(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】酸化防止剤を含む架橋性組成物、並びにメタン形成及び物品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20240311BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240311BHJP
C08K 5/3435 20060101ALI20240311BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20240311BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240311BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20240311BHJP
H01B 9/00 20060101ALI20240311BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K5/17
C08K5/3435
C08K5/3492
C08K5/14
H01B3/44 F
H01B9/00 A
H01B13/00 541
(21)【出願番号】P 2020533078
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2018085551
(87)【国際公開番号】W WO2019121721
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-15
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】エングルンド,ヴィルゴット
(72)【発明者】
【氏名】エーリクソン,ヴィルジニー
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スメドベルグ,アンニカ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139558(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204949(WO,A1)
【文献】特開2015-199930(JP,A)
【文献】特開2015-127402(JP,A)
【文献】特表2013-510915(JP,A)
【文献】特表2008-531795(JP,A)
【文献】特表2001-521264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00、301/00
C08J 3/00-3/28、99/00
H01B 3/16-3/56、9/00-9/06、
13/00-13/016、13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和低密度ポリエチレン(LDPE)、架橋剤、及び1以上の酸化防止剤を含むポリマー組成物であって、該ポリマー組成物が、方法ASTM D6248-98に従い、架橋前に測定された場合に、炭素原子1000個当たりB個のビニル基の総数を有し、B
1≦B(式中、B
1は、0.12である)である、該架橋剤が、ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z
1≦Z≦Z
2(式中、Z
1は0.005であり、且つZ
2は2.0である)である、並びに該1以上の酸化防止剤が、窒素含有酸化防止剤であり、ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきW重量%である量で存在し、W
1≦W≦W
2(式中、W
1は0.005であり、且つW
2は1.0である)であり、
前記1以上の酸化防止剤がヒンダードアミン光安定化剤(HALS)であり、
前記不飽和LDPEが炭素原子1000個当たりP個のビニル基の総数を有し、架橋前に方法ASTM D6248-98に従って測定されたP
1≦P(式中、P
1は0.5である)を有し、
ただし、CAS番号152261-33-1及びCAS番号193098-40-7を有する酸化防止剤は除外される、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
該1以上の酸化防止剤が、下記の式(I)
【化1】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4が、それぞれ独立して、水素原子、C
1~3アルキルであり、R
6が水素原子、C
1~3アルキル、アルコキシ、アルカルコキシ、アルキルアルカノエート、若しくはジアルキルアルカンジオエートであり、又はR
6がC
1~3アルキル、アルコキシ、アルカルコキシ、アルキルアルカノエート、若しくはジアルキルアルカンジオエートを有する基であり、且つR
5が、酸化防止剤の構造の残りの部分である、
に従う少なくとも1つを含み、該酸化防止剤は、該式(I)に従う別のものを含んでいてもよい、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
該1以上の酸化防止剤が、下記の式(Ia)
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4が、それぞれ独立して、水素原子又はメチルであり、R
6が水素原子、C
1~3アルキル、アルコキシ、アルカルコキシ、アルキルアルカノエート、又はジアルキルアルカンジオエートであり、並びにR
5が酸化防止剤の構造の残りの部分である、
に従う少なくとも1つを含み、該酸化防止剤は、該式(Ia)に従う別のものを含んでいてもよい、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
該1以上の酸化防止剤が、下記の式(Ib)
【化3】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチルであり、R
6は水素原子、C
1~3アルキル、アルコキシ、又は-(CH
2)
n3-OCO-(CH
2)
n3-COOR
7、-(CH
2)
n3-COO-(CH
2)
n3-COOR
7、-(CH
2)
n3-OCO-(CH
2)
n3-OCOR
7、若しくは-(CH
2)
n3-COO-(CH
2)
n3-OCOR
7(式中、R
7はC1~3アルキルであり、及び各n3は独立に、2~5である)、且つR
5は酸化防止剤の構造の残りの部分である、
に従う少なくとも1つを含み、該式(Ib)に従う別のものを含んでいてもよい、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
該1以上の酸化防止剤が、下記の式(II)、式(III)、式(IV)、及び式(V)
【化4】
n
1は3以上である、
【化5】
【化6】
n
2が6以上である、及び
【化7】
から選択される1以上を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
B
1が0.45であり及び/又はB≦B
2(式中、B
2が3.0である)であり、及び/又はZ
2が1.6である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
Z
2が1.6である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
Z
2が1.4である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
Z
2が1.2である、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
Z
2が1.0である、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
W
1が0.1であり、且つW
2が0.5である、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
該LDPEが、エチレンモノマーと、少なくとも1の多価不飽和コモノマーと、及び0又は1以上の他のコモノマーとのコポリマーであり、上記ポリマー組成物中に存在するビニル基の前記総数(B)は、上記少なくとも1の多価不飽和コモノマーに由来するビニル基を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
該LDPEが、エチレンモノマーと少なくとも1の多価不飽和コモノマーとのコポリマーであり、該多価不飽和コモノマーが、少なくとも8個の炭素原子を有し、且つ非共役二重結合(そのうちの少なくとも1つが末端にある)の間に少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状炭素鎖から成る、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
該LDPEが、エチレンと1,7-オクタジエンとのコポリマーである、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
B
1が、0.65、0.70、0.75、又は0.80である、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
架橋剤が過酸化物を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
該LDPEが、炭素原子1000個当たりP個のビニル基の総数を有し、P
1≦P(式中、P
1は0.71である)である、請求項1~16のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
該LDPEが、炭素原子1000個当たりP個のビニル基の総数を有し、P≦P
2(式中、P
2は3である)である、請求項1~17のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
P
1≦P≦P
2(式中、P
1は0.5であり且つP
2は3である)である、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
P
1≦P≦P
2(式中、P
1は0.5であり、及びP
2は3である);
W
1≦W≦W
2(式中、W
1は0.005であり、及びW
2は1である);及び
該LDPEが、ISO1133-1:2011に従って、2.16kgの荷重下、190℃において決定されるメルトフローレート(g/10分)
を有し、該メルトフローレートがAであり、A
1≦A≦A
2(式中、A
1は0.15であり、及びA
2は3である)
を同時に満たす、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
P
1≦P≦P
2(式中、P
1は0.71であり、及びP
2は2である);
W
1≦W≦W
2(式中、W
1は0.05であり、及びW
2は0.6である);及び
該LDPEが、ISO1133-1:2011に従って、2.16kgの荷重下、190℃において決定されるメルトフローレート(g/10分)
を有し、該メルトフローレートがAであり、A
1≦A≦A
2(式中、A
1は0.3であり、及びA
2は2.5である)
を同時に満たす、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
P
1≦P≦P(式中、P
1は0.89であり、且つP
2は1.5である);
W
1≦W≦W
2(式中、W
1は0.1であり、且つW
2は0.5である);及び
該LDPEが、ISO1133-1:2011に従って、2.16kgの荷重下、190℃において決定されるメルトフローレート(g/10分)
を有し、該メルトフローレートがAであり、A
1≦A≦A
2(式中、A
1は0.6であり、且つA
2は2.3である)
を同時に満たす、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載のポリマー組成物から得られる1以上の絶縁層を含む物品であって、ケーブルである前記物品。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか1項に記載のポリマー組成物を製造する方法であって、LDPEを架橋剤及び1以上の酸化防止剤とブレンドすることを含む前記方法。
【請求項25】
物品を製造する方法であって、請求項1~22のいずれか1項に記載のポリマー組成物を使用することを含む前記方法。
【請求項26】
該物品がケーブルであり、
a
0)請求項1~22のいずれか1項に記載のポリマー組成物を、任意的に更なる成分と共に、溶融混合すること;
a)工程a
0)から得られた溶融混合物を導電体上に施与して、少なくとも1つのケーブル層を形成すること
の工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該ケーブルが、架橋された電源ケーブルであり、
b)工程a)から得られた少なくとも1のケーブル層を架橋すること
の工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン、架橋剤及び1以上の酸化防止剤を含むポリマー組成物、該ポリマー組成物から得られる1以上の層、例えば1以上の絶縁層、を含む物品(該物品は、ケーブル、例えば電力ケーブル、でありうる)、該ポリマー組成物を製造する方法、及びポリマー組成物の使用を含む、物品を製造する方法に関する。更に、該ポリマー組成物は、種々の最終用途、例えばワイヤー及びケーブル(W&C:wire and cable)用途、特にケーブル用途、例えば電力ケーブル用途、例えば中電圧(MV:medium voltage)、及び例えば高電圧(HV:high voltage)、及び例えば超高電圧(EHV:extra high voltage)ケーブル用途において有用でありうる。更に、該ポリマー組成物は交流(AC:alternating current)用途及び直流(DC:direct current)用途の両方において有用でありうる。
【背景技術】
【0002】
高圧(HP:high pressure)プロセスにおいて製造されるポリエチレンは、ポリマーが高い機械的及び/又は電気的要件を満たさなければならない過酷なポリマー用途において幅広く使用されている。例えばW&C用途、例えば電力ケーブル用途、において、例えば低電圧(LV)において、MV、HV及びEHV用途において、ポリエチレンの及びポリエチレンを含むポリマー組成物の機械的及び電気的特性が、大いなる重要性を有する。
【0003】
例えば、電力ケーブル用途において、特にMV用途において、特にHV及びEHVのケーブル用途において、ポリマー組成物の電気的特性は、大いなる重要性を有する。その上、重要である電気的特性は、ACケーブル用途とDCケーブル用途との間で異なるように、異なるケーブル用途によって相違しうる。
【0004】
更に、ポリマー、例えばポリエチレン、の架橋は、ポリマーの耐熱性及び耐変形性、機械的強度、耐薬品性、及び耐摩耗性の改善に実質的に寄与することがまた知られている。それ故に、架橋ポリマーは、種々の最終用途、例えば言及さえたW&C用途、において幅広く使用されている。
【0005】
その上、ケーブル用途において、導電体は通常、最初に内部半導電層で、その後に絶縁層及び外部半導電層で被覆される。これらの複数の層に対して、1以上の更なる層、例えば1以上のスクリーン層及び/又は1以上の補助的バリア層、例えば1以上の遮水層及び1以上のジャケッティング層、が追加されうる。
【0006】
架橋により達成可能な、本明細書に記載されている利益に起因して、ケーブル用途における絶縁層及び半導電層は典型的に、架橋性ポリマー組成物を使用して作成される。層状に形成されたケーブルの用途で用いられるポリマー組成物は、次に架橋される。
【0007】
その上、低密度ポリエチレン(LDPE:low density polyethylene)を含むそのような架橋性ポリマー組成物は、今日、電力ケーブル用の主要なケーブル絶縁材料において特筆される。
【0008】
架橋は、架橋剤を用いて行われることができ、該架橋剤は分解してフリーラジカルを生成する。そのような架橋剤、例えば過酸化物、は、慣用的に、ケーブルの押出前又は押出中に、ポリマー材料に添加される。上記架橋剤は好ましくは、押出工程の間、安定なままであるべきである。押出工程は好ましくは、架橋剤の初期の分解を最小限にする為に十分低い温度で、しかしポリマー組成物の適切な溶融及び均一化を得る為に十分高い温度で行われるべきである。かなりの量の架橋剤、例えば過酸化物、が、押出機内で既に分解し、これにより時期尚早な架橋を開始し、いわゆる「スコーチ」の形成、すなわち不均質性、表面の不陸、及びおそらくは得られたケーブルの異なる層における変色、を結果として生じる。それ故に、押出中に、架橋剤、すなわちフリーラジカル形成剤、の何らかの有意な分解は回避されるべきである。その代わりに、該架橋剤は理想的には、後続する高められた温度での架橋工程においてのみ分解するべきである。該高められた温度は該架橋剤の分解速度を増加させ、従って架橋速度を増加させ、そして所望の、すなわち目標とする、架橋度が迅速に到達しうる。
【0009】
その上、例えばケーブル内のポリマー組成物が架橋される場合に、架橋剤、例えば過酸化物、の分解はまた更に、架橋中に、過酸化物分解生成物の形成を結果として生じる。該過酸化物分解生成物のうちの幾つかは揮発性であり、例えばケーブルに関連して架橋する為に典型的に使用される過酸化物の幾つかの種類が使用される場合、その主要成分はメタンである。該過酸化物分解生成物は、架橋後、例えばケーブルのポリマー組成物内にほとんど捕捉されたままである。これは、例えば、ケーブル製造方法の観点からの並びに最終ケーブルの品質の観点からの問題を引き起こす。
【0010】
特にMV、HV、及びEHV電力ケーブルは、該ケーブルの設置中、及び最終用途での安全性に役立つように、高品質の層を有さなければならない。設置では例えば、捕捉された分解生成物、例えば可燃性のメタン、が、例えばエンドキャップが除去されたときに発火するのを回避することが重要である。サービスを提供中、架橋工程中にケーブル内に形成された揮発性の過酸化物分解生成物が、気体圧力を発生させ、従って遮蔽部及び接合部における欠陥を引き起こすおそれがある。例えば、ケーブルコアが金属バリアを備えている場合に、該気体状の生成物は、特に接合部及び末端部に圧力を惹起するおそれがあり、それによってシステム障害が生じうる。従って、このような揮発性の過酸化物分解生成物のレベルは、後続するケーブル製造工程が行われる前に、十分低いレベルまで低減される必要がある。
【0011】
