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特許7451403高濃度の分析物を検出するための側方流動アッセイ及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】高濃度の分析物を検出するための側方流動アッセイ及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240311BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 525C
G01N33/53 X
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020531090
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018063586
(87)【国際公開番号】W WO2019112944
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】62/594,974
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】リウ グオホン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0083047(US,A1)
【文献】特開昭63-019559(JP,A)
【文献】特開平08-101197(JP,A)
【文献】特表2010-509581(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00254117(EP,A2)
【文献】特開昭64-047953(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00297292(EP,A2)
【文献】特表2004-500569(JP,A)
【文献】特表2017-515130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイ試験ストリップであって、
液体試料を受容するように構成された流路と、
前記流路に結合された試料受容ゾーンと、
前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合され、対象の分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む捕捉ゾーンと、
前記対象の分析物に特異的な、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合された標識抗体またはそのフラグメントと、
前記捕捉ゾーンの上流の前記流路における特大粒子と、
を備え、
前記特大粒子は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされて、あるサイズ及び寸法の抗体コンジュゲート特大粒子を形成しており、前記液体試料が当該アッセイ試験ストリップ上に受容される時に前記捕捉ゾーンの上流に留まり、前記抗体コンジュゲート特大粒子は、単一の上昇段階の用量応答曲線を生成するのに十分な量で存在する前記対象の分析物に結合するように構成されている
ことを特徴とするアッセイ試験ストリップ。
【請求項2】
前記流路は、対象の分析物を含む液体試料を受容するように構成されており、
前記標識抗体またはそのフラグメントと前記抗体コンジュゲート特大粒子とは、前記対象の分析物に特異的に結合するために競合する
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項3】
前記標識抗体またはそのフラグメントは、前記液体試料が当該アッセイ試験ストリップ上に受容される時、結合された対象の分析物と共に前記流路内を前記捕捉ゾーンまで流れるように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項4】
前記対象の分析物に結合された前記標識抗体は、前記捕捉ゾーンで捕捉され、検出可能な信号を発する
ことを特徴とする請求項3に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項5】
前記液体試料が対象の分析物を含む時、前記抗体コンジュゲート特大粒子は、前記対象の分析物の既知の量に特異的に結合し、それにより、前記捕捉ゾーンの上流に対象の分析物の既知の量を保持するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項6】
前記捕捉ゾーンの下流の制御ゾーン
を更に備え、
前記制御ゾーンは、対象の分析物に結合しないで前記捕捉ゾーンを通過して流れる前記標識抗体またはそのフラグメントに特異的に結合する抗体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項7】
前記液体試料が対象の分析物を含まない時、前記標識抗体またはそのフラグメントは、前記制御ゾーンにまで流れ、前記制御ゾーンのみで光学信号を発し、前記液体試料中の前記対象の分析物の不在を示す
ことを特徴とする請求項6に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項8】
前記固定化された捕捉剤は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項9】
前記抗体コンジュゲート特大粒子は、当該試験ストリップの表面上に一体化されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項10】
前記特大粒子は、金粒子、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、またはシリコンビーズ、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項11】
前記特大粒子は、各々が、直径において約1μm~約15μmである
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項12】
前記液体試料は、血液、血漿、尿、汗、または唾液、の試料からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイテストストリップ。
【請求項13】
前記対象の分析物は、C反応性タンパク質(CRP)を含んでおり、
前記特大粒子にコンジュゲートされた前記抗体またはそのフラグメントは、前記CRPに結合される抗CRP抗体またはそのフラグメントを含んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項14】
前記抗体コンジュゲート特大粒子は、前記標識抗体またはそのフラグメントのサイズの約250倍である
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載のアッセイ試験ストリップと、
光源及び検出器を含むリーダと、
データナライザと、
を備えた診断試験システム。
【請求項16】
液体試料中の対象の分析物の濃度を判定する方法であって、
請求項1に記載のアッセイ試験ストリップに前記液体試料を適用する工程と、
前記液体試料中に存在する分析物を前記標識抗体またはそのフラグメントに結合する工程と、
前記液体試料中に存在する分析物を前記抗体コンジュゲート特大粒子に結合する工程と、
前記分析物に結合された前記抗体コンジュゲート特大粒子が前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流れない間に、前記液体試料及び前記分析物に結合された前記標識抗体を前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流す工程と、
前記分析物に結合された前記標識抗体を前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合する工程と、
前記捕捉ゾーン内に固定化された前記分析物に結合された前記標識抗体から信号を検出する工程と、
少なくとも前記検出された信号に基づいて前記分析物の濃度を判定する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記濃度は、前記検出された信号と、前記アッセイ試験ストリップ上の抗体コンジュゲート特大粒子の量と、に基づいて判定される
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出された信号は、光学信号、蛍光信号、または磁気信号である
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記検出された信号は、前記対象の分析物が前記液体試料中に存在する、ということを示す
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記検出された信号は、前記液体試料中の前記対象の分析物の量を示す
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記検出された信号は、前記対象の分析物が高い量で存在する、ということを示す
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記対象の分析物は、C反応性タンパク質(CRP)である
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記CRPは、5μg/mLより多い量で、前記液体試料中に存在する
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記CRPは、10μg/mLと20μg/mLとの間の量で、前記液体試料中に存在する
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記CRPは、40μg/mLと209μg/mLとの間の量で、前記液体試料中に存在する
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記CRPは、20μg/mLより多い量で、前記液体試料中に存在する
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年12月5日に出願された米国特許仮出願第62/564,974号に対する優先権を主張する。当該出願は、当該参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。
【0002】
[技術分野]
本開示は、全体として、側方流動アッセイデバイス、キット、試験システム、及び方法、に関する。より具体的には、本開示は、対象の分析物が高濃度で存在する時を含み、試料中の分析物の濃度を決定するための側方流動アッセイデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載される側方流動アッセイを含むイムノアッセイシステムは、信頼性があり、高価でなく、携帯可能で、迅速かつ簡単な診断試験を提供する。側方流動アッセイは、試料中の対象の分析物の存否を迅速かつ正確に検出でき、場合によっては定量化できる。有利なことに、側方流動アッセイは、侵襲性が最小であり得て、現場での試験システムとして使用され得る。側方流動アッセイは、様々な医療ないし環境検体を検出するために開発されてきた。サンドイッチ形式の側方流動アッセイでは、対象の分析物(検体)に対する標識抗体が、試料受容ゾーン内またはその近くの試験ストリップ上に堆積されている。標識抗体は、例えば、抗体に結合された検出分子ないし「標識(ラベル)」を含み得る。試料が試験ストリップに適用される時、試料中に存在する分析物は、標識抗体によって結合され、試験ストリップに沿って捕捉ゾーンにまで流れる。そこで、分析物に対する固定化された抗体が、標識抗体-分析物の複合体に(更に)結合する。捕捉ラインに固定化された抗体は、試料受容ゾーン内またはその近くに堆積されていた標識抗体とは異なり得る。捕捉された複合体が検出され、分析物の存在が判定される。分析物が不在である場合、標識抗体は試験ストリップに沿って流れるが、捕捉ゾーンを通過する。捕捉ゾーンでの信号の欠如は、分析物の不在を示す。もっとも、サンドイッチ形式の側方流動アッセイには、偽陰性、不正確な定量、対象の分析物が高濃度で試料中に存在する時の分解能の欠如、を含む多くの欠点がある。
【発明の概要】
【0004】
従って、分析物が高濃度で試料中に存在する時を含んで、試料中の対象の分析物の濃度を正確に測定できる改善された側方流動アッセイを提供することが、本開示の一態様である。
【0005】
本明細書に開示される幾つかの実施形態は、流体試料を受容するように構成された流路と、前記流路に結合された試料受容ゾーンと、捕捉ゾーンと、標識抗体またはそのフラグメントと、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路における特大粒子と、を備えたアッセイ試験ストリップに関する。前記捕捉ゾーンは、前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合され、対象の分析物に特異的な(固有の)固定化された捕捉剤を含んでいる。前記標識抗体またはそのフラグメントは、前記対象の分析物に特異的であって、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合されている。前記特大粒子は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされていて、あるサイズ及び寸法の抗体コンジュゲート特大粒子を形成しており、前記流体試料が当該アッセイ試験ストリップ上に受容される時に前記捕捉ゾーンの上流に留まる。幾つかの実施形態では、前記流路は、対象の分析物を含む流体試料を受容するように構成されている。幾つかの実施形態では、前記標識抗体またはそのフラグメントと前記抗体コンジュゲート特大粒子とは、前記対象の分析物に特異的に結合するために競合する。幾つかの実施形態では、前記標識抗体またはそのフラグメントは、前記流体試料が当該アッセイ試験ストリップ上に受容される時、結合された対象の分析物と共に前記流路内を前記捕捉ゾーンまで流れるように構成されている。幾つかの実施形態では、前記対象の分析物に結合された前記標識抗体は、前記捕捉ゾーンで捕捉され、検出可能な信号を発する。
【0006】
幾つかの実施形態では、前記流路は、対象の分析物を含むまたは含まない流体試料を受容するように構成されている。幾つかの実施形態では、前記抗体コンジュゲート特大粒子は、対象の分析物の既知の量に特異的に結合し、それにより、前記捕捉ゾーンの上流に対象の分析物の既知の量を保持する。
【0007】
更なる実施形態では、アッセイ試験ストリップは、前記捕捉ゾーンの下流の制御ゾーンを備える。幾つかの実施形態では、前記制御ゾーンは、対象の分析物に結合しないで前記捕捉ゾーンを通過して流れる前記標識抗体またはそのフラグメントに特異的に結合する抗体を含む。幾つかの実施形態では、前記流体試料が対象の分析物を含まない時、前記標識抗体またはそのフラグメントは、前記制御ゾーンにまで流れ、前記制御ゾーンのみで光学信号を発し、前記流体試料中の前記対象の分析物の不在を示す。幾つかの実施形態では、前記固定化された捕捉剤は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントを含む。幾つかの実施形態では、前記抗体コンジュゲート特大粒子は、当該試験ストリップの表面上に一体化されている。幾つかの実施形態では、前記特大粒子は、金粒子、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、またはシリコンビーズ、を含む。幾つかの実施形態では、前記特大粒子は、直径において約1μm~約15μmである。幾つかの実施形態では、前記流体試料は、血液、血漿、尿、汗、または唾液、の試料からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、前記対象の分析物は、C反応性タンパク質(CRP)を含んでおり、前記特大粒子にコンジュゲートされた前記抗体またはそのフラグメントは、前記CRPに結合される抗CRP抗体またはそのフラグメントを含んでいる。
【0008】
本明細書に開示される他の実施形態は、流体試料を受容するように構成された流路と、前記流路に結合された試料受容ゾーンと、前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合され、対象の分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む捕捉ゾーンと、前記対象の分析物に特異的な、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合された標識抗体またはそのフラグメントと、を有する前述のアッセイ試験ストリップを備え、特大粒子が、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされて、前記標識抗体またはそのフラグメントのサイズの約250倍の抗体コンジュゲート特大粒子を形成している、ことを特徴とするキットに関する。
【0009】
本明細書に開示される他の実施形態は、前述のアッセイ試験ストリップまたはキットと、光源及び検出器を含むリーダと、データナライザと、を備えた診断試験システムに関する。
【0010】
