(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電力制御装置および電力制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20240311BHJP
H02J 3/28 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H02P9/04 B
H02J3/28
(21)【出願番号】P 2020088801
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠 清志
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 秀行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】松村 彰子
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163745(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084288(WO,A1)
【文献】特開2007-037226(JP,A)
【文献】特開2010-084545(JP,A)
【文献】特開2013-078195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02P9/00-9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体のエネルギーを回転エネルギーに変換する原動機または回転エネルギーを流体のエネルギーに変換する流体機械と、前記原動機に機械的に接続され当該原動機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する回転電機または前記流体機械に接続され電気エネルギーを回転エネルギーに変換する回転電機と、前記原動機の流量調整手段または整流手段の開度を調整する調速手段と、前記回転電機の電気的諸量を制御し前記回転電機の有効電力もしくは回転速度を制御する電力変換手段とを備えた設備に適用される、電力制御装置であって、
前記設備に対する発電出力の指令値を示す出力指令値又は
前記設備に対する揚水入力の指令値を示す入力指令値と
前記設備に対する充電又は放電の指令値である充放電指令値とを入力し、入力した前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
第1の有効電力指令値を演算した上で、さらに前記第1の有効電力指令値を用いて、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の特徴の両方を含む第2の有効電力指令値を演算するとともに、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の両方を含むが当該充放電指令値の特徴が抑制される第3の有効電力指令値を演算する有効電力指令値演算手段と、
前記有効電力指令値演算手段により演算された
前記第2の有効電力指令値を用いて、前記電力変換手段に与える電力変換制御指令値を演算する電力変換制御指令値演算手段と、
前記有効電力指令値演算手段により演算された
前記第3の有効電力指令値を用いて、前記調速手段に与える調速制御指令値を演算する調速制御指令値演算手段と、
を具備する、電力制御装置。
【請求項2】
前記電力変換手段は、前記回転電機の二次電流および/または二次電圧を制御し前記回転電機の回転速度もしくは出力を制御する二次電流および/または二次電圧の制御手段を含み、
前記電力変換制御指令値演算手段は、
前記有効電力指令値演算手段により演算された
前記第2の有効電力指令値を用いて、前記二次電流および/または二次電圧の制御手段に与える二次電流および/または二次電圧の指令値を演算する二次電流/二次電圧指令値演算手段を含む、
請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理手段と、
前記信号処理手段から出力される高周波成分が低減または除去された信号を用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記偏差を用いて、前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理手段と、
前記信号処理手段から出力される高周波成分が低減または除去された信号を用いて、前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記偏差を用いて、前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理手段と、
前記信号処理手段から出力される高周波成分が低減または除去された信号を用いて、前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転電機の回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理手段と、
前記回転速度指令値と前記信号処理手段から出力される高周波成分が低減または除去された信号との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記回転速度偏差演算手段の出力を入力し、前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去し、この高周波成分が低減または除去された信号を、前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を補正するための補正信号として出力する信号処理手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて前記第3の有効電力指令値を生成し、前記高周波成分が低減または除去された信号を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転電機の回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理手段と、
前記回転速度指令値と前記信号処理手段から出力される高周波成分が低減または除去された信号との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を生成し、前記回転速度偏差演算手段の出力を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項10】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算手段と、
前記充放電指令値、前記第1の有効電力指令値、前記第2の有効電力指令値、前記偏差または前記回転速度測定値の所定の周波数以下または未満の低周波成分を低減または除去した信号を生成し、その信号を用いて有効電力指令値を補正する信号を出力する有効電力指令値補正手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を生成し、前記有効電力指令値補正手段の出力を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項11】
前記有効電力指令値演算手段は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算手段と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算手段で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算手段と、
前記充放電指令値、前記第1の有効電力指令値、前記第2の有効電力指令値または前記回転電機の回転速度測定値の所定の周波数以下または未満の低周波成分を低減または除去した信号を生成し、その信号を用いて回転速度偏差を補正する信号を出力する回転速度偏差補正手段と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算し、前記回転速度偏差補正手段の出力を用いて当該回転速度偏差の値を補正して出力する回転速度偏差演算手段と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて前記調速制御指令値演算手段で使用される
前記第3の有効電力指令値を生成し、前記回転速度偏差演算手段の出力を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算手段と、
を含む、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項12】
流体のエネルギーを回転エネルギーに変換する原動機または回転エネルギーを流体のエネルギーに変換する流体機械と、前記原動機に機械的に接続され当該原動機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する回転電機または前記流体機械に接続され電気エネルギーを回転エネルギーに変換する回転電機と、前記原動機の流量調整手段または整流手段の開度を調整する調速手段と、前記回転電機の電気的諸量を制御し前記回転電機の有効電力もしくは回転速度を制御する電力変換手段とを備えた設備に適用される、電力制御方法であって、
前記設備に対する発電出力の指令値を示す出力指令値又は
前記設備に対する揚水入力の指令値を示す入力指令値と
前記設備に対する充電又は放電の指令値である充放電指令値とを入力し、入力した前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
第1の有効電力指令値を演算した上で、さらに前記第1の有効電力指令値を用いて、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の特徴の両方を含む第2の有効電力指令値を演算するとともに、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の両方を含むが当該充放電指令値の特徴が抑制される第3の有効電力指令値を演算する有効電力指令値演算工程と、
前記有効電力指令値演算工程で演算された
前記第2の有効電力指令値を用いて、前記電力変換手段に与える電力変換制御指令値を演算する電力変換制御指令値演算工程と、
前記有効電力指令値演算工程で演算された
前記第3の有効電力指令値を用いて、前記調速手段に与える調速制御指令値を演算する調速制御指令値演算工程と、
を含む、電力制御方法。
【請求項13】
前記電力変換手段は、前記回転電機の二次電流および/または二次電圧を制御し前記回転電機の回転速度もしくは出力を制御する二次電流および/または二次電圧の制御手段を含み、
前記電力変換制御指令値演算工程は、
前記有効電力指令値演算工程で演算された
前記第2の有効電力指令値を用いて、前記二次電流および/または二次電圧の制御手段に与える二次電流および/または二次電圧の指令値を演算する二次電流/二次電圧指令値演算工程を含む、
請求項12に記載の電力制御方法。
【請求項14】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理工程と、
前記信号処理工程から出力される高周波成分が低減または除去された信号を用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記偏差を用いて、前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項15】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理工程と、
前記信号処理工程から出力される高周波成分が低減または除去された信号を用いて、前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項16】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記偏差を用いて、前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項17】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理工程と、
前記信号処理工程から出力される高周波成分が低減または除去された信号を用いて、前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項18】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転電機の回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理工程と、
前記回転速度指令値と前記信号処理工程から出力される高周波成分が低減または除去された信号との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記回転速度偏差演算工程の出力を入力し、前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を演算する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項19】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去し、この高周波成分が低減または除去された信号を、前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を補正するための補正信号として出力する信号処理工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて前記第3の有効電力指令値を生成し、前記高周波成分が低減または除去された信号を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項20】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転電機の回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去する信号処理工程と、
