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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ガラス板モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
H01R4/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020571162
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2020003675
(87)【国際公開番号】W WO2020162354
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2019021440
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】常葉 淳一
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0237302(US,A1)
【文献】特開平07-132781(JP,A)
【文献】特表2018-537697(JP,A)
【文献】特表2010-500703(JP,A)
【文献】特開2016-064444(JP,A)
【文献】特開2017-022047(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204247(WO,A1)
【文献】特開昭56-022075(JP,A)
【文献】特開昭57-197761(JP,A)
【文献】特開2019-212494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 4/18
B23K 1/00
B60S 1/02
C03C 17/06
B05B 3/02
B05B 3/84
B60J 1/00
H01Q 1/22
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス体と、
前記ガラス体上に積層された導電体と、
前記導電体に固定され、導電性材料で形成された、少なくとも1つの接続端子と、
前記接続端子を前記導電体に固定するための無鉛半田と、
を備え、
前記接続端子は、
基部と、
前記基部に連結され、前記導電体に前記無鉛半田を介して固定される一対の設置部と、
前記導電体に給電するケーブルが接続される給電部と、
前記基部と給電部との間に配置され、前記給電部を屈曲可能に前記基部に接続する、接続部と、
を備え、
前記基部は、
前記各設置部からそれぞれ立ち上がる一対の起立部と、
前記一対の起立部を接続するように水平方向に延びる本体部と、
を備え、
前記接続部は、前記本体部から水平方向に延び、
前記給電部は、前記接続部において前記本体部とは反対側に接続されており、
前記給電部は、前記接続部に接続される支持部と、前記支持部の両側から下方に延び、前記ケーブルを固定するための一対の延在部と、を有し、
前記接続部は、前記支持部より幅が狭い、
ガラス板モジュール。
【請求項2】
前記一対の設置部は、前記基部を挟んで互いに反対側に配置されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項3】
前記接続部は、前記基部よりも変形可能に構成されている、請求項1または2に記載のガラス板モジュール。
【請求項4】
前記接続部は、銅亜鉛合金により形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項5】
前記設置部において、前記無鉛半田を介して前記導電体と対向する面には、少なくとも1つの凸部が形成されている、請求項1から4のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項6】
前記導電体は、少なくとも1つの加熱線によって形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項7】
前記導電体は、少なくとも1つのアンテナによって形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項8】
前記導電体は、少なくとも1つの調光体または発光体によって形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項9】
ガラス体は、
外側ガラス板と、
内側ガラス板と、
前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に配置される中間膜と、
を有する合わせガラスにより形成されている、請求項1から8のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項10】
前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に前記導電体が配置され、
前記内側ガラス板の端縁に切り欠きが形成されており、
前記切り欠きによって外部に露出する前記導電体に、前記無鉛半田を介して前記接続端子が固定されている、請求項9に記載のガラス板モジュール。
【請求項11】
前記外側ガラス板は、未強化ガラスにより形成されている、請求項10に記載のガラス板モジュール。