本明細書に開示される更なる実施形態は、流体試料中の対象の分析物の濃度を判定する方法に関する。当該方法は、前述のアッセイ試験ストリップに前記流体試料を適用する工程と、前記流体試料中に存在する分析物を前記標識抗体またはそのフラグメントに結合する工程と、前記液体試料中に存在する分析物を前記抗体コンジュゲート特大粒子に結合する工程と、前記分析物に結合された前記抗体コンジュゲート特大粒子が前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流れない間に、前記流体試料及び前記分析物に結合された前記標識抗体を前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流す工程と、前記分析物に結合された前記標識抗体を前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合する工程と、前記捕捉ゾーン内に固定化された前記分析物に結合された前記標識抗体から信号を検出する工程と、少なくとも前記検出された信号に基づいて前記分析物の濃度を判定する工程と、を備える。幾つかの実施形態では、前記濃度は、前記検出された信号と、前記アッセイ試験ストリップ上の抗体コンジュゲート特大粒子の量と、に基づいて判定される。幾つかの実施形態では、前記検出された信号は、光学信号、蛍光信号、または磁気信号である。幾つかの実施形態では、当該方法は、前記対象の分析物が前記流体試料中に存在する、という指標を表示する工程を更に備える。幾つかの実施形態では、当該方法は、前記流体試料中の前記対象の分析物の量を表示する工程を更に備える。幾つかの実施形態では、当該方法は、前記対象の分析物が高い量で存在する、という指標を表示する工程を更に備える。
【0011】
本明細書に開示される更なる実施形態は、流体試料中の対象の分析物の濃度を判定する方法に関する。幾つかの実施形態では、当該方法は、抗体コンジュゲート特大粒子を形成するべく前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされている特大粒子と前記流体試料を接触させる工程と、前記流体試料中の対象の分析物を前記抗体コンジュゲート特大粒子に結合させる工程と、結合後、前記抗体コンジュゲート特大粒子を含んだ前記流体試料を本明細書に記載されるようなアッセイ試験ストリップに適用する工程と、前記流体試料及び前記標識抗体を前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流す工程と、を備える。幾つかの実施形態では、余剰の対象の分析物が前記抗体コンジュゲート特大粒子に結合されないままである場合、当該余剰の対象の分析物は前記標識抗体またはそのフラグメントに結合して、前記流路を通って前記捕捉ゾーンにまで流れ、当該捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合されて信号を発する。幾つかの実施形態では、アッセイ試験ストリップは、流体試料を受容するように構成された流路と、前記流路に結合された試料受容ゾーンと、前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合され、対象の分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む捕捉ゾーンと、前記対象の分析物に特異的な、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合された標識抗体またはそのフラグメントと、を有している。
【0012】
本明細書に開示される幾つかの実施形態は、アッセイ試験ストリップを製造する方法に関する。幾つかの実施形態では、当該方法は、流体試料を受容するように構成された試料受容ゾーンを流路に結合する工程と、捕捉ゾーンを前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合する工程と、標識剤を前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合する工程と、前記流路に特大粒子を結合する工程と、を備える。幾つかの実施形態では、前記標識剤は、標識と、前記対象の分析物に特異的に結合する抗体と、を含んでいる。幾つかの実施形態では、前記特大粒子は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされて抗体コンジュゲート特大粒子を形成している。
【0013】
幾つかの実施形態では、前記標識剤を前記流路に結合する工程は、前記流路内の前記流体試料の存在下で壊れる前記標識剤と前記流路との間の結合を形成する工程を含む。幾つかの実施形態では、前記特大粒子を結合する工程は、前記試料受容ゾーンの表面上に前記特大粒子を含む溶液を噴霧する工程を含む。幾つかの実施形態では、前記特大粒子を結合する工程は、前記試料受容ゾーンと前記捕捉ゾーンとの間の前記アッセイ試験ストリップの表面上に前記特大粒子を含む溶液を噴霧する工程を含む。幾つかの実施形態では、前記特大粒子を結合する工程は、前記特大粒子を含む流体溶液を前記アッセイ試験ストリップの表面上に塗布する工程と、前記流体溶液を乾燥させる工程と、を含む。幾つかの実施形態では、前記特大粒子を結合する工程は、前記特大粒子を前記アッセイ試験ストリップの表面内に一体化する工程を含む。
【0014】
幾つかの実施形態では、当該方法は、更に、前記対象の分析物に特異的な捕捉剤を前記捕捉ゾーン上に固定化する工程を備える。幾つかの実施形態では、当該方法は、更に、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされた特大粒子を含む溶液を提供する工程を更に備える。幾つかの実施形態では、前記対象の分析物は、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記標識剤及び前記抗体コンジュゲート特大粒子は、抗CRP抗体または抗CRP抗体のフラグメントを含む抗体を含む。本明細書に開示される更なる実施形態は、前述の方法によって作製されるアッセイ試験ストリップに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1A及び図1Bは、流体試料が試料受容ゾーンに適用される前及び後の、例示的なサンドイッチ型の側方流動アッセイを示している。
図1B図1A及び図1Bは、流体試料が試料受容ゾーンに適用される前及び後の、例示的なサンドイッチ型の側方流動アッセイを示している。
【0016】
図2図2は、図1A及び図1Bの側方流動アッセイの例示的な用量反応曲線を示している。
【0017】
図3A図3A及び図3Bは、流体試料が試料受容ゾーンに適用される前及び後の、例示的な競合型側方流動アッセイを図示している。
図3B図3A及び図3Bは、流体試料が試料受容ゾーンに適用される前及び後の、例示的な競合型側方流動アッセイを図示している。
【0018】
図4図4は、図3A及び図3Bの競合型側方流動アッセイの例示的な用量反応曲線を示している。
【0019】
図5A図5A及び図5Bは、流体試料が試料受容ゾーンに適用される前及び後の、本開示の第1実施形態による例示的な側方流動アッセイを示している。
図5B図5A及び図5Bは、流体試料が試料受容ゾーンに適用される前及び後の、本開示の第1実施形態による例示的な側方流動アッセイを示している。
【0020】
図6図6は、本開示の第2実施形態による例示的な側方流動アッセイを示し、当該側方流動アッセイへの試料の適用を示している。
【0021】
図7図7は、フック効果の用量応答曲線と比較した、図5A及び図5Bの側方流動アッセイの例示的な用量応答曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載されるデバイス、キット、システム、及び方法は、試料中の対象の分析物の量、例えば、既知の体積の試料中の分析物の濃度、を正確に決定する。有利には、本開示による側方流動デバイス、試験システム、及び方法は、対象の分析物が高濃度または「高」濃度で試料中に存在する状況において、対象の分析物の量を正確に決定(判定)する。本明細書に記載される側方流動アッセイは、分析物濃度を示す信号の分解能を改善し得る。本明細書に記載されるデバイス、キット、システム、及び方法の実施形態は、側方流動アッセイと、対象の分析物に特異的な結合剤にコンジュゲートされた特大粒子と、を含み得る。当該結合剤は、例えば、分析物に特異的な抗体、または、そのフラグメントを含み得る。特大粒子の実装は、1つの例示的な実装として、本開示全体を通じて「抗体コンジュゲート特大粒子」と称されているが、本開示による特大粒子は、分析物に特異的な抗体またはそのフラグメント等であるがこれらに限定されない、対象の分析物に特異的な任意の好適な結合剤、にコンジュゲートされ得る。一実施形態において、抗体コンジュゲート特大粒子は、対象の分析物を含むことが疑われる試料と予め混合され得て、その後に側方流動アッセイの試料ウェルに添加され得る。第2実施形態では、対象の分析物を含むことが疑われる試料が側方流動アッセイに添加される前に、抗体コンジュゲート特大粒子が側方流動アッセイ内に一体化され得る。
【0023】
本開示によれば、抗体コンジュゲート特大粒子は、側方流動アッセイにおいて一般的に使用される標識剤(一例として、コロイド金を含む検出粒子等)と比較して、サイズが比較的大きい。非限定的な一例において、本明細書に記載される抗体コンジュゲート特大粒子の実施形態は、直径約10μmであり得るが、一般的に使用される標識剤は、典型的には直径約40nmである。流体試料が添加される時に試料ウェルから側方流動アッセイの膜を通って容易に移動可能である標識剤とは対照的に、本明細書に記載される抗体コンジュゲート特大粒子の実施形態は、流体試料が側方流動アッセイに添加される時に、膜を通過して移動しない。代わりに、本明細書に記載される抗体コンジュゲート特大粒子の実施形態は、試料の適用時に試料ウェル内の試料内の分析物(存在する場合)を捕捉し、当該捕捉された分析物を試料ウェル内に保持する。結果として、本明細書に記載される抗体コンジュゲート特大粒子の実施形態は、標識抗体-分析物複合体を形成して膜を通って側方流動アッセイの捕捉領域にまで流れて検出可能な信号を生成し得る分析物の量を減らす。側方流動アッセイの捕捉領域に到達する標識-抗体-分析物の複合体の量が減少すると、単一の上昇段階を示す用量反応曲線に帰結する。
【0024】
従って、本明細書に記載される実施形態は、信号が減少している用量反応曲線の段階を低減または完全に排除することにより、従来のサンドイッチ型の側方流動アッセイのフック効果に関連する欠点を解消する。有利なことに、本開示の側方流動アッセイによって示される単一の上昇段階は、非常に高い正確性及び信頼性で、試料中の分析物の量、特にはそれが高濃度または非常な高濃度で発生している時の分析物の量、を決定するために、使用され得る。以下に記載される幾つかの実装において、本開示による抗体コンジュゲート特大粒子は、捕捉ゾーンの上流において結合された対象の分析物の予測可能な既知量を信頼性を持って保持できるため、非常に正確な定量測定が達成される。更に、本開示のデバイス、システム、及び方法は、検出可能な信号を展開して僅か2分で試験結果を生成し得る側方流動アッセイを含む。これは、検出可能な信号を展開して試験結果を生成するのに10~15分を要する従来の側方流動アッセイとは対照的である。
【0025】
本開示の実施形態は、側方流動デバイスを参照して説明される。幾つかの実施形態では、側方流動デバイスは、試験ストリップ上に実装されるが、他の形態も適切であり得る。試験ストリップ形式では、分析物(検体)を含んでいる疑いのある試験試料流体が、(例えば、毛管作用によって)ストリップを通って流れる。ストリップは、紙、ニトロセルロース、及びセルロース、等の吸水性材料を含むがこれらに限定されない、任意の適切な材料から作製され得る。試料流体は、試料リザーバで受容される。試料流体は、分析物の存在、不在、及び/または量を示すために当該分析物(存在する場合)が捕捉剤と相互作用する捕捉ゾーンにまで、ストリップに沿って流れ得る。捕捉剤は、捕捉ゾーン内に固定化された抗体を含み得る。
【0026】
本開示の実施形態は、側方流動デバイスの捕捉ゾーンで生成される光学信号を参照して説明されるが、検出可能な信号の他の形態も、本開示に従って実装され得る。本開示によるアッセイによって生成される信号は、反射型ラベル(例えば金ナノ粒子ラベルであるがこれに限定されない)によって生成される光学信号、蛍光タイプのラテックスビーズラベルによって生成される蛍光信号、アッセイに関連する磁場の変化を示す信号を生成する磁気ナノ粒子ラベルによって生成される磁場信号、または任意の他の適切な信号、を含み得る。
【0027】
本開示によれば、側方流動アッセイは、試料中に存在することが疑われる対象の分析物に特異的な標識剤を含む。標識剤は、最初に、試料ウェル(または試料リザーバ領域)における側方流動アッセイ試験ストリップの表面上、例えばコンジュゲートパッド上、に一体化され(組み込まれ)る。幾つかの実施形態では、標識剤は、標識抗体またはそのフラグメントである。幾つかの実施形態では、標識剤は、検出可能な信号を発する標識、例えば、金ナノ粒子等の金属ナノ粒子、着色されたラテックス、蛍光粒子、または検出可能な信号を発する他の標識、で標識化(ラベル付け)される。
【0028】
試料リザーバにおいて試験ストリップに流体試料を適用する時、標識剤が流体試料内に可溶化し、試料中の対象の分析物の結合について、抗体コンジュゲート特大粒子と競合する。抗体コンジュゲート特大粒子によって結合された分析物は、既知の量で保持され(試験ストリップに適用された抗体コンジュゲート特大粒子の量及び結合能力に基づく)、試験ストリップを通って流れない。対照的に、標識剤によって結合された分析物は、標識-剤-分析物の複合体を形成し、流体試料と共に試験ストリップの捕捉ゾーンまで移動する。幾つかの実施形態では、捕捉剤は、対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントである。標識-剤-分析物の複合体は、捕捉ゾーンで捕捉剤に結合し、抗体コンジュゲート特大粒子の結合能力を超えた分の分析物の量を示す信号を生成する。その結果、単一段階(単相)の用量反応曲線が得られる。ここでは、抗体コンジュゲート特大粒子を超える分析物の濃度の増大に伴って、信号強度が増大する。
【0029】
本開示による抗体コンジュゲート特大粒子は、多くの態様で試験ストリップに適用され得る。以下に詳細に説明される非限定的な一例では、試料が試験ストリップに適用される前に、抗体コンジュゲート特大粒子が、最初に、試料リザーバまたは標識ゾーンにおいて試験ストリップの表面上に一体化される。別の非限定的な一例では、試料が、ある量の抗体コンジュゲート特大粒子と接触させられ、その後に、抗体コンジュゲート特大粒子と混合された試料が試験ストリップに適用される。抗体コンジュゲート特大粒子は、既知の量が試験ストリップ上に予め一体化されているので(または試料と接触させられているので)、既知の量の対象の分析物が抗体コンジュゲート特大粒子によって結合される。試料が試験ストリップに適用される時、流体の流れが対象の分析物に結合された標識剤を捕捉ゾーンにまで運ぶ一方で、抗体コンジュゲート特大粒子に結合された分析物は試験ストリップを通って移動せず、捕捉ゾーンの上流の所定位置(最初に試験ストリップ上に一体化されたゾーン内、または、試料が試験ストリップに適用された時にそれが堆積された試料ウェル内)に留まる。幾つかの場合、捕捉ゾーンで検出された光学信号が、当該試験デバイス及び抗体コンジュゲート特大粒子の既知の量に特異的な用量応答曲線と比較されて、対象の分析物の量が決定される。他の場合、対象の分析物の量は、従来の側方流動サンドイッチ型アッセイの用量反応曲線を、抗体コンジュゲート特大粒子によって保持される分析物の量(試験中に使用される抗体コンジュゲート特大粒子の量及びコンジュゲーション比を用いて決定され得る)で調整することによって、直接的に計算される。
【0030】
何らかの特定の理論に縛られることなく、抗体コンジュゲート特大粒子による分析物の結合は、側方流動デバイスに予め一体化されているか側方流動デバイスに適用する前に試料と接触させられているかにかかわらず、標識剤によって捕捉され得て捕捉ゾーンで検出され得る分析物の量を低減させる。これにより、用量応答曲線の上昇段階の分解能が増大し、従来のサンドイッチ型の側方流動アッセイの用量応答曲線から第2段階を削除することにより、単相の用量応答曲線が生成される。本開示の側方流動アッセイは、信号が減少している用量応答曲線の段階を排除することによって、サンドイッチ型の側方流動アッセイのフック効果に関連する欠点を解消する。更に、信号が増大している従来のサンドイッチ型の用量応答曲線の部分と比較して、本開示の用量応答曲線の上昇部分における信号の分解能が、劇的に改善される。
【0031】
分析物が高濃度である時に本明細書に記載される側方流動アッセイによって生成される信号は、多くの有利な特徴を含む。例示的な実施形態では、分析物が高濃度である時に生成される信号は、容易に検出可能であり(例えば、それらは、従来のリーダが典型的に識別できる信号の範囲内の強度を有し、十分に間隔が空けられている)、ゼロまたは低濃度で生成される信号と用量応答曲線上で重複せず、高濃度及び非常な高濃度で非常に正確な濃度読み取り値を計算するために利用され得る。本明細書に記載される側方流動アッセイの実施形態は、特定の検出された信号を分析物(特には高濃度の分析物)の量と相関させることに関する不確実性、例えば分析物の低濃度と高濃度の両方に対応する単一の光学信号を生成するサンドイッチ型の側方流動アッセイを読み取る際に生じるフック効果に起因する不確実性、を回避する。対照的に、本開示による側方流動アッセイは、分析物のゼロまたは低濃度あるいは分析物の高濃度に明確かつ一義的に対応する光学信号を生成する。幾つかの場合、ゼロまたは低濃度は、被験物内の分析物の正常または「健康」レベルに直接的に相関され得て、高濃度は、被験物内の分析物の非正常または「非健康」レベルに直接的に相関され得る。
