(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ロックアップ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
F16H45/02 X
(21)【出願番号】P 2020095659
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 允泰
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217447(JP,A)
【文献】特開2019-086009(JP,A)
【文献】特表2020-506343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントカバーからのトルクを、タービンを介してトランスミッション側の部材に伝達するためのトルクコンバータのロックアップ装置であって、
前記フロントカバーと前記タービンとの間に配置されたクラッチ部と、
軸方向に移動自在に配置され、前記クラッチ部をトルク伝達状態にするためのピストンと、
前記フロントカバーの内周部に固定され
、外周面において前記フロントカバー側に形成されたピストン支持部と、
外周面において前記ピストン支持部を挟んで前記フロントカバーと逆側に径方向外方に突出して形成された環状の第1突き合わせ部と、
を有し、前記ピストン支持部は前記ピストンの内周面を軸方向に移動自在に支持する、スリーブと、
前記ピストンと前記タービンとの間に配置され
て前記ピストンとの間に作動油が供給される油室を形成し、内周面に前記第1突き合わせ部の外周先端面に当接して突き合わせ溶接された環状の第2突き合わせ部を有する環状の油室プレートと、
を備え
、
前記第1突き合わせ部は、前記フロントカバー側に径方向に延びる第1係合面を有し、
前記油室プレートは、内周面において前記第1突き合わせ部の前記フロントカバー側に径方向内方に突出する係合部を有し、前記係合部は、径方向内方に延び前記第1係合面に当接する第2係合面を有する、
トルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項2】
前記フロントカバーは、中心部に円形の開口を有しており、
前記スリーブは、前記フロントカバーの開口に挿入され、レーザ溶接された溶接部をさらに有する、
請求項
1に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項3】
前記スリーブは、前記油室に作動油を供給するための油路をさらに有し、前記油路の開口部は、前記ピストン支持部と、前記第1突き合わせ部と、の軸方向間に形成されている、請求項
1又は2に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックアップ装置、特に、フロントカバーからのトルクを、タービンを介してトランスミッション側の部材に伝達するためのトルクコンバータのロックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータには、トルクをフロントカバーからタービンに直接伝達するためのロックアップ装置が設けられている場合が多い。このロックアップ装置は、フロントカバーに摩擦連結可能なピストンと、ピストンに固定される入力側プレートと、入力側プレートに支持される複数のトーションスプリングと、複数のトーションスプリングによってピストン及び入力側プレートに回転方向に弾性的に連結される出力側プレートと、を有している。出力側プレートはタービンに固定されている。
【0003】
特許文献1及び2に示されたロックアップ装置では、ピストンとタービンとの間に、ピストンを作動させるための油室が構成されている。油室は、ピストンと、油室プレートと、で構成されている。油室プレートは、ロックアップ装置のスリーブに固定される。油室プレートは、油室からの油圧だけでなく、タービン側からも高い油圧を受ける。そのため、油室プレートをスリーブに固定する部分には、高い強度が要求される。
【0004】
特許文献1及び2に示されたロックアップ装置において、油室プレートは、溶接によりえスリーブに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-166669号公報
【文献】特開2013-217452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油室プレートを溶接によりスリーブに固定する場合、重ね合わせ溶接が用いられる場合が多い。この重ね合わせ溶接の場合、溶け込み確保のために必要な熱量が大きい。そのため、部材に歪みが生じる。特に、スリーブにおいて、油室プレートが固定される部分の近くには、ピストンを移動自在に支持する部分が設けられている。このピストンを支持する部分には、高い精度が要求される。しかしながら、重ね合わせ溶接を行った場合、この部分にも歪みが生じ、高い精度が得られなくなる場合がある。
