(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】制御装置、撮像装置、レンズ装置、カメラシステム、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240311BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240311BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20240311BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N23/68
G03B17/14
(21)【出願番号】P 2020086088
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瑠美
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114792(JP,A)
【文献】特開2015-194711(JP,A)
【文献】特開2019-124928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00-5/08
H04N 23/68
G03B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ本体および前記カメラ本体に通信可能に装着される交換レンズの一方である第1装置と、他方である第2装置とを有するカメラシステムを制御する制御装置であって、
前記第1装置に設けられた第1振れ検出手段からの第1振れ信号と前記第2装置に設けられた第2振れ検出手段からの第2振れ信号との位相特性が一致するように、前記第1および第2振れ信号の少なくとも一方を補償して少なくとも1つの補償信号を取得する補償手段と、
前記第1振れ信号に基づく第1信号、および前記第2振れ信号に基づく第2信号を用いて前記第1振れ信号を補正する補正手段とを有し、
前記第1および第2信号の少なくとも一方は、前記補償信号であることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記第1信号の積分値と前記第2信号の積分値との差分を用いて前記第1振れ信号を補正することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1信号の積分値と前記第2信号の積分値との差分値に乗算するためのゲインは、前記第1および第2装置との間の通信周期が長くなるにつれて小さくなるように設定されることを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1振れ信号を補正するための、前記第1および第2信号に基づく補正信号の周波数帯域を制限する制限手段を更に有し、
前記制限手段の制限周波数は、前記第1および第2装置との間の通信周期が長くなるにつれて低くなるように設定されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1振れ検出手段の性能は、前記第2振れ検出手段の性能に比べて低いことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1および第2振れ検出手段の性能は、環境温度に対する各振れ検出手段の出力値の基準値の変動量、静止状態における前記出力値の基準値の変動量、および静止状態における前記出力値の所定時間での変化量の少なくとも1つにより決定されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記補償手段は、ローパスフィルタを含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記位相特性は、前記カメラ本体と前記交換レンズとの組み合わせに応じて決定されることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
撮像素子と、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
撮影光学系と、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置とを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の制御装置と、
前記交換レンズの撮影光学系の一部、および前記カメラ本体の撮像素子の少なくとも一方を駆動することで像振れ補正を行う像振れ補正手段とを有することを特徴とするカメラシステム。
【請求項12】
カメラ本体および前記カメラ本体に通信可能に装着される交換レンズの一方である第1装置と、他方である第2装置とを有するカメラシステムを制御する制御方法であって、
前記第1装置に設けられた第1振れ検出手段からの第1振れ信号と前記第2装置に設けられた第2振れ検出手段からの第2振れ信号との位相特性が一致するように、前記第1および第2振れ信号の少なくとも一方を補償して少なくとも1つの補償信号を取得するステップと、
前記第1振れ信号に基づく第1信号、および前記第2振れ信号に基づく第2信号を用いて前記第1振れ信号を補正するステップとを有し、
前記第1および第2信号の少なくとも一方は、前記補償信号であることを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、撮像装置、レンズ装置、カメラシステム、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振れを検出する手段が交換式レンズおよびカメラ本体の少なくとも一方に設けられ、振れに起因する画像の像振れを補正する手段が交換式レンズおよびカメラ本体の少なくとも一方に設けられているレンズ交換式カメラシステムが提案されている。
