(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】フィルムロール粘着テープの剥離装置
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20240311BHJP
B65H 19/10 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B65H41/00 C
B65H19/10 A
(21)【出願番号】P 2020078761
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019162433
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 宏
(72)【発明者】
【氏名】羽田 繁
(72)【発明者】
【氏名】嵜田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】大澤 守
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-049152(JP,A)
【文献】特開2014-108878(JP,A)
【文献】特開平05-105287(JP,A)
【文献】特開平09-118458(JP,A)
【文献】特開2004-083204(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183553(WO,A1)
【文献】特開平05-319642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/00- 19/30
B65H 21/00- 21/02
B65H 41/00
B65B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールに巻回された帯状フィルムの繰り出し端部となる始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープを剥離するフィルムロール粘着テープの剥離装置であって、
フィルムロールの巻断面方向から前記フィルムロールの1周目と2周目の間にスクレーパを挿入する挿入装置と、
挿入された状態で前記スクレーパを前記始端部の方向に移動させることで前記粘着テープを剥離させるスクレーパ駆動装置と、
を備えるフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項2】
前記フィルムロールの1周目の上面を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置で吸引した状態を維持しつつ前記吸引装置を所定の方向に移動する第1駆動装置とをさらに備え、
前記スクレーパの挿入前に前記フィルムロールの1周目と2周目の間に間隙を形成する、請求項1に記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項3】
前記第1駆動装置における前記吸引装置の前記所定の方向は、前記フィルムロールの2周目上面に対する直交方向に対して、下方が前記スクレーパの挿入側に傾斜する方向である、請求項2に記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項4】
前記スクレーパの挿入後に前記フィルムロールの1周目の上面を押さえつける押さえ部材をさらに備え、
前記吸引装置による吸引を停止するとともに前記押さえ部材で前記フィルムロールの1周目の上面を押さえつける、請求項2又は請求項3に記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項5】
前記押さえ部材で前記フィルムロールの1周目の上面を押さえつけた状態で前記押さえ部材及び前記スクレーパを上昇させることで前記フィルムロールの1周目を持ち上げる第2駆動装置をさらに備え、
前記スクレーパ駆動装置は、前記第2駆動装置で前記フィルムロールの1周目を持ち上げた状態で前記スクレーパを前記始端部の方向に移動させる、請求項4に記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項6】
前記スクレーパを振動させる振動部材を備える、請求項1~5のいずれかに記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項7】
前記粘着テープの貼付部を温める加温装置を備える、請求項1~6のいずれかに記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項8】
前記フィルムロールの始端部から粘着テープの貼付部までのフィルムの長さを、フィルムロールの外径を実測して算出する計測部を備える、請求項1~7のいずれかに記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【請求項9】
前記スクレーパは、第1スクレーパ及び第2スクレーパを含み、
前記挿入装置は、前記第1スクレーパ及び前記第2スクレーパを前記フィルムロールの1周目と2周目の間に挿入し、
前記スクレーパ駆動装置は、前記第1スクレーパを挿入状態に維持しつつ、前記第2スクレーパを前記始端部の方向に移動させることで前記粘着テープを剥離させる、請求項1~8のいずれかに記載のフィルムロール粘着テープの剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムロール粘着テープの剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長尺の帯状フィルムを巻回したフィルムロールから、帯状フィルムを繰り出して、例えばラベリング装置等に送出するフィルム送出装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、箱体内袋体の口部開き技術が記載されており、箱体に収容されている袋体の口部が4方向から順次内側に折り曲げられて重ねられた4辺の折り曲げ蓋部を構成しており、これら4辺の折り曲げ蓋部を上から順次負圧により吸着して、箱体の4角形外側面に沿って立ち上げて、口部を開く吸着開口装置を備える箱体内袋体の折り返し口部引き下げ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4575254号公報
【文献】特許第5976476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のラベリング装置の高速稼働に伴ってフィルム送出装置から繰り出される帯状のフィルムの送出量が増加してきており、作業者の負担軽減とさらなる効率化を図るためには、外装体に収納されて搬送されてきたフィルムロールを取り出してラベリング装置等に自動的に送出し得る自動化システムが要望されている。
【0006】
ラベリング装置等に自動的に送出するためには、フィルムロールから帯状フィルムを繰り出してラベリング装置に送出するフィルム送出装置と、フィルムロールから送出し終えた送出済みの帯状フィルムの終端部と、フィルム送出装置に新たに供給されたフィルムロールから繰り出された送出前の帯状フィルムの始端部とを接続するフィルム接続装置を備えることが必要となるが、フィルムロールから帯状フィルムを繰り出す際には、フィルムロールに巻回された帯状フィルムの繰り出し端部となる始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープを剥離しなければならない。
【0007】
本発明の目的は、フィルムロールに巻回された帯状フィルムの繰り出し端部となる始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープを確実に剥離できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フィルムロールに巻回された帯状フィルムの繰り出し端部となる始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープを剥離するフィルムロール粘着テープの剥離装置であって、フィルムロールの巻断面方向から前記フィルムロールの1周目と2周目の間にスクレーパを挿入する挿入装置と、挿入された状態で前記スクレーパを前記始端部の方向に移動させることで前記粘着テープを剥離させるスクレーパ駆動装置とを備えるフィルムロール粘着テープの剥離装置である。
【0009】
本発明では、フィルムロールの長手方向からスクレーパを挿入するのではなく、フィルムロールの巻断面方向からフィルムロールの1周目と2周目の間にスクレーパを挿入する。これにより、フィルムロールが筒状のシュリンクラベル等を巻回したロールであっても、1周目と2周目の間にスクレーパが確実に挿入され得る。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記フィルムロールの1周目の上面を吸引する吸引装置と、前記吸引装置で吸引した状態を維持しつつ前記吸引装置を所定の方向に移動する第1駆動装置とをさらに備え、前記スクレーパの挿入前に前記フィルムロールの1周目と2周目の間に間隙を形成する。前記第1駆動装置における前記吸引装置の前記所定の方向は、前記フィルムロールの2周目上面に対する直交方向に対して、下方が前記スクレーパの挿入側に傾斜する方向である。
