(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20240311BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240311BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240311BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C23C16/40
B32B7/025
B32B9/00 A
B32B15/04 Z
(21)【出願番号】P 2021500188
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2019067821
(87)【国際公開番号】W WO2020007900
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-14
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ボラン
(72)【発明者】
【氏名】フローレス,ジャン-シャルル
(72)【発明者】
【氏名】ラインケ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】スン,ミュン モ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ジン ウォン
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012555(JP,A)
【文献】特表2017-524811(JP,A)
【文献】特表2018-513271(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088108(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/055832(WO,A1)
【文献】特開2007-090803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
C23C 14/00-14/58
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のラミネート、すなわち
TiO
2、ZrO
2またはHfO
2を含む少なくとも2層、および
前記TiO
2、ZrO
2またはHfO
2を含む2層の間に設けられた
硫黄含有有機化合物を含む層を含む第1のラミネートと、
(b)金属層と、
(c)第2のラミネート、すなわち
ZnOを含む少なくとも2層、
前記ZnOを含む2層の間に設けられた
硫黄含有有機化合物を含む層、および
亜鉛以外の金属ドーパントを含む第2のラミネートと、
を含むことを特徴とする、透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記TiO
2、ZrO
2またはHfO
2を含む層の厚さが1~10nmである、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記ZnOを含む層の厚さが1~10nmである、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記金属層がAl、Cu、AgまたはAuを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記金属層の厚さが3~30nmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記
硫黄含有有機化合物が有機チオールである、請求項5に記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記第1のラミネートの厚さが5~40nmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
さらに透明柔軟性基体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
シート抵抗が200Ω/sq以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
抵抗率が0.02Ω・cm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
半径1cmの円弧を描くように500回屈曲させた後の、フィルムのシート抵抗の増大が10%未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
基体上に、
(a)第1のラミネート、すなわち
TiO
2、ZrO
2またはHfO
2を含む少なくとも2層、および
前記TiO
2、ZrO
2またはHfO
2を含む2層の間に設けられた
