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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】歯科情報捕捉用の電子印象用トレー
(51)【国際特許分類】
   A61C 9/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61C9/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020561949
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 FR2019050184
(87)【国際公開番号】W WO2019145658
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】1850689
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505108627
【氏名又は名称】デュレ,フランソワ
(73)【特許権者】
【識別番号】520280564
【氏名又は名称】ドゥ ヴレーズ,ギー
【氏名又は名称原語表記】DE VREESE, Guy
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】デュレ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ヴレーズ,ギー
(72)【発明者】
【氏名】ケルブ-デュレ,ヴェロニク
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0118638(US,A1)
【文献】国際公開第2013/121605(WO,A1)
【文献】特開2000-122641(JP,A)
【文献】国際公開第2007/060973(WO,A1)
【文献】特表2004-519289(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0021310(KR,A)
【文献】特開2008-194107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 9/00
A61C 11/00
A61C 19/00
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科分野における電子印象用トレー(1)において、光学式測定検知素子(C)を含むデバイス、光学式測定検知素子により読取られたデータを収集し記憶し順序付けすることのできる中央管理ユニットを含む電子システムで構成され、光学式測定検知素子が歯列弓の全部または一部の光学印象を単数または複数回の採取により実現できるようにするために電子印象用トレーの一部の上に分布している電子印象用トレーであって、電子印象用トレーが、歯列弓の全部または一部の形状を有する部品(2、21)で構成され、かつ、最適な形状を提供するために、互いに連接されかつ/または可逆的に組立て可能かつ一体化可能な複数の要素(34、24、25、26、27、28)からなる構造を有する部品で構成されており、歯列弓の少なくとも一部分の印象採取に各々適応された少なくとも2つの一体化可能な要素(23、24、25、26、27、28)で作製されていること、および前記少なくとも2つの要素(23、24、25、26、27、28)は、そのうちの少なくとも一方の要素の光学式測定検知素子(C)が他方の要素の光学式測定検知素子に結び付けられて、歯列弓の少なくとも一部分の光学印象が前記少なくとも2つの要素(23、24、25、26、27、28)の光学式測定検知素子を用いて作製されることになるように構成されていることを特徴とする、電子印象用トレー(1)。
【請求項2】
光学式測定検知素子が、超音波センサー(U)および/またはOCT(光干渉断層撮影装置)(T)に結び付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項3】
患者の口内で適応された後、初めの形状に戻らない熱可塑性物質または可撓性樹脂の変形可能な材料で作製されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項4】
光学式測定検知素子(C)が備わったその作用部分(21)が、咬合特性に適応されたまたは変形によって適応可能な形状を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項5】
少なくとも2つの一体化可能な要素(23、24、25、26、27、28)が、嵌合により可逆的に一体化されるように適合されていることを特徴とする、請求項4に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項6】
少なくとも2つの一体化可能な要素(23、24、25、26、27、28)が、磁気的に一体化されるように適合されていることを特徴とする、請求項4に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項7】
歯(D)上への支承構築手段からなる深さ調節手段(3)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項8】