【0007】
また、油室プレートを溶接によりスリーブに固定する場合、溶接ビードの発生を抑える必要がある。
【0008】
本発明の課題は、油室プレートによって油室を構成しているロックアップ装置において、油室プレートを溶接によって固定する場合、低い熱量で溶接ができ、かつ溶接ビードの発生を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るロックアップ装置は、フロントカバーからのトルクを、タービンを介してトランスミッション側の部材に伝達するためのトルクコンバータのロックアップ装置である。ロックアップ装置は、クラッチ部と、ピストンと、スリーブと、油室プレートと、を備える。クラッチ部は、フロントカバーとタービンとの間に配置されている。ピストンは、軸方向に移動自在に配置され、クラッチ部をトルク伝達状態にする。スリーブは、フロントカバーの内周部に固定されている。スリーブは、ピストン支持部と、第1突き合わせ部と、を有する。ピストン支持部は、ピストンの内周面を軸方向に移動自在に支持する。第1突き合わせ部は、環状であり、外周面に形成されている。油室プレートは、ピストンとタービンとの間に配置されている。油室プレートは、内周面に第2突き合わせ部を有する。第2突き合わせ部は、第1突き合わせ部に当接して突き合わせ溶接されている。油室プレートは、環状であり、ピストンとの間に作動油が供給される油室を形成する。
【0010】
このロックアップ装置では、スリーブと、油室プレートと、は、突き合わせ部を有する。つまり、油室プレートは、突き合わせ溶接により、スリーブに固定されている。そのため、重ね合わせ溶接に比較して、低い熱量で部材の溶け込みを実現でき、部材の歪みを低減できる。また、発生する溶接ビードを抑えることができる。
【0011】
(2)好ましくは、スリーブは、第1係合部を有する。第1係合部は、スリーブの外周面において、第1突き合わせ部のフロントカバー側に配置される。第1係合部は、第1突き合わせ部よりも小径の環状の部材である、油室プレートは、第2係合部を有する。第2係合部は、油室プレートの内周面において、第2突き合わせ部の油室側に配置される。第2突き合わせ部よりも小径であって、第1係合部に係合する。
【0012】
この場合、スリーブ及び油室プレートは、それぞれ係合部を有する。この場合、油室プレートがトルクコンバータ側から油圧を受けた場合であっても、係合部によって油室プレートがスリーブに支持されえる。そのため、溶接された部分の強度をより強固にすることができる。
【0013】
(3)好ましくは、フロントカバーは、中心部に円形の開口を有している。スリーブは、前記フロントカバーの開口に挿入され、レーザ溶接された溶接部をさらに有している。
【0014】
(4)好ましくは、スリーブは、油室に作動油を供給するための油路をさらに有する。油路の開口部は、ピストン支持部と、第1突き合わせ部と、の軸方向間に形成されている。
【0015】
この場合、ピストン支持部と第1突き合わせ部との軸方向間に油路の開口部が設けられている。すなわち、外周面に高い精度が必要とされるピストン支持部と、溶接される(すなわち高熱にさらされる)第1突き合わせ部と、が軸方向に離れている。したがって、ピストン支持部の外周面(すなわちピストン支持面)に熱影響が及んで精度が低下するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明では、油室プレートによって油室を構成しているロックアップ装置において、油室プレートを溶接によって固定する場合、低い熱量で溶接ができ、かつ溶接ビードの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態によるロックアップ装置を備えたトルクコンバータの断面図。
【
図3】本発明の一実施形態によるダンパ部の斜視図。
【
図4】本発明の一実施形態によるダンパ部の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態によるロックアップ装置4を有するトルクコンバータ1の断面部分図である。
図1の左側にはエンジン(図示せず)が配置され、図の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。なお、
図1に示すO-Oがトルクコンバータ1及びロックアップ装置4の回転軸線である。また、以下では、回転軸から離れる方向を「径方向」とし、回転軸に沿う方向を「軸方向」とする。
【0019】
[トルクコンバータ1の全体構成]
トルクコンバータ1は、エンジン側のクランクシャフト(図示せず)からトランスミッションの入力シャフトにトルクを伝達するための装置である。
図1に示すように、トルクコンバータ1は、フロントカバー2と、トルクコンバータ本体3と、ロックアップ装置4と、を備えている。
【0020】
フロントカバー2は入力側の部材に固定される。フロントカバー2は、実質的に円板状の部材であり、円板部2aと、円板部2aの外周部にトランスミッション側に突出して形成された外周筒状部2bと、を有している。
