(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】腫瘍特異的細胞枯渇のための抗CD25
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240311BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240311BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240311BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240311BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240311BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240311BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 T
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2020547399
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2019056249
(87)【国際公開番号】W WO2019175217
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/056312
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519328637
【氏名又は名称】タスク セラピューティクス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】598176569
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グビエ アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゴイエンチェア コルソ ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】サリム ジョセフィン
(72)【発明者】
【氏名】モウルダー ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】メルヒールス パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン マーク
(72)【発明者】
【氏名】ゲーガン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】ケサダ セルジオ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-514363(JP,A)
【文献】Cancer Research,2000年,60,6977-6984
【文献】Journal of Oncology,2009年,Article ID 963037,p. 1-8
【文献】Crinical Cancer Research,2010年,16,5067-5078
【文献】Journal of Experimental Medicine,194,2001年,823-832
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12K
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-HCDR1アミノ酸配列(配列番号2)、可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-HCDR2アミノ酸配列(配列番号3)、可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)、可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)、及び可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)、
b)可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-m1-HCDR1アミノ酸配列(配列番号10)、可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-m1-HCDR2アミノ酸配列(配列番号12)、可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)、可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)、及び可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)、
c)可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-m2-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)、可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-m2-HCDR2アミノ酸配列(配列番号13)、可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)、可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)、及び可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)、
d)可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-m3-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)、可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-m3-HCDR2アミノ酸配列(配列番号14)、可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)、可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)、及び可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)、
e)可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-m4-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)、可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-m4-HCDR2アミノ酸配列(配列番号12)、可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)、可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)、及び可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)、又は
f)可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-m5-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)、可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-m5-HCDR2アミノ酸配列(配列番号15)、可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)、可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)、及び可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)
を含む抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
aCD25-a-646-HCDR123アミノ酸配列(配列番号5)、aCD25-a-646-m1-HCDR123アミノ酸配列(配列番号16)、aCD25-a-646-m2-HCDR123アミノ酸配列(配列番号17)、aCD25-a-646-m3-HCDR123アミノ酸配列(配列番号18)、aCD25-a-646-m4-HCDR123アミノ酸配列(配列番号19)、及びaCD25-a-646-m5-HCDR123アミノ酸配列(配列番号20)から選択される配列を含む可変重鎖を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
aCD25-a-646-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
モノクローナル抗
体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)、scFv-Fcフラグメント、
又は一本鎖抗体(scA
b)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体がIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4アイソタイプ抗体からなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
二重特異性抗体、多重特異性抗体、又は治療剤若しくは診断剤を更に含む免疫複合体に含まれる、請求項1~
4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
CD25へのインターロイキン-2(IL-2)の結合を阻害しない、請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
CD25を介したインターロイキン-2(IL-2)のシグナル伝達を阻害しない、請求項1~
7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
脱フコシル化された、請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
a)aCD25-a-646-HCDR123アミノ酸配列(配列番号5)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
b)aCD25-a-646-m1-HCDR123アミノ酸配列(配列番号16)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m1-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
c)aCD25-a-646-m2-HCDR123アミノ酸配列(配列番号17)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m2-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
d)aCD25-a-646-m3-HCDR123アミノ酸配列(配列番号18)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m3-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
e)aCD25-a-646-m4-HCDR123アミノ酸配列(配列番号19)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m4-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;又は、
f)aCD25-a-646-m5-HCDR123アミノ酸配列(配列番号20)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m5-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子。
【請求項12】
請求項
11に記載の核酸分子を含む核酸ベクター。
【請求項13】
請求項
12に記載の核酸ベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを作製する方法であって、請求項
13に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項15】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物。
【請求項16】
薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を更に含む、請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
癌の治療に使用される、請求項
15又は
16に記載の組成物。
【請求項18】
第2の作用物質が同時に又は任意の順序で順次に投与されることを更に特徴とする、請求項
17に記載の組成物。
【請求項19】
前記第2の作用物質が免疫チェックポイント阻害剤又は癌ワクチンである、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
前記第2の作用物質が免疫チェックポイント阻害剤であり、該免疫チェックポイント阻害剤がPD-1アンタゴニストである、請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
前記PD-1アンタゴニストが抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項
20に記載の組成物。
【請求項22】
前記癌が固形腫瘍を含む、請求項
17~
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記癌が血液癌腫瘍を含む、請求項
17~
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
腫瘍中の制御性T細胞を枯渇させるための組成物であって、請求項1~
10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメン
トを含む、組成物。
【請求項25】
前記腫瘍が固形腫瘍である、請求項
24に記載の組成物。
【請求項26】
前記腫瘍が血液癌腫瘍である、請求項
24に記載の組成物。
【請求項27】
容器内に請求項
15又は
16に記載の組成物を含むキット。
【請求項28】
抗CD25抗体を作製する方法であって、請求項1~
10のいずれか一項に記載の抗体を準備することと、該抗体を親和性成熟に供することとを含み、作製される抗CD25抗体がCD25に対して親抗体よりも大きな親和性を有する、方法。
【請求項29】
医薬組成物を作製する方法であって、請求項
28に記載の方法に従って作製された抗体を準備することと、該抗体と少なくとも1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤とを共配合することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD25抗体、抗CD25抗体を含む医薬組成物、及びかかる抗体の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌免疫療法は、癌を治療又は予防するために被験体自身の免疫系の使用を伴う。免疫療法は、癌細胞が表面上に免疫系によって検出され得る微妙に異なる分子を有することが多いという事実を利用する。これらの分子、すなわち癌抗原は、最も一般的にはタンパク質であるが、炭水化物等の分子も含まれる。このため、免疫療法は、これらの標的抗原を介して腫瘍細胞を攻撃するように免疫系を誘発することを含む。しかしながら、悪性腫瘍、特に固形腫瘍は、腫瘍細胞に固有であり、かつ腫瘍微小環境の構成要素によって媒介される様々な機構を用いて免疫監視を免れることができる。後者の中でも、制御性T細胞(Treg細胞又はTreg)による腫瘍浸潤、より具体的には、エフェクターT細胞(Teff)対Tregの好ましくないバランス(すなわち、TeffのTregに対する低い比率)が決定的因子として提唱されている(非特許文献1)。
【0003】
Tregは、その発見以来、免疫恒常性を媒介し、末梢性トレランスの確立及び維持を促進するのに重要であることが見出されている。しかしながら、癌の状況下でのTregの役割は、より複雑である。癌細胞が自己抗原及び腫瘍関連抗原の両方を発現することから、エフェクター細胞応答を抑えようとするTregの存在は、腫瘍の進行に寄与し得る。したがって、定着腫瘍におけるTregの浸潤は、効果的な抗腫瘍応答及び癌治療の全般に対する主な障害の1つである。Tregによって用いられる抑制機構は、現行の療法、特に抗腫瘍応答の誘導又は強化に依存する免疫療法の制限又は更には失敗に大きく寄与すると考えられる(非特許文献2)。
【0004】
Treg細胞がマウスモデルにおいて腫瘍の定着及び進行に寄与し、Treg細胞の欠如が腫瘍進行を遅らせることが一貫して実証されている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。ヒトにおいては、Treg細胞による高い腫瘍浸潤、より重要なことには、エフェクターT(Teff)細胞のTreg細胞に対する低い比率が、複数の癌での転帰不良と関連付けられる(非特許文献8)。逆に、高いTeff/Treg細胞比は、ヒト及びマウスの両方で免疫療法に対する好ましい応答と関連付けられる(非特許文献9、非特許文献10)。それにもかかわらず、腫瘍におけるTregの枯渇は複雑であり、この領域における前臨床研究及び臨床研究の結果は、主にTregに特異的な標的の特定の難しさから一貫していない。
【0005】
CD25は、Tregの枯渇を達成する可能性がある分子標的の1つである。実際、インターロイキン-2高親和性受容体α鎖(IL-2Rα)としても知られるCD25は、Treg細胞上では高レベルで構成的に発現され、Tエフェクター細胞上では存在しないか又は低レベルで発現されるため、Treg枯渇の有望な標的である。IL-2/CD25相互作用は、殆どがラット抗マウスCD25抗体であるPC61の使用を伴う、マウスモデルにおける幾つかの研究の対象とされている(非特許文献11)。この抗体のCD25結合及び機能活性が、異なる著者によって生成されたモノクローナル抗体のパネルと比較されている(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15)。元の研究では、PC61の治療活性ではなく予防活性が実証されているが、最近の研究から、この抗CD25抗体のFc最適化型が幾つかのマウス腫瘍モデルにおいて腫瘍内Treg枯渇につながり、有意な治療的有用性をもたらすことが示された(非特許文献16)。
【0006】
PC61等の利用可能な抗CD25抗体は、多くの他の抗マウスCD25抗体及び抗ヒトCD25抗体として開示されている殆どの抗体と同様、CD25へのIL-2の結合を遮断又は阻害する。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5を参照されたい。例えば、バシリキシマブ及びダクリズマブは、CD25へのIL-2の結合を阻害し、Tエフェクター細胞の活性化を低減するように開発されている抗ヒトCD25抗体である(非特許文献17及び非特許文献18)。バシリキシマブは、移植片対宿主病に現在認可されているキメラマウス-ヒトCD25抗体であり、ダクリズマブは、多発性硬化症の治療に認可されているヒト化CD25抗体である。
【0007】
クローン7D4(抗マウスCD25)、クローン2E4(抗マウスCD25)、クローンMA251(抗ヒトCD25)又は7G7B6(抗ヒトCD25)等の他の幾つかの抗CD25抗体は、依然としてCD25へのIL-2の結合を可能にする(すなわち、非遮断抗体)。イノリモマブ(Inolimomab)/BT536は、CD25へのIL-2の結合を遮断しないとされているが、CD25を介したIL-2のシグナル伝達を遮断する。7D4は、PC61又は同様の結合特性を有する抗体の存在下で又はそれによる処理後にCD25陽性細胞を検出するために広く使用されているラットIgM抗マウスCD25抗体である(非特許文献6)。単独での又はPC61と比較した7D4-IgM抗体の任意の機能特性を開示している文献は極めて少ない(非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21、非特許文献22、非特許文献11、非特許文献23)。実際、改善された抗体、特に癌療法に使用することができる抗体を得るために7D4のアイソタイプ又は他の構造的特徴を適合させるか又は何らかの形で変更する可能性は、従来技術では教示されていない。7D4-IgM(それ自体で又は改変抗体として)、又はマウスCD25に対する7D4の結合特徴と同様のCD25結合特徴を有するように設計若しくは特性評価された、任意の抗ヒトCD25の能力は、Treg細胞の最適化枯渇に関して詳細に評価されていない。
【0008】
上記で論考されるように、腫瘍におけるTreg細胞の浸潤、特にエフェクターTeff細胞のTreg細胞に対する低い比率は、臨床転帰不良を引き起こし得る。CD25は、Tregマーカーとして特定されているため、Tregを枯渇させることを目的とする治療用抗体の興味深い標的となる可能性がある。重要なことには、CD25は、IL-2の受容体のαサブユニットであり、IL-2は、Teff応答にとって重要なサイトカインである。これまで臨床試験が行われた抗CD25抗体は、Treg細胞を枯渇させる一方で、CD25(特にCD25/CD122/CD132複合体)を介したIL-2シグナル伝達を遮断する。本発明者らは今回、このようなIL-2シグナル伝達の遮断がTeff応答を制限し、IL2シグナル伝達を遮断しない抗CD25抗体が、IL-2がTeff細胞を刺激することを可能にしながら、Treg細胞を効果的に枯渇させ、強い抗癌効果を示す抗体を提供する可能性があることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2004/045512号
【文献】国際公開第2006/108670号
【文献】国際公開第1993/011238号
【文献】国際公開第1990/007861号
【文献】国際公開第2017/174331号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Smyth M et al., 2014
【文献】Onishi H et al; 2012
【文献】Elpek et al., 2007
【文献】Golgher et al., 2002
【文献】Jones et al., 2002
【文献】Onizuka et al., 1999
【文献】Shimizu et al., 1999
【文献】Shang et al., 2015
【文献】Hodi et al., 2008
【文献】Quezada et al., 2006
【文献】Setiady Y et al., 2010
【文献】Lowenthal J.W et al., 1985
【文献】Moreau, J.-L et al.
【文献】Volk HD et al., 1989
【文献】Dantal J et al., 1991
【文献】Vargas A et al., 2017
【文献】Queen C et al, 1989
【文献】Bielekova B, 2013
【文献】Kohm A et al., 2006
【文献】Hallett W et al., 2008
【文献】Fecci P et al., 2006
【文献】McNeill A et al., 2007
【文献】Couper K et al., 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このため、当該技術分野では、改善された抗CD25抗体、特にIL-2へのCD25の結合又はIL-2シグナル伝達を遮断せず、Tregを特に腫瘍内で枯渇させ、癌の治療方法に使用することができる抗CD25抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、新たな抗CD25抗体剤を提供する。幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤は、CD25へのインターロイキン2(IL-2)の結合又はCD25を介したIL-2のシグナル伝達を遮断することなくCD25、特にヒトCD25に特異的に結合し、Tregを特に腫瘍内で効率的に枯渇させる抗体又は抗原結合フラグメントである。この抗CD25抗体剤は、抗CD25抗体剤の非存在下でのシグナル伝達のレベルと比較して、CD25へのIL-2結合に応答したIL-2シグナル伝達を少なくとも50%可能にする。したがって、この抗CD25抗体剤は、非遮断又は非IL-2遮断抗CD25抗体剤と称される。
【0013】
幾つかの実施の形態では、抗CD25抗体剤又は抗原結合フラグメントは、CD25へのIL-2の結合又はCD25を介したIL-2のシグナル伝達を遮断することなくCD25に結合する。すなわち、幾つかの実施の形態では、抗CD25抗体は、抗体の非存在下でのIL-2シグナル伝達と比較して50%未満のIL-2シグナル伝達を阻害する。抗CD25抗体は、CD25へのIL-2の結合又はそのシグナル伝達を遮断することなくCD25への結合を可能にする構造要素を特徴とする。
【0014】
驚くべきことに、IL-2結合又はCD25を介したシグナル伝達を遮断せず、Tregを枯渇させる抗CD25抗体が強い抗腫瘍効果を有し、特にTregを枯渇させるが、IL-2シグナル伝達を遮断する抗CD25抗体よりも強い抗腫瘍効果を有することが見出された。この抗体は、CD4+Teff/Treg比及びCD8+Teff/Treg比を増大させた。Teff細胞に対するIL-2シグナル伝達を維持した上での腫瘍浸潤Treg細胞の効果的な枯渇は、単独で又は他の抗癌剤と組み合わせて癌の治療に用いられる治療アプローチにつながる。
【0015】
しかしながら、当業者には、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントの特定の作用機構によって本開示の教示が限定されないことが理解される。提供される抗体の関連した構造的及び/又は機能的特徴は、本明細書に記載されており、自明である。
【0016】
幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤は、ヒトCD25細胞外ドメイン中の特異的エピトープへの結合と関連付けられ、及び/又は抗CD25抗体剤を薬学的使用及び/又は製造に特に適したものとする1つ以上の特徴を特徴とする。
【0017】
提供される抗CD25抗体剤(例えば、提供される抗体又はその抗原結合フラグメント)、抗CD25抗体剤を含む組成物、及び/又は抗CD25抗体剤の使用を含む提供される技術は、医学に有用である。幾つかの実施の形態では、このような提供される技術は、癌の療法及び/又は予防法に有用である。
【0018】
幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤は、aCD25-a-646の配列を有する抗体、より一般には、1つ以上の抗原結合フラグメント又はその一部であるか又はそれを含み、例えば可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列を含み、及び/又は幾つかの実施の形態では、aCD25-a-646 HCDR1及びHCDR2配列の一方又は両方を含む抗体又は抗体剤によって例示される。本明細書の抗CD25抗体剤、例えばaCD25-a-646への言及には、文脈からそうではないことが示唆されていない限り、親和性成熟変異体aCD25-a-646-m1、aCD25-a-646-m2、aCD25-a-646-m3、aCD25-a-646-m4、及びaCD25-a-646-m5を含むその変異体が含まれる。
【0019】
一実施の形態では、aCD25-a-646のHCDR1、HCDR2及びHCDR3アミノ酸配列を含む抗CD25抗体剤が提供される。別の実施の形態では、aCD25-a-646のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3アミノ酸配列を含む抗CD25抗体剤が提供される。別の実施の形態では、aCD25-a-646の可変重鎖アミノ酸配列を含む抗CD25抗体剤が提供される。別の実施の形態では、aCD25-a-646又はその変異体(例えば、親和性成熟変異体)の可変重鎖及び可変軽鎖アミノ酸配列を含む抗CD25抗体剤が提供される。親和性成熟変異体aCD25-a-646-m1、aCD25-a-646-m2、aCD25-a-646-m3、aCD25-a-646-m4、及びaCD25-a-646-m5をベースとする同等の抗CD25抗体剤も特に企図される。
【0020】
幾つかの実施の形態では、ヒトCD25細胞外ドメインへの結合についてaCD25-a-646(又はその抗原結合フラグメント若しくは誘導体若しくは変異体(親和性成熟変異体を含む))と競合する抗CD25抗体剤が提供される。
【0021】
幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤(例えば、親和性成熟変異体等のその変異体及び誘導体を含む、提供される抗体又はその抗原結合フラグメント)は、10-7M以下の範囲(例えば、10-8M又は10-9M又は10-10M又は10-11M又は10-12M又は10-13Mの範囲)のKdでヒトCD25に結合する。幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤(例えば、親和性成熟変異体等のその変異体及び誘導体を含む、提供される抗体又はその抗原結合フラグメント)は、10-7M~10-10M又は10-7M~10-9MのKd値でヒトCD25に結合する。
【0022】
幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤(例えば、その変異体及び誘導体を含む、提供される抗体又はその抗原結合フラグメント)は、aCD25-a-646(又はその抗原結合フラグメント若しくは誘導体若しくは変異体)が結合するヒトCD25上のエピトープに結合する。幾つかの実施の形態では、このような提供される抗CD25抗体剤は、ヒトCD25細胞外ドメインに結合し得る。幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤は、(例えば、本明細書に記載されるか又はそうでなければ当該技術分野で既知の1つ以上のアッセイを用いて評定した場合に)CD25のエピトープ、特にaCD25ep-aとして特定されるものに結合し得る。幾つかの実施の形態では、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト及び非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)のCD25(例えば、ヒト及び/又はカニクイザルCD25上の細胞外エピトープ)に10-7M範囲以下、例えば10-8M又は10-9M又は10-10M又は10-11M又は10-12M又は10-13Mの範囲のKd値で結合し得る。幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤(例えば、親和性成熟変異体等のその変異体及び誘導体を含む、提供される抗体又はその抗原結合フラグメント)は、10-7M~10-10M又は10-7M~10-9MのKd値でヒトCD25に結合する。
【0023】
特に、本開示は、本明細書に記載される特に有用な抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)(例えば、ヒトCD25(例えば、その細胞外エピトープ)への特異的結合、本明細書に記載される1つ以上のCDR配列要素の組込み(特に、任意にHCDR1及び/又はHCDR2要素と組み合わせたHCDR3配列要素の組込み)、本明細書に記載されるIL-2シグナル伝達活性、本明細書に記載される細胞毒性活性(例えば、免疫制御性細胞又はCD25発現癌細胞等のCD25陽性細胞に対する)への影響及びそれらの組合せ等の或る特定の構造的及び/又は機能的特徴を特徴とする抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)を特定及び/又は特性評価するために利用することができる手順を提供する。幾つかの実施の形態では、本明細書に記載される特に有用な抗CD25抗体は、複数のかかる特徴を特徴とする。幾つかの実施の形態では、本明細書に記載される1つ以上の抗体は、抗CD25抗体剤として特徴付けられ得る。
【0024】
このため、本明細書で例示されるように、aCD25-a-646配列(特にaCD25-a-646-HCDR3及び/又はaCD25-a-646-LCDR3)を含む或る特定の抗体及び/又は抗原結合フラグメントは、このような望ましい構造的及び/又は機能的特徴を特徴とする。かかる抗体及び/又はその抗原結合フラグメントは、本明細書で抗CD25抗体剤と称され得る。さらに、本開示に従うと、aCD25-a-646と競合する抗体及びその抗原結合フラグメントは、特に有用な抗体である可能性がある。かかる抗体及び/又はその抗原結合フラグメントも本明細書で抗CD25抗体剤と称され得る。
【0025】
本明細書に記載される抗体(及び/又はその抗原結合フラグメント)は、医学(例えば、療法及び/又は予防法、例えば癌の治療)に特に有用であり、及び/又はヒトCD25細胞外ドメイン内のエピトープ、例えばaCD25ep-aとして特定されるものの標的化を要する又は伴う方法に対して使用することができる。提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、最も適切なアイソタイプ、特にIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4アイソタイプ抗体からなる群のヒトアイソタイプ、特にヒトIgG1又はヒトIgG2、好ましくはヒトIgG1を呈するように作製することができる。
【0026】
一態様では、本発明は、aCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列及びそれを含むポリペプチド、例えば可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)を含む抗体又は抗原結合フラグメントを提供する。幾つかの実施の形態では、かかる抗体又は抗原結合フラグメントは、aCD25-a-アミノ酸配列要素、例えば、
a)可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-HCDR1アミノ酸配列(配列番号2)、及び/又は、
b)可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-HCDR2アミノ酸配列(配列番号3)、
を更に含むことを更に特徴とし得る。
【0027】
幾つかの実施の形態では、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、上記で規定される可変重鎖相補性決定領域(すなわち、aCD25-a-646アミノ酸配列要素)を、特にそれらの結合及び機能特性が正確に発揮されるように更に正確な順序で、特にaCD25-a-646-HCDR123アミノ酸配列(配列番号5)に含まれるもののような抗体フレーム配列を隔てて含み得る。例えば、幾つかの実施の形態では、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、aCD25-a-646-HCDR123アミノ酸配列(配列番号5)と、任意に、
a)可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)、
b)可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)、及び、
c)可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)と、
を含み得る。
【0028】
このため、幾つかの実施の形態では、本発明は、aCD25-a-646-HCDR123アミノ酸配列(配列番号5)を含む可変重鎖を含む単離抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。かかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、実施例に記載されるように、aCD25-a-646-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖を更に含むのが好ましい。さらに、aCD25-a-646アミノ酸配列は、上記で規定されるaCD25-a-646アミノ酸配列要素に対する多数の置換によって規定される抗体配列も指す。例えば、かかる配列は、可変重鎖相補性決定領域3(HCDR3)として、aCD25-a-646-HCDR3(配列番号4)内に1個、2個、3個、4個又はそれ以上のアミノ酸置換を有する配列を含み得る。更なる実施の形態では、aCD25-a-646アミノ酸配列は、可変重鎖相補性決定領域1、2及び3(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)として、aCD25-a-646-HCDR1(配列番号2)、aCD25-a-646-HCDR2(配列番号3)及びaCD25-a-646-HCDR3(配列番号4)内に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上のアミノ酸置換を有する配列、より好ましくはaCD25-a-646-HCDR123(配列番号5)内に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上のアミノ酸置換を有する配列を含む抗体配列も指す。かかるaCD25-a-646アミノ酸配列要素及びかかる置換を呈する抗体は、依然としてaCD25-a-646、概して抗CD25抗体剤の結合特性及び/又は機能特性を呈することができる。
【0029】
したがって、一実施の形態では、本発明は、
a. aCD25-a-646の可変重鎖領域配列(配列番号5)(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又はaCD25-a-646の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、及び/又は、
b. aCD25-a-646の可変軽鎖領域配列(配列番号9)(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又はaCD25-a-646の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、
を含む抗CD25抗体剤(すなわち、抗体又はその抗原結合フラグメント)を提供する。
【0030】
幾つかの実施の形態では、アミノ酸置換はCDR配列では起こらない。
【0031】
幾つかの実施の形態では、本発明は、
a. aCD25-a-646の可変重鎖領域配列(配列番号5)(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又はaCD25-a-646の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖領域配列、及び/又は、
b. aCD25-a-646の可変軽鎖領域配列(配列番号9)(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又はaCD25-a-646の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する可変軽鎖領域配列、
を含む抗CD25抗体剤(すなわち、抗体又はその抗原結合フラグメント)を提供する。
【0032】
幾つかの実施の形態では、%配列同一性は、aCD25-a-686(又は本明細書に開示されるようなその変異体、例えばその親和性成熟変異体)の6つ全てのCDRの配列を用いずに算出される。例えば、抗CD25抗体剤は、aCD25-a-686(又はその変異体、例えばその親和性成熟変異体)の可変重鎖領域配列に対して少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖領域配列、及び/又はaCD25-a-686(又はその変異体、例えばその親和性成熟変異体)の可変軽鎖領域配列に対して少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖領域配列を含み得て、任意のアミノ酸変異は、可変重鎖領域配列及び可変軽鎖領域配列のフレームワーク領域でのみ生じる。かかる実施の形態では、或る特定の配列同一性を有する抗CD25抗体剤は、それらが由来する抗CD25抗体剤の完全な重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。
【0033】
本発明は、本明細書に記載される抗体の変異抗体又はその抗原結合フラグメントも提供する。本発明は、抗体の軽鎖又は重鎖中の任意のDGモチーフが、例えばアスパラギン酸異性化が低減するように変更されていてもよく、及び/又は抗体の軽鎖又は重鎖中の任意のNGモチーフが、例えばアスパラギン脱アミド化が低減するように変更されていてもよく、及び/又は抗体の軽鎖又は重鎖中の任意のメチオニンが、例えばメチオニン酸化が低減するように変更されていてもよい抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。例えば、DGモチーフが、モチーフ内のアミノ酸の一方又は両方が異なるアミノ酸で置換されるように変更されていてもよい。NGモチーフが、モチーフ内のアミノ酸の一方又は両方が異なるアミノ酸で置換されるように変更されていてもよい。例えば、かかるモチーフはEG、DQ又はDAに突然変異していてもよい。メチオニン残基が異なるアミノ酸、例えばロイシン又はフェニルアラニンで置き換えられるように変更されていてもよい。
【0034】
かかる実施の形態では、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えばaCD25-a-646であり得る又はそれに由来し得る。変異抗CD25抗体は、aCD25-a-646の結合特性及び機能特性のいずれか、場合によっては全てを有する更なる抗体をもたらす。例えば、変異抗CD25抗体は、非IL-2遮断抗体である。
【0035】
したがって、幾つかの実施の形態では、本明細書で提供される抗体又はそのフラグメントは、当該技術分野で標準であるようにDGモチーフ又はNGモチーフ、特にCDR領域に見られるDG又はNGモチーフが除去又は修飾されるように突然変異させ、化学修飾に対する感受性を低減することができる。このようにして修飾された、かかる抗体は、最終配列に至る前に更なる修飾(例えば、親和性成熟)を行う必要がある場合がある。
【0036】
本発明の一実施の形態では、本明細書で開示される抗体のCDR1、CDR2及びCDR3配列(例えば、aCD25-a-646のCDR1、CDR2及びCDR3配列)、又は本明細書で開示される任意の抗体の可変重鎖及び可変軽鎖(例えば、aCD25-a-646のいずれかの可変重鎖及び可変軽鎖)を有するが、指定の配列とはCDR中の少なくとも1つ又は少なくとも2つのDG又はNGモチーフ(存在する場合)が異なるモチーフに変化しているという点で異なる変異抗体が提供される。開示の変異体は、aCD25-646について記載されているように使用及び配合することができる。
【0037】
本発明は、親和性成熟抗体、例えば本明細書で開示される抗体のいずれかに由来する親和性成熟変異体も提供する。幾つかの実施の形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、
aCD25-a-646-m1-HCDR1アミノ酸配列(配列番号10)、aCD25-a-646-m2-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)、aCD25-a-646-m3-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)、aCD25-a-646-m4-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)及びaCD25-a-646-m5-HCDR1アミノ酸配列(配列番号11)からなる群から選択される可変重鎖相補性領域1;及び/又は、
aCD25-a-646-m1-HCDR2アミノ酸配列(配列番号12)、aCD25-a-646-m2-HCDR2アミノ酸配列(配列番号13)、aCD25-a-646-m3-HCDR2アミノ酸配列(配列番号14)、aCD25-a-646-m4-HCDR2アミノ酸配列(配列番号12)及びaCD25-a-646-m5-HCDR2アミノ酸配列(配列番号15)からなる群から選択される可変重鎖相補性領域2;及び/又は、
aCD25-a-646-m1-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、aCD25-a-646-m2-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、aCD25-a-646-m3-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)、aCD25-a-646-m4-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)及びaCD25-a-646-m5-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)からなる群から選択される可変重鎖相補性領域3;
を含む。
【0038】
本発明の幾つかの実施の形態では、変異抗体又はその抗原結合フラグメントは、表2で与えられる(例えば、aCD25-a-646-m1、aCD25-a-646-m2、aCD25-a-646-m3、aCD25-a-646-m4又はaCD25-a-646-m5の)重鎖CDR配列を有する。幾つかの実施の形態では、変異抗体又はその抗体結合フラグメントは、表3で与えられる(例えば、aCD25-a-646-m1、aCD25-a-646-m2、aCD25-a-646-m3、aCD25-a-646-m4又はaCD25-a-646-m5の)軽鎖CDR配列を有し得る。本発明は特に、本明細書でaCD25-a-646-m1、aCD25-a-646-m2、aCD25-a-646-m3、aCD25-a-646-m4及びaCD25-a-646-m5と称されるaCD25-a-646の親和性成熟変異体、並びにそれらのフラグメントを提供する。開示される親和性成熟変異体は、aCD25-a-646について記載されるように使用及び配合され得る。
【0039】
一実施の形態では、変異抗体又はその抗体結合フラグメントは、aCD25-a-646-m1-HCDR123アミノ酸配列(配列番号16)、aCD25-a-646-m2-HCDR123アミノ酸配列(配列番号17)、aCD25-a-646-m3-HCDR123アミノ酸配列(配列番号18)、aCD25-a-646-m4-HCDR123アミノ酸配列(配列番号19)、及びaCD25-a-646-m5-HCDR123アミノ酸配列(配列番号20)から選択される配列を含む可変重鎖を含むことができる。一実施の形態では、変異抗体又はその抗体結合フラグメントは、aCD25-a-646-m1-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、aCD25-a-646-m2-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、aCD25-a-646-m3-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、aCD25-a-646-m4-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、及びaCD25-a-646-m5-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)から選択される配列を含む可変軽鎖を含むことができる。aCD25-a-646について記載されるようなアミノ酸置換を有する変異体(例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のそれぞれに最大5つのアミノ酸置換を有する変異体)も提供される。一実施の形態では、親和性成熟抗体は、改変DGモチーフ及び/又はNGモチーフを有する、及び/又は任意のメチオニン残基を取り除く若しくは変異させるように改変された親和性成熟抗体である。
【0040】
幾つかの実施の形態では、本発明は、抗CD25抗体を作製する方法であって、本明細書に記載される抗体(例えば、aCD25-a-646、又はその抗原結合フラグメント若しくは変異体)を準備することと、抗体を親和性成熟に供することとを含み、作製される抗体が親抗体よりも大きな親和性でCD25に結合する、方法を提供する。作製される抗体は、例えばKdによって測定されるように、親抗体がCD25に結合するよりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%大きい親和性でCD25に結合するのが好ましい。親和性を測定する方法は、当該技術分野で既知であり、下記実施例に記載されている。かかる方法によって作製される親和性成熟抗体は、他の抗CD25抗体剤について本明細書に記載されるように配合及び使用することができる。
【0041】
親和性成熟は、当業者に既知の任意の好適な方法に従って行うことができる。例えば、in vitro抗体ディスプレイシステムが高い親和性を有する特異抗体の生成に広く使用されている。これらのシステムでは、表現型(すなわち、抗体フラグメント)が遺伝子型(すなわち、抗体遺伝子)に結び付けられ、抗体の配列の直接的決定が可能である。抗体レパートリーのディスプレイを達成し、その後の結合剤の選択を可能にする幾つかのシステムが開発されており、選択の厳密性を高めることで、さらに高い親和性の変異体の選択が可能となる。抗体フラグメントは、酵母、リボソーム、ファージディスプレイ粒子において又はDNAへの直接カップリングによって発現させることができる。
【0042】
現在の抗体親和性成熟方法は、確率論的及び非確率論的の2つの突然変異誘発のカテゴリーに属する。変異性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、突然変異誘発細菌株及び飽和突然変異誘発が確率論的突然変異誘発方法の典型例である。非確率論的技法では、特異的変異体の限られたコレクションを生成するためにアラニンスキャニング又は部位特異的突然変異誘発を用いることが多い。加えて、親抗体のシャッフリング変異体を得るためのシャッフリングアプローチを用いて、抗体の親和性を更に改善することもできる。
【0043】
したがって、本発明の一実施の形態では、親和性成熟の方法は、確率論的突然変異誘発(例えば、変異性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、突然変異誘発細菌株又は飽和突然変異誘発)、非確率論的突然変異誘発(例えば、アラニンスキャニング又は部位特異的突然変異誘発)、シャッフリング(例えば、DNAシャッフリング、鎖シャッフリング又はCDRシャッフリング)、及び修飾を導入するCRISPR-Cas9システムの使用からなる群から選択される。
【0044】
親和性成熟方法は、例えばRajpal et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2005, 102(24):8466-71、Steinwand et al., MAbs, 2014, 6(1):204-18及びHandbook of Therapeutic Antibodies, Wiley, 2014, Chapter 6, Antibody Affinity (pages 115-140)に記載されている。
【0045】
幾つかの実施の形態では、医薬組成物を作製する方法であって、上記の方法(すなわち、抗体を親和性成熟によって作製する方法)に従って作製された抗体を準備することと、抗体と少なくとも1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤とを同時配合する(co-formulating)こととを含む、方法が提供される。医薬組成物の作製に使用される抗体は、aCD25-a-646の親和性成熟変異体であり得る。かかる方法によって作製される医薬組成物は、他の抗CD25抗体剤について本明細書に記載されるように本発明の治療方法に使用することができる。
【0046】
本明細書に記載されるCD25に特異的に結合する抗体及び/又は抗原結合フラグメント(例えば、aCD25-a-646-HCDR3又はaCD25-a-646-HCDR123等の1つ以上のaCD25-a-646アミノ酸配列要素を含み得る、及び/又はヒトCD25及び非ヒト霊長類CD25、例えばカニクイザルCD25等への結合についてaCD25-a-646と競合し得る抗CD25抗体剤)は、任意の様々なフォーマットで提供することができる。例えば、幾つかの実施の形態では、適切なフォーマットは、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)、scFv-Fcフラグメント、一本鎖抗体(scAb)、アプタマー又はナノボディであり得るか又はそれを含み得る。幾つかの実施の形態では、抗体又はその抗原結合フラグメント(特にモノクローナル抗体)は、ウサギ、マウス、キメラ、ヒト化又は完全ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントであり得る。幾つかの実施の形態では、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、所与の用途に最も適切である可能性があることから、IgG、IgA、IgE又はIgMアイソタイプ(好ましくはヒトのもの)であり得る。幾つかの実施の形態では、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgGアイソタイプ、特にIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプである(幾つかの実施の形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1サブクラスのものである。別の実施の形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG2サブクラスのものである)。幾つかの実施の形態では、例えば、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば更なる結合及び/又は官能基をaCD25-a-646アミノ酸配列等の抗CD25抗体剤に結合させることが望ましい場合に多重特異性結合剤の一部として提供され、単離抗体又は抗原結合フラグメントが二重特異性抗体、多重特異性抗体、又は当該技術分野で利用可能であり得る他の多重特異性フォーマットに含まれ得る。
