(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
G01G 3/142 20060101AFI20240311BHJP
G01G 19/52 20060101ALI20240311BHJP
G01G 23/01 20060101ALI20240311BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20240311BHJP
F25D 29/00 20060101ALI20240311BHJP
F25D 25/02 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01G3/142
G01G19/52 Z
G01G23/01 Z
F25D23/00 301A
F25D29/00 Z
F25D25/02 Z
(21)【出願番号】P 2021010765
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 芳輝
(72)【発明者】
【氏名】小池 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 隆人
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010208(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140582(WO,A1)
【文献】特開2013-011383(JP,A)
【文献】特開昭57-207831(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0006141(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 3/142
G01G 19/52
G01G 23/01
G01L 1/22
F25D 23/00
F25D 25/02
F25D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を載置する棚と、
該棚を支持し、前記棚に載置した食品重量が増えるほど大きくなる電圧V
p
と、前記棚に載置された食品重量が増えるほど小さくなる電圧V
n
を出力する重量センサユニットと、
センサ基板と、
を備えた冷蔵庫であって、
前記センサ基板は、
前記電圧V
p
と前記電圧V
n
と電圧V
a
を用いて出力電圧V
out
を生成する増幅回路と、
前記電圧V
a
を生成し前記増幅回路に供給するとともに、前記出力電圧V
out
に応じて前記重量センサユニットに載置された荷重に関連する出力を行う荷重演算部と、
を有する冷蔵庫において、
前記重量センサユニットは、前記棚の下面を支持する四つの重量センサを電気的に環状に接続したものであり、
各々の重量センサは、前記棚を載置した時に変形するロードセルの上面もしくは下面に貼り付けた一対の歪ゲージを備え、
第一重量センサの一対の歪ゲージの接続点には電源電圧V
ccが供給され、
第二重量センサの一対の歪ゲージの接続点は前記電圧V
pを出力し、
第三重量センサの一対の歪ゲージの接続点は接地され、
第四重量センサの一対の歪ゲージの接続点は前記電圧V
nを出力することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
食品を載置する棚と、
該棚を支持し、前記棚に載置した食品重量が増えるほど大きくなる電圧V
p
と、前記棚に載置された食品重量が増えるほど小さくなる電圧V
n
を出力する重量センサユニットと、
センサ基板と、
を備えた冷蔵庫であって、
前記センサ基板は、
前記電圧V
p
と前記電圧V
n
と電圧V
a
を用いて出力電圧V
out
を生成する増幅回路と、
前記電圧V
a
を生成し前記増幅回路に供給するとともに、前記出力電圧V
out
に応じて前記重量センサユニットに載置された荷重に関連する出力を行う荷重演算部と、
を有する冷蔵庫において、
前記増幅回路は、
前記電圧V
nが非反転入力端子に入力され、電圧V
1を出力する第一オペアンプと、
前記電圧V
pが非反転入力端子に入力され、電圧V
2を出力する第二オペアンプと、
前記電圧V
1の派生信号が反転入力端子に入力され、前記電圧V
2の派生信号が非反転入力端子に入力され、前記出力電圧V
