(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】車両用ピラーの閉断面補強構造及び2成分型のポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20240311BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240311BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240311BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240311BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
B62D25/04 B
B62D25/04 Z
C08G18/00 F
C08G18/48
C08G18/76 057
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020159635
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 毅
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】河合 功介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-529817(JP,A)
【文献】特開2010-064504(JP,A)
【文献】特開2013-233838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
C08G 18/00
C08G 18/48
C08G 18/76
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ピラーの閉断面補強構造であって、
前記車両用ピラーは、
断面ハット形状のアウターパネルと、
前記アウターパネルのツバに相当する部分で該アウターパネルと接合されるインナーパネルと、
前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に形成された閉断面内に設けられたリンフォース部材であって、該リンフォース部材の一部は前記アウターパネル及び前記インナーパネルの少なくともいずれかと接合されている、前記リンフォース部材と、
前記アウターパネルと前記リンフォース部材との間の少なくとも一部の隙間に充填された有機発泡材と、
を備え、
前記有機発泡材は、250~750kg/m
3の密度を有するウレタンフォームであり、芳香環及びイソシアヌレート環構造の含有率が25%以上である
ことを特徴とする、車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項2】
前記有機発泡材の密度は350~700kg/m
3である、請求項1に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項3】
前記有機発泡材の密度は、前記車両用ピラーの長手方向に該ピラーの中央部から上下端部に向けて2段階以上もしくは連続的に変化している、請求項1又は2に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項4】
前記ウレタンフォームは、2成分型のポリウレタンフォームであり、該2成分型のポリウレタンフォームは、主剤がポリプロピレングリコール主成分とし、硬化剤がメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項5】
前記アウターパネルの断面ハット形状の頂部において該断面ハット形状の2つの側部に各々隣接して凸部が形成され、
前記リンフォース部材は、前記アウターパネルの前記凸部と対応する領域に凸部を各々有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項6】
前記アウターパネルの前記凸部の頂部の断面長さは、前記アウターパネル全体の頂部の断面長さの1/3以下である、請求項5に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項7】
前記アウターパネルと前記リンフォース部材との間の隙間が5~10mmである、請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項8】
前記リンフォース部材の頂部と前記アウターパネルの頂部との間の第1の隙間、及び、前記リンフォース部材の側部と前記アウターパネルの側部との間の第2の隙間の両方に、前記有機発泡材が充填されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項9】