【請求項12】
前記導電体は印刷された銀によって形成されている、請求項1から11のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項13】
前記無鉛半田は、インジウム系の無鉛半田である、請求項1から12のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【請求項14】
前記無鉛半田の融点は、150℃以下である、請求項1から13のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の窓枠に取り付けられるガラス板モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、自動車のガラス板の導電体に接続される接続端子が開示されている。このような接続端子には、ケーブルなどが接続され、接続端子を介して導電体に給電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-519149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような接続端子は、導電体に無鉛半田を介して固定される。しかしながら、無鉛半田は有鉛半田に比べて硬いため、接続端子が何かに引っ掛かったり、あるいは接続端子に接続されているケーブルが不意に引っ張られると、接続端子と導電体との接続箇所に応力が集中し、接続端子の剥がれなどの不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、接続端子に外力が作用した場合でも、接続端子の剥がれなどの不具合を抑制することができるガラス板モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガラス板モジュールは、ガラス体と、前記ガラス体上に積層された導電体と、前記導電体に固定され、導電性材料で形成された、少なくとも1つの接続端子と、前記接続端子を前記導電体に固定するための無鉛半田と、を備え、前記接続端子は、基部と、前記基部に連結され、前記導電体に前記無鉛半田を介して固定される少なくとも1つの設置部と、前記導電体に給電するケーブルが接続される給電部と、前記基部と給電部との間に配置され、前記給電部を屈曲可能に前記基部に接続する、接続部と、を備えている。
【0007】
上記ガラス板モジュールにおいては、一対の前記設置部を備えることができる。
【0008】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記一対の設置部は、前記基部を挟んで互いに反対側に配置することができる。
【0009】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記接続部は、前記基部よりも変形可能に構成することができる。
【0010】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記接続部は、銅亜鉛合金により形成することができる。
【0011】
上記ガラス板モジュールでは、前記設置部において、前記無鉛半田を介して前記導電体と対向する面に、少なくとも1つの凸部を形成することができる。
【0012】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記導電体は、少なくとも1つの加熱線によって形成することができる。
【0013】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記導電体は、少なくとも1つのアンテナによって形成することができる。
【0014】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記導電体は、少なくとも1つの調光体または発光体によって形成することができる。
【0015】
上記ガラス板モジュールにおいて、ガラス体は、外側ガラス板と、内側ガラス板と、前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に配置される中間膜と、を有する合わせガラスにより形成することができる。
【0016】
上記ガラス板モジュールにおいては、前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に前記導電体を配置することができ、前記内側ガラス板の端縁に切り欠きを形成することができ、前記切り欠きによって外部に露出する前記導電体に、前記無鉛半田を介して前記接続端子を固定することができる。
【0017】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記外側ガラス板は、未強化ガラスにより形成することができる。
【0018】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記導電体は印刷された銀によって形成することができる。
【0019】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記無鉛半田は、インジウム系の無鉛半田とすることができる。
【0020】
