(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】気体センサ用整流構造
(51)【国際特許分類】
G01N 29/32 20060101AFI20240311BHJP
G01N 29/024 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01N29/32
G01N29/024
(21)【出願番号】P 2020124942
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 弘行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏信
(72)【発明者】
【氏名】仁平 あゆ美
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆志
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-024080(JP,A)
【文献】特開2001-208577(JP,A)
【文献】特開2020-106299(JP,A)
【文献】特表2011-508193(JP,A)
【文献】特開2015-224872(JP,A)
【文献】特開2014-106225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0234356(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110132523(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01F 1/00-9/02
F15D 1/00-1/14
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の桟構造であって、延伸方向を揃えて並べられた複数の棒状部材を各前記桟構造が有する、複数の桟構造を備え、
複数の前記桟構造が、空間を隔てて重なるように気体通過方向に配列されており、
隣接する前記桟構造について、前記棒状部材が延伸する方向が異な
り、
各前記桟構造では、前記気体通過方向で対向する第1仮想平面および第2仮想平面のそれぞれに複数の前記棒状部材が延伸方向を揃えて並べられており、
前記気体通過方向に眺めたときに、前記第1仮想平面に配置された複数の前記棒状部材における隣接する部材間に、前記第2仮想平面に配置された前記棒状部材が位置することを特徴とする気体センサ用整流構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の気体センサ用整流構造において、
各前記棒状部材は、延伸方向に沿って延びる角を有し、
各前記棒状部材の角は、各前記桟構造の外側に向けられていることを特徴とする気体センサ用整流構造。
【請求項3】
請求項1に記載の気体センサ用整流構造において、
各前記棒状部材は、円柱状に形成されていることを特徴とする気体センサ用整流構造。
【請求項4】
請求項1に記載の気体センサ用整流構造において、
前記第1仮想平面上の各前記棒状部材は、円柱を前記第1仮想平面に平行な平面で切断した形状に形成され、
前記第2仮想平面上の各前記棒状部材は、円柱を前記第2仮想平面に平行な平面で切断した形状に形成され、
各前記棒状部材は、
前記気体通過方向とは逆の方向に凸の曲面を有することを特徴とする気体センサ用整流構造。
【請求項5】
請求項1に記載の気体センサ用整流構造において、
各前記棒状部材は、
延伸方向に垂直な断面が台形である台形柱状に形成され、
台形断面における平行な2辺のうち短い方が、前記気体通過方向とは逆の方向に向けられていることを特徴とする気体センサ用整流構造。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の気体センサ用整流構造において、
各前記桟構造は、環状の枠部材を有し、