前記アウターパネルの前記凸部の内部に前記有機発泡材が充填されている、請求項5又は6に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項10】
前記アウターパネルは、板厚が0.6~0.8mmかつ引張強度が590MPa以下の軟鋼であり、前記リンフォース部材は、板厚が2~3mmかつ引張強度が1180~1800MPa級のホットプレス超強靭鋼であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項11】
前記ピラーは、Bピラーである、請求項1から10のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項12】
前記アウターパネル、前記インナーパネル及び前記リンフォース部材は、電着塗装もしくは化成処理が施されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項13】
前記インナーパネルと前記リンフォース部材とにウレタンフォーム注入用の充填穴が連接されており、前記インナーパネルの前記充填穴と前記リンフォース部材の前記充填穴との間に筒状の充填導入管が設けられている、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用ピラーの閉断面補強構造。
【請求項14】
車両用ピラーの閉断面補強構造に充填される有機発泡材としての2成分型のポリウレタンフォームであって、
前記2成分型のポリウレタンフォームは、250~750kg/m
3の密度を有し、主剤がポリプロピレングリコール主成分とし、硬化剤がメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とし、芳香環およびイソシアヌレート環構造の含有率が25%以上である、2成分型のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ピラーの閉断面補強構造及び2成分型のポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のピラーは、車体の強度を維持するためその強度を確保する必要がある。
従来、特許自動車用ピラーを補強するため、内部に発泡材を充填させる技術が知られている(特許文献1、2、3)。
【0003】
他方で、自動車用のピラーの強度を高め過ぎると、衝突時に乗員に対する衝撃が強くなり過ぎて衝突安全性が損なわれる。さらに、ピラーの強度の増大は、ピラーの重量の増大をもたらすことになる。
【0004】
例えば、
図4(A)に示される車両40に設けられたBピラー42は、そのC-C線断面図である
図4(B)に示されるようにその内部の大部分に亘って発泡材が充填されている。かかる場合には、ピラーの強度が高くなりすぎて衝突時の衝撃が大きくなり、さらにピラーの重量が増大するという問題がある。
【0005】
特許文献1には、アウタパネルとインナパネルとの間に、レインフォースメントを備え、アウタパネルとレインフォースメントとの間にのみ熱可塑性発泡材を充填したフレーム構造が開示されている。この場合、
図4(A)に示されるピラーよりも発泡材が充填される体積が小さくなり重量を軽減できる。
【0006】
しかし、特許文献1には、ピラーの強度をある一定以上に維持しつつも衝突時の衝撃を過度に大きくさせないようにするための発泡材の具体的なパラメータの開示がなされていない。また、発泡材は、温度が上昇すると強度が低下するが、特許文献1には、温度が上昇しても発泡材の強度の低下を抑える手段について開示も示唆もなされていない。
【0007】
特許文献2には、中空部材の内部に複数の閉断面を形成する仕切り部材を配置し、該閉断面内に発泡材を充填する補強構造が開示されている。しかし、特許文献2は、中空部材の強度を増大させることを課題としており、強度の過度の増大に伴う衝突性能の低下や乗員の安全性には取り組んでいない。また、特許文献2においても温度上昇に伴う発泡材の強度低下を解決する手段は開示も示唆もされていない。
【0008】
特許文献3には、ピラー等の、アウターパネルとインナーパネルとから構成される閉鎖空間を有する構造の内部に発泡充填材を充填した自動車用構造部材が開示されている。特許文献3に記載の発明は、車体の剛性及び衝突安全性を向上させるため、発泡充填材が、(A)エポキシ系発泡充填材と(B)ウレタン系発泡充填材とが積層して充填され、エポキシ系発泡充填材とウレタン系発泡充填材との体積比が、エポキシ系発泡充填材100に対して、ウレタン系発泡充填材100~1,900であることを特徴とするものである。しかし、特許文献3には、強度の過度の増大に伴う衝突性能の低下や乗員の安全性、並びに、温度上昇に伴う発泡材の強度低下を解決する手段は開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3525890号公報