上記ガラス板モジュールにおいて、前記無鉛半田の融点は、150℃以下とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るガラス板モジュールによれば、接続端子に外力が作用した場合でも、接続端子の剥がれなどの不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス板モジュールの平面図である。
図2図1のガラス板モジュールに用いられる接続端子の斜視図である。
図3図2の平面図である。
図4図2の背面図である。
図5図2に示す接続端子をガラス板に取付ける方法を示す背面図である。
図6図2に示す接続端子がガラス板に取付けられた状態を示す背面図である。
図7図2に示す接続端子がガラス板に取付けられたときに、ケーブルに力を作用させた状態を示す側面図である。
図8図7の背面図である。
図9】本発明に係る接続端子の他の例を示す斜視図である。
図10】本発明に係る接続端子の他の例を示す平面図である。
図11】本発明に係る接続端子の他の例を示す平面図である。
図12A】本発明に係る接続端子の他の例を示す平面図である。
図12B図23Aの背面図である。
図13】本発明に係る接続端子を合わせガラスに取り付けた状態を示す平面図である。
図14】実施例1に係る接続端子の平面図である。
図15】実施例2に係る接続端子の平面図である。
図16】比較例に係る接続端子の平面図である。
図17】実施例1,2に係る接続端子に対しケーブルに荷重を作用させた試験を示す側面図である。
図18】比較例に係る接続端子に対しケーブルに荷重を作用させた試験を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るガラス板モジュールの一実施形態について,図面を参照しつつ説明する。図1は、このガラス板モジュールの平面図である。図1に示すように、このガラス板モジュール10は、自動車の窓枠に嵌め込まれるものである。具体的には、このガラス板モジュール10は、ガラス板1と、このガラス板1に積層されるデフォッガ2(導電体)と、このデフォッガ2に無鉛半田4によって取り付けられる一対の接続端子3と、を備えている。各接続端子3には、車内から延びる給電用のケーブル5が取り付けられ、ケーブル5から供給される電流が接続端子3を介してデフォッガに供給される。以下、各部材について説明する。
【0024】
<1.ガラス板>
ガラス板1には、自動車用の公知のガラス板を利用することができる。例えば、ガラス板1には、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラス若しくはグリーンガラス、又はUVグリーンガラスが利用されてもよい。ただし、このようなガラス板1は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、日射吸収率、可視光線透過率などが安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラスの組成の一例と、熱線吸収ガラス組成の一例を示す。
【0025】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al23:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.08~0.14質量%
【0026】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT-Fe23、CeO2及びTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0027】
なお、ガラス板1の種類は、クリアガラス又は熱線吸収ガラスに限られず、実施の形態に応じて適宜選択可能である。例えば、ガラス板1は、アクリル系、ポリカーボネート系等の樹脂窓であってもよい。
【0028】
また、本実施形態に係るガラス板1の厚みは、特には限定されなくてもよい。ただし、軽量化の観点からは、ガラス板1の厚みは、2.2~5.1mmの範囲で設定されてもよく、2.4~3.8mmの範囲で設定されてもよく、2.7~3.2mmの範囲で設定されてもよい。更に、ガラス板1の厚みは3.1mm以下、2.0mm以下、さらには1.6mm以下となるように設定されてもよい。
【0029】
また、このようなガラス板1は、単一のガラス板のほか、複数のガラスで樹脂などの中間膜を挟持した合わせガラスであってもよい。合わせガラスを構成する各ガラス板の厚みも特には限定されないが、例えば、一方のガラス板を1.6mm、他方のガラス板を2.0mmとすることができる。また、一方のガラス板の厚みを0.3mmとすることもできる。以上より、ガラス板は、0.2~5.1mmの範囲で適宜設定することができる。
【0030】
<2.デフォッガ>
次に、デフォッガ2について説明する。図1に示すように、デフォッガ2は、ガラス板1の両側縁に沿って上下方向に延びる一対の給電用の第1バスバー21及び第2バスバー22を備えている。両バスバー21、22の間には、水平方向に延びる複数の加熱線23が所定間隔をおいて平行に配置されている。
【0031】
そして、第1バスバー21に取り付けられる接続端子3から電流が供給され、第2バスバー22に取り付けられる接続端子は、ケーブル5を介して接地されている。この構成によって、デフォッガ2に電流が供給されると、加熱線23に防曇用の熱が発生するようになっている。なお、バスバー21,22や加熱線23は、例えば、導電性の銀ペーストをガラス板1の表面上に印刷し焼成することによって形成される。ただし、デフォッガ2を構成する材料は、この銀ペーストに限定されず、適宜選択可能である。