前記回転速度指令値と前記信号処理工程から出力される高周波成分が低減または除去された信号との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を生成し、前記回転速度偏差演算工程の出力を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項21】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算する回転速度偏差演算工程と、
前記充放電指令値、前記第1の有効電力指令値、前記第2の有効電力指令値、前記偏差または前記回転速度測定値の所定の周波数以下または未満の低周波成分を低減または除去した信号を生成し、その信号を用いて有効電力指令値を補正する信号を出力する有効電力指令値補正工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて前記調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を生成し、前記有効電力指令値補正工程の出力を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項22】
前記有効電力指令値演算工程は、
前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
前記第1の有効電力指令値を演算する第1の有効電力指令値演算工程と、
前記第1の有効電力指令値と前記回転電機の有効電力測定値とを用いて、前記電力変換制御指令値演算工程で使用される
前記第2の有効電力指令値を演算する第2の有効電力指令値演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値と落差とを用いて、前記原動機の回転速度指令値を演算する回転速度指令値演算工程と、
前記充放電指令値、前記第1の有効電力指令値、前記第2の有効電力指令値または前記回転電機の回転速度測定値の所定の周波数以下または未満の低周波成分を低減または除去した信号を生成し、その信号を用いて回転速度偏差を補正する信号を出力する回転速度偏差補正工程と、
前記回転速度指令値と前記回転電機の回転速度測定値との偏差を演算し、前記回転速度偏差補正工程の出力を用いて当該回転速度偏差の値を補正して出力する回転速度偏差演算工程と、
前記出力指令値又は前記入力指令値を用いて調速制御指令値演算工程で使用される
前記第3の有効電力指令値を生成し、前記回転速度偏差演算工程の出力を用いて当該第3の有効電力指令値を補正して出力する第3の有効電力指令値演算工程と、
を含む、請求項12又は13に記載の電力制御方法。
【請求項23】
物質のエネルギーを回転エネルギーに変換する原動機と、前記原動機に機械的に接続され当該原動機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する回転電機と、前記原動機の物質の量を調整する物質量調整手段と、前記回転電機の電気的諸量を制御し前記回転電機の有効電力もしくは回転速度を制御する電力変換手段とを備えた設備に適用される、電力制御装置であって、
前記設備に対する発電出力の指令値を示す出力指令値又は
前記設備に対する揚水入力の指令値を示す入力指令値と
前記設備に対する充電又は放電の指令値である充放電指令値とを入力し、入力した前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
第1の有効電力指令値を演算した上で、さらに前記第1の有効電力指令値を用いて、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の特徴の両方を含む第2の有効電力指令値を演算するとともに、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の両方を含むが当該充放電指令値の特徴が抑制される第3の有効電力指令値を演算する有効電力指令値演算手段と、
前記有効電力指令値演算手段により演算された
前記第2の有効電力指令値を用いて、前記電力変換手段に与える電力変換制御指令値を演算する電力変換制御指令値演算手段と、
前記有効電力指令値演算手段により演算された
前記第3の有効電力指令値を用いて、前記物質量調整手段に与える調速制御指令値を演算する調速制御指令値演算手段と、
を具備する、電力制御装置。
【請求項24】
物質のエネルギーを回転エネルギーに変換する原動機と、前記原動機に機械的に接続され当該原動機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する回転電機と、前記原動機の物質の量を調整する物質量調整手段と、前記回転電機の電気的諸量を制御し前記回転電機の有効電力もしくは回転速度を制御する電力変換手段とを備えた設備に適用される、電力制御方法であって、
前記設備に対する発電出力の指令値を示す出力指令値又は
前記設備に対する揚水入力の指令値を示す入力指令値と
前記設備に対する充電又は放電の指令値である充放電指令値とを入力し、入力した前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、
第1の有効電力指令値を演算した上で、さらに前記第1の有効電力指令値を用いて、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の特徴の両方を含む第2の有効電力指令値を演算するとともに、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の両方を含むが当該充放電指令値の特徴が抑制される第3の有効電力指令値を演算する有効電力指令値演算工程と、
前記有効電力指令値演算工程で演算された
前記第2の有効電力指令値を用いて、前記電力変換手段に与える電力変換制御指令値を演算する電力変換制御指令値演算工程と、
前記有効電力指令値演算工程で演算された
前記第3の有効電力指令値を用いて、前記物質量調整手段に与える調速制御指令値を演算する調速制御指令値演算工程と、
を含む、電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力制御装置および電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電力系統の周波数調整は、主に、火力発電所や水力発電所の出力調整により行われている。太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを利用した発電設備は、自然環境の変化に伴い出力が短周期で大きく変動する。短周期の出力変動による周波数変動を抑制するため、火力発電所や水力発電所による周波数調整に加え、二次電池システムによる周波数調整が実用化されつつある。米国においては、系統運用機関からの充放電指令に従って充放電を行う二次電池システムが導入されており、周波数調整の一端を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、揚水発電設備は、主に、比較的長周期で変化する電力需要の調整に用いられてきた。しかし、再生可能エネルギーを利用した発電設備の増加に伴い、今後、揚水発電設備は、長周期の調整機能に加え、二次電池システムと同様に、短周期、且つ、応答速度の速い調整機能を有することが求められる。
【0005】
揚水発電設備は、電力を水のエネルギーとして蓄え、必要な時に発電するシステムであり、二次電池の充電、放電に相当する使い方ができる。揚水発電設備は、発電運転中は、測定した系統周波数と基準周波数との周波数偏差に応じて、発電出力を調整し、系統の周波数調整を行う。発電出力の調整は、ガイドベーン開度を調整することにより行う。しかし、定速揚水発電設備は、回転速度を調整できないため、揚水運転中に入力を調整することができず、周波数調整を行うことができない。一方、可変速揚水発電設備は、揚水運転中に回転速度を調整できるので、測定した系統周波数と基準周波数との周波数偏差に応じて、揚水入力を調整し、系統の周波数調整を行うことができる。このように動作する可変速揚水発電設備では、発電出力(放電に相当)の調整も、揚水入力(充電に相当)の調整も、行うことができる。
【0006】
しかし、揚水運転(充電に相当)から発電運転(放電に相当)へ、あるいは、発電運転(放電に相当)から揚水運転(充電に相当)に切替えるためには、回転方向を反転する必要があり、一旦、停止した後に再起動しなければならない。そのため、二次電池のように、高速な充放電指令値に応じて、揚水運転(充電に相当)から発電運転(放電に相当)へ、あるいは、発電運転(放電に相当)から揚水運転(充電に相当)に切換えることはできない。
【0007】
このようなことから、揚水発電設備または発電設備もしくは揚水設備、あるいは水以外の物質のエネルギーを利用する可変速運転が可能な設備において、充放電指令値に応じた運転を可能とし、且つ、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段の不要動作を低減でき、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段の長寿命化を可能にする制御技術の提示が望まれる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、充放電指令値に応じた運転を可能とし、且つ、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段の不要動作を低減でき、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段の長寿命化を可能にする、電力制御装置および電力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の電力制御装置は、流体のエネルギーを回転エネルギーに変換する原動機または回転エネルギーを流体のエネルギーに変換する流体機械と、前記原動機に機械的に接続され当該原動機の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する回転電機または前記流体機械に接続され電気エネルギーを回転エネルギーに変換する回転電機と、前記原動機の流量調整手段または整流手段の開度を調整する調速手段と、前記回転電機の電気的諸量を制御し前記回転電機の有効電力もしくは回転速度を制御する電力変換手段とを備えた設備に適用される、電力制御装置であって、前記設備に対する発電出力の指令値を示す出力指令値又は前記設備に対する揚水入力の指令値を示す入力指令値と前記設備に対する充電又は放電の指令値である充放電指令値とを入力し、入力した前記出力指令値又は前記入力指令値と前記充放電指令値とを用いて、第1の有効電力指令値を演算した上で、さらに前記第1の有効電力指令値を用いて、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の特徴の両方を含む第2の有効電力指令値を演算するとともに、前記出力指令値の特徴と前記充放電指令値の両方を含むが当該充放電指令値の特徴が抑制される第3の有効電力指令値を演算する有効電力指令値演算手段と、前記有効電力指令値演算手段により演算された前記第2の有効電力指令値を用いて、前記電力変換手段に与える電力変換制御指令値を演算する電力変換制御指令値演算手段と、前記有効電力指令値演算手段により演算された前記第3の有効電力指令値を用いて、前記調速手段に与える調速制御指令値を演算する調速制御指令値演算手段と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、充放電指令値に応じた運転が可能となり、且つ、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段およびこれらの駆動機構の不要動作を低減でき、流体が流れる流路の圧力変動の低減、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段およびこれらの駆動機構の長寿命化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各実施形態に共通する揚水発電設備の構成の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図3】
図2中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図4】各実施形態に共通する有効電力指令値の生成処理の一例を示すフローチャート。
【
図5】各実施形態に共通する第1の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】各実施形態に共通する第2の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】第1の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図8】第2の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図9】
図8中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図10】第2の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図11】第3の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図12】
