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特許7451488木質繊維ボードのエッジのコート用およびシール用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】木質繊維ボードのエッジのコート用およびシール用の組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/02 20060101AFI20240311BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240311BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240311BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240311BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C09D183/02
C09D7/65
C09D175/04
C09K3/10 G
C09K3/18 104
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021502590
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019068998
(87)【国際公開番号】W WO2020016176
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】18183673.5
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091387
【氏名又は名称】フローリング・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Flooring Technologies Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】カルバ・ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ギエル・アンドレアス
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303291(JP,A)
【文献】特開2009-057507(JP,A)
【文献】特開2008-274242(JP,A)
【文献】特開2006-328406(JP,A)
【文献】特開2006-097321(JP,A)
【文献】特開2001-329680(JP,A)
【文献】特開平11-152445(JP,A)
【文献】特開2000-007991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/02
C09D 7/65
C09D 175/04
C09K 3/10
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維ボードのエッジをシーリング/コーティングする組成物であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物
SiX (I)
(式中、
-Xは、アルコキシ基である)と、
-一般式(II)の少なくとも2種の化合物
SiX (II)
(式中、
-Xは、アルコキシ基であり、
-Rは、C1~10アルキル基、またはC6~10アリール基である。)と、
-少なくとも1種のポリマーの水性分散液と、
から得られる、組成物であって、
前記少なくとも1種のポリマーが、ポリウレタン類、エポキシ樹脂類、メラミン樹脂類およびポリアクリレート類を含む群から選択される、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、一般式(II)の化合物の数が、少なくとも3種類である、組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、Xは、C1~6アルコキシ基を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物において、Xは、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基またはブトキシ基であることを特徴とする、組成物。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の組成物において、非加水分解性有機Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、フェニル基およびナフチル基からなる群から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の組成物において、非加水分解性有機Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、およびフェニル基からなる群から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物において、一般式(I)の化合物は、0.08~0.2モルのモル量で含有されており、一般式(II)の化合物は、0.05