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  • 特許-手指の洗浄装置 図1
  • 特許-手指の洗浄装置 図2
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  • 特許-手指の洗浄装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】手指の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/181 20190101AFI20240311BHJP
   A47K 1/00 20060101ALI20240311BHJP
   E03C 1/08 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
E03C1/181
A47K1/00 J
E03C1/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020110239
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007328
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 高賀夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成吾
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-048628(JP,A)
【文献】中国実用新案第212465789(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/33
A47K 1/00-1/14
A47K 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手指の洗浄装置であって、
上方に向かって開口するボウルと、
該ボウルにおける使用者の側である手前に配置され使用者の差し出した手指に対して前記手前から奥に向かうように平面状に高圧水を噴射する噴射装置と、
前記ボウルにおいて前記噴射装置の対面側に吸い込み口が取付けられ前記噴射装置から噴射された高圧水のミストを含む空気を吸引可能な吸引装置と、を備えている手指の洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記噴射装置は前記高圧水を斜め下方に向かって扇状に噴出し、前記吸引装置の前記吸い込み口は前記ボウルの開口の端部に沿って略水平に延びて配設されている手指の洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記吸引装置は前記ミストを含む空気を内部に貯められた貯留水に通して前記ミストを除去する手指の洗浄装置。
【請求項4】
請求項3において、前記吸引装置には前記貯留水に深紫外線を照射して殺菌する発光ダイオードが配設されている手指の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手指に高圧の水を噴射して洗浄する手指の洗浄装置が知られている。特許文献1に開示された洗浄装置は、使用者の手の差し出し方向に対して交差する面に沿ってシート状に高圧の水を噴射して手を洗浄するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-112664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術においては、高圧の水が使用者の手の差し出し方向に対して交差する面に沿ってシート状に噴射されるので、使用者は、両手を擦り合わせる手もみ洗い等を行うことなく、基本的に手を前後に抜き差しするだけで短時間に手の汚れを落とすことができる。しかし、高圧で噴射された水は一部がミストとなって舞い上がりミストに付着した細菌等が使用者や周りの人に悪影響を及ぼすおそれがあるという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、高圧の水を利用して効率よく手指の汚れを洗浄するとともにその時に発生するミストの飛散を抑制した手指の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、手指の洗浄装置に関するものである。手指の洗浄装置は、上方に向かって開口するボウルと、該ボウルの手前に配置され使用者の差し出した手指に対して手首側から指先側に向かうように平面状に高圧水を噴射する噴射装置と、前記ボウルにおいて前記噴射装置の対面側に吸い込み口が取付けられ前記噴射装置から噴射された高圧水のミストを含む空気を吸引可能な吸引装置と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、手指に付着した汚れを高圧水の噴射により効率よく落とすことができる。そして、その際発生したミストを含む空気を吸引装置により吸引することができるので、発生したミストに細菌等が付着していたとしてもそれを周囲にまき散らして使用者や周りの人に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記噴射装置は前記高圧水を斜め下方に向かって扇状に噴出し、前記吸引装置の前記吸い込み口は前記ボウルの開口の端部に沿って略水平に延びて配設されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、高圧水は扇状に噴出されるので、手指をより水圧の高い手前側の扇の要側にもってくればより強力に汚れを落とすことができる。すなわち、手指の汚れの程度によって扇状の高圧水に対して手指を当てる位置を変えることによって効率よく汚れを落とすことができる。