(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ガス中水分量変化検出装置および除湿装置の状態検出装置
(51)【国際特許分類】
C25B 15/023 20210101AFI20240311BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20240311BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240311BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240311BHJP
H01M 8/04 20160101ALN20240311BHJP
H01M 8/0656 20160101ALN20240311BHJP
【FI】
C25B15/023
B01D53/26 231
C25B1/04
C25B9/00 A
H01M8/04 N
H01M8/0656
(21)【出願番号】P 2020099626
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】渡並 洋介
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆利
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180612(JP,A)
【文献】特開2004-188361(JP,A)
【文献】特開2001-004191(JP,A)
【文献】特開2013-249488(JP,A)
【文献】特開2014-040637(JP,A)
【文献】特開2013-185915(JP,A)
【文献】特開2015-197325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26-53/28
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流動方向に間隔を空けて配置され、前記ガスの流量を測定する複数の流量測定部であって、前記ガス中の水分量の変化による前記ガスの流量の測定値への影響が互いに異なる複数の流量測定部と、
前記複数の流量測定部の測定値の差に基づいて前記ガス中の水分量の変化を検出する水分量変化検出部と、
を備えるガス中水分量変化検出装置
であって、
前記複数の流量測定部は、前記ガス中の水分量の変化による前記ガスの流量の測定値への影響を受けない第1流量測定部と、前記第1流量測定部よりも前記ガスの下流側に配置され、前記ガス中の水分量の変化による前記ガスの流量の測定値への影響を受ける第2流量測定部と、を有し、
前記ガスは、水素であり、
前記ガス中水分量変化検出装置は、
水を電気分解して前記水素と酸素とを生成する水電解装置を更に備え、
前記第1流量測定部は、前記電気分解に用いられる電解電流に基づいて、次式にしたがって前記水素の流量を測定する、ガス中水分量変化検出装置。
前記水素の流量=電流効率×前記電解電流×変換係数
ただし、前記変換係数は、次式で表される。
前記変換係数=水素のモル体積/水素分子の原子量/ファラデー定数×前記水電解装置を構成する水電解セルのセル数
【請求項2】
前記水分量変化検出部は、前記複数の流量測定部間の間隔による前記複数の流量測定部間における前記ガスの流量の測定時間の差を考慮して、前記測定時間の差に相当する時間差で取得された前記複数の流量測定部の測定値の差に基づいて前記ガス中の水分量の変化を検出する、請求項1に記載のガス中水分量変化検出装置。
【請求項3】
前記複数の流量測定部は、前記ガスの流量に応じた温度変化と前記ガスの比熱とを用いて前記ガスの流量を測定する熱式流量計を含む、請求項1または2に記載のガス中水分量変化検出装置。
【請求項4】
前記水電解装置で生成された前記水素中の水分を除去する除湿装
置を更に備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス中水分量変化検出装置。
【請求項5】
前記水分量変化検出部は、補正係数を用いて前記複数の流量測定部の測定値を補正し、補正後の前記複数の流量測定部の測定値の差に基づいて前記ガス中の水分量の変化を検出する、請求項1~
4のいずれか1項に記載のガス中水分量変化検出装置。
【請求項6】
水を電気分解して水素と酸素とを生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された前記水素の流量を測定する第1流量測定部であって、前記水素中の水分量の変化による前記水素の流量の測定値への影響を受けない第1流量測定部と、