~0.1モルのモル量で含有されていることを特徴とする、組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物において、少なくとも1種のポリマーは、ポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)に基づくポリウレタンポリマーであることを特徴とする、組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物において、無機粒子が含有されていることを特徴とする、組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物において、SiO粒子、Al粒子、ZrO粒子、TiO粒子からなる群から選択される無機粒子が含有されていることを特徴とする、組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および一般式(II)の少なくとも2種の化合物を用意する工程と、
-任意で、少なくとも無機粒子の分散液を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも2種の化合物との混合物に、少なくとも1種の触媒を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも2種の化合物との反応混合物の水相を分離する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも2種の化合物との分離した水性反応混合物に、少なくとも1種のポリマーを添加する工程と、
を備える、方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および一般式(II)の少なくとも3種の化合物を用意する工程と、
-任意で、少なくとも無機粒子の分散液を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも3種の化合物との混合物に、少なくとも1種の触媒を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも3種の化合物との反応混合物の水相を分離する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも3種の化合物との分離した水性反応混合物に、少なくとも1種のポリマーを添加する工程と、
を備える、方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の、木質繊維ボード、HDFボードまたはMDFボードのエッジをコーティング/シーリングするための使用。
【請求項14】
木質繊維ボード、HDFボードまたはMDFボードのエッジをコーティング/シーリングするために使用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を少なくとも1種有する木質繊維ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質繊維ボードのエッジのコート用やおよびシール用の組成物、当該組成物の製造方法、当該組成物の使用、および当該組成物を有する木質繊維ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネートフローリングは、特に、実継ぎ(tongue-and-groove)において部材同士を互いに接着剤により接着する設置構成から、接着剤フリーの設置構成が行われるようになって以降、水分の浸入(moisture attack)や湿害の発生に関して弱い領域が部材同士の継ぎ部に存在することが知られている。このダメージは、水分への直接の曝露や過度な手入れ等によって起こり得る。しかしながら、同床材に極めて簡単かつ迅速に設置可能ないわゆるクリック式の輪郭部(profile)を設けることで、この問題は軽減される。今日のラミネートフローリングの90%超が、クリック実型材で製造されていると考えられる。
【0003】
湿害を抑制するのに、これまで様々な対策が単独又は組合せでとられてきた。上記輪郭部に水分が浸入するのを困難にする最も簡単な手法は、実継ぎの嵌め合いを最大限緊密にすることである。しかし、これでは部材同士を嵌め込むのがより難しくなったり損傷が生じたりする可能性がある。また、この手法には、水分が実継ぎ部分に浸入した場合に木質パネルが一般的に膨張するという短所がある。
【0004】
この効果は、特殊なプレスプレートによるダイレクトコーティング成形(direct coating)時に部材同士の継ぎ部(transition)を予め圧密化しておくことで、より期待することができる。これは、WO 2017/072657A1(特許文献1)に記載されている。しかし、これは膨張するのを遅らせるだけで一般的に阻止することまではできない。
【0005】
他の選択肢は、上記輪郭部を疎水化剤でシーリングすることである。つまり、WO 2006/038867(特許文献2)には、エッジをコーティングするワックスの使用が記載されている。同ワックスは、木質材内に少なくとも部分的に浸透することが認められる。EP 903451 A2(特許文献3)には、エッジ処理用のジイソシアネート-ジフェニルメタンの使用が記載されている。同物質は、木質材内に容易に浸透する。また、WO 2008/078181 A1(特許文献4)では、コーティング剤としてフッ素化ポリマー、例えばペルフルオロアルキルメタクリル共重合体が使用される。この層形成材料は、室温で固体である。