図11中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図13】第3の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図14A】第4-1の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図14B】第4-2の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図15A】
図14A中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図15B】
図14B中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図16A】第4-1の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図16B】第4-2の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図17A】第5-1の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17B】第5-2の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17C】第5-3の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17D】第5-4の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17E】第5-5の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17F】第5-6の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17G】第5-7の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17H】第5-8の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17I】第5-9の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17J】第5-10の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図17K】第5-11の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図18A】
図17A中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18B】
図17B中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18C】
図17C中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18D】
図17D中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18E】
図17E中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18F】
図17F中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18G】
図17G中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18H】
図17H中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18I】
図17I中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18J】
図17J中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図18K】
図17K中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す図。
【
図19A】第5-1の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19B】第5-2の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19C】第5-3の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19D】第5-4の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19E】第5-5の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19F】第5-6の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19G】第5-7の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19H】第5-8の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19I】第5-9の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19J】第5-10の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図19K】第5-11の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図20】
図1の揚水発電設備において「出力指令値」ではなく「入力指令値」を入力して制御を行う場合の構成の一例を示す図。
【
図21】
図1の揚水発電設備において発電電動機の「二次側」ではなく「一次側」、「固定子側」または「電機子側」に電力変換手段を接続する場合の構成の一例を示す図。
【
図22】
図20の揚水発電設備において発電電動機の「二次側」ではなく「一次側」、「固定子側」または「電機子側」に電力変換手段を接続する場合の構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
最初に、第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る揚水発電設備の構成の一例を示す図である。当該揚水発電設備は、発電運転と揚水運転のいずれをも行える設備であるが、本実施形態では、発電運転に関わる構成および動作を中心に説明する。
【0015】
図1に示される揚水発電設備1は、例えば可変速機能を有する二次励磁方式の可変速揚水発電設備で、揚水入力および発電出力のいずれをも調整可能な揚水発電設備である。なお、この揚水発電設備1を、揚水機能を持たない可変速水力発電設備に代えて実施しても良い。また、この揚水発電設備1を、電力変換装置を発電電動機の一次側、固定子側または電機子側に接続した可変速揚水発電設備に代えて実施しても良い。また、この揚水発電設備1を、電力変換装置を発電機の一次側、固定子側または電機子側に接続した可変速発電設備に代えて実施しても良い。
【0016】
揚水発電設備1は、基本的な構成要素として、ポンプ水車2、発電電動機(回転電機)3、電力系統Sに電気的に接続される主要変圧器4、並列用遮断器5、励磁用変圧器6、励磁用遮断器7、二次励磁装置(電力変換手段)8、サーボモータ9、調速機10、角度検出器KA、計器用変成器VT、変流器CTなどの機器類を備えている。
【0017】
ポンプ水車(原動機、流体機械)2は、水車機能とポンプ機能とを含む。このポンプ水車2は、原動機(水車)として動作するときには、水のエネルギーを回転エネルギーに変換し、流体機械(ポンプ)として動作するときには、回転エネルギーを水のエネルギーに変換する。発電電動機(回転電機)3は、ポンプ水車2に機械的に接続されており、発電機として動作するときには、当該ポンプ水車2の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して出力し、電動機として動作するときには、電気エネルギーを回転エネルギーに変換して出力する。
【0018】
また、ポンプ水車2は、開度を調整可能なガイドベーン2Aを備えている。ガイドベーン2A、サーボモータ9、および調速機10は、ポンプ水車2に流入する水の流量を調整する流量調整手段を構成する。調速機10は、ガイドベーン2Aを動かすサーボモータ9を駆動するアクチュエータと、ガイドベーン開度指令値に従って上記アクチュエータを作動させるコンバータコイルとを含む。
【0019】
発電運転時は、ガイドベーン2Aで流量を調整する。しかし、揚水運転時は、ガイドベーン2Aの開度を効率が良くなるように調整する。このとき、ガイドベーン2A、サーボモータ9、および調速機10は、流量調整手段ではなく、整流手段を構成する。
【0020】
二次励磁装置(電力変換手段)8は、発電電動機3の二次電流を制御し、発電電動機3の出力(有効電力)もしくは回転速度を制御する電力変換装置である。
【0021】
また、揚水発電設備1には、電力制御装置100が備えられる。電力制御装置100は、二次励磁装置8に二次電流指令値を与えるとともに、調速機10に調速制御指令値、即ち、ガイドベーン2Aに対するガイドベーン開度指令値および/または開閉指令を与えるものである。この電力制御装置100は、有効電力制御部20、二次電流指令値演算部(電力変換制御指令値演算手段)31、調速機制御指令値演算部(調速制御指令値演算手段)41などの各種の制御機能を有する。これらの制御機能は、例えばコンピュータにより実行されるプログラム(ソフトウェア)として実現されても良い。
【0022】
有効電力制御部20は、有効電力指令値演算部(有効電力指令値演算手段)21X、有効落差演算部22、および有効電力測定部23を有する。
【0023】
有効電力指令値演算部21Xは、上位制御装置等から電力制御装置100に供給されてくる出力指令値(発電出力の指令値)と充放電指令値(充電または放電の指令値)とを入力し、これらを用いて第1の有効電力指令値を演算した上で、さらに第2の有効電力指令値および第3の有効電力指令値を演算して出力する。上記出力指令値および上記充放電指令値は、それぞれ異なる制御手段から別々に送られるように構成されていても良いし、同一の制御手段から送られるように構成されていても良い。
【0024】
この有効電力指令値演算部21Xは、二次電流指令値演算部31に対して第2の有効電力指令値、調速機制御指令値演算部41に対して第3の有効電力指令値を供給する。
【0025】
有効落差演算部22は、上位制御装置等から供給されてくる静落差とサーボモータ9から供給されてくるガイドベーン開度帰還信号とを入力し、これらを用いて有効落差(有効落差計算値)を演算し出力する。なお、有効落差の演算方法はこの例に限定されない。例えば、ガイドベーン開度帰還信号を用いない別の演算方法で有効落差を演算しても良い。
【0026】
有効電力測定部23は、計器用変成器VTおよび変流器CTからそれぞれ供給されてくる電圧VLおよび電流ILを入力し、これらを用いて有効電力測定値を求め出力する。
【0027】
二次電流指令値演算部(電力変換制御指令値演算手段)31は、有効電力指令値演算部21Xから供給されてくる第2の有効電力指令値および角度検出器KAから供給されてくる角度信号を用いて、二次励磁装置(電力変換手段)8に与える二次電流指令値(電力変換制御指令値)を演算し出力する。
【0028】
調速機制御指令値演算部(調速制御指令値演算手段)41は、有効電力指令値演算部21Xから供給されてくる第3の有効電力指令値およびサーボモータ9から供給されてくるガイドベーン開度帰還信号を用いて、調速機10に与えるガイドベーン開度指令値を演算し出力する。
【0029】
なお、電力制御装置100は、上位制御装置等(例えば、系統運用会社が管理する周波数変動を抑制するための制御装置)から供給されてくる充放電指令値を入力し、これを必要に応じて有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xでの処理に適した値に調整して出力するインターフェース機器を備えていてもよい。
【0030】
また、電力制御装置100は、上位制御装置等(例えば、電力会社が管理する発電出力を制御するための制御装置)から供給されてくる出力指令値を入力し、これを必要に応じて有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xでの処理に適した値に調整して出力するインターフェース機器を備えていてもよい。
【0031】
また、電力制御装置100は、二次電流指令値演算部31から出力される二次電流指令値を入力し、これを必要に応じて二次励磁装置8での処理に適した値に調整して出力するインターフェース機器を備えていてもよい。
【0032】
また、電力制御装置100は、調速機制御指令値演算部41から出力されるガイドベーン開度指令値を入力し、これを必要に応じて調速機10での処理に適した値に調整して出力するインターフェース機器を備えていてもよい。
【0033】
図2に、第1の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。また、
図3に、
図2中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を示す。但し、
図3は、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0034】
図2に示される有効電力指令値演算部21Xは、各種の機能として、第1の有効電力指令値演算部53、第2の有効電力指令値演算部54、信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)55、回転速度指令値演算部56、回転速度演算部57、回転速度偏差演算部58、および第3の有効電力指令値演算部59を有する。