前記水電解装置で生成された水素中の水分を除去する除湿装置と、
前記除湿装置で水分が除去された水素の流量を測定する第2流量測定部であって、前記水素中の水分量の変化による前記水素の流量の測定値への影響を受ける第2流量測定部と、
前記第1流量測定部の測定値と前記第2流量測定部の測定値との差に基づいて前記水素中の水分量の変化を検出する水分量変化検出部と、
を備えたガス中水分量変化検出装置に備えられ、
前記水分量変化検出部で検出された水分量の変化に基づいて前記除湿装置の状態を検出する除湿状態検出部を備える、除湿装置の状態検出装置
であって、
前記第1流量測定部は、前記電気分解に用いられる電解電流に基づいて、次式にしたがって前記水素の流量を測定する、除湿装置の状態検出装置。
前記水素の流量=電流効率×前記電解電流×変換係数
ただし、前記変換係数は、次式で表される。
前記変換係数=水素のモル体積/水素分子の原子量/ファラデー定数×前記水電解装置を構成する水電解セルのセル数
【請求項7】
前記除湿装置は、
前記水電解装置側から導入された前記水素中の水分を吸着して除去し、水分が除去された水素を前記第2流量測定部側に排出する複数の吸着筒と、
前記複数の吸着筒を用いた前記水素中の水分の除去を制御する除湿制御部と、を備え、
前記除湿状態検出部は、前記水分量変化検出部の検出結果に基づいて、前記除湿装置の状態として前記複数の吸着筒の飽和状態を検出し、
前記除湿制御部は、前記飽和状態が検出されていない吸着筒については、当該吸着筒に前記水素を通して水分を除去させ、水分が除去された水素を前記第2流量測定部側に排出させ、前記飽和状態が検出された吸着筒については、当該吸着筒を加熱しながら当該吸着筒に前記飽和状態が検出されていない吸着筒から前記第2流量測定部側に排出される水素の一部を分岐させて通すことで、前記飽和状態を解消させる、請求項
6に記載の状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、ガス中水分量変化検出装置および除湿装置の状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇、および大気中への二酸化炭素の放出による地球温暖化への対策が様々な産業分野で推進されており、例えば、化石燃料によらないエネルギー源として、太陽光や風力などに代表される再生可能エネルギーが利用されるようになった。再生可能エネルギーは時間変動があるため、時間変動を抑制するには大容量のエネルギー貯蔵装置が必要となる。
【0003】
大容量のエネルギー貯蔵装置として、水素エネルギーを利用したものがある。これは、再生可能エネルギーが需要よりも大きい時間帯に、水または水蒸気を電気分解する水電解装置を再生可能エネルギーによって稼働させて水素を製造および貯蔵し、一方、再生可能エネルギーが需要よりも小さい時間帯に、貯蔵した水素のエネルギーを、例えば燃料電池によって電気と熱エネルギーに変換して利用するものである。
【0004】
水電解装置で製造された水素は、水分が多く露点が高いため、貯蔵や利用の前に、除湿装置による除湿が行われる。このような水素の除湿に関する技術として、例えば、特許文献1では、吸着材を充填した除湿筒と露点計とを備え、露点計で除湿筒が飽和状態に至ったか否かを検出する技術が開示されている。また、特許文献2では、吸着剤を充填した除湿筒を2以上備え、一方の除湿筒で湿潤ガスの除湿を行う際には、他方の除湿筒で吸着剤の再生を行い得る技術が開示されている。特許文献2では、吸着と再生とを交互に切り換えて除湿筒を使用することにより、乾燥ガスを連続的に供給し、また、露点計で再生時の排出ガスの水分量(再生状況)を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-40637号公報
【文献】特開2019-148001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス中の水分量を測定する露点計としては、例えば、酸化アルミ膜静電容量センサが知られているが、このような露点計を用いる場合、センサに水分が吸着したときの応答性が悪くなり、また、パージ用のガスが必要となって装置が大掛かりになるといった課題がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、露点計を用いずにガス中の水分量の変化を把握することができるガス中水分量変化検出装置および除湿装置の状態検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によるガス中水分量変化検出装置は、ガスの流量を測定する複数の流量測定部と、水分量変化検出部とを備える。複数の流量測定部は、ガスの流動方向に間隔を空けて配置され、ガス中の水分量の変化によるガスの流量の測定値への影響が互いに異なる。水分量変化検出部は、複数の流量測定部の測定値の差に基づいてガス中の水分量の変化を検出する。
