IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フンダシオ オスピタル ウニベルシタリ バイ デブロン ‐ インスティトゥ デ レセルカの特許一覧 ▶ インスティトゥト、ウニベルシタット、デ、シエンシア、イ、テクノロヒア、ソシエダ、アノニマの特許一覧

特許7451485癌の予防または治療に使用するための化合物
<>
  • 特許-癌の予防または治療に使用するための化合物 図1
  • 特許-癌の予防または治療に使用するための化合物 図2
  • 特許-癌の予防または治療に使用するための化合物 図3
  • 特許-癌の予防または治療に使用するための化合物 図4
  • 特許-癌の予防または治療に使用するための化合物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】癌の予防または治療に使用するための化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4535 20060101AFI20240311BHJP
   A61K 31/4525 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20240311BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61K31/4535
A61K31/4525
A61K31/454
A61K31/4545
A61K31/5377
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C07D405/12 CSP
C07D409/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021500159
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019067557
(87)【国際公開番号】W WO2020002701
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】18382485.3
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304400
【氏名又は名称】フンダシオ オスピタル ウニベルシタリ バイ デブロン ‐ インスティトゥ デ レセルカ
(73)【特許権者】
【識別番号】509013390
【氏名又は名称】インスティトゥト、ウニベルシタット、デ、シエンシア、イ、テクノロヒア、ソシエダ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT UNIV. DE CIENCIA I TECNOLOGIA,S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ホセプ、ロマ、カスタニエール
(72)【発明者】
【氏名】マルタ、パスクアル、ヒラベルト
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、サンチェス、デ、トレド、コディナ
(72)【発明者】
【氏名】ソレダド、ガジェゴ、メルコン
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア、サルソサ、マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、アロンソ、フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ、ペレス、オスカリス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ、ロペス、ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】ホセプ、カステルス、ボリアルト
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0006062(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0183324(US,A1)
【文献】Sulfonamidolactam inhibitors of coagulation factor Xa,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2008年,18,pp.2428-2433,doi:10.1016/j.bmcl.2008.02.054
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 45/00
A61P 35/00-35/04
A61P 43/00
C07D 405/12
C07D 409/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の予防または治療のための、医薬組成物であって、
以下:
4,5-ジクロロ-N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)チオフェン-2-スルホンアミド;
・N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)-3,5-ジメチルイソキサゾール-4-スルホンアミド;
・N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-スルホンアミド;
・N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)-5-(ピリジン-2-イル)チオフェン-2-スルホンアミド;
・N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)ベンゾフラン-2-スルホンアミド;
・4,5-ジクロロ-N-(シアノメチル)-N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)チオフェン-2-スルホンアミド;
・エチルN-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イルスルホニル)-N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)グリシネート;
・N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)-N-(2-モルホリノ-2-オキソエチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-スルホンアミド;
・2-((4,5-ジクロロ-N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)チオフェン)-2-スルホンアミド)アセトアミド;および
・エチルN-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)-N-((5-(ピリジン-2-イル)チオフェン-2-イル)スルホニル)グリシネート
からなる群より選択される化合物、
もしくはその塩、またはそれらの立体異性体を含む、医薬組成物
【請求項2】
前記化合物がN-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)-5-(ピリジン-2-イル)チオフェン-2-スルホンアミドである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記癌が、基底細胞癌、黒色腫、髄芽腫、星状細胞腫、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽腫、神経芽腫、消化管腫瘍、白血病、横紋筋肉腫および骨肉腫からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、化学療法剤、代謝拮抗薬、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞障害性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、キナーゼ阻害剤、経路特異的阻害剤、抗ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン物質、リボザイム、ワクチン、抗血管新生剤、抗ウイルス剤またはそれらの組み合わせから選択されるさらなる物質と併用される、請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項5】
口、直腸、鼻、眼、局所、膣、非経口、経皮、腹腔内、肺内または鼻内投用の、請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