硫黄含有有機化合物を含む層を含む第1のラミネートと、
(b)金属層と、
(c)第2のラミネート、すなわち
ZnOを含む少なくとも2層、
前記ZnOを含む2層の間に設けられた
硫黄含有有機化合物を含む層、および
亜鉛以外の金属ドーパントを含む第2のラミネートと、
を堆積させる工程を有することを特徴とする、透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項13】
原子層堆積法により前記堆積を行う、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
100~220℃の温度で前記堆積を行う、請求項1
3に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルムを、光エレクトロニクス装置の電極として使用することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム、特に有機-無機ハイブリッド透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性フィルムは、太陽電池や発光ダイオード等の光エレクトロニクス装置の電極として広く使用されている。一般に、酸化インジウムスズ(ITO)は、導電性フィルムの材料として使用されるが、ITOフィルムは脆いために、フレキシブルディバイスへの適用には限界がある。これに代わるものとして、超格子(superlattice)が用いられる。
【0003】
米国特許第5523585号明細書には、超格子構造についての開示がある。同文献によると、電子の移動方向に、第1および第2の半導体材料領域を周期的に繰り返し形成することにより超格子構造が形成される。しかしながら、その導電性と柔軟性には制限がある。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0212336号明細書には、高い導電性を有する導電性積層体が開示されている。 しかしながら、この積層体も脆性のため、曲げ(屈曲)に敏感である。
【0005】
特開2016-012555号公報には、透明導電性フィルムが開示され、柔軟性であるものとして記載されている。しかしながら、使用される金属酸化物は脆く、小径を形成する曲げをクラック発生なしで行うことは不可能である。
【0006】
米国特許出願公開第2017/ 0121812号明細書は、湿分および酸素を遮蔽する用途に用いられる有機-無機超格子を開示している。しかしながら、同文献に記載の方法により得られる透明導電性フィルムは、どの程度透明であるかについての記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5523585号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0212336号明細書
【文献】特開2016-012555号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/ 0121812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、屈曲後にも導電性を維持する透明導電性フィルムを提供することにある。また、本発明は、高品質のフィルムを簡単かつ確実(安定的)に製造する方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、
(a)第1のラミネート、すなわち
TiO2、ZrO2またはHfO2を含む少なくとも2層、および
上記のTiO2、ZrO2またはHfO2を含む少なくとも2層の間に設けられた有機化合物を含む層を含む第1のラミネートと、
(b)金属層と、
(c)第2のラミネート、すなわち
ZnOを含む少なくとも2層、
上記のZnOを含む2層の間に設けられた有機化合物を含む層、および
亜鉛以外の金属ドーパントを含む第2のラミネートと、
を含むことを特徴とする、透明導電性フィルムにより達成される。
【0010】
また、本発明の上記他の目的はさらに、
基体上に、
(a)第1のラミネート、すなわち
TiO2、ZrO2またはHfO2を含む少なくとも2層、および
上記のTiO2、ZrO2またはHfO2を含む少なくとも2層の間に設けられた有機化合物を含む層を含む第1のラミネートと、
(b)金属層と、
(c)第2のラミネート、すなわち
ZnOを含む少なくとも2層、
上記のZnOを含む2層の間に設けられた有機化合物を含む層、および
亜鉛以外の金属ドーパントを含む第2のラミネートと、
を堆積させる工程を有することを特徴とする、透明導電フィルムの製造方法により達成される。
【0011】
本発明では、さらに本発明のフィルムを、光エレクトロニクス装置の電極として使用する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。各実施の形態の組み合わせも本願発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