【0032】
<3.接続端子>
次に、接続端子3について図2及び図3を参照しつつ説明する。図2はケーブルが接続された接続端子の斜視図、図3はケーブルが接続される前の接続端子の平面図、図4は接続端子の背面図である。以下では、説明の便宜のため、図2図4に示す方向に沿って説明を行う。
【0033】
図2図4に示すように、本実施形態に係る接続端子3は、一対の設置部31と、基部32と、接続部33と、給電部34とを備えており、これらが、例えば、板状の金属などの導電性材料を折り曲げて一体的に形成されたものである。接続端子3を形成する材料は、導電性材料であれば、特には限定されないが、後述するような繰り返しの曲げ強度が高い材料が好ましく、例えば、銅亜鉛合金、タフピッチ鋼(C1100R)、黄銅(C2600)、銅合金(NB-109)を採用することが好ましい。
【0034】
各設置部31は、デフォッガ2のバスバー21,22上に設置されるものであり、板状に形成されている。各設置部31は、全体として矩形状に形成されているが、角部が円弧状に形成されている。また、各設置部31の下面が、後述する無鉛半田4を介してバスバー21,22に固定されている。なお、設置部31は、角部が湾曲した形状を有しているが、これによって、後述する応力集中を抑制している。
【0035】
各設置部31の下面には、2個の凸部311が形成されており、後述するように、これら凸部311によって、設置部31とバスバー21,22との間に隙間が形成され、その隙間を埋めるように無鉛半田4が配置される。
【0036】
2つの設置部31は、基部32によって連結されている。より詳細に説明すると、基部32は、各設置部31の側縁の後端部から立ち上がる一対の起立部321と、両起立部321を接続するように水平方向に延びる本体部322と、を備え、全体として正面視U字状に形成されている。そして、本体部322の前端からは接続部33が前方に延び、さらに接続部33の前端には左右方向に帯状に延びる給電部34が接続されている。
【0037】
接続部33の左右方向の幅は、本体部322よりも小さくなっている。また、本体部322において、接続部33との接続部分には、接続部33の両端と対応する位置に半円状の切り欠き323が形成されている。
【0038】
図3及び図4に示すように、給電部34は、ケーブル5が接続される前には、接続部33に接続される矩形状の支持部341と、この支持部341の両側から下方に延びる一対の延在部342とを備えている。支持部341の左右方向の幅は、接続部33よりも広くなっている。そして、給電部34は、後述する図5に示すように、支持部341及び一対の延在部342によってケーブル5を囲み、加締めることで、ケーブル5を固定するようになっている。
【0039】
<4.半田>
無鉛半田4は、特には限定されず、例えば、インジウム系、鉛系、ビスマス系、スズ-銀系等の無鉛半田を用いることができる。特に、インジウム系や鉛系の無鉛半田は、例えば、スズ-銀系の無鉛半田に比べて柔らかい材料であるため、残留応力によるガラス板の破損を抑制することができる。また、応力集中を緩和するため、融点が150℃以下であるインジウム系等の柔らかい無鉛半田を用いることが好ましい。
【0040】
<5.接続端子の取付け>
次に、接続端子3の取付け方法について、図5及び図6を参照しつつ説明する。まず、図5に示すように、給電部34の両延在部342の間にケーブル5を配置し、両延在部342を加締めることで、ケーブル5を給電部34に固定する。これにより、ケーブル5は、基部32の下側に配置される。なお、ケーブル5は、給電部34との接続部分を除いてゴム等の非導電性部材で被覆されている。続いて、設置部31の下面に無鉛半田4を塗布する。
【0041】
続いて、上記のように準備された接続端子3をバスバー21,22に固定する。まず、図5に示すように、バスバー21,22上に無鉛半田4を配置する。これに続いて、接続端子3の設置部31の上面側を加熱する。これにより、設置部31を介して無鉛半田4に熱が伝導し、無鉛半田4が溶融する。そして、図6に示すように、無鉛半田4の固化に伴い、設置部31がバスバー21,22に固定される。
【0042】
<6.特徴>
以上のように、本実施形態に係るガラス板モジュール10によれば、次の効果を得ることができる。
【0043】
(1) 例えば、図7及び図8に示すように、ケーブル5が旋回し、ガラス板1に対して垂直に延びるように力が加わると、設置部31の一部に応力が集中し、設置部31がバスバー21,22から剥がれたり、あるいは設置部31がバスバー21,22及びガラス板1とともに剥がれるおそれがあり、これによって、接続端子3がバスバー21,22から離脱するおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態においては、給電部34と基部32との間に幅の狭い接続部33を設け、ケーブル5が給電部34とともに旋回したときに、接続部33が基部32に対して屈曲するように構成している。これにより、設置部31に力が集中するのを抑制し、その結果、設置部31がバスバー21,22やガラス板1から剥がれるのを防止することができる。
【0045】
