(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240311BHJP
【FI】
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2020185856
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
【審査官】渡辺 順哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-009548(JP,A)
【文献】特開2012-022498(JP,A)
【文献】CHAMPION, Kathleen ほか,Data-driven discovery of coordinates and governing equations,arXiv[online],2019年04月04日,pp.1-26,[retrieved on 2024.01.31], Retrieved from the Internet: <URL: https://arxiv.org/pdf/1904.02107v2>
【文献】小野 謙二,モデリングに役立てる数式発見,計算工学,日本,一般社団法人 日本計算工学会,2019年10月31日,Vol.24, No.4,pp.3988-3991
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
従属変数または独立変数に基づく非線形基底関数を含む複数種類のサブライブラリと、各サブライブラリに含まれる複数の非線形基底関数のそれぞれの生成確率とを記憶するライブラリ記憶部と、
センサの検出結果を取得する検出結果取得部と、
前記検出結果と前記サブライブラリの非線形基底関数とを用いて演算し、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから前記生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、前記複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせた、前記従属変数を算出するための式である線形回帰式を複数生成し、前記線形回帰式の係数を機械学習により推定し、前記演算した結果を用いて前記線形回帰式の損失関数を算出する回帰式生成部と、
所定の条件に合致しない場合、線形回帰式の損失関数に基づいて、前記生成確率および前記機械学習のハイパーパラメータを修正する修正部と、
前記複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから修正後の生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、前記複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせた複数の線形回帰式を生成し、前記線形回帰式の係数を修正後のハイパーパラメータを用いた機械学習により推定し、前記線形回帰式の損失関数を算出する回帰式再生成部と、
前記条件に合致する場合、前記回帰式生成部または前記回帰式再生成部により生成された複数の線形回帰式から選択した線形回帰式を出力部へ出力する出力制御部と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の線形回帰式の係数をスパース推定により推定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記従属変数は、温度に対応する従属変数である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記独立変数は、速度、電流および電圧に対応する独立変数である、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数種類のサブライブラリは、熱伝導のサブライブラリ、ふく射のサブライブラリ、強制対流のサブライブラリ、自然対流のサブライブラリ、および発熱のサブライブラリの何れか複数を含む、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、前記複数の線形回帰式のそれぞれの損失関数に基づいた順位により選択した複数の線形回帰式の情報を出力部へ出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物理現象のモデル化の技術としては、機械学習の一種である関数同定問題を応用し、時系列データから物理現象を記述する数理モデルを獲得する技術がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】S.L. Brunton, J.L. Proctor, J.N. Kutz,”Discovering governing equations from data by sparse identification of nonlinear dynamical systems”, Proc. Natl. Acad. Sci., 113 (2016), pp. 3932-3937
