IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-結合インダクタ 図1
  • 特許-結合インダクタ 図2
  • 特許-結合インダクタ 図3
  • 特許-結合インダクタ 図4
  • 特許-結合インダクタ 図5
  • 特許-結合インダクタ 図6
  • 特許-結合インダクタ 図7
  • 特許-結合インダクタ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】結合インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
H01F37/00 C
H01F37/00 N
H01F37/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021151752
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023043973
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃則
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216437(JP,A)
【文献】特開2021-132120(JP,A)
【文献】特開2019-204945(JP,A)
【文献】特開2021-019030(JP,A)
【文献】特開2016-119752(JP,A)
【文献】国際公開第2021/168797(WO,A1)
【文献】特開2016-066744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0112042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0012456(US,A1)
【文献】特開2007-180129(JP,A)
【文献】実開昭62-197824(JP,U)
【文献】特開2004-335886(JP,A)
【文献】特開2000-182853(JP,A)
【文献】特開2010-258395(JP,A)
【文献】特開2010-016234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部分と外側部分を有するコアと、
前記中心部分の第1の端部と中央部の間において、前記中心部分に巻かれた第1のコイルと、
前記中心部分の第1の端部と中央部の間において、前記中心部分に、前記第1のコイルとは逆向きに巻かれた第2のコイルと、
前記第1のコイルに接続しており、前記中心部分の第2の端部と中央部の間において、前記中心部分に、前記第1のコイルと同じ向きに巻かれた第3のコイルと、
前記第2のコイルに接続しており、前記中心部分の第2の端部と中央部の間において、前記中心部分に、前記第1のコイルとは逆向きに巻かれた第4のコイルと、を有する結合インダクタ。
【請求項2】
前記中心部分と前記外側部分は、前記中心部分の中央部と前記外側部分の中央部との間にギャップが形成され、前記中心部分の第1の端部と前記外側部分の第1の端部との間にギャップが形成され、前記中心部分の第2の端部と前記外側部分の第2の端部との間にギャップが形成されるように配置される、請求項1に記載の結合インダクタ。
【請求項3】
前記中心部分は、I型形状であり、前記外側部分は、E型形状である、請求項2に記載の結合インダクタ。
【請求項4】
前記第1のコイルと前記第3のコイルとの接続と、前記第2のコイルと前記第4のコイルとの接続は、基板を介して行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の結合インダクタ。
【請求項5】
前記結合インダクタは、インターリーブ方式のPFC回路用の結合インダクタであり、前記コアは、フェライトコアである、請求項1から4のいずれか一項に記載の結合インダクタ。
【請求項6】
前記第1のコイルと前記第2のコイルの結合は密結合である、請求項1から5のいずれか一項に記載の結合インダクタ。
【請求項7】
前記第3のコイルと前記第4のコイルの結合は密結合である、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
大電力を交流電力から直流電力に効率良く変換するために、車載充電器には、インターリーブ方式のPFC(力学改善)回路が搭載されている。インターリーブ方式のPFC回路は、2つのインダクタを用いる必要があり、車載充電器の小型化の要請から、インダクタのさらなる小型化が求められている。
