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特許7451470血清又は血漿分離濃縮促進剤、採血管、及び、血清又は血漿の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】血清又は血漿分離濃縮促進剤、採血管、及び、血清又は血漿の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G01N33/48 D
G01N33/48 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021157082
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047900
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】根布谷 理
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祐人
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-271388(JP,A)
【文献】特表2008-538082(JP,A)
【文献】国際公開第2021/112119(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0009956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性モノマー(a)を必須構成単量体とする架橋ポリマー(X)と、真比重が3~10である物質(Y)とを含有する血清又は血漿分離濃縮促進剤であって、
前記物質(Y)が、金属(Y1)、及び、無機化合物(Y2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記架橋ポリマー(X)と物質(Y)との重量比率[架橋ポリマー(X)の重量/物質(Y)の重量]が、0.01~2である血清又は血漿分離濃縮促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載の血清又は血漿分離濃縮促進剤が封入された採血管。
【請求項3】
更に、血清又は血漿分離剤が封入された請求項2に記載の採血管。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の採血管に、血液を投入し、遠心分離する工程を有する血清又は血漿の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血清又は血漿分離濃縮促進剤、採血管、及び、血清又は血漿の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、血清又は血漿を得る方法として、分離剤を封入した採血管を用い、前記の採血管に血液を投入し、遠心分離を実施することで、分離剤を介して、血清又は血漿の層と血餅又は血球成分の層とに分離させる技術が知られてる。
ところで、血清又は血漿は水分を含んでおり、血清又は血漿に含まれる成分(タンパク質等)の検出及び回収を容易にする観点から、水分を可能な限り除去し、水以外の成分が濃縮された血清又は血漿を得ることは重要である。
しかしながら、従来の手法では、上記の血清又は血漿の分離工程の後、別途、特許文献1及び2等に記載の濃縮工程を実施することになり、煩雑な操作が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-12284号公報
【文献】特開2000-72822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、少ない操作で、血液から、濃縮された血清又は血漿を得る方法を提供することにあり、また、上記の方法に用いる血清又は血漿分離濃縮促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、
水溶性モノマー(a)を必須構成単量体とする架橋ポリマー(X)と、真比重が3~10である物質(Y)とを含有する血清又は血漿分離濃縮促進剤であって、前記物質(Y)が、金属(Y1)、及び、無機化合物(Y2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記架橋ポリマー(X)と物質(Y)との重量比率[架橋ポリマー(X)の重量/物質(Y)の重量]が、0.01~2である血清又は血漿分離濃縮促進剤;前記血清又は血漿分離濃縮促進剤が封入された採血管;前記採血管に、血液を投入し、遠心分離する工程を有する血清又は血漿の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の血清又は血漿分離濃縮促進剤を封入した採血管を用いることで、血液からワンステップで、濃縮された血清又は血漿を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の血清又は血漿分離濃縮促進剤は、水溶性モノマー(a)を必須構成単量体とする架橋ポリマー(X)を含有する。
なお、本発明の「血清又は血漿分離濃縮促進剤」は、「血清分離濃縮促進剤」又は「血漿分離濃縮促進剤」を意味するものとする。
【0008】
<架橋ポリマー(X)>
前述の通り、本発明の吸収剤が含有する架橋ポリマー(X)は、水溶性モノマー(a)を必須構成単量体とする架橋ポリマーである。
なお、水溶性モノマー(a)の「水溶性」とは、25℃の水への溶解度(g/水100g)が5g以上であることを意味するものとする。
また、水溶性モノマー(a)の25℃の水への溶解度(g/水100g)は、濃縮倍率を向上させる観点から、80g以上であることが好ましく、100g以上(水溶性モノマー(a)が水に対して混和性を有することを含む)であることが更に好ましい。
本発明における架橋ポリマー(X)は、架橋構造を有するポリマーであり、水溶性モノマー(a)及び後述の架橋剤(b)を必須構成単位[水溶性モノマー(a)は必須構成単量体]とする架橋ポリマーであることが好ましい。
【0009】
水溶性モノマー(a)としては、水溶性ビニルモノマー(a1)及びその他の水溶性モノマー(a2)等が挙げられる。
【0010】
