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  • 特許-パターン欠陥検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】パターン欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240311BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20240311BHJP
   G01B 15/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/2251
G01B15/00 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020080497
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021174969
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】丸山 浩太郎
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009256(JP,A)
【文献】特開2010-268009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/2251
G01B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレイヤーに形成された複数のパターンを含む積層構造の反射電子画像を走査電子顕微鏡で生成し、
前記複数のパターンの設計データから作成されたCADパターンを含む仮想積層構造の複数の領域を、前記仮想積層構造の深さ方向におけるCADパターンの重なり方に従って複数のグループに分類し、
前記反射電子画像上の前記複数のパターンのうちの少なくとも1つと、対応するCADパターンとのマッチングを行い、
各グループに属する領域に対応する前記反射電子画像上の領域の輝度指標値を算定し、
前記輝度指標値が標準範囲外にあるときに、前記反射電子画像上の前記領域内にパターン欠陥があることを決定する、パターン欠陥検出方法。
【請求項2】
前記輝度指標値は、前記反射電子画像上の前記領域内の画素の輝度の統計量で表される、請求項1に記載のパターン欠陥検出方法。
【請求項3】
前記統計量は、最大値、最小値、中央値、平均値、標準偏差値、またはそれらの組み合わせである、請求項に記載のパターン欠陥検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトや配線などのパターンの欠陥を検出する方法に関し、より具体的には、設計データに基づき製造された積層構造を構成するパターンの欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームによる半導体配線パターンの検査には、低エネルギーの電子ビームをスキャンすることで得られる最表面パターンの二次電子画像が用いられる。これらの二次電子画像を用い、異なる2つ以上のショットにおけるパターンの二次電子画像を比較するDie to Die検査、または設計データとパターンの二次電子画像を比較するDie to Database検査がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、配線工程の導通不良検査の方法として、Die to Databaseによる電位コントラスト画像を用いた配線工程の検査が提案されている(特許文献2参照)。更に、高加速電子ビームを用いた、二次電子画像による最表面パターンと、下層からの反射電子による透過画像によるパターンとのオーバーレイ(重ね合わせ)の測定が提案されている(非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-268009号公報
【文献】特開2019-9256号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】”SEM-based overlay measurement between via patterns and buried M1 patterns using high-voltage SEM”, SPIE,(米), 2017, Metrology, Inspection, and Process Control for Microlithography XXXI, Proc. SPIE 10145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配線工程においては、配線パターンの形状、位置ずれのみならず、下層ビアパターンの形状、重心、及び各層の重ね合わせが重要となる。非特許文献1に開示されているように、高加速電子ビームのスキャンにより複数の配線層パターンからの反射電子信号を検出して得られる透過画像を用いた検査が期待される。
【0007】