歯(D)上への支承構築手段(3)が、光学式測定検知素子(C)の間に突出する少なくとも1つのブレード(30)、ロッドまたはそれに類似するもので構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項9】
歯(D)上への支承構築手段(3)が、光学式測定検知素子(C)の上方に延在する少なくとも1つの透明な壁(31、32)で構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項10】
透明な壁(31、32)が目印(G)を有することを特徴とする、請求項9に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項11】
第1の透明な壁(31)上を摺動する第2の透明な壁(32)が付加されることを特徴とする、請求項9または10に記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項12】
透明な壁(31)が、前記透明な壁(31、32)間で摩擦運動を生成できるモーター付きまたはモーター無しの手段と協働する別の透明な壁(32)に対して摺動接触で結び付けられていることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一つに記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項13】
周囲および/または中央吸引システム(S)、および/または水および/または空気噴射システムを含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一つに記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項14】
口内部を照らす手段を含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一つに記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項15】
情報取得を妨げないように黒色であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一つに記載の電子印象用トレー(1)。
【請求項16】
光学式測定検知素子(C)が備わったその作用部分(21)が、電子印象用トレーの残りの部分(2)から分離され、有線手段(F)または無線通信システムを介して残りの部分に接続されていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一つに記載の電子印象用トレー(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、歯科情報捕捉のための、歯列弓の全部または一部の三次元写真を得ることを可能にする電子印象採取システムにある。
【0002】
本発明はより詳細には、歯科分野における経時的な3次元測定のために使用可能な電子印象用トレーにおいて、場合によっては超音波センサーおよび/またはOCT(光干渉断層撮影装置)に結び付けられた光学式測定検知素子システムを含むデバイス、前記検知素子により読み取られたデータを収集し記憶し順序付けすることのできる中央管理ユニットを含む電子システムで構成され、一方前記検知素子は光学印象を単数または複数回の採取により実現できるようにするために前記印象用トレーの全部または一部の上に分布している電子印象用トレーを提案することを目的としている。
【背景技術】
【0003】
当該発明者はすでに、情報処理手段と組み合わせて臨床行為の異なる段階を設計しそれにしたがって機械上での義歯の実現を導くかまたは同僚と通信して診断を探究することを可能にする、患者の口内での光学的または超音波測定を用いて歯科診断および義歯を実現する手段を提案した。
【0004】
当該発明者の多くの研究作業により、特に、ただし非限定的に、光学的手段による印象採取に関する欧州特許第0040165号明細書および欧州特許第0091876号明細書などの中、そしてより最近では新規の特許である国際公開第2011/154656号中に記載の多くの発明が実現されるに至っている。
【0005】
これらの文書は、特に国際公開第2011/154656号中に記載されているものなどの現代の歯科医療の需要に実際に対応しているが、使用にあたっては、これらの発明の実施にはその活用を容易にするための補足的研究が必要となったということが明らかになっている。
【0006】
その上、他の解決法が提案されている文書も公知である。
【0007】
それは例えば米国特許出願公開第2017/100219号明細書の場合で、この文書は、1本の歯または歯全体の少なくとも一部分の印象を採取することのできる検知素子手段を含む印象用トレーを提案しており、ここで前記検知素子手段は1つの注入成形材料と結び付けられ、通常は印象採取のために使用され、そのためこのような印象用トレーは満足のいくものではない。
【0008】
同様に、米国特許出願公開第2015/118638号明細書から、プレートまたはシュートで構成され、組み合された状態で、人工器具着装のために人の抜歯の溝の深さを決定することを目的とする画像を得ることを可能にする検知素子手段を備えた印象用トレーも公知である。このような印象用トレーは、歯科情報の捕捉を可能にしない。
【0009】