揮発性の過酸化物分解生成物の十分に低いレベルは、LDPEを含むポリマー組成物の使用が、設置、例えばケーブルの設置、における使用、且つ付属品、例えばケーブル付属品、と一緒の使用を安全にする。従って、今日、揮発性の過酸化物分解生成物のレベルを低下させる、所謂、脱気工程が、ケーブル製造プロセスにおいて必要である。脱気工程は、時間及びエネルギーを消費し、従ってケーブル製造プロセスにおいてコストが嵩む操作である。脱気は、例えば可燃性メタンの蓄積を回避する為に十分に換気されなければならない大型の加熱されたチャンバーを必要とする。ケーブルコア、すなわち層及び導電体、は典型的に、ケーブルドラム上に巻き取られ、通常は、50~80℃、例えば60~70℃、の範囲の高められた温度において、長時間上記脱気工程内に維持される。必要とされる温度に曝露された場合に、絶縁体の熱膨張及び軟化が生じ、ケーブルの不具合に直結する形成後のケーブル層の望ましくない変形を引き起こすおそれがある。従って、ケーブル重量が大きいHV及びEHVケーブルの脱気は、多くの場合、脱気時間を更に引き延ばす低下された温度で行われる必要がある。従って、最新技術の問題を克服する為の新しい解決策を見つける必要性がある。
【0012】
更に、例えばケーブル中に含まれるポリマー組成物の架橋は、ポリマー組成物及び外ポリマー組成物を含むケーブルの耐熱性及び耐変形性、機械的強度、耐化学性、及び耐摩耗性の改善に実質的に寄与する。
【0013】
この文脈において、エチレンと少なくとも1のモノマー(該モノマーは、多価不飽和化合物であり、且つエチレンと共重合可能である)との不飽和コポリマーを製造する方法に関する米国特許第5539075号明細書を参照されたい。
【0014】
エチレンと1以上の多価不飽和コモノマーとの不飽和LDPEコポリマーを含み、且つ架橋されたポリマーの用途に好適であるポリマー組成物に関する欧州特許第2318210号明細書をまた参照されたい。該ポリマー組成物は、少なくとも2.8g/10分の、2.16kgの荷重下でのメルトフローレート(MFR2)を有し、及び炭素原子1000個当たり少なくとも0.40個の炭素-炭素二重結合の量で炭素-炭素二重結合を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、最新技術の問題を克服する為に、新しい解決策を見つける必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ポリエチレン、架橋剤、及び1以上の酸化防止剤を含むポリマー組成物であって、該ポリマー組成物が、方法ASTM D6248-98に従い、架橋前に測定された場合に、炭素原子1000個当たりB個のビニル基の総数を有し、B1≦B(式中、B1は、0.12である)である、該架橋剤が、ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z1≦Z≦Z2(式中、Z1は0.005であり、且つZ2は2.0である)である、並びに該1以上の酸化防止剤が、窒素含有酸化防止剤であり、ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきW重量%である量で存在し、W1≦W≦W2(式中、W1は0.005であり、且つW2は1.0である)であり、ただし、CAS番号152261-33-1及びCAS番号193098-40-7を有する酸化防止剤は除外される、上記ポリマー組成物に関する。
【0017】
ポリエチレン、架橋剤、及び1以上の窒素含有酸化防止剤である1以上の酸化防止剤を含む、本発明に従うポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、本明細書で定義される、ビニル基の比較的高い総数Bを有し、該ポリマー組成物は、他のポリマー組成物(ただし、少なくとも1の非窒素含有酸化防止剤を含む対応するポリマー組成物である)の架橋に由来するメタン含有量と比較した場合に、低レベルのメタン、すなわち含有量がQQ%(式中、QQは10である)少ないメタン、を形成し、一方保持された良好な架橋レベル(175%未満のホットセット伸び)を一つのポリマー組成物において驚くべきことに併せ持つ。
【0018】
該ポリマー組成物の架橋、及び該ポリマー組成物中の架橋剤の分解は、1以上の酸化防止剤が少なくとも1の窒素含有酸化防止剤を含む別のポリマー組成物が架橋される場合に、それに由来するメタン含有量と比較した場合に、それよりもQQ%(但し、QQは10である)少ないメタン含有量を結果として生じる。メタン含有量は、「決定方法」として実験部分において、本明細書で更に記載されているガスクロマトグラフィー(GC)分析法に従って測定される。
【0019】
更に、上記ビニル基の総数を有し且つ本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤を含む、本発明に従うポリマー組成物は、技術的に望ましいレベルの架橋度を有する安定されたポリマー組成物を供給し、一方、同時に、驚くほど低い比較可能なメタンレベルを示す。これは、ポリマー組成物の特性、例えば炭素原子1000個当たりB個のビニル基、Z重量%の架橋剤、及びW重量%の1以上の窒素含有酸化防止剤、を選択することによって達成される。
【0020】
技術的に望ましいレベルの架橋度は、十分な熱-機械的特性、例えば高められた温度で寸法安定性を維持すること、を保証する。該架橋剤は例えば、当技術分野において周知である過酸化物でありうる。主要成分が典型的にメタンである、形成された揮発性の分解生成物の量は、該ポリマー組成物に添加される架橋剤、例えば過酸化物、の量に直接的に依存する。任意の所与の架橋剤、例えば過酸化物、について、形成された揮発性の分解生成物の量はまた、架橋剤の化学構造に更に依存する。更に、上記のポリマー組成物の特性を選択することによって、該ポリマー組成物の望ましいレベルの架橋度が維持され、そして該ポリマー組成物は、比較的低いメタンレベルを示し、且つ架橋された場合に記憶効果(memory effect)を保持する。上記の比較的低いメタンレベルは、より短い脱気時間を可能にし、又は代替的には、脱気工程を完全に無用なものとし、両方の選択肢は、該ポリマー組成物から得られる1以上の層、例えば絶縁層、を含むケーブルの製造全体にとって非常に有益である。
【0021】
従って、ポリエチレン及び本明細書に記載されている、本発明の1以上の窒素含有酸化防止剤を含むポリマー組成物は、架橋性物品及び架橋された物品、例えばケーブル、例えばそのケーブル層、例えばケーブル絶縁層、の製造において使用されることは、明らかにきわめて有利である。
【0022】
該ポリマー組成物は架橋性であり、且つ架橋性物品、例えばケーブルの1以上の架橋性層、例えばケーブルの1以上の架橋性絶縁層、(層はその後架橋される)を製造するのにきわめて好適である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「架橋性」は、周知の表現であり、且つ該ポリマー組成物が、特にポリマー鎖の間で架橋形成する為に、例えばラジカル形成を介して、架橋されることができることを意味する。
【0024】
該ポリマー組成物は、ポリエチレン、1以上の窒素含有酸化防止剤、及び架橋剤を含む。
【0025】
該ポリエチレンは、項「ポリマー組成物のポリエチレン」において詳細に記載されるだろう。
【0026】
本発明のポリマー組成物に含まれるポリエチレンは、不飽和又は飽和でありうる。
【0027】
該ポリエチレンが飽和している、本発明の更なる実施態様が提供される。
【0028】
表現「1つの実施態様」又は「複数の実施態様」は、本明細書において単独で使用されたとしても、本発明の1つの実施態様又は本発明の複数の実施態様と常に関連することに留意すること。
【0029】
更なる実施態様において、不飽和である該ポリエチレンを含む本発明のポリマー組成物が提供される。
【0030】
本明細書において、該ポリエチレンが「不飽和」であるとは、該ポリエチレンが炭素-炭素二重結合を含むことを意味する。本明細書において、炭素-炭素二重結合とは、不飽和を意味する。該ポリエチレンは、本明細書に記載されている通り、ビニル基、例えばアリル基、を含む。ビニル基は、炭素-炭素二重結合を含む官能基である。語「ビニル基」は、本明細書で使用される場合の、その慣用的な意味、すなわち「-CH=CH2」部分、を指す。更に、該ポリエチレンは、炭素-炭素二重結合をまた含む他の官能基を更に含みうる。炭素-炭素二重結合をまた含む他の官能基は例えば、ビニリデン基及び/又はビニレン基でありうる。該ビニレン基はシス又はトランス配置のいずれかを有する。疑問を避ける為に、ビニリデン基及びビニレン基は、該語が本明細書において使用される場合に、ビニル基でない。
【0031】
上記「炭素原子1000個当たりB個のビニル基の総数」とは、本発明に基づき架橋前に測定されるとき、該ポリマー組成物中に存在する「炭素原子1000個当たりB個のビニル基の総数」を意味する。更に、少なくとも該ポリエチレンは、ビニル基の総数に寄与する上記ビニル基を有する。
【0032】
ポリマー組成物は任意的に、上記ビニル基の総数にやはり寄与する、ビニル基を有する1以上の更なる成分を含みうる。1つの実施態様において、従って、ビニル基含有量は、ポリマー組成物のポリエチレンに限るのではなく、ポリマー組成物全体について測定される。
【0033】
該ビニル基の量を決定する為の方法ASTM D6248-98は、「決定方法」に記載されている。
【0034】
本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様は、架橋前に、方法ASTM D6248-98に従って架橋前に測定された場合に、炭素原子1000個当たりB個のビニル基の総数を有し、B1≦B(式中、B1は0.15である)であるポリマー組成物を開示する。
【0035】
B1が0.20である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0036】
本発明に従う更なる実施態様において、B1が0.25である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0037】
B1が0.30である、該ポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0038】
B1が0.35である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0039】
B1が0.40である、該ポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0040】
B1が0.45である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0041】
B1が、0.45、0.50、0.65、又は0.70である、該ポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0042】
B1が、0.65、0.70、0.75、又は0.80である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0043】
B1が、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、又は0.70である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0044】
B1が、0.75、0.80、0.85、又は0.88である、該ポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0045】
B1が0.88である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0046】
本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様は方法ASTM D6248-98に従って架橋前に測定された場合に、炭素原子1000個当たりB個のビニル基の総数を有し、B1≦B(式中、B1が0.89である)であるポリマー組成物を開示する。
【0047】
B1が0.90である、ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0048】
本発明に従う更なる実施態様において、B1が0.92である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0049】
B1が0.94である、該ポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0050】
B1が0.95である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0051】
B1が1.00である、該ポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0052】
B1が0.95、1.00、1.05、又は1.10である、該ポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0053】
B1が0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、又は1.30である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0054】
B1が1.15、1.20、1.25、又は1.30である、該ポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0055】
B1が1.30である、該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0056】
B≦B2且つB2が3.0である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0057】
B1が0.45であり及び/又はB≦B2(式中、B2が3.0である)である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0058】
B1が0.45であり及び/又はB≦B2(式中、B2は3.0であり及び/又はZ2は1.6である)である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0059】
該ポリマー組成物が、炭素原子1000個当たりB個のビニル基の総数を有し、B1≦B≦B2(式中、B1及びB2それぞれは、B1及びB2に対して本明細書において与えられる任意の数値からそれぞれ選択されうる)である、該ポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0060】
B2が2.5である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0061】
好ましい実施態様において、B1は、0.5、好ましくは0.71、最も好ましくは0.89、である。好ましい実施態様において、B2は3、好ましくは2、最も好ましくは1.5、である。B1及びB2の両方がこれらの範囲、すなわち好ましくはB1≦B≦B2(式中、B1が0.5、好ましくは0.71、最も好ましくは0.89である)であり、且つB2が3、好ましくは2、最も好ましくは1.5、である範囲から同時に選択されるのが好ましい。B1≦B≦B2は、特にB1が0.89であり、且つB2が1.5である。
【0062】
該ポリマー組成物は更に、架橋剤を含む。
【0063】
該架橋剤、例えば過酸化物、は、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づき、Z重量%である量で存在し、Z1≦Z≦Z2(式中、Z1は0.005であり、且つZ2が2.0である)である。
【0064】
更に、該架橋剤、例えば過酸化物、は、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z≦Z2(式中、Z2は1.9であり、Z2は1.8であり、Z2は1.75であり、又はZ2は1.7である)である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0065】
該架橋剤、例えば過酸化物、のなおも1つの実施態様において、Z2は1.9である。
【0066】
該架橋剤、例えば過酸化物、の更なる実施態様において、Z2は1.8である。
【0067】
該架橋剤、例えば過酸化物、のいっそう更なる実施態様において、Z2は1.75である。
【0068】
該架橋剤、例えば過酸化物、のなおも1つの実施態様において、Z2は1.7である。
【0069】
該架橋剤、例えば過酸化物、は、更なる実施態様において、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z1≦Z≦Z2(式中、Z1は0.005であり、及びZ2は1.6である)である。
【0070】
更に、該架橋剤、例えば過酸化物、が、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z≦Z2(式中、Z2は1.5であり、Z2は1.4であり、Z2は1.3であり、又はZ2は1.2である)である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0071】
該架橋剤、例えば過酸化物、のなおも1つの実施態様において、Z2は1.5である。
【0072】
該架橋剤、例えば過酸化物、の更なる実施態様において、Z2は1.4である。
【0073】
該架橋剤、例えば過酸化物、のいっそう更なる実施態様において、Z2は1.3である。
【0074】
該架橋剤、例えば過酸化物、のなおも1つの実施態様において、Z2は1.2である。
【0075】
本発明に従う更なる実施態様において、該架橋剤が、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z1≦Z(式中、Z1は0.01である)である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0076】
本発明の更なる実施態様において、Z1が0.02、0.04、0.06、又は0.08である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0077】
いっそう更に、Z1が、例えば0.1若しくは0.2であり、及び/又はZ2が、例えば1.4若しくは1.3である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0078】
該架橋剤、例えば過酸化物、のなおも1つの実施態様において、Z2は1.2である。
【0079】
本発明の更なる実施態様において、Z2が1.2、1.1、1.0、又は0.95である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0080】