水溶性ビニルモノマー(a1)としては、カチオン性基を有しアニオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a11)、アニオン性基を有しカチオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a12)、カチオン性基及びアニオン性基を有する水溶性ビニルモノマー(a13)並びにカチオン性基及びアニオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a14)等が挙げられる。
【0011】
カチオン性基としては、カチオン基及びカチオン塩基等が挙げられ、具体的には、アミノ基(又はアンモニウム塩基)等が挙げられる。(なお、アミド基由来のアミノ基は、カチオン性基として取り扱わないものとする。)
アニオン性基としては、アニオン基及びアニオン塩基等が挙げられ、具体的には、カルボキシ基(又はカルボン酸塩基)、スルホ基(又はスルホニウム塩基)及びホスホ基(又はホスホニウム塩基)等が挙げられる。
【0012】
前記のカチオン性基を有しアニオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a11)としては、アミノ基を有する(メタ)アクリルモノマー〔アミノアルキル(アルキル基の炭素数は2~3)(メタ)アクリレート及びN,N-ジアルキル(アルキル基の炭素数は1~2)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は2~3)(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]等〕、アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド(ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)並びにこれらの塩[無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩、ベンジルクロライド塩]等が挙げられる。
なお、本願において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリロイロキシは、アクリロイロキシ及び/又はメタクリロイロキシを意味する。
前記の水溶性ビニルモノマー(a11)の内、濃縮倍率を向上させる観点から好ましいのは、4級アンモニウム塩基を有するモノマー(a111)[N,N-ジアルキル(アルキル基の炭素数は1~2)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は2~3)(メタ)アクリレートのメチルクロライド4級塩等]である。
【0013】
前記のアニオン性基を有しカチオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a12)としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー〔後述の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへの酸無水物(炭素数4~10の酸無水物が好ましい)付加物[コハク酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル及びヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル等]、(メタ)アクリル酸へのラクトン(前記の炭素数2~12のラクトンが好ましい)付加物(1~5モル付加物が好ましい)[2-((メタ)アクリロイロキシ)エタン酸、3-((メタ)アクリロイロキシ)プロパン酸、4-((メタ)アクリロイロキシ)ブタン酸、5-((メタ)アクリロイロキシ)ペンタン酸、6-((メタ)アクリロイロキシ)ヘキサン酸及び(メタ)アクリル酸へのカプロラクトン5モル付加物等]及び(メタ)アクリル酸等〕;
カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー以外の不飽和カルボン酸[不飽和モノカルボン酸(塩)(クロトン酸、桂皮酸等)及び不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等)];
スルホ基を有する(メタ)アクリルモノマー[(メタ)アクリル酸2-スルホエチル及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等];
ホスホ基を有する(メタ)アクリルモノマー[リン酸2-((メタ)アクリロイロキシ)エチル等];
及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル;
並びにこれらの塩[カリウム、ナトリウム及びリチウム等のアルカリ金属塩及びカルシウム等のアルカリ土類金属塩]等が挙げられる。
【0014】
前記のカチオン性基及びアニオン性基を有する水溶性ビニルモノマー(a13)としては、3-〔[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ〕プロピオナート等が挙げられる。
【0015】
前記のカチオン性基及びアニオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a14)としては、炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのラクトン付加物及び前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物、炭素数3~20の(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド及びN,N-ジベンジル(メタ)アクリルアミド等]等が挙げられる。
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4~12のモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数4~12のジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び炭素数4~12のトリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数4~12のモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート及び8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数4~12のジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数4~12のトリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールモノアクリレート等が挙げられる。