【0003】
特許文献1には、正確に振れを検出するために、交換レンズおよびカメラ本体のそれぞれの振れ検出手段で検出された振れ量から基準値を引いた値の平均値の差分に基づいて基準値を補正するレンズ交換式カメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のカメラでは、振れ信号に高周波ノイズや、位相のずれが生じた場合、正確に基準値を求めることができない。
【0006】
本発明は、交換レンズおよびカメラ本体の各振れ検出手段の性能差の影響を受けずに振れ補正性能を向上可能な制御装置、撮像装置、レンズ装置、カメラシステム、制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての制御装置は、カメラ本体およびカメラ本体に通信可能に装着される交換レンズの一方である第1装置と、他方である第2装置とを有するカメラシステムを制御する制御装置であって、第1装置に設けられた第1振れ検出手段からの第1振れ信号と第2装置に設けられた第2振れ検出手段からの第2振れ信号との位相特性が一致するように、第1および第2振れ信号の少なくとも一方を補償して少なくとも1つの補償信号を取得する補償手段と、第1振れ信号に基づく第1信号、および第2振れ信号に基づく第2信号を用いて第1振れ信号を補正する補正手段とを有し、第1および第2信号の少なくとも一方は、補償信号であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の側面としての制御方法は、カメラ本体およびカメラ本体に通信可能に装着される交換レンズの一方である第1装置と、他方である第2装置とを有するカメラシステムを制御する制御方法であって、第1装置に設けられた第1振れ検出手段からの第1振れ信号と第2装置に設けられた第2振れ検出手段からの第2振れ信号との位相特性が一致するように、第1および第2振れ信号の少なくとも一方を補償して少なくとも1つの補償信号を取得するステップと、第1振れ信号に基づく第1信号、および第2振れ信号に基づく第2信号を用いて第1振れ信号を補正するステップとを有し、第1および第2信号の少なくとも一方は、補償信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交換レンズおよびカメラ本体の各振れ検出手段の性能差の影響を受けずに振れ補正性能を向上可能な制御装置、撮像装置、レンズ装置、カメラシステム、制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るカメラシステムの中央断面図である。
【
図2】カメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の振れ補正制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例1の振れ信号補正手段の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例1の振れ信号補正手段の構成の変形例を示すブロック図である。
【
図6】実施例1の振れ信号補正手段の構成の変形例を示すブロック図である。
【
図7】実施例1の振れ信号補正手段の構成の変形例を示すブロック図である。
【
図8】実施例1の補正制御器により構成される閉ループ系と補正帯域制限部により決まる周波数特性を示す図である。
【
図9】実施例1の交換レンズ又は撮像装置の振れ検出手段のどちらの振れ信号を補正するかを決定する処理を示すフローチャートである。
【
図10】実施例1のレンズ制御部およびカメラ制御部による振れ補正処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施例1の補正制御器のゲインと補正帯域制限部の制限周波数の設定の変更を説明する図である。
【
図12】実施例1の補正制御器のゲインおよび補正帯域制限部の制限周波数を第1の設定にした場合の振れ信号、および振れ信号補正量の関係の一例を示す図である。
【
図13】実施例1の補正制御器のゲインおよび補正帯域制限部の制限周波数を第2の設定にした場合の振れ信号、および振れ信号補正量の関係の一例を示す図である。
【
図14】実施例1の振れ補正制御部の構成の変形例を示すブロック図である。
【
図15】実施例1の振れ補正制御部の構成の変形例を示すブロック図である。
【
図16】実施例2の振れ補正制御部の構成を示すブロック図である。
【
図17】実施例2の振れ信号補正手段の構成を示すブロック図である。
【
図18】実施例2のレンズ制御部およびカメラ制御部による振れ補正処理を示すフローチャートである。
【
図19】実施例2の振れ補正制御部の構成の変形例を示すブロック図である。
【
図20】実施例2の振れ補正制御部の構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラシステムの中央断面図である。カメラシステムは、撮像装置(カメラ本体)101と、撮像装置101に着脱可能および通信可能に装着される交換レンズ102とを有する。撮像装置101および交換レンズ102の一方は第1装置、他方は第2装置として構成される。撮像装置101と交換レンズ102とは、電気接点107を介して接続されている。撮像装置101は、撮像素子105、および背面表示装置106を有する。交換レンズ102は、複数のレンズからなる撮影光学系103、および撮影光学系103の一部である防振レンズユニット108を有する。
【0013】
図2は、カメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。撮像装置101は、カメラ制御部201、画像処理部202、メモリ手段203、カメラ振れ検出手段204、撮像素子振れ補正手段205、表示手段209、カメラ側操作手段210、および撮像素子位置検出手段214を有する。交換レンズ102は、レンズ制御部206、レンズ振れ検出手段207、レンズ振れ補正手段208、レンズ側操作手段211、レンズ位置検出手段212、および焦点距離変更手段213を有する。