【0035】
図3(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図3(b)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図3(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54および信号処理部55に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0036】
図3(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図3(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0037】
図3(j)は、信号処理部55から出力され回転速度指令値演算部56に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形(高周波成分が低減された波形)の例を示すものである。
図3(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図3(g)は、回転速度演算部57から回転速度偏差演算部58に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図3(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図3(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図3(i)の第3の有効電力指令値の信号の波形は、
図3(e)の第2の有効電力指令値の信号の波形よりも高周波成分の振幅が低減されたものになる。
【0038】
出力指令値は、一般に、充放電指令値よりも長い周期でゆっくりと上下に変化する(充放電指令値よりも周波数が低い)。一方、充放電指令値は、出力指令値よりも短い周期で上下に速く変化する(出力指令値よりも周波数が高い)。
【0039】
第2の有効電力指令値は、上記したような出力指令値の特徴と充放電指令値の特徴の両方を含む。これにより、発電電動機は、出力指令値および充放電指令値の双方に応じた有効電力の出力を可能にする。一方、第3の有効電力指令値は、出力指令値と充放電指令値の特徴を含むが、充放電指令値の特徴は抑制される。本例においては、充放電指令値の高周波成分が低減される。これにより、流量調整手段の不要動作の低減を可能にする。
【0040】
ここで、有効電力指令値演算部21Xを構成する個々の機能について説明する。
【0041】
第1の有効電力指令値演算部53は、充放電指令値および出力指令値を用いて、第1の有効電力指令値を演算し出力する。当該演算は、例えば、充放電指令値と出力指令値との加算を含む。但し、この例に限定されるものではない。例えば、充放電指令値もしくは出力指令値が負の値で表現される場合には、加算ではなく減算となる場合もあり得る。また、充放電指令値もしくは出力指令値に一定の重み係数を乗じた上で加算を行うことが好ましい場合もあり得る。
【0042】
第2の有効電力指令値演算部54は、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値および有効電力測定部23から出力された有効電力測定値を用いて、第2の有効電力指令値を演算し出力する。当該演算では、例えば、有効電力測定値と第1の有効電力指令値とから、予め定められた所定の処理方法(数式、アルゴリズム等)に従って第1の有効電力指令値の補正値を求め第2の有効電力指令値として出力する。例えば、第1の有効電力指令値よりも有効電力測定値が小さい場合は、正の補正値(有効電力を増やす補正値)を出力する。第1の有効電力指令値よりも有効電力測定値が大きい場合は、負の補正値(有効電力を減らす補正値)を出力する。このようにして、有効電力測定値を用いた有効電力指令値のフィードバック制御が実現される。
【0043】
信号処理部55は、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(第1の有効電力指令値の高周波成分)を低減または除去した信号を生成し出力する。この信号処理部55は、例えばローパスフィルタあるいは移動平均を算出する手段等を用いて実現される。
【0044】
回転速度指令値演算部56は、信号処理部55から出力された高周波成分を低減または除去した信号および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する。
【0045】
回転速度演算部57は、角度検出器KAから供給されてくる角度信号を入力して回転速度測定値を演算で求め、これを必要に応じて有効電力指令値演算部21X内での処理に適した信号に変換して出力する。
図1は、角度検出器KAからの角度信号から回転速度を演算で求める例であるが、角度検出器KAの代わりに回転速度検出手段を設け、回転速度演算部57の代わりに回転速度入力部を設け、回転速度を検出しても良い。また、角度信号以外の信号(例えば電圧の周波数)を検出し、この信号から回転速度を演算で求めても良い。
【0046】
回転速度偏差演算部58は、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する。
【0047】
第3の有効電力指令値演算部59は、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差を用いて、第3の有効電力指令値を演算する。当該演算では、例えば、回転速度偏差に応じて、予め定められた所定の信号処理方法(数式、アルゴリズム等)に従って有効電力指令値の補正値を求め第3の有効電力指令値(ガイドベーン開度指令値)として出力する。例えば、回転速度偏差が正(回転速度測定値が回転速度指令値よりも小さい)の場合は、正の補正値(ガイドベーン開度を大きくする補正値)を出力し、回転速度偏差が負(回転速度測定値が回転速度指令値よりも大きい)の場合は、負の補正値(ガイドベーン開度を小さくする補正値)を出力する。このようにして、回転速度偏差を用いた有効電力指令値のフィードバック制御が実現される。
【0048】
次に、フローチャートを参照して、
図2に示される有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xによる動作の一例について説明する。
【0049】
図4に示されるように、有効電力指令値演算部21Xは、最初に、第1の有効電力指令値を生成し(ステップS1)、次に、当該第1の有効電力指令値を用いて、第2の有効電力指令値および第3の有効電力指令値を生成する(ステップS2)。
【0050】
図5に、第1の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。
【0051】
有効電力指令値演算部21Xは、上位制御装置等から供給されてくる出力指令値を入力すると共に、上位制御装置等から供給されてくる充放電指令値を入力する(ステップS11)。
【0052】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第1の有効電力指令値演算部53により、出力指令値および充放電指令値を用いて、第1の有効電力指令値を演算する(ステップS12)。
【0053】
図6に、第2の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。
【0054】
有効電力指令値演算部21Xは、有効電力測定部23が求めた有効電力測定値を入力する(ステップS21)。
【0055】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第2の有効電力指令値演算部54により、当該入力した有効電力測定値および第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値を用いて、第2の有効電力指令値を演算し、演算した第2の有効電力指令値を出力する(ステップS22)。
【0056】
図7に、第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0057】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、角度検出器KAから供給されてくる角度信号が回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0058】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)55により、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(第1の有効電力指令値の高周波成分)を低減または除去した信号を生成する(ステップS32)。
【0059】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、信号処理部55から出力された高周波成分を低減または除去した信号および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33)。
【0060】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34)。
【0061】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差を用いて、第3の有効電力指令値を演算し、演算した第3の有効電力指令値を出力する(ステップS35)。
【0062】
第1の実施形態によれば、電力制御装置100において、出力指令値を入力すると共に充放電指令値をも入力し、これら出力指令値および充放電指令値の両方の変化に追従して変化する二次電流指令値およびガイドベーン開度指令値により、二次励磁装置8および調速機10をそれぞれ制御するので、出力指令値および充放電指令値に応じた発電電動機3およびポンプ水車2の運転が可能となる。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xから二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値が、出力指令値の特徴と充放電指令値の特徴の両方を含むのに対し、有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xから調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値は、出力指令値の特徴と充放電指令値の特徴の両方を含むものの信号処理部55を通じて充放電指令値の高周波成分が低減されているため、ガイドベーン開度指令値を通じて制御される流量調整手段の不要動作(高頻度に繰り返されるガイドベーンの開閉動作など)を低減でき、水路等の水圧変動の低減、流量調整手段の長寿命化を図ることができる。
【0064】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0065】
なお、前述の
図1に示した構成は、この第2の実施形態にも適用される。第2の実施形態に係る電力制御装置100の基本構成は、
図1に示したものと同じである。
【0066】
図8に、第2の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。なお、
図8では、
図2に示した第1の実施形態に係る有効電力制御部20と同じ機能を有する要素に同一の符号を付している。また、
図9に、
図8中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す。但し、
図9は、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0067】
この第2の実施形態に係る有効電力制御部20(
図8)が前述した第1の実施形態に係る有効電力制御部20(
図2)と異なる点は、有効電力指令値演算部21Xの中に前述した信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)55が設けられておらず、代わりに、回転速度偏差演算部58と第3の有効電力指令値演算部59とを結ぶ経路に信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)62が設けられていること等にある。
【0068】
図9(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図9(b)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図9(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54および回転速度指令値演算部56に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0069】
図9(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図9(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0070】
図9(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図9(g)は、回転速度演算部57から回転速度偏差演算部58に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図9(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され信号処理部62に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図9(j)は、信号処理部62から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される回転速度偏差の高周波成分を低減した信号の波形の例を示すものである。
