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特許7451402ガソリンエンジンからの排気ガス処理のための新規多領域TWC
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ガソリンエンジンからの排気ガス処理のための新規多領域TWC
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20240311BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240311BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240311BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240311BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240311BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301A
F01N3/28 301Q
B01J35/57 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020530583
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 CN2018119728
(87)【国際公開番号】W WO2019109999
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】201711293207.2
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520176441
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ (シャンハイ) ケミカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ホンギュ・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ドンシェン・チャオ
(72)【発明者】
【氏名】シャン・ヅェン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152702(JP,A)
【文献】特開2013-119075(JP,A)
【文献】特開2017-200677(JP,A)
【文献】特表2014-509241(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204008(WO,A1)
【文献】特開2011-212639(JP,A)
【文献】特表2002-512880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73 - 53/96
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04 - 3/38
F01N 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス処理用触媒物品であって、
入口端部、出口端部を含み、軸方向長さLを有する、基材と;
前記入口端部で始まり、前記軸方向長さLの40~60パーセントにわたって延びている第1の触媒領域であって、第1のパラジウム成分からなる活性成分を有する担持触媒を含む、第1の触媒領域と;
前記出口端部で始まり、前記軸方向長さLの40~60パーセントにわたって延びている第2の触媒領域であって、第2のパラジウム成分からなる活性成分を有する担持触媒を含む、第2の触媒領域と;
前記出口端部で始まり、前記軸方向長さL未満にわたって延びている第3の触媒領域であって、第3のロジウム成分からなる活性成分を有する担持触媒を含む、第3の触媒領域と;
からなり、前記第3の触媒領域は前記第2の触媒領域を被覆している、触媒物品。
【請求項2】
前記第3の触媒領域が、前記軸方向長さLの50~95パーセントにわたって延びている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記第1の触媒領域が、3.53g/m~1.06×10g/mの前記第1のパラジウム成分を含む、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第1の触媒領域が、第1の酸素貯蔵能(OSC)材料、第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第1の無機酸化物を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記第2の触媒領域が、3.53g/m~1.77×10g/mの前記第2のパラジウム成分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記第2の触媒領域が、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記第3の触媒領域が、3.53g/m~7.06×10g/mの前記第3のロジウム成分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記第3の触媒領域が、第3の酸素貯蔵能(OSC)材料、第3のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第3の無機酸化物を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記第2のパラジウム成分に対する前記第1のパラジウム成分の重量比率が3以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HCs)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NO」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒的転化触媒を含む排出量制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジンの排気処理に通常使用される触媒は、TWC(三元触媒)である。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOの還元を行う。
【0003】
ほとんどの触媒コンバータでは、TWCは、フロースルーハニカム基材などの高温に耐えることができる高比表面積の基材上にコーティングされる。これらの基材の大きな比表面積は、不均一反応の効率の向上を促進するが、排気背圧の増大、すなわち、エンジンから尾筒への排気ガスの流れの制限の一因となることもある。TWC技術、例えば米国特許第6,022,825号、同第9,352,279号、同第9,040,003号、及び米国特許出願公開第2016/0228818号などに記載の技術の進展にもかかわらず、コールドスタート段階での性能を改善し、かつ/又はより良好なライトオフ性能を同時に与える、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータがなお必要とされている。本発明は、とりわけこれらの問題を解決するものである。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、ガソリンエンジンの排気ガス処理用触媒であって、入口端部、出口端部を含み、軸方向長さLを有する、基材と;入口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第1の触媒領域であって、第1のパラジウム成分を含む、第1の触媒領域と;出口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第2の触媒領域であって、第2のパラジウム成分を含む、第2の触媒領域と;出口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第3の触媒領域であって、第3のロジウム成分を含む、第3の触媒領域と;を含み、第3の触媒領域は第2の触媒領域を被覆している、排気ガス処理用触媒を対象とする。
【0005】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【0006】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長が、基材の軸方向長さLに等しい、本発明による一実施形態を示す。
図2a】第2の触媒領域が、第1の触媒領域と重複している、本発明による2つの実施形態を示す。
図2b】第2の触媒領域が、第1の触媒領域と重複している、本発明による2つの実施形態を示す。
図3】第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長が、基材の軸方向長さL未満である、本発明による一実施形態を示す。
