(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】交通状況予測装置、および、交通状況予測方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G08G1/00 C
G08G1/00 A
(21)【出願番号】P 2020094243
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美彦
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 浩輔
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012414(WO,A1)
【文献】特開2019-028526(JP,A)
【文献】特開2002-257561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の区間ごとの過去交通状況データ
と、前記道路において発生した車両の渋滞
に関して前記区間ごとの渋滞の長さの増大や減少の変化が本線全体の渋滞の長さの増大や減少の変化を引き起こすという考え方に基づいて渋滞の上流側への伝搬のされ方を学習した機械学習アルゴリズムと、に基づいて
、前記区間を単位とする
、渋滞の平均距離と渋滞の時間の長さの積である渋滞量の予測の学習モデルを生成する生成部と、
前記道路について、道路情報収集端末によって収集された現在の交通状況データを取得する取得部と、
前記区間ごとに
前記渋滞量を予測する場合に、所定の前記区間である
、渋滞の起点となる区間として予め定められた第1の区間について、前記学習モデルと最大収容車両数と前記交通状況データとに基づいて
、前記渋滞量を予測し、
前記第1の区間に上流側に隣接する第2の区間について、前記第1の区間の交通状況の予測結果と、前記学習モデルと前記最大収容車両数と前記交通状況データとに基づいて
前記渋滞量を予測する予測部と、を備える交通状況予測装置。
【請求項2】
前記生成部は、さらに過去気象データを用いて、前記学習モデルを生成し、
前記取得部は、さらに現在の気象データを取得し、
前記予測部は、さらに前記気象データを用いて、前記第1の区間の交通状況と前記第2の区間の交通状況を予測する、請求項1に記載の交通状況予測装置。
【請求項3】
道路の区間ごとの過去交通状況データ
と、前記道路において発生した車両の渋滞
に関して前記区間ごとの渋滞の長さの増大や減少の変化が本線全体の渋滞の長さの増大や減少の変化を引き起こすという考え方に基づいて渋滞の上流側への伝搬のされ方を学習した機械学習アルゴリズムと、に基づいて
、前記区間を単位とする
、渋滞の平均距離と渋滞の時間の長さの積である渋滞量の予測の学習モデルを生成する機械学習ステップと、
前記道路について、道路情報収集端末によって収集された現在の交通状況データを取得する取得ステップと、
前記区間ごとに
前記渋滞量を予測する場合に、所定の前記区間である
、渋滞の起点となる区間として予め定められた第1の区間について、前記学習モデルと最大収容車両数と前記交通状況データとに基づいて
、前記渋滞量を予測し、
前記第1の区間に上流側に隣接する第2の区間について、前記第1の区間の交通状況の予測結果と、前記学習モデルと前記最大収容車両数と前記交通状況データとに基づいて
前記渋滞量を予測する予測ステップと、
を含む交通状況予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交通状況予測装置、および、交通状況予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高速道路等の道路について、過去の交通状況データを教師データとして機械学習を行って交通状況(渋滞状況等)の予測を行う技術がある。
【0003】
また、合流や分岐のある道路の本線の交通状況を予測する場合には、例えば、合流部分から流入する車両台数や分岐部分から流出する車両台数を考慮して予測を行っていた。また、首都高速道路のように道路の構造が複雑な場合、道路の部分ごとに交通状況やその変化の仕方が異なることに対応するために、例えば、道路を複数の区間に区切り、区間ごとに機械学習でそれぞれの交通状況の予測のための学習モデルを構築する手法があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4783414号公報
【文献】特許第6516660号公報
【文献】特許第3742361号公報
【文献】国際公開第2017/094267号
【文献】国際公開第2018/012414号
【文献】特開2011-186940号公報
