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特許7451315光コネクタフェルール、光コネクタ、光接続構造、およびレンズアレイの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】光コネクタフェルール、光コネクタ、光接続構造、およびレンズアレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20240311BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20240311BHJP
   G02B 6/40 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/32
G02B6/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020103001
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196506
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】秋枝 真実
(72)【発明者】
【氏名】指田 貴子
(72)【発明者】
【氏名】井崎 学
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045363(JP,A)
【文献】特表2019-533836(JP,A)
【文献】特開2016-133740(JP,A)
【文献】特表2013-541053(JP,A)
【文献】特開2018-194671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0133803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24-6/27
6/30-6/34
6/36-6/40
6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に光ファイバが挿入される複数の光ファイバ保持孔が設けられた光ファイバ保持部と、
前記複数の光ファイバ保持孔の延長線上にそれぞれ配置された複数のレンズ、および、相手側の光コネクタフェルールと対向する前端面を有するレンズアレイと、を備え、
前記レンズアレイは、前記前端面に設けられ、前記相手側の光コネクタフェルールとの位置決めのための凸状の位置決め部および凹状の位置決め部のうち少なくとも一方をさらに有
前記レンズアレイは、前記凸状の位置決め部および前記凹状の位置決め部のいずれかである第1の位置決め部と、前記凸状の位置決め部および前記凹状の位置決め部のいずれかである第2の位置決め部とを有し、
前記第1および第2の位置決め部は、前記光ファイバ保持孔の延在方向から見て、前記複数のレンズを挟む位置に設けられており、
前記第1および第2の位置決め部のうちの一方の位置決め部の形状が凸状であり、前記第1および第2の位置決め部のうちの他方の位置決め部の形状は凹状であり、
前記一方の位置決め部の前記光ファイバ保持孔の延在方向における長さは、前記他方の位置決め部の前記光ファイバ保持孔の延在方向における長さよりも大きく、
前記凸状の位置決め部は凸状の半球面からなり、前記凹状の位置決め部は凹状の半球面からなる、光コネクタフェルール。
【請求項2】
前記光ファイバ保持部は、前記レンズアレイと対向するフェルール端面、および、前記フェルール端面に設けられ、前記レンズアレイとの位置決めのためのフェルール側位置決め部を有し、
前記レンズアレイは、前記フェルール端面と対向する後端面、および、前記後端面に設けられ、前記光ファイバ保持孔の延在方向において前記フェルール側位置決め部と対向する凸状のレンズ側位置決め部および凹状のレンズ側位置決め部のうち少なくとも一方を有する、
請求項1に記載の光コネクタフェルール。
【請求項3】
前記光ファイバ保持部は、前記フェルール側位置決め部としての第1および第2のガイド孔を有し、
前記レンズアレイは、前記凸状のレンズ側位置決め部としての第1および第2のレンズ側位置決め部を有する、
請求項に記載の光コネクタフェルール。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光コネクタフェルールと、
前記複数の光ファイバ保持孔にそれぞれ挿入された複数の光ファイバと、を備える、
光コネクタ。
【請求項5】
請求項に記載された光コネクタであって、前記光コネクタフェルールとしての第1光コネクタフェルールを有する第1光コネクタと、
請求項に記載された光コネクタであって、前記光コネクタフェルールとしての第2光コネクタフェルールを有する第2光コネクタと、を備え、
前記第1光コネクタフェルールは、前記レンズアレイとしての第1レンズアレイを有し、
前記第2光コネクタフェルールは、前記第1レンズアレイと対向する前記前端面を有する前記レンズアレイとしての第2レンズアレイを有し、
前記第1レンズアレイの前記前端面には、少なくとも1つの前記凸状の位置決め部が設けられており、
前記第2レンズアレイの前記前端面のうち、前記第1レンズアレイの前記位置決め部と対向する位置には、当該凸状の位置決め部と嵌合する前記凹状の位置決め部が設けられている、
光接続構造。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光コネクタフェルールに用いられる前記レンズアレイを製造する方法であって、
前記複数のレンズに対応する形状を有する第1の金型部と、前記凸状の位置決め部に対応する形状、および前記凹状の位置決め部に対応する形状の少なくとも一方を有する第2の金型部と、を備える一部品からなる金型を準備する金型準備工程と、
