(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】基板作業装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240311BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20240311BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/08 Q
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2020131474
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】春日 大介
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-186308(JP,A)
【文献】特開2007-165564(JP,A)
【文献】特開2013-038339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-21/607
H01L 21/50-21/52
H01L 21/58
H01L 21/67-21/687
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が実装される基板に作業を行う作業部と、
前記作業部を移動させる移動機構部と、
前記移動機構部の熱伸びに起因する熱伸び補正を行うための位置基準部と、
前記位置基準部を撮像する撮像部と、
前記撮像部による前記位置基準部の撮像結果に基づいて、熱伸び補正量を取得するとともに、取得した
前記熱伸び補正量と基準値とを比較し、前記熱伸び補正量
と前記基準値との比較結果に基づいて、前記熱伸び補正量に異常があるか否かを検出する制御を行う制御部と、を備え
、
前記位置基準部は、複数の位置基準部を含み、
前記制御部は、前記熱伸び補正量に異常があることを検出した場合、前記複数の位置基準部の全ての熱伸び補正量が前記基準値に対して所定の範囲のオフセットを有した値であるか否かを検出することにより、前記撮像部の位置ずれがあるか否かを検出する制御を行うように構成されている、基板作業装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記撮像部の位置ずれがあることを検出した場合、前記撮像部の位置の補正を行うように構成されている、請求項
1に記載の基板作業装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記撮像部の位置の補正を行った状態で、前記撮像部により前記位置基準部または前記位置基準部以外の他の特徴点を撮像させることにより、前記撮像部の位置の補正により前記基板の生産が継続可能であるか否かを確認する制御を行うように構成されている、請求項
2に記載の基板作業装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記撮像部の位置の補正により前記基板の生産が継続可能ではない場合、作業者にエラーを通知する制御を行うように構成されている、請求項
3に記載の基板作業装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記基板1枚ごと、または、所定の時間間隔において、前記熱伸び補正量に異常があるか否かを定期的に検出する制御を行うように構成されている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【請求項6】
前記基準値は、過去に取得した前記熱伸び補正量の実測値、または、シミュレーション計算により取得した前記熱伸び補正量の理想値である、請求項
1に記載の基板作業装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の位置基準部の前記熱伸び補正量のうちの少なくとも1つの前記熱伸び補正量が異常である場合、前記熱伸び補正量に異常があることを検出する制御を行うように構成されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板作業装置に関し、特に、移動機構部の熱伸びに起因する熱伸び補正を行う基板作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動機構部の熱伸びに起因する熱伸び補正を行う基板作業装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、基板に部品を実装する部品実装機(基板作業装置)が開示されている。この部品実装機は、部品を保持して基板に実装する装着ヘッドと、装着ヘッドを移動させるXY駆動機構(移動機構部)とを備えている。この部品実装機では、装着ヘッドの移動に伴って、XY駆動機構の温度が上昇し、XY駆動機構に熱伸びが発生するため、XY駆動機構の熱伸びに起因する熱伸び補正が行われる。具体的には、この部品実装機では、稼働時間が、定められた許容時間を超過した場合、XY駆動機構の熱伸びに起因する熱伸び補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された部品実装機では、稼働時間が許容時間を超過した場合、XY駆動機構の熱伸びに起因する熱伸び補正が行われるため、熱伸び補正量に異常がある場合にも、稼働時間が許容時間を超過した場合には、XY駆動機構の熱伸びに起因する熱伸び補正が行われると考えられる。この場合、異常な熱伸び補正量により誤った熱伸び補正が行われるため、熱伸び補正の精度を保証することができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、異常な熱伸び補正量による誤った熱伸び補正を回避し、熱伸び補正の精度を保証することが可能な基板作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による基板作業装置は、部品が実装される基板に作業を行う作業部と、作業部を移動させる移動機構部と、移動機構部の熱伸びに起因する熱伸び補正を行うための位置基準部と、位置基準部を撮像する撮像部と、撮像部による位置基準部の撮像結果に基づいて、熱伸び補正量を取得するとともに、取得した熱伸び補正量と基準値とを比較し、熱伸び補正量と基準値との比較結果に基づいて、熱伸び補正量に異常があるか否かを検出する制御を行う制御部と、を備え、位置基準部は、複数の位置基準部を含み、制御部は、熱伸び補正量に異常があることを検出した場合、複数の位置基準部の全ての熱伸び補正量が基準値に対して所定の範囲のオフセットを有した値であるか否かを検出することにより、撮像部の位置ずれがあるか否かを検出する制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面による基板作業装置では、上記のように、撮像部による位置基準部の撮像結果に基づいて、熱伸び補正量を取得するとともに、取得した熱伸び補正量に基づいて、熱伸び補正量に異常があるか否かを検出する制御を行う制御部を設ける。これにより、熱伸び補正量に異常があることを検出することができる。その結果、異常な熱伸び補正量により誤った熱伸び補正が行われることを回避することができる。これにより、異常な熱伸び補正量による誤った熱伸び補正を回避し、熱伸び補正の精度を保証することができる。また、部品実装装置に適用した場合には、誤った熱伸び補正に起因する部品実装の不良(基板の実装位置に対する部品の位置ずれ)が発生することを回避することができる。