【0047】
幾つかの実施の形態では、提供される抗CD25抗体剤は、CD25結合物質(entity)(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)と治療剤又は診断剤等のコンジュゲートペイロードとを含む。多くのかかる実施の形態では、この抗体剤は、「免疫複合体」とみなされる及び/又は称される。抗体医薬等の特異的免疫複合体の生成に使用することができる技術及び化合物の例は、文献に開示されており(Beck A et al., 2017)、幾つかの既知の抗CD25抗体に適用可能と記載されている(O'Mahony D et al, 2008、Oh et al, 2017、Kreitman RJ et al, 2016、Flynn MJ et al 2016)。
【0048】
幾つかの実施の形態では、本発明は、提供される抗体又はその抗原結合フラグメント(又は提供される親和性成熟変異体を含むその変異体)を特定するaCD25-a-646アミノ酸配列を提供する。幾つかの実施の形態では、かかる配列は、単離タンパク質として又はCD25を発現する細胞(免疫細胞又は細胞株、例えばSU-DHL1細胞等)の表面上でのヒトCD25中のエピトープ(例えば、aCD25ep-a)、更には任意に非ヒト霊長類、例えばカニクイザルのCD25及び/又はマウスCD25の対応するエピトープに結合する、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントを特定する。
【0049】
幾つかの実施の形態では、本発明は、ヒトCD25のエピトープと特異的に結合する抗CD25抗体又は抗原結合フラグメントを提供し、ここで、エピトープは、配列番号1のアミノ酸42~56に含まれる1つ以上のアミノ酸残基を含む。好ましくは、エピトープは、少なくとも4つのアミノ酸を含み、ここで、エピトープは、配列番号1のアミノ酸42~56に含まれる1つ以上のアミノ酸を含む。好ましくは、エピトープは、少なくとも5つのアミノ酸、少なくとも6つのアミノ酸、少なくとも7つのアミノ酸、少なくとも8つのアミノ酸、少なくとも9つのアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも11個のアミノ酸、少なくとも12個のアミノ酸、少なくとも13個のアミノ酸、又は少なくとも14個以上のアミノ酸を含み、ここで、エピトープは、配列番号1のアミノ酸42~56に含まれる1つ以上のアミノ酸を含む。エピトープは、線形又は立体配座、すなわち不連続性のいずれであってもよい。幾つかの実施の形態では、抗CD25抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトCD25のエピトープに特異的に結合し、ここで、エピトープは、配列番号1のアミノ酸42~56に含まれる、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、又は少なくとも14個以上のアミノ酸残基を含む。幾つかの実施の形態では、抗CD25抗体又は抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸42~56を含むエピトープに結合する。
【0050】
幾つかの実施の形態では、本発明は、aCD25-a-646アミノ酸配列を含み、及び/又は単離タンパク質としてヒトCD25細胞外ドメインに、またヒトCD25を発現する細胞の表面上にて結合し、同じエピトープ、特にaCD25ep-a(タンパク質配列KEGTMLNCECKRGFR(配列番号21);Uniprot配列P01589におけるアミノ酸42~56)として実施例にて特定されるエピトープに対して競合することが可能な1つ以上のaCD25-a-646アミノ酸配列要素(例えば、aCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列を含む、及び/又はaCD25-a-646と競合する)を含む抗体又はその抗原結合フラグメントと同程度の結合特徴を示す抗体又は抗原結合フラグメントをスクリーニング及び/又は特性評価する手法を提供する。
【0051】
さらに、本発明は、1つ以上のaCD25-a-646アミノ酸配列要素を含む抗体又はその抗原結合フラグメントと同等の機能的特徴を呈する抗体又はその抗原結合フラグメントをスクリーニングする手順も提供し、かかる特徴にはIL-2とCD25との相互作用の阻害の欠如、IL-2シグナル伝達の阻害の欠如、及び細胞毒性活性、及び抗CD25抗体剤としての作用が含まれる。これらの範囲で、候補抗体は、in vitro/ex vivoアッセイ、セルベースアッセイ及び/又は動物モデルにおいて評価する場合に、かかる特徴のいずれか、場合によっては全ての存在を確立するための実施例に記載されるアッセイ又は当該技術分野で既知の他のアッセイにおいて試験することができる。
【0052】
幾つかの実施の形態では、本発明は、aCD25-a-646アミノ酸配列(又は提供される親和性成熟変異体を含むその変異体)等の抗CD25抗体剤を含む単離抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を提供する。幾つかの実施の形態では、このような提供される核酸分子は、コドン最適化核酸配列を含有してもよく、及び/又は例えば細菌、酵母、昆虫、魚、マウス、サル又はヒトの細胞等の宿主細胞における発現のための適切な核酸ベクター内の発現カセットに含まれていてもよい。
【0053】
幾つかの実施の形態では、本発明は、抗CD25抗体剤(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含む)の、例えば本明細書に記載される1つ以上の特性を有する、提供される抗CD25抗体剤(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)を発現する異種核酸分子(例えば、DNAベクター)を含む宿主細胞を提供する。幾つかの実施の形態では、本開示は、抗CD25抗体剤(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含む)の、例えば本明細書に記載される1つ以上の特性を有する抗CD25抗体剤(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)を作製する方法を提供する。幾つかの実施の形態では、かかる方法は、核酸(例えば、宿主細胞を構成し得る及び/又はベクターによって宿主細胞に送達され得る異種核酸)を含む宿主細胞を培養することを含み得る。幾つかの実施の形態では、かかる宿主細胞(及び/又は異種核酸配列)は、抗CD25抗体剤(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)が宿主細胞から分泌され(例えば、それにより細胞培養上清から単離することができる)、及び/又は細胞表面上に露出する(例えば、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に付与する人工T細胞受容体のように、かかるaCD25-a-646アミノ酸配列及び配列要素が、かかる細胞の状況下で又はかかる細胞と共に使用されることが意図される場合)ように配置及び構築される。
【0054】
幾つかの実施の形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、脱フコシル化(afucosylated:アフコシル化)されていてもよい。抗体グリコシル化は、抗体(例えば、モノクローナル抗体、組み換え抗体、及び/又は別の形で改変又は単離された抗体)及びFc融合タンパク質の活性、薬物動態及び薬力学に影響を及ぼす可能性があり、特定の技術を利用して所望のグリコシル化プロファイルを有する抗体を得ることができることがよく知られている(Liu L, 2015)。本発明に従って使用される抗体(例えば、抗CD25抗体剤であり得る又は抗CD25抗体剤と称され得る抗体を含む、例えば本明細書に記載される抗CD25抗体)の細胞毒性を支持するエフェクター機能は、抗体フコシル化レベルを低下させる方法を用いて高めることができる。かかる特性を呈する特定のaCD25-a-646配列要素を含む抗体は、例えばフコシル化能を欠く若しくはフコシル化能が低下した細胞株を遺伝子操作する技術(その一部はPotelligent(Lonza)、GlyMAXX(ProBiogen)、Evitriaによって提供されるもののように市販されている)を用いてaCD25-a-646配列を発現させるか、又は製造プロセスを操作すること、例えばオスモル濃度を制御し、及び/又は酵素阻害剤を使用することによって生成することができる。例えば、欧州特許第2480671号に記載の方法も参照されたい。
【0055】
幾つかの実施の形態では、本発明は、本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又はCD25との結合についてaCD25-a-646抗体と競合する抗体若しくはその抗原結合フラグメントを特に含む、例えば本明細書で抗CD25抗体剤と称される抗体について記載される)望ましい特性を有する、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。幾つかの実施の形態では、このような提供される組成物は、治療的、診断的又は予防的用途等の医学的用途を対象とし、及び/又はその用途で使用される。幾つかの実施の形態では、このような提供される組成物は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を更に含んでいてもよく、及び/又は癌の治療に使用することができる。幾つかの実施の形態では、当該技術分野で既知のように、医薬組成物に1つ以上の担体、賦形剤、塩、緩衝剤等を配合してもよい。当業者は、所与の方法及び/又は投与部位、例えば非経口(例えば、皮下、筋肉又は静脈注射)、粘膜、腫瘍内、腫瘍周囲、経口又は局所投与に特に望ましい及び/又は有用であり得る技術を含む様々な配合技術を認識し、容易に利用することができる。多くの実施の形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合部分)を含む、提供される医薬組成物は、非経口送達(例えば、注射及び/又は点滴による)のために配合される。幾つかの実施の形態では、このような提供される医薬組成物は、例えば充填済みのシリンジ又はバイアルのフォーマットで提供することができる。幾つかの実施の形態では、このような提供される医薬組成物は、例えば乾燥(例えば、凍結乾燥)形態で提供及び/又は利用することができる。代替的には、幾つかの実施の形態では、このような提供される医薬組成物は、液体形態(例えば、溶液、懸濁液、分散液、エマルション等として)、ゲル形態等で提供及び/又は利用することができる。
【0056】
幾つかの実施の形態では、本発明は、B細胞悪性腫瘍、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄腫)、骨髄増殖性障害、固形腫瘍(乳癌、扁平上皮癌、結腸癌、頭頸部癌、肺癌、泌尿生殖器癌、直腸癌、胃癌、肉腫、黒色腫、食道癌、肝癌、精巣癌、子宮頸癌、肥満細胞腫、血管腫、眼癌、喉頭癌、口腔癌、中皮腫、皮膚癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、前立腺癌、肺癌、膵癌、腎癌(renal cancer)、胃癌、非小細胞肺癌、腎臓癌(kidney cancer)、脳癌及び卵巣癌等)等の癌の治療及び/又はその治療のための薬剤の製造における、本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列要素を含む)抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)及び/又はそれらを含む組成物の使用を提供する。癌は、CD20、HER2、PD-1、PD-L1、SLAM7F、CD47、CD137、CD134、TIM3、CD25、GITR、CD25、EGFR等のような特定の腫瘍関連マーカー及び抗原の存在に基づいて確定された癌、又は高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high;MSI-H)若しくはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient;dMMR)と称されるバイオマーカーを有することが特定されている癌でもあり得る。さらに、かかる病態は、上皮内癌、くすぶり型骨髄腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、子宮頸部上皮内腫瘍、MALTリンパ腫/GALTリンパ腫(GALTomes)及び様々なリンパ増殖性障害等の上記の癌の前癌性の非侵襲状態を確定する場合にも考慮され得る。幾つかの実施の形態では、治療される被験体は、固形腫瘍を有するのが好ましい。
【0057】
このため、幾つかの実施の形態では、本発明は、被験体において癌を治療する方法であって、被験体に、本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含む)、提供される抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)、又はCD25の結合についてaCD25-a-646アミノ酸配列を含む抗体と競合する抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含む組成物を有効量投与することを含む、方法を提供する。幾つかの実施の形態では、被験体は、固形腫瘍を有するのが好ましい。
【0058】
このため、幾つかの実施の形態では、本発明は、被験体において制御性T細胞を枯渇させる方法であって、被験体に、本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含む)、提供される抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)、又はCD25の結合についてaCD25-a-646アミノ酸配列を含む抗体と競合する抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含む組成物を有効量投与する工程を含む、方法を提供する。一実施の形態では、被験体は固形腫瘍を有する。一実施の形態では、被験体は血液癌を有する。
【0059】
幾つかの実施の形態では、提供される方法は、被験体に少なくとも1つの付加的な作用物質又は療法を同時に又は任意の順序で順次に投与することを更に含み得る(すなわち、それにより被験体は併用療法を受ける)。幾つかの実施の形態では、かかる少なくとも1つの付加的な作用物質又は療法は、抗癌剤(例えば、化学療法剤)、放射線療法(体外から放射線照射を行うこと又は放射性コンジュゲート化合物を投与することによる)、抗腫瘍抗原若しくはマーカー抗体(抗原又はマーカーは、例えばCD4、CD38、CA125、PSMA、c-MET、VEGF、CD137、VEGFR2、CD20、HER2、HER3、SLAMF7、CD326、CAIX、CD40、CD47又はEGF受容体である)、チェックポイント阻害剤若しくは免疫調節抗体(例えば、PD-1、PD-L1、TIM3、CD38、GITR、CD134、CD134L、CD137、CD137L、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、B7RP1、LAG3、ICOS、TIM3、GAL9、CD28、AP2M1、SHP-2、OX-40、VISTA、TIGIT、BTLA、HVEM、CD160等を標的とする抗体)、ワクチン(特に癌ワクチン、例えばGVAX)、アジュバント、標準使用プロトコル、癌細胞を標的とする若しくは癌細胞に対する免疫応答を刺激する1つ以上の他の化合物、又はそれらの任意の組合せであるか又はそれを含み得る。付加的な作用物質は、PD-1アンタゴニスト、例えば抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体等の免疫チェックポイント阻害剤であるのが好ましい。或る特定の実施の形態では、かかる少なくとも1つの付加的な作用物質又は療法が抗体であるか又は抗体を含む場合、かかる抗体のフォーマット及び/又はかかる抗体が標的とする抗原は、文献中に挙げられるものから選ばれ、場合によっては所与の癌に適合させることができる(Sliwkowski M & Mellman I, 2013、Redman JM et al., 2015、Kijanka M et al., 2015)。かかる抗原及び対応する抗体としは、限定されるものではないが、CD22(ブリナツモマブ)、CD20(リツキシマブ、トシツモマブ)、CD56(ロルボツズマブ(Lorvotuzumab))、CD66e/CEA(ラベツズマブ)、CD152/CTLA-4(イピリムマブ)、CD221/IGF1R(MK-0646)、CD326/Epcam(エドレコロマブ)、CD340/HER2(トラスツズマブ、ペルツズマブ)及びEGFR(セツキシマブ、パニツムマブ)が挙げられる。少なくとも1つの付加的な作用物質又は療法が化学療法剤である実施の形態では、化学療法剤は、癌療法に使用される当該技術分野で既知の化学療法剤であり得る。かかる化学療法剤としては、限定されるものではないが、アルキル化剤、アントラサイクリン、エポチロン、ニトロソウレア、エチレンイミン/メチルメラミン、スルホン酸アルキル、アルキル化剤、代謝拮抗物質、ピリミジン類似体、エピポドフィロトキシン(epipodophylotoxins)、L-アスパラギナーゼ等の酵素;IFNα、IFN-γ、IL-2、IL-12、G-CSF及びGM-CSF等の生物学的応答調節物質;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン等の白金配位錯体、アントラセンジオン、ヒドロキシウレア等の置換尿素、N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、ミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミド等の副腎皮質抑制剤(adrenocortical suppressants);プレドニゾン及び同等物等の副腎皮質ステロイドアンタゴニスト、デキサメタゾン及びアミノグルテチミドを含むホルモン及びアンタゴニスト;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロール等のプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール同等物等のエストロゲン;タモキシフェン等の抗エストロゲン;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/同等物を含むアンドロゲン;フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体及びロイプロリド等の抗アンドロゲン;フルタミド等の非ステロイド性抗アンドロゲン;TGFβ経路、IDO(インドールアミンジオキシゲナーゼ)、アルギナーゼ及び/又はCSF1Rを標的とする分子;オラパリブ、ベリパリブ、イニパリブ、ルカパリブ等のPARP阻害剤;並びにチバンチニブ、ホレチニブ、ゴルバチニブ、カボザンチニブ及びクリゾチニブ等のMET阻害剤が挙げられる。
【0060】
さらに、本発明は、かかる単離抗体又は抗原結合フラグメントの投与、貯蔵又は他の用途を可能にする、本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含む)、提供される抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)又は関連組成物を含む様々なキット又は製品を提供する。幾つかの実施の形態では、提供されるキットは、かかる組成物を、任意に1つ以上の製品、希釈剤、試薬、固相、及び/又はキットの正しい使用のための説明書と共に含むベッセル(vessel)、シリンジ、バイアル又は他の容器を含む。
【0061】
幾つかの実施の形態では、医学的用途等の特定の用途、特に癌の治療のための本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含む)特定の抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)の特定、特性評価及び/又は検証は、本明細書に記載される1つ以上のアッセイ又はシステムを用いて行うことができる。幾つかの実施の形態では、かかる特定、特性評価及び/又は検証は、例えば様々な実験設定及び/又は選択されたパネル(例えば、癌由来細胞株)を用いた1つ以上のセルベースアッセイにおける活性の分析を含み得る。幾つかの実施の形態では、特に本明細書に記載される或る特定の望ましい抗CD25抗体剤の活性に関連した、提案される免疫機構を考えると、望ましい特定、特性評価及び/又は検証は、癌を誘導するか、又は癌細胞を異種移植片若しくは同系/同種癌由来細胞として移植した動物モデルにおいて生成した関連データの収集を含み得る。代替的又は付加的に、幾つかの実施の形態では、モデル系におけるヒト免疫細胞に対する抗CD25抗体剤の活性の評価を可能とするPBMC(すなわち、ヒト化PBMCマウスモデル)若しくはCD34+造血幹細胞単独(すなわち、CD34+ヒト化マウス)、又は肝細胞及び胸腺細胞と併せたCD34+造血幹細胞(例えば、NSG-BLTマウス)等のヒト細胞の移入を伴う動物モデルを利用することができる。
【0062】
幾つかの実施の形態では、本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含むか、又は別の形で抗CD25抗体剤として本明細書に記載される作用物質の構造的及び/又は機能的特性を有する)抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)の関連配列は、薬学的及び/又は技術的理由でより適切な又は望ましい抗体フレームにクローニングし、及び/又はその状況下で発現させることができる。例えば、かかる配列(場合によってはコドン最適化VH及びVLコード配列として)を、ヒトIgG1定常領域(hIgG1)と共にクローニングし、適切な抗体発現ベクター及び細胞株(CHO由来細胞株、例えばCHO-S等)を用いて発現させることができる。幾つかの特定の実施の形態では、ヒトIgG1フォーマット抗体における提供される抗体配列の発現及び分泌は、トランスフェクション後に細胞溶解物中で還元状態及び上清中で非還元状態にて分析することができ、これが後に抗体の精製(アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過及び/又は他の適切な技法による)に用いられる。ヒトIgG1フォーマット(例えば、抗CD25抗体剤-hIgG1)での提供される抗CD25抗体配列の結合特性及び/又は他の機能特性は、例えば下記実施例に記載される1つ以上のアッセイを用いて分析することができる。例えば、かかるhIgG1フォーマットの提供される抗体は、ヒト及びカニクイザルPBMC又は精製Treg又はin vitro由来Treg又はCD25陽性細胞株(SU-DHL-1又はKarpas299等)への結合について、例えばフローサイトメトリーを用いて評価することができる。
【0063】
さらに、ヒト健常ドナー及び/又は患者から単離されたヒト初代腫瘍細胞及び/又は制御性T細胞を含む免疫細胞に対する、本明細書に記載される(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含むか、又は別の形で抗CD25抗体剤-hIgG1等の抗CD25抗体剤として本明細書に記載される作用物質の構造的及び/又は機能的特性を有する)1つ以上の抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)の効果を評定することができる。抗CD25抗体剤の潜在的効果を調査するために、抗体を用いてPBMC、及び/又は腫瘍(及び/又はリンパ節等の器官)及び/又は腫瘍移植片又は他の3Dオルガノイドから単離された細胞、及び/又は精製若しくはin vitroで生成した制御性T細胞若しくは幾つかのNK細胞若しくは樹状細胞等の他のCD25陽性細胞を処理することができる。考え得る読出しには、CD25陽性細胞の生存能力、消失及び/又はアポトーシス、腫瘍細胞の殺傷、エフェクター免疫細胞の増殖及び機能(例えば、グランザイムB産生、細胞毒性活性、脱顆粒)、抗原特異的応答(例えば抗原に応答した増殖、脱顆粒又はサイトカイン産生によって測定される)が含まれる。代替的又は付加的には、マウス又は非ヒト霊長類を処理することができ、細胞状態を血液サンプル(全血又は単離PBMCとして分析される)中で又は動物からの様々な器官及び/又は細胞の単離後に、例えばフローサイトメトリー又は免疫組織化学によって追跡することができる。
【0064】
代替的又は付加的には、本明細書に記載される抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25抗体又はその抗原結合フラグメント)の1つ以上の特性(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列を含むか、又は別の形で抗CD25抗体剤-hIgG1等の抗CD25抗体剤として本明細書に記載される作用物質の構造的及び/又は機能的特性を有する)は、単独又は組合せで、CD25発現細胞(例えば、Treg又はCD25発現癌細胞)に対するかかる抗CD25抗体剤の効果を研究することによって評価することができる。読出しには、細胞殺傷、細胞アポトーシス、細胞内シグナル伝達モニタリング(例えば、Stat-5リン酸化)、CD25へのIL-2結合及びシグナル伝達(例えば、Stat-5リン酸化又はIL-2受容体の下流の他のシグナル伝達)に対する影響、並びにIL-2依存性機能活性(例えば、増殖及びサイトカイン産生)が含まれ得る。aCD25抗体剤-hIgG1抗体をカニクイザル又は関連マウスモデルに投与した場合に、抗体の細胞効果を続いてin vivoで追跡することができる。
【0065】
提供される抗CD25抗体剤とヒトCD25との分子相互作用についての更なる洞察を得るために、抗CD25抗体剤(例えば、一具体例を挙げると、aCD25-a-646-hIgG1抗体)及びヒトCD25タンパク質の結晶構造を決定することができる。提供される抗CD25抗体剤(例えば、aCD25-a-646-hIgG1抗体を特に含む)の溶解性及び/又は安定性は、溶解度研究、加速ストレス研究、凍結融解研究及び正式な安定性研究によって評定することができる。抗体の凝集は、目視検査、サイズ排除クロマトグラフィー、及び動的光散乱、及びOD280/320吸光度によって追跡することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】aCD25-a-646の関連タンパク質配列を示す図である。重鎖(aCD25-a-646-HCDR1(配列番号2)、aCD25-a-646-HCDR2(配列番号3)及びaCD25-a-646-HCDR3(配列番号4))及び軽鎖(aCD25-a-646-LCDR1(配列番号6)、aCD25-a-646-LCDR2(配列番号7)及びaCD25-a-646-LCDR3(配列番号8))の各CDRを別個に示し、またスクリーニング手順によって初めに特定された重鎖及び軽鎖抗体のフレーム配列(それぞれaCD25-a-646-HCDR123(配列番号5)及びaCD25-a-646-LCDR123(配列番号9))内で下線を付ける。
