、次に処理する印刷ジョブを取得した場合、再び図4に示す処理を行うことになる。
【0047】
<クリーニングの説明>
図5は、本実施形態における印刷装置1(より詳細には、プリンタユニット110)の回復動作に関連する構成を示す模式図である。図6は、主に記録ヘッド601とインクタンク501との間のインク供給系を示す模式図である。以下では、図5および図6を参照してクリーニングの説明を行う。
【0048】
図5に示すように、インクタンク501は、印刷装置1が搭載するインクのインク色の数に応じて用意される。図5に示す例では、印刷装置1は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、およびマットブラックの5種類のインクを用いる例を示している。この5種類のインクに対応して、それぞれ、インクタンク501が印刷装置1に装着される。図5では、合計5つのインクタンク501が装着されている例を示している。
【0049】
尚、図5においては、5つのインクタンク501は、印刷装置1の両端に配されている。即ち、図5の左側に3つのインクタンク501、右側に2つのインクタンク501が配されている。インクタンク501は、図5に示すように両側に配置されている例に限られず、片側に配置されていてもよい。
【0050】
インクタンク501には、それぞれサブタンク502が装着される。インクタンク501とサブタンク502とは、図6で示すように、インク供給口515で接続される。インク供給口515を通じてインクタンク501内部のインクが、サブタンク502に供給される。サブタンク502は、供給チューブ503に接続されており、供給チューブ503は、記録ヘッド601に接続されている。このようにして、インクタンク501内の圧力と大気圧との均衡を保ちつつ、供給チューブ503を通じて記録ヘッド601に良好にインクを供給するように構成されている。なお、供給チューブ503も、印刷装置1に搭載されているインクの種類の数だけ用いられている。
【0051】
記録ヘッド601は、前述の通りキャリッジ203に搭載されてプラテン205の上方を、図5の左右方向に対応する主走査方向に移動する。その移動の間に記録ヘッド601からプラテン205上の印刷媒体(例えば図3で示した印刷用紙201)に対して記録ヘッドに備えたノズルからインクを吐出することにより、印刷用紙201への印刷が行われる。
【0052】
非記録動作時には、記録ヘッド601は、キャップ504によってノズルをすべて覆うこと(以下、キャッピングと呼ぶ)によりインク水分の蒸発を抑制している。キャップ504には、ポンプチューブ505が接続されている。吸引ポンプ602は、その駆動により、ポンプチューブ505を介して、キャップ504内を吸引可能にする。吸引ポンプ602の駆動によりポンプチューブ505内部に流入したインクは、廃インク吸収体506に蓄えられる。尚、廃インク吸収体506内部のインクが満積載の場合は、吸引ポンプ602の駆動を強制停止して、インクの蓄えを行わないように構成されている。廃インク吸収体506は、着脱し、交換可能な構成とする。
【0053】
図6を参照してキャップ504の内部を説明する。キャップ504の内部は、弁604が設けられたチューブ603に接続される。この弁604の切替えによって、記録ヘッド601をキャッピングした場合に、必要に応じてキャップ504の内部が大気に連通する状態にすることできる。サブタンク502と記録ヘッド601とを連通する供給チューブ503にも、インク供給を切替える弁510が設けられている。
【0054】
記録ヘッド601は、サブタンク502から供給されるインクを貯留する貯留室と、インクを吐出するノズルとを有する。記録ヘッド601内に貯留されたインクの残量が少なくなると、クリーニング処理において、サブタンク502からインクが充填されることになる。
【0055】
図5および図6に示す構成において、クリーニング動作(回復動作)の実施方法を説明する。本実施形態におけるクリーニング動作には、予備吐出動作、ワイピング動作、および吸引回復動作が含まれ得る。予備吐出動作においては、記録ヘッド601からキャップ504の内部にインクを吐出する予備吐出が所定のタイミングで行われる。ワイピング動作においては、ブレード(不図示)によってノズル(インクの吐出口面)を拭くワイピングが行われる。吸引回復動作では、キャップ504で記録ヘッド601のすべてのノズルを覆った状態で吸引ポンプ602を駆動し、キャップ内を負圧にして記録ヘッド601からインクを吸引して排出する吸引回復が行われる。吸引回復時に、併せて、弁510を開くことにより、サブタンク502内部のインクが記録ヘッド601内部に供給される。
【0056】
