(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/02 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
E06B7/02
(21)【出願番号】P 2020143484
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】藤園 武史
(72)【発明者】
【氏名】山森 雄介
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125673(JP,A)
【文献】特開2019-120022(JP,A)
【文献】実開昭56-047093(JP,U)
【文献】特開2013-209876(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部に対向して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部
のうちの一方の通気部は、左右方向の中央部に寄せて設けてあ
り、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする建具。
【請求項2】
外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部に対向して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部
のうちの一方の通気部は、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあ
り、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする建具。
【請求項3】
外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、室内側の通気口は下向きに開口しており、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部の室内側の通気口より下方に垂下して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部
のうちの一方の通気部は、左右方向の中央部に寄せて設けてあ
り、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする建具。
【請求項4】
外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、室内側の通気口は下向きに開口しており、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部の室内側の通気口より下方に垂下して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部
のうちの一方の通気部は、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあ
り、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、障子を閉めたままで換気ができるようにしたいという要望があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、換気が行える建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部に対向して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の中央部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部に対向して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、室内側の通気口は下向きに開口しており、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部の室内側の通気口より下方に垂下して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の中央部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、室内側の通気口は下向きに開口しており、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体の通気部の室内側の通気口より下方に垂下して設けてあり、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は上部に室内と連通する通気部を有するので、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部に対向して整流体が設けてあることで、整流体で音の通過が妨げられる上、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の中央部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
【0009】
請求項2記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は上部に室内と連通する通気部を有するので、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部に対向して整流体が設けてあることで、整流体で音の通過が妨げられる上、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
【0010】