【0011】
本発明の他の実施形態では、前記スクレーパの挿入後に前記フィルムロールの1周目の上面を押さえつける押さえ部材をさらに備え、前記吸引装置による吸引を停止するとともに前記押さえ部材で前記フィルムロールの1周目の上面を押さえつける。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、前記押さえ部材で前記フィルムロールの1周目の上面を押さえつけた状態で前記押さえ部材及び前記スクレーパを上昇させることで前記フィルムロールの1周目を持ち上げる第2駆動装置をさらに備え、前記スクレーパ駆動装置は、前記第2駆動装置で前記フィルムロールの1周目を持ち上げた状態で前記スクレーパを前記始端部の方向に移動させる。
本発明のさらに他の実施形態では、前記スクレーパを振動させる振動部材を備える。
本発明のさらに他の実施形態では、前記粘着テープの貼付部を温める加温装置を備える。
本発明のさらに他の実施形態では、前記フィルムロールの始端部から粘着テープの貼付部までのフィルムの長さを、フィルムロールの外径を実測して算出する計測部を備える。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、前記スクレーパは、第1スクレーパ及び第2スクレーパを含み、前記挿入装置は、前記第1スクレーパ及び前記第2スクレーパを前記フィルムロールの1周目と2周目の間に挿入し、前記スクレーパ駆動装置は、前記第1スクレーパを挿入状態に維持しつつ、前記第2スクレーパを前記始端部の方向に移動させることで前記粘着テープを剥離させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルムロールに巻回された帯状フィルムの繰り出し端部となる始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープを確実に剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態のフィルムロール供給システムの平面図である。
【
図2】実施形態のフィルムロール供給システムの斜視図である。
【
図3】実施形態のパターン1での全体処理フローチャートである。
【
図4】実施形態のパターン2での全体処理フローチャートである。
【
図5】実施形態のパターン3での全体処理フローチャートである。
【
図7】フィルムロールの梱包箱の4つのフラップ部を開いた状態を示す斜視図である。
【
図8A】内袋の口部が開口される様子を示す模式図(その1)である。
【
図8B】内袋の口部が開口される様子を示す模式図(その2)である。
【
図9】内袋の口部が開口された状態の平面図である。
【
図10】第2ロボットによりフィルムロールを取り出す状態を示す模式図(その1)である。
【
図11】第2ロボットによりフィルムロールを取り出す状態を示す模式図(その2)である。
【
図12】第2ロボットによりフィルムロールを取り出す状態を示す模式図(その3)である。
【
図13】第2ロボットによりフィルムロールを取り出す状態を示す模式図(その4)である。
【
図14】内袋が除去される様子を示す模式図(その1)である。
【
図15】内袋が除去される様子を示す模式図(その2)である。
【
図16】内袋が除去される様子を示す模式図(その3)である。
【
図18】フィルムロール外径部の巻崩れが修正される様子を示す模式図(その1)である。
【
図19】フィルムロール外径部の巻崩れが修正される様子を示す模式図(その2)である。
【
図20A】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その1)である。
【
図20B】フィルム留めテープ剥離装置の巻断面方向から見た構成図である。
【
図21】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その2)である。
【
図22】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その3)である。
【
図23】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その4)である。
【
図24】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その5)である。
【
図25】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その6)である。
【
図26】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その7)である。
【
図27】フィルム留めテープ剥離装置の構成図(その8)である。
【
図28】フィルム留めテープ剥離装置の動作タイミングチャート図である。
【
図29】フィルム留めテープ剥離装置の別の構成図である。
【
図30】フィルム留めテープ剥離装置の別の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。本実施形態のフィルムロール供給システムは、段ボール箱等の外装体によって梱包された状態で納入されるフィルムロールRを外装体から取り出し、さらに包装された内袋を除去してラベリング装置に供給するシステムである。
【0017】
フィルムロールRは、ボトル等に装着されるシュリンクラベルのような合成樹脂によって形成された筒状のラベルが連続的に繋がった状態でシート状に折り畳まれた長尺帯状のラベル形成基材である帯状フィルムFを円筒状の紙管PPに例えば500m~2000mロール状に巻回したものである。ラベリング装置では、供給された帯状フィルムFが所定長さに切断されて個々のラベルが生成され、その後、各ラベルが筒状に開口されてボトル等にそれぞれ装着される。なお、例えばシュリンクラベルの場合、強く(固く)ロール状に巻くと折り畳みで生じる折り目が強くなり、開口し難くボトルへの装着後の収縮で歪みの原因になるので、適度な強さで巻回されるためフィルムロールRの外側がずれやすい。
【0018】
図1は、フィルムロール供給システム10の平面図を示す。また、
図2は、フィルムロール供給システムの斜視図を示す。
【0019】
フィルムロール供給システム(以下、単に「システム」という)10は、
図1及び
図2に示すように、主要な構成要素として、テープカット装置12と、フラップ開梱・内袋開口装置14とを備える。また、取出装置として第1ロボット50と第2ロボット60とを備える。第1ロボット50及び第2ロボット60は、ともに多関節アームロボットで構成される。多関節アームロボットは、例えば、汎用の6軸多関節ロボットとし、体を回転させる軸、体を前後に動かす軸、腕を上下に動かす軸、腕を回転させる軸、手首を上下に振る軸、手首を回転させる軸の6軸で構成されたものを用い、位置と姿勢を制御して所望の動作を行うようにする。
【0020】
フィルムロールRは、外装体である梱包箱1内に収納された状態で、システム10が設置されている工場に納品される。通常、梱包箱1は、複数個が段積みされた状態でパレットに搭載されて納品される。
【0021】
第1ロボット50は、所定位置に搬送されたパレットに段積みされた梱包箱1を1個ずつパレットから取り出し、コンベヤ等の搬送機構に載置して梱包箱1をテープカット装置12に搬送する。なお、梱包箱1をテープカット装置12に搬送するに際し、その前処理として、梱包箱1が所定のフィルムロールRを梱包しているか否かを検査する異品種検査を実行してもよい。異品種検査に合格した梱包箱1がテープカット装置12に搬送される。検査に不合格の梱包箱1はNGとしてテープカット装置12まで搬送することなく排出される。異品種検査は、例えば梱包箱1の所定位置に貼付された品番シートに印刷されているQRコード(登録商標)を読み取ることで実行し得る。但し、これに限定されるものではなく、バーコード、ICタグ、RFIDタグ等の他の情報媒体が用いられ得る。
【0022】
テープカット装置12は、フィルムロールRを収納する梱包箱1のテープをカットする装置である。テープカットされた梱包箱1は、次にフラップ開梱・内袋開口装置14に搬送される。
【0023】
フラップ開梱・内袋開口装置14は、梱包箱1のフラップ開梱と、フィルムロールRを包装する内袋の口部を開口する装置である。フラップ開梱・内袋開口装置14は、複数の吸引ノズルにより内袋の口部を吸引して上方に持ち上げることにより内袋の口部を開口する。なお、本実施形態では、フラップ開梱機能と内袋開口機能を一つの装置で実現しているが、フラップ開梱機能を実行する装置と、内袋開口機能を実行する装置に物理的に分離していてもよい。