【0014】
カメラシステムは、撮像手段、画像処理手段、記録再生手段、および制御手段を有する。撮像手段は、撮影光学系103、および撮像素子105を含む。画像処理手段は、画像処理部202を含む。記録再生手段は、メモリ手段203、および表示手段209(背面表示装置106、撮像装置101の上面に設けられた撮影情報を表示する不図示の小型表示パネル、およびEVFと呼ばれる不図示の電子ビューファインダーを包含する)を含む。制御手段は、カメラ制御部201、カメラ振れ検出手段204、撮像素子振れ補正手段205、レンズ制御部206、レンズ振れ検出手段207、レンズ振れ補正手段208、カメラ側操作手段210、レンズ側操作手段211、レンズ位置検出手段212、焦点距離変更手段213、および撮像素子位置検出手段214を含む。なお、レンズ制御部206は、防振レンズユニット108の他に、不図示のフォーカスレンズ、絞り、およびズームレンズ等を駆動することも可能である。
【0015】
カメラ振れ検出手段204、およびレンズ振れ検出手段207は、例えば振動ジャイロ等を含み、カメラシステムに加わる撮影光学系103の光軸104に対する回転を検出する。撮像素子振れ補正手段205、およびレンズ振れ補正手段208はそれぞれ、撮像素子105および防振レンズユニット108を光軸104に垂直な平面上でシフト、又はチルト駆動させて像振れを補正する。
【0016】
撮像手段は、物体からの光を、撮影光学系103を介して撮像素子105の撮像面に結像する光学処理系である。撮像素子105からピント評価量/適当な露光量が得られるので、この信号に基づいて撮影光学系103を調整することで、適切な光量の物体光を撮像素子105の撮像面に露光するとともに、撮像素子105の近傍で被写体像が結像する。
【0017】
画像処理部202は、A/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、および補間演算回路等を有し、記録用の画像を生成する。また、色補間処理手段は、画像処理部202に設けられ、ベイヤ配列の信号から色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像を生成する。また、画像処理部202は、画像、動画、および音声等の圧縮を行う。さらに、画像処理部202は撮像素子105から得られた複数の画像間の比較に基づいて振れ信号を生成することも可能であるため、撮像素子105と画像処理部202とでカメラ振れ検出手段204を構成してもよい。
【0018】
カメラ制御部201は、メモリ手段203が備える記録部に出力を行うと共に、表示手段209にユーザーに提示する像を表示する。背面表示装置106は、タッチパネルで構成され、表示手段209とカメラ側操作手段210の役割を兼ねてもよい。
【0019】
カメラ制御部201は、撮像の際のタイミング信号等を生成して出力する。また、カメラ制御部201は、外部操作に応動して撮像手段、画像処理手段、および記録再生手段を制御する。例えば、カメラ制御部201は、シャッターレリーズボタン(不図示)の押下を検出すると、撮像素子105、画像処理部202、および表示手段209を制御する。また、カメラ側操作手段210へのユーザー操作に応じて、カメラ制御部201が撮像装置101の各部の動作を制御することで、静止画および動画の撮影が可能である。
【0020】
以下、撮影光学系103の調整について説明する。カメラ制御部201は、撮像素子105からの信号、およびカメラ側操作手段210による撮影者の操作を基に適切な焦点位置、および絞り位置を求める。カメラ制御部201は、電気接点107を介してレンズ制御部206に指令を出す。レンズ制御部206は、焦点距離変更手段213、および不図示の絞り駆動手段を適切に制御する。
【0021】
振れ補正を行うモードでは、カメラ制御部201は、各振れ検出手段からの振れ信号と各位置検出手段の情報を基に、撮像素子振れ補正手段205およびレンズ振れ補正手段208を制御する。撮像素子振れ補正手段205およびレンズ振れ補正手段208は、例えばマグネットと平板コイルとで実現できる。また、レンズ位置検出手段212および撮像素子位置検出手段214は、例えばマグネットとホール素子とで実現できる。具体的な制御方法としては、まず、カメラ制御部201およびレンズ制御部206はそれぞれ、カメラ振れ検出手段204およびレンズ振れ検出手段207からの振れ信号を取得する。次に、カメラ制御部201およびレンズ制御部206はそれぞれ、取得した振れ信号を基に、像振れを補正するための、撮像素子105および防振レンズユニット108の駆動量を算出する。次に、カメラ制御部201およびレンズ制御部206はそれぞれ、算出した駆動量を撮像素子振れ補正手段205およびレンズ振れ補正手段208に指令値として送信し、撮像素子105および防振レンズユニット108を駆動する。その後、カメラ制御部201およびレンズ制御部206はそれぞれ、レンズ位置検出手段212および撮像素子位置検出手段214で検出した位置が指令値に追従するようにフィードバック制御を行う。
【実施例1】
【0022】
以下、
図3を参照して、本実施例の振れ補正処理について説明する。
図3は、本実施例のレンズ制御部206およびカメラ制御部201からなる振れ補正制御部の構成を示すブロック図である。レンズ制御部206は、加算器301,304、レンズ側目標生成部302、レンズ側補正比率ゲイン303、レンズ側サーボ制御器305、および振れ信号補正手段306を有する。カメラ制御部201は、カメラ側目標生成部307、カメラ側補正比率ゲイン308、加算器309、およびカメラ側サーボ制御器310を有する。
【0023】