【文献】特許第4394921号公報
【文献】特開2006-240134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事実に鑑みなされたもので、温度に依らず必要な強度を確保すると共に、自動車の衝突安全性と軽量化とを実現した、自動車用のピラーを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の車両用ピラーの閉断面補強構造は、前記車両用ピラーが、断面ハット形状のアウターパネルと、前記アウターパネルのツバに相当する部分で該アウターパネルと接合されるインナーパネルと、前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に形成された閉断面内に設けられたリンフォース部材であって、該リンフォース部材の一部は前記アウターパネル及び前記インナーパネルの少なくともいずれかと接合されている、前記リンフォース部材と、前記アウターパネルと前記リンフォース部材との間の少なくとも一部の隙間に充填された有機発泡材と、を備え、前記有機発泡材は、250~750kg/m3の密度を有するウレタンフォームであり、芳香環及びイソシアヌレート環構造の含有率が25%以上であることを特徴とするものである。
【0012】
好ましい前記有機発泡材の密度は350~700kg/m3である。さらに好ましくは、前記有機発泡材の密度は、前記車両用ピラーの長手方向に該ピラーの中央部から上下端部に向けて2段階以上もしくは連続的に変化している。
【0013】
好ましい前記ウレタンフォームは、2成分型のポリウレタンフォームであり、該2成分型のポリウレタンフォームは、主剤がポリプロピレングリコール主成分とし、硬化剤がメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とする。
【0014】
好ましくは、前記アウターパネルの断面ハット形状の頂部において該断面ハット形状の2つの側部に各々隣接して凸部が形成され、前記リンフォース部材は、前記アウターパネルの前記凸部と対応する領域に凸部を各々有する。前記アウターパネルの前記凸部の頂部の断面長さは、前記アウターパネル全体の頂部の断面長さの1/3以下である。例えば、前記アウターパネルと前記リンフォース部材との間の隙間が5~10mmである。
【0015】
好ましくは、前記リンフォース部材の頂部と前記アウターパネルの頂部との間の第1の隙間、及び、前記リンフォース部材の側部と前記アウターパネルの側部との間の第2の隙間の両方に、前記有機発泡材が充填されている。また好ましくは、前記アウターパネルの前記凸部の内部に前記有機発泡材が充填されている。
【0016】
前記アウターパネルは、板厚が0.6~0.8mmかつ引張強度が590MPa以下の軟鋼であり、前記リンフォース部材は、板厚が2~3mmかつ引張強度が1180~1800MPa級のホットプレス超強靭鋼であることを特徴とする。
【0017】
例えば前記ピラーは、Bピラーである。好ましくは、前記アウターパネル、前記インナーパネル及び前記リンフォース部材は、電着塗装もしくは化成処理が施されている。
例えば、前記インナーパネルと前記リンフォース部材とにウレタンフォーム注入用の充填穴が連接されており、前記インナーパネルの前記充填穴と前記リンフォース部材の前記充填穴との間に筒状の充填導入管が設けられている。
【0018】
本発明の別の態様に係る車両用ピラーの閉断面補強構造に充填される有機発泡材としての2成分型のポリウレタンフォームは、250~750kg/m3の密度を有し、主剤がポリプロピレングリコール主成分とし、硬化剤がメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とし、芳香環およびイソシアヌレート環構造の含有率が25%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用Bピラーの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両用Bピラーの側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る車両用Bピラーの有機発泡材を充填する手段を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の従来技術に係る車両用ピラーの図であって、(A)は従来技術の車両用ピラーの側面図、(B)は従来技術の車両用ピラーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る車両用のBピラー1の断面図が示されている。