図4a】それぞれ触媒A、比較触媒B、及び比較触媒Cについての車両試験における、THC、CO及びNOの累積希釈バッグ排出量を示す。
図4b】それぞれ触媒A、比較触媒B、及び比較触媒Cについての車両試験における、THC、CO及びNOの累積希釈バッグ排出量を示す。
図4c】それぞれ触媒A、比較触媒B、及び比較触媒Cについての車両試験における、THC、CO及びNOの累積希釈バッグ排出量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、例えば、ガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成された燃焼排気ガスの触媒的処理、並びに関連する触媒及びシステムを対象とする。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNO、CO、及びHCの同時処理に関する。本発明者らは、NO、CO、及びHCにおいて予想外に高い転化率を生じ、コールドスタート段階における性能を改善し、並びにより良好なライトオフ性能を与える、特定の触媒活性金属とそのコーティング方法との間の相乗関係を発見した。本発明のプロセスはまた、触媒のコストを低減する。
【0009】
本開示の一態様は、排気ガス処理用触媒物品であって、入口端部、出口端部を含み、軸方向長さLを有する、基材と;入口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第1の触媒領域であって、第1のパラジウム成分を含む、第1の触媒領域と;出口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第2の触媒領域であって、第2のパラジウム成分を含む、第2の触媒領域と;出口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第3の触媒領域であって、第3のロジウム成分を含む、第3の触媒領域と;を含み、第3の触媒領域は第2の触媒領域を被覆している、触媒物品を対象とする。
【0010】
本発明者らは、これらの触媒をこのようにコーティングすることで、触媒を別々に又は従来のコーティング方法で使用しても達成されない、より良好な触媒性能を示すことを見出した。本発明の予想外の利点には、同様の濃度(ウォッシュコート担持量など)の従来のTWC触媒と比較して、車両のコールドスタート段階でのライトオフ性能が改善されること、排気汚染物質の排出量が大幅に削減されること、ひいては排出量目標の達成が容易となることがある。これらの利点の達成は、触媒で使用される貴金属の量及び低コストにつながる。
【0011】
第1の触媒領域は、軸方向長さLの30~70%にわたって延び得る。好ましくは、第1の触媒領域は、軸方向長さLの40~60%、より好ましくは45~55%にわたって延び得る。
【0012】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの30~70%にわたって延び得る。好ましくは、第2の触媒領域は、軸方向長さLの40~60%、より好ましくは45~55%にわたって延び得る。
【0013】
第2の触媒領域は、第1の触媒領域と、軸方向長さLの0.1~15%にわたって重複し得る(例えば、図2a及び図2bを参照されたい、第1の触媒領域は、第2の触媒領域を被覆し得、又は第2の触媒領域は、第1の触媒領域を被覆し得る)。あるいは、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLに等しくてもよい(例えば、図1を参照されたい)。更に別の代替例では、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であり得る(例えば、図3を参照されたい)。
【0014】
第3の触媒領域は、軸方向長さLの50~99%にわたって延び得る。好ましくは、第3の触媒領域は、軸方向長さLの50~95%、より好ましくは60~95%にわたって延び得る。
【0015】
第1の触媒領域は、第1のパラジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まなくてもよい。
【0016】
第1の触媒層は、白金及び/又はロジウムなどの第1のパラジウム成分以外のPGM金属を含むことができる。第1の触媒領域は、0.1~300g/ftの第1のパラジウム又は白金パラジウム成分を含むことができる。好ましくは、第1の触媒領域は、50~250g/ftの第1のパラジウム又は白金パラジウム成分、より好ましくは、100~220g/ftの第1のパラジウム又は白金パラジウム成分を含むことができ、白金とパラジウムとの重量比は、60:1~1:60、好ましくは30:1~1:30、より好ましくは10:1~1:10であり得る。
【0017】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは3.0g/in未満、2.5g/in、又は1.5g/inであり得る。
【0018】
第1の触媒領域は、第1の酸素貯蔵能(OSC)材料、第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第1の無機酸化物を更に含むことができる。
【0019】
第1のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムの酸化物などのいくつかのドーパントを更に含むことができる。加えて、第1のOSC材料は、第1のパラジウム成分の担体材料として機能してもよい。
【0020】
第1のパラジウム成分は、第1の無機酸化物及び第1のOSC材料の両方の上に担持され得る。
【0021】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。
【0022】
第1のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~60重量%であり得る。
【0023】
第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、1.5g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、1.2g/in、1.0g/in、0.9g/in、0.8g/in、又は0.7g/in以下である。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料と第1の無機酸化物との両方の上に堆積されてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0025】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、概して、第1の無機酸化物と接触している。好ましくは、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物上に担持されている。あるいは、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料と接触していてもよい。
【0026】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量で担持されている。
【0027】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属はストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で担持されている。
【0028】
また、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0029】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0030】
第1の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族元素の酸化物である。第1の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、セリア、酸化バリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第1の無機酸化物の1つは、アルミナ又はランタン-アルミナ複合酸化物である。
【0031】
第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0032】
あるいは、第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0033】
第2の触媒領域は、第2のパラジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まなくてもよい。
【0034】
第2の触媒層は、白金及び/又はロジウムなど、第2のパラジウム成分以外のPGM金属を含むことができる。第2の触媒領域は、0.1~100g/ftの第2のパラジウム又は白金パラジウム成分を含むことができる。好ましくは、第2の触媒領域は、5~60g/ft、より好ましくは、10~50g/ftの第2のパラジウム又は白金パラジウム成分を含むことができ、白金とパラジウムとの重量比は、60:1~1:60、好ましくは30:1~1:30、より好ましくは10:1~1:10であり得る。
