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特許7451446送信装置、送信方法、受信装置及び受信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】送信装置、送信方法、受信装置及び受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20240311BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20240311BHJP
   H04H 20/30 20080101ALI20240311BHJP
   H04N 21/2383 20110101ALI20240311BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/26 111
H04L27/26 114
H04H20/30
H04N21/2383
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021022469
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124691
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畑 晴香
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛志
(72)【発明者】
【氏名】清水 逸平
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】多賀 昇
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆史
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101862(JP,A)
【文献】特開2004-096186(JP,A)
【文献】特開2020-184666(JP,A)
【文献】特開2020-191537(JP,A)
【文献】特開2019-180008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04L 27/26
H04H 20/30
H04N 21/2383
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電力レベルの第1信号と前記第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号を加算することにより送信信号を生成し、前記送信信号を送信する送信装置であって、
前記第1信号は第1既知信号を含み、
前記第2信号は第2既知信号を含み、
前記第1既知信号の周波数は前記第2既知信号の周波数と異なる、送信装置。
【請求項2】
前記第1信号は、周波数軸方向及び時間軸方向に配列された複数の第1伝送シンボルを含み、
前記第1既知信号は、前記複数の第1伝送シンボルの中の周波数軸方向に第1周期で離散する複数の第1シンボルに挿入された複数の第1スキャッタードパイロット信号を含み、
前記第2信号は、周波数軸方向及び時間軸方向に配列された複数の第2伝送シンボルを含み、
前記第2既知信号は、前記複数の第2伝送シンボルの中の周波数軸方向に前記第1周期で離散する複数の第2シンボルに挿入された複数の第2スキャッタードパイロット信号を含む、請求項1記載の送信装置。
【請求項3】
前記第1既知信号は、前記複数の第1伝送シンボルの中の時間軸方向に第2周期で離散する複数の第3シンボルに挿入された複数の第3スキャッタードパイロット信号を含み、
前記第2既知信号は、前記複数の第2伝送シンボルの中の時間軸方向に前記第2周期で離散する複数の第4シンボルに挿入された複数の第4スキャッタードパイロット信号を含む、請求項2記載の送信装置。
【請求項4】
前記複数の第2伝送シンボルの中の前記複数の第1シンボルに対応する複数の第5シンボルはヌル信号である、請求項2又は請求項3記載の送信装置。
【請求項5】
前記第1信号は、周波数軸方向及び時間軸方向に配列された複数の第1伝送シンボルを含む複数の第1データセグメントを含み、
前記第1既知信号は、前記複数の第1データセグメントの周波数帯域と異なる第1周波数の第1連続パイロット信号を含み、
前記第2信号は、周波数軸方向及び時間軸方向に配列された複数の第2伝送シンボルを含む複数の第2データセグメントを含み、
前記第2既知信号は、前記複数の第2データセグメントの周波数帯域と前記第1周波数と異なる第2周波数の第2連続パイロット信号を含む、請求項1記載の送信装置。
【請求項6】
前記第2周波数は前記第1周波数より高い周波数である、請求項5記載の送信装置。
【請求項7】
第1既知信号を第1電力レベルの第1信号に挿入し、
前記第1既知信号の周波数と異なる周波数の第2既知信号を第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号に挿入し、
前記第1信号と前記第2信号を加算することにより送信信号を生成し、
前記送信信号を送信する送信方法。
【請求項8】
第1周波数の第1既知信号が挿入された第1電力レベルの第1信号と、前記第1周波数と異なる第2周波数の第2既知信号が挿入され、前記第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号と、が加算された送信信号を受信する受信装置。
【請求項9】
前記送信信号に対応する第1受信信号を前記第1既知信号に基づき前記第1信号の伝搬路の第1周波数特性の劣化を補償する第1処理と、
前記第1処理により前記第1周波数特性の劣化が補償された第1受信信号を受信処理して前記第1信号を得る第2処理と、