前記金型準備工程において準備した前記金型に流し込んだ前記レンズアレイの材料を硬化させて前記レンズアレイを成形する成形工程と、を含む、
レンズアレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コネクタフェルール、光コネクタ、光接続構造、およびレンズアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光結合モジュールが記載されている。この光結合モジュールは、光ファイバを保持するフェルールからなる光ファイバ・ユニットと、光ファイバ・ユニットに接触可能な1個以上のコリメート・レンズを保持するレンズ・ユニットと、を備える。光ファイバ・ユニットおよびレンズ・ユニットのそれぞれにはガイド孔が設けられており、光結合モジュールは、当該ガイド孔に挿入されるガイドピンによって相手側の光結合モジュールに対して位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-232963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバ同士のコネクタ接続の方式として、一般的にPC(Physical Contact)方式が知られている。PC方式では、光ファイバの端面を、接続相手側コネクタの光ファイバの端面と物理的に接触させて押圧することにより、光ファイバ同士を効率的に光結合させる。このような方式は、主に単心光ファイバ同士を接続する際に用いられる。しかし、複数本の光ファイバを同時に接続する場合、1本毎に所定の押圧力が要求されるので、光ファイバの本数が多くなるほど接続に大きな力が必要となる。
【0005】
上記の問題に対し、例えば特許文献1に記載されているように、互いに接続される光ファイバの端面間にレンズを設ける方式(いわゆる空間接続型の接続方式)がある。この方式では、光ファイバを通った光がレンズにより拡大され、空間で結合する。この方式によれば、光ファイバの本数に応じた押圧力が必要なく、小さな力によって接続することができる。
【0006】
この方式において特許文献1に記載された光結合モジュールを用いる場合には、相手側の光結合モジュールとの位置決めのためのガイドピンが、光ファイバ・ユニットおよびレンズ・ユニットのそれぞれのガイド孔に挿入される。このような場合、レンズ・モジュールにおいては、レンズとガイド孔との相対位置精度が求められる。しかしながら、レンズとガイド孔との相対位置精度を十分に確保することは容易ではなく、対向するレンズ同士の位置のずれによる接続損失を低減しにくい。
【0007】
そこで、本開示は、接続損失を低減可能な光コネクタフェルール、光コネクタ、光接続構造、およびレンズアレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示係る光コネクタフェルールは、各々に光ファイバが挿入される複数の光ファイバ保持孔が設けられた光ファイバ保持部と、複数の光ファイバ保持孔の延長線上にそれぞれ配置された複数のレンズ、および、相手側の光コネクタフェルールと対向する前端面を有するレンズアレイと、を備え、レンズアレイは、前端面に設けられ、相手側の光コネクタフェルールとの位置決めのための凸状の位置決め部および凹状の位置決め部のうち少なくとも一方をさらに有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、接続損失の低減を実現可能な光コネクタフェルール、光コネクタ、光接続構造、およびレンズアレイの製造方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る光接続構造1を示す斜視図であって、光コネクタ10A,10Bが互いに分離している状態を示す。
図2図2は、一実施形態に係る光接続構造を示す斜視図であって、光コネクタ10A,10Bが互いに接続している状態を示す。
図3図3は、光コネクタフェルール12A,12Bが互いに接続している状態を概略的に示す断面図である。
図4図4は、フェルール13の斜視図である。
図5図5は、レンズアレイ14A,14Bが互いに分離している状態を示す平面図である。
図6図6は、レンズアレイ14Aの正面図である。
図7図7は、レンズアレイ14Aの製造方法における一工程を示す。
図8図8は、比較例に係るレンズアレイ14Xの正面図である。
図9図9は、レンズアレイ14Xの側断面図であって、レンズアレイ14Xの製造方法の一工程を示す。
図10図10は、第1変形例に係る光コネクタフェルール12Cの平面図である。
図11図11は、第2変形例に係るレンズアレイ14Dの平面図であって、2つの当該レンズアレイ14Dが互いに分離している状態を示す。
図12図12は、第3変形例に係るレンズアレイ14Eの平面図である。
図13図13は、レンズアレイ14Eが互いに接続している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光コネクタフェルールは、各々に光ファイバが挿入される複数の光ファイバ保持孔が設けられた光ファイバ保持部と、複数の光ファイバ保持孔の延長線上にそれぞれ配置された複数のレンズ、および、相手側の光コネクタフェルールと対向する前端面を有するレンズアレイと、を備え、レンズアレイは、前端面に設けられ、相手側の光コネクタフェルールとの位置決めのための凸状の位置決め部および凹状の位置決め部のうち少なくとも一方をさらに有する。
【0012】