【0032】
本明細書に記載される側方流動アッセイの実施形態は、健康な個体では低濃度で自然に発生するが、疾患状態または障害を有する個体では高濃度に上昇する、という対象の分析物の診断試験において特に有利である。ほとんど無いか全く無い信号の検出は、ゼロないし低濃度の範囲に相関し、その場合、操作者は分析物が低濃度で存在すること(健康レベルの指標)の確認を求めるのみであり、抗体コンジュゲート特大粒子の結合能力が飽和されるまで信号はゼロまたはゼロ近くに留まるので、信号の特異性や分解能を必要としない。抗体コンジュゲート特大粒子が飽和されると、容易に検出可能な高分解能の信号が単一の上昇段階の用量応答曲線内で生成され、操作者は分析物が高濃度で存在すること(異常または疾患状態の指標)の確認を求め、特に、対象の分析物が高濃度で存在する時は常に、対象の分析物の定量化を求める。高濃度の範囲内にある時に対象の分析物の正確な濃度を正確に特定する能力は、操作者が、穏やかな段階または厳しい段階など、対象の疾患または他の状態のステージないし進行を確めることを許容し得る。
【0033】
側方流動アッセイと抗体コンジュゲート特大粒子とを含むキット、側方流動アッセイと抗体コンジュゲート特大粒子とリーダとを含むシステム、及び、試料中の分析物の量を決定するために側方流動アッセイを使用する方法、が本明細書に記載される。側方流動アッセイの様々な特徴が、既存の側方流動アッセイよりも優れた利点を提供する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書に記載される側方流動アッセイは、最初に試料を希釈する必要なしに、試料中の上昇した分析物の濃度を正確に判定(決定)することができる。更に、幾つかの実施形態では、側方流動アッセイ上に配置されるかまたは側方流動アッセイに適用する前の試料中に配置される抗体コンジュゲート特大粒子の量は、分析物の異なる濃度範囲の要件に対応するように、変化され得る。
【0034】
デバイス、試験システム及び方法の様々な特徴が、添付の図面を参照して以下でより完全に説明される。もっとも、本開示は、多くの異なる形態で具現化され得る。本明細書の教示に基づいて、当業者は、本開示の範囲が、本開示の任意の他の態様と独立して実装されるかまたは組み合わされるかに拘わらず、本明細書に開示されるデバイス、試験システム及び方法の任意の態様をカバーする、ということが意図されていることを理解するであろう。例えば、本明細書に記載されている任意の数の特徴を使用して、デバイスが実装され得るし、または、方法が実践され得る。
【0035】
本明細書では特定の特徴が説明されるが、これらの特徴の多くの変形及び置換が本開示の範囲内にある。幾つかの利益及び利点が述べられるが、本開示の範囲は、特定の利益、使用または目的に限定されることを意図してはいない。むしろ、本開示の態様は、様々な検出技術及びデバイス形態に広く適用可能であることが意図されており、それらの幾つかが図面及び以下の説明において例示的に示される。詳細な説明及び図面は、限定ではなく、単に本開示を例示するものであり、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって画定される。
【0036】
[サンドイッチ型及び競合型の側方流動アッセイ]
側方流動アッセイは、サンドイッチ型または競合型で実装され得る。本明細書で説明されるサンドイッチ型及び競合型のアッセイは、光信号を生成する反射型ラベル(金ナノ粒子ラベルなど)の文脈で説明されるが、当該アッセイは、蛍光信号を生成するように構成されたラテックスビーズラベル、磁気信号を生成するように構成された磁気ナノ粒子ラベル、または、検出可能な信号を生成するように構成された任意の他のラベル、を含み得ることが理解されよう。サンドイッチ型の側方流動アッセイは、固体基板上の試料リザーバに堆積された標識抗体を含む。試料が試料リザーバに適用された後、標識抗体は試料中に溶けて(可溶化し)、そこで当該抗体は試料中の分析物上の最初のエピトープを認識して結合し、標識-抗体-分析物の複合体を形成する。この複合体は、液体前部(フロント)に沿って、試料リザーバから固体基板を通って、固定化された抗体(「捕捉剤」とも呼ばれる)が位置する捕捉ゾーン(本明細書では「試験ライン」とも呼ばれる)にまで流れる。幾つかの実施形態では、固定化された抗体は、標識抗体と同じ抗体タイプであり得る。例えば、分析物が多量体である場合、または、分析物が同じ単量体に複数の同一のエピトープを含む場合、試料リザーバに堆積された標識抗体は、捕捉ゾーン内に固定化された抗体と同じ抗体タイプであり得る。幾つかの実施形態では、固定化された抗体は、異なる抗体タイプであり得て、分析物上の異なるエピトープまたは認識部位を認識する。当該固定化された抗体は、分析物上のエピトープを認識して結合し、それにより、標識-抗体-分析物の複合体を捕捉ゾーンで捕捉する。
【0037】
捕捉ゾーンでの標識抗体の存在は、捕捉ゾーンで検出可能な光信号を提供する。非限定的な一例では、金属ナノ粒子(金、銀、銅、プラチナ、カドミウム、パラジウム、またはそれらの複合物)が、比較的安価で安定していて、金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴特性に基づいて容易に観察可能な色指標を提供するため、抗体を標識化(ラベル付け)するために使用される。幾つかの場合、この信号は、分析物が試料中に存在するか否かなどの、定性的な情報を提供する。幾つかの場合、この信号は、試料中の分析物の量の測定値など、定量的な情報を提供する。
【0038】
図1A及び図1Bは、例示的なサンドイッチ型の側方流動デバイス10を示している。側方流動デバイス10は、試料リザーバ12と、標識(ラベル)ゾーン14と、捕捉ゾーン16と、制御ライン18と、を含んでいる。図1A及び図1Bは、流体試料24が試料リザーバ12に適用される前及び後の、側方流動デバイス10を示している。図1A及び図1Bに示される例では、試料24は、対象の分析物26を含んでいる。試料リザーバ12内またはその近くにある標識ゾーン14は、標識剤28を含んでいる。この例示的なサンドイッチ型の側方流動デバイスでは、標識剤28は、標識32に結合された抗体または抗体フラグメント30を含んでいる。捕捉剤34が、捕捉ゾーン16内に固定化されている。制御剤35が、制御ライン18上に固定化されている。
【0039】
流体試料24が試料リザーバ12に適用される時、試料24は標識剤28を可溶化し、標識剤28は分析物26に結合して、標識-抗体-分析物の複合体20を形成する。従って、例示的なサンドイッチ型の側方流動デバイス10では、対象の分析物26を含む流体試料24が側方流動デバイスに適用されるまで、ラベル-抗体-分析物の複合体20は形成されない。更に、例示的なサンドイッチ型の側方流動デバイス10では、標識-抗体-分析物の複合体20内の分析物は、流体試料24からの分析物である。図1Bに示されるように、この複合体20は、試験ストリップを通って捕捉ゾーン16にまで流れ、そこで捕捉剤34により結合される。現在結合されている複合体20(具体的には、現在結合されている複合体20上の標識32)が、捕捉ゾーン16で検出可能な光学信号を発する。
【0040】
分析物26に結合しなかった標識剤28は、捕捉ゾーン16を通過し(捕捉ゾーン16内の捕捉剤34に結合する分析物26がない)、側方流動デバイス10を流下し続ける。ここに示されているような制御ライン18を含む側方流動アッセイでは、固定化された制御剤35が、分析物26に結合せず捕捉ゾーン16を通過して制御ライン18に至った標識剤28を捕捉する。幾つかの実施形態では、制御剤35は、抗体のFc領域で標識剤28を捕捉する。幾つかの実施形態では、制御剤35は、抗体のFab領域で標識剤28を捕捉する。制御ライン18で結合されたこの標識剤28が、検出可能な光学信号を発して、それは、当該アッセイが意図された通りに作動したこと(例えば、側方流動アッセイの正常動作中に意図される通り、試料24が試料リザーバ12から捕捉ゾーン16を通って流れたこと)を示すために、測定され得て使用され得る。
【0041】
側方流動アッセイは、試料中の対象の分析物の不在または存在に関する情報など、定性的な情報を提供できる。例えば、捕捉ゾーン16での測定可能な光学信号の検出は、対象の分析物が試料中に存在する(何らかの未知の量で)ことを示し得る。捕捉ゾーンでの測定可能な光学信号の不在は、対象の分析物が試料中に存在していないか、検出限界未満であることを示し得る。例えば、試料24が対象の分析物26(図示せず)を含まなかった場合、試料24は依然として標識剤28を可溶化し、標識剤28は依然として捕捉ゾーン16にまで流れる。しかしながら、標識剤28は、捕捉ゾーン16で捕捉剤34に結合しないであろう。代わりに、それは、捕捉ゾーン16を通って制御ライン18を通って流れ、場合によっては、選択的な吸収ゾーンにまで流れるであろう。幾つかの標識剤28は、制御ライン18上に堆積された制御剤35に結合し、検出可能な光学信号を発するであろう。これらの状況では、捕捉ゾーン16から発せられる(筈の)測定可能な光学信号の不在は、対象の分析物が試料24中に存在しないことの指標であり、制御ライン18から発せられる測定可能な光学信号の存在は、側方流動アッセイの正常動作中に意図される通り、試料24が試料受容ゾーン12から捕捉ゾーン16を通って制御ライン18にまで移動したことの指標である。
【0042】
幾つかの側方流動デバイスは、試料中の対象の分析物の量の測定値など、定量的情報を提供できる。側方流動デバイスから得られる定量的測定値は、所与の体積の試料中に存在する分析物の濃度であり得る。図2は、図1A及び図1Bに示されたサンドイッチ型の側方流動アッセイから得られる例示的な定量的測定値を示している。図2は、捕捉ゾーンで検出される信号の強度(y軸に沿って測定)と試料中の分析物の濃度(x軸に沿って測定)との関係をグラフで示した用量応答曲線である。例示的な信号は、光学信号、蛍光信号、及び磁気信号、を含む。
【0043】
図2においてゼロ濃度の最初のデータ点によって示されているように、試料が対象の分析物を含んでいない場合、試料中の分析物の濃度はゼロであり、標識剤に結合して標識-抗体-分析物の複合体を形成する分析物がない。この状況では、捕捉ゾーンに流れて捕捉抗体に結合する複合体がない。従って、検出可能な光学信号は捕捉ゾーンで観察されず、信号の大きさはゼロである。
【0044】
試料中の分析物の濃度がゼロ濃度から増大すると、信号が検出される。段階A内のデータ点によって示されているように、信号は、試料中の分析物の増大される濃度と共に増大する。これは、分析物の濃度が増大するにつれて、標識-抗体-分析物の複合体の形成が増大するために生じる。捕捉ゾーンにおいて固定化された捕捉剤は、当該捕捉ゾーンにまで流れてくる増大する数の複合体と結合し、当該捕捉ゾーンで検出される信号の増大をもたらす。段階A内では、試料中の分析物の濃度が増大するにつれて、信号が増大し続ける。
【0045】
幾つかの場合、分析物に結合するために利用可能な標識剤の量を超える分析物の濃度を試料が有する場合、余剰(過剰)の分析物が存在する。これらの状況では、標識剤によって結合されない余剰の分析物が、捕捉ゾーン内の捕捉剤に結合することについて、標識-抗体-分析物の複合体と競合する。捕捉ゾーン内の捕捉剤は、標識化されていない分析物(換言すれば、標識剤に結合されていない分析物)と標識-抗体-分析物の複合体とに結合する。しかしながら、捕捉剤に結合する標識化されていない分析物は、検出可能な信号を発しない。段階B内で試料中の分析物の濃度が増大すると、(検出可能な信号を発する標識-抗体-分析物の複合体の代わりに)捕捉剤に結合する標識化されていない分析物の量が増大する。標識-抗体-分析物の複合体の代わりに標識化されていない分析物が捕捉剤に結合する量が増えると、段階B内のデータ点によって示されているように、捕捉ゾーンで検出される信号が減少する。
【0046】
検出された信号が段階Aの間に増大する一方で段階Bで減少するこの現象は、「フック効果」と呼ばれる。段階A内で分析物の濃度が増大すると、より多くの分析物が標識剤に結合し、信号強度が増大する。「Concsat」の時点で、標識剤は、試料からの分析物で飽和され(例えば、標識剤の利用可能な量が、試料からの分析物に全てまたはほぼ全て結合している)、検出された信号は最大値Signalmaxに達している。試料中の分析物の濃度が段階B内で増大し続けると、標識剤の飽和点を超える余剰の分析物が、捕捉剤に結合することについて、標識剤-分析物と競合するため、検出された信号の減少が認められる。
【0047】
「プロゾーン効果」とも呼ばれるフック効果は、特に対象の分析物が段階B内の濃度で試料中に存在する状況で、側方流動アッセイに悪影響を及ぼす。フック効果は、不正確な試験結果をもたらし得る。例えば、フック効果は、偽陰性または不正確に低い結果をもたらし得る。具体的には、試験ストリップ上に堆積された標識剤の濃度を超える高レベルの分析物を試料が含んでいる時、不正確な結果が発生し得る。このシナリオでは、試料が試験ストリップ上に適用されると、標識剤が飽和され、全てではない分析物が標識化されることになる。標識化されていない分析物が、アッセイを通過して、標識化された複合体を打ち負かしながら(out-competing)捕捉ゾーンで結合するため、それにより検出可能な信号が減少する。このように、検出された信号が低濃度と高濃度の両方に対応するため、デバイス(またはデバイスの操作者)は、光学信号が低濃度と高濃度のどちらに対応するかを区別することができない。分析物のレベルが十分に高い場合、分析物は標識化された複合体を完全に打ち負かし、捕捉ゾーンで信号は観察されず、偽陰性の試験結果をもたらす。
【0048】
不正確な試験結果は、競合型の側方流動アッセイからも生じ得る。サンドイッチ型の側方流動アッセイとは対照的に、競合型の側方流動アッセイでは、捕捉ゾーンで捕捉剤に結合することについて、試料からの標識化されていない対象の分析物が標識化された対象の分析物と競合する。図3A及び図3Bは、例示的な競合型の側方流動アッセイ22を示している。側方流動デバイス22は、試料リザーバ12と、標識(ラベル)ゾーン14と、捕捉ゾーン16と、を含んでいる。図3A及び図3Bは、流体試料24が試料リザーバ12に適用される前及び後の、側方流動デバイス22を示している。図3A及び図3Bに示される例では、流体試料24は、対象の分析物26を含んでいる。試料リザーバ12内またはその近くにある標識ゾーン14は、標識剤29を含んでいる。この例示的な競合型の側方流動デバイスでは、標識剤29は、標識32に結合された対象の分析物26を含んでいる。捕捉剤34が、捕捉ゾーン16内に固定化されている。
【0049】
標識化されていない分析物26を含む試料24が、試料リザーバ12に適用される。試料24は、標識剤29を可溶化する。試料24中の標識化されていない分析物26及び標識剤29は、一緒に捕捉ゾーン16にまで流れ、そこで、試料24からの標識化されていない分析物26及び標識剤29の両方が当該捕捉ゾーン16内に固定化された捕捉剤34に結合する。図3Bに示されるように、標識剤及び標識化されていない分析物26は、一定量の捕捉剤34に結合するために、互いに競合する。捕捉剤34に結合された標識剤29(具体的には標識剤29の標識32)が、検出可能な光信号を発するが、試料24に由来して捕捉剤34に結合された標識化されていない分析物26は、検出可能な光信号を発しない。
【0050】
捕捉ゾーン16からの光学信号の検出は、対象の分析物26に関する定性的または定量的な情報を提供できる。流体試料24が分析物26(図示せず)を含まない場合、試料24は依然として標識剤29を可溶化し、標識剤29は依然として捕捉ゾーン16にまで流れる。捕捉ゾーン16内の捕捉剤34は、(試料からの標識化されていない分析物と競合しない)標識剤29に結合し、最大強度または最大強度に近い検出された光学信号をもたらす。試料24が分析物26を非常に低いまたは低い濃度で含む場合にも、最大強度または最大強度に近い光学信号が検出され得る。これは、捕捉剤34に結合された標識化されていない分析物26の、捕捉剤34に結合された標識剤29に対する割合が、低くなるためである。従って、最大強度の検出された光学信号が、試料24中の分析物26のゼロ濃度または低濃度と相関されるべきか否か、決定することが難しい場合がある。
【0051】
標識化されていない分析物26の濃度が試料24中において増大するにつれて、捕捉ゾーン16から発せられる検出される光学信号は減少する。これは、試料中の分析物の濃度の増大に伴って、捕捉剤34に対する競合が増大し、捕捉剤34に結合された標識化されていない分析物26の、捕捉剤34に結合された標識剤29に対する割合が、徐々に増大するためである。しかしながら、分析物が高濃度または非常に高濃度で試料中に存在する場合、捕捉ゾーン16で検出される光学信号は、急速に減少して低強度信号になる。このように試料中の分析物の濃度が高濃度及び非常に高濃度に増大するにつれて光学信号の強度が急速に低下することは、分析物の濃度を正確に決定することを、不可能ではないにしても困難にして、場合によっては分析物の濃度を決定するデバイスの動作を不能にする。図3A及び図3Bに示されているような競合型の側方流動デバイスは、対象の分析物が高濃度で存在する時(例えば、標識剤に対する標識化されていない分析物の割合が高い場合)、対象の分析物の正確な濃度を正確に決定することが事実上できない。
【0052】