図9(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図9(i)の第3の有効電力指令値の信号の波形は、
図9(e)の第2の有効電力指令値の信号の波形よりも短周期成分の振幅が低減されたものになる。
【0071】
第2の実施形態では、回転速度指令値演算部56は、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する。
【0072】
信号処理部62は、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度偏差の高周波成分)を低減または除去した信号を生成し出力する。この信号処理部62は、例えばローパスフィルタあるいは移動平均を算出する手段等を用いて実現される。
【0073】
第3の有効電力指令値演算部59は、信号処理部62から出力された回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号を用いて、第3の有効電力指令値を演算する。当該演算では、例えば、回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号に応じて、予め定められた所定の処理方法(数式、アルゴリズム等)に従って有効電力指令値の補正値を求め第3の有効電力指令値(ガイドベーン開度指令値)として出力する。例えば、回転速度偏差が正(回転速度測定値が回転速度指令値よりも小さい)の場合は、有効電力指令値を増やし、回転速度偏差が負(回転速度測定値が回転速度指令値よりも大きい)の場合は、有効電力指令値を減らす。このようにして、回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号を用いた有効電力指令値のフィードバック制御が実現される。
【0074】
次に、フローチャートを参照して、
図8に示される有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xによる動作の一例について説明する。
【0075】
なお、前述の
図4乃至
図6に示した処理手順は、この第2の実施形態にも適用される。第2の実施形態に係る有効電力指令値演算部21Xの基本動作は、
図4に示したものと同様となる。また、第1の有効電力指令値を生成する処理手順および第2の有効電力指令値を生成する処理手順は、
図5および
図6に示したものと同様となる。
【0076】
第3の有効電力指令値を生成する処理手順は、第1の実施形態の場合とは異なる。
【0077】
図10に、第2の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0078】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0079】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33A)。
【0080】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34)。
【0081】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)62により、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度偏差の高周波成分)を低減または除去した信号を生成する(ステップS41)。
【0082】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、信号処理部62から出力された回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号を用いて、第3の有効電力指令値を演算し、演算した第3の有効電力指令値を出力する(ステップS35A)。
【0083】
第2の実施形態によれば、第1の有効電力指令値演算部53と回転速度指令値演算部56とを結ぶ経路に前述した信号処理部55が設けられておらず、第1の有効電力指令値演算部53から充放電指令値の高周波成分が低減されずに回転速度指令値演算部56に伝えられるが、回転速度偏差演算部58と第3の有効電力指令値演算部59とを結ぶ経路に信号処理部62が設けられているため、高周波成分の少ない第3の有効電力指令値を調速機制御指令値演算部41に供給することができ、ガイドベーン開度指令値を通じて制御される流量調整手段の不要動作(高頻度に繰り返されるガイドベーンの開閉動作など)を低減でき、水路等の水圧変動の低減、流量調整手段の長寿命化を図ることができる。
【0084】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0085】
なお、前述の
図1に示した構成は、この第3の実施形態にも適用される。第3の実施形態に係る電力制御装置100の基本構成は、
図1に示したものと同じである。
【0086】
図11に、第3の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。なお、
図11では、
図2に示した第1の実施形態に係る有効電力制御部20と同じ機能を有する要素に同一の符号を付している。また、
図12に、
図11中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す。但し、
図12は、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0087】
この第3の実施形態に係る有効電力制御部20(
図11)が前述した第1の実施形態に係る有効電力制御部20(
図2)と異なる点は、有効電力指令値演算部21Xの中に前述した信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)55が設けられていないこと、回転速度指令値演算部56が、出力指令値を入力すること等にある。
【0088】
図12(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図12(b)は、第1の有効電力指令値演算部53および回転速度指令値演算部56に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図12(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0089】
図12(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図12(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0090】
図12(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図12(g)は、回転速度演算部57から回転速度偏差演算部58に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図12(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図12(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0091】
第3の実施形態では、回転速度指令値演算部56は、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する。
【0092】
次に、フローチャートを参照して、
図11に示される有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xによる動作の一例について説明する。
【0093】
なお、前述の
図4乃至
図6に示した処理手順は、この第3の実施形態にも適用される。第3の実施形態に係る有効電力指令値演算部21Xの基本動作は、
図4に示したものと同様となる。また、第1の有効電力指令値を生成する処理手順および第2の有効電力指令値を生成する処理手順は、
図5および
図6に示したものと同様となる。
【0094】
第3の有効電力指令値を生成する処理手順は、第1及び第2の実施形態の場合とは異なる。
【0095】
図13に、第3の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0096】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0097】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、出力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33B)。
【0098】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34)。
【0099】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差を用いて、第3の有効電力指令値を演算し、演算した第3の有効電力指令値を出力する(ステップS35)。
【0100】
第3の実施形態によれば、前述した信号処理部55および当該信号処理部55が設けられていた経路が無いため、充放電指令値の情報が直接的に第3の有効電力指令値に反映されない。しかし、充放電指令値を含む第2の有効電力指令値による制御結果(発電電動機の出力)と第3の有効電力指令値による制御結果(ポンプ水車の出力)の差の積分値によって回転速度が変化するので、回転速度指令値と回転速度測定値に偏差が生じ、回転速度偏差が第3の有効電力指令値演算部59に入力され、結果として充放電指令値の低周波成分が第3の有効電力指令値に反映される。第3の実施形態によれば、信号処理部55(ローパスフィルタ等)を省略しコストを抑えつつ、充放電指令値に応じた発電電動機3の運転を実現することができると共に、ガイドベーン開度指令値を通じて制御される流量調整手段の不要動作(高頻度に繰り返されるガイドベーンの開閉動作など)を低減でき、水路等の水圧変動の低減、流量調整手段の長寿命化を図ることができる。
【0101】
[第4-1の実施形態]
次に、第4-1の実施形態について説明する。以下では、前述した第3の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0102】
なお、前述の
図1に示した構成は、この第4-1の実施形態にも適用される。第4-1の実施形態に係る電力制御装置100の基本構成は、
図1に示したものと同じである。
【0103】
図14Aに、第4-1の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。なお、
図14Aでは、
図11に示した第3の実施形態に係る有効電力制御部20と同じ機能を有する要素に同一の符号を付している。また、
図15Aに、
図14A中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す。但し、
図15Aは、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0104】
この第4-1の実施形態に係る有効電力制御部20(
図14A)が前述した第3の実施形態に係る有効電力制御部20(
図11)と異なる点は、回転速度偏差演算部58と第3の有効電力指令値演算部59とを結ぶ経路に信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)62が設けられていること等にある。この信号処理部62は、第2の実施形態で説明した
図8中の信号処理部62と同じ機能である。
【0105】
図15A(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図15A(b)は、第1の有効電力指令値演算部53および回転速度指令値演算部56に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図15A(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0106】
図15A(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図15A(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0107】
図15A(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図15A(g)は、回転速度演算部57から回転速度偏差演算部58に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図15A(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され信号処理部62に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図15A(j)は、信号処理部62から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される回転速度偏差の高周波成分を低減した信号の波形の例を示すものである。
図15A(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0108】
第4-1の実施形態では、信号処理部62は、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度偏差の高周波成分)を低減または除去し出力する。この信号処理部62は、例えばローパスフィルタあるいは移動平均を算出する手段等を用いて実現される。