この光コネクタフェルールは、複数の光ファイバ保持孔の延長線上にそれぞれ配置された複数のレンズを有するレンズアレイを備え、当該レンズアレイの前端面が相手側の光コネクタフェルールと対向する。この構成により、光コネクタフェルールに取り付けられた光ファイバは、相手側の光コネクタフェルールに取り付けられた光ファイバとレンズを介して光結合する。つまり、この光コネクタフェルールによれば、光ファイバ同士を空間接続させることが可能である。また、レンズアレイは、前端面に設けられた凸状の位置決め部および凹状の位置決め部のうち少なくとも一方を有する。これにより、レンズアレイが当該位置決め部によって相手側の光コネクタのレンズアレイと位置決めされる。このような位置決め部は、レンズとの一体成形によって容易に形成され得る。したがって、位置決め部とレンズとの相対位置関係を精度よく実現することができ、対向するレンズ同士の位置ずれを十分に低減できる。以上により、接続損失を低減可能となる。
【0013】
上記の光コネクタフェルールにおいて、レンズアレイは、凸状の位置決め部および凹状の位置決め部のいずれかである第1の位置決め部と、凸状の位置決め部および凹状の位置決め部のいずれかである第2の位置決め部とを有し、第1および第2の位置決め部は、光ファイバ保持孔の延在方向から見て、複数のレンズを挟む位置に設けられていてもよい。この場合、第1および第2の位置決め部の間隔を十分に拡げることができ、位置決め機能がより発揮されやすくなるので、接続損失をより低減できる。
【0014】
上記の光コネクタフェルールにおいて、第1および第2の位置決め部のうちの一方の位置決め部の形状が凸状であり、第1および第2の位置決め部のうちの他方の位置決め部の形状は凹状であってもよい。この場合、同一形状のレンズアレイを互いに対向させた2つの光コネクタフェルールを用いて光ファイバ同士の結合が可能となる。したがって、少なくともレンズアレイ同士が共通部品となるので、製造の負担を軽減できる。
【0015】
上記の光コネクタフェルールにおいて、一方の位置決め部の光ファイバ保持孔の延在方向における長さは、他方の位置決め部の光ファイバ保持孔の延在方向における長さよりも大きくてもよい。この場合、同一形状の2つのレンズアレイが互いに対向して位置決めされた状態において、前端面同士の間に隙間が形成される。したがって、複数のレンズを前端面から突出させてこの隙間に配置できるので、複数のレンズと第1および第2の位置決め部とを同一面に形成でき、複数のレンズと第1および第2の位置決め部との相対位置関係を精度よく実現可能となる。
【0016】
上記の光コネクタフェルールにおいて、凸状の位置決め部は凸状の半球面からなり、凹状の位置決め部は凹状の半球面からなっていてもよい。
【0017】
上記の光コネクタフェルールにおいて、光ファイバ保持部は、レンズアレイと対向するフェルール端面、および、フェルール端面に設けられ、レンズアレイとの位置決めのためのフェルール側位置決め部を有し、レンズアレイは、フェルール端面と対向する後端面、および、後端面に設けられ、光ファイバ保持孔の延在方向においてフェルール側位置決め部と対向する凸状のレンズ側位置決め部および凹状のレンズ側位置決め部のうち少なくとも一方を有していてもよい。この場合、レンズアレイと光ファイバ保持部とを精度よく位置決めできるので、接続損失をさらに低減できる。
【0018】
上記の光コネクタフェルールにおいて、光ファイバ保持部は、フェルール側位置決め部としての第1および第2のガイド孔を有し、レンズアレイは、凸状のレンズ側位置決め部としての第1および第2のレンズ側位置決め部を有していてもよい。この場合、汎用のMTフェルールを用いることができるので、接続損失の低減をより低コストに実現可能となる。
【0019】
一実施形態に係る光コネクタは、上記のいずれかの光コネクタフェルールと、複数の光ファイバ保持孔にそれぞれ挿入された複数の光ファイバと、を備えていてもよい。この光コネクタによれば、上記のいずれかの光コネクタフェルールを備えるので、接続損失の低減を実現可能となる。
【0020】
一実施形態に係る光接続構造は、上記の光コネクタであって、光コネクタフェルールとしての第1光コネクタフェルールを有する第1光コネクタと、上記の光コネクタであって、光コネクタフェルールとしての第2光コネクタフェルールを有する第2光コネクタと、を備え、第1光コネクタフェルールは、レンズアレイとしての第1レンズアレイを有し、第2光コネクタフェルールは、第1レンズアレイと対向する前端面を有するレンズアレイとしての第2レンズアレイを有し、第1レンズアレイの前端面には、少なくとも1つの凸状の位置決め部が設けられており、第2レンズアレイの前端面のうち、第1レンズアレイの位置決め部と対向する位置には、当該位置決め部と嵌合する凹状の位置決め部が設けられていてもよい。この光接続構造は、上記の光コネクタとしての第1光コネクタと上記の光コネクタとしての第2コネクタとを備え、互いに位置決めされた第1レンズアレイおよび第2レンズアレイを介して光ファイバ同士が光結合するので、接続損失の低減を実現可能となる。
【0021】
一実施形態に係るレンズアレイの製造方法は、上記のいずれかの光コネクタフェルールに用いられるレンズアレイを製造する方法であって、複数のレンズに対応する形状を有する第1の金型部と、凸状の位置決め部に対応する形状、および凹状の位置決め部に対応する形状の少なくとも一方を有する第2の金型部と、を備える一部品からなる金型を準備する金型準備工程と、金型準備工程において準備した金型に流し込んだレンズアレイの材料を硬化させてレンズアレイを成形する成形工程と、を含んでいてもよい。この場合、レンズアレイのうち複数のレンズと位置決め部とが一部品からなる金型によって成形されるので、複数のレンズに対する位置決め部の位置が高精度に実現されたレンズアレイを製造できる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態に係る光コネクタフェルール、光コネクタ、光接続構造、およびレンズアレイの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、同一要素または同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0023】