本実施例では、レンズ振れ検出手段207およびカメラ振れ検出手段204からの振れ情報に基づいて、レンズ振れ補正手段208および撮像素子振れ補正手段205を同時に駆動する。ここで、レンズ振れ補正手段208および撮像素子振れ補正手段205を同じように駆動させると、実際に検出された振れに対して2重に補正してしまうことになり、逆に画質を悪化させてしまう問題がある。そこで、レンズ側補正比率ゲイン303およびカメラ側補正比率ゲイン308により、実際に検出された振れに対して、レンズ振れ補正手段208および撮像素子振れ補正手段205がどの位ずつ振れ補正を行うかの分担の比率を決める。例えば、レンズ側およびカメラ側の補正比率ゲインをそれぞれ5割に設定すると、それぞれの振れ補正手段は検出された振れの半分ずつを分担して振れ補正を行うことで10割の振れ補正を行うことができる。なお、本実施例では、レンズ側をスレーブ、カメラ側をマスタとして、レンズ側の各種情報、およびカメラ側の各種情報を互いに送受信する。
【0024】
加算器301は、レンズ振れ検出手段207からのレンズ振れ信号から、振れ信号補正手段306による振れ信号補正量を減算する。レンズ側目標生成部302は、不図示の積分器を用いて加算器301からの信号を積分することでレンズ振れ補正手段208に対する振れ補正量(レンズ目標値)を算出する。レンズ側補正比率ゲイン303では、レンズ側目標生成部302により算出された振れ補正量に所定のゲインが乗算される。このように得られた所定の割合の振れ補正目標値は加算器304に入力される。加算器304は、レンズ側補正比率ゲイン303からの振れ補正目標値からレンズ位置検出手段212による位置情報を減算する。レンズ側サーボ制御器305は、加算器304からの信号に基づき、レンズ振れ補正手段208を駆動させるための駆動信号を生成し、駆動する。このように、レンズ振れ検出手段207で検出された振れのうちレンズ側補正比率ゲイン303により設定された所定の割合の振れをレンズ振れ補正手段208により防振レンズユニット108を駆動させることで補正する。なお、レンズ側サーボ制御器305は、PID制御器のようなフィードバック制御器で構成される。
【0025】
カメラ側目標生成部307は、不図示の積分器を用いてカメラ振れ検出手段204からのカメラ振れ信号を積分することで撮像素子振れ補正手段205に対する振れ補正量(カメラ目標値)を算出する。カメラ側補正比率ゲイン308では、カメラ側目標生成部307により算出された振れ補正量に所定のゲインが乗算される。このように得られた所定の割合の振れ補正目標値は加算器309に入力される。加算器309は、カメラ側補正比率ゲイン308からの振れ補正目標値から撮像素子位置検出手段214による位置情報を減算する。カメラ側サーボ制御器310は、加算器309からの信号に基づき、撮像素子振れ補正手段205を駆動させるための駆動信号を生成し、駆動する。このように、カメラ振れ検出手段204で検出された振れのうちカメラ側補正比率ゲイン308により設定された所定の割合の振れを撮像素子振れ補正手段205により撮像素子105を駆動させることで補正する。
【0026】
レンズ振れ検出手段207およびカメラ振れ検出手段204のそれぞれが撮像装置101の振れを正しく検出できていれば、レンズ振れ補正手段208および撮像素子振れ補正手段205を所定の割合で同時に駆動することで良好に振れ補正を行うことができる。しかしながら、実際のカメラシステムでは、交換レンズ102および撮像装置101の組み合わせによって、レンズ振れ検出手段207およびカメラ振れ検出手段204の検出性能に差がある場合が多い。検出性能の差とは、例えばそれぞれの検出手段の同じ振れに対する出力の差(感度差)や低周波な揺れに対する検出性能等である。低周波な揺れに対する検出性能とは、角速度センサの特性としての環境温度に対する出力値の基準値の変動量(温度ドリフト)、静止状態における出力値の基準値の変動量(低周波揺らぎ)、および静止状態における出力値の所定時間の変化量等である。このように交換レンズ102および撮像装置101に搭載された振れ検出手段の検出性能に差がある場合、各振れ補正手段が同時に駆動されると、あらかじめ決められた分担割合で駆動されず良好に振れ補正を行うことができない。
【0027】
そこで、本発明では、良好に振れ補正を行うために、振れ信号補正手段306を用いて性能の低い振れ検出手段からの信号を性能の高い振れ検出手段からの信号を用いて補正する。
【0028】
以下、
図4を参照して、振れ信号補正手段306による振れ検出手段からの振れ信号の補正処理について説明する。
図4は、振れ信号補正手段306の構成を示すブロック図である。振れ信号補正手段306は、レンズ振れ信号補償部401、加算器402,405、積分器403,407、補正制御器404、カメラ振れ信号補償部406、および補正帯域制限部(制限手段)408を有する。
【0029】
レンズ振れ信号補償部401は、レンズ振れ検出手段207からのレンズ振れ信号の位相特性を補償する。加算器402は、レンズ振れ信号補償部401からの補償信号から補正制御器404により算出した振れ信号補正量を減算する。積分器403は、加算器402からの信号を積分する。カメラ振れ信号補償部406は、カメラ振れ検出手段204からのカメラ振れ信号の位相特性を補償する。積分器407は、カメラ振れ信号補償部406からの補償信号を積分する。加算器405は、積分器403から出力された積分値から積分器407から出力された積分値を減算することで差分値を算出する。補正制御器404は、加算器405から出力された差分値からレンズ振れ検出手段207により検出される振れ角度とカメラ振れ検出手段204から算出される振れ角度との差が小さくなるように振れ信号補正量を算出し、加算器402に入力する。補正制御器404はフィードバック制御器(ネガティブフィードバック)であり、例えば比例制御器および積分制御器で構成されるPI制御を行うフィードバック制御器で構成される。
【0030】