【0021】
[トルクコンバータ本体3]
トルクコンバータ本体3は、インペラ10、タービン11、及びステータ12を有している。インペラ10は、フロントカバー2の外周筒状部2bに溶接により固定されたインペラシェル15を有している。タービン11は、流体室内でインペラ10に対向して配置されている。タービン11は、外郭を構成するタービンシェル16を有している。タービンシェル16の内周部には、タービンハブ17が設けられている。タービンハブ17は、中心部に設けられたハブ17aと、ハブ17aの外周から径方向外側に延びるフランジ17bと、を有している。フランジ17bは、リベット18によってタービンシェル16の内周部に固定されている。また、ハブ17aの内周部には、トランスミッションの入力シャフト(図示せず)が係合するスプライン孔17cが形成されている。ステータ12は、インペラ10とタービン11の内周部間に配置され、タービン11からインペラ10に戻る作動油を整流する。ステータ12は、ワンウエイクラッチ20を介して、固定シャフトに支持されている。なお、ステータ12とインペラ10及びタービンハブ17との間には、それぞれ第1スラストベアリング21,第2スラストベアリング22が設けられている。
【0022】
[ロックアップ装置4]
図1及び
図2に示すように、ロックアップ装置4は、フロントカバー2とトルクコンバータ本体3との間の空間に配置されている。ロックアップ装置4は、フロントカバー2からのトルクをトルクコンバータ1のタービン11を介して、トランスミッション側の部材に伝達する。ロックアップ装置4は、クラッチ部24と、ピストン25を含むクラッチ作動部27と、ダンパ部28と、を有している。
【0023】
<クラッチ部24>
図1及び
図2に示すように、クラッチ部24は、フロントカバー2と、タービン11と、の間に配置されている。クラッチ部24は、トルクを伝達あるいは遮断する。
【0024】
クラッチ部24は、多板型のクラッチである。クラッチ部24は、内周ドラム30と、外周ドラム31と、それぞれ複数の第1クラッチプレート32及び第2クラッチプレート33と、を有している。
【0025】
内周ドラム30は、固定部30aと、内周筒状部30bと、を有している。固定部30aは、円板で環状に形成されており、フロントカバー2の側面に溶接により固定されている。内周筒状部30bは、固定部30aの外周部をタービン11側に折り曲げ加工されたものである。この内周筒状部30bには、円周方向に所定の間隔で複数の溝が形成されている。
【0026】
外周ドラム31は、連結部31aと、外周筒状部31bと、を有している。連結部31aは、円板で環状に形成されている。外周筒状部31bは、連結部31aの内周部をフロントカバー2側に折り曲げ加工されたものである。外周筒状部31bは、径方向において内周ドラム30の内周筒状部30bと対向するように配置されている。この外周筒状部31bには、円周方向に所定の間隔で複数の溝が形成されている。
【0027】
複数の第1クラッチプレート32及び第2クラッチプレート33は、円板状に形成され、軸方向に交互に配置されている。第1クラッチプレート32の内周部には複数の歯が形成されており、これらの歯が内周ドラム30の内周筒状部30bの溝にスライド自在に係合している。したがって、第1クラッチプレート32は、内周ドラム30に対して相対回転不能であり、かつ軸方向に移動自在である。また、第2クラッチプレート33は、両面に摩擦材が固定されている。第2クラッチプレート33の外周部には複数の歯が形成されており、これらの歯が外周ドラム31の外周筒状部31bの溝にスライド自在に係合している。したがって、第2クラッチプレート33は、外周ドラム31に対して相対回転不能であり、かつ軸方向に移動自在である。
【0028】
<クラッチ作動部27>
クラッチ作動部27は、クラッチ部24をオン(ロックアップオン状態、すなわち動力伝達状態)又はオフ(ロックアップオフ状態、すなわち動力伝達解除状態)にするための機構であり、ピストン25と、スリーブ35と、油室プレート36と、を有している。
【0029】
-ピストン25-
ピストン25は、環状に形成され、フロントカバー2のトランスミッション側に配置されている。ピストン25は、スリーブ35に軸方向に移動自在に支持されている。ピストン25は、クラッチ部をトルク伝達状態にする。
【0030】
ピストン25は、円板部25aと、内周筒状部25bと、外周筒状部25cと、を有している。円板部25aの外周部はフロントカバー2側に膨らんでおり、クラッチ部24の第1クラッチプレート32を押圧可能である。内周筒状部25bは円板部25aの内周端部からフロントカバー2側に突出して形成されている。外周筒状部25cは円板部25aの外周端部からタービン11側に突出して形成されている。
【0031】
-スリーブ35-