科的療法、放射線療法、免疫療法、エピジェネティック療法またはそれらの組み合わせと併用して、癌の予防または治療に使用される、請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物と、化学療法剤、代謝拮抗薬、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞障害性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、キナーゼ阻害剤、経路特異的阻害剤、抗ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン物質、リボザイム、ワクチン、抗血管新生剤、抗ウイルス剤またはそれらの組み合わせから選択されるさらなる物質と、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、癌治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、癌の予防および/または治療に使用するための式(I)の化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッジホッグ(HH)経路に属するタンパク質は、多細胞生物の発達の重要な調節因子であると考えられており、組織のパターン形成、増殖および分化などのプロセスで重要な役割を果たす。また同様に、HHシグナル伝達は、幹細胞の維持または組織の修復および再生などの成体組織において主要な役割を果たす。健康な組織における役割以外に、HHシグナル伝達は、非常に広範囲の癌において抑制解除されることが示されている。主な種類(引用されていない他の癌を除外しない)は、他の多くのなかで、基底細胞癌、黒色腫、髄芽腫、星状細胞腫、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽腫、神経芽腫、消化管腫瘍、白血病、横紋筋肉腫および骨肉腫である。この経路は、細胞増殖、腫瘍の進行、転移および治療抵抗性を支持し得るため、多因子発癌の役割を果たす(Teglund et al 2010, Almazan-Moga et al 2017)。
【0003】
哺乳動物に存在する3つのHHタンパク質、つまり、ソニック(SHH)、インディアン(IHH)およびデザート(DHH)はパッチド受容体(PTCH1およびPTCH2)のリガンドである。リガンドフリーPTCHは、完全には解明されていないメカニズムによってスムーズンド(SMO)の活性化を阻害する。膜に活性SMOがない場合、融合ホモログのサプレッサー(Suppressor of fused homolog)(SUFU)との複合体におけるGliファミリー亜鉛フィンガータンパク質(Gli1、Gli2およびGli3)がタンパク質的に(proteosomically)処理される。HHリガンドが結合すると、SMOは活性になり、GLIプロテオソーム処理を妨げる。次いで、GLIが核に転座し、ここでGLI特異的プロモーターに結合してそれを調節し、その特異的標的を活性化させる。この経路の最もよく知られている3つの直接標的は、経路自体の遺伝子であるGli1、Ptch1およびHhipである(Roma et al., 2012; Manzella et al., 2015)。
【0004】
一方、ごく最近になって、CDO(細胞接着関連癌遺伝子調節因子(Cell Adhesion Associated, Oncogene Regulated))およびその相同性の高いタンパク質BOC(CODの兄弟(Brother of CDO))など、経路のコアクチベーターとしても関与するほとんど知られていない他のタンパク質が、ヘッジホッグリガンドに結合可能であることが示された(Okada A 2006, Tenzen T 2006, Allen BL 2007)。これらのコアクチベーターは、ごく少量のリガンドしか利用できない場合でさえ、経路の活性化を促進する。さらに、これらのタンパク質の発癌の役割は、癌の進行におけるCDOおよびBOCに関与する様々な参考文献で、いくつかの成人癌について記載されている。最も顕著な例を引用すると、CDOは、肺癌においては増殖およびクローン形成を明らかに活性化させる役割を果たし(Leem YE 2014)、前立腺癌においては明らかな発癌促進の役割を果たす(Hayashi T 2011)。同様に、CDOの神経芽腫におけるアポトーシス促進の役割についても記載されており(Gibert B 2014)、CDOとHHリガンドとの間の相互作用を阻害する可能性が、細胞死の誘導を可能にし得るため、高い潜在的な治療標的となり得ることを示唆している。一方、BOCは髄芽腫の進行および悪性化においても重要な役割を果たすと考えられている(Mille F2014)。
【0005】
この点において、CDOおよびBOCは、横紋筋肉腫(RMS)および他の癌において過剰発現している、未踏の潜在的な推定治療標的である。胚成分の特定の療法、例えばヘッジホッグ経路のものなどは、腫瘍細胞に対して高い特異性を有する可能性があり(当該経路は正常な体細胞において下方調節される傾向があるため)、したがって、有害な副作用を低減する可能性がある。
【0006】
ビスモデギブなどのSMO拮抗薬は、基底細胞癌および髄芽腫などの突然変異駆動型癌において活性であるが、経路の突然変異活性化が不在の他の固形腫瘍における臨床結果はあまり奨励されていない(McMillan R 2012)。例えば、転移性膵臓癌において、SMO拮抗薬であるサリデギブを用いた臨床試験は、患者の疾病進行率がより高く、生存期間中央値がより低いことが判明すると、時期尚早に中止された(McMillan R 2012)。より最近になって、転移性膵臓癌患者におけるビスモデギブのランダム化第Ib/II相試験において、ビスモデギブを添加しても全奏効率、無再発生存期間または全生存期間は改善されなかったことが判明した(Catenacci DV 2015)。転移性結腸直腸癌および卵巣癌における他の試みもまた、有意な陽性結果をもたらさなかった(McMillan R 2012)。さらに、ビスモデギブの発癌性オフターゲット効果に関する最近の記載は、ビスモデギブがいくつかのリガンド依存性癌において以前に報告されたように非効率的であることの、またはさらには、生存率が悪化したためにそれらの一部を時期尚早に中止したことの説明となり得る(Almazan-Moga et al 2017)。これは、魅力的な代替治療法と見なされ得るSMO阻害剤の代わりに、経路の他のてがかりとなる成分の干渉を介して薬理学的ヘッジホッグ阻害の可能性を高める。
【0007】
従来技術を考慮すると、許容可能なまたは改善された毒性プロファイルを維持しつつも、既知の化合物または療法よりも効果的である新たな化合物を見出すことが依然として必要である。
【0008】
Smallheerおよび同僚(Smallheer, J.M et al. Sulfonamidolactam inhibitors of coagulation factor Xa. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 18 (7), 2008, 2428-2433)は、第Xa因子抗血栓薬の阻害剤として3-(スルホニルアミノ)-2-ピペリドン化合物を開示している。本発明の目的のためのこれらの化合物の使用については言及されていない。
【0009】
US2004/0006062は、トリプシン様セリンプロテアーゼ、特に第Xa因子の阻害剤として有用なスルホニルアミノバレロラクタムおよびそれらの誘導体を開示している。これらの化合物は、本発明の式(I)の化合物に含有されるビフェニル環系を含まない。本発明の目的のためのこれらの化合物の使用については言及されていない。
【0010】
US2002/0183324A1は、トリプシン様セリンプロテアーゼ、特に血栓塞栓障害の治療および予防のための、第Xa因子の阻害剤として有用な単環式または二環式炭素環式化合物および複素環を開示している。本発明の目的のためのこれらの化合物の使用については言及されていない。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、式(I)の化合物が、既知の市販の抗癌剤と比較して、癌における抗増殖活性を示すが、同時に、特定の非腫瘍細胞の正常な細胞分裂には影響を及ぼさない、すなわち、この種類の正常細胞に毒性作用を示さないことを見出した。
【0012】
式(I)の化合物は、参照化合物(ビスモデギブ)と比較した場合に観察された応答の改善を伴う、非常に強力な抗癌活性を示す。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、単独で、またはさらなる化合物もしくはさらなる療法と併用して、癌の予防または治療に使用するための式(I)の化合物に関する。この化合物は、医薬組成物に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、5日間のインキュベーション後のRH4横紋筋肉腫細胞の細胞増殖に対する、5つの式(I)の化合物(IUCT-0460、IUCT-0462、IUCT-0463、IUCT-0467、IUCT-0469)および参照化合物ビスモデギブの効果を、ビヒクル処理細胞(DMSO)に対するパーセンテージで表す(平均±SD)。すべての化合物は、10マイクロMの濃度で使用した。統計分析は、ANOVAを使用して実行した。統計的差異が観察されたため(p=0)、テューキー検定を使用してビヒクル対照とのペアワイズ比較を行った。符号:***=p値<0.001、**=p値<0.01および*=p値<0.05で統計的有意差あり。