【
図2】ヒトCD25(UniprotコードP01589)(配列番号1)のコンセンサス配列を示す図である。アミノ酸22~240に対応する成熟CD25の細胞外ドメインに下線を付ける。予め特定されたaCD25-a-646エピトープの位置(aCD25ep-a)が示される。
【
図3】漸増抗体濃度での、ヒトIgG1アイソタイプ対照と比較した、ヒトin vitro分化Treg細胞(A)、SU-DHL-1細胞(B)又はSR-786細胞(C)上で発現されたCD25に対するaCD25-a-646結合の特性評価を示す図である。
【
図4】CD3/CD28ビーズで活性化されたヒト汎T細胞で発現させた後にCD4
+ T細胞でゲーティングした(A)、及びCD3/CD28ビーズで活性化されたヒト汎T細胞で発現させた後にCD8
+ T細胞でゲーティングした(B)、又はCD3/CD28ビーズで活性化されたカニクイザル汎T細胞で発現させた後にCD4
+ T細胞でゲーティングした(C)、及びCD3/CD28ビーズで活性化されたカニクイザル汎T細胞で発現させた後にCD8
+ T細胞でゲーティングした(D)、漸増抗体濃度のaCD25-a-646のCD25への結合を特性評価し、ヒトIgG1アイソタイプ対照と比較する図である。
【
図5】(A)Octet Red 96機器でのバイオレイヤー干渉法及び(B)Biacore 2000機器でのSPRのそれぞれの2つの方法により測定された、hisタグ付き組換えヒトCD25へのaCD25-a-646の結合及びKD決定を示す図である。
【
図6】標準サンドイッチフォーマットビニングアッセイを用いたOctet Red384でのバイオレイヤー干渉法によるaCD25-a-646とIL-2との非競合的結合(A)及びIL-2競合抗体とIL-2との競合的結合(B)を示す図である。抗ヒトCD25抗体であるaCD25-a-646をAHQセンサー上にロードした。次いで、センサーを100nMヒトCD25、続いてヒトIL-2に曝露した。抗原会合後のヒトIL2による追加の結合は、非占有エピトープを示し(非競合物質)、結合がなければエピトープ遮断が示される(競合物質)。
【
図7】標準サンドイッチフォーマットビニングアッセイを用いたOctet Red384システムでのバイオレイヤー干渉法によるCD25へのaCD25-a-646及びダクリズマブの非競合的結合を示す図である。参照モノクローナル抗ヒトCD25抗体ダクリズマブをAHQセンサー上にロードした。次いで、センサーを100nMヒトCD25抗原、続いて抗ヒトCD25抗体(aCD25-a-646)に曝露した。抗原会合後の第2の抗体による追加の結合は、非占有エピトープを示し(非競合物質)、結合がなければエピトープ遮断が示される(競合物質)。
【
図8】ヒト起源のPBMCを用いたSTAT5リン酸化アッセイにおけるIL-2シグナル伝達の遮断に関するヒトIgG1アイソタイプ対照、ダクリズマブ又は一次抗体の非存在下と比較したaCD25-a-646の特性評価を示す図である。細胞を10μg/ml抗体、続いて漸増濃度のIL-2(図中に示される)と共にインキュベートした。分析は、STAT5をリン酸化するCD3陽性細胞のパーセンテージに限定した。
【
図9】汎T細胞を用いたヒトIgG1アイソタイプ対照、ダクリズマブ、又は陽性対照としての市販のマウス抗ヒトIL-2中和抗体(クローン:AB12-3G4)と比較したaCD25-a-646の機能的特性評価を示す図である。細胞を10μg/ml抗体と共にインキュベートした後、フローサイトメトリー分析前にCD3/CD28ビーズで72時間活性化した。結果としてグランザイムB陽性増殖性CD4(A)又はCD8(B)T細胞のパーセンテージを示す。
【
図10】ADCCアッセイにおけるCD25陽性細胞株の殺傷に関するヒトIgG1アイソタイプ対照と比較したaCD25-a-646の機能的特性評価を示す図である。CD25高又は低発現細胞、それぞれSU-DHL-1(A)又はSR-786細胞(B)を、様々な濃度の抗体(図中に示される)の存在下で精製NK細胞と同時培養した。標的細胞溶解を、NK細胞への添加の4時間後に上清へのカルセイン放出によって測定した。データをサポニン処理対照に対して正規化した。
【
図11】ADCCアッセイにおけるCD25陽性細胞株の殺傷に関する非改変aCD25-a-646及びヒトIgG1アイソタイプ対照と比較した脱フコシル化aCD25-a-646の機能的特性評価を示す図である。CD25高又は低発現細胞、それぞれSU-DHL-1(A)又はSR-786細胞(B)を、様々な濃度の抗体(図中に示される)の存在下で精製NK細胞と同時培養した。標的細胞溶解を、NK細胞への添加の4時間後に上清へのカルセイン放出によって測定した。データをサポニン処理対照に対して正規化した。
【
図12】ADCPアッセイにおけるin-vitroで分化したTreg細胞の食作用に関するヒトIgG1アイソタイプ対照と比較したaCD25-a-646の機能的特性評価を示す図である。Tregを、様々な濃度の抗体(図に示される)の存在下においてMCSFで分化したマクロファージと同時培養した。二色フローサイトメトリー分析を、CD14+で染色したマクロファージ及びeFluor450色素で標識したTregを用いて行った。残留標的細胞は、eFluor450色素
+/CD14
-である細胞と規定した。二重標識細胞(eFluor450色素+/CD14+)は、マクロファージによる標的の食作用を表すとみなした。標的細胞の食作用は、以下の式を用いて算出した:食作用(%)=100×[(二重陽性率)/(二重陽性率+残留標的率)]。
【
図13】Octetにおける競合アッセイ。固定化rhCD25へのaCD25-a-646、それに続く再度のaCD25-a-646(対照として)、又は二次Abとしてのバシリキシマブ(A)、ダクリズマブ(B)、参照非ブロッカーaCD25-a-646(C)若しくは7G7B6(D)のいずれかの結合を示す図である。IL-2シグナルmAbの非ブロッカーは、互いに(C)又は参照非ブロッカーmAbである7G7B6(D)と競合するが、ダクリズマブ又はバシリキシマブ(A及びB)等のIL-2シグナル伝達ブロッカーとは競合しない。
【
図14】aCD25-a-646-m1の関連タンパク質配列を示す図である。重鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m1-HCDR1(配列番号10)、aCD25-a-646-m1-HCDR2(配列番号12)、及びaCD25-a-646-m1-HCDR3(配列番号4))及び軽鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m1-LCDR1(配列番号6)、aCD25-a-646-m1-LCDR2(配列番号7)、及びaCD25-a-646-m1-LCDR3(配列番号8))をそれぞれ、別々に示し、スクリーニング手順により最初に特定された重鎖及び軽鎖の抗体のフレーム配列(それぞれ、aCD25-a-646-m1-HCDR123(配列番号16)及びaCD25-a-646-m1-LCDR123(配列番号9))内で下線処理している。
【
図15】aCD25-a-646-m2の関連タンパク質配列を示す図である。重鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m2-HCDR1(配列番号11)、aCD25-a-646-m2-HCDR2(配列番号13)、及びaCD25-a-646-m2-HCDR3(配列番号4))及び軽鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m2-LCDR1(配列番号6)、aCD25-a-646-m2-LCDR2(配列番号7)、及びaCD25-a-646-m2-LCDR3(配列番号8))をそれぞれ、別々に示し、スクリーニング手順により最初に特定された重鎖及び軽鎖の抗体のフレーム配列(それぞれ、aCD25-a-646-m2-HCDR123(配列番号17)及びaCD25-a-646-m2-LCDR123(配列番号9))内で下線処理している。
【
図16】aCD25-a-646-m3の関連タンパク質配列を示す図である。重鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m3-HCDR1(配列番号11)、aCD25-a-646-m3-HCDR2(配列番号14)、及びaCD25-a-646-m3-HCDR3(配列番号4))及び軽鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m3-LCDR1(配列番号6)、aCD25-a-646-m3-LCDR2(配列番号7)、及びaCD25-a-646-m3-LCDR3(配列番号8))をそれぞれ、別々に示し、スクリーニング手順により最初に特定された重鎖及び軽鎖の抗体のフレーム配列(それぞれ、aCD25-a-646-m3-HCDR123(配列番号18)及びaCD25-a-646-m3-LCDR123(配列番号9))内で下線処理している。
【
図17】aCD25-a-646-m4の関連タンパク質配列を示す図である。重鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m4-HCDR1(配列番号11)、aCD25-a-646-m4-HCDR2(配列番号12)、及びaCD25-a-646-m4-HCDR3(配列番号4))及び軽鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m4-LCDR1(配列番号6)、aCD25-a-646-m4-LCDR2(配列番号7)、及びaCD25-a-646-m4-LCDR3(配列番号8))をそれぞれ、別々に示し、スクリーニング手順により最初に特定された重鎖及び軽鎖の抗体のフレーム配列(それぞれ、aCD25-a-646-m4-HCDR123(配列番号19)及びaCD25-a-646-m4-LCDR123(配列番号9))内で下線処理している。
【
図18】aCD25-a-646-m5の関連タンパク質配列を示す図である。重鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m5-HCDR1(配列番号11)、aCD25-a-646-m5-HCDR2(配列番号15)、及びaCD25-a-646-m5-HCDR3(配列番号4))及び軽鎖についてのCDR(aCD25-a-646-m5-LCDR1(配列番号6)、aCD25-a-646-m5-LCDR2(配列番号7)、及びaCD25-a-646-m5-LCDR3(配列番号8))をそれぞれ、別々に示し、スクリーニング手順により最初に特定された重鎖及び軽鎖の抗体のフレーム配列(それぞれ、aCD25-a-646-m5-HCDR123(配列番号20)及びaCD25-a-646-m5-LCDR123(配列番号9))内で下線処理している。
【
図19】Biacore 2000機器でのSPRにより行った、rhCD25-hisタグに対する精製された親和性成熟抗体(IgG1)のKD決定を示す図である。(A)aCD25-a-646-m1、(B)aCD25-a-646-m2、(C)aCD25-a-646-m3、(D)aCD25-a-646-m4、及び(E)aCD25-a-646-m5。
【
図20】Octetにおける競合アッセイ。固定化rhCD25へのaCD25-a-646-m1、それに続く再度のaCD25-a-646-m1(対照として)、又は二次Abとしてのバシリキシマブ(A)、ダクリズマブ(B)、参照非ブロッカーaCD25-a-110(C)若しくは7G7B6(D)のいずれかの結合を示す図である。IL-2シグナルmAbの非ブロッカーは、互いに(C)又は参照非ブロッカーmAbでもある7G7B6(D)と競合するが、ダクリズマブ又はバシリキシマブ(A及びB)等のIL-2シグナル伝達ブロッカーとは競合しない。
【
図21】Karpas 299細胞で発現されたCD25への結合についての、漸増抗体濃度での親aCD25-a-646又はヒトIgG1アイソタイプ対照と比較した親和性成熟抗体の特性評価、及びヒトIgG1アイソタイプ対照との比較を示す図である。(A)aCD25-a-646-m1、(B)aCD25-a-646-m2、(C)aCD25-a-646-m3、(D)aCD25-a-646-m4、及び(E)aCD25-a-646-m5。
【
図22】ヒト起源のPBMCを用いたSTAT5リン酸化アッセイにおけるIL-2シグナル伝達の遮断についての親aCD25-a-646、ヒトIgG1アイソタイプ対照、ダクリズマブ-Hyp、又は一次抗体なしのものと比較した親和性成熟抗体の特性評価を示す図である。細胞を10μg/mlの抗体、続く10U/mlのIL-2とインキュベートした。分析は、STAT5をリン酸化するCD3陽性細胞のパーセンテージに限定した。
【
図23】雌性BALB/cマウスのCT26同系結腸腫瘍を担持するマウスにおける単独の(D)及びIL-2中和抗体と組み合わせた(E)又はIL-2遮断抗体と組み合わせた(F)、抗マウスCD25非IL-2遮断Treg枯渇抗体である7D4 mIgG2aの治療活性の評価を示す図である。マウスIgG2a対照(A)、IL-2中和抗体単独(B)及びIL-2遮断抗体単独(C)の活性を比較のために試験した。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本明細書で使用される用語、技術手段及び実施形態の或る特定の定義を下記に提示するが、その多く又は大部分が当業者の共通の理解を裏付けるものである。
【0068】
投与:本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、被験体への組成物の投与を指す。動物被験体(例えば、ヒト)への投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば、幾つかの実施形態では、投与は、気管支(気管支内注入(bronchial instillation)によるものを含む)、バッカル、腸内、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、特定の器官又は組織内(例えば肝内、腫瘍内、腫瘍周囲等)、粘膜、経鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内注入によるものを含む)、経皮、膣内及び硝子体内(vitreal)であり得る。投与は、間欠投与を含んでいてもよい。代替的には、投与は、少なくとも選択期間にわたる持続投与(例えば、灌流)を含んでいてもよい。当該技術分野で既知のように、抗体療法は一般に、例えば静脈内、皮下又は腫瘍内注射によって非経口的に実施される(例えば、特に腫瘍内で高い用量が所望される場合)。
【0069】
作用物質:「作用物質」という用語は、本明細書で使用される場合、例えばポリペプチド、核酸、糖類、小分子、金属又はそれらの組合せを含む任意の化学的分類の化合物又は物質を指す場合がある。本発明に従って利用することができる作用物質の具体的な実施形態としては、小分子、薬物、ホルモン、抗体、抗体フラグメント、アプタマー、核酸(例えばsiRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム)、ペプチド、ペプチド模倣薬等が挙げられる。作用物質は、ポリマーであり得るか又はポリマーを含み得る。
【0070】
抗体:本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、CD25、特にヒトCD25及びヒトCD25細胞外ドメイン等の特定の標的抗原に対する特異的結合をもたらすのに十分な標準的な免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを指す。当該技術分野で既知のように、自然に産生される無傷抗体は、互いに会合して「Y字」構造と一般に称されるものとなる2つの同一の重鎖ポリペプチド(各々約50kD)及び2つの同一の軽鎖ポリペプチド(各々約25kD)で構成される、およそ150kDの四量体物質である。各重鎖は、アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)に続く3つの定常ドメイン:CH1、CH2及びカルボキシ末端CH3(Yのステムの基部に位置する)の少なくとも4つのドメイン(各々約110アミノ酸長)で構成される。「スイッチ」として知られる短い領域が重鎖の可変領域と定常領域とを接続する。「ヒンジ」によりCH2及びCH3ドメインが抗体の残りの部分に接続される。このヒンジ領域中の2つのジスルフィド結合が無傷抗体において2つの重鎖ポリペプチドを互いに接続する。各軽鎖は、別の「スイッチ」によって互いに分離したアミノ末端可変(VL)ドメインに続くカルボキシ末端定常(CL)ドメインの2つのドメインで構成される。無傷抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体で構成され、重鎖及び軽鎖は、単一のジスルフィド結合によって互いに連結され、他の2つのジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに接続することで、二量体が互いに接続して、四量体が形成される。また、自然に産生される抗体は、通例CH2ドメインでグリコシル化され、各ドメインは、圧縮逆平行βバレルにおいて互いに充填された2つのβシート(例えば、3本鎖、4本鎖又は5本鎖のシート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」を特徴とする構造を有する。各可変ドメインは、「相補性(complement)決定領域」(CDR1、CDR2及びCDR3;当該技術分野で理解されるように、例えばKabatナンバリングスキームに従って決定される)として知られる3つの超可変ループ及び4つのやや一定の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)を有する。天然抗体が折り畳まれる場合、FR領域によりドメインに構造的フレームワークをもたらすβシートが形成され、重鎖及び軽鎖の両方のCDRループ領域が三次元空間で集まることで、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位が生じる。自然発生抗体のFc領域は、補体系の要素に結合し、例えば細胞傷害を媒介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。当該技術分野で既知のように、Fc受容体に対するFc領域の親和性及び/又は他の結合属性は、グリコシル化、又は抗体の開発可能性(developability)を改善することができる他の修飾によって調節することができる(Jarasch A et al., 2015)。
【0071】
幾つかの実施形態では、本発明に従って作製及び/又は利用される抗体には、かかるグリコシル化が修飾又は操作されたFcドメインを含む、グリコシル化Fcドメインが含まれる。本発明の目的上、或る特定の実施形態では、天然抗体に見られるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチド又はポリペプチドの複合体は、かかるポリペプチドが自然に産生されるか(例えば、抗原に反応する生物によって生成する)、又は組換え操作、化学合成、又は他の人工システム若しくは方法論によって作製されるかに関わらず、「抗体」と称し、及び/又は「抗体」として使用することができる。幾つかの実施形態では、抗体は、各々が単一の抗体配列に関連(associated)し、抗原内の幾らか異なるエピトープ(異なる参照抗ヒトCD25抗体に会合するヒトCD25細胞外ドメイン内の異なるエピトープ等)に結合する抗体のパネルとして生成するポリクローナル又はオリゴクローナルである。
【0072】
ポリクローナル又はオリゴクローナル抗体は、文献中に記載される医学的用途のための単一の調製物中で提供することができる(Kearns JD et al., 2015)。幾つかの実施形態では、抗体はモノクローナルである。幾つかの実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類又はヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。幾つかの実施形態では、抗体配列要素は、当該技術分野で既知のようにヒト化、霊長類化(primatized)、キメラ等である。さらに、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、適切な実施形態では(特に明記されないか又は文脈から明らかでない限り)、抗体の構造的及び機能的特徴を代替的な提示で、例えば下記に規定される抗原結合フラグメントとして利用するための当該技術分野で既知の又は開発された構築物又はフォーマットのいずれかを指す場合がある。例えば、本発明に従って利用される抗体は、無傷IgG、IgE及びIgM、二重特異性若しくは多重特異性抗体(例えば、Zybody(商標)等)、一本鎖可変ドメイン(scFv)、ポリペプチド-Fc融合体、Fab、ラクダ様(cameloid)抗体、重鎖サメ抗体(IgNAR)、マスク(masked)抗体(例えば、Probody(商標))、又は(モノクローナル抗体の特異性をT細胞に付与するために使用される人工T細胞受容体を得るための構築物内のscFvのように)細胞表面上での発現及び露出を可能にするポリペプチドとの融合タンパク質から選択されるフォーマットであるが、これらに限定されない。マスク抗体は、抗体の抗原結合表面に特異的に結合し、抗体の抗原結合を妨げる遮断又は「マスク」ペプチドを含み得る。マスクペプチドは、切断可能なリンカーによって(例えば、プロテアーゼによって)抗体に連結する。所望の環境、すなわち腫瘍環境におけるリンカーの選択的切断は、マスキング/遮断ペプチドを解離させ、腫瘍において抗原結合が生じるのを可能にすることで、潜在毒性の問題を制限する。幾つかの実施形態では、抗体は、自然に産生された場合にそれが有し得る共有結合修飾(例えば、グリカンの付着)を欠いていてもよい。代替的には、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカン、ペイロード(例えば、検出可能な部分、治療部分、触媒部分等)又は他のペンダント基(例えば、ポリエチレングリコール等)の付着)を有していてもよい。
【0073】
非IL-2遮断抗体剤:本発明の抗CD25抗体剤及び抗原結合フラグメントは、非IL-2遮断抗体剤である。「非IL-2遮断抗体剤」という用語は、CD25へのIL-2の結合又はCD25を介したIL-2のシグナル伝達を遮断することなく、IL-2受容体のCD25サブユニットへの特異的結合を可能にする抗CD25抗体剤(例えば、抗CD25非IL-2遮断抗体)を指すために本明細書で使用される。抗CD25抗体剤は、CD25へのIL-2結合に応答して、抗CD25抗体剤の非存在下でのシグナル伝達のレベルと比較して少なくとも50%のIL-2シグナル伝達を可能にする。好ましくは、抗CD25抗体剤は、CD25に応答して、抗CD25抗体剤の非存在下でのシグナル伝達のレベルと比較して少なくとも75%のIL-2シグナル伝達を可能にする。
【0074】
IL-2受容体のCD25サブユニットは、IL-2受容体のαサブユニットとしても知られ、活性化T細胞、制御性T細胞、活性化B細胞、幾つかの胸腺細胞、骨髄系前駆細胞及び希突起膠細胞上に見られる。CD25はCD122及びCD132と会合し、IL-2の高親和性受容体として作用するヘテロ三量体複合体を形成する。ヒトCD25のコンセンサス配列を
図2に示す。
【0075】
「特異的結合」、及び「特異的に結合する」("bind specifically", and "specifically bind")は、抗体又は抗原結合フラグメントが対象の抗原に対して約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M又は10-12M未満の解離定数(Kd)を有することを意味するものとして理解される。好ましい実施形態では、解離定数は10-8M未満、例えば10-9M、10-10M、10-11M又は10-12Mの範囲である。本発明の幾つかの実施形態によれば、「非特異的結合」、「非特異的に結合する("bind specifically", and "specifically bind")」は、親和性及び/又はアビディティを指し得る。幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤の親和性は、10-8M~10-6M(例えば、約10-7M)である。本発明の幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤のアビディティは、約10-10M~10-8M(例えば、約10-9M)である。本発明の幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤の親和性及び/又はアビディティは、約1nM~700nM、又は約1nM~600nM、又は約1nM~500nM、又は約1nM~400nM、又は約1nM~300nMである。
【0076】
本明細書で使用される「非IL-2遮断」、及び「非遮断」、「遮断しない」等への言及(抗CD25抗体の存在下でのCD25へのIL-2結合の非遮断に関して)は、抗CD25抗体又は抗原結合フラグメントが抗体の非存在下でのIL-2シグナル伝達と比較して50%未満のIL-2シグナル伝達を阻害する実施形態を含む。本明細書に記載される本発明の特定の実施形態では、抗CD25抗体又は抗原結合フラグメントは、抗体の非存在下でのIL-2シグナル伝達と比較して、IL-2シグナル伝達を約40%、35%、30%未満、好ましくは約25%未満阻害する。抗CD25非IL-2遮断抗体は、CD25へのIL-2結合を妨げずに又はCD25へのIL-2結合を実質的に妨げずに、CD25への結合を可能にする。本明細書における非IL-2遮断抗体への言及は、代替的には、「CD25へのインターロイキン-2の結合を阻害しない」抗CD25抗体又は「IL-2のシグナル伝達を阻害しない」抗CD25抗体と表現することができる。
【0077】
幾つかの抗CD25抗体剤は、CD25へのIL-2の結合を可能にし得るが、依然としてCD25受容体を介したシグナル伝達を遮断する。かかる抗体剤は、本発明の範囲内ではない。代わりに、非IL-2遮断抗CD25抗体剤は、CD25へのIL-2の結合を可能にし、抗CD25抗体剤の非存在下でのシグナル伝達と比較して、CD25受容体を介したシグナル伝達のレベルを少なくとも50%助長する。
【0078】
CD25を介したIL-2シグナル伝達は、実施例において論考され、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。抗CD25抗体剤の存在下及び非存在下でのIL-2シグナル伝達の比較は、同じ又は実質的に同じ条件下で行うことができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、IL-2シグナル伝達は、標準Stat-5リン酸化アッセイを用いて、細胞におけるリン酸化STAT5タンパク質のレベルを測定することによって決定することができる。例えば、IL-2シグナル伝達を測定するStat-5リン酸化アッセイは、PMBC細胞を10μg/ml濃度の抗CD25抗体の存在下で30分間培養することと、その後様々な濃度のIL-2(例えば、10U/mlで、又は0.25U/ml、0.74U/ml、2.22U/ml、6.66U/ml若しくは20U/mlと様々な濃度で)を10分間添加することとを含み得る。次いで、細胞を透過処理することができ、続いてSTAT5タンパク質のレベルをフローサイトメトリーによって分析されるリン酸化STAT5ペプチドに対する蛍光標識抗体により測定することができる。IL-2シグナル伝達の遮断率は、以下のように算出することができる:遮断%=100×[(Stat5+細胞無抗体群(%)-Stat5+細胞10μg/ml抗体群(%))/(Stat5+細胞無Ab群(%))]。