outを出力する第三オペアンプと、を具備しており、
前記第一オペアンプの反転接続端子と前記第二オペアンプの反転接続端子は抵抗RGを介して接続されており、
前記第一オペアンプの反転入力端子には、前記電圧V
aを平滑処理した電圧が入力されることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
食品を載置する棚と、
該棚を支持し、前記棚に載置した食品重量が増えるほど大きくなる電圧V
p
と、前記棚に載置された食品重量が増えるほど小さくなる電圧V
n
を出力する重量センサユニットと、
センサ基板と、
を備えた冷蔵庫であって、
前記センサ基板は、
前記電圧V
p
と前記電圧V
n
と電圧V
a
を用いて出力電圧V
out
を生成する増幅回路と、
前記電圧V
a
を生成し前記増幅回路に供給するとともに、前記出力電圧V
out
に応じて前記重量センサユニットに載置された荷重に関連する出力を行う荷重演算部と、
を有する冷蔵庫において、
前記荷重演算部は、前記棚に食品が載置されない状態であっても、前記増幅回路で有効な出力電圧V
outを生成するように、前記電圧V
aのDutyを制御することを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚に載置した食品の重量を測定する機能を持った冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
ロードセル(歪ゲージ)の電気抵抗値の変化を利用して荷重を測定する従来技術として、特許文献1の計量装置が挙げられる。この計量装置は、産業上の利用分野欄に記載されるように、「アナログ重量信号を増幅回路で増幅した後、ローパスフイルタで信号中に含まれるノイズ成分を減衰してA/D変換器に入力するようにした計量装置の信号処理回路に関し、特に、上記信号処理回路に生じるドリフトやスパン誤差を計量中でも任意に瞬時に補正できるようにした」ものであり、具体的な構成として、特許請求の範囲には「1 増幅回路と、その後段に接続されて信号中に含まれるノイズ成分を減衰させるアクテイブフイルタとを備えてなる信号処理回路を有する計量装置であつて、上記増幅回路の入力側に、計量モードでは重量信号を入力し、補正モードでは設定基準信号を入力する第1の切換手段を設けるとともに、上記アクテイブフイルタに、該フイルタをフイルタ機能とバツフア機能とに切り換える第2の切換手段を設けて、補正モードでは、上記アクテイブフイルタをバツフア機能に設定するようにしたことを特徴とする計量装置」が開示されている。
【0003】
また、特許文献1の第3図には、増幅回路の入力側に設けた複数のスイッチを切り替え、モードに応じた電圧を増幅回路に与える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の計量装置では、増幅回路に与える電圧は固定されており、この固定電圧を与えるか与えないかを制御できるが、計量装置の個体差に応じて最適化した電圧を増幅回路に与えるわけではない。従って、例えば、ロードセルの個体差等の影響により、増幅回路の各オペアンプの入力端子間にユニークなオフセット電圧が発生しても、特許文献1の計量装置では、ユニークなオフセット電圧の大きさに応じた適正な電圧を与えることで、オフセット電圧の影響を低減することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明では、増幅回路のオペアンプの入力端子間にユニークなオフセット電圧が発生しうる環境下で、そのオフセット電圧の影響を解消し、棚の装着状態や、棚に載置した食品重量を正確に測定できる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の冷蔵庫は、品を載置する棚と、該棚を支持し、前記棚に載置した食品重量が増えるほど大きくなる電圧Vpと、前記棚に載置された食品重量が増えるほど小さくなる電圧Vnを出力する重量センサユニットと、センサ基板と、を備えた冷蔵庫であって、前記センサ基板は、前記電圧Vpと前記電圧Vnと電圧Vaを用いて出力電圧Voutを生成する増幅回路と、前記電圧Vaを生成し前記増幅回路に供給するとともに、前記出力電圧Voutに応じて前記重量センサユニットに載置された荷重に関連する出力を行う荷重演算部と、を有する冷蔵庫とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷蔵庫によれば、増幅回路のオペアンプの入力端子間にユニークなオフセット電圧が発生しうる環境下で、そのオフセット電圧の影響を解消し、棚の装着状態や、棚に載置した食品重量を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】各重量センサユニットのロードセルの接続回路図