図2図2は、横紋筋肉腫細胞株RH4における最も活性の高い化合物IUCT-0463および参照化合物ビスモデギブの用量反応曲線を示す。
図3図3は、5日間のインキュベーション後のRD横紋筋肉腫細胞の細胞増殖に対する、5つの式(I)の化合物(IUCT-0460、IUCT-0462、IUCT-0463、IUCT-0467、IUCT-0469)および参照化合物ビスモデギブの効果を(ビヒクル対照DMSOに対するパーセンテージで)表す(平均±SD)。すべての化合物は、10マイクロMの濃度で使用した。統計分析は、ANOVAを使用して実行した。統計的差異が観察されたため(p=0)、テューキー検定を使用してビヒクル対照とのペアワイズ比較を行った。符号:***=p値<0.001、**=p値<0.01および*=p値<0.05で統計的有意差あり。
図4図4は、横紋筋肉腫細胞株RDにおける最も活性の高い化合物IUCT-0463および参照化合物ビスモデギブの用量反応曲線を示す。
図5図5は、5日間のインキュベーション後の癌細胞株のパネルの細胞増殖に対する、最も活性の高い化合物IUCT-0463(10マイクロM)の効果を(ビヒクル対照DMSOに対するパーセンテージで)表す(平均±SD)。分析した細胞株は次のとおりである:RD、RH4およびRH30(横紋筋肉腫、RMS);SKNBE2およびSKNAS(神経芽腫、NBL);U373MG(膠芽腫、GBL);SKES1およびTC71(ユーイング肉腫、EWING);PC3(前立腺癌、PC);HeLa(類上皮子宮頸癌、ECC);A549(肺癌、LC);MDA-MB231(乳癌、BC)およびHCT116(結腸直腸癌、CC)。統計分析は、ANOVAを使用して実行した。統計的差異が観察されたため(p=0)、テューキー検定を使用してビヒクル対照とのペアワイズ比較を行った。符号:***=p値<0.001、**=p値<0.01および*=p値<0.05で統計的有意差あり。
【発明の具体的説明】
【0015】
本発明は、癌の予防または治療に使用するための、式(I)を有する化合物、ならびにその塩および立体異性体に関する:
【化1】
【0016】
式中、
は、水素;OH;NH;SH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;トリハロアルキル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;N;SR;SOH;SO;SONRアリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環であり、
【0017】
xは、y、zとは独立して、1、2、3、4または5であり、
【0018】
置換基Rを有するフェニル環は、置換基Rを有するフェニル環の「a」位についてオルト、メタまたはパラ位にあり、
【0019】
は、水素;OH;NH;SH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;トリハロアルキル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;NO;N;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環であり、
【0020】
yは、x、zとは独立して、1、2、3、4または5であり、
【0021】
は、水素;OH;NH;SH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;トリハロアルキル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;NO;N;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環であり、
【0022】
zは、x、yとは独立して、1、2、3、4または5であり、
【0023】
は、水素;OH;NH;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖を介してSに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;トリハロアルキル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;NO;N;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環であり、
【0024】
は、水素;OH;NH;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;トリハロアルキル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;NO;N;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環であり、
【0025】
およびRは、互いに独立して、水素;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよい複素環;および場合により置換されていてもよいアリール、好ましくはフェニルまたはナフチルから選択され、
【0026】
基または基の一部としての各アリールは、場合によりHetに縮合されたフェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ビフェニルであり、各々が、OH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;N;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SR;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;および場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環から選択される1、2、3もしくは4個の置換基で場合により置換されていてもよく、
【0027】
基または基の一部としての各Hetは、5、6もしくは7個の環原子が場合によりアリールに縮合された単環式環であるか、または4、5もしくは6員環に連結された5、6もしくは7員環を含む二環式環構造であり、それぞれの環が、飽和、部分的に不飽和もしくは完全に不飽和であり、環のうちの少なくとも1つが、窒素、酸素および硫黄からそれぞれ独立して選択される1~5個のヘテロ原子を含有し、かつ、環のうちのいずれか1つが、OH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;N;NO;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SR;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールまたはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;および場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環からなる群からそれぞれ独立して選択される1、2、3もしくは4個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0028】
好ましい実施形態において、置換基Rを有するフェニル環は、置換基Rを有するフェニル環の「a」位についてパラ位にある。
【0029】
別の好ましい実施形態において、Rは水素である。
【0030】
さらに好ましい実施形態において、Rは水素;OH;NH;SH;F;Cl;Br;I;またはメチルである。
【0031】
さらに好ましい実施形態において、Rは、アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環である。
【0032】
さらに好ましい実施形態において、Rは、水素、F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;OR;アリール;またはHetである。
は、F;Cl;Br;またはIである。
は、水素;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルキル鎖を介してNに連結された、場合により置換されていてもよいシクロアルキル;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環である。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、RはORである。
【0034】