(光接続構造)
図1は、一実施形態に係る光接続構造1を示す斜視図である。本実施形態の光接続構造1は、一対の光コネクタ10A(第1光コネクタ)および光コネクタ10B(第2光コネクタ)と、アダプタ2と、を備えている。本実施形態において、光接続構造1は、ガイドピンを備えていない。図1は、光コネクタ10A,10Bが互いに分離している状態を示し、図2は、光コネクタ10A,10Bが互いに接続している状態を示す。光コネクタ10A,10Bは、いわゆる空間接続型の光コネクタである。
【0024】
光コネクタ10A,10B同士は、アダプタ2を介して着脱自在に接続される。光コネクタ10A,10Bは、それぞれの先端部にハウジング11を有する。光コネクタ10Aのハウジング11は、光コネクタフェルール12A(第1光コネクタフェルール)の少なくとも一部を収容している。光コネクタ10Bのハウジング11は、光コネクタフェルール12B(第2光コネクタフェルール、図3参照)の少なくとも一部を収容している。光コネクタフェルール12A,12Bは、各光コネクタ10A,10Bの先端においてハウジング11からそれぞれ露出している。光コネクタフェルール12A,12Bには、多心(例えば8心または12心等)の光ファイバテープ心線5が組み付けられている。光ファイバテープ心線5は光コネクタ10A,10Bの背面側から光コネクタ10A,10Bの外部へ延在する。
【0025】
図3は、光接続構造1における光コネクタフェルール12A,12Bが互いに接続している状態を概略的に示す断面図である。なお、図3には、図1および図2に示された光ファイバテープ心線5から延びる光ファイバ51が併せて示されている。光コネクタフェルール12Aは、複数の光ファイバ51を保持するフェルール13と、レンズアレイ14Aとを有する。本実施形態において、フェルール13は、例えば8本の光ファイバ51を保持する。なお、光ファイバテープ心線5(図1および図2参照)として12心のものが組付けられる場合には、フェルール13は、12本の光ファイバ51を保持する。光コネクタフェルール12Bは、複数の光ファイバ51を保持するフェルール13(光ファイバ保持部)と、レンズアレイ14Bとを有する。
【0026】
図4は、フェルール13の斜視図である。フェルール13は、例えばMTフェルールである。図3および図4に示されるように、フェルール13は、略直方体状の外形を有し、平坦な端面13aと、端面13aとは反対を向く背面13bと、を有する。背面13bには開口13cが形成されており、該開口13cから光ファイバテープ心線5(図1および図2参照)を構成する光ファイバ51が挿入される。端面13aおよび背面13bは、光ファイバ51の光軸AXと交差しており、光ファイバ51の光軸方向D1に並んでいる。フェルール13は、端面13aに開口するガイド孔Hが設けられた汎用のMTフェルールであってもよいし、ガイド孔が設けられていないフェルールであってもよい。
【0027】
図3および図4に示されるように、フェルール13は、複数の光ファイバ保持孔13dを有する。光ファイバ保持孔13dの数は、光ファイバ51と同数とされている。これらの光ファイバ保持孔13dそれぞれには、光ファイバ51が一本ずつ挿入されている。光ファイバ保持孔13dは、開口13cから端面13aまでフェルール13を貫通している。光ファイバ保持孔13dの延在方向に垂直な断面の形状は円形である。光ファイバ保持孔13dの内径は、光ファイバ51の外径よりも僅かに大きい。端面13aにおける光ファイバ保持孔13dの開口は、光ファイバ保持孔13dの延在方向、すなわち光軸方向D1に交差(例えば、直交)する方向D2に沿って一列に(又は複数列に)並んでいる。本実施形態において、方向D2は、フェルール13の幅方向である。つまり、本実施形態において、複数の光ファイバ保持孔13dの配列方向は、フェルール13の幅方向である。光ファイバ51は、フェルール13の端面13aまで至っている。光ファイバ51の端面51aは端面13aと面一とされている。言い換えると、端面51aの法線と端面13aの法線は互いに平行である。端面51aにおける反射戻り光を抑制するため、端面51aの法線は、端面13aの法線とともに、光ファイバ51の光軸AXに対して僅かに傾斜している。光コネクタフェルール12Aにおけるフェルール13の端面13aと、光コネクタフェルール12Bにおけるフェルール13の端面13aとは、光軸方向D1においてレンズアレイ14A,14Bを介して互いに対向している。
【0028】
図5は、レンズアレイ14A,14Bが互いに分離している状態を示す平面図である。図6は、レンズアレイ14Aの正面図である。図3図5および図6に示されるように、レンズアレイ14A,14Bのそれぞれには、各光ファイバ51と光結合する凸レンズである複数のレンズ15が設けられている。レンズ15の数は、光ファイバ保持孔13dと同数とされている。複数のレンズ15は、複数の光ファイバ保持孔13dの延長線上にそれぞれ配置されている。複数のレンズ15は、方向D2に沿って一列に並んでいる。レンズアレイ14A,14Bは、光接続構造1(図1および図2参照)が扱う光の通信波長において透明であって、光ファイバ51に光結合する信号光である光が透過する光学樹脂によって構成されている。例えば、波長が1210nm以上且つ1650nm以下である光に対し、レンズアレイ14A,14Bの光学樹脂の透過率は80%以上且つ100%以下である。レンズアレイ14A,14Bの材料は、ポリイミド(PEI)又はポリカーボネート(PC)であってもよい。