【0003】
そこで、結合インダクタを用いたインターリーブ方式のPFC回路が提案されている(例えば、特許文献1)。結合インダクタは、2つのコイルが逆極性でコアに巻かれているため、2つのコイルで発生する磁束が互いに打ち消し合い、コア内の磁束が小さくなる。このため、結合インダクタでは、コアのサイズを小さくすること、つまり、インダクタの小型化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-201642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結合インダクタをPFC回路に用いた場合、2倍の動作周波数のリプル電流が流れるため、結合インダクタのコアとして、ダスト系コアを用いることができない。このため、PFC回路用の結合インダクタでは、通常、フェライトコアが用いられている。フェライトコアの飽和磁束密度は、小さく、ダスト系コアの飽和磁束密度の1/3である。
【0006】
そこで、特許文献1には、結合インダクタのコアに複数のギャップを設けることで、磁気飽和を避ける技術が開示されている。しかしながら、このような構成の結合インダクタでは、放熱が難しく、また、組付け精度も必要であり、特許文献1に開示された技術は、実用的ではない。
【0007】
そこで、本発明は、小型の結合インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る結合インダクタは、中心部分と外側部分を有するコアと、前記中心部分の第1の端部と中央部の間において、前記中心部分に巻かれた第1のコイルと、前記中心部分の第1の端部と中央部の間において、前記中心部分に、前記第1のコイルとは逆向きに巻かれた第2のコイルと、前記第1のコイルに接続しており、前記中心部分の第2の端部と中央部の間において、前記中心部分に、前記第1のコイルと同じ向きに巻かれた第3のコイルと、前記第2のコイルに接続しており、前記中心部分の第2の端部と中央部の間において、前記中心部分に、前記第1のコイルとは逆向きに巻かれた第4のコイルと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、小型の結合インダクタを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る結合インダクタの外観を示す図である。
図2】2つの外側部分C2のうちの1つを取り外した状態の結合インダクタを示す図である。
図3】コアの中心部分C1、外側部分C22とコイルL1~L4との関係を示す図である。
図4】コイルL1~L4の接続関係を示す図である。
図5】従来の結合インダクタの例を示す図である。
図6】従来の結合インダクタにおいて、コイルLG1、LG2の巻き数NGを変化させた際のコアの中心部分C1の断面積、ギャップG1~G3のサイズの変化を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る結合インダクタの等価磁気回路を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る結合インダクタにおいて、第2の巻き数N2を変化させた際のコアの中心部分C1の断面積、ギャップG1~G3のサイズの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<結合インダクタの構成>
本発明の一実施形態に係る結合インダクタは、図1~3に示すように、中心部分C1および2つの外側部分C2を有するコアと、第1のコイルL1と、第2のコイルL2と、第3のコイルL3と、第4のコイルL4と、基板Bと、を有する。図1は、結合インダクタの外観を示す図であり、図2は、2つの外側部分C2のうちの1つを取り外した状態の結合インダクタを示す図であり、図3は、コアの中心部分C1、外側部分C2とコイルL1~L4との関係を示す図である。
【0012】
第1のコイルL1の巻き数は、第1の巻き数N1であり、第1のコイルL1は、コアの中心部分C1の中央部C11と第1の端部C12との間において、コアの中心部分C1に巻かれている。
【0013】
第2のコイルL2の巻き数は、第1の巻き数N1よりも大きい第2の巻き数N2であり(N1<N2)、第2のコイルL2は、コアの中心部分C1の中央部C11と第1の端部C12との間において、コアの中心部分C1に、第1のコイルL1とは逆向きで巻かれている。第2のコイルL2は、例えば、第1のコイルL1と密結合になるように配置される。
【0014】