さらに好ましい実施形態において、RはFである。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、Rは、アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;または、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環である。
【0036】
さらに好ましい実施形態において、RはHである。
【0037】
前述の各実施形態は互いに独立して考慮され得る、または各実施形態は1つ以上の他の実施形態と組み合わせられ得ることに留意されたい。
【0038】
さらに好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、表1の化合物から選択される。
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
好ましくは、式(I)の化合物は、N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)-5-(ピリジン-2-イル)チオフェン-2-スルホンアミドである。
【0041】
本説明の目的のために、式(I)の化合物中のラジカル(R)を定義する際、特に明記しない限り、以下の用語はさらに以下のように定義され、そのように適用される。
【0042】
「複素環式環」または「複素環」という用語は、本明細書においては交換可能に使用され、複数の原子が複数の共有結合を介して環を形成し、環が炭素原子以外の少なくとも1つの原子を含む任意の化合物を指す。特に企図される複素環塩基としては、非炭素原子として窒素、酸素および硫黄からそれぞれ独立して選択される少なくとも1~4個のヘテロ原子を含有する4、5および6員環(例えば、イミダゾール、ピロール、トリアゾール、ジヒドロピリミジン)が挙げられる。さらに企図される複素環は、別の環または複素環に縮合(すなわち、共有結合)され得るので、本明細書で使用される場合、「縮合複素環」または「縮合複素環塩基」と呼ばれる。特に企図される縮合複素環としては、6員環に縮合された5員環(例えば、プリン、ピロロ[2,3-d]ピリミジン)、および別の6員以上の環に縮合された6員環(例えば、ピリド[4,5-d]ピリミジン、ベンゾジアゼピン)が挙げられる。さらに企図される複素環塩基は、芳香族であり得るか、または1つ以上の二重もしくは三重結合を含み得る。さらに、企図される複素環塩基および縮合複素環は、1つ以上の位置でさらに置換され得る。環のうちのいずれか1つは、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルキルカルボニル、アミノ、モノまたはジC1-6アルキルアミノ、アジド、メルカプト、ポリハロC1-6アルキル、ポリハロC1-6アルコキシおよびC3-7シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される1、2または3個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0043】
本明細書において、「Het」は、5、6もしくは7個の環原子が場合によりアリールに縮合された単環式環であるか、または4、5もしくは6員環に連結された5、6もしくは7員環を含む二環式環構造である基または基の一部として定義され、それぞれの環は、飽和、部分的に不飽和もしくは完全に不飽和であり、環のうちの少なくとも1つは、窒素、酸素および硫黄からそれぞれ独立して選択される1~5個のヘテロ原子を含有し、かつ、環のうちのいずれか1つは、OH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;N;NO;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SR;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールまたはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;および場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環からなる群からそれぞれ独立して選択される1、2、3もしくは4個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0044】
「互変異性体」または「互変異性型」という用語は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能な異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られている)は、ケト-エノール異性化およびイミン-エナミン異性化などのプロトンの移動を介した相互変換を含む。原子価互変異性体は、いくつかの結合電子の再編成による相互変換を含む。
【0045】
「位置異性体」という用語は、構造異性体(structual isomer)、または異なる接続順序で原子が結合されている同一分子式を有する分子を指すという意味で構造異性体(constitutional isomer)を指す。
【0046】
「変換」という用語は、生成物(予想される最終生成物または副産物)に、またはさらには分解生成物に変換される出発物質のパーセンテージを指す。
【0047】
「収量」という用語は、出発分子の数あたりの生成物の合成分子の数である。多段階合成では、すべての単一段階の収量を掛けることによって収量を計算することができる。
【0048】
「アノマー純度」という用語は、化合物の特定のアノマーの量を、混合物中に存在するその化合物のすべてのアノマーの総量で割って100を掛けたものを指す。
【0049】
「中間体」または「複数の中間体(intermediates)」という用語は、好適な追加の化学反応によって最終生成物に変換され得る任意の化合物を指す。本発明の化合物はまた、中間化合物と見なすことができ、それ自体も本発明の範囲に含まれる。
【0050】
ヒドロキシ基を含有する式(I)の化合物のインビボ加水分解性エステルとしては、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルなどの無機エステル、ならびにエステルのインビボ加水分解の結果分解されて親ヒドロキシ基となる関連化合物が挙げられる。α-アシルオキシアルキルエーテルの例としては、アセトキシメトキシおよび2,2-ジメチルプロピオニルオキシ-メトキシが挙げられる。ヒドロキシのためのインビボ加水分解性エステル形成基の選択には、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置換ベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキル炭酸エステルとなる)、ジアルキルカルバモイルおよびN-(ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル(カルバミン酸エステルとなる)、ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルが含まれる。ベンゾイル上の置換基の例としては、環窒素原子からメチレン基を介してベンゾイル環の3位または4位に連結されたモルホリノおよびピペラジノが挙げられる。
【0051】
治療的使用のために、式(I)の化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容されるものである。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製における使用を見出すことができる。薬学的に許容されるか否かにかかわらず、すべての塩が本発明の範囲に含まれる。
【0052】
上記の薬学的に許容される酸および塩基付加塩は、式(I)の化合物が形成され得る治療的に活性な非毒性酸および塩基付加塩形態を含むことを意味する。薬学的に許容される酸付加塩は、塩基形態をかかる適切な酸で処理することによって都合よく得ることができる。例えば、適切な酸としては、ハロゲン化水素酸などの無機酸、例えば、塩酸または臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの酸;または、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわちエタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(すなわちヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモン酸などの有機酸が含まれる。
【0053】
逆に、これらの塩形態は、適切な塩基で処理することにより遊離塩基形態に変換され得る。
【0054】
酸性プロトンを含有する式(I)の化合物はまた、適切な有機および無機塩基で処理することにより、それらの無毒性金属またはアミン付加塩形態に変換され得る。適切な塩基塩形態としては、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよび土類アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩など)、有機塩基との塩(ベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、ヒドラバミン塩など)、および、例えばアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩が含まれる。