【0024】
第2ロボット60は、フラップ開梱・内袋開口装置14に隣接して設置されており、フラップ開梱・内袋開口装置14で内袋の口部が開口されたフィルムロールRを内袋ごと梱包箱1から取り出す。また、フィルムロールRを梱包箱1から取り出した後に、フィルムロールRを包装している内袋をフィルムロールRから除去する。内袋を除去する際に、第2ロボット60は、取り出したフィルムロールRを除去装置に近づけ、除去装置により内袋を例えば吸引することで除去する。除去装置は、フラップ開梱・内袋開口装置14に隣接して配置される。第2ロボット60は、内袋を除去したフィルムロールRをオートスプライサ70に装着する。
【0025】
上記の説明では、フィルムロールRが内袋で包装された上で梱包箱1に梱包されてシステム10まで搬送されてくる(パターン1)ことを前提としているが、これ以外にも、内袋で包装されず、かつ梱包箱1にも梱包されずにシステム10まで運ばれてくる(パターン2)場合や、内袋には包装されないが、梱包箱1には梱包されてシステム10まで搬送されてくる(パターン3)場合もあり得る。梱包箱1の有無、及び内袋の有無で識別すると以下の通りである。
パターン1:梱包箱有り、内袋有り
パターン2:梱包箱無し、内袋無し
パターン3:梱包箱有り、内袋無し
【0026】
本実施形態のシステム10は、いずれのパターンの場合にも同一のシステム構成で対応してフィルムロールRをラベリング装置に供給し得る。なお、本実施形態におけるシステム10は、
図1及び
図2に示すような配置で工場に設置されるが、必ずしもかかる配置に限定されるものではない。また、取出装置も第1ロボット50及び第2ロボット60で構成する必要はなく、1台の多関節アームロボットで構成してもよい。さらに、システム10のテープカット装置12、フラップ開梱・内袋開口装置14、第1ロボット50,第2ロボット60は、システム10を制御する制御装置11で統括制御されるが、制御装置11は必ずしもシステム10と同一場所に設置される必要はなく、有線あるいは無線でシステム10と接続されていればよい。また、制御装置11は単一である必要はなく、複数の制御装置11として分散処理してもよい。制御装置11は、1又は複数のプロセッサ、メモリ、及び各種インターフェイスを備える。各種インターフェイスは通信インターフェイスを備え、システム10の各位置に設置された監視カメラ等のセンサからの検出信号を受信してシステム10の状態をリアルタイムで監視する。メモリは制御プログラム及び各種データを記憶する。各種データには、システム10で処理する梱包箱1あるいはその内容物であるフィルムロールRについての情報が含まれる。プロセッサは、センサからの検出信号に基づき、メモリに記憶された制御プログラムを読み出して実行することでテープカット装置12、フラップ開梱・内袋開口装置14、第1ロボット50、第2ロボット60を駆動制御する。
【0027】
以下、これら3つのパターン毎に、システム10の全体処理を概説する。
【0028】
<パターン1の場合>
図3は、パターン1の場合のシステム10での処理フローチャートを示す。
【0029】
まず、パレットがシステム10の所定位置まで搬送されると、制御装置11は、第1ロボット50に駆動指令を出力し、第1ロボット50によってパレットから梱包箱1を取り出す(S101)。パレットには複数の梱包箱1が搭載され、例えば4個の梱包箱が8段に段積みされており、第1ロボット50は、この段積み状態から1個ずつ梱包箱1を取り出す。
【0030】
第1ロボット50は、駆動指令に従って、梱包箱1を所定の異品種検査位置に搬送し、梱包箱1に対して異品種検査を行う(S102)。この異品種検査は、既述したように、梱包箱1の所定位置に貼付された品番シートに印刷されているQRコード(登録商標)をリーダで読み取ることで実行される。リーダで読み取られた品番情報は制御装置11に送信される。制御装置11は、品番情報に基づいて処理対象の梱包箱1が正常であるか否か判定する(S103)。
【0031】
QRコード(登録商標)を読み取って得られた梱包箱1の品番情報が、予め設定されメモリに記憶された情報と一致する場合に正常と判定され(S103でYES)、次の処理に移行する。読み取って得られた情報が予め設定されメモリに記憶された情報と一致しない場合には異常と判定され(S103でNO)、制御装置11は、搬送装置の搬送路を切り替えて当該梱包箱1を排出路に搬送して排斥する(S113)。正常と判定された梱包箱1は、搬送装置によってテープカット装置12に搬送される。
【0032】
テープカット装置12は、制御装置11からの駆動指令に応じて、搬送されてきた梱包箱1の上面の2つのフラップ部を止めている粘着テープ及び2つのフラップ部を側壁部に止めている粘着テープを切断する(S104)。具体的には、テープカット装置は、搬送されてきた梱包箱1をストッパ機構により停止させ、梱包箱1の上面を閉じる2つのフラップ部を止めている粘着テープ、及びこれら2つのフラップ部を側壁部に止めている粘着テープをカッター機構により順次切断する。梱包箱1の内容物であるフィルムロールRを傷つけないようにカッター機構には超音波カッターを用い得るが、これに限定されるものではなく、刃物を備えたカッターを用いてもよい。
【0033】
テープカット装置12は、梱包箱1の上面に張られた粘着テープに加え、梱包箱1の下面に張られた粘着テープもカッター機構により切断してもよい。これにより、内容物であるフィルムロールRが取り出されて空箱となった梱包箱1を扁平な状態に畳んで貯蔵する作業を容易かつ確実なものとし得る。
【0034】
テープカットされた梱包箱1は、フラップ開梱・内袋開口装置14に搬送される。フラップ開梱・内袋開口装置14は、制御装置11からの駆動指令に応じて、梱包箱1の上面の4つのフラップ部を開梱する(S105)。フラップ開梱・内袋開口装置14は、梱包箱1の4つのフラップ部にそれぞれ対応した4つの吸引ノズルを備え、4つの吸引ノズルによって各フラップ部を吸引した状態で持ち上げながら、各吸引ノズルを側壁部の外側へ移動させることによって各フラップ部を開く。この状態で、さらに押し付け部材によって各フラップ部を梱包箱1の側壁部に押し付けるように折り曲げてもよい。
【0035】
梱包箱1の上面の4つのフラップ部を開梱した後、第1ロボット50は、制御装置11からの駆動指令によってフィルムロールR上に載置されている上部エアマットを回収する(S106)。
【0036】
フラップ開梱後、フラップ開梱・内袋開口装置14は、フィルムロールRを包装している保護用の内袋の口部を開口する。既述したフラップ開梱と同様に複数、例えば4つの吸引ノズルを備え、初期位置から内袋に近づく方向に回転して内袋の上面に当接し、内袋の上面を吸引した状態で内袋から離れる方向に逆回転して内袋を開き、その後に上方に移動して内袋を持ち上げることで内袋の口部を開く(S107)。フラップ開梱と内袋開口に用いる複数の吸引ノズルは同一でもよく互いに異なっていてもよい。
【0037】
フラップ開梱・内袋開口装置14で内袋の口部を開口した後、第2ロボット60は、制御装置11の駆動指令によってアームの先端を内袋の口部に挿入し、フィルムロールRをその内側からチャッキングする(S108)。そして、フィルムロールRを内側からチャッキングした状態を維持しながら、梱包箱1が載置されているステージを所定角度だけ傾斜させることで梱包箱1を傾斜させ、梱包箱1を傾斜させた状態においてフィルムロールRを内袋ごと梱包箱1から取り出す(S109)。フィルムロールRをその内側からチャッキングするのは、後段の処理で内袋をフィルムロールRから除去するためである。すなわち、内袋を開口した状態でフィルムロールRを内側からチャッキングすることで、第2ロボット60はフィルムロールRの内側のみに当接して内袋には当接しておらず、フィルムロールRをチャッキングした状態で内袋を自由に移動し得る。また、梱包箱1を傾斜させた状態でフィルムロールRを内袋ごと梱包箱1から取り出すのは、フィルムロールRの内側のみをチャッキングして梱包箱1から取り出す際に、フィルムロールRの内側部のみが取り出し方向に移動してしまい、コイルバネ状に巻崩れてしまう事態を防止するためである。
【0038】
フィルムロールRの内側をチャッキングしてフィルムロールRを内袋ごと梱包箱1から取り出した後、フィルムロールRのチャッキング方向とは反対側に配置された除去装置に近づけて内袋を例えば吸引することにより、内袋をフィルムロールRから除去する(S110)。除去装置は
図1及び
図2には示されていないが、フラップ開梱・内袋開口装置14の近傍に設置される。なお、内袋を除去する際に、フィルムロールRの内側のみがチャッキングされており、フィルムロールの外側は自由に移動し得るため、内袋の除去時にフィルムロールRの外側が内袋との接触により移動してしまい巻崩れが生じ得る。
【0039】
そこで、内袋を除去した後、第2ロボット60は、制御装置11の駆動指令によって、フィルムロールRを除去装置と一体化されたプレートにフィルムロールRを押し当て、フィルムロールRの外側を移動させてフィルムロールRの巻崩れを修正する(S111)。