同様に、米国特許出願公開第2017/128173号明細書から、オペレータが把持するための取っ手および3Dスキャナを含むマウスピースならびに前記マウスピースの内部で前記3Dスキャナを移動させる手段を含むスキャン装置も公知である。このような装置は使用が簡単であると考えられている可能性があるが、その使用には限界がある。実際、マウスピースの内部での3Dスキャナの運動能力の如何に関わらず、表面に到達できたとしても、それら全ての表面に同じ精度で到達できるわけではない。
【0010】
光学印象に結び付けられる骨の輪郭を知るには、複雑な操作が余儀なくされ、非常に多くの知識が必要となり、こうして仕様に対応するべき包括的な印象用トレーシステムを設計することが明らかになっている。
【0011】
この仕様にしたがうと、電子印象用トレーはまず、臨床医にとって簡単に使用できるものでなくてはならず、口内への設置は自然で、短時間かつ迅速でなければならない。患者にとって、それは不安を感じさせるものであってはならない。
【0012】
詳細には、その形状は、異なる歯列弓形状に適応されていなければならず、さらには、検知素子の体積が極めて小さいことを理由として、使用される光が選択された検知素子を眩惑させてはならない。
【0013】
測定すべき範囲は頬や歯肉によって制限されていることから、検知素子の数は、照準となる表面が完全に読取りの対応範囲となるように、充分多くなければならない。外形寸法も同様に、厳密に最小限に縮小されていなければならず、こうして、構造化光の投射を用いるあらゆるシステムが一挙に排除される。したがって、立体視法およびOCTのような受動的システムまたは、非常に縮小されたまたは超音波の場合のように統合された送信機および検知素子を使用するシステムが使用されなければならない。
【0014】
同様に、歯の表面の形状およびその色調、歯肉表面、互いとの関係における歯列弓の動き、さらには時間が許せば骨の輪郭を同時に、または非常に近接した時間内で記録することによって、患者にとって常に不利益な行為である口内の光学印象の効果を高める可能性も提供する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許第0040165号明細書
【文献】欧州特許第0091876号明細書
【文献】国際公開第2011/154656号
【文献】米国特許出願公開第2017/100219号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/118638号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/128173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、快適性と迅速性において患者に満足を与えながら、しかも投資の合理性を保ちつつ、過度に複雑で過度に長期間にわたる訓練を受ける義務を臨床医に課すこともなく、比較的低いコストでこれらの需要全てを満たすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明に係る電子印象用トレーは、歯科分野における経時的な3次元測定のために使用可能であり、光学式測定検知素子システムを含むデバイス、前記検知素子により読取られたデータを収集し記憶し順序付けすることのできる中央管理ユニットを含む電子システムで構成され、一方前記検知素子は歯列弓の全部または一部の光学印象を単数または複数回の採取により実現できるようにするために前記印象用トレーの全部または一部の上に分布しており、この電子印象用トレーは、歯列弓の全部または一部の形状を有する部品で構成され、かつ、最適な形状を提供するために、互いに連接されかつ/または可逆的に組立て可能かつ一体化可能な複数の要素からなる構造および/または変形能力を通して変化する設計を有する部品で構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る電子印象用トレーの追加の特徴によると、光学式測定検知素子は超音波センサーおよび/またはOCT(光干渉断層撮影装置)に結び付けられている。
【0019】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、この電子印象用トレーは、患者の口内で適応された後、初めの形状に戻らない熱可塑性物質または可撓性樹脂などの変形可能な材料で作製されている。
【0020】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、検知素子が備わったその作用部分は、咬合特性に適応されたまたは変形によって適応可能な形状を有する。
【0021】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、この電子印象用トレーは、歯列弓の少なくとも一部分の印象採取に各々適応された少なくとも2つの一体化可能な要素で作製されており、および前記少なくとも2つの要素は、そのうちの少なくとも一方の要素の検知素子が他方の要素の検知素子に結び付けられて、歯列弓の少なくとも一部分の光学印象が前記少なくとも2つの要素の検知素子を用いて作製されることになるように構成されている。
【0022】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、少なくとも2つの一体化可能な要素は、嵌合により可逆的に一体化されるように適合されている。