【0029】
レンズアレイ14A,14Bは、前端面14aと、前端面14aとは反対を向く後端面14bと、前端面14aおよび後端面14bを互いに接続する一対の側面14cと、上面14dおよび下面14eと、を有する。前端面14aおよび後端面14bは、光ファイバ51の光軸AXと交差しており、光ファイバ51の光軸方向D1に並んでいる。レンズアレイ14Aの前端面14aとレンズアレイ14Bの前端面14aとは互いに直接対向している。つまり、前端面14aは相手側の光コネクタ(すなわち、図1および図2に示された光コネクタ10A又は光コネクタ10B)と直接対向する。前端面14aは、相手側の光コネクタと当接する当接面である。
【0030】
前端面14aは、光軸方向D1から見て長方形状の外形を有する。光軸方向D1から見て前端面14aは、方向D2に延びる長辺と、光軸方向D1および方向D2の双方に交差(例えば直交)する方向D3に延びる短辺とを有する。例えば、方向D3は光軸方向D1および方向D2に沿って延びる平面に直交している。前端面14aには、光軸方向D1に矩形状に窪む凹部14fが設けられており、複数のレンズ15は、凹部14fの底面に設けられている。凹部14fは、前端面14aの略中央部に設けられている。凹部14fが設けられることにより、前端面14aよりも光軸方向D1の後端面14b側に複数のレンズ15が設けられる。複数のレンズ15は、レンズアレイ14A,14Bとそれぞれ一体とされた凸レンズである。
【0031】
図5に示されるように、本実施形態において、レンズアレイ14Aの前端面14aには、レンズアレイ14Aと一体とされた凸状の位置決め部16A(第1位置決め部)および凹状の位置決め部17A(第2位置決め部)が設けられている。また、レンズアレイ14Bの前端面14aには、レンズアレイ14Bと一体とされた凹状の位置決め部16B(第1位置決め部)および凹状の位置決め部17B(第2位置決め部)が設けられている。具体的には、位置決め部16A,17Aは、凸状の半球面からなり、位置決め部16B,17Bは、位置決め部16A,17Aとそれぞれ嵌合する凹状の半球面からなる。位置決め部16A,17Aの光軸方向D1における長さLAは、位置決め部16B,17Bの光軸方向D1における長さLBとそれぞれ同一である。なお。長さLAは、レンズアレイ14Aの前端面14aから位置決め部16A,17Aの頂点までの光軸方向D1における距離を示し、長さLBは、レンズアレイ14Bの前端面14aから位置決め部16B,17Bの頂点までの光軸方向D1における距離を示す。図3に示されるように、光コネクタフェルール12A,12Bが互いに接続されたときに、レンズアレイ14A,14Bの前端面14a同士が当接し、2つの凹部14fが塞がれるので、光コネクタフェルール12A,12Bの間に形成された、複数のレンズ15を収容する空間へのダストの侵入を抑制することが可能となる。
【0032】
位置決め部16A,17Aは、レンズアレイ14Aにおける凹部14fの方向D2における両端にそれぞれ設けられている。つまり、位置決め部16A,17Aは、光軸方向D1から見て方向D2に複数のレンズ15を挟む位置に設けられている。同様に、位置決め部16B,17Bは、レンズアレイ14Bにおける凹部14fの方向D2における両端にそれぞれ設けられている。つまり、位置決め部16B,17Bは、光軸方向D1から見て方向D2に複数のレンズ15を挟む位置に設けられている。位置決め部16B,17Bは、光軸方向D1において位置決め部16A,17Aとそれぞれ対向する位置に設けられている。
【0033】
なお、位置決め部16A,17A,16B,17Bは、平坦な面を含んでいてもよい。位置決め部16A,17Aは、例えば直方体、角柱又は円柱等からなっていてもよく、この場合、位置決め部16B,17Bは、位置決め部16A,17Bとそれぞれ嵌合する形状の凹部とされる。また、レンズアレイ14Aの前端面14aには、位置決め部16A,17Aの一方のみが設けられていてもよく、位置決め部16A,17Aに加えてさらに別の位置決め部が設けられていてもよい。この場合、レンズアレイ14Bの前端面14aには、レンズアレイ14Aの位置決め部と同数の位置決め部が設けられる。
【0034】
各後端面14bは、フェルール13の端面13aと対向しており(図3参照)、例えば接着剤等によって端面13aに固定されている。後端面14b、側面14c、上面14dおよび下面14eは、例えば、共に長方形状の外形を有する。図3に示されるように、光コネクタフェルール12A,12Bが互いに接続されたときに、レンズアレイ14Aの上面14dとレンズアレイ14Bの上面14dとが面一となり、レンズアレイ14Aの下面14eとレンズアレイ14Bの下面14eとが面一となる。また、レンズアレイ14Aの側面14cとレンズアレイ14Bの側面14cとも面一となっている。これにより、レンズアレイ14Aとレンズアレイ14Bとの周囲が全て平面状とされる。
【0035】
(レンズアレイの製造方法)
レンズアレイ14A,14Bを製造する方法の一例について説明する。レンズアレイ14A,14Bは、金型を用いた射出成形によって製造される。図7は、レンズアレイ14Aの製造方法における一工程を示す。はじめに、射出成型に用いられる金型20,30を準備する(金型準備工程)。一例として、金型20は上部金型であり、金型30は下部金型である。
【0036】