【0109】
第3の有効電力指令値演算部59は、信号処理部62から出力された回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号を用いて、第3の有効電力指令値を演算する。当該演算では、例えば、回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号に応じて、予め定められた所定の処理方法(数式、アルゴリズム等)に従って有効電力指令値の補正値を求め第3の有効電力指令値として出力する。このようにして、回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号を用いた有効電力指令値のフィードバック制御が実現される。
【0110】
次に、フローチャートを参照して、
図14Aに示される有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xによる動作の一例について説明する。
【0111】
なお、前述の
図4乃至
図6に示した処理手順は、この第4-1の実施形態にも適用される。第4-1の実施形態に係る有効電力指令値演算部21Xの基本動作は、
図4に示したものと同様となる。また、第1の有効電力指令値を生成する処理手順および第2の有効電力指令値を生成する処理手順は、
図5および
図6に示したものと同様となる。
【0112】
第3の有効電力指令値を生成する処理手順は、第1乃至第3の実施形態の場合とは異なる。
【0113】
図16Aに、第4-1の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0114】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0115】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、出力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33B)。
【0116】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34)。
【0117】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)62により、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度偏差の高周波成分)を低減または除去した信号を生成する(ステップS41)。
【0118】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、信号処理部62から出力された回転速度偏差の高周波成分を低減または除去した信号を用いて、第3の有効電力指令値を演算し、演算した第3の有効電力指令値を出力する(ステップS35A)。
【0119】
第4-1の実施形態によれば、前述した信号処理部55および第1の有効電力指令値演算部53と回転速度指令値演算部56とを結ぶ経路が設けられていないため、充放電指令値の情報が第3の有効電力指令値に反映されない。しかし、充放電指令値を含む第2の有効電力指令値による制御結果(発電電動機の出力)と第3の有効電力指令値による制御結果(ポンプ水車の出力)の差の積分値によって回転速度が変化するので、回転速度指令値と回転速度測定値に偏差が生じ、回転速度偏差が第3の有効電力指令値演算部59に入力され、結果として充放電指令値の低周波成分が第3の有効電力指令値に反映される。第4の実施形態によれば、充放電指令値に応じた発電電動機3の運転を実現することができると共に、第3の実施形態よりも高周波成分の少ない第3の有効電力指令値を調速機制御指令値演算部41に供給することができ、ガイドベーン開度指令値を通じて制御される流量調整手段の不要動作(高頻度に繰り返されるガイドベーンの開閉動作など)を低減でき、水路等の水圧変動の低減、流量調整手段の長寿命化を図ることができる。
【0120】
[第4-2の実施形態]
次に、第4-2の実施形態について説明する。以下では、前述した第4-1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0121】
図14Bに、第4-2の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。また、
図15Bに、
図14B中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を示す。但し、
図15Bは、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0122】
前述の第4-1の実施形態では、回転速度偏差演算部58と第3の有効電力指令値演算部59とを結ぶ経路に信号処理部(ローパスフィルタ等)62を設けた例を説明したが、この第4-2の実施形態では、回転速度演算部57と回転速度偏差演算部58とを結ぶ経路に信号処理部62を設ける。このようにしても同様の効果を得ることができる。
【0123】
図15B(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図15B(b)は、第1の有効電力指令値演算部53および回転速度指令値演算部56に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図15B(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0124】
図15B(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図15B(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0125】
図15B(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図15B(g)は、回転速度演算部57から信号処理部62に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図15B(j)は、信号処理部62から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度偏差の高周波成分を低減した信号の波形の例を示すものである。
図15B(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図15B(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0126】
第4-2の実施形態では、信号処理部62は、回転速度演算部57から出力された回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度測定値の高周波成分)を低減または除去し出力する。この信号処理部62は、例えばローパスフィルタあるいは移動平均を算出する手段等を用いて実現される。
【0127】
図16Bに、第4-2の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0128】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0129】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)62により、回転速度演算部57から出力された回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去した信号を生成する(ステップS32B)。
【0130】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、出力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33B)。
【0131】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と信号処理部62から出力された高周波成分を低減または除去した信号とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34A)。
【0132】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差を用いて、第3の有効電力指令値を演算し、演算した第3の有効電力指令値を出力する(ステップS35)。
【0133】
第4-2の実施形態によれば、前述した第4-1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0134】
[第5-1の実施形態]
次に、第5-1の実施形態について説明する。以下では、前述した第3の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0135】
なお、前述の
図1に示した構成は、この第5-1の実施形態にも適用される。第5-1の実施形態に係る電力制御装置100の基本構成は、
図1に示したものと同じである。
【0136】
図17Aに、第5-1の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。なお、
図17Aでは、
図11に示した第3の実施形態に係る有効電力制御部20と同じ機能を有する要素に同一の符号を付している。また、
図18Aに、
図17A中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を示す。但し、
図18Aは、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0137】
この第5-1の実施形態に係る有効電力制御部20(
図17A)が前述した第3の実施形態に係る有効電力制御部20(
図11)と異なる点は、回転速度偏差演算部58と第3の有効電力指令値演算部59とを結ぶ経路に信号処理部62(ローパスフィルタ等)が設けられていること、第3の有効電力指令値演算部59が、出力指令値を入力すると共に、信号処理部62から出力される信号を第3の有効電力指令値演算の補正信号として入力すること等にある。
【0138】
図18A(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18A(b)は、第1の有効電力指令値演算部53、回転速度指令値演算部56、および第3の有効電力指令値演算部59に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18A(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0139】
図18A(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18A(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0140】
図18A(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18A(g)は、回転速度演算部57から回転速度偏差演算部58に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18A(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され信号処理部62に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図18A(j)は、信号処理部62から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される補正信号の波形の例を示すものである。
図18A(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0141】
第5-1の実施形態では、信号処理部62は、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度偏差の高周波成分)を低減または除去した信号を生成し、この信号を、第3の有効電力指令値演算部59が生成する信号(調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値)を補正するための補正信号(有効電力指令値補正信号)として出力する。この信号処理部62は、例えばローパスフィルタあるいは移動平均を算出する手段等を用いて実現してもよいし、これら以外の手段を用いて実現してもよい。
【0142】
第3の有効電力指令値演算部59は、出力指令値を用いて、調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値を生成し、信号処理部62から出力される信号を用いて当該第3の有効電力指令値を補正し、補正した結果を出力する。
【0143】
次に、フローチャートを参照して、
図17Aに示される有効電力制御部20内の有効電力指令値演算部21Xによる動作の一例について説明する。
【0144】
なお、前述の
図4乃至
図6に示した処理手順は、この第5-1の実施形態にも適用される。第5-1の実施形態に係る有効電力指令値演算部21Xの基本動作は、
図4に示したものと同様となる。また、第1の有効電力指令値を生成する処理手順および第2の有効電力指令値を生成する処理手順は、
図5および
図6に示したものと同様となる。
【0145】
第3の有効電力指令値を生成する処理手順は、第1乃至第4-2の実施形態の場合とは異なる。
【0146】