【0035】
第2の触媒領域は、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を更に含むことができる。
【0036】
第2のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。加えて、第2のOSC材料は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのドーパントのうちの1つ以上を更に含んでもよい。更に、第2のOSC材料は、第2のパラジウム成分の担体材料としての機能を有してもよい。
【0037】
第2のパラジウム又は白金パラジウム成分は、第2の無機酸化物及び第2のOSC材料の両方の上に担持され得る。
【0038】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。
【0039】
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~60重量%であり得る。
【0040】
第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.5g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.2g/in、1.0g/in、0.9g/in、0.8g/in、又は0.7g/in以下である。
【0041】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは3.0g/in未満、2.5g/in、又は1.5g/inであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料と第2の無機酸化物との両方の上に堆積されてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0043】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、概して、第2の無機酸化物と接触している。好ましくは、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物上に担持されている。第2の無機酸化物と接触していることに加えて、又はそれに代えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料と接触していてもよい。
【0044】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム、ストロンチウム、これらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量である。
【0045】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属はストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0046】
また、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0047】
好ましくは、バリウム又はストロンチウムはBaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0048】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、セリア、酸化バリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第2の無機酸化物の1つは、アルミナ又はランタン-アルミナ複合酸化物である。
【0049】
第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0050】
あるいは、第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0051】
第3の触媒領域は、第3のロジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まなくてもよい。
【0052】
第3の触媒領域は、0.1~20g/ftの第3のロジウム又は白金ロジウム成分を含むことができる。好ましくは、第3の触媒領域は、3~15g/ft、より好ましくは、5~13g/ftの第3のロジウム又は白金ロジウム成分を含むことができ、白金とロジウムとの重量比は、20:1~1:20、好ましくは15:1~1:15、より好ましくは10:1~1:10であり得る。
【0053】
第2の触媒領域における総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満好ましくは3.0g/in又は2g/in未満、より好ましくは1.5g/in又は1.0g/in未満であり得る。
【0054】
第3の触媒領域は、第3の酸素貯蔵能(OSC)材料、第3のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第3の無機酸化物を更に含むことができる。
【0055】
第3のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。好ましくは、第3のOSC材料は、セリア-ジルコニウム混合酸化物と、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジムなどのドーパントのうちの1つ以上とを含む。加えて、第3のOSC材料は、第3のロジウム成分の担体材料として機能し得る。
【0056】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高く、より好ましくは80:20より高くてもよい。
【0057】
第3のOSC材料は、第3の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であり得る。
【0058】
第3の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、2g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第3の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、1.5g/in以下、1.2g/in以下、1.0g/in以下、又は0.5g/in以下である。
【0059】
好ましくは、第3の触媒領域は、第3のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を実質的に含まず、より好ましくは第3のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を本質的に含まない。
【0060】
第3の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第3の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、ランタン、ジルコニウム、ネオジム、プラセオジムの酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第3の無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はジルコニウム/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第3の無機酸化物の1つは、ランタン/アルミナ複合酸化物又はジルコニウム/アルミナ複合酸化物である。第3の無機酸化物は、第3のロジウム成分のための担体材料、及び/又は第3のOSC材料のための担体材料であってもよい。
【0061】
好ましい第3の無機酸化物は、好ましくは、未使用で80m/g超の比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第3の無機酸化物としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、所望によりジルコニウム含有成分、例えば、ジルコニアを更に含む。このような場合、ジルコニウムは、例えばコーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0062】
第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1の重量比を有してもよい。
【0063】
あるいは、第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3の重量比を有することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1のパラジウム成分と第2のパラジウム成分とは、50:1~1:50の重量比を有する。更なる実施形態では、第1のパラジウム成分と第2のパラジウム成分とは、30:1~1:30の重量比を有する。別の更なる実施形態では、第1のパラジウム成分と第2のパラジウム成分とは、10:1~1:10の重量比を有する。更に別の更なる実施形態では、第1のパラジウム成分と第2のパラジウム成分とは、5:1~1:5の重量比を有する。