しかし、高加速電子ビームによる配線層の画像は、配線層の材質、厚み、配線深さ、絶縁層の材質、更に上層配線、ビア、下層配線との重なりによりコントラストが変化する。このため、パターンエッジと設計データのパターンエッジを比較する従来のDie to Database技術を適用することが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、積層構造を構成するパターンの欠陥を検出することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、複数のレイヤーに形成された複数のパターンを含む積層構造の反射電子画像を走査電子顕微鏡で生成し、前記複数のパターンの設計データから作成されたCADパターンを含む仮想積層構造の複数の領域を、前記仮想積層構造の深さ方向におけるCADパターンの重なり方に従って複数のグループに分類し、前記反射電子画像上の前記複数のパターンのうちの少なくとも1つと、対応するCADパターンとのマッチングを行い、各グループに属する領域に対応する前記反射電子画像上の領域の輝度指標値を算定し、前記輝度指標値が標準範囲外にあるときに、前記反射電子画像上の前記領域内にパターン欠陥があることを決定する、パターン欠陥検出方法が提供される。
【0010】
一態様では、前記輝度指標値は、前記反射電子画像上の前記領域内の画素の輝度の統計量で表される。
一態様では、前記統計量は、最大値、最小値、中央値、平均値、標準偏差値、またはそれらの組み合わせである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る方法は、複数の半導体配線層におけるオープン欠陥、ショート欠陥、形状欠陥、ビアと配線とのオーバーラップ不良を一括で検出することができる。また、本発明に係る方法は、Die to Database技術を用いることにより、システマティック欠陥の検出が可能となり、さらに、単一の反射電子画像で積層構造の検査を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像生成装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】半導体デバイスを構成する積層構造の一例を説明する断面図である。
図3】ウェーハ上に形成されているパターンの設計データから作成されたCADパターンを含む仮想積層構造の一例を示す模式図である。
図4図3に示すCADパターンに従ってウェーハ上に実際に作成された積層構造の反射電子画像の模式図である。
図5】パターン欠陥の一例としてビアパターンの欠陥を示す図である。
図6】パターンの欠陥を検出する方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、画像生成装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、画像生成装置は、走査電子顕微鏡50および演算システム150を備えている。走査電子顕微鏡50は、演算システム150に接続されており、走査電子顕微鏡50の動作は演算システム150によって制御される。
【0014】
演算システム150は、データベース161およびプログラムが格納された記憶装置162と、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する処理装置163と、画像およびGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)などを表示する表示画面165を備えている。処理装置163は、記憶装置162に格納されているプログラムに含まれる命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置162は、処理装置163がアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0015】
演算システム150は、少なくとも1台のコンピュータを備えている。例えば、演算システム150は、走査電子顕微鏡50に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークによって走査電子顕微鏡50に接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいは走査電子顕微鏡50に接続されたネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。演算システム150は、複数のサーバの組み合わせであってもよい。例えば、演算システム150は、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークにより互いに接続されたエッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。他の例では、演算システム150は、ネットワークで接続されていない複数のサーバ(コンピュータ)を備えてもよい。
【0016】