各前記桟構造における各前記棒状部材が、前記枠部材の内側に橋渡されていることを特徴とする気体センサ用整流構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体センサ用整流構造に関し、特に、桟構造を有する整流構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池から供給される電力によって走行する燃料電池車について、広く研究開発が行われている。燃料電池は水素および酸素の化学反応によって電力を発生する。一般に、水素が燃料として燃料電池に供給され、酸素は周囲の空気から燃料電池に取り入れられる。燃料電池車には水素タンクが搭載され、水素タンクから燃料電池に水素が供給される。水素タンク内の水素が少なくなったときは、サービスステーションに設置された水素供給装置から燃料電池車の水素タンクに水素が供給される。
【0003】
水素は可燃性の気体であるため、燃料電池を用いる場合には水素の漏れの監視が必要となる。そこで、燃料電池と共に水素センサが広く用いられている。水素センサは、空気中に含まれる水素の濃度を測定したり、水素濃度が所定値を超えたときに警報を発したりする機能を有する。
【0004】
なお、以下の特許文献1および2には、本願発明に関連する技術として、燃料電池に用いられる整流構造が記載されている。これらの文献に記載されている整流構造は、燃料電池に供給される気体を整流し、水素と酸素との反応を促進する。特許文献1に記載の整流構造では気体を整流する部材として空気整流板が用いられている。空気整流板は、平面板に均一に複数個の円形の貫通孔が形成されたものである。特許文献2に記載の整流構造では、気体を整流する部材として整流対象の気体に圧力損失を与える整流板が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-92311号公報
【文献】特開2006-183977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水素センサ等の気体センサには、超音波の伝搬速度に基づいて特定の気体の濃度を測定するものがある。このような気体センサには、気体の濃度を測定する空間(濃度測定空間)が設けられている。濃度測定空間には超音波を送受信する超音波振動子が設けられている。送信用の超音波振動子から超音波が送信されてから、濃度測定空間内を伝搬した超音波が受信用の超音波振動子で受信されるまでの伝搬時間と、予め求められた伝搬距離とに基づいて、超音波の伝搬速度が求められる。
【0007】
超音波の伝搬速度を求める気体センサでは、気体の乱流、渦流等により、濃度測定空間に流入する気体の流速や流れ方向が不安定になっている場合、濃度測定空間内を伝搬した超音波の伝搬時間の測定精度が低下し、気体の濃度の測定精度が低下することがある。そこで、気体センサに流入させる気体を整流構造を用いて整流することが考えられる。しかし、特許文献1および2に記載されているような整流構造を用いた場合には、圧力損失が大きいことによって濃度測定空間での気体の入れ替わりが遅くなり、適切な測定結果が得られるタイミングに遅延が生じることが考えられる。また、このような整流構造を用いた場合には、測定対象の気体に含まれていた水分が整流構造において結露し、測定が困難になってしまうことが考えられる。
【0008】
本発明の目的は、気体センサの性能を向上させる整流構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の桟構造であって、延伸方向を揃えて並べられた複数の棒状部材を各前記桟構造が有する、複数の桟構造を備え、複数の前記桟構造が、空間を隔てて重なるように気体通過方向に配列されており、隣接する前記桟構造について、前記棒状部材が延伸する方向が異なり、各前記桟構造では、前記気体通過方向で対向する第1仮想平面および第2仮想平面のそれぞれに複数の前記棒状部材が延伸方向を揃えて並べられており、前記気体通過方向に眺めたときに、前記第1仮想平面に配置された複数の前記棒状部材における隣接する部材間に、前記第2仮想平面に配置された前記棒状部材が位置することを特徴とする。
【0011】
望ましくは、各前記棒状部材は、延伸方向に沿って延びる角を有し、各前記棒状部材の角は、各前記桟構造の外側に向けられている。望ましくは、各前記棒状部材は、円柱状に形成されている。望ましくは、前記第1仮想平面上の各前記棒状部材は、円柱を前記第1仮想平面に平行な平面で切断した形状に形成され、前記第2仮想平面上の各前記棒状部材は、円柱を前記第2仮想平面に平行な平面で切断した形状に形成され、各前記棒状部材は、前記気体通過方向とは逆の方向に凸の曲面を有する。望ましくは、各前記棒状部材は、延伸方向に垂直な断面が台形である台形柱状に形成され、台形断面における平行な2辺のうち短い方が、前記気体通過方向とは逆の方向に向けられている。