【0009】
本実施形態による除湿装置の状態検出装置は、水電解装置と、第1流量測定部と、除湿装置と、第2流量測定部と、水分量変化検出部と、を備えたガス中水分量変化検出装置に備えられている。水電解装置は、水を電気分解して水素と酸素とを生成する。第1流量測定部は、水電解装置で生成された水素の流量を測定し、水素中の水分量の変化による水素の流量の測定値への影響を受けない。除湿装置は、水電解装置で生成された水素中の水分を除去する。第2流量測定部は、除湿装置で水分が除去された水素の流量を測定し、水素中の水分量の変化による水素の流量の測定値への影響を受ける。水分量変化検出部は、第1流量測定部の測定値と第2流量測定部の測定値との差に基づいて水素中の水分量の変化を検出する。除湿装置の状態検出装置は、水分量変化検出部で検出された水分量の変化に基づいて除湿装置の状態を検出する除湿状態検出部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態によるガス中水分量変化検出装置を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態によるガス中水分量変化検出装置において、第1流量測定センサおよび第2流量測定センサのセンサ値を示すグラフである。
【
図3】第2の実施形態によるガス中水分量変化検出装置を示すブロック図である。
【
図4】第2の実施形態によるガス中水分量変化検出装置において、除湿装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。また、各実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるガス中水分量変化検出装置10を示すブロック図である。ガス中水分量変化検出装置10は、複数の流量測定部の一例である第1流量測定センサ1および第2流量測定センサ2と、水分量変化検出部3とを備える。
【0013】
第1流量測定センサ1と第2流量測定センサ2とは、ガスの流動方向に間隔を空けて配置され、ガスの流量を測定するセンサである。言い換えれば、第1流量測定センサ1および第2流量測定センサ2はガスの流動方向に沿って直列に配置されている。
図1に示される例において、第2流量測定センサ2は、第1流量測定センサ1よりもガスの下流側に配置されている。第1流量測定センサ1および第2流量測定センサ2は、それぞれの配置位置すなわち測定位置においてガスの流量を測定し、測定値としてのセンサ値を出力する。以下、第1流量測定センサ1のセンサ値をセンサ値_1と呼び、第2流量測定センサ2のセンサ値をセンサ値_2と呼ぶこともある。
【0014】
第1流量測定センサ1と第2流量測定センサ2とは、ガス中の水分量の変化によるガスの流量の測定値への影響が互いに異なるセンサである。
図2は、第1の実施形態によるガス中水分量変化検出装置10において、第1流量測定センサ1および第2流量測定センサ2のセンサ値を示すグラフである。
図2に示される例において、第1流量測定センサ1は、ガス中の水分量の変化によるセンサ値への影響を受けないセンサであり、ガスの流量が一定であれば、ガス中の水分量が変化したとしてもセンサ値_1は一定値を維持する。一方、
図2に示される例において、第2流量測定センサ2は、ガス中の水分量の変化によるセンサ値への影響を受けるセンサであり、ガスの流量が一定であっても、ガス中の水分量の増加によってセンサ値_2が増加する。
【0015】
ガス中の水分量の変化によるセンサ値_2への影響を受ける第2流量測定センサ2としては、例えば、ガスの流量に応じた温度変化とガスの比熱とを用いてガスの流量を測定する熱式流量計を用いることができる。
【0016】
第2流量測定センサ2が熱式流量計である場合、センサ値_2は、次式を満たす。
センサ値_2=熱式センサ係数×温度差/ガス比熱 (1)
数式(1)において、「熱式センサ係数」は、熱式流量計に固有の係数(定数)である。「温度差」は、ガスの流路上の上流側および下流側の2つの温度測定点間の温度差である。
【0017】
数式(1)における「ガス比熱」は、ガス中の水分量の関数となり、例えば次式のように近似することができる。
ガス比熱≒(1-水分率)×純ガス比熱+水分率×水分飽和ガス比熱 (2)
数式(2)において、「水分率」は、ガスの量を1とした場合のガス中の水分量の比率である。「純ガス比熱」は、水分で飽和していないガスの比熱である。「水分飽和ガス比熱」は、水分で飽和したガスの比熱である。