走査電子顕微鏡50は、一次電子(荷電粒子)からなる電子ビームを発する電子銃111と、電子銃111から放出された電子ビームを集束する集束レンズ112、電子ビームをX方向に偏向するX偏向器113、電子ビームをY方向に偏向するY偏向器114、電子ビームをワークピースの一例であるウェーハ124にフォーカスさせる対物レンズ115を有する。電子銃111の構成は特に限定されない。例えば、フィールドエミッタ型電子銃、または半導体フォトカソード型電子銃などが電子銃111として使用できる。
【0017】
集束レンズ112および対物レンズ115はレンズ制御装置116に接続され、集束レンズ112および対物レンズ115の動作はレンズ制御装置116によって制御される。このレンズ制御装置116は演算システム150に接続されている。X偏向器113、Y偏向器114は、偏向制御装置117に接続されており、X偏向器113、Y偏向器114の偏向動作は偏向制御装置117によって制御される。この偏向制御装置117も同様に演算システム150に接続されている。反射電子検出器131は画像取得装置118に接続されている。画像取得装置118は反射電子検出器131の出力信号を反射電子画像に変換するように構成される。この画像取得装置118も同様に演算システム150に接続されている。
【0018】
試料チャンバー120内に配置される試料ステージ121は、ステージ制御装置122に接続されており、試料ステージ121の位置はステージ制御装置122によって制御される。このステージ制御装置122は演算システム150に接続されている。ウェーハ124を、試料チャンバー120内の試料ステージ121に載置するための搬送装置140も同様に演算システム150に接続されている。
【0019】
電子銃111から放出された電子ビームは集束レンズ112で集束された後に、X偏向器113、Y偏向器114で偏向されつつ対物レンズ115により集束されてウェーハ124の表面に照射される。ウェーハ124に電子ビームの一次電子が照射されると、ウェーハ124からは反射電子が放出される。反射電子は反射電子検出器131により検出される。反射電子検出器131から出力された反射電子の検出信号は、画像取得装置118に入力され、画像取得装置118により反射電子画像に変換される。反射電子画像は演算システム150に送信される。
【0020】
電子ビームを形成する一次電子は、ウェーハ124の内部に侵入し、ウェーハ124内で散乱して、反射電子となる。反射電子は、ウェーハ124から放出される高いエネルギーを持つ電子である。原子番号が大きく、高い密度の材料では放出信号強度が高い傾向を持つため、反射電子画像はウェーハ124の組成がコントラストに反映されやすい特性を持っている。また、積層構造に対して十分な深さまで到達するエネルギーをもつ電子ビームからなる反射電子信号は、電子ビームが照射される位置における、深さ方向の構造と組成の情報を含む。
【0021】
半導体デバイスの製造工程においては、比較的小さい密度を持つ絶縁層に、大きい密度を持つ金属配線層、ビア層が形成される。高いエネルギーを持つ電子ビームを半導体デバイスに照射して得られる反射電子画像は、配線、およびビアパターンにて高い輝度を持ち、絶縁層で低い輝度を持つ。また、配線およびビアが重なり、金属層の総高さが増すにつれ、より高い輝度を持つ傾向となる。この様な特性を利用し、以下に説明するように、本実施形態に係る方法は、設計データを用い、積層構造の深さ方向における材料の組成(すなわちパターンの重なり方)に従って分類された領域毎に反射電子画像の輝度を評価することにより、複数層のパターンを一括で検査する。
【0022】
以下、走査電子顕微鏡50によって生成された反射電子画像上のパターンの欠陥を検出する方法の一実施形態について説明する。以下の説明では、ウェーハ124のパターンは、設計データ(CADデータともいう)に基づいて形成されている。CADは、コンピュータ支援設計(computer-aided design)の略語である。
【0023】
ウェーハ124に形成されているパターンの設計データは、記憶装置162に予め記憶されている。設計データは、ウェーハ124上に形成されたパターンの頂点の座標、パターンの位置、形状、および大きさ、パターンが属するレイヤーの番号などのパターンの設計情報を含む。記憶装置162には、データベース161が構築されている。パターンの設計データは、データベース161内に予め格納される。演算システム150は、記憶装置162に格納されているデータベース161からパターンの設計データを読み込むことが可能である。
【0024】
設計データは、ウェーハ124に形成されたパターンの設計情報を含むデータである。以下に説明する設計データ上のCADパターンは、設計データに含まれるパターンの設計情報によって定義される仮想パターンである。ウェーハ124に実際に形成されているパターンを実パターンということがある。
【0025】
図2は、半導体デバイスを構成する積層構造の一例を説明する断面図である。積層構造200は、第1レイヤー内に位置する第1配線パターン201と、第2レイヤー内に位置する第2配線パターン202と、第1配線パターン201と第2配線パターン202との間を延びるビアパターン203を含む。第1配線パターン201、第2配線パターン202、およびビアパターン203は、絶縁層205内に形成されている。図2に示す例では、第2レイヤーは第1レイヤーよりも高い位置にある。
【0026】