【文献】特開2010-191614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、交通状況の予測精度の点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、本実施形態の課題は、道路の交通状況を機械学習に基づいて高精度に予測することができる交通状況予測装置、および、交通状況予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の交通状況予測装置は、道路の区間ごとの過去交通状況データに基づいて、前記道路において発生した車両の渋滞の上流側への伝搬のされ方を学習した機械学習アルゴリズムと、に基づいて前記区間を単位とする交通状況の予測の学習モデルを生成する生成部と、前記道路について、道路情報収集端末によって収集された現在の交通状況データを取得する取得部と、前記区間ごとに交通状況を予測する場合に、所定の前記区間である第1の区間について、前記学習モデルと前記最大収容車両数と前記交通状況データとに基づいて交通状況を予測し、前記第1の区間に上流側に隣接する第2の区間について、前記第1の区間の交通状況の予測結果と、前記学習モデルと前記最大収容車両数と前記交通状況データとに基づいて交通状況を予測する予測部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、道路の渋滞の伝搬の様子を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態の交通状況予測システムの全体構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態の交通状況予測装置の機能構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態における渋滞度ラベルと速度との関係の例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施形態における渋滞量を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態の交通状況予測装置による全体処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態の交通状況予測装置による学習処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態の交通状況予測装置による予測処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態における予測結果の例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態における予測結果の例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施形態における予測結果の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の交通状況予測システムについて説明する。なお、以下の実施形態では、道路として高速道路の場合を例にとる。また、交通状況とは、道路における渋滞状況(渋滞の場所、日時、時間の長さ等)や、渋滞の種類(例えば、自然渋滞、事故渋滞、工事渋滞、見物渋滞等)等を含む概念である。以下の実施形態では、交通状況として渋滞状況の場合を例にとる。
【0010】
まず道路における渋滞の伝搬の様子について説明する。
【0011】
図1は、道路の渋滞の伝搬の様子を説明するための図である。
図1に示すように、上り線と下り線を有する道路を区間1、2、3、4、・・・と分割して扱う。また、上り線、下り線において、区間ごとに最大収容車両数(走行可能な車両の最大数)を設定する。
【0012】
例えば、上り線において区間4で車両数が最大収容車両数に近づくと渋滞が発生し、区間4に収まらない車両が隣接する上流である区間3にはみ出ることで、混雑が上流に伝搬する。ここで、区間4は、例えば、渋滞の発生の起点(ボトルネック)となりやすい合流部分、分岐部分、ジャンクション等を含む区間である。
【0013】
下り線についても同様に、例えば、区間1で車両数が最大収容車両数に近づくと渋滞が発生し、区間1に収まらない車両が隣接する上流である区間2にはみ出ることで、混雑が上流に伝搬する。
【0014】
なお、従来技術では、本線につながる支線からの車両の流入の増減が、直接的に本線上の各地点の渋滞の長さの増大や減少を引き起こすという考え方に基づいて渋滞予測を行っていた。一方、本実施形態では、本線を複数の区間に分割し、区間ごとの渋滞の長さを推定し、渋滞の長さの増大や減少の変化が、本線全体の渋滞の長さの増大や減少の変化を引き起こすという考え方に基づいて渋滞予測を行う。