【0006】
コーティング剤は、ほかにも、とりわけWO 2012/017235 A1(特許文献5)やWO 01/53387 A1(特許文献6)やUS 2006/0110541 A1(特許文献7)やUS 2008/0250978 A1(特許文献8)やWO 2009/032988 A1(特許文献9)に記載されている。
【0007】
特許文献5は、床への床材の接着を補助するために当該床材の裏側にポリマーコーティングを使用することに関する。特許文献6には、耐摩耗性を向上させた、各種表面用のコーティングが記載されている。特許請求の範囲からみて、同コーティングは、シリコン粒子などの無機粒子、加水分解シラン類を含むカップリング試薬、および各種アクリレート類の混合物を含む樹脂を含有していると結論付けることができる。特許文献7は、各種表面に透明な保護コーティングを形成する方法および組成物に関する。特許文献8および特許文献9には、特に有機シラン類又はアルキルシラン類で処理した修飾シリコン粒子を含有する、疎水性自己浄化コーティング組成物がそれぞれ記載されている。
【0008】
これらの周知のシーリング剤は、塗布時に木質基材内に移動してしまいがちであり、疎水効果が落ちるという短所がある。ただし、シーリング剤の移動は、後から発生して効果が使用時に徐々に失われていくような場合もある。
【0009】
他の選択肢は、製造過程で高品質接着剤(メラミン混和UF接着剤、PMDIなど)を用いてなる膨張抑制(swell-modified)木質パネルを使用することである。
【0010】
上述した対策のうち、高品質接着剤の使用だけがボードの膨張を抑制する。それ以外は、輪郭部への水分の浸入を単に遅らせるだけである。
【0011】
膨張は、通常、DIN EN 13329:2016又はISO 24336: 2005に準拠したいわゆるエッジ膨張試験を用いて測定される。同試験では、コーティング済み且つ輪郭部なしの試料(150×50mm)を水浴(20℃)中に垂直に50mm浸漬させた24時間後、浸漬部分の3箇所でエッジ膨張を測定する。それ以外の対策の効果を調べるには、塗布による試験法(水塗布試験や濡布載置試験)が一般的に採用される。このとき、こぼれた液体や長期にわたって作用した水分により生じる水分応力については、輪郭部で重なり合う(folded)部材同士でシミュレーションする。
【0012】
大半の製品は、複数の対策を組み合わせて講じたとしても、エッジ膨張試験で最大50%の膨張減少率しか得られない。これは、短期間で水分に曝された際にはある程度の保護を奏するものの、より長期間にわたって水分に曝された際にはしばしば不満をもたらす。
【0013】
つまり、既知の対策には様々な短所がある。例えば、膨張に対する保護の効果向上が少な過ぎることや、提案の対策では実際の荷重に耐えられない場合があることや、効果の期間が限られていること等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2017/072657号
【文献】国際公開第2006/038867号
【文献】欧州特許出願公開第903451号明細書
【文献】国際公開第2008/078181号
【文献】国際公開第2012/017235号
【文献】国際公開第01/053387号
【文献】米国特許出願公開第2006/0110541号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0250978号明細書
【文献】国際公開第2009/032988号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、挙げた短所を克服するという課題に基づいたものである。具体的に述べると、本発明は、複合的保護によって対照試料(zero sample)と比べてエッジ膨張を50%以上抑制可能なラミネートフローリングを製造するという技術的課題に基づいたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、この課題は、請求項1の構成を備えた組成物によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つまり、木質繊維ボードのエッジをシーリングまたはコーティングする組成物であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
SiX(4-a) (I)
(式中、
-Xは、H、OH、あるいは、アルコキシ基、アリールオキシ基およびアシルオキシ基からなる群から選択される加水分解性基であり、
-Rは、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基を含む群から選択され、-O-または-NH-が挿入されていてもよい有機部位であり、
-Rは、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、アルコキシ基、アルデヒド基、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基、シアノ基、イソシアノ基およびエポキシ基を含む群から選択される少なくとも1つの官能基Qを有しており、