スリーブ35は、軸方向に延びる部材であり、中心部に空間を有している。スリーブ35のエンジン側がフロントカバー2の内周開口部Qに挿入され、フロントカバー2に溶接により固定されている。また、スリーブ35は、フロントカバー2のタービン11側に、ピストン支持部35aと、第1突き合わせ部35bと、第1係合部35cと、溶接部と、を有している。
【0032】
ピストン支持部35aは、外周面において、ピストン25の内周面を軸方向に移動自在に支持する。第1突き合わせ部35bは、ピストン支持部35aのタービン11側の外周面に環状に形成されている。第1係合部35cは、第1突き合わせ部35bのピストン支持部35a側に第1突き合わせ部35bと隣接して形成されている。第1係合部35cは、環状であって、第1突き合わせ部35bより小径である。すなわち、第1突き合わせ部35bと第1係合部35cとの間には段差が形成されている。溶接部は、レーザ溶接されている。
【0033】
-油室プレート36-
油室プレート36は円板状である。油室プレート36は、ピストン25とタービン11との間に配置されている。油室プレート36は、ピストン25との間に、作動油が供給される油室Cを形成している。ピストン支持部35aの外周面にはシール部材38が設けられ、ピストン支持部35aとピストン25の内周筒状部25bとの間がシールされている。また、油室プレート36の外周面にはシール部材39が設けられ、油室プレート36とピストン25の外周筒状部25cとの間がシールされている。これらの構成によって、油室Cがシールされている。
【0034】
ここで、ピストン25の円板部25aには、フロントカバー2側に凹む複数の凹部25dが設けられている。また、油室プレート36には、ピストン25の凹部25dに挿入されて係合する複数の凸部36aが設けられている。したがって、ピストン25と油室プレート36、ひいてはフロントカバー2は、相対回転不能であり、互いに一体回転する。
【0035】
油室プレート36は、内周面に、第2突き合わせ部36bと、第2係合部36cと、を有する。第2突き合わせ部36bは、スリーブ35の第1突き合わせ部35bに当接して突き合わせ溶接されている。第2係合部36cは、環状であって、第2突き合わせ部36bの油室側に形成されている。第2係合部36cは、第2突き合わせ部36bよりも小径である。
【0036】
このような構成では、スリーブ35と油室プレート36とを突き合わせ溶接しているので、他の重ね合わせ溶接等による溶接に比較して低い熱量で両部材35,36を接続することができ、しかも溶接ビードが少なくなる。
【0037】
また、各突き合わせ部35b,36bの油室側に、各突き合わせ部35b,36bより小径の第1係合部35c及び第2係合部36cが設けられ、これらの係合部35c,36cが係合している。したがって、油室Cの油圧が高くなり、油室プレート36がタービン11側に押圧されても、油室プレート36の第2係合部36cがスリーブ35の第1係合部35cで支持され、スリーブ35と油室プレート36の接合強度を高く維持できる。
【0038】
-油路-
スリーブ35には第1油路P1及び第2油路P2が形成されている。
【0039】
第1油路P1は、スリーブ35の内周と油室Cとを接続している。第1油路P1の径方向外側の開口部は、ピストン支持部35aの外周面と、第1突き合わせ部35bと、の軸方向間に形成されている。ここでは、ピストン支持部35aと第1突き合わせ部35bとの軸方向間に第1油路P1の開口部が設けられている。すなわち、外周面に高い精度が必要とされるピストン支持部35aと、溶接される(すなわち高熱にさらされる)第1突き合わせ部35bと、が軸方向に離れている。したがって、ピストン支持部35aの外周面(すなわちピストン支持面)に熱影響が及んで精度が低下するのを抑えることができる。
【0040】
第2油路P2は、スリーブ35の内周と、フロントカバー2とピストン25との間の空間と、を接続している。
【0041】
<ダンパ部28>
ダンパ部28は、ロックアップ装置4の外周側部に配置されている。ダンパ部28は、クラッチ部24からのトルクをタービン11に伝達するとともに、捩り振動を吸収・減衰する。
【0042】
図1~
図4に示すように、ダンパ部28は、外周ドラム31の連結部31aに固定されたリティニングプレート45と、複数のトーションスプリング46と、ドリブンプレート47と、サポートプレート50と、を有している。
【0043】
-リティニングプレート45-
リティニングプレート45は、円板状に形成されている。リティニングプレート45は、フロントカバー2とドリブンプレート47との軸方向間に配置されている。リティニングプレート45は、クラッチ部24に連結されている。リティニングプレート45は、複数のトーションスプリング46を軸方向及び径方向に支持するとともに、複数のトーションスプリング46と回転方向に係合している。
【0044】
リティニングプレート45は、入力側連結部451と、収容部452と、対向部453と、を有する。
【0045】
