(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料の連続成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/54 20060101AFI20240311BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20240311BHJP
B29C 70/50 20060101ALI20240311BHJP
B65H 23/185 20060101ALI20240311BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/16
B29C70/50
B65H23/185
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2020143148
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-05-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「革新材料による次世代インフラシステムの構築~安全・安心で地球と共存できる数世紀社会の実現~」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 勲
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 潔
(72)【発明者】
【氏名】布谷 勝彦
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513085(JP,A)
【文献】特開2014-019505(JP,A)
【文献】特開2007-331110(JP,A)
【文献】特開平08-258167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B65H 23/185
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の強化繊維基材をロール状に巻かれて形成した材料ロールが複数個仕掛けられる供給装置と、前記供給装置から供給されて重ね合わされた状態の複数の前記強化繊維基材に対し加圧及び加熱を施すことで繊維強化複合材料に成形する成形工程を実行する成形装置と、前記成形装置により成形された前記繊維強化複合材料を予め設定された引出量ずつ引き出す引出工程を実行する引出装置とを含み、前記成形装置による前記成形工程及び前記成形工程後の前記引出装置による前記引出工程から成る1回の成形動作が繰返し行われることで、各前記材料ロールから前記強化繊維基材を引き出しつつ前記繊維強化複合材料を連続的に成形する前記繊維強化複合材料の連続成形装置において、
前記材料ロールを回転駆動するための駆動モータであって、前記材料ロールの全数以下の数だけ設けられると共に全ての前記材料ロールがいずれかに対応するように1以上設けられる駆動モータと、
前記駆動モータに対応する前記材料ロールのうちの1以上の前記材料ロールから引き出される前記強化繊維基材の張力を検出するために設けられた張力検出機構と、
前記成形工程の前記加圧の終了時点から前記引出工程の終了時点までの間に前記強化繊維基材が送り出される方向に前記材料ロールが回転駆動されるように前記駆動モータの駆動を制御する駆動制御装置であって、前記引出工程の開始時点から次の前記成形動作における前記成形工程の前記加圧の終了時点までの間における期間が張力制御期間として予め設定されると共に前記張力検出機構で得られた検出値から求められる検出張力値と予め設定された目標の張力値である目標張力値とに基づいて前記駆動モータの駆動を制御する張力制御を前記張力制御期間において実行する駆動制御装置とを備える
ことを特徴とする前記繊維強化複合材料の連続成形装置。
【請求項2】
前記張力制御期間は、前記引出工程の終了時点から次の成形動作における前記成形工程の前記加圧の終了時点までの間で設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の前記繊維強化複合材料の連続成形装置。
【請求項3】
前記駆動モータは、前記材料ロール毎に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の前記繊維強化複合材料の連続成形装置。
【請求項4】
前記目標張力値が設定される設定器であって、前記材料ロール毎に前記目標張力値を設定可能な設定器を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の前記繊維強化複合材料の連続成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の強化繊維基材をロール状に巻かれて形成した材料ロールが複数個仕掛けられる供給装置と、前記供給装置から供給されて重ね合わされた状態の複数の前記強化繊維基材に対し加圧及び加熱を施すことで繊維強化複合材料に成形する成形工程を実行する成形装置と、前記成形装置により成形された前記繊維強化複合材料を予め設定された引出量ずつ引き出す引出工程を実行する引出装置とを含み、前記成形装置による前記成形工程及び前記成形工程後の前記引出装置による前記引出工程から成る1回の成形動作が繰返し行われることで、各前記材料ロールから前記強化繊維基材を引き出しつつ前記繊維強化複合材料を連続的に成形する前記繊維強化複合材料の連続成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機関連部品、自動車関連部品及びスポーツ・レジャー用品などを繊維強化複合材料によって形成することが行われている。その繊維強化複合材料は、プリプレグ等の強化繊維基材を積層した上で、その積層体に加圧及び加熱等を施して成形することで製造される。
【0003】
因みに、その強化繊維基材(プリプレグ)は、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させてシート状に形成されたものである。また、そのような強化繊維基材としては、強化繊維が一方向に引き揃えられた所謂一方向材(UD材)や、強化繊維を織物状に形成した所謂織物材(ファブリック材)等がある。また、一方向材としては、シート状に形成された強化繊維基材の長手方向に対し、強化繊維がその長手方向と平行(0度方向)に配向されているものや、それ以外にも、その長手方向に対し例えば45度や90度に配向されているものがある。
【0004】
そのような繊維強化複合材料を連続的に製造するように構成された装置として、例えば、特許文献1に開示された連続成形装置がある。その連続成形装置は、シート状の強化繊維基材をロール状に巻かれて形成した材料ロール(原基材)が複数個仕掛けられる供給装置を備えている。そして、その連続成形装置は、供給装置における複数個の材料ロールから引き出された強化繊維基材が、供給装置の下流側に設けられた成形装置において加圧型によって加圧及び加熱されることで、繊維強化複合材料として成形されるように構成されている。
【0005】
また、連続成形装置においては、そのような繊維強化複合材料の成形が、順次、連続的に行われる。そこで、連続成形装置は、成形された繊維強化複合材料を下流側へ引き出す引出装置を成形装置の下流側に備えている。そして、連続成形装置においては、前記した成形装置による成形工程に次いで、その成形工程で成形された繊維強化複合材料を下流側へ引き出す引出工程が実行され、その成形工程、引出工程がその順で繰り返されることで、繊維強化複合材料が連続的に成形される。また、引出工程において繊維強化複合材料が下流側へ引き出される結果として、その繊維強化複合材料に連なると共に材料ロールに連なっている各強化繊維基材も、その材料ロールから引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の連続成形装置では、供給装置は、各材料ロールが仕掛けられる支軸を備えるが、その支軸は支柱等に固定的に設けられており、支軸に対し各材料ロールが回転可能に掛けられる(支持される)ようになっている。したがって、前記のように材料ロールから強化繊維基材が引き出されるのに伴って材料ロールが回転するが、その回転は、強化繊維基材の引き出しによって生じる消極的なものとなっている。すなわち、強化繊維基材の材料ロールからの引き出しは、材料ロールをそのように回転させることを伴いつつ行われることとなる。
【0008】
なお、支軸に仕掛けられる材料ロールは、基本的には大径のものである。その理由は、材料ロールを頻繁に交換する必要がないようにし、繊維強化複合材料の成形が効率よく行われるようにするためである。そして、そのような大径の材料ロールは重量がかなり重いものとなっているため、前記のように仕掛けられた材料ロールを回転させる上で、その回転抵抗は大きなものとなる。
【0009】
そのため、材料ロールの巻径が大きい状態では、前記のように材料ロールを回転させることに伴って強化繊維基材をその材料ロールから引き出す際に、その大きな回転抵抗により、引き出される強化繊維基材に対し大きな負荷が掛かる。そして、その結果として、成形装置に至る強化繊維基材がダメージを受ける場合がある。特に、その強化繊維基材が前記したような強化繊維の配向方向が基材の長手方向に対し角度を成すようなものである場合には、強化繊維基材は、その長手方向、すなわち、基材が引き出される方向に対する負荷に弱いものであるため、破断してしまうといった問題を生じる。
【0010】
また、前述のように連続的に繊維強化複合材料の成形が行われると、材料ロールの巻径が次第に小さくなるため、前記した回転抵抗は次第に小さくなる。そして、それに伴い、前記のような強化繊維基材に掛かる負荷に起因する問題は発生しなくなる。
【0011】
一方で、材料ロールの巻径が小さくなると、強化繊維基材が材料ロールから引き出されるのに伴い、繊維強化複合材料の引き出しを停止すべく引出装置による引き出しを終了しても、材料ロールの回転が直ちに停止せず材料ロールが慣性により余計に回転してしまう場合がある。
【0012】
その結果として、強化繊維基材が余分に供給され、成形工程が開始される時点で強化繊維基材が緩んだ状態となる場合がある。そして、その場合には、強化繊維基材の張力が適正では無い状態で成形装置による成形工程が実行されてしまうことになるため、繊維強化複合材料の品質に悪影響を及ぼす(品質が低下する)といった問題が生じる。
【0013】
以上のような実情を鑑み、本発明は、材料ロールから強化繊維基材を引き出しつつ繊維強化複合材料を連続的に成形する連続成形装置において、前述のような問題が発生することが無い連続成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の繊維強化複合材料の連続成形装置は、シート状の強化繊維基材をロール状に巻かれて形成した材料ロールが複数個仕掛けられる供給装置と、前記供給装置から供給されて重ね合わされた状態の複数の前記強化繊維基材に対し加圧及び加熱を施すことで繊維強化複合材料に成形する成形工程を実行する成形装置と、前記成形装置により成形された前記繊維強化複合材料を予め設定された引出量ずつ引き出す引出工程を実行する引出装置とを含む。また本発明の繊維強化複合材料の連続成形装置は、前記成形装置による前記成形工程及び前記成形工程後の前記引出装置による前記引出工程から成る1回の成形動作が繰返し行われることで、各前記材料ロールから前記強化繊維基材を引き出しつつ前記繊維強化複合材料を連続的に成形する。以上を本発明の繊維強化複合材料の連続成形装置は、前提とする。