【
図6】主制御基板、センサ基板、重量センサユニットの機能ブロック図
【
図9】パルス電圧V
aのDutyとV
outの関係を示すグラフ
【
図10】比較例の電圧V
1,V
2と、本実施例の電圧V
1,V
2の関係を示すグラフ
【
図11】比較例のV
outと、本実施例のV
outの関係を示すグラフ
【
図12】パルス電圧V
aのDutyの決定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の一実施例に係る冷蔵庫1を説明する。
【0011】
<冷蔵庫1の構成>
図1は、本発明の一実施例に係る冷蔵庫1の断面図であり、上下および前後の各方向を図示するように定義する。この冷蔵庫1は、前方が開口した外箱11で外郭を構成し、前方の開口を開閉する扉12を備えたものである。また、外箱11の内部には内箱13が備えられており、外箱11と内箱13の間には発泡断熱材14が充填されている。内箱13内に形成される庫内15には、上下方向に複数の棚16(16a~16e)を配置しており、それらに、肉・魚・野菜・飲み物・冷凍食品等の食品が載置される。外箱11の背面下部には、冷媒を圧縮する圧縮機17が備えられている。圧縮機17には、図示しない凝縮器、膨張弁、蒸発器が接続されて冷凍サイクルを構成し、気化熱を利用して庫内15を冷却する。内箱13には、冷気を吹き出す吐出口が形成されており、図示しない冷却ファンから送風された冷気を庫内15に吐出する。また、内箱13の内面に設けられた操作パネルを用いて、冷蔵庫1の動作設定を変更したり、後述するオフセット調整処理を実行したりすることができる。
【0012】
内箱13の内部には、三つの重量センサユニット20が固定されており、各々の重量センサユニット20には棚16a,16b,16eが載置されている。なお、重量センサユニット20を配置する棚16は、
図1の例に限定されず、任意の棚16の下方に重量センサユニット20を固定しても良い。
【0013】
外箱11の背面には、圧縮機17等を制御する主制御基板18が備えられている。主制御基板18は、例えば庫内15に設置された温度センサ15aが検出した庫内温度や、棚16に載置した食品重量などに基づき、圧縮機17を制御する。また、外箱11の後部には、重量センサユニット20の出力に基づいて棚16の着脱状態を判定したり棚16上の食品重量を測定したりするセンサ基板19が備えられている。なお、主制御基板18とセンサ基板19は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えたコンピュータである。そして、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、後述する各機能を実現するが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら説明する。
【0014】
<重量センサユニット20の構成>
次に、
図2A、
図2Bの斜視図を用いて、本実施例の重量センサユニット20の構成について説明する。
【0015】
図2Aは、重量センサユニット20の斜視図である。ここに示すように、重量センサユニット20は、内箱13の左右と後の三内面と接する略コ字状の構造を有しており、左右二辺の前端付近と後端付近に合計四つの重量センサ2(2a~2d)を設置している。
【0016】
図2Bは、
図2Aの重量センサユニット20に棚16を載置した状態を示す斜視図である。ここに示すように、棚16の下面の四隅を四つの重量センサ2で支持しているため、センサ基板19は、重量センサユニット20が備える四つの重量センサ2の出力に基づいて、棚16の着脱状態を判定したり、棚16上の食品重量を測定したりすることができる。なお、重量センサユニット20の形状や仕様は、各棚の形状や重量に応じて異なっても良い。
【0017】
<重量センサ2の構成>
図3は、重量センサユニット20に埋設された個々の重量センサ2の外観斜視図であり、