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、非特許文献1に記載の技術を用いて、物理現象のモデルとして、熱回路網のモデルを生成することを考えると、伝熱現象が多岐にわたるため、探索空間が広くなり、学習が安定しない等、適切な物理現象のモデルを生成することができない可能性がある。
【0005】
そこで、適切な物理現象のモデルを生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の情報処理装置は、ライブラリ記憶部と、検出結果取得部と、回帰式生成部と、修正部と、回帰式再生成部と、出力制御部と、を備える。ライブラリ記憶部は、従属変数または独立変数に基づく非線形基底関数を含む複数種類のサブライブラリと、各サブライブラリに含まれる複数の非線形基底関数のそれぞれの生成確率とを記憶する。検出結果取得部は、センサの検出結果を取得する。回帰式生成部は、検出結果とサブライブラリの非線形基底関数とを用いて演算し、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせた、従属変数を算出するための式である線形回帰式を複数生成し、線形回帰式の係数を機械学習により推定し、演算した結果を用いて線形回帰式の損失関数を算出する。修正部は、所定の条件に合致しない場合、線形回帰式の損失関数に基づいて、生成確率および機械学習のハイパーパラメータを修正する。回帰式再生成部は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから修正後の生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせた複数の線形回帰式を生成し、線形回帰式の係数を修正後のハイパーパラメータを用いた機械学習により推定し、線形回帰式の損失関数を算出する。出力制御部は、条件に合致する場合、回帰式生成部または回帰式再生成部により生成された複数の線形回帰式から選択した線形回帰式を出力部へ出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、情報処理システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図5B】
図5Bは、線形回帰式の情報の出力例を示す図である。
【
図6】
図6は、情報処理装置が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、物理モデルを考慮しない機械学習によるモデルで温度予測する例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、物理モデルを考慮した機械学習によるモデルで温度予測する例を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、本実施形態により生成した線形回帰式に基づいて温度予測する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる情報処理装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
図1は、情報処理システム100の一例を示す模式図である。
【0010】
情報処理システム100は、情報処理装置1と、電子機器2と、を備える。情報処理装置1と電子機器2とは、データまたは信号を授受可能に接続されている。
【0011】
電子機器2は、1または複数の部品を備え、供給された電力によって駆動する機器である。電子機器2は、例えば、1つのラック内に1または複数の電子部品を搭載した各種装置に適用される。具体的には、電子機器2は、デジタル放送用送信機、データ中継装置、コンピュータ、サーバ、などの各種の電子装置に適用される。
【0012】
電子機器2は、各種の部品などを収容した筐体25を備える。
【0013】
筐体25は、電子機器2の本体部分であり、各種の部品や機器を収容した外装である。本実施形態では、筐体25は、内側が空洞の箱状の部材である場合を一例として説明する。
【0014】
筐体25内には、複数の部品および複数のセンサが配置されている。本実施形態では、筐体25内には、複数の部品および複数のセンサが配置されている形態を一例として説明する。
【0015】
部品21および部品22は、電子部品である。電子部品は、例えば、供給された電力に応じて駆動する部品である。電子部品には、供給された電力に応じて駆動することで発熱する発熱部品が含まれる。なお、“駆動”には、電気的な駆動、および機械的な駆動、の双方が含まれる。電気的な駆動には、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによる処理が含まれる。機械的な駆動には、例えば、モータの駆動が含まれる。なお、部品21および部品22が、発熱部品である。