【0040】
第2ロボット60は、フィルムロールRの巻崩れを修正した後、制御装置11の駆動指令によって所定位置に配置されたオートスプライサ70にフィルムロールRを装着する(S112)。
図1及び
図2には、2つのオートスプライサが並列設置されているが、これに限定されるものではなく、単一のオートスプライサであってもよい。オートスプライサ70は、装着されたフィルムロールRから帯状フィルムFを順次繰り出し、図示しないラベリング装置に供給する。
【0041】
<パターン2の場合>
図4は、パターン2の場合、すなわちフィルムロールRが梱包箱1に梱包されておらず、かつ、内袋にも包装されていない場合のシステム10の処理フローチャートである。
【0042】
フィルムロールRは、複数個、例えば4個が11段に段積みされて所定位置まで搬送される。通常、荷崩れを防止するために複数のフィルムロールRはその外周がストレッチフィルムで被覆されているので、オペレータが当該外周ストレッチフィルムを剥がしてその後の自動処理に備える。なお、オペレータによる手動剥離に限られず、自動剥離装置等により自動剥離してもよい。
【0043】
外周ストレッチフィルムが剥離されたフィルムロールRに対し、第1ロボット50は、制御装置11の駆動指令によってフィルムロールRの内側と外側をチャッキングする(S201)。そして、チャッキングしたフィルムロールRを所定位置まで搬送して載置する(S202)。所定位置とは、第2ロボット60がアクセスし得る位置であり、第1ロボット50から第2ロボット60にフィルムロールRを受け渡すためである。
【0044】
第2ロボット60は、制御装置11の駆動指令によって所定位置に載置されたフィルムロールRの内側及び外側をチャッキングし、パターン1の場合と同様にオートスプライサに装着する(S203)。4個のフィルムロールRを順次搬送してオートスプライサに装着した後、フィルムロールRの段を互いに仕切る段仕切エアマットが存在する場合、第1ロボット50は、制御装置11の駆動指令によって当該段仕切エアマットを回収して所定位置まで搬送し、その後廃棄する。
【0045】
このように、フィルムロールRが内袋5で包装されていない場合、フィルムロールRの内側及び外側をともにチャッキングするが、フィルムロールRが内袋5で包装されていない場合であっても、内袋5で包装されている場合と同様に、フィルムロールRの内側のみをチャッキングしてもよい。その理由は、
(1)第2ロボット60からオートスプライサ70に装着する場合に、フィルムロールRの内側のみをチャッキングして装着する方が、オートスプライサの保持部材と干渉せずに容易に装着し得ること、
及び
(2)第1ロボット50及び第2ロボット60でチャッキングする際に、ロボットの内側チャック爪及び外側チャック爪で均等にチャッキングするためには内側チャック爪及び外側チャック爪を例えば6本構成としてフィルムロールRの同一半径位置を内側外側ともにチャッキングするのが好適であるところ、フィルムロールRの外側については外側チャック爪が他の部材と干渉し易く、内側チャック爪のみでチャックする方が確実に干渉を避けてチャッキングし得ること
等による。
【0046】
パターン2において、フィルムロールRの内側のみをチャッキングする場合、パターン1と同様にフィルムロールRを所定角度だけ傾斜させてフィルムロールRを持ち上げることが好適である。パターン1と同様に、フィルムロールRをチャッキングして持ち上げる際に、フィルムロールRの内側部のみが移動してコイルバネ状に巻崩れてしまう事態を防止するためである。パターン2の場合、梱包箱1が存在しないためフィルムロールRはステージ上に直に載置されるが、ステージを傾斜させることでフィルムロールRを傾斜させ得る。
【0047】
なお、第1ロボット50及び第2ロボット60がともにフィルムロールRの内側のみをチャッキングする他に、第1ロボット50では内側と外側をチャッキングし、第2ロボット60では内側のみをチャッキングしてもよい。この場合、第2ロボット60で内側のみをチャッキングして持ち上げる際に、フィルムロールRを所定角度だけ傾斜させる。
【0048】
<パターン3の場合>
図5は、パターン3の場合、すなわちフィルムロールRは梱包箱1に梱包されているが、内袋には包装されていない場合のフィルムロール供給システム10の処理フローチャートである。例えば清涼飲料向け商品ラベルには、シュリンクラベルとロールラベルの2種類があり、加熱収縮によって装着するシュリンクラベルは主にパターン1、2の形態でシステム10に搬送され、加熱収縮を行わないロールラベルは主にパターン3の形態でシステム10に搬送される。
【0049】
図5において、S301~S305、及びS309の処理は、パターン1におけるS101~S105、及びS113の処理と同一であり、第1ロボット50でパレットから梱包箱1を取り出し、異品種検査を行って、テープカット装置12で梱包箱1の粘着テープを切断し、フラップ開梱・内袋開口装置14に移載して梱包箱1のフラップ部を開梱する。
【0050】
次に、第2ロボット60は、制御装置11の駆動指令によって、フィルムロールRの内側及び外側をチャッキングする(S306)。そして、フィルムロールRの内側及び外側をチャッキングしながら、フィルムロールRを梱包箱1から取り出す(S307)。フィルムロールRを取り出す際に梱包箱1を傾斜させる必要はない。パターン1の場合と異なり、フィルムロールRの内側と外側をともにチャッキングしているので、巻崩れが生じないからである。
【0051】
次に、第2ロボット60は、制御装置11の駆動指令によって梱包箱1から取り出したフィルムロールRを所定位置に載置する(S308)。所定位置には移動台が配置され、この移動台の移動によりフィルムロールRをラベリング装置まで搬送する。
【0052】
また、パターン3の場合も、パターン2の場合と同様に、内袋5の有無によらずにフィルムロールRの内側のみをチャッキングしてもよい。そして、この場合には、パターン1の場合と同様に梱包箱1を所定角度だけ傾斜させてフィルムロールRを梱包箱1から取り出す。
【0053】
以上がパターン1、パターン2、及びパターン3の場合のシステム10の全体処理である。内袋5の有無、梱包箱1の有無によって処理の流れは変化するが、内袋の有無によらずにフィルムロールRの内側のみをチャッキングして持ち上げる、あるいは梱包箱1から取り出すこととすれば、パターンによらずに処理を共通化して効率化し得る。
【0054】
次に、パターン1の場合を例にとり、各処理について詳細に説明する。
【0055】
<梱包箱>
図6は、フィルムロールRを収納する梱包箱1を示す斜視図である。また、
図7は、
図6に示す梱包箱1の4つのフラップ部を開いた状態を示す斜視図である。
【0056】
梱包箱1は、例えば上面視で正方形状または長方形状をなし、四方を取り囲む側壁部2を備えている。梱包箱1には、段ボール箱が用いられるが、これに限定されるものではなく、プラスチック製のコンテナ容器等でもよい。梱包箱1は、側壁部2の上縁部に連設された4つのフラップ部3a,3b,3c,3dを備えている。これらのフラップ部3a~3dは、
図6に示すように、閉じられた状態で粘着テープ4a,4bによって止められている。また、梱包箱1は、側壁部2の下縁部に連設された4つのフラップ部を備え、これらのフラップ部が閉じられた状態で粘着テープ4c,4dによって止められることで、梱包箱1の底部が形成される。なお、梱包箱1の種類によっては、上部4bがない場合、下部4dがない場合、あるいは上部4bと下部4dがともにない場合もあり得る。
【0057】
<内袋>
図7に示すように、フィルムロールRは、内袋5に包装された状態で梱包箱1に収納される。フィルムロールRが内袋5に入れられた状態で梱包箱1によって梱包されることで、フィルムロールRのフィルム巻き端面や外周面が梱包箱1の内壁面と直接接触して損傷するのを防止できる。
【0058】
内袋5は、例えば合成樹脂製の袋(例えばポリエチレン製)によって構成される。内袋5の口部は、封鎖されることなく、フィルムロールRの紙管PPの内側に押し込まれた状態とされる。具体的には、内袋5は、展開した状態で矩形状をなし、フィルムロールRの下に敷設された状態から4つの隅部を所定の順序でフィルムロールRの上に折り畳んで紙管PPの内側に押し込んでいく。内袋5の折り畳み順序は既知であり、システム10側に予め提供される。システム10の制御装置11は、メモリに記憶された内袋5の折り畳み順序の情報に応じて、フラップ開梱・内袋開口装置14の4つの吸引ノズルを順次駆動して内袋5の口部を開く。
【0059】
なお、内袋5の折り畳み順序が未知である場合、あるいはメモリに記憶された順序と異なる順序で内袋5が折り畳まれている場合にも、吸引ノズルをデフォルトの順序で駆動することで内袋5の口部を開き得るものと想定される。但し、内袋開梱できなかった場合は、自動で排斥され、次の梱包箱1の処理に移行する。
【0060】
<内袋開口処理>
図8A及び