【0016】
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに付加するラクトンとしては、炭素数2~12のラクトンが好ましく、アセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン及びラウロラクトン等が挙げられる。
前記のラクトンの付加モル数としては、1~15モルであることが好ましく、更に好ましくは1~5モルである。付加するラクトンは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのラクトン1~5モル付加物としては、6-ヒドロキシヘキサン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、5-ヒドロキシドデカン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのカプロラクトン5モル付加物等が挙げられる。
【0017】
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに付加するアルキレンオキシドとしては、炭素数2~10のアルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド、1,2-又は1,3-プロピレンオキシド、1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキシド、3-メチルテトラヒドロフラン、1,2-デセンオキシド、スチレンオキシド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等が挙げられる。
前記のアルキレンオキシドの付加モル数としては、1~40モルであることが好ましい。付加するアルキレンオキシドは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物としては、(メタ)アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(10-ヒドロキシデコキシ)エチル及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのエチレンオキシド30モル付加物等が挙げられる。
【0018】
その他の水溶性モノマー(a2)としては、グルコース及びエチレンオキサイド等が挙げられる。
その他の水溶性モノマー(a2)を用いた架橋ポリマー(X)として、グルコースを必須構成単量体とする架橋ポリマーを用いる場合は、ジアルキル(アルキル基の炭素数は1~2)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は2~3)基(又はその塩)を有するポリマーであることが好ましい。[ジアルキルアミノアルキル基(又はその塩)を導入する方法としては、特開昭57-195701号公報に記載の方法等が挙げられる。]
このような架橋ポリマー(X)としては、Cytodex1(Cytiva社製)として、市場より入手することもできる。
【0019】
本発明における架橋ポリマー(X)は、本願発明の効果を妨げない範囲で、必須構成単量体である水溶性モノマー(a)以外のモノマー(a’)を含有していても良い。
前記のモノマー(a’)としては、炭素数4~20のアルキル(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等];炭素数8~20の脂環式(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等];炭素数10~20の芳香族(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸ベンジル等];炭素数8~30の複素環式(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル及び(メタ)アクリル酸2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル等];炭素数8~20のスチレン誘導体(スチレン及びパラメチルスチレン等);炭素数3~20のアリル化合物(アリルメチルエーテル及びアリルブチルエーテル等);及び酢酸ビニル等が挙げられる。
【0020】
架橋ポリマー(X)に含まれるモノマー(a11)~(a13)由来の構成単位は、塩でなくても(未中和体であっても)、塩であっても(中和体であっても)構わない。
【0021】
架橋ポリマー(X)の構成単位として、アニオン性基を有しカチオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a12)由来の構成単位を使用する場合、ビニルモノマー(a12)の最終的な中和度{ビニルモノマー(a12)由来のアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づく、アニオン塩基の含有量(モル%)}は、濃縮倍率を向上させる観点から、80~100が好ましく、更に好ましくは85~100、特に好ましくは90~100である。
【0022】
架橋ポリマー(X)の構成単位として、カチオン性基を有しアニオン性基を有さない水溶性ビニルモノマー(a11)由来の構成単位を使用する場合、ビニルモノマー(a11)の最終的な中和度{ビニルモノマー(a11)由来のカチオン基及びカチオン塩基の合計モル数に基づく、カチオン塩基の含有量(モル%)}は、濃縮倍率を向上させる観点から、80~100が好ましく、更に好ましくは85~100、特に好ましくは90~100である。
【0023】
前記の架橋ポリマー(X)において、水溶性モノマー(a)及びモノマー(a’)は、それぞれ、単独で構成単量体としてもよく、2種以上を構成単量体としてもよい。