請求項3記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は上部に室内と連通する通気部を有するので、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体の通気部の室内側の通気口が下向きに開口しており、整流体が外側仕切体の通気部の室内側の通気口より下方に垂下して設けてあることで、整流体で音の通過が妨げられる上、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の中央部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
【0011】
請求項4記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体を備え、外側仕切体は上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は上部に室内と連通する通気部を有するので、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体の通気部の室内側の通気口が下向きに開口しており、整流体が外側仕切体の通気部の室内側の通気口より下方に垂下して設けてあることで、整流体で音の通過が妨げられる上、外側仕切体の通気部又は内側仕切体の通気部のうちの一方の通気部は、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあり、他方の通気部は、一方の通気部と対向する範囲とそれ以外の範囲にわたって設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の建具の第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図3】(a)は第1実施形態の建具の室外側正面図であり、(b)は同建具の室内側正面図である。
【
図4】
図1のX矢視図であって、外窓の通気部の室内側の通気口の配置の例を示す。
【
図5】(a)は冬期における第1実施形態の建具の働きを示す説明図であり、(b)は夏期における同建具の働きを示す説明図である。
【
図6】本発明の建具の第2実施形態を示す縦断面図である。
【
図7】同建具の外窓の上部を拡大して示す縦断面図である。
【
図8】
図6のA矢視図であって、外窓の通気部の室内側の通気口の配置の例を示す。
【
図9】第2実施形態の建具の遮音性能試験の結果を示すグラフである。
【
図10】本発明の建具の第3実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~4は、本発明の建具の第1実施形態(請求項1及び2に係る発明の実施形態)を示している。本建具は、建物の窓開口部の室外側に設置した外窓(外側仕切体)1と、窓開口部の室内側に設置した内窓(内側仕切体)2とを備える二重窓となっている。
【0014】
外窓1は、
図1,2に示すように、建物の窓開口部に固定される枠6と、枠6内に引違い状に開閉自在に収めた外障子7a及び内障子7bとを備えており、閉鎖した状態で外障子7aは室内側から見て左側に、内障子7bは右側に位置している。
枠6は、アルミ形材よりなる上枠8と下枠9と左右の縦枠10,10とを枠組みして構成されている。外障子7a及び内障子7bは、アルミ形材よりなる上框11と下框12と戸先框13と召合せ框14とを框組みし、その内側にガラス15を嵌め込んで構成されている。
外障子7a及び内障子7bの上框11の内周側には、
図1に示すように、換気框16が設けてある。換気框16は、室外側壁と室内側壁とに通気口17,18を設け、室外から外窓・内窓間の中間層19に連通する通気部4を形成してある。室外側の通気口17は、
図3(a)に示すように、縦長のスリット状で、左右方向に間隔をあけて框の長手方向の全長に亘って多数設けてある。
一方、室内側の通気口18は、
図4(a)に示すように、左右方向の中央部に寄せて設けてあるか、
図4(b)に示すように、左右方向の両方の端部に寄せて設けてあるか、
図4(c)に示すように、左右方向の一方の端部に寄せて設けてある。
図4(a)に示すように、室内側の通気口18を左右方向の中央部に寄せて設けた場合には、室外と連通する外窓1の通気部4は、左右方向の中央部に寄せて設けられることとなる(請求項1)。
図4(b)に示すように、室内側の通気口18を両方の端部に寄せて設けた場合には、室外と連通する外窓1の通気部4は、左右方向の両方の端部に寄せて設けられることとなる(請求項2)。
図4(c)に示すように、室内側の通気口18を左右方向の一方の端部に寄せて設けた場合には、室外と連通する外窓1の通気部4は、左右方向の一方の端部に寄せて設けられることとなる(請求項2)。
左右方向の中央部とは、特に限定されるものではないが、例えば左右方向の全長が1200mmであるとすれば、それを3等分した中央の約400mmの幅の領域のことをいい、その領域内に通気口18が設けてあればよい。
また、左右方向の端部とは、特に限定されるものではないが、例えば端から100~200mmの幅の領域のことをいい、その領域内に通気口18が設けてあればよい。
室外側の通気口17は、
図1に示すように、斜め下方に面した傾斜面に形成してあり、室内側の通気口18より低い位置に設けてある。これにより、通気部4から雨水が入りにくくしている。通気部4内には、通気部4を開閉するシャッター板20が設けてある。
【0015】
内窓2は、
図1,2に示すように、四周の額縁21の内周側面に取付けた上枠22と下枠23及び左右の縦枠24,24と、上下枠間に引違い状に開閉自在に収めた外障子25a及び内障子25bを備えており、閉鎖した状態で外障子25aは室内側から見て左側に、内障子25bは右側に位置している。枠22,23,24は、樹脂製である。外障子25a及び内障子25bは、ガラス(複層ガラス)26と、ガラスの周囲を囲む樹脂製の框とを有している。外窓1の枠6と内窓2の枠22,23,24の間には木製の額縁21があるため、外窓1と内窓2とは熱的に分離されている。
上枠22の上部には、換気ブレス27を備えている。換気ブレス27は、室外側と室内側の見付面に多数の通気口28を設け、中間層19から室内に連通する通気部5が設けてある。通気口28は、