【0012】
望ましくは、各前記桟構造は、環状の枠部材を有し、各前記桟構造における各前記棒状部材が、前記枠部材の内側に橋渡されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気体センサの性能を向上させる整流構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
各図を参照して本発明の実施形態に係る燃料電池システムおよび気液分離器について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。また、本明細書における、「円柱」「円筒」「円」等の形状を表す用語は、幾何学的に厳密に定義された形状のみを表すものではなく、その形状を有する構成要素の機能が発揮される範囲で変形が加えられた形状も表す。
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10の構成が示されている。燃料電池システム10は、燃料電池12、加湿器14、気液分離器16および水素センサ18を備えている。燃料電池12には酸素を含む空気が供給される。すなわち、空気は加湿器14に送り込まれ、加湿器14は空気に適度な水分を与える。加湿器14によって水分を与えられた空気は、燃料電池12に供給される。燃料電池12には、空気とは別に、燃料として水素が供給される。
【0017】
燃料電池12は、水素と酸素の化学反応によって電力を発生する。水素と酸素の化学反応によって生じた水は、空気と共に燃料電池12から気液分離器16に送り込まれる。気液分離器16は空気から水分を分離し、その水分は加湿器14に送り込まれる。気液分離器16からは水分が分離された空気が排出される。気液分離器16から排出される空気については、水素センサ18によって水素の濃度が検出される。
【0018】
図2には、気液分離器16の断面斜視図が示されている。気液分離器16は円柱状に形成されている。
図2には、気液分離器16の中心軸上にあり、気液分離器16において空気が流れる方向に向けられた流れ軸Fが示されている。また、
図2には、流れ軸Fの正方向を見て右方向を正方向とするx軸と、上方向を正方向とするz軸が定義されている。
【0019】
気液分離器16は、気液分離構造30と整流構造32とを備えている。気液分離構造30は、上流側から流れ込んだ空気から水分を分離して気液分離構造30の外側へ放出する。水分が分離された後の空気は、整流構造32へと流れ込む。整流構造32は、気液分離構造30を通過した空気が流れる向きを整える。
【0020】
図3には、整流構造32の断面斜視図が示されている。整流構造32は、円筒状の筐体34と、3つの桟構造40-1~40-3を備えている。3つの桟構造40-1~40-3は、空間を隔てて重なるように流れ軸Fの方向、すなわち気体通過方向に配列されている。各桟構造は、延伸方向を揃えて並べられた複数の棒状部材50を備えている。各桟構造には気体通過方向で対向する2つの仮想平面が定義されている。すなわち、桟構造40-1には、第1仮想平面S1-1および第2仮想平面S2-1が定義されている。桟構造40-2には、第1仮想平面S1-2および第2仮想平面S2-2が定義されている。桟構造40-3には、第1仮想平面S1-3および第2仮想平面S2-3が定義されている。
【0021】
本実施形態における各桟構造は、第1仮想平面および第2仮想平面のそれぞれにおいて平行に並べられた複数の棒状部材50を備えている。各桟構造は、さらに円筒状の枠部材52を有しており、各桟構造では、第1仮想平面および第2仮想平面のそれぞれにおいて複数の棒状部材50が、枠部材52の内側に、すなわち枠部材52の内面間に橋渡されている。
【0022】
図3に示されているように、桟構造40-1が備える各棒状部材50は、x軸に対して右下がりに45°の角度をなす方向に延びている。また、桟構造40-2が備える各棒状部材50は、x軸に対して右上がりに45°の角度をなす方向に延びている。さらに、桟構造40-3が備える各棒状部材50は、x軸に対して右下がりに45°の角度をなす方向に延びている。このように、隣接する桟構造については、棒状部材50の延伸方向が異なる。すなわち、桟構造40-1が備える棒状部材50の延伸方向と、桟構造40-2が備える棒状部材50の延伸方向は90°異なる。また、桟構造40-2が備える棒状部材50の延伸方向と、桟構造40-3が備える棒状部材50の延伸方向は90°異なる。