なおも更なる実施態様において、Z2は1.0である。
【0081】
更なる実施態様において、Z2は0.98又は0.96である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.98である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.96である。更なる実施態様において、Z2は、0.94、0.92、又は0.90である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.94である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.92である。更なる実施態様において、Z2は0.90である。
【0082】
更なる実施態様において、Z2は0.88又は0.86である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.88である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.86である。更なる実施態様において、Z2は0.84、0.82、又は0.80である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.84である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.82である。更なる実施態様において、Z2は0.80である。
【0083】
更なる実施態様において、Z2は0.78又は0.76である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.78である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.76である。更なる実施態様において、Z2は0.74、0.72、又は0.70である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.74である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.72である。更なる実施態様において、Z2は0.70である。
【0084】
いっそう更なる実施態様において、Z2は0.68又は0.66である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.68である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.66である。更なる実施態様において、Z2は0.64、0.62、又は0.60である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.64である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.62である。
【0085】
該架橋剤、例えば過酸化物、は、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z≦Z2(式中、Z2は0.60である)である。
【0086】
該架橋剤は、架橋反応を開始することができる、ラジカルの生成が可能な任意の化合物として、本明細書において定義される。例えば、該架橋剤は、-O-O-結合を含む。
【0087】
該架橋剤が、過酸化物、例えば1種の過酸化物、を含む、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0088】
更なる実施態様において、該架橋剤は過酸化物を含む、すなわち架橋剤の分子当たり少なくとも1の過酸化物単位を含む。
【0089】
いっそう更なる実施態様において、該架橋剤は過酸化物を含む。
【0090】
更なる実施態様において、該架橋剤は過酸化物である。
【0091】
いっそう更に、Z1が、例えば0.1若しくは0.2であり、及び/又はZ2が、例えば0.58若しくは0.56である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0092】
更なる実施態様において、Z2は0.58又は0.56である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.58である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.56である。更なる実施態様において、Z2は0.54、0.52、又は0.50である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.54である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.52である。更なる実施態様において、Z2は0.50である。
【0093】
更なる実施態様において、Z2は0.48又は0.46である。なおも更なる実施態様において、Z2は0.48である。いっそう更なる実施態様において、Z2は0.46である。
【0094】
該架橋剤、例えば過酸化物、の量Zが、0.45であるZ2である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0095】
Z2が0.44又は0.42である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0096】
なおも更なる実施態様において、該架橋剤、例えば過酸化物、の量Zは、0.40であるZ2である。
【0097】
Z2が0.38又は0.36である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0098】
Z2が0.38である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0099】
Z2が0.36である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0100】
いっそう更なる実施態様において、該架橋剤、例えば過酸化物、の量Zは、0.35であるZ2である。
【0101】
Z2が0.34、0.32、又は0.30である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0102】
本明細書に記載されている、本発明に従う更なる実施態様において、Z1は0.05である。
【0103】
Z1が0.10である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0104】
Z2が0.15である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0105】
Z2が0.20である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0106】
該架橋剤の非限定的な例は、有機過酸化物、例えばジ-tert-アミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-バレレート、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、又はそれらの任意の混合等を含む。
【0107】
更なる実施態様において、過酸化物である該架橋剤は、例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、又はそれらの任意の混合から選択されうる。
【0108】
なおも更なる実施態様において、該架橋剤は、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert-ブチルクミルペルオキシド、又はそれらの任意の混合のいずれかから選択される過酸化物である。
【0109】
更なる実施態様において、該架橋剤は、ジクミルペルオキシドである過酸化物を含む。
【0110】
なおも更なる実施態様において、該架橋剤は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3である過酸化物を包含する。
【0111】
いっそう更なる実施態様において、該架橋剤は、tert-ブチルクミルペルオキシドである過酸化物を包含する。
【0112】
1つの実施態様において、上記ポリマー組成物は該架橋剤を含む。
【0113】
B≦B2(式中、B2は3.0である)であり、且つZ1≦Z≦Z2(式中、Z1は0.01である)である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0114】
該架橋剤が、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきZ重量%である量で存在し、Z1≦Z≦Z2(式中、Z1及びZ2は、Z1及びZ2それぞれに対して本明細書において与えられる任意の数値からそれぞれ選択されうる)である、本明細書に記載されているポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0115】
更に、本発明に従うポリマー組成物は1以上の酸化防止剤を含み、該1以上の酸化防止剤は、該ポリマー組成物の総量(100重量%)に基づきW重量%である量で存在し、W1≦W≦W2(式中、W1は0.005であり、及びW2は1.0である)である、1以上の窒素含有酸化防止剤であり、ただし、CAS番号152261-33-1及びCAS番号193098-40-7を有する酸化防止剤は除外される。
【0116】
但し書きにより除外されている窒素含有酸化防止剤は、博士論文「The Effect of Crosslinking on Morphology and Electrical Properties in LDPE Intended for Power Cables」 S. Nilsson, 2010, ISBN 978-91-7385-446-7,に開示されている。該博士論文において、「LDPE-A及びLDPE-Bとブレンドされた幾つかの構造的に異なる多くの酸化防止剤が、それらのトリーイング特性(treeing properties)に関して主に評価された」。更に、該博士論文において、AO4及びAO5とそれぞれ呼ばれる、CAS番号152261-33-1及び193098-40-7を有する酸化防止剤が、例えばラジカルの捕捉を介して、ポリマーの光分解(UV分解)を遅延させるヒンダードアミン光安定化タイプ(HALS:hindered amine light stabilizing type)として記載されている。更に、「HALS酸化防止剤」は、「XLPE-A(「XLPE-A」は架橋されたLDPEである)において、AO4及びAO5の過酸化物消費の欠如によって実証される」と記載されている通り、>NH又は>NCH3がニトロキシルラジカル;>NO,に変換されるまでラジカルを除去しない」ということが記載されている。その上、「XLPE-B+AO5」(但し、「XLPE-B」は架橋されたLDPEであり、且つAO5は、「ビニル含有型物質内の架橋機構」に影響を及ぼすことが記載されている)を架橋する為に、より多くのジクミル過酸化物(DCP:dicumyl peroxide)が必要とされることが観測されている。更に、「対応する効果は、XLPE-B+AO4」において区別できなかった。更に、酸化防止剤AO4及びAO5は、該博士論文内で、水及び電気的トリーイングの文脈において更に議論されている。
【0117】
本発明に従う更なる実施態様において、1以上の酸化防止剤がヒンダードアミン光安定化剤(HALS:hindered amine light stabilizers)である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0118】
該1以上の酸化防止剤が、下記の式(I)
【0119】
【0120】
式中、R1、R2、R3、及びR4が、それぞれ独立して、水素原子、C1~3アルキルであり、R6が水素原子、C1~3アルキル、アルコキシ、アルカルコキシ(alkalkoxy)、アルキルアルカノエート、ジアルキルアルカノエート、若しくはジアルキルアルカンジオエート(dialkylalkandioate)であり、又はR6がC1~3アルキル、アルコキシ、アルカルコキシ、アルキルアルカノエート、ジアルキルアルカノエート、若しくはジアルキルアルカンジオエートを有する基であり、且つR5が、酸化防止剤の構造の残りの部分である、
に従う少なくとも1つを含み、該酸化防止剤は、該式(I)に従う別のものを含んでいてもよい、ポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0121】
該1以上の酸化防止剤が、下記の式(Ia)
【0122】
【0123】
式中、R1、R2、R3、及びR4が、それぞれ独立して、水素原子又はメチルであり、R6が水素原子、C1~3アルキル、アルコキシ、アルカルコキシ、アルキルアルカノエート、ジアルキルアルカノエート、又はジアルキルアルカンジオエートであり、且つR5が酸化防止剤の構造の残りの部分である、
に従う少なくとも1つを含み、該酸化防止剤は、該式(Ia)に従う別のものを含んでいてもよい、ポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0124】
ジアルキルアルカンジオエート基(従って、好ましい基R6)は、-(CH2)n3-OCO-(CH2)n3-COOR7、-(CH2)n3-COO-(CH2)n3-COOR7、-(CH2)n3-OCO-(CH2)n3-OCOR7、又は-(CH2)n3-COO-(CH2)n3-OCOR7(式中、R7がC1~3アルキルであり、及び各n3が独立に2~5、好ましくは2、である)を包含する。
【0125】
該1以上の酸化防止剤が、下記の式(Ib)
【0126】
【0127】
式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチルであり、R6は水素原子、C1~3アルキル、アルコキシ、又は-(CH2)n3-OCO-(CH2)n3-COOR7、-(CH2)n3-COO-(CH2)n3-COOR7、-(CH2)n3-OCO-(CH2)n3-OCOR7、若しくは-(CH2)n3-COO-(CH2)n3-OCOR7(式中、R7はC1~3アルキルであり、及び各n3は独立に、2~5、好ましくは2、である)、且つR5は酸化防止剤の構造の残りの部分である、
に従う少なくとも1つを含み、該式(Ib)に従う別のものを含んでいてもよい、ポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0128】
本発明に従う更なる実施態様において、該1以上の酸化防止剤が、下記の式(II)、式(III)、式(IV)、及び式(V)
【0129】
【0130】
好ましくは、式中、n1は3以上、例えば3~100、又は3~50、である、
【0131】
【0132】
【0133】
好ましくは、式中、n2が6以上、例えば6~100又は6~50、である、
【0134】
【0135】
から選択される1以上を含む、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0136】
1以上の該酸化防止剤は、1以上の窒素含有酸化防止剤であって、「N-Hタイプ」、例えばCAS番号71878-19-8を有する1以上の酸化防止剤(SABO(登録商標)STAB UV94)でありうる。
【0137】
更に、1以上の該酸化防止剤は、1以上の窒素含有酸化防止剤であって、「N-CH3タイプ」、例えばCAS番号106990-43-6を有する1以上の酸化防止剤(SABO(登録商標)STAB UV119)でありうる。
【0138】
更に、1以上の該窒素含有酸化防止剤は、「N-Rタイプ」、例えばCAS番号65447-77-0を有する1以上の酸化防止剤(Tinuvin(登録商標)622)、及び/又は「NORタイプ」、例えばCAS番号129757-67-1を有する1以上の酸化防止剤(Tinuvin(登録商標)123)でありうる。
【0139】
本発明に従う1以上の該窒素含有酸化防止剤は、例えばCAS番号71878-19-8を有する1以上の酸化防止剤(SABO(登録商標)STAB UV94)、CAS番号106990-43-6を有する1以上の酸化防止剤(SABO(登録商標)STAB UV119)、CAS番号65447-77-0(Tinuvin(登録商標)622)を有する1以上の酸化防止剤、及び/又はCAS番号129757-67-1(Tinuvin(登録商標)123)を有する1以上の酸化防止剤でありうる。
【0140】
本発明に従う1以上の該窒素含有酸化防止剤は、例えばCAS番号71878-19-8(SABO(登録商標)STAB UV94)を有する1以上の酸化防止剤、CAS番号106990-43-6(SABO(登録商標)STAB UV119)を有する1以上の酸化防止剤、CAS番号65447-77-0(Tinuvin(登録商標)622)を有する1以上の酸化防止剤、CAS番号129757-67-1(Tinuvin(登録商標)123)を有する1以上の酸化防止剤、CAS番号124172-53-8(Uvinul(登録商標)4050H)を有する1以上の酸化防止剤、及び/又はCAS番号192268-64-7(Chimassorb(登録商標)2020)を有する1以上の酸化防止剤でありうる。
【0141】
更なる実施態様において、1以上の該窒素含有酸化防止剤は、CAS番号71878-19-8(SABO(登録商標)STAB UV94)を有する1以上の酸化防止剤、及び/又はCAS番号106990-43-6(SABO(登録商標)STAB UV119)を有する1以上の酸化防止剤でありうる。
【0142】
本発明に従う更なる実施態様において、1以上の該窒素含有酸化防止剤は、CAS番号71878-19-8を有する1以上の酸化防止剤(SABO(登録商標)STAB UV94)である。
【0143】
本発明に従う一実施態様において、W1が0.05、0.07、又は代替的には0.09である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0144】
本発明に従う更なる実施態様において、W1が0.1である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0145】
本発明に従う一実施態様において、W2が、0.9、0.8、0.7、又は代替的には0.6である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0146】