【0015】
図2は、実施形態の交通状況予測システムSの全体構成図である。交通状況予測システムSは、交通状況予測装置1と、車両感知器2と、道路交通管制システム3と、気象データ管理装置4と、を備える。
【0016】
図2において、車両感知器2は、高速道路の路側に設置され、交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などの情報(交通状況データ)を収集する感知器であり、感知した情報を交通状況予測装置1に送信する。
【0017】
なお、交通状況データを収集する装置は、ほかに、道路を走行する車両の乗員により携帯される携帯端末(スマートフォン等)や、車両の車載装置などであってもよい。
【0018】
道路交通管制システム3は、管制対象の道路の実際の交通状況の監視や管理を総合的に行うコンピュータシステムであり、車両感知器2から受信した交通状況データを交通状況予測装置1に送信する。
【0019】
気象データ管理装置4は、各種センサ等によって収集した気象データを管理するコンピュータシステムであり、各種センサ等から受信した気象データを交通状況予測装置1に送信する。
【0020】
図3は、実施形態の交通状況予測装置1の機能構成図である。交通状況予測装置1は、コンピュータ装置であり、処理部11と、記憶部12と、入力部13と、表示部14と、通信部15と、を備える。
【0021】
なお、本実施形態では、交通状況予測装置1について、説明を簡潔にするために、1台のコンピュータ装置によって構成されているものとして説明するが、これに限定されない。交通状況予測装置1は、例えば、複数のコンピュータ装置によって実現されてもよいし、あるいは、クラウドサーバによって実現されてもよい。
【0022】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置であり、各種情報を記憶する。記憶部12は、例えば、道路データ121と、交通状況データ122と、気象データ123と、教師データ124と、学習モデル125と、予測結果126と、を記憶する。
【0023】
道路データ121は、道路に関する情報であり、例えば、区間の識別情報や長さや最大収容車両数等、車線数、インターチェンジ、パーキングエリアの場所等の情報である。
【0024】
交通状況データ122は、道路交通管制システム3から取得した、車両感知器2によって収集された交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などの情報である。なお、以下では、学習モデル125の生成に使用する過去の交通状況データを過去交通状況データと称し、交通状況の予測に使用する現在の交通状況を、現在の交通状況または単に交通状況データと称する。
【0025】
気象データ123は、気象データ管理装置4から取得した気象データ(気温データ、湿度データ、晴れ/曇り/雨/雪等のデータ)である。なお、以下では、学習モデル125の生成に使用する過去の気象データを過去気象データと称し、交通状況の予測に使用する現在の気象データを、現在の気象データまたは単に気象データと称する。
【0026】
教師データ124は、過去交通状況データに対して例えば渋滞度ラベルを付したデータである。
図4は、実施形態における渋滞度ラベルと速度との関係の例を示すグラフである。
図4のグラフにおいて、縦軸は渋滞度ラベルで、横軸は車両の速度である。例えば、
図4に示すように、渋滞度ラベルと速度について、非線形なマッピングを行うことで、例えば低速度域で高精度なマッピングを行うことができる。
【0027】
渋滞度ラベルは、例えば、0(渋滞)と1(非渋滞)の2値でもよいし、3値(渋滞、混雑、自由流)、5値、10値などであってもよい。例えば、過去交通状況データに対して2値で渋滞度ラベルを付す場合、例えば、平均速度20km/h未満の場合に0(渋滞)とし、平均速度20km/h以上の場合に1(非渋滞)とすればよい。
【0028】
図2に戻って、学習モデル125は、道路の区間ごとの過去交通状況データに基づいて、道路において発生した車両の渋滞の上流側への伝番のされ方(言い換えると、どのように上流側に伝搬するか)を学習させた機械学習アルゴリズム等に基づいて生成部112によって生成されるモデルである(詳細は後述)。
【0029】
予測結果126は、予測部113による交通状況の予測の結果である。
【0030】