【0016】
発熱部品である部品21および部品22は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサである。なお、部品21および部品22は、供給された電力に応じて駆動することで発熱する部品であればよく、CPU、GPUに限定されない。例えば、部品21および部品22は、FET(Field Effect Transister)、IPM(Intelligent Power Module)、モータ、電子回路、などであってもよい。
【0017】
部品23および部品24は、アルミなどの金属ブロックである。部品23および部品24は、冷却機能を有する。
【0018】
電子機器2には、複数のセンサが配置されている。この複数のセンサは、例えば、位置P1~位置P5における環境変動の物理量を測定する。例えば、複数のセンサは、位置P1~位置P5における温度、電流、電圧、風速の物理量を検出し、検出結果を検出値として出力する。物理量および検出値は、例えば、温度、電流、電圧、風速等を示す数値で表される。なお、圧力や空冷ファンの回転数等が含まれてもよい。
【0019】
上記の複数のセンサは、例えば、温度センサ、流量センサ、電流センサ、電圧センサなどである。
【0020】
上記複数のセンサは、筐体25内または、筐体25の外の環境変動を測定可能な位置に配置されていればよい。これらの複数のセンサは、製品として内蔵してもよいし、測定時のみ外付けされてもよい。
【0021】
情報処理装置1は、電子機器2の状態に基づいて、電子機器の温度を予測するモデルを生成する装置である。情報処理装置1と、電子機器2に設けられた複数のセンサの各々とは、データまたは信号を授受可能に接続されている。なお、情報処理装置1は、電子機器2に搭載されたセンサ以外の他の各種の情報処理装置を含む電子機器と、データまたは信号を授受可能に更に接続されていてもよい。例えば、情報処理装置1は、複数のセンサと、複数の部品の内の少なくとも1つと、データまたは信号を授受可能に接続されていてもよい。また、情報処理装置1は、例えば、サーバやワークステーション等である。
【0022】
例えば、情報処理装置1は、複数のセンサから取得したデータを、記憶媒体やクラウドにより、遠隔にある情報処理装置へ一括でデータ送信するようにしてもよい。
【0023】
次に、情報処理装置1の機能的構成の一例を説明する。
【0024】
図2は、情報処理装置1の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
情報処理装置1と複数のセンサとは、データまたは信号を授受可能に接続されている。なお、上述したように、情報処理装置1は、複数のセンサ以外の各種の電子機器、の双方とデータまたは信号を授受可能に接続されていてもよい。本実施形態の情報処理装置1は、熱回路網法に基づくモデルを生成する装置である。情報処理装置1は、当該モデルとして、電子機器2の温度を出力可能な線形回帰式を出力する。
【0026】
情報処理装置1は、記憶部10と、制御部11と、出力部12と、を備える。制御部11と、記憶部10および出力部12とは、データまたは信号を授受可能に接続されている。
【0027】
記憶部10は、各種のデータを記憶する。記憶部10は、例えば、公知のHDD(ハードディスクドライブ)などの記憶媒体である。本実施形態では、記憶部10は、ライブラリ情報101を予め記憶する。
【0028】
ライブラリ情報101は、非線形基底関数を含む複数種類のサブライブラリが定義された情報であるサブライブラリ定義情報と、各サブライブラリに含まれる複数の非線形基底関数のそれぞれの生成確率の情報である生成確率情報とを含む情報である。
【0029】
まず、
図3Aを用いて、サブライブラリについて説明する。各サブライブラリは、熱モデルを示す線形回帰式を生成するためのサブライブラリである。
図3Aは、サブライブラリ定義情報を示す図である。
図3Aに示すように、サブライブラリとして、熱伝導サブライブラリ、ふく射サブライブラリ、強制対流サブライブラリ、自然対流サブライブラリ、および発熱サブライブラリを含む。各サブライブラリは、1又は複数の非線形基底関数を含む。なお、サブライブラリは、
図3Aに示すものに限られず、相変化を考慮する相変化サブライブラリを定義するようにしてもよい。
【0030】
図3Aに示すT
i、T
jは、位置P1~P5の何れかの位置の温度である。また、ΔT、ΔT
i-jは、2点間の温度差である。vは、速度(風速)である。Vは、電圧である。i
1、i
2は、電流である。このように、サブライブラリは、従属変数(温度)、独立変数(速度、電流、電圧)に基づく非線形基底関数を含む。
【0031】
図3Aに示すように、各サブライブラリは、1以上の非線形基底関数を含む。また、強制対流サブライブラリや自然対流サブライブラリは、指数が異なる非線形基底関数を複数含む。