【0009】
上記一の局面による基板作業装置において、制御部は、熱伸び補正量に異常があることを検出した場合、撮像部の位置ずれがあるか否かを検出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、熱伸び補正量の異常の原因が、撮像部の位置ずれであるか否かを検出することができる。その結果、熱伸び補正量の異常の原因が撮像部の位置ずれである場合、熱伸び補正量の異常の原因を検出することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、制御部は、撮像部の位置ずれがあることを検出した場合、撮像部の位置の補正を行うように構成されている。このように構成すれば、熱伸び補正量の異常の原因が撮像部の位置ずれであることを検出した場合、熱伸び補正量の原因としての撮像部の位置ずれを補正することができる。その結果、撮像部の位置ずれに起因して熱伸び補正量に異常が発生した場合に、熱伸び補正量の異常を補正により解消し、基板の生産を継続することができる。
【0011】
上記撮像部の位置の補正を行う構成において、好ましくは、制御部は、撮像部の位置の補正を行った状態で、撮像部により位置基準部または位置基準部以外の他の特徴点を撮像させることにより、撮像部の位置の補正により基板の生産が継続可能であるか否かを確認する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、撮像部の位置の補正により熱伸び補正量の異常が解消するか否かを確認した後、基板の生産が継続可能であるか否かを確認することができる。その結果、基板の生産が継続可能であるか否かを適切に確認することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、制御部は、撮像部の位置の補正により基板の生産が継続可能ではない場合、作業者にエラーを通知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、作業者は、エラーの通知により、熱伸び補正量の異常により基板の生産が継続可能でないことを迅速に知ることができる。その結果、作業者は、熱伸び補正量の異常を解消する作業を迅速に行うことができる。
【0013】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、基板1枚ごと、または、所定の時間間隔において、熱伸び補正量に異常があるか否かを定期的に検出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、熱伸び補正量に異常があるか否かを定期的に検出することができるので、熱伸び補正量に異常が発生した場合、熱伸び補正量の異常を迅速に検出することができる。その結果、異常な熱伸び補正量による誤った熱伸び補正をより確実に回避し、熱伸び補正の精度をより確実に保証することができる。
【0014】
上記一の局面による基板作業装置において、制御部は、熱伸び補正量と基準値とを比較するとともに、熱伸び補正量と基準値との比較結果に基づいて、熱伸び補正量に異常があるか否かを検出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、単に基準値と比較するだけで、熱伸び補正量に異常があるか否かを簡単かつ確実に検出することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、基準値は、過去に取得した熱伸び補正量の実測値、または、シミュレーション計算により取得した熱伸び補正量の理想値である。このように構成すれば、正常な熱伸び補正量としての、過去に取得した熱伸び補正量の実測値、または、シミュレーション計算により取得した熱伸び補正量の理想値に基づいて、熱伸び補正量に異常があるか否かを確実に検出することができる。
【0016】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、位置基準部は、複数の位置基準部を含み、制御部は、複数の位置基準部の熱伸び補正量のうちの少なくとも1つの熱伸び補正量が異常である場合、熱伸び補正量に異常があることを検出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、複数の位置基準部の熱伸び補正量のうちに、1つでも異常な熱伸び補正量があれば、熱伸び補正量に異常があることを検出することができる。その結果、複数の位置基準部の熱伸び補正量のうちの2つ以上の熱伸び補正量が異常である場合、熱伸び補正量に異常があることを検出する構成に比べて、厳しい基準で、熱伸び補正量に異常があることを検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、異常な熱伸び補正量による誤った熱伸び補正を回避し、熱伸び補正の精度を保証することが可能な基板作業装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態の基板作業装置を示す模式的な平面図である。
【
図2】一実施形態の基板作業装置の熱伸びがない状態の位置基準部の撮像結果を説明するための模式図である。
【
図3】一実施形態の基板作業装置の熱伸びがある状態の位置基準部の撮像結果を説明するための模式図である。
【
図4】一実施形態の基板作業装置の熱伸び補正処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】一実施形態の基板作業装置の自動復旧処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】一実施形態の基板作業装置の撮像部の熱伸び補正量および基準値を説明するための模式図である。
【
図7】一実施形態の基板作業装置の正常な場合の熱伸び補正量および異常な場合の熱伸び補正量を説明するための模式図である。
【
図8】一実施形態の基板作業装置の撮像部の位置ずれがある場合の熱伸び補正量を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(部品実装装置の構成)
図1を参照して、本発明の一実施形態による部品実装装置100の構造について説明する。なお、部品実装装置100は、特許請求の範囲の「基板作業装置」の一例である。
【0021】
部品実装装置100は、ダイシングされたウエハWから部品(半導体チップ)Cを取り出して基板Sに実装する、いわゆるフリップチップボンダである。
【0022】
図1に示すように、部品実装装置100は、基台1と、コンベア2と、実装部3と、移動機構部4と、2つの基板撮像部5aおよび5bと、ウエハ保持テーブル6と、取出部7と、部品認識撮像部8と、固定撮像部9と、フラックス供給部10と、ウエハ収納部11と、制御部12とを備えている。なお、実装部3は、特許請求の範囲の「作業部」の一例である。また、基板撮像部5aおよび5bは、特許請求の範囲の「撮像部」の一例である。