本発明のフィルムは透明である。本発明において、透明とは、導電性フィルムに対し、面法線に平行に照射した(shined)光の、波長550nmの光量の少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%が透過することを意味する。
【0014】
本発明のフィルムは導電性であり、すなわちフィルムが電気伝導性である。フィルムのシート抵抗は、好ましくは1000Ω/sq以下、さらに好ましくは500Ω/sq以下、より好ましくは200Ω/sq以下、特に100Ω/sq以下とされる。フィルムの抵抗率は、好ましくは0.01Ω・cm以下、さらに好ましくは3・10-3Ω・cm以下、より好ましくは10-3Ω・cm以下、特に3・10-4Ω・cm以下とされる。フィルムのシート抵抗と抵抗率は両方とも、通常、温度20℃で測定したものである。好ましくは、フィルムのシート抵抗と抵抗率は、4探針法を用いて測定される。
【0015】
本発明のフィルムは、TiO2、ZrO2またはHfO2、好ましくはTiO2を含む複数層を含む第1のラミネートを含む。これらの複数層は、TiO2、ZrO2またはHfO2を少なくとも50質量%含むと好ましく、TiO2、ZrO2またはHfO2を少なくとも70質量%含むとさらに好ましく、特にTiO2、ZrO2またはHfO2を少なくとも90質量%含む。TiO2、ZrO2またはHfO2を含む層は、非晶質であっても、部分的に結晶性、または結晶性であってもよいが、結晶性であると好ましい。TiO2、ZrO2またはHfO2を含む少なくとも2層の膜厚は同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。TiO2、ZrO2またはHfO2を含む層の膜厚は、0.1~100nm、好ましくは1~10nm、特に2~5nmである。TiO2、ZrO2またはHfO2を含む層は、膜厚が均一であることが好ましい。すなわち、層の最も厚い部分が、最も薄い部分の2倍未満の膜厚であり、最も薄い部分の1.5倍未満であるとさらに好ましい。本発明のフィルムはTiO2、ZrO2またはHfO2を含む層を少なくとも2層、好ましくは少なくとも3層、さらに好ましくは少なくとも5層、特に少なくとも10層含む。
【0016】
第1のラミネートは、さらに有機化合物を含む層を含む。フィルムがTiO2、ZrO2またはHfO2を含む層を2層より多く含む場合、同フィルムは、有機分子を含む層が、それぞれTiO2、ZrO2またはHfO2を含む2層の間に設けられるように、TiO2、ZrO2またはHfO2を含む層と有機化合物を含む層とを交互に含むことが好ましい。これらの層の間に他の層が存在することも可能である。有機化合物を含む層は、TiO2、ZrO2またはHfO2を含む層よりも薄いことが好ましい。有機化合物を含む層が1層を超過して存在する場合には、これらの厚さは同じであっても異なってもよいが、同じ厚さであることが好ましい。有機化合物を含む層の膜厚は、好ましくは0.05~5nm、さらに好ましくは0.1~1nmとされる。有機化合物を含む層は単分子層、すなわち、1分子程度の厚さ、または準単分子層とすることができる。
【0017】
有機化合物を含む層は、非金属を、98質量%を超えて、好ましくは99質量%を超えて、特に完全にまたは実質的に完全に含む。非金属がC、H、O、N、S、Seおよび/またはPとされると、より好ましい。有機化合物を含む層は、1種類の有機化合物を含むものであっても、1種類を超える、例えば2または3種類の有機化合物を含むものであってもよい。有機化合物を含む層は、硫黄含有化合物を含むことが好ましい。硫黄含有化合物に含まれる硫黄の酸化状態は、-2、-1または0(マイナス1、マイナス1、または零)であると好ましく、例としては有機チオール、有機チオエーテル、または有機ジチオエーテルを挙げることができ、有機チオールが好ましい。硫黄含有化合物は、1個、または1個を超過する硫黄原子を含んでもよい。硫黄含有化合物は、1個の硫黄原子を含むことが好ましい。硫黄含有化合物は、芳香族チオールであることがさらに好ましい。チオールは、分子の芳香族部分に直接結合するか、またはメチレン基などのリンカーを介して結合するものでもよく、芳香族基に直接結合するものであることが好ましい。より好ましい硫黄含有化合物は、チオフェノール誘導体である。硫黄含有分子は、1個または複数のヒドロキシル基をさらに含むことが好ましい。硫黄含有化合物のいくつかの好ましい例を以下に示す。
【0018】
【0019】
特に好ましくは、4-メルカプトフェノール(C-1)、4-メルカプトベンジルアルコール(C-2)、およびジメルカプトプロパノール(C-15)である。少なくとも1個の有機分子が硫黄を含有している限り、他の有機分子を用いて有機層を構成することも可能である。
【0020】