金型20は、レンズアレイ14Aの後端面14b側の一部に対応する形状を有する凹部21を有する。金型30は、レンズアレイ14Aの前端面14a側の残部に対応する形状を有する凹凸部31を有する。凹凸部31は、凹部14fに対応する形状を有する凸部32と、複数のレンズ15に対応する形状をそれぞれ有する複数の凹部33(第1の金型部)と、位置決め部16A,17Aに対応する形状を有する2つの凹部34(第2の金型部)と、を備える一部品からなる。凸部32は、凹凸部31の底面から突出する部分である。凹部33は、凸部32の頂面から窪んだ部分である。凹部34は、凹凸部31の底面から窪んだ部分である。つまり、凹部33と凹部34とは互いに異なる面に形成されている。
【0037】
次に、金型20,30によって形成される空間内にレンズアレイ14Aの材料を流し込む。レンズアレイ14Aの材料は、例えば溶融した樹脂材である。そして、金型20,30内においてこの材料を硬化させてレンズアレイ14Aを成形する(成形工程)。材料の硬化後、金型20,30を撤去してレンズアレイ14Aの製造が完了する。なお、金型30の凹部34をレンズアレイ14Bの位置決め部16B,17Bに対応する形状に変更することにより、レンズアレイ14Bも同様に製造される。
【0038】
(作用効果)
以上説明した光コネクタフェルール12A,12B、光コネクタ10A,10B、およびレンズアレイ14A,14Bの製造方法の作用効果について説明する。本実施形態に係る光コネクタフェルール12Aは、複数の光ファイバ保持孔13dの延長線上にそれぞれ配置された複数のレンズ15を有するレンズアレイ14Aを備え、当該レンズアレイ14Aの前端面14aが光コネクタフェルール12Bと対向する。同様に、光コネクタフェルール12Bは、複数の光ファイバ保持孔13dの延長線上にそれぞれ配置された複数のレンズ15を有するレンズアレイ14Bを備え、当該レンズアレイ14Bの前端面14aが光コネクタフェルール12Aと対向する。この構成により、光コネクタフェルール12Aに取り付けられた光ファイバ51は、光コネクタフェルール12Bに取り付けられた光ファイバ51とレンズアレイ14A,14Bを介して光結合する。つまり、この光コネクタフェルール12A,12Bによれば、光ファイバ51同士を空間接続させることが可能である。
【0039】
ここで、レンズアレイの比較例について説明する。図8は、比較例に係るレンズアレイ14Xの正面図である。図9は、レンズアレイ14Xの側断面図であって、レンズアレイ14Xの製造方法の一工程を示す。レンズアレイ14Xには、レンズアレイ14A,14Bにおける位置決め部16A,17A又は位置決め部16B,17Bに代えて、一対のガイド孔16Xが設けられている。レンズアレイ14Aは、その他の構成においてレンズアレイ14A,14Bと同様である。各ガイド孔16Xには、光コネクタ同士を接続する際に光コネクタ同士を位置決めするためのガイドピンが挿入される。各ガイド孔16Xは、レンズアレイ14Xの前端面14aから後端面14b(図9参照)まで貫通している。
【0040】
図9に示されるように、レンズアレイ14Xは、金型20,30に代えて金型20X,30Xおよび2つのガイドピン金型40Xを用いた射出成形によって製造される。ガイドピン金型40Xは、上記の位置決めのためのガイドピンに相当する金型部品である。金型20Xには、各ガイドピン金型40Xが挿通される孔22Xが形成されている。金型20Xは、その他の構成において、金型20と同様に構成されている。金型30Xは、各ガイドピン金型40Xが挿通される孔31Xが形成された金型部35Xを有している。また、金型30Xにおいて、金型部35Xは、レンズ15に対応する形状を有する金型部36Xとは別部品である。
【0041】
レンズアレイ14Xを製造する際には、まず、金型20X,30Xおよびガイドピン金型40Xを互いに組み付ける。次に、ガイドピン金型40Xが組み付けられた金型20X,30Xによって形成される空間内にレンズアレイ14Xの材料を流し込む。レンズアレイ14Xの材料は、例えばレンズアレイ14Aの材料と同様に、溶融した樹脂材である。そして、金型20X,30X内においてこの材料を硬化させてレンズアレイ14Xを成形する。材料の硬化後、金型20X,30Xおよびガイドピン金型40Xを撤去してレンズアレイ14Xの製造が完了する。しかしながら、金型20X,30Xおよびガイドピン金型40Xといった金型部品同士の組付け工数が多いほど組付け公差が生じやすくなる。これにより、光結合する光ファイバ51同士の位置がずれやすくなり、接続損失が大きくなる場合がある。
【0042】
これに対し、レンズアレイ14Aは、前端面14aに設けられた凸状の位置決め部16A,17Aを有する。レンズアレイ14Bは、前端面14aに設けられた凹状の位置決め部16B,17Bを有する。これにより、レンズアレイ14A,14Bが当該位置決め部16A,16Bおよび位置決め部17A,17Bによって互いに位置決めされる。このような位置決め部16A,17A,16B,17Bは、レンズ15との一体成形によって容易に形成され得る。したがって、位置決め部16A,17Aとレンズ15との相対位置関係、および位置決め部16B,17Bとレンズ15との相対位置関係を精度よく実現することができ、レンズアレイ14A,14Bのレンズ15同士の位置がずれることを十分に低減できる。以上により、接続損失の低減を実現可能となる。
【0043】
また、比較例におけるレンズアレイ14Xは、上記のガイドピンによって対向するレンズアレイと位置決めされる。このガイドピンとガイド孔16Xとの間に組付け公差が生じた場合にも、対向するレンズ15同士の位置のずれによる接続損失が生じかねないことから、高精度に位置決め可能なガイドピンの調達が高コスト化に影響し得る。
【0044】
これに対し、光コネクタフェルール12A,12Bによれば、ガイドピンが省略されるので、部品点数を削減でき、高コスト化を低減できる。