図19Aに、第5-1の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0147】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0148】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、出力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33B)。
【0149】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34)。
【0150】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、信号処理部62により、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度偏差の高周波成分)を低減または除去した信号を生成し、この信号を、有効電力指令値補正信号として出力する(ステップS41A)。
【0151】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、出力指令値を用いて、調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値を生成し、信号処理部62から出力される有効電力指令値補正信号を用いて当該第3の有効電力指令値を補正し、補正した結果を出力する(ステップS35B)。
【0152】
第5-1の実施形態によれば、出力指令値が第3の有効電力指令値演算部59に直接供給され、有効電力指令値補正信号で補正されて第3の有効電力指令値として出力される構成であるため、第3の有効電力指令値の制御の応答性を向上させることができる。また、第4-1、第4-2の実施形態の場合と同様、充放電指令値に応じた発電電動機3の運転を実現することができると共に、高周波成分の少ない第3の有効電力指令値を調速機制御指令値演算部41に供給することができ、ガイドベーン開度指令値を通じて制御される流量調整手段の不要動作(高頻度に繰り返されるガイドベーンの開閉動作など)を低減でき、水路等の水圧変動の低減、流量調整手段の長寿命化を図ることができる。
【0153】
[第5-2の実施形態]
次に、第5-2の実施形態について説明する。以下では、前述した第5-1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0154】
図17Bに、第4-2の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。また、
図18Bに、
図17B中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を示す。但し、
図18Bは、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0155】
前述の第5-1の実施形態では、回転速度偏差演算部58と第3の有効電力指令値演算部59とを結ぶ経路に信号処理部62(ローパスフィルタ等)を設けた例を説明したが、この第5-2の実施形態では、回転速度演算部57と回転速度偏差演算部58とを結ぶ経路に信号処理部62(ローパスフィルタ等)を設ける。このようにしても第5-1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0156】
図18B(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18B(b)は、第1の有効電力指令値演算部53、回転速度指令値演算部56、および第3の有効電力指令値演算部59に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18B(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0157】
図18B(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18B(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0158】
図18B(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18B(g)は、回転速度演算部57から信号処理部(ローパスフィルタ等)62に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18B(j)は、信号処理部62から出力され回転速度偏差演算部58に入力される補正信号の波形の例を示すものである。
図18B(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力されるに入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図18B(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0159】
第5-2の実施形態では、信号処理部62は、回転速度演算部57から出力された回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分(回転速度偏差の高周波成分)を低減または除去し出力する。この信号処理部62は、例えばローパスフィルタあるいは移動平均を算出する手段等を用いて実現される。
【0160】
図19Bに、第5-2の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0161】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0162】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、信号処理部(ローパスフィルタ等の信号処理手段)62により、回転速度演算部57から出力された回転速度測定値から、所定の周波数以上または超過の高周波成分を低減または除去した信号を生成する(ステップS32B)。
【0163】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、出力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33B)。
【0164】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と信号処理部62から出力された高周波成分を低減または除去した信号とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34A)。
【0165】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、出力指令値を用いて、調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値を生成し、回転速度偏差演算部58から出力される回転速度偏差を用いて当該第3の有効電力指令値を補正し、補正した結果を出力する(ステップS35C)。
【0166】
第5-2の実施形態によれば、前述した第5-1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0167】
[第5-3~第5-7の実施形態]
次に、第5-3、第5-4、第5-5、第5-6、第5-7の実施形態(以下、「第5-3~第5-7の実施形態」と称す)について説明する。以下では、前述した第3の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0168】
なお、前述の
図1に示した構成は、この第5-3~第5-7の実施形態にも適用される。第5-3~第5-7の実施形態に係る電力制御装置100の基本構成は、
図1に示したものと同じである。
【0169】
図17C~
図17Gに、第5-3~第5-7の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。なお、
図17C~
図17Gでは、
図11に示した第3の実施形態に係る有効電力制御部20と同じ機能を有する要素に同一の符号を付している。また、
図18C~
図18Gに、
図17C~
図17G中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す。但し、
図18C~
図18Gは、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0170】
この第5-3~第5-7の実施形態に係る有効電力制御部20(
図17C~
図17G)が前述した第5-1の実施形態に係る有効電力制御部20(
図17A)と異なる点は、有効電力制御部20が充放電指令値を入力する部分、第1の有効電力指令値演算部53、第2の有効電力指令値演算部54、回転速度偏差演算部58、または回転速度演算部57と第3の有効電力指令値演算部59とを結ぶ経路に有効電力指令値補正部64が設けられていることにある。
【0171】
図18C~
図18Gの(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18C~
図18Gの(b)は、第1の有効電力指令値演算部53、回転速度指令値演算部56、および第3の有効電力指令値演算部59に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18C~
図18Gの(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0172】
図18C~
図18Gの(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18C~
図18Gの(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0173】
図18C~
図18Gの(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18C~
図18Gの(g)は、回転速度演算部57から回転速度偏差演算部58に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18C~
図18Gの(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図18C~
図18Gの(j)は、有効電力指令値補正部64から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される補正信号の波形の例を示すものである。
図18C~
図18Gの(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0174】
第5-3~第5-7の実施形態では、有効電力指令値補正部64は、充放電指令値の信号、または第1の有効電力指令値演算部53、第2の有効電力指令値演算部54、回転速度偏差演算部58、または回転速度演算部57の出力信号を、第3の有効電力指令値演算部59が生成する信号(調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値)を補正するための補正信号(有効電力指令値補正信号)として出力する。この有効電力指令値補正部64は、例えばハイパスフィルタ等を用いて実現してもよいし、これら以外の手段を用いて実現してもよい。
【0175】
第3の有効電力指令値演算部59は、出力指令値を用いて、調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値を生成し、有効電力指令値補正部64から出力される有効電力指令値補正信号および回転速度偏差演算部58から出力される回転速度偏差信号を用いて当該第3の有効電力指令値を補正し、補正した結果を出力する。
【0176】
図19C~
図19Gに、第5-3~第5-7の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0177】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0178】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、出力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33B)。
【0179】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算して出力する(ステップS34)。
【0180】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、有効電力指令値補正部64により、充放電指令値、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値、第2の有効電力指令値演算部54から出力された第2の有効電力指令値、回転速度偏差演算部58から出力された回転速度偏差、または回転速度演算部57から出力された回転速度測定値から、所定の周波数以下または未満の低周波成分を低減または除去した信号を生成し、この信号を、有効電力指令値補正信号として出力する(ステップS41B、S41C、S41D、S41E、またはS41F)。
【0181】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、出力指令値を用いて、調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値を生成し、有効電力指令値補正部64から出力される有効電力指令値補正信号および回転速度偏差演算部58から出力される回転速度偏差信号を用いて当該第3の有効電力指令値を補正し、補正した結果を出力する(ステップS35C)。
【0182】