【0023】
図4(a)には、流れ軸Fの正方向に向かって1つの桟構造40を眺めた正面図が示されている。以下の説明では、桟構造40-1~40-3を包括的に示す符号として符号「40」が用いられることがある。
図4(b)には、
図4(a)のPP線において桟構造40を切断した場合に現れる断面が示されている。
図4(a)および
図4(b)では、
図4(a)の上方向を正方向とする座標軸がα軸として定義されている。また、
図4(a)の右方向を正方向とする座標軸がβ軸として定義されている。さらに、
図4(a)の描画面に対して垂直に描画面に向かう方向を正方向とする座標軸がγ軸として定義されている。γ軸は上記の流れ軸Fと平行である。
【0024】
図4(b)に示されているように、各棒状部材50の形状は三角柱である。第1仮想平面S1には、両端の棒状部材50を除いた4本の棒状部材50の断面が形成する三角形の重心が位置する。第1仮想平面S1における両端の棒状部材50の形状は、三角柱を枠部材52の内面で切断した形状である。両端の棒状部材50は、仮に枠部材52の内面で切断されていないとした場合の断面の重心が、第1仮想平面S1に位置するように配置されている。第2仮想平面S2には、5本の棒状部材50のそれぞれの断面が形成する三角形の重心が位置する。
図4(a)および
図4(b)に示されている例では、第1仮想平面S1および第2仮想平面S2のそれぞれにおいて棒状部材50が等間隔に配置され、各棒状部材50が枠部材52の内面間に橋渡されている。
【0025】
各棒状部材50の断面が形成する三角形の3つの頂点のうちの1つは、桟構造40の外側に向けられている。すなわち、第1仮想平面S1に並べられた各棒状部材50の1つの角が、第2仮想平面S2側とは反対側(外側)に向けられ、第2仮想平面S2に並べられた各棒状部材50の1つの角が、第1仮想平面S1側とは反対側(外側)に向けられている。
【0026】
第1仮想平面S1に配置された棒状部材50と、第2仮想平面S2に配置された棒状部材50との間は、間隔dの距離で隔てられている。間隔dは、β軸方向を見たときに、第1仮想平面S1に配置された棒状部材50と、第2仮想平面S2に配置された棒状部材50との間に認められる隙間の、γ軸方向の幅として定義される。間隔dは、第1仮想平面S1に配置された棒状部材50についての部材間の隙間D、若しくは第2仮想平面S2に配置された棒状部材50についての部材間の隙間Dと同一であるか、または隙間Dよりも大きくてもよい。
【0027】
図4(a)に示されているように、桟構造40では、気体通過方向を眺めたときに、第1仮想平面S1に配置された複数の棒状部材50における隣接する部材間に、第2仮想平面S2に配置された棒状部材50が位置している。同様に、気体通過方向を眺めたときに、第2仮想平面S2に配置された複数の棒状部材50における隣接する部材間に、第1仮想平面S1に配置された棒状部材50が位置している。
図4(a)に示されている例では、気体通過方向を眺めたときに、第1仮想平面S1に配置された6本の棒状部材50における隣接する部材間の空間が、第2仮想平面S2に配置された棒状部材50によって塞がり、上流側から下流側を見通せないようになっている。
【0028】
図3に示されている整流構造32では3つの桟構造40-1~40-3が用いられている。隣接する桟構造の棒状部材50がなす角度が90°となるように、3つの桟構造が空間を隔てて重なるように気体通過方向に配列され、円筒状の筐体34内に固定されている。
【0029】
本実施形態に係る整流構造32では、複数の桟構造40が空間を隔てて重なるように、気体通過方向に配列されており、隣接する桟構造40について、棒状部材50が延伸する方向が異なる。これによって、整流構造32に流れ込む空気の流れに乱れがある場合であっても、空気の流れる方向が流れ軸Fの方向に近付けられ、または一致する。例えば、フィン(翼状の構造物)によって空気を旋回させて、遠心力によって水分を分離する構造が、
図2の気液分離構造30として用いられた場合には、気液分離構造30を通過した後の空気の流れに乱れが生じることがある。このような場合であっても空気の流れが流れ軸Fの方向に近付けられ、または一致する。
【0030】