【0045】
また、レンズアレイ14Aは、位置決め部16A,17Aを有し、位置決め部16A,17Aは、光軸方向D1から見て方向D2に複数のレンズ15を挟む位置に設けられている。レンズアレイ14Bは、位置決め部16B,17Bを有し、複数のレンズ15は、方向D2に沿って配列されており、位置決め部16B,17Bは、光軸方向D1から見て方向D2に複数のレンズ15を挟む位置に設けられている。これらの構成により、位置決め部16A,17A,16B,17Bの間隔を十分に拡げることができ、位置決め機能をより発揮できるので、接続損失をより低減できる。
【0046】
本実施形態に係る光コネクタ10Aは、上記の光コネクタフェルール12Aと、複数の光ファイバ保持孔13dにそれぞれ挿入された複数の光ファイバ51と、を備えている。また、本実施形態に係る光コネクタ10Bは、上記の光コネクタフェルール12Bと、複数の光ファイバ保持孔13dにそれぞれ挿入された複数の光ファイバ51と、を備えている。このような光コネクタ10A,10Bによれば、光コネクタフェルール12A,12Bを備えるので、接続損失の低減を低コストに実現可能となる。
【0047】
本実施形態に係る光接続構造1は、光コネクタ10A,10Bを備え、光コネクタフェルール12Aは、レンズアレイ14Aを有し、光コネクタフェルール12Bは、レンズアレイ14Aと対向する前端面14aを有するレンズアレイ14Bを有し、レンズアレイ14Aの前端面14aには、凸状の位置決め部16A,17Aが設けられており、レンズアレイ14Bの前端面14aのうち、位置決め部16Aと対向する位置には、当該位置決め部16Aと嵌合する凹状の位置決め部16Bが設けられており、位置決め部17Aと対向する位置には、当該位置決め部17Aと嵌合する凹状の位置決め部17Bが設けられている。この光接続構造1は、光コネクタ10A,10Bを備え、互いに位置決めされたレンズアレイ14A,14Bを介して光ファイバ51同士が光結合するので、接続損失の低減を低コストに実現可能となる。
【0048】
本実施形態に係るレンズアレイ14Aの製造方法は、複数のレンズ15に対応する形状をそれぞれ有する複数の凹部33と、位置決め部16A,17Aに対応する形状をそれぞれ有する2つの凹部34と、を備える一部品からなる金型30を準備する金型準備工程と、金型準備工程において準備した金型30に流し込んだレンズアレイ14Aの材料を硬化させてレンズアレイ14Aを成形する成形工程と、を含んでいる。この構成により、レンズアレイ14Aのうち複数のレンズ15と位置決め部16A,17Aとが一部品からなる金型30によって成形されるので、複数のレンズ15に対する位置決め部16A,17Aの位置が高精度に実現されたレンズアレイ14Aを製造できる。レンズアレイ14Bを製造する場合も同様である。
【0049】
(第1変形例)
図10は、第1変形例に係る光コネクタフェルール12Cの平面図である。光コネクタフェルール12Cは、レンズアレイ14Aに代えてレンズアレイ14Cを有する点において光コネクタフェルール12Aと相違し、その他の構成において光コネクタフェルール12Aと同様である。なお、光コネクタフェルール12Cにおいて、フェルール13は、端面13aに開口する2つのガイド孔Hが設けられた汎用のMTフェルールである。具体的には、2つのガイド孔Hは、光軸方向D1から見て、方向D2に複数の光ファイバ保持孔13d(図4参照)を挟む位置に設けられている。各ガイド孔Hは、端面13aから背面13bまで貫通している。
【0050】
レンズアレイ14Cは、後端面14bに設けられた凸状のレンズ側位置決め部18,19をさらに有する点においてレンズアレイ14Aと相違し、その他の構成においてレンズアレイ14Aと同様である。具体的には、レンズ側位置決め部18,19は、凸状の半球面からなり、一例として位置決め部16A,17Aと同じ形状を有する。レンズ側位置決め部18,19の外径は、フェルール13のガイド孔Hの内径とそれぞれ同じ大きさである。レンズ側位置決め部18,19それぞれは、光軸方向D1においてガイド孔Hと対向する位置に設けられている。本変形例において、フェルール13の2つのガイド孔Hは、レンズアレイ14Cに対するフェルール13の位置決めのために用いられる。2つのガイド孔Hは、本変形例におけるフェルール側位置決め部の一例である。
【0051】
なお、フェルール13は、ガイド孔Hに代えて、端面13aに設けられたフェルール側位置決め部としての凹部を有していてもよい。あるいは、フェルール13は、ガイド孔Hに代えて、端面13aに設けられたフェルール側位置決め部としての凸部を有し、レンズアレイ14Cは、レンズ側位置決め部18,19に代えて、後端面14bに設けられ、フェルール側位置決め部としての凸部と嵌合する凹状のレンズ側位置決め部を有していてもよい。
【0052】
第1変形例に係る光コネクタフェルール12Cによっても、上記実施形態に係る光コネクタフェルール12Aと同様に、接続損失の低減を低コストに実現可能となる。また、第1変形例に係る光コネクタフェルール12Cによれば、レンズアレイ14Cとフェルール13とを精度よく位置決めできるので、接続損失をさらに低減できる。また、フェルール13として汎用のMTフェルールを用いるので、接続損失の低減をより低コストに実現可能となる。
【0053】
(第2変形例)
図11は、第2変形例に係るレンズアレイ14Dの平面図であって、2つの当該レンズアレイ14Dが互いに分離している状態を示す。レンズアレイ14Dは、位置決め部16A,17A又は位置決め部16B,17Bに代えて、位置決め部16D,17Dを有する点においてレンズアレイ14A,14Bと相違し、その他の構成においてレンズアレイ14A,14Bと同様である。