前記第1処理により前記第1周波数特性が補償された前記第1受信信号から前記第1信号を減算して得られた第2受信信号を前記第2既知信号に基づき前記第2信号の伝搬路の第2周波数特性の劣化を補償する第3処理と、
前記第3処理により前記第2周波数特性の劣化が補償された第2受信信号を受信処理して前記第2信号を得る第4処理を実行する、請求項8記載の受信装置。
【請求項10】
前記第2受信信号を前記第2周波数特性の劣化を補償せずに受信処理する第5処理をさらに具備し、
前記第5処理により前記第2信号が得られない場合、前記第3処理と前記第4処理を実行し、
前記第5処理により前記第2信号が得られた場合、前記第3処理と前記第4処理を実行しない、請求項9記載の受信装置。
【請求項11】
前記第1処理は、前記第1周波数特性を求め、
前記第3処理は、前記第2周波数特性を求め、
前記第1処理により求められた前記第1周波数特性と前記第3処理により求められた前記第2周波数特性が同等でない場合、前記第3処理と前記第4処理を実行し、
前記第1処理により求められた前記第1周波数特性と前記第3処理により求められた前記第2周波数特性が同等である場合、前記第3処理と前記第4処理を実行しない、請求項9記載の受信装置。
【請求項12】
第1周波数の第1既知信号が挿入された第1電力レベルの第1信号と、前記第1周波数と異なる第2周波数の第2既知信号が挿入され、前記第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号と、が加算された送信信号を受信する受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の信号を多重化して送信する送信装置及び送信方法並びに上記の送信装置から送信された信号を受信する受信装置及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号の送信方式として、周波数利用効率を向上させるために、2つの異なる信号を異なる電力で多重化し、同時刻に同帯域で送信する階層分割多重(Layered Division Multiplexing:LDM)方式が提案されている。
【0003】
サービス統合地上デジタル放送(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial:ISDB-T)方式と称される現行の地上デジタルテレビジョン放送の次世代規格の検討において、周波数利用効率の向上または現行方式との共存を可能とするため、LDM方式の利用が提案されている。一例として、ISDB-T方式に準拠する信号(以下、ISDB-T信号と称される)を高電力階層とし、ISDB-T方式を高度化させた次世代地上デジタルテレビジョン放送方式(例えば、4K8K方式、あるいはスーパーハイビジョン(SHV)方式)に準拠する信号(以下、SHV信号と称される)を低電力階層とした合成信号を送信することが考えられている。伝搬路推定のための既知信号であるパイロット信号はISDB-T信号のみに挿入される。
【0004】
受信装置は、低電力階層のSHV信号を雑音とみなして合成信号を復調することより、ISDB-T信号を得る。受信装置は、合成信号からISDB-T信号をキャンセルした信号を復調することにより、SHV信号を得る。受信装置は、ISDB-T信号もSHV信号も同じ伝搬路を介して受信するので、ISDB-T信号のパイロット信号で、伝搬路を推定する。
【0005】
SHV方式の普及にあたり、一度の全ての送信局がLDM方式に対応できるようになるとは考えにくい。一部の送信局(親局と称される)がLDM方式でISDB-T信号とSVH信号を送信し、他の送信局(子局と称される)は親局と同期してISDB-T信号のみを送信することが予想される。親局のサービスエリアと子局のサービスエリアは一部重なる。両局のサービスエリアが重なっている地域では、受信装置は、親局からのISDB-T信号とSVH信号と、子局からのISDB-T信号の3つの信号を受信する。つまり、ISDB-T信号は親局と子局からの信号が合成されて受信され、SHV信号は親局からの信号のみとなる。これはISDB-T信号とSHV信号の伝搬路が異なることを意味する。前述したように、伝搬路推定のための既知信号であるパイロット信号はISDB-T信号のみに挿入されることが想定されているため、ISDB-T信号に対応する伝搬路しか推定できない。したがってSHV信号の伝搬路が推定できず等化が困難となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】岡田寛正、外1名、「地上デジタルTV放送に対するLDM方式の適用に関する一考察」、映像情報メディア学会技術報告、2016年10月21日、Vol.40、No.35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、受信装置がLDM方式に対応した送信装置からの信号に加えてLDM方式に対応していない送信装置からの信号を受信しても、受信装置が信号を復調することができることを可能とする信号を送信する送信装置及び送信方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、LDM方式に対応した送信装置からの信号に加えてLDM方式に対応していない送信装置からの信号を受信しても、LDM方式で受信した信号を復調することができる受信装置及び受信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態による送信装置は、第1電力レベルの第1信号と前記第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号を加算することにより送信信号を生成し、送信信号を送信する。第1信号は第1既知信号を含む。第2信号は第2既知信号を含む。第1既知信号の周波数は第2既知信号の周波数と異なる。