【0018】
数式(1)および数式(2)から分かるように、第2流量測定センサ2が熱式流量計である場合、センサ値_2は、ガス中の水分量の変化に応じて変化する。すなわち、センサ値_2は、ガス中の水分量の変化による影響を受ける。
【0019】
一方、ガス中の水分量の変化によるセンサ値_1への影響を受けない第1流量測定センサ1の具体例については、第2の実施形態において説明する。
【0020】
水分量変化検出部3は、第1流量測定センサ1から出力されたセンサ値_1と、第2流量測定センサ2のセンサ値_2から出力されたセンサ値_2とを入力し、センサ値_1とセンサ値_2との差に基づいてガス中の水分量の変化を検出する。
【0021】
図2に示したように、第1流量測定センサ1のセンサ値_1はガス中の水分量の変化を反映していないのに対して、第2流量測定センサ2のセンサ値_2はガス中の水分量の変化を反映し、ガス中の水分量の増加にともなって増加する。
【0022】
したがって、第1流量測定センサ1のセンサ値_1と第2流量測定センサ2のセンサ値_2との差は、ガス中の水分量の変化の大きさを示している。すなわち、水分量変化検出部3は、第1流量測定センサ1のセンサ値_1と第2流量測定センサ2のセンサ値_2との差を算出することで、ガス中の水分量の変化を検出することができる。ガス中の水分量の変化は、次式のようにセンサ値_1とセンサ値_2との差の関数として検出することができる。
【0023】
ガス中水分量変化=f(センサ値_2-センサ値_1) (3)
【0024】
ガス中の水分量の変化は、ガス中の水分量の変化の有無として検出されてもよく、または、ガス中の水分の変化量として具体的に検出されてもよい。
【0025】
水分量変化検出部3は、CPU、回路等のハードウェアで構成することができる。水分量変化検出部3の一部をソフトウェアで構成してもよい。
【0026】
なお、第1流量測定センサ1と第2流量測定センサ2との間の間隔(距離)が大きい場合には、第1流量測定センサ1と第2流量測定センサ2との間で、同じ範囲(部分)のガスの流量を測定する測定時間(すなわち測定時刻)の差が大きくなる。この場合、もし水分量変化検出部3が互いに同じ測定時間に測定されたセンサ値_1とセンサ値_2とを用いると、違う範囲のガスの流量の測定値を用いることになる。この場合、センサ値_1とセンサ値_2との差は、ガス中の水分量の変化だけでなく、ガスの範囲が異なることによる実際のガスの流量の差をも反映している場合があるため、ガス中の水分量の変化だけを正確に検出できない虞がある。
【0027】
したがって、第1流量測定センサ1と第2流量測定センサ2との間の間隔が大きい場合、水分量変化検出部3は、第1流量測定センサ1と第2流量測定センサ2との間におけるガスの流量の測定時間の差を考慮して、当該測定時間の差に相当する時間差で取得されたセンサ値_1とセンサ値_2との差に基づいてガス中の水分量の変化を検出することが望ましい。この場合、ガス中の水分量の変化は、次式のように測定時間が異なるセンサ値_1とセンサ値_2との差の関数として検出することができる。
【0028】
ガス中水分量変化=f(センサ値_2(t+td)-センサ値_1(t)) (4)
ただし、数式(4)において、「td」は、第1流量測定センサ1と第2流量測定センサ2との測定時間の差である。「td」は、次式で表すことができる。
td≒センサ間距離/ガス平均流速 (5)
センサ間距離は既知の値であるので、ガス平均流速を一定とみなす場合は、tdは定数となる。
【0029】
また、第2流量測定センサ2は、ガス中の水分量に応じてセンサ値_2のばらつきが大きくなる方式であってもよい。この場合、第1流量測定センサ1および第2流量測定センサ2に対して以下のようにセンサ値を補正することで、センサ値_2のばらつきがガス中の水分量の変化の検出に与える影響を抑えることができる。
補正後のセンサ値_1=水分補正係数×補正前のセンサ値_1 (6)
補正後のセンサ値_2=(1-水分補正係数)×補正前のセンサ値_2 (7)
ただし、数式(6)および数式(7)において、「水分補正係数」は、(1+水分率)/2である。この場合、ガス中の水分率が0の場合、水分補正係数は1/2になる。
【0030】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、ガス中の水分量の変化による影響が異なる第1流量測定センサ1のセンサ値_1と第2流量測定センサ2のセンサ値_2との差に基づいて、露点計を用いない簡易な構成によってガス中の水分量の変化を検出することができる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、水の電気分解によって発生した水素中の水分量の変化を検出する第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態によるガス中水分量変化検出装置10を示すブロック図である。