図8Bは、フラップ開梱・内袋開口装置14での内袋5の開口の様子を示す。フラップ開梱・内袋開口装置14は、それぞれ90度の角度をなして4回対称位置に配置された4つの吸引ノズル28a,28b、28c、28d(
図8A、
図8Bでは2つの吸引ノズル28a,28cのみを示す)を備える。各吸引ノズル28a~28dは、鉛直方向に敷設されたレールに沿って上下移動可能であるとともに、水平方向にも移動可能である。さらに、鉛直面内において所定角度範囲内で回転可能に構成される。
【0061】
図8Aに示すように、フラップ部が開梱された梱包箱1に対し、各吸引ノズル28a~28dがその初期位置から内袋5に接近する方向に回転してフィルムロールRの上面を覆っている内袋5を吸引する。
図8Aにおいて、矢印が吸引ノズル28a~28dの回転方向を示す。
【0062】
次に、この状態で吸引しながら
図8Bに示すように吸引ノズル28a~28dが逆方向に回転し、吸引ノズル28a~28dによって吸引保持されている内袋5が持ち上げられる。その後、吸引ノズル28a~28dを上昇移動することで内袋5がさらに持ち上げられ、内袋5の口部5aが開口された状態となる。
図8Bでは、番号1により逆回転を示し、番号2により上方移動を示す。
【0063】
具体的には、各吸引ノズル28a~28dは、内袋5の4隅が折り畳まれた順序と逆の順序で開口すべく、順番に回転、吸引、逆回転、上方移動の各移動を行って内袋5を順次開いていく。例えば、内袋5の4隅を隅部5h,隅部5i、隅部5j,隅部5kとし、
図8Cに例示するように、隅部5hをまず折り畳み、次に隅部5iを折り畳み、次に隅部5jを折り畳み、最後に隅部5kを折り畳んでいるとする。つまり、下から順に、隅部5h,隅部5i,隅部5j,隅部5kと折り畳まれており、隅部5kが最上面に位置しているものとする。なお、
図8Cは折り畳みの一例であって、これと異なる折り畳み順序であってもよい。但し、折り畳み順序は事前に分かっていて制御装置11に記憶されており、折り畳み順序が制御装置11に記憶されている状態でフラップ開梱・内袋開口装置14に移載される。
【0064】
4つの吸引ノズル28a~28dは、それぞれ内袋5の4つの隅部5h,5i,5j,5kに対応しており、吸引ノズル28aで隅部5hを吸引し、吸引ノズル28bで隅部5iを吸引し、吸引ノズル28cで隅部5jを吸引し、吸引ノズル28dで隅部5kを吸引するものとすると、最上面には隅部5kが折り畳まれているので、制御装置11は、隅部5kに対応する吸引ノズル28dに対して駆動指令を出力して吸引ノズル28dを回転、逆回転、少し上昇せしめ、隅部5kをまず開口する。
【0065】
次に、隅部5kの下には隅部5jが折り畳まれているので、制御装置11は、隅部5jに対応する吸引ノズル28cに対して駆動指令を出力して吸引ノズル28cを回転、逆回転、少し上昇せしめ、隅部5jを開口する。
【0066】
次に、隅部5jの下には隅部5iが折り畳まれているので、制御装置11は、隅部5iに対応する吸引ノズル28bに対して駆動指令を出力して吸引ノズル28bを回転、逆回転、少し上昇せしめ、隅部5iを開口する。
【0067】
最後に、一番下に隅部5hが折り畳まれているので、制御装置11は、隅部5hに対応する吸引ノズル28aに対して駆動指令を出力して吸引ノズル28aを回転、逆回転、少し上昇せしめ、隅部5hを開口する。制御装置11は、4箇所の隅部5h~5kを開口した後、4箇所同時に設定値まで上昇せしめる。
【0068】
内袋5の全ての隅部5h~5kを吸引ノズル28a~28dで吸引して持ち上げることで、内袋5の口部5aが開口され、フィルムロールRの内側、つまり紙管PPが口部5aから露出した状態となる。吸引ノズル28a~28dの逆回転時の回転角度は、フィルムロールRの内側が口部5aから露出し得る程度の角度でよく、例えば水平面から90度の角度であるが、それ以上の角度であってもよい。既述したように、フィルムロールRが梱包箱1に収納されて工場まで納品された時点において、内袋5の隅部5h~5kの折り畳み順序は既知であって制御装置11のメモリに記憶されているから、制御装置11はメモリに記憶された順序に従って吸引ノズル28a~28dを駆動する。制御装置11のメモリに品番と折り畳み順序との対応関係が記憶されており、
図3の処理フローチャートに示すS102の異品種検査においてQRコード(登録商標)を読み取って得られた品番情報に対応する順序をメモリに記憶された対応関係を参照することで読み出し、読み出した順序に応じて吸引ノズル28a~28dを駆動してもよい。
【0069】
図9は、吸引ノズル28a~28dで内袋5を吸引して持ち上げることで内袋5の口部5aを開口した状態の上面視を示す。フィルムロールRの紙管PPが内袋5の口部5aから露出しており、上面から第2ロボット60のアームが進入してフィルムロールRの内側をチャッキングし得る。
【0070】
<取出処理>
第2ロボット60のアームの先端はチャックヘッドを備え、チャックヘッドは、ヘッドベースと、このヘッドベースに移動可能に設けられた複数、例えば6つの内側チャック爪及び6つの外側チャック爪を備える。ヘッドベースは、内側チャック爪及び外側チャック爪を開閉駆動する駆動機構が搭載されている。内側チャック爪は、フィルムロールRの紙管PPの内側に挿入されて開き動作することで、紙管PPの内面に当接してフィルムロールRの内側をチャッキングする。ヘッドベースは、内側チャック爪のみを備えてもよいが、フィルムロールRを内側及び外側からチャッキングする際に両方の爪が必要となる。
【0071】
図10~
図13は、第2ロボット60によってフィルムロールRの内側をチャッキングしてフィルムロールRを梱包箱1から取り出す処理を模式的に示す。
【0072】
図10は、第2ロボット60のアームを下降させて6つの内側チャック爪62(但し、図ではそのうち3つの内側チャック爪を示す)をフィルムロールRの内側に挿入する状態を示す。梱包箱1はその上面のフラップ部3a~3dが開梱された状態でステージ30上に載置されており、内袋5の口部5aは吸引ノズル28a~28dにより持ち上げられて開口された状態にある。システム10の制御装置11は、吸引ノズル28a~28dにより内袋5の口部5aが開口された後に、第2ロボット60に駆動指令を出力して内側チャック爪62をフィルムロールRの内側に進入させる。制御装置11は、内袋5の口部5aが開口されていることをセンサ(例えば監視カメラ)により検知・確認した後に、第2ロボット60に駆動指令を出力してもよい。なお、内側チャック爪62を6つ設けているのは、フィルムロールRを内側から均等にチャッキングするためであるが、その数は限定されず、例えば4つでもよい。
【0073】
図11は、第2ロボット60の内側チャック爪62をフィルムロールRの内側に挿入し、内側チャック爪62を開き動作することで、紙管PPの内面に当接してフィルムロールRの内側をチャッキングした状態を示す。この状態で第2ロボット60のアームを上方に移動させることで内袋5とともにフィルムロールRを梱包箱1から取り出すことができる。梱包箱1がフィルムロールRとともに持ち上がらないように、梱包箱1の下面を吸引するか、あるいは図示しない保持部材で挟むことによって梱包箱1を保持する構成としてもよい。
【0074】
但し、フィルムロールRの内側のみをチャッキングしてそのまま持ち上げると、フィルムロールRの内側部分のみが取出方向に移動し、コイルバネの如くにフィルムロールRが巻崩れてしまう事態が生じ得る。フィルムロールRが巻崩れると、ラベリング装置に繰り出す際の繰り出し精度が低下する。
【0075】
そこで、
図11の状態からそのままフィルムロールRを上方に持ち上げて梱包箱1から取り出すのではなく、フィルムロールRの内側を内側チャック爪62でチャッキングした状態を維持しつつ、梱包箱1を載置しているステージ30を所定角度だけ傾斜させ、梱包箱1を傾斜させた状態でフィルムロールRを梱包箱1から取り出す。
【0076】
図12は、第2ロボット60の内側チャック爪62でフィルムロールRの内側をチャッキングしつつ、梱包箱1を載置するステージ30を傾斜させて梱包箱1を傾斜させた状態を示す。傾斜角は必ずしも限定されないが、45度以上90度以下が好ましく、70度以上90度未満がより好ましい。梱包箱1を傾斜させる目的は、フィルムロールRの内側のみをチャッキングして梱包箱1から取り出すときに、フィルムロールRの内側部分のみが突出してコイルバネ状に巻崩れるのを防止するためであるので、巻崩れを防止し得る範囲内において梱包箱1を傾斜させればよい。傾斜角度は、予め種々の傾斜角度でフィルムロールRを試行的に取り出し、巻崩れが生じない傾斜角度を見出せばよい。一般的には、傾斜角度が大なるほど巻崩れが生じ難くなる。
図12では、ステージ30を支持する脚の一方側を上方に移動させることでステージ30を傾斜させているが、これに限定されるものではなく、例えばステージ30を回転可能に軸支し、制御装置11からの駆動指令によりステージ30を所定角度だけ回転させることで梱包箱1を傾斜させてもよい。ロボットシステム用の公知のサーボポジショナを用いてもよい。