図3(b)に示すように、縦長のスリット状で、左右方向に間隔をあけて上枠22の長手方向の全長に亘って多数設けてある。通気部5の室内側には、埃や花粉等の侵入を防ぐフィルター29が設けてある。
外窓1の通気部4の面積(通気口18の合計面積)と内窓2の通気部5の面積(通気口28の合計面積)とでは、外窓1の通気部4の面積の方が小さくなっている。
【0016】
中間層19には、
図1に示すように、整流体3が上側の額縁21より垂下して設けてある。整流体3は、透明な樹脂板で形成してあり、換気ブレス27の室外側面にスペーサー30を介してノブボルト31で着脱自在に取付けてあり、外窓1の通気部4の室内側及び内窓2の通気部5の室外側に隙間をあけて対向している。
【0017】
本建具は、外窓1の上部に室外と連通して設けた通気部4と、内窓2の上部に室内と連通して設けた通気部5を通じて、外窓1と内窓2の障子7a,7b,25a,25bを閉めたままで換気を行うことができる。本建具は、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5に対向して整流体3が設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられる上、外窓1の通気部4が左右方向の中央部に寄せて設けてあるか(
図4(a))、左右方向の両方の端部に寄せて設けてあるか(
図4(b))、左右方向の一方の端部に寄せて設けてあることで(
図4(c))、室外の音が中間層19に入ってきづらいため、遮音性能が良い。
【0018】
また本建具は、中間層19を空気が外窓1のガラス15の内側面と内窓2のガラス26の外側面に沿うように迂回して流れることで、換気を行いながら熱の出入りを少なくして断熱性能を向上する働きがある。
冬期には換気扇等により室内を負圧に調整し、
図5(a)に示すように、本建具を空気が室外から室内に向けて流れるようにする。外窓1の通気部4から流入した冷たい外気は、整流体3に当たることで下向きに流れの向きを変え、その後、温度が低く下降流の勢いが強い外窓1のガラス15の内側面に沿う流れに引き寄せられながら下降する。その後、冷たい外気は中間層19の下まで流れてから折り返し、内窓2のガラス26から室内の熱が伝わることで暖められ、ガラス26の室外側面に沿って上昇し、この間にガラス26から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収する。また、窓に日射を受ける場合は、このように中間層19を空気が外窓1の内側面と内窓2の外側面に沿うように流れる間に、日射熱を取得することができる。その後、暖められた外気は内窓2上部の通気部5を通って室内に流入する。そうして暖められた外気を室内に取り入れることで、回収した熱を室内に戻すことができる。
【0019】
このように、中間層19を外窓1と内窓2に沿うように迂回して空気が流れることで、日射熱を取得できると共に、室内から室外に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室内に戻すことで、室内から室外への熱の損失がほとんどなくなり、これにより空気が流入する方向とは逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられ、非常に高い断熱性が得られると共に、外気を暖めて室内に採り込めるので、暖房負荷を抑えることができる。
【0020】
夏期には、換気扇等により室内を正圧に調整し、
図5(b)に示すように、冬期とは逆に室内から室外に空気が流れるようにする。内窓2の通気部5から中間層19に流れ出た内気は、整流体3に当たって下向きに流れを変え、内気の温度は室外よりも低いので、内窓2のガラス26の室外側面に沿って下向きに流れる。その後、内気は中間層19の下部で折り返し、外窓1のガラス15等の熱が伝わることで外窓1のガラス15の室内側面に沿って上昇し、この間にガラス15を通じて室外から室内に入ってくる熱と日射熱を空気の流れによって回収する。その後、外窓1の通気部4を通って空気が室外に放出される。そして、空気が室外に放出されることで、ガラス15等から回収した熱と日射熱を室外に捨てる。
【0021】
このように日射熱及び室外から室内に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室外に捨てることで、日射熱の取得を抑制でき、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられるので、優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれ、冷房負荷を抑えることができる。
【0022】
図6~8は、本発明の建具の第2実施形態(請求項3及び4に係る発明の実施形態)を示している。外窓1は、上枠8上に通気枠36が設けてあり、通気枠36に室外から中間層19に連通する通気部4が設けてある。内窓2は、第1実施形態と同様に、上枠22上に換気ブレス27を設け、換気ブレス27に室内と連通する通気部5が設けてある。
【0023】
通気枠36は、横枠のみからなり、
図7に示すように、通気枠本体37と、通気枠本体37の室外側に取付けた室外側カバー材38と、通気枠本体37の室内側に取付けた室内側カバー材39とを有する。通気枠36は、室外側に室外側カバー材38により室外側空間40が形成され、室内外方向の中間部に通気枠本体37により中間空間41が形成され、室内側に室内側カバー材39により室内側空間42が形成されている。通気枠本体37と室外側カバー材38と室内側カバー材39は、それぞれアルミ形材で形成した長尺材である。
【0024】
室外側カバー材38は、
図7に示すように、見付壁43と上壁44と下壁45とを有し、上壁44の先端部に設けた鉤状に曲がった係止部46を通気枠本体37の室外側上部に設けた溝に係止し、下壁45を上枠8の室内側面に取付けたL形断面の補助材47の横壁の室外側端部に重ね、下方からねじ(図示省略)で固定して取付けてある。補助材47の横壁には、室外に面した室外側通気口49が下向きに開口して設けてある。室外側通気口49の室外側には、垂下片50が室外側通気孔49よりも垂下して設けてある。室外側通気口49には、虫の侵入を防ぐ防虫網51が取付けてある。このように室外側通気口49を下向きに開口して設け、その室外側に垂下片50を設けることで、室外側通気口49から雨水が浸入するのを防いでいる。