第5-3~第5-7の実施形態によれば、出力指令値が第3の有効電力指令値演算部59に直接供給され、有効電力指令値補正信号で補正されて第3の有効電力指令値として出力される構成であるため、制御の応答性を向上させることができる。また、第4-1、第4-2の実施形態の場合と同様、充放電指令値に応じた発電電動機3の運転を実現することができると共に、高周波成分の少ない第3の有効電力指令値を調速機制御指令値演算部41に供給することができ、ガイドベーン開度指令値を通じて制御される流量調整手段の不要動作(高頻度に繰り返されるガイドベーンの開閉動作など)を低減でき、水路等の水圧変動の低減、流量調整手段の長寿命化を図ることができる。
[第5-8~第5-11の実施形態]
次に、第5-8、第5-9、第5-10、第5-11の実施形態(以下、「第5-8~第5-11の実施形態」と称す)について説明する。以下では、前述した第5-3~第5-7の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0183】
なお、前述の
図1に示した構成は、この第5-8~第5-11の実施形態にも適用される。第5-8~第5-11の実施形態に係る電力制御装置100の基本構成は、
図1に示したものと同じである。
【0184】
図17H~
図17Kに、第5-8~第5-11の実施形態に係る有効電力制御部20の機能構成の一例を示す。なお、
図17H~
図17Kでは、
図11に示した第3の実施形態に係る有効電力制御部20と同じ機能を有する要素に同一の符号を付している。また、
図18H~
図18Kに、
図17H~
図17K中に示される有効電力指令値演算部21Xの中の各部における信号の波形の例を簡略的に示す。但し、
図18H~
図18Kは、理解の容易化のために各部における信号の波形を模式化したものであり、実際の信号の波形とは異なる。また、有効電力指令値演算部21X内部で信号を波形に変換せずに、アナログ信号および/またはディジタル信号のまま処理しても良い。
【0185】
この第5-8~第5-11の実施形態に係る有効電力制御部20(
図17H~
図17K)が前述した第5-3~第5-7の実施形態に係る有効電力制御部20(
図17C~
図17G)と異なる点は、有効電力指令値補正部64の代わりに回転速度偏差補正部65が設けられ、回転速度偏差補正部65の出力が回転速度偏差演算部58に入力されることである。
【0186】
図18H~
図18Kの(a)は、第1の有効電力指令値演算部53に入力される充放電指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18H~
図18Kの(b)は、第1の有効電力指令値演算部53、回転速度指令値演算部56、および第3の有効電力指令値演算部59に入力される出力指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18H~
図18Kの(c)は、第1の有効電力指令値演算部53から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される第1の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0187】
図18H~
図18Kの(d)は、有効電力測定部23から出力され第2の有効電力指令値演算部54に入力される有効電力測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18H~
図18Kの(e)は、第2の有効電力指令値演算部54から出力され
図1中の二次電流指令値演算部31へ供給される第2の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0188】
図18H~
図18Kの(f)は、回転速度指令値演算部56から出力され回転速度偏差演算部58に入力される回転速度指令値の信号の波形の例を示すものである。
図18H~
図18Kの(g)は、回転速度演算部57から回転速度偏差演算部58に入力される回転速度測定値の信号の波形の例を示すものである。
図18H~
図18Kの(h)は、回転速度偏差演算部58から出力され第3の有効電力指令値演算部59に入力される回転速度偏差の信号の波形の例を示すものである。
図18H~
図18Kの(j)は、回転速度偏差補正部65から出力され回転速度偏差演算部58に入力される補正信号の波形の例を示すものである。
図18H~
図18Kの(i)は、第3の有効電力指令値演算部59から出力され
図1中の調速機制御指令値演算部41へ供給される第3の有効電力指令値の信号の波形の例を示すものである。
【0189】
第5-8~第5-11の実施形態では、回転速度偏差補正部65は、充放電指令値の信号、または第1の有効電力指令値演算部53、第2の有効電力指令値演算部54、または回転速度演算部57の出力信号から、所定の周波数以下または未満の低周波成分(充放電指令値の低周波信号成分)を低減または除去した信号を生成し、この信号を、回転速度偏差演算部58が生成する信号(第3の有効電力指令値演算部59に供給する回転速度偏差信号)を補正するための補正信号(回転速度偏差補正信号)として出力する。この回転速度偏差補正部65は、例えばハイパスフィルタを用いて実現してもよいし、ハイパスフィルタ以外の手段を用いて実現してもよい。
【0190】
回転速度偏差演算部58は、回転速度指令値演算部56から出力される回転速度指令値と回転速度演算部57から出力される回転速度測定値とを用いて、第3の有効電力指令値演算部59に供給する回転速度偏差信号を生成し、回転速度偏差補正部65から出力される回転速度偏差補正信号を用いて当該回転速度偏差信号を補正し、補正した結果を出力する。
【0191】
図19H~
図19Kに、第5-8~第5-11の実施形態による第3の有効電力指令値を生成する処理手順の一例を示す。なお、第3の有効電力指令値を生成する動作は、必ずしもここに記載したステップの番号順どおりに実行する必要はない。いくつかの処理は、順序を入れ変えて実行したり、あるいは同時に実行したりしてもよい。
【0192】
有効電力指令値演算部21Xは、有効落差演算部22により演算されて出力された有効落差(有効落差計算値)を入力するとともに、回転速度演算部57により演算されて出力された回転速度測定値を入力する(ステップS31)。
【0193】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差補正部65により、充放電指令値、第1の有効電力指令値演算部53から出力された第1の有効電力指令値、第2の有効電力指令値演算部54から出力された第2の有効電力指令値、または回転速度演算部57から出力された回転速度測定値から、所定の周波数以下または未満の低周波成分を低減または除去した信号を生成し、この信号を、回転速度偏差補正信号として出力する(ステップS41G、S41H、S41I、またはS41J)。
【0194】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度指令値演算部56により、出力指令値および有効落差演算部22から出力された有効落差計算値を用いて、原動機として動作するポンプ水車2に対する回転速度指令値を演算し出力する(ステップS33B)。
【0195】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、回転速度偏差演算部58により、回転速度指令値演算部56から出力された回転速度指令値と回転速度演算部57から出力された回転速度測定値とを比較し、双方の偏差(回転速度偏差)を演算し、回転速度偏差補正部65から出力される回転速度偏差補正信号を用いて当該回転速度偏差を補正し、補正した回転速度偏差を出力する(ステップS34A)。
【0196】
次に、有効電力指令値演算部21Xは、第3の有効電力指令値演算部59により、出力指令値を用いて、調速機制御指令値演算部41に供給する第3の有効電力指令値を生成し、回転速度偏差演算部58から出力される補正した回転速度偏差を用いて当該第3の有効電力指令値を補正し、補正した結果を出力する(ステップS35D)。
【0197】
第5-8~第5-11の実施形態によれば、出力指令値が第3の有効電力指令値演算部59に直接供給され、有効電力指令値補正信号で補正されて第3の有効電力指令値として出力される構成であるため、制御の応答性を向上させることができる。また、第4-1、第4-2の実施形態の場合と同様、充放電指令値に応じた発電電動機3の運転を実現することができると共に、高周波成分の少ない第3の有効電力指令値を調速機制御指令値演算部41に供給することができ、ガイドベーン開度指令値を通じて制御される流量調整手段の不要動作(高頻度に繰り返されるガイドベーンの開閉動作など)を低減でき、水路等の水圧変動の低減、流量調整手段の長寿命化を図ることができる。
【0198】
[その他]
前述した第1乃至第5-11の実施形態では、二次電流指令値演算部31および調速機制御指令値演算部41が、電力制御装置100に設けられる場合を例示したが、この例に限定されるものではない。例えば、二次電流指令値演算部31は、電力制御装置100の外(二次励磁装置8など)に設けられてもよく、また、調速機制御指令値演算部41は、電力制御装置100の外(調速機10など)に設けられてもよい。
【0199】
前述した第1乃至第5-11の実施形態では、発電運転において、
図1中の電力制御装置100が「出力指令値」(発電出力の指令値)を入力して制御を行う場合について説明したが、揚水発電設備の揚水運転や揚水設備の揚水運転においては、電力制御装置100は
図20に示すように「入力指令値」(揚水入力の指令値)を入力して制御を行うことが可能である。その場合の電力制御装置100における各部の構成および動作は、前述した第1乃至第5-11の実施形態の説明において「出力指令値」を「入力指令値」に読み換えて解釈すればよい。その場合も、前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0200】
また、前述した第1乃至第5-11の実施形態では、二次励磁装置の二次電流を制御する例について説明したが、二次電流指令値演算部の代わりに二次電圧指令値演算部を設け、二次電流の代わりに二次電圧を制御しても良い。
【0201】
また、前述した第1乃至第5-11の実施形態では、発電電動機の二次巻線側に電力変換装置を接続した例について説明したが、本発明による電力制御装置および電力制御方法は、発電電動機の一次巻線側に電力変換装置を接続した場合にも適用できる。発電電動機の一次側に電力変換装置を接続した場合、後述するように、第2の有効電力指令値は、電力変換制御指令値演算部に入力され、電力変換制御指令値演算部は、電力変換制御指令値を電力変換装置に出力する。
【0202】
また、前述した第1乃至第5-11の実施形態では、二次励磁方式の揚水発電設備の例について説明したが、本発明はフルコンバータ方式の揚水発電設備にも適用できる。
図21、
図22に、
図1、
図20の揚水発電設備において発電電動機の「二次側」ではなく「一次側」、「固定子側」または「電機子側」に電力変換手段を接続する場合の構成の変形例(フルコンバータ方式の揚水発電設備の例)を示す。
【0203】
図21、
図22の変形例では、発電電動機3の一次側に接続される二次励磁装置8の代わりに、発電電動機3の一次側、固定子側または電機子側に接続される電力変換装置108が設けられる。また、励磁用変圧器6および励磁用遮断器7の代わりに遮断器105が設けられる。さらに、角度検出器KAの代わりに回転速度検出器RAが設けられる。一方、電力制御装置100においては、回転速度演算部57の代わりに回転速度入力部157が有効電力制御部20に設けられ、この回転速度入力部157が回転速度検出器RAから出力される回転速度信号を入力して有効電力指令値演算部21Xに供給する。また、二次電流指令値演算部31の代わりに電力変換制御指令値演算部131が設けられる。この電力変換制御指令値演算部131は、有効電力指令値演算部21Xから供給されてくる第2の有効電力指令値を用いて、電力変換装置108に与える電力変換制御指令値を演算し出力する。
【0204】
また、前述した第1乃至第5-11の実施形態および上述の
図21、
図22の変形例では、水力を利用する設備に発明を適用する場合を例示したが、水以外の物質のエネルギーを利用する可変速運転が可能な設備にも適用することができる。その場合、調速機10が制御する機構はガイドベーンではなく、作動流体、燃料、混合気、燃料に混合する物質などの物質の量を調整する弁、ノズルなどとなる。すなわち、水の流量を調整する流量調整手段の代わりに、物質の量を調整する物質量調整手段が適用される。また、原動機はポンプ水車や水車ではなく、他の原動機(蒸気タービン、ガスタービン、エンジンなど)となる。作動流体は水ではなく、水蒸気、二酸化炭素、アンモニアなどとなる。燃料は、天然ガス、ガソリン、軽油、重油、石炭などである。燃料に混合する物質は、空気、水、油などである。
【0205】
以上詳述したように、各実施形態によれば、充放電指令値に応じた運転が可能となり、且つ、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段の不要動作を低減でき、流体が流れる流路の圧力変動の低減、流量調整手段または整流手段あるいは物質量調整手段の長寿命化が可能になる。
【0206】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0207】
1…揚水発電設備、2…ポンプ水車、2A…ガイドベーン、3…発電電動機(回転電機)、4…主要変圧器、5…並列用遮断器、6…励磁用変圧器、7…励磁用遮断器、8…二次励磁装置(電力変換手段)、9…サーボモータ、10…調速機、20…有効電力制御部、21X…有効電力指令値演算部、22…有効落差演算部、23…有効電力測定部、31…二次電流指令値演算部、41…調速機制御指令値演算部、57…回転速度演算部、100…電力制御装置、105…電力変換装置用遮断器、108…電力変換装置、131…電力変換制御指令値演算部、157…回転速度入力部。