入力側連結部451は、リティニングプレート45の内周側の部分である。入力側連結部451は、リベット19によってクラッチ部24の連結部31aに固定されている。
【0046】
複数の収容部452は、フロントカバー2側に膨らんだ、断面C形状である。収容部452は、入力側連結部451の外周側の端部からさらに外周に延びる。複数の収容部452は、円周方向に並べて配置されており、内部にトーションスプリング46が収容されている。本実施形態においては、収容部452の数は3個である。
【0047】
対向部453は、入力側連結部451の内周側の端部からタービン11側に延びて形成されており、先端がドリブンプレート47に当接可能である。
【0048】
-ドリブンプレート47-
ドリブンプレート47は、略円板状であり、リティニングプレート45と相対回転可能である。
【0049】
ドリブンプレート47は、円板部471と、出力側支持部472と、複数の係合部473と、を有する。
【0050】
円板部471は、内周部が、リベット18によってタービン11のタービンシェル16の外周部、及び、タービンハブ17に固定されている。
【0051】
出力側支持部472は、円板部471の径方向中間部において、軸方向に所定の幅を有する筒状に形成される。
【0052】
複数の係合部473は、円板部471の外周端部からさらに径方向外方に延びて形成される。係合部473の外周部は、リティニングプレート45側に折れ曲がっている。この折れ曲がった部分が、トーションスプリング46の端面に係合している。
【0053】
-トーションスプリング46-
複数のトーションスプリング46は、リティニングプレート45の収容部452に収容されている。本実施形態においては、トーションスプリング46の数は、3個である。
【0054】
トーションスプリング46は、リティニングプレート45と、ドリブンプレート47と、を回転方向に弾性的に連結する。
【0055】
トーションスプリング46の円周方向の端部は、ドリブンプレート47の係合部473の外周部に係合する。
【0056】
-サポートプレート50-
サポートプレート50は、略円板状であり、複数の連結部51と、規制部52と、複数のストッパ部53と、を有する。
【0057】
複数の連結部51は、リティニングプレート45と、ドリブンプレート47と、の軸方向間に配置されている。各連結部51は、リベット19によってリティニングプレート45に連結されている。
【0058】
規制部52は、環状に形成され、ドリブンプレート47と、タービン11と、の間に配置されている。規制部52は、リティニングプレート45の一部との軸方向間にドリブンプレート47を挟むように設けられている。規制部52は、リティニングプレート45の対向部453と軸方向に対向する。また、規制部52の内周端面は、ドリブンプレート47の出力側支持部472に支持されている。これにより、サポートプレート50はドリブンプレート47によって径方向に位置決めされている。
【0059】
ストッパ部53は、複数の連結部51と、規制部52と、の間に、これらを連結するように配置されている。ストッパ部53の円周方向長さは、連結部51の円周方向長さよりも短い。より具体的には、ストッパ部53は、連結部51の径方向内側の端部から、軸方向においてタービン11側に延びて形成される。ストッパ部53の軸方向においてタービン11側の端部から、規制部52が径方向内側に延びて形成される。ストッパ部53は、サポートプレート50と、ドリブンプレート47と、が軸方向に交差した部分である。
【0060】
ストッパ部53は、ドリブンプレート47の係合部473の内周部(より詳細には、係合部473の円周方向の端面)に当接可能である。ストッパ部53は、リティニングプレート45とドリブンプレート47とが所定角度以上に相対回転するのを禁止する。
【0061】
サポートプレート50はさらに、複数の支持部54を有する。支持部54は、連結部51の外周部に設けられる。支持部54は、連結部51の外周部を、タービン11側に折り曲げた部分である。支持部54は、トーションスプリング46の内周面を支持する。本実施形態においては、支持部54の数は、3個である。
【0062】
複数の支持部54のそれぞれの円周方向長さは、前述のように、ストッパ部53の円周方向長さよりも長い。複数の支持部54のそれぞれの円周方向長さは、弾性部材の円周方向長さの30%以上である。
【0063】
[動作]
まず、トルクコンバータ本体3の動作について説明する。フロントカバー2及びインペラ10が回転している状態では、作動油がインペラ10からタービン11へ流れ、さらにステータ12を介してインペラ10に流れる。これにより、作動油を介してインペラ10からタービン11へトルクが伝達される。タービン11に伝達されたトルクは、タービンハブ17を介してトランスミッションの入力シャフトに伝達される。
【0064】