【0025】
通気枠本体37は、
図7に示すように、上壁52と下壁53と室外側壁54と室内側壁55とで中間空間41が形成されている。室外側壁54には、通気口56が大きく形成してあり、通気口56の室外側に防虫網51を取付けている。通気口56の下方に隣接する位置には、室外側に向けて突出する水返し片57が設けてあり、該水返し片57により雨水が通気口56に浸入するのを防いでいる。室内側壁55には、通気口58が室外側の通気口56に比べて小さく形成してある。
通気枠36は、上記のように通気枠本体37の室外側壁54に通気口56を大きく、室内側壁55に通気口58を小さく形成してあることで、室外側空間40と中間空間41とが外気と等圧になっている。これにより、雨水が通気部4に吸い込まれないようにしている。室内側空間42は、室内に近い気圧になっている。
【0026】
室内側カバー材39は、
図7に示すように、略L形断面の二部材を組み合わせて矩形断面の中空状に形成され、室外側壁に通気口59が通気枠本体37の通気口58に連通して形成してある。室内側カバー材39の底壁には、室内(中間層)に面した通気口60が下向きに開口して設けてある。通気口60には、埃や花粉等の侵入を防ぐフィルター61が取付けてある。
【0027】
図8は、通気孔60の配置の例を示している。
図8(a)に示す実施例1は、通気孔60を左右方向の中央部に寄せて設けてある。このように通気口60を左右方向の中央部に寄せて設けることで、外窓1の通気部4が左右方向の中央部に寄せて設けられることとなる(請求項3)。外窓1の通気部4の面積(通気孔60の合計面積)は、内窓2の通気部5の面積(通気孔28の合計面積)の約1/10としてある。
図8(b)に示す実施例2は、通気口60を通気枠36の左右方向の両方の端部に寄せて配置してある。このように通気口60を左右方向の両方の端部に寄せて設けることで、外窓1の通気部4が左右方向の両方の端部に寄せて設けられることとなる(請求項4)。外窓1の通気部4の面積(通気孔60の合計面積)は、内窓2の通気部5の面積(通気孔28の合計面積)の約1/10としてある。
【0028】
通気枠36の室内側面には、
図7に示すように、整流体3が室内側からのノブボルト31で着脱自在に取付けてある。整流体3は、通気口60より下方に垂下して設けてあり、その垂下部分は室外側に向けて少し曲がっている。このように整流体3を設けることで、通気口60から出る音を室内側に伝わりづらくするとともに、通気孔60から流出する空気を室外側に曲げて外窓1の障子7a,7bのガラス面に沿わせられる。また整流体3は、
図6に示すように、内窓2の通気部5の室外側に対向している。
【0029】
上述した第2実施形態の建具について、遮音性能試験を行った。試験は、
図8(a)に示すように、外窓1の通気部4の室内側の通気口60を左右方向の中央部に寄せて設けた実施例1、
図8(b)に示すように、同通気口60を左右方向の両方の端部に寄せて設けた実施例2に加え、
図8(c)に示すように、通気口60を左右方向の全長にわたって多数設けた比較例1(外窓1の通気部4の面積は内窓2の通気部5の面積とほぼ同じ)、通気口60の数を減らした上で左右方向の全長に分散して設けた比較例2(外窓1の通気部4の面積は実施例1及び2とほぼ同じ)についても行った。遮音性能の測定は、JIS A1416「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に準拠して行った。
図9は、この遮音性能試験の結果を示している。
【0030】
同図に示すとおり、通気口60を全長に多数設けた比較例1は、500~1250Hz付近で落ち込みが見られるが、通気口60の数を少なくした実施例1,2及び比較例2では、そのような落ち込みが無くなり、遮音性能が向上している。
通気口60を左右方向の全長に分散して設けた比較例2と、左右方向の中央部に寄せて設けた実施例1及び左右方向の両方の端部に寄せて設けた実施例2との比較では、全周波数範囲において実施例1及び実施例2の方が遮音性能が良かった。
また、通気口60を左右方向の中央部に寄せて設けた実施例1と左右方向の両方の端部に寄せて設けた実施例2との比較では、中央部に寄せて設けた実施例1の方が遮音性能が良かった。これは、通気口60が左右方向の両方の端部に設けてあると、これら2か所の通気部4から入った音波が干渉しあうことで増幅されるが、中央部に寄せて設けた場合にはそのようなことがないためと考えられる。なお、水密性の観点からすれば、通気口60を左右方向の両端部に寄せて設けた実施例2の方が、雨水の浸入経路が分散されて雨水が浸入しづらくなるため、好ましい。
【0031】
第2実施形態の建具は、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5を通じて換気が行え、外窓1の通気部4の室内側の通気口60より下方に垂下して整流体3が設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられる上、外窓1の通気部4が左右方向の中央部に寄せて設けてあるか(
図8(a))、左右方向の両方の端部に寄せて設けてあることで(
図8(b))、室外の音が中間層19に入ってきづらいため、遮音性能が良い。なお、通気口60は、
図4(c)に示すように、左右方向の一方の端部に寄せて設けてあってもよい。
また第2実施形態の建具は、第1実施形態と同様、中間層19を空気が外窓1の内側面と内窓2の外側面に沿うように迂回して流れることで、冬期には室内から室外に逃げる熱を回収し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を回収して室外に捨てることで、換気を行いながら熱の出入りを少なくし、冷暖房負荷を抑えることができる。
【0032】