【0023】
コンベア2は、所定の実装作業位置に基板Sを搬入し、所定の実装作業位置から基板Sを搬出するように構成されている。また、コンベア2は、X方向に延びる一対のコンベアレールと、基板Sを所定位置で位置決めする位置決め機構(図示せず)とを含んでいる。これにより、コンベア2は、基板SをX方向に搬送し、所定の実装作業位置に基板Sを位置決め固定する。
【0024】
実装部3は、ウエハWの部品Cを基板Sに実装する作業を行うように構成されている。具体的には、実装部3は、移動機構部4により、コンベア2(基板S)の上方を水平方向(XY方向)に移動可能に支持されている。実装部3は、X方向に沿って配置された複数(6つ)の吸着ヘッド3aを含んでいる。吸着ヘッド3aは、先端に吸着ノズル(図示せず)を有している。実装部3は、取出部7によりウエハWから取り出される部品Cを吸着ヘッド3aにより吸着して基板Sに実装するように構成されている。
【0025】
移動機構部4は、実装部3を移動させるように構成されている。具体的には、移動機構部4は、実装部3をX方向に移動させるためのX軸移動機構部4aと、X軸移動機構部4aをY方向に移動させるためのY軸移動機構部4bとを含んでいる。X軸移動機構部4aおよびY軸移動機構部4bとしては、たとえば、リニアモータを用いた直動機構、または、ボールねじ軸を用いた直動機構などを採用することができる。X軸移動機構部4aは、実装部3をX方向に移動させる駆動源としてX軸モータ(図示せず)を有している。Y軸移動機構部4bは、X軸移動機構部4aをY方向に移動させる駆動源としてY軸モータ(図示せず)を有している。実装部3は、移動機構部4のX軸移動機構部4aおよびY軸移動機構部4bにより、コンベア2(基板S)の上方を水平方向(XY方向)に移動可能に構成されている。
【0026】
2つの基板撮像部5aおよび5bは、カメラを含み、基板Sへの部品Cの実装に先立って、基板Sに付されたフィデューシャルマーク(図示せず)を撮像するように構成されている。また、2つの基板撮像部5aおよび5bは、実装部3と共通のフレームに設けられている。このため、2つの基板撮像部5aおよび5bは、実装部3と共に、移動機構部4のX軸移動機構部4aおよびY軸移動機構部4bにより、コンベア2(基板S)の上方を水平方向(XY方向)に移動可能に構成されている。基板撮像部5aは、実装部3のX方向の一方側(X1方向側)に設けられている。また、基板撮像部5bは、実装部3のX方向の他方側(X2方向側)に設けられている。
【0027】
ウエハ保持テーブル6は、出し入れ機構(図示せず)によりウエハ収納部11から引き出されたウエハWを所定位置で支持するように構成されている。
【0028】
取出部7は、ウエハ保持テーブル6により支持されたウエハWから部品Cを取り出して実装部3に受け渡すように構成されている。また、取出部7は、所定の駆動手段によりウエハ保持テーブル6の上方位置において水平方向(XY方向)に移動されるように構成されている。また、取出部7は、複数のウエハヘッド7aを含んでいる。
【0029】
ウエハヘッド7aは、X軸回りに回転が可能で、かつ上下方向への移動(昇降)が可能に構成されている。また、ウエハヘッド7aは、部品Cを吸着することが可能に構成されている。つまり、取出部7は、突上部(図示せず)により突き上げられた部品Cをウエハヘッド7aにより吸着して取り出し、部品Cを反転(フリップ)させ、所定の受け渡し位置において、実装部3(吸着ヘッド3a)に部品Cを受け渡すように構成されている。
【0030】
部品認識撮像部8は、カメラを含み、ウエハWからの部品Cの取り出しに先立ち、取り出し対象となる部品Cを撮像するように構成されている。また、部品認識撮像部8は、取出部7と共通のフレームに設けられている。また、部品認識撮像部8は、所定の駆動手段によりウエハ保持テーブル6の上方位置において水平方向(XY方向)に移動されるように構成されている。
【0031】
固定撮像部9は、基台1上であって実装部3の可動領域内に設置されている。固定撮像部9は、カメラを含み、実装部3の吸着ヘッド3aにより吸着されている部品Cを下方から撮像するように構成されている。
【0032】
フラックス供給部10は、部品Cのバンプ電極にフラックスを転写(塗布)するために設けられている。具体的には、フラックス供給部10は、プレート上にフラックスを薄く伸ばし広げて供給するように構成されている。そして、実装部3の吸着ヘッド3aに吸着された部品Cのバンプ電極が伸び広げられたフラックスに接触される。これにより、部品Cのバンプ電極にフラックスが転写される。なお、フラックスは、接合のためのはんだの濡れが良好になるように部品Cのバンプ電極に塗布される。
【0033】
ウエハ収納部11は、ダイシングされた複数枚のウエハWを収容可能に構成されている。ウエハWの部品Cは、複数のバンプ電極が形成されたフリップチップ実装用のチップ部品である。この場合、部品Cは、バンプ電極形成面(実装面)が上方を向くようにフィルム状のウエハシート上に貼り付けられて保持されている。
【0034】
制御部12は、部品実装装置100の各部の動作を統括的に制御するように構成されている。具体的には、制御部12は、コンベア2、実装部3、移動機構部4、2つの基板撮像部5aおよび5b、ウエハ保持テーブル6、取出部7、部品認識撮像部8、固定撮像部9、フラックス供給部10、および、ウエハ収納部11などの動作制御を行うように構成されている。制御部12は、上記の各部の駆動モータに内蔵されるエンコーダ等の位置検出手段からの出力信号に基づいて、各部の動作制御を行う。また、制御部12は、各種撮像部(基板撮像部5a、基板撮像部5b、部品認識撮像部8、および、固定撮像部9)の撮像制御および画像認識を行う機能を有する。制御部12は、CPU(中央処理ユニット)と、メモリとを含んでいる。
【0035】
(移動機構部の熱伸び)
ここで、移動機構部4の熱伸びについて説明する。
【0036】
部品実装装置100を稼働させて、基板Sを生産する場合、移動機構部4により実装部3を移動させながら、基板Sを生産することになる。この場合、実装部3の移動に伴って、移動機構部4のX軸移動機構部4aおよびY軸移動機構部4bにおいて、温度上昇が発生する。そして、移動機構部4のX軸移動機構部4aおよびY軸移動機構部4bの温度上昇に起因して、移動機構部4のX軸移動機構部4aおよびY軸移動機構部4bに熱伸び(熱膨張)が発生する。熱伸びが発生した場合、実際の位置と、データ上の位置(機械座標位置)との間にずれが発生するため、移動機構部4による実装部3の位置決め精度が低下する。
【0037】
この位置決め精度の低下を回避するため、部品実装装置100は、移動機構部4の熱伸びに起因する熱伸び補正を行うための位置基準部Mを備えている。位置基準部Mは、熱伸び補正を行うための位置基準を示す専用の部材であり、コンベア2に設けられている。なお、位置基準部Mとしては、専用の部材を用いるのではなく、位置基準部Mの設置対象であるコンベア2の特徴点(すなわち、特徴的な形を有する部分)を利用してもよい。しかしながら、熱伸び補正の精度の観点からは、専用の部材を用いるのが好ましい。
【0038】