【0032】
上記熱モデルは、節点(温度測定ポイント)に成り立つエネルギー保存則は、以下の式(1)に示す節点方程式で表現する。
【0033】
【0034】
上記式(1)のRが熱抵抗で、Tが温度で、Qが発熱量で、Δtが時間間隔である。また、mは時間の添え字である。
【0035】
上記式(1)を変形すると、以下の式(2)となる。
【0036】
【0037】
式(2)の右辺が示すように、Q/CやΔT/RCを示す非線形基関数を用意できれば、適切な線形回帰式を導くことができる。保守運用など、寸法や物性が変わらない場合、熱伝導サブライブラリ、ふく射サブライブラリ、強制対流サブライブラリ、および自然対流サブライブラリの非線形基底関数は、ΔT/RCに比例する。また、発熱サブライブラリは、Q/Cに比例する。本実施形態の情報処理装置1は、サブライブラリ定義情報で定義するサブライブラリを用いることで、熱モデルに即した線形回帰式を生成する。
【0038】
ライブラリ情報101は、同一サブライブラリに含まれる複数の非線形基底関数から選択される確率である生成確率の情報をさらに含む。
【0039】
続いて、
図3Bを用いて生成確率について説明する。
図3Bは、生成確率情報を示す図である。
図3Bに示すように、サブライブラリと、指数と、生成確率とが対応付けられている。
【0040】
図2に戻り、出力部12は、各種の情報を出力する。本実施形態では、出力部12は、電子機器の温度を予測するモデルの情報を出力する。電子機器の温度を予測するモデルの情報の詳細は後述する。
【0041】
出力部12は、各種の情報を表示する表示機能、外部装置との間でデータを通信する通信機能、の少なくとも1つを備える。外部装置とは、電子機器2の外部に設けられた装置である。電子機器2と外部装置とは、ネットワークなどを介して通信可能とすればよい。例えば、出力部12は、公知の表示装置、および公知の通信装置の少なくとも1つを組み合わせることで構成される。
【0042】
次に、制御部30について説明する。
【0043】
制御部30は、検出結果取得部111と、回帰式生成部112と、修正部113と、回帰式再生成部114と、出力制御部115と、を備える。
【0044】
検出結果取得部111、回帰式生成部112、修正部113、回帰式再生成部114、および出力制御部115は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPUなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のICなどのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0045】
検出結果取得部111は、複数のセンサが検出した検出結果を取得する。例えば、
図1に示した、位置P1~位置P5における温度と、位置P5における風速と、位置P1および位置P2における電流と、位置P1における電圧とを所定時間毎に計測した検出結果を取得する。なお、検出結果取得部111は、空冷ファンの回転数や電圧の情報を取得し、これらの情報に基づいて風速を算出するようにしてもよい。
【0046】
ここで、検出結果取得部111が取得するデータの例を
図4に示す。
図4は、センサ情報の一例を示す図である。
図4に示すように、例えば、0.5秒毎に計測したデータを取得する。
図4に示すTemp1~Temp5は、位置P1~位置P5における温度である。
図4に示すvは、位置P5における風速である。i
1およびi
2は、位置P1および位置P2における電流である。
図4に示すVは、位置P1における電圧である。なお、検出結果取得部111は、取得した検出結果を記憶部10に登録するようにしてもよい。
【0047】
図2戻り、回帰式生成部112は、複数の回帰式を生成する。具体的に、回帰式生成部112は、まず、取得した時間毎のTemp1~Temp5をそれぞれ時間で微分する。また、回帰式生成部112は、検出結果取得部111が取得した各データを各サブライブラリの非線形基底関数に入力した行列データを生成する。このように、回帰式生成部112は、センサの検出結果と非線形基底関数とを用いて演算する。
【0048】
続いて、回帰式生成部112は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせて、Temp1~Temp5のそれぞれを算出するための線形回帰式をそれぞれ複数生成する。
【0049】
回帰式生成部112は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出する際、上記生成確率情報の生成確率が高い指数を優先して抽出するようにする。
【0050】