トルクコンバータ1の速度比が上昇し、入力シャフトが一定の回転速度になると、第1油路P1を介して油室Cに作動油が供給される。また、第2油路P2を介して、フロントカバー2とピストン25との間の空間の作動油が排出される。これにより、ピストン25は、フロントカバー2側に移動する。この結果、ピストン25の押圧部が、第1クラッチプレート32及び第2クラッチプレート33をフロントカバー2の側面に押圧し、ロックアップ状態(クラッチオン状態)になる。
【0065】
以上のようなクラッチオン状態では、トルクはロックアップ装置4を介してフロントカバー2からトルクコンバータ本体3に伝達される。すなわち、フロントカバー2に入力されたトルクは、ロックアップ装置4において、クラッチ部24及びダンパ部28を介してタービンハブ17に出力される。このクラッチオン状態では、ロックアップ装置4のダンパ部28によってトルク変動が減衰される。
【0066】
[特徴]
ロックアップ状態からロックアップをオフ(クラッチオフ状態)にする場合は、油室Cがドレンに接続される。これにより、油室Cの作動油は、第1油路P1を介して排出される。そして、ピストン25はタービン11側に移動し、第1クラッチプレート32及び第2クラッチプレート33に対するピストン25の押圧が解除される。これにより、クラッチオフ状態になる。
【0067】
このロックアップ装置4では、スリーブ35と、油室プレート36と、は、突き合わせ部35b,36bを有する。つまり、油室プレート36は、突き合わせ溶接により、スリーブ35に固定されている。そのため、重ね合わせ溶接により固定される場合に比較して低い熱量でスリーブ35と油室プレート36とを溶接でき、しかも溶接ビードの発生を抑えることができる。
【0068】
このロックアップ装置4では、トーションスプリング46を取り付けている部材とは別に、サポートプレート50を備え、サポートプレート50でトーションスプリング46の内周面を支持する。そのため、リティニングプレート45において、トーションスプリング46を取り付けている部材に切り起こし部等を形成する必要がなく、トーションスプリング46を取り付けている部材の強度が低下しない。さらに、サポートプレート50が別部材であるため、トーションスプリング46を支持する部分の円周方向長さを長くすることができる。その結果、トーションスプリング46の作動が安定する。
【0069】
このロックアップ装置4ではさらに、1対の入力側の部材(リティニングプレート45及びサポートプレート50)でドリブンプレート47を挟み込み、それらを軸方向に互いに相対移動不能にしている。このロックアップ装置4ではさらに、サポートプレート50と、ドリブンプレート47と、を円周方向に当接させて、捩り角度を規制するためのストッパ機構を構成している。すなわち、互いに軸方向に相対移動不能なサポートプレート50とドリブンプレート47とによりストッパ機構が構成されている。このため、従来のストッパ機構における問題点、すなわち、爪と係合孔との係合が外れること(ストッパ機構の外れ)がなくなる。
【0070】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0071】
(a)前記実施形態では、スリーブ35の外周面において、各突き合わせ部35b,36bをタービン11側に、各係合部35c,36cをフロントカバー2側に配置したが、これらは逆であってもよい。すなわち、各突き合わせ部35b,36bをフロントカバー2側に、各係合部35c,36cをタービン11側に配置してもよい。
【0072】
(b)第1係合部35cと第2係合部36cとは、互いの側面が軸方向において接触していればよく、第1係合部35cの外周面と第2係合部36cの内周面とは当接していてもよいし、離れていてもよい。
【0073】
(c)前記実施形態では、サポートプレート50とリティニングプレート45とを軸方向に互いに相対移動不能とし、これらのプレートによってストッパ機構を構成したが、入力側の部材はサポートプレート50に限定されず、出力側の部材はリティニングプレート45に限定されない。入力側の部材と出力側の部材とを軸方向に相対移動不能とし、それらによってストッパ機構を構成すれば、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0074】
(d)サポートプレート50のストッパ部53の構成は前記実施形態に限定されない。例えば、サポートプレート50の一部を軸方向に折り曲げる等してストッパ部53を形成してもよい。
【0075】
(e)クラッチ部24及びダンパ部28の構成は、前記実施形態に限定されない。例えば、クラッチ部24は、単板タイプでも本発明を同様に適用できる。また、ダンパ部28が設けられていないロックアップ装置4においても、本発明を同様に適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 トルクコンバータ
2 フロントカバー
4 ロックアップ装置
24 クラッチ部
25 ピストン
35 スリーブ
35a ピストン支持部
35b 第1突き合わせ部
35c 第1係合部
36 油室プレート
36b 第2突き合わせ部
36c 第2係合部
C 油室
P1 第1油路