位置基準部Mは、複数(6つ)設けられている。複数の位置基準部Mのうちの半分(3つ)は、コンベア2の一方側(Y2方向側)の部分に設けられている。そして、複数の位置基準部Mのうちの残りの半分(残りの3つ)は、コンベア2の他方側(Y1方向側)の部分に設けられている。Y2方向側の3つの位置基準部Mと、Y1方向側の3つの位置基準部Mとは、コンベア2の中心線に対して線対称に配置されている。また、複数の位置基準部Mは、所定の実装作業位置の近傍に配置されている。
【0039】
熱伸び補正を行う場合、制御部12は、基板撮像部5aおよび5bの各々により複数の位置基準部Mの各々を撮像させる制御を行うように構成されている。具体的には、制御部12は、移動機構部4により基板撮像部5aおよび5bの各々を複数の位置基準部Mの各々の上方位置に移動させるとともに、基板撮像部5aおよび5bの各々により複数の位置基準部Mの各々を撮像させる制御を行うように構成されている。本実施形態では、2つの基板撮像部2aおよび2bの各々により、6つの位置基準部Mの各々が撮像されるため、合計12個の撮像結果が制御部12により取得される。
【0040】
個々の位置基準部Mの撮像では、制御部12は、移動機構部4により、撮像対象の位置基準部Mの上方位置を示す機械座標位置に、基板撮像部5aまたは5bを移動させる制御を行う。この際、移動機構部4の熱伸びがなければ、
図2に示すように、撮像画像において、位置基準部Mの基準位置C1と、基板撮像部5aまたは5bの基準位置C2とが略一致する。位置基準部Mの基準位置C1は、たとえば、位置基準部Mの中心位置である。また、基板撮像部5aまたは5bの基準位置C2は、たとえば、基板撮像部5aまたは5bの視野中心位置である。
【0041】
一方、移動機構部4の熱伸びがあると、移動機構部4により基板撮像部5aまたは5bを同じ機械座標位置に移動させるように制御しても、移動機構部4の熱伸びがない場合とはずれた位置に、基板撮像部5aまたは5bが移動される。このため、移動機構部4の熱伸びがある場合には、
図3に示すように、撮像画像において、位置基準部Mの基準位置C1と、基板撮像部5aまたは5bの基準位置C2とが一致しない(ずれる)。また、位置基準部Mの基準位置C1と、基板撮像部5aまたは5bの基準位置C2とのずれ量には、移動機構部4の熱伸びが反映されている。
【0042】
制御部12は、基板撮像部5aまたは5bによる位置基準部Mの撮像結果(撮像画像)に基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyを取得するように構成されている。熱伸び補正量Dxは、撮像画像における位置基準部MのX方向の位置変化量である。すなわち、熱伸び補正量Dxは、撮像画像における、位置基準部Mの基準位置C1と、基板撮像部5aまたは5bの基準位置C2とのX方向の位置ずれ量である。また、熱伸び補正量Dyは、撮像画像における位置基準部MのY方向の位置変化量である。すなわち、熱伸び補正量Dyは、撮像画像における、位置基準部Mの基準位置C1と、基板撮像部5aまたは5bの基準位置C2とのY方向の位置ずれ量である。熱伸び補正量DxおよびDyは、たとえば、数μm~数十μm程度である。制御部12は、複数の位置基準部Mの各々の熱伸び補正量DxおよびDyを取得するとともに、取得した複数の位置基準部Mの各々の熱伸び補正量DxおよびDyに基づいて、機械座標位置の補正による熱伸び補正を行うように構成されている。
【0043】
(熱伸び補正処理)
次に、
図4のフローチャート、
図5のフローチャート、および、
図6~
図8を参照して、本実施形態の部品実装装置100による熱伸び補正処理を説明する。
図4および
図5のフローチャートの各処理は、制御部12により行われる。
【0044】
図4に示すように、まず、ステップS101において、制御部12は、基板Sの生産を開始する制御を行う。
【0045】
そして、ステップ102において、制御部12は、基板撮像部5aおよび5bによる位置基準部Mの撮像結果に基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyを取得する。具体的には、ステップ102において、制御部12は、基板撮像部5aおよび5bの各々により、複数の位置基準部Mの各々が撮像させる制御を行う。また、制御部12は、基板撮像部5aおよび5bの各々による複数の位置基準部Mの各々の撮像結果に基づいて、複数の位置基準部Mの各々の熱伸び補正量DxおよびDyを取得する制御を行う。ステップ102では、合計12個の撮像結果が取得される。
【0046】
ここで、本実施形態では、ステップ103において、制御部12は、取得した熱伸び補正量DxおよびDyに基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを検出する制御を行う。
【0047】
具体的には、
図6に示すように、制御部12は、熱伸び補正量DxおよびDyと基準値とを比較するとともに、熱伸び補正量DxおよびDyと基準値との比較結果に基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを検出する制御を行う。基準値は、異常がない場合(正常な場合)の熱伸び補正量DxおよびDyである。具体的には、基準値は、過去に取得した熱伸び補正量DxおよびDyの実測値である。実測値としての基準値は、特に限られないが、たとえば、部品実装装置100のエイジング動作(いわゆる、慣らし運転)時、および、過去に行われた基板Sの生産時などに、取得されることができる。基準値は、移動機構部4の熱伸びの初期から終期にわたる熱伸び補正量DxおよびDyの実測値を含んでいる。また、基準値は、2つの基板撮像部5aおよび5bの各々に対して設けられているとともに、複数の位置基準部Mの各々に対して設けられている。
【0048】
図7に示すように、制御部12は、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量DxおよびDyのうちの少なくとも1つの熱伸び補正量DxおよびDyが異常である場合、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出する制御を行う。また、制御部12は、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量DxおよびDyの全ての熱伸び補正量DxおよびDyが正常である場合、熱伸び補正量DxおよびDyに異常がないことを検出する制御を行う。
【0049】
具体的には、制御部12は、今回取得した複数の位置基準部Mの熱伸び補正量DxおよびDyであるデータT0と、基準値であるデータT1~Tnとを比較する制御を行う。なお、
図7では、データT1~Tnが、移動機構部4の熱伸びの小さい方から大きい方に向かって並んでいる。すなわち、データT1、T2およびT3などは、移動機構部4の熱伸びの初期の基準値である。また、データTnは、移動機構部4の熱伸びの終期の基準値である。制御部12は、データT0の熱伸び補正量DxおよびDyと、データT1~Tnの基準値としての熱伸び補正量DxおよびDyとの差分が以下の式(1)および(2)を満たすか否かを検出する制御を行う。
Th1
x>|T0 Dxi-Tj Dxi| ・・・(1)
Th1
y>|T0 Dyi-Tj Dyi| ・・・(2)
ここで、