前記の架橋ポリマー(X)において、前記のモノマー(a’)を構成単量体とする場合、モノマー(a’)由来の構成単位の含有量は、濃縮倍率を向上させる観点から、水溶性モノマー(a)由来の構成単位のモル数に基づいて、好ましくは0.01~50モル%、更に好ましくは0.01~20モル%、特に好ましくは0.01~5モル%である。
【0024】
本発明において、架橋ポリマー(X)は、前述の通り、架橋構造を有するポリマーである。架橋構造は、必須構成単量体である水溶性モノマー(a)が、反応性基を有する場合(カルボキシル基を有するものとアミノ基を有するものの併用等)は、自己架橋させても良いが、必要により架橋剤(b)を使用してもよい。
架橋剤(b)を用いた架橋の方法としては、下記の方法が挙げられる。
1)架橋剤(b)を下記の内部架橋剤として用いる方法:水溶性ビニルモノマー(a1)と架橋剤(b)とを重合反応させて、直接、架橋構造を有する架橋ポリマー(X)を得る[例えば、特開2003-225565号公報及び特開2005-075982号公報に記載の方法等]
2)架橋剤(b)を下記の表面架橋剤として用いる方法:水溶性モノマー(a)を必須構成単量体とするポリマーを、架橋剤(b)を用いて架橋し、架橋ポリマー(X)を得る[例えば、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2003-225565号公報、特開2005-75982号公報、特開2005-95759号公報に記載の方法等]
3)架橋剤(b)としてエピクロロヒドリンを用いる方法:その他の水溶性モノマー(a2)を用いた架橋ポリマー(X)として、水酸基を有するモノマー(グルコースであることが好ましい)を必須構成単量体とする架橋ポリマーを用いる場合は、エピクロロヒドリンで架橋することで架橋ポリマーを得ることができる[例えば特開昭57-195701号公報に記載の方法等]
【0025】
前記の1)及び2)の方法に用いる架橋剤(b)としては、エチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤[ポリオキシアルキレン(アルキレン基の好ましい炭素数は2~4、オキシアルキレン基の好ましい繰り返し数は10~50)グリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及び炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテル(テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル等]等が挙げられる。
なお、前記水溶性モノマー(a)が、エチレン性不飽和基を2個以上有する場合、その水溶性モノマー(a)は、架橋剤(b)としての役割も果たす。
【0026】
また、前記の架橋剤(b)としては、前記の水溶性モノマー(a)に由来する構成単位の水溶性置換基{カルボキシ基、水酸基等}と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤を用いることができる。このような架橋剤として好ましいのは、多価グリシジル、更に好ましいのはエチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテル、特に好ましいのはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0027】
架橋剤(b)の含有量(モル%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)、モノマー(a’)及び架橋剤(b)の合計単位モル数に基づいて、0.001~5が好ましく、更に好ましくは0.005~3、特に好ましくは0.01~1である。この範囲であると、吸収特性が更に良好となる。
なお、上記の「架橋剤(b)の含有量(モル%)」の計算において、(b)が水溶性モノマー(a)にも該当する場合は、そのモノマーは、架橋剤(b)として計算するものとする。
【0028】
架橋ポリマー(X)が、水溶性ビニルモノマー(a1)を構成単量体とするポリマーである場合は、公知の方法{特開2003-225565号公報及び特開2005-075982号公報等}と同様にして、水溶性ビニルモノマー(a1)[架橋剤(b)等を用いて架橋]を重合して、含水ゲルを調製し、必要により含水ゲルを細断した後、乾燥して、架橋ポリマー(X)を製造する方法等が挙げられる。
架橋ポリマー(X)が、その他の水溶性モノマー(a2)を構成単量体とするポリマーである場合は、デキストラン(グルコースを必須単量体とするポリマー)をエピクロロヒドリンで架橋し、2-(ジメチルアミノ)エチルクロリド塩酸塩等と反応させることで、ジアルキルアミノアルキル基(又はその塩)を導入して、架橋ポリマー(X)を製造する方法等が挙げられる。
【0029】
前記のモノマー(a11)~(a13)由来の構成単位として、前記の塩(中和体)を使用したい場合は、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸及び硝酸等)、水酸化アルカリ金属(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウム等)、水酸化アルカリ土類金属(水酸化カルシウム等)、又は、これらの水溶液を、重合前のモノマー段階、又は、重合後の含水ゲルに添加すれば良い。
【0030】
架橋ポリマー(X)は、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定はなく、一般的なの粉砕装置{例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機等}等が使用できる。粉砕された吸収性樹脂粒子は、必要によりふるい分け等により、後述の重量平均粒子径を調整できる。
【0031】
架橋ポリマー(X)の重量平均粒子径(μm)は、試料中に存在する水等の低分子成分の吸収を促進し、架橋ポリマー(X)に由来する継粉が発生することを抑制し、濃縮対象物質の吸着を抑制し、吸収速度を向上させる観点から、好ましくは50~1000、更に好ましくは200~900、特に好ましくは300~600である。更に、1000μmを超える粒子を含まず、100μm以下の粒子が10重量%未満であることが好ましい。
【0032】