また、本実施形態に係る整流構造32では、1つの桟構造40が有する複数の棒状部材50が延伸方向を揃えて並べられている。したがって、隣接する棒状部材50の間にスリット状の隙間が形成される。また、第1仮想平面S1に配置された棒状部材50と、第2仮想平面S2に配置された棒状部材50との間には十分な間隔が開けられている。そのため、複数の桟構造40が気体通過方向に連ねられたとしても圧力損失が小さくなる。
【0031】
さらに、整流構造32では、第1仮想平面S1に並べられた各棒状部材50において延伸方向に沿って延びる角が外側に向けられ、第2仮想平面S2に並べられた各棒状部材50において延伸方向に沿って延びる角が外側に向けられている。これによって、整流構造32における圧力損失が小さくなる。
【0032】
したがって、本実施形態に係る整流構造32を通過した空気に対して水素センサを用いることで、水素センサの測定精度が向上する。
【0033】
図5(a)および
図5(b)には、第1の変形例に係る桟構造40Aが示されている。
図5(b)には、
図5(a)のQQ線において桟構造40Aを切断した場合に現れる断面が示されている。
図5(b)に示されているように、第2仮想平面S2における両端の棒状部材50を除き、各棒状部材50の形状は円柱である。第2仮想平面S2における両端の棒状部材50の形状は、円柱を枠部材52の内面で切断した形状である。第1仮想平面S1には、4本の棒状部材50のそれぞれの断面の重心が位置する。第2仮想平面S2には、両端の棒状部材50を除いた3本の棒状部材50の断面の重心が位置する。両端の棒状部材50は、仮に枠部材52の内面で切断されていないとした場合の断面の重心が、第2仮想平面S2に位置するように配置されている。
図5(a)および
図5(b)に示されている例では、第1仮想平面S1および第2仮想平面S2のそれぞれにおいて棒状部材50が等間隔に配置され、各棒状部材50が枠部材52の内面間に橋渡されている。
【0034】
第1仮想平面S1に配置された棒状部材50と、第2仮想平面S2に配置された棒状部材50との間隔dは、第1仮想平面S1に配置された棒状部材50についての部材間の隙間Dと同一であるか、または隙間Dよりも大きくてもよい。あるいは間隔dは、第2仮想平面S2に配置された棒状部材50についての部材間の隙間Dと同一であるか、または隙間Dよりも大きくてもよい。以下の変形例における間隔dおよび隙間Dについても同様の関係が成立してよい。
【0035】
図6(a)および
図6(b)には、第2の変形例に係る桟構造40Bが示されている。
図6(b)には、
図6(a)のRR線において桟構造40Bを切断した場合に現れる断面が示されている。
図6(b)に示されているように、第2仮想平面S2における両端の棒状部材50を除き、各棒状部材50の形状は円柱をαβ平面に平行な平面で切断して形成された半円柱である。第2仮想平面S2における両端の棒状部材50の形状は、枠部材52の内面で半円柱を切断した形状である。各棒状部材50は、γ軸負方向に凸の曲面を有している。第1仮想平面S1には、4本の棒状部材50のそれぞれの断面の重心が位置する。第2仮想平面S2には、両端の棒状部材50を除いた3本の棒状部材50の断面の重心が位置する。両端の棒状部材50は、仮に枠部材52の内面で切断されていないとした場合の断面の重心が第2仮想平面S2に位置するように配置されている。
図6(a)および
図6(b)に示されている例では、第1仮想平面S1および第2仮想平面S2のそれぞれにおいて棒状部材50が等間隔に配置され、各棒状部材50が枠部材52の内面間に橋渡されている。
【0036】
図7(a)および
図7(b)には、第3の変形例に係る桟構造40Cが示されている。
図7(b)には、
図7(a)のTT線において桟構造40Cを切断した場合に現れる断面が示されている。
図7(b)に示されているように、第1仮想平面S1における両端の棒状部材50を除き、棒状部材50の形状は、延伸方向に垂直な断面が台形とされた台形柱である。第1仮想平面S1における両端の棒状部材50の部材の形状は、枠部材52の内面で台形柱を切断した形状である。各棒状部材50では、台形断面の短い方の横辺がγ軸負方向側に向けられている。第1仮想平面S1には、両端の棒状部材50を除いた4本の棒状部材50の断面の重心が位置する。両端の棒状部材50は、仮に枠部材52の内面で切断されていないとした場合の断面の重心が、第1仮想平面S1に位置するように配置されている。第2仮想平面S2には、5本の棒状部材50のそれぞれの断面の重心が位置する。