i:位置基準部の番号(1≦i≦6)
j:基準値の番号(1≦j≦n)
Th1
x:熱伸び補正量Dxに関するしきい値
Th1
y:熱伸び補正量Dyに関するしきい値
T0 Dxi:データT0(今回)の位置基準部Miの熱伸び補正量Dx
T0 Dyi:データT0(今回)の位置基準部Miの熱伸び補正量Dy
Tj Dxi:データTjの位置基準部Miの熱伸び補正量Dx
Tj Dyi:データTjの位置基準部Miの熱伸び補正量Dy
である。
【0050】
なお、しきい値Th1xおよびTh1yは、予め実験などにより求めておくことができる。また、しきい値Th1xおよびTh1yは、特に限られないが、たとえば、数μm程度である。
【0051】
制御部12は、データT1~Tnのうちに、複数の位置基準部Mの全ての熱伸び補正量Dxに関する差分が上記式(1)を満たし、かつ、複数の位置基準部Mの全ての熱伸び補正量Dyに関する差分が上記式(2)を満たすデータがある場合、熱伸び補正量DxおよびDyに異常がないことを検出する制御を行う。一方、制御部12は、データT1~Tnのうちに、複数の位置基準部Mの全ての熱伸び補正量Dxに関する差分が上記式(1)を満たし、かつ、複数の位置基準部Mの全ての熱伸び補正量Dyに関する差分が上記式(2)を満たすデータがない場合、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出する制御を行う。なお、
図7では、便宜上、基板撮像部5aの撮像結果に対する熱伸び補正量DxおよびDyの異常の検出のみを図示している。しかしながら、熱伸び補正量DxおよびDyの異常の検出は、基板撮像部5bの撮像結果に対しても行われる。なお、基板撮像部5aに対するデータT1~Tnと、基板撮像部5bに対するデータT1~Tnとは、対応している。
【0052】
そして、
図4に示すように、ステップ103において、制御部12が熱伸び補正量DxおよびDyに異常がないことを検出した場合、ステップS104に進む。
【0053】
そして、ステップS104において、制御部12は、コンベア2、実装部3、移動機構部4、2つの基板撮像部5aおよび5b、ウエハ保持テーブル6、取出部7、部品認識撮像部8、固定撮像部9、フラックス供給部10、および、ウエハ収納部11などの動作制御を行うことにより、基板Sへの部品Cの実装動作を行う。
【0054】
そして、ステップS105において、制御部12は、熱伸び補正量DxおよびDyの取得タイミングであるか否かを検出する制御を行う。熱伸び補正量DxおよびDyの取得タイミングとしては、基板S1枚ごと、および、所定の時間間隔などを予め設定しておくことができる。なお、所定の時間間隔を熱伸び補正量DxおよびDyの取得タイミングとして設定する場合、部品実装装置100の稼働時間が進むにつれて、移動機構部4の熱伸び量の変化が小さくなることを考慮して、部品実装装置100の稼働時間が進むにつれて、所定の時間間隔を徐々に大きくする。
【0055】
そして、ステップS105において、制御部12が熱伸び補正量DxおよびDyの取得タイミングであることを検出した場合、ステップS102に進む。そして、ステップS102およびS103の処理が繰り返される。これにより、制御部12は、基板1枚ごと、または、所定の時間間隔において、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを定期的に検出する制御を行う。
【0056】
また、ステップS105において、制御部12が熱伸び補正量DxおよびDyの取得タイミングでないことを検出した場合、ステップS106に進む。
【0057】
そして、ステップS106において、制御部12は、基板Sの生産が終了したか否かを検出する制御を行う。ステップS106において、制御部12が基板Sの生産が終了したことを検出した場合、熱伸び補正処理が終了される。また、ステップS106において、制御部12が基板Sの生産が終了していないことを検出した場合、ステップS104に進む。そして、ステップS104および105の処理が繰り返される。
【0058】
また、ステップ103において、制御部12が熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出した場合、ステップS107に進む。そして、ステップS107において、制御部12は、自動復旧処理を行う。具体的には、ステップS107では、制御部12は、
図5のステップS201~S208の処理を行う。
【0059】
自動復旧処理は、実装部3に対する基板撮像部5aまたは5bの位置ずれにより、熱伸び補正量DxおよびDyの異常が発生した場合に、自動復旧を行うための処理である。なお、実装部3に対する基板撮像部5aまたは5bの位置ずれは、たとえば、部品実装装置100に対する作業時に、作業者が意図せずに(気づかずに)基板撮像部5aまたは5bに接触することによって発生することがある。
【0060】
図5に示すように、まず、ステップS201において、制御部12は、データT0(
図7参照)と、データT1~Tn(
図7参照)とを照合する制御を行う。
【0061】
そして、ステップS202において、制御部12は、基板撮像部5aおよび5bのうちのいずれか熱伸び補正量DxおよびDyに異常がある方において、データT1~Tnのうちに、データT0に対応するデータがあるか否かを検出する制御を行う。なお、ステップS202では、基板撮像部5aおよび5bの両方の熱伸び補正量DxおよびDyに異常がある場合には、制御部12は、データT0に対応するデータがないことを検出する。この場合、自動復旧不可能(原因不明)であるとして、ステップS108(
図4参照)に進む。
【0062】
ステップS202では、制御部12は、基板撮像部5aおよび5bのうちのいずれか熱伸び補正量DxおよびDyに異常がない方において、データT1~Tnのうち、データT0に対応するデータを検出する制御を行う。そして、制御部12は、検出したデータに基づいて、基板撮像部5aおよび5bのうちのいずれか熱伸び補正量DxおよびDyに異常がある方において、データT1~Tnのうち、データT0に対応するデータを検出する制御を行う。
【0063】
たとえば、制御部12が、基板撮像部5aおよび5bのうちのいずれか熱伸び補正量DxおよびDyに異常がない方において、データT0に対応するデータとしてデータT3を検出したとする。この場合、制御部12は、基板撮像部5aおよび5bのうちのいずれか熱伸び補正量DxおよびDyに異常がある方において、データT0に対応するデータとしてデータT3を検出する制御を行う。
【0064】
ステップS202において、制御部12がデータT0に対応するデータがあることを検出した場合、ステップS203に進む。
【0065】
そして、ステップS203において、制御部12は、データT0とデータT0に対応するデータとに基づいて、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがあるか否かを検出する制御を行う。すなわち、制御部12は、今回取得した熱伸び補正量DxおよびDyと基準値とに基づいて、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがあるか否かを検出する制御を行う。
【0066】