【0065】
第1のパラジウム成分と第2のパラジウム成分とは、1:1超、より好ましくは少なくとも3:1又は4:1、更により好ましくは少なくとも5:1、の重量比を有することが好ましい。
【0066】
いくつかの実施形態では、第3のロジウム成分と第1のパラジウム成分とは、60:1~1:60の重量比を有する。好ましくは、第3のロジウム成分と第1のパラジウム成分とは、40:1~1:40の重量比を有する。より好ましくは、第3のロジウム成分と第1のパラジウム成分とは、30:1~1:30の重量比を有する。最も好ましくは、第3のロジウム成分と第1のパラジウム成分とは、10:1~1:10の重量比を有する。
【0067】
本発明の触媒物品は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダーが存在する場合、分散性アルミナバインダーが好ましい。
【0068】
好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。
【0069】
基材は、90mm超の長さであり得る。
【0070】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有し、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延びている、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0071】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0072】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0073】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり300~900のチャネル、好ましくは400~800のチャネルを有する。例えば、第1の面上では、開いている第1のチャネル及び閉じた第2のチャネルの密度は、1平方インチ当たり600~700チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0074】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コージライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0075】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用される基材は、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さい基材を一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成と共に、当該技術分野において公知である。
【0076】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コージライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コージライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0077】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。特定の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。
【0079】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NO、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスの処理方法に関する。この方法に従って作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWC(同じPGM担持量を有する)と比較して改善されており、コールドスタート段階で特に改善された性能、及びより良好なTHCライトオフ性能も示す(例えば、実施例1及び2、並びに表1及び2を参照されたい)。
【0080】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管と共に本明細書に記載される触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムを対象とする。
【0081】
定義
本明細書で使用されるとき、用語「領域」は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は焼成することによって得られる基材上の場所を指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上の場所又は配置は、概ね、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0082】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えた逸脱(例えば、最大長と最小長との差)をしない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えた逸脱をしない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えた逸脱をしない長さを指す。
【0083】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域の一つの部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成は、領域の一つの部分を領域の別の部分と比較する場合に、組成の差が5%以下、通常は2.5%以下、最も通常的には1%以下である材料(例えば、領域)のものを指す。
【0084】
本明細書で使用される用語「ゾーン」は、基材の全長の≦75%の長さなど、基材の全長未満の長さを有する領域を指す。「ゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば≧5%)の長さ(すなわち、実質的に均一な長さ)を有する。
【0085】
基材の全長は、その入口端部とその出口端部と(例えば、基材の両端部)の間の距離である。
【0086】
本明細書で使用される「基材の入口端部に配設されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配設又は担持されているゾーンであって、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近いゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の入口端部までの方が基材の出口端部までよりも近い。同様に、本明細書で使用される「基材の出口端部に配設されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配設又は担持されているゾーンであって、基材の出口端部までの方が基材の入口端部までよりも近いゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の出口端部までの方が基材の入口端部までよりも近い。
【0087】
基材がウォールフローフィルタである場合、概して、「基材の入口端部に配設されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配設又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までの方が入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までよりも近いゾーン、及び/又は
(b)基材の出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までの方が出口チャネルの出口端部(例えば開いている端部)までよりも近いゾーンを指す。
【0088】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の入口チャネルの入口端部までの方が入口チャネルの閉じた端部までよりも近く、及び/又は(b)基材の出口チャネルの閉じた端部までの方が出口チャネルの出口端部までよりも近い。
【0089】
同様に、基材がウォールフローフィルタである場合、「基材の出口端部に配設されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配設又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までの方が出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までよりも近いゾーン、及び/又は