ビアパターン203は、第1配線パターン201および第2配線パターン202に対して垂直に延びている。ビアパターン203の一端は第1配線パターン201に接続され、ビアパターン203の他端は第2配線パターン202に接続されている。したがって、ビアパターン203は、第1配線パターン201と第2配線パターン202との電気的接続を確立する。
【0027】
図3は、ウェーハ124上に形成されているパターンの設計データから作成されたCADパターンを含む仮想積層構造300の一例を示す模式図である。CADパターンは、第1レイヤー内に位置する第1配線CADパターン301と、第2レイヤー内に位置する第2配線CADパターン302と、第1配線CADパターン301と第2配線CADパターン302との間を延びるビアCADパターン303を含む。第1レイヤーおよび第2レイヤーは、高さの異なるレイヤーである。以下、第1配線CADパターン301、第2配線CADパターン302、およびビアCADパターン303を、総称して単にCADパターンということがある。
【0028】
図3の例においては、仮想積層構造300の領域は、仮想積層構造300の深さ方向におけるCADパターン配列(すなわちCADパターンの重なり方)に基づいて、以下の5グループに分類することができる。
第1グループ:第1配線CADパターン301、第2配線CADパターン302、およびビアCADパターン303が重なる領域
第2グループ:第1配線CADパターン301の上方に第2配線CADパターン302があり、かつビアCADパターン303がない領域
第3グループ:第1配線CADパターン301が存在し、第2配線CADパターン302およびビアCADパターン303がない領域
第4グループ:第2配線CADパターン302が存在し、第1配線CADパターン301およびビアCADパターン303がない領域
第5グループ:第1配線CADパターン301、第2配線CADパターン302、およびビアCADパターン303がない領域
【0029】
演算システム150は、図3に示す仮想積層構造300の複数の領域を、仮想積層構造300の深さ方向におけるCADパターン配列に基づいて第1グループ~第5グループに分類する。例えば、図3に示す仮想積層構造300の領域S1は、第1グループに属する。第1グループから第5グループまでの複数のグループは、深さ方向におけるCADパターン配列が異なっている。
【0030】
図4は、図3に示すCADパターンに従ってウェーハ124上に実際に作成された積層構造400の反射電子画像の模式図である。図4に示す積層構造400は、図3に示す仮想積層構造300に対応する。すなわち、図4に示す反射電子画像上の第1配線パターン401は、図3の第1配線CADパターン301に対応し、図4に示す反射電子画像上の第2配線パターン402は、図3の第2配線CADパターン302に対応し、図4に示す反射電子画像上のビアパターン403は、図3のビアCADパターン303に対応する。
【0031】
図4に示すように、パターンが重なっている部分は白く、パターンがない部分は黒い。言い換えれば、金属の厚さが大きくなるほど、輝度が高くなる。図4に示すように、第1配線パターン401と、第2配線パターン402と、ビアパターン403が重なる部分は、最も大きな輝度を持つ。第1配線パターン401、第2配線パターン402、およびビアパターン403のいずれもが存在しない絶縁層405は、最も小さい輝度を持つ。一実施形態では、輝度は、グレースケールに従った数値である。
【0032】
図4に示す反射電子画像は、図1に示す走査電子顕微鏡50によって生成される。演算システム150は、反射電子画像を走査電子顕微鏡50から取得し、反射電子画像上の複数のパターンと、設計データから作成されたCADパターンとのマッチングを行う。
【0033】
上記パターンマッチングは、公知の方法に従って実行される。例えば、演算システム150は、反射電子画像と設計データから作成されたCADパターンとを重ね合わせ、CADパターンのエッジを起点として設定された範囲で反射電子画像のグレーレベルのプロファイルを作成し、グレーレベルのプロファイルから反射電子画像上のパターンのエッジを決定し、決定されたエッジの位置と、対応するCADパターンのエッジの位置とのバイアス値が最小になるマッチング位置を決定する。バイアス値は、グレーレベルのプロファイルから決定されたエッジと、対応するCADパターンのエッジとのずれ量(距離)を示す指標値である。上記パターンマッチングには、複数レイヤーの複数のCADパターンが用いられるが、一実施形態では最もパターンマッチングに最適な単一レイヤーのCADパターンが用いられてもよい。
【0034】
演算システム150は、各グループに属する仮想積層構造300の領域に対応する反射電子画像上の領域の輝度指標値を算定する。具体的には、演算システム150は、図3に示す第1グループに属する各領域に対応する反射電子画像上の領域の輝度指標値を算定する。例えば、演算システム150は、第1グループに属する領域S1(図3参照)に対応する反射電子画像上の領域R1(図4参照)の輝度指標値を算定する。第1グループに属する領域S1(図3参照)と反射電子画像上の対応する領域R1(図4参照)は、互いに同じ位置にあり、同じ大きさを有する。