【0010】
実施形態による受信装置は、第1周波数の第1既知信号が挿入された第1電力レベルの第1信号と、第1周波数と異なる第2周波数の第2既知信号が挿入され、第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号と、が加算された送信信号を受信する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態によるLDM方式で伝送される信号の概略を示す図。
図2】実施形態によるLDM方式の階層多重化の概念を示す図。
図3】実施形態による送信装置の一例を示す図。
図4】実施形態によるISDB-T信号のOFDMセグメントの一例を示す図。
図5】実施形態によるSHV信号のOFDMセグメントの一例を示す図。
図6】実施形態によるISDB-T信号の伝送スペクトルの一例を示す図。
図7】実施形態によるSHV信号の伝送スペクトル一例を示す図。
図8】実施形態による受信装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介して接続されることも意味する。
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
先ず、実施形態の前提として、LDM方式について説明する。図1は、LDM方式で伝送される信号の概略を示す。LDM方式では、同一または異なる方式により変調された高電力階層(上位階層(UL)とも称される)信号と低電力階層(下位階層(LL)とも称される)信号の2つの異なる信号が多重化され、同時刻に同帯域で送信される。上位階層信号の例はISDB-T信号であってもよく、下位階層信号の例はSHV信号であってもよい。上位階層信号の電力レベルは下位階層信号の電力レベルより高く、2つの階層間の電力比は、インジェクションレベルと称される。インジェクションレベルの例は、23dBであってもよい。なお、ISDB-T信号を送信せずに、SHV信号を上位階層と下位階層で送信してもよい。なお、2つの階層に限らず、3つ以上の階層の信号を多重化して送信してもよい。
【0015】
図2はLDM方式の階層多重化の概念を示す。時間領域のISDB-T信号2が電力調整部3に入力される。電力調整部3は、ISDB-T信号2の電力レベルを正規化係数βに基づいて調整する。時間領域のSHV信号5が電力調整部6に入力される。電力調整部6は、SVH信号5の電力レベルを正規化係数βとスケーリング係数αの積に基づいて調整する。電力調整部3、6の出力が加算部4において加算され、ISDB-T信号とSHV信号の合成信号が送信される。
【0016】
インジェクションレベルは、SHV信号5の平均電力に対するISDB-T信号2の平均電力の比を表わす値である。インジェクションレベルは受信装置の設定の際に決定される。インジェクションレベルが大きいほど合成信号におけるISDB-T信号2の電力割合が大きく、インジェクションレベルが小さいほど合成信号におけるISDB-T信号2の電力割合が小さくなる。電力調整の係数である正規化係数βとスケーリング係数αはインジェクションレベルに応じて定められる。
【0017】
LDM方式により多重化された合成信号を受信する受信装置は、逐次除去復号(Successive Interference Cancellation:SIC)方式を採用してもよい。SIC方式を用いる受信装置は、受信した合成信号の復調の際、下位階層信号をノイズと見做すことができる。このため、受信装置は、合成信号を復調することにより上位階層信号のみを得る。受信装置は、この上位階層信号を変調し、上位階層信号の変調信号の推定信号(推定変調信号)を求める。受信装置は、受信した合成信号から推定変調信号を減算し、この減算結果を復調することにより、下位階層信号を得る。
【0018】
実施の形態では、信号の変調方式の一例は、直交周波数分割多重化(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)変調である。
【0019】
同期方式のLDM方式では、ISDB-T信号のOFDM変調器とSHV信号のOFDM変調器が共通のクロックで動作され、ISDB-T信号のOFDMシンボルと、SHV信号のOFDMシンボルが同一のタイミングで送信される。同期方式のLDM方式では、両信号のシンボル長が等しく、OFDMシンボルの切り替わりタイミングも等しいので、制御が簡単である。
【0020】
図3は実施形態による送信装置の一例を示すブロック図である。上位階層(UL)情報ビット生成部12と下位階層(LL)情報ビット生成部42が設けられる。UL情報ビット生成部12とLL情報ビット生成部42は送信装置の上位レイヤの装置により実現されてもよい。UL情報ビット生成部12は上位階層信号、ここではISDB-T信号の情報ビット列を生成し、LL情報ビット生成部42は下位階層信号、ここではSHV信号の情報ビット列を生成する。
【0021】
先ず、上位階層について説明する。ISDB-T信号の情報ビット列は、符号化部14に入力される。符号化部14は外符号化部とも称される。符号化部14は、例えばリードソロモン(Reed Solomon:RS)符号化方式を採用することができる。以下、符号化部14はRS符号化部14と称される。RS符号化部14は、例えば短縮化RS符号化を行う。短縮化RS符号化では、204バイト中8バイトまでのランダム誤りを訂正可能である。
【0022】
RS符号化部14から出力される符号化ビット列は、エネルギー拡散部16に入力される。エネルギー拡散は、疑似ランダム符号系列PRBSを用いて行われる。PRBS生成回路の生成多項式を式1に示す。
【0023】
g1(x)=x15+x14+1 式1