【0032】
図3に示すように、第2の実施形態によるガス中水分量変化検出装置10は、第1の実施形態によるガス中水分量変化検出装置10の構成に加えて、更に、水電解装置4と、除湿装置5とを備える。
【0033】
水電解装置4は、水を電気分解してガスの一例である水素と酸素とを生成する装置である。より具体的には、
図3に示すように、水電解装置4は、導入された純水を供給された電力を用いて電気分解することで、湿潤水素と湿潤酸素とを製造する。水電解装置4は、生成された湿潤水素を除湿装置5側に排出する。
【0034】
水電解では、次式にしたがって水素と酸素とが2対1の比で生成される。
2H2O→2H2+O2 (8)
【0035】
水電解装置4は、例えば直列接続された複数の水電解セルで構成されていてもよい。
【0036】
第1流量測定センサ1は、水電解装置4に設けられており、水電解装置4で生成された水素の流量を測定し、水素の流量の測定値としてのセンサ値_1を水分量変化検出部3に出力する。第1流量測定センサ1は、水素中の水分量の変化によるセンサ値_1への影響を受けないセンサである。
【0037】
例えば、第1流量測定センサ1は、水電解装置4に加えられた電流から、次式にしたがって水素の流量を測定する。
センサ値_1=電流効率×電解電流×変換係数 (9)
ただし、数式(9)における「変換係数」は、次式で表される。
変換係数=水素のモル体積/水素分子の原子量/ファラデー定数×セル数 (10)
なお、数式(9)における「電流効率」は、水電解装置4の特性に依存し、短時間では一定である。
【0038】
除湿装置5は、水電解装置4で生成された水素中の水分を除去する装置である。より具体的には、
図3に示すように、除湿装置5は、水電解装置4側から導入された湿潤水素から水分を除去することで当該湿潤水素を乾燥水素にし、当該乾燥水素を第2流量測定センサ2側に排出する。
【0039】
第2流量測定センサ2は、除湿装置5で水分を除去することで得られた乾燥水素の流量を測定し、乾燥水素の流量の測定値としてのセンサ値_2を水分量変化検出部3に出力する。第2流量測定センサ2は、第1の実施形態と同様に、水素中の水分量の変化によるセンサ値_2への影響を受けるセンサである。
【0040】
水分量変化検出部3は、センサ値_1とセンサ値_2との差に基づいて水素中の水分量の変化を検出し、検出結果(水素中水分量変化検出値)を除湿装置5に出力する。
【0041】
図4は、第2の実施形態によるガス中水分量変化検出装置10において、除湿装置5を示すブロック図である。
【0042】
図4に示すように、除湿装置5は、複数の吸着筒の一例である第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bと、除湿状態検出部8と、除湿制御部9と、を備える。
【0043】
第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bは、水分を吸着可能な吸着剤が収容された筒状の部材であり、除湿装置5内の水素の流路上に並列配置されている。吸着剤は、例えば、合成ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、活性アルミナ粒子等であってもよい。
【0044】
第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bは、水電解装置4側から導入された湿潤水素中の水分を除去し、水分の除去によって得られた乾燥水素を第2流量測定センサ2側に排出する。
【0045】
除湿状態検出部8は、水分量変化検出部3で検出された水分量の変化に基づいて、除湿装置5の状態を検出する。より具体的には、除湿状態検出部8は、除湿装置5の状態として、第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bの水分の飽和状態を検出し、検出結果(飽和状態検出値)を除湿制御部9に出力する。
【0046】