続いて、回帰式生成部112は、公知技術のスパース推定により、上記複数の線形回帰式の係数を求める。例えば、回帰式生成部112は、最小二乗法で係数を求めた後、予め定められている閾値(ハイパーパラメータ)以下の係数を0にする。また、回帰式生成部112は、残った非ゼロの係数を持つ候補関数(非線形基底関数)で再度最小二乗法を行って係数更新し、予め定められている閾値以下の係数を0にする。なお、回帰式生成部112は、候補関数で再度最小二乗法を行って係数を更新し、閾値以下の係数を0にする処理を複数回繰り返す。
【0051】
なお、回帰式生成部112は、スパース推定により係数を求める以外に、他の公知の機械学習により係数を求めるようにしてもよい。
【0052】
また、回帰式生成部112は、複数の線形回帰式と、上記の演算した結果とを用いて損失関数を算出する。損失関数を算出する方法は、公知の方法により実現する。例えば、回帰式生成部112は、生成した複数の線形回帰式に、検出結果取得部111が取得した各データを各サブライブラリの非線形基底関数に入力した行列データを入力した結果と、時間毎のTemp1~Temp5をそれぞれ時間で微分した結果との誤差に基づく損失関数を生成する。なお、回帰式生成部112は、上記誤差だけでなく、さらに式の単純度合いに基づいた損失関数を算出するようにしてもよい。
【0053】
修正部113は、後述する条件に合致しない場合、線形回帰式の損失関数に基づいて、線形回帰式の係数を求める際に用いるハイパーパラメータおよび生成確率を修正する。ハイパーパラメータの修正方法については、従来技術の方法(例えば、非特許文献1に記載の方法)でもよい。修正部113は、各線形回帰式の損失関数が、予め定められている閾値を下回った場合、ハイパーパラメータにある値を加算するようにする。一方、修正部113は、各線形回帰式の損失関数が、当該閾値以上である場合、ハイパーパラメータにある値を減算するようにする。
【0054】
修正部113は、同一のハイパーパラメータで生成した複数の線形回帰式の損失関数のうち、最も小さい損失関数の線形回帰式を構成するサブライブラリの生成確率を上げるようにし、他のサブライブラリの生成確率を下げるようにする。なお、生成確率を修正する方法は、例えば、生成確率が高いものをさらに上げるようにしてもよい。すなわち、抽出する非線形基底関数を絞り込むように生成確率を修正するようにしてもよい。
【0055】
回帰式再生成部114は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから、修正部113による修正後の生成確率に基づいて非線形基関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形関数を組み合わせた複数の線形回帰式を生成し、複数の線形回帰式の係数を、修正部113による修正後のハイパーパラメータを用いたスパース推定により推定し、複数の線形回帰式の損失関数を算出する。
【0056】
なお、回帰式再生成部114が、所定回数分、線形回帰式を生成していない場合、修正部113が、ハイパーパラメータおよび生成確率を再度修正する。そして、回帰式再生成部114が、再度修正したハイパーパラメータおよび生成確率に基づいて複数の線形回帰式の損失関数を算出する。このように、制御部11は、所定回数分、ハイパーパラメータおよび生成確率を修正して、修正したハイパーパラメータおよび生成確率を用いて損失関数を算出する。
【0057】
出力制御部115は、所定条件に合致する場合、複数の線形回帰式から選択した線形回帰式を出力部12へ出力する。当該条件の例として、回帰式再生成部114が線形回帰式を生成した回数などがある。また、回帰式生成部112により算出された複数の線形回帰式の損失関数または回帰式再生成部114により算出された複数の線形回帰式の損失関数が、閾値以下となることを上記条件としてもよい。
【0058】
また、出力制御部115は、複数の線形回帰式の損失関数に基づいた順位により選択した複数の選択回帰式の情報を出力部へ出力する。ここで、
図5Aおよび
図5Bを用いて、出力制御部115が、複数の線形回帰式を出力する例を説明する。
【0059】
図5Aは、内部処理の状態を示す図である。具体的に、
図5Aは、回帰式再生成部114が生成した、複数の線形回帰式についての反復回数(修正回数)と、線形回帰式の識別番号を示す回帰式No.と、損失関数とを対応付けた図である。
【0060】
図5Aに示すように、「反復回数」が「2」であり、「回帰式No.」が「2」である線形回帰式の損失関数「〇〇〇〇」が1位(損失関数が示す値が最も小さい)であり、「反復回数」が「2」であり、「回帰式No.」が「3」である線形回帰式の損失関数「××××」が2位であり、反復回数が「2」であり、「回帰式No.」が「4」である線形回帰式の損失関数「△△△△」が3位であるものとする。
【0061】
図5Bは、線形回帰式の情報の出力例を示す図である。出力制御部115は、
図5Aに示した損失関数の順位に基づき、損失関数および線形回帰式情報を出力部12へ出力する。ここで、線形回帰式情報とは、線形回帰式を示す情報であり、節点の連立方程式や基底関数の線形結合を示した情報等である。なお、出力制御部115は、線形回帰式情報を別画面で出力するようにしてもよい。