図8に示すように、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがある場合、複数の位置基準部Mの全ての熱伸び補正量DxおよびDyに、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれが反映される。このため、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがある場合、複数の位置基準部Mの全ての熱伸び補正量DxおよびDyは、基準値に対して、略一定のオフセット値を有した値となる。
図8に示す例では、熱伸び補正量Dxは、基準値に対して、概ね10μmオフセットした値となっている。また、熱伸び補正量Dyは、基準値に対して、概ね25μmオフセットした値となっている。なお、
図8では、便宜上、基板撮像部5bの位置ずれにより、基板撮像部5bの熱伸び補正量DxおよびDyに異常が発生した場合を図示している。
【0067】
そこで、制御部12は、データT0の熱伸び補正量DxおよびDyと、データT0に対応するデータの熱伸び補正量DxおよびDyとの差分のうち、最大の差分と、最小の差分とを取得する。そして、制御部12は、取得した最大の差分と、最小の差分とが以下の式(3)および(4)を満たすか否かを検出する制御を行う。
Th2x>|mXmax-mXmin| ・・・(3)
Th2y>|mYmax-mYmin| ・・・(4)
ここで、
Th2x:撮像部の位置ずれの検出のための熱伸び補正量Dxに関するしきい値
Th2y:撮像部の位置ずれの検出のための熱伸び補正量Dyに関するしきい値
mXmax:データT0の熱伸び補正量Dxと、データT0に対応するデータの熱伸び補正量Dxとの差分のうち、最大の差分
mXmin:データT0の熱伸び補正量Dxと、データT0に対応するデータの熱伸び補正量Dxとの差分のうち、最小の差分
mYmax:データT0の熱伸び補正量Dyと、データT0に対応するデータの熱伸び補正量Dyとの差分のうち、最大の差分
mYmin:データT0の熱伸び補正量Dyと、データT0に対応するデータの熱伸び補正量Dyとの差分のうち、最小の差分
である。
【0068】
なお、しきい値Th2xおよびTh2yは、予め実験などにより求めておくことができる。また、しきい値Th2xおよびTh2yは、特に限られないが、たとえば、数μm程度である。
【0069】
制御部12は、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量Dxに関する最大の差分と最小の差分との関係が上記式(3)を満たし、かつ、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量Dyに関する最大の差分と最小の差分との関係が上記式(4)を満たす場合、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがあることを検出する制御を行う。一方、制御部12は、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量Dxに関する最大の差分と最小の差分との関係が上記式(3)を満たさないか、または、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量Dyに関する最大の差分と最小の差分との関係が上記式(4)を満たさない場合、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれではないことを検出する制御を行う。
【0070】
そして、
図5に示すように、ステップS203において、制御部12が基板撮像部5aまたは5bの位置ずれではないことを検出した場合、自動復旧不可能(原因不明)であるとして、ステップS108(
図4参照)に進む。また、ステップS203において、制御部12が基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがあることを検出した場合、ステップS204に進む。
【0071】
そして、ステップS204において、制御部12は、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正を行う。具体的には、制御部12は、基準値に対する熱伸び補正量DxおよびDyのオフセット量に基づいて、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正を行う。また、ステップS204において、制御部12は、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正を行った状態で、データT0に対応するデータによる熱伸び補正を行う。これらの補正は、仮の補正である。
【0072】
そして、ステップS205およびS206において、制御部12は、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正を行った状態で、基板撮像部5aまたは5bにより位置基準部Mを撮像させることにより、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正により基板Sの生産が継続可能であるか否かを確認する制御を行う。すなわち、制御部12は、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正により自動復旧処理が成功したか否かを確認する制御を行う。
【0073】
具体的には、ステップS205およびS206では、制御部12は、仮の補正を適用した状態での、基板撮像部5aまたは5bによる複数の位置基準部Mの各々の撮像結果に基づいて、複数の位置基準部Mの各々の位置変化量を取得する。複数の位置基準部Mの各々の位置変化量は、基準位置からのX方向の位置変化量と、基準位置からのY方向の位置変化量とを含んでいる。制御部12は、複数の位置基準部Mの各々のX方向の位置変化量およびY方向の位置変化量が所定のしきい値範囲内である場合、基板Sの生産が継続可能であることを検出する制御を行う。また、制御部12は、複数の位置基準部Mの各々のX方向の位置変化量またはY方向の位置変化量が所定のしきい値範囲を超えている場合、基板Sの生産が継続可能ではないことを検出する制御を行う。
【0074】
ステップS206において、制御部12が基板Sの生産が継続可能であることを検出した場合(自動復旧処理が成功したことを検出した場合)、ステップS207に進む。
【0075】
そして、ステップS207において、制御部12は、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正により自動復旧処理が成功したことを作業者に通知する制御を行う。
【0076】
そして、ステップS208において、制御部12は、仮の補正で用いた基板撮像部5aまたは5bの補正位置を、基板撮像部5aまたは5bの位置として登録する制御を行う。そして、ステップS108(
図4参照)に進む。
【0077】
また、ステップS206において、制御部12が基板Sの生産が継続可能ではないことを検出した場合(自動復旧処理が失敗したことを検出した場合)、ステップS201に進む。そして、ステップS201~S206の処理が適宜繰り返される。なお、データT0に対応するデータは、基本的には、1つしか存在しない。このため、ステップS206からステップS201に進んだ場合、基本的には、ステップS202において、制御部12がデータT0に対応するデータがないことを検出して、ステップS108(