クリーニング動作では、予備吐出動作、ワイピング動作、および吸引回復動作のうちのいずれかを単独で、または、これらを組み合わせた動作が、所定のタイミングで実施される。例えば、予備吐出動作およびワイピング動作は、印刷用紙への印字におけるインクの使用量、および、連続して実行する時間が所定時間を経過した場合に実施される。所定時間は、例えば7分程度を想定するが、記録内容および実行中の印刷ジョブの内容に応じて時間を変更してもよい。また、予備吐出動作およびワイピング動作は、時間経過に起因するインクの水分蒸発によって生じるインク濃度の影響を抑制する動作でもある。このため、インクの種類、周囲の温度、および湿度などの条件に応じて所定時間を変更してもよい。
【0057】
吸引回復動作は、印刷用紙への印刷によって、前回の吸引回復時から所定量の(比較的多くの)インクが使用された場合に実施される。また、吸引回復動作を実施後に、予備吐出動作およびワイピング動作も順次行われる。吸引回復動作は、供給チューブ503および記録ヘッド601内部のインクに存在する気泡を除去できる程度の比較的重い回復動作であり、多くの時間とインクとが必要とされる。
【0058】
<具体例>
図7は、本実施形態の印刷装置1において、1ページ目の印刷終了後にカットが実行される一連の実行順序を示す図である。図7を用いて具体的な例を説明する。図7は、複数ページの印刷における、印刷装置1の1ページ目(第1ページ)の印刷後から2ページ目(第2ページ)の印刷開始に至るプロセスを示す。また、併せて、印刷用紙201、カッターユニット202、およびキャリッジ203の状態および位置関係を示す。図7のプロセスでは、1ページ目の印刷終了後、2ページ目の印刷開始前に前述したクリーニングを行う場合を想定する。即ち、図4のS410~S415に至るプロセスを説明する。尚、図7は、1ページ目、2ページ目の印刷を例として記載している。2ページ目以降も印刷ページが存在する場合、図7の1ページ目を当該ページ、2ページ目を次ページと読み替えればよい。
【0059】
1ページ目の印刷が終了した際の位置関係を状態Aとして示す。図7の下方向を用紙搬送方向とする。状態Aは、1ページ目の印刷後端位置にキャリッジ203が位置するように印刷用紙201が搬送された状態である。印刷用紙201は、前述の通り、搬送ローラー204により搬送される。
【0060】
続いて、1ページ目後端が、カッターユニット202によって切断されるカッター位置となる箇所まで、印刷用紙201を搬送する。すなわち、1ページ目の印刷後端位置から後端余白に相当する距離と、キャリッジ203とカッターユニット202との距離と、の合算分の距離だけ印刷用紙201を用紙搬送方向に搬送する。この動作は、図4におけるS410の搬送動作に相当する。
【0061】
印刷用紙201の1ページ目後端が、カッターユニットによって切断されるカッター位置まで搬送された位置関係を、状態Bとして示す。状態Bにおいて、カッターユニット202を動作することにより、印刷用紙201の1ページ目の切断が行われる。これは、図4におけるS411のカット動作に相当する。なお、カッターユニット202が片方向に駆動して印刷用紙201を切断するように構成されている場合、印刷用紙201を切断後、カッターユニット202は、元の位置に戻る(即ち、基準側に移動する)。例えば、カッターユニット202を駆動するモータを逆方向に駆動させればよい。カッターユニット202が両方向に駆動して印刷用紙201を切断可能に構成されている場合、印刷用紙201を切断後、カッターユニット202はそのまま非基準側に居留まる。そして、次回の印刷用紙201を切断時にカッターユニット202を基準側に駆動し、印刷用紙201を切断しつつ、元の基準位置に戻せばよい。
【0062】
続いて、クリーニングを行うため、印刷用紙201をキャリッジ203より上流側(図7の上部の搬送ローラー204が配されている側)に搬送して、キャリッジ203の位置から印刷用紙201を退避させる。印刷用紙201を退避位置に退避させた状態の位置関係を、状態Cとして示す。この動作は、図4におけるS412の退避動作に相当する。クリーニングによりインクの微細な霧状のミストがキャリッジ203の下部に流れ、印刷用紙201に付着することがある。これにより印刷結果に影響を与えてしまうことがある。このため、印刷用紙201を搬送してキャリッジ203の位置から退避させる。
【0063】
続いて、キャリッジ203に搭載した記録ヘッド601に対して図5および図6にて説明した方法により、クリーニング動作が行われる。この動作は、図4におけるS413のクリーニング動作に相当する。
【0064】