【0062】
なお、出力制御部115は、複数の線形回帰式のうち、最も損失関数が小さい線形回帰式を選択するようにしてもよい。
【0063】
なお、出力制御部115は、選択した線形回帰式を他の情報処理装置へ送信出力するようにしてもよい。これにより、当該他の情報処理装置は、当該線形回帰式を用いて温度予測計算することができる。
【0064】
次に、情報処理装置1で実行する情報処理の流れを説明する。
【0065】
図6は、情報処理装置1が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0066】
検出結果取得部111は、複数のセンサの検出結果を取得する(ステップS1)。続いて、回帰式生成部112は、複数のセンサの検出結果を用いて、取得した時間毎のTemp1~Temp5をそれぞれ時間で微分したり、検出結果取得部111が取得した各データを各サブライブラリの非線形基底関数に入力した行列データを生成したりする。このように、回帰式生成部112は、センサの検出結果を用いて、非線形基底関数の演算処理をする(ステップS2)。
【0067】
回帰式生成部112は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせて、Temp1~Temp5のそれぞれを算出するための線形回帰式を複数生成する。また、回帰式生成部112は、スパース推定により、上記複数の線形回帰式の係数を求める(ステップS3)。
【0068】
回帰式生成部112は、複数の線形回帰式と、上記の演算した結果とを用いて損失関数を算出する(ステップS4)。所定回数分、線形回帰式を生成していない場合(ステップS5:No)、修正部113は、線形回帰式の損失関数に基づいて、生成確率およびハイパーパラメータを修正する(ステップS6)。例えば、修正部113は、各線形回帰式の損失関数が、予め定められている閾値を下回った場合、ハイパーパラメータにある値を加算するようにする。また、修正部113は、同一のハイパーパラメータで生成した複数の線形回帰式の損失関数のうち、最も小さい損失関数の線形回帰式を構成するサブライブラリの生成確率を上げるようにし、他のサブライブラリの生成確率を下げるようにする。
【0069】
回帰式再生成部114は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから、修正部113による修正後の生成確率に基づいて非線形基関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形関数を組み合わせた複数の線形回帰式を生成し、複数の線形回帰式の係数を、修正部113による修正後のハイパーパラメータを用いたスパース推定により推定する(ステップS7)。また、回帰式再生成部114は、複数の線形回帰式の損失関数を算出し(ステップS8)、ステップS5に進む。
【0070】
ステップS5において、回帰式再生成部114が、所定回数分、線形回帰式を生成した場合、出力制御部115は、複数の線形回帰式から選択した線形回帰式を出力部12へ出力する(ステップS9)。そして、本ルーチンを終了する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の情報処理装置1は、ライブラリ情報を記憶する記憶部10と、検出結果取得部111と、回帰式生成部112と、修正部113と、回帰式再生成部114と、出力制御部115とを備える。
【0072】
記憶部10は、従属変数または独立変数に基づく非線形基底関数を含む複数種類のサブライブラリの情報であるサブライブラリ定義情報と、各サブライブラリに含まれる複数の非線形基底関数のそれぞれの生成確率の情報である生成確率情報とを含むライブラリ情報101を記憶する。
【0073】
検出結果取得部111は、複数のセンサの検出結果を取得する。回帰式生成部112は、検出結果を用いて、サブライブラリの非線形基底関数を演算し、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせた、線形回帰式を複数生成し、複数の線形回帰式の係数を機械学習により推定し、演算した結果を用いて複数の線形回帰式の損失関数を算出する。
【0074】
修正部113は、線形回帰式の損失関数に基づいて、生成確率および機械学習のハイパーパラメータを修正する。回帰式再生成部114は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから修正後の生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせた複数の線形回帰式を生成し、複数の線形回帰式の係数を修正後のハイパーパラメータを用いた機械学習により推定し、複数の線形回帰式の損失関数を算出する。
【0075】
出力制御部115は、所定の条件に合致する場合、複数の線形回帰式から選択した線形回帰式を出力部12へ出力する。