補正帯域制限部408は、ローパスフィルタ等で構成され、振れ信号補正量の低周波成分を抽出する。
【0031】
加算器301は、レンズ振れ信号から補正帯域制限部408により帯域制限した振れ信号補正量を減算することで、レンズ振れ信号の低周波成分を補正する。レンズ側目標生成部302は、低周波成分が補正されたレンズ振れ信号を取得し、レンズ振れ補正手段208の目標値を生成する。
【0032】
以下、レンズ振れ信号補償部401、およびカメラ振れ信号補償部406について説明する。レンズ振れ信号T1とカメラ振れ信号T2は、デジタルフィルタ特性やアナログ回路特性、およびADコンバータのサンプリング周波数等の影響により位相特性の異なる信号となる。この場合、位相ずれの影響により正確に振れ信号補正量を算出することができない。
【0033】
そこで、本実施例では、レンズ振れ信号補償部401とカメラ振れ信号補償部406によって、レンズ振れ信号T1とカメラ振れ信号T2の位相特性が一致するように各信号が補償される。なお、「一致」には、実質的に一致する(略一致である)場合も含まれる。レンズ振れ信号補償部401とカメラ振れ信号補償部406は、ローパスフィルタ等で構成される。ここで、各信号の補償後の位相特性は、予め定められた所定の特性としてもよい。また、撮像装置101の種類と交換レンズ102の種類との組み合わせにより決定される特性としてもよい。この場合、撮像装置101と交換レンズ102を判別できるID等を参照して、レンズ振れ信号補償部401とカメラ振れ信号補償部406の設定を変更すればよい。また、所定の特性をカメラ制御部201等が決定するようにして、システム起動時に電気接点107を介した通信によりレンズ制御部206に通知するようにしてもよい。
【0034】
振れ信号補正手段306の変形例として、カメラ振れ信号補償部406をカメラ制御部201内に設けて、補償後のカメラ振れ信号T2を、電気接点107を介した通信によってレンズ制御部206に送信するようにしてもよい。
【0035】
また、レンズ振れ信号T1に対してカメラ振れ信号T2の位相が遅れている場合、
図5に示されるようにカメラ振れ信号補償部406を設ける必要はない。この場合、レンズ振れ信号補償部401は、レンズ振れ信号T1の位相特性をカメラ振れ信号T2の位相特性に合わせるようにレンズ振れ信号T1を補償する。
【0036】
また、カメラ振れ信号T2に対してレンズ振れ信号T1の位相が遅れている場合、
図6に示されるようにレンズ振れ信号補償部401を設ける必要はない。この場合、カメラ振れ信号補償部406は、カメラ振れ信号T2の位相特性をレンズ振れ信号T1の位相特性に合わせるようにカメラ振れ信号T2を補償する。
【0037】
また、本実施例の他の変形例として、
図7に示されるようにレンズ振れ信号T1がレンズ振れ信号補償部701とレンズ側目標生成用補償部702によって異なる位相特性になるように補償してもよい。これにより、振れ信号補正処理と振れ補正処理のそれぞれに適切な特性の振れ信号を使用することができる。
【0038】
なお、
図4乃至7に示した各構成は、本発明の効果を得るための一例であって、本発明はこれに限られない。
図4乃至7の各構成を組み合わせて用いることもできる。加算器405に入力される各信号の位相特性が一致するように予め位相特性を補償するようにしさえすれば、どのような構成を採ってもよい。
【0039】
このように、本実施例およびその変形例では、レンズ振れ検出手段207からのレンズ振れ信号を、振れ信号補正手段306により得られた振れ信号補正量を用いて補正する。振れ信号補正量はレンズ振れ検出手段207の出力に基づく信号(第1信号)と、カメラ振れ検出手段204の出力に基づく信号(第2信号)を比較することによって算出される。このとき、第1信号と第2信号の少なくとも一方は、レンズ振れ検出手段207の出力に基づく振れ信号とカメラ振れ検出手段204の出力に基づく振れ信号の位相特性が一致するように位相特性が補償される。
【0040】
以下、
図8を参照して、レンズ振れ補正手段208の目標値補正の周波数特性について説明する。
図8は、補正制御器404により構成される閉ループ系と補正帯域制限部408により決まる周波数特性を示す図である。上図はゲイン特性、下図は位相特性を示している。
【0041】
図8(a)は、補正制御器404のゲインと補正帯域制限部408の制限周波数(カットオフ周波数)が第1の設定である場合の特性を示している。レンズ振れ信号T1から低周波成分が補正されたレンズ振れ信号出力T3までの伝達特性は、L2およびL3の点線で表されている。また、カメラ振れ信号T2から低周波成分が補正されたレンズ振れ信号出力T3の出力までの伝達特性は、L1およびL4の実線で表されている。
【0042】
図8(b)は、補正制御器404のゲインと補正帯域制限部408の制限周波数が第2の設定である場合の特性を示している。第2の設定は、第1の設定に比べて補正制御器404のゲインと補正帯域制限部408の制限周波数が低い。レンズ振れ信号T1から低周波成分が補正されたレンズ振れ信号出力T3までの伝達特性は、L6およびL7の点線で表されている。また、カメラ振れ信号T2の出力から低周波成分が補正されたレンズ振れ信号T3の出力までの伝達特性は、L5およびL8の実線で表されている。
【0043】
図8のゲイン特性に示されるように、実線で示されるカメラ振れ信号T2から低周波成分が補正されたレンズ振れ信号出力T3までの伝達特性は、ローパスフィルタの特性に近く、カメラ振れ信号の低周波成分を通過させ、高周波成分を遮断する。また、点線で示されるレンズ振れ信号T1から低周波成分が補正されたレンズ振れ信号出力T3までの伝達特性は、ハイパスフィルタの特性に近く、レンズ振れ信号の低周波成分を遮断し、高周波成分を通過させる。低周波成分が補正されたレンズ振れ信号出力はT1からT3およびT2からT3の周波数特性の信号の合成となっており、これらの信号の合成により全周波数帯域の信号を再現している。すなわち、低周波成分が補正されたレンズ振れ信号出力の特性は、補正制御器404により構成される閉ループ系と補正帯域制限部408により決まる周波数伝達特性をKとしたとき、以下の式(1)のように近似して表すことができる。