-aは、0、1、2または3、特には0または1である。)と、
-一般式(II)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
SiX(4-b) (II)
(式中、
-Xは、上記の意味であり、
-Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基およびシクロアルケニル基を含む群から選択される非加水分解性有機部位であり、
-bは、1、2、3または4である。)と、
-少なくとも1種のポリマーの分散液と、
から製造可能な、組成物が提供される。
【0018】
本組成物は、一般式(I)の化合物による架橋成分と、一般式(II)の化合物による疎水性成分とを、含有している。式(I)が親水性架橋成分の場合、この化合物と木質繊維とを特には(存在しているか又は例えばアルコキシ基等の加水分解で形成される)遊離OH基により接着すると共に、ネットワークを形成することが可能である。式(II)の、例えば部位Rのアルキル基等から構成される疎水性成分は、撥水性バリアを形成する。これにより、水分は、形成されたコーティングの前記ネットワークを通過して拡がることができなくなる。
【0019】
本組成物は、繊維ボード中の空孔を埋めて木質繊維を包み込むことにより、木質繊維の「シーリング」を行うことができる。一方で、疎水性修飾物の使用により、残った空孔や未だコーティングされていない木質繊維の「疎水化」が実現される。
【0020】
前記コーティングの可撓性を最大限高めるため、上記の無機バインダー成分(inorganic binder)は、適切なポリマー水性分散液と混ぜ合わされる。使用するポリマーは、上記の無機母材(inorganic matrix)に対して相溶性を示す官能基を有するものとされる。これにより、低温でも高い架橋度を有するコーティングを調製することが可能となる。
【0021】
後で詳述するように、本組成物は、あらゆるパネル類やあらゆる接着剤に適用することができる。つまり、前記組成物は、使用される接着剤や有孔度の違いやボードの厚さに関係なく木質繊維ボードの膨張を抑制する。本組成物の膨張抑制効果は、ウレア-ホルムアルデヒド接着剤(UF接着剤)、メラミン-ウレア-ホルムアルデヒド接着剤(MUF接着剤)またはポリウレタン系接着剤(PMDI接着剤)を有するHDFボードや、木材プラスチック複合材(WPC)からなるボードについても実証可能である。
【0022】
本発明にかかる組成物には、幾つかの利点がある。例えば、エッジの膨張が大いに抑制されることや、当該組成物がボード内に浸透または移動しないことや、当該組成物があらゆるボードやあらゆる接着剤と使用可能であることや、必要な塗布量が比較的少量のみで済むこと等が挙げられる。
【0023】
有利には、加水分解性部位Xは、H、OH、C1~6アルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基およびブトキシ基)、C6~10アリールオキシ基(特には、フェノキシ基)ならびにC2~7アシルオキシ基(特には、アセトキシ基またはプロピオノキシ基)を含む群から選択される。特に好ましい部位Xは、H、OHまたはアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)である。
【0024】
好ましくは、有機部位Rは、C~C30アルキル基(特には、C~C25アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cシクロアルキル基およびC~Cシクロアルケニル基)を含む群から選択される。一実施形態において、有機Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、ブタジエニル基またはシクロヘキサジエニル基、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはビニル基を含む群から選択される。
【0025】
本組成物の一実施形態において、少なくとも1つの官能基Qは、エポキシ基および/またはヒドロキシ基および/またはエーテル基および/またはアクリル基および/またはアクリロキシ基および/またはメタクリル基および/またはメタクリロキシ基および/またはアミノ基および/またはアルコキシ基および/またはシアノ基および/またはイソシアノ基を含む群から選択される。つまり、有利には、官能基Qが、UV照射によって活性化させて重合反応させることが可能な、二重結合を有する基やエポキシ基を保有し得る。
【0026】
本組成物の一変形例において、官能基Qを有する一般式(I):R SiX(4-a)、特にはRSiXの化合物は、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ官能化シラン類、またはビニルトリメトキシシランなどのビニル官能化シラン類から選択され得る。
【0027】
前述したように、残余の基Rは、少なくとも1つの官能基Qを有し得る。これに加えて、R基は、さらに、他種の基で置換されていてもよい。
【0028】