図4は、個々の重量センサ2の分解斜視図である。まず、
図4を説明した後、
図3を説明する。
【0018】
図4に示すように、重量センサ2は、重量を検知するための板状のロードセル21と、ロードセル21の前端下部に配置された下台座22と、下台座22を介してロードセル21を支持するケース体23と、ロードセル21の後端上部に配置され、断面形状がL字状の上台座24と、ケース体23の上部に配置され、ロードセル21,下台座22,上台座24を覆うセンサカバー25と、センサカバー25の上部に配置された棚支持部26を備えている。センサカバー25は、柔軟性のあるシリコンゴム等で構成されており、上台座24と棚支持部26の間に備えられている。板状のロードセル21の表面には、一対の歪ゲージ21aを前後方向に並べて貼り付けている。なお、図では、歪ゲージ21aをロードセル21の上面に貼り付けでいるが、下面に張り付けても良い。
【0019】
ロードセル21の前端上部にはワッシャー27aとねじ28aを配置し、ワッシャー27a、ロードセル21、下台座22、ケース体23に形成した各貫通孔にねじ28aを挿入し、ケース体23の下部に配置したナット29にねじ28aを螺合させることで、ロードセル21の前端側をケース体23に固定する。
【0020】
また、ロードセル21の後端下部には、ワッシャー27bとねじ28bを配置し、ワッシャー27b,ロードセル21に形成した各貫通孔にねじ28bを挿入し、上台座24の後端側にねじ28bを螺合することで、上台座24の後端をロードセル21の後端上部に固定する。
【0021】
上台座24の前端側は、上台座24の後端側より上下方向の厚みが薄くなっている。上台座24の前端下部には、ワッシャー27cとねじ28cを配置し、ワッシャー27c、上台座24の前端側、センサカバー25、センサカバー25の上面に配置したワッシャー27dに形成した各貫通孔にねじ28cを挿入し、棚支持部26の下部にねじ28cを螺合させることで、上台座24の前端側と棚支持部26を固定する。本実施例では、棚支持部26とセンサカバー25との間にワッシャー27dを配置している。これにより、ねじ28cを棚支持部26に螺合させる際に柔軟性のあるセンサカバー25が捩じれるのを抑制することができる。
【0022】
図4の各要素を組み立てると、ケース体23の上方にセンサカバー25が配置され、センサカバー25の上方に棚支持部26が配置された、
図3に示す外観の重量センサ2が完成する。そして、この重量センサ2を
図2Aに示すように重量センサユニット20に埋設し、
図2Bに示すように重量センサ2の棚支持部26に棚16を載置すると、棚16の荷重によってロードセル21の後端側が押し下げられる。ロードセル21の上面に張り付けられた歪ゲージ21aはロードセル21の変形量に応じて電気抵抗値が変化する素子であるため、電気抵抗値の変化をロードセル21の変形量に換算でき、さらに、その変形量を食品等の重量に換算することができる。
【0023】
<四つの重量センサ2の接続回路>
図2Bに示したように、棚16は、重量センサユニット20の四つの重量センサ2で支持されるため、本実施例では、四つの重量センサ2の出力に基づいて、棚16の重量を測定する。
図5は、四つの重量センサ2の接続回路の一例であり、四つの重量センサ2が持つ八つの歪ゲージ21aを電気的に環状に接続した接続回路を例示している。この接続回路では、重量センサ2aの歪ゲージ21aの接続点には電源電圧V
ccが供給され、重量センサ2bの歪ゲージ21aの接続点は電圧V
pを出力し、重量センサ2cの歪ゲージ21aの接続点は接地され、重量センサ2dの歪ゲージ21aの接続点は電圧V
nを出力する。
【0024】
この回路構成では、棚16上の食品重量が増えるほど、電圧Vpは大きくなり、電圧Vnは小さくなるので、電圧Vpと電圧Vnの電位差に基づいて、棚16上の食品重量を演算することができる。
【0025】
<主制御基板18、センサ基板19、重量センサユニット20の接続>
図6は、主制御基板18、センサ基板19、重量センサユニット20の接続を示す機能ブロック図である。ここに示すように、主制御基板18は主マイコン18aを備え、センサ基板19は増幅回路3と副マイコン19a(荷重演算部)を備えている。また、重量センサユニット20は、上述した通り、四つの重量センサ2を備えている。なお、
図1の冷蔵庫1では三つの棚16a,16b,16eに重量センサユニット20を配置しているため、