【0044】
低周波補正後レンズ振れ信号出力=(1-K)×レンズ振れ信号+K×カメラ振れ信号 (1)
レンズ振れ信号の高周波成分とカメラ振れ信号の低周波成分を周波数で分離し合成することで、低周波振れ検出性能の低いレンズ振れ信号の低周波成分を低周波振れ検出性能の高いカメラ振れ信号の低周波成分で補うことができる。ここで、補正制御器404のゲインを高く、また補正帯域制限部408の制限周波数を高くすればするほど、レンズ振れ信号の高周波成分とカメラ振れ信号の低周波成分の分離周波数は高くなる。すなわち、低周波成分が補正されたレンズ振れ信号の低周波成分では、より積極的にカメラ振れ信号が使用されていることになる。
【0045】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、低周波振れ検出性能の低いレンズ振れ信号の低周波成分を低周波振れ検出性能の高いカメラ振れ信号の低周波成分で補うことができる。また、補正制御器404のゲインと補正帯域制限部408の制限周波数を変更することで、低周波振れ検出性能の高いカメラ振れ信号を低周波振れ検出性能の低いレンズ振れ信号の代わりに使用する周波数帯域を変更することも可能である。
【0046】
以下、
図9および
図10を参照して、本実施例の振れ補正処理について説明する。
図9は、交換レンズ102又は撮像装置101の振れ検出手段のどちらの振れ信号を補正するかを決定する処理を示すフローチャートである。
図10は、レンズ制御部206およびカメラ制御部201による振れ補正処理を示すフローチャートである。
図9および
図10のフローは、並列に実行される。また、
図9および
図10の処理は、一定の周期で繰り返し実行される。
【0047】
ステップS901により処理が開始されると、ステップS902ではカメラ側操作手段210により電源が投入されたかどうかが判断される。電源が投入された場合、ステップS903に進み、そうでない場合、ステップS907に進み、本フローを終了する。
【0048】
ステップS903では、カメラ側操作手段210又はレンズ側操作手段211により振れ補正機能がONされたかどうかが判断される。ONされた場合、ステップS904に進み、そうでない場合、ステップS907に進み、本フローを終了する。
【0049】
ステップS904では、レンズ振れ検出手段207の性能情報が取得される。
【0050】
ステップS905では、カメラ振れ検出手段204の性能がレンズ振れ検出手段207の性能より高いかどうかが判断される。ここで、振れ検出手段の性能情報とは、例えば角速度センサの温度ドリフト性能、低周波揺らぎ性能、基準信号オフセット量等の低周波振れ検出性能に関する情報、又は角速度センサの製品型番等の角速度センサを識別するための情報である。カメラ振れ検出手段204の性能がレンズ振れ検出手段207の性能より高い場合、ステップS906に進み、そうでない場合、ステップS908に進む。
【0051】
本実施例では、ステップS906でレンズ振れ検出手段補正モードに設定された場合の動作について説明し、ステップS908でカメラ振れ検出手段補正モードに設定された場合の動作について実施例2で説明する。
【0052】
ステップS906でレンズ振れ検出手段補正モードに設定されると、
図10のステップS1001およびステップS1011によりレンズ側振れ補正処理およびカメラ側振れ補正処理が開始される。
【0053】
ステップS1002では、レンズ制御部206は、レンズ振れ検出手段207からレンズ振れ信号を取得する。
【0054】
ステップS1003では、レンズ制御部206は、カメラ制御部201から送信されたカメラ振れ信号を受信する。
【0055】
ステップS1004では、レンズ制御部206は、振れ信号補正手段306によりレンズ振れ信号補正量を算出する。
【0056】
ステップS1005では、レンズ制御部206は、レンズ振れ信号からレンズ振れ信号補正量を減算する。これにより、レンズ振れ信号の低周波成分がカメラ振れ信号で補正される。
【0057】
ステップS1006では、レンズ制御部206は、レンズ側目標生成部302にて低周波成分が補正されたレンズ振れ信号を用いてレンズ目標値を算出する。
【0058】
ステップS1007では、レンズ制御部206は、レンズ側補正比率ゲイン303にてレンズ目標値にレンズ振れ補正手段208の補正割合を決定するレンズ補正比率ゲインを乗算する。
【0059】
ステップS1008では、レンズ制御部206は、レンズ位置検出手段212からレンズ振れ補正手段208の位置を取得する。
【0060】
ステップS1009では、レンズ制御部206は、レンズ側サーボ制御器305にてレンズ補正比率ゲインが掛けられたレンズ目標値とレンズ振れ補正手段208の位置情報とを用いてレンズ振れ補正量を算出する。
【0061】
ステップS1010では、レンズ制御部206は、レンズ振れ補正量に応じてレンズ振れ補正手段208を駆動することで振れ補正を行う。
【0062】
一方、レンズ側の振れ補正処理と並行してステップS1011よりカメラ側の振れ補正処理が実行される。
【0063】
ステップS1012では、カメラ制御部201は、カメラ振れ検出手段204からカメラ振れ信号を取得する。
【0064】
ステップS1013では、カメラ制御部201は、レンズ制御部206にカメラ振れ信号を送信する。
【0065】
ステップS1014では、カメラ制御部201は、カメラ側目標生成部307にてカメラ振れ信号を用いてカメラ目標値を算出する。
【0066】
ステップS1015では、カメラ制御部201は、カメラ側補正比率ゲイン308にてカメラ目標値に撮像素子振れ補正手段205の補正割合を決定するカメラ補正比率ゲインを乗算する。