【0015】
その上で、本発明の繊維強化複合材料の連続成形装置は、前記材料ロールを回転駆動するための駆動モータであって、前記材料ロールの全数以下の数だけ設けられると共に全ての前記材料ロールがいずれかに対応するように1以上設けられる駆動モータと、前記駆動モータに対応する前記材料ロールのうちの1以上の前記材料ロールから引き出される前記強化繊維基材の張力を検出するために設けられた張力検出機構と、前記成形工程の前記加圧の終了時点から前記引出工程の終了時点までの間に前記強化繊維基材が送り出される方向に前記材料ロールが回転駆動されるように前記駆動モータの駆動を制御する駆動制御装置であって、前記引出工程の開始時点から次の前記成形動作における前記成形工程の前記加圧の終了時点までの間における期間が張力制御期間として予め設定されると共に前記張力検出機構で得られた検出値から求められる検出張力値と予め設定された目標の張力値である目標張力値とに基づいて前記駆動モータの駆動を制御する張力制御を前記張力制御期間において実行する駆動制御装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、そのような本発明による連続成形装置において、前記張力制御期間は、前記引出工程の終了時点から次の成形動作における前記成形工程の前記加圧の終了時点までの間で設定されていても良い。さらに、前記駆動モータは、前記材料ロール毎に設けられていても良い。また、前記駆動モータが前記材料ロール毎に設けられている場合には、本発明の繊維強化複合材料の連続成形装置は、前記目標張力値が設定される設定器であって、前記材料ロール毎に前記目標張力値を設定可能な設定器を備えるものとしても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、連続成形装置において、材料ロールを回転駆動させるための駆動モータが備えられており、成形工程の前記加圧の終了時点から引出工程の終了時点までの間において、材料ロールが回転駆動されるようにその駆動モータが駆動される。それにより、引出工程における繊維強化複合材料の引き出しに伴って引き出される強化繊維基材に対し、材料ロールの重量に起因する大きな負荷が掛かることは無くなる。したがって、強化繊維基材がダメージを受けることを防止することができ、その強化繊維基材が前記したような強化繊維の配向方向が基材の長手方向に対し角度を成すものである場合には、その破断を防ぐことができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、その引出工程が開始される時点から次の前記成形動作における成形工程の前記加圧の終了時点までの間に張力制御期間が予め設定されており、その張力制御期間において、張力検出機構で得られた検出値から求められる検出張力値と予め設定された目標の張力値である目標張力値とに基づいた張力制御が実行される。それにより、強化繊維基材の張力が適正な状態で成形装置による成形工程が実行されるため、繊維強化複合材料の品質の低下を可及的に防止することができる。
【0019】
また、本発明による連続成形装置において、前記した張力制御期間が、引出工程の終了時点から次の前記成形動作における成形工程の前記加圧の終了時点までの間に設定されるものとすれば、前記張力制御をより簡単なかたちで行うことが可能となる。
【0020】
より詳しくは、本発明においては、張力制御期間を、前記した引出工程時とする、すなわち、強化繊維基材が引き出されるのに伴い張力が変化し続ける期間とするものであっても良い。但し、その場合は、前記張力制御を、そのように強化繊維基材の張力の変化が連続的にあるいは断続的に発生する状況において、その張力を都度適正化するように行わなければならなくなる。
【0021】
それに対し、その張力制御期間を引出工程の終了時点から次の前記成形動作における成形工程の前記加圧の終了時点までの間における期間とすれば、強化繊維基材の張力の変化が前記のように発生する引出工程が終了した後に、すなわち、張力の変化が落ち着いた後に、前記張力制御が行われることとなる。したがって、その前記張力制御は、引き出しに伴う張力変化が無い状態で行われるため、より簡単なかたちで行うことが可能となる。
【0022】
また、各材料ロールが個別で回転駆動されるように前記した駆動モータを材料ロール毎に設けるような構成とすれば、前記張力制御が、各材料ロールから引き出される強化繊維基材毎に行われることになる。それにより、各強化繊維基材の張力をより的確に適正な状態とすることが可能となり、前述のような問題の発生をより確実に防止することができる。
【0023】
さらに、前記目標張力値が設定される設定器であって、材料ロール毎に前記目標張力値を設定可能とする設定器を備えるような構成とすれば、その前記目標張力値を、仕掛けられる各材料ロールに応じたより適切な値のものとして設定することが可能となる。それにより、前記のように駆動モータが材料ロール毎に設けられる場合において、その各張力制御を、それぞれの材料ロールに応じたより適切なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明が適用された連続成形装置の一実施形態を示す説明図である。
【
図2】連続成形装置の一実施形態における制御構成を示すブロック図である。
【
図3】前記制御構成の一部の詳細を示すブロック図である。
【
図4】連続成形装置の一実施形態における制御態様の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、
図1~4に基づき、本発明が適用された連続成形装置1の一実施形態(実施例)について説明する。なお、本発明で言う強化繊維基材2は、前述したように炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させてシート状に形成されたものである。そして、本実施例では、その強化繊維基材2は、強化繊維としての炭素繊維にマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂を含浸させた熱可塑性のプリプレグ2であるものとする。
【0026】
図1に示すように、連続成形装置1は、複数個の材料ロール3、3、…が仕掛けられる供給装置4を備えている。但し、ここで言う材料ロール3は、シート状のプリプレグ(以下、「プリプレグシート」と称する。)2がロール状に巻かれて形成されたものである。また、連続成形装置1は、その供給装置4から供給された複数枚のプリプレグシート2、2、…を繊維強化複合材料5に成形する成形装置6、及びその成形装置6により成形された繊維強化複合材料5を引き出す引出装置7を備えている。
【0027】
なお、成形装置6では、供給されて重ねられた状態の複数枚のプリプレグシート2、2、…を加圧及び加熱して繊維強化複合材料5を成形する成形工程が実行される。そして、連続成形装置1においては、その成形工程が実行された後、引出装置7による引出工程が実行され、その成形工程及び引出工程を含む1回の成形動作が、その順で繰返し行われる。そのような連続成形装置1の各装置について、詳しくは以下の通りである。
【0028】
供給装置4は、複数の支柱11、11、…と複数の梁材12、12、…からなるフレーム13を主体として構成されている。そのフレーム13は、設置面から上方に延びる4本の支柱11と、その支柱11の上側の部分及び下側の部分において各支柱11間に掛け渡されるかたちで各支柱11に固定された複数の梁材12とで枠体を構成するように形成されている。但し、そのフレーム13は、水平方向に対向する2組の梁材12、12の一方が他方と比べて十分に長く、平面視において矩形状を成すように形成されている。その上で、以下では、その短い方の梁材12の長手方向をそのフレーム13における幅方向とし、長い方の梁材12の長手方向を前後方向とする。
【0029】
また、供給装置4は、材料ロール3を支持するための複数の支持軸14を有している。なお、本実施例では、供給装置4は、10個の材料ロール3、3、…を仕掛けることができるように構成されているものとする。したがって、供給装置4は、10本の支持軸14、14、…を有している。そして、その10本の支持軸14、14、…は、5本ずつ前記の上側及び下側において前記幅方向に対向する梁材12の一方に対し支持されるかたちで設けられている。但し、各支持軸14は、その一方の梁材12の側から他方の梁材12の側へ向けて前記幅方向に向けて延在すると共に、前記の上側及び下側のそれぞれにおいて5本の支持軸14、14、…が同じ高さ位置で前記前後方向に等間隔に並ぶように設けられている。
【0030】
また、前記前後方向に対向する支持軸14、14の間隔は、当然ながら満巻の材料ロール3を仕掛けることが可能な間隔、すなわち、材料ロール3の満巻時における外径よりも大きい間隔に設定されている。また、上下方向における間隔についても、満巻の材料ロール3の外径よりも大きい間隔となるように設定されている。なお、図示の例では、上側の5本の支持軸14、14、…と下側の5本の支持軸14、14、…とは、前記前後方向に同じ位置となるように設けられている。
【0031】
また、その支持軸14に仕掛けられる材料ロール3は、本実施例では、プリプレグシート2として前述した一方向材(UD材)が巻かれて形成されたものとする。但し、その材料ロール3は、全て同じものでは無く、プリプレグシート2の長手方向に対する強化繊維の配向方向が、0度方向(平行)、+45度方向、-45度方向、及び90度方向である4種類のプリプレグシート2によるものとなっている。そして、その4種類の材料ロール3が2個ずつ、計8個の材料ロール3、3、…が供給装置4に仕掛けられている。また、その8個の材料ロール3、3、…は、前記前後方向に関し、同じ種類のものが同じ位置となるように仕掛けられている。
【0032】
さらに、本実施例では、前記した4種類の材料ロール3とは別に、保護フィルム16が巻かれて形成された2個のフィルムロール17、17が供給装置4に仕掛けられているものとする。但し、その2個のフィルムロール17、17は、前記前後方向に関し、プリプレグシート2が引き出される方向における最も下流側(成形装置6側)の位置で、供給装置4において仕掛けられている。
【0033】
そして、供給装置4が以上のように構成されることで、その供給装置4に仕掛けられた材料ロール3、3、…から引き出される8枚のプリプレグシート2、2、…は、前記幅方向における同じ位置で、上下方向に並んだ状態で引き出されることとなる。その上で、その供給装置4においては、前記のようにフィルムロール17、17が仕掛けられており、各材料ロール3からプリプレグシート2が引き出されるのと同時に両フィルムロール17、17から保護フィルム16も引き出されるようになっている。