第3のコイルL3の巻き数は、第2の巻き数N2であり、第3のコイルL3は、コアの中心部分C1の中央部C11と第2の端部C13との間において、コアの中心部分C1に、第1のコイルL1と同じ向きで巻かれている。
【0015】
第4のコイルL4は、巻き数が第1の巻き数N1であり、第4のコイルL4は、コアの中心部分C1の中央部C11と第2の端部C13との間において、コアの中心部分C1に、第1のコイルL1とは逆向きで巻かれている。第4のコイルL4は、例えば、第3のコイルL1と密結合になるように配置される。
【0016】
コアの中心部分C1と外側部分C2は、中心部分C1の中央部C11と外側部分C2の中央部C21との間にギャップG1が形成され、中心部分C1の第1の端部C12と外側部分C2の第1の端部C22との間にギャップG2が形成され、中心部分C1の第2の端部C13と外側部分C2の第2の端部C23との間にギャップG3が形成されるように配置される。ギャップG2のサイズとギャップG3のサイズは、同じである。
【0017】
外側部分C2の形状は、図3に示されているように、突起部P1、P2、P3を有したE型にすると良い。外側部分C2がE型形状であるならば、中心部分C1は、例えば、I型形状にすると良い。突起部P1、P2、P3の各々は、外側部分C2の代わりに、中央部分C1が有するようにしても良い。
【0018】
本実施形態に係る結合インダクタは、例えば、インターリーブ方式のPFC回路用の結合インダクタであり、コアは、例えば、フェライトコアである。本実施形態に係る結合インダクタでは、図4(A)に示されているように、第1のコイルL1と第3のコイルL3が接続され、第2のコイルL2と第4コイルL4が接続される。これにより、本実施形態に係る結合インダクタは、図4(B)に示されているように、第1のコイルL1と第3のコイルL3により構成される巻き数N(=N1+N2)のインダクタと、第2のコイルL2と第4のコイルL4により構成される巻き数Nのインダクタと、を有する結合インダクタを形成する。
【0019】
第1のコイルL1と第3のコイルL3の接続と、第2のコイルL2と第4のコイルL4の接続は、例えば、基板Bを介して行うようにすると良い。基板Bは、コイル接続専用の基板であっても良いし、駆動用のMOSFETなどの他の電子部品が搭載された基板であっても良い。
【0020】
<従来の結合インダクタとの比較>
図5は、従来の結合インダクタの例を示す図である。図5に示した従来の結合インダクタは、本実施形態に係る結合インダクタのコイルL1~L4の代わりに、巻き数NGのコイルLG1が、コアの中心部分C1の中央部C11と第1の端部C12との間において、コアの中心部分C1に巻かれ、コイルLC1と同じ巻き数のコイルLG2が、コアの中心部分C1の中央部C11と第2の端部C13との間において、コアの中心部分C1に、コイルLG1とは逆向きで巻かれている。
【0021】
図5に示した従来の結合インダクタでは、リプル電流などの電気的性能を関わるパラメータを保ちつつ、コイルLG1、LG2のサイズ(つまり、コアの中心部分C1の断面積)を小さくするためには、コイルLG1、LG2の巻き数を増やす必要がある。コイルLG1、LG2のサイズを小さくし、コイルLG1、LG2の巻き数を増やすと、コアを通る磁束の磁束密度が急激に増加する。このとき、コアを通る磁束の磁束密度が、コアの飽和磁束密度を超えないようにするためには、ギャップG1~G3のサイズを大きくし、ギャップG1~G3の磁気抵抗を大きくする必要がある。つまり、従来の結合インダクタでは、コアの中心部分C1の断面積を小さくする際に、ギャップG1~G3のサイズを大きくする必要がある。結果、従来の結合インダクタでは、結合インダクタ全体の小型化が難しい。
【0022】
リプル電流などの電気的性能を関わるパラメータを決定し、簡略化のため、すべてのギャップG1~G3のサイズを同じにする。この条件で、コイルLG1、LG2の巻き数NGを変化させると、従来の結合インダクタでは、図6に示すように、コアの中心部分C1の断面積、ギャップG1~G3のサイズが変化する。図6において、丸が、コアの中心部分C1の断面積の変化を示しており、四角が、ギャップG1~G3のサイズの変化を示している。また、図7には、コアの中心部分C1の断面積として、コイルLG1、LG2の巻き数NGが40であるときのコアの中心部分C1の断面積で正規化した値を示しており、ギャップG1~G3のサイズとして、コイルLG1、LG2の巻き数NGが40であるときのギャップG1~G3のサイズで正規化した値を示している。
【0023】