架橋ポリマー(X)の重量平均粒子径(μm)は、例えば以下の方法で測定することができる。
<重量平均粒子径>
ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定した。
すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μmの順に重ね合わせ、最下部に受け皿を装着する。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0033】
架橋ポリマー(X)は、濃縮倍率を向上させる観点から、自重を基準としたイオン交換水の吸収倍率が、70~300倍であることが好ましく、更に好ましくは100~200倍である。
イオン交換水の吸収倍率は以下の方法により、測定できる。
<イオン交換水の吸収倍率の測定方法>
縦20cm、横10cm、幅約5mmのナイロン製の網袋(250メッシュ)に、架橋ポリマー(X)の試料(サンプル量;0.1g)を入れ、これを袋ごと2Lのイオン交換水(温度:25℃、25℃での電気伝導度:1μS/cm以下)に浸す。浸漬60分後に袋ごと空中に引き上げ、25℃で静置して30分間水切りした後、質量(Sg)を測定して下式より吸収倍率を求める。
[網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の質量(Tg)をブランクとする。]
イオン交換水の吸収倍率=(S-T)/0.1
【0034】
なお、上記の<イオン交換水の吸収倍率の測定方法>において、架橋ポリマー(X)の試料の浸漬時間を60分から10分に変更した場合に測定できるイオン交換水の吸収倍率は、5~300倍であることが好ましく、更に好ましくは5~30倍である。
【0035】
<物質(Y)>
本発明の血清又は血漿分離濃縮促進剤は、更に、真比重が3~10である物質(Y)を含有することが好ましい。
前記の物質(Y)は、金属(Y1)、及び、無機化合物(Y2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質(Y)であることが好ましい。
金属(Y1)として好ましいのは、ニッケル、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム及びスズ等である。
無機化合物(Y2)としては、金属(Y1)の合金、無機酸化物等が挙げられる。
【0036】
無機酸化物としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム及びスズ等の無機酸化物が挙げられる。
具体的な無機酸化物としては、無機アルコキシド(c1)、金属無機酸塩(c2)および無機塩化物(c3)からなる群より選ばれる1種以上の無機酸化物前駆体(c)の加水分解縮合物を用いることができる。
【0037】
前記の無機アルコキシド(c1)としては、ケイ素アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ガリウムアルコキシド、インジウムアルコキシド、ゲルマニウムアルコキシド及びスズアルコキシド等が挙げられる。
また、アルコキシド部分は特に限定されないが、メトキシド、エトキシド、1-プロポキシド、2-プロポキシド、n-ブトキシド、sec-ブトキシド及びtert-ブトキシド等が挙げられる。
前記の金属無機酸塩(c2)としては、金属(Y1)と、無機酸(硝酸及び硫酸等)の組み合わせが挙げられ、具体例としては、4硝酸チタン、オキシ硫酸チタン、オキシ硝酸ジルコニウム及び硫酸ジルコニウム等が挙げられる。
無機塩化物(c3)としては、金属塩化物(4塩化チタン、4塩化ジルコニウム、4塩化ハフニウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム及び塩化スズ等)及び非金属塩化物(4塩化ケイ素及び4塩化ゲルマニウム等)等が挙げられる。
【0038】
また、前記の物質(Y)としては、国際公開第2019/240045号に記載の金属粒子のように、複数の無機酸化物を含有するものを用いることもできる。
【0039】
上述の通り、前記の物質(Y)は、その真比重が3~10である。
真比重は、以下のゲーリュサック型比重瓶法により測定することができる。具体的な方法を以下に示す。
【0040】
1)ピクノメーター、乳鉢、乳棒、時計皿を乾燥器から取りだす。
2)ピクノメーターの重量を量る。
3)ピクノメーターに試料(真比重を測定する試料)を入れる。
4)重量(ピクノメーター+試料)を量り、2)で測定した値を用いて、試料の重量(W2)を算出する。
5)ピクノメーターに、蒸留水を試料の高さの倍まで入れ、蒸留水となじませる。
6)ピクノメーターを、蓋をせずに真空デシケーターに入れ、真空ポンプを用いて1kPaにて、25℃で、約20分脱気する。
7)ウォーターバスの電源(ヒーター及びスターラー)を入れ、25℃に保持する(別のピクノメーターに水を入れ温度計を挿入する。この温度を用いること)。
8)ビーカーに蒸留水を約150ml入れ、ウォーターバスで温める。
9)ピクノメーターを、デシケーターより取り出し、比重瓶の首まで8)の蒸留水を入れ、蓋をして25℃に保たれたウォーターバスに入れ20分保持する。
10)ピクノメーターを、ウォーターバスから取り出し、栓の上面まで8)の蒸留水を満たす。
11)ピクノメーターを、再度、ウォーターバスに入れ1分保持する。
12)ピクノメーターを、取り出して外側をガーゼでよくふき取り、ピクノメーター及び内容物(試料及び蒸留水)の合計重量(W3)を求める。
13)ピクノメーターをきれいに洗って空の状態とした後、8)の蒸留水で比重瓶を満たし、ウォーターバスに入れ5分保持し10)~11)の操作を行い、ピクノメーター及び内容物(蒸留水)の合計重量(W1)を求める。
14)W1、W2、W3から下記式を用いて真比重を求める。
式: 真比重=(W2)/(W1+W2-W3)
【0041】
物質(Y)の体積平均粒子径(μm)は、濃縮倍率を向上させる観点から、好ましくは0.5~20μm、更に好ましくは1~10μm、特に好ましくは1.1~5μmである。
本発明における物質(Y)の体積平均粒子径は、例えばレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)で測定して得られる体積平均粒子径である。
【0042】
<血清又は血漿分離濃縮促進剤>