本発明に従う更なる実施態様において、W2が0.6である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0147】
本発明に従う更なる実施態様において、W1が0.1であり、且つW2が0.5である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0148】
好ましい実施態様において、W1は0.005、好ましくは0.05、最も好ましくは0.1、である。好ましい実施態様において、W2は1、好ましくは0.6、最も好ましくは0.5、である。W1及びW2の両方が、これらの範囲、すなわち好ましくはW1≦W≦W2(式中、W1は0.005、好ましくは0.05、最も好ましくは0.1、であり、且つW2は1、好ましくは0.6、最も好ましくは0.5である)である範囲から同時に選択されるのが好ましい。W1≦W≦W2は特に、W1が0.1であり、且つW2が0.5である。
【0149】
MFR2が、架橋前に、ISO1133-1:2011に従って、2.16kgの荷重下、190℃において決定される。
【0150】
本発明に従う更なる実施態様において、本明細書に記載されているポリマー組成物のポリエチレンが、架橋前に、方法ISO1133-1:2011に従って決定される、2.16kgの荷重且つ190℃でのメルトフローレート(MFR2)を有し、該MFR2は、Ag/10分であり且つA≦A2(式中、A2は10である)である。
【0151】
A2が5.0である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0152】
該ポリマー組成物のなおも更なる実施態様において、A2は4.0である。
【0153】
A2が3.0である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様がなおも開示される。
【0154】
なおも更なる実施態様において、A2が2.7である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物が開示される。
【0155】
A2が2.5である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0156】
A2が2.3である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様がなおも開示される。
【0157】
A2が2.0である、本明細書に記載されている、なおも本発明に従う実施態様が開示される。
【0158】
A2が1.7である、本明細書に記載されている、本発明に従う更なる実施態様が開示される。
【0159】
なおも更なる実施態様において、該ポリマー組成物のポリエチレンは、Ag/10分であり且つA1≦A(式中、A1は0.05である)であるメルトフローレートMFR2を有する。
【0160】
該ポリマー組成物のポリエチレンが、Ag/10分であり且つA1≦A≦A2(式中、A1及びA2は、A1及びA2それぞれに対して本明細書において与えられる任意の数値からそれぞれ選択されうるメルトフローレートMFR2を有する)である、該ポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0161】
A1が0.10である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様がなおも開示される。
【0162】
A1が0.15である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0163】
A1が0.20である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0164】
A1が0.25である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様がなおも開示される。
【0165】
A1が0.30である、本明細書に記載されている、本発明に従う更なる実施態様が開示される。
【0166】
A1が0.35である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様が開示される。
【0167】
A1が0.40である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様がなおも開示される。
【0168】
A1が0.45である、本明細書に記載されている、本発明に従う更なる実施態様が開示される。
【0169】
A1が0.50である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様が開示される。
【0170】
A1が0.55である、本明細書に記載されている、本発明に従う更なる実施態様が開示される。
【0171】
A1が0.60である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様が開示される。
【0172】
A1が0.65である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様がなおも開示される。
【0173】
A1が0.70である、本明細書に記載されている、本発明に従う更なる実施態様が開示される。
【0174】
A1が0.75である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様が開示される。
【0175】
A1が0.80である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様がなおも開示される。
【0176】
A1が0.85である、本明細書に記載されている、本発明に従う更なる実施態様が開示される。
【0177】
A1が0.90である、本明細書に記載されている、本発明に従う実施態様が開示される。
【0178】
好ましい実施態様において、A1は0.15、好ましくは0.3、最も好ましくは0.6、である。好ましい実施態様において、A2は3、好ましくは2.5、最も好ましくは2.3、である。A1及びA2の両方が、これらの範囲、すなわち好ましくはA1≦A≦A2(式中、A1は0.15、好ましくは0.3、最も好ましくは0.6、であり、且つA2は3、好ましくは2.5、最も好ましくは2.3、である)である範囲から同時に選択されることが好ましい。A1≦A≦A2は、特にA1が0.6であり、且つA2が2.3である。
【0179】
1つの実施態様において、本発明者等は、上記特性と相対的に低いMFR2とが組み合わされば、本明細書で議論されるような魅力的な特性を有するポリマー組成物をもたらすことを驚くべきことに見出した。
【0180】
上記ポリマー組成物はまた、1以上の更なる添加剤を含みうる。そのような1以上の更なる添加剤は、下記を含む:
1以上の不飽和低分子量化合物、例えば、下記を含む:
該ポリマー組成物内の架橋度及び/又はビニル基の量に寄与することができる、1以上の任意の所定の化合物を含む、本明細書に記載されている1以上の架橋ブースター。
使用される代表的な押出温度で、該ポリマー組成物の押出中にスコーチの形成を低下させる化合物(上記化合物を含めずに押出された同一のポリマー組成物と比較した場合に)として、本明細書において定義される1以上のスコーチ防止剤。該スコーチ防止剤はまた、該ポリマー組成物内のビニル基の量に寄与することができる。
【0181】
1以上の不飽和低分子量化合物、例えば1以上の架橋ブースター及び/又は「1以上の」スコーチ防止剤(SR:scorch retarders)、からの、該ポリマー組成物中のビニル基の量に対する何らかの寄与がまた、方法ASTM D6248-98に従って測定される。
【0182】
該架橋ブースターは、少なくとも2つの不飽和の基を含む化合物、例えば脂肪族若しくは芳香族化合物、エステル、エーテル、アミン、又はケトンであり得、それは少なくとも2つの不飽和の基、例えばシアヌレート、イソシアヌレート、ホスフェート、オルトホルメート、脂肪族若しくは芳香族エーテル、又はベンゼントリカルボン酸のアリルエステル、を含む。エステル、エーテル、アミン、及びケトンの例は、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラ-オキサスピロ[5,5]-ウンデカン(DVS)、トリアリルトリメリテート(TATM)、若しくはN,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(HATATA)、又はそれらの任意の混合からなる一般群から選択される化合物である。該架橋ブースターは、2.0重量%未満、例えば1.5重量%未満、例えば1.0重量%未満、例えば0.75重量%未満、例えば0.5重量%未満のそのような架橋ブースターの量で添加されることができ、且つその下限は、該ポリマー組成物の重量に基づき、例えば少なくとも0.05重量%、例えば少なくとも0.1重量%、である。
【0183】
該スコーチ防止剤(SR)は、例えば芳香族アルファ-メチルアルケニルモノマーの不飽和二量体、例えば2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、置換型又は非置換型ジフェニルエチレン、キノン誘導体、ハイドロキノン誘導体、エステル及びエーテルを有する単官能性ビニル、少なくとも2つ以上の二重結合を有する単環式炭化水素、又はそれらの混合でありうる。例えば、該スコーチ防止剤は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、置換型又は非置換型ジフェニルエチレン、又はそれらの混合から選択されうる。
【0184】
該スコーチ防止剤の量は、該ポリマー組成物の重量に基づき、例えば0.005重量%以上でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は、該ポリマー組成物の重量に基づき、例えば0.01重量%以上、0.03重量%以上、又は0.04重量%以上でありうる。
【0185】
更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、2.0重量%以下、例えば1.5重量%以下、でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.8重量%以下、0.75重量%以下、0.70重量%以下、又は0.60重量%以下でありうる。その上、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.55重量%以下、0.50重量%以下、0.45重量%以下、又は0.40重量%以下でありうる。
【0186】
なおも更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.35重量%以下、例えば0.30重量%以下、でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.25重量%以下、0.20重量%以下、0.15重量%以下、又は0.10重量%以下でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.15重量%以下、又は0.10重量%以下でありうる。
【0187】
その上、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.005~2.0重量%、例えば0.005~1.5重量%、でありうる。更なる例示的な範囲は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.01~0.8重量%、0.03~0.75重量%、0.03~0.70重量%、又は0.04~0.60重量%である。その上、例示的な範囲は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.01~0.60、0.01~0.55、0.01~0.50、0.01~0.45、又は代替的には0.01~0.40重量%、0.03~0.55、又は代替的には0.03~0.50重量%、0.03~0.45、又は代替的には0.03~0.40重量%、又は0.04~0.45、又は代替的には0.40重量%である。
【0188】
更に、該スコーチ防止剤(SR)は例えば、欧州特許第1699882号明細書に記載されている通り、ヒンダードアミン由来の安定な有機フリーラジカル:例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ(TEMPO)のヒドロキシ誘導体、例えば4-ヒドロキシ-TEMPO又はビス-TEMPO(例えば、ビス(l-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート)、及び、例えば、オキソ-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPOのエステル、ポリマー結合型のTEMPO、PROXYL、DOXYL、ジ-tert-ブチルNオキシル、ジメチルジフェニルピロリジン-1-オキシル、又は4-ホスホノキシTEMPOに由来する、少なくとも2つのニトロキシル基を有する多官能分子を含む、グラフト可能で安定な有機フリーラジカルから選択されうる。
【0189】
該グラフト可能で安定な有機フリーラジカルは、欧州特許第1699882号明細書に記載されている通り、該ポリマー組成物の重量に基づき、約0.005重量パーセント以上、例えば約0.01重量パーセント以上、約0.03重量パーセント以上、の量で存在しうる。
【0190】
更に、該グラフト可能で安定な有機フリーラジカルは、欧州特許第1699882号明細書に記載されている通り、該ポリマー組成物の重量に基づき、約20.0重量パーセント以下、例えば約10.0重量パーセント以下、例えば約5.0重量パーセント以下、の量で存在しうる。
【0191】
更に、該グラフト可能で安定な有機フリーラジカルは、欧州特許第1699882号明細書に記載されている通り、該ポリマー組成物の重量に基づき、約0.005重量パーセント~約20.0重量パーセント、例えば15約0.01重量パーセント~約10.0重量パーセント、例えば約0.03重量パーセント~約5.0重量パーセント、の量で存在しうる。
【0192】
その上、そのような1以上の更なる添加剤は、1以上の添加剤、例えば1以上の酸化防止剤、1以上の安定剤、及び/又は1以上の加工助剤、を含む。酸化防止剤として、1以上の立体障害又は半障害フェノール、1以上の芳香族アミン、1以上の立体障害脂肪族アミン、1以上の有機ホスフェート、1以上のチオ化合物、及びこれらの混合が言及されることができる。更なる1以上の添加剤として、1以上の難燃性添加剤、1以上の水トゥリー抑制添加剤(water tree retardant additive)、1以上のアシッドスカベンジャー(acid scavenger)、1以上の充填剤、1以上の顔料、及び1以上の電圧安定化剤が言及されることができる。
【0193】
好適な充填剤及び/又は顔料の例は、TiO2、CaCO3、カーボンブラック(例えば、導電性カーボンブラック又は「UVブラック」、すなわち紫外線を吸収するカーボンブラック)、ハンタイト、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)、及びSiO2を包含する。
【0194】
なおも更なる実施態様において、本発明に従う上記ポリマー組成物は、充填剤及び/又は顔料を更に含む。
【0195】
その上、上記充填剤及び/又は顔料は、例えば0.01~5重量%、例えば0.01~3重量%、又は例えば0.01~2重量%、の量で、本発明に従う上記ポリマー組成物中に含まれうる。
【0196】
上記ポリマー組成物は、1以上の不飽和ポリマー、及び/又は1以上の不飽和ではないポリマーを含む、1以上の更なるポリマー成分を更に含み得、ここで、1以上の該更なるポリマー成分は上記ポリエチレンと異なる。
【0197】
上記ポリマー組成物は、顆粒を含む、任意の形状及びサイズで粉末又はペレットの形態で提供されることができる。ペレットは、例えば上記ポリエチレンの重合の後、慣用的なペレット化機器、例えばペレット化押出機、を使用する周知の様式で製造されることができる。該ポリマー組成物は例えば、ペレットの形態で提供されうる。
【0198】
その上、該ポリマー組成物の架橋中に、該ポリマー組成物中の架橋剤の分解は、少なくとも1の窒素含有酸化防止剤を含む別のポリマー組成物の架橋に由来するメタンの含有量(メタン含有量はGC分析法に従って測定される)と比較される場合に、それよりもQQ%(但し、QQは10である)少ないメタン含有量を結果として生じる。更に、窒素含有酸化防止剤を含むポリマー組成物中の架橋剤の分解は、QQ%少ないメタン含有量をもたらし、一方、同時に、ホットセット決定法に従って測定された場合に、技術的に望ましいレベルの架橋度のポリマー組成物が維持される。GC分析法及びホットセット決定法は更に、本明細書において、実験の部の「決定方法」に記載されている。
【0199】
該「別のポリマー組成物」は、1以上の非窒素含有酸化防止剤を少なくとも含む。1以上の該非窒素含有酸化防止剤の他に、「該別のポリマー組成物」はまた、1以上の窒素含有酸化防止剤を含みうる。更に、該「別のポリマー組成物」は、該「ポリマー組成物」で記載されている通りでありうる。
【0200】
本発明に従う一実施態様において、ポリマー組成物の架橋中に、該架橋剤の分解は、上記「別のポリマー組成物」の架橋に由来するメタンの含有量(メタン含有量は、GC分析法に従って測定される)と比較される場合に、QQ%(但し、QQは10である)少ないメタン含有量を結果として生じる、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0201】
本発明に従う更なる実施態様において、QQが10であり、及び架橋されたポリマー組成物が、ホットセット決定法に従って測定された場合に、175%未満である、20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0202】
ホットセット決定法は更に、本明細書において、実験の部の「決定方法」に記載されている。
【0203】
本発明に従う更なる実施態様において、QQが、15、20、又は25である、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0204】
QQが30である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0205】
QQが、32、34、36、又は代替的には38である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0206】
QQが40である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0207】