すなわち、PRBS生成回路は直列に接続された15個のD型フリップフロップからなり、14番目のフリップフロップの出力x14と15番目のフリップフロップの出力x15が加算され、1番目のフリップフロップに入力される。
【0024】
同期バイトを除く信号とPRBS系列との間でビット単位の排他的論理和が取られる。PRBS生成回路の初期値は、低次から“100101010000000”とされ、OFDMフレーム毎に初期化される。
【0025】
エネルギー拡散部16の出力ビット列は、バイトインターリーブ(バイトIL)部18に入力される。バイトIL部18は、204バイトの信号に対して畳み込みバイトインターリーブを行う。インターリーブの深さは、例えば12バイトとする。バイトIL部18は、12のパスを有する。パス0は遅延量0である。パス1のFIFOシフトレジスタの容量は17バイトであり、パス2のFIFOシフトレジスタの容量は17×2=34バイトであり、以下同様に、パス11のFIFOシフトレジスタの容量は17×11=187バイトである。入力と出力は、1バイト毎にパス0、パス1、パス2、…パス11、パス0、パス1、…と順次巡回的に切り替えられる。
【0026】
バイトIL部18の出力ビット列は、畳み込み符号化部22に入力される。畳み込み符号化部22は内符号化部とも称される。畳み込み符号化部22は、例えば、高速長k=7、符号化率1/2をマザーコードとするパンクチャード畳み込み符号化を行う。マザーコードの生成多項式は、X出力に関してはG1=171(10進数)、Y出力に関してはG2=133(10進数)とする。畳み込み符号化部22も誤り訂正符号化を行う。
【0027】
畳み込み符号化部22から出力される符号化ビット列は、ビットインターリーブ(ビットIL)部24に入力される。ビットIL部24の出力は、時間・周波数インターリーブ(時間・周波数IL)部28に入力される。先ず、時間・周波数IL部28は、変調シンボル単位(I軸、Q軸単位)のセグメント内時間インターリーブ処理を行う。次に、時間・周波数IL部28は、キャリアローテション処理とキャリアランダマイズ処理を行うことによりセグメント内インターリーブ処理を行う。
【0028】
時間・周波数IL部28の出力は、パイロット付加部32に入力される。パイロット付加部32は、データキャリアにパイロット信号を付加する。パイロット信号は既知信号である。送信信号にパイロット信号を挿入することにより、受信装置が伝搬路を推定し、推定した結果に応じて伝搬路の特定の劣化を補償することができる。パイロット信号は、OFDMセグメント内に周波数方向(キャリア方向)に分散して配置されるスキャッタードパイロット信号(SP信号と称される)と、OFDMセグメント以外の伝送帯域内の周波数で時間方向に連続して配置されるコンティニュアルパイロット信号(連続パイロット信号、CP信号とも称される)を含む。なお、SP信号は時間方向(OFDMシンボル方向)にも分散して配置されてもよい。
【0029】
SP信号を利用するパイロット信号の挿入例を図4に示す。図4は、ISDB-T信号の1個のOFDMセグメントの一例を示す。図4では1キャリア毎の変調方式としては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)又は64QAMが想定される。図4の例では、1個のOFDMセグメントは108個のキャリアを含む。OFDMセグメントのキャリア数はこの例に限らず、216個のキャリア又は432個のキャリアからなることもある。204個のOFDMシンボルからなる伝送フレームはOFDMフレームと称される。Si,jは、インターリーブ後のOFDMセグメント内のキャリアシンボルを表わす。パイロット付加部32は、周波数方向には12個のキャリア毎に1回SP信号をOFDMセグメントに挿入する。パイロット付加部32は、時間方向には4個のOFDMシンボル毎に1回SP信号をOFDMセグメントに挿入する。例えば、パイロット付加部32は、シンボル番号0のOFDMシンボルでは、キャリア番号0、12、…のキャリアにSP信号を挿入する。パイロット付加部32は、シンボル番号1のOFDMシンボルでは、キャリア番号3、15、…のキャリアにSP信号を挿入する。以下、同様に、パイロット付加部32は、OFDMシンボル毎に、隣接するOFDMシンボルとは異なるキャリアにSP信号を挿入する。なお、SP信号が挿入されるキャリアは、数シンボル毎に同じキャリアでも構わない。例えば、パイロット付加部32は、シンボル番号4のOFDMシンボルでは、シンボル番号0のOFDMシンボル番号と同様に、キャリア番号3、15、…のキャリアにSP信号を挿入する。
【0030】
SP信号は、PRBS生成回路の出力ビット列g2(x)に対し、OFDMセグメントのキャリア番号iに相当するg2(x)に関係づけられたBPSK(Binary Phase Shift Keying)信号である。ビット列g2(x)を生成するPRBS生成回路の生成多項式を式2に示す。
【0031】
g2(x)=x11+x+1 式2
すなわち、PRBS生成回路は直列に接続された11個のD型フリップフロップからなり、9番目のフリップフロップの出力xと11番目のフリップフロップの出力x11(g2(x))が加算され、1番目のフリップフロップに入力される。PRBS生成回路の初期値は、OFDMセグメント毎に決まっている。
【0032】
パイロット付加部32は、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号とAC(Auxiliary Channel)信号もOFDMセグメントに挿入する。TMCC信号は、制御情報を伝送するための信号である。制御信号は、階層構成や各データセグメントの伝送パラメータ等、受信装置の復調動作に関わる情報である。AC信号は放送に関する付加情報を伝送するための拡張用信号である。TMCC信号とAC信号のキャリアは、マルチパスによる伝搬路特性の周期的なディップの影響を軽減するために、周波数方向にランダムに配置されている。