硫黄含有化合物は、少なくとも2個の硫黄原子を含むことが好ましく、2個の硫黄原子を含む化合物であることがさらに好ましい。硫黄含有化合物の硫黄原子は、前述したように官能基の他各部から独立している。チオールが好ましく、ジチオールがさらに好ましい。2個のチオール基が、ベンゼンなどの芳香族系に、直接またはメチレン基などのリンカーを介して結合している化合物が好ましい。2個の硫黄原子を含む硫黄含有化合物のいくつかの好ましい例を以下に示す。
【0021】
【0022】
有機化合物を含む層における有機化合物が、ヒドロキシル基、チオール基、または脱プロトン化可能な他の基を含む場合には、これらの基がプロトン化された状態を保つことも、脱プロトン化されて金属に配位することも、いくつかの基がプロトン化され、いくつかの基が脱プロトン化されて金属に配位することも可能である。
【0023】
第1のラミネートは、高い比誘電率を有する。室温、1MHzでの比誘電率は、好ましくは少なくとも10、さらに好ましくは少なくとも20、特に少なくとも50である。第1のラミネートの膜厚は、好ましくは2~60nm、さらに好ましくは5~40nm、特に10~30nmである。
【0024】
本発明のフィルムは、さらに金属層を含む。金属層は、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、InSn、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、OsIr、Pt、Au、Hg、Tl、Biを含んでよい。金属層は、Al、Cu、Ag、Au、特にAgを含むことが好ましい。フィルムは1種類の金属、または1種類を超過する、例えば2または3種類の金属を含んでもよい。金属層の金属導電性(metallic conductivity)は、好ましくは少なくとも105S/m、さらに好ましくは少なくとも106S/m、特に少なくとも107S/mとされる。金属層と第1のラミネートの間には他の層(複数層)が存在してもよい。しかしながら、金属層は、第1のラミネートに接することが好ましい。金属層は、可視光の透過を可能とするに十分な薄さを有するものとされる。金属層の厚さは、好ましくは1~100nm、さらに好ましくは2~50nm、より好ましくは3~30nm、特に5~20nm、例としては8~15nm、例えば10nmとされる。
【0025】
本発明のフィルムは、ZnO(酸化亜鉛)を含む少なくとも2層を含む第2のラミネートを含む。これらの層は、好ましくは少なくとも50質量%のZnOを含み、さらに好ましくは少なくとも70質量%のZnOを含み、特に少なくとも90質量%のZnOを含む。ZnOを含む層は、非晶質であっても、部分的に結晶性、または結晶性であってもよいが、結晶性であると好ましい。ZnOを含む少なくとも2層の膜厚は、同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。ZnOを含む層の膜厚は、好ましくは0.1~100nm、さらに好ましくは1~10nm、特に2~5nmである。ZnOを含む層は、膜厚が均一であることが好ましい。すなわち、層の最も厚い部分が、最も薄い部分の2倍未満の膜厚であり、最も薄い部分の1.5倍未満であるとさらに好ましい。本発明のフィルムはZnOを含む層を少なくとも2層、好ましくは少なくとも3層、さらに好ましくは少なくとも5層、特に少なくとも10層含む。
【0026】
第2のラミネートは、さらに有機化合物を含む層を含む。フィルムがZnOを含む層を2層より多く含む場合には、同フィルムの有機化合物を含む層が、それぞれZnOを含む2層の間に設けられるように、ZnOを含む層と、有機化合物を含む層とを交互に含むことが好ましい。これらの層の間に他の層が存在することも可能である。有機化合物を含む層は、ZnOを含む層よりも薄いことが好ましい。有機化合物を含む層が1層を超過して存在する場合には、これらの厚さは同じであっても異なってもよいが、同じ厚さを有することが好ましい。有機化合物を含む層の膜厚は、好ましくは0.05~5nm、さらに好ましくは0.1~1nmとされる。有機化合物を含む層は単分子層、すなわち、1分子程度の厚さ、または準単分子層とすることができる。
【0027】
第1のラミネートについて述べた有機化合物の定義および好ましい実施の形態は、第2のラミネートにおける有機化合物についても同様である。第1のラミネートの有機化合物は、第2のラミネートにおける有機化合物と同一であっても、異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0028】
第2のラミネートは、さらに亜鉛以外の金属ドーパントを含む。金属ドーパントとしては、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、InSn、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、OsIr、Pt、Au、Hg、Tl、Biを挙げることができる。金属ドーパントは、Mo、Ta、In、V、Sn、W、Mn、Al、Ga、Ti、ZrまたはHf、特にAlであることが好ましい。フィルムは、亜鉛以外に、1種類の金属ドーパントを含んでも、1種類を超過する、例えば2または3種類のドーパントを含んでもよい。