「アルキル」、「アルケニル」、「アリール」などに対して用いられる「置換」という用語は、少なくとも1つの原子(通常、H原子)が、次の少なくとも1種の置換基、好ましくは次の1種又は2種の置換基によって置換されていることを意味する:ハロゲン基;ヒドロキシ基;保護ヒドロキシ基;オキソ基;保護オキソ基;C~Cシクロアルキル基;ビシクロアルキル基;フェニル基;ナフチル基;アミノ基;保護アミノ基;モノ置換アミノ基;保護モノ置換アミノ基;ジ置換アミノ基;グアニジノ基;保護グアニジノ基;複素環基;置換複素環基;イミダゾリル基;インドリル基;ピロリジニル基;C~C12アルコキシ基;C~C12アシル基;C~C12アシルオキシ基;アクリロイルオキシ基;ニトロ基;カルボキシ基;保護カルボキシ基;カルバモイル基;シアノ基;メチルスルホニルアミノ基;チオール基;C~C10アルキルチオ基;およびC~C10アルキルスルホニル基。置換アルキル基、置換アリール基および置換アルケニル基は、同一又は異なる置換基で一回以上、好ましくは一回または二回置換された基としてもよい。
【0029】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、式:R-C≡C-の部位、特には「C~Cアルキニル」を指している。C~Cアルキニルの例には:エチニル;プロピニル;2-ブチニル;2-ペンチニル;3-ペンチニル;2-ヘキシニル;3-ヘキシニル;4-ヘキシニル;ビニル;直鎖アルキル鎖のジイン及びトリイン;ならびに分岐アルキル鎖のジイン及びトリイン;が含まれる。
【0030】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントリルなどの芳香族炭化水素を指している。置換アリール基とは、前述したような少なくとも1種の置換基で置換されているアリール基である。
【0031】
「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロへプチル基を包含する。
【0032】
本組成物の特に好ましい一変形例において、前記化合物は、一般式(I)のうちの式:SiX(式中、部位XはOHまたはアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)である。)に対応する。テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランが、特に好ましい架橋剤として使用される。
【0033】
本組成物のさらなる実施形態において、式(II)の化合物の非加水分解性有機部位Rは、C~C15アルキル基(特には、C~C10アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cアルキニル基およびC~C10アリール基)を含む群から選択される。これらは、さらなる疎水基で置換されていなくても置換されていてもよい。
【0034】
好ましくは、非加水分解性有機部位Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基およびナフチル基を含む群から選択される。メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基またはフェニル基が、特に好ましい。
【0035】
本発明の文脈では、「非加水分解性有機部位」という用語を、水の存在下であっても、Si原子に結合したOH基又はNH基が形成されない、有機部位であるとして理解されたい。
【0036】
式(II)の化合物は、特には、下記の式のいずれか一つを含み得る:
-RをC~Cアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基としたR Si、例えば、テトラメチルシラン;
-RをC~Cアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基とし、XをHとしたR SiX、例えば、トリメチルシラン;ならびに
-RをC~C10アルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基もしくはオクチル基)またはC~C10アリール基(好ましくは、フェニル基)とし、Xをアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)としたRSiX、例えば、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等。
【0037】
本組成物の一変形例では、一般式(I)の化合物が1種、および一般式(II)の化合物が1種使用される。
【0038】
ただし、本組成物の他の変形例は、一般式(I)の少なくとも1種の化合物と、一般式(II)の少なくとも2種の、好ましくは少なくとも3種の化合物と、を含有しているものとしてもよい。このとき、あらゆる組合せを考えることが可能である。
【0039】
つまり、一変形例では、前記組成物が、式(I)の化合物としてテトラエトキシシランを、式(II)の化合物としてトリメチルシランおよびフェニルトリエトキシシランを含有するものとしてもよい。
【0040】
他の変形例では、前記組成物が、式(I)の化合物としてテトラエトキシシランを、式(II)の化合物としてトリメチルシラン、フェニルトリエトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランを含有している。
【0041】
さらなる実施形態において、一般式(I)の化合物は、0.08~0.2モル、好ましくは0.1~0.15モル、特に好ましくは0.1~0.12モルのモル量で前記組成物中に含有されており、一般式(II)の化合物は、0.05~0.1モル、好ましくは0.06~0.09モル、特に好ましくは0.07~0.08モルのモル量で前記組成物中に含有されている。