また、インジウム系等の融点が低い無鉛半田4は、例えば、スズ-銀系の無鉛半田に比べて柔らかいため、上記のような力が作用した場合に、無鉛半田4を介して設置部31からバスバー21,22に作用する力を緩和することができ、接続端子3の剥がれをより抑制することができる。但し、このような融点の低い無鉛半田4は、例えば、真夏の砂漠や浜辺のような高温下で誤ってデフォッガのスイッチをONにした場合、融点に近い温度まで上昇し、半田の接着力がやや低下する可能性がある。これに対して、スズ-銀系の無鉛半田は、インジウム系の無鉛半田に比べて硬く、応力緩和効果は低いものの、融点が高いため、高温下での使用で上記のような接着力の低下は生じない。
【0046】
(2) 図2及び図3に示すように、基部32には、接続部33との接続箇所に円弧状の切り欠き323が形成されている。これにより、接続部33の前後方向の長さが、切り欠き323によって実質的に長くなる。そのため、接続部33が力を受けやすくなり、より屈曲しやすくなる。その結果、設置部31に力が集中するのをより抑制し、その結果、設置部31がバスバー21,22やガラス板1から剥がれるのをさらに防止することができる。
【0047】
(3) 本実施形態に係る接続端子3では、基部32に起立部321が設けられているが、これによって、基部32の本体部322と、設置部31との間に隙間を形成することができる。そのため、この隙間に給電部34を配置することができ、ケーブル5を本体部322よりも下方に配置することができる。したがって、接続端子3のガラス板1からの突出高さを抑えることができ、接続端子3が、作業者、作業道具などに接触するのを抑制することができる。また、給電部34が基部32の上面から突出しないため、接続端子3をコンパクトな構造とすることができる。
【0048】
(4) 給電部34の両側には、これを左右から挟むように一対の設置部31が配置されている。したがって、給電部34に作用する力(特に後述する回転モーメント)を左右に分散することができ、各設置部31に作用する力を弱めることができる。
【0049】
(5) 設置部31の下面には、凸部311が形成されているため、この凸部311によって設置部31とバスバー21,22との間に隙間を形成することができる。そして、この隙間に無鉛半田4が配置されるため、無鉛半田4の厚みを均一にすることができる。そのため、設置部31の面内における接着強度を均一にすることができる。
【0050】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。そして、以下に示す複数の変形例は適宜組合わせることが可能である。
【0051】
<1>
上記実施形態では、接続部33の幅を基部32の本体部322よりも狭くするとともに、切り欠き323を形成することで、接続部33の前後方向の長さを実質的に長くし、屈曲しやすくしているが、これ以外にも、接続部33には、屈曲しやすくするための種々の構成を設けることができる。例えば、接続部33の厚みを基部32よりも薄くしたり、予め曲げ癖を付けておいたり、あるいは接続部33を構成する材料を、基部32よりも柔らかいものにするなど、基部32よりも変形しやすくすることで、屈曲しやすくする種々の構成が可能である。
【0052】
<2>
上記実施形態では、接続端子3を一の材料で一体的に形成しているが、複数の材料で形成することもできる。上述したように、接続部33のみ異なる材料が形成することもできる。
【0053】
<3>
上記実施形態では、設置部31を2個設けているが、例えば、図9に示すように1つでもよい。また、基部32の形状も特には限定されず、設置部31と接続部33とを連結できるような形状であればよい。また、給電部34はケーブル5を加締めたときに、基部32の本体部322よりも下方に位置するように設けられているが、本体部322よりも上方に配置されていてもよい。さらに、設置部31の形状も特には限定されず、例えば、図10に示すように、矩形状に形成することができる。このようにすると、例えば、図3の例に比べ、無鉛半田4が塗布される面積を大きくできるため、接合強度を向上することができる。特に、インジウム系の半田は、高温下(例えば、105~120℃)での接合強度があまり高くないため、このようにすると有利である。また、凸部311は必ずしも設けなくてもよい。設置部31を2個設ける場合、上記実施形態のように基部32を挟んで設けなくてもよく、2個の設置部31の基部32に対する位置は特には限定されない。
【0054】
<4>
接続部33の長さは、特には限定されず、例えば、図11に示すように、設置部31を超えて、前方に延びていてもよい。これにより、給電部34は設置部31よりも前方に配置される。このように接続部33が長くなると、接続部33が曲がりやすくなるため、図7のようにケーブル5が給電部34とともに旋回したときに、設置部31に力が集中するのをさらに抑制することができる。一方、接続部33、設置部31、及び給電部34の前後方向の長さを調整することで、給電部34の前後方向の位置を変更することもできる。例えば、図3の例では、給電部34の前端と設置部331の前端とが概ね一致しているが、図12Aに示すように、給電部34が、設置部31の前端よりも後方に配置するようにしてもよい。また、切り欠き部323は必ずしも必要ではなく、例えば、図12Aに示すように、切り欠き部を設けないようにしてもよい。但し、この場合には、接続部33を曲がりやすくするため、接続部33の幅を小さくすることが望ましい。