【0029】
フィルムは、亜鉛よりも少ない金属ドーパント(less metallic dopant)を含むことが一般的である。当該金属ドーパントと亜鉛との、原子比率は、好ましくは10-10~0.1、さらに好ましくは10-9~0.01、特に10-8~10-3とされる。金属ドーパントの少なくとも1部分は、フィルム中に移行(マイグレート)可能であると考えられているため、金属ドーパントを施与する位置に特に決まりはない。しかしながら、酸化亜鉛を含む各層と、有機化合物を含む各層との界面で金属ドーパントの濃度が最も高いことが好ましい。
【0030】
金属層と第2のラミネートの間には他の層(複数層)が存在してもよい。しかしながら、金属層は、第2のラミネートに接することが好ましい。このため、金属層は、通常は第1および第2のラミネートの間に設けられ、好ましくは第1および第2のラミネートの間であって、かつ第1および第2のラミネートに直接接するように設けられる。第2のラミネートの厚さは、好ましくは10~100nm、さらに好ましくは20~80nm、特に30~60nm、例えば35~50nmとされる。
【0031】
フィルムは、基体、特に透明な基体を有することが好ましい。基体は、第1のラミネートに対向して設けられることが好ましく、特に第1のラミネートと基体とが接するように設けられるとよい。種々の透明基体、例えばガラスまたはポリマーが使用され、ポリマーを用いることが好ましい。ポリマーの例としては、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレン-ジカルボン酸(PEN);ポリイミド;ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリアクリルアミド;ポリカーボネート、例えばポリ(ビスフェノールAカーボネート);ポリビニルアルコールおよびその誘導体、例えばポリ酢酸ビニルまたはポリビニルブチラール;ポリ塩化ビニル;ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP);ポリシクロオレフィン、例えばポリノルボルネン;ポリエーテルスルホン;ポリアミド、例えばポリカプロラクタムまたはポリ(ヘキサメチレンアジピンアミド);セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシルプロピルセルロースまたはニトロセルロース;ポリウレタン;エポキシ樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂;フェノールホルムアルデヒド樹脂が含まれる。ポリマーは、ポリ(エチレン-コ-ノルボルネン)またはポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)などのコポリマーを含む。ポリエステルおよびポリシクロオレフィンが好ましい。
【0032】
基体は、任意のサイズおよび形状とされる。好ましくは、基体はフィルムである。基体フィルムの厚さは用途によって決定される。バリアフィルムを10mm超える半径となるように曲げる(屈曲する)場合、基体フィルムは、好ましくは100~1000μm、さらに好ましくは100~500μm、例えば100~200μmの厚さを有する。バリアフィルムを10mm未満の半径となるように曲げる場合、基体フィルムは、好ましくは1~100μm、さらに好ましくは10~70μm、例えば40~60μmの厚さとされる。
【0033】
基体の表面は高平坦性を有すると好ましい。この明細書において、「高平坦性」という用語は、表面上の最高点が最低点より100nm以下、好ましくは50nm以下であることを意味する。平坦性は、原子間力顕微鏡を用いて、好ましくはタッピングモードで測定することができる。
【0034】
基体は、小さなすり傷、またはそれらの表面に付着している埃などの粒子が原因で、高平坦性を有しない場合も多い。したがって、ラミネートの傷などのダメージを避けるために、バリアフィルムが平坦化層をさらに含むことが好ましい。平坦化層は基体とラミネートとの間に設けられることがさらに好ましい。この場合、平坦化層は、基体とラミネートとを良好に一緒に保持するというさらなる役割を、特に曲げや加熱の際に果たすことができる。平坦化層は、有機ポリマー、例えばアクリレートまたはエポキシ、セラミック、例えばカーバイド(例えばSiC)、または有機-無機ハイブリッド材料、例えばポリアルキルシロキサンを含むことができる。有機ポリマーが好ましく用いられる。
【0035】