【0035】
領域R1は、第1配線パターン401、第2配線パターン402、およびビアパターン403が重なり合う領域であるため、最も高い輝度を有する。演算システム150は、領域R1内に存在する画素の輝度の統計量である輝度指標値を算定する。輝度指標値は、領域R1の輝度を示す指標である。本実施形態では、輝度指標値は、領域R1内の画素の輝度の最大値、最小値、中央値、平均値、標準偏差値、またはそれらの組み合わせである。
【0036】
輝度指標値は、パターンの重なり方によって変わる。言い換えれば、輝度指標値は、パターンの重なり方に依存して定まる固有の値である。この輝度指標値が所定の範囲外であるとき、パターンに欠陥があると判定することができる。演算システム150は、算定された輝度指標値を、予め定められた第1標準範囲内にあるか否かを判断し、輝度指標値が第1標準範囲外にあるときに、領域R1においてパターンの欠陥が存在することを決定する。
【0037】
図5は、パターン欠陥の一例としてビアパターン403の欠陥を示す図である。図5に示す例では、ビアパターン403がずれている。結果として、領域R1の輝度指標値は第1標準範囲から外れる。このようにして、演算システム150は、輝度指標値を第1標準範囲と比較することで、領域R1内にパターン欠陥が存在するか否かを判定することができる。
【0038】
同様にして、演算システム150は、図3に示す第2グループの領域に対応する図4の反射電子画像上の領域の輝度指標値を算定し、算定された輝度指標値を、予め定められた第2標準範囲内にあるか否かを判断し、輝度指標値が第2標準範囲外にあるときに、反射電子画像上のその領域においてパターンの欠陥が存在することを決定する。演算システム150は、第3グループ、第4グループ、および第5グループについても同様にして、それぞれの輝度指標値が、第3標準範囲、第4標準範囲、第5標準範囲内にあるか否かを判断する。
【0039】
本実施形態によれば、単一の反射電子画像を用いて、複数レイヤーのパターンの欠陥を一度に検出することができる。特に、本実施形態に係る方法は、半導体デバイスの抵抗値に影響しうるパターン自体の欠陥、パターンの重なり方の欠陥を判定することで積層構造400を正しく評価することができる。本方法によって検出しうるパターン欠陥の例としては、パターンシフト、パターンの欠落、短絡(ショートサーキット)、断線(オープンサーキット)、パターン変形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
図6は、パターンの欠陥を検出する方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
ステップ1では、演算システム150は、走査電子顕微鏡50に指令を発して、複数のレイヤーに形成された複数のパターンを含む積層構造400の反射電子画像を生成させる。反射電子画像は、走査電子顕微鏡50から演算システム150に送られる。
ステップ2では、演算システム150は、積層構造400を構成するパターンの設計データから作成されたCADパターンを含む仮想積層構造300の複数の領域を、仮想積層構造300の深さ方向におけるCADパターン配列に従って複数のグループに分類する。グループの数は、仮想積層構造300の全体におけるCADパターンの配列によって変わりうる。
【0041】
ステップ3では、演算システム150は、反射電子画像上の複数レイヤーのパターン401,402,403と、対応するCADパターン301,302,303とのマッチングを行う。このマッチングは、反射電子画像上の複数のパターンを特定するために行われる。一実施形態では、パターンマッチングを容易にするために、単一レイヤーのパターンのみがパターンマッチングに使われてもよい。
ステップ4では、演算システム150は、各グループに属する領域に対応する反射電子画像上の領域の輝度指標値を算定する。
ステップ5では、演算システム150は、輝度指標値が標準範囲外にあるときに、反射電子画像上の上記領域内にパターン欠陥があることを決定する。標準範囲は、グループごとに設定される。
【0042】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0043】
50 走査電子顕微鏡
111 電子銃
112 集束レンズ
113 X偏向器
114 Y偏向器
115 対物レンズ
116 レンズ制御装置
117 偏向制御装置
118 画像取得装置
120 試料チャンバー
121 試料ステージ
122 ステージ制御装置
124 ウェーハ
131 反射電子検出器
140 搬送装置
150 演算システム
161 データベース
162 記憶装置
163 処理装置
165 表示画面
200 積層構造
201 第1配線パターン
202 第2配線パターン
203 ビアパターン
205 絶縁層
300 仮想積層構造
301 第1配線CADパターン
302 第2配線CADパターン
303 ビアCADパターン
400 積層構造
401 第1配線パターン
402 第2配線パターン
403 ビアパターン
405 絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6