図4参照)に進むことになる。
【0078】
そして、ステップS108において、制御部12は、自動復旧可能であるか否かを検出する制御を行う。ステップS108において、制御部12が自動復旧可能であることを検出した場合、ステップS104に進む。そして、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正を行った状態で、基板Sの生産が継続される。また、ステップS108において、制御部12が自動復旧可能ではないことを検出した場合、ステップS109に進む。
【0079】
そして、ステップS109において、制御部12は、作業者にエラーを通知する制御を行う。すなわち、制御部12は、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正により基板の生産が継続可能ではない場合、作業者にエラーを通知する制御を行う。そして、作業者により、熱伸び補正量DxおよびDyの異常を解消して、基板Sの生産を復旧する作業が行われる。また、熱伸び補正処理が終了される。
【0080】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
本実施形態では、上記のように、基板撮像部5aおよび5bによる位置基準部Mの撮像結果に基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyを取得するとともに、取得した熱伸び補正量DxおよびDyに基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを検出する制御を行う制御部12を設ける。これにより、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出することができる。その結果、異常な熱伸び補正量DxおよびDyにより誤った熱伸び補正が行われることを回避することができる。これにより、異常な熱伸び補正量DxおよびDyによる誤った熱伸び補正を回避し、熱伸び補正の精度を保証することができる。また、誤った熱伸び補正に起因する部品実装の不良(基板Sの実装位置に対する部品Cの位置ずれ)が発生することを回避することができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12を、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出した場合、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがあるか否かを検出する制御を行うように構成する。これにより、熱伸び補正量DxおよびDyの異常の原因が、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれであるか否かを検出することができる。その結果、熱伸び補正量DxおよびDyの異常の原因が基板撮像部5aまたは5bの位置ずれである場合、熱伸び補正量DxおよびDyの異常の原因を検出することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12を、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれがあることを検出した場合、基板撮像部5aおよび5bの位置の補正を行うように構成する。これにより、熱伸び補正量DxおよびDyの異常の原因が基板撮像部5aまたは5bの位置ずれであることを検出した場合、熱伸び補正量DxおよびDyの原因としての基板撮像部5aまたは5bの位置ずれを補正することができる。その結果、基板撮像部5aまたは5bの位置ずれに起因して熱伸び補正量DxおよびDyに異常が発生した場合に、熱伸び補正量DxおよびDyの異常を補正により解消し、基板Sの生産を継続することができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12を、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正を行った状態で、基板撮像部5aまたは5bにより位置基準部Mを撮像させることにより、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正により基板Sの生産が継続可能であるか否かを確認する制御を行うように構成する。これにより、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正により熱伸び補正量DxおよびDyの異常が解消するか否かを確認した後、基板Sの生産が継続可能であるか否かを確認することができる。その結果、基板Sの生産が継続可能であるか否かを適切に確認することができる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12を、基板撮像部5aまたは5bの位置の補正により基板Sの生産が継続可能ではない場合、作業者にエラーを通知する制御を行うように構成する。これにより、作業者は、エラーの通知により、熱伸び補正量DxおよびDyの異常により基板Sの生産が継続可能でないことを迅速に知ることができる。その結果、作業者は、熱伸び補正量DxおよびDyの異常を解消する作業を迅速に行うことができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12を、基板S1枚ごと、または、所定の時間間隔において、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを定期的に検出する制御を行うように構成する。これにより、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを定期的に検出することができるので、熱伸び補正量DxおよびDyに異常が発生した場合、熱伸び補正量DxおよびDyの異常を迅速に検出することができる。その結果、異常な熱伸び補正量DxおよびDyによる誤った熱伸び補正をより確実に回避し、熱伸び補正の精度をより確実に保証することができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12を、熱伸び補正量DxおよびDyと基準値とを比較するとともに、熱伸び補正量DxおよびDyと基準値との比較結果に基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを検出する制御を行うように構成する。これにより、単に基準値と比較するだけで、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを簡単かつ確実に検出することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、基準値を、過去に取得した熱伸び補正量DxおよびDyの実測値であるように構成する。