【0080】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤は、腫瘍浸潤制御性T細胞を特に腫瘍内で効率的に枯渇させることを特徴とする。
【0081】
幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤は、Fcγ受容体に高い親和性で結合し、好ましくは少なくとも1つの活性化Fcγ受容体に高い親和性で結合することを特徴とする。抗体は、少なくとも1つの活性化型Fcγ受容体に約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M未満の解離定数で結合するのが好ましい。幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤は、Fcγ受容体に関連した他の特徴を特徴とし、特に、
(a)Fcγ受容体に1を上回る活性化型対抑制型比(activatory to inhibitory ratio)(A/I)で結合し、及び/又は、
(b)FcγRIIbに結合するよりも高い親和性でFcγRI、FcγRIIc及びFcγRIIIaの少なくとも1つに結合する。
【0082】
幾つかの実施形態では、CD25抗体剤は、少なくとも1つのFc活性化受容体に結合することが可能であるIgG1抗体、好ましくはヒトIgG1抗体である。例えば、抗体はFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIa及びFcγRIIIbから選択される1つ以上の受容体に結合し得る。幾つかの実施形態では、抗体は、FcγRIIIaに結合することが可能である。幾つかの実施形態では、抗体は、FcγRIIIa及びFcγRIIa、並びに任意にFcγRIに結合することが可能である。幾つかの実施形態では、抗体は、これらの受容体に高い親和性で、例えば約10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M未満の解離定数で結合することが可能である。幾つかの実施形態では、抗体は、抑制型受容体FcγRIIbに低い親和性で結合する。一態様では、抗体は、FcγRIIbに10-7M超、10-6M超又は10-5M超の解離定数で結合する。
【0083】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される望ましい抗CD25抗体剤は、免疫抑制性細胞又は腫瘍細胞(例えば、いずれの場合にもCD25を表面上に発現する)等のCD25発現細胞(例えば、高レベルのCD25を発現する)に対して細胞傷害であるか、又はその食作用を誘導することを特徴とする。幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤は、免疫細胞(例えば、免疫細胞、特にCD25を発現する免疫細胞と接触した場合)及び腫瘍細胞に対してaCD25-a-646と十分に同等の活性(例えば、レベル及び/又はタイプ)を特徴とする。幾つかの実施形態では、関連活性は、ADCP、ADCC又はCDCによるTreg細胞(例えば、固形腫瘍内)又は或る特定のCD25発現細胞(例えば、高発現細胞)の枯渇、T細胞、B細胞又はNK細胞増加の促進、T細胞レパートリーの偏重(skewing)等、及びそれらの組合せであるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、レベル及び/又は活性の増大、又はレベルの低下、及び/又はレベル若しくは活性の増大又は無変化は、物質(複数の場合もある)又は部分(複数の場合もある)の非存在下にて、その他の点では同等の条件下で観察されるものと比べて評定又は決定される。代替的又は付加的に、幾つかの実施形態では、レベル及び/又は活性の増大は、参照抗CD25抗体剤(例えば、多くの実施形態では、ダクリズマブ又はバシリキシマブ等のCD25へのIL-2結合を遮断するCD25抗体である適切な参照抗CD25抗体)が存在する場合に同等の条件下で観察されるものと同等であるか又はそれよりも大きい。多くの実施形態では、本開示に従って使用される抗CD25抗体剤は、直接又は間接的にCD25、通例はその細胞外ドメインに結合する物質又は部分であるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤は、本明細書で例示される抗CD25抗体、その抗原結合フラグメント(例えば、1つ以上のCDR、全ての重鎖CDR、全ての軽鎖CDR、全てのCDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、又は重鎖及び軽鎖可変領域の両方を含む)、その親和性成熟変異体(又はその抗原結合フラグメント)、又は上述のいずれかの任意の代替フォーマット(例えば、キメラ、ヒト化、多重特異性、代替アイソタイプ等)であるか、それを含むか、又はCD25への結合についてそれと競合する。代替的又は付加的に、幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤は、本明細書で開示されるように、スクリーニング、製造(前臨床試験、及び/又はヒトCD25内の関連エピトープ(例えば、aCD25ep-aとして特定される配列)の特定)、及び/又は配合、投与、及び/又は特定の状況での有効性(例えば、癌療法に対する)に有利な特徴であり得る1つ以上の特徴を特徴とし得る。
【0084】
抗原:「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫応答を誘発し、及び/又はT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)及び/又はB細胞受容体に結合する作用物質を指す。液性応答を誘発する抗原は、抗原特異抗体の産生を伴うか、又はCD25細胞外ドメインについて実施例に示されるように、抗体ライブラリーのスクリーニング及び更に特性評価すべき候補抗体配列の特定に使用することができる。
【0085】
抗原結合フラグメント:本明細書で使用される場合、「抗原結合フラグメント」という用語は、抗体が標的とする抗原に特異的に結合する能力を抗原結合フラグメントに与えるのに十分な本明細書に記載される抗体の1つ以上の部分を含む(include or comprise)作用物質を包含する。例えば、幾つかの実施形態では、この用語は、特異的結合をもたらすのに十分な免疫グロブリン構造要素を含む任意のポリペプチド又はポリペプチド複合体を包含する。例示的な抗原結合フラグメントとしては、小モジュール免疫薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals;「SMIP(商標)」)、一本鎖抗体、ラクダ様抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体)、一本鎖若しくはタンデムダイアボディ(TandAb(商標))、VHH、Anticalin(商標)、Nanobody(商標)、ミニボディ(minibodies)、BiTE(商標)、アンキリンリピートタンパク質、すなわちDARPIN(商標)、Avimer(商標)、DART、TCR様抗体、Adnectin(商標)、Affilin(商標)、Trans-body(商標)、Affibody(商標)、TrimerX(商標)、MicroProtein、Centyrin(商標)、CoVX body、BiCyclicペプチド、Kunitzドメイン由来の抗体構築物、又は所望の生物活性を示す限りにおいて任意の他の抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、この用語は、ステープルペプチド、抗体様結合ペプチド模倣薬、抗体様結合足場タンパク質、モノボディ(monobodies)、及び/又は例えば文献(Vazquez-Lombardi R et al., 2015)中で概説される他の非抗体タンパク質足場等の他のタンパク質構造を包含する。幾つかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列が当業者によって相補性決定領域(CDR)と認められる1つ以上の構造要素を含むポリペプチドであるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列が、本明細書に記載される抗CD25抗体(例えば、aCD25-a-646アミノ酸配列要素)に見られるものと実質的に同一である、少なくとも1つの参照CDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/又は少なくとも1つの軽鎖CDR)、特に少なくとも1つの重鎖CDR、例えばHCDR3(例えば、aCD25-a-646-HCDR3配列)を含むポリペプチドであるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列が、配列が同一であるか、又はかかる参照CDRと比べて僅かに(例えば、1つ、2つ、3つ又は4つ)多いアミノ酸変化(例えば、置換、付加又は欠失;多くの場合、置換)を有するが、参照CDRが得られた抗体(例えば、aCD25-a-646)の標的への結合を維持する、少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/又は少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、参照抗体の重鎖又は軽鎖(例えば、aCD25-a-646)に由来する3つの全てのCDR(又は幾つかの実施形態では、それに実質的に同一の配列)を含むポリペプチド又はその複合体であるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、参照抗体(例えば、aCD25-a-646)に由来する6つ全てのCDR(又は幾つかの実施形態では、それに実質的に同一の配列)を含むポリペプチド又はその複合体であるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、参照抗体(例えば、aCD25-a-646)の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメイン(又は幾つかの実施形態では、それに実質的に同一の配列)を含むポリペプチド又はその複合体であるか又はそれを含む。幾つかの実施形態では、「抗原結合フラグメント」という用語は、核酸アプタマー、例えばRNAアプタマー及びDNAアプタマー等の非ペプチド及び非タンパク質構造を包含する。アプタマーは、ポリペプチド等の特定の標的に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、又はその類似体若しくは誘導体)である。アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸、更には細胞及び組織等の様々な分子標的に特異的に結合する短い合成一本鎖オリゴヌクレオチドである。これらの小核酸分子は、タンパク質又は他の細胞標的に特異的に結合することが可能であり、本質的に抗体の化学的同等物である二次及び三次構造を形成することができる。アプタマーは、高度に特異的であり、サイズが比較的小さく、非免疫原性である。アプタマーは概して、SELEX(指数的濃縮によるリガンドの系統的進化;Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment))として知られるバイオパニング法によって選択される(例えば、Ellington et al, 1990、Tuerk et al., 1990、Ni et al., 2011を参照されたい)。任意の所与の標的に対するアプタマーを生成する方法は、当該技術分野で既知である。アフィマーを含むペプチドアプタマーも包含される。アフィマーは、特定の標的タンパク質に対する高親和性結合表面をもたらすペプチドループを示すように操作された、小さな高度に安定したタンパク質である。アフィマーは、シスタチンのシステインプロテアーゼ阻害剤ファミリーに由来する12kDa~14kDaと低分子量のタンパク質である。アフィマータンパク質は、シスタチンタンパク質フォールドをベースとする安定したタンパク質である足場から構成される。アフィマータンパク質は、抗体と同様の高い親和性及び特異性で異なる標的タンパク質に結合するように無作為化することができる2つのペプチドループ及びN末端配列を示す。タンパク質足場に対するペプチドの安定化は、ペプチドがとることができる可能な立体配座を制約し、それにより遊離ペプチドライブラリーと比較して結合親和性及び特異性を増大させる。
【0086】
生体サンプル。本明細書で使用される場合、「生体サンプル」又は「サンプル」という用語は通例、本明細書に記載される対象の生物学的起源(例えば、組織又は生物又は細胞培養)から得られるか又はそれに由来するサンプルを指す。対象の起源は、動物又はヒト等の生物であり得る。生体サンプルは、生体組織又は体液を含み得る。
【0087】
癌:「癌」、「悪性疾患」、「新生物」、「腫瘍("tumor", "tumour")」及び「癌腫」という用語は、相対的に異常な、無制御の及び/又は自律的な成長を示し、顕著な制御不能の細胞増殖を特徴とする異常な成長表現型を示す細胞を指すために本明細書で区別なく用いられる場合もある。概して、本出願の検出又は治療にとって関心が持たれる細胞は、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性(pre-metastatic)、転移性及び非転移性の細胞を含む。本開示の教示は、あらゆる全ての癌に関連し得る。非限定的な例を幾つか挙げると、幾つかの実施形態では、本開示の教示は、1つ以上の癌、例えば白血病、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキン)、骨髄腫及び骨髄増殖性障害を含む造血器癌;肉腫、黒色腫、腺腫、固形組織の癌、口腔、咽喉、喉頭及び肺の扁平上皮癌、肝癌、前立腺癌、子宮頸癌、膀胱癌、子宮癌、並びに子宮内膜癌及び腎細胞癌等の泌尿生殖器癌、骨癌、膵癌、皮膚癌、皮膚黒色腫又は眼内黒色腫、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、頭頸部癌、乳癌、消化管癌及び神経系癌、乳頭腫等の良性病変等に適用される。本発明の抗体は、CD25+発現腫瘍の治療に使用することができる。CD25発現腫瘍を含む癌の治療は、ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、及び慢性リンパ性白血病(CLL)等のリンパ性白血病を含み得るが、これらに限定されない。
【0088】
併用療法:本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、被験体を2つ以上の治療計画(例えば、2つ以上の治療剤)に同時に曝露する状況を指す。幾つかの実施形態では、2つ以上の作用物質を同時に投与することができる。代替的には、かかる作用物質を順次に投与することができ、そうでなければ、かかる作用物質を重複する投与計画で投与する。
【0089】
同等の:本明細書で使用される場合、「同等の」という用語は、互いに同一でなくてもよいが、比較(例えば、レベル及び/又は活性による)を可能にし、観察された差異又は類似性に基づいて結論を合理的に導き出すことができるように十分に似ている、2つ以上の作用物質、物質、状況、効果、条件のセット等を指す。かかる同等の条件のセット、効果、状況、個体又は集団は、複数の実質的に同一の特徴及び1つ又は少数の多様な特徴を特徴とする。当業者には、文脈上、2つ以上のかかる作用物質、物質、状況、条件のセット、効果又は集団等を同等とみなすために任意の所与の状況において必要される同一性の程度が理解される。
【0090】
含む:1つ以上の指定の要素又は工程を「含む」として本明細書に記載される組成物又は方法は、非限定的(open-ended)であり、指定の要素又は工程が不可欠であるが、他の要素又は工程を組成物又は方法の範囲内で加えてもよいことを意味する。1つ以上の指定の要素又は工程を「含む」("comprising" (or which "comprises"))として記載される任意の組成物又は方法が、同じ指定の要素又は工程「から本質的になる」("consisting essentially of" (or which "consists essentially of"))対応する、より限定的な組成物又は方法も表すことも理解され、これは、組成物又は方法が指定の不可欠な要素又は工程を含み、組成物又は方法の基本的な新規の特徴(複数の場合もある)に実質的な影響を及ぼさない付加的な要素又は工程を含んでいてもよいことを意味する。
【0091】
枯渇した:本明細書で使用される場合、「枯渇した」又は「枯渇する」への言及(抗CD25抗体剤による制御性T細胞の枯渇に関する)は、Tregの数、比率又はパーセンテージが、CD25へのインターロイキン2の結合を阻害しない抗CD25抗体を投与しない場合と比べて減少していることを意味する。本明細書に記載される本発明の特定の実施形態では、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は99%超の腫瘍浸潤制御性T細胞を枯渇させる。
【0092】
剤形:本明細書で使用される場合、「剤形」という用語は、被験体に投与される活性物質(例えば、治療剤又は診断剤)の物理的に分離した単位を指す。各単位は、所定量の活性物質を含有する。幾つかの実施形態では、かかる量は、適切な母集団に投与した場合に所望の又は有益な結果と相関することが決定された投与計画(すなわち、治療的投与計画)に従う投与に適切な単位投与量(又はその全画分)である。当業者には、特定の被験体に投与される治療用組成物又は作用物質の総量は、1人以上の主治医によって決定され、複数の剤形の投与を伴い得ることが理解される。
【0093】
投与計画:本明細書で使用される場合、「投与計画」という用語は、通例は時間を空けて被験体に個別に投与される単位用量(通例、2つ以上)のセットを指す。幾つかの実施形態では、所与の治療剤は、1回以上の投与を含み得る、推奨される投与計画を有する。幾つかの実施形態では、投与計画は、各々同じ長さの時間を空けた複数回の投与を含む。代替的には、投与計画は複数回の投与を含み、個々の投与は少なくとも2つの異なる時間で隔てられる。幾つかの実施形態では、投与計画内の全ての投与が同じ単位用量である。代替的には、投与計画内の異なる投与は、異なる量である。幾つかの実施形態では、投与計画は、第1の用量での第1の投与に続く、第1の用量とは異なる第2の用量での1回以上の付加的な投与を含む。投与計画は、第1の用量での第1の投与に続く、第1の用量と同じ第2の用量での1回以上の付加的な投与を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、投与計画は、関連集団にわたって実施した場合に所望の又は有益な転帰と相関する(すなわち、治療的投与計画である)。
【0094】
エピトープ:本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体又は抗原結合フラグメントが結合する抗原の一部分を指す。幾つかの実施形態では、抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、抗原中では共有結合的に連続しないが、抗原が関連の立体配座にある場合に三次元空間内で互いに近接する抗原の部分で構成される立体配座エピトープである。例えば、CD25については、立体配座エピトープは、CD25細胞外ドメインにおいて連続しないアミノ酸残基で構成されるエピトープであり、線状エピトープは、CD25細胞外ドメインにおいて連続したアミノ酸残基で構成されるエピトープである。幾つかの実施形態では、本発明に従って利用されるエピトープは、本明細書で提供される抗CD25抗体剤(例えば、aCD25-a-646により、またaCD25ep-aとして規定される)が結合するエピトープを参照することによって提供される。aCD25-a-646のエピトープの正確な配列及び/又は特定のアミノ酸残基を決定する手段は、文献及び実施例において既知であり、抗原配列に由来するペプチドとの競合、異なる種に由来するCD25配列への結合、切断、及び/又は突然変異誘発(例えば、アラニンスキャニング又は他の部位特異的突然変異誘発による)、ファージディスプレイベースのスクリーニング、酵母提示技術又は(共)結晶構造解析法が挙げられる。
【0095】
同一性:当該技術分野で既知の同一率(%)は、配列を比較することによって決定される2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該技術分野では、同一性は、場合によっては、かかる配列の連続間の一致によって決定されるポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチド配列の間の同一性を測定する多数の方法が存在するが、同一性の決定に一般に用いられる方法は、コンピュータプログラムにコード化されている。2つの配列間の同一性を決定するのに好ましいコンピュータプログラムとしては、GCGプログラムパッケージ(Devereux, et al., Nucleic Acids Research, 12, 387 (1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Atschul et al., J. Molec. Biol. 215, 403 (1990))が挙げられるが、これらに限定されない。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一率は、最適比較目的で配列をアラインメントし(例えば、配列との最良アラインメントのためにギャップを第1の配列に導入することができる)、対応する位置でアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較することによって決定される。「最良アラインメント」は、最も高い同一率をもたらす2つの配列のアラインメントである。同一率は、比較される配列中の同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドの数によって決定される(すなわち、同一性(%)=同一の位置の数/位置の総数×100)。概して、本明細書における同一性(%)への言及は、文脈上他に明示又は暗示されない限り、分子の全長にわたる同一性(%)を指す。
【0096】
免疫エフェクター細胞:免疫エフェクター細胞は、免疫応答のエフェクター相に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞としては、骨髄又はリンパ系起源の細胞、例えばリンパ球(例えば、B細胞及び細胞溶解性(cytolytic)T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、マスト細胞及び好塩基球が挙げられる。
【0097】
免疫応答のエフェクター相に関与する免疫エフェクター細胞は、特異的Fc受容体を発現し、特定の免疫機能を行う。エフェクター細胞は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を誘導し得る。例えば、好中球がADCCを誘導することが可能である。エフェクター細胞は、標的抗原、標的細胞又は微生物の食作用である抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)を誘導することもできる(例えばADCPが可能なマクロファージ)。例えば、FcαRを発現する単球、マクロファージ、好中球、好酸球及びリンパ球は、標的細胞の特異的殺傷及び免疫系の他の構成要素への抗原の提示、又は抗原を提示する細胞への結合に関与する。本明細書で論考されるように、本発明による抗体は、ADCC及び/又はADCPを誘導する能力について最適化することができる。
【0098】
制御性T細胞:本明細書で使用される場合、「制御性T細胞」(「Treg」、「Treg細胞」又は「Treg」)は、自己免疫、アレルギー及び感染の制御に特化したCD4+Tリンパ球の系統を指す。これらは通例、T細胞集団の活性を調節するが、或る特定の自然免疫系の細胞型に影響を与える場合もある。Tregは通常、バイオマーカーCD4、CD25及びFoxp3の発現、並びにCD127の低発現によって特定される。自然発生Treg細胞は通常、末梢性CD4+Tリンパ球の約5%~10%を占める。しかしながら、腫瘍微小環境(すなわち、腫瘍浸潤Treg細胞)では、これらは全CD4+Tリンパ球集団の20%~30%も占める場合がある。
【0099】
活性化ヒトTreg細胞は、エフェクターT細胞及びAPC等の標的細胞をパーフォリン依存性経路又はグランザイムB依存性経路を介して直接殺傷させることができる。細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4+)Treg細胞は、APCによってインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)発現を誘導し、これらが次にトリプトファンを還元することによってT細胞活性化を抑制する。Treg細胞は、インターロイキン-10(IL-10)及び形質転換成長因子(TGFβ)をin vivoで放出することにより、T細胞活性化を直接阻害し、MHC分子、CD80、CD86及びIL-12の発現を阻害することによってAPC機能を抑制する。Treg細胞は、抗原提示細胞上のCD80及びCD86に結合し得る高レベルのCTLA4を発現し、エフェクターT細胞の適当な活性化を妨げることによって免疫を抑制することもできる。
【0100】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」又は「被験体」という用語は、提供される組成物を例えば実験、診断、予防、美容及び/又は治療目的で投与する又は投与することができる任意の生物を指す。典型的な患者としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類及び/又はヒト等の哺乳動物)が挙げられる。幾つかの実施形態では、患者はヒトである。幾つかの実施形態では、患者は、1つ以上の障害又は病態を患っているか又はその影響を受けやすい。患者は、障害若しくは病態の1つ以上の症状を示していても、又は1つ以上の障害若しくは病態(癌、又は1つ以上の腫瘍の存在等)であると診断されていてもよい。幾つかの実施形態では、患者は、かかる疾患、障害又は病態の診断及び/又は治療のために或る特定の療法を受けている又は受けた。
【0101】
薬学的に許容可能な:本明細書で使用される場合、本明細書で開示される組成物の配合に使用される担体、希釈剤又は賦形剤に適用される「薬学的に許容可能な」という用語は、担体、希釈剤又は賦形剤が組成物の他の成分に適合し、その受容者に有害でない必要があることを意味する。
【0102】