【0067】
ステップS1016では、カメラ制御部201は、撮像素子位置検出手段214から撮像素子振れ補正手段205の位置を取得する。
【0068】
ステップS1017では、カメラ制御部201は、カメラ側サーボ制御器310にてカメラ補正比率ゲインが掛けられたカメラ目標値と撮像素子振れ補正手段205の位置情報とを用いてカメラ振れ補正量を算出する。
【0069】
ステップS1018では、カメラ制御部201は、カメラ振れ信号補正量に応じて撮像素子振れ補正手段205を駆動することで振れ補正を行う。
【0070】
以上説明したように、レンズ振れ補正手段208および撮像素子振れ補正手段205を交換レンズ102および撮像装置100の各振れ検出手段から取得した振れ信号に対して所定の比率で同時に駆動することで振れ補正を行うことができる。
【0071】
以下、
図11を参照して、補正制御器404のゲインと補正帯域制限部408の制限周波数の設定の変更について説明する。
【0072】
図11(a),(b)は、交換レンズ102と撮像装置101との間の通信周期と、補正制御器404のゲイン又は補正帯域制限部408の制限周波数との関係を示している。本実施例では、電気接点107を介して通信によりカメラ振れ信号をレンズ制御部206に送信するため、通信周期が長くなる(遅くなる)につれてカメラ振れ信号に実際の振れに対して時間遅れが発生する。レンズ振れ信号から受信したカメラ振れ信号を減算する際に、カメラ振れ信号の通信による位相遅れによってレンズ振れ信号とカメラ振れ信号との間に位相ずれが発生する。位相ずれの影響は、振れ信号の周波数が高くなればなるほど大きくなる。そのため、より高い周波数帯域まで位相ずれの発生したカメラ振れ信号でレンズ振れ信号を補正してしまうと、高周波な振れ信号に検出誤差が発生してしまう。そこで、通信周期が長くなればなるほど、補正制御器404のゲインを小さくし、補正帯域制限部408の制限周波数を低く設定する。
【0073】
図11(c),(d)は、カメラ振れ検出手段204の低周波ノイズ(温度ドリフト、基準値オフセット、および揺らぎ量)と、補正制御器404のゲイン又は補正帯域制限部408の帯域周波数との関係を示している。本実施例では、低周波振れ検出性能の低いレンズ振れ信号を低周波振れ検出性能の高いカメラ振れ信号で補正する。そのため、カメラ振れ検出手段204の内部温度が高くなる等の要因によってカメラ振れ検出手段204の低周波の温度ドリフトや揺らぎ量が大きくなると、レンズ振れ信号の低周波成分が誤って補正される恐れがある。そこで、カメラ振れ検出手段204の低周波ノイズが大きくなるほど、補正制御器404のゲインを小さくし、補正帯域制限部408の制限周波数を低く設定する。
【0074】
以上説明したように、条件によって、補正制御器404のゲインおよび補正帯域制限部408の制限周波数の帯域の設定を変更することで、振れ検出性能を向上させることができると共に、振れ補正性能を向上させることが可能である。
【0075】
以下、本発明の効果について説明する。
図12は、補正制御器404のゲインおよび補正帯域制限部408の制限周波数を第1の設定にした場合の振れ信号、および振れ信号補正量の関係の一例を示す図である。
【0076】
図12(a)において、横軸は時間、縦軸は角度振れ量のデジタル値である。点線で示されるL9はレンズ振れ検出手段207によって検出されたレンズ振れ信号である。実線で示されるL10は、カメラ振れ検出手段204によって検出されたカメラ振れ信号である。一点鎖線で示されるL11は、振れ信号補正手段306により算出された振れ信号補正量である。レンズ振れ信号L9は、カメラ振れ信号L10に対して、基準値のオフセットずれ(波形の振れ基準値が0から+方向にずれている)、かつ位相のずれがある。振れ信号補正量L11は、時刻0でのレンズ振れ信号L9とカメラ振れ信号L10との基準値のオフセットずれ量、および2つの信号の位相ずれ成分の高周波までの誤差量を考慮して算出される。
【0077】
図12(b)において、横軸は時間、縦軸は角度振れ量のデジタル値である。一点鎖線で示されるL12は、振れ信号補正量で補正されたレンズ振れ信号を用いてレンズ側目標生成部302により算出されたレンズ目標値である。実線で示されるL13は、カメラ振れ信号を用いてカメラ側目標生成部307により算出したカメラ目標値である。点線で示されるL14は、振れ信号補正量で補正しないレンズ振れ信号を用いてレンズ側目標生成部302により算出されたレンズ目標値である。点線で示されるレンズ目標値L14は、レンズ振れ信号の持つ低周波ノイズの影響でレンズ側目標生成部302内の積分誤差によってドリフトしている。一方、一点鎖線で示されるレンズ目標値L12は、カメラ目標値とほぼ一致している。
【0078】
図12(c)において、横軸は時間、縦軸は角度振れ補正残り量のデジタル値である。点線で示されるL15は、実際の振れ信号と振れ信号補正量で補正しない場合のレンズ目標値との差分である補正残り信号である。実線で示されるL16は、実際の振れ信号と振れ信号補正量で補正した場合のレンズ目標値との差分である補正残り信号である。補正残り信号L15はレンズ目標値の積分ドリフト誤差の影響で大きく発生しているが、補正残り信号L16はほぼ発生していない。すなわち、振れ信号補正量で振れ信号を補正することで、良好に振れ補正を実現することができる。
【0079】
図13は、補正制御器404のゲインおよび補正帯域制限部408の制限周波数を第1の設定に比べて低い第2の設定にした場合の振れ信号、および振れ信号補正量の関係の一例を示す図である。L17-L24はそれぞれ、L9-L16に相当する。第2の設定では、第1の設定に対して、補正制御器404のゲイン、および補正帯域制限部408の制限周波数を低くしているため、レンズ振れ信号の低周波成分をカメラ振れ信号の低周波成分で補正する周波数帯域が低くなっている。そのため、補正残り信号L24には、レンズ振れ信号の持つ低周波揺らぎ成分を除去しきれず、振れ補正残りが補正残り信号L17に比べて発生している。