【0023】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、少なくとも2つの一体化可能な要素は磁気的に一体化されるように適合されている。
【0024】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、この電子印象用トレーは、歯上への支承構築手段からなる深さ調節手段を含む。
【0025】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、歯上への支承構築手段は、検知素子の間に突出する少なくとも1つのブレード、ロッドまたはそれに類似するもので構成されている。
【0026】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、歯上への支承構築手段は、検知素子の上方に延在する少なくとも1つの透明な壁で構成されている。
【0027】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、透明な壁は、目印を有する。
【0028】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、透明な壁は、変形可能である。
【0029】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、透明な壁は、前記透明な壁間で摩擦運動を生成できるモーター付きまたはモーター無しの手段と協働する別の透明な壁に対して摺動接触で結び付けられている。
【0030】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、この電子印象用トレーは、周囲および/または中央吸引システム、および/または水および/または空気噴射システムを含む。
【0031】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、この電子印象用トレーは、口内部を照らすための構造化されていない受動光投射手段を含む。
【0032】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、この電子印象用トレーは、情報取得を妨げないように黒色である。
【0033】
本発明に係る電子印象用トレーの別の追加の特徴によると、検知素子を含むその部分は、印象用トレーの残りの部分から分離され、有線手段または無線通信システムを介して残りの部分に接続されている。
【0034】
本発明に係る電子印象用トレーの利点および特徴は、その非限定的な複数の実施形態を表わす添付図面に関連する以下の説明から、より明確になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a.1b.1c.1d】本発明に係る電子印象用トレーの異なる実施形態の概略的平面図を表わす。
図2a.2b.2c】異なる使用構成における本発明に係る電子印象用トレーの別の実施形態の概略的斜視図を表わす。
図3a.3b.4】異なる使用構成における本発明に係る電子印象用トレーの概略的断面図を表わす。
図5】本発明に係る電子印象用トレーの特定の一実施形態の概略的斜視分解組立図を表わす。
図6a.6b.6c】異なる使用構成における本発明に係る電子印象用トレーの別の実施形態の概略的平面図を表わす。
図7a】構成の変形形態にしたがった、本発明に係る電子印象用トレーの概略的部分平面図を表わす。
図7b図7aの概略的断面図を表わす。
図8a】構成の変形形態にしたがった、本発明に係る電子印象用トレーの概略的部分平面図を表わす。
図8b図8aの概略的断面図を表わす。
図9a.9b.9c.10a.10b】異なる変形実施形態にしたがった、本発明に係る電子印象用トレーの概略的平面図を表わす。
図11a】本発明に係る電子印象用トレーの別の実施形態の概略的平面図を表わす。
図11b.11c】異なる使用構成の同じ印象用トレーを表わす。
図12a.12b】本発明に係る電子印象用トレーの一変形形態の概略的平面図を表わす。
図13a.13b】特定の配置の枠内での、本発明に係る電子印象用トレーの部分の概略的斜視図を表わす。
図14a.14b.14c】本発明に係る電子印象用トレーの別の実施形態の概略図を表わす。
図15図14a、14b、14cの電子印象用トレーの一要素の概略的部分斜視図を表わす。
図16a.16b】図14a、14bおよび14cの光学印象用トレーの変形実施形態の概略的部分斜視図を表わす。
図17a.17b】図14a、14bおよび14cの電子印象用トレーの変形実施形態の変化の概略的部分斜視図を表わす。
図18図14a、14bおよび14cに適合する電子印象用トレーの概略的断面図を表わす。
図19】1つのオプションを備えた、本発明に係る電子印象用トレーの概略的斜視図を表わす。
図20】臨床現場における電子印象採取設備全体の斜視図を表わす。
図21a.21b】本発明に係る電子印象用トレーの2つの実施形態を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、歯列弓または歯列弓の一部分に対面して配置するためのカメラおよび光投射手段を含む印象用トレーで構成される。
【0037】
図1a、1b、1cおよび1dを参照すると、印象用トレーの用途に応じて配設された一連の光学式測定検知素子Cの備わった部品2を含む、異なるタイプの本発明に係る電子印象用トレー1が見られ、この場合、これらの図中に表わされている異なるタイプの印象用トレー1は各々、歯列弓の定義された一部分の印象採取を可能にする。