【0034】
そして、そのように保護フィルム16が同時に引き出されることで、その2枚の保護フィルム16、16は、前記のように並ぶプリプレグシート2、2の上方及び下方で引き出されることとなる。言い換えれば、その引き出しに伴い、8枚のプリプレグシート2、2、…は、上下方向において2枚の保護フィルム16、16に挟まれた状態で引き出されることとなる。因みに、その保護フィルム16は、後述のようにプリプレグシート2、2、…を加熱しつつ加圧する成形工程において、その加熱されたプリプレグシート2、2、…が成形装置6における加圧型19に付着しないようにするためのものである(以下、保護フィルム16の説明は省略する)。
【0035】
成形装置6について、(発明との関係上、詳細は省略するが)成形装置6は、供給装置4から供給された複数枚のプリプレグシート2、2、…を加熱しつつ加圧するための加圧型19を備えている。その加圧型19は、成形すべき繊維強化複合材料5の断面形状に応じた形状の上型21及び下型22で構成されている。また、その上型21及び下型22は、供給されるプリプレグシート2の経路に対する上側及び下側となるような位置で、成形装置6内に設けられている。そして、その上型21及び下型22を加熱しつつ前記経路上の複数枚のプリプレグシート2、2、…を加圧するように作動させることで、そのプリプレグシート2、2、…が加熱されつつ加圧され、繊維強化複合材料5が成形される1回の成形工程が実行される。
【0036】
引出装置7は、前述した従来技術文献である特許文献1に記載された搬送装置の構成と同じように構成されたものである。より詳しくは、以下の通りである。
【0037】
引出装置7は、成形装置6により成形された繊維強化複合材料5を引き出すべく、成形装置6に対しプリプレグシート2の引き出し方向における下流側に設けられている。また、引出装置7は、その成形された繊維強化複合材料5を把持する把持機構(図示略)、及びその把持機構を繊維強化複合材料5の経路に沿って往復動させる引出機構(図示略)を備えている。また、引出機構は、駆動源としてのサーボモータ(図示略)を含んでおり、そのサーボモータ(出力軸)の駆動(回転)に伴って把持機構を動作させるように構成されている。
【0038】
なお、その引出機構による把持機構の往復動は、把持機構の初期の位置である待機位置からの前記の下流側へ向けた往動、及びその往動後における上流側の待機位置へ向けた復動となっている。また、その往動量は、予め設定された繊維強化複合材料5の引出量と一致するものとなっている。また、その繊維強化複合材料5の引出量は、供給装置4における加圧型19の前記経路の方向における寸法、すなわち、1回の成形工程で成形される繊維強化複合材料5の成形長さよりも若干小さい量に設定されている。
【0039】
その上で、引出装置7は、前記した1回の成形工程が終了した後、把持機構が繊維強化複合材料5を把持した状態で、引出機構が前記引出量だけ把持機構を往動させるように駆動される。それにより、成形された繊維強化複合材料5が前記引出量だけ下流側に向けて引き出される引出工程が実行される。
【0040】
また、引出装置7は、前記のような往動を完了させた後、把持機構により繊維強化複合材料5の把持が解除されるように駆動される。さらに、引出装置7は、その把持機構による把持を解除させた後、引出機構により把持機構を待機位置へ向けて復動させるように駆動される。そして、引出装置7は、把持機構が待機位置に達した時点から次の成形工程が終了するまでの間において、把持機構により繊維強化複合材料5を再び把持するように駆動させる。このように、引出装置7は、1回の成形工程毎に、把持機構を前記引出量だけ待機位置から往動させる引出工程を実行すると共に、その引出工程後に把持機構を待機位置へ向けて復動させるように構成されている。
【0041】
以上のように構成された連続成形装置1について、その作用を成形工程から順に説明する。
【0042】
先ず、成形工程が開始される前には、供給装置4における各材料ロール3からによる複数枚のプリプレグシート2,2、…が成形装置6内に供給された状態になっている。その上で、成形工程が開始されると、成形装置6により、前述のように上型21及び下型22が加熱されつつその複数枚のプリプレグシート2が加圧される。また、引出装置7においては、その成形工程が実行されている間に、前記待機位置において、把持機構による繊維強化複合材料5の把持が行われる。
【0043】
そして、成形装置6による成形工程が終了すると、前記した引出工程が開始される。引出工程では、引出装置7において引出機構が駆動され、引出機構が把持機構を往動させる。それにより、成形装置6において成形された繊維強化複合材料5の部分が、成形装置6から下流側へ引き出され、成形装置6内は、成形前の複数枚のプリプレグシート2、2、…が新たに供給された状態となる。また、その引出工程により繊維強化複合材料5が引き出される結果として、供給装置4に仕掛けられた各材料ロール3に連なるプリプレグシート2も引き出される。
【0044】
そして、その引出工程の終了後、引出装置7において、把持機構が駆動されて繊維強化複合材料5を把持した状態が解除されると共に、引出機構が駆動されて前記の待機位置へ向けた把持機構の復動が行われる。
【0045】
このようにして、成形工程及び引出工程を含む1回の成形動作が完了する。そして、その後に前記の成形工程が再び実行され、以降、その成形動作が繰り返されることで繊維強化複合材料5が連続的に成形される。
【0046】
以上のように構成された連続成形装置において、本発明に基づく本実施例では、連続成形装置1は、
図2に示すように、その供給装置4が材料ロール3を回転駆動させるための駆動モータ24及び材料ロール3から引き出される強化繊維基材(プレプレグシート)2の張力を検出するために設けられた張力検出機構25を備えると共に、成形工程の加圧の終了時点から引出工程の終了時点までの間において材料ロール3が回転駆動されるように駆動モータ24の駆動を制御する駆動制御装置26を備えるように構成されている。なお、本実施例では、連続成形装置1は、引出工程の開始時点から引出工程の終了時点までの間(引出工程時)において材料ロール3が回転駆動されるように駆動モータ24の駆動を制御する駆動制御装置26を備えるように構成されているものとする。
【0047】
また、その駆動制御装置26は、予め設定された張力制御期間において、前記した張力検出機構25で得られた検出値から求められる検出張力値と目標の張力である目標張力値とに基づいて駆動モータ24の駆動を制御する張力制御を実行するように構成されている。但し、その張力制御期間は、引出工程が開始される時点から次の成形動作における成形工程の加圧の終了時点までの間において設定される期間である。その上で、本実施例では、その張力制御期間は、引出工程の終了時点から次の成形動作における成形工程の加圧の終了時点までに亘る期間として設定されているものとする。
【0048】
さらに、本実施例では、連続成形装置1は、前記の駆動モータ24が材料ロール3毎に設けられると共に、材料ロール3毎に目標張力値を設定可能とする設定器を備えるように構成されているものとする。そのような連続成形装置1の一実施例(本実施例)について、以下に詳述する。
【0049】
前述のように、供給装置4は、
図2に示すように、10個の材料ロール3、3、…を仕掛けることができるように、10本の支持軸14、14、…を備えている。そこで、供給装置4は、その各支持軸14に対応させるかたちで、10個の駆動モータ24、24、…を備えている。その上で、各駆動モータ24は、各支持軸14に仕掛けられる材料ロール3を回転駆動するために、対応する支持軸14に対し連結されている。
【0050】
支持軸14は、前記した一方の梁材12に対し支持ブラケット(図示略)を介して回転可能に支持されると共に、その延在方向における端部(一端部)とは反対側の端部(他端部)を前記支持ブラケットから突出させるかたちで設けられている。また、各駆動モータ24は、その出力軸の軸心を対応する支持軸14の軸心に一致させる配置で、対応する支持軸14が支持される前記支持ブラケットに対し取り付けられている。その上で、駆動モータ24とそれに対応する支持軸14とは、駆動モータ24の出力軸と支持軸14の他端部とでカップリング等の連結部材(図示略)によって直接的に連結されている。
【0051】
供給装置4は、各材料ロール3のプリプレグシート2が所望の経路で引き出されるように、各支持軸14に対応させるかたちで、10本のガイドロール28、28、…を有している。各ガイドロール28は、上下方向に関し、対応する支持軸14よりも中央側の位置で、前後方向に関し、その軸心が支持軸14の軸心よりも若干前記下流側に位置するような配置で設けられている。なお、上側の支持軸14、14、…に対応する各ガイドロール28、及び下側の支持軸14、14、…に対応する各ガイドロール28は、上下方向に関し、それぞれ同じ高さ位置に設けられている。
【0052】
そして、各支持軸14に仕掛けられた材料ロール3から引き出されたプリプレグシート2は、その支持軸14に対応するガイドロール28に巻き掛けられ、そのガイドロール28によって引き出し方向が転向されて成形装置6側へ引き出される。その上で、各ガイドロール28は、そのガイドロール28毎に設けられたロードセル29を介し、対応する支持軸14が支持される梁材12に対し支持されている。
【0053】
また、前記のように各材料ロール3から引き出されたプリプレグシート2は、
図3に示すように、その引き出される経路中でガイドロール28に対し巻き掛けられている。したがって、そのガイドロール28には、プリプレグシート2の張力に応じた荷重が掛かるようになっている。そして、その荷重がガイドロール28を支持するロードセル29に掛かることで、ロードセル29からは、その荷重に応じた信号が出力される。また、そのロードセル29から出力される信号は、
図2に示すように、駆動制御装置26に向けて出力され、その駆動制御装置26において検出張力値を求めるのに用いられる。
【0054】
このように、ガイドロール28及びロードセル29は、プリプレグシート2の張力の検出値を求めるための構成として機能している。したがって、そのガイドロール28及びロードセル29の組み合わせが、本発明で言う張力検出機構25を構成する構成要素となっている。
【0055】
連続成形装置1は、以上のような機械的な構成要素(装置)を有する。そして、連続成形装置1は、
図2に示すように、その全体の動作を制御するための主制御装置31を備えている。また、連続成形装置1は、前記した成形工程を実行する成形装置6の駆動を制御する成形制御装置32、前記した引出工程を実行する引出装置7の駆動を制御する引出制御装置33、及び各材料ロール3が回転駆動されるように各駆動モータ24の駆動を制御すると共に前記した張力制御を実行する駆動制御装置26を備えている。そして、各制御装置26、32、33は、主制御装置31に接続されている。なお、各制御装置26、32、33は、主制御装置31に対し双方向で通信可能に接続されている。