多くの場合、平坦化層は、これ構成する材料を、基体上に、ラミネートを配置する前に堆積させることにより製造される。有機ポリマーの場合、モノマーを含む液体を基体上に流延し、その後、例えば加熱またはUV開始により硬化させる。UV開始が好ましいが、硬化助剤、例えば官能化ベンゾフェノンをさらに含むモノマーを含む液体を用いることがさらに好ましい。モノマーを含む液体が、硬化により架橋した有機ポリマーとして得られるように、単官能または2官能モノマーの混合物を含むことが好ましい。セラミックを含む平坦化層は、通常、材料を基体上にスパッタすることにより得られる。有機-無機ハイブリッド材料を含む平坦化層は、有機-無機前駆体を含む溶液を基体上に流延して、溶媒を蒸発させ、例えば加熱により有機-無機前駆体を濃縮することにより得ることができる。このプロセスは、しばしば、ゾル-ゲル法と称される。有機-無機前駆体の例としては、アルキル-トリアルコキシシランが挙げられる。前駆体を、UV硬化性の側基、例えばアクリレートで官能化すると好ましい。このようにして、有機-無機ハイブリッド材料を架橋することができる。
【0036】
平坦化層を構成する材料は、基体材料とラミネート材料との間の弾性係数が、例えば10~30GPaのものであることが好ましい。弾性係数の決定方法は、ISO 527-1(プラスチック-引張特性(tensile properties)の決定(Plastics-Determination of tensile properties)、2012)に記載されている。
【0037】
本発明のフィルムは、機械適応力や引張り(strain)の作用を極めて受けにくい。フィルムは、半径0.5cmの円弧を描くように500回曲げた後も、シート抵抗の増加が50%未満であると好ましい。
【0038】
本発明のフィルムは様々な方法で製造され、各層は、溶液または蒸気を用いて堆積可能である。気相蒸着(vapor deposition)法が好ましく用いられる。適用可能な方法の例は化学蒸着(CVD)、熱蒸着、スパッタリング、または原子層堆積法(ALD)を含む。さらに、ある層はある方法で、他の相は他の異なる方法で堆積させるといったように、異なる方法を組み合わせることも可能である。第1および第2のラミネートの堆積にはALDを用いることが好ましい。金属層については、熱蒸着、スパッタリング、またはALD、特に熱蒸着が好ましい。単純化のために、本発明において、ALDは、原子層堆積と、分子層堆積との双方、またはこれらを混合して用いることを含むものとする。
【0039】
上記方法を行う一般的な圧力は、1500~10-5ミリバール、好ましくは100~10-3ミリバール、さらに好ましくは10~0.1ミリバールの範囲である。したがって、圧力を調整することができる装置、例えば真空チャンバ中でプロセスを実行することが好ましい。上記方法を行う温度は、-20~500℃、好ましくは0~300℃、特に50~220℃の範囲とされる。
【0040】
TiO2、ZrO2またはHfO2を含む層を堆積させるために、種々のTi-、 Zr-またはHf-含有化合物を使用することができる。金属-有機金属含有化合物、例えばアルキル金属;金属アルコキシレート、例えばテトラ-イソプロポキシジルコニウム;シクロペンタジエン付加体、例えばチタノセン;金属カルベン;金属ハロゲン化物、例えば四塩化チタン;一酸化炭素の錯体を用いることが好ましい。金属ハロゲン化物、特に塩化物を用いることが好ましい。
【0041】
ZnOを含む層を堆積させるためには、種々の亜鉛含有化合物を使用することができる。金属-有機亜鉛含有化合物、例えばアルキル亜鉛、例えばジメチル亜鉛;亜鉛アルコキシレート、例えばジメトキシ亜鉛;シクロペンタジエン付加体、例えばジンコセン(zincocene);亜鉛カルベン、例えば亜鉛N,N’-ジメチルイミダゾール-2-イリデン;ハロゲン化亜鉛、例えば塩化亜鉛が好ましく用いられる。さらに好ましくは、亜鉛含有化合物としてアルキル亜鉛、特にC1-C4アルキル亜鉛が使用される。
【0042】
堆積した亜鉛含有化合物を、酸化亜鉛として転化することが必要な場合も多い。これは、亜鉛含有化合物を、好ましくは酸素の存在下に、分解温度を上回る温度に加熱することにより行われる。堆積した亜鉛含有化合物は、これを水、酸素、オゾンまたは酸素プラズマなどの酸素含有化合物と接触させることにより分解することが好ましい。
【0043】
ZnOを含む層が、ALDにより形成される場合は、亜鉛含有化合物を堆積させ、さらに亜鉛含有化合物を酸素含有化合物と接触させることにより堆積を行うシークエンス(sequence)を1回以上、好ましくは5回以上、さらに好ましくは10回以上、特に20回以上行うとよい。多くの場合、上記のシークエンスは1000回以下実施される。
【0044】
有機化合物を含む層を堆積させる場合、上述の化合物が好ましく使用される。上記有機化合物は、酸化亜鉛含有層上に堆積させることが好ましい。しかしながら、有機化合物を、酸化亜鉛を含む層の上に堆積させる場合には、酸化亜鉛含有層の表面は、例えば酸素含有化合物に未接触の堆積した亜鉛含有化合物に起因して反応性となる。
【0045】