【0076】
このように、情報処理装置1は、複数の非線形基底関数を含むサブライブラリから生成確率に基づいて非線形基底関数を抽出し、複数種類のサブライブラリの非線形基底関数を組み合わせた線形回帰式を複数生成し、所定の条件に合致するまで、生成確率および機械学習のハイパーパラメータをチューニングしながら、線形回帰式を再生成する。
【0077】
この場合、情報処理装置1は、生成確率および機械学習のハイパーパラメータをチューニングしながら、線形回帰式を再生成しており、生成確率を変更することによる生成する線形回帰式を絞り込むことになる。この結果、情報処理装置1は、探索空間を狭めながら、適切な線形回帰式を出力することができる。すなわち、情報処理装置1は、適切な物理現象のモデルを生成することができる。
【0078】
ここで、センサから取得した情報に基づいて温度予測する例を
図7A~
図7Cのグラフを用いて説明する。
図7Aは、物理モデルを考慮しない機械学習により温度予測する例を示す図である。
図7Aは、グラフG1およびグラフG2を含む。グラフG1は、センサによる計測データによりディープラーニングをした結果により予測した温度Temp1の予測グラフである。グラフG2は、温度Temp1の正解データのグラフである。縦軸は、温度で、横軸は、時間である。
図7Aに示すように、予測グラフと正解データのグラフにずれがある。
【0079】
図7Bは、公知の物理モデルを考慮した機械学習によるモデルで温度予測する例を示す図である。
図7Bは、グラフG3およびグラフG4を含む。グラフG3は、本実施形態のようなサブライブラリを有しないが、物理モデルに基づいて温度Temp1を予測したグラフである。グラフG4は、温度Temp1の正解データのグラフである。
図7Bに示すように、
図7Aほどではないが、予測グラフと正解データのグラフにずれがある。また、
図7Bに示すように、時間が経過するにつれてズレが大きくなっており、長期先の予測には、適さないことを示している。
【0080】
図7Cは、本実施形態により生成した線形回帰式に基づいて温度予測する例を示す図である。
図7Cは、グラフG5およびグラフG6を含む。グラフG5は、本実施形態のようなサブライブラリに基づいて温度Temp1を予測したグラフである。グラフG6は、温度Temp1の正解データのグラフである。
図7Cに示すように、予測グラフと正解データのグラフがほぼ一致している。このように、本実施形態の情報処理装置1は、サブライブラリを用いて、線形回帰式を生成することにより、より適切に予測し得る線形回帰式を出力することができる。
【0081】
また、情報処理装置1は、複数の線形回帰式の係数をスパース推定により推定する。線形回帰式は、多くの基底関数から成るが、そのほとんどの係数が0であるので、スパース推定を用いることで、適切に係数を推定することができる。
【0082】
また、情報処理装置1は、従属変数を温度として、当該温度を算出するための式である線形回帰式を生成している。温度を算出するには、伝熱現象が多岐にわたるため、探索空間が広くなる傾向にあるが、上述のようなライブラリ情報101を記憶し、当該ライブラリ情報101を用いて線形回帰式を生成・再生成するので、適切な熱現象のモデルを生成することができる。
【0083】
また、情報処理装置1は、速度、電流、および電圧に対応する独立変数の非線形基底関数を含む複数種類のサブライブラリを記憶する。このように、情報処理装置1は、温度と関連性の高い速度・電流・電圧に関する非線形基底関数を記憶しておき、当該非線形基底関数を用いて線形回帰式を生成するので、適切な熱現象のモデルを生成することができる。
【0084】
また、情報処理装置1は、複数種類のサブライブラリとして、熱伝導のサブライブラリ、ふく射のサブライブラリ、強制対流のサブライブラリ、自然対流のサブライブラリ、および発熱のサブライブラリの非線形基底関数を記憶するので、情報処理装置1は、節点方程式に対応するサブライブラリを記憶するので、適切な熱現象のモデルを生成することができる。
【0085】
また、情報処理装置1の出力制御部115は、複数の線形回帰式のそれぞれの損失関数に基づいた順位により、選択した複数の線形回帰式の情報を出力部12へ出力する。このように、情報処理装置1は、損失関数に基づいた順位により選択した複数の線形回帰式の情報を出力することで、情報処理装置1のユーザが比較検討可能な情報を出力することができる。
【0086】
なお、上述の実施形態では、情報処理装置1が、熱モデルの線形回帰式を生成する場合について述べたが、他の物理現象(例えば、電気抵抗、物理的な変形量)のモデルの線形回帰式を生成するようにしてもよい。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 情報処理装置、2 電子機器、10 記憶部、11 制御部、12 出力部、111 検出結果取得部、112 回帰式生成部、113 修正部、114 回帰式再生成部、115 出力制御部。