【0056】
さらに、連続成形装置1は、前記の各制御のための制御情報(制御値)等が記憶される記憶器35、及びその各制御のために必要な設定値を作業者が入力設定するための入力設定器36を備えている。また、この記憶器35には、前記した張力制御のための目標張力値も設定・記憶される。したがって、この記憶器35は、本発明で言う「設定器」に相当する。そして、その記憶器35が主制御装置31に接続されると共に、入力設定器36がその記憶器35に接続されている。
【0057】
記憶器35には、成形装置6による成形工程が実行された後、引出装置7による引出工程が実行され、その成形工程及び引出工程を含む1回の成形動作がその順で繰り返し行われるように設定された成形プログラムが記憶されている。その上で、主制御装置31は、前記した1回の成形動作を行うための成形装置6及び引出装置7の駆動の制御が成形制御装置32及び引出制御装置33によって実行されるように、その成形プログラムに基づいて指令信号等を各制御装置26、32、33に出力するように構成されている。詳しくは、以下の通りである。
【0058】
前述のように先ず成形工程が実行されることから、主制御装置31は、成形プログラムに基づき、
図4に示すように、成形制御装置32に対し成形開始信号s1を出力する。それにより、成形制御装置32は、その成形開始信号s1の入力に伴い、成形装置6における上型21が初期の位置である初期位置から下型22へ向けて移動されるように、上型21を移動させる駆動機構(図示略)の駆動制御を開始する。
【0059】
なお、成形装置6には、上型21の位置を検知する位置検知手段が設けられている。また、その位置検知手段は、上型21が所定の加圧位置に達した時点、すなわち、加圧型19が閉じきった時点で、成形制御装置32に対し検知信号(第1の検知信号)s2を出力するように構成されている。
【0060】
その上で、成形制御装置32は、前記第1の検知信号s2が位置検知手段から出力されると、上型21の下型22へ向けた移動を停止させると共に、その旨を示す信号(型閉信号)s3を主制御装置31に対し出力する。主制御装置31は、その型閉信号s3の入力に基づき、その型閉信号s3の入力時点から成形プログラムにおいて予め設定されている時間(加圧時間)が経過した時点で加圧型19を開く(上型21を下型22から離間する方向に移動させる)ための型開信号s4を成形制御装置32に対し出力する。
【0061】
成形制御装置32は、その型開信号s4の入力に伴い、上型21を前記初期位置へ向けて移動させるように、前記駆動機構の駆動制御を開始する。また、前記した位置検知手段は、上型21が前記初期位置に達した時点、すなわち、加圧型19が開ききった時点でも、成形制御装置32に対しその検知信号(第2の検知信号)s5を出力するようにも構成されている。そして、成形制御装置32は、前記第2の検知信号s5が位置検知手段から出力されると、上型21の初期位置へ向けた移動を停止させると共に、成形工程が終了した旨を示す信号(成形完了信号)s6を主制御装置31に対し出力する。
【0062】
主制御装置31は、その成形完了信号s6が入力されると、成形プログラムに基づき、次に、引出工程を実行(開始)させるために引出指令信号s8を引出制御装置33に対し出力する。
【0063】
なお、前記の成形開始信号s1が主制御装置31から出力される時点では、引出装置7においては、把持機構は、前記往動による下流側の位置に位置すると共に、繊維強化複合材料5を把持した状態となっている。その上で、前記の型閉信号s3が成形制御装置32から出力されると、主制御装置31は、引出制御装置33に対し、復動指令信号s7を出力する。そして、引出制御装置33は、その復動指令信号s7の入力に伴い、把持機構による繊維強化複合材料5の把持を解除すると共に、引出機構により前記待機位置へ向けて把持機構を復動させるように、引出装置7の駆動を制御する。
【0064】
また、引出装置7は、引出機構における前記サーボモータ(出力軸)の回転量を検出するエンコーダ等の回転検出手段(図示略)を備えている。そして、引出制御装置33は、前記回転検出手段によって検出された回転量(検出回転量)と、記憶器35において予め設定された前記の引出量とを比較するように構成されている。但し、前述のように引出機構は、前記サーボモータにおける出力軸の回転で把持機構を動作させるように構成されており、出力軸の回転量と把持機構の移動量とは所定の比率で表される関係にあることから、その前記引出量も、サーボモータ(出力軸)の回転量で設定されている。
【0065】
前記復動指令信号s7の入力に伴って引出制御装置33により引出機構が駆動されることで、把持機構は、前記待機位置まで移動(復動)する。なお、その駆動は、例えば、パルス指令を用いたフィードフォワード制御で行われる。
【0066】
また、把持機構が前記待機位置に達した時点では、前記検出回転量と前記引出量とは一致するはずである。そこで、引出制御装置33は、前記のように検出回転量と引出量とを比較し、その両者が一致した時点から僅かな遅延時間経過後に、把持機構を駆動して繊維強化複合材料5を把持する制御を行う。それにより、前記待機位置において、把持機構が繊維強化複合材料5を把持した状態となる。
【0067】
その後、成形制御装置32から成形完了信号s6が出力されると、主制御装置31は、引出制御装置33に対し引出指令信号s8を出力する。そして、引出制御装置33は、その引出指令信号s8の入力に伴い、把持機構が繊維強化複合材料5を把持した状態で、引出機構により前記待機位置から前記引出量だけ下流側に向けて把持機構を往動させるように、引出装置7の駆動を制御する。それにより、把持機構は、前記した往動による下流側の位置まで移動する。なお、その把持機構の移動(往動)のための前記サーボモータの制御は、前記引出量に加え、予め設定された引出時間に基づいて行われる。
【0068】
より詳しくは、記憶器35には、引出工程を実行する所望の時間(引出時間)が予め設定されている。そこで、引出制御装置33は、前記引出量分の移動がその設定された引出時間で完了するように駆動速度を求め、その求めた駆動速度に基づいて前記サーボモータの駆動を制御する。それにより、把持機構は、前記のように引出指令信号s8が入力された時点からその引出時間が経過した時点で前記下流側の位置に達するように移動する。
【0069】
また、その移動(往動)時においても、前記回転検出手段により前記サーボモータ(出力軸)の回転量が検出され、その検出回転量と前記引出量との比較が引出制御装置33によって行われる。そして、引出制御装置33は、検出回転量と前記引出量が一致した時点で、引出工程の終了の旨を示す信号(引出完了信号)s9を主制御装置31に対し出力する。その上で、主制御装置31は、その引出完了信号s9の入力に伴い、成形プログラムに基づいて成形制御装置32に対し成形開始信号s1を出力する。それにより、次の成形動作における成形工程が再び実行されることになる。
【0070】
以上のように連続成形装置1は、成形装置6による成形工程及びその成形工程に続く引出装置7による引出工程から成る1回の成形動作を繰り返し行うことで、繊維強化複合材料5の連続的な成形を行う。その上で、本発明によるその連続成形装置1は、前記のように各材料ロール3が回転駆動されるように各駆動モータ24の駆動を制御するための駆動制御装置26を備えている。
【0071】
そして、本実施例では、その駆動制御装置26は、
図2に示すように、各駆動モータ24に対応させるかたちで設けられ、対応する駆動モータ24の駆動を制御する駆動制御器38を含んでいる。このように、本実施例の駆動制御装置26は、駆動モータ24毎に設けられた駆動制御器38を備え、その各駆動制御器38は、その対応する駆動モータ24によって回転駆動される材料ロール3、及びその材料ロール3から引き出されたプリプレグシート2の張力を検出するために設けられた張力検出機構25のそれぞれに対応している。
【0072】
各駆動制御器38は、
図3に示すように、各駆動モータ24が接続されたモータ制御器39を備える。また、各駆動制御器38は、対応する張力検出機構25に接続される張力検出器41、その張力検出器41に接続されると共に主制御装置31に接続された比較器42、並びにその比較器42に接続されると共に主制御装置31及びモータ制御器39に接続される演算器43を構成要素として備えている。なお、これらの構成要素は、前述した張力制御を実行するためのものである。
【0073】
張力検出器41は、対応する張力検出機構25から出力されるプリプレグシート2の張力による荷重に応じた信号(検出値信号)s11に基づき、所定の周期毎にプリプレグシート2の張力(張力値)を求めるように構成されている。そして、張力検出器41は、その求めた張力値(検出張力値)を示す信号(張力信号)s12を、その検出張力値を求める毎に比較器42に対し出力するように構成されている。
【0074】
比較器42は、張力検出器41から張力信号s12が入力される毎に、その張力信号s12によって示される検出張力値と、前記のように記憶器35に設定された目標張力値とを比較すると共に、その偏差を求めるように構成されている。
【0075】
但し、本実施例では、前述のように記憶器35が材料ロール3毎に目標張力値を設定可能に構成されており、目標張力値は、材料ロール3毎に、その材料ロール3の種類に応じた値が記憶器35に設定(記憶)されているものとする。また、主制御装置31は、入力設定器36によりそのように各材料ロール3に対する目標張力値が入力設定され、記憶器35に設定された時点で、各駆動制御器38における比較器42に対し、対応する材料ロール3に対し設定された目標張力値(その目標張力値を示す信号s13)を出力するように構成されているものとする。その上で、各比較器42は、その主制御装置31から出力される目標張力値を、内部に備えたメモリ(図示略)に記憶するように構成されているものとする。
【0076】
したがって、前記の比較器42における比較は、対応する張力検出器41からの張力信号s12によって求められる検出張力値と、対応する材料ロール3に対し設定された目標張力値との間で行われる。その上で、比較器42は、検出張力値に対し目標張力値を減算した値を偏差として求め、その求めた偏差を示す偏差信号s14を、演算器43に対し出力するように構成されている。
【0077】
演算器43は、前記のように引出工程時に材料ロール3が回転駆動されることから、その引出工程時において、駆動モータ24の駆動を制御するための駆動指令信号s15を出力するように構成されている。また、前述のように設定された張力制御期間において張力制御が実行されること、及びその張力制御は材料ロール3を回転駆動しつつその駆動モータ24の駆動を制御することで実行されるものであることから、演算器43は、その張力制御期間においても駆動指令信号s15を出力するように構成されている。
【0078】