医薬組成物:本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性物質が1つ以上の薬学的に許容可能な担体と共に配合された組成物を指す。幾つかの実施形態では、活性物質は、関連集団に投与した場合に所定の治療効果を達成する統計的に有意な可能性を示す治療計画での投与に適切な単位用量で存在する。医薬組成物は、以下に適合したものを含む固体又は液体形態での投与のために配合することができる:経口投与、例えば水薬(drenches)(水性又は非水性の溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば口腔、舌下及び全身性吸収を対象とする錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト;例えば滅菌溶液若しくは懸濁液、又は徐放性配合物としての皮下、筋肉内、静脈内、腫瘍内又は硬膜外注射による非経口投与;例えば皮膚、肺又は口腔に適用されるクリーム、軟膏、又は制御放出パッチ若しくはスプレーとしての局所適用;膣内、直腸内、舌下、眼内、経皮、経鼻、経肺、及び他の粘膜表面への適用。
【0103】
固形腫瘍:本明細書で使用される場合、「固形腫瘍」という用語は、通常は嚢胞又は液体領域を有しない異常な組織塊を指す。固形腫瘍は、良性又は悪性であり得る。固形腫瘍の種々のタイプは、固形腫瘍を形成する細胞のタイプから名付けられる。固形腫瘍の例は、肉腫(海綿骨組織、軟骨組織、脂肪組織、筋組織、血管組織、造血組織又は線維性結合組織等の組織中の間葉起源の形質転換細胞から生じる癌を含む)、癌腫(上皮細胞から生じる腫瘍を含む)、黒色腫、リンパ腫、中皮腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫等である。固形腫瘍を伴う癌としては、限定されるものではないが、脳癌、肺癌、胃癌、十二指腸癌、食道癌、乳癌、結腸癌及び直腸癌、腎癌、膀胱癌、腎臓癌、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、黒色腫、口腔癌、肉腫、眼癌、甲状腺癌、尿道癌、膣癌、頸部癌、リンパ腫等が挙げられる。
【0104】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患及び/又は病態を患っているか又はその影響を受けやすい集団に治療的投与計画に従って投与した場合に、かかる疾患及び/又は病態を治療するのに十分な(例えば、作用物質又は医薬組成物の)量を意味する。治療有効量は、疾患、障害及び/又は病態の1つ以上の症状の発生率及び/又は重症度を低減する、安定させる、及び/又は発症を遅らせる量である。当業者には、「治療有効量」が特定の被験体において治療の成功が達成されることを実際に必要としないことが理解される。
【0105】
治療:本明細書で使用される場合、「治療」という用語(「治療する」("treat" or "treating")も)は、1つ以上の症状を部分的又は完全に軽減する、改善する、緩和する、阻害する、その発症を遅らせる、その重症度を低減する、及び/又はその発生率を低減する物質(例えば、aCD25-a-646によって例示される、提供される抗CD25抗体剤、又は任意の他の作用物質)の任意の投与を指す。幾つかの実施形態では、治療は、aCD25-a-646等の抗CD25抗体剤の直接投与(例えば、静脈内、腫瘍内又は腫瘍周囲注射に使用される薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び/又はアジュバントを任意に含む注射用水性組成物としての)、又は細胞を被験体から得ることと(例えば、マーカーの発現の存在又は非存在に基づく選択を伴い又は伴わずに、血液、組織又は腫瘍から)、上記細胞とaCD25-a-646等の抗CD25抗体剤とをex vivoで接触させることと、かかる細胞を被験体に投与することと(マーカーの発現の存在又は非存在に基づく選択を伴う又は伴わない)を含む計画を用いた投与を含み得る。
【0106】
投薬及び投与。本発明に従って使用される、本明細書に記載される抗CD25抗体剤(例えばaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列を含む、例えば抗CD25又はその抗原結合フラグメント)を含む医薬組成物は、当業者に既知の及び/又は利用可能な様々な技法及び/又は技術のいずれかを用いて貯蔵及び/又は送達のために調製することができる。幾つかの実施形態では、提供される抗CD25抗体剤は、例えば関連適応症についてアメリカ食品医薬品局(FDA)及び/又は欧州医薬品庁(EMEA)等の規制当局に認可された投与計画に従って投与される。幾つかの実施形態では、提供される抗CD25抗体剤は、それ自体が、例えば関連適応症についてアメリカ食品医薬品局(FDA)及び/又は欧州医薬品庁(EMEA)等の規制当局に認可された投与計画に従って投与され得る1つ以上の他の作用物質又は療法と組み合わせて投与される。しかしながら、幾つかの実施形態では、提供される抗CD25抗体剤の使用により、抗CD25抗体剤療法と組み合わせて使用される、認可された作用物質又は療法の投薬の低減(例えば、1回以上の投与でより少量の活性物質、より少ない投与回数、及び/又は投与頻度の低下)が可能となり得る。幾つかの実施形態では、投薬及び/又は投与は、同様に投与される他の薬物、患者の状態、及び/又は抗CD25抗体剤のフォーマット(例えば、免疫複合体、単一ドメイン抗体又は二重特異性抗体として改変される)に適合することができる。
【0107】
さらに、幾つかの実施形態では、特定の細胞型、特定の腫瘍若しくはそのタイプ、又は特定の患者集団(例えば、遺伝子マーカーを保有する)のいずれかについて投与計画を調整し、特にタイミング及び/又はCD25の閾値発現レベルに基づいて連続投与計画を設計することが望ましい場合がある。幾つかのかかる実施形態では、治療的投与計画は、療法前及び/又は療法中に1つ以上の誘導性マーカーの発現又は他の基準を評定する検出方法と組み合わせるか、又はそれを考慮して調整することができる。
【0108】
幾つかの実施形態では、本発明による投薬及び投与では、所望の程度の純度を有する活性物質を1つ以上の生理学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤と組み合わせて任意の又は様々な形態で利用する。これらの形態としては、例えば液体、半固体及び固体の剤形、例えば液体溶液(例えば、注射溶液及び注入溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム及び坐剤が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与方法及び/又は治療用途によって異なるが、通例、抗体によるヒト被験体の治療に使用されるものと同様の組成物等の注射溶液又は注入溶液の形態であり得る。
【0109】
幾つかの実施形態では、成分(複数の場合もある)は、埋め込み注射剤、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出配合物のように作用物質(複数の場合もある)を急速な放出及び/又は分解から保護する担体を用いて調製することができる。ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。概して、各活性物質は、適切な医療行為と適合し、関連作用物質(複数の場合もある)(例えば、抗体等の作用物質)に適切な医薬組成物及び投与計画を用いて治療有効量で配合、投薬及び投与される。活性物質を含有する医薬組成物は、限定されるものではないが、経口投与、粘膜投与、吸入投与、局所投与、バッカル投与、経鼻投与、直腸投与又は非経口投与(例えば、静脈内、点滴、腫瘍内、節内(intranodal)、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、又は被験体の組織の物理的切開(physical breaching)及びかかる切開部を介した医薬組成物の投与を伴う他の種類の投与)を含む当該技術分野で既知の任意の適切な方法によって投与することができる。
【0110】
幾つかの実施形態では、特定の活性物質の投与計画は、例えば被験体の対象の1つ以上の組織又は体液において特定の所望の薬物動態プロファイル又は他の曝露パターンを達成するための間欠又は持続(例えば、灌流又は徐放システムによる)投与を含み得る。幾つかの実施形態では、組み合わせて投与される異なる作用物質を、異なる送達経路により及び/又は異なるスケジュールに従って投与することができる。代替的又は付加的には、幾つかの実施形態では、1つ以上の用量の第1の活性物質を1つ以上の他の活性物質と実質的に同時に、幾つかの実施形態では共通の経路により及び/又は単一の組成物の一部として投与する。
【0111】
経路及び/又は投与スケジュールを所与の治療計画に最適化する場合に考慮すべき因子は、例えば治療される特定の癌(例えば、タイプ、ステージ、位置等)、被験体の臨床状態(例えば、年齢、健康全般、体重等)、作用物質の送達部位、作用物質(例えば、抗体又は他のタンパク質ベースの化合物)の性質、作用物質の投与方法及び/又は投与経路、併用療法の有無、並びに医師に知られている他の因子を含み得る。
【0112】
当業者には、例えば特定の送達経路が用量に影響する可能性があり、及び/又は必要とされる用量が送達経路に影響する可能性があることが理解される。例えば、特定の部位又は位置(例えば、組織又は器官内)において特に高濃度の作用物質を目的とする場合、集中的な送達(例えば、腫瘍内送達)が所望される及び/又は有用である可能性がある。幾つかの実施形態では、特定の医薬組成物及び/又は利用される投与計画の1つ以上の特徴は、例えば所望の治療効果又は応答(例えば、本明細書に記載される抗CD25抗体剤の機能的特徴に関連する治療的又は生物学的応答)を最適化するために、時間と共に修正することができる(例えば、任意の個々の投与における活性物質量の増減、投与間の時間間隔の増減等)。概して、本発明に従う活性物質の投薬のタイプ、量及び頻度は、関連作用物質(複数の場合もある)を哺乳動物、好ましくはヒトに投与する場合に適用される安全性及び有効性の要件に左右される。概して、かかる投薬の特徴は、療法がない場合に観察されるものと比較して特定の通例検出可能な治療応答をもたらすように選択される。本発明の状況下で、例示的な望ましい治療応答は、腫瘍成長、腫瘍サイズ、転移、腫瘍と関連する症状及び副作用の1つ以上の阻害及び/又は減少、並びに癌細胞のアポトーシスの増加、1つ以上の細胞マーカー又は循環マーカーの治療的に関連する減少又は増加等を含み得るが、これらに限定されない。かかる基準は、文献に開示される様々な免疫学的方法、細胞学的方法及び他の方法のいずれかによって容易に評定することができる。例えば、単独での又は更なる作用物質と組み合わせた抗CD25抗体剤の治療有効量は、実施例に記載されるように癌細胞の殺傷を増強するのに十分であるとして決定され得る。
【0113】
活性物質又はかかる作用物質を含む組成物としての抗CD25抗体剤の治療有効量は、例えば治療される疾患又は病態、疾患のステージ、治療される哺乳動物の年齢及び健康及び体調、疾患の重症度、投与される特定の化合物等の1つ以上の因子を考慮することを含む、当該技術分野で利用可能な技法を用いて容易に決定することができる。
【0114】
幾つかの実施形態では、治療有効量は、活性物質の効果的な用量(及び/又は単位用量)であり、少なくとも約0.01mg/kg(体重)、少なくとも約0.05mg/kg(体重)、少なくとも約0.1mg/kg(体重)、少なくとも約1mg/kg(体重)、少なくとも約5mg/kg(体重)、少なくとも約10mg/kg(体重)又はそれ以上(例えば0.01mg/kg(体重)、0.1mg/kg(体重)、0.3mg/kg(体重)、0.5mg/kg(体重)、1mg/kg(体重)、2mg/kg(体重)、3mg/kg(体重)、4mg/kg(体重)、5mg/kg(体重)、6mg/kg(体重)、7mg/kg(体重)、8mg/kg(体重)、9mg/kg(体重)、10mg/kg(体重)、20mg/kg(体重)、30mg/kg(体重)、40mg/kg(体重)又は50mg/kg(体重))であり得る。幾つかの実施形態では、かかる指針が活性物質の分子量に応じて調整され得ることが当業者には理解される。投与量は投与経路、治療サイクル、又は結果として、漸増用量でのaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列を含む単離抗体又はその抗原結合フラグメントの投与と関連した最大耐量及び用量制限毒性(もしあれば)の決定に用いることができる用量漸増プロトコルに応じて変更することもできる。
【0115】
治療用組成物は通例、滅菌であり、製造及び貯蔵の条件下で安定したものとする。組成物は溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の規則構造として配合することができる。滅菌注射溶液は、必要量の抗体を上記に列挙した成分の1つ又は組合せと共に適切な溶媒に組み入れ、続いて濾過減菌(filtered sterilization)を行うことによって調製することができる。概して、分散液は、基本的な分散媒及び上記に列挙したものからの他の必要とされる成分を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過した溶液から有効成分及び任意の付加的な所望の成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適当な流動性は、例えばコーティング剤の使用、分散液の場合の必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、組成物に吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを加えることによってもたらすことができる。
【0116】
各作用物質の配合物は、望ましくは滅菌濾過膜を通した濾過によって達成され得るように滅菌であり、その後ボーラス投与又は持続投与に適した形態でパッケージング又は販売されるものとする。注射用配合物は、単位剤形、例えば保存料の入ったアンプル又は複数回投与用容器内で調製、パッケージング又は販売することができる。非経口投与用の配合物としては、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、及び本明細書で論考されるような埋め込み可能な徐放性又は生分解性配合物が挙げられるが、これらに限定されない。滅菌注射製剤は、水又は1,3-ブタンジオール等の非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒を用いて調製することができる。他の有用な非経口投与可能な配合物としては、微結晶形態で、リポソーム製剤中で、又は生分解性ポリマー系の構成成分として有効成分を含むものが挙げられる。持続放出又は移植のための組成物は、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー又は塩等の薬学的に許容可能なポリマー材料又は疎水性材料を含み得る。
【0117】
本発明に従って使用される各医薬組成物は、用いられる投与量及び濃度で被験体に対して非毒性である薬学的に許容可能な分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、等張剤、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、担体、賦形剤、塩又は安定化剤を含み得る。かかる付加的な薬学的に許容可能な化合物の包括的でないリストには、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩(酢酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩等);保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;塩化ナトリウム;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEEN(商標)、PLURONIC(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0118】
2つ以上の活性物質を本発明に従って利用する幾つかの実施形態では、かかる作用物質は、同時又は順次に投与することができる。幾つかの実施形態では、或る作用物質の投与を、別の作用物質の投与に対して特別にタイミングを合わせる。幾つかの実施形態では、幾つかの実施形態では、組合せで投与される作用物質の所望の相対的投与計画を、例えばex vivo、in vivo及び/又はin vitroモデルを用いて評定するか又は経験的に決定することができる。幾つかの実施形態では、かかる評定又は経験的決定は、in vivoで特定の患者又は患者集団(例えば、相関が得られるように)において行われる。
【0119】
幾つかの実施形態では、本発明の実施に際して利用される1つ以上の活性物質を、少なくとも2回のサイクルを含む間欠投与計画に従って投与する。2つ以上の作用物質を組み合わせて、各々かかる間欠サイクル計画によって投与する場合、個々の用量の異なる作用物質を互いに組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の用量の第2の作用物質を本明細書に記載される抗CD25抗体剤の投与の一定時間後に投与する。幾つかの実施形態では、各用量の第2の作用物質を本明細書に記載される抗CD25抗体剤の投与の一定時間後に投与する。幾つかの実施形態では、1つ以上の用量の第2の作用物質を抗CD25抗体剤の投与の一定時間前に投与する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤は、1週間、2週間、4週間又はそれ以上にわたる1回以上の治療サイクルにおいて同じ経路による後続の投与だけでなく、皮下(又は筋肉内)投与及び腫瘍内投与等の代替(alternating)投与経路による後続の投与を含む計画で投与し、かかるサイクルを患者応答に応じて同じ計画で(又は投与間の間隔を長くして)繰り返すこともできる。また、幾つかの実施形態では、従う正確な計画(例えば、投与回数、投与間隔(例えば、互いに対する又は別の療法の実施等の別の事象)、投与量等は、1回以上のサイクルで1つ以上の他のサイクルと比較して異なっていてもよい。
【0120】
本明細書に記載される投与経路、投与量及び/又は計画のいずれかを用いることで、本明細書に記載される抗CD25抗体剤を、例えば患者において生検、血液サンプルを用いて測定される1つ以上の基準、及び/又は他の臨床基準を考慮に入れて特定、特性評価及び/又は検証することができる。幾つかの実施形態では、腫瘍サイズ及び/又は転移の直接評価の代わりに又はそれに加えて、本明細書に記載される抗CD25抗体剤の治療有効性を、以下の1つ以上の異なる一般基準を評価する方法において決定することができる:循環、腫瘍及び/又はリンパ器官中の制御性T細胞の減少、癌細胞に対する直接細胞傷害(癌細胞のアポトーシス及びネクローシス)、腫瘍浸潤免疫細胞(CD4陽性及び/又はCD8陽性腫瘍浸潤T細胞等)の増加、血中を循環する免疫細胞(リンパ球、NK細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ、B細胞等の全集団又は特定の亜集団)の増加、及び/又は応答患者又は非応答患者のいずれかのみにおける治療前対治療後の幾らかの差次的発現の提示(RNAシークエンシング、マスフローサイトメトリー及び/又は他のマスシークエンシングアプローチによって決定される)。代替的又は付加的に、幾つかの実施形態では、かかる特定、特性評価及び/又は検証は、mRNA及び/又は1つ以上の特定のタンパク質又はタンパク質のセットのタンパク質発現をスクリーニングすることによる分子レベルでの追跡を含み得る。幾つかの実施形態では、1つ以上のかかる技法により、例えば腫瘍内の(又は近くの)及び/又は血中を循環する特定の細胞集団についての組織分布及び/又はマーカーと関連し得る、本明細書に記載される抗CD25抗体剤に対する応答を評価するための関連情報の特定が可能となり得る。
【0121】
かかるアプローチ及び免疫生物学的データは、1つ以上の有効性及び/又は安全性パラメーター又は特性の決定を可能とし得るだけでなく、幾つかの実施形態では、例えば単独で及び/又は更なる治療効果をもたらし得る他の薬物、標準治療プロトコル又は免疫療法と組み合わせて、所与の適応症についての1つ以上の臨床試験において利用することができる特定の用量、経路又は投与計画を選ぶ論理的根拠をもたらし得る。このため、本発明の一連の更なる実施形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤は、かかる配合物での治療後又は治療前にRNA及び/又はタンパク質レベルで患者の細胞又は組織(腫瘍、血液サンプル又は血液画分等)における1つ以上の遺伝子の発現の存在(及び/又は非存在)の組合せを決定した後に、疾患(癌等)を患う患者を治療するか又は疾患(癌等)を予防する方法に使用される。したがって、かかる方法は、望ましい抗CD25抗体剤の治療有効量に関連した1つ以上のバイオマーカー若しくはより複雑な遺伝子発現シグネチャー(又は細胞集団分布)、被験体が本明細書に記載される抗CD25抗体剤での治療後に抗腫瘍若しくは抗感染応答を有し得ることを予測する治療的に関連するバイオマーカー(複数の場合もある)、又は被験体が抗CD25抗体剤での治療後に化合物での治療に応答し得ることを予測する治療的に関連するバイオマーカー(複数の場合もある)の既定を可能にし得る。
【0122】
代替的又は付加的に、幾つかの実施形態では、本明細書で開示される特定の抗CD25抗体剤の投薬及び投与は、ヒト癌及び/又は他のヒト組織におけるCD25発現を考慮して、例えば間質サブセット、及び/又は様々な癌、組織及び/又は患者の免疫サブセットにおけるCD25分布に関するデータを集めることによって事前に確立し、及び/又は後に評価することができる。かかるデータは、様々な免疫及び非免疫亜集団におけるCD25発現の関係、及び/又は癌細胞又は免疫細胞のサブセットと関連する細胞浸潤の尺度及び/又は癌関連マーカー(Foxp3及びPD-1/PD-L1等)との関係を特定するために、一般的な癌型及び/又は組織(中枢神経系、食道、胃、肝臓、結腸、直腸、肺、膀胱、心臓、腎臓、甲状腺、膵臓、子宮、皮膚、乳房、卵巣、前立腺及び精巣)にわたって一般的な技術(フローサイトメトリー、マスサイトメトリー、免疫組織化学又はmRNA発現ライブラリー等)を用いて生成することができる。CD25発現は、腫瘍組織(例えばNK細胞、及び他のエフェクター又は制御性免疫細胞)の免疫サブセットに限定することができ(又は限定しない)、CD25発現と免疫チェックポイント阻害剤との相関を、陽性である場合に決定することができ、これにより、かかる免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体等のPD-1アンタゴニストを標的とする化合物と組み合わせた抗CD25抗体剤の適切な用途が示唆される。
【0123】
製品及びキット:本発明の幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤は、別個の製品で提供される。本発明の幾つかの実施形態では、抗CD25抗体剤を含む製品は、ラベルの付いた容器内で又はそれと共に提供される。好適な容器としては、例えばボトル、バイアル、シリンジ及び試験管を挙げることができる。幾つかの実施形態では、容器は、ガラス又はプラスチック等の任意の又は様々な材料から形成することができる。幾つかの実施形態では、容器は、特定の疾患、障害若しくは病態、又はそのステージ若しくはタイプの治療に効果的な組成物を収容する。幾つかの実施形態では、容器は、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針を突き刺すことができるストッパーを有する静注用溶液バッグ又はバイアルであり得る)。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤を含む組成物は、ゴム栓及びアルミニウムシールを有する透明ガラスバイアルにパッケージングされる。容器上の又は付随するラベルは、組成物が選択される病態の治療に使用されることを示す。
【0124】
幾つかの実施形態では、製品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液等の薬学的に許容可能なバッファーの入った別個の容器を更に含んでいてもよく、及び/又は他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明を含む添付文書を含む、商業的観点及びユーザーの観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、製品は、適切な希釈剤及びバッファーを用いて0.1mg/ml、1mg/ml、10mg/mlの最終濃度又はより高濃度で配合された合計2mg、5mg、10mg、20mg、50mg又はそれ以上を含有する滅菌水溶液として静注用配合物中で作用物質の各々を提供することを可能にし得る。
【0125】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗CD25抗体剤は、キットと共に提供される若しくは提供されない任意の適切な水溶液を用いて再構成される凍結乾燥形態、又は任意の適合する医薬担体を用いた他のタイプの投薬単位にてパーツキット(kits-of-parts)内で提供することができる。抗CD25抗体剤の1つ以上の単位剤形をパック又はディスペンサーデバイス内で提供してもよい。かかるパック又はデバイスは、例えばブリスターパック等の金属又はプラスチック箔を含み得る。かかるパーツキットを正確に使用するために、バッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び癌の治療における使用説明を含む添付文書が更に含まれ得る。
【0126】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製品又はキットに付随する説明書は、製品及び/又はキット内の作用物質、配合物及び他の材料の正しい使用及び/又は考え得る影響のモニタリングについての情報を与えるために使用することができるラベル、リーフレット、文書、記録、図表の形態又は任意の他の手段であり得る。説明書は、製品と共に及び/又はキット内に提供することができる。
[項1]
可変重鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-HCDR3アミノ酸配列(配列番号4)を含む抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項2]
a)可変重鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-HCDR1アミノ酸配列(配列番号2)と、
b)可変重鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-HCDR2アミノ酸配列(配列番号3)と、
を更に含む、項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項3]
a)可変軽鎖相補性決定領域1としてaCD25-a-646-LCDR1アミノ酸配列(配列番号6)と、
b)可変軽鎖相補性決定領域2としてaCD25-a-646-LCDR2アミノ酸配列(配列番号7)と、
c)可変軽鎖相補性決定領域3としてaCD25-a-646-LCDR3アミノ酸配列(配列番号8)と、
を更に含む、項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項4]
aCD25-a-646-HCDR123アミノ酸配列(配列番号5)を含む可変重鎖を含む、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項5]