QQが41、42、43、44、45、又は代替的には46である、本明細書に記載されている、なおも本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0208】
QQが、47、48、又は代替的には49である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0209】
更に、ホットセット試験法に従って、架橋されたプラーク試料(plaque sample)において測定された場合に、該架橋ポリマー組成物は、200℃で175%未満である、20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する。この方法は更に本明細書において、架橋に関係する部分において且つ実験の部の「決定方法」においてまた記載されている通りである。
【0210】
該ポリマー組成物が架橋されており、且つ架橋されたプラークから得られた試料についてホットセット試験法、すなわちホットセット法、に従って測定された場合に、175%未満である、20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0211】
本発明に従う更なる実施態様において、本明細書に記載されているポリマー組成物は、170%未満である、又は160%未満である、20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する。
【0212】
20N/cm2負荷時の上記ホットセット伸びが150%未満である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様がなおも開示される。
【0213】
20N/cm2負荷時の上記ホットセット伸びが140%未満である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0214】
20N/cm2負荷時の上記ホットセット伸びが130%未満である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0215】
20N/cm2負荷時の上記ホットセット伸びが、120%未満である、又は110%未満である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のいっそう更なる実施態様が開示される。
【0216】
該架橋ポリマー組成物が、100%未満である、20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0217】
該架橋ポリマー組成物が、95%未満である、又は代替的には90%未満である、20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0218】
QQが40であり、且つ架橋されたポリマー組成物が、100%未満である20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の実施態様が開示される。
【0219】
QQが40であり、且つ架橋されたポリマー組成物が、90%未満である20N/cm2負荷時のホットセット伸びを有する、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0220】
ポリマー組成物のポリエチレン
該ポリマー組成物の複数の実施態様において、該ポリエチレンは、本明細書に記載されている通り、炭素原子1000個当たりP個のビニル基の総数を有する、本明細書に記載されている通り、P1≦Pである。
【0221】
該ポリマー組成物の1つの実施態様において、該ポリエチレンは、炭素原子1000個当たりP個のビニル基の総数を有する。
【0222】
本発明に従う更なる実施態様において、P1が0.15である、本明細書に記載されているポリエチレンが開示される。
【0223】
P1が、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、又は0.19である、更なる実施態様が開示される。
【0224】
なおも更なる実施態様において、P1が0.20であるポリエチレンが開示される。
【0225】
本発明に従う更なる実施態様において、P1が0.25である、本明細書に記載されているポリエチレンが開示される。
【0226】
いっそう更なる実施態様において、P1が0.30であるポリエチレンが開示される。
【0227】
なおも更なる実施態様において、P1が0.35であるポリエチレンが開示される。
【0228】
いっそう更なる実施態様において、P1が0.40であるポリエチレンが開示される。
【0229】
なおも更なる実施態様において、P1が0.45であるポリエチレンが開示される。
【0230】
更なる実施態様において、P1が、0.45、0.50、0.65、又は0.70であるポリエチレンが開示される。
【0231】
なおも更なる実施態様において、P1が、0.65、0.70、0.75、又は0.80であるポリエチレンが開示される。
【0232】
なおも更なる実施態様において、P1が、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、又は0.70であるポリエチレンが開示される。
【0233】
P1が、0.75、0.80、0.85、又は0.88である、ポリエチレンのいっそう更なる実施態様が開示される。
【0234】
該ポリマー組成物の更なる実施態様において、該ポリエチレンは、のビニル基の総数Pを有し、但しP1は0.88である。
【0235】
好ましい実施態様において、P1は、0.5、好ましくは0.71、最も好ましくは0.89、である。好ましい実施態様において、P2は3、好ましくは2、最も好ましくは1.5、である。P1及びP2の両方が、これらの範囲、すなわち好ましくはP1≦P≦P2(式中、P1は0.5、好ましくは0.71、最も好ましくは0.89、であり、且つP2は3、好ましくは2、最も好ましくは1.5である)である範囲から同時に選択されるのが好ましい。P1≦P≦P2は、特にP1が0.89であり、且つP2が1.5である。
【0236】
本実施態様において、「ビニル基の量」は、「該ポリエチレン中に存在するビニル基の総数」を意味する。本明細書において、該ポリエチレンは、連鎖移動剤により不飽和が設けられたホモポリマー及びコポリマーの両方を意味し、ここで、該不飽和は、任意的に連鎖移動剤の存在下で、及びまた、任意的に更なるコモノマーとも組み合わせて、モノマーを少なくとも多価不飽和コモノマーと共に重合させることによって提供される。
【0237】
好ましい実施態様において、該ポリマー組成物は、
P1≦P≦P2(式中、P1は0.5であり、且つP2は3である);
W1≦W≦W2(式中、W1は0.005であり、且つW2は1である);及び
A1≦A≦A2(式中、A1は0.15であり、且つA2は3である);
好ましくは
P1≦P≦P2(式中、P1は0.71であり、且つP2は2である);
W1≦W≦W2(式中、W1は0.05であり、且つW2は0.6である);及び
A1≦A≦A2(式中、A1は0.3であり、且つA2は2.5である);
より好ましくは
P1≦P≦P2(式中、P1は0.89であり、且つP2は1.5である);
W1≦W≦W2(式中、W1は0.1であり、且つW2は0.5である);及び
A1≦A≦A2(式中、A1は0.6であり、且つA2は2.3である)
を同時に満たす。
【0238】
好ましい実施態様において、該ポリマー組成物は、
B1≦B≦B2(式中、B1は0.5であり、且つB2は3である)である;
W1≦W≦W2(式中、W1は0.005であり、且つW2は1である)である;並びに
A1≦A≦A2(式中、A1は0.15であり、且つA2は3である)である;
好ましくは
B1≦B≦B2(式中、B1は0.71であり、且つB2は2である)である;
W1≦W≦W2(式中、W1は0.05であり、且つW2は0.6である)である;並びに
A1≦A≦A2(式中、A1は0.3であり、且つA2は2.5である)である;
より好ましくは
B1≦B≦B2(式中、B1は0.89であり、且つB2は1.5である)である;
W1≦W≦W2(式中、W1は0.1であり、且つW2は0.5である)である;並びに
A1≦A≦A2(式中、A1は0.6であり、且つA2は2.3である)である
を同時に満たす。
【0239】
1つの実施態様において、該ポリエチレンは、本明細書に既に記載されている通り、1以上の多価不飽和コモノマーを含む不飽和コポリマーである。更に、該不飽和コポリマー中に存在する上記ビニル基(P)は、該多価不飽和コモノマー、該ポリエチレンを生成する方法、及び任意的に、任意の使用された連鎖移動剤に由来しうる。
【0240】
該ポリマー組成物の該ポリエチレンが、少なくとも1の多価不飽和コモノマーを含む不飽和コポリマーである場合に、該多価不飽和コモノマーは、少なくとも一方が末端部にある非共役二重結合の間に少なくとも8個の炭素原子及び少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状炭素鎖である。
【0241】
該ポリマー組成物の為に好適なポリマー材料に関して、上記ポリエチレンは、例示的なポリマー組成物のポリエチレンについて、本明細書で定義されている、関連する特徴を有する任意のポリマーであることができる。該ポリエチレンは、ポリエチレンのホモポリマー、並びにポリエチレンと1以上のコモノマーとのコポリマーから選択されうる。該ポリエチレンは、分子量分布及び/又はコモノマー分布に関して、単峰性又は多峰性であることができ、それら表現は周知の意味を有する。
【0242】
1つの実施態様において、該ポリエチレンは、エチレンのホモポリマーである。
【0243】
該ポリマー組成物の1つの実施態様において、該ポリマー組成物は、エチレンの単独重合を含むプロセスによって得られる。
【0244】
該ポリマー組成物の例示的な実施態様において、該ポリエチレンは、ポリエチレンと、少なくとも1の多価不飽和コモノマー、及び任意的に、1以上の他のコモノマーとの不飽和コポリマーである。
【0245】
ポリエチレンの上記不飽和コポリマーは、エチレンの不飽和コポリマーである。
【0246】
本発明の1つの実施態様において、ポリエチレンが、モノマーと、少なくとも1の多価不飽和コモノマーと、及び0又は1以上、例えば0、1、2、又は3の他のコモノマーとのコポリマーであり、並びに該ポリマー組成物中に存在するビニル基の上記総数(B)は、上記少なくとも1の多価不飽和コモノマー、例えばジエン、に由来するビニル基を含む、本明細書に記載されているポリマー組成物が開示される。
【0247】
該ポリマー組成物の例示的な実施態様において、該ポリマー組成物は、エチレンの不飽和コポリマーを架橋剤及び1以上の酸化防止剤と共にブレンドする工程を含む方法により得られる。
【0248】
エチレンの上記コポリマーは、連続的な高圧重合プロセスにおいて製造されるLDPEコポリマーであり得、エチレンは、任意的に連鎖移動剤の存在下で、少なくとも1の多価不飽和コモノマー、及び任意的に、1以上の他のコモノマーと共重合化される。
【0249】
ポリエチレン中に存在する任意的な1以上の更なるコモノマー、例えばエチレンのコポリマー、は、「骨格」(backbone)モノマーとは異なり、且つエチレン及び1以上のより高級なアルファ-オレフィン、例えば1以上のC3~C20アルファ-オレフィン、例えば5~12個の炭素の環状アルファ-オレフィン、又は3~12個の炭素原子の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルファ-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ノネン若しくは1-オクテン、から、並びに1以上の極性のコモノマーから選択されうる。
【0250】
1つの実施態様において、直鎖状又は分岐鎖状のアルファ-オレフィンは、3~6個の炭素原子の直鎖状又は分岐鎖状のアルファ-オレフィンである。
【0251】
更なる実施態様において、直鎖状アルファ-オレフィンはプロピレンである。
【0252】
例えば、プロピレンは、コモノマーとして若しくは連鎖移動剤(CTA:chain transfer agent)として、又はその両方として使用されることができ、それによって、それはのビニル基の総数Pに寄与することができることは周知である。本明細書において、ポリエチレン内の共重合可能なCTA、例えばプロピレン、が使用される場合に、共重合されたCTAは、コモノマー含有量に対して計算されない。
【0253】
ポリマー組成物の例示的な実施態様において、該ポリエチレンは、不飽和LDPEポリマー、例えば多価不飽和コモノマーである少なくとも1のコモノマーを含む不飽和LDPEコポリマー(本明細書においてLDPEコポリマーと呼ばれる)、である。
【0254】
更に、上記多価不飽和コモノマーは、ジエン、例えば(1)少なくとも8個の炭素原子を含むジエン、であって、最初の炭素-炭素二重結合が末端にあり、且つ第2の炭素-炭素二重結合が最初の炭素-炭素二重結合と非共役的であるジエン(グループ1のジエン)でありうる。例示的なジエン(1)は、C8~C14の非共役型ジエン又はその混合から選択され得、例えば1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、又はこれらの混合から選択されうる。更なる実施態様において、該ジエン(1)は、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、又はそれらの任意の混合から選択される。
【0255】
該ポリエチレンが、モノマーと少なくとも1の多価不飽和コモノマーとのコポリマーであり、該多価不飽和コモノマーが、少なくとも8個の炭素原子を有し且つ非共役二重結合(そのうちの少なくとも1つが末端にある)の間に少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状炭素鎖を有し、例えばC8~C14の非共役型ジエンであり、例えば1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、又はこれらの混合から選択される、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物の更なる実施態様が開示される。
【0256】
好ましい実施態様において、該ポリエチレンは、エチレンと1,7-オクタジエンとのコポリマーである。
【0257】
該ポリマーが、高圧重合プロセスにおいて製造される不飽和LDPEホモポリマー又はコポリマー、例えばエチレンと、1以上の多価不飽和コモノマーと、及び0又は1以上の他のコモノマーとのLDPEコポリマー、である、本明細書に記載されている、本発明に従うポリマー組成物のなおも更なる実施態様が開示される。
【0258】
本明細書に掲載されているジエン(1)に加えて又はそれに代わりとして、該ジエンはまた、他の種類の多価不飽和ジエン(2)から、例えば下記の式を有する1以上のシロキサン化合物から、選択されうる(グループ(2)ジエン):
CH2=CH-[SiR1R2-O]n-SiR1R2-CH=CH2、
(式中、
n=1~200、及び
R1及びR2は、同一であっても又は異なっていてもよく、C1~C4アルキル基及び/又はC1~C4アルコキシ基より選択される)。
【0259】
更に、R1及び/又はR2は、例えばメチル、メトキシ、又はエトキシでありうる。その上、nは例えば、1~100、例えば1~50、でありうる。例として、ジビニルシロキサン、例えばα,ω-ジビニルシロキサン、が挙げられうる。
【0260】
該ポリエチレンに対する例示的な多価不飽和コモノマーは、本明細書で定義されているグループ(1)に由来するジエンである。該ポリエチレンは例えば、エチレンと、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、又はそれらの任意の混合から選択される少なくとも1のジエン、及び任意的に、1以上の他のコモノマーとのコポリマーでありうる。上記ポリエチレンが本明細書に記載されている不飽和LDPEコポリマーであることがまた例示されている。上記ポリエチレンは、更なるコモノマー、例えば1以上の極性のコモノマー、1以上のアルファ-オレフィンコモノマー、1以上の非極性コモノマー、又はそれらの任意の混合を含みうる。
【0261】
極性コモノマーとして、1以上のヒドロキシル基、1以上のアルコキシ基、1以上のカルボニル基、1以上のカルボキシル基、1以上のエーテル基、若しくは1以上のエステル基、又はこれらの混合を有する1以上の化合物が使用されることができる。
【0262】
更に、非極性コモノマーは、1以上のヒドロキシル基、1以上のアルコキシ基、1以上のカルボニル基、1以上のカルボキシル基、1以上のエーテル基だけでなく、1以上のエステル基をも有しない1以上の化合物である。
【0263】
更なる実施態様において、1以上のカルボキシル基及び/又は1以上のエステル基を有する化合物が使用され、例えば該化合物は、1以上のアクリレート、1以上のメタクリレート、若しくは1以上のアセテート、又はそれらの任意の混合の群から選択される。
【0264】
上記不飽和LDPEコポリマー内に存在する場合、該極性コモノマーは例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、若しくはビニルアセテート、又はこれらの混合の群から選択されうる。更に、上記極性コモノマーは例えば、C1~C6-アルキルアクリレート、C1~C6-アルキルメタクリレート、又はビニルアセテートから選択されうる。なおも更に、上記極性コポリマーは、エチレンとC1~C4-アルキルアクリレート、例えばメチル、エチル、プロピル、若しくはブチルアクリレート、若しくはビニルアセテート、又はそれらの任意の混合とのコポリマーを含む。
【0265】
本明細書に記載されたポリマー組成物のポリエチレンは、プロセス条件を制御及び調整して、重合化されたポリマーのMFR2とビニル基の量との間で所望のバランスを達成する為に、とりわけ慣用的な任意の重合プロセス及び機器、不飽和を提供する為の本明細書に記載されている慣用手段、及びMFR2を調整する為の任意の慣用手段を使用して調製されることができる。該ポリマー組成物の本明細書で定義されている不飽和LDPEポリマー、例えば不飽和LDPEコポリマー、は、フリーラジカル開始重合によって、高圧反応器内で、製造される(高圧ラジカル重合と呼ばれる)。使用可能な高圧(HP:high pressure)重合及びプロセス条件の調整は周知であり、且つ文献に記載されており、且つ本明細書に記載された本発明のバランスを提供する為に、当業者によって容易に使用されることができる。高圧重合は、管形反応器又はオートクレーブ反応器内で、例えば管形反応器内で、行われることが可能である。HPプロセスの1つの実施態様は、本明細書で定義されているLDPEホモポリマー又はコポリマーを得る為に、管形反応器内で、エチレンを、任意的に1以上のコモノマー、例えば少なくとも1以上の多価不飽和コモノマー、と共に重合させることについて、本明細書に記載されている。該プロセスは、他のポリマーに対しても同様に適用されることができる。