先ず、その引出工程時の駆動モータ24の制御について、本実施例では、材料ロール3を回転駆動することで積極的に送り出されるプリプレグシート2の移動が、前記した引出装置7による把持機構の移動(往動)に伴う繊維強化複合材料5の移動と略一致するように、その制御が行われる。具体的には、引出装置7における把持機構を移動させるための引出機構の駆動は、前述のように、予め設定された前記引出時間において前記引出量分だけ把持機構が移動するように行われる。したがって、その引出工程時における材料ロール3を回転駆動するための駆動モータ24の制御も、前記引出時間において、前記引出量分だけプリプレグシート2が材料ロール3から送り出されるように行われる。
【0079】
但し、成形の進行(プリプレグシート2の消費)に伴って材料ロール3の巻径が徐々に変化する(小さくなる)ため、同じ量のプリプレグシート2を送り出すための材料ロール3(駆動モータ24)の回転量も徐々に変化する。そこで、演算器43は、材料ロール3の巻径を演算によって求めるように構成されている。より詳しくは、演算器43には、成形の開始時において、その内部のメモリ(図示略)に、材料ロール3の巻径、及びプリプレグシート2の厚さ寸法が記憶されている。また、その材料ロール3の巻径について、演算器43の前記内部のメモリには、初期値として、満巻時における材料ロール3の巻径が記憶されているものとする。
【0080】
なお、主制御装置31は、前述のように引出工程を実行(開始)させるために引出指令信号s8を引出制御装置33に対し出力するが、その引出指令信号s8を演算器43に対しても出力するように構成されている。
【0081】
その上で、演算器43は、その引出指令信号s8の入力に伴い、材料ロール3の巻径を、内部メモリに記憶された材料ロール3の巻径、前記引出量、及びプリプレグシート2の厚さ寸法から演算によって求めるように構成されている。さらに、演算器43は、その求められた材料ロール3の巻径を、材料ロール3の巻径を求める毎に、その内部メモリに記憶するように構成されている。
【0082】
このように、本実施例では、材料ロール3の巻径は、演算器43において演算によって求められている。但し、材料ロール3の巻径は、そのように演算器43において求められるのには限らず、例えば、各材料ロール3の近傍に巻径センサを配置し、その巻径センサから出力される巻径信号に基づいて求められるようにしても良い。
【0083】
また、演算器43は、その求めた材料ロール3の巻径及び前記引出量からプリプレグシート2を前記引出量分だけ送り出すための材料ロール3の回転量を求めると共に、その求めた回転量及び前記引出時間から前記引出量分の送り出しが前記引出時間で行われるための材料ロール3の回転速度を求めるように構成されている。但し、本実施例では、前述のように材料ロール3が仕掛けられる支持軸14と駆動モータ24の出力軸とが直接的に連結されていることから、その求めた回転量及び回転速度が、駆動モータ24を駆動するための駆動量及び駆動速度となる。その上で、演算器43は、そのように回転量(駆動量)及び回転速度(駆動速度)を求めた時点で、その駆動量及び駆動速度に関する情報を含む駆動指令信号s15をモータ制御器39に対し出力するように構成されている。
【0084】
そして、モータ制御器39は、その駆動指令信号s15の入力に伴い、前記した駆動モータ24を駆動するための駆動量及び駆動速度に基づいて駆動モータ24が駆動されるように、その駆動を制御するように構成されている。
【0085】
以上の構成により、各材料ロール3は、対応する駆動制御器38における演算器43に対し前記のように引出指令信号s8が入力された時点で、すなわち、引出装置7による引出工程(プリプレグシート2の引き出し)が開始されると同時に、プリプレグシート2を積極的に送り出すように回転駆動される。そして、プリプレグシート2は、引出装置7による引き出しに伴う移動速度と略同じ速度で材料ロール3から送り出され、前記引出時間が経過した時点で、前記引出量分だけ送り出されることとなる。
【0086】
なお、本実施例では、詳細は後述するが、
図4に示すように、前述のように成形制御装置32から型閉信号s3が主制御装置31に対し出力された時点で緩め送出動作が実行される。それによって、材料ロール3が回転駆動され、プリプレグシート2が若干緩んだ状態となる程度に予め設定された量だけ材料ロール3からプリプレグシート2が送り出される。したがって、前記のように引出工程時に前記引出量分だけプリプレグシート2が材料ロール3から送り出され、前記引出時間が経過した時点では、プリプレグシート2が若干緩んだ状態となっている。
【0087】
また、そのプリプレグシート2の送り出しに次いで、前記した張力制御期間での張力制御が実行される。その張力制御のための駆動モータ24の制御は、各材料ロール3を回転(逆転)駆動しつつ、各駆動制御器38において検出張力値を目標張力値に一致させるように行われる。なお、その張力制御期間は、前述した引出工程の終了時点から次の成形動作における成形工程の加圧の終了時点までに亘る期間であり、具体的には、引出制御装置33が引出完了信号s9を出力した時点から成形制御装置32が次の成形動作における型閉信号s3を出力した時点までの期間であるように設定されている。
【0088】
その上で、各駆動制御器38における演算器43は、前記のように比較器42から偏差信号s14が入力される毎に、その偏差信号s14で示される偏差に基づき、駆動モータ24を駆動するための駆動速度を求めるように構成されている。より詳しくは、演算器43には、前記偏差を用いて駆動速度を求めるための演算式が予め設定されている。そして、演算器43は、前記偏差信号s14の入力に伴い、前記演算式を用いて駆動速度を求めるように構成されている。
【0089】
但し、本実施例では、張力制御は、主にプリプレグシート2が前記のように緩んだ状態、すなわち、検出張力値が目標張力値に対し小さい状態で実行(開始)され、検出張力値が目標張力値と一致するように行われる。したがって、前記の偏差信号s14で示される前記偏差は、主に零よりも小さい値(負の値)となっている。そして、演算器43で求められる駆動モータ24の駆動速度(材料ロール3の回転速度)は前記偏差に応じたものとして求められることから、前記のように前記偏差が負の値である場合には、その駆動速度は、負の回転速度、すなわち、材料ロール3を逆転方向に回転させる駆動モータ24の駆動速度として求められる。因みに、前記偏差が正の値である場合には、その求められる駆動速度は、材料ロール3を正転方向(前記のようにプリプレグシート2を送り出す方向)に回転させる駆動速度となる。
【0090】
このように、本実施例の張力制御は、検出張力値から求められる前記偏差に基づいて駆動モータ24を駆動するための駆動速度を求め、その求めた駆動速度で駆動モータ24の駆動を制御する、といったかたちで行われる。
【0091】
また、主制御装置31は、前述のように引出工程の終了に伴って引出制御装置33から出力される引出完了信号s9が入力されるのに伴い、張力制御を開始させるための張力制御のON信号s22を演算器43に対し出力するように構成されている。さらに、主制御装置31は、前述のように加圧の終了に伴って成形制御装置32から出力される型閉信号s3が入力されるのに伴い、張力制御を終了するための張力制御のOFF信号s23を演算器43に対し出力するように構成されている。
【0092】
そして、演算器43は、前記ON信号s22の入力に伴い、前記のように求めた駆動速度に関する情報を含む駆動指令信号s15をモータ制御器39に対し出力するように構成されている。また、演算器43は、前記OFF信号s23の入力に伴い、その駆動指令信号s15の出力を停止するように構成されている。すなわち、演算器43は、前記ON信号s22が入力された時点から前記OFF信号s23が入力される時点までの間である張力制御期間において、前記のように求められた駆動速度に関する情報を含む駆動指令信号s15をモータ制御器39に対し出力するように構成されている。
【0093】
なお、その検出張力値に基づいて求められる駆動速度に従って駆動モータ24の駆動が制御される張力制御は、プリプレグシート2が連なる繊維強化複合材料5を把持する引出装置7が停止した状態で行われる。したがって、その張力制御に伴って材料ロール3が回転(逆転)駆動されるのに伴い、プリプレグシート2の張力は徐々に上昇する。したがって、前記偏差は次第に小さくなり、それに伴って求められる駆動速度も次第に遅くなると共に、検出張力値が目標張力値と一致した時点で、その駆動速度は零となる。
【0094】
また、その前記偏差を用いて駆動速度を求める演算式は、その求められた駆動速度で駆動モータ24が駆動されて材料ロール3が回転駆動された結果として、張力制御期間が終了する時点(成形装置6における加圧が終了される時点)よりも前に検出張力値が目標張力値と一致するような駆動速度(回転速度)が求められるようなものに設定されている。但し、その演算式は、より好ましくは、成形装置6による成形工程(加圧)が開始される時点よりも前に検出張力値が目標張力値と一致するような駆動速度(回転速度)が求められるようなものに設定されているのが望ましく、本実施例においては、演算式がそのように設定されているものとする。
【0095】
また、前述のように本実施例では、成形制御装置32から型閉信号s3が主制御装置31に対し出力された時点で、すなわち、成形装置6における加圧が終了される時点で、材料ロール3が回転(正転)駆動され、プリプレグシート2が予め設定された量(送出量)だけ若干緩んだ状態となるように前記した緩め送出動作が行われる。そこで、各駆動制御器38における演算器43は、成形装置6における加圧が終了した時点で、その緩め送出動作のための駆動指令信号s15をモータ制御器39に対し出力するように構成されている。
【0096】
より詳しくは、その緩め送出動作における送出量は、材料ロール3から送り出されるプリプレグシート2が若干緩んだ状態となる程度の量として定められ、記憶器35において予め設定(記憶)されている。また、主制御装置31は、前述のように加圧の終了に伴って成形制御装置32から出力される型閉信号s3が入力されるのに伴い、前記した緩め送出動作を開始するための送出開始信号s21を演算器43に対し出力するように構成されている。
【0097】
その上で、演算器43は、その送出開始信号s21の入力に伴い、内部メモリに記憶された材料ロール3の巻径、前記送出量、及びプリプレグシート2の厚さ寸法から材料ロール3の巻径を求めると共に、その内部メモリに記憶するように構成されている。さらに、演算器43は、その求めた材料ロール3の巻径及び前記送出量から材料ロール3の回転量(駆動モータ24の駆動量)を求めるように構成されている。
【0098】
また、演算器43は、前記した緩め送出動作が、前記の送出開始信号s21の入力に伴う開始後、引出装置7による引出工程が開始される時点(成形工程が終了する時点)までに完了するような駆動モータ24の駆動速度(緩め駆動速度)が設定され、その緩め駆動速度及び前記のようにして求められた駆動モータ24の回転量に関する情報を含む駆動指令信号s15をモータ制御器39に対し出力するように構成されている。
【0099】