aCD25-a-646-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖を含む、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項6]
モノクローナル抗体、ドメイン抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)、scFv-Fcフラグメント、一本鎖抗体(scAb)又は単一ドメイン抗体である、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項7]
ウサギ、マウス、キメラ、ヒト化又は完全ヒト抗原結合抗体である、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項8]
前記抗体がIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4アイソタイプ抗体からなる群から選択される、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項9]
二重特異性抗体、多重特異性抗体、又は治療剤若しくは診断剤を更に含む免疫複合体に含まれる、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項10]
ヒトCD25の細胞外ドメインに結合する、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項11]
ヒトCD25を表面上に発現する細胞に結合し、抗CD25抗体剤である、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項12]
CD25へのインターロイキン-2(IL-2)の結合を阻害しない、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項13]
CD25を介したインターロイキン-2(IL-2)のシグナル伝達を阻害しない、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項14]
脱フコシル化された、先行項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[項15]
ヒトCD25のエピトープに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、配列番号1のアミノ酸42~56に含まれる1つ以上のアミノ酸残基を含む、抗体又は抗原結合フラグメント。
[項16]
前記エピトープが、配列番号1のアミノ酸42~56を含む、項15に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[項17]
項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントの親和性成熟変異体。
[項18]
FTFASYGMH(配列番号10)及びFTFPSYGMH(配列番号11)からなる群から選択されるHCDR3領域を含む、項17に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[項19]
VIWYDASTKYYADSVKG(配列番号12)、VIWYDAINKYYADSVKG(配列番号13)、VIWYDAVNKYYADSVKG(配列番号14)、VIWYDASTKYYADSVKG(配列番号12)、及びVIWYDALNKYYADSVKG(配列番号15)からなる群から選択されるHCDR2を含む、項17又は18に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[項20]
aCD25-a-646-m1-HCDR123アミノ酸配列(配列番号16)、aCD25-a-646-m2-HCDR123アミノ酸配列(配列番号17)、aCD25-a-646-m3-HCDR123アミノ酸配列(配列番号18)、aCD25-a-646-m4-HCDR123アミノ酸配列(配列番号19)、及びaCD25-a-646-m5-HCDR123アミノ酸配列(配列番号20)から選択される配列を含む可変重鎖を含む、項17~19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[項21]
aCD25-a-646-m1-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、aCD25-a-646-m2-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、aCD25-a-646-m3-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、aCD25-a-646-m4-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)、及びaCD25-a-646-m5-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)から選択される配列を含む可変軽鎖を含む、項17~20のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[項22]
a)aCD25-a-646-m1-HCDR123アミノ酸配列(配列番号16)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m1-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
b)aCD25-a-646-m2-HCDR123アミノ酸配列(配列番号17)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m2-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
c)aCD25-a-646-m3-HCDR123アミノ酸配列(配列番号18)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m3-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
d)aCD25-a-646-m4-HCDR123アミノ酸配列(配列番号19)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m4-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;又は、
e)aCD25-a-646-m5-HCDR123アミノ酸配列(配列番号20)を含む可変重鎖及びaCD25-a-646-m5-LCDR123アミノ酸配列(配列番号9)を含む可変軽鎖;
を含む、項17~21のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[項23]
項1~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子。
[項24]
項23に記載の核酸分子を含む核酸ベクター。
[項25]
項24に記載の核酸ベクターを含む宿主細胞。
[項26]
項1~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを作製する方法であって、項25に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
[項27]
項1~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物。
[項28]
薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を更に含む、項27に記載の組成物。
[項29]
癌の治療に使用される、項27又は項28に記載の医薬組成物。
[項30]
癌の治療のための薬剤の製造における項1~16のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は項27若しくは28に記載の組成物の使用。
[項31]
癌の治療のための薬剤の製造における、CD25の結合について項1~22のいずれか一項に記載の抗体と競合する抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
[項32]
被験体において癌を治療する方法であって、該被験体に項27又は項28に記載の組成物を有効量投与することを含む、方法。
[項33]
被験体において癌を治療する方法であって、該被験体にCD25の結合について項1~22のいずれか一項に記載の抗体と競合する抗体又はその抗原結合フラグメントを有効量投与することを含む、方法。
[項34]
前記被験体に第2の作用物質を同時に又は任意の順序で順次に投与することを更に含む、項32又は33に記載の方法。
[項35]
前記第2の作用物質が免疫チェックポイント阻害剤又は癌ワクチンである、項34に記載の方法。
[項36]
前記第2の作用物質が免疫チェックポイント阻害剤であり、該免疫チェックポイント阻害剤がPD-1アンタゴニストである、項35に記載の方法。
[項37]
前記PD-1アンタゴニストが抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、項36に記載の方法。
[項38]
前記被験体が固形腫瘍を有する、項32~37のいずれか一項に記載の方法。
[項39]
前記被験体が血液癌腫瘍を有する、項32~37のいずれか一項に記載の方法。
[項40]
被験体において腫瘍中の制御性T細胞を枯渇させる方法であって、項27若しくは項28に記載の組成物、又はCD25の結合について項1~22のいずれか一項に記載の抗体と競合する抗体若しくは抗原結合フラグメントを有効量投与する工程を含む、方法。
[項41]
前記被験体が固形腫瘍を有する、項40に記載の方法。
[項42]
前記被験体が血液癌腫瘍を有する、項40に記載の方法。
[項43]
癌の治療に使用されるCD25の結合について項1~22のいずれか一項に記載の抗体と競合する抗体又は抗原結合フラグメント。
[項44]
容器内に項27又は項28に記載の組成物を含むキット。
[項45]
抗CD25抗体を作製する方法であって、項1~22のいずれか一項に記載の抗体を準備することと、該抗体を親和性成熟に供することとを含み、作製される抗CD25抗体がCD25に対して親抗体よりも大きな親和性を有する、方法。
[項46]
医薬組成物を作製する方法であって、項45に記載の方法に従って作製された抗体を準備することと、該抗体と少なくとも1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤とを同時配合することとを含む、方法。
【実施例】
【0127】
実施例1:in vitroでCD25に結合する抗体の生成
材料及び方法
CD25抗原調製物
マウスCD25-HIS、ヒトCD25-Fc及び非タグ付き組換えタンパク質は、R&D Systems Biotechneから購入した。カニクイザルCD25-Fc及びCD25-HIS組換えタンパク質は、Sino Biologicalから購入した。タンパク質試薬ビオチン化は、EZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit(Thermo Scientific、カタログ番号21425)を用いて行った。CD25抗原を約1mg/mLまで濃縮し、PBSにバッファー交換した後、1:7.5のモル比のビオチン化試薬(EZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit、Thermo Scientific、カタログ番号21425)を添加した。混合物を一晩4℃に維持した後、更なるバッファー交換を行い、溶液中の遊離ビオチンを除去した。ビオチン化を、ForteBioでの標識タンパク質のストレプトアビジンセンサー結合によって確認した。
【0128】
抗CD25抗体の単離のためのライブラリー問合せ及び選択の方法論:
各々多様性が約109の8つのナイーブヒト合成酵母ライブラリーを以前に記載されているように設計し、生成し、増殖させた(例えば、Xu et al, 2013、国際公開第2009036379号、国際公開第2010105256号、国際公開第2012009568号を参照されたい)。8回の並行選択を、単量体ヒトCD25選択のために8つのナイーブライブラリーを用いて行った。
【0129】
最初の2回の選択については、Miltenyi MACsシステムを利用する磁性ビーズ選別法を基本的には記載のように行った(Siegel et al. 2004)。簡潔に述べると、酵母細胞(約1010細胞/ライブラリー)を、3mlの10nMビオチン化二量体ヒトCD25抗原と共にFACS洗浄バッファー(0.1%BSAを含むPBS)中、30℃で15分間インキュベートした。50mlの氷冷洗浄バッファーで一度洗浄した後、細胞ペレットを40mLの洗浄バッファーに再懸濁し、500μlのStreptavidin MicroBeads(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany;カタログ番号130-048-101)を酵母に添加し、4℃で15分間インキュベートした。次に、酵母をペレット化し、5mLの洗浄バッファーに再懸濁し、MACS LSカラム(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany;カタログ番号130-042-401)にロードした。5mLをロードした後、カラムを3mlのFACS洗浄バッファーで3回洗浄した。次いで、カラムを磁場から取り出し、酵母を5mLの増殖培地で溶出させた後、一晩成長させた。
【0130】
2回のMACSの後に、以下の3段落に記載されるフローサイトメトリー(FACS)を用いて4回の選別を行った。
【0131】
1回目のFACS選択については、およそ4×107個の酵母をペレット化し、洗浄バッファーで3回洗浄し、10nMの各ビオチン化二量体ヒトCD25抗原又は200nMのビオチン化単量体マウスCD25抗原と共に30℃で15分間インキュベートした。次いで、酵母を2回洗浄し、二次試薬である100倍希釈したヤギ抗ヒトF(ab’)2κ-FITC(Southern Biotech,Birmingham,Alabama;カタログ番号2062-02)及び500倍希釈したストレプトアビジン-Alexa Fluor 633(Life Technologies,Grand Island,NY;カタログ番号S21375)又は50倍希釈したExtravidin-フィコエリトリン(Sigma-Aldrich,St Louis;カタログ番号E4011)を用いて4℃で15分間染色した。氷冷洗浄バッファーで2回洗浄した後、細胞ペレットを0.4mLの洗浄バッファーに再懸濁し、濾過器付きの選別チューブに移した。FACS ARIAソーター(BD Biosciences)を用いて選別を行い、選別ゲートを決定してCD25結合のみを選択した。1回目のFACSにより選択されたマウス集団を合わせてプールにした。次いで、このプールをヒトCD25結合について選別し、3回目のFACSにおいて交差反応性結合剤を増大又は特定した(下記)。
【0132】
選択ヒト集団に対する2回目及び3回目のFACSは、試薬の多特異性結合剤を減少させるCD25結合剤のポジティブ選別又はネガティブ選別を伴うものであった(Xu et al., 2013)。特定の選択アウトプットの多特異的結合又は標的結合の量に応じて、ポジティブ選別をネガティブ選別に続いて行うか又はその逆とし、限定量の多特異的結合を有する完全結合集団を富化した。3回目の選択によるアウトプットのサンプルをプレーティングし、シークエンシングした。
【0133】
4回目のFACSは、主に10nMビオチン化二量体cyno CD25を抗原として用いるポジティブ選択からなるものであった。次いで、これらの選択のサンプルを、3回目の選択アウトプットを用いて行う場合と同様にプレーティング及びシークエンシングした。
【0134】
ナイーブ選択において特定されたクローンの親和性成熟
多特異性結合剤ネガティブ選別アウトプットからの重鎖を使用して、4回の付加的な選択に用いられる軽鎖多様性ライブラリーを作成した。これらの選択の1回目には、抗原としての10nMビオチン化二量体ヒトCD25又は抗原としての100nMビオチン化単量体マウスCD25のいずれかとコンジュゲートしたMiltenyi MACsビーズを利用した。
【0135】
MACsビーズ選択の後に、3回のFACS選別を行った。これらの選別の1回目には、100nMの単量体ヒトCD25、10nMの二量体cyno CD25又は200nMの単量体マウスCD25のいずれかを使用した。2回目のFACSは、限定量の多特異的結合を有する完全結合集団を富化する多特異性試薬を用いたネガティブ選択とした。3回目のFACSは、1nMまでのヒトCD25抗原の力価決定、及び100nM又は10nMのマウスCD25を用いた並行選択を含むものであった。
【0136】
直前の段落に記載される3回目のFACSと並行して、競合選択を行った。競合選択については、200nMの競合IgG(ヒトCD25上の既知のビン(bins)を用いる、そのビンと競合した又は競合しなかった抗体を選択するナイーブ選択(上記)によるAdimab製のIgG)を10nMビオチン化二量体ヒトCD25と共に30分間インキュベートした後、酵母と共に30分間インキュベートした。
【0137】
上記の各回のFACS選択からの個々のコロニーをプレーティングし、シークエンシング特性評価のためにピッキングした。
【0138】
IgG及びFabの作製及び精製:
酵母クローンを飽和状態まで成長させた後、振盪しながら30℃で48時間誘導した。誘導後に酵母細胞をペレット化し、上清を精製のために採取した。IgGを、プロテインAカラムを用いて精製し、酢酸(pH2.0)で溶出させた。Fabフラグメントをパパイン消化によって生成し、CaptureSelect IgG-CH1アフィニティーマトリックス(LifeTechnologies;カタログ番号1943200250)で精製した。
【0139】
哺乳動物細胞において発現される脱フコシル化aCD25-a-646ヒトIgG1の産生:
抗体のコドン最適化VH及びVLコード配列の合成を行い、従来の(非PCRベース)クローニング法を用いて可変領域のcDNAを抗体発現ベクター(Evitria,Switzerland)にクローニングした。酸化還元酵素であるGDP-6-デオキシ-d-リキソ-4-ヘキスロースレダクターゼ(RMD)酵素のcDNAを発現ベクター(Evitria,Switzerland)にクローニングした。プラスミドDNAを陰イオン交換クロマトグラフィーに基づいて低エンドトキシン条件下で作製した。Evitriaは、懸濁適合CHO K1細胞(最初にATCCから入手し、Evitriaにて懸濁培養での無血清成長に適合させた)を産生に用いる。シードを既知組成の動物由来成分を含まない無血清培地であるeviGrow培地中で成長させた。細胞にEvitriaの特注の専用トランスフェクション試薬であるeviFectを用いてIgG1及びRMD酵素の発現ベクターをトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション後に動物由来成分を含まない無血清培地であるeviMake2中で成長させた。上清を遠心分離及びその後の濾過(0.2μmフィルター)によって採取した。抗体を、MabSelect(商標) SuRe(商標)を用いて精製した。LC/MSを用いて抗体のグリコシル化パターンを特性評価し、99%超の脱フコシル化が示された。
【0140】
抗CD25抗体の親和性測定:
ForteBioの親和性測定は、これまでに記載されたように、Octet Red96でのKDの測定により行った(例えば、Estep et a,(2013)を参照されたい)。センサーをアッセイバッファー中、オフラインで10分間平衡化した後、ベースライン確立のためにオンラインで60秒間モニタリングした。32nMのIgGをAHCセンサーにオンラインで5分間ロードした。次いで、1:3段階希釈(1μMから4nMまで)のHISタグ付き組換えヒトCD25をロードしたIgGに10分間会合した。その後、それらをオフレート(off-rate)測定のために6.6分間、アッセイバッファーに移した。参照を減算することで(with reference subtraction)ForteBioデータ分析ソフトウェア9.0においてグローバル1:1結合モデルを用いて、動態データをフィッティングした(
図5Aを参照されたい)。
【0141】
抗ヒトCD25抗体に対する親和性は、25℃の周囲実験温度にてCM-5センサーチップを用いてBiacore 2000(
図5Bを参照されたい)においてSPRによりそれらのKDを測定することによっても決定した。抗ヒト抗体を初めに、分析バッファー(pH 7.4、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05% Tween 20)中の全てのフローセルを通して10分間に亘って12000~14000のRUにて固定化した。続いて、リガンド(抗体試験物)を145RU~190RUの捕捉レベルにてロードした。次いで、分析物(hisタグ付き組換えヒトCD25)を、400nMから始めて2倍希釈で3.13nMの最低濃度にて6分間、分析バッファー中で会合した。解離を10分間に亘って分析バッファー中で行った。サンプル濃縮間の再生工程は、10mMグリシン(pH1.7)中で10分間行った。プロセスの間は、25μl/分の流量を維持した。参照を減算することでBiacoreにより提供されるグローバルな2つの状態の反応の立体配座変化分析ソフトウェアを用いて、動態データを適合させた。
【0142】
リガンド結合:
抗体のリガンド結合を、標準サンドイッチビニングアッセイを用いてForte Bio Octet Red384システム(Pall Forte Bio Corp.,USA)で行った。抗ヒトCD25抗体(aCD25-a-646)をAHQセンサー上にロードし、センサー上の非占有Fc結合部位を非関連ヒトIgG1抗体でブロッキングした。センサーを100nMヒトCD25、続いて100nMヒトIL-2に曝露した。Forte Bio Data Analysis Software 7.0を用いてデータを処理した。抗原会合後のヒトIL2による追加の結合は、非占有エピトープを示し(非競合物質(non-competitor))、結合がなければエピトープ遮断が示される(競合物質)。
【0143】
エピトープビニング:
抗体のエピトープビニングを、標準サンドイッチフォーマットビニングアッセイを用いてForte Bio Octet Red384システム(Pall Forte Bio Corporation,Menlo Park,CA)で行った。抗ヒトCD25抗体IgGをAHQセンサー上にロードし、センサー上の非占有Fc結合部位を非関連ヒトIgG1抗体でブロッキングした。次いで、センサーを100nM標的抗原、続いてダクリズマブ又はバシリキシマブに曝露した。ForteBioのData Analysis Software 7.0を用いてデータを処理した。抗原会合後の第2の抗体による追加の結合は、非占有エピトープを示し(非競合物質)、結合がなければエピトープ遮断が示される(競合物質)。
【0144】
CD25発現細胞への抗CD25抗体の結合:
候補ヒットをリンパ腫ヒト細胞株、SU-DHL-1及びSR-786、Karpas299、in vitro分化Treg細胞及びHSC-FカニクイザルT細胞株への結合によって評価する。CD25発現ヒト細胞株(SU-DHL-1及びSR-786)への結合を、最初に細胞をTrustain(Biolegend)で遮断し、次に20μg/mlの最高濃度からの片対数希釈系列で力価決定した抗CD25抗体と共に4℃で30分間インキュベートした後、洗浄し、PEコンジュゲート抗ヒトIgG Fc抗体(Biolegend)と共にインキュベートすることによって試験した。細胞を再度洗浄し、DAPIを含有するFACSバッファーに再懸濁し、Intellicyt iQueで取得した。生細胞をサンプル取得時にフローサイトメトリーによってFSC対SSCのパラメーターを用いてゲーティングした。染色細胞の幾何平均強度をXYチャート上にプロットし、幾何平均強度を濃度の対数に対してグラフ化し、データを非線形回帰曲線にフィッティングし、それによりEC50を算出した。
【0145】
CD25発現in vitro分化Tregへの結合を、試験物(抗CD25一次抗体)を30μg/ml抗体、続いて片対数希釈系列(7点)を用いて氷上で30分間染色することによって試験した。これに続いて、濃度1μg/mlの二次抗体(Alexa Fluor 647-AffiniPure Fab Fragmentヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch))を用いて氷上で30分間染色した。全てのサンプルを二連で染色した。生細胞をサンプル取得時にフローサイトメトリーによってFSC対SSCのパラメーターを用いてゲーティングした。染色細胞の平均蛍光強度(MFI)をXYチャート上にプロットし、MFIを濃度の対数に対してグラフ化し、データを非線形回帰曲線にフィッティングし、それによりEC50を算出した。
【0146】
CD25発現活性化ヒト及びカニクイザルPMBCへの結合を、試験物(抗CD25一次抗体)を20μg/ml抗体、続いて片対数希釈系列(7点)を用いて氷上で30分間染色することによって試験した。これに続いて、濃度5μg/mlの二次抗体(ウサギ抗ヒトFcg F(ab’)2(Jackson ImmunoResearch))を用いて氷上で30分間染色した。全てのサンプルを三連で染色した。二次抗体の結合によって媒介される架橋誘導細胞死を最小限に抑えるために、細胞株を4つの試験物の染色コホートで一度に試験した。生リンパ球をサンプル取得時にフローサイトメトリーによってFSC対SSCのパラメーターを用いてゲーティングした。ゲーティングCD4+T細胞サブセット及びCD8+T細胞サブセットの平均蛍光強度(MFI)をXYチャート上にプロットし、MFIを濃度の対数に対してグラフ化し、データを非線形回帰曲線にフィッティングし、それによりEC50を算出した。
【0147】
CD25発現Karpas 299細胞への結合を、試験物(抗CD25一次抗体)を20μg/ml抗体、続いて片対数希釈系列(7点)を用いて氷上で30分間染色することによって試験した。これに続いて、濃度1μg/mlの二次抗体(Alexa Fluor 647-AffiniPure F(ab’)2 Fragmentウサギ抗ヒトIgG Fcγフラグメント(Jackson ImmunoResearch))を用いて氷上で30分間染色した。全てのサンプルを二連で染色した。生細胞をサンプル取得時にフローサイトメトリーによってFSC対SSCのパラメーターを用いてゲーティングした。染色細胞の平均蛍光強度(MFI)をXYチャート上にプロットし、MFIを濃度の対数に対してグラフ化し、データを非線形回帰曲線にフィッティングし、それによりEC50を算出する。
【0148】
哺乳動物細胞において発現されるヒトIgG1としてのaCD25-a-646のリクローニング、産生及び特性評価:
抗体のコドン最適化VH及びVLコード配列の合成は、Genewizによって行われた。可変領域のcDNAを、ヒトIgG1重鎖及びκ軽鎖定常領域(それぞれP01857及びP01834)を有する抗体発現ベクター(Icosagen,EST)にクローニングした。完全長重鎖及び軽鎖cDNAを、最終ベクター中でシークエンシングすることによって検証した後、CHO系細胞(CHOEBNALT85)、及び組換えタンパク質、抗体の産生に適切なベクターを用いる安定なエピソーム発現系であるQMCF Technology(Icosagen)を用いてそれらを発現させるためにリクローニングし、CHOEBNALT85細胞に抗体産生のために1μgの発現プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、700μg/mlのG418を添加し、プラスミドを含有する細胞集団を選択した。産生のために温度を30℃に変化させ、培養物を更に供給した。産生の終了時に、培養上清を遠心分離(1000g、30分間及び15℃)によって清澄化し、PMSFを添加し、上清を処理するか又は精製まで凍結した。hIgG1抗体をMabSelect SuReアフィニティークロマトグラフィー、続いてPBS又はPBS 100mM L-ArgのいずれかへのSuperdex 200ゲル濾過によって精製した。CHOEBNALT85細胞において産生されたヒトIgG1抗体を組換えヒトCD25に対する親和性、マウス及びcyno CD25に対する交差反応性、並びに選択CD25結合抗体に対するエピトープビニングについて特性評価した。
【0149】
aCD25-a-646エピトープマッピング:
ヒトCD25配列(Uniprot記録番号P01589)を示す様々な直鎖、単一ループ、βターン模倣体、ジスルフィド架橋模倣体、不連続ジスルフィド架橋体、不連続エピトープ模倣体のペプチドのセットを、固相Fmoc合成を用いて合成した(Pepscan BV, The Netherlands;Timmermann P et al., 2007、Langedijk JP et al., 2011)。合成ペプチドの各々へのa-646抗体の結合を、ELISA(Pepscan,The Netherlands)において試験した。ペプチドアレイを一次抗体溶液と共にインキュベートした(4℃で一晩)。洗浄後に、ペプチドアレイを1000倍希釈の適切な抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(2010-05;Southern Biotech)と共に25℃で1時間インキュベートした。洗浄後に、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)及び20μl/mlの3%H2O2を添加した。1時間後に発色を測定した。発色を電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムで定量化した。CCDカメラにより得られた値は、標準96ウェルプレートELISAリーダーと同様、0mAU~3000mAUの範囲である。合成ペプチドの品質を検証するために、別個の陽性及び陰性対照ペプチドのセットを並行して合成し、非関連対照抗体を用いてスクリーニングした。
【0150】
抗ヒトCD25 Ab競合アッセイ:
抗体競合を、標準逐次結合アッセイを用いてForte Bio Octet Red96システム(Pall Forte Bio Corp.,USA)で行った。26.8nM hisタグ付き組換えヒトCD25をNi-NTAバイオセンサー上に200秒間ロードした。動態バッファーに対するベースライン工程後に、センサーを66.6nMの第1の抗体に600秒間、続いて第2の抗CD25抗体(同様に66.6nMで600秒間)に曝露した。Forte Bio Data Analysis Software 9.0を用いてデータを処理した。第2の抗体による追加の結合は、非占有エピトープを示し(エピトープについての競合なし)、結合がなければエピトープ遮断が示される(エピトープについての競合)。
【0151】
結果
組換えヒトCD25細胞外タンパク質配列(rhCD25)に結合するモノクローナル抗体(mAb)を、材料及び方法に記載される酵母ベースの抗体提示ライブラリーを用いて単離した。これらの抗体をシークエンシングし、独自のクローンを酵母細胞において産生させた(Barnard GC et al., 2010)。独自の抗体配列を発現する各酵母クローンの細胞培養上清をrhCD25結合についてスクリーニングした。
【0152】
rhCD25への結合、配列独自性及び発現レベルに基づいて、mAbのパネルを特定した。これらの抗体を組換えカニクイザル及びマウスCD25細胞外ドメインタンパク質配列への結合について更に特性評価した。クローンを特性評価し、10-8M~10-10Mに含まれる一価rhCD25及び/又は組換えcyno CD25細胞外タンパク質配列へのIgG結合値が示された。加えて、各抗体をIL-2リガンド又は参照抗CD25抗体ダクリズマブと競合する又は競合しないとして特性評価した。抗体クローンをフローサイトメトリーによってリンパ腫細胞株、SU-DHL-1及びin vitro分化Treg細胞等の異なるレベルのCD25を発現するヒト細胞への結合のレベルでも評価した。
【0153】
rhCD25への結合、交差ビニング(cross binning)及びIL-2競合的結合分析の結果を表1(
図3~
図7)に示す。
【0154】
【0155】
最後に、凝集及び非特異的相互作用の傾向がある抗体配列を除去するために、抗体を多特異性試薬(Poly Specific Reagent;PSR)アッセイ、及び早期抗体開発のためのハイスループットスクリーニングを可能にするアプローチである親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法(Affinity-Capture Self-Interaction Nanoparticle Spectroscopy;AC-SINS)においてスクリーニングした(Liu Y et al., 2014)。選択抗体は、いずれも後者のアッセイにおいて陽性とスコアリングされなかったため、パネルから除去されなかった。
【0156】
上記のようにシークエンシング及び特性評価した選択ヒットのうち、クローンaCD25-a-646は、ヒトCD25結合について、ダクリズマブともバシリキシマブとも競合しないが(
図13A及び
図13B)、結合について非遮断抗体7G7B6及び参照非ブロッカーaCD25-a-686と競合する(
図13C及び
図13D)新規の相補性決定領域(CDR;
図1)を提示する抗体である。Pepscan技術を用いて行われたエピトープマッピング研究により、aCD25-a-646が、アミノ酸42~56の領域(
図2)においてヒトCD25に結合し、10
-8M~10
-10Mの範囲のKd値にてヒトCD25細胞外タンパク質配列に結合することが示される。
【0157】
CD25動態測定-親和性及び/又はアビディティを用いた結合強度
親和性及びアビディティに関する下記の更なる研究を行った。ヒトCD25抗原へのCD25抗体の結合を、BIACORE T200機器(GE Healthcare)を使用した表面プラズモン共鳴により調べた。およそ8000RU(共鳴単位(resonance units))の捕捉システム(20μg/mlの抗ヒトFab;ヒトFab捕捉キットの注文コード:28-9583-25;GE Healthcare)を、GE Healthcareから供給されるアミンカップリングキット(BR-1000-50)を用いて、pH 5.0でCM5チップ(GE Healthcare、BR-1005-30)に連結した。
【0158】
泳動及び希釈バッファーは、PBS-P(pH7.4)(20mMのリン酸バッファー、2.7mMのKCl、137mMのNaCl、0.05%界面活性剤P20;GE Healthcare、注文コード28-9950-84)とした。フローセルは25℃に、サンプル区画は12℃に設定した。10μl/分の流量で60秒間、3μg/mlの溶液を注入することにより、CD25抗体を捕捉した。30μl/分の流量で180秒間、1000nMの濃度から開始して10倍希釈刻みで1nMまでのヒトCD25溶液を注入することにより、CD25抗原の結合を測定した。解離相は、サンプル溶液の注入を泳動バッファーに切り替えることで誘発され、最大600秒間、モニタリングした。10μl/分の流量で10mMのグリシン(pH 2.1)の2回の連続した1分間注入(キットにより与えられる)にて洗浄することにより、表面を再生した。抗ヒトFab参照表面から得られた応答を差し引くことにより、バルク屈折率の差を補正し、更にブランク注入も差し引いた(=二重参照(double referencing))。
【0159】
様々なCD25抗原変異体、すなわち社内で製造したモノマー抗原(P1AA5872)及び2つの市販CD25抗原(Sino Biologicals、カタログ番号10165-H08H;R&D Systems、カタログ番号223-2A/CF)を用いて、CD25抗体の結合特性を評価した。
【0160】
KD及び動態パラメーターの算出のために、Biacoreで与えられたフィッティングモデルを用いて、最適な曲線フィッティング結果を得た。1:1 LangmuirフィッティングをP1AA5872に、またTwo State Kinetic適合をSino Biologicals及びR&D Systems製のCD25に用いた。
【0161】
【0162】
このため、aCD25-a-646配列(
図1)により、CD25に特異的に結合する抗体が特定され、その抗CD25抗体剤を規定する機能的特徴に関連する活性は、その用語が本明細書で使用される場合に、セルベースアッセイ又は動物モデルによって機能的に評価することができる。
【0163】
実施例2:CD25調節抗体剤を検証するセルベースモデル
材料及び方法
STAT5リン酸化アッセイによるin vitro IL-2シグナル伝達:
IL-2遮断を、STAT5リン酸化アッセイを用いて特性評価し、IL-2シグナル伝達を試験した。予め凍結したPBMC(Stemcell Technologies)をU字底96ウェルプレートにおいて10μg/ml抗CD25抗体の存在下で30分間培養した後、10%FBS(Sigma)、2mM L-グルタミン(Life Technologies)及び10000U/ml Pen-Strep(Sigma)を含有するRPMI 1640(Life Technologies)中で10U/ml、又は0.25U/ml、0.74U/ml、2.22U/ml、6.66U/ml若しくは20U/mlと様々な濃度のIL-2(Peprotech)を10分間添加した。細胞をeBioscience(商標) Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(Invitrogen)で固定及び透過処理し、BD Phosflow Perm Buffer III(BD Biosciences)で処理することでIL-2誘導STAT5リン酸化を停止した。次いで、細胞を表面及び細胞内蛍光色素標識抗体(STAT5-Alexa Fluor 647クローン47/stat5/pY694(BD Bioscience)、CD3-PerCP-Cy5.5クローンUCHT1(Biolegend)、CD4-BV510クローンSK3(BD Bioscience)、CD8-Alexa Fluor 700クローンRPA-T8(Invitrogen)、CD45RA-PE-Cy7クローンHI100(Invitrogen)、FoxP3-Alexa Fluor 488クローン236A/E7(Invitrogen))で同時に染色し、サンプルをFortessa LSR X20フローサイトメーター(BD Bioscience)で取得し、BD FACSDIVAソフトウェアを用いて分析した。FCS-H対FCS-Aを用いてダブレットを除外し、SSC-A対FCS-Aパラメーターを用いてリンパ球を規定した。CD3+T細胞を、CD3 PerCP-Cy5.5-A対FCS-Aのプロットを用いて規定し、ゲートをカウント対STAT5 Alexa Fluor 647-Aを示すヒストグラム上に描画して、STAT5+CD3+T細胞の集団を決定した。IL-2シグナル伝達の遮断率は、以下のように算出した:遮断(%)=100×[(Stat5+細胞無Ab群(%)-Stat5+細胞10μg/ml Ab群(%))/(Stat5+細胞無Ab群(%))]。異なるT細胞サブセット(CD4+、CD8+、CD4+FoxP3+、ナイーブ及びメモリーT細胞)によるSTAT5リン酸化の更なる分析も、それぞれのサブセットについてゲーティングすることによって評定し、上記のように分析した。グラフ化及び統計分析を、GraphPad Prism v7を用いて行った。
【0164】
in vitro T細胞活性化アッセイ:
Teff応答へのIL-2シグナル伝達の影響を、細胞内グランザイムB(GrB)の上方調節及び増殖を試験する、T細胞活性化アッセイにおいて特性評価した。予め凍結した初代ヒト汎T細胞(Stemcell Technologies)を、eFluor450細胞増殖色素(Invitrogen)で製造業者の推奨に従って標識し、10%FBS(Sigma)、2mM L-グルタミン(Life Technologies)及び10000U/ml Pen-Strep(Sigma)を含有するRPMI 1640(Life Technologies)の入ったU字底96ウェルプレートに1×105細胞/ウェルで添加した。次いで、細胞を10μg/ml抗CD25抗体又は対照抗体、続いてHuman T-Activator CD3/CD28(20:1の細胞対ビーズ比;Gibco)で処理し、37℃の5%CO2加湿インキュベーター内で72時間インキュベートした。T細胞活性化を評定するために、細胞をeBioscience Fixable Viability Dye efluor780(Invitrogen)、続いて表面T細胞マーカーに対する蛍光色素標識抗体(CD3-PerCP-Cy5.5クローンUCHT1(Biolegend)、CD4-BV510クローンSK3(BD Bioscience)、CD8-Alexa Fluor 700クローンRPA-T8(Invitrogen)、CD45RA-PE-Cy7クローンHI100(Invitrogen)、CD25-BUV737クローン2A3(BD Bioscience))で染色した後、eBioscience(商標) Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(Invitrogen)で固定及び透過処理し、その後、細胞内GrB及び核内FoxP3について染色した(グランザイムB-PEクローンGB11(BD Bioscience)、FoxP3-APCクローン236A/E7)。サンプルをFortessa LSR X20フローサイトメーター(BD Bioscience)で取得し、BD FACSDIVAソフトウェアを用いて分析した。FCS-H対FCS-Aを用いてダブレットを除外し、SSC-A対FCS-Aパラメーターを用いてリンパ球を規定した。生CD3+リンパ球からゲーティングしたCD4+及びCD8+T細胞サブセットを、GrB-PE-A対増殖eFluor450-Aのプロットを用いて評定した。結果を全CD4+又はCD8+T細胞集団からの増殖性GrB陽性細胞のパーセンテージとして提示した。グラフ化及び統計分析を、GraphPad Prism v7を用いて行った。
【0165】
in vitro ADCCアッセイ:
抗体依存性細胞介在性細胞傷害アッセイ(ADCCアッセイ)を、抗ヒトCD25抗体の特性評価のためにSU-DHL-1又はSR-786(CD25陽性)ヒト細胞株を標的細胞として用い、ヒトNK細胞をエフェクター細胞の供給源として用いて行った。NK細胞を健常ドナーのPBMCからNK細胞陰性単離キット(Stemcell Technologies)を用いて単離した。NK細胞を2ng/mL IL-2(Peprotech)の存在下で一晩培養した。SU-DHL-1又はSR-786標的細胞にカルセインAM(Thermofisher)をロードし、1条件当たり4つの反復試験区で抗CD25又はアイソタイプ抗体の存在下、37℃、5%CO2で30分間プレーティングした。インキュベーション後に、NK細胞を1:10の標的:エフェクター(T:E)比(10000個の標的細胞及び100000個のエフェクター細胞)でウェルに添加し、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。上清におけるカルセイン蛍光の読出しをBMGのFluostarプレートリーダーで行った。特異的溶解率を標的細胞単独(0%溶解)及び0.1%サポニンで処理した標的細胞(100%溶解)に対して算出した。生データのグラフを、Graphpad Prism v7を用いて作成し、用量応答曲線を生成した。標的細胞溶解率をXYチャート上にプロットし、正規化カルセインAM放出率を濃度の対数に対してグラフ化し、データを非線形回帰曲線にフィッティングし、それによりEC50を算出した。
【0166】
in vitro ADCPアッセイ:
抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)アッセイを、in vitro分化Tregを標的細胞として用い、単球由来マクロファージをエフェクター細胞として用いて行った。PBMCを、フィコール勾配遠心分離によって白血球コーンから単離した。単球(CD14+細胞)を、CD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて単離した。単球を10%FBS(Sigma)、2mM L-グルタミン(Life Technologies)及び10000U/ml Pen-Strep(Sigma)を含有するRPMI 1640(Life Technologies)中、50ng/ml M-CSFの存在下で5日間培養し、M-CSFを含有する新鮮培地を3日後に添加した。制御性T細胞(Treg)を、Human Treg Cell Differentiation Kit(R&D Systems)を用いて単離した。これらの細胞を37℃の5%CO2加湿インキュベーター内で5日間インキュベートし、eFluor450色素(Invitrogen)で製造業者の推奨に従って標識した。5日目に、マクロファージ及びeFluor450色素標識Tregを、下記のように抗CD25抗体又は対照の存在下にて10対1のエフェクター対標的比で4時間同時培養する。10対1のエフェクター対標的比のために、標的細胞(Treg)を1×104細胞/ウェルで添加し、エフェクター細胞(マクロファージ)を1×105細胞/ウェルで添加した。次いで、抗CD25抗体を1μg/mlの最高濃度、続いて対数系列(7点)にて二連で添加した。細胞及び抗体を37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。ADCPを評定するために、細胞を氷上に置き、細胞表面マーカーCD14(CD14-PerCP-Cy5.5クローンMfP9(BD Biosciences))で染色し、eBioscience固定バッファーで固定した。二色フローサイトメトリー分析を、Fortessa LSR X20を用いて行った。残留標的細胞は、eFluor450色素+/CD14-である細胞と規定した。マクロファージは、CD14+として規定した。二重標識細胞(eFluor450色素+/CD14+)は、マクロファージによる標的の食作用を表すとみなした。標的細胞の食作用は、以下の式を用いて算出した:食作用(%)=100×[(二重陽性率)/(二重陽性率+残留標的率)]。
【0167】
統計:
Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて曲線フィッティングを行い、EC50値及び最大活性を決定した。
【0168】
結果
aCD25-a-646抗体を、実施例1において特定及び特性評価された他のCD25抗体と同様に、IL-2シグナル伝達を妨げない能力及びCD25発現標的細胞を殺傷する能力に関して更に評価した。Octetを用いたリガンド結合アッセイにより、aCD25-a-646がCD25へのIL-2結合に影響を及ぼさないことが示された(
図6)。これをSTAT5アッセイにおいて確認したが、aCD25-a-646は、試験したIL-2濃度に関わらずにIL-2シグナル伝達を遮断せず、参照抗体ダクリズマブによってIL-2シグナル伝達が完全に遮断された(
図8)。いわゆる「Tac」エピトープを介したCD25とIL-2との相互作用を遮断することが示されているダクリズマブ(非特許文献17及び非特許文献18)は、aCD25-a-646とは異なるエピトープに結合し(
図7)、これにより、STAT5リン酸化アッセイにおいてダクリズマブがIL-2シグナル伝達を遮断し、aCD25-a-646がIL-2シグナル伝達を遮断しない理由を説明することができる(
図8)。さらに、ダクリズマブは、おそらくそのIL-2シグナル伝達の遮断により、活性化T細胞のエフェクター応答を低減し、IL-2シグナル伝達を遮断しないaCD25-a-646は、たとえあったとしても抗体なし又はアイソタイプ対照の条件と比較してT細胞応答に対する影響は最小限しかない(
図9)。最後に、aCD25-a-646は、IgG1アイソタイプ抗体と比較した場合にADCC(
図10)及びADCP(
図12)によってCD25発現細胞、腫瘍細胞又は制御性T細胞を殺傷する。脱フコシル化aCD25-a-646抗体は、非改変CD25抗体に比べて、ADCCを介したCD25陽性細胞の死滅を更に増大させる(
図11)。
【0169】
結論として、aCD25-a-646を特性評価したが、aCD25-a-646は、CD25陽性細胞(Treg又は癌細胞株)の強力な殺傷を示し、IL-2シグナル伝達を妨げず、結果としてTエフェクター応答を阻害しない。このため、aCD25-a-646は、単独療法として又は組合せで癌の治療に適用し得るTreg枯渇抗体である。
【0170】
実施例3:CD25調節抗体剤の変異体の作製
aCD25-a-646を更なる親和性成熟に供した。最適化は、多様性を重鎖可変領域に導入することによって行った。抗体のCDRH3を、多様性が1×108のCDRH1及びCDRH2変異体を有する予め作成したライブラリーに組み換え、選択をナイーブ開発に記載されるように1回のMACS及び4回のFACSによって行った。FACS回では、ライブラリーをPSR結合、種交差反応性、抗原交差反応性及び親和性圧力(affinity pressure)について調べ、選別を行って、所望の特性を有する集団を得た。これらの選択については、親和性圧力を、ビオチン化単量体抗原を力価決定するか、又はビオチン化抗原を親Fab又はIgGと共に30分間プレインキュベートした後、その予め合わせた混合物を選択が平衡に達するまでの時間にわたって酵母ライブラリーに適用することによって適用した。次いで、より高親和性の抗体を選別することが可能であった。
【0171】
次いで、最良の親和性を示す変異体を哺乳動物産生のために選択し、上記実施例1及び実施例2に記載のアッセイを用いて更に特性評価した。
【0172】
結果
更なる特性評価のために選択される、変異抗体(その相補性決定領域を含む)の配列を
図14~
図18、並びに表2及び表3に示す。
【0173】
【0174】
【0175】
Karpas 299細胞結合実験により、CD25への変異抗体の結合が親クローンと同程度であったことが確認された(
図21)。変異抗体は、10
-8M~10
-10Mの範囲のKd値でヒトCD25細胞外タンパク質配列と結合し、親クローンと比較しておよそ2倍~10倍改善した(
図19)。
【0176】
競合アッセイにより、変異抗体aCD25-a-646m1がヒトCD25結合についてダクリズマブ又はバシリキシマブと競合しないが、結合について非遮断抗体7G7B6及び参照非ブロッカーaCD25-a-110と競合することが示された(
図20)。
【0177】
STAT5アッセイにより、変異抗体aCD25-a-646-m1、aCD25-a-646-m2、aCD25-a-646-m3、aCD25-a-646-m4及びaCD25-a-646-m5が親クローンaCD25-a-646と同程度にIL-2シグナル伝達を遮断せず、参照抗体ダクリズマブによりIL-2シグナル伝達が完全に遮断されることが示された(
図22)。いわゆる「Tac」エピトープを介したCD25のIL-2との相互作用を遮断することが示されているダクリズマブは、aCD25-a-646及びその変異体とは異なるエピトープに結合し、このことにより、ダクリズマブがIL-2シグナル伝達を遮断し、aCD25-a-646及びその変異体がSTAT5リン酸化アッセイにおいてIL-2シグナル伝達を遮断しない理由を説明することができる(
図22)。
【0178】
結論として、aCD25-a-646変異抗体は、IL-2シグナル伝達に干渉することなく、その親クローンと同じようなものであることが示されている。
【0179】
実施例4:マウスモデル実験
材料及び方法
非IL-2遮断抗体の治療活性:Charles Riverから入手した雌性BALB/cマウスに、0%マトリゲル中3×105個のCT26腫瘍細胞を脇腹に皮下注射した(1群当たりn=15)。動物を1日目の体重に基づいて処理群に無作為化した。処理を6日目に開始し、マウスを200μg/動物の各抗体(マウスIgG2aアイソタイプ、IL-2中和抗体、マウスIgG1アイソタイプのIL-2シグナル伝達を遮断する抗マウスCD25であるPC61 mIgG1、及びマウスIgG2aアイソタイプのIL-2シグナル伝達を遮断しない抗マウスCD25である7D4 mIgG2a)の1回の注射で処理した。動物に抗体1つ当たり1群での単独療法処理、又は7D4 mIgG2aとIL-2中和抗体、若しくは7D4 mIgG2aとPC61 mIgG1抗体との併用処理を行った。マウスを、腫瘍体積が2000mm3に達した時点又は50日間のいずれか早い方で屠殺した。
【0180】
結果
抗CD25枯渇非IL-2遮断抗体7D4 mIgG2aは、処理マウスにおいて腫瘍拒絶を誘導し、他の抗体は、アイソタイプ対照マウスIgG2aと比較した場合に単独療法として効果を示さなかった。PC61 mIgG1又はIL2 nAbのいずれかのIL2遮断抗体との組合せは、非IL-2遮断抗体7D4 mIgG2aの治療活性を抑止する(
図23)。これにより、7D4 mIgG2aの非IL-2遮断特徴が治療活性に重要であることが実証される。この抗体の治療活性が、最適活性についてIL-2シグナル伝達に依存するTエフェクター細胞によって媒介される抗腫瘍免疫応答に依拠することも示唆される。これらの結果から、IL-2/CD25遮断活性の欠如がCD25標的抗体の最適治療活性に必要とされ、癌療法における本明細書に記載の抗CD25非IL-2遮断抗体の使用を支持することが示される。
【0181】
配列
本願に含まれる配列の概要を下記に提示する。
【0182】
【0183】
均等物及び範囲
当業者には、本発明が実施例又は本明細書に含まれる或る特定の実施形態の他の記載ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解される。
【0184】
同様に、本明細書で使用される場合、文脈上他に明らかに指示されない限り、数量を特定していない単数形(the singular forms "a", "an", and "the")は概して、複数の指示対象を含む。
【0185】
上記で他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することもできる。概して、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸化学に関連して用いられる命名法及びその技法は、当該技術分野で既知であり、一般に使用されるか、又は製造業者の仕様書に従うものである。
【0186】
本明細書で言及される全ての刊行物は、それによって引用される刊行物と関連して上記方法及び/又は材料を開示及び説明するため引用することにより本明細書の一部をなす。
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【配列表】