【0266】
圧縮
制御された圧力及び温度で多量のエチレンの取り扱いを可能にする為に、エチレンが主にコンプレッサーに供給される。該コンプレッサーは通常、ピストンコンプレッサー又はダイアフラムコンプレッサーである。該コンプレッサーは通常、連続して又は並行して作動することができる一連のコンプレッサーである。2~5の圧縮工程が最も一般的である。リサイクルされたエチレン及びコモノマーは、圧力に依存して実現可能な時点で添加されることができる。温度は典型的に低く、通常、200℃未満又は100℃未満の範囲内である。上記温度は例えば、200℃未満でありうる。
【0267】
管形反応器
混合物が管形反応器に供給される。チューブの最初の部分は、供給されるエチレンの温度を調整する為のものである;通常、温度は150~170℃である。次に、ラジカル開始剤が添加される。該ラジカル開始剤として、高められた温度でラジカルに分解する任意の化合物又はその混合物が使用されることができる。使用可能なラジカル開始剤は市販されている。該重合反応は発熱性である。分離した注入ポンプを通常は備える、幾つかのラジカル開始剤注入の時点、例えば1~5の時点、が存在することができる。周知の通り、エチレン及び任意的な1以上のコモノマーがまた、該プロセス中に、任意の時期で、該管形反応器の任意のゾーンで、及び/又は1以上の注入ポイントから、添加されることができる。該反応器は、例えば水又は水蒸気によって、連続的に冷却される。最高温度はピーク温度と呼ばれ、且つ最低温度はラジカル開始剤温度と呼ばれる。本明細書において、「最低温度」は反応開始温度を意味し、それは開始温度と呼ばれ、該開始温度は、当業者にとって明らかなとおり「より低い」。
【0268】
好適な温度は、80~350℃の範囲、及び圧力は100~400MPaの範囲である。圧力は、少なくとも圧縮段階において、及びチューブの後に測定されることができる。温度は、全ての工程中に幾つかの時点で測定されることができる。高温及び高圧力は、一般的にアウトプットを増加させる。当業者によって選択される様々な温度プロファイルを使用することは、ポリマー鎖の構造、すなわち長鎖分岐化及び/又は短鎖分岐化、密度、MFR、粘度、分子量分布等の制御を可能にする。
【0269】
該反応器の末端部は慣用的に、バルブを備えている。該バルブは、反応器圧力を制御し、且つ反応混合物を反応圧力から分離圧力まで減圧する。
【0270】
分離
圧力は典型的に、約10~45MPa、例えば約30~45MPa、まで減圧される。該ポリマーは、未反応生成物、例えばガス状生成物、例えばモノマー又は任意の1以上のコモノマー、から分離され、そしてほとんどの未反応生成物は回収される。通常、低分子化合物、すなわちワックス、は、ガスから除去される。未使用のガス状生成物、例えばエチレン、を回収及びリサイクルする為に、圧力が更に減圧されることができる。該ガスは通常冷却され、そしてリサイクルの前に洗浄される。
【0271】
次に、得られたポリマー溶融物は通常、混合され、そしてペレット化される。任意的に、又は幾つかの実施態様において、添加剤がミキサー内に添加されることができる。高圧ラジカル重合によるエチレン(co)ポリマーの製造に関する更なる詳細情報が、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.6(1986年),pp383-410に見出されることができる。
【0272】
該ポリエチレン、例えばLDPEコポリマー、のMFR2は、重合中に、例えば1以上の連鎖移動剤を使用することによって、及び/又は反応温度若しくは圧力を調整することによって調節されることができる。
【0273】
本発明のLDPEコポリマーが調製される場合、周知の通り、ビニル基の量は、LDPEコポリマーにとって望ましい炭素-炭素二重結合の性質及び量に依存して、エチレン(C2)と多価不飽和コモノマー及び/又は連鎖移動剤との間の所望の供給比を使用して、例えば1以上の多価不飽和コモノマー、1以上の連鎖移動剤、又はその両方の存在下でエチレンを重合させることによって調節されることができる。とりわけ、国際公開第9308222号パンフレットは、エチレンコポリマーの不飽和を増加させる為に、エチレンと多価不飽和モノマー、例えばα,ω-アルカジエン、との高圧ラジカル重合を記載する。従って、1以上の未反応の二重結合は、多価不飽和コモノマーが重合によって取り込まれた部位で、形成されたポリマー鎖にペンダントビニル基を提供する。その結果、不飽和は、ポリマー鎖に沿って、ランダムな共重合様式において一様に分布されることができる。また、例えば、国際公開第9635732号パンフレットはまた、エチレンの高圧ラジカル重合及び特定の種類の多価不飽和α,ω-ジビニルシロキサンを記載する。その上、既知である通り、例えばプロピレンが、二重結合を提供する為に連鎖移動剤として使用されることができ、それによってプロピレンがまた、エチレンと部分的に共重合化されることができる。
【0274】
代替的な不飽和LDPEホモポリマーが、不飽和LDPEコポリマーについて本明細書に記載されているプロセス条件と同様の条件で製造されうる(但し、エチレンは連鎖移動剤の存在下でのみ重合化される点を除く)。
【0275】
1つの例示的なポリエチレン、例えば本発明のLDPEコポリマーのポリエチレン、は、ISO1183-1方法A:2012に従って、ポリエチレンにおいて測定された場合に、例えば0.860g/cm3より高い、0.870より高い、0.880より高い、0.885より高い、0.890より高い、0.895より高い、0.900より高い、0.905より高い、0.910より高い、又は0.915g/cm3より高い、密度を有しうる。
【0276】
本発明の別の例示的なポリエチレン、例えばLDPEコポリマーのポリエチレン、は、ISO1183-1方法A:2012に従って、ポリエチレンにおいて測定された場合に、最大0.960g/cm3、0.955未満、0.950未満、0.945未満、0.940未満、0.935未満、又は0.930g/cm3未満、の密度を有しうる。
【0277】
更なる実施態様において、密度範囲は、ISO1183-1方法A:2012に従って、ポリエチレンにおいて測定された場合に、0.915~0.930g/cm3である。
【0278】
更に、該ポリマー組成物の上記不飽和コポリマー、例えばLDPEコポリマー、は、ポリエチレンの量に基づき、最大45重量%、例えば0.05~25重量%、又は例えば0.1~15重量%の総数で1以上のコモノマーを含む。
【0279】
該ポリマー組成物の例示的なポリエチレンは架橋性である。
【0280】
例示的な実施態様において、該ポリマー組成物は、少なくとも1のポリエチレンから構成される。該ポリマー組成物は、担体ポリマーを含む混合物、すなわち所謂マスターバッチ、に添加されうる更なる成分、例えば本明細書に記載された添加剤、を含みうる。
【0281】
更なる実施態様において、該ポリマー組成物は、架橋剤と共に、及び0、1、2、3、4、5、6以上の添加剤と共に、本明細書に記載されているポリエチレンを含み、ここで、該ポリマー組成物はペレットの形態である。
【0282】
本発明の更なる実施態様は、本明細書に記載されているポリマー組成物を製造する方法であって、該ポリエチレンを該架橋剤及び1以上の酸化防止剤とブレンドする工程を含む上記方法を開示する。
【0283】
最終用途
本発明の実施態様は、本明細書に記載されているポリマー組成物の使用を含む方法から得られる物品であって、例えばケーブル、例えば電力ケーブル、である上記物品を提供する。
【0284】
本発明の更なる実施態様は、本明細書に記載されているポリマー組成物の使用を含む方法から得られる物品を提供する。
【0285】
本発明のなおも更なる実施態様は、本明細書に記載されているポリマー組成物から得られる1以上の層、例えば1以上の絶縁層、を含む物品であって、例えばケーブル、例えば電力ケーブル、である上記物品を提供する。
【0286】
本発明の1つの実施態様において、物品、例えばケーブル、であって、該ケーブル、例えば電力ケーブル、は、上記ポリマー組成物から得られる1つの層を含む上記物品が提供される。
【0287】
本発明の更なる実施態様において、物品であって、架橋性であり且つ本明細書に記載されているポリマー組成物の使用を含む方法から得られるところの上記物品が提供される。
【0288】
本発明のなおも更なる実施態様において、物品であって、本明細書に記載されているポリマー組成物を含む上記物品が提供される。
【0289】
本発明の更なる実施態様において、物品であって、架橋されており且つ本明細書に記載されているポリマー組成物の使用を含む方法から得られるところの上記物品が提供される。
【0290】
本発明の更なる実施態様は、ケーブル、例えば電力ケーブル、である物品を提供する。
【0291】
更に、本発明は、W&C用途にきわめて好適であり、それにより物品は例えば、架橋性であり且つ1以上の層を含むケーブルであり、ここで、少なくとも1つの層が、本明細書に記載されているポリマー組成物から得られる。
【0292】
その上、上記少なくとも1つの層が、本明細書に記載されているポリマー組成物を含む、本発明のなおも更なる実施態様が提供される。
【0293】
本発明の更なる実施態様は、本明細書に記載されているポリマー組成物から得られる1以上の層、例えば1以上の絶縁層、を含む電力ケーブルを提供する。
【0294】
上記物品がAC電力ケーブルである、本発明のなおも更なる実施態様が提供される。
【0295】
上記物品がDC電力ケーブルである、本発明の更なる実施態様が提供される。
【0296】
更に、該ポリマー組成物から得られるケーブルの少なくとも1つの層が、例えば絶縁層でありうる。
【0297】
その上、該ポリマー組成物を含むケーブルの少なくとも1つの層は、例えば絶縁層でありうる。
【0298】
更に、本発明のケーブルは、例えば少なくとも内部半導電層、絶縁層、及び外部半導電層を所定の順序で含む電力ケーブルであり得、ここで、少なくとも該絶縁層は、本明細書に記載されているポリマー組成物から得られる。
【0299】
更に、本発明のなおも更なる実施態様が提供され、表現「ポリマー組成物から得られる」はまた、「ポリマー組成物を含む」という特徴を含む。
【0300】
本明細書において、電力ケーブルは、任意の電圧で作動する、エネルギーを移送するケーブルを意味する。該電力ケーブルに施与される電圧は、AC、DC、又はトランジエント(インパルス)であることができる。1つの実施態様において、多層式の物品は、6kVよりも高い電圧で作動する電力ケーブルである。
【0301】
本発明の更なる実施態様は、本明細書に記載されている物品を製造する方法を開示し、該方法は、本明細書に記載されているポリマー組成物の使用を含む。
【0302】
その上、本発明は、本明細書に記載の物品を製造する方法であって、該方法は、a)物品を形成することを含み、本明細書に記載されているポリマー組成物を含む上記方法を提供する。上記方法は、例えば
a0)本明細書に記載されているポリマー組成物を、任意的に1以上の更なる成分と共に、溶融混合すること、そして
a)本明細書に記載されているポリマー組成物から得られるケーブルを形成すること
の工程を少なくとも含みうる。
【0303】
更なる実施態様は、本明細書に記載されているポリマー組成物を含むケーブルを形成することを開示する。
【0304】
「溶融混合すること」は周知の混合法であり、ここで、1以上のポリマー成分が、高められた温度で混合され、それは典型的に、1以上の該ポリマー成分の融点又は軟化点よりも高く、例えば少なくとも20~25℃高い。
【0305】
1つの実施態様において、1以上の層により取り囲まれた導電体を含むケーブルが製造され、該方法は、a)導電体上に本明細書に記載されているポリマー組成物を施与して、該導電体を取り囲む少なくとも1つの上記層を形成する工程を含む。
【0306】
従って、工程(a)において、上記1以上の層のうちの少なくとも1つの層が施与され、そして本明細書に記載されているポリマー組成物を使用することにより得られる。
【0307】
また、本明細書において例示されるケーブルの製造方法は、例えば、
a0)本明細書に記載されている上記ポリマー組成物を、任意的に1以上の更なる成分と共に、溶融混合すること、そして次に
a)工程a0)から得られた溶融混合物を導電体上に施与して、少なくとも1つの層を形成すること
の少なくとも2つの工程を含みうる。
【0308】
本明細書に記載されているポリマー組成物は、該方法の工程a0)に、例えばペレット形態で導入され得、且つ混合工程、すなわち溶融混合工程、は、ポリマー材料を溶融(又は軟化)させてその処理を可能にする高められた温度で行われる。
【0309】
更に、該層は、例えばa)(同時)押出により施与されうる。本明細書において、語「(同時)押出」は、2以上の層の場合に、当技術分野において周知である通り、上記層が、別々の工程において押出されることができる、又は少なくとも2つ若しくは全ての上記層が、同一の押出工程において同時押出されることができることを意味する。
【0310】
1つの例示的な実施態様において、架橋性ポリマー組成物は、該ポリマー組成物がケーブル製造の為に使用される前に架橋剤を含み得、それによってポリエチレン及び架橋剤は、任意の慣用的な混合プロセスによって、例えば架橋剤をポリマーの組成物の溶融物に、例えば押出機内で、添加することによって、並びに液体の過酸化物、液状形態の過酸化物、又は溶媒に溶解された過酸化物をポリマーの固体組成物、例えばそのペレット、上に吸着させることによって、ブレンドされることができる。代替的には、この実施態様において、ポリエチレン及び架橋剤は、任意の慣用的な混合プロセスによりブレンドされることができる。例示的な混合手順は、例えば押出機内での溶融混合工程、並びに液体の過酸化物、液状形態の過酸化物、又は溶媒に溶解された過酸化物の、ポリマーの組成物又はそのペレット上への吸着を含む。次に、成分、例えばポリエチレン、1以上の酸化防止剤及び架橋剤、の得られたポリマー組成物が、物品、例えばケーブル、の製造方法の為に使用される。
【0311】
別の実施態様において、架橋剤が、架橋性物品の製造中に、例えば工程a0)において添加され得、且つまた、本発明の上記ポリマー組成物を形成する。該架橋剤が物品の製造プロセス中に添加される場合に、例えば、本明細書に記載されている架橋剤が、周囲温度で、液状形態で添加される、又は当技術分野において周知である通り、その融点よりも高く事前加熱される、若しくは担体媒体に溶解される。
【0312】
本発明の上記ポリマー組成物はまた、1以上の更なる添加剤を含みうる、又は1以上の更なる添加剤が、該ポリマー組成物を含む物品の製造プロセス中に該ポリマー組成物にブレンドされうる。
【0313】
従って、本発明の方法は、例えば、
a00)上記工程a0)に、
少なくとも1のポリエチレン、
架橋剤、及び
本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤、
を含む、本明細書に記載されている上記ポリマー組成物を提供すること、
a0)該ポリマー組成物を、任意的に更なる成分と共に、溶融混合すること、
a)工程a0)から得られた溶融混合物を導電体上に施与して、上記1以上のケーブル層のうちの少なくとも1つを形成すること
の工程を含みうる。
【0314】
代替的には、本発明の方法は、
a00)上記工程a0)に
少なくとも1のポリエチレン
を含む、本明細書に記載されている上記ポリマー組成物を供給すること、
a00’)少なくとも1の架橋剤、及び本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤を、上記ポリマー組成物に添加すること、
a0)該ポリマー組成物、該架橋剤、及び本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤を、任意的に更なる成分と共に、溶融混合すること、
a)工程a0)から得られた溶融混合物を導体上に施与して、上記1以上のケーブル層のうちの少なくとも1つを形成すること
の工程を含む。
【0315】
例示的な方法において、a0)ポリマー組成物を単独で溶融混合する工程は、ミキサー又は押出機において、又はその任意の組み合わせにおいて、高められた温度で、且つ架橋剤が存在する場合には、引き続き使用される架橋温度よりも低い温度でまた行われる。例えば上記押出機における溶融混合工程a0)の後、結果として得られた溶融混合された層材料は、次に、例えば、a)当分野においてきわめて周知の様式で、導電体上に(同時)押出される。ケーブルを製造する為に慣用的に使用されるミキサー及び押出機、例えば一軸又は二軸のスクリュー押出機、が本発明の方法の為に好適である。
【0316】
本方法の例示的な実施態様は、架橋性ケーブル、例えば架橋性電力ケーブル、の製造を提供し、該方法は、b)ポリマー組成物の架橋性ポリエチレンを含む、工程a)から得られた少なくとも1つのケーブル層を架橋することの更なる工程を含み、該架橋することは、架橋剤、例えば過酸化物、及び本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤の存在下で行われる。
【0317】
存在する場合、他のケーブル層及びその材料がまた、所望の場合には同時に架橋されることができることが理解されており且つ周知である。
【0318】
架橋は、当分野において周知である通り、使用される架橋剤に依存して、幾つかの架橋条件において、典型的に高められた温度で、例えば140℃超、例えば150℃超、例えば160~350℃、の温度で、処置することによって行われることができる。典型的には、架橋温度は、溶融混合工程a0)で使用される温度よりも少なくとも20℃高く、且つ当業者によって見積もられることができる。
【0319】
その結果、本発明のポリマー組成物の少なくとも1つの架橋された層を含む架橋ケーブルが得られる。
【0320】
本発明に従う更なる実施態様において、該ポリマー組成物であって、上記ビニル基の総数B(フリーラジカル開始重合に由来するビニル基以外)が、
i)1以上の多価不飽和コモノマー、
ii)1以上の連鎖移動剤、
iii)1以上の不飽和低分子量化合物、例えば1以上の架橋ブースター及び/又は1以上のスコーチ防止剤、又は
iv)(i)~(iii)の任意の混合
に由来する、上記ポリマー組成物が開示される。
【0321】
一般的に、本明細書において、「ビニル基」は、下記のi)~iv)のいずれかに存在することができるCH2=CH-部分を意味する。
【0322】
i)多価不飽和コモノマー及びii)連鎖移動剤が、本発明に従うポリマー組成物のポリエチレンに関連して、本明細書に記載されている。
【0323】