【0038】
部品2は本質的に2つの部分、すなわち臨床医による把持用取っ手を構成する部分20と、検知素子Cを含む作用部分21とを有する。
【0039】
したがって、図1aおよび1bは、半歯列弓の印象採取のための印象用トレー1を表わし、図1cおよび1dは、歯列弓の部分の印象採取用の印象用トレー1を表わす。
【0040】
部分は、好適には、口の内部を単に照らすためのただし測定用媒体としては役立たないハロゲンまたは単一のLEDまたはレーザーによって生成される非構造化受動光の投射用の、図示されてはいないが一連の検知素子Cの間に配置された手段を含んでいるという点を指摘しておく。
【0041】
図2a、2bおよび2cを参照すると、完全な歯列弓の印象採取を目的とする印象用トレー1が見られ、作用部分21は、円弧の形をしている。このような印象用トレー1は、上部歯列弓と下部歯列弓の印象採取に適応したものであり得る。
【0042】
有利には、部品2は、非限定的に、好ましくは患者の口内で適応された後、初めの形状に戻らない、熱可塑性物質または可撓性樹脂などの変形可能な材料で作製され得る。
【0043】
この場合、検知素子ならびに光投射用手段は、患者の口に対する調整の変形の間、それらの公知の校正された空間位置を過度に遠ざけることのないように、単位毎にまたは群毎に移動できるように想定されている。
【0044】
図3aおよび3bを見れば分かるように、検知素子は、非限定的に、図示されていない印象用トレー上に対を成して配置され、例えば各対の中で互いに連接されて、単数または複数の歯Dを、同一平面内にとどまりながら最適な形で取り囲むことができる。
【0045】
したがって、図4は、2つの印象用トレーを示しており、そのうちの一方は例えば連接部Rを介して異なる位置で表わされており、それに対して他方の印象用トレーは静止状態にとどまっている。
【0046】
ここで図5を参照すると、特に測定値を捕捉できるかまたはできないように一連の検知素子C全体が取り外し可能であるという点において本発明に係る電子印象用トレー1のモジュール方式の別の可能性を見ることができる。
【0047】
この場合、部品2の作用部分21は、完全な歯列弓そして非限定的に円弧状の平行な2つの一連の検知素子Cを有し、1つの要素22が作用部分21に固定され、この要素22は、第3の一連の検知素子を含み、こうして測定の精度、分解能および/または表面積を増大させている。
【0048】
図6a、6bおよび6cを参照すると、歯列弓の印象採取のために別個にまたは併せて使用でき、その作用部分のところで半歯列弓に各々対応する2つの組立て可能な部分23および24で構成されている印象用トレー2が見え、ここで一体化は、非限定的に手段Nを介して機械的または磁気的に実現されている。2つ以上の組立て可能な部分を想定することが可能であるということが指摘される。
【0049】
この構成によると、左側上部半歯列弓の印象用トレー23が右側下部半歯列弓の印象用トレーに対応し、こうして2つの印象用トレー23および24が4つの半歯列弓を作ることのみならず、それらをまとめて上位および下位の2つの完全な歯列弓を作ることをも可能にするため、印象用トレーを簡略化しその数を削減することができる。
【0050】
図7aおよび7bならびに8aおよび8bを参照すると、印象用トレーが同様に2つの要素25および26ならびに27および28の形で実現される他の構成によると、2つの要素の組立ての後で、一方の要素の検知素子Cは、異なる印象用トレーに共通の変形不可能な同じ物体の一部分(単数または複数の歯の面)に基づいて測定が行われることを理由として、他方の要素の検知素子Cと組み合わさって2つの半歯列弓の印象採取の完璧な融合を実現する、ということが分かる。例えば、これは、一方の印象用トレーの検知素子については口腔前庭面であり得るのに対して、他方の印象用トレーの検知素子については、同じ歯の咬合および舌側表面となる。
【0051】
図9a、9bおよび9c、そして図10aおよび10bを参照すると、互いに予め取り除いた状態で、互いに組立て可能な要素を想定することが可能であるということが分かる。
【0052】
図11aを参照すると、作用部分21は、咬合状態で上位および下位歯列弓の撮影を可能にするように、咬合の特徴に適応させた、場合によっては適応可能な、例えば曲線といった特定の形状を有するプレートの形を呈することができるということが分かる。
【0053】
図11bでは、作用部分21は歯に対面して凹形形状を有し、図11cでは、機械式または電子式の複雑な顔面弓システムに頼ることなく咬合表面の動的モデリングを定義できるようにする咬合運動における根本的な値である咬合ずれを測定する目的で、作用部分はくぼみを有する。
【0054】
光学検知素子に超音波センサーおよび/またはOCT(光干渉断層撮影装置)システムを結び付けることにより、歯冠または歯根に関連する治療のような一定の治療中におけるX線に対する曝露を制限するために骨質表面だけでなくエナメル質下の部分も含む側面写真も得ることができるということが指摘される。
【0055】
図12aおよび12bを参照すると、任意にはセンサー、超音波システムUおよび/またはOCTシステムT(光干渉断層撮影装置)をその光学検知素子Cに対し付加することのできる、本発明に係る印象用トレーデバイスが見られる。これらの異なるシステムは、1つのシステムおよび/または他の複数のシステムを作用させる可能性を有しながら、図12aに表わされているように取外し可能であるか、または図12bに表わされているように固定式である。