【0055】
<5>
上記実施形態では、例えば、図4に示すように、起立部321が設置部31と基部32に対して概ね垂直になるように設けられているが、これに限定されない。例えば、図12Bに示すように、起立部321が設置部31と基部32に対して斜めに延びるようにしてもよい。この例では、起立部321は、設置部31側にいくにしたがって、下方に延びるように形成されている。これにより、給電部34に力が作用した場合、斜めに延びた起立部321により、設置部31に伝達する力を緩和することができる。
【0056】
<6>
給電部34は、加締めによってケーブル5を固定しているが、ケーブル5を固定できるのであれば、その構成は特には限定されず、種々の固定方法を適用することができる。例えば、ケーブル5の先端にコネクタを取付け、このコネクタを給電部34に嵌め込んだり、半田や導電性の接着剤によって、ケーブル5と給電部34とを固定することもできる。また、接続端子3の、ガラス板1からの突出高さに制限がなければ、ケーブル5を接続部33の上面側に固定することもできる。
【0057】
<7>
上記実施形態では、デフォッガ2に接続端子3を固定する例を示しているが、デフォッガ以外でも電流が供給される電装品であれば、本発明の導電体として適用することができる。例えば、バスバー以外の加熱線や、アンテナであってもよい。
【0058】
<8>
上記実施形態では、ガラス板1に導電体(バスバー及び加熱線)を設けた例を説明したが、例えば、合わせガラスに導電体を設け、これに上記接続端子3を設けることもできる。合わせガラスは、外側ガラス板、内側ガラス板、及びこれらの間に配置される樹脂製の中間膜を有する公知のものを用いることができる。そして、内側ガラス板の車内側の面に、加熱線、アンテナ、調光体、発光体などの導電体を配置し、この導電体に無鉛半田によって接続端子を固定することができる。導電体としては、その他、例えば、センサやカメラの配置される領域に設けられる加熱線等を用いることができる。あるいは、図10に示すように、両ガラス板11,12の間に、上述した各種の導電体25を配置し、内側ガラス板12に形成した切り欠き121から、導電体25を露出させることができる。そして、露出した導電体25に無鉛半田4によって接続端子3を固定することができる。この場合、外側ガラス板11は、未強化ガラスにより形成することができる。このような両ガラス板11,12の間に配置される導電体としては、デアイサーも用いることができる。この場合、デアイサーは、外側ガラス板11の車内側の面に配置することができる。
【0059】
<9>
また、導電体の上にフラックスを塗り、その上に無鉛半田4を介して接続端子3を固定することもできる。この場合、フラックスとしては、例えば、ガンマラックス(千住金属工業株式会社製)を用いるとよい。
【実施例
【0060】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0061】
<1.実施例及び比較例の準備>
実施例1として、上記実施形態と同様の形態の接続端子を作製した。具体的には図14に示す接続端子を作成した。材料を銅亜鉛合金とし、寸法は図14に示す通りである(単位はmm)。実施例2は、図15に示すとおりであり、実施例1とは接続部の構成が相違している。すなわち、基部に切り欠きを設けず、接続部の両側を円弧状に凹となるように形成している。一方、比較例として図16に示す接続端子を作製した。比較例は、接続部が設けられておらず、基部と給電部とが直接接続されている。
【0062】
続いて、上記のように構成された実施例1,2及び比較例の給電部にケーブルを加締めた後、各設置部を、インジウム系の無鉛半田により、ガラス板(未強化ガラス板:厚み2.0mm)上に積層された導電体(材質はAg)上に固定した。そして、図17または図18に示すように、接続端子が下方を向くように配置し、ケーブルに対し、ガラス板に垂直な方向に荷重をかけた上で、これら実施例1,2及び比較例を、温度105℃の保管室で96時間保管した。その後、接続端子が導電体から剥がれたか否かを観察した。荷重は、5Nと10Nの2種類とした。結果は、以下の通りである。
【0063】
【表1】
【0064】
上記表1に示すように、実施例1,2に係る接続端子は導電体から剥がれなかったが、比較例に係る接続端子は導電体から剥がれた。実施例1,2に係る接続端子は、接続部を有しているため、ケーブルにガラス板と垂直な荷重が加わったとき、図17に示すように、接続部が屈曲した。したがって、ケーブルに作用した荷重よる回転モーメントが、接続端子の設置部に作用するのが緩和され、これによって接続端子の剥がれが防止されたと考えられる。一方、比較例に係る接続端子は、接続部がないため、ケーブルにガラス板と垂直な荷重が加わったとき、図18に示すように、ケーブルによる回転モーメントが設置部に大きく作用し、これによって設置部が導電体から剥がれたと考えられる。したがって、基部と給電部との間に接続部を設けることで、接続端子の剥がれが防止できることが分かった。
【符号の説明】
【0065】
1 :ガラス板
2 :デフォッガ(導電層)
3 :接続端子
4 :無鉛半田
5 :ケーブル
10 :ガラス板モジュール
31 :設置部
32 :基部
33 :接続部
34 :給電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18