図4は、図3A及び図3Bを参照して前述されたような、例示的な競合型の側方流動デバイスで生成される用量応答曲線を示している。図4に示すように、競合型の側方流動アッセイの用量応答曲線は、約1~20μg/mLの範囲の分析物の濃度で、信号の急激な減少を示す。曲線が急激に減少するため、分解能が低く、高濃度での分析物の量を決定する際の精度が低下し、場合によっては、ある程度の正確性をもって試料中に高濃度で存在する分析物の量を決定することが非実践的ないし事実上不可能になる。
【0053】
[高濃度で試料中に存在する分析物を正確に定量化する例示的な側方流動デバイス]
本明細書に記載される側方流動デバイス、キット、試験システム、及び方法は、図1A図1B図3A及び図3Bに示されるような、サンドイッチ型及び競合型の側方流動アッセイのこれら及び他の欠点に対処する。図5A及び図5Bは、高濃度で存在する分析物を含む、試料中に存在する対象の分析物の量を正確に測定できる例示的な側方流動アッセイ100を示している。図7は、側方流動アッセイ100から測定される光学信号、具体的には、捕捉ゾーンで検出される信号の大きさ(y軸に沿って測定される)とアッセイに適用された試料中の分析物の濃度(x軸に沿って測定される)との間の関係、をグラフで示す例示的な用量応答曲線である。
【0054】
図5A及び図5Bに示されるような幾つかの実施形態では、側方流動アッセイ100は、試料受容ゾーン112、ラベルゾーン114、及び捕捉ゾーン116を有する試験ストリップを含み得る。幾つかの実施形態では、側方流動アッセイはまた、制御ゾーン118を含み得る。図5A及び図5Bは、流体試料124が試料リザーバ112に適用される前及び後の、側方流動デバイス100を示している。図示の例では、ラベルゾーン114は、試験ストリップ内の試料の流れの方向に沿って試料受容ゾーン112の下流にある。幾つかの場合、試料受容ゾーン112は、ラベルゾーン114内に及び/またはそれと同一の広がりをもって配置される。
【0055】
試料リザーバ112内またはその近くにある標識ゾーン114は、標識剤128を含んでいる。標識剤128は、標識132に結合された抗体または抗体フラグメント130を含み得る。捕捉剤134が、捕捉ゾーン116内に固定化されている。幾つかの場合、標識132に結合される抗体またはそのフラグメント130は、捕捉剤134と同じタイプの抗体である。それが同じタイプの抗体またはそのフラグメントである時、標識132に結合される抗体またはそのフラグメント130と捕捉剤134との両方が、分析物の同一のエピトープを認識して結合する。他の場合、標識132に結合される抗体またはそのフラグメント130は、捕捉剤134とは異なるタイプの抗体またはそのフラグメントである。それが異なるタイプの抗体またはそのフラグメントである時、標識132に結合される抗体またはそのフラグメント130は、捕捉剤134によって認識及び結合されるエピトープとは異なる分析物126のエピトープを認識して結合する。
【0056】
幾つかの実施形態では、本開示による側方流動アッセイは、捕捉ゾーン116の下流に制御ライン118を含む。制御剤135が、制御ゾーン118内に固定化されている。制御剤135は、分析物に結合されていない標識剤に特異的である。幾つかの場合、制御剤135は、抗体またはそのフラグメントである。分析物126に結合しなかった標識剤128は、捕捉ゾーン116を通過して流れ(分析物126に結合しなかった余剰の標識剤128が存在する場合)、側方流動デバイス100を流下し続ける。ここに示されているような制御ライン118を含む側方流動アッセイでは、固定化された制御剤135が、分析物126に結合せず捕捉ゾーン116を通過して制御ライン118に至った標識剤128に結合する。幾つかの実施形態では、制御剤135は、抗体のFc領域で標識剤128を捕捉する。幾つかの実施形態では、制御剤135は、抗体のFab領域で標識剤128を捕捉する。制御ライン118で結合されたこの標識剤128が、検出可能な光学信号を発して、それは、当該アッセイが意図された通りに作動したこと(例えば、側方流動アッセイの正常動作中に意図される通り、試料124が試料リザーバ112から捕捉ゾーン116を通って流れたこと)を示すために、測定され得て使用され得る。一実施形態では、側方流動アッセイ100は、複数の捕捉ゾーン(本開示に従って標識剤128を捕捉するように構成された少なくとも1つの捕捉ゾーン116を含む)を含み、各捕捉ゾーンは、対象の異なる分析物の、存在、不在、及び/または濃度、を示すように構成され、単一の制御ライン118が、意図された通りに試料が複数の捕捉ゾーンを通って流れたことを示すように構成される。
【0057】
本開示による側方流動アッセイ100の実施形態はまた、特大粒子145を含む。図5A及び図5Bに示される実装において、特大粒子145は、標識ゾーン114内に位置するが、捕捉ゾーン116の上流の他の位置も適切であり得る。例えば、特大粒子145は、標識ゾーン114の上流の試料受容ゾーン112内に配置され得る。本開示によれば、特大粒子145は、分析物126に特異的な結合剤141にコンジュゲート(結合)される。結合剤141は、例えば、分析物に特異的な抗体141またはそのフラグメントを含み得る。分析物に特異的な抗体141にコンジュゲートされた特大粒子145は、抗体コンジュゲート特大粒子148を形成する。以下で詳細に説明されるように、抗体コンジュゲート特大粒子148は、標識剤128よりもサイズが顕著に大きい。このため、図5A及び図5Bに図示された特徴は、縮尺通りに描かれてはいない。更に、図5A及び図5Bの例は、抗体コンジュゲート特大粒子148の文脈で説明されているが、本開示による特大粒子は、対象の分析物に特異的な任意の適切な結合剤にコンジュゲートされ得る、ということが理解されるであろう(例えば、分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントであるが、それに限定されない)。
【0058】
特大粒子145は、任意の適切な材料で製造され得て、及び、その位置を実質的に維持して、側方流動デバイス100への試料の適用時に捕捉ゾーン116へ流れることに抵抗するように、任意の適切なサイズ/寸法であり得る。幾つかの実施形態では、特大粒子145は、シリコン粒子、ラテックス粒子、磁性粒子、金粒子、またはアッセイ試験ストリップを通っての捕捉ゾーン116への移動及び流動に抵抗する十分なサイズの他の粒子、である。特大粒子145は、例えば、ラテックスビーズ、磁性ビーズ、シリコンビーズ、金ビーズ、または他の適切な材料で形成されたビーズ、を含み得る。非限定的な一例では、特大粒子145は、直径が約10μmであり、標識剤128は、直径が約40nmである。従って、本明細書に記載される特大粒子の実装は、従来の標識剤の250倍の直径を有し得る。他のサイズも適切であり得る。例えば、特大粒子145は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15μmなど、1~15μmの直径であってよく、あるいは、前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の直径であってよい。特大粒子148は、側方流動デバイス100を通って移動できないほど十分なサイズであり、代わりに標識ゾーン114に固定されたままである。幾つかの場合、特大粒子145は、側方流動デバイス100への試料の適用時に移動しない。幾つかの場合、特大粒子145は、その初期位置に対して少量移動する場合がある(例えば、現在の非限定的な例では、特大粒子145は、標識ゾーン114内で位置がわずかにシフトまたは変化し得る)。もっとも、特大粒子145は、側方流動デバイス100への試料の適用時に、標識剤128がそうであるように流体前面と共に捕捉ゾーン116に流れることはない。特大粒子145は、以下に詳細に説明される多くの態様で、側方流動アッセイ100に一体化(統合)され得る。
【0059】
図5A及び図5Bに示される実施形態では、特大粒子145にコンジュゲートされた結合剤141は、分析物126に特異的な抗体またはそのフラグメントである。幾つかの場合、抗体141またはそのフラグメントは、標識132及び/または捕捉剤134に結合される抗体130と同じ抗体タイプであり得る。他の場合、抗体141またはそのフラグメントは、標識132及び/または捕捉剤134に結合される抗体130とは異なる抗体タイプであり得る。従って、幾つかの実施形態では、抗体141、抗体130、及び捕捉剤134は、分析物126に対して同じ抗体タイプであり、分析物126上の同じエピトープを認識して結合する。他の実施形態では、抗体141、抗体130、及び捕捉剤134は、分析物126に対して異なる抗体タイプであり、分析物上の異なるエピトープを認識して結合する。
【0060】
本開示によれば、結合剤141は、特定の既知の比率で特大粒子145にコンジュゲートされる。コンジュゲート比は、特定の特大粒子145、特定の対象の分析物、側方流動デバイスの試験パラメータ、または他のパラメータ、に依存して調整され得る。幾つかの実施形態では、結合剤141は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、または100:1、の比率で特大粒子145上に存在するか、あるいは、前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の量で存在する。非限定的な一例では、結合剤141の特大粒子145に対する比率は、抗体コンジュゲート特大粒子148の結合能力を表す。例えば、1:1の比率は、抗体コンジュゲート特大粒子148が試料中の対象の分析物の1個に結合する能力を有することを意味し、100:1の比率は、抗体コンジュゲート特大粒子148が試料中の対象の分析物の最大100個に結合する能力を有することを意味する。別の非限定的な例では、特大粒子145にコンジュゲートされる結合剤141の比率は、抗体コンジュゲート特大粒子148の結合能力に直接相関しない。これは、例えば、特大粒子145にコンジュゲートされた抗体の100%未満が試料中の対象の分析物に結合する時のように、結合効率が100%未満である時に、生じ得る。更に別の非限定的な例では、特大粒子145がコンジュゲート抗体に対して高密度の官能基を有する時、特大粒子145上に存在する結合剤141の比率は、1:1未満である。そのような場合、抗体コンジュゲート特大粒子148を形成するのに必要とされる抗体の量は、減少される。従って、そのような例では、結合剤141の特大粒子145に対する比率は、例えば、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、または100:1、であり得て、あるいは、前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の量であり得る。
【0061】
本開示の幾つかの有利な実施形態では、結合剤141の特大粒子に対する比率は、側方流動デバイス100の試験イベントに使用される特定の抗体コンジュゲート特大粒子148の結合能力を決定するために、微調整されて定量化される。また、側方流動デバイス100の表面上に最初に一体化される抗体コンジュゲート特大粒子148の量は、側方流動デバイス100の表面上に一体化される抗体コンジュゲート特大粒子148の総結合能力が予め決定されるように、微調整されて定量化される。本開示の非限定的な例では、抗体コンジュゲート特大粒子148は、対象の分析物に、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、または50μg/mLの量で結合する量で、あるいは、前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の量で、側方流動デバイス100の表面上に一体化される。このように、抗体コンジュゲート特大粒子148は、既知の量で標識ゾーン114上に一体化され得て、試料リザーバ112に適用される試料中に存在する時に既知の最大量の分析物を捕捉するために利用可能である。
【0062】
流体試料124が試料リザーバ112に適用される時、試料124は標識剤128及び抗体コンジュゲート特大粒子148を可溶化する。標識剤128は分析物126に結合して、標識-抗体-分析物の複合体120を形成する。標識剤128は、同じく分析物126に結合して分析物-抗体-特大粒子の複合体140を形成する抗体コンジュゲート特大粒子148と競合する。標識-抗体-分析物の複合体120は、側方流動デバイス100を通って捕捉ゾーン116にまで流れて、そこで捕捉剤134によって結合され、検出可能な信号を発する。一方、分析物-抗体-特大粒子の複合体140は、側方流動デバイス100を通って流れない。代わりに、当該複合体140は、標識ゾーン114内に留まり、それにより、結合された分析物126のある量を保持し、当該結合された分析物126が側方流動デバイスを通って捕捉ゾーン116にまで流れるのを防ぐ。抗体コンジュゲート特大粒子148が分析物126に対する既知の結合能力を有する幾つかの実装では、流体試料124が側方流動デバイス100に適用される時、既知の量の分析物126が標識ゾーン114内に保持される。例えば、幾つかの実施形態では、本開示による抗体コンジュゲート特大粒子148は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、または50μg/mLの分析物126の量、あるいは、前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の分析物126の量、を標識ゾーン114内に保持可能である。
【0063】
複数の異なる対象の分析物の存在、不在、及び/または量を試験する多重アッセイが、図1A及び図1Bを参照して前述されたような1または複数のサンドイッチ型の側方流動アッセイとして、同一の試験ストリップ上で(図5A及び図5Bを参照して前述されたような)本開示による側方流動アッセイを含み得る。そのような多重アッセイでは、有利には、試料が制御ゾーン116を通って流れたことを確認するために、制御ラインが試験ストリップ上に含まれ得る。
【0064】
次に、側方流動デバイス100の利点が、図7を参照して説明される。既知の量の分析物126を標識ゾーン114内に保持することにより、側方流動アッセイ100は、試料124中の分析物126の高濃度を単一段階のフォーマットで検出可能である。図7の用量応答曲線は、捕捉ゾーンで検出される信号の強度(任意の信号強度単位でy軸に沿って測定される)と試料中の分析物の濃度(この非限定的な例では、X軸に沿って測定されるC反応性タンパク質(CRP)(μg/ml))との間の関係をグラフで示している。図7に示されるように、本開示による抗体コンジュゲート特大粒子148を含む側方流動アッセイの用量応答曲線(正方形のデータ点)が、抗体コンジュゲート特大粒子148(円のデータ点)を含まない典型的なサンドイッチ型アッセイの用量応答曲線と比較される。
【0065】
図7の例に示されるように、サンドイッチ型アッセイの用量反応曲線は、0.1~5μg/mLのC反応性タンパク質(CRP)の範囲で、濃度の僅かな増大に伴って、信号強度の非常に急峻な増大を示し、約5μg/mLのCRPで最大信号強度に達する。その後、自由な結合されていない分析物が捕捉ゾーンで標識-抗体-分析物の複合体と競合するので、用量反応曲線は減少し、図2を参照して前述されたようなフック効果をもたらす。対照的に、本開示による抗体コンジュゲート特大粒子を含むアッセイの用量応答曲線は、CRP濃度が増大するにつれて光学信号強度の漸進的な単一段階(単相)の増大を示し、広い濃度範囲で、特に例えば5μg/mL(典型的なサンドイッチ型アッセイが最大信号強度に達する時の濃度)を超える高濃度範囲で、CRP濃度の正確な決定を許容する。
【0066】
図7に示される例では、抗体コンジュゲート特大粒子の結合能力は、約1μg/mLである。抗体コンジュゲート特大粒子を含むアッセイの用量応答曲線は、CRPの1μg/mL(この例での抗体コンジュゲート特大粒子の結合能力)未満の濃度でゼロまたはほぼゼロの信号を発し、その後、信号は徐々に増大し、分析物が5μg/mLを超える量で存在する時、分析物の濃度の正確な決定(判定)を許容する。
【0067】
結合剤の量及び結合剤の結合能力は、特定のアッセイのために正確に調整され得る。例えば、所定の量を超える分析物の濃度を有することが既知であるか疑われる試料では、用量応答曲線が図7に示すものに類似して分析物の濃度が正確に測定され得るように、既知の結合能力の抗体コンジュゲート特大粒子のある量が側方流動デバイス上に一体化され得る。これは、試料が高濃度または非常に高濃度の分析物を含んでいる疑いがある状況で、特に有利である。代替的に、または付加的に、所与の量の分析物を捕捉するために、抗体コンジュゲート特大粒子の結合能力が正確に調整され得て、操作者が側方流動デバイスに適用された試料中の分析物の量を非常に正確に定量化することを許容する。
【0068】
抗体コンジュゲート特大粒子148は、多くの異なる態様で試験ストリップに適用され得る。図5A及び図5Bに示される本開示の実施形態において、抗体コンジュゲート特大粒子148は、流体試料124が側方流動デバイス100に適用される前に、予め形成されて試験ストリップ上に一体化される。非限定的な一例では、流体試料124が適用される前に、抗体コンジュゲート特大粒子148が形成されて、コンジュゲートパッド上に一体化される。非限定的な一態様において、抗体コンジュゲート特大粒子148は、当該抗体コンジュゲート特大粒子148の溶液をエアジェット技術で噴霧することにより、標識ゾーン114に適用される。別の非限定的な態様では、抗体コンジュゲート特大粒子148を含む溶液が、当該溶液を注ぐことによって、当該溶液を噴霧することによって、当該溶液を試験ストリップ上に配置するまたは擦る粉末またはゲルとして処方することによって、または、抗体コンジュゲート特大粒子148を適用するための任意の他の適切な方法によって、堆積される(deposited)。