本発明の血清又は血漿分離濃縮促進剤は、袋(プラスチック製等の袋)に、前記の架橋ポリマー(X)及び物質(Y)を投入し、均一に混合する等の方法により、得ることができる。
【0043】
本発明の血清又は血漿分離濃縮促進剤が含有する架橋ポリマー(X)と物質(Y)との重量比率[架橋ポリマー(X)の重量/物質(Y)の重量]は、濃縮倍率を向上させる観点から、0.01~2である。
【0044】
本発明の血清又は血漿分離濃縮促進剤の真比重は、濃縮倍率の観点から、1.7~10であることが好ましい。
なお、真比重の測定は、前記のゲーリュサック型比重瓶法で実施することができる。
【0045】
<血清又は血漿の製造方法>
次に、血清又は血漿分離濃縮促進剤を用いた血清又は血漿の製造方法について説明する。
本発明の血清又は血漿の製造方法は、前記の血清又は血漿分離濃縮促進剤が封入された採血管を用いる。
本発明の採血管は、血清又は血漿分離剤が封入されていても良い。
血清又は血漿分離剤は、国際公開第2016/199851号に記載の「血清または血漿分離用組成物」等を用いることができ、液状有機化合物(シリコーン樹脂、α-オレフィン-フマル酸エステル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステル樹脂等)とチクソトロピー性付与成分(親水性又は疎水性無機微粉末等)の混合物等を用いることができる。
血清又は血漿分離剤が封入された採血管は、ベノジェクトII VP-AR073K63[テルモ(株)製]等として、市場より入手することができる。
【0046】
本発明の血清又は血漿の製造方法は、前記の採血管に、血液を投入し、遠心分離する工程を有する。この工程を実施することで、採血管中の内容物が、複数の相に分離し(血清又は血漿分離剤を用いた場合は、血清又は血漿分離剤を介して、上層と下層に分離する)、上層として、血清又は血漿を得ることができる。なお、下層には、血餅又は血球成分、及び、血清又は血漿分離濃縮促進剤等が含まれる。
【0047】
採血管に封入する血清又は血漿分離濃縮促進剤の重量割合は、血液の重量に対して6.7~16.7重量%であることが好ましい。
また、血清又は血漿分離濃縮促進剤の重量割合は、架橋ポリマー(X)の量が以下の割合を満たすことが好ましい。
架橋ポリマー(X)の使用量は、血液の重量に対して、1~15重量%であることが好ましい。
【0048】
採血管に封入する血清又は血漿分離剤の重量割合は、血液1mLに対して0.1~0.5重量%であることが好ましい。
前記の遠心分離工程は、15~24℃にて、2000~4000rpmで10~20分実施することが好ましい。
【0049】
本発明の血清又は血漿の製造方法は、血液からワンステップで、濃縮された血清又は血漿を得ることができるため、採血から検体検査までの時間を大幅に短縮できるという観点で有用である。
【実施例
【0050】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下において部は重量部を表す。
【0051】
<製造例1>[架橋ポリマー(X-1)の作製]
ガラス製容器に、アクリル酸ナトリウム100部、NKエステル23G(ポリエチレングリコールジアクリレート[オキシエチレン基の繰り返し数:23、新中村化学工業(株)製])1.5部、2,2-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩を0.05部及びイオン交換水152部を投入した後混合し、25℃でバイオミキサー(日本精機(株)製 ABM-2型)にて2分間撹拌して水溶液を得た。
次いで、撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、デカン624部投入し、これに、リョートーシュガーエステルS-370(ショ糖ステアリン酸エステル[HLB値3、三菱ケミカルフーズ(株)製])を、2.5部投入し溶解させた。
この後、撹拌しつつ窒素置換し、60℃まで昇温した。そして、60℃に保ったまま、水溶液を6.6部/分の速度で、全量滴下した。滴下終了後、60℃で120分間熟成させて含水ゲル粒子を得た。
さらに、含水ゲル粒子から水とデカンとの共沸によって水を除去し、樹脂の含水率を約5重量%とした。
続いて、30℃に冷却し撹拌を停止すると、樹脂粒子が沈降したので、デカンテーションにより、樹脂粒子と疎水性溶媒層とを分離した後、濾別して、80℃で減圧乾燥し、目開き710~150μmのふるいを用いて、重量平均粒子径が400μmとなるように、粒子径調整することにより、架橋ポリマー(X-1)[後述の方法で測定したイオン交換水の吸収倍率:150倍]を作製した。架橋ポリマー(X-1)の含水率は、3重量%であった。
【0052】
<製造例2>[架橋ポリマー(X-2)の作製]
断熱重合槽に、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド四級塩100部、NKエステル23G(ポリエチレングリコールジアクリレート[オキシエチレン基の繰り返し数:23、新中村化学工業(株)製])0.8部、及びイオン交換水152部投入し、攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1重量%過酸化水素水溶液0.4部と2重量%アスコルビン酸水溶液0.8部投入し、混合して重合を開始させた。混合物の温度40℃に達した後、40±2℃で約5時間重合することにより含水ゲルを得た。
次にこの含水ゲルをミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断し、通気型乾燥機{200℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、ふるい分けして、目開き710~150μmのふるいを用いて、重量平均粒子径が400μmとなるように粒子径調整して、架橋ポリマー(X-2)[後述の方法で測定したイオン交換水の吸収倍率:100倍]を作製した。架橋ポリマー(X-2)の含水率は、3重量%であった。
【0053】
<製造例3>[架橋ポリマー(X-3)の作製]
イオン交換水100部にデキストラン40(グルコースを必須単量体とするポリマー、東京化成工業(株)製)100部を溶解させた。ここにさらにイオン交換水24部、水酸化ナトリウム20部及び水素化ホウ素ナトリウム2.4部を混合し溶解した水溶液を全量加え、50℃で24時間撹拌した。ここにトルエン318部及びRhodafac PE 510(SOLVAY社製)6部を追加し、12時間撹拌を行った。