【0033】
図3の送信装置の説明に戻り、パイロット付加部32の出力は、マッピング部34に入力される。マッピング部34は、指定された多値数のマッピングを周波数領域で行う。マッピング部34はキャリア変調を行う。キャリ変調は次のいずれかの方式を採用してもよい。
【0034】
QPSK変調:入力信号が2ビット/シンボルとされ、QPSKのマッピングが行われ、複数ビットのI軸データ及びQ軸データが出力される。
【0035】
16QAM変調:入力信号が4ビット/シンボルとされ、16QAMのマッピングが行われ、複数ビットのI軸データ及びQ軸データが出力される。
【0036】
64QAM変調:入力信号が6ビット/シンボルとされ、64QAMのマッピングが行われ、複数ビットのI軸データ及びQ軸データが出力される。
【0037】
マッピング部34は、図4に示すSP信号、TMCC信号、AC信号に対応するキャリアの位置を空白として空けておく。マッピング部34の出力がLDM多重化部36に入力される。
【0038】
次に、下位階層について説明する。SHV信号の情報ビット列は、エネルギー拡散部44に入力される。エネルギー拡散部44は、エネルギー拡散部16と同様に、疑似ランダム符号系列PRBSを用いてエネルギー拡散を行う。
【0039】
エネルギー拡散部44の出力ビット列は、符号化部に入力される。符号化部は、畳み込み符号化方式、BCH(Bose Chaudhuri Hocquenghem)符号化方式、BCC(Block Check Character)符号化方式、LDPC(Low Density Parity Check)符号化方式等を採用することができる。ここでは、BCH符号化方式とLDPC符号化方式が採用される。そのため、エネルギー拡散部44の出力ビット列は、BCH符号化部46に入力され、BCH符号化部46の出力ビット列は、LDPC符号化部48に入力される。BCH符号化部46もLDPC符号化部48も誤り訂正符号化を行う。
【0040】
図3は、上位階層と下位階層の符号化方式を異なる方式としたが、上位階層と下位階層の符号化方式を同じ方式としてもよい。上位階層と下位階層の符号化方式を同じ方式とした場合、上位階層と下位階層の符号化方式の誤り訂正能力や符号長は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
LDPC符号化部48から出力される符号化ビット列は、ビットインターリーブ(ビットIL)部52に入力される。ビットIL部52の出力は、時間・周波数IL56に入力される。時間・周波数IL部56は時間・周波数IL部28と同様な処理を行う。なお、上位階層と下位階層のインターリーブ長は同じでもよいし、異なってもよい。
【0042】
時間・周波数IL部56の出力は、パイロット付加部58に入力される。パイロット付加部58は、データキャリアにパイロット信号とTMCC信号とAC信号を付加する。
【0043】
SP信号を利用するパイロット信号の挿入例を図5に示す。図5は、SHV信号の1個のOFDMセグメントの一例を示す。SHV信号のセグメント構成は、図4に示したISDB-T信号のセグメント構成と同じである。パイロット付加部58は、TMCC信号とAC信号をISDB-T信号のOFDMセグメントにおけるTMCC信号とAC信号と同じ位置に挿入する。
【0044】
パイロット付加部58は、ISDB-T信号のOFDMセグメントにおけるSP信号と異なるキャリアにSHV信号のSP信号を挿入する。例えば、パイロット付加部58は、ISDB-T信号のOFDMセグメントと同様に、周波数方向には12個のキャリア毎に1回SP信号を挿入し、時間方向には4個のOFDMシンボル毎に1回挿入するが、ISDB-T信号のSP信号が挿入されるキャリアとは異なるキャリアに挿入する。
【0045】
パイロット付加部58は、ISDB-T信号のOFDMセグメントにおいてSP信号が挿入されるキャリアの隣のキャリアにSP信号を挿入する。隣のキャリアは、周波数が高い方の隣のキャリアと周波数が低い方の隣のキャリアがある。図4は、周波数が高い方の隣のキャリア(キャリア番号が一つ大きいキャリア)にSP信号が挿入される例を示す。例えば、パイロット付加部58は、シンボル番号0のOFDMシンボルでは、キャリア番号1、13、…のキャリアにSP信号を挿入する。パイロット付加部58は、シンボル番号1のOFDMシンボルでは、キャリア番号4、16、…のキャリアにSP信号を挿入する。
【0046】
パイロット付加部58は、ISDB-T信号のOFDMセグメントにおいてSP信号が挿入されたキャリアに対応するSHV信号のOFDMセグメントのキャリアにヌル(Null)信号を挿入する。このため、SHV信号がISDB-T信号に干渉したとしても、ISDB-T信号のOFDMセグメントのSP信号がSHV信号(ヌル信号)により影響を受けることがない。
【0047】
図3の送信装置の説明に戻り、パイロット付加部58の出力は、マッピング部60に入力される。マッピング部60は、指定された多値数のマッピングを周波数領域で行う。ビットIL部52とマッピング部60はキャリア変調部を構成する。キャリ変調は、QPSK変調、16QAM変調、64QAM変調のいずれかの方式を採用してもよい。
【0048】
マッピング部34、60の出力はLDM多重化部36に入力される。LDM多重化部36は、図2に示すように構成され、ISDB-T信号を上位階層、SHV信号を下位階層とし、下位階層の信号の電力レベルを上位階層の信号の電力レベルより低くして、両信号に電力差を付けて加算して合成信号を生成する。
【0049】
合成信号は逆高速フーリエ変換(IFFT)部38に入力される。IFFT部38は、合成信号のOFDMセグメントをIFFT処理して、時間領域のビット列を求める。