【0055】
先に使用された「付加塩」という用語はまた、式(I)の化合物およびその塩のいずれかが形成され得る溶媒和物を含む。かかる溶媒和物は、例えば、水和物、アルコラートなどである。
【0056】
先に使用された「第四級アミン」という用語は、式(I)の化合物または式(I)Iの化合物のいずれかの塩基性窒素と、例えば、場合により置換されていてもよいハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アリールアルキル(ヨウ化メチルまたはヨウ化ベンジルなど)などの適切な四級化剤との間の反応によって式(I)の化合物が形成され得る第四級アンモニウム塩を定義する。アルキルトリフルオロメタンスルホネート、アルキルメタンスルホネートおよびアルキルp-トルエンスルホネートなど、良好な脱離基を有する他の反応物を使用することもできる。第四級アミンは正に帯電した窒素を有する。薬学的に許容される対イオンとしては、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロアセテートおよびアセテートが挙げられる。選択した対イオンは、イオン交換樹脂を使用して導入可能である。
【0057】
本化合物のN-オキシド形態は、1個または数個の窒素原子がいわゆるN-オキシドに酸化される式(I)の化合物を含むことを意味する。
【0058】
式(I)の化合物は、金属結合、キレート化、錯体形成特性を有し得、したがって、金属錯体または金属キレートとして存在し得ることが理解される。式(I)の化合物のかかるメタル化誘導体は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0059】
式(I)の化合物のうちの一部の化合物はまた、それらの互変異性体形態で存在し得る。かかる形態は、上記式において明示的に示されていないが、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0060】
本明細書に記載の化合物は、非対称中心を有し得、ラセミ体、ラセミ混合物、個々のジアステレオマーまたはエナンチオマーとして生じ得、すべての異性体形態が本発明に含まれる。キラル中心を有する本発明の化合物は、光学活性形態およびラセミ形態で存在し、単離され得る。一部の化合物は多型を示し得る。
【0061】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、すべての炭素-炭素結合が単結合である任意の直鎖、分岐鎖または環状炭化水素を指す。アルキル鎖は、OH;NH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;N;NO;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SR;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;および場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環、によって場合により置換されていてもよい。
【0062】
「アルケニル」および「場合により置換されていてもよいアルケニル」という用語は、本明細書においては交換可能に使用され、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する任意の直鎖、分岐鎖または環状アルキルを指す。アルケニル鎖は、OH;NH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;N;NO;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SR;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;および場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環、によって場合により置換されていてもよい。
【0063】
さらに、「アルキニル」および「場合により置換されていてもよいアルキニル」という用語は、本明細書においては交換可能に使用され、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する任意の直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキルまたはアルケニルを指す。アルキニル鎖は、OH;NH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;N;NO;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SR;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;および場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環、によって場合により置換されていてもよい。
【0064】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、場合によりHetに縮合されたフェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ビフェニルである基または基の一部であり、各々は、OH;F;Cl;Br;I;メチル;場合により置換されていてもよいアルキル鎖;場合により置換されていてもよいアルケニル鎖;場合により置換されていてもよいアルキニル鎖;場合により置換されていてもよいシクロアルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルケニル;場合により置換されていてもよいシクロアルキニル;OR;NR;CN;COR;CONR;CO;C(S)OR;OCONR;OCOR;OCO;OC(S)OR;N;NHCONR;NHCOR;NRCO;NHCO;NHC(S)OR;NO;SR;SOH;SO;SONR;アリール;Het;場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アリールもしくはHetによって連結された、場合により置換されていてもよいアリール;および場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖によって連結された、場合により置換されていてもよい複素環から選択される1、2、3もしくは4個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0065】
本明細書で使用される「置換されている」という用語は、原子または化学基(例えば、H、NHまたはOH)が官能基で置換されていることを指し、特に企図される官能基としては、求核性基(例えば、-NH、-OH、-SH、-NCなど)、求電子性基(C(O)OR、C(X)OHなど)、極性基(-OHなど)、非極性基(アリール、アルキル、アルケニル、アルキニルなど)、イオン性基(例えば、-NH )およびハロゲン(例えば、-F、-Cl)、ならびにそれらのすべての化学的に合理的な組み合わせが挙げられる。したがって、「官能基」という用語および「置換基」という用語は、本明細書においては交換可能に使用され、求核性基(例えば、-NH、-OH、-SH、-NC、-CNなど)、求電子性基(C(O)OR、C(X)OH、C(ハロゲン)ORなど)、極性基(-OHなど)、非極性基(アリール、アルキル、アルケニル、アルキニルなど)、イオン性基(例えば、-NH )およびハロゲンを指す。
【0066】