iii)1以上の低分子量化合物が、存在する場合には、該ポリマー組成物に添加されうる。
【0324】
更に、iii)1以上の低分子量化合物は例えば、該ポリマー組成物のビニル基の総数Bにまた寄与しうる1以上の架橋ブースターであることができる。該1以上の架橋ブースターは例えば、少なくとも2つの不飽和の基を含む1以上の化合物、例えば脂肪族若しくは芳香族化合物、エステル、エーテル、又はケトンであり得、それは少なくとも2つの不飽和の基、例えばシアヌレート、イソシアヌレート、ホスフェート、オルトホルメート、脂肪族若しくは芳香族エーテル、又はベンゼントリカルボン酸のアリルエステル、を含む。エステル、エーテル、アミン、及びケトンの例は、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラ-オキサスピロ[5,5]-ウンデカン(DVS)、トリアリルトリメリテート(TATM)、若しくはN,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(HATATA)、又はそれらの任意の混合からなる一般群から選択される化合物である。該架橋ブースターは、2.0重量%未満、例えば1.5重量%未満、例えば1.0重量%未満、例えば0.75重量%未満、例えば0.5重量%未満のそのような架橋ブースターの量で添加されることができ、且つその下限は、該ポリマー組成物の重量に基づき、例えば少なくとも0.05重量%、例えば少なくとも0.1重量%、である。
【0325】
その上、iii)1以上の低分子量化合物は例えば、該ポリマー組成物のビニル基の上記総数Bにまた寄与しうる1以上のスコーチ防止剤(SR)であることができる。
【0326】
該スコーチ防止剤(SR)は、例えば、本明細書に既に記載されている通り、芳香族アルファ-メチルアルケニルモノマーの不飽和二量体、例えば2,4-ジ-フェニル-4-メチル-1-ペンテン、置換型又は非置換型ジフェニルエチレン、キノン誘導体、ハイドロキノン誘導体、エステル及びエーテルを含む単官能性ビニル、少なくとも2つ以上の二重結合を有する単環式炭化水素、又はこれらの混合でありうる。例えば、該スコーチ防止剤は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、置換型又は非置換型のジフェニルエチレン、又はこれらの混合から選択されうる。
【0327】
該スコーチ防止剤の量は、該ポリマー組成物の重量に基づき、例えば0.005重量%以上でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は、該ポリマー組成物の重量に基づき、例えば0.01重量%以上、0.03重量%以上、又は0.04重量%以上でありうる。
【0328】
更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、2.0重量%以下、例えば1.5重量%以下、でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.8重量%以下、0.75重量%以下、0.70重量%以下、又は0.60重量%以下でありうる。その上、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.55重量%以下、0.50重量%以下、0.45重量%以下、又は0.40重量%以下でありうる。
【0329】
なおも更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.35重量%以下、例えば0.30重量%以下、でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.25重量%以下、0.20重量%以下、0.15重量%以下、又は0.10重量%以下でありうる。更に、該スコーチ防止剤の量は例えば、ポリマー組成物の重量に基づき、0.15重量%以下、又は0.10重量%以下でありうる。
【0330】
その上、該スコーチ防止剤の量は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.005~2.0重量%、例えば0.005~1.5重量%、でありうる。更なる例示的な範囲は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.01~0.8重量%、0.03~0.75重量%、0.03~0.70重量%、又は0.04~0.60重量%である。その上、例示的な範囲は例えば、該ポリマー組成物の重量に基づき、0.01~0.60、0.01~0.55、0.01~0.50、0.01~0.45、又は代替的には0.01~0.40重量%、0.03~0.55、又は代替的には0.03~0.50重量%、0.03~0.45、又は代替的には0.03~0.40重量%、又は0.04~0.45、又は代替的には0.40重量%である。
【0331】
更に、該スコーチ防止剤(SR)は例えば、欧州特許第1699882号明細書に記載されている通り、グラフト可能で安定な有機フリーラジカルからも選択され得、そしてまた、本明細書中に既に記載されている。
【0332】
該ポリマー組成物のポリエチレンは例えば、モノマー単位と、少なくとも1の不飽和コモノマーの単位、及び0、1、2、又は3の他のコモノマーとのコポリマーであり得、且つ多価不飽和コモノマーに由来する少なくともビニル基を含む。
【0333】
更に、該ポリマー組成物のポリエチレンは、炭素原子(C原子)1000個当たり、フリーラジカル開始重合に由来する約0.05~約0.10個のビニル基を含みうる。
【0334】
本発明に従って、本明細書において開示される実施態様のいずれかにおける、本発明の任意のカテゴリーにおける各特徴は、本明細書の他において開示されている実施態様のいずれかにおける任意の特徴と自由に組み合わされうる。
【0335】
決定方法
発明の詳細な説明又は実験の部において別途記載がない限り、下記の方法が、特性を決定する為に使用された。
【0336】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、方法ISO1133-1:2011に従って決定され、且つg/10分として表示される。MFRは、ポリマー、本明細書ではポリエチレン、の、又はポリマー組成物の流動性、従って加工適性、を表す。該メルトフローレートが高いほど、該ポリマーの又は該ポリマー組成物の粘度が低くなる。MFRは、ポリエチレンについて190℃で決定され、且つ異なる荷重、例えば2.16kg(MFR2)又は21.6kg(MFR21)、で決定されうる。
【0337】
密度
密度は、ISO1183-1方法A:2012に従って、該ポリマーにおいて、すなわち該ポリエチレンにおいて、測定される。試料調製は、ISO17855-2:2016に従って、圧縮成形によって行われる。
【0338】
該ポリマー組成物中の又は該ポリマー、すなわちポリエチレン、中の二重結合の量を決定する為の方法 ASTM D3124-98及びASTM D6248-98
方法ASTM D6248-98は、該ポリマー組成物中及び該ポリエチレン中の両方の二重結合の決定に適用される。該ポリマー組成物の二重結合の決定は、(パラメーターPを決定する為に)ポリエチレンにおいて、代替的には(パラメーターBを決定する為に)該ポリマー組成物において、で行われる。該ポリマー組成物及び該ポリエチレンは、本明細書の以降、この方法の説明において、「該組成物」及び「該ポリマー」とそれぞれ呼ばれる。
【0339】
方法 ASTM D3124-98及びASTM D6248-98は、一方では、ASTM D3124-98法に基づく、C原子1000個当たりの二重結合の量を決定する為の手順を包含する。ASTM D3124-98法において、C原子1000個当たりのビニリデン基を決定する為の詳細な説明が、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンに基づいて与えられている。ASTM D6248-98法において、C原子1000個当たりのビニル基及びトランス-ビニレン基を決定する為の詳細な説明が、1-オクテン及びトランス-3-ヘキセンそれぞれに基づいて与えられている。それら方法において記載されている試料調製手順が、本発明において、C原子1000個当たりのビニル基とC原子1000個当たりのトランス-ビニレン基とを決定する為に適用された。ASTM D6248-98法は、ASTM D3124-98法の臭素化手順を組み込む可能性について示唆するが、しかし本発明に関する試料は臭素化されなかった。本出願者等は、C原子1000個当たりのビニル基とC原子1000個当たりのトランス-ビニレン基との決定が、臭素化された試料に由来するスペクトルの差し引き無しにでさえ、有意な妨害無しに行われることができることを実証していた。これら2種類の二重結合についての吸光係数の決定について、下記の2種の化合物、すなわち、ビニル基の為に1-デセン及びトランス-ビニレン基の為にトランス-4-デセン、が使用され、且つ上記記載を例外としてASTM-D6248-98に記載される手順が遵守された。
【0340】
「該ポリマー」のビニル結合、ビニリデン結合、及びトランス-ビニレン二重結合の総数が、IR分光法によって分析され、そして炭素原子1000個当たりのビニル結合、ビニリデン結合、及びトランス-ビニレン結合の量として与えられた。
【0341】
更に、使用された不飽和低分子量化合物(iii)のいずれかに由来する二重結合のあり得る寄与を含め、「組成物」のビニル及びトランス-ビニレン二重結合の総数がまた、IR分光法によって分析され、そして炭素原子1000個当たりのビニル結合、ビニリデン結合、及びトランス-ビニレン結合の量として与えられうる。
【0342】
分析される組成物又はポリマーは、0.5~1.0mmの厚さを有する薄層にプレスされた。実際の厚さが測定された。FT-IR分析が、Perkin Elmer Spectrum Oneにおいて行われた。2回のスキャンが、4cm-1の分解能で記録された。
【0343】
980cm-1~約840cm-1でベースラインが設定された。ピーク高さがビニル基について約910cm-1、且つトランス-ビニレンについて約965cm-1で決定された。炭素原子1000個当たりの二重結合の量が、下記の式を使用して計算された:
C原子1000個当たりのビニル基=(14×Abs)/(13.13×L×D)
C原子1000個当たりのトランス-ビニレン基=(14×Abs)/(15.14×L×D)
式中、
Abs:吸光度(ピーク高さ)
L:フィルム厚さ(mm)
D:物質(すなわち、「組成物」又は「ポリマー」)の密度(g/cm3)。
【0344】
上記計算におけるモル吸光係数ε、すなわちそれぞれ13.13及び15.14、が、l・mol-1・mm-1として、下記式により決定された:
ε=Abs/(C×L)
式中、Absはピーク高さとして定義される最大吸光度、Cは濃度(mol・l-1)、及びLはセルの厚さ(mm)である。
【0345】
方法 ASTM D3124-98及びASTM D6248-98はまた、一方では、モル吸光係数を決定する為の手順を含む。二硫化炭素(CS2)中に溶解された少なくとも3つの0.18mol・l-1溶液が使用され、そしてモル吸光係数の平均値が使用された。
【0346】
炭素原子1000個当たりの多価不飽和コモノマーに由来するビニル基の量が決定され、そして下記の通り計算された:
同一の反応器において、同一条件、すなわち類似のピーク温度、圧力、及び生成速度、を基本的に使用して、分析されるポリマー、及び参照ポリマーが製造され、但し、多価不飽和コモノマーが分析されるポリマーには添加されたが、参照ポリマーには添加されなかった点が唯一の相違点である。各ポリマーのビニル基の総数は、本明細書に記載されているFT-IR測定によって決定された。次に、ビニル基のベースレベル、すなわち本方法により、及びビニル基をもたらす連鎖移動剤(存在する場合)から形成されたビニル基のベースレベルは、参照ポリマー及び分析されるポリマーについて同一であることが仮定され、但し、分析されるポリマーにおいて、多価不飽和コモノマーがまた反応器に添加される点が唯一の例外である。次に、このベースレベルは、分析されるポリマーにおけるビニル基の測定された量から差し引かれ、これにより多価不飽和コモノマーに起因するC原子1000個当たりのビニル基の量をもたらす。
【0347】
方法 ASTM D3124-98及びASTM D6248-98は、存在する場合には、不飽和の低分子量化合物(iii)(以下、化合物と呼ばれる)の二重結合含有量を測定する為の較正手順を含む。
【0348】
化合物(例えば、発明の詳細な説明で例示される架橋ブースター又はスコーチ防止剤化合物)のモル吸光係数が、ASTM D6248-98に従う上記方法を用いて決定されることができる。CS2(二硫化炭素)中の化合物の少なくとも3つの溶液が調製される。該溶液の使用される濃度は、0.18mol/l近傍である。該溶液は、FTIRを用いて分析され、そして経路長さが0.1mmの液体セル内で、4cm-1の分解能でスキャンされる。1以上の化合物(各種類の炭素-炭素二重結合が存在する)の不飽和部分に関連する吸収ピークの最大強度が測定される。
【0349】
溶液及び二重結合の種類毎に、l・mol-1・mm-1で表されるモル吸光係数εが、下記の式を使用して計算される:
ε=(1/CL)×Abs
式中、
C=測定される各種類の炭素-炭素二重結合の濃度(mol/l)
L=セルの厚さ(mm)
Abs=測定される各種類の炭素-炭素二重結合のピークの最大吸光度(ピーク高さ)(mol/l)。
【0350】
二重結合の種類毎についてのモル吸光係数εの平均が、計算される。更に、次に、各種類の炭素-炭素二重結合の平均モル吸光係数εが、参照ポリマー及び分析されるポリマー試料中の二重結合の濃度の計算で使用されることができる。
【0351】
架橋されたプラークの製造、すなわちプラークを架橋する方法:
ジクミルペルオキシド(DCP:dicumyl peroxide)又はtert-ブチルクミルペルオキシド(TBCP:tert-butylcumyl-peroxide)を過酸化物として使用した場合の架橋されたプラークの製造、すなわちプラークを架橋する方法
架橋されたプラークが、下記の条件を使用して圧縮成形された試験ポリマー組成物、すなわち本発明に従うポリマー組成物及び比較ポリマー組成物、のペレットから製造される:最初にペレットが、61N/cm2の圧力下、120℃で、1分間溶融される。次に、温度が18K/分の速度で180℃まで高められ、そして同時に、圧力が614N/cm2まで高められる。温度は、180℃で10分間維持される。次に、該プラークは、該ポリマー組成物中に存在する過酸化物によって架橋される。総架橋時間は14分であり、これは120から180℃に温度を上昇させる時間を含む。架橋完了後、架橋されたプラーク、すなわち本発明に従う架橋されたポリマー組成物及び架橋された比較ポリマー組成物、が、なお圧力下で、15K/分の冷却速度で室温まで冷却される。該プラークの最終的な厚さは1.5mmである。
【0352】
2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、すなわちTrigonox(登録商標)145-E85、(T145E85)、を過酸化物として使用した場合での、架橋されたプラークの製造、すなわちプラークを架橋する方法
架橋されたプラークが、下記の条件を使用して圧縮成形された試験ポリマー組成物、すなわち本発明に従うポリマー組成物及び比較ポリマー組成物、のペレットから製造される:最初にペレットが、61N/cm2の圧力下、120℃で、1分間溶融される。次に、温度が18K/分の速度で180℃まで高められ、そして同時に、圧力が614N/cm2まで高められる。温度は、180℃で20分間維持される。次に、該プラークは、該ポリマー組成物中に存在する過酸化物によって架橋される。総架橋時間は24分であり、これは120から180℃に温度を上昇させる時間を含む。架橋完了後、架橋されたプラーク、すなわち本発明に従う架橋されたポリマー組成物及び架橋された比較ポリマー組成物、が、なお圧力下で、15K/分の冷却速度で室温まで冷却される。該プラークの最終的な厚さは1.5mmである。
【0353】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析プロトコール、すなわちGC分析法
GC分析プロトコール(プラーク)、すなわちGC分析法
揮発性の過酸化物分解生成物、本明細書ではメタン(CH4)、の含有量がppm(重量)として与えられ、且つ本発明に従うポリマー組成物及び比較ポリマー組成物の架橋された試料から、ガスクロマトグラフィー(GC)によって決定される。上記架橋は、プラークを架橋する方法において記載されている通りに行われた。
【0354】
厚さ1.5mmを有し且つ重さ1gを有する試料試験片が、架橋工程(すなわち、プラークを架橋する方法において)の直後に、架橋されたプラーク、すなわち本発明に従う架橋されたポリマー組成物及び架橋された比較ポリマー組成物、の中央から、切り取られる。該得られた試料は、テフロンシールを有するアルミニウムクリンプカップを備えた120mlヘッドスペースボトル内に入れられ、そして60℃で1.5時間熱処置されて、上記試料中に存在するあらゆるガス状の揮発性物質を平衡化する。次に、該試料ボトル中に捕捉されたガス0.2mlがガスクロマトグラフ中に注入され、ここで、測定されるのが望ましい揮発性物質、例えばメタン、の存在及び含有量が分析される。二回の試料が分析され、報告されるメタン含有量の数値は両分析の平均である。本明細書で使用された装置は、Plot Ultimetalより供給された、寸法0.53mm×50m及びフィルムの厚さ10μmを有するAl2O3/Na2SO4-カラムを備えたAgilent GC7890Aであった。ヘリウムがキャリヤガスとして使用され、且つFID検出が使用された。
【0355】
ホットセット試験法
架橋されたプラーク由来の試料についてのホットセット法
ホットセット伸び並びに永久変形が、架橋されたプラーク、すなわち本発明に従う架橋されたポリマー組成物及び架橋された比較ポリマー組成物、から採取された試料において決定された。これらの特性は、IEC60811-507:2012に従って決定された。該ホットセット試験において、試験された材料のダンベルが、20N/cm2に相当する重量を用いて装着された。最初に、試験片が参照ラインでマーク付けされた。該試験片の中央部から、2本の参照ライン(各サイドに1本)が引かれる。2本の該ラインの間の距離L0は20mmである。この試験片は、20N/cm2に相当する重量を用いて、200℃でオーブン内に置かれ、そして15分後に、ホットセット伸びが下記の通りに測定される。200℃で15分経過後の参照ラインの間の距離はL1と呼ばれ、且つ測定される。次に、15分経過後のホットセット伸びが下記の通り計算される:伸び(%)=((L1*100)/L0)-100。引き続き、重量が除かれ、そして該試料は、200℃で5分間、弛緩した状態に置かれる。次に、該試料はオーブンから取り出され、そして室温まで冷却される。冷却後、2本の参照ラインの間の距離L2が測定され、そして永久変形が下記の通りに計算される:永久変形(%)=(L2*100)/L0)-100。