なお、その設定される緩め駆動速度は、材料ロール3の巻径を問わず前記のように緩め送出動作を完了させることができるような速度に設定される。そして、そのように演算器43から緩め送出動作のための駆動指令信号s15が出力されることで、モータ制御器39は、その駆動指令信号s15に基づいて駆動モータ24の駆動を制御する。
【0100】
そして、そのように駆動モータ24が駆動されることによる緩め送出動作は、プリプレグシート2が連なる繊維強化複合材料5を把持する引出装置7を停止させた状態で行われる。したがって、引出工程が開始される時点では、プリプレグシート2は、前記した送出量分だけ若干緩んだ状態となる。そして、そのようにプリプレグシート2が若干緩んだ状態で前述のような引出工程が実行(開始)されるため、前述のように引出工程が終了した時点(引出工程が開始されてから引出時間が経過した時点)では、プリプレグシート2は若干緩んだ状態となっている。
【0101】
以上で説明した供給装置4及び駆動制御装置26を備えた本実施例における連続成形装置1について、その作用を順に説明する。
【0102】
前述した成形工程(成形装置6)において、上型21が前記した所定の加圧位置に達する、すなわち、加圧が終了して型閉信号s3が成形制御装置32から出力されるのに伴って主制御装置31から演算器43に向けて送出開始信号s21が出力されると、前記した緩め送出動作のための駆動指令信号s15が演算器43から出力され、その駆動指令信号s15に基づいてモータ制御器39により駆動モータ24の駆動が制御される。それにより、各材料ロール3が前記送出量分だけプリプレグシート2を送り出すように回転駆動され、その結果として、引出工程が開始される前において、成形された繊維強化複合材料5に連なるプリプレグシート2が若干緩んだ状態となる。
【0103】
次いで、前記の加圧が終了した時点から前記加圧時間を経て加圧型19が開ききった時点で、すなわち、成形工程が完了した時点で成形制御装置32から主制御装置31に向けて成形完了信号s6が出力されると、引出装置7による引出工程が開始されると共に、その引出工程によるプリプレグシート2の移動量(前記引出量)と同じだけプリプレグシート2を材料ロール3から積極的に送り出す(引き出されるプリプレグシート2を補う)送出動作(以下、「補充送出動作」と称する。)ための各駆動モータ24の駆動の制御が、各駆動制御器38によって次のように実行される。
【0104】
成形完了信号s6が成形制御装置32から出力されるのに伴って主制御装置31から出力される引出指令信号s8が各駆動制御器38の演算器43に入力されると、演算器43は、前述のように求めた材料ロール3のその時点での巻径、前記引出量及び前記引出時間から材料ロール3(駆動モータ24)の回転量(駆動量)及び回転速度(駆動速度)を求める。そして、演算器43は、その駆動量及び駆動速度に関する情報を含む駆動指令信号s15をモータ制御器39に対し出力する。
【0105】
それにより、引出工程中において、前記引出量に応じた長さのプリプレグシート2を前記引出時間において積極的に送り出すように各材料ロール3が回転駆動され、引出装置7によるプリプレグシート2の引き出しに伴う引出装置7の移動速度と略同じ速度で各材料ロール3からプリプレグシート2が送り出されることとなる。したがって、引出工程により繊維強化複合材料5が下流側へ移動するのに伴ってその繊維強化複合材料5から材料ロール3に至る各プリプレグシート2も下流側へ向けて移動するが、その移動に合せるかたちで補充送出動作が実行され、各材料ロール3からプリプレグシート2が積極的に送り出されることとなる。それにより、各プリプレグシート2は、引出装置7による引出工程が実行されても、その移動過程において、前記した緩め送出動作による若干緩んだ状態が維持されたままとなっている。
【0106】
そして、引出工程が終了した時点で引出制御装置33から主制御装置31へ向けて引出完了信号s9が出力されると、次に、張力制御が実行される。張力制御は、各材料ロール3を回転(逆転)駆動し、プリプレグシート2の張力を目標張力に一致させるように実行される。詳しくは以下の通りである。
【0107】
引出完了信号s9の入力に伴って張力制御のON信号s22が演算器43に対し出力されると、演算器43は、比較器42から出力される偏差信号s14に基づいて求められている駆動速度に関する情報を含む駆動指令信号s15の出力を開始する。但し、その比較器42からの偏差信号s14は、前述のように張力検出器41により求められた張力検出値と目標張力値とを比較して求められた偏差に基づき、張力検出値が求められる毎に(前記した所定の周期毎に)出力される。そして、演算器43においては、その偏差信号s14が入力される毎に、前記の駆動速度が求められている。
【0108】
そして、そのような駆動指令信号s15の演算器43からの出力が開始されることにより、前記のように引出工程においてプリプレグシート2を送り出すように回転(正転)駆動された駆動モータ24(材料ロール3)の逆転方向への駆動が開始される。なお、その駆動モータ24(材料ロール3)の逆転駆動が開始される時点では、プリプレグシート2は、前述の緩め送出動作による緩んだ状態であり、検出張力値に対する目標張力値の偏差は、負の方向で最も大きい値となっている。そして、その時点で演算器43から出力される駆動指令信号s15は、そのような前記偏差(絶対値)に応じた大きさの駆動速度によるものであって、駆動モータ24を逆転方向に駆動するものとなっている。
【0109】
そして、そのように駆動モータ24が逆転駆動されると、引出装置7に把持されて停止した状態にある繊維強化複合材料5に連なるプリプレグシート2においては、その緩みが徐々に解消されていくこととなる。したがって、そのように駆動モータ24(材料ロール3)が逆転駆動されて前記のように緩みが徐々に解消されるのに伴い、そのプリプレグシート2の検出張力値が次第に上昇し、検出張力値に対する目標張力値の偏差の絶対値も次第に小さくなる。その結果として、その偏差から求められる駆動速度も次第に遅くなり、その逆転駆動による材料ロール3の回転速度も徐々に遅くなる。そして、前記のように検出張力値が大きくなる結果として、その検出張力値が目標張力値と一致すると、前記偏差が零となるため、駆動速度も零となる。したがって、その時点で、駆動モータ24の逆転方向への駆動が停止される。
【0110】
なお、駆動モータ24を逆転駆動する際の前記偏差に対する駆動速度は、前述のように張力制御期間が終了する時点(成形装置6における加圧が終了される時点)よりも前であって成形装置6における成形工程(加圧)が開始される時点よりも前に検出張力値が目標張力値と一致するような速度として求められている。したがって、前記のように駆動モータ24の逆転方向への駆動が停止された時点では、まだ張力制御期間は終わっておらず、張力制御が継続された状態となっている。それにより、前記のように検出張力値と目標張力値とが一致した後においても、何らかの原因でいずれかのプリプレグシート2の張力が変化し、検出張力値と目標張力値との間に偏差が生じた場合には、その偏差に基づいて駆動モータ24の駆動が制御される結果として、張力制御期間の終了まで各プリプレグシート2の張力が維持される状態となる。
【0111】
そして、成形工程における加圧の終了(型閉信号s3の発生)に伴って張力制御のOFF信号s23が演算器43に対し出力されると、演算器43は、モータ制御器39に対する張力制御のための駆動指令信号s15の出力を停止する。それにより、張力制御が停止(終了)された状態となる。また、前記したように型閉信号s3の発生に伴って主制御装置31から演算器43に向かって送出開始信号s21が出力されると、演算器43から緩め送出動作のための駆動指令信号s15がモータ制御器39に出力され、前記した緩め送出動作が再び行われる。
【0112】
以上で説明した連続成形装置1によれば、引出工程時において、前述のように材料ロール3から積極的にプリプレグシート2が送り出されるため、従来のように引出装置7による繊維強化複合材料5が引き出されるのに伴って材料ロール3から消極的にプリプレグシート2が引き出されるのと比べ、プリプレグシート2に掛かる負荷が小さくなる。それにより、プリプレグシート2がダメージを受けて破断するといったことを可及的に防ぐことができる。
【0113】
しかも、本実施例の連続成形装置1では、その引出工程が開始されるのに先立ち、前記した緩め送出動作が実行されてプリプレグシート2が若干緩んだ状態とされ、引出工程においては、その緩んだ状態が維持されるようなかたちで前記したプリプレグシート2の積極的な送り出しが行われる。それにより、引出工程時においては、プリプレグシート2にほとんど負荷が掛からない状態で繊維強化複合材料5の移動に合せたプリプレグシート2の移動が行われるため、前記のようなプリプレグシート2の破断をより確実に防止することができる。
【0114】
その上で、本実施例の連続成形装置1では、引出工程が終了した時点でそのように緩んだ状態となっているプリプレグシート2を、前述のような張力制御により、成形工程が開始される前にその張力が目標張力と一致した状態に戻すと共に、成形工程における加圧が終了するまでその張力が維持されるようにしている。それにより、プリプレグシート2の張力が適正な状態で成形装置6による成形工程が行われるため、繊維強化複合材料5の品質に悪影響を及ぼすといった問題を防止することができる。
【0115】
なお、本発明については、以上で説明した連続成形装置の一実施形態(前記実施例)に限定されるものではなく、以下1)~8)のような別の実施形態(変形例)でも実施が可能である。
【0116】
1)張力制御期間について、前記実施例では、張力制御は、引出工程が終了した時点で緩んだ状態とされているプリプレグシート2の張力を目標張力に一致させると共に目標張力で維持するようにして行われる。その上で、その張力制御が実行される張力制御期間は、引出工程の終了時点から次の成形動作における成形工程の加圧の終了時点までに亘る期間として設定されている。しかし、本発明において、張力制御が前記実施例のように実行される場合であっても、その張力制御期間は、前記実施例のような期間に設定されるのには限らない。
【0117】
先ず、張力制御期間の終了時点は、成形工程における加圧が終了する時点(加圧終了時点)よりも前であっても良い。但し、その終了時点は、次の点を考慮して設定される。
【0118】
張力制御期間における検出張力が目標張力に一致した時点以降では、張力制御による各プリプレグシート2の張力が目標張力に維持される。また、成形工程における加圧終了時点では、各プリプレグシート2は加圧型19によって完全に拘束された状態となる。これらのことから、張力制御期間の終了時点と成形工程の加圧終了時点との間に期間が存在する場合には、その期間においては、各プリプレグシート2は、非拘束状態もしくはそれに近い状態となり、その期間の長さによっては、張力が低下してしまって成形工程に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、張力制御期間の終了時点は、その終了時点と成形工程の加圧終了時点との間に存在する期間が成形工程に悪影響を生じない程度の期間となるように考慮して設定される。なお、その終了時点は、成形工程の加圧終了時点以前に限らず、張力制御がその加圧終了時点以降も継続されるように、加圧終了時点よりも後に設定されても良い。