上述した第2実施形態の建具は、外窓1の通気部4を左右方向の中央部に寄せて設けるか、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けているが、内窓2の通気部5を左右方向の中央部に寄せて設けるか、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けた場合でも、同じように遮音性能を向上する効果がある。この点は、第1実施形態及び後述する第3実施形態についても同様である。なお、外窓1の通気部4を左右方向の中央部に寄せて設けるか、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けた方が、雨水の浸入を防止する上でより好ましい。
【0033】
また、第2実施形態の建具は、外窓1の通気部4の面積を内窓2の通気部5の面積に対して小さくしているが、内窓2の通気部5の面積を外窓1の通気部4の面積に対して小さくした場合でも、同様に遮音性能を向上する効果がある。要するに、外窓1の通気部4の面積と内窓2の通気部5の面積を違わせてあればよい。この点は、第1実施形態及び後述する第3実施形態についても同様である。なお、外窓1の通気部4の面積を内窓2の通気部5の面積に対して小さくした方が、雨水の浸入を防止する上でより好ましい。
【0034】
図10は、本発明の建具の第3実施形態(請求項1及び2に係る発明の実施形態)を示している。
外窓1は、第2実施形態と同様に、上枠8の外周側に通気枠36を有し、通気枠36に室外と連通する通気部4が設けてある。通気部4の室外側の通気口49及び室内側の通気口60は、下向きに開口している。室内側の通気口60は、
図8(a)に示すように、左右方向の中央部に寄せて設けてあるか、
図8(b)に示すように、左右方向の両方の端部に寄せて設けてあるか、あるいは左右方向の一方の端部に寄せて設けてある。
図10に示すように、室内側の通気口60の近傍には、整流体3は設けていない。
【0035】
内窓2は、上枠22の外周側に換気ブレス27が設けてある。換気ブレス27は、アルミ形材よりなる上形材62と下形材63とを上下に組み合わせて構成してあり、上形材62と下形材63との隙間を通気部5としている。下形材63は、室外側端部と室内側端部とに突片64a,64bが形成してあり、室外側の突片64aと上形材62との間に室外側通気口65aが長手方向に連続するスリット状に形成され、室内側の突片64bと上形材62との間に室内側通気口65bが長手方向に連続するスリット状に形成されている。上形材62は、室外側端部に整流体3が垂下して一体に設けてあり、整流体3は室外側通気口65aの室外側に対向している。
【0036】
第3実施形態の建具は、内窓2の通気部5の室外側の通気口65aの室外側に対向して整流体3が設けてあるので、第1・第2実施形態と同様に、音の通過が整流体3によって妨げられるので、遮音性能が良い。
また、冬期において内窓2の外側面に沿って上昇してきた内気を整流体3によって室内に導くことができ、夏期には内窓2の通気部5より流出する内気を整流体3によって内窓2の外側面に沿って下向きに流すことができるので、第1・第2実施形態と同様に、換気を行いながら熱の出入りを少なくし、冷暖房負荷を抑えることができる。
【0037】
以上に述べたように、第1実施形態の建具のうち通気口18を
図4(a)の配置で設けたもの、及び第3実施形態の建具のうち通気口60を
図8(a)の配置で設けたもの(請求項1に係る発明の実施形態)は、外側仕切体(外窓)1と内側仕切体(内窓)2と整流体3を備え、外側仕切体1は上部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2は上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5に対向して整流体3が設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられる上、外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体5の通気部5が左右方向の中央部に寄せて設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
また、中間層19に整流体3が外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5に対向して設けてあることで、外側仕切体1の通気部4から入った外気が外側仕切体1の内側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に流れ、内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に流れ、外側仕切体1の通気部4より室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。
外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の面積を異ならせることで、遮音性能が向上する。
【0038】
第1実施形態の建具のうち通気口18を
図4(b),(c)の配置で設けたもの、及び第3実施形態の建具のうち通気口60を
図8(b)の配置で設けたもの(請求項2に係る発明の実施形態)は、外側仕切体1と内側仕切体2と整流体3を備え、外側仕切体1は上部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2は上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体5の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5に対向して整流体3が設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられる上、外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5が左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