【0080】
以上説明したように本実施例の構成によれば、振れ信号補正手段306によって低周波振れ検出性能の低いレンズ振れ信号の低周波成分を低周波振れ検出性能の高いカメラ振れ信号の低周波成分で補うことができるため、振れ補正性能を向上させることができる。また、補正制御器404のゲインと補正帯域制限部408の制限周波数を変更することで、低周波振れ検出性能の高いカメラ振れ信号を低周波振れ検出性能の低いレンズ振れ信号の代わりに使用する周波数帯域を変更することが可能である。そのため、振れ検出手段のノイズ状況によらず振れ補正性能を向上させることができる。
(実施例1の変形例)
以下、実施例1の変形例について説明する。主要な構成は
図3で示したものと同じであるため、異なる点のみ説明する。本変形例では、振れ補正手段として、レンズ振れ補正手段208のみが設けられている。
【0081】
図14および
図15は、実施例1の振れ補正制御部の構成の変形例を示すブロック図である。
図14では、振れ信号補正手段306は、レンズ制御部206内に設けられている。また、レンズ振れ補正手段208のみで振れ補正が行われるため、補正割合を決めるためのレンズ側補正比率ゲイン303は設けられていない。
【0082】
図15では、振れ信号補正手段306は、カメラ制御部201内に設けられている。レンズ制御部206の処理負荷や能力の制約によっては振れ信号補正手段306をカメラ制御部201内に設けても本発明の効果を得ることができる。ただし、この構成では、カメラ制御部201は通信によってレンズ振れ信号を取得し、算出した振れ信号補正量をレンズ制御部206に送信する必要があるため、通信による遅れの影響を受けやすい。
【実施例2】
【0083】
本実施例では、
図9のステップS908でカメラ振れ検出手段補正モードに設定された場合の動作について説明する。本実施例では、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。
【0084】
図16は、本実施例のレンズ制御部206およびカメラ制御部201からなる振れ補正制御部の構成を示すブロック図である。
図17は、カメラ制御部201に設けられた振れ信号補正手段1601の構成を示すブロック図である。
【0085】
実施例1ではレンズ振れ信号がカメラ振れ信号で補正されるように、振れ信号補正量はレンズ振れ信号に加算されるが、本実施例ではカメラ振れ信号がレンズ振れ信号で補正されるように振れ信号補正量は加算器1602によりカメラ振れ信号に加算される。そして、補正されたカメラ振れ信号を用いて、撮像素子振れ補正手段205に対するカメラ目標値が算出される。
【0086】
図18は、レンズ制御部206およびカメラ制御部201による振れ補正処理を示すフローチャートである。ステップS1801およびステップS1809によりレンズ側振れ補正処理およびカメラ側振れ補正処理が開始される。
【0087】
ステップS1802、ステップS1804-S1808の処理はそれぞれ、
図10のステップS1002、ステップS1006-S1010の処理と同様であるため、各処理の詳細な説明は省略する。
【0088】
ステップS1803では、レンズ制御部206は、カメラ制御部201にレンズ振れ信号を送信する。
【0089】
ステップS1810、ステップS1814-S1818の処理はそれぞれ、
図10のステップS1012、ステップS1014-S1018の処理と同様であるため、各処理の詳細な説明は省略する。
【0090】
ステップS1811では、カメラ制御部201は、レンズ制御部206から送信されたレンズ振れ信号を受信する。
【0091】
ステップS1812では、カメラ制御部201は、振れ信号補正手段1601によりカメラ振れ信号補正量を算出する。
【0092】
ステップS1813では、カメラ制御部201は、カメラ振れ信号からカメラ振れ信号補正量を減算する。
【0093】
以上説明したように本実施例の構成によれば、振れ信号補正手段1601によって低周波振れ検出性能の低いカメラ振れ信号の低周波成分を低周波振れ検出性能の高いレンズ振れ信号の低周波成分で補うことができるため、振れ補正性能を向上させることができる。
(実施例2の変形例)
以下、実施例2の変形例について説明する。主要な構成は
図16で示したものと同じであるため、異なる点のみ説明する。本変形例では、振れ補正手段として撮像素子振れ補正手段205のみが設けられている。
【0094】
図19および
図20は、実施例2の振れ補正制御部の構成の変形例を示すブロック図である。
図19では、振れ信号補正手段1601は、カメラ制御部201内に設けられている。また、撮像素子振れ補正手段205のみで振れ補正が行われるため、補正割合を決めるためのカメラ側補正比率ゲイン308は設けられていない。
【0095】
図20では、振れ信号補正手段1601は、レンズ制御部206内に設けられている。カメラ制御部201の処理負荷や能力の制約によっては振れ信号補正手段1601をレンズ制御部206内に設けても本発明の効果を得ることができる。ただし、この構成では、レンズ制御部206は通信によってカメラ振れ信号を取得し、算出した振れ信号補正量をカメラ制御部201に送信する必要があるため、通信による遅れの影響を受けやすい。
[その他の実施例]
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
101 撮像装置(カメラ本体)
102 交換レンズ
201 カメラ制御部(制御装置)
204 カメラ振れ検出手段
206 レンズ制御部(制御装置)
207 レンズ振れ検出手段
306 振れ信号補正手段(補正手段)
401 レンズ振れ信号補償部(補償手段)
406 カメラ振れ信号補償部(補償手段)
1601 振れ信号補正手段(補正手段)