【0042】
一般式(II)の化合物について記したモル量の範囲は、一般式(II)の1種の化合物、または2種の化合物もしくは3種の化合物の合計を指し得る。
【0043】
つまり、式(I)の化合物としてテトラエトキシシラン、式(II)の化合物としてトリメチルシランおよびフェニルトリエトキシシランからなる前記変形例の組成物であれば、0.15モルのテトラエトキシシラン、および0.04モルのトリメチルシラン/0.033モルのフェニルトリエトキシシランを含有し得る。
【0044】
式(I)の化合物としてテトラエトキシシラン、式(II)の化合物としてトリメチルシラン、フェニルトリエトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランのもう一方の前記変形例の組成物であれば、0.1モルのテトラエトキシシラン、および0.03モルのトリメチルシラン/0.025モルのフェニルトリエトキシシラン/0.043モルのオクチルトリエトキシシランが存在し得る。
【0045】
式(I)のシラン化合物と式(II)のシラン化合物との比は、好ましくは1:0.5~1:2、特に好ましくは1:0.75~1:1.5、極めて好ましくは1:1~1:1.2である。
【0046】
本組成物のより広範な一実施形態では、前記少なくとも1種のポリマーが、ポリウレタン類、エポキシ樹脂類、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂類、およびポリアクリレート類を含む群から選択される。
【0047】
芳香族ポリイソシアネート類に基づくポリウレタンポリマー、特には、ポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)および/またはトリレンジイソシアネート(TDI)および/またはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の使用が好ましく、PMDIが特に好ましい。
【0048】
前記ポリマーは、シラン化合物で形成された前記ネットワーク中に組み込まれて前記組成物に可撓性を付与し、塗布を容易にする。
【0049】
好ましくは、使用するポリマーの種類は、使用するシラン化合物に適合したものとされる。つまり、エポキシ基で修飾されたシラン類はエポキシポリマー類と共に、メタクリレート基で修飾されたシラン類はアクリレートポリマーと共に使用されるのが有利である。
【0050】
本組成物の他の実施形態では、2種以上のポリマーを使用することも可能である。
【0051】
さらなる実施形態では、本件で用いる組成物中の前記ポリマーの含有量が、30重量%以上、好ましくは20重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。一実施形態では、ゾルゲルとポリマーとの(固形分に基づく)比が、1:0.1~1:0.5、好ましくは1:0.2~1:0.4である。
【0052】
シラン類の使用に主に起因する溶媒分は、1~15重量%、好ましくは2~13重量%、特に好ましくは4~10重量%である。これらの数字は、使用する前記ポリマーの溶媒分を考慮に入れていない。溶媒は、特には水および/またはアルコール類、好ましくはエタノールである。アルコール分は、例えば1%未満であり得る。また、本組成物はアルコールのみを含有し水を全く又は実質的に含有しないものとすることも可能であり、すなわち、シラン化合物だけでなく前記ポリマーの分散液もアルコールの形態で使用することが可能である。
【0053】
さらなる実施形態では、本組成物が、無機粒子、特には、SiO粒子、Al粒子、ZrO粒子、TiO粒子を含有し得る。好ましくは、ここで使用する粒子の粒径は、2~400nm、好ましくは2~100nm、特に好ましくは2~50nmである。無機粒子を添加することで前記組成物の固形分が増加し、前記組成物の塗布時の挙動が向上する。また、無機粒子の添加により、収縮や亀裂の発生が阻止される。無機粒子は、シラン物質(ゾルゲル物質)の固形分に基づいて0.1~25重量%、好ましくは5~20重量%の範囲の量で使用されてもよい。
【0054】
本組成物の特に好ましい一変形例は、テトラエトキシシランと、トリメチルシランと、フェニルトリエトキシシランと、オクチルトリエトキシシランと、ポリウレタンと、を含有している。
【0055】
本組成物の極めて特に好ましい一変形例は、テトラエトキシシランと、トリメチルシランと、フェニルトリエトキシシランと、オクチルトリエトキシシランと、ポリウレタンと、SiO粒子と、を含有している。
【0056】
本件で使用する組成物は、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および一般式(II)の少なくとも1種の化合物を用意する工程と、
-任意で、少なくとも無機粒子の分散液を添加する工程と、
-前記式(I)の少なくとも1種の化合物と前記式(II)の少なくとも1種の化合物との混合物に、少なくとも1種の触媒(特には、酸)を添加する工程と、
-前記式(I)の少なくとも1種の化合物と前記式(II)の少なくとも1種の化合物との反応混合物の水相を分離する工程と、