【0069】
幾つかの実施形態では、堆積後、抗体コンジュゲート特大粒子148は、コンジュゲートパッド上で加熱するまたは空気を吹き付けることにより、堆積後の試験ストリップの表面上で乾燥される。試験ストリップの表面上の抗体コンジュゲート特大粒子148を乾燥させる他の機構も適切である。例えば、真空引きまたは凍結乾燥も、コンジュゲートパッド上の抗体コンジュゲート特大粒子148を乾燥させるために利用され得る。幾つかの場合、抗体コンジュゲート特大粒子148は、堆積前に溶液に添加されず、代わりに、試験ストリップに直接適用される。抗体コンジュゲート特大粒子148は、試験ストリップの表面上にある抗体コンジュゲート特大粒子148に圧縮圧または真空圧を適用すること、及び/または、抗体コンジュゲート特大粒子148を凍結乾燥粒子の形態で試験ストリップの表面に適用すること、を含むがこれらに限定されない、任意の適切な方法を使用して直接適用され得る。標識剤128も、抗体コンジュゲート特大粒子148を堆積させることについて説明されたのと同一または類似の技術を使用して、試験ストリップ上に同様に堆積され得る。
【0070】
本開示の別の非限定的な例が、図6を参照して説明される。図5A及び図5Bに示される実施形態とは対照的に、抗体コンジュゲート特大粒子148は、対象の分析物126を有するまたは有する疑いのある試料の適用前に、側方流動デバイス100の表面上に一体化されていない。代わりに、抗体コンジュゲート特大粒子148は、試料と同時に側方流動デバイス100に適用される。図6に示されるように、対象の分析物の存在、不在、または量について試験されるべき流体試料24が、別個の容器101内の抗体コンジュゲート特大粒子148に加えられる。流体試料が混合されて、抗体コンジュゲート特大粒子148が流体試料内に一体化され、分析物126が存在する場合、抗体コンジュゲート特大粒子148が分析物126と結合することが許容される。分析物126は、流体試料124中に存在する場合、抗体コンジュゲート特大粒子148に結合して、分析物-抗体-特大粒子の複合体140を形成する。
【0071】
次に、複合体140を含む流体試料125が、試料リザーバ112において側方流動デバイス100に適用される。側方流動デバイス100は、従来のサンドイッチ型の側方流動アッセイデバイス(図1A及び図1Bを参照して前述されたものなど)であり得る。流体試料は標識ゾーン114に移動し、そこで、標識剤128を可溶化する。抗体コンジュゲート特大粒子148は、流体の前部(front)が標識ゾーン114に移動する時、試料リザーバ112内に留まる。抗体コンジュゲート特大粒子148の過剰なサイズにより、抗体コンジュゲート特大粒子148は、試料125が試料リザーバ112に適用される時、最初に堆積された試料リザーバ112内の初期位置からの移動に抵抗する。一方、標識ゾーン114では、標識剤128が、デバイス100に適用する前に試料124と混合された時の抗体コンジュゲート特大粒子148に結合していなかった未結合の分析物126に結合する。次に、標識剤128は、流体の前部と共に捕捉ゾーン116にまで移動し、そこで捕捉剤134によって捕捉され、検出可能な信号を生成する。
【0072】
幾つかの場合、捕捉ゾーンで発せられる検出可能な信号は、試験デバイス及び容器101内の既知量の抗体コンジュゲート特大粒子に特有の用量応答曲線と比較されて、対象の分析物の量が決定(判定)される。他の場合、対象の分析物の量は、サンドイッチ型の側方流動アッセイ100の用量応答曲線を、抗体コンジュゲート特大粒子によって保持された分析物の量(それは、試験中に使用された抗体コンジュゲート特大粒子の量及びコンジュゲート比を用いて決定(判定)され得る)で調整することによって、直接的に計算される。
【0073】
試料を抗体コンジュゲート特大粒子と接触させる本開示の実施形態は、多くの利点を含む。操作者は、図6を参照して説明される本開示の実施形態において、従来のサンドイッチ型の側方流動アッセイ試験ストリップを使用でき、対象の分析物が試料中に高濃度または非常に高濃度に存在する場合でも、対象の分析物の非常に正確な量を検出できる。図6を参照して説明される本開示の実施形態は、操作者が側方流動デバイス上で実行することを望む特定の試験のために選択される量及びコンジュゲート比で抗体コンジュゲート特大粒子を適用する柔軟性を、操作者に許容する。これにより、操作者は、試験イベントのパラメータ(試験対象の試料の特徴など)が既知となったら、試験中に使用される抗体コンジュゲート特大粒子の量及び/または抗体コンジュゲート特大粒子のコンジュゲート比を調整できる。図6を参照して説明される本開示の実施形態は、有利には、側方流動試験デバイスと抗体コンジュゲート特大粒子とが別々の容器に包装された状態で、キット形態で包装され得る。これは、試験ストリップ上に予め組み込まれた抗体コンジュゲート特大粒子を有する本開示の実施形態よりも長い保存期間を有するキットをもたらし得る。
【0074】
[高濃度で試料中に存在する分析物を定量化するための例示的な側方流動キット]
本開示の実施形態は、側方流動デバイス及び抗体コンジュゲート特大粒子を含むキットを含む。キットは、また、側方流動デバイスから信号を読み取り、試験結果を出力するように構成されたリーダデバイスを含み得る。非限定的な一例では、キットは、図5A及び図5Bを参照して本明細書に説明されたような側方流動デバイスを含む。側方流動デバイスは、標識ゾーン内の対象の分析物に特異的な(固有の)標識剤、対象の分析物に特異的な(固有の)捕捉剤を含む捕捉ゾーン、及び、捕捉ゾーンの上流で側方流動デバイス上(標識ゾーン内の標識剤などであるがこれに限定されない)に一体化された抗体コンジュゲート特大粒子、を含む。幾つかの実施形態では、側方流動デバイスは、対象の分析物に結合していない標識剤に特異的な制御剤を含む制御ゾーンを更に含み得る。キットは、試験対象の試料を側方流動デバイスの試料リザーバに適用するための操作者への指示を含む、使用説明書を含み得る。当該使用説明書は、側方流動デバイスで発生される光学信号を検出するために、側方流動デバイスをリーダ内に挿入する(培養(成長)時間中または培養(成長)時間の完了後)ように、操作者に指示できる。
【0075】
別の非限定的な例では、キットは、側方流動デバイスと、別個に包装された抗体コンジュゲート特大粒子と、を含む。この例における側方流動デバイスは、従来のサンドイッチ型の側方流動デバイスであり得る。この例における側方流動デバイスは、標識ゾーン内の対象の分析物に特異的な標識剤、対象の分析物に特異的な補足剤を含む捕捉ゾーン、を含んでいるが、側方流動デバイス上に予め一体化された抗体コンジュゲート特大粒子を含んでいない。代わりに、抗体コンジュゲート特大粒子は、キットの側方流動デバイスとは別に包装されている。非限定的な一例では、特大粒子は、別個の包装内において凍結乾燥された形式で提供される。キットは、抗体コンジュゲート特大粒子のパッケージを開放し、抗体コンジュゲート特大粒子を試験対象の試料に添加し、選択的に試料を混合し、抗体コンジュゲート特大粒子が試料中に存在する分析物に結合するように選択的に試料が培養することを許容し、その後に抗体コンジュゲート特大粒子を含む試料を側方流動デバイスに適用する、ための操作者への指示を含む、使用説明書を含み得る。当該使用説明書は、側方流動デバイスで発生される光学信号を検出するために、側方流動デバイスをリーダ内に挿入する(培養(成長)時間中または培養(成長)時間の完了後)ように、操作者に指示できる。
【0076】
[高濃度で試料中に存在する分析物を正確に定量化するための例示的な側方流動アッセイ方法]
本開示の実施形態は、高濃度で試料中に存在する分析物を定量化する方法を含む。例示的な方法では、当該方法は、本開示による側方流動デバイスを提供することから始まる。側方流動デバイスは、標識剤と、試料の適用前に側方流動デバイス上に一体化された抗体コンジュゲート特大粒子と、を含む。次に、試験対象の試料が、試料リザーバにおいて側方流動アッセイに適用される。試料の試料リザーバへの適用に続いて、抗体コンジュゲート特大粒子は、試料中に存在する分析物(存在する場合)に結合するが、分析物に結合することについて標識剤と競合する。抗体コンジュゲート特大粒子によって結合されない試料中の分析物は、標識剤と結合して、標識-剤-分析物の複合体を形成する。次に、標識-剤-分析物の複合体が捕捉ゾーンにまで流れ、捕捉剤によって結合される。一方、抗体コンジュゲート特大粒子によって結合された分析物は、標識ゾーン(または最初に一体化された試験ストリップ上の他の場所)内に残る。当該方法は次の工程に続き、そこで、標識-剤-分析物の複合体が捕捉ゾーンで検出可能な信号を発する。次に、当該検出可能な信号が、人間の観察またはリーダデバイスによって、読み取られる。検出される信号は、試料中の分析物の存在、不在、または濃度と相関され得る。一例において、分析物の濃度は、検出可能な信号の強度を、側方流動デバイス並びに当該側方流動デバイス上に予め一体化された抗体コンジュゲート特大粒子の既知の量及び結合能力に特有の用量応答曲線と比較することにより、実験的に決定される。
【0077】
別の例示的な方法では、当該方法は、従来の側方流動デバイス(図1A及び図1Bを参照して前述されたものなど)及び既知の結合能力を有する別個にパッケージ化された既知量の抗体コンジュゲート特大粒子を提供することから始まる。当該方法は、抗体コンジュゲート特大粒子を試験対象の試料に添加することによって(あるいは、試験対象の試料を抗体コンジュゲート特大粒子に添加することによって)始まる。選択的に、当該方法は、試料を混合すること、及び/または、混合物が培養することを許容すること、を含み得て、その間、既知量の分析物が混合物中の抗体コンジュゲート特大粒子に結合する。当該方法は、次の工程に続き、そこで、分析物に結合された抗体コンジュゲート特大粒子を含む試料が、試料リザーバにおいて側方流動デバイスに適用される。次に、抗体コンジュゲート特大粒子によって結合されなかった分析物は、標識ゾーンで標識剤に結合し、標識-剤-分析物の複合体を形成する。当該方法は、次の工程に進み、標識-剤-分析物の複合体が捕捉ゾーンに流れ、捕捉剤によって捕捉される。一方、抗体コンジュゲート特大粒子によって結合された分析物は、試料リザーバ内に残り、側方流動デバイスを通って流れない。当該方法は次の工程に続き、そこで、標識-剤-分析物の複合体が捕捉ゾーンで検出可能な信号を発する。次に、当該検出可能な信号が、人間の観察またはリーダデバイスによって、読み取られる。検出される信号は、試料中の分析物の存在、不在、または濃度と相関され得る。一例において、分析物の濃度は、検出可能な信号の強度を、側方流動デバイス並びに別個にパッケージされて最初に試料と混合される抗体コンジュゲート特大粒子の既知の量及び結合能力に特有の用量応答曲線と比較することにより、実験的に決定される。
【0078】
幾つかの実施形態では、側方流動デバイスは、多重アッセイ形式で、単一の試料中または複数の試料中の複数の対象の分析物を決定(判定)するために利用され得る。多重アッセイの幾つかの実施形態は、対象の分析物の特定の亜種の検出を含む。例えば、試料は、対象の分析物の1または複数の亜種を含み得る。対象の分析物の1または複数の特定の亜種を除去するように、最初に試料が薬剤で処理され得て、それにより、対象の分析物の濃度を低下させることができる。例として、試料は、対象の分析物の3つの亜種を含み得る。試料は、対象の分析物の第1亜種を除去するための抗体を含む抗体コンジュゲート特大粒子と予め混合され得る。対象の分析物の第1亜種に結合された抗体コンジュゲート特大粒子が、試料から除去される。試料は、今、対象の分析物の残りの2つの亜種を含むが、側方流動デバイスに適用される。次に、対象の分析物の全ての亜種に結合する一般的な抗体が、標識剤として使用されて、対象の分析物の残りの2つの亜種を認識して結合する。
【0079】
以下の非限定的な例は、本明細書に記載される側方流動デバイス、試験システム、及び方法の特徴を示すが、如何なる態様においても本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0080】
[実施例1 高いタンパク質濃度を定量化するための側方流動アッセイの準備]
以下の例は、本明細書に記載されているような、対象の分析物を定量化するための側方流動アッセイの準備について説明する。この非限定的な例において、対象の分析物は、血清試料中に上昇濃度または高濃度で存在するタンパク質、C反応性タンパク質(CRP)、である。
【0081】
CRPは、血漿に含まれるタンパク質である。炎症に反応して、CRPのレベルは上昇(増大)する。従って、CRPは、炎症のスクリーニングに使用され得る炎症マーカーである。対象の血清中のCRPレベルの上昇は、対象における、炎症、ウイルス感染、及び/または細菌感染、と相関され得る。健康な人間の被験者のCRPの正常レベルは、約1μg/mL~約10g/mLの範囲である。穏当な炎症及びウイルス感染中のCRPの濃度は、10~40μg/mLの範囲であり、活性な炎症及び細菌感染中は、40~200μg/mLであり、重度の細菌感染及び火傷の場合には、200μg/mLを上回る。CRPレベルの測定及びグラフ化は、疾患の進行または治療の有効性を判断するのに役立ち得る。
【0082】
この非限定的な例に従って準備されるアッセイは、濃度が健康な人間の被験者のCRPの正常レベル(約1μg/mL~薬10μg/mL)を超えている時でも、血清試料中のCRP(対象の分析物)の正確な濃度を決定するために利用され得る。このアッセイは、標識剤と抗体コンジュゲート特大粒子とを含み、フック効果に関連する欠点を含むサンドイッチ型の側方流動アッセイの幾つかの欠点を回避する。
【0083】
アッセイを準備するために、抗C反応性タンパク質(抗CRP)抗体が、標識化された抗CRP抗体を形成するべく、金ナノ粒子とインキュベート(培養)された。当該標識化された抗体(標識抗体)を含む溶液をエアジェットで噴霧することにより、当該標識化された抗体が、1.8μL/試験ストリップの量でコンジュゲートパッド(標識ゾーン)上に堆積された。コンジュゲートパッドは、複合体をコンジュゲートパッドまで乾燥させるべく加熱された。
【0084】
抗体コンジュゲート特大粒子が、抗CRP抗体を特大粒子に最初にコンジュゲートすることによって調製された。コンジュゲーションのための活性表面N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有する磁性粒子(10μm)が、平衡化緩衝液で洗浄され、磁場を適用することによって当該緩衝液から除去された。200μgの抗CRPが60μLのPBS緩衝液に投入された。当該抗体溶液は、沈降された粒子ペレットに加えられ、室温で1時間混合された。抗体にコンジュゲートされた特大粒子は、磁場の適用により、緩衝液から取り出された。抗体コンジュゲート特大粒子は、クエンチ緩衝液で洗浄され、室温で1時間インキュベート(培養)された。クエンチ緩衝液が除去され、粒子は100μLのPBSに再懸濁され、4℃で保存された。
【0085】
抗体コンジュゲート特大粒子は、後で使用するために、例えば試料を側方流動アッセイに適用する直前に試験対象の当該試料と混合するために、あるいは、試料を適用する前の側方流動アッセイ上に直接配置するために、保存され得る。抗体コンジュゲート特大粒子は、側方流動アッセイの製造中、試料を側方流動アッセイに適用する直前、あるいは、任意の他の適切な時間に、側方流動アッセイに直接適用され得る。試料の適用前に抗体コンジュゲート特大粒子が側方流動アッセイに適用された場合、エアジェットで溶液を噴霧することにより、抗体コンジュゲート特大粒子を含む溶液がコンジュゲートパッド(標識ゾーン)上に堆積された。コンジュゲートパッドは、複合体をコンジュゲートパッドまで乾燥させるべく加熱された。
【0086】
この例では、抗CRP抗体が2mg/mLの量で捕捉ゾーンに堆積された。ヤギ抗マウス抗体が、2mg/mLの量で制御ゾーンに堆積された。
【0087】
[実施例2 側方流動アッセイを用いた高濃度C反応性タンパク質の定量化]
フック効果により、図1A及び図1Bを参照して前述されたようなサンドイッチ型の側方流動アッセイは、一般には、CRPが試料中に高レベルで存在する時、CRPの濃度を定量化するのに適していない。高濃度を測定することは、従前は、試料の連続希釈を必要とし、非効率で、操作者のエラーに曝されやすい面倒な処理であった。しかしながら、本明細書で説明される側方流動デバイス、キット、試験システム、及び方法を使用すると、健康レベルを超えるCRPの濃度が、正確に、信頼性を伴って、迅速に定量化され得る。
【0088】
試験ストリップ上に予め一体化された抗体コンジュゲート特大粒子を含まない、実施例1に説明された側方流動アッセイが、以下の実施例で使用された。貯蔵緩衝液中に、抗体がコンジュゲートされた抗体コンジュゲート特大粒子が準備された。CRP試料は、0、0.1、0.5、1、5、20、40、100、150μg/mLを含む、異なる濃度で準備(調製)された。次に、20μLの抗体コンジュゲート特大粒子がチューブ内に投入され、磁場を適用して貯蔵緩衝液が除去された。40μLのCRP溶液が、抗体コンジュゲート特大粒子ペレットを含むチューブ(各CRP試料毎に個別のチューブ)に添加され、約30秒間の攪拌によって当該溶液が混合された。各チューブからの試料が、従来のサンドイッチ型の側方流動デバイスの試料リザーバに適用され、約2分で試験結果が読み取られた。
【0089】