【0119】
また、張力制御期間の開始時点は、引出工程の終了時点よりも後であっても良い。但し、その開始時点は、次の点を考慮して設定される。
【0120】
張力制御は、張力制御期間の終了時点までにプリプレグシート2の張力が目標張力と一致するように行われる必要がある。そのため、プリプレグシート2の緩み量(緩め送出動作で送り出される量)が前記実施例と同じである場合において、設定される張力制御期間が前記実施例よりも短いと、それに伴い、張力制御時における駆動モータ24の駆動速度を速くしなければならなくなる。しかし、駆動速度を速めると、その速度によっては、プリプレグシート2がダメージを受けたり、張力制御が適正に行われなかったりするといった問題が生じる場合がある。そこで、張力制御期間の開始時点は、終了時点に対するその開始時点で定まる張力制御期間がそのような問題を生じない程度の駆動速度が求められるような期間となるように設定される。
【0121】
2)演算式について、前記実施例では、その張力制御期間における各駆動モータ24の駆動の制御が、検出張力値と目標張力値との偏差に基づいて求められた駆動モータ24の駆動速度を用いて行われている。そして、その駆動速度は、演算器43に設定された演算式を用いて前記偏差から求められている。その上で、その演算式は、それによって求められる駆動速度が、張力制御期間の終了時点(成形工程の加圧終了時点)よりも前であって成形装置6における成形工程(加圧)の開始時点よりも前に検出張力値が目標張力値と一致するような速度であるように設定されている。しかし、張力制御が前記実施例のように実行される場合において、その制御のための駆動モータ24の駆動速度を求める演算式は、前記実施例のように設定されたものには限らず、張力制御期間の終了時点よりも前であれば成形工程の開始時点よりも後に検出張力値が目標張力値と一致するような駆動速度が求められるように設定されたものであっても良い。
【0122】
3)送出動作について、前記実施例では、引出工程時において前記引出量分だけプリプレグシート2を送り出す(引き出されるプリプレグシート2を補う)補充送出動作が実行されており、その上で、引出工程の終了時点でプリプレグシート2が若干緩んだ状態となるように、その補充送出動作とは別の緩め送出動作が引出工程の開始前に実行されている。しかし、張力制御が前記実施例のように実行される場合において、引出工程の終了時点でプリプレグシート2を若干緩んだ状態とするための送出動作(緩め送出動作+補充送出動作)は、前記実施例のように実行されるものには限らず、例えば、以下の3-1)、3-2)のようなものであっても良い。
【0123】
3-1)補充送出動作が実行される期間について、補充送出動作は、前記実施例では、引出工程の開始時点で開始されている。また、その補充送出動作は、引出工程の終了時点で終了するように行われている。しかし、その補充送出動作の開始時点は、引出工程の開始時点よりも後であっても良い。但し、その補充送出動作の開始時点は、引出工程の実行に伴ってプリプレグシート2の緩みが解消されない程度に、その引出工程におけるプリプレグシート2の引出速度(引出装置7における把持機構の駆動速度)を考慮して設定される必要がある。
【0124】
また、その補充送出動作の終了時点は、引出工程の終了時点よりも前であっても良い。但し、その補充送出動作の終了時点は、材料ロール3を回転駆動するための駆動速度が、想定した送出量(=前記引出量)のプリプレグシート2を送り出す適正な材料ロール3の回転駆動が成されるような速度となるように設定される必要がある。
【0125】
より詳しくは、補充送出動作の終了時点を前記のように引出工程の終了時点よりも前に設定すると、それに伴って補充送出動作の実行期間が短くなることから、補充送出動作の実行時における駆動モータ24の駆動速度(材料ロール3の回転速度)が速くなる。そして、そのように材料ロール3の回転速度が速くなると、補充送出動作の終了時点において材料ロール3の回転を停止させる際の慣性が大きくなる。また、その慣性は、材料ロール3の巻径が大きいほど大きくなる。そして、その慣性が大きくなると、想定した送出量のプリプレグシート2が送り出された時点で材料ロール3の回転が停止せず、材料ロール3が余計に回転して想定した送出量よりも多い量のプリプレグシート2が送り出されてしまう場合がある。なお、そのように想定した量よりも多いプリプレグシート2が送り出されてしまうと、引出工程の終了時点におけるプリプレグシート2の緩みが大きくなるため、それに続く張力制御に悪影響を及ぼす虞がある。
【0126】
そこで、補充送出動作の終了時点は、材料ロール3を回転駆動する駆動モータ24の駆動速度が張力制御に悪影響を生じることがなく、想定した送出量分だけのプリプレグシート2を送り出すような材料ロール3の回転駆動が成されるような速度となるように設定される必要がある。
【0127】
3-2)送出動作について、前記実施例では、プリプレグシート2に緩みを持たせる送り出しと、引出工程によるプリプレグシート2の移動を補う送り出しとが、それぞれ専用の送出動作(緩め送出動作、補充送出動作)で行われるようになっている。しかし、引出工程の終了時点でプリプレグシート2が緩んだ状態となるようにするために行われる上記の各送り出しについて、それぞれ独立した送出動作で実行されるのには限らず、単一の送出動作で両送り出しが行われるようにしても良い。
【0128】
なお、その場合、プリプレグシート2は、その単一の送出動作で、緩みを持たせるための送出量と前記引出量分の送出量とを加えた量(総送出量)が送り出される。その上で、その単一の送出動作は、例えば、引出工程時に亘って行われるようにしても良い。その場合は、前記実施例のような引出工程の開始前の送出動作(緩め送出動作)は省略されると共に、引出工程時における送出動作は前記実施例よりも速い駆動速度(前記総送出量を踏まえた速度)で実行される。
【0129】
また、その単一の送出動作の開始時点は、成形工程の加圧終了時点よりも後であれば、引出工程の開始時点よりも前であっても良い。さらに、その単一の送出動作の終了時点は、引出工程の終了時点よりも前であっても良い。但し、その終了時点については、それによって定まる送出動作の期間及び前述のような材料ロール3の慣性を考慮し、材料ロール3を回転駆動する駆動速度が適正な速度となるような範囲で設定される必要がある。
【0130】
4)張力制御について、前記実施例では、張力制御は、引出工程の終了後において、前記のように引出工程の終了時点において緩んだ状態となっているプリプレグシート2の張力を目標張力に一致させるように実行されている。しかし、本発明による張力制御は、引出工程時において、プリプレグシート2の張力が目標張力に維持されるように実行されても良い。なお、その場合、引出工程の前に行われる緩め送出動作は省略可能である。
【0131】
具体的には、その張力制御は、以下のように実行される。緩め送出動作を省略した場合、引出工程の開始時点では、各プリプレグシート2の張力は目標張力に近い状態(略一致した状態)となっている。その上で、引出工程(把持機構の往動)の開始に伴い、前記実施例と同様に、供給装置4における各材料ロール3からのプリプレグシート2の送り出しが開始される。
【0132】
なお、その送り出しのための各駆動モータ24の駆動の制御について、先ずは前記実施例と同様に、材料ロール3の巻径、前記引出量及び前記引出時間から求められる駆動速度(基本速度)でその駆動が開始される。但し、この例では、各駆動制御器において演算器からモータ制御器に対し出力される駆動指令(信号)は、演算器で求められた駆動速度に応じた速度指令となっている。そして、モータ制御器は、演算器から駆動指令が出力されている間に亘り、その駆動指令で示される駆動速度で駆動モータ24が駆動されるような制御を実行するように構成されているものとする。その上で、前述のように引出工程を開始するにあたり主制御装置31から出力される引出指令信号s8が各駆動制御装置26における演算器43に対しても出力されるが、各演算器は、その引出指令信号s8が入力されるのに伴い、前記のような駆動指令の出力を開始するように構成されているものとする。
【0133】
また、前述のように引出工程の終了に伴い引出制御装置33から出力される引出完了信号s9が主制御装置31に入力されるが、その引出完了信号s9が主制御装置31を介して各駆動制御器における演算器に対しても入力されるようになっているものとする。そして、各演算器は、引出完了信号s9の入力に伴い、前記駆動指令の出力を停止するように構成されているものとする。したがって、そのような演算器の構成によれば、前記の引出指令信号s8の発生から引出完了信号s9の発生までの間(=引出工程の期間)に亘って各演算器から前記駆動指令が出力され、その間に亘り、その駆動指令で示される駆動速度で各駆動モータ24が駆動されるように、各駆動制御器は、対応する駆動モータ24の駆動の制御を行う。
【0134】
さらに、この例では、その期間における各駆動モータ24の駆動の制御は張力制御を伴って行われるようになっているものとする。そのために、各演算器は、前述のように比較器42において求められた検出張力値と目標張力値との偏差に基づき、出力する駆動指令における駆動速度を補正するように構成されている。すなわち、各演算器は、前記のように引出指令信号s8の入力に伴って駆動指令の出力を開始するが、その引出指令信号s8の入力(駆動指令の出力)に伴い、比較器42から出力される偏差信号s14から駆動速度の補正量を求め、その求めた補正量で駆動速度を補正するように構成されている。このように、この例の張力制御は、各駆動モータ24の駆動速度(プリプレグシート2の送出速度)を検出張力値に基づいて補正する、といったかたちで行われる。
【0135】
なお、前述のように、比較器42での検出張力値と目標張力値との比較は、所定の周期毎に行われ、その比較毎に偏差信号s14が演算器に対し出力される。そして、演算器における前記補正は、偏差信号s14で示される偏差が零では無い場合に実行される。また、前記のように引出完了信号s9が入力されるのに伴って演算器による駆動指令の出力が停止され、駆動モータ24の駆動(制御)が停止されることから、その時点で前記のような張力制御も停止する。
【0136】
このような構成によれば、引出工程の開始に伴い、供給装置においては、先ずは前記基本速度で各駆動モータ24の駆動(各プリプレグシート2の送り出し)が開始される。そして、その送り出しの過程で、いずれかのプリプレグシート2の張力が変化して検出張力値と目標張力値との間に偏差が生じた場合には、その偏差に基づいて前記した補正量が求められ、その張力が変化した時点(偏差信号s14が入力される時点)での駆動速度がその補正量で補正される。それにより、演算器からモータ制御器に対し出力される駆動指令は、その補正された駆動速度に応じた速度指令となり、モータ制御器における各駆動モータ24の駆動の制御は、その補正された駆動速度で行われることとなる。
【0137】