【0050】
IFFT部38の出力は、ガードインターバル付加(GI付加)部40に入力される。GI付加部40は、IFFT後の出力データのうち、時間的に後側から、指定された時間長のデータ(GI)をOFDMシンボルの前にそのまま付加するものである。
【0051】
GI付加部40の出力は図示しない送信回路、送信アンテナ等を介して送信される。
【0052】
上述の例では、パイロット信号はSP信号を利用した。次に、CP信号を利用するパイロット信号の挿入例を説明する。
【0053】
ISDB-T信号は1チャネル(伝送帯域)に13個のOFDMセグメントを使って伝送される。1チャンネル毎にCP信号を挿入する例を図6図7に示す。
【0054】
図6は、ISDB-T信号の伝送スペクトルの一例を示す。13個のOFDMセグメントSG0-SG12が周波数方向に配置されている。中央のセグメントSG0は、部分受信部のセグメントである。セグメントSG0の両側に差動変調部がセグメント番号順に配置され、さらにその外側に同期変調部がセグメント番号順に配置される。
【0055】
一番右端(最も周波数が高い)セグメントSG12の右側に連続キャリアであるコンティニアルパイロット信号CP1が挿入される。信号CP1の位相は、式2に示すBPFK生成回路のg2(x)で規定される。
【0056】
図7は、SHV信号の伝送スペクトルの一例を示す。13個のOFDMセグメントSG0-SG12の配置は、ISDB-T信号のOFDMセグメントの配置と同じである。一番右端のセグメントSG12の右側に連続キャリであるコンティニアルパイロット信号CP2が挿入される。CP2信号の周波数は、CP1信号の周波数と異なる。例えば、CP2信号の周波数はCP1信号の周波数より高い。SHV信号では拡張帯域が認められているので、ISDB-T信号より帯域を拡大して、CP2信号をCP1信号よりも高い周波数位置に挿入することができる。
【0057】
上位階層にのみパイロット信号を挿入するLMD方式に対応している親局のサービスエリアとLMD方式に対応していない子局のサービスエリアが一部重なっている地域では、上位階層と下位階層で伝搬路が異なり、受信装置は、上位階層のパイロット信号を用いて下位階層の信号の周波数等化を行うことができない。しかし、実施形態によれば、LDM多重化信号において、上位階層と下位階層にパイロット信号を挿入し、上位階層のパイロット信号と下位階層のパイロット信号を異なるキャリア(周波数)に挿入することにより、受信装置が下位階層のパイロット信号を用いて下位階層の信号の周波数等化をおこなうことができる。
【0058】
次に、受信装置について説明する。実施形態による受信装置は、SIC方式を用いて下位階層のSHV信号を取り出す。受信装置は、先ず、下位階層信号(SHV信号)をノイズと見做し、受信合成信号を復調することにより上位階層信号(ISDB-T信号)を得る。受信装置は、ISDB-T信号を変調し、送信装置で生成されたISDB-T信号の変調信号の推定信号(推定変調信号)を求める。受信装置は、受信合成信号から推定変調信号を減算し、この減算結果を復調することによりSHV信号を得る。
【0059】
一方、受信装置は、受信合成信号の中からパイロット信号を取り出し、パイロット信号の振幅と位相の歪から伝搬路を推定し、推定結果に応じて受信合成信号及び減算結果の周波数等化処理を行い、伝搬路の特性の劣化を補償する。
【0060】
図8は実施形態による受信装置の構成の一例を示すブロック図を示す。この受信装置は、図3に示すようにLMD方式に対応している親局のサービスエリアとLMD方式に対応していない子局のサービスエリアが一部重なっている地域に設置されるとする。
【0061】
図示しない受信アンテナ等により受信された合成信号は、GI除去部102に入力される。GI除去部102は、合成信号をISDB-T信号と見做し、合成信号からシンボル間のGIを除去する。
【0062】
GI除去部102の出力は高速フーリエ変換(FFT)部104に入力される。FFT部104は、入力信号をFFTサイズでFFT処理し、周波数領域の信号を得る。SHV信号の電力は小さいので、SHV信号をノイズと見做すことができるので、FFT部104の出力信号はISDB-T信号と見做すことができる。
【0063】
上位階層の周波数領域の送信信号Txiに対する周波数領域の伝搬路特性をH1、下位階層の周波数領域の送信信号Txsに対する周波数領域の伝搬路特性をH2とする。FFT後の受信信号Rxは下記のように表される。ここでは、雑音は無視して説明する。
【0064】
Rx=H1×Txi+H2×Txs 式3
FFT部104の出力は、伝搬路推定部106と周波数等化部112に入力される。
【0065】
伝搬路推定部106は、入力された上位階層の周波数領域の信号から上位階層のパイロット信号を取り出し、取り出したパイロット信号に基づき上位階層の周波数領域の送信信号の伝搬路特性(周波数特性)H1を推定する。伝搬路推定部106の出力は、周波数等化部112に入力される。
【0066】
周波数等化部112は、伝搬路推定部106の推定結果に応じて合成信号に対して周波数等化処理を行い、伝搬路の周波数特性を補償した合成信号を得る。具体的には、周波数等化部112は、FFT後の受信信号Rxを伝搬路の周波数特性H1で割り、周波数等化信号Reqを得る。
【0067】
Req=Rx/H1=Txi+(H2/H1)×Txs 式4
周波数等化部112の出力Reqは、時間・周波数デインタリーブ(時間・周波数De-IL)部114に入力される。
【0068】
時間・周波数De-IL部114は、送信装置の時間・周波数IL部28のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインタリーブ処理を行い、時間・周波数IL部28への入力、すなわちビットIL部24の出力に相当する信号を得る。時間・周波数De-IL部114の出力は、対数尤度比算出(Log-Likelihood Ratio:LLR算出)部116に入力される。