【0056】
したがって、所望される測定タイプを選択することが可能であり、どの測定が重要であるべきかを選択できるという利点がある。
【0057】
ここで図13を参照すると、特に光学的部分CおよびOCT Tの位置付けを制御するためだけでなく、臨床医による患者の口内での変形および適応後にセンサーの位置を再度平衡化し画像処理システムに対し検知素子の位置を知らせるためにも、印象用トレーの耐用期間中異なる分析方法の検知素子およびセンサーの良好な位置付けをつねに確認できる校正システムが存在していることが分かる。この校正システムSCは、印象用トレー内に挿入できるように平面のまたは湾曲した形状を有することができる。
【0058】
ここで図14を参照すると、測定対象表面を高精度の範囲である焦平面内に理想的に位置付けするために歯を支承とするまたはしない可能性が想定されているということが分かる。咬合用検知素子の場合、この支点は、図14aのように咬合表面上に、および/または図14bのように口腔前庭表面または舌表面上にある。
【0059】
歯D上の支承は、図14Cに見られるロッド、ポイント、ボールまたはブレード30などのスペーサ3を介してか、または図14aおよび14bに見える例えばウィンドウなどの透明な壁31を介して、いくつかの形で実現可能である。
【0060】
透明な壁31は、図15に表わされているように咬合表面および/または口腔前庭および/または舌表面を部分的または全体的に覆うことができる。
【0061】
有利には、透明な壁31を使用する場合、これらの透明な壁は、コンピューターのスクリーン上で見え、かつ読取り前に所望される範囲内に印象用トレーを正しく位置付けするだけでなく読取り中に印象採取の経過を見守ることを可能にする、図16aおよび16b上に表わされた溝または標的Gを担持することができるということが指摘される。
【0062】
同様に、有利にも、動的立体画像撮影の一部の場合において、校正およびスケーリングには印象開始時点でわずかな動きが求められる。この動きを容易にするため、図17aおよび17bに表わされているように許容された動きの限界内で第1の透明な壁31上を摺動する第2の透明な壁32が付加され、この後者の図には、摩擦運動を生成できるようにするモーターMが表わされている。
【0063】
照明システムは、良好な読取りを妨げる可能性のある表面上の反射を回避するため、好適には単数または複数の透明な壁31、32の周囲にある。
【0064】
しかしながら、図18を参照して、単数または複数の透明な壁31の後ろに例えばLEDタイプの照明システム4を配置することが可能であり、その場合、ガラス板は、可能なかぎり非反射性となるように選択され、光の投射は、その光学軸および存在する場合にはその反射が測定対象範囲内に可能なかぎり少なく到達するような形で行なわれるものとする。
【0065】
このタイプの反射を回避するため、光スキャンを導く光の投射はつねに遠ざけられ、可能なかぎり徐々に近づくことが少なくなければならない。したがって、スキャンフラッシュの間、第1のフラッシュが印象用トレーの開始範囲内にある場合、第2のフラッシュは好適には反対側の範囲ひいては終了範囲内にあり、次に第3のフラッシュは開始範囲内、次に第4のフラッシュが終了範囲内にあり、以下同様となる。
【0066】
撮影中、測定対象範囲を唾液、血液または湯気の無い可能なかぎり鮮明な状態に維持することを可能にする、唾液吸引および/または水および空気の噴出用のシステムSを付加することができる。その流体、吸引またはエネルギーの供給源が歯料ユニット上につねに存在するこれらのシステムは、図19上に概略的に表わされているように、印象用トレーの全体または一部分(例えば周囲)に適応可能であるものとする。
【0067】
測定対象範囲の条件付けを補完するため、印象用トレーおよび/または透明な壁の加熱手段を想定することができる。
【0068】
ここで図20を参照すると、光学印象採取設備の全体像が見られる。この設備は、ディスプレイスクリーンEを備えた捕捉画像処理用コンピューターPを含み、この設備はさらに、この場合は複数であり有線式に接続されている単数または複数の本発明に係る印象用トレーを含むが、ここでは、WIFI、Bluetoothまたは他のあらゆるネットワークによる無線接続も同様に可能である。
【0069】
撮影開始は、臨床医Dがボタン、音声またはペダルを用いて実現でき、あるいは患者Pがボタンで行なうこともできる。
【0070】
ここで図21aおよび21bを参照すると、印象用トレー2は唯一つの部分または2つの部分でできていてよく、すなわち、作用部分21は独立していて、このため、口の近くの部分を軽量化できるということが分かる。このためには、電子的構成要素の最適な分布が行なわれる。2つの部分からなる印象用トレーの場合には、作用部分21は、電線Fを介して、好ましくは無線通信システムによって、印象用トレーの残りの部分またはコンピューターに連結される。
【符号の説明】
【0071】
1 電子印象用トレー
2 部品
21 作用部分

図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図11a-11c】
図12a
図12b
図13a
図13b
図14a
図14b
図14c
図15
図16a
図16b
図17a
図17b
図18
図19
図20