さらに、エピクロロヒドリンを44.8部添加し4時間撹拌後、50℃を維持したままで2-(ジメチルアミノ)エチルクロリド塩酸塩31.7部加え30分撹拌し、さらに2-(ジメチルアミノ)エチルクロリド塩酸塩31.7部加え12時間撹拌を続けた。
その後、エタノール526部を追加して30分撹拌し、ゲル状の沈殿をろ過にて回収した。その後ゲル状の沈殿をエタノール112部で洗う操作を7回繰り返し、pH3に調整した塩酸333部で洗う操作を5回繰り返し、エタノール329部で洗う操作を4回繰り返した。次いで50℃で72時間減圧乾燥した。得られた紛体をふるい分けして、目開き500~150μmのふるいを用いて、重量平均粒子径が190μmとなるように粒子径調整して架橋ポリマー(X-3)を作製した。架橋ポリマー(X-3)[後述の方法で測定したイオン交換水の吸収倍率:50倍]の含水率は、3重量%であった。
【0054】
各架橋ポリマー(X)の重量平均粒子径(μm)は、以下の方法で測定した。
<重量平均粒子径>
ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定した。
すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μmの順に重ね合わせ、最下部に受け皿を装着した。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせた。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とした。
【0055】
なお、架橋ポリマー(X-1)~(X-3)のイオン交換水の吸収倍率は、以下の方法で測定した。
<架橋ポリマー(X-1)~(X-3)のイオン交換水の吸収倍率>
縦20cm、横10cm、幅約5mmのナイロン製の網袋(250メッシュ)に、吸収剤架橋ポリマーの試料(サンプル量;0.1g)を入れ、これを袋ごと2Lのイオン交換水(温度:25℃、25℃での電気伝導度:1μS/cm以下)に浸した。浸漬60分後に袋ごと空中に引き上げ、静置して30分間水切りした後、質量(Sg)を測定して下式より吸収倍率を求めた。
[網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の質量(Tg)をブランクとする。]
イオン交換水の吸収倍率=(S-T)/0.1
【0056】
<製造例4>[金属(Y-1)の作製]
反応容器に塩化鉄(III)6水和物186部、塩化鉄(II)4水和物68部及び水1,288部を仕込んで溶解させて50℃に昇温し、撹拌下(回転数300rpm)、温度を50~55℃の保持しながら、25重量%アンモニア水280部を1時間かけて滴下し、水中にマグネタイト粒子を得た。得られたマグネタイト粒子に分散剤であるオレイン酸64部を加え、2時間撹拌を継続した。室温に冷却後、デカンテーションにより固液分離した。得られたオレイン酸が吸着したマグネタイト粒子を、水1,000部で洗浄する操作を3回行い、更にアセトン1,000部で洗浄する操作を2回行い、40℃で2日間乾燥させることで、金属酸化物粒子を得た。
次に、金属酸化物粒子75部をテトラエトキシシラン240部に加えて分散させ、分散液を調製した。次に、反応容器に水5,050部、25重量%アンモニア水溶液3,500部、NSA-17(三洋化成工業株式会社製)400部を加えてクリアミックス(エムテクニック社製)を用いて混合し溶液を得た。50℃に昇温後、クリアミックスを回転数6,000rpmで攪拌しながら、上記分散液を溶液に1時間かけて滴下後、50℃で1時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上清を除いた。次に、得られた固相に水5,000部を加えて粒子を分散させて600rpmで10分間遠心分離後、微粒子の存在する上清を除く操作を20回行った(分級工程1)。続いて得られた固相に水5,000部を加えて粒子を分散させて300rpmで10分間遠心分離することにより、大きな粒子径の粒子を沈降させて除去することで分級を行った(分級工程2)。更に、水50部を加えて粒子を分散させた後、磁石を用いて粒子を集磁し上清を除く操作を10回行った後、150℃で10分間加熱することで水分を除去し、金属含有粒子である物質(Y-1)[Fe及びテトラエトキシシランの加水分解重合物を含有]を得た。
なお、物質(Y-1)50mgを、イオン交換水10mLに分散させた液を試料とし、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)を用いて測定した際の物質(Y-1)の体積平均粒子径は、2.7μmであった。
また、後述の方法で測定した物質(Y-1)の真比重は、3.86であった。
【0057】
<製造例5>[(Y-2)の作製]
反応容器に炭酸水素ナトリウム(昭和化学株式会社製)76.8部とイオン交換水800部を加え、2時間攪拌して溶解させ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を作製した。また、別の反応容器に硫酸鉄(II)7水和物(昭和化学株式会社製)25.6部とイオン交換水100部を加え、2時間攪拌して溶解させ飽和硫酸鉄(II)水溶液を作製した。さらに、別の反応容器にベンゼン100部、Span80(ソルビタンモノオレート、東京化成工業株式会社製)を2部加え、2時間攪拌して溶解させた後、飽和硫酸鉄(II)水溶液20部を加えて激しく振とうし、w/oエマルションを作製した。得られたw/oエマルションを前記飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に全量加え、マグネティックスターラーで攪拌しながら粒子を沈殿させた。沈殿物はベンゼン層に移動したため、分液漏斗で分別しエタノール1000部で洗浄した後、遠心分離して上澄みを廃棄した。次にエタノール1000部で3回洗浄し、イオン交換水1000部で3回洗浄した後、150℃で10分間加熱することで水分を除去し、物質(Y-2)[Fe]を得た。
なお、物質(Y-2)50mgを、イオン交換水10mLに分散させた液を試料とし、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)を用いて測定した際の物質(Y-2)の体積平均粒子径は、3.3μmであった。