図6には本来、三つの重量センサユニット20と三つの増幅回路3を図示する必要があるが、以下では説明簡略化のため、一つ目の重量センサユニット20と増幅回路3について詳細に説明することとし、二つ目以降の重量センサユニット20と増幅回路3については重複説明を省略することとする。
【0026】
電源電圧V
ccは、主制御基板18で生成された後、センサ基板19と重量センサユニット20にも供給される。また、重量センサユニット20からセンサ基板19には
図5の電圧V
p,V
nが入力され、センサ基板19から主制御基板18には電圧V
p,V
nの電位差を利用して演算した荷重Wが入力される。図示では主制御基板18に演算結果の荷重Wを入力するが、これはワイヤレス通信基板でネットワーク上のサーバーへ入力しても良い。(図示なし)
しかしながら、重量センサユニット20が出力する電圧V
p,V
nの電位差は僅か(例えば、無負荷時の設計値で0.5mV程度)であるため、そのままではセンサ基板19の副マイコン19aでは電圧Vp,Vnの電位差を検知できない。そのため、まずセンサ基板19の増幅回路3では、電圧V
p,V
nを増幅した信号を利用して、検知可能な大きさの出力電圧V
outを生成する。その後、副マイコン19aでは、検知可能な大きさの出力電圧V
outに基づいて、重量センサユニット20に載置された荷重Wを演算する。
【0027】
例えば、副マイコン19aの仕様が、10bit検出(1024 digit)、入力電圧範囲0~5Vであれば、AD変換の分解能は4.88mV/digitであるので、増幅回路3の出力電圧Voutが例えば5.0mVより大きければ、副マイコン19aで出力電圧Voutを検知することができ、出力電圧Voutに応じた荷重Wを演算することができる。なお、最も軽い300g程度の棚16の着脱状態や、100g程度の食品の棚16への載置を検出できるよう、本実施例のセンサ基板19では、荷重換算係数を100g/digitに設定して出力電圧Voutから荷重Wを演算するものとする。
【0028】
<比較例の増幅回路>
ここで、本実施例の増幅回路3を説明する前に、比較例の増幅回路3aを説明する。
図5の電圧V
p,V
nの僅かな差に基づいて、副マイコン19aで検知可能な出力電圧V
outを生成する回路の一例としては、
図7に例示する増幅回路3aがある。この増幅回路3aは、オペアンプOP
1の非反転入力端子に電圧V
nが入力され、オペアンプOP
2の非反転入力端子に電圧V
pが入力され、オペアンプOP
3から出力電圧V
outを出力する増幅回路である。なお、各部の仕様は重量センサユニット20の仕様等を踏まえ適宜設計すれば良いが、一例を挙げれば、オペアンプOP
1、OP
2のゲインが360倍、オペアンプOP
3のゲインが1倍、抵抗R
Gが110kΩ、抵抗R
1、R
2が20kΩ、抵抗R
3~R
6が10kΩである。
【0029】
この増幅回路3aにおいては、オペアンプOP
1が出力する電圧V
1がオペアンプOP
3の反転入力端子に入力され、オペアンプOP
2が出力する電圧V
2がオペアンプOP
3の非反転入力端子に入力され、オペアンプOP
3は出力電圧V
outを出力する。ここで、抵抗R3~R6が同一定数とするとゲインは1倍となり、
図7の電圧V
1、V
2、V
out、は夫々以下の式で計算される。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
比較例の増幅回路3aは差動増幅回路であり、オペアンプOP3のゲインは1倍であることから、電圧V2、V1の差分電圧が出力電圧Voutとして出力される。V2 > V1であれば、オペアンプOP3は、出力電圧Voutとして(V2)-(V1)を出力する。一方、V1 > V2であれば、オペアンプOP3は、有効な出力電圧Voutを出力することができない。要するに、オペアンプOP3は、V2>V1であれば有効な出力電圧Voutを出力でき、V1>V2であれば有効な出力電圧Voutを出力できないことになる。
【0034】
このため、重量センサユニット20は、増幅回路3aで生成される電圧V1、V2がV2>V1の関係となるような電圧Vp、Vnを出力するように設計されており、設計通りに重量センサユニット20が製造されたのであれば、電圧V2より電圧V1が小さくなり、増幅回路3aから有効な出力電圧Voutを出力することができる。