【0054】
位置決め部16Dは、位置決め部16Aと同様の構成である。位置決め部17Dは、位置決め部17Bと同様の構成である。つまり、レンズアレイ14Dの前端面14aには、凸状の位置決め部16Dと凹状の位置決め部17Dとが設けられている。2つのレンズアレイ14Dは、方向D2について互いに反転した状態で接続される。
【0055】
第2変形例に係るレンズアレイ14Dを備える光コネクタフェルールによっても、上記実施形態に係る光コネクタフェルール12Aと同様に、接続損失の低減を低コストに実現可能となる。また、第2変形例においては、同一形状のレンズアレイ14Dを互いに反転し対向させた2つの光コネクタフェルールを用いて光ファイバ51同士の結合が可能となる。したがって、少なくともレンズアレイ14D同士が共通部品となるので、製造の負担を軽減できる。
【0056】
(第3変形例)
図12は、第3変形例に係るレンズアレイ14Eの平面図である。図13は、2つのレンズアレイ14Eが互いに接続している状態を示す図である。レンズアレイ14Eは、位置決め部17Dに代えて、位置決め部17Eを有する点、前端面14aに凹部14fが設けられていない点、および複数のレンズ15が前端面14aに設けられている点においてレンズアレイ14Dと相違し、その他の構成においてレンズアレイ14Dと同様である。
【0057】
位置決め部17Eの光軸方向D1における長さLEは、位置決め部17Dの光軸方向D1における長さLDよりも小さい。言い換えると、長さLDは、長さLEよりも大きい。なお。長さLDは、前端面14aから位置決め部17Dの頂点までの光軸方向D1における距離を示し、長さLEは、前端面14aから位置決め部17Eの頂点までの光軸方向D1における距離を示す。長さLDは、例えば、上記実施形態における位置決め部17Bの長さLBと同一である。また、長さLDは、レンズ15の光軸方向D1における長さLLよりも大きい。長さLEは、長さLDから長さLLを減算した長さよりも小さい。
【0058】
図13に示されるように、2つのレンズアレイ14Eは、2つのレンズアレイ14Dと同様に、方向D2について互いに反転した状態で接続される。このとき、一方のレンズアレイ14Eの位置決め部16Dにおける先端部のみが他方のレンズアレイ14Eの位置決め部17Eに嵌合する。つまり、前端面14a同士が離間した状態で2つのレンズアレイ14Eが互いに位置決めされる。また、2つのレンズアレイ14Eが接続された状態において、互いに向かい合う複数のレンズ15同士も離間している。
【0059】
第3変形例に係るレンズアレイ14Eを備える光コネクタフェルールによっても、上記実施形態に係る光コネクタフェルール12Aと同様に、接続損失の低減を低コストに実現可能となる。また、第2変形例に係るレンズアレイ14Dを備える光コネクタフェルールと同様に、少なくともレンズアレイ14E同士が共通部品となるので、製造の負担を軽減できる。
【0060】
さらに、同一形状の2つのレンズアレイ14Eが互いに対向して位置決めされた状態において、前端面14a同士の間に隙間が形成される。したがって、複数のレンズ15を前端面14aから突出させてこの隙間に配置できるので、複数のレンズ15と位置決め部16D,17Eとを同一の前端面14aに形成できる。これに伴い、レンズアレイ14Eの製造時には、複数のレンズ15に対応する形状を有する凹部と、位置決め部16D対応する形状を有する凹部と、位置決め部17Eに対応する形状を有する凸部と、が同一面に形成された金型が用いられる。このような金型は、これらの凹部および凸部のいずれか一つが異なる面に形成された金型よりも高精度に加工することが可能である。したがって、複数のレンズ15と位置決め部16D,17Eとの相対位置関係を精度よく実現可能となる。
【0061】
本開示に係る光コネクタフェルール、光コネクタ、およびレンズアレイの製造方法は、上記実施形態および各変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、ハウジング11を有する光コネクタ10A,10Bを例示して説明したが、光コネクタがハウジング11を有していなくてもよい。また、上記実施形態および各変形例は、相互に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…光接続構造
2…アダプタ
5…光ファイバテープ心線
10A…光コネクタ(第1光コネクタ)
10B…光コネクタ(第2光コネクタ)
11…ハウジング
12A…光コネクタフェルール(第1光コネクタフェルール)
12B…光コネクタフェルール(第2光コネクタフェルール)
12C…光コネクタフェルール
13…フェルール(光ファイバ保持部)
13a…端面(フェルール端面)
13b…背面
13c…開口
13d…光ファイバ保持孔
14A,14B,14C,14D,14E,14X…レンズアレイ
14a…前端面
14b…後端面
14c…側面
14d…上面
14e…下面
14f…凹部
15…レンズ
16A,16B,16D…位置決め部(第1位置決め部)
16X…ガイド孔
17A,17B,17D,17E…位置決め部(第2位置決め部)
18,19…レンズ側位置決め部
20,20X…金型
21…凹部
22X…孔
30,30X…金型
31…凹凸部
31X…孔
32…凸部
33…凹部(第1の金型部)
34…凹部(第2の金型部)
35X,36X…金型部
40X…ガイドピン金型
51…光ファイバ
51a…端面
AX…光軸
D1…光軸方向
D2…方向
D3…方向
H…ガイド孔
LA,LB,LE,LE,LL…長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13