図1に示されるように、Bピラー1は、断面ハット形状のアウターパネル2と、アウターパネル2のツバ4に相当する部分で該アウターパネル2と接合されるインナーパネル3と、アウターパネル2とインナーパネル3との間に形成された閉断面5内においてアウターパネル2の近傍に設けられた第1のリンフォース部材6と、閉断面5内においてインナーパネル3の近傍に設けられた第2のリンフォース部材7と、を備えている。
【0021】
第1のリンフォース部材6の一部はアウターパネル2及びインナーパネル3の少なくともいずれかと接合されている(
図1の例では、アウターパネル2のツバ4の部分で接続)。なお、本発明は、第1のリンフォース部材6のみ設け、第2のリンフォース部材7を設けない態様も含まれる。或いは逆に、第2のリンフォース部材7の他にも、1つ以上のリンフォース部材を設けてもよい。
【0022】
また、アウターパネル2の断面ハット形状の頂部9において、2つの側部10a及び10bに各々隣接して凸部(8、8)が形成されている。好ましくは、第1のリンフォース部材6は、アウターパネル2の凸部(8,8)と対応する領域に凸部(18,18)を各々有する。また好ましくは、アウターパネル2の凸部(8,8)の頂部の断面長さ(l2、l3)は、アウターパネル全体の頂部の断面長さl1の1/3以下である。
【0023】
好ましくは、アウターパネル2は、板厚が0.6~0.8mmかつ引張強度が590MPa以下の軟鋼であり、第1及び第2のリンフォース部材6、7は、板厚が2~3mmかつ引張強度が1180~1800MPa級のホットプレス超強靭鋼である。また好ましくは、アウターパネル2、インナーパネル3、及び、リンフォース部材6,7は、電着塗装もしくは化成処理が施されている。なお、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0024】
さらに、第1のリンフォース部材6の頂部と、とアウターパネル2の頂部9との間には、第1の隙間11(隙間の間隔d1)が画成され、第1のリンフォース部材6の側部とアウターパネル2の側部10a及び10bとの間には、第2の隙間12a及び12b(隙間の間隔d2)がそれぞれ画成されている。本発明の一実施形態では、第1の隙間11及び第2の隙間12a及び12bに、有機発泡材が充填される。なお、本発明は、この例に限定されず、発泡材を第1の隙間11にのみ充填し、第2の隙間12a及び12bには充填しない態様、並びに、発泡材を第1の隙間11と、第2の隙間12a及び12bのいずれかとに充填する態様も考えられる。第1の隙間11に発泡材を充填する態様では、凸部8の内壁と第1のリンフォース部材6との間にも発泡材を行き渡らせるのが好ましい。
【0025】
上記したように第1のリンフォース部材6はアウターパネル2の凸部(8,8)と対応する領域に凸部(18,18)を各々有するので、第1の隙間d1をほぼ均等間隔に維持することができ、有機発泡材の充填量の増加を抑制して重量及び強度の過度の増大を防止することができる。また、アウターパネル2の凸部(8,8)の頂部の断面長さ(l2、l3)は、アウターパネル全体の頂部の断面長さl1の1/3以下であるため、凸部(8,8)の体積を抑え、よって、そこに充填される有機発泡材の量を抑えて重量及び強度の過度の増大を防止することができる。
【0026】
第1の隙間11及び第2の隙間12a、12bの好ましい間隔d1及びd2は、2~15mmであり、より好ましくは5~10mmである。当該隙間が当該好ましい間隔より狭い場合、下塗り塗装である電着のつきが悪くなり、錆発生の懸念がある一方で、当該隙間が当該好ましい間隔より広い場合は、充填材の量が多くなり、重量アップとコストアップをもたらすことになるからである。
【0027】
上記隙間に充填する発泡材に関して、発泡材の発泡倍率が小さく密度が高いほど有機物の含有量が多くなり気泡の量が少なくなるため、発泡材それ自体の強度を高くすることができるが、発泡倍率が小さくなると骨格構造内での体積変化がしにくくなり、衝突時に、パネルやパネル間の接合部への応力集中により骨格構造が破断し、発泡材の強度が高くても衝突性能が低下する可能性がある。逆に発泡倍率が高く密度が低い場合は、強度が低くなり補強効果が薄れる傾向にある。
【0028】
上記点に鑑み、本発明の実施形態では、好ましくは、充填される有機発泡材はウレタンフォームであり、250~750kg/m3の密度が好ましく、或いは350~700kg/m3の密度であるのが、より好ましい。発泡していない状態のウレタンフォームの密度は1140kg/m3であるので、250~750kg/m3の密度は1.5倍から4.5倍の発泡倍率に対応し、350~700kg/m3の密度は、1.6倍から3.3倍の発泡倍率に対応している。
【0029】