クリーニング完了後、次ページである2ページ目の印刷を行うため、印刷用紙201が2ページ目印刷開始位置に搬送される。2ページ目印刷開始位置は、キャリッジ203(記録ヘッド601)によって印刷が開始される位置である。この動作は、図4におけるS414の搬送動作に相当する。印刷用紙201が2ページ目印刷開始位置まで搬送された位置関係を状態Dとして示す。
【0065】
続いて、2ページ目の印刷動作が行われる。この動作は、図4におけるS415の印刷開始動作に相当する。以上が、図4のS410~S415に相当する、当該ページの印刷終了後、次ページの印刷開始前にクリーニング動作を行う場合の具体例である。
【0066】
図8は、本実施形態における印刷装置の印字中カットの実行順序を示す図である。図8は、複数ページの印刷における、印刷装置1の1ページ目印刷後から2ページ目印刷開始に至るプロセスを示す。また、併せて、印刷用紙201、カッターユニット202、およびキャリッジ203の状態および位置関係を示す。図8のプロセスでは、1ページ目の印刷終了後、連続して2ページ目の印刷を実行し、2ページ目の印刷途中においてカッターユニット202を用いて印刷用紙201の切断する場合を想定する。つまり、図7の例で示したようなクリーニング動作は行わない。即ち、図8は、図4のS420~S426に至るプロセスを示している。尚、図8も、1ページ目、2ページ目の印刷を例として記載している。2ページ目以降も印刷ページが存在する場合、図8の1ページ目を当該ページ、2ページ目を次ページと読み替えればよい。
【0067】
1ページ目の印刷が終了した際の位置関係を状態Jとして示す。図8の下方向を用紙搬送方向とする。状態Jは、1ページ目の印刷後端位置にキャリッジ203が位置するように印刷用紙201を搬送した状態である。
【0068】
続いて、スループット向上のため、1ページ目の印刷用紙201の切断は行わずに、2ページ目の印刷を行うように制御する。即ち、2ページ目印刷開始位置にキャリッジ203が位置するように、印刷用紙201を搬送する。印刷用紙201が2ページ目印刷開始位置まで搬送された位置関係を状態Kとして示す。そして、2ページ目の印刷を開始する。これらの動作は、図4におけるS420の印刷開始動作に相当する。
【0069】
続いて、1ページ目後端が、カッター位置となる箇所まで印刷を行いながら、印刷用紙201を搬送する。この動作は、図4のS421における、カッター位置まで印刷したかの判定で、Yes(カッター位置まで印刷をした)となる場合に相当する。S421の判定で、No(カッター位置まで印刷していない)の場合には、印刷を継続し、再び判定を行い、カッター位置まで印刷をするまで繰返す。
【0070】
1ページ目後端が、カッター位置となる箇所に達した際の位置関係を状態Lとして示す。この状態で一旦、2ページ目の印刷を中断する。この動作は、図4におけるS422の印刷中断動作に相当する。即ち、印刷用紙201の搬送およびキャリッジ203の動作を停止する。尚、印刷用紙201の搬送量および印刷内容によっては、1ページ目後端が、カッター位置となる箇所よりも搬送方向に超える場合、即ち、1ページ目後端がカッターユニット202の位置よりも図8における下方向(下流側)に達する場合が生じる。その場合には、印刷用紙201を1ページ目後端へ搬送する動作が行われる。この動作は、図4におけるS423の搬送動作に相当する。その後、カッターユニット202を動作することにより、1ページ目の切断が行われる。この動作は、図4におけるS424のカット動作に相当する。
【0071】
その後、中断した2ページ目の印刷を再開する。1ページ目後端が、カッター位置となる箇所よりも搬送方向に超える場合に、印刷用紙201を1ページ目後端へ搬送する処理を行った場合、印刷用紙201の搬送が必要となる。即ち、2ページ目の印刷を再開する前に、印刷用紙201を中断した位置に戻す必要がある。この場合、中断位置から印刷用紙201を搬送した分だけ、元に戻るように印刷用紙201を搬送する動作が行われる。この動作は、図4におけるS425の搬送動作に相当する。尚、S425では、印刷位置まで搬送と示しているが、印刷用紙201を搬送した分だけ元に戻るように搬送することと等価である。その後、2ページ目の印刷を再開する。この動作は、図4におけるS426の印刷再開動作に相当する。以上が具体例の説明である。
【0072】
図9は、本実施形態における印刷設定で、印刷品質優先または印刷速度優先を選択する入力画面の一例である。この印刷設定は、図4のS405におけるクリーニングの有無の判定において、例4に挙げた場合に用いられるものである。図9に示す画面は、表示部・操作部112として設けられたLCDディスプレイに表示される。図9(a)は、複数段階で印刷設定を設定することが可能な画面の例であり、図9(b)は、2択方式で設定する画面の例である。