また、中間層19に整流体3が外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5に対向して設けてあることで、外側仕切体1の通気部4から入った外気が外側仕切体1の内側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に流れ、内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に流れ、外側仕切体1の通気部4より室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。
外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の面積を異ならせることで、遮音性能が向上する。
【0039】
第2実施形態の建具のうち通気口60を
図8(a)の配置で設けたもの(請求項3に係る発明の実施形態)は、外側仕切体1と内側仕切体2と整流体3を備え、外側仕切体1は上部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2は上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4の室内側の通気口60が下向きに開口しており、整流体3が外側仕切体1の通気部4の室内側の通気口60より下方に垂下して設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられる上、外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5が左右方向の中央部に寄せて設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
また、中間層19に整流体3が外側仕切体1の通気部4の室内側の通気口60より垂下して設けてあることで、外側仕切体1の通気部4から入った外気が外側仕切体1の内側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に流れ、内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に流れ、外側仕切体1の通気部4より室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。
外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の面積を異ならせることで、遮音性能が向上する。
【0040】
第2実施形態の建具のうち通気口60を
図8(b)の配置で設けたもの(請求項4に係る発明の実施形態)は、外側仕切体1と内側仕切体2と整流体3を備え、外側仕切体1は上部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2は上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4の室内側の通気口60が下向きに開口しており、整流体3が外側仕切体1の通気部4の室内側の通気口60より下方に垂下して設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられる上、外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5が左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けてあることで、音波が通過できる箇所を集中させるため、遮音性能が良い。
また、中間層19に整流体3が外側仕切体1の通気部4の室内側の通気口60より垂下して設けてあることで、外側仕切体1の通気部4から入った外気が外側仕切体1の内側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に流れ、内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に流れ、外側仕切体1の通気部4より室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。
外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の面積を異ならせることで、遮音性能が向上する。
【0041】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。外窓及び内窓の通気部の通気口の形状、配置は、適宜変更することができる。外窓と内窓の窓種は任意であり、引き違い窓に限らず、嵌め殺し窓、すべり出し窓等であってもよい。
外側仕切体は、室外空間と中間層とに仕切るものであればよく、ガラス入りの外窓の他、シャッター、雨戸、ロールスクリーン等であってもよい。内側仕切体は、中間層と室内空間とに仕切るものであればよく、ガラス入りの内窓の他、カーテン、ロールスクリーン、障子等であってもよい。
整流体は、外側仕切体と内側仕切体の間で下降する空気と上昇する空気とがぶつかり合って空気の流れが阻害されるのを防ぎ、外側仕切体の内側面と内側仕切体の外側面に沿うように迂回する空気の流れを形成できるものであればよく、板状のものの他、ブラインド、ロールスクリーン、ハニカムスクリーン等であってもよい。
本発明の建具は、空気が流れる向きが室外から室内だけのもの、室内から室外だけのもの、室外から室内と室内から室外の両方向に空気が流れるものの何れであってもよい。
本発明は、新築の建物に外窓と内窓を新たに設置する場合の他、既存の単体のサッシ(外窓)が取付けられた窓に、後から内窓を増設して二重窓とする場合にも適用でき、既存の外窓を利用することで、コストが抑えられる。
【符号の説明】
【0042】
1 外窓(外側仕切体)
2 内窓(内側仕切体)
3 整流体
4 外窓の通気部
5 内窓の通気部