従来の結合インダクタでは、図6に示されているように、コイルLGの巻き数NGが大きくなるにつれ、中心部分C1の断面積は、指数関数的に減少し、ギャップG1~G3の大きさは、線形に大きくなっていく。従来の結合インダクタでは、コイルLGの巻き数NGが20であるときに、ギャップG1~G3の大きさが、コイルLG1、LG2の巻き数NGが40であるときのギャップG1~G3のサイズの半分(0.5倍)になり、巻き数が20のときの中心部分C1の大きさは、コイルLG1、LG2の巻き数NGが40であるときのコアの中心部分C1の断面積の2倍になる。
【0024】
一方、本実施形態に係る結合インダクタは、2つのインダクタの各々が、2つのコイルにより構成され、2つのコイルの各々が、他方のインダクタのコイルと磁気結合している。このため、本実施形態に係る結合インダクタでは、2つのインダクタの各々の巻き数N(=N1+N2)を変えることなく、インダクタを構成する2つのコイルの巻き数の比N1:N2を変えることで、コアを通過する磁束を調整することが可能である。
【0025】
図7は、本実施形態に係る結合インダクタの等価磁気回路を示す図である。第1のコイルL1と第2のコイルL2の結合が密であり、第3のコイルL3と第4のコイルL4の結合が密であるならば、ギャップG1の磁気抵抗をRlkとし、ギャップG2の磁気抵抗Rmtとし、コイルL1~L4を流れる電流をIとすると、ギャップG1の磁気抵抗を通過する磁束φc、ギャップG2、G3の磁気抵抗を通過する磁束φw、つまり、コア内の磁束の直流成分は、次のようになる。
【数1】
【0026】
つまり、本実施形態に係る結合インダクタでは、ギャップG1~G3の磁気抵抗を大きくすることなく、つまり、ギャップG1~G3のサイズを大きくすることなく、第2の巻き数N2を小さくすることで、コア内の磁束を小さくすることができる。つまり、本実施形態に係る結合インダクタでは、ギャップG1~G3のサイズを大きくすることなく、インダクタを構成する2つのコイルの巻き数の比N1:N2を調整することで、コア内の磁束を小さくすることが可能であり、従来の結合インダクタに比べ、インダクタを小型化することが可能である。
【0027】
図6と同じ条件において、インダクタの巻き数N(=N1+N2)を一定としたまま、インダクタを構成する2つのコイルの巻き数の比N1:N2を変化させると、本実施形態に係る結合インダクタでは、図8に示すように、コアの中心部分C1の断面積、ギャップG1~G3のサイズが変化する。図8において、丸が、第2の巻き数N2を変化させたときのコアの中心部分C1の断面積の変化を示しており、四角が、第2の巻き数N2を変化させたときのギャップG1~G3のサイズの変化を示している。また、図7、コアの中心部分C1の断面積として、第2の巻き数N2が40であるとき(つまり、第1の巻き数N1がゼロであり、2つのインダクタの各々が1つのコイルで構成された従来の結合インダクタと同じ構成であるとき)のコアの中心部分C1の断面積で正規化した値を示しており、ギャップG1~G3のサイズとして、第2の巻き数N2が40であるときのギャップG1~G3のサイズで正規化した値を示している。
【0028】
本実施形態に係る結合インダクタでは、図8に示されているように、第2の巻き数N2を小さくすることで、ギャップG1~G3のサイズを小さくすることができる。また、本実施形態に係る結合インダクタでは、第2の巻き数N2を小さくしたとしても、コアの中心部分C1の断面積が微増するだけである。図8の例では、ギャップG1~G3の大きさが、第2の巻き数N2が30であるときに、第2の巻き数N2が40であるときのギャップG1~G3のサイズの半分(0.5倍)になるが、このときのコアの中心部分C1の大きさは、第2の巻き数N2が40であるときのコアの中心部分C1の断面積の1.15倍にしかならない。つまり、本実施形態に係る結合インダクタは、従来の結合インダクタに比べ、インダクタを小型化することができる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
C1 コアの中心部分
C11 コアの中心部分C1の中央部
C12 コアの中心部分C1の第1の端部
C13 コアの中心部分C1の第2の端部
C2 コアの外側部分
C21 コアの外側部分C2の中央部
C22 コアの外側部分C2の第1の端部
C23 コアの外側部分C2の第2の端部
L1 第1のコイル
L2 第2のコイル
L3 第3のコイル
L4 第4のコイル
G1~G3 ギャップ
B 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8