また、高圧水は斜め下方に向かって噴出されるとともに、吸引装置の吸い込み口がボウルの開口の端部に沿って略水平に延びて配設されているのでミストのボウル外への飛散を少なくすることができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記吸引装置は前記ミストを含む空気を内部に貯められた貯留水に通して前記ミストを除去することを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、吸引されたミストを含む空気は、貯留水に通されてミストが効率よく除去されるので吸引装置からの排気に細菌等が付着したミストが含まれて周囲に拡散するおそれが抑制される。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記吸引装置には前記貯留水に深紫外線を照射して殺菌する発光ダイオードが配設されていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、貯留水に細菌等が付着したミストが混入して捕らえられたとき、細菌等が混入した貯留水を殺菌することができる。これによって、さらに吸引装置からの排気に細菌等が付着したミストが含まれて周囲に拡散するおそれが抑制される。なお、深紫外線とは、紫外線よりさらに短い波長領域(200~300nm)の光の名称である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である洗浄装置を斜め後方から見た斜視図である。
図2】上記実施形態における洗浄装置を斜め前方から見た斜視図である。
図3】上記実施形態における洗浄装置の平面図である。
図4図3におけるIV-IV矢視線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る手指の洗浄装置(以下、「洗浄装置1」という。)について、図1図4を用いて説明する。以下の説明において、方向に関する説明は使用者Pを基準に設定した各図に示される上下前後左右の方向に基づいて行うものとする。
【0016】
図1及び図2に示すように、洗浄装置1は、上方に向かって開口した器状のボウル2と、ボウル2の後側上部に取付けられた噴射装置3と、ボウル2の前側上部に吸い込み口41が配置された吸引装置4と、を有する。
【0017】
図1図4に示すように、ボウル2は、上部に平面視で左右方向を長軸方向とする略楕円形状の開口21を有する略逆ドーム状の形態をしており、内部に中空部22が形成されている。開口21の反対側である下側に配置された底壁部23との間を全周にわたって連結する側壁部24が形成されている。底壁部23の平面視における中央部には排水口23aが設けられており、排水口23aには排水パイプ25の上端部が連結されている。排水パイプ25はSトラップ25aを介して下方に向けて排水できるように構成されている。開口21の端部からは外側に向かって水平方向に延びるフランジ部21aが全周にわたって形成されている。図3に示すように、使用者Pは、ボウル2の後側に立って前下方の中空部22に手を差し入れることによって手指を洗浄する。
【0018】
ボウル2の側壁部24の後側上部には、前下方の中空部22に向けて高圧水Hを噴射する噴射装置3が取付けられている。噴射装置3は、図示しない外部動力装置を備えており、この外部動力装置の働きにより通常の給水圧の2倍程度の約0.5MPaで水を噴射できるものである。ノズル31の近傍に配置されたセンサー(図示せず)によって、ボウル2の中空部22の中に手が差し入れられたのを感知すると給水バルブを開くとともに外部動力装置を作動させてノズル31から高圧水Hを噴射する。高圧水Hは、ノズル31を要として左右に拡がる扇状で水平面に対し約30度程度下方に向いた平面状に噴射される。噴射された高圧水Hは、ノズル31に近いところほど左右方向の幅が狭く圧力がより高いものとなっており、ノズル31から遠ざかるにつれて左右方向の幅が広く圧力が低いものとなっている。ボウル2の中空部22の中から手が引き出されると、それをセンサーが感知して給水バルブを閉じるとともに外部動力装置の作動を停止して高圧水Hの噴射が止められるようになっている。噴射された高圧水Hの大部分は、使用者Pの手指を洗浄したのち排水口23aから排水パイプ25を通って排水される。
【0019】
図1図4に示すように、ボウル2の側壁部24の前側上部には、開口21の端部から若干下方の位置において左右方向に延びる吸い込み口41が設けられている。吸い込み口41の左右方向の幅は、側壁部24の開口21の前側左右幅とほぼ等しくなるように設定されている。また、吸い込み口41の上下方向の高さは、扇状に噴射された高圧水Hの厚み方向の寸法とほぼ等しく設定されている。
【0020】
図4に示すように、吸引装置4は、ボウル2の前下方に配置された吸引ユニット42と、吸い込み口41と吸引ユニット42とを連結する連結部材43と、を有する。連結部材43は、漏斗状の形態をしたパイプ部材で、上端部側は左右方向に延びて吸い込み口41の前側に連結される幅広部43aであり、下端部側は円筒状のパイプ部43bである。吸引ユニット42は、ボックス状の筐体部42aと、筐体部42aの内部を前後に区画する主区画壁42bと、を有する。筐体部42aの内部は、主区画壁42bによって前室部42cと後室部42dに分けられている。主区画壁42bの上下方向中央部から上方の部分に前後方向に貫通する断面が正方形の貫通孔42b1が設けられている。貫通孔42b1の周縁部には主区画壁42bに対し垂直に後方向に延びる断面が正方形の角筒状の筒部材42b2が取付けられている。筒部材42b2の内側には第1補助フィルタ42eが嵌め込まれている。筒部材42b2の下側の面部の後端部には後下方に向かって延びる傾斜板部42b3が形成されている。傾斜板部42b3は、シロッコファン42mを作動させたとき前室部42cの下側に貯められた貯留水Wが傾斜板部42b3の上側に行くのを阻止する機能を有する。また、筒部材42b2の下側の面部の下側には、貯留水Wに対して深紫外線を照射する発光ダイオード42nが配設されている。前室部42cには、上方から連結部材43のパイプ部43bが挿し込まれた状態で固定されている。パイプ部43bの下端部近傍は傘状の遮蔽部43cによって前室部42cの後側壁の内側に固定されている。