処理部11は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。MPUは、交通状況予測装置1の動作を統括的に制御する。ROMは、各種プログラムやデータを記憶する記憶媒体である。RAMは、各種プログラムを一時的に記憶したり、各種データを書き換えたりするための記憶媒体である。そして、MPUは、RAMをワークエリア(作業領域)としてROM、記憶部12等に格納されたプログラムを実行する。
【0031】
処理部11は、機能構成として、取得部111と、生成部112と、予測部113と、表示制御部114と、送信制御部115と、を備える。
【0032】
取得部111は、外部装置から各種情報を取得する。例えば、取得部111は、道路について、車両感知器2(道路情報収集端末)によって収集された現在の交通状況データを道路交通管制システム3から取得する。また、取得部111は、気象データ管理装置4から現在の気象データ(気温データ、湿度データ、晴れ/曇り/雨/雪等のデータ等)を取得する。
【0033】
生成部112は、過去交通状況データ(過去の交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などの情報)と、教師データ124と、道路において発生した車両の渋滞がどのように上流側に伝搬するかを学習した機械学習アルゴリズムと、に基づいて区間を単位とする交通状況の予測の学習モデル125を生成する。生成部112は、さらに過去気象データを用いて、学習モデル125を生成してもよい。以下では、過去気象データや気象データも用いるものとして説明する。
【0034】
なお、生成部112は、上述の学習モデル125の生成のために、記憶部12の道路データ121に基づいて、道路の構造情報(例えば主要幹線道路で分岐や合流によってどの区間とどの区間が結合しているなど)や、道路の区間ごとの距離情報や、ボトルネック候補の区間とその区間に隣接する区間等の情報を取得する。
【0035】
また、生成部112は、例えば、1分間隔で収集される交通状況データに対し、3分間隔や5分間隔などの時間的な丸め(平均化)が必要な場合には、各項目について時間平均するなどの処理を行う。
【0036】
また、生成部112は、例えば、過去気象データを計測したセンサの位置情報と、道路の区間の位置情報とを比較して、過去交通状況データと過去気象データの関連付けを行う。
【0037】
また、生成部112は、例えば、CAN(Controller Area Network)データ(ワイパー動作情報、ブレーキ情報、車間距離情報、速度情報など)を用いる場合、その位置情報と、道路の区間の位置情報とを比較して、過去交通状況データとCANデータの関連付けを行う。
【0038】
生成部112は、例えば、それらのような関連付けに基づいて過去交通状況データ、過去気象データ、CANデータ等を統合し、その統合したデータと教師データ124と機械学習アルゴリズムに基づいて学習モデル125を生成する。
【0039】
予測部113は、区間ごとに交通状況を予測する場合に、所定の区間である第1の区間(例えば、渋滞の起点(ボトルネック)となる区間として予め定められた区間)について、学習モデル125、最大収容車両数、交通状況データ122、気象データ123等に基づいて交通状況を予測する。
【0040】
また、予測部113は、第1の区間に上流側に隣接する第2の区間について、第1の区間の交通状況の予測結果126と、学習モデル125、最大収容車両数、交通状況データ122、気象データ123等に基づいて交通状況を予測する。上述のように、本実施形態では、渋滞は上流に伝搬するという考えに基づいて、まずボトルネック候補の区間の渋滞を予測し、その後、次々に、隣接する上流の区間について交通状況の予測を行う(いわゆる畳み込み処理による予測を行う)ことで、予測精度を高めることができる。
【0041】
また、予測する交通状況としては、例えば、渋滞の距離や、渋滞の時間の長さや、渋滞の平均距離と渋滞の時間の長さの積である渋滞量が考えられる。
【0042】
図5は、実施形態における渋滞量を説明するための図である。
図5に示すように、例えば、渋滞の平均距離((1/2)×L)と渋滞の時間の長さ(T)の積が渋滞量である。
図5における三角形A1の面積が渋滞量に相当する。また、四角形A2の面積も渋滞量に相当する。
【0043】
従来技術では、例えば、交通状況を把握するために、交通量Q(=交通密度k×交通速度v)を用いていた。一方、本実施形態では、交通状況としての渋滞状況を把握するために、上述の三角形A1の面積や四角形A2の面積である渋滞量を用いる。渋滞の長さは、渋滞発生時と渋滞解消時はほぼ0でその中間の時刻が最大となっている可能性が高いので、特に上述の三角形A1の面積は渋滞状況を表す指標としてより正確である。
【0044】