【0356】
該架橋されたプラークが、「架橋されたプラークの製造」、すなわちプラークを架橋する方法、の記載に従って製造され、そしてダンベル試験片が、ISO527-2/5A:2012に従って、厚さ1.5mmの架橋されたプラークから調製される。
【0357】
実験の部
実施例
ポリエチレン
ポリエチレンは全て、高圧管形反応器内で重合された低密度ポリエチレンである。
【0358】
実施例1及び比較例1:ポリマー1:炭素原子(C)1000個当たり1.28個のビニル基、密度=923.5kg/m3、MFR2=0.8g/10分を有するポリ(エチレン-co-1,7-オクタジエン)ポリマー、すなわち本発明に従うポリマー組成物のポリエチレン、及び比較ポリマー組成物のポリエチレン
約2800barの初期反応圧力に到達するように、エチレンが、リサイクルされたCTAと共に、5ステージプレコンプレッサー、及び中間冷却工程を備えた2ステージハイパーコンプレッサー内で圧縮された。総コンプレッサースループットは約30トン/時であった。コンプレッサーエリア内では、MFR2を0.8g/10分に維持する為に、およそ2.2kg/時間のプロピオンアルデヒド(PA(propion aldehyde)、CAS番号:123-38-6)が、連鎖移動剤として、およそ41kg/時のプロピレンと共に添加された。ここでは、1,7-オクタジエンも、114kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、内径約40mm及び全長1200メートルを有するフロント供給式3ゾーン管形反応器の予備加熱セクション内で159℃まで加熱された。イソドデカンに溶解された市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物が、発熱性の重合反応が約269℃のピーク温度に到達するのに十分な量で予備加熱装置の直後に注入され、ピーク温度到達後、およそ213℃まで冷却された。後続する第2及び第3のピーク反応温度はそれぞれ262℃及び234℃であり、両者で210℃まで冷却された。反応混合物は、キックバルブにより減圧され、冷却され、そして得られたポリマー1は、未反応のガスから分離された。
【0359】
実施例2及び比較例2、ポリマー2:C1000個当たり1.34個のビニル基、密度=924.9kg/m3、MFR2=1.46g/10分を有するポリ(エチレン-co-1,7-オクタジエン)ポリマー)、すなわち本発明に従うポリマー組成物のポリエチレン、及び比較ポリマー組成物のポリエチレン
約2800barの初期反応圧力に到達するように、エチレンが、リサイクルされたCTAと共に、5ステージプレコンプレッサー、及び中間冷却工程を備えた2ステージハイパーコンプレッサー内で圧縮された。総コンプレッサースループットは約30トン/時であった。コンプレッサーエリア内では、およそ3.9kg/時のプロピオンアルデヒド(PA、CAS番号:123-38-6)が、1.46g/10分のMFR2を維持する為に、連鎖移動剤として添加された。ここでは、1,7-オクタジエンも、148kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、内径約40mm及び全長1200メートルを有するフロント供給式3ゾーン管形反応器の予備加熱セクション内で159℃まで加熱された。イソドデカンに溶解された市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物が、発熱性の重合反応が約273℃のピーク温度に到達するのに十分な量で予備加熱装置の直後に注入され、ピーク温度到達後、およそ207℃まで冷却された。後続する第2及び第3のピーク反応温度はそれぞれ257℃及び226℃であり、両者で209℃まで冷却された。反応混合物は、キックバルブにより減圧され、冷却され、そしてポリマー2は、未反応のガスから分離された。
【0360】
実施例3~4、7.1、及び比較例3~4、7.1、ポリマー3:C1000個当たり0.89個のビニル基、密度=923.7kg/m3、MFR2=0.92g/10分を有するポリ(エチレン-co-1,7-オクタジエン)ポリマー)、すなわち本発明に従うポリマー組成物のポリエチレン、及び比較ポリマー組成物のポリエチレン
約2800barの初期反応圧力に到達するように、エチレンが、リサイクルされたCTAと共に、5ステージプレコンプレッサー、及び中間冷却工程を備えた2ステージハイパーコンプレッサー内で圧縮された。総コンプレッサースループットは約30トン/時であった。コンプレッサーエリア内では、およそ3.8kg/時のプロピオンアルデヒド(PA、CAS番号:123-38-6)が、0.92g/10分のMFR2を維持する為に、連鎖移動剤として添加された。ここではまた、1,7-オクタジエンが、89kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、内径約40mm及び全長1200メートルを有するフロント供給式3ゾーン管形反応器の予備加熱セクション内で162℃まで加熱された。イソドデカンに溶解された市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物が、発熱性の重合反応が約286℃のピーク温度に到達するのに十分な量で予備加熱装置の直後に注入され、ピーク温度到達後、およそ231℃まで冷却された。後続する第2及び第3のピーク反応温度はそれぞれ274℃及び248℃であり、両者で222℃まで冷却された。反応混合物は、キックバルブにより減圧され、冷却され、そして得られたポリマー3が、未反応のガスから分離された。
【0361】
実施例5、7.3、及び比較例5、ポリマー4:C1000個当たり0.71個のビニル基、密度=922.3kg/m3、MFR2=0.68g/10分を有するポリ(エチレン-co-1,7-オクタジエン)ポリマー)、すなわち比較ポリマー組成物のポリエチレン、及び比較ポリマー組成物のポリエチレン
約2900barの初期反応圧力に到達するように、エチレンが、リサイクルされたCTAと共に、5ステージプレコンプレッサー、及び中間冷却工程を備えた2ステージハイパーコンプレッサー内で圧縮された。総コンプレッサースループットは約30トン/時であった。コンプレッサーエリア内では、MFR2を0.68g/10分に維持する為に、およそ1.2kg/時間のプロピオンアルデヒド(PA、CAS番号:123-38-6)が、連鎖移動剤として、およそ87kg/時のプロピレンと共に添加された。ここではまた、1,7-オクタジエンが、56kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、内径約40mm及び全長1200メートルを有するフロント供給式3ゾーン管形反応器の予備加熱セクション内で164℃まで加熱された。イソドデカンに溶解された市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物が、発熱性の重合反応が約277℃のピーク温度に到達するのに十分な量で予備加熱装置の直後に注入され、ピーク温度到達後、およそ206℃まで冷却された。後続する第2及び第3のピーク反応温度はそれぞれ270℃及び249℃であり、両者で217℃まで冷却された。反応混合物は、キックバルブにより減圧され、冷却され、そして得られたポリマー4は、未反応のガスから分離された。
【0362】
実施例6及び比較例6、ポリマー5:C1000個当たり0.55個のビニル基、密度=未測定、MFR2=1.82g/10分を有するポリ(エチレン-co-1,7-オクタジエン)ポリマー)、すなわち本発明に従うポリマー組成物のポリエチレン、及び比較ポリマー組成物のポリエチレン
約2800barの初期反応圧力に到達するように、エチレンが、リサイクルされたCTAと共に、5ステージプレコンプレッサー及び中間冷却工程を備えた2ステージハイパーコンプレッサー内で圧縮された。総コンプレッサースループットは、約30トン/時であった。コンプレッサーエリア内では、1.82g/10分のMFR2を維持する為に、およそ2.4kg/時のプロピオンアルデヒド(PA、CAS番号123-38-6)が、連鎖移動剤として、およそ89kg/時のプロピレンと共に添加された。ここではまた、1,7-オクタジエンが、29kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、内径約40mm及び全長1200メートルを有するフロント供給式3ゾーン管形反応器の予備加熱セクションにおいて、162℃まで加熱された。イソドデカンに溶解された市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物が、発熱性の重合反応が約287℃のピーク温度に到達するのに十分な量で予備加熱装置の直後に注入され、ピーク温度到達後、およそ200℃まで冷却された。後続する第2のピーク反応温度は274℃であった。反応混合物は、キックバルブにより減圧され、冷却され、そしてポリマー5は、未反応のガスから分離された。
【0363】
実施例7.2、及び比較例7.2、ポリマー6:C1000個当たり1.33個のビニル基、密度=924.3kg/m3、MFR2=0.94g/10分を有するポリ(エチレン-co-1,7-オクタジエン)ポリマー)、すなわち本発明に従うポリマー組成物のポリエチレン、及び比較ポリマー組成物のポリエチレン
約2800barの初期反応圧力に到達するように、エチレンが、リサイクルされたCTAと共に、5ステージプレコンプレッサー及び中間冷却工程を備えた2ステージハイパーコンプレッサー内で圧縮された。総コンプレッサースループットは、約30トン/時であった。コンプレッサーエリアでは、0.94g/10分のMFR2を維持する為に、およそ2.3kg/時のプロピオンアルデヒド(PA、CAS番号123-38-6)が、連鎖移動剤として添加された。ここではまた、1,7-オクタジエンが、144kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、内径約40mm及び全長1200メートルを有するフロント供給式3ゾーン管応器の予備加熱セクションにおいて、160℃まで加熱された。イソドデカンに溶解された市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物が、発熱性の重合反応が約274℃のピーク温度に到達するのに十分な量で予備加熱装置の直後に注入され、ピーク温度到達後、およそ207℃まで冷却された。後続する第2及び第3のピーク反応温度はそれぞれ257℃及び227℃であり、両者で211℃まで冷却された。反応混合物は、キックバルブにより減圧され、冷却され、そして得られたポリマー6は、未反応のガスから分離された。
【0364】
ポリマー組成物
本明細書に記載されているポリエチレン、架橋剤、及び本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤を使用して、処方物、すなわち本発明のポリマー組成物、及び比較例がまた、ラボスケールで製造され、そして比較された(表1~7を参照)。本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤、及び1以上の酸化防止剤が、本明細書に記載されている量で、本発明のポリマー組成物のポリエチレン及び比較例のポリエチレンに添加された。70℃で、ポリエチレンペレット上に架橋剤(架橋剤は液状形態にある)を分布させることによって、架橋剤がポリエチレンに添加された。湿らせたペレットは、該ペレットが乾燥するまで80℃で保持された。異なる処方物に含まれる酸化防止剤の活性な官能基の量とほぼ同一にする為に、酸化防止剤の量が計算された。
【0365】
架橋剤、例えば過酸化物、の量は、ホットセット決定法(20N/cm2負荷を用いて)によって測定された場合とほぼ同一の架橋度が得られるように、ポリマー、すなわち「実施例」1.1~7.3、及び「比較例」1.1~7.2それぞれについて選択された。
【0366】
ホットセット測定及びメタン測定について、「架橋されたプラークの製造、すなわちプラークを架橋する方法」の決定方法に記載されている通り、厚さ1.5mmのプラークが圧縮成形され、そして180℃で架橋された。「GC分析プロトコール(プラーク)、すなわちGC分析法」の決定方法に記載されている通り、架橋後、メタンが2つの試料について直接的に測定され、そして報告される数値は2回の測定の平均である。「架橋されたプラークから得られた試料のホットセット法」の決定方法に記載されている通り、ホットセットが、20N/cm2の負荷を用いて、200℃で3つの試料について測定された。
【0367】
実施例1.1~1.4、及び比較例1.1は全て、下記の表1に記載されている通り全て、ポリエチレンとして「ポリマー1」、1以上の窒素含有酸化防止剤又は1以上の酸化防止剤、及び架橋剤としてジクミルペルオキシド(DCP:dicumylperoxide)を使用する。
【0368】
表1、表2、表3、表4、表5、表6、及び表7において、QQ=(1-実施例/比較例)*100である。
【0369】
【0370】
実施例2.1~2.4及び比較例2.1は全て、下記の2表に記載されている通り全て、ポリエチレンとして「ポリマー2」、1以上の窒素含有酸化防止剤又は1以上の酸化防止剤、及び架橋剤としてジクミルペルオキシドを使用する。
【0371】
【0372】
実施例3.1~3.4及び比較例3.1は全て、下記の表3に記載されている通り全て、ポリエチレンとして「ポリマー3」、1以上の窒素含有酸化防止剤又は1以上の酸化防止剤、及び架橋剤としてジクミルペルオキシドを使用する。
【0373】
【0374】
実施例4.1~4.4及び比較例4.1は全て、下記の表4に記載されている通り全て、ポリエチレンとして「ポリマー3」、1以上の窒素含有酸化防止剤又は1以上の酸化防止剤、及び架橋剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、すなわちTrigonox(登録商標)145-E85(T145E85)、を使用する。
【0375】
【0376】
実施例5.1~5.2及び比較例5.1は全て、下記の表5に記載されている通り全て、ポリエチレンとして「ポリマー4」、1以上の窒素含有酸化防止剤又は1以上の酸化防止剤、及び架橋剤としてジクミルペルオキシドを使用する。
【0377】
【0378】
実施例6.1~6.2及び比較例6.1は全て、下記の表6に記載されている通り全て、ポリエチレンとして「ポリマー5」、1以上の窒素含有酸化防止剤又は1以上の酸化防止剤、及び架橋剤としてジクミルペルオキシドを使用する。
【0379】
【0380】
実施例7.1~7.3及び比較例7.1~7.2は、下記の表7に記載されている通り全て、ポリエチレンとして「ポリマー3、4、又は6」、1以上の窒素含有酸化防止剤又は1以上の酸化防止剤、及び架橋剤として異なる過酸化物、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、すなわちTrigonox(登録商標)145-E85(T145E85)、又はtert-ブチルクミルペルオキシド(TBCP)、を使用する。
【0381】
【0382】
上記実施例は、ポリエチレン、架橋剤、及び1以上の窒素含有酸化防止剤から得られる本発明のポリマー組成物が、少なくとも1の窒素含有酸化防止剤を含む「別のポリマー組成物」に由来するメタン含有量と比較した場合に、より低いレベルのメタンの形成し、すなわちQQ%(QQは10である)少ないメタン含有量でありながら、良好な架橋レベル(175%未満のホットセット伸び)を保持することを驚くべきことに示す。
【0383】
上記比較例の非窒素酸化防止剤は、「-OH&Sタイプ」、すなわちCAS96-69-5を有する4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、である。
【0384】
上記実施例は、技術的に等価なレベルまで架橋された場合に、比較例よりもQQ%少ないメタンを形成する。
【0385】
該ポリマー組成物の架橋及び該ポリマー組成物中の架橋剤の分解は、本明細書に記載されている、上記「別のポリマー組成物」に由来するメタン含有量と比較される場合に、及びメタン含有量がGC分析法に従って測定された場合に、それらよりもQQ%(QQは10である)少ないメタン含有量を結果として生じる。
【0386】
従って、該選択された1以上の窒素含有酸化防止剤を使用することは、良好な架橋レベル及び低メタンレベルを保持しながら、該組成物を安定化する。
【0387】
更に、上記ビニル基の総数を有し且つ本明細書に記載されている1以上の窒素含有酸化防止剤を含む本発明に従うポリマー組成物は、所望のレベルの架橋度を有する安定化されたポリマー組成物を供給し、一方、同時に、驚くほど低い比較可能なメタンレベルを示す。これは、該ポリマー組成物の特性、例えば炭素原子1000個当たりB個のビニル基、Z重量%の架橋剤、及びW重量%の1以上の窒素含有酸化防止剤、を選択することによって達成される。
【0388】
技術的に望ましいレベルの架橋度は、十分な熱-機械的特性を保証し、例えば高められた温度において寸法安定性を維持する。該架橋剤は例えば、当技術分野において周知である過酸化物でありうる。主要成分が一般的にメタンである、形成された揮発性分解生成物の量は、ポリマー組成物に添加される架橋剤、例えば過酸化物、の量に直接的に依存する。所与の架橋剤、例えば過酸化物、について、いずれの場合にも、形成された揮発性分解生成物の量はまた、架橋剤の化学構造に更に依存する。
【0389】
更に、上記ポリマー組成物の上記特性を選択することによって、該ポリマー組成物の望ましいレベルの架橋度が維持され、それは比較的低いメタンレベルを示し、且つ架橋される場合に、記憶効果を保持する。
【0390】
上記の比較的低いメタンレベルは、脱気時間の短縮を可能にし、又は代替的には、脱気工程を完全に余分なものとし、両方の代替案は、ポリマー組成物から得られる1以上の層、例えば絶縁層、を含むケーブルの製造全体にとって非常に有益である。
【0391】
従って、本明細書に記載されている、ポリエチレン、架橋剤、及び本発明の1以上の窒素含有酸化防止剤を含むポリマー組成物は、架橋性物品及び架橋物品、例えばケーブル、例えばそのケーブル層、例えばケーブル絶縁層、の製造で使用されるのに明らかにきわめて有利である。
【0392】
該ポリマー組成物は、架橋性であり、且つ架橋性物品、例えばケーブルの1以上の架橋性層、例えばケーブルの1以上の架橋性絶縁層(該層はその後架橋される)、を製造する為にきわめて好適である。