【0035】
しかしながら、
図5に示す八つの歪ゲージ21aや、
図7に示す増幅回路3aのオペアンプOP
1およびオペアンプOP
2には個体差があるため、オペアンプ入力電圧が変化してしまう場合がある。例えば、オペアンプOP
1とオペアンプOP
2の入力オフセット電圧に差異が発生し、電圧V
nが電圧V
Pに対して電圧ΔV
n大きくなってしまう場合がある。この影響により、式1,式2で計算されるはずの電圧V
1、V
2が、式4,式5で計算されるものに変化することがある。
【0036】
【0037】
【0038】
式1,式2,式4,式5から明らかなように、電圧ΔVnが発生すると、電圧V1がより大きく、電圧V2がより小さくなるので、棚16に食品を載置しない無負荷状態時には、電圧ΔVnが無ければV2>V1であるべきものがV1>V2に変化することがある。従って、電圧ΔVnの発生時には、増幅回路3aから有効な出力電圧Voutを出力できず、副マイコン19aでは棚16の装着状態や食品重量を測定できない状況が発生する可能性がある。
【0039】
<本実施例の増幅回路3>
そこで、本実施例の増幅回路3では、棚16に食品が載置されない無負荷状態時であっても、常にV
2>V
1が成立し、常に有効な出力電圧V
outを出力できるように、
図7の増幅回路3aに対し、
図8の左方に示す回路を付加した。ここで、電圧V
aは、副マイコン19aのパルスジェネレータで生成したDuty制御可能な電圧であり、抵抗R
rとコンデンサC
rからなるRCフィルタ回路で電圧V
aを平滑した電圧をオペアンプOP
1の反転出力端子に供給することで、電圧ΔV
nの影響を解消する。なお、増幅回路3の各部の仕様は適宜設計すれば良いが、一例を挙げれば、電圧V
aは周波数100kHzのパルス電圧であり、抵抗R
r、抵抗R
aが10kΩであり、コンデンサC
rの静電容量が2.2μFである。
図8の増幅回路3では、電圧V
1を次の式6で計算することができる。ここで、式6中のV
aは、Duty制御された電圧V
aによる実効値である。
【0040】
【0041】
例えば、副マイコン19aのAD変換の分解能が4.88mV/digitであれば、棚16だけを重量センサユニット20に載置したときに1digitに相当する4.88mV以上の出力電圧Voutを出力するように電圧VaのDutyを調整すれば、棚16の着脱状態や棚16上の食品重量を正確に計測することができる。
【0042】
図9は、電圧V
aのDutyと出力電圧V
outの関係を示すグラフである。ここに示すように、電圧V
aのDutyを1%ずつ順次増やしていくと、ある時点で電圧V
1が電圧V
2より小さくなり、有効な出力電圧V
outの生成条件であるV
2>V
1が満たされる。そして、増幅回路3の出力電圧V
outが副マイコン19aで検知可能な最低電圧であるトリガー電圧V
trgを超えた時点のDutyを使用することで、副マイコン19aは棚16の着脱状態を判定したり、棚16上の食品重量を正確に測定したりできるようになる。
【0043】
<比較例と本実施例の比較シミュレーション>
ここで、
図10と
図11を用いて、比較例の増幅回路3aと、本実施例の増幅回路3の差異を説明する。なお、この例の重量センサユニット20は、棚16のみを載置し、食品を載置していない無負荷状態時であっても、有効な出力電圧V
outの生成条件(V
2>V
1)を満たすように、電圧V
pが電圧V
nより0.5mV大きくなるように設計されたものであるが、実際に製造された重量センサユニット20では、八つの歪ゲージ21aの個体差等の影響により、オペアンプOP
1の入力端子間に+1.2mVのオフセット電圧ΔV
nが発生した結果、無負荷状態時にV
1>V
2となっており、有効な出力電圧V
outの生成条件(V
2>V
1)に反した状態になっているものとする。
【0044】
この場合、比較例の増幅回路3aでは、
図10に示すように、棚16に載置する食品重量が4kgに満たない領域では、電圧V
1が電圧V
2よりも大きくなり、有効な出力電圧V
outを出力できない。このため、
図11に示すように、副マイコン19aは、食品の重量を検知することができない。
【0045】
一方、本実施例の増幅回路3を用い、電圧V
aのDutyを適切に設定すれば、
図10に示すように、無負荷状態時でも電圧V
1が電圧V
2より小さくなる。このため、