また、後述の方法で測定した物質(Y-2)の真比重は、5.24であった。
【0058】
<製造例6>[(Y-3)の作製]
反応容器に硫酸ニッケル6水和物(日本化学産業株式会社製、純度82%)265部とイオン交換水1000部を加え2時間攪拌して溶解させ、この水溶液を0.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に滴下して加えた。その後、ヒドラジン25部を加えて均一に溶解したところ沈殿が発生した。次に上澄みを廃棄し、沈殿物をイオン交換水1000部で3回洗浄した後、150℃で10分間加熱することで水分を除去し、物質(Y-3)[ニッケル]を得た。
なお、物質(Y-3)50mgを、イオン交換水10mLに分散させた液を試料とし、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)を用いて測定した際の物質(Y-3)の体積平均粒子径は、3.1μmであった。
また、後述の方法で測定した物質(Y-3)の真比重は、8.97であった。
【0059】
物質(Y)の真比重は、以下のゲーリュサック型比重瓶法により測定した。
1)ピクノメーター、乳鉢、乳棒、時計皿を乾燥器から取りだした。
2)ピクノメーターの重量を量った。
3)ピクノメーターに試料(真比重を測定する試料)を入れた。
4)重量(ピクノメーター+試料)を量り、2)で測定した値を用いて、試料の重量(W2)を算出した。
5)ピクノメーターに、蒸留水を試料の高さの倍まで入れ、蒸留水となじませた。
6)ピクノメーターを、蓋をせずに真空デシケーターに入れ、真空ポンプを用いて1kPaにて、25℃で、約20分脱気した。
7)ウォーターバスの電源(ヒーター及びスターラー)を入れ、25℃に保持した(別のピクノメーターに水を入れ温度計を挿入する。この温度を用いること)。
8)ビーカーに蒸留水を約150ml入れ、ウォーターバスで温めた。
9)ピクノメーターを、デシケーターより取り出し、比重瓶の首まで8)の蒸留水を入れ、蓋をして25℃に保たれたウォーターバスに入れ20分保持した。
10)ピクノメーターを、ウォーターバスから取り出し、栓の上面まで8)の蒸留水を満たした。
11)ピクノメーターを、再度、ウォーターバスに入れ1分保持した。
12)ピクノメーターを、取り出して外側をガーゼでよくふき取り、ピクノメーター及び内容物(試料及び蒸留水)の合計重量(W3)を求めた。
13)ピクノメーターをきれいに洗って空の状態とした後、8)の蒸留水で比重瓶を満たし、ウォーターバスに入れ5分保持し10)~11)の操作を行い、ピクノメーター及び内容物(蒸留水)の合計重量(W1)を求めた。
14)W1、W2、W3から下記式を用いて真比重を求めた。
式: 真比重=(W2)/(W1+W2-W3)
【0060】
<実施例1~9:血清分離促進剤の製造>
製造例1~3で作製した架橋ポリマー(X-1)~(X-3)と、製造例4~6で作製した(Y-1)~(Y-3)とを、それぞれ表1に記載の重量で、ユニパック(登録商標)((株)生産日本社製)に入れて均一になるまで混合し、血清分離促進剤(Z-1)~(Z~9)を作製した。
【0061】
<比較例1~3:比較用の血清分離促進剤の製造>
表1の種類の架橋ポリマー(X)を、それぞれ比較用の血清分離促進剤(Z’-1)~(Z’-3)とした。
【0062】
<比較例4~6:比較用の血清分離促進剤の製造>
表1の種類の物質(Y)を、それぞれ比較用の血清分離促進剤(Z’-4)~(Z’-6)とした。
【0063】
<比較例7~8:比較用の血清分離促進剤の製造>
製造例1で作製した架橋ポリマー(X-1)と、製造例4で作製した(Y-1)とを、それぞれ表1に記載の重量で、ユニパック(登録商標)((株)生産日本社製)に入れて均一になるまで混合し、血清分離促進剤(Z’-7)~(Z’-8)を作製した。
【0064】
<実施例10~18及び比較例9~17:血清の製造>
ポリオレフィンを主成分とする血清分離剤(真比重:1.05)入りの採血管(テルモ(株)製ベノジェクトII VP-AR073K63)に、表1に記載の種類の血清分離促進剤を、表1に記載の重量加えた後に、ヒト全血(SD1030.06、(株)サンフコ製)3mLを加え、10分間静置した。
その後、遠心分離機(RF-109F、(株)コクサン製)を用いて3000rpmで20分間遠心分離し、上層として、血清を得た。
血清中の全IgG濃度をイアトロIgG((株)LSIメディエンス製)で測定した。測定結果から濃縮倍率を算出し(比較例9で得られた血清の全IgG濃度を100%として算出)、これを表1に記載する。
なお、比較例10~12、16及び17では、遠心分離操作後に分離した血清の層が得られなかったため、IgG濃度を算出しなかった。
【0065】
【表1】
【0066】
<実施例19~21:血漿分離促進剤の製造>
製造例1で作製した架橋ポリマー(X-1)と、製造例4で作製した(Y-1)とを、それぞれ表2に記載の重量で、ユニパック(登録商標)((株)生産日本社製)に入れて均一になるまで混合し、血漿分離促進剤(Z-10)~(Z~12)を作製した。
【0067】
<実施例22~24及び比較例18:血漿の製造>
ポリエステルを主成分とする血漿分離剤(真比重:1.05)入りの採血管(日本ベクトン・ディッキンソン(株)製 PST(ヘパリンリチウム/血漿分離剤入り)採血管)に、表2に記載の種類の血漿分離促進剤を、表2に記載の重量加えた後に、ヒト全血(SD1030.06、(株)サンフコ製)3mLを加え、10分間静置した。
その後、遠心分離機(RF-109F、(株)コクサン製)を用いて3000rpmで20分間遠心分離し、上層として、血漿を得た。
血漿中の全IgG濃度をイアトロIgG((株)LSIメディエンス製)で測定した。測定結果から濃縮倍率を算出し(比較例18で得られた血漿の全IgG濃度を100%として算出)、これを表2に記載する。
【0068】
【表2】
【0069】
本発明の架橋ポリマー(X)と物質(Y)を含有する血清又は血漿分離促進剤を用いることで、全血からワンステップで濃度の高い血清及び血漿を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の血清又は血漿分離濃縮促進剤を封入した採血管を用いることで、血液からワンステップで、濃縮された血清又は血漿を得ることができる。このため、採血から検体検査までの時間を大幅に短縮できるという観点から有用である。