【0077】
図13は、梱包箱1を傾斜させた状態で第2ロボット60によってフィルムロールRを取り出す状態を示す。第2ロボット60は、フィルムロールRの内側をチャッキングし、傾斜した梱包箱1の底面に対して略垂直な方向、すなわち梱包箱1の傾斜角をθとすると、鉛直面から略θだけ傾いた方向に持ち上げることで、フィルムロールRを内袋5ごと梱包箱1から取り出す。
【0078】
<内袋の除去処理>
図14及び
図15は、フィルムロールRを内袋5ごと梱包箱1から取り出した後に、フィルムロールRから内袋5を除去する処理を模式的に示す。
【0079】
図14は、第2ロボット60によってフィルムロールRを内袋5ごと梱包箱1から取り出した後、制御装置11の駆動指令によってフラップ開梱・内袋開口装置14の近傍に設置された除去装置としての吸引装置40にフィルムロールRを接近させる状態を示す。第2ロボット60は、そのアームを移動させてフィルムロールRの底面側、すなわちチャッキング側とは反対側の面を吸引装置40の吸引プレート42に接近させる。
【0080】
吸引装置40は、鉛直方向に立設するコラムと、当該コラムから水平方向に延びた支持棒と、当該支持棒に取り付けられ、その面が鉛直面内にある吸引プレート42とを備える。吸引プレート42は、複数の吸引ノズルを備えており、接近したフィルムロールRの底面側を吸引して内袋5を吸引する。
【0081】
図15は、吸引プレート42の吸引ノズルで吸引する状態を示す。フィルムロールRの内袋5は、第2ロボット60の内側チャック爪62でチャッキングされておらず、拘束されていない状態でフィルムロールRを覆っている。従って、吸引プレート42の吸引力により内袋5が吸引され、この状態で第2ロボット60のアームが吸引プレート42から離れる方向に移動することで、内袋5はフィルムロールRから除去される。
【0082】
図16は、内袋5がフィルムロールRから除去された状態を示す。内袋5は吸引プレート42に吸引され、第2ロボット60はフィルムロールRのみをチャッキングして保持する。
【0083】
図17は、吸引プレート42の構成を示す。吸引プレート42は、既述した複数の吸引ノズル44と、複数の吸引ノズル44を円形状に囲む平坦なリング部46を備える。リング部46の内径a1及び外径a2は、フィルムロールRの直径aに応じて設定され、a1<a<a2となるように設定される。あるいは、フィルムロールRの内径r1及び外径r2に対し、a1<r1<r2<a2となるように設定される。これは、内袋5を除去する際に、フィルムロールRの外径部のみが内袋5の除去とともに吸引プレート42側に引っ張られて巻崩れした場合に、当該外径部の突出を平坦なリング部46の面に押し当てて巻崩れを修正できるようにするためである。除去された内袋5は、その後、吸引プレート42から除去されて廃棄される。
【0084】
<巻崩れ修正処理>
図18は、内袋5を除去した後に、フィルムロールRの外径部Rtが吸引プレート42側に突出して巻崩れた状態を示す。制御装置11は、フィルムロールRの巻崩れを監視カメラ等で検知した場合、あるいは巻崩れが生じているか否かを問わず常に、第2ロボット60に駆動指令を出力して、フィルムロールRをチャッキングしたまま再び吸引プレート42に接近させ、フィルムロールRの底面を吸引プレート42のリング部46に押し当てる。
【0085】
図19は、フィルムロールRを吸引プレート42のリング部46に押し当てた状態を示す。フィルムロールRの平坦なリング部46への押し当てにより、フィルムロールRの外径部Rtの突出が戻され、巻崩れが修正される。なお、巻崩れを修正する際には、吸引ノズル44で吸引する必要はないためその吸引動作をオフとする。また、リング部46への押し当て量は、外径部Rtの突出を戻す程度に設定される。第2ロボット60は、フィルムロールRを複数回リング部46に押し当てて徐々に巻崩れを修正してもよい。
【0086】
このように、内袋5を除去するための吸引装置40の吸引プレート42を用いてフィルムロールRの内袋5の除去に伴う巻崩れを修正することで、新たな設備を追加することなく効率的に内袋5を除去し、かつ、巻崩れを修正できる。吸引プレート42のリング部46に押し当てて巻崩れを修正した後、第2ロボット60は、システム10の制御装置11からの駆動指令によって、フィルムロールRをオートスプライサ70に装着する。
【0087】
なお、吸引装置40以外に平坦プレートを設け、この平坦プレートに押し当てることで巻崩れを修正してもよい。また、吸引装置40以外のシステム10の部材のいずれかに平坦面が存在する場合に、当該平坦面を活用して巻崩れを修正してもよい。
【0088】
以上のようにして、フィルムロールRは、梱包箱1から取り出され、内袋5が除去されてオートスプライサ70に装着される。オートスプライサ70は、フィルムロールRから帯状フィルムFを繰り出してラベリング装置に送出するフィルム送出装置と、フィルムロールRから送出し終えた送出済みの帯状フィルムFの終端部と、フィルム送出装置に新たに供給されたフィルムロールRから繰り出された送出前の帯状フィルムFの始端部とを接続するフィルム接続装置を備える。
【0089】
フィルム送出装置は、所定位置にセットされたフィルムロールRを回転させるロール駆動モータと、フィルムロールRから繰り出された帯状フィルムFを挟み込んでラベリング装置に送出する上下一対のフィルム送出ローラを駆動する駆動機構を備える。帯状フィルムFの送出中は、ラベリング装置側が要求する送出速度で帯状フィルムFがラベリング装置側に送出され、帯状フィルムFの送出速度の変動やフィルムロールRの外径変動に伴う帯状フィルムFの操出速度の変動に追従してフィルムロールRが回転すべくロール駆動モータが制御される。
【0090】
フィルム接続装置は、フィルム送出装置にセットされた新たなフィルムロールRから帯状フィルムFを繰り出して、その始端部の重ね合わせ部分を相互に離間させながら、離間した状態の帯状フィルムFの始端部を、帯状フィルムFの送出経路に隣接する所定のフィルム待機位置に位置決めし、フィルムロールRから送出されている帯状フィルムFの終端部を所定位置で切断し、切断された帯状フィルムFの終端部を、帯状フィルムFの送出経路に設定されたフィルム接続位置に位置決めした後、フィルム待機位置に位置決めされた送出前の帯状フィルムFの始端部を帯状フィルムFの送出経路に移送することによって、フィルム接続位置において、送出済みの帯状フィルムFの終端部を送出前の帯状フィルムFの始端部に挟み込ませ、挟み込んだ状態で双方の帯状フィルムF,Fの重ね合わせ部分を相互に接続する。フィルム接続装置は、フィルム留めテープ剥離装置を備えており、フィルムロールRに巻回された帯状フィルムFの操出端部となる始端部をロール外周面に留めている粘着テープを剥離させた後、始端部をフィルムロールRから繰り出す。
【0091】
以上説明したように、本実施形態のシステム10によれば、フィルムロールRを梱包箱1から自動的に取り出し、かつ、内袋5を自動的に除去してフィルムロールRのみをオートスプライサに自動装着できる。これにより、システムの省人化又は無人化を図ることができる。特に、本実施形態のシステム10によれば、フィルムロールRを取り出す際の巻崩れを防止できる。さらに、内袋5を除去する際に生じた巻崩れを修正することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、第2ロボット60の内側チャック爪62をフィルムロールRの内側に挿入し、内側チャック爪62を開き動作することで、紙管PPの内面に当接してフィルムロールRの内側をチャッキングしているが、第2ロボット60は、内側チャック爪62に加えて外側チャック爪も備え、外側チャック爪によってフィルムロールRの外側のみをチャックし得る構成、あるいは内側と外側のいずれもチャックし得る構成であってもよい。また、本実施形態におけるフィルムロールRは、筒状フィルムのシュリンクラベルとシートフィルムのロールラベルのいずれであってもよい。さらに、本実施形態では、除去装置としての吸引装置40で内袋5を吸引してフィルムロールRから内袋5を取り外しているが、内袋5をロボットで把持して内袋5を除去してもよい。
【0093】
フィルム接続装置は、フィルム留めテープ剥離装置を備えており、フィルム留めテープ剥離装置は、フィルムロールRに巻回された帯状フィルムFの繰り出し端部となる始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープを剥離させる。粘着テープを剥離するためには、例えばフィルムロールRの1周目(最外周面)を吸盤で吸引し、剥離用の刃あるいはスクレーパをフィルムロールの1周目(最外周面)と2周目の間に帯状フィルムFの長手方向から挿入してスクレーパを回転させて粘着テープを剥離することが考えられるが、フィルムロールRが袋状のシュリンクラベルの場合には、吸盤で吸引しても袋上部のみが持ち上がってフィルムロールRの1周目と2周目の間に間隙が生じず、剥離用の刃あるいはスクレーパを1周目と2周目の間に挿入できない事態が生じ得る。