【0073】
図9(a)における画面900Aでは、印刷装置1における印刷について、スライドバー910により画質優先か、または、速度優先かを段階的に入力することが可能である。現在の設定値は、RAM107またはNVRAM108の所定の領域に記憶されている。画面900Aの表示開始の際には、CPU101は、その値を参照して、現在の設定をデフォルトとして表示してもよい。本例では、スライドバー910は、表示部・操作部112として設けられたLCDディスプレイのタッチパネルで操作されることを想定する。あるいは、表示部・操作部112としてキーを設け、キー押下により入力されてもよい。
【0074】
画面900Aにおいて、スライドバー910の入力位置が品質優先(図9(a)における左側)に位置する程、印刷品質の保持を優先する設定となる。品質優先に設定されている場合、クリーニングの有無の判定時に、クリーニングの実行頻度を比較的高くする方向で判定が行われることになる。例えば、画面900Aにおいてスライドバー910が一番品質優先側に位置する場合、A1サイズの線画の画像の印刷時には、クリーニングが5ページ毎に行われるものとする。一方、スライドバー910の入力位置が、速度優先(図9(a)における右側)に位置する程、クリーニングの実行頻度を低くし、印刷実行を優先する。例えば、画面900Aにおいてスライドバー910が一番速度優先側にある場合、A1サイズの線画の画像の印刷時には、クリーニングが20ページ毎に行われるものとする。厳密にはこれらの間隔は、印刷ジョブの内容、印刷データ、印刷速度、ドットカウント等によって決定される。スライドバー910が品質優先と速度優先の中間側にある場合は、品質、速度双方を均衡に保つようにクリーニングの有無の判定が行われる。
【0075】
尚、画質優先か、または、速度優先かどうかの入力を2択で行ってもよい。例えば図9(b)における画面900Bに示すように、印刷品質を優先するボタン901、および印刷側を優先するボタン902を表示し、操作者に選択させてよい。画面900Aおよび画面900Bいずれの場合も、設定ボタン930およびキャンセルボタン940を表示し、設定ボタン930が押下された場合はスライドバー910またはボタン901もしくはボタン902で選択された内容の設定を反映する。即ち、選択された内容の設定値をRAM107またはNVRAM108の所定の領域に記憶する。キャンセルボタン940が押下された場合は、画面上の設定は反映されない。設定ボタン930およびキャンセルボタン940の押下時は、いずれの場合においても、設定を終了し、元の画面に戻る。
【0076】
以上に述べた通り、本実施形態では、1ページ分の印刷終了後にクリーニングの実施有無の判定が行われる。そして、クリーニングが必要であると判定した場合には、印刷した印刷用紙の切断を行い、印刷用紙を退避させて、クリーニングを行う。一方、クリーニングが不要と判定した場合には、印刷用紙の切断は行わずに、次のページの印刷を実施し、印刷用紙がカッター位置まで達した際に、印刷を一時停止させて用紙の切断を行う。以上のような制御を行うことにより、印刷精度の維持(かすれなど印刷不良の軽減)を図りつつ、印刷時のスループットを向上させることができる。
【0077】
尚、印刷装置1において上述の印字中カットを行わない場合は、図4のフローチャートの動作を行わなくてよい。印字中カットの実施または不実施は、例えば、印刷装置1において印刷設定として設定値を保持してもよい。デューティの比較的大きい印刷(A1サイズ全体に印刷される画像など)のように、ドットカウントの大きいページを印刷するような場合には、クリーニング動作が比較的頻繁に入ることになる。この場合、印字中カットによるスループット向上の効果が薄れる。そのような場合には、印字中カットを不実施としてよい。
【0078】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、記録ヘッドを搭載したキャリッジが主走査方向に移動しながら記録ヘッドからインクを吐出することで印刷用紙に印刷が行われる印刷装置を例に挙げて説明した。しかしながら、この例に限られない。例えば、印刷用紙の幅方向の長さに対応してノズルが配された記録ヘッドを用いる印刷装置において上述した制御を行ってもよい。
【0079】
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 印刷装置
201 印刷用紙
202 カッターユニット
203 キャリッジ
601 記録ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9