-OH、-NHなどの官能基は、当技術分野で知られているもの(GREENE'S PROTECTIVE. GROUPS IN ORGANIC. SYNTHESIS. Fourth Edition. PETER G. M. WUTS.およびTHEODORA W. GREENE. 2007. Wiley-Interscience)などの保護基(PGと略記される)を組み込むことができる。例として、1,2-ジオールを含むヒドロキシル保護(Greene’s(上記を参照)、16~366ページ)は、エーテル、エステル、環状アセタール、環状ケタールおよびシリル誘導体の形態であり得、例えば、限定されるものではないが、メチルエーテル、メトキシメチルエーテル、メチルチオメチルエーテル、t-ブチルチオメチルエーテル、(フェニルジメチルシスリメトキシメチル)エーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p-メトキシベンジルオキシメチルエーテル、p-ニトロベンジルオキシメチルエーテル、o-ニトロベンジルオキシメチルエーテル、(4-メトキシフェノキシ)メチルエーテル、グアヤコールメチルエーテル(guaiacolmethyl ether)、t-ブトキシメチルエーテル、4-ペンテニルオキシメチルエーテル、シロキシメチルエーテル、2-メトキシエトキシメチルエーテル、2,2,2-トリクロロエトキシメチルエーテル、ビス(2-クロロエトキシ)メチルエーテル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテル、メントキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、3-ブロモテトラヒドロピラニルエーテル、テトラヒドロチオピラニルエーテル、1-メトキシシクロヘキシルエーテル、4-メトキシテトラヒドロピラニルエーテル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S-ジオキシドエーテル、1-[(2-クロロ-4-メチル)フェニル]-4-メトキシピペリジン-4-イルエーテル、1,4-ジオキサン-2-イルエーテル、1,4-ジオキサン-2-イルエーテル、テトラヒドロチオフラニルエーテル、2,3,3a,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-7,8,8-トリメチル-4,7-メタノベンゾフラン-2-イルエーテル、1-エトキシエチルエーテル、1-(2-クロロエトキシ)エチルエーテル、1-ヒドロキシエチルエーテル、2-ブロモエチルエーテル、1-[2-(トリメチルシリル)エトキシ]エチルエーテル、1-(2-シアノエトキシ)エチルエーテル、プレニルエーテル、シンナミルエーテル、プロパルギルエーテル、p-ニトロフェニルエーテル、1-メチル-1-メトキシエチルエーテル、1-メチル-1-ベンジルオキシエチルエーテル、1-メチル-1-1-ベンジルオキシ-2-フルオロエチルエーテル、2,2,2-トリクロロエチルエーテル、2-トリメチルシリルエチルエーテル、2-(フェニルセレニル)エチルエーテル、t-ブチルエーテル、アリルエーテル、p-クロロフェニルエーテル、p-メトキシフェニルエーテル、2,4-ジニトロフェニルエーテル、ベンジルエーテル、p-メトキシルベンジルエーテル、3,4-ジメトキシベンジルエーテル、2,6-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジルエーテル、p-ニトロベンジルエーテル、p-ブロモベンジルエーテル、p-クロロベンジルエーテル、2,6-ジクロロベンジルエーテル、2,4-ジニトロベンジルエーテル、フルオラスベンジルエーテル(fluorous benzyl ether)、トリメチルシリルキシリルエーテル、p-フェニルベンジルエーテル、クミルエーテル、p-アジドベンジルエーテル、2,6-ジフルオロベンジルエーテル、p-シアノベンジルエーテル、p-フェニルベンジルエーテル、2-ピコリルエーテル、4-ピコリルエーテル、3-メチル-2-ピコリルN-オキシドエーテル、ジフェニルメチルエーテル、p,p’-ジニトロベンズヒドリルエーテル、5-ジベンゾスベリルエーテル、
トリフェニルメチルエーテル、α-ナフチルジフェニルメチルエーテル、p-メトキシフェニルジフェニルメチルエーテル、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチルエーテル、トリ(p-メトキシフェニル)フェニルメチルエーテル、4-(4’-ブロモフェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチルエーテル、4,4’,4’’-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチルエーテル、ペンタジエニルニトロベンジル、p-アジドベンジルエーテル、p-(メチルスルフィニル)ベンジルエーテル、2-ナフチルメチルエーテル、2-キノリニルメチルエーテル、1-ピレニルメチルエーテル、4-メトキシジフェニルメチルエーテル、4-フェニルジフェニルメチルエーテル、α-ナフチルジフェニルメチルエーテル、p-メトキシフェニルジフェニルメチルエーテル、アントリルエーテル、9-フェニルチオキサンチルエーテルなど;トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジメチルヘキシルシリルエーテル、2-ノルボルニルジメチルシリルエーテル、t-ブチルジメチルシリルエーテル、t-ブチルジフェニルシリルエーテル、トリベンジルシリルエーテル、トリ-p-キシリルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、ジフェニルメチルシリルエーテル、ジ-t-ブチルメチルシリルエーテル、ビス(t-ブチル)-1-ピレニルメトキシシリルエーテル、トリス(トリメチルシリル)シリルエーテル、(2-ヒドロキシスチリル)ジメチルシリルエーテル、t-ブトキシジフェニルシリルエーテル、1,1,3,3-テトライソプロピル-3-[2-(トリフェニルメトキシ)エトキシ]ジシロキサン-1-イルエーテル、フルオラスシリルエーテルなどのシリルエーテル;ギ酸エステル、ギ酸ベンゾイル、酢酸エステル、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、トリクロロアセトイミデート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、フェノキシアセテート、p-クロロフェニルアセテート、フェニルアセテート、ジフェニルアセテート、3-フェニルプロピオネート、ビスフルオラス鎖型プロパノイルエステル、4-ペンテノエート、レブリネート、ピバロエート、アダマントエート、クロトネート、4-メトキシルクロトネート、ベンゾエート、p-フェニルベンゾエート、メシトエート、4-ブロモベンゾエート、2,5-ジフルオロベンゾエート、p-ニトロベンゾエート、ピコリネート、ニコチネート、2-(アジドメチル)ベンゾエート、4-アジドブチレート、(2-アジドメチル)フェニルアセテート、2-{[(トリチルチオ)オキシ]メチル}ベンゾエート、2-(アリルオキシ)フェニルアセテート、2-(プレニルオキシメチル)ベンゾエート、4-ベンジルオキシブチレート、4-トリアルキルシロキシブチレート、4-アセトキシ-2,2-ジメチルブチレート、2,2-ジメチル-4-ペンタノエート、2-ヨードベンゾエート、4-ニトロ-4-メチルペンタノエート、o-(ジブロモメチル)ベンゾエート、2-ホルミルベンゼンスルホネート、4-(メチルチオメトキシ)ブチレート、2-(メチルチオメトキシメチル)ベンゾエート、2-(クロロアセトキシメチル)ベンゾエート、2-[(2-クロロアセトキシ)エチル]ベンゾエート、2-[2-(ベンジルオキシ)エチル]ベンゾエート、2-[2-(4-メトキシベンジルオキシ)エチル]ベンゾエート、2,6-ジクロロ-4-メチルフェノキシアセテート、2,6-ジクロロ-4-(1、1,3,3-テトラメチルブチル)フェノキシアセテート、クロロジフェニルアセテート、イソブチレート、
モノスクシオネート、チグロエート、o-(メトキシカルボニル)ベンゾエート、p-ベンゾエート、α-ナフトエート、ニトレート、アルキルN,N,N’,N’-テトラメチルホスホロジアミデート、2-クロロベンゾエートなどのエステル;硫酸エステル、アリルスルホネート、メタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トシレート、2-トリフルオロメチルスルホネートなどのスルホン酸エステル;アルキルメチルカーボネート、メトキシメチルカーボネート、9-フルオロメチルカーボネート、エチルカーボネート、ブロモエチルカーボネート、2-(トリメチルシリル)エチルカーボネート、イソブチルカーボネート、t-ブチルカーボネート、ビニルカーボネート、アリルカーボネート、プロパルギルカーボネート、p-ニトロフェニルカーボネート、ベンジルカーボネート、2-ダンシルエチルカーボネート、フェナシルカーボネート、メチルジチオカーボネート、S-ベンジルチオカーボネートなどの炭酸エステル;ジメチルチオカルバメート、N-フェニルカルバメートなどのカルバミン酸エステル;メチレンアセタール、エチリデンアセタール、t-ブチルメチリデンアセタール、1-t-ブチルエチリジンケタール、1-フェニエチリデンケタール、2-(メトキシカルボニル)エチリデンアセタール、2-(t-ブチルカルボニル)エチリデンアセタール、フェニルスルホニルエチリデンアセタール、3-(ベンジルオキシ)プロピリデンアセタール、イソプロピリデンアセタールまたはアセトニド、シクロペンチリデンアセタール、ベンジリデンアセタール、p-メトキシベンジリデンアセタール、メシチレンアセタール、ナフトアルデヒドアセタール、9-アントラセンアセタール、ベンゾフェノンケタールなどの環状アセタールおよびケタール;ショウノウケタール、メントンケタールなどのキラルケトン;メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール、ジメトキシメチレンオルトエステル、メチリデンオルトエステル、フタリドオルトエステル、1,2-ジメトキシエチリデンオルトエステル、2-オキサシクロペンチリデンオルトエステル、ブタン2,3-ビスアセタール、シクロヘキサン-1,2-ジアセタール、ジスピロケタールなどの環状オルトエステル;ジ-t-ブチルシリレン基、ジアルキルシリレン基(diakkylsilylene group)、1,3-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサニリデン)誘導体、1,1,3,3-テトラ-t-ブトキシジシロキサニリデン誘導体、メチレン-ビス-(ジイソプロピルシラノキサニリデン、1,1,4,4-テトラフェニリル-1,4-ジシラニリデン、o-キシリルエーテル、3,3’-オキシビス(ジメトキシトリチル)エーテルなどのシリル誘導体;環状炭酸エステル;メチルボロネート、エチルボロネートなどの環状ホウ酸エステルなどが挙げられる。