除湿制御部9は、第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bを用いた湿潤水素中の水分の除去を制御する。例えば、除湿制御部9は、除湿装置5内の水素の流路上に配置されたバルブ(図示せず)の開閉を制御することによって第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bへの湿潤水素の導入を制御し、また、第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7b内のヒータ(図示せず)への通電を制御することによって第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bの加熱を制御する。これにより、除湿制御部9は、第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bに、湿潤水素中の水分を吸着剤に吸着させて除去する吸着動作と、吸着剤に吸着された水分を除去して吸着剤を再生させる再生動作との一方を行わせる。
【0047】
より具体的には、除湿制御部9は、第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bのいずれか一方が吸着動作を行い、他方が再生動作を行うように除湿装置5内の水素の流路の開閉を制御する。例えば、
図4に示すように、除湿制御部9は、第1吸着筒7aへの湿潤水素の流路を開き、第2吸着筒7bへの湿潤水素の流路を閉じることで、第1吸着筒7aのみに湿潤水素を導入する。これにより、第1吸着筒7aのみに湿潤水素を通して湿潤水素の水分を除去し、水分を除去することで得られた乾燥水素を第2流量測定センサ2側に排出させる。第2流量測定センサ2側に排出される乾燥水素の一部は、流路が分岐されていることで第2吸着筒7bに導入される。このとき、除湿制御部9は、第2吸着筒7b内のヒータのスイッチをオンすることでヒータに電力を供給し、供給された電力をヒータで熱エネルギーに変換させて第2吸着筒7bを加熱する。第2吸着筒7bを加熱しながら、第1吸着筒7aから第2流量測定センサ2側に排出される乾燥水素の一部を分岐させて第2吸着筒7bに通すことで、第2吸着筒7bの吸着剤に吸着された水分を除去する。第2吸着筒7bで吸着剤の水分の除去に用いられた乾燥水素は、除去された水分を含んだ湿潤水素として排出される。
【0048】
さらに、除湿制御部9は、除湿状態検出部8の検出結果に基づいて、第1吸着筒7aと第2吸着筒7bとの間で吸着動作と再生動作とを切り替える。
【0049】
除湿制御部9が第1吸着筒7aと第2吸着筒7bとの間で吸着動作と再生動作とを切り替えるため、除湿状態検出部8は、水分量変化検出部3の検出結果に基づいて、第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bの飽和状態を検出する。ここで、吸着動作中の第1吸着筒7aが飽和状態になると、第1吸着筒7a内の吸着剤がこれ以上水分を吸着することができなくなるため、第1吸着筒7aから第2流量測定センサ2に排出される水素は、第1吸着筒7aで水分をほとんど除去できずに水分を多く含んだものとなる。これにともなって、第2流量測定センサ2から出力されるセンサ値_2は、水素中の水分量の増加の影響を受けて増加し、水分量変化検出部3は、センサ値_2とセンサ値_1との差に基づいて水素中の水分量の増加を検出する。これにより、除湿状態検出部8は、水分量変化検出部3によって水素中の水分量の増加(例えば、閾値以上の増加)が検出されたことに基づいて、吸着動作中の第1吸着筒7aが飽和状態になったことを検出することができる。
【0050】
そして、除湿制御部9は、飽和状態が検出された第1吸着筒7aについては、吸着動作から再生動作への切り替えを行い、一方、第2吸着筒7bについては、再生動作から吸着動作への切り替えを行う。
【0051】
なお、除湿状態検出部8は、第1吸着筒7aおよび第2吸着筒7bの状態として、次式に示される吸着容量または劣化率を検出してもよい。
吸着容量=飽和状態の吸着量-再生後の吸着量
=吸着筒が飽和状態になるまでの湿潤ガスの総流量 (10)
劣化率=1-吸着容量/初期(設計値)の吸着容量 (11)
【0052】
これによれば、吸着筒7a,7bの水素中水分変化量を水分量変化検出部3で検出し、吸着筒7a,7bが飽和状態になるまので湿潤ガスの総流量から、除湿装置5の吸着機能の状態(吸着容量)を検出することができる。また、再生時間または再生に消費した総エネルギーと、再生後の吸着量との関係を用いて、除湿装置5の再生機能の状態(劣化率)を検出することができる。これらの除湿装置5の状態は、吸着動作と再生動作との切り替えの制御に用いてもよい。
【0053】
第2の実施形態によれば、簡易な構成によって、水電解装置4で生成された水素中の水分量の変化と、除湿装置5の状態とを検出することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…第1流量測定センサ
2…第2流量測定センサ
3…水分量変化検出部
10…ガス中水分量変化検出装置