図2に戻って、予測する交通状況としては、ほかに、例えば、道路における所定の起点から所定の終点までの走行時間や、渋滞の解消のタイミングや、最長の渋滞長さなども考えられる。
【0045】
また、予測する交通状況として、時間的には、例えば、5分単位で5分後から2時間後程度の近未来の渋滞状況が考えられる。
【0046】
また、交通状況を予測する際に、例えば、合流直前の2つの区間の情報と合流直後の区間の情報を関連付けて予測することができる。つまり、例えば、合流直前の2つの区間の車両はすべて合流直後の区間に流入するものとして扱うことができる。
【0047】
分岐についても同様である。交通状況を予測する際に、例えば、分岐直後の2つの区間の情報と分岐直前の区間の情報を関連付けて予測することができる。つまり、例えば、分岐直前の区間の車両はすべて分岐直後のいずれかの区間に流入するものとして扱うことができる。
【0048】
また、予測部113を実現するための手法として、例えば、時系列データを扱うニューラルネットワークの一種であるLSTM(Long Short-Term Memory)のネットワークが考えられる。
【0049】
LSTMのネットワークを用いて5分単位で5分後から2時間後までの交通状況を予測する場合、まず、1つの区間において、交通状況データ122と気象データ123など、一定時間(例えば5分)内に更新される特徴データの数をmとする。このデータを2時間分用意すると、1つの区間あたりm×24個の入力データが必要となる。また、5分ごとの2時間分の交通状況を表す予測データ(例えば、渋滞の程度を表す3値のデータ)を出力に設定すれば、同じく24個の予測値を出力する。
【0050】
一方、複数区間の情報を扱うために、例えばある着目区間とそれに連結する複数の区間の合計n個の区間を入力区間と考える場合、前述の入力データの特徴量の数は(m×24)×nで、出力は24×n個となる。nについては、各着目区間の影響が及ぶ範囲に限定されるため、多くでも10~20ぐらいが実用的と考えられる。また、特徴量としては、交通状況データ122と気象データ123のほか、イベント情報なども考えられる。
【0051】
表示制御部114は、各種情報を表示部14に表示させる。
【0052】
送信制御部115は、各種情報を外部装置に送信する。例えば、送信制御部115は、予測部113による予測結果126を道路交通管制システム3や道路を走行中の車両や道路の路側に設置されている情報板等に送信する。
【0053】
入力部13は、交通状況予測装置1に対するユーザの操作を受け付ける入力装置であり、例えば、キーボード、マウス等である。
【0054】
表示部14は、液晶表示装置(LCD(Liquid Crystal Display))、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置等により実現される。
【0055】
通信部15は、外部装置との通信を行うための通信インタフェースである。
【0056】
図6は、実施形態の交通状況予測装置1による全体処理の例を示すフローチャートである。ステップS1において、交通状況予測装置1の処理部11は、学習処理を実行する。
ステップS1の後、ステップS2において、処理部11は、予測処理を行う。
【0057】
図7は、実施形態の交通状況予測装置1による学習処理の例を示すフローチャートである。ステップS11において、生成部112は、記憶部12から過去交通状況データを取得する。
【0058】
次に、ステップS12において、生成部112は、記憶部12から過去気象データを取得する。
【0059】
次に、ステップS13において、生成部112は、記憶部12から教師データ124を取得する。
【0060】
次に、ステップS14において、生成部112は、過去交通状況データ、過去気象データ、教師データ124、機械学習アルゴリズム等に基づいて学習モデル125を生成する。
【0061】
図8は、実施形態の交通状況予測装置1による予測処理の例を示すフローチャートである。ステップS21において、予測部113は、記憶部12から現在の交通状況データを取得する。
【0062】
次に、ステップS22において、予測部113は、記憶部12から現在の気象データを取得する。
【0063】
次に、ステップS23~S25において、予測部113は、区間ごとに交通状況を予測する(ステップS24)。ここでは、例えば、予測部113は、まず、渋滞の起点(ボトルネック)となる区間として予め定められた第1の区間について、学習モデル125、最大収容車両数、交通状況データ122、気象データ123等に基づいて交通状況を予測する。
【0064】