(b)基材の入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までの方が入口チャネルの入口端部(例えば開いている端部)までよりも近いゾーンを指す。
【0090】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の出口チャネルの出口端部までの方が出口チャネルの閉じた端部までよりも近い、及び/又は(b)基材の入口チャネルの閉じた端部までの方が入口チャネルの入口端部までよりも近い。
【0091】
ウォッシュコートがウォールフローフィルタのウォールに存在する(すなわち、ゾーンがウォール内のものである)場合、ゾーンは(a)と(b)との両方を満たし得る。
【0092】
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常は触媒の製造中基材に適用される、接着性コーティングを指す。
【0093】
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0094】
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0095】
本明細書で使用される「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び、例えば微量不純物を含み、並びにその特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む、特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0096】
材料に関して本明細書で使用される「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が少量、例えば、≦5重量%、好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1重量%であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0097】
材料に関して本明細書で使用される「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、材料が微量、例えば≦1重量%、好ましくは≦0.5重量%、より好ましくは≦0.1重量%であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0098】
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0099】
本明細書で使用される用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0100】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【実施例
【0101】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0102】
触媒A:
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は約1.7g/inであり、Pd担持量は200g/ftであった。
【0103】
次いで、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの50%を目標コーティング深さとして、セラミック基材(750cpsi、壁厚2.5mil)の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させた。
【0104】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、第2のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は約1.7g/inであり、Pd担持量は34g/ftであった。
【0105】
次いで、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの50%を目標コーティング深さとして、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、この第2のウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0106】
第3の触媒領域:
第3の触媒領域は、第3のCeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第3の触媒領域のウォッシュコート担持量は約1.3g/inであり、Rh担持量は8g/ftであった。
【0107】
次いで、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの90%を目標コーティング深さとして、上記第1及び第2の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、第3のウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させ、500℃で45分焼成した。
【0108】
比較触媒B:
比較触媒Bにおいては第3の触媒領域を基材の全長(すなわち100%)にわたってコーティングしたことを除いて、触媒Aと同様の手順に従って、比較触媒Bを調製する。総Pd担持量は117g/ftであり、総Rh担持量は8g/ftであった。
【0109】
比較触媒C:
比較触媒Cは、二重層構造を有する市販の三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.7g/inであり、Pd担持量は117g/ftであった。上層は、第2のCeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.3g/inであり、Rh担持量は8g/ftであった。触媒Cの総ウォッシュコート担持量は約3.0g/inであった。
【0110】
触媒D
第1の触媒領域において、50%のBaプロモーターをSrで置換したことを除いて、触媒Aと同様の手順に従って、触媒Dを調製した。
【0111】
触媒E
第1の触媒領域において、100%のBaプロモーターをSrで置換したことを除いて、触媒Aと同様の手順に従って、触媒Eを調製した。
【0112】
実施例1:車両試験の手順及び結果
新欧州運転サイクル(NEDC:New European Driving Cycle)で1.5リットルのエンジンの車両について、触媒A並びに比較触媒B及び比較触媒Cの未使用性能を試験した。テールパイプからのバッグデータを表1に示す。本発明の触媒Aは、比較触媒B及びCと比較して、THC、CO及びNOの著しく低い排出量を示す。(例えば、次の関連する改善された性能を参照されたい。触媒Aを比較触媒Bと比較した場合、THC、CO、及びNO排出量は、それぞれ約20%、10%及び24%改善されている)。
【0113】
【表1】
【0114】
加えて、図4a、図4b及び図4cに示されるように、本発明の触媒Aは、比較触媒B及びCと比較して、コールドスタート段階において著しく改善された排出量制御性能を示す。運転サイクルからの最初の30秒、50秒、100秒での累積排出量データの概要を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例2:エンジン試験におけるライトオフ性能試験
触媒A及び比較触媒Bを、ガソリンエンジンに対して別々に試験した。ライトオフ性能は、排気流量が80kg/時、温度勾配が30℃/分、空燃比(AFR:Air and Fuel Ratio)のラムダが14.55の典型的な条件である。THC、CO及びNOの転化率は、供給ガスの濃度及び触媒の出口におけるガスの濃度を比較することで計算した。エンジンライトオフ試験の前に、触媒のピーク床温度を980℃とし、4モードのエージングサイクルで、同じ100時間運転の6.1Lエンジン下にて、触媒A及び比較触媒Bをベンチエージングした。
【0117】
触媒A及び比較触媒BのHC、CO、及びNOのT50ライトオフ温度を表3に示す。データは、驚くべきことに、本発明の多領域触媒Aは、2層の例の比較触媒Bと比較して、約20℃低いT50(T50は、転化率が50%に達したときの温度である)という、著しく改善されたライトオフ性能をもたらすことを示している。
【0118】
【表3】
【0119】
実施例3:車両試験の手順及び結果
新欧州運転サイクル(NEDC)で1.5リットルのエンジンの車両について、触媒A、触媒D、及び触媒Eのベンチエージング済のサンプルを試験した。ベンチエージングは、触媒のピーク床温度が約980℃、4モードのエージングサイクルで、同じ150時間運転の6.1Lのエンジンで、行った。車両排気希釈バッグデータの結果を表4に示している。本発明の触媒D及び触媒Eは、触媒Aと比較して、THC、CO、及びNOの更に低い排出量を示す(例えば、次の関連する改善された性能を参照されたい。触媒Eを触媒Aと比較した場合、THC、CO、及びNO排出量は、それぞれ約26%、18%、及び14%改善されている)。
【0120】
【表4】
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c