【0067】
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよび複素環について言及する場合、「場合により置換されていてもよい」という用語は、オキソ、エチレンジオキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、カルボキシル、ハロゲン、チエニル、アセチル、1-オキソプロピル、2-オキソプロピル、2-オキソブチル、3-オキソブチル、3-オキソペンチル、4-オキソペンチル、4-オキソヘキシル、5-オキソヘキシル、エチレンジオキシメチル、1,1-エチレンジオキシエチル、2,2-エチレンジオキシエチル、1,1-エチレンジオキシプロピル、2,2-エチレンジオキシプロピル、3,3-エチレンジオキシプロピル、1,1-エチレンジオキシブチル、2,2-エチレンジオキシブチル、3,3-エチレンジオキシブチル、4,4-エチレンジオキシブチル、3,3-エチレンジオキシペンチル、4,4-エチレンジオキシヘキシル、5,5-エチレンジオキシヘキシル、アセチルオキシメチル、2-アセチルオキシエチル、3-アセチルオキシプロピル、3-アセチルオキシブチル、4-アセチルオキシブチル、3-プロピオニルオキシブチル、3-ブチリルオキシブチル、3-バレリルオキシペンチル、3-ヘキサノイルオキシヘキシル、4-アセチルオキシペンチル、5-アセチルオキシペンチル、4-アセチルオキシヘキシル、5-アセチルオキシヘキシル、6-アセチルオキシヘキシル、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、ペンチルオキシメチル、ヘキサイルオキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、2-プロポキシエチル、2-ブトキシエチル、2-ペンチルオキシエチル、2-ヘキシルオキシエチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、2-メトキシブチル、4-エトキシブチル、3-メトキシペンチル、5-エトキシペンチル、4-メトキシヘキシル、6-エトキシヘキシル、メチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、ブチルチオメチル、ペンチルチオメチル、ヘキシルチオメチル、1-メチルチオエチル、2-メチルチオエチル、2-エチルチオエチル、2-メチルチオプロピル、3-メチルチオプロピル、3-エチルチオブチル、4-ブチルチオブチル、5-メチルチオペンチル、6-エチルチオヘキシル、カルボキシメチル、1-カルボキシエチル、2-カルボキシエチル、2-カルボキシプロピル、3-カルボキシプロピル、4-カルボキシブチル、5-カルボキシペンチル、6-カルボキシヘキシル、フルオロメチル、ブロモメチル、クロロメチル、ヨードメチル、2-クロロエチル、2-ブロモプロピル、3-ヨードプロピル、4-フルオロブチル、5-クロロペンチル、6-ブロモヘキシル、2-チエニルメチル、1-(2-チエニル)エチル、2-(2-チエニル)エチルなどを有する基を包含することが意図される。
【0068】
「アミノ酸」という用語は、少なくとも1つのアミノ基-NH-および1つのカルボキシル基-COOHを含有するクラスの有機化合物のいずれかを指す。これらの化合物は、ペプチドに存在する天然アミノ酸である場合もあれば、アミノ基、カルボキシル基または側鎖に任意の置換を含む場合もある。それらはまた、ペプチド天然アミノ酸の異なるキラリティーを提示するか、または直鎖もしくは環状の異なる骨格を有することができるが、前述のように、少なくとも1つのアミノ基および1つのカルボキシル基を提示しなければならない。アミノ酸は、当業者に知られているもののような、官能基または保護基を組み込むことができる(T.W. Greene、上記を参照)。好ましいアミノ酸としては、限定されるものではないが、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。
【0069】
好ましい実施形態では、上記実施形態のいずれかによる、式(I)の化合物は、単独でまたは併用して、対象における癌を予防および/または治療するのに使用するためのものであり、この癌は、基底細胞癌、黒色腫、髄芽腫、星状細胞腫、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽腫、神経芽腫、消化管腫瘍、白血病、横紋筋肉腫および骨肉腫から選択される。好ましくは、対象はヒト対象である。
【0070】
本開示はまた、対象における癌、好ましくは基底細胞癌、黒色腫、髄芽腫、星状細胞腫、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽腫、神経芽腫、消化管腫瘍、白血病、横紋筋肉腫および骨肉腫から選択される癌、を予防または治療する方法であって、可能な実施形態のいずれかにおいて先に定義されているような、上記実施形態のいずれかによる式(I)の化合物を治療上有効量で上記対象に投与することを含む方法に関する。好ましくは、対象はヒト対象である。
【0071】
本開示はまた、対象における癌、好ましくは基底細胞癌、黒色腫、髄芽腫、星状細胞腫、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽腫、神経芽腫、消化管腫瘍、白血病、横紋筋肉腫および骨肉腫から選択される癌、を予防または治療するための薬剤の製造における、上記実施形態のいずれかによる式(I)の化合物の使用に関する。好ましくは、対象はヒト対象である。
【0072】
別の実施形態において、上記実施形態のいずれかによる式(I)の化合物は、化学療法剤、代謝拮抗薬、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞障害性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、キナーゼ阻害剤、経路特異的阻害剤(Notch経路阻害剤)、抗ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン物質、リボザイム、ワクチン、抗血管新生剤、抗ウイルス剤またはそれらの組み合わせから選択されるさらなる化合物と併用される。
【0073】
別の実施形態において、上記実施形態のいずれかによる式(I)の化合物は、医薬組成物に含まれる。
【0074】
別の実施形態において、上記実施形態のいずれかによる式(I)の化合物は、経口、直腸、鼻、眼、局所、膣、非経口、経皮、腹腔内、肺内または鼻内経路によって投与される。
【0075】
別の実施形態において、上記実施形態のいずれかによる式(I)の化合物は、外科的療法、放射線療法、免疫療法(例えば、抗体または免疫細胞に基づく)、エピジェネティック療法(例えば、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、miRNAを使用する)またはそれらの組み合わせと併用して、癌の予防または治療に使用される。
【0076】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【実施例
【0077】
実施例1
表1においてIUCT-0460、IUCT-0462、IUCT-0463、IUCT-0467およびIUCT-0469(すべて式(I)に包含される)と称した化合物は、横紋筋肉腫細胞株RH4において参照化合物ビスモデギブよりも優れた抗増殖活性を示した。インビトロ試験を使用して測定を行い、5日間のインキュベーション後のメチルバイオレット染色に基づいて、前述の薬物または対照ビヒクル(DMSO)による細胞増殖を測定した。手順は96ウェルプレート内で行い、4%パラホルムアルデヒド(PFA)により室温で30分間細胞を固定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した後、メチルバイオレット(PBS中1.5%w/vで作製したストック溶液の1/25希釈溶液)により室温で30分間細胞を染色した。5回洗浄し、酢酸(水中15%)を加えた後、590nmで分光光度計においてプレートを読み取った。すべての条件を8つの独立したウェルで試験し、結果をすべての複製の平均として表した(図1)。