第2のラミネートを製造する方法は、酸化亜鉛を含む層を堆積させ、有機化合物を含む層を堆積させ、さらに亜鉛以外の金属ドーパントを堆積させるシークエンスを1回、好ましくは1回を超える回数、例えば2回以上、3回以上、5回以上、特に10回以上行い、次いで酸化亜鉛を含む他の層を堆積させることが好ましい。上記シークエンスは、下記順序、すなわち
(1)酸化亜鉛含有層を堆積させ、
(2)有機化合物を含む層を堆積させ、さらに
(3)亜鉛以外の金属ドーパントを堆積させる、
順序により行なうことができる。
【0046】
このほか、上記シークエンスは、下記順序、すなわち
(1)酸化亜鉛含有層を堆積させ、
(2)亜鉛以外の金属ドーパントを堆積させ、さらに
(3)有機化合物を含む層を堆積させる、
順序により行なうことができる。
【0047】
上記シークエンスは、亜鉛以外の金属ドーパントを堆積させる工程を2回、例えば以下の順序により含んでもよい。
(1)酸化亜鉛含有層を堆積させ、
(2)亜鉛以外の金属ドーパントを堆積させ、
(3)有機化合物を含む層を堆積させ、さらに
(4)亜鉛以外の金属ドーパントを堆積させる。
【0048】
使用する方法がALD法である場合、一般に、亜鉛含有化合物または有機化合物への前記表面の暴露は、ADLの1サイクルで、1ms~30s、好ましくは10ms~5s、特に50ms~1sとされる。異なる化学構造の(半)金属含有化合物または硫黄含有化合物に、表面を暴露する間には、基体を不活性ガスで、通常0.1秒~10分、好ましくは1秒~3分、特に10秒~1分、パージすると好ましい。
【0049】
本発明の方法は、空間的ALD法、すなわち亜鉛含有化合物、金属含有化合物、有機化合物、および酸素含有化合物を、基体に対して移動する別々のオリフィスを通過させることにより行うことが好ましい。これは、基体が移動して、オリフィスが不動に保持されること、または基体が不動に保持され、オリフィスが移動すること、または、基体およびオリフィスの両方が移動する何れかを意味する。移動の速度は、好ましくは0.01~10m/s、さらに好ましくは0.02~1m/s、特に0.05~0.3m/sである。オリフィスは、亜鉛含有化合物、金属含有化合物、酸素含有化合物および有機化合物が、同方法について上述した順序で基体の表面に達するように配置される。気相での反応を避けるためには、不活性ガス、例えば、窒素またはアルゴンが基体の表面に向かって通過するオリフィスを、亜鉛含有化合物、金属含有化合物、酸素含有化合物および有機化合物が通過する各オリフィスの間に設置することが好ましい。
【0050】
上記各オリフィスは、周囲に基体が配置された回転ドラム上に、好ましくは可動に設けられることが好ましい。このような装置は、WO 2011/099 858 A1に記載されている。基体が柔軟な場合は、いわゆるロール-ツー-ロール(roll-to-roll)プロセスを用い、大きな基体の上に有機-無機基体を設けることができる。
【0051】
本発明のフィルムは、光エレクトロニクス装置の電極として使用することができる。光エレクトロニクス装置の例としては、発光ダイオード、レーザー、太陽電池、光センサーが挙げられる。
【実施例】
【0052】
[基体の製造]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(膜厚:125μm)からポリマーフィルム基体を切り出した。PETポリマーフィルム基体をアセトン、エタノール、脱イオン水で洗浄し、窒素で乾燥させ(blow-dried)、汚染物質を除去した。
【0053】
[特性評価]
酸化亜鉛を含む各層の膜厚を、分光エリプソメータ (FS-1 マルチ波長エリプソメータ、Film Sense)で測定した。フィルム膜形状を、原子間力顕微鏡(AFM, XE-100)で調べた。各フィルムの導電性を4探針法(HP4155C, Agilent Technologies)で測定した。UV-VIS分光器(UV-VIS 8453, Agilent Technologies)を用いて紫外-可視スペクトルを得た。
【0054】
[例1(比較例)]
塩化チタン(IV)(TiCl4)と脱イオン水(H2O)とをALD前駆体として用い、PET基体の上にTiO2を堆積させた。アルゴン(Ar)をキャリアガスとパージガスの双方として用いた。DEZとH2Oは20℃で蒸発した。ここでのサイクルは、1秒のDEZ暴露、5秒のArパージ、1秒のH2O暴露、5秒のArパージから成るものであった。Arの全流量(total flow rate)は100sccmであった。この操作の間、圧力400ミリバールにおいて、温度を100℃に維持した。このサイクルを875回行うことにより、膜厚35nmのTiO2フィルムが得られた。
【0055】
得られたTiO2フィルム上にAg層を熱蒸着により堆積させた。
【0056】