次に、予測部113は、第1の区間に上流側に隣接する第2の区間について、第1の区間の交通状況の予測結果126と、学習モデル125、最大収容車両数、交通状況データ122、気象データ123等に基づいて交通状況を予測する。その後、同様にして、予測部113は、上流側に隣接する区間について次々に交通状況を予測する。
【0065】
次に、ステップS26において、送信制御部115は、予測部113による交通状況の予測結果126を道路交通管制システム3や道路を走行中の車両や道路の路側に設置されている情報板等に送信(出力)する。
【0066】
次に、交通状況の予測結果126の例について説明する。
図9は、実施形態における予測結果126の例を示すグラフである。例えば、予測部113は、区間1~10のそれぞれについて時系列に渋滞量(渋滞の平均距離と渋滞の時間の長さの積)を予測し、各区間の渋滞量の合計(総和)を求めることで、全体の渋滞量を算出できる。全体の渋滞量は時間によって異なっており、交通状況の変化を把握する情報として活用できることがわかる。また、このほかに、区間ごとに、時間ごとの平均速度のヒートマップを示す形式で予測結果126を表してもよい。
【0067】
図10は、実施形態における予測結果126の例を示すグラフである。
図10(a)~(c)において、縦軸は渋滞量で、横軸は時間を示す。
図10(a)は、ある区間の5分後について、線L11は予測値を示し、線L12は正解(現実値)を示す。線L11と線L12はほぼ重複しており、予測精度が高いことがわかる。
【0068】
また、
図10(b)は、同じ区間の30分後について、線L21は予測値を示し、線L22は正解(現実値)を示す。線L21と線L22はほぼ重複しており、予測精度が高いことがわかる。
【0069】
また、
図10(c)は、同じ区間の2時間後について、線L31は予測値を示し、線L32は正解(現実値)を示す。線L31と線L32はかなり重複しており、予測精度が、5分後や30分後に比べればやや低いが、それでもかなり高いことがわかる。
【0070】
図11は、実施形態における予測結果126の例を示すグラフである。
図11(a)(b)において、縦軸は渋滞レベル(10段階)で、横軸は時間(1目盛りが5分)を示す。
図11(a)は、ある区間について、線L41は予測値を示し、線L42は正解(現実値)を示す。線L41と線L42は多くの部分で重複しており、予測精度が高いことがわかる。
【0071】
また、
図11(b)は、別のある区間について、線L51は予測値を示し、線L52は正解(現実値)を示す。線L51と線L52は多くの部分で重複しており、予測精度が高いことがわかる。
【0072】
このようにして、本実施形態の交通状況予測装置1によれば、道路の区間ごとに最大収容車両数を予め定め、道路において発生した車両の渋滞がどのように上流側に伝搬するかを学習させた機械学習アルゴリズムによって生成した学習モデル125に基づいて区間ごとに下流から上流に順番に交通状況を予測することで、高精度な予測を実現することができる。
【0073】
例えば、従来技術において道路の区間ごとに異なる学習モデルを構築する手法では、演算量が大きくなること等によって予測精度が高くなかった。本実施形態の交通状況予測装置1によれば、単一の学習モデルを用いることで、演算量を抑え、予測精度を高くできる。
【0074】
そして、高精度な交通状況の予測結果126を、道路交通管制システム3や道路を走行中の車両で活用したり、道路の路側に設置されている情報板に表示したりすることができる。
【0075】
また、学習や予測に気象データ123を用いることで、さらに高精度な予測を実現できる。
【0076】
また、交通状況として、渋滞の距離、渋滞の時間の長さ、渋滞量(渋滞の平均距離と渋滞の時間の長さの積)、道路における所定の起点から所定の終点までの走行時間、渋滞の解消のタイミングなどの多様な情報を予測することができ、利便性が高い。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0078】
例えば、対象となる道路は、高速道路に限定されず、一般道等の他の道路であってもよい。
【0079】
また、学習時と予測時で、渋滞度の分割数を異ならせてもよい。例えば、学習時に10ランクの渋滞度を用い、予測時に10ランクの渋滞度で予測してから、5ランクや3ランクの渋滞度に変換することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…交通状況予測装置、2…車両感知器、3…道路交通管制システム、4…気象データ管理装置、11…処理部、12…記憶部、13…入力部、14…表示部、15…通信部、111…取得部、112…生成部、113…予測部、114…表示制御部、115…送信制御部、S…交通状況予測システム