図7(a)および
図7(b)に示されている例では、第1仮想平面S1および第2仮想平面S2のそれぞれにおいて棒状部材50が等間隔に配置され、各棒状部材50が枠部材52の内面間に橋渡されている。
【0037】
各棒状部材50同士が触れることなく、各棒状部材50が枠部材52の内面間に橋渡された上記の構造により次のような効果が得られる。すなわち、万が一空気に含まれていた水分が棒状部材50の表面に結露しても、結露で生じた水滴は棒状部材50の表面を伝い枠部材52の内面へ達する。枠部材52は、内面の最下の位置で流れ軸Fの方向に水滴が流れ、水滴が排出されるように形成されてもよい。これによって、隣り合う棒状部材50間の隙間に滞留する水滴が低減されるか、あるいは、隣り合う棒状部材50間の隙間に水滴が滞留することがない。したがって、隣合う棒状部材50の隙間を通過する空気の流れが、水滴によって妨げられる現象が抑制される。
【0038】
また、複数の桟構造が空間を隔てて重なるように気体通過方向に配列される構造によって、隣合う桟構造の一方における棒状部材50と、隣合う桟構造の他方における棒状部材50とが触れることがない。そのため、同様の原理によって、複数の桟構造を通過する空気の流れが、水滴によって妨げられる現象が抑制される。すなわち、万が一空気に含まれていた水分が棒状部材50の表面に結露しても、結露で生じた水滴は棒状部材50の表面を伝い枠部材52の内面へ達する。これによって、隣合う桟構造の一方における棒状部材50と、隣合う桟構造の他方における棒状部材50との隙間に滞留する水滴が低減されるか、あるいは、この隙間に水滴が滞留することがない。これによって、複数の桟構造を通過する空気の流れが、水滴によって妨げられる現象が抑制される。
【0039】
上記では、1つの桟構造40に第1仮想平面S1および第2仮想平面S2が定義され、各仮想平面に複数の棒状部材50が延伸方向を揃えて並べられた整流構造32が示された。このように、気体通過方向で対向する2つの仮想平面のそれぞれに複数の棒状部材を配置する2層構造の他、単層構造で整流構造が形成されてもよい。この場合、1つの桟構造に1つの仮想平面が定義され、1つの仮想平面に複数の棒状部材が延伸方向を揃えて並べられる。
【0040】
また、1つの桟構造が備える複数の棒状部材は、仮想平面上になくてもよく、気体通過方向に前後して延伸方向を揃えて並べられてもよい。
【0041】
また、法線方向を揃えて所定の間隔を隔てて気体通過方向に配列された3つ以上の仮想平面のそれぞれに複数の棒状部材が延伸方向を揃えて並べられたN層構造で桟構造が形成されてもよい。ただし、Nは3以上の整数である。
【0042】
また、上記では、隣接する桟構造40における棒状部材50のなす角度が90°となるように、3つの桟構造40が空間を隔てて重なるように気体通過方向に配列された整流構造32が示された。整流構造に含まれる桟構造の数は任意であり、2つ、または4つ以上の桟構造が用いられてよい。また、隣接する桟構造における棒状部材がなす角度は、0°でない任意の角度であってもよい。例えば、M個の桟構造が空間を隔てて重なるように気体通過方向に配列された場合には、隣接する桟構造における棒状部材がなす角度は180°/(M-1)であってよい。
【0043】
また、桟構造における棒状部材の本数は任意である。桟構造において複数の棒状部材は、必ずしも等間隔で配置されていなくてもよい。さらに、3つ以上の桟構造が整流構造に用いられる場合、桟構造の配置間隔は等間隔でなくてもよい。筐体は円筒の他、その他の筒形状であってよい。桟構造における枠部材もまた、筐体の内壁面に嵌め込まれるような他の筒形状を有してもよい。
【0044】
本発明に係る整流構造は、水素センサのみならず、その他の気体を検出するセンサに対して用いられてもよい。すなわち、一般的な気体センサの検出対象となる空気を整流するために本発明に係る整流構造が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 燃料電池システム、12 燃料電池、14 加湿器、16 気液分離器、18 水素センサ、30 気液分離構造、32 整流構造、34 筐体、40,40-1,40-2,40-3,40A,40B,40C 桟構造、50 棒状部材、52 枠部材、S1、S1-1~S1-3 第1仮想平面、S2,S2-1~S2-3 第2仮想平面。