【0094】
そこで、本実施形態では、帯状フィルムFの長手方向からスクレーパを挿入するのではなく、帯状フィルムFの長手方向に垂直な方向、言い替えれば、フィルムロールRの巻断面方向からスクレーパを挿入することで、フィルムロールRの1周目と2周目の間にスクレーパを確実に挿入して粘着テープを剥離させる。
【0095】
以下、オートスプライサ70のフィルム接続装置が備えるフィルム留めテープ剥離装置の詳細及び剥離処理について説明する。
【0096】
<フィルムテープ剥離処理>
図20A及び
図20Bは、フィルム留めテープ剥離装置の構成図を示す。
図20Aにおいて上段は平面図、下段は側面図をそれぞれ示す。
図20Bは、フィルムロールRの巻断面方向から見た構成図である。
【0097】
フィルム留めテープ剥離装置は、帯状フィルムFの始端部F1を帯状フィルムFの送出経路に隣接する所定のフィルム待機位置に位置決めする段取りユニット72の一部としての剥離ユニット74を備える。剥離ユニット74は、フィルムロールRに巻回された帯状フィルムFの繰り出し端部となる始端部F1をフィルムロールR外周面に留めている粘着テープTを剥離させ、始端部F1をフィルムロールRから繰り出す。
【0098】
段取りユニット72は、フィルムロールRの1周目(最外周面)の帯状フィルムFの上面を吸引する吸盤72aと、フィルムロールRの1周目の帯状フィルムFの上面を押さえつける押さえ部材72bと、吸盤72aをz軸方向に上下駆動するエアシリンダ72cと、押さえ部材72bをz軸方向に上下駆動するエアシリンダ72dと、剥離ユニット74を図中x方向に駆動するエアシリンダ72eを備える。エアシリンダ72eは、後述するスクレーパをフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入する挿入装置として機能する。スクレーパは、
図20Bにおいて紙面の手前から紙面の奥方向に移動してフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入される。
【0099】
剥離ユニット74は、段取りユニット72に連結され鉛直下方に延びる支持部材と、この支持部材から水平方向、かつフィルムロールRの巻断面方向に延びる刃あるいはスクレーパ(以下、単にスクレーパと称する)74a、74bを備える。スクレーパ74a及びスクレーパ74bは、ともにフィルムロールRの巻断面方向の先端部において先細りとなるようにテーパ形成されており、スクレーパ74aはスクレーパ74bよりも長く、スクレーパ74aやスクレーパ74bの下面に配置される。また、剥離ユニット74は、スクレーパ74aをy軸方向に駆動するエアシリンダ74cを備える。エアシリンダ74cは、スクレーパ74aを移動して粘着テープを剥離させるスクレーパ駆動装置として機能する。
【0100】
段取りユニット72及び剥離ユニット74は、図示しないフィルム接続装置を統括制御するコントローラで駆動制御される。なお、このコントローラは、システム10を制御する制御装置11とは別個であるが、制御装置11と同一でもよい。
【0101】
初期状態では、段取りユニット72は、フィルムロールRの直上に位置しており、剥離ユニット74のスクレーパ74a,74bもフィルムロールRの斜め上方に位置している。この初期状態から、段取りユニット72をz軸方向に下降させ、吸盤72a及び押さえ部材72bをフィルムロールRの上面に接近させる。
【0102】
図21は、
図20A、
図20Bの状態から段取りユニット72を下降させた状態を示す。段取りユニット72の所定位置、例えば吸盤72aの近傍には接近センサが設けられ、フィルムロールRの上面を検出する。接近センサでフィルムロールRの上面を検出すると、段取りユニット72は下降移動を停止する。また、接近センサでフィルムロールRの上面を検出すると、吸盤72aを駆動する電磁弁(SV)をオン駆動して吸盤72aでフィルムロールRを上方に吸引する。
図21において、矢印は、吸盤72aでフィルムロールRの上面を上方に吸引している様子を示す。なお、吸盤72aは、シュリンクラベルの折り位置近傍を吸引するのが好適である。
【0103】
図22は、吸盤72aで吸引した後の状態を示す平面図である。吸盤72aでフィルムロールRの上面を吸引した後、エアシリンダ72cにより吸盤72aをz軸方向に往復駆動、すなわち上下方向に往復駆動する。エアシリンダ72cは、吸盤72aを複数回、例えば4回程度上下に往復駆動する。単に吸盤72aでフィルムロールRを吸引するのみでは、フィルムロールRの1周目と2周目に間隙が形成されない場合もあり得るところ、このように吸盤72aでフィルムロールRを吸引しつつ、吸盤72aを上下に往復駆動することで、フィルムロールRの1周目に振動を与え、フィルムロールRの1周目と2周目の間に確実に間隙が形成され得る。図において、上下の矢印は、吸盤72aが上下に往復動している様子を示す。
【0104】
図23は、吸盤72aを複数回上下駆動した後の状態を示す。段取りユニット72のエアシリンダ72eにより剥離ユニット74をz軸方向に駆動してスクレーパ74a,74bをフィルムロールRの巻断面方向からフィルムロールRに接近させる。なお、スクレーパ74a,74bのz方向位置、すなわち高さは、フィルムロールRの上面とほぼ同一の高さとなるように設定される。従って、吸盤72aでフィルムロールRの上面を上方に吸引した状態で剥離ユニット74をz方向に駆動することで、剥離ユニット74のスクレーパ74a,74bの先端はフィルムロールRの巻断面方向から1周目と2周目の間の間隙に挿入される。スクレーパ74aとスクレーパ74bは長さが異なるため、最初にスクレーパ74aの先端が挿入され、続いてスクレーパ74bの先端が挿入される。
図23では、スクレーパ74aの先端が挿入される様子を示す。
【0105】
図24は、スクレーパ74aの先端がフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入された後の状態を示す。エアシリンダ72eの駆動によりスクレーパ74a,74bは引き続いてフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入され続けるが、このとき、段取りユニット72はz方向に下方駆動して押さえ部材72bをフィルムロールRの上面に接近させる。
【0106】
図25は、スクレーパ74a,74bがフィルムロールRの1周目と2周目の間に完全に挿入された状態を示す。スクレーパ74a,74bがフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入され終えると、もはや吸盤72aでフィルムロールRの上面を吸引しておく必要がないので吸盤72aの電磁弁(SV)をオフ駆動して吸引を停止する。これと同時に、エアシリンダ72dにより押さえ部材72bがz方向に下方駆動されてフィルムロールRの上面を押さえつける。
【0107】
図26は、スクレーパ74a,74bがフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入された状態で押さえ部材72bでフィルムロールRの上面を押さえつける状態を示す。この状態からスクレーパ74aをy軸方向に移動させることでフィルムロールRに巻回された帯状フィルムFの繰り出し端部となる始端部F1をフィルムロールR外周面に留めている粘着テープTを剥離させることができるが、押さえ部材72bでフィルムロールRの上面を押さえつけた状態だけでは粘着テープTを剥離させ難い。
【0108】
そこで、段取りユニット72は、押さえ部材72bでフィルムロールRの上面を押さえつけたことをトリガとして、z軸方向に若干量だけ上昇して、フィルムロールRの1周目を上方に持ち上げる。すなわち、段取りユニット72を若干量だけ上昇させることで、押さえ部材72bとスクレーパ74bでフィルムロールRの1周目を挟んだ状態で上方に持ち上げ、粘着テープTに上方への持ち上げ力を印加する。
【0109】
図27は、エアシリンダ74cによりスクレーパ74aをy軸方向、すなわち始端部F1の方向に移動させた状態を示す。フィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入されたスクレーパ74aを始端部F1の方向に移動させることで、始端部F1を外周面に留めていた粘着テープTが剥離される。
【0110】
図28は、本実施形態の粘着テープTの剥離処理を示すタイミングチャートである。
図28において、上から順に、段取りユニット72のz軸方向の移動タイミング信号、フィルムロールRの表面を検出する接近センサの検出タイミング信号、吸盤72aの電磁弁駆動タイミング信号、エアシリンダ72cの駆動タイミング信号、エアシリンダ72dの駆動タイミング信号、エアシリンダ72eの駆動タイミング信号、及びエアシリンダ74cの駆動タイミング信号である。また、
図28において、丸付き符号1~8は、それぞれ
図20~
図27の状態に対応している。
【0111】
段取りユニット72は、