抗体コンジュゲート特大粒子で処理されなかった試料が、前述の濃度で同様に準備(調製)された。従来のサンドイッチ型の側方流動デバイスの試料リザーバに各試料40μLが適用され、約10分で試験結果が読み取られた。
【0090】
本開示の有利な特徴に従って、CRPに結合するために使用される抗体コンジュゲート特大粒子の量が、捕捉ゾーンで最適な範囲の信号を提供するために必要な量のCRPに結合することを保証するべく、慎重に検討された。これは、試験システムにおける単一の上昇段階の用量応答を許容して、CRPの高レベルの定量化を可能にした。抗体コンジュゲート特大粒子の量が不十分(または特大粒子にコンジュゲートされた抗CRPが不十分)であれば、用量応答曲線の急峻な上昇段階がもたらされ、CRP濃度を決定するための分解能が不十分になり得る。抗体コンジュゲート特大粒子が余剰(または特大粒子にコンジュゲートされた抗CRPが余剰)であれば、当該抗体コンジュゲート特大粒子が飽和されるまで、信号強度は無いかまたは低く、当該飽和の時点で信号強度が増大する。これは、分析物濃度のより低い範囲での分析物の濃度の決定を困難にする。従って、試料に添加されるまたは側方流動デバイス上に予め堆積される抗体コンジュゲート特大粒子の量は、分析物の異なる濃度範囲の要件に対応するべく、有利であるように変更され得る。
【0091】
試料の適用前に捕捉ゾーンの上流の適切な場所に堆積された抗体コンジュゲート特大粒子を含む側方流動アッセイも、同様に使用され得る。このような場合、試料は、抗体コンジュゲート特大粒子との混合またはプレインキュベーションを必要としないで、代わりに、当該側方流動アッセイの表面上に予め一体化された抗体コンジュゲート特大粒子を含む側方流動アッセイに直接適用される。
【0092】
実施例2の結果が、図7に示されている。図7は、抗体コンジュゲート特大粒子を有する側方流動アッセイ(正方形のデータ点の線)と抗体コンジュゲート特大粒子を有しない側方流動アッセイ(従来のサンドイッチ型の側方流動アッセイ、円のデータ点の線)との、結果として得られた用量応答曲線を示している。試験結果は、表1にも記載される。

[表1 従来のサンドイッチ型の側方流動アッセイと本開示の側方流動アッセイの比較]
【0093】
表1に示されるように、抗体コンジュゲート特大粒子を含まない試料の信号強度は、0~5μg/mLの濃度で急激に増大する。5μg/mLを超えた量において濃度が増大すると、信号が減少する。更に、0.1μg/mL(33.14AU)で観察される信号は、100μg/mL(31.55)で観察される信号と類似している。従って、約31~33AUの信号強度に帰結する試料が得られる場合、その信号が健康な量(約0.1μg/mL)のCRPに対応するのか、不健康な量(100μg/mL)のCRPに対応するのか、不明である。
【0094】
対照的に、本開示による側方流動アッセイは、CRPの濃度が5μg/mLを超える濃度で正確に決定されることを許容する。これは、対象の分析物がCRPである本実施例において、特に有利である。CRPは、炎症または疾患状態が存在する時、10μg/mLを超える濃度に上昇する。抗体コンジュゲート特大粒子を含まないサンドイッチ型の側方流動アッセイは、5μg/mLを超えるCRPの濃度を測定できないが、これとは対照的に、抗体コンジュゲート特大粒子を有する側方流動アッセイは、CRP濃度を正確に定量化するための十分な分解能を伴う単一上昇段階の用量反応曲線を提供することによって、濃度の正確な決定を許容する。本明細書に記載される側方流動アッセイの実施形態により、ユーザは、試験対象におけるCRPの濃度が正常レベルを超えていることを、自信を持って決定できる。本開示による試験が行われ、健康レベルよりも高い(例えば、10μg/mLよりも高い)CRPの濃度を示す場合、この情報は、炎症、ウイルス感染、及び/または細菌感染、に相関(関連付け)され得る。
【0095】
更に、試験対象におけるCRPの正確な濃度を正確に特定する能力は、試験結果が特定のタイプの疾患状態に相関(関連付け)されることを許容し得る。例えば、10μg/mL~20μg/mLの濃度は、軽度の炎症に相関され得て、40μgmL~200μg/mLの濃度は、細菌感染と相関され得る。更に、試験対象におけるCRPの正確な濃度を正確に特定する能力は、試験結果が疾患のステージに相関(関連付け)されることを許容し得る。例えば、40μg/mL~200μg/mLの間の濃度は、軽度の細菌感染に相関され得て、200μgmLを超える濃度は、重度の細菌感染に相関され得る。これらの例は、例示であり、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0096】
更に、本明細書に記載される側方流動デバイスは、試料を希釈する必要なしに、単一のアッセイで、試料中の分析物の上昇した濃度を定量化する。対照的に、図1A図1B図3A及び図3Bを参照して説明されたようなアッセイは、高濃度の分析物を含む試料の希釈を必要とする。そうでなければ、用量応答曲線の高濃度部分の信号は、区別できない。本開示の側方流動アッセイは、1回の試験後に捕捉ゾーンで得られる単一の信号に基づいて、上昇した分析物濃度の僅かな相違さえも、判定(決定)することができる。
【0097】
正確に試験され得る濃度の範囲を拡大するために、本明細書における側方流動デバイス(特大粒子を含む)の実施形態は、従来のサンドイッチ型の側方流動デバイス(特大粒子を含まない)と有利に組み合わされ得る。図7に示されるように、本明細書に記載される側方流動デバイスの幾つかの実施形態では、非常に低濃度の分析物での信号の分解能が低くなる場合がある。対象の分析物の濃度が非常に低い場合、特大粒子を含む側方流動デバイスは、依然として対象の分析物の存在または不在を示し得るが、非常に低い濃度の分析物の最適な定量的測定を提供しない場合がある。対象の分析物の未知の濃度が広範囲の濃度にわたる場合、試料が2つの部分に分けられ得る。第1の試料部分が、特大粒子と混合され、第1の側方流動デバイスに適用され得る(または本明細書に記載されたような一体化された特大粒子を有する第1の側方流動デバイスに適用され得る)。第2の試料部分は、(特大粒子を有しない)第2の従来の側方流動デバイスに適用され得る。第1の側方流動デバイスの試験結果と第2の側方流動デバイスの試験結果とを組み合わせることで、操作者は、非常に広い範囲の可能性ある濃度にわたって、対象の分析物の実際の濃度を非常に正確に測定できる。
【0098】
[本開示による側方流動アッセイを使用して状態を診断する方法]
本明細書で提供される幾つかの実施形態は、医学的状態を診断するために側方流動アッセイを使用する方法に関する。幾つかの実施形態において、当該方法は、本明細書に記載されるように、側方流動アッセイ及び抗体コンジュゲート特大粒子(別個に包装されるか、または、側方流動アッセイ上に予め一体化される)を提供する工程を備える。幾つかの実施形態では、当該方法は、側方流動アッセイの試料リザーバで試料を受容する工程を備える。
【0099】
幾つかの実施形態では、試料は、環境的または生物学的供給源を含む供給源から取得される。幾つかの実施形態では、試料は、対象の分析物を有することが疑われる。幾つかの実施形態では、試料は、対象の分析物を有することが疑われていない。幾つかの実施形態では、分析物の不在または存在の検証のために、試料が取得されて分析される。幾つかの実施形態では、試料中の分析物の量のために、試料が取得されて分析される。幾つかの実施形態では、試料中の分析物の量は、健康な対象に存在する正常値よりも少ないか、健康な対象に存在する正常値の付近であるか、または、健康な対象に存在する正常値よりも多い。
【0100】
幾つかの実施形態では、側方流動アッセイの試料リザーバで試料を受容する工程は、試料を側方流動アッセイと接触させる工程を含む。試料は、スポイト(ドロッパ)または他のアプリケータを伴うような外部アプリケーションによって試料を試料リザーバに導入することにより、側方流動アッセイと接触し得る。幾つかの実施形態では、例えば試験ストリップが試料を保持する容器内に浸される時など、試料リザーバが試料内に直接浸漬されてもよい。幾つかの実施形態では、試料は、注がれ、滴下され、噴霧され、載置され、または他の態様で、試料リザーバに接触され得る。
【0101】
本開示の実施形態においては、標識剤が、抗体及び標識を含み、試料リザーバ内または試料リザーバの下流のコンジュゲートパッド(または標識ゾーン)上に堆積され得る。標識剤は、物理的または化学的結合によってコンジュゲートパッド上に一体化(統合)され得る。結合粒子はまた、物理的または化学的結合によってコンジュゲートパッド上に一体化(統合)されてもよく、あるいは、側方流動デバイスに試料を適用する前に試料に添加されてもよい。抗体コンジュゲート特大粒子が、試料中の分析物を認識して結合し、分析物-抗体-特大粒子の複合体を形成する(抗体コンジュゲート特大粒子が最初に試料に添加されるか、抗体コンジュゲート特大粒子が一体化された側方流動アッセイに試料が添加されるか、に関わらない)。試料が試料リザーバに添加された後、試料は標識剤を可溶化し、標識剤をコンジュゲートパッドに保持している結合を解放する。標識剤は、抗体コンジュゲート特大粒子によって結合されていない分析物を認識して結合し、標識-剤-分析物の複合体を形成する。最初に抗体コンジュゲート特大粒子が堆積された場所(試料の試験ストリップへの適用によって、あるいは、試料の適用前の試験ストリップの表面上への直接的な統合中)に分析物-抗体-特大粒子の複合体が留まるのに対し、標識-剤-分析物の複合体を含む試料は、側方流動アッセイを通って流体フロントに沿って捕捉ゾーンにまで流れる。
【0102】
捕捉ゾーンにおいて固定化された捕捉剤は、標識-剤-分析物の複合体に結合する。標識-剤-分析物の複合体が捕捉ゾーンで捕捉剤に結合する時、標識から検出可能な信号が発せられる。当該信号は、本明細書で説明されるような光学信号を含み得る。試料中に低濃度の分析物が存在する時(例えば健康レベル以下のレベル)、抗体コンジュゲート特大粒子は、試料中の分析物の全てまたは実質的に全てに結合し、捕捉ゾーンで信号は検出されない。分析物の濃度が高くなると(例えば健康値を超えるレベル)、検出される信号の強度は、試料中の分析物の量に比例した量で増大する。検出される信号と抗体コンジュゲート特大粒子(既知量の結合された分析物を含む)の結合能力とが、対象の分析物のための用量応答曲線上の値と比較されて、試料中の分析物の濃度が決定される。
【0103】
幾つかの実施形態では、分析物は上昇濃度で存在する。分析物の上昇濃度とは、健康レベルを超える分析物の濃度を指し得る。従って、分析物の上昇濃度は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、または、200%、の分析物の濃度を含み得る、あるいは、健康レベルよりも高い分析物の濃度を含み得る。幾つかの実施形態では、対象の分析物は、健康な個体の血清中に約1~約10μg/mLの量で存在するC反応性タンパク質(CRP)を含む。従って、試料中の上昇濃度のCRPは、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または、200μg/mL、あるいはそれ以上、の量を含む。対象の分析物が上昇したとみなされるレベルは、特定の対象の分析物に依存して異なり得る。
【0104】
幾つかの実施形態では、分析物が試料中に上昇濃度で存在すると判定される時、被験者は特定の疾患である診断される。幾つかの実施形態では、CRPの濃度が15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または、200μg/mL、あるいはそれ以上、であると判定される時、感染の診断がなされる。幾つかの実施形態では、濃度が200μg/mLより高い、例えば400~500μg/mLである、との判定は、重度の細菌感染の診断をもたらす。
【0105】
幾つかの実施形態では、試料が本明細書に記載される側方流動デバイス上に載置される時、検出信号が捕捉ゾーンで決定(測定)され、検出された信号は、抗体コンジュゲート特大粒子の結合能力と組み合わさって、試料中の分析物の濃度を決定するために使用される。幾つかの実施形態では、試験システムがある特定の信号強度を決定する時、当該試験システムは試験結果を出力する。試験結果は、試料中の分析物の濃度、及び/または、試験結果が「正常」または「正常レベル内」であるとの言葉のないし記載された指標、あるいは、試験結果が「正常レベル内にない」、「上昇した」、「非常に上昇した」であるとの言葉のないし記載された指標、あるいは、何らかの他の指標、を含み得る。
【0106】
[本開示の追加の実施形態]
本開示の実施形態は、結合剤にコンジュゲートされた特大粒子を参照して説明されてきた。本明細書に記載されるように、特大粒子は、流体試料の適用時に試験ストリップを通って流れる側方流動デバイスの他の構成成分よりも顕著に大きい。例えば、本明細書に記載された特大粒子は、標識剤よりも顕著に大きい。標識剤は、流体試料が試料ウェルに適用される時に標識ゾーンから捕捉ゾーンへと可溶化して移動するサイズ及び寸法である。対照的に、本開示による特大粒子は、流体試料が適用される時の動きに抵抗し、試験ストリップを通る流体の流れにもかかわらず、実質的に同じ位置に留まる。特大粒子の実装は、それらの顕著に大きいサイズに言及して本明細書で説明されているが、試験ストリップを通る動きに抵抗する他の粒子が本開示に従って実装され得る、ということも理解されよう。例えば、慣性粒子が、結合剤にコンジュゲートされ得て、特大粒子に関して本明細書に記載された態様で、側方流動デバイスに適用され得る。第1の非限定的な実施形態において、慣性粒子は、本明細書に記載された標識剤と同じかまたはそれより小さいサイズである。例を挙げて説明すると、磁性粒子が、結合剤にコンジュゲートされ得て、標識剤と同じサイズまたはそれよりもさらに小さいサイズである抗体コンジュゲート磁性慣性粒子を形成し得る。この例では、磁性慣性粒子に磁力を適用することによって、抗体コンジュゲート磁性慣性粒子が捕捉ゾーンの上流の場所に保持され得て、それが流体試料と共に捕捉ゾーンへと下流に向けて移動することを防ぐ。磁力は、試料の適用中、試験ストリップの上方または下方または内部に適用される磁場であり得る。第2の非限定的な実施形態において、慣性粒子は、標識剤よりもサイズが小さいか、ほぼ同じサイズであるか、または、サイズが僅かに大きいが、標識剤よりも顕著に高密度であり得る。例えば、慣性粒子は、標識剤よりも、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または、他の複数倍、の密度であり得る。この顕著に増大した密度の結果として、慣性粒子は、試料が試験ストリップに適用される時、最初の場所から捕捉ゾーンまで試験ストリップを通る動きに抵抗する。
【0107】
増大された密度に加えて、またはその代わりに、他の特徴(例えばコンジュゲートパッドのニトロセルロースファイバーに付着またはフックする表面特徴などであるが、これに限定されない)も、抗体コンジュゲート粒子が試験ストリップを通って移動しないことを保証するのに好適であり得る。抗体コンジュゲート粒子の摩擦係数を増大させる特徴も、実装され得る。従って、特大粒子に関連して本開示を説明する以下の実施形態は、特大粒子に限定されるものではない。
【0108】
更に、本開示に従って、特大の粒子に加えて、またはその代わりに、試料中の分析物の一部が捕捉ゾーンにまで流れないように、試料中の対象の分析物のある量を試料ウェル及び/または標識ゾーン内に保持するための他の構造も、実装され得る。非限定的な一例では、捕捉ゾーンに向かって移動し始めてしまう分析物に結合された特大粒子を捕捉するべく、フィルタが、試料ウェルと捕捉ゾーンとの間の流体流路内(例えば、標識ゾーンまたはその近く)に位置決めされる。フィルタは、サイズ排除フィルタであり得て、流体及び選択されたサイズ以下の粒子は通過できるが、選択されたサイズより大きい粒子は通過できない。フィルタの貫通穴は、分析物に結合された標識剤と液体試料とがフィルタを通過して捕捉ゾーンにまで流れることを許容するが、特大粒子が当該フィルタを通過して流れることを許容しない、というサイズであり得る。これにより、フィルタの上流に対象の分析物(の一部)が保持される。他の実装も好適である。
【0109】
[本開示による側方流動アッセイを含む例示的な試験システム]
本明細書で説明される側方流動分析(アッセイ)試験システムは、側方流動分析(アッセイ)試験デバイス(例えば、限定されないが、試験ストリップ)、当該試験デバイスの全部または一部を受容するように構成されたポートを含むハウジング、光源及び光検出器を含むリーダ、データ分析器、及びそれらの組み合わせ、を含み得る。ハウジングは、プラスチック、金属、または複合材料を含む、多種多様な材料のいずれか1つで作成され得る。ハウジングは、当該診断試験システムの構成要素の保護包囲体(エンクロージャ)を形成する。ハウジングはまた、リーダに対して試験ストリップを機械的に位置合わせするレセプタクルを規定する。当該レセプタクルは、多種多様な異なるタイプの試験ストリップのいずれか1つを受け入れるように設計され得る。幾つかの実施形態では、ハウジングは、ベンチ上、屋外、家庭内、または、家庭用途、商業用途または環境用途の施設内、を含む、様々な環境で側方流動分析(アッセイ)を実施する能力を許容するポータブルデバイスである。
【0110】