因みに、偏差が正の値、すなわち、プリプレグシート2の張力が目標張力より大きい場合には、駆動速度は、速度を速くする方向に補正される。また、偏差が負の値、すなわち、プリプレグシート2の張力が目標張力より小さい場合には、駆動速度は、速度を遅くする方向に補正される。
【0138】
このように、各駆動モータ24の駆動が終了されるまでの間、偏差が生じる毎にその偏差を無くすために駆動速度が補正されることから、プリプレグシート2は、その張力が目標張力に維持した状態で送り出されることとなる。その結果として、引出工程が終了した時点(各駆動モータ24の駆動が終了した時点)では、プリプレグシート2は、その張力が目標張力に維持された状態となっている。
【0139】
なお、以上では、引出工程時において張力制御を実行する例について説明したが、そのように駆動モータ24による材料ロール3の回転駆動を行いつつ(プリプレグシート2を積極的に送り出しつつ)実行される引出工程時に検出張力値に基づいて行われる駆動モータ24の駆動の制御について、その制御は、駆動速度を検出張力値から求められる前記偏差に応じて補正して行われるのには限らず、前記実施例と同様に、駆動速度が前記偏差に応じた速度として求められるようにして行われても良い。
【0140】
また、以上のように引出工程時において張力制御が実行される場合において、その張力制御は、その引出工程時の期間においてのみ実行されるのには限らず、引出工程が終了した後も継続して行われるようにしても良い。但し、その引出工程後に行われる張力制御は検出張力値の前記偏差に応じて駆動モータ24を駆動するものとなることから、引出工程時に実行される張力制御が前述のように検出張力値に基づいて駆動モータ24の駆動速度を補正するかたちで行われるような場合には、演算器は、引出工程の終了に伴って引出完了信号s9が入力されるのに伴い、出力する駆動指令を、前記基本速度あるいは前記偏差に基づく補正により求められた駆動速度を示すものから、前記偏差に応じた駆動速度を示すものに切り替えるように構成される。
【0141】
5)張力制御について、以上では、その張力制御が、プリプレグシート2を引出工程時に緩んだ状態とした上でその張力を目標張力に一致させるように行われる制御態様(第1の制御態様)、あるいは、引出工程時にプリプレグシート2の張力を監視しつつその張力が目標張力に維持されるように行われる制御態様(第2の制御態様)で実行されるものとなっており、その上で、全ての材料ロール3に対し同じ制御態様が適用されるものとされている。しかし、張力制御は、以上のような全ての材料ロール3に対し同じ制御態様が適用されるものには限らず、プリプレグシート2の種類等に応じて、異なる制御態様が適用されるものであっても良い。
【0142】
より詳しくは、プリプレグシート2は、その幅や強化繊維の配向方向、樹脂材料の種類等によって、張力が高くなることに対する影響(ダメージ等)の受け方(影響度)が異なるといった性質を有する。例えば、強化繊維の配向方向で言えば、プリプレグシート2の長手方向に対する配向方向の角度が小さいほど(最小は平行であって0度)、前記影響度が小さくなる。また、前記した張力制御における第1の制御態様と第2の制御態様とでは、第1の制御態様の方が張力が高くなるといった状態が発生しにくい。
【0143】
そこで、供給装置に仕掛けられる材料ロールの種類等によっては、その各材料ロールに適用される張力制御は、前記実施例等のように全ての材料ロールに対し同じ制御態様によるものとはせず、その種類等を踏まえた上で、それぞれに応じて前記の第1の制御態様又は第2の制御態様によるものとしても良い。
【0144】
6)設定器について、前記実施例では、設定器は、材料ロール3毎に目標張力値を設定可能に構成されている。その上で、前記実施例では、各目標張力値は、材料ロール3の種類に応じて値が設定されるとされている。しかし、その目標張力値は、材料ロール3の種類毎に異ならせて設定されるとは限らず、材料ロールの種類が異なっていても同じにして設定されても良い場合がある。詳しくは、種類が異なる(複数種類の)材料ロールであっても、適当と見なされる目標張力値が同じである材料ロールは存在しており、また、適当と見なされる目標張力値よりも若干広い許容範囲も含めれば、異なる種類の材料ロールに対し同じ目標張力値を設定しても良い場合がある。逆に、同じ種類の材料ロールであっても、供給装置上の配置(プリプレグシート2が引き出される経路)等によって目標張力値を異ならせた方が良い場合がある。したがって、各材料ロールに対し目標張力値は、その材料ロールの種類に応じて決定されるのには限らず、諸条件等を考慮して適宜に設定すれば良い。
【0145】
また、前記実施例のように同じ種類の材料ロール3が複数(2)個ずつ仕掛けられる場合等であって、その装置においてその仕掛け方が固定されている場合には、設定器は、前記実施例のように仕掛けられる材料ロール3毎に目標張力値が設定されるように構成されたものに限らず、目標張力値を同じにして良い材料ロールのグループ毎に目標張力値を設定するように構成されていても良い。
【0146】
7)供給装置について、前記実施例では、供給装置4は、10個の材料ロール3を仕掛けることができるように構成されている。また、その供給装置4では、その10個の材料ロール3を支持するための10本の支持軸14が、上下5本ずつの配置となるように、供給装置4における上側の梁材12及び下側の梁材12のそれぞれに5本ずつ支持されるかたちで設けられている。しかし、本発明において、供給装置は、そのように構成されたものに限らず、例えば、以下のように構成されたものでも良い。
【0147】
供給装置は、前記のように10個の材料ロール3を仕掛けることができるように構成されたもの(10本の支持軸14を備えたもの)に限らず、その連続成形装置において成形が想定される繊維強化複合材料5に応じて必要とされる材料ロールの個数が決定されることから、それを踏まえて適宜な数の材料ロールが仕掛けられるように構成されていれば良い。
【0148】
また、供給装置は、前記実施例のように上下の2列で材料ロール3(支持軸14)を配置するように構成されたものに限らず、全ての材料ロール(支持軸)が同じ高さ位置で1列に配置されるように構成されたものであっても良い。
【0149】
さらに、供給装置は、同じ高さ位置に配置される材料ロール3(支持軸14)が同じ(共通の)梁材12で支持されるように構成されたものに限らず、例えば、独立したフレームが2以上備えられ、同じ高さ位置に配置される材料ロール(支持軸)が異なる梁材によって支持されるように構成されていても良い。
【0150】
因みに、供給装置に仕掛けられる材料ロールの種類数は、前記実施例では、4種類となっているが、成形される繊維強化複合材料5に応じて決定されるものであり、4種類に限定されるものではない。また、材料ロールにおけるプリプレグシートのマトリックス樹脂は、前記実施例では、熱可塑性樹脂としたが、熱硬化性樹脂としても良い。
【0151】
8)供給装置について、前記実施例では、供給装置4は、材料ロール3を回転駆動するための駆動モータ24及びプリプレグシート2の張力を検出するための張力検出機構25が、各材料ロール3に対応するかたちで材料ロール3毎に個別で設けられるように構成されている。しかし、供給装置は、前記実施例のように駆動モータ24及び張力検出機構25が設けられるように構成されたものに限らず、駆動モータ及び張力検出機構が複数の材料ロール3に対し共通で設けられるように構成されたものであっても良い。
【0152】
例えば、供給装置は、駆動モータが2個(もしくは、それ以上の個数)の材料ロール(支持軸14、14)3、3毎に1つずつ設けられるように構成されていても良い。すなわち、1つの駆動モータで複数の材料ロール3、3を回転駆動するように供給装置が構成されていても良い。但し、その場合には、その1つの駆動モータで回転駆動される各材料ロールは、同じ種類(あるいは張力による影響が同程度である種類)のプリプレグシート2が巻かれたものであることや、プリプレグシート2が引き出される経路による張力への影響にあまり差が無い位置に配置されているものであること等が望まれる。また、材料ロールが同じ量だけ回転駆動されることから、各材料ロールは、満巻時の巻径が略一致しているものである必要がある。
【0153】
そのように1つの駆動モータで複数の材料ロールを回転駆動する例として、前記実施例のように、供給装置4が前記前後方向における同じ位置に2個ずつ材料ロール3を仕掛けるように構成されており、その前記前後方向における同じ位置に同じ種類のプリプレグシート2が巻かれた材料ロール3が仕掛けられる場合には、その同じ位置の2個の材料ロール(その材料ロールが仕掛けられる支持軸)を1つの駆動モータで駆動するようにしても良い。なお、その材料ロールが仕掛けられる支持軸と駆動モータとの連結については、歯車列やプーリとベルトとの組み合わせ等の回転伝達機構を介して行えば良い。
【0154】
また、以上のように1つの駆動モータで複数の材料ロールが回転駆動される場合において、張力検出機構は、前記実施例と同様に各材料ロールのそれぞれに対応させるかたちで材料ロール毎に1つずつ設けられるようにしても良いし、同じ駆動モータで駆動される複数の材料ロールのうちのいずれか1つに設けられるようにしても良い。
【0155】
但し、材料ロール毎に張力検出機構が設けられる場合には、複数の材料ロールを駆動する駆動モータのための駆動制御器における張力検出器に対し、その各材料ロールに対応する各張力検出機構から検出値信号s11が出力されることとなる。そこで、その場合には、例えば、駆動制御器における張力検出器を、その各検出値信号s11から求められる複数の検出張力値の平均値を算出する、あるいは、その複数の検出張力値のいずれかを代表値として選択し、その算出した(平均)検出張力値、あるいは選択した検出張力値を示す張力信号s12を比較器に対し出力するように構成すれば良い。
【0156】
また、本発明は、上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0157】
1 連続成形装置
2 強化繊維基材(プレプレグ、プリプレグシート)
3 材料ロール
4 供給装置
5 繊維強化複合材料
6 成形装置
7 引出装置
11 支柱
12 梁材
13 フレーム
14 支持軸
16 保護フィルム
17 フィルムロール
19 加圧型
21 上型
22 下型
24 駆動モータ
25 張力検出機構
26 駆動制御装置
28 ガイドロール
29 ロードセル
31 主制御装置
32 成形制御装置
33 引出制御装置
35 記憶器(設定器)
36 入力設定器
38 駆動制御器
39 モータ制御器
41 張力検出器
42 比較器
43 演算器
【0158】
s1 成形開始信号
s2 第1の検知信号
s3 型閉信号
s4 型開信号
s5 第2の検知信号
s6 成形完了信号
s7 復動指令信号
s8 引出指令信号
s9 引出完了信号
s11 検出値信号
s12 張力信号
s13 目標張力値を示す信号
s14 偏差信号
s15 駆動指令信号
s21 送出開始信号
s22 張力制御のON信号
s23 張力制御のOFF信号