図20に示す初期状態から、z軸方向に下降する。フィルムロールRの接近センサでフィルムロールRの表面(上面)を検出し、検出信号がオフからオンになると、z軸方向の下降を停止する。そして、剥離ユニット74がx軸方向に所定量だけ移動し、スクレーパ74aの先端がフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入され始めるタイミングにおいてz軸方向に若干量(例えば2mm程度)下降する。その後、スクレーパ74a,74bがフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入し終えると、吸盤72aの吸引がオフされ、押さえ部材72bによりフィルムロールRの上面を押さえつけると、これをトリガとしてz軸方向に若干量(例えば2mm)上昇する。
【0112】
接近センサの検出タイミング信号は、フィルムロールRの表面を検出するとオフからオンに切り替わる。
【0113】
吸盤72aの電磁弁駆動タイミング信号は、接近センサの検出タイミング信号がオフからオンに切り替わるとオフからオンに切り替わり、吸盤72aの吸引力をオンにする。その後、スクレーパ74a,74bがフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入し終えたタイミングでオンからオフに切り替わり、吸盤72aの吸引力をオフにする。
【0114】
エアシリンダ72cの駆動タイミング信号は、吸盤72aの駆動タイミング信号がオフからオンに切り替わるタイミングに同期してオフからオンに切り替わり、吸盤72aをz軸方向に下降させる。これにより、吸盤72aはフィルムロールRの上面に当接して吸引する。その後、エアシリンダ72cの駆動タイミング信号は、所定回数だけオンオフを繰り返す。
図28では、合計4回オンオフを繰り返す。これにより、吸盤72aは、フィルムロールRの上面を吸引した状態を維持しつつ、上下方向に合計4回往復動する。複数回往復動を行った後、オン状態を維持し、吸盤72aでフィルムロールRの上面を上方に引き上げた状態を保持する。
【0115】
エアシリンダ72dの駆動タイミング信号は、吸盤72aの電磁弁駆動タイミング信号がオンからオフに切り替わって吸引力がオフになるタイミング、すなわちスクレーパ74a,74bがフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入し終えたタイミングに同期してオフからオンに切り替わり、押さえ部材72bをz軸方向に下降させてフィルムロールRの上面を押さえつける。なお、既述したように、押さえ部材72bでフィルムロールRの上面を押さえつけると、これをトリガとして段取りユニット72がz軸方向に若干量だけ上昇してフィルムロールRの1周目を押さえ部材72bとスクレーパ74bで挟み込んだ状態で上方に持ち上げる。
【0116】
エアシリンダ72eの駆動タイミング信号は、エアシリンダ72cにより吸盤72aを複数回上下に往復動させた後の所定タイミングでオフからオンに切り替わり、剥離ユニット74をx軸方向に駆動してスクレーパ74a,74bをフィルムロールRの巻断面方向からフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入させる。
【0117】
エアシリンダ74cの駆動タイミング信号は、段取りユニット72がz軸方向に若干量だけ上昇した後にオフからオンに切り替わり、スクレーパ74aをy軸方向に移動させて粘着テープTを剥離させる。
【0118】
このように、本実施形態では、フィルムロールRに巻回された帯状フィルムFの巻断面方向からフィルムロールRの1周目と2周目の間にスクレーパ74a,74bを挿入するので、たとえ帯状フィルムFが筒状のシュリンクラベルの場合でもフィルムロールRの1周目と2周目の間に確実に挿入し得る。また、本実施形態では、単に吸盤72aでフィルムロールRの上面を吸引するのではなく、吸盤72aでフィルムロールRの上面を吸引した後に当該吸盤72aを上下方向に複数回往復動させることで、フィルムロールRの1周目と2周目との間に確実に間隙を形成し得る。なお、本実施形態では、複数回の往復動としているが、その回数は任意であり、1回の往復動でもよい。さらに、本実施形態では、押さえ部材72bとスクレーパ74bとでフィルムロールRの1周目を挟んで上方に持ち上げた状態でスクレーパ74aをy軸方向に移動させることで、粘着テープTを確実に剥離させ得る。
【0119】
なお、上述した本実施形態では、
図21、
図22にて吸盤72aでフィルムロールRの上面を吸引した後、エアシリンダ72cにより吸盤72aをz軸方向に移動、すなわち上下方向に往復駆動する例を示したが、
図29に示すように上面のフィルムをより開き易い所定の方向、例えば、下方をスクレーパの挿入側にz軸方向から6度程傾斜させた方向に吸引装置の吸盤72aを移動(往復駆動)するようにしてもよい。こうすると、吸盤72aでフィルムロールRの上面を吸引しつつ、上面のフィルムをより開き易い所定の方向に吸盤72aを往復駆動することで、フィルムロールRの1周目に振動を与え、フィルムロールRの1周目と2周目の間により確実に間隙が形成されるようになる。ここで、吸引装置の吸盤72aを往復駆動させる際に下方をスクレーパの挿入側にz軸方向から傾斜させる角度は、フィルムの材質、サイズ、厚さ等に合わせて、上面のフィルムがより開き易くなるように調整するとよい。
【0120】
なお、本発明のフィルムロール粘着テープの剥離装置を用いた際に、稀に粘着テープTを剥離した部分にシワ等が入ることがあり、フィルムが装着された製品の見栄えに影響することがある。
こうした不具合を解消するため、本発明のフィルムロール粘着テープの剥離装置において、
図30に示すようにスクレーパを振動させる振動部材である、例えば小型の振動モーター75をスクレーパ74aの基部に備える構成にしてもよい。この構成によれば、小型振動モーター75による振動をスクレーパ74aの基部から先端部に伝え全体を振動させる事ができるので、
図26、
図27に示したように、スクレーパ74a,74bがフィルムロールRの1周目と2周目の間に挿入された状態で押さえ部材72bでフィルムロールRの上面を押さえつける状態からスクレーパ74aをy軸方向に移動させることで、フィルムロールRに巻回された帯状フィルムFの繰り出し端部となる始端部F1をフィルムロールR外周面に留めている粘着テープTを剥離させる際に、スクレーパ74aの振動により粘着テープTの剥離をよりスムーズに行うことが可能となり、粘着テープTを剥離した部分にシワ等が入り難くなる。
【0121】
更には、フィルムロールの始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープTの貼付部を温める加温装置である、例えば小型のヒートガン76を段取りユニット72に備える構成にしてもよい。この構成によれば、ヒートガン76の先端ノズルから粘着テープの貼付部に熱風を吹き付け温める事で、粘着テープの粘着強度を低下させることが可能になり、スクレーパ74aによって粘着テープTを剥離する際に粘着テープTを剥離した部分にシワ等が入り難くなる。
【0122】
また、他の解消手段として、本発明のフィルムロール粘着テープの剥離装置において、フィルムロールの始端部をフィルムロール外周面に留めている粘着テープの貼付部の位置を特定する識別マーク(紫外線硬化型インキ等の塗布、ラベルの貼付、孔加工等)を設け、後工程となるラベリング装置等において、マークセンサーにより検出された識別マークによって特定された粘着テープの貼付部を含む所定範囲のラベルが装着された包装体を排除するようにしてもよい。
【0123】
また、上記のような識別マークを設けることなく、本発明のフィルムロール粘着テープの剥離装置がフィルムロールの始端部から粘着テープの貼付部までのフィルムの長さをフィルムロールの外径をセンサーで実測して算出する計測部を制御装置に備える構成にし、別のフィルムに接続され接続部となるフィルムロールの始端部から粘着テープの貼付部までのフィルムの長さを実測したフィルムロールの外径から算出し、粘着テープの貼付部の位置を特定する情報を後工程となるラベリング装置等に受け渡し、マークセンサーにより検出された接続部を基準にして粘着テープの貼付部の位置を特定し、それにより特定された所定範囲のラベルが装着された包装体を排除するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 梱包箱(外装体)、2 側壁部、3a~3d フラップ部、4a~4d 粘着テープ、5 内袋、5a 口部、10 フィルムロール供給システム、12 テープカット装置、14 フラップ開梱・内袋開口装置、28a~28d 吸引ノズル、30 ステージ、40 吸引装置、42 吸引プレート、44 吸引ノズル、46 リング部、50 第1ロボット、60 第2ロボット、62 内側チャック爪、70 オートスプライサ、72 段取りユニット、74 剥離ユニット(挿入装置、スクレーパ駆動装置)、75 振動モーター(振動部材)、76 ヒートガン(加温装置)。