リーダは、試験ストリップの捕捉ゾーンの露出領域を光学的に検査するための1または複数のオプトエレクトロニクス構成要素を含み得る。幾つかの実装形態では、リーダは、少なくとも1つの光源と少なくとも1つの光検出器とを含む。幾つかの実施形態では、光源は、半導体発光ダイオードを含み得て、光検出器は、半導体フォトダイオードを含み得る。試験ストリップによって使用されるラベルの性質に応じて、光源は、特定の波長範囲内の光、または特定の偏光状態の光、を発光するように設計され得る。例えば、ラベルが量子ドット等の蛍光ラベルである場合、光源は、ラベルからの蛍光発光を誘発する波長範囲内の光で試験ストリップの捕捉ゾーンの露出領域を照明するように設計され得る。同様に、光検出器は、捕捉ゾーンの露出領域からの光を選択的に捕捉するように設計され得る。例えば、ラベル(標識)が蛍光ラベルである場合、光検出器は、ラベルによって発光される蛍光の波長範囲内の光、または特定の偏光状態の光、を選択的に捕捉するように設計され得る。一方、ラベルが反射タイプのラベルである場合、光検出器は、光源によって発光された光の波長範囲内の光を、選択的に捕捉するように設計され得る。これらの目的のために、光検出器は、捕捉された光の波長範囲または偏光軸を規定する1または複数の光学フィルターを含み得る。ラベルからの信号は、発色基質からの色を検出するために目視観察または分光光度計を利用して、放射線を検出するために125Iの検出のためのガンマカウンターのような放射線カウンターを利用して、あるいは、特定の波長の光の存在下で蛍光を検出するために蛍光光度計を利用して、分析され得る。酵素結合アッセイが使用される場合、分光光度計を使用して、目的の分析物の量の定量分析が実施され得る。本明細書に記載された側方流動アッセイは、必要に応じて、自動化され得てまたはロボットによって実行され得て、複数の試料からの信号が同時に検出され得る。更に、複数の信号が、多重タイプのアッセイで検出され得て、対象の複数の分析物が検出され、識別され、または定量化される。
【0111】
データ分析器は、リーダによって取得される信号測定値を処理する。一般に、データ分析器は、デジタル電子回路や、コンピュータハードウェア、ファームウェアまたはソフトウェアを含む、任意のコンピューティング環境または処理環境に、実装され得る。幾つかの実施形態では、データ分析器は、プロセッサ(例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、またはASIC)及びアナログデジタル変換器を含む。データ分析器は、診断試験システムのハウジング内に組み込まれ得る。他の実施形態では、データ分析器は、有線または無線接続を介して診断試験システムと通信することができる、コンピュータなどの別個のデバイス内に配置される。データ分析器はまた、データ分析のため、または、結果を吟味(レビュー)するために、外部ソースへ無線接続を介して結果を転送するための回路を含み得る。
【0112】
一般に、結果表示器は、アッセイ試験の1または複数の結果を示すための、多種多様な機構の任意の1つを含み得る。幾つかの実装形態では、結果表示器は、例えばアッセイ試験の完了を示すために起動される、1または複数のライト(たとえば、発光ダイオード)を含む。他の実施態様では、結果表示器は、アッセイ試験の結果を提示するための英数字ディスプレイ(例えば、2文字または3文字の発光ダイオードアレイ)を含む。
【0113】
本明細書に記載された試験システムは、リーダ、データ分析器、及び、結果表示器を含む、診断試験システムのアクティブな構成要素に電力を供給する電源を含み得る。電源は、例えば、交換可能なバッテリーまたは再充電可能なバッテリーによって実装され得る。他の実施形態では、診断試験システムは、外部ホストデバイス(例えば、USBケーブルによって接続されたコンピュータ)によって電力供給され得る。
【0114】
[例示的な側方流動デバイスの特徴]
本明細書に記載される側方流動デバイスは、例えば、限定されないが、側方流動デバイス内に存在するイムノクロマトグラフィー試験ストリップなど、の試験ストリップに流体試料が導入される試料リザーバ(試料受容ゾーンとも呼ばれる)を含み得る。一例において、試料は、スポイト(ドロッパ)または他のアプリケータを伴うような外部アプリケーションによって試料リザーバに導入され得る。試料は、試料リザーバに、注がれ得るし、または、絞り出され得る。別の例では、試験ストリップが試料を保持する容器内に浸される時など、試料リザーバが試料内に直接浸漬されてもよい。
【0115】
本明細書に記載される側方流動デバイスは、固体の支持体または基板を含み得る。適切な固体の支持体は、ニトロセルロース、反応トレイのウェルの壁、マルチウェルプレート、試験チューブ、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、膜、及び、微粒子(ラテックス粒子など)、を含むが、これらに限定されない。標識剤によるアクセスを許容するための十分な多孔性と捕捉剤を固定化するための適切な表面親和性とを有する任意の適切な多孔性材料が、本明細書に記載される側方流動デバイスにおいて使用され得る。例えば、ニトロセルロースの多孔質構造は、様々な試薬、例えば捕捉剤、に対して優れた吸収及び吸着特性を有している。ナイロンも、同様の特性を備えており、適している。微孔質構造は、水和状態のゲル構造を有する材料と同様に、有用である。
【0116】
有用な固体の支持体の更なる例は、以下を含む:
天然のポリマー炭水化物、及び、合成的に修飾、架橋または置換されたそれらの誘導体。例えば、寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換及び架橋グアーガム、セルロースエステル、特には硝酸及びカルボン酸を伴うセルロースエステル、混合セルロースエステル、及び、セルロースエーテル;
窒素を含有する天然のポリマー。例えば、架橋ゼラチンまたは就職ゼラチンを含む、タンパク質及び誘導体;
天然の炭化水素ポリマー。例えば、ラテックスやゴムなど;
合成のポリマーであって、適切な多孔質構造を伴って準備(調整)され得るもの。例えばビニルポリマーであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート及びその部分的に加水分解された誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、前記の重縮合物のコポリマー及びターポリマー、を含み、例えばポリエステル、ポリアミド、及び、ポリウレタンやポリエポキシドなどの他のポリマー;
多孔質無機材料。例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリ及びアルカリ土類金属のケイ酸塩、アルミニウム、及び、マグネシウムを含む、アルカリ土類金属及びマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩;
アルミニウムまたはシリコンの酸化物または水和物。例えば、粘土、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲル、またはガラス(これらの材料は、前記のポリマー材料と共にフィルタとして使用され得る);
前記の分類の混合物またはコポリマー。例えば、既存の天然ポリマー上で合成ポリマーの重合を初期化することにより得られるグラフトコポリマー。
【0117】
本明細書に記載される側方流動デバイスは、シートまたはストリップの形態で、ニトロセルロース等の、多孔性の固体の支持体を含み得る。そのようなシートまたはストリップの厚さは、例えば、約0.01~0.5mm、約0.02~0.45mm、約0.05~0.3mm、約0.075~0.25mm、約0.1~0.2mm、または、約0.11~0.15mm、といった広い範囲内で変化し得る。そのようなシートまたはストリップの孔サイズは、同様に、例えば、約0.025~15ミクロン、または、より具体的には約0.1~3ミクロン、といった広い範囲内で変化し得る。もっとも、孔サイズは、固体支持体の選択における制限要因であるとは、意図されていない。固体支持体の流速も、適用可能である場合、例えば、約12.5~90秒/cm(例えば、50~300秒/4cm)、約22.5~62.5秒/cm(例えば、90~250秒/4cm)、約25~62.5秒/cm(例えば、100~250秒/4cm)、約37.5~62.5秒/cm(例えば、150~250秒/4cm)、または約50~62.5秒/cm(例えば、200~250秒/4cm)、といった広い範囲内で変化し得る。本明細書に記載されたデバイスの特定の実施形態では、流速は、約35秒/cm(例えば、140秒/4cm)である。本明細書に記載されたデバイスの他の特定の実施形態では、流速は、約37.5秒/cm(例えば、150秒/4cm)である。
【0118】
固体支持体の表面は、薬剤(例えば、捕捉剤)の支持体への共有結合を引き起こす化学プロセスによって活性化され得る。以下に記載されるように、固体支持体は、コンジュゲートパッドを含み得る。薬剤(例えば、捕捉剤)を固体支持体に固定化するために、限定はしないが、イオン相互作用、疎水性相互作用、共有相互作用などを含む、他の多くの適切な方法が使用され得る。
【0119】
物理的に拘束(制限)されている場合を除いて、固体支持体は、フィルム、シート、ストリップ、プレートなどの、任意の適切な形状で使用され得る。あるいは、それは、紙、ガラス、プラスチックフィルム、繊維などの、適切な不活性担体に、コーティング、接着、またはラミネートされ得る。
【0120】
本明細書に記載される側方流動デバイスは、捕捉剤を含む膜または他のタイプの材料などの、コンジュゲートパッドを含み得る。当該コンジュゲートパッドは、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリアミド、ポリカーボネート、ガラス繊維、膜、ポリエーテルスルホン、再生セルロース(RC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート(例えば、4,4-ヒドロキシ-ジフェニル-2,2’-プロパン)、酸化アルミニウム、混合セルロースエステル(例えば、酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物)、ナイロン(例えば、ポリアミド、ヘキサメチレン-ジアミン、及びナイロン66)、ポリプロピレン、PVDF、高密度ポリエチレン(HDPE)+核剤「ジ安息香酸アルミニウム」(DBS)(例えば、80 u 0.024 HDPE DBS(Porex))、及び、HDPE、であり得る。コンジュゲートパッドの例は、また、Cyclopore(登録商標)(ポリエチレンテレフタレート)、Nucleopore(登録商標)(ポリエチレンテレフタレート)、Membra-Fil(登録商標)(セルロースアセテート(酢酸塩)及びナイトレート(硝酸塩))、Whatman(登録商標)(セルロースアセテート(酢酸塩)及びナイトレート(硝酸塩))、Whatman#12-S(レイヨン)、Anopore(登録商標)(酸化アルミニウム)、Anodisc(登録商標)(酸化アルミニウム)、Sartorius(セルロースアセテート、例えば5μm)、及び、Whatman Standard 17(結合ガラス)、をも含む。
【0121】
本明細書に記載される側方流動デバイスは、試料中に高濃度で存在する対象の分析物に対して非常に敏感である。前述のように、捕捉ゾーンの捕捉剤に結合することについて、試料中の標識化されていない対象の分析物が標識化された化合物と競合するのに十分な量で存在する時、高濃度が存在し、用量応答曲線の負の傾斜部分上(例えば、従来のサンドイッチ型の側方流動アッセイの用量応答曲線の「フック効果」部分上、または、本開示の側方流動アッセイによる用量応答曲線の負の傾斜部分上))での検出信号に帰結する。「感度」とは、正しく識別される実際の陽性の割合(例えば、感染している、潜伏している、または症状がある、と正しく識別されている対象の割合)を指す。感度は、真陽性の数と偽陰性の数との合計で真陽性の数を割った値として計算され得る。
【0122】
本明細書に記載される側方流動デバイスは、多くの異なる種類の試料中の対象の分析物を正確に測定することができる。試料は、生物学的試料や環境試料と同様に、任意のソースから取得される標本ないし培養物を含み得る。生物学的試料は、動物(人間を含む)から入手され得て、流体、固体、組織、及び気体を含む。生物学的試料は、尿、唾液、及び、血漿や血清などの血液製剤、を含む。もっとも、そのような例は、本開示に適用可能な試料のタイプを限定するものとして解釈されるべきではない。
【0123】
幾つかの実施形態では、試料は、環境中の分析物を検出するための環境試料である。幾つかかの実施形態では、試料は、対象からの生物学的試料である。幾つかの実施形態では、生物学的試料は、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液(前立腺液を含む)、カウパー液または射精前液、女性の射精、汗、糞便、髪、涙、嚢胞液、胸膜及び腹膜液、心膜液、リンパ液、糜汁、乳糜、胆汁、間質液、月経、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、便の水、膵液、副鼻腔からの洗浄液、気管支肺吸引液、または他の洗浄液、を含み得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、「分析物」とは、一般に、検出対象の物質を指す。例えば、分析物は、抗原性物質、ハプテン、抗体、及び、それらの組み合わせ、を含み得る。分析物は、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、アミノ酸、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬剤(治療目的で投与されるもの及び非合法目的で投与されるものを含む)、薬剤の中間体または副産物、細菌、ウイルス粒子、及び、前記の物質のいずれかの代謝産物または抗体、を含むが、これらに限定されない。幾つかの分析物の具体例は、フェリチン、クレアチニンキナーゼMB(CK-MB)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ジゴキシン、フェニトイン、フェノバルビトール、カルバマゼピン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、テオフィリン、バルプロ酸、キニジン、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エストラジオール、プロゲステロン、C反応性タンパク質(CRP)、リポカリン、IgE抗体、サイトカイン、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、ビタミンB2ミクログロブリン、インターフェロンガンマ誘発タンパク質10(IP-10)、糖化ヘモグロビン(Gly Hb)、コルチゾール、ジギトキシン、N-アセチルプロカインアミド(NAPA)、プロカインアミド、風疹IgG及び風疹IgMなどの風疹に対する抗体、トキソプラズマ症IgG(Toxo-IgG)やトキソプラズマ症IgM(Toxo-IgM)などのトキソプラズマ症に対する抗体、テストステロン、サリチル酸塩、アセトアミノフェン、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)、抗B型肝炎コア抗原IgG及びIgMなどのB型肝炎コア抗原に対する抗体(抗HBC)、ヒト免疫不全ウイルス1及び2(HIV 1及び2)、ヒトT細胞白血病ウイルス1及び2(HTLV)、B型肝炎e抗原(HBeAg)、B型肝炎e抗原に対する抗体(抗HBe)、インフルエンザウイルス、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チロキシン(T4)、合計トリヨードチロニン(合計T3)、遊離トリヨードチロニン(遊離T3)、癌胎児性抗原(CEA)、リポタンパク質、コレステロール、トリグリセリド、アルファフェトプロテイン(AFP)、を含む。乱用薬剤及び規制薬剤は、アンフェタミン;メタンフェタミン;アモバルビタール、セコバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、バルビタールなどのバルビツール酸塩;リブリウム及びバリウムなどのベンゾジアゼピン;大麻やマリファナなどのカンナビノイド;コカイン;フェンタニル;LSD;メタカロン;ヘロイン、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、メタドン、オキシコドン、オキシモルホン、アヘンなどのアヘン剤;フェンシクリジン;プロポキシフェン、を含むが、これらに限定されない。対象の生物学的または環境的物質の目的で、追加の分析物が含まれ得る。
【0125】
本明細書に記載される側方流動デバイスは、標識(ラベル)を含み得る。標識は、分析物、分析物類似物、検出試薬、あるいは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な結合パートナー、に結合されたまたは結合され得る分子または組成物を含む、多くの異なる形態を取り得る。標識の例は、酵素、コロイド金属粒子(金属ナノ粒子とも呼ばれ、例えば、金、銀、銅、パラジウム、プラチナ、カドミウム、またはそれらの複合物を含む)、着色ラテックス粒子、放射性同位元素、補因子、リガンド、化学発光剤または蛍光剤、タンパク質吸着銀粒子、タンパク質吸着鉄粒子、タンパク質吸着銅粒子、タンパク質吸着セレン粒子、タンパク質吸着硫黄粒子、タンパク質吸着テルル粒子、タンパク質吸着炭素粒子、及び、タンパク質結合色素嚢、を含む。化合物(例えば、検出試薬)の標識への付着は、共有結合、吸着プロセス、キレート等におけるような疎水的及び/または静電的結合、または、これらの結合ないし相互作用の組み合わせ、を介し得る、及び/または、リンク基を伴い得る。
【0126】