【0069】
LLR算出部116は、合成信号の下位階層のSHV信号成分を雑音とみなし、合成信号に対して送信装置のマッピング部34に対応する復調処理を行い、復調結果のLLRを算出する。LLR算出部116の出力は、ビットデインターリーブ(De-IL)部118に入力される。
【0070】
ビットDe-IL部118は、送信装置のビットIL部24のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインタリーブ処理を行い、ビットIL部24の入力、すなわち畳み込み符号化部22の出力に相当する信号を得る。ビットDe-IL部118の出力は、ビタビ復号部122に入力される。
【0071】
ビタビ復号部122は、送信装置の畳み込み符号化部22の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正復号処理を行い、畳み込み符号化部22の入力、すなわちバイトIL部18の出力に相当する信号を得る。ビタビ復号部122の出力は、バイトDe-IL部124に入力される。
【0072】
バイトデインターリーブ(De-IL)部124は、送信装置のバイトIL部18のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインタリーブ処理を行い、バイトIL部18の入力、すなわちエネルギー拡散部16の出力に相当する信号を得る。バイトDe-IL部124の出力は、エネルギー逆拡散部126に入力される。
【0073】
エネルギー逆拡散部126は、送信装置のエネルギー拡散部16のエネルギー拡散処理の逆処理に対応するエネルギー逆拡散処理を行い、エネルギー拡散部16の入力、すなわちRS符号化部14の出力に相当する信号を得る。エネルギー逆拡散部126の出力はRS復号部128に入力される。
【0074】
RS復号部128は、送信装置のRS符号化部14の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正RS復号処理を行い、RS符号化部14の入力、すなわち上位階層のISDB-T信号の情報ビット列を得る。RS復号部128の出力は、レプリカ生成部132に入力される。
【0075】
レプリカ生成部132は、送信装置のビットIL部24とマッピング部34からなるキャリア変調部と同様なキャリア変調処理を行い、送信装置のマッピング部34の出力に相当する推定変調ISDB-T信号Txi´を得る。
【0076】
レプリカ生成部132の出力Txi´は、レプリカキャンセル部148において、周波数等化部112の出力Req(式4)から減算される。受信装置は、上位階層の信号が非常に高い確率で復調できるという条件(キャリア対ノイズ比が高い)の下で使用することを想定しているので、Txi=Txi’と仮定でき、レプリカキャンセル部148の出力RrcCは次のようになる。
【0077】
Rrc=Rx/H1-Txi’=(H2/H1)×Txs 式5
これにより、レプリカキャンセル部148は、SHV信号の受信信号を得る。
【0078】
レプリカキャンセル部148の出力は、切り替え制御部150に入力される。切り替え制御部150は、2個の出力端子を含む。切り替え制御部150は入力信号を第1出力端子又は第2出力端子から出力する。伝搬路推定部106の出力も切り替え制御部150に入力される。切り替え制御部150の切り替え手法は、後述する。
【0079】
切り替え制御部150の第1出力端子は、時間・周波数De-IL部152に接続される。切り替え制御部150の第2出力端子は、逆等化部172に接続される。
【0080】
伝搬路推定部106の出力も逆等化部172に入力される。
【0081】
逆等化部172は、式6に示すように、レプリカキャンセル部148の出力信号Rrc(式5)に上位階層の伝搬路の周波数特性H1を乗算することにより、逆等化を行う。逆等化部172の出力信号Rieqを式6に示す。
【0082】
Rieq=H2×Txs 式6
逆等化部172の出力信号Rieqは、伝搬路推定部174に入力される。伝搬路推定部174は、逆等化部172の出力信号Rieqに含まれる下位階層の送信信号Txsから下位階層のSHV信号のパイロット信号を抽出し、抽出したパイロット信号に基づき下位階層の信号の伝搬路の周波数特性H2を推定する。
【0083】
伝搬路推定部174の出力信号H2は切り替え制御部150と周波数等化部176に入力される。逆等化部172の出力信号Rieq(式6)も周波数等化部176に入力される。
【0084】
周波数等化部176は、伝搬路の周波数特定H2に応じて逆等化部172の出力信号Rieqに対して周波数等化処理を行い、伝搬路の周波数特性を補償した下位階層の受信信号を得る。具体的には、周波数等化部176は、逆等化部172の出力信号Rieqを伝搬路の周波数特定H2で割り、Txsを得る。
【0085】
周波数等化部176の出力Tsxは、時間・周波数De-IL部152に入力される。時間・周波数De-IL部152は、切り替え制御部150の第2出力信号又は周波数等化部176の出力に対して、送信装置の時間・周波数IL部56のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインタリーブ処理を行い、時間・周波数IL部56への入力、すなわちビットIL部52の出力に相当する信号を得る。時間・周波数De-IL部152の出力は、LLR算出部154に入力される。
【0086】
LLR算出部154は、下位階層の信号に対して、送信装置のビットIL部52とマッピング部36からなる変調処理の逆処理に対応する復調処理を行い、復調結果のLLRを算出する。LLR算出部154の出力は、ビットDe-IL部156に入力される。