ジエチル亜鉛(DEZ)と脱イオン水(H2O)とをALD前駆体として用い、Ag層上に酸化亜鉛含有層を堆積させた。アルゴン(Ar)をキャリアガスとパージガスの双方として用いた。DEZとH2Oは20℃で蒸発した。ここでのサイクルは、1秒のDEZ暴露、5秒のArパージ、1秒のH2O暴露、5秒のArパージから成るものであった。Arの全流量(total flow rate)は100sccmであった。この操作の間、圧力400ミリバールにおいて、温度を100℃に維持した。ALD法によるZnO薄膜の成長割合は、1.5Å/サイクルであった。このサイクルを233回行った。
【0057】
次いで、トリメチルアルミニウム(TMA、Sigma Aldrich: 99%)および4-メルカプトフェノール(4MP、Sigma Aldrich: 97%)を前駆体として用い、有機化合物を含む層を製造した。反応温度は145℃に低下した。Arをキャリアガスとパージガスの双方として用いた。TMAと4MPは、それぞれ20℃および80℃で蒸発した。このALDサイクルは、1秒のTMA暴露、5秒のArパージ、5秒の4MP暴露、60秒のArパージ、1秒のTMA暴露、および5秒のArパージから成るものであった。このサイクルを1回行った。
【0058】
[例2(比較例)]
例1において記載したように、PET基体の上にTiO2フィルムとAgフィルムを堆積させた。ジエチル亜鉛(DEZ)と脱イオン水(H2O)とをALD前駆体として用い、Ag層上に酸化亜鉛含有層を堆積させた。アルゴン(Ar)をキャリアガスとパージガスの双方として用いた。DEZとH2Oは20℃で蒸発した。ここでのサイクルは、1秒のDEZ暴露、5秒のArパージ、1秒のH2O暴露、5秒のArパージから成るものであった。Arの全流量(total flow rate)は100sccmであった。この操作の間、圧力400ミリバールにおいて、温度を100℃に維持した。ALD法によるZnO薄膜の成長割合は、1.5Å/サイクルであった。このサイクルを233回行った。
【0059】
次いで、トリメチルアルミニウム(TMA、Sigma Aldrich: 99%)および2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(DMP、Sigma Aldrich: 98%)を前駆体として用い、有機化合物を含む層を製造した。反応温度は145℃に低下した。Arをキャリアガスとパージガスの双方として用いた。TMAと4MPは、それぞれ20℃および80℃で蒸発した。このALDサイクルは、1秒のTMA暴露、5秒のArパージ、5秒の4MP暴露、60秒のArパージ、1秒のTMA暴露、および5秒のArパージから成るものであった。このサイクルを1回行った。
【0060】
上述の、酸化亜鉛含有層および有機化合物含有層の堆積方法を、交互に14回行うことにより、膜厚35nmの第2のラミネートが得られた。
【0061】
[例3(本発明)]
塩化チタン(IV)(TiCl4)と脱イオン水(H2O)とをALD前駆体として用い、PET基体の上にまずTiO2を堆積させて第1のラミネートを作製した。アルゴン(Ar)をキャリアガスとパージガスの双方として用いた。DEZとH2Oは20℃で蒸発した。ここでのサイクルは、1秒のDEZ暴露、5秒のArパージ、1秒のH2O暴露、5秒のArパージから成るものであった。Arの全流量(total flow rate)は100sccmであった。この操作の間、圧力400ミリバールにおいて、温度を100℃に維持した。ALD法によるZnO薄膜の成長割合は、1.5Å/サイクルであった。このサイクルを266回行った。
【0062】
次いで、塩化チタン(IV)(TiCl4)および2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(DMP、Sigma Aldrich: 98%)を前駆体として用い、有機化合物を含む層を製造した。反応温度は145℃に低下した。Arをキャリアガスとパージガスの双方として用いた。TiCl4とDMPは、それぞれ20℃および80℃で蒸発した。このALDサイクルは、1秒のTMA暴露、5秒のArパージ、5秒のDMP暴露、60秒のArパージ、1秒のTiCl4暴露、および5秒のArパージから成るものであった。このサイクルを1回行った。
【0063】
上述の、TiO2含有層および有機化合物含有層の堆積方法を、交互に7回行うことにより、膜厚19nmの第1のラミネートが得られた。
【0064】
例1のAg層と、例2の第2のラミネートとを、第2のラミネートの膜厚を40nmとした点を変更して(上記の酸化亜鉛含有層と有機化合物含有層の交互の堆積を16回としたため)、第1のラミネート上に堆積させた。
【0065】
[例4(本発明)]
例3を繰り返した。ただし、第1の相違点として、第1のラミネートの膜厚を24nmとした。これは、TiO2含有層と、上記有機化合物を含む層との交互の堆積を11回としたことによる。第2の相違点は、第2のラミネートの膜厚が45nmとされたことである(酸化亜鉛含有層と上記有機化合物を含む層との交互の堆積を18回としたため)。
【0066】
シート抵抗
例1~4で得られたフィルムのシート抵抗を、堆積後、半径0.5cmの円弧を描くように500回および1000回曲げた後に測定した。
【0067】