さらに好ましくは、本発明の実施形態に係る有機発泡材は、芳香環及びイソシアヌレート環構造を含むものであり、それらの含有率は25%以上である。このようにウレタンフォーム(ウレタンポリマー)の骨格にリジッドな構造(芳香環やイソシアヌレート環)を導入することにより、ポリマーの耐熱性を上げることが可能となる。すなわち、ポリマーにはガラス転移温度が存在し、高温になれば徐々に軟化し、ガラス転移温度にて著しく強度が下がるが、ポリマー骨格にリジッドな構造を導入することにより、耐熱性が向上する。例えば、芳香環及びイソシアヌレートの含有量28%品を密度350kg/m3のウレタンフォームにした場合、ガラス転移温度は148℃(密度350kg/m3品)となり、芳香環及びイソシアヌレートの含有量34%品を密度350kg/m3のウレタンフォームにした場合、ガラス転移温度は163℃(密度350kg/m3品)となる。このように芳香環やイソシアヌレート環を含むことによってガラス転移温度が上昇し、耐熱性が向上することを理解することができる。
【0030】
上記ウレタンフォームは、好ましくは2成分型のポリウレタンフォームであり、該2成分型のポリウレタンフォームは、主剤がポリプロピレングリコール主成分とし、硬化剤がメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とする。
【0031】
図2には、車両用Bピラー1の側面図が示されている。
図2の例では、Bピラー1は、車両のルーフ付け根から車両下部フレームまで延設されている。車両ピラー1は、ルーフ付け根付近の切り継ぎ部30、車両下部フレームの切り継ぎ部32、34で接続されている。好ましくは、Bピラー1に充填される有機発泡材の密度は、
図2に示される車両用Bピラー1の長手方向に該Bピラー1の中央部から上下端部に向けて2段階以上もしくは連続的に変化している。
【0032】
本発明によれば、上記した密度(250~750kg/m3或いは350~700kg/m3)で所定の発泡倍率(1.5倍から4.5倍、或いは、1.6倍から3.3倍)を有するウレタンフォームを上記構成のピラーに充填する有機発泡材として採用したため、パネル接合部等への過度の応力集中を回避して衝突性能並びに衝突安全性を向上させることができると共に、一定の補強効果を維持することができる。
【0033】
加えて、本発明では、凸部(8,8)を有するアウターパネル2と第1のリンフォース部材6との間に形成された限られた空間内に有機発泡材を充填するようにした。これによって、上記した作用効果をさらに増進させることができる。すなわち、必要な強度を維持しつつも過度な強度の上昇や重量の増加を抑えることができ、衝突時においても乗員への衝撃を緩和しながら、ピラーの変形を最大限抑えることが可能となる。
【0034】
さらに本発明の有機発泡材は、芳香環及びイソシアヌレート環構造の含有率が25%以上であるウレタンフォームであるため、車体の温度が上昇しても、発泡材の強度の低下を防止することが可能となる。すなわち、本発明は、車体の温度変化の影響を受けることなく、ピラー強度を維持しつつ衝突性能並びに衝突安全性を向上させることを可能にした。
【0035】
次に、
図3を用いてBピラー1に発泡材を充填する方法について説明する。
図3は、
図1に示される第2のリンフォース部材7が設けられていない例を示している。
図3に示されるように、インナーパネル3には、充填穴13(
図3の左図)が形成されており、第1のリンフォース部材6には、インナーパネル3の充填穴13と連接される充填穴14(
図3の右図)が形成されている。インナーパネル3の充填穴13とリンフォース部材6の充填穴14との間に筒状の充填導入管としてのグロメット15が装着されている。このグロメット15に充填ガン16のノズル17(
図3の左図)を適合し、有機発泡材を注入することによって、リンフォース6とアウターパネル2との間の隙間に、有機発泡材が充填される。
【0036】
このように本発明では、車室内側のインナーパネル3の充填口13から有機発泡材をBピラー1内に充填することが可能となる。このため、充填口を車の外側につけた場合と比べて意匠性の問題を回避することが可能となる。また、充填ガン16のノズル17を長くすることなく、発泡材の充填が可能となる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内において任意好適に変更可能である。例えば、上述した本発明のBピラーの閉断面補強構造を、他のピラーに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用のBピラー
2 アウターパネル
3 インナーパネル
4 アウターパネル2のツバ
5 閉断面
6 第1のリンフォース部材
7 第2のリンフォース部材
8 凸部(アウターパネル)
9 アウターパネル2の断面ハット形状の頂部
10a、10b アウターパネル2の断面ハット形状の側部
11 第1の隙間(間隔d1)
12a、12b 第2の隙間(間隔d2)
13 インナーパネル3の充填穴
14 第1のリンフォース部材6の充填穴
15 筒状の充填導入管としてのグロメット
16 充填ガン
17 充填ガンのノズル
18 凸部(第1のリンフォース部材)