図11に示すように、副マイコン19aは、棚16に載置した食品重量が100g程度であっても、その食品重量を正確に測定することができる。また、棚16が取り付けられていなければ、副マイコン19aは、その状態をも検知することができる。
【0046】
<電圧V
aのDutyの適正化処理のフローチャート>
次に、
図12のフローチャートを用いて、電圧V
aのDutyの適正化処理を説明する。なお、
図12のオフセット調整処理のうち、ステップS1の処理は、冷蔵庫1の設計段階で設計者が実施することが望ましいが、ステップS2以降の処理は、任意の時機に任意の者が実施することができる。例えば、冷蔵庫1の製造後に工員が操作パネルに指令を入力した場合に棚毎に実施しても良いし、冷蔵庫1を台所等に据え付けた家電販売店員等が操作パネルに指令を入力した場合に棚毎に実施しても良いし、冷蔵庫1の故障部品を交換したサービスマン等が操作パネルに指令を入力した場合に棚毎に実施しても良いし、経年変化の解消が定期的に必要な場合は、冷蔵庫1の一般ユーザ等が操作パネルに指令を入力した場合に棚毎に実施しても良い。
【0047】
まず、ステップS1では、冷蔵庫1の設計者等は、副マイコン19aのAD変換の分解能(例えば、4.88mV/digit)を超える大きさのトリガー電圧Vtrgと、荷重換算係数(例えば、100g/digit)を設定する。なお、ここで設定されるトリガー電圧Vtrgは、棚16が重量センサユニット20に載置されていない状態と、載置されている状態を区別できるように設定された値である。また、荷重換算係数は、測定したい最低限の重量変化を検知できるように設定された値である。
【0048】
次に、ステップS2では、工員等からの指令を受信した副マイコン19aは、電圧VaのDutyを初期値に設定した後、重量センサユニット20の出力電圧Voutが安定するまで待機する。なお、初期値は例えば1%であるが、初期値が低いとDuty適正化に要する時間が長くなるため、ある程度高い値を初期値として用いても良い。
【0049】
ステップS3では、副マイコン19aは、現状Dutyの電圧Vaを印加したときの増幅回路3の出力電圧Voutを検出する。
【0050】
ステップS4では、副マイコン19aは、出力電圧Voutがトリガー電圧Vtrgを超えているかを判定する。そして、超えていなければステップS5に進み、超えていればステップS6に進む。
【0051】
ステップS5では、副マイコン19aは、
図9中の矢印のように、電圧V
aのDutyを1%ずつ増やす。そして、ステップS3に進む。上記したように、電圧V
aのDutyを順次増やしていくと、ある時点で電圧V
1が電圧V
2より小さくなり、有効な出力電圧V
outの生成条件であるV
2>V
1が満たされる。なお、
図12のステップS5では、Dutyを1%ずつ増やしたが、Duty適正化に要する時間を短くしたい場合は、Dutyの増加幅をより大きくしても良い。
【0052】
ステップS6では、副マイコン19aは、出力電圧Voutがトリガー電圧Vtrgを超えた時点のDutyを確定させる。これにより、棚16に食品が載置されない無負荷状態であっても、重量センサユニット20は有効値を出力することができる。
【0053】
<本実施例の効果>
図12のフローチャートで確定したDutyを冷蔵庫1の実稼働中に用いることで、常にV
2>V
1となるような電圧V
aを増幅回路3に印加することができるため、有効な出力電圧V
outに基づいて棚16の着脱状態や、棚16に載置された食品重量を正確に測定することができる。
【0054】
このように、本実施例の冷蔵庫によれば、増幅回路のオペアンプの入力端子間にユニークなオフセット電圧が発生しうる環境下で、そのオフセット電圧の影響を解消し、棚の装着状態や、棚に載置した食品重量を正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 冷蔵庫、
11 箱体、
12 扉、
13 内箱、
14 発泡断熱材、
15 庫内、
15a 温度センサ、
16 棚、
17 圧縮機、
18 主制御基板、
18a 主マイコン、
19 センサ基板、
19a 副マイコン、
20 重量センサユニット、
2 重量センサ、
21 ロードセル、
21a 歪ゲージ、
22 下台座、
23 ケース体、
24 上台座、
25 センサカバー、
26 棚支持部、
27 ワッシャー、
28 ねじ、
29 ナット、
3、3a 増幅回路、