特に化合物IUCT-0463について、同じ手順を使用したさらなる測定を行い、細胞株RH4における1~50μMの用量反応曲線を得た。IUCT-0463で処理した細胞について得られた曲線は、参照化合物ビスモデギブと比較して、抗腫瘍活性の明らかな改善を示した(図2)。
【0078】
実施例2
表1においてIUCT-0460、IUCT-0462、IUCT-0463、IUCT-0467およびIUCT-0469(すべて式(I)に包含される)と称した化合物は、横紋筋肉腫細胞株RDにおいて参照化合物ビスモデギブよりも優れた抗増殖活性を示した。インビトロ試験を使用して測定を行い、5日間のインキュベーション後のメチルバイオレット染色に基づいて、前述の薬物または対照ビヒクル(DMSO)による細胞増殖を測定した。手順は96ウェルプレート内で行い、4%パラホルムアルデヒド(PFA)により室温で30分間細胞を固定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した後、メチルバイオレット(PBS中1.5%w/vで作製したストック溶液の1/25希釈溶液)により室温で30分間細胞を染色した。5回洗浄し、酢酸(水中15%)を加えた後、590nmで分光光度計においてプレートを読み取った。すべての条件を8つの独立したウェルで試験し、結果をすべての複製の平均として表した(図3)。
特に化合IUCT-0463について、同じ手順を使用したさらなる測定を行い、細胞株RDにおける1~50μMの用量反応曲線を得た。IUCT-0463で処理した細胞において得られた曲線は、参照化合物ビスモデギブと比較して、抗腫瘍活性の明らかな改善を示した(図4)。
【0079】
実施例3
より良好な細胞増殖の減少を示す化合物(IUCT-0463)を使用して、このファミリーの化合物の他の癌に対する適用可能性を調べるために追加の試験を実行した。手順は96ウェルプレート内で行い、4%パラホルムアルデヒド(PFA)により室温で30分間細胞を固定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した後、メチルバイオレット(PBS中1.5%w/vで作製したストック溶液の1/25希釈溶液)により室温で30分間細胞を染色した。5回洗浄し、酢酸(水中15%)を加えた後、590nmで分光光度計においてプレートを読み取った。すべての条件を8つの独立したウェルで試験し、結果をすべての複製の平均として表した。これらの結果は、分析した細胞株の大半での高い抗増殖活性を示した(図5)。化合物IUCT-0463は、分析した細胞株の大半で細胞増殖の顕著な減少を示した。
【0080】
前例に照らして、式(I)の化合物に関する結果は、顕著な抗発癌活性を強く示し、化合物N-(1-(3-フルオロ-2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソピペリジン-3-イル)-5-(ピリジン-2-イル)チオフェン-2-スルホンアミドについて特に良好な応答を示し、すべての場合において、参照化合物ビスモデギブよりも優れていた。抗発癌活性は、2つの横紋筋肉腫細胞株および広範な種類の癌を含む癌細胞株のパネルにおいて観察され、それらの大部分の増殖が、式(I)の化合物を使用した処理によって著しく影響を受けた。
【0081】
まとめると、これらの結果は、式(I)の化合物のファミリーが、現在の治療プロトコルを改善し、したがって、癌患者の生存および生活の質を改善する可能性を有し得る、癌に対する新規かつ強力な新治療薬であることを強く示唆している。
【0082】
参考文献
- Allen BL, et al. The Hedgehog-binding proteins Gas1 and Cdo cooperate to positively regulate Shh signaling during mouse development. Genes Dev. 2007;21: 1244 -1257.
- Almazan-Moga A, et al. Hedgehog Pathway Inhibition Hampers Sphere and Holoclone Formation in Rhabdomyosarcoma. Stem Cells Int. 2017; 2017:7507380.
- Almazan-Moga A, et al. Ligand-dependent Hedgehog pathway activation in Rhabdomyosarcoma: the oncogenic role of the ligands. Br J Cancer. 2017;117(9):1314-1325.
- Catenacci DV, et al. Randomized Phase Ib/II Study of Gemcitabine Plus Placebo or Vismodegib, a Hedgehog Pathway Inhibitor, in Patients with Metastatic Pancreatic Cancer. J. Clin. Oncol. 2015. 33(36):4284-92.
- Gibert B, et al. Regulation by miR181 family of the dependence receptor CDON tumor suppressive activity in neuroblastoma. J Natl Cancer Inst. 2014; 13;106(11).
- Hayashi T, et al. Identification of transmembrane protein in prostate cancer by the Escherichia coli ampicillin secretion trap: expression of CDON is involved in tumor cell growth and invasion. Pathobiology. 2011;78(5):277-84.
- Leem YE, et al. CDO, an Hh-Coreceptor, Mediates Lung Cancer Cell Proliferation and Tumorigenicity through Hedgehog Signaling. PLos One. 2014; 9(11): e111701.
- Manzella G, et al. Interfering with Hedgehog Pathway: New Avenues for Targeted Therapy in Rhabdomyosarcoma. Curr Drug Targets 2015; 2016;17(11):1228-34.
- McMillan R, et al. Molecular pathways: the hedgehog signaling pathway in cancer. Clin. Cancer Res. 2012; 18: 4883-4888.
- Mille F, et al. The Shh receptor Boc promotes progression of early medulloblastoma to advanced tumors. Dev Cell. 2014; 13;31(1):34-47.
- Okada A, et al. Boc is a receptor for sonic hedgehog in the guidance of commissural axons. Nature. 2006; 444: 369 -373.
- Roma J, et al. Notch, Wnt, and Hedgehog pathways in rhabdomyosarcoma: from single pathways to an integrated network. Sarcoma 2012; 2012:695603.
- Teglund S, et al. Hedgehog beyond medulloblastoma and basal cell carcinoma. Biochim Biophys Acta. 2010; 1805:181-208.
- Tenzen T, et al. The cell surface membrane proteins Cdo and Boc are components and targets of the Hedgehog signaling pathway and feedback network in mice. Dev Cell.2006; 10:647-656.
- Giles W. Robinson et al. Vismodegib Exerts Targeted Efficacy Against Recurrent Sonic Hedgehog-Subgroup Medulloblastoma: Results from Phase II Pediatric Brain Tumor Consortium Studies PBTC-025B and PBTC-032, Journal of Clinical Oncology, 2015, 33 (24), 2646-2654.
図1
図2
図3
図4
図5