「特異的結合パートナー(または結合パートナー)」という用語は、関与する分子の三次元構造に依存する、特異的な非共有相互作用によって相互作用する、一対の分子のメンバーを指す。特異的結合パートナーの典型的な対(ペア)は、抗原/抗体、ハプテン/抗体、ホルモン/受容体、核酸鎖/相補的核酸鎖、基質/酵素、阻害剤/酵素、炭水化物/レクチン、ビオチン/(ストレプト)アビジン、受容体/リガンド、ウイルス/細胞受容体、または、それらの様々な組み合わせ、を含む。
【0127】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」または「抗体」という用語は、特定の抗原に結合するタンパク質を指す。免疫グロブリンは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、及びヒト化抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、を含むが、これらに限定されないで、また、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの分類の免疫グロブリン、及び、分泌型の免疫グロブリン(sIg)を含む。免疫グロブリンは、一般に、2つの同一の重鎖と2つの軽鎖とを含む。もっとも、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、1本鎖抗体も2本鎖抗体も包含する。
【0128】
本明細書に記載される側方流動デバイスは、標識剤を含む。標識剤は、分析物に特異的であり得る。幾つかの実施形態では、標識剤は、標識に対して、コンジュゲートされた、結合された、または関連付けられた、抗体またはそのフラグメントであり得る。
【0129】
本開示による側方流動デバイスは、捕捉剤を含む。捕捉剤は、標識-剤-分析物の複合体を含む分析物に結合可能な固定化剤を含む。捕捉剤は、(i)対象の標識-剤-分析物の複合体、(ii)競合型アッセイ内におけるように、標識-剤-分析物の複合体または結合されていない分析物、または、(iii)間接型アッセイ内におけるように、それ自体が分析物に特異的な、補助的な特異的結合パートナー、にとって特異的な標識化されていない特異的結合パートナーを含む。本明細書で使用される場合、「補助的な特異的結合パートナー」とは、分析物の特異的結合パートナーに結合する特異的結合パートナーである。例えば、補助的な特異的結合パートナーは、別の抗体、例えば、ヤギ抗ヒト抗体、に特異的な抗体を含み得る。本明細書に記載される側方流動デバイスは、捕捉剤が固定化される側方流動デバイスの領域である「捕捉領域」を含み得る。本明細書に記載される側方流動デバイスは、例えば、「一次捕捉領域」、「二次捕捉領域」など、複数の捕捉領域を含み得る。場合によっては、異なる捕捉剤が、一次、二次、及び/または他の捕捉領域に固定化される。複数の捕捉領域は、側方流動基材上で、互いに対して任意の配向を有し得る。例えば、一次捕捉領域は、流体の流れの経路に沿って、二次(または他の)捕捉領域に対して遠位または近位であり得て、逆もまた同様である。あるいは、一次捕捉領域及び二次(または他の)捕捉領域は、流体が両捕捉領域に同時にまたはほぼ同時に接触するように、流体の流れの経路に垂直な軸に沿って整列され得る。
【0130】
本開示による側方流動デバイスは、側方流動デバイスの通常の動作中に捕捉剤の動きが制限されるように固定化される捕捉剤を含む。例えば、固定化された捕捉剤の動きは、流体試料が側方流動デバイスに適用される前後で、制限される。捕捉剤の固定化は、バリアなどの物理的手段、静電相互作用、水素結合、生体親和性、共有(結合)相互作用、または、それらの組み合わせ、によって達成され得る。
【0131】
本開示による側方流動デバイスは、多重アッセイを含み得る。多重アッセイは、複数の異なる対象の分析物が検出され得て、識別され得て、場合によっては定量化され得る、複数のアッセイを含む。例えば、多重アッセイデバイスにおいては、一次、二次、またはそれ以上の捕捉領域が存在し得て、各々が、複数の対象の分析物のうちの1つの対象の分析物に特異的である。
【0132】
本開示による側方流動デバイスは、生物製剤を検出、識別、及び定量化できる。生物製剤は、原核細胞株、真核細胞株、哺乳類細胞株、微生物細胞株、昆虫細胞株、植物細胞株、混合細胞株、天然に存在する細胞株、または、合成的に操作された細胞株、を含み得る生体組織によって生産される化学化合物または生体化学化合物を含む。生物製剤は、タンパク質、多糖類、脂質、核酸などの大きな高分子、並びに、一次代謝産物、二次代謝産物、天然物などの小さな分子、を含み得る。
【0133】
詳細な説明、具体例及びデータは、例示的な実施形態を示しているが、例証として与えられており、本開示の様々な実施形態を限定することは意図されていない。本開示内の様々な変更及び修正が、本明細書に含まれる説明及びデータから当業者に明らかであり、従って、本開示の様々な実施形態の一部とみなされる。
なお、出願時の請求項は、以下の通りである。
[請求項1]
アッセイ試験ストリップであって、
流体試料を受容するように構成された流路と、
前記流路に結合された試料受容ゾーンと、
前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合され、対象の分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む捕捉ゾーンと、
前記対象の分析物に特異的な、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合された標識抗体またはそのフラグメントと、
前記捕捉ゾーンの上流の前記流路における特大粒子と、
を備え、
前記特大粒子は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされて、あるサイズ及び寸法の抗体コンジュゲート特大粒子を形成しており、前記流体試料が当該アッセイ試験ストリップ上に受容される時に前記捕捉ゾーンの上流に留まる
ことを特徴とするアッセイ試験ストリップ。
[請求項2]
前記流路は、対象の分析物を含む流体試料を受容するように構成されており、
前記標識抗体またはそのフラグメントと前記抗体コンジュゲート特大粒子とは、前記対象の分析物に特異的に結合するために競合する
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項3]
前記標識抗体またはそのフラグメントは、前記流体試料が当該アッセイ試験ストリップ上に受容される時、結合された対象の分析物と共に前記流路内を前記捕捉ゾーンまで流れるように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項4]
前記対象の分析物に結合された前記標識抗体は、前記捕捉ゾーンで捕捉され、検出可能な信号を発する
ことを特徴とする請求項3に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項5]
前記流路は、対象の分析物を含むまたは含まない流体試料を受容するように構成されており、
前記抗体コンジュゲート特大粒子は、対象の分析物の既知の量に特異的に結合し、それにより、前記捕捉ゾーンの上流に対象の分析物の既知の量を保持する
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項6]
前記捕捉ゾーンの下流の制御ゾーン
を更に備え、
前記制御ゾーンは、対象の分析物に結合しないで前記捕捉ゾーンを通過して流れる前記標識抗体またはそのフラグメントに特異的に結合する抗体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項7]
前記流体試料が対象の分析物を含まない時、前記標識抗体またはそのフラグメントは、前記制御ゾーンにまで流れ、前記制御ゾーンのみで光学信号を発し、前記流体試料中の前記対象の分析物の不在を示す
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項8]
前記固定化された捕捉剤は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項9]
前記抗体コンジュゲート特大粒子は、当該試験ストリップの表面上に一体化されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項10]
前記特大粒子は、金粒子、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、またはシリコンビーズ、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項11]
前記特大粒子は、直径において約1μm~約15μmである
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項12]
前記流体試料は、血液、血漿、尿、汗、または唾液、の試料からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイテストストリップ。
[請求項13]
前記対象の分析物は、C反応性タンパク質(CRP)を含んでおり、
前記特大粒子にコンジュゲートされた前記抗体またはそのフラグメントは、前記CRPに結合される抗CRP抗体またはそのフラグメントを含んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載のアッセイ試験ストリップ。
[請求項14]
アッセイ試験ストリップを備えたキットであって、
前記アッセイ試験ストリップは、
流体試料を受容するように構成された流路と、
前記流路に結合された試料受容ゾーンと、
前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合され、対象の分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む捕捉ゾーンと、
前記対象の分析物に特異的な、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合された標識抗体またはそのフラグメントと、
を備え、
特大粒子が、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされて、前記標識抗体またはそのフラグメントのサイズの約250倍の抗体コンジュゲート特大粒子を形成している
ことを特徴とするキット。
[請求項15]
請求項1に記載のアッセイ試験ストリップまたは請求項17に記載のキットと、
光源及び検出器を含むリーダと、
データナライザと、
を備えた診断試験システム。
[請求項16]
流体試料中の対象の分析物の濃度を判定する方法であって、
請求項1に記載のアッセイ試験ストリップに前記流体試料を適用する工程と、
前記流体試料中に存在する分析物を前記標識抗体またはそのフラグメントに結合する工程と、
前記液体試料中に存在する分析物を前記抗体コンジュゲート特大粒子に結合する工程と、
前記分析物に結合された前記抗体コンジュゲート特大粒子が前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流れない間に、前記流体試料及び前記分析物に結合された前記標識抗体を前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流す工程と、
前記分析物に結合された前記標識抗体を前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合する工程と、
前記捕捉ゾーン内に固定化された前記分析物に結合された前記標識抗体から信号を検出する工程と、
少なくとも前記検出された信号に基づいて前記分析物の濃度を判定する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
[請求項17]
前記濃度は、前記検出された信号と、前記アッセイ試験ストリップ上の抗体コンジュゲート特大粒子の量と、に基づいて判定される
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
[請求項18]
前記検出された信号は、光学信号、蛍光信号、または磁気信号である
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
[請求項19]
前記対象の分析物が前記流体試料中に存在する、という指示を表示する工程
を更に備えたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
[請求項20]
前記流体試料中の前記対象の分析物の量を表示する工程
を更に備えたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
[請求項21]
前記対象の分析物が高い量で存在する、という指示を表示する工程
を更に備えたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
[請求項22]
流体試料中の対象の分析物の濃度を判定する方法であって、
抗体コンジュゲート特大粒子を形成するべく前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされている特大粒子と前記流体試料を接触させる工程と、
前記流体試料中の対象の分析物を前記抗体コンジュゲート特大粒子に結合させる工程と、
結合後、前記抗体コンジュゲート特大粒子を含んだ前記流体試料をアッセイ試験ストリップに適用する工程と、
を備え、
前記アッセイ試験ストリップは、
流体試料を受容するように構成された流路と、
前記流路に結合された試料受容ゾーンと、
前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合され、対象の分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む捕捉ゾーンと、
前記対象の分析物に特異的な、前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合された標識抗体またはそのフラグメントと、
を有しており、
当該方法は、更に、
前記流体試料及び前記標識抗体を前記流路内で前記捕捉ゾーンにまで流す工程
を備え、
余剰の対象の分析物が前記抗体コンジュゲート特大粒子に結合されないままである場合、当該余剰の対象の分析物は前記標識抗体またはそのフラグメントに結合して、前記流路を通って前記捕捉ゾーンにまで流れ、当該捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合されて信号を発する
ことを特徴とする方法。
[請求項23]
アッセイ試験ストリップを製造する方法であって、
流体試料を受容するように構成された試料受容ゾーンを流路に結合する工程と、
捕捉ゾーンを前記試料受容ゾーンの下流の前記流路に結合する工程と、
標識剤を前記捕捉ゾーンの上流の前記流路に結合する工程と、
前記流路に特大粒子を結合する工程と、
を備え、
前記標識剤は、標識と、前記対象の分析物に特異的に結合する抗体と、を含んでおり、
前記特大粒子は、前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされて抗体コンジュゲート特大粒子を形成している
ことを特徴とする方法。
[請求項24]
前記対象の分析物に特異的な捕捉剤を前記捕捉ゾーン上に固定化する工程
を更に備えたことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項25]
前記標識剤を前記流路に結合する工程は、前記流路内の前記流体試料の存在下で壊れる前記標識剤と前記流路との間の結合を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項26]
前記特大粒子を結合する工程は、前記試料受容ゾーンの表面上に前記特大粒子を含む溶液を噴霧する工程を含む
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項27]
前記特大粒子を結合する工程は、前記試料受容ゾーンと前記捕捉ゾーンとの間の前記アッセイ試験ストリップの表面上に前記特大粒子を含む溶液を噴霧する工程を含む
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項28]
前記特大粒子を結合する工程は、前記特大粒子を含む流体溶液を前記アッセイ試験ストリップの表面上に塗布する工程と、前記流体溶液を乾燥させる工程と、を含む
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項29]
前記特大粒子を結合する工程は、前記特大粒子を前記アッセイ試験ストリップの表面内に一体化する工程を含む
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項30]
前記対象の分析物に特異的な抗体またはそのフラグメントにコンジュゲートされた特大粒子を含む溶液を提供する工程
を更に備えたことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項31]
前記対象の分析物は、C反応性タンパク質(CRP)を含み、
前記標識剤及び前記抗体コンジュゲート特大粒子は、抗CRP抗体または抗CRP抗体のフラグメントを含む抗体を含む
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
[請求項32]
請求項23乃至31のいずれかに記載の方法によって作製されたアッセイ試験ストリップ。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7