前室部42cの下側にはパイプ部43bの下端部が漬かるぐらいの深さで貯留水Wが貯められている。吸い込み口41から吸引された空気は、連結部材43を通って貯留水Wの中に吹き込まれるようになっている。後室部42dは、副区画壁42fによって上下に分割され上室部42gと下室部42hが形成されている。副区画壁42fには上下方向に貫通する断面が正方形の貫通孔42f1が設けられている。貫通孔42f1の周縁部には副区画壁42fに対し垂直に下方向に延びる断面が正方形の角筒状の筒部材42f2が取付けられている。筒部材42f2の内側には第2補助フィルタ42kが嵌め込まれている。上室部42gの中には、シロッコファン42mが配置されていて、シロッコファン42mを作動させると、第1補助フィルタ42eを通して前室部42cから空気を吸引して、第2補助フィルタ42kを通して下室部42hに排気する。下室部42hの前側壁には前後方向に貫通する断面が円形の貫通孔42h1が形成されており、下室部42hに入った空気は貫通孔42h1を通って筐体部42aの外部に排気される。
【0021】
図1図4に基づいて、洗浄装置1の作動について説明する。使用者Pがボウル2の後側に立って前下方の中空部22に手を差し入れると、センサーが差し入れられた手を感知して給水バルブを開くとともに外部動力装置を作動させてノズル31から高圧水Hを噴射する。このとき、同時に吸引装置4のシロッコファン42mと発光ダイオード42nも作動を開始する。使用者Pは、扇状に噴射された高圧水Hを手指に当てるように手指を動かすと手指に付着した汚れが洗浄される。このとき、手指をより水圧の高いノズル31に近い側にもってくればより強力に汚れを落とすことができる。すなわち、手指の汚れの程度によって扇状の高圧水Hに対して手指を当てる位置を変えることによって効率よく汚れを落とすことができる。手指を洗浄した水の大部分は、ボウル2の排水口23aから排水パイプ25を通って排水される。ここで、手指を洗浄する過程で発生したミストは周囲の空気と共に吸い込み口41から吸引される。吸い込み口41は、ボウル2の側壁部24の開口21の前側左右幅とほぼ等しくなるように設けられているので、ミストがボウル2の外への飛散するのを抑制できる。
【0022】
吸い込み口41から吸い込まれたミストが混じった空気は、連結部材43の中を通ってパイプ部43bの下端部から貯留水Wの中に放出される。放出されたミストが混じった空気は、貯留水Wを撹拌して通過する過程でミストが貯留水Wの中に溶け込み空気のみが傾斜板部42b3の上側に流れる。このとき、撹拌された貯留水Wの一部は跳ね上がったとしても傾斜板部42b3の下面側に当たって下側に戻され傾斜板部42b3の上側に行くことはない。傾斜板部42b3の上側に流れた空気は、第1補助フィルタ42eを通って上室部42gに入り次に第2補助フィルタ42kを通って下室部42hに入ったのち貫通孔42h1を通って筐体部42aの外部に流れる。これらの空気の流れは、シロッコファン42mの作動によって起こされるものである。細菌等が付着している可能性があるミストはそのほとんどが貯留水Wによって除去される。細菌等が溶け込んだ可能性のある貯留水Wに対して発光ダイオード42nが深紫外線を照射することによって殺菌する。第1補助フィルタ42eと第2補助フィルタ42kは、万が一細菌等が付着している可能性があるミストを貯留水Wによって除去できなかった場合にそれが外気中に飛散するのを防ぐためのものである。図4において、太矢印で洗浄装置1の中の空気の流れを示す。貯留水Wは、水フィルタとしての役割を果たす。
【0023】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。洗浄装置1は、使用者Pの手指に対して高圧水Hを噴射することにより、手指に付着した汚れを効率よく落とすことができる。そして、その際発生したミストを周囲の空気と共に吸い込み口41から吸引装置4によって吸引することができるので、発生したミストに細菌等が付着していたとしてもそれを周囲にまき散らして使用者Pや周りの人に悪影響を及ぼすのを抑制できる。また、高圧水Hは扇状に噴出されるので、手指をより水圧の高い手前側のノズル31に近い扇の要側にもってくればより強力に汚れを落とすことができる。すなわち、手指の汚れの程度によって扇状の高圧水Hに対して手指を当てる位置を変えることによって効率よく汚れを落とすことができる。高圧水Hは斜め下方に向かって噴出されるとともに、吸い込み口41がボウル2の側壁部24の開口21の前側左右幅とほぼ等しくなるように設けられているので、ミストがボウル2の外への飛散するのを抑制できる。さらに、吸引されたミストを含む空気は、貯留水Wの中を通されることによってミストが貯留水Wの中に溶け込み効率よく除去されるので排気に細菌等が付着したミストが含まれて周囲に拡散するおそれが抑制される。加えて、貯留水Wには発光ダイオード42nから深紫外線が照射されるので、貯留水Wに細菌等が付着したミストが溶け込んだとき、貯留水Wを殺菌することができる。これによって、さらに排気に細菌等が付着したミストが含まれて周囲に拡散するおそれが抑制される。
【0024】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0025】
1.上記実施形態においては、高圧水Hを点状のノズル31から扇状に噴射するように構成したが、これに限らず、ノズルを左右方向に延びる線状のものとして上面視で矩形状に噴射するように構成してもよい
【0026】
2.上記実施形態においては、高圧水Hを一定の圧力のものとして構成したが、これに限らず、0.5MPaの前後の圧力範囲で調整が可能なものとして構成してもよい。それによって、食品等の手指以外のものの洗浄にも利用可能とすることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 洗浄装置
2 ボウル
3 噴射装置
4 吸引装置
21 開口
31 ノズル
41 吸い込み口
42 吸引ユニット
42m シロッコファン
42n 発光ダイオード
43 連結部材
H 高圧水
P 使用者
W 貯留水
図1
図2
図3
図4