【0087】
ビットDe-IL部156は、送信装置のビットIL部52のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインタリーブ処理を行い、ビットIL部52の入力、すなわちLDPC符号化部48の出力に相当する信号を得る。ビットDe-IL部156の出力は、LDPC復号部158に入力される。
【0088】
LDPC復号部158は、送信装置のLDPC符号化部48の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正復号処理を行い、LDPC符号化部48の入力、すなわちBCH符号化部46の出力に相当する信号を得る。LDPC復号部158の出力は、BCH復号部162に入力される。
【0089】
BCH復号部162bは、送信装置のBCH符号化部46の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正復号処理を行い、BCH符号化部46の入力、すなわちエネルギー拡散部44の出力に相当する信号を得る。BCH復号部162の出力は、エネルギー逆拡散部164に入力される。
【0090】
エネルギー逆拡散部164は、送信装置のエネルギー拡散部44のエネルギー拡散処理の逆処理に対応するエネルギー逆拡散処理を行い、エネルギー拡散部44の入力、すなわち下位階層のSHV信号の情報ビット列を得る。
【0091】
エネルギー逆拡散部164の出力は切り替え制御部150に供給される。
【0092】
切り替え制御部150には、伝搬路推定部106の出力である周波数特性H1と、伝搬路推定部174の出力である周波数特性H2と、エネルギー逆拡散部の出力であるSHV信号が入力される。切り替え制御部150の切り替え制御例を説明する。
【0093】
第1の切り替え制御例では、切り替え制御部150は、最初、入力信号を第1出力端から時間・周波数De-IL部へ送信する。この時、下位階層の信号Txsは周波数等化部112で周波数等化されている。下位階層の伝搬路の周波数特性が上位階層の伝搬路の周波数特性と等しい場合、エネルギー逆拡散部からはSHV信号が得られる。
【0094】
伝搬路が異なり、下位階層の伝搬路の周波数特性が上位階層の伝搬路の周波数特性と等しくない場合、エネルギー逆拡散部からSHV信号が得られない。切り替え制御部150は、エネルギー逆拡散部からSHV信号が得られないことを検出すると、入力信号を第2出力端から逆等化部172へ送信する。この場合、伝搬路推定部174は、下位階層の信号のパイロット信号を抽出し、抽出したパイロット信号に基づき下位階層の信号の伝搬路の周波数特性H2を推定する。周波数等化部176は、伝搬路の周波数特定H2に応じて逆等化部172の出力信号Rieqに対して周波数等化処理を行い、伝搬路の周波数特性を補償した下位階層の受信信号を得て、この受信信号を時間・周波数De-IL部152へ送信する。これにより、伝搬路の周波数特性が正しく補償された信号が復調されるので、エネルギー逆拡散部からSHV信号が得られる。
【0095】
切り替え制御部150は、エネルギー逆拡散部からSHV信号が得られないことの検出結果に代わりに、LDPC復号部158及び/又はBCH復号部162の誤り訂正結果に基づいて、入力信号を第2出力端から逆等化部172へ送信してもよい。下位階層の伝搬路の周波数特性が上位階層の伝搬路の周波数特性と等しくない場合、LDPC復号部158及び/又はBCH復号部162は誤り訂正を成功できない。あるいは、LDPC復号部158及び/又はBCH復号部162の誤り訂正量が大きくなる。
【0096】
第2の切り替え制御例では、切り替え制御部150は、伝搬路推定部106の出力である周波数特性H1と、伝搬路推定部174の出力である周波数特性H2とを比べて、両者が同等である(両者の相関が一定以上である)か否か判定する。周波数特性H1と周波数特性H2が同等であることは、上位階層の信号の伝搬路と下位階層の信号の伝搬路が同じであることを意味する。この場合、周波数等化部112が上位階層の伝搬路の周波数特性H1で受信信号Rxを周波数等化処理したことにより、下位階層の信号も周波数等化処理されたことになり、レプリカキャンセル部148の出力信号を周波数等化部176に送信する必要はない。このため、切り替え制御部150は、周波数特性H1と周波数特性H2が同等である場合、レプリカキャンセル部148の出力信号を時間・周波数De-IL部152に送信する。
【0097】
周波数特性H1と周波数特性H2が同等ではないことは、上位階層の信号の伝搬路と下位階層の信号の伝搬路が異なることを意味する。この場合、周波数等化部112が上位階層の伝搬路の周波数特性H1で受信信号Rxを周波数等化処理しても、下位階層の信号は周波数等化処理されたことにならない。このため、切り替え制御部150は、周波数特性H1と周波数特性H2が同等ではない場合、レプリカキャンセル部148の出力信号を逆等化部172に送信する。これにより、下位階層の信号は、下位階層の信号に挿入されたパイロット信号を用いて推定された伝搬路の周波数特性に基づいて周波数特性が補償される。伝搬路の周波数特性が正しく補償された信号が復調されるので、エネルギー逆拡散部184からSHV信号が得られる。
【0098】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
12…UL情報ビット生成部、14…RS符号化部、18…バイトIL部、22…畳み込み符号化部、24、52…ビットIL部、28、56…時間・周波数IL部、32、58…パイロット付加部、34、60…マッピング部、36…多重化部、38…IFFT部、40…GI付加部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8