これにより、正常な熱伸び補正量DxおよびDyとしての、過去に取得した熱伸び補正量DxおよびDyの実測値に基づいて、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があるか否かを確実に検出することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、位置基準部Mを、複数の位置基準部Mを含むように構成する。また、制御部12を、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量DxおよびDyのうちの少なくとも1つの熱伸び補正量DxおよびDyが異常である場合、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出する制御を行うように構成する。これにより、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量DxおよびDyのうちに、1つでも異常な熱伸び補正量DxおよびDyがあれば、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出することができる。その結果、複数の位置基準部Mの熱伸び補正量DxおよびDyのうちの2つ以上の熱伸び補正量DxおよびDyが異常である場合、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出する構成に比べて、厳しい基準で、熱伸び補正量DxおよびDyに異常があることを検出することができる。
【0090】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0091】
たとえば、上記実施形態では、いわゆるフリップチップボンダである基板作業装置に本発明が適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、移動機構部の熱伸びに起因する補正を行う基板作業装置であれば、フリップチップボンダ以外の基板作業装置に適用されてもよい。たとえば、本発明は、表面実装用のチップ部品を基板に実装する部品実装装置(いわゆる、表面実装機)、および、接着剤などの部品用の塗布剤を基板に塗布する塗布装置(いわゆる、ディスペンサ)などの基板作業装置に適用されてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、位置基準部が、コンベアに設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動機構部の熱伸びに起因する補正を行う機能を果たし得る限り、位置基準部は、コンベア以外の箇所に設けられていてもよい。たとえば、位置基準部は、基台に設けられていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、位置基準部が、6つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置基準部が、1つまたは6つ以外の複数設けられていてもよい。しかしながら、移動機構部の熱伸びに起因する補正を精度良く行う観点からは、位置基準部が1つだけ設けられているよりも、複数設けられている方が好ましい。
【0094】
また、上記実施形態では、位置基準部を撮像する撮像部(基板撮像部)が、2つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置基準部を撮像する撮像部が、1つまたは2つ以外の複数設けられていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、基板撮像部が、位置基準部を撮像する撮像部として設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、専用の撮像部が、位置基準部を撮像する撮像部として設けられていてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、制御部が、熱伸び補正量に異常があることを検出した場合、撮像部の位置ずれがあるか否かを検出する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、熱伸び補正量に異常があることを検出した場合、撮像部の位置ずれがあるか否かを検出する制御を行わなくてもよい。たとえば、制御部が、熱伸び補正量に異常があることを検出した場合、作業者にエラーを通知する制御を行うように構成されていてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、制御部が、撮像部の位置ずれがあることを検出した場合、撮像部の位置ずれの補正を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、撮像部の位置ずれがあることを検出した場合、撮像部の位置ずれの補正を行わなくてもよい。たとえば、制御部が、撮像部の位置ずれがあることを検出した場合、撮像部の位置ずれがあることを作業者に通知する制御を行うように構成されていてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、制御部が、撮像部の位置の補正を行った状態で、撮像部により位置基準部を撮像させることにより、撮像部の位置の補正により基板の生産が継続可能であるか否かを確認する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、撮像部の位置の補正を行った状態で、撮像部により位置基準部以外の他の特徴点を撮像させることにより、撮像部の位置の補正により基板の生産が継続可能であるか否かを確認する制御を行うように構成されていてもよい。他の特徴点としては、コンベアおよび基台などの特徴的な形状の部分を使用することができる。また、本発明では、制御部が、撮像部の位置の補正を行った状態で、撮像部により位置基準部または位置基準部以外の他の特徴点を撮像させる制御を行わなくてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、熱伸び補正量と比較する基準値が、過去に取得した熱伸び補正量の実測値である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱伸び補正量と比較する基準値が、シミュレーション計算により取得した熱伸び補正量の理想値(計算値)であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、過去に取得した熱伸び補正量の実測値としての基準値が、移動機構部の熱伸びの初期から終期にわたる熱伸び補正量の実測値である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、過去に取得した熱伸び補正量の実測値としての基準値が、1つ前の熱伸び補正量の取得タイミング時に取得した熱伸び補正量の実測値であってもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0102】
3 実装部(作業部)
4 移動機構部
5a、5b 基板撮像部(撮像部)
12 制御部
100 部品実装装置(基板作業装置)
Dx、Dy 熱伸び補正量
C 部品
M 位置基準部
S 基板