-前記式(I)の少なくとも1種の化合物と前記式(II)の少なくとも1種の化合物とから分離した水性反応混合物に、少なくとも1種のポリマーを添加する工程と、
を備える方法で、製造することが可能である。
【0057】
触媒として適した無機酸および/または有機酸は、リン酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、ギ酸および硫酸を含む群から選択される。また、弱酸として反応する、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類も適している。p-トルエンスルホン酸が、特に好ましい。
【0058】
好ましくは、その後に前記反応混合物を中和するのに、アンモニアなどの塩基性化合物が添加される。これにより、アルコール相(エタノール相)と、バインダー成分(binder portion)を含む水相とが、分離する。すると、水相をアルコール相から容易に分離することが可能となる。
【0059】
無機粒子をバインダー成分に添加する場合には、好ましくは、当該無機粒子が0.1~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、特に好ましくは1~5重量%の割合で使用される。
【0060】
前述したように、本組成物は、木質繊維ボードの(特にはWPCボード、HDFボードまたはMDFボードの)エッジをコーティングまたはシーリングするのに使用可能である。
【0061】
本発明の課題は、本組成物を有する木質繊維ボードによっても解決される。
【0062】
つまり、HDFボード、MDFボードなどの1種以上の木質繊維ボードが本発明にかかる組成物を少なくとも1種有しており、特には、当該木質繊維ボードはエッジをシーリングする目的で当該組成物によりコーティングされている。
【0063】
前記組成物は、例えばスプレー塗布、ローラー塗布、真空塗装機の使用等によって、前記木質繊維ボードのエッジに塗布することが可能である。
【0064】
前記ボードのエッジ上の前記組成物の層厚は、10~50μm、好ましくは20~40μmの範囲内としてもよい。
【0065】
前記組成物は、液状の形態でパネルのエッジへと、100~200シラン流体量(fl.g/m)、好ましくは120~150シラン流体量(fl.g/m)の量で塗布されてもよい。これにより、パネルのエッジ上の固形分が、5~25mg/cm、好ましくは10~20mg/cmとなる。
【0066】
対象の繊維ボードは、木質繊維と混ぜ合わされて圧縮される様々な結合剤を結合剤として有してもよい。好ましい結合剤は:ウレア-ホルムアルデヒド樹脂類、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂類、メラミン-ウレア-ホルムアルデヒド樹脂類などのホルムアルデヒド樹脂類;ポリウレタン類、好ましくはポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)に基づくポリウレタン類;エポキシ樹脂類;またはポリエステル樹脂類;である。
【0067】
対象の繊維ボードは、表側がフィルム(例えば、PVC、PPなどの熱可塑性材料からなるフィルム等)、または加飾紙層、オーバーレイ紙などの紙層でさらにコーティングされてもよい。
【0068】
木質繊維ボードとしては:
-ウレア-ホルムアルデヒド接着剤によるHDFボードであって、イソシアネートとポリオールとのプレポリマーを含浸させたHDFボード;
-ウレア-ホルムアルデヒド接着剤による、PVCフィルムなどのフィルムが少なくとも1つの表側に接着したHDFボード;
-メラミンウレアホルムアルデヒド接着剤によるHDFボード;
-PMDI接着剤によるHDFボード;および
-ポリプロピレン(PP)フィルムなどのフィルムが接着したWPCボード;
が特に好ましい。
【0069】
つまり、まず、HDFボードを高品質接着剤(MUF接着剤、PMDI接着剤)を用いて製作するか、あるいは、標準的なUF接着剤を用いてHDFを製作し、さらに含浸ステーションでPUプレポリマーを完全に含浸させる。そして、当該ボードに対して、メラミン樹脂を含浸させた紙の層(オーバーレイ紙、加飾紙および裏打紙)をショートサイクルプレス(KT press)でコーティングする。これは、高圧高温下で行われる(p=40bar、T=200℃、t=15秒)。コーティング済みのボードは、冷却後、厚板製造に使用可能となる。さらなる変形例では、WPCボードやHDFボードに熱可塑性フィルムをコーティングする。どの変形例についても、床材製造ライン(flooring line)で厚板へと切断すると共に、そのエッジの輪郭部を本発明にかかる組成物でシーリングした。シーリングを行わない、比較例の試料も製作した。塗布した組成物は、赤外線放射器で熱的に活性化させる。活性化エネルギーは、厚板にて80℃以上とする必要がある。
【実施例
【0070】
以下では、実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0071】
(実施例1:シーリング組成物の調製)
12.3gのオクチルトリエトキシシラン、2.4gのトリメチルシラン、6.1gのフェニルトリエトキシシラン、20.8gのテトラエトキシシラン、および28.8gのSiO(50重量%)水性分散液(Obermaier社製)を配合しし、80℃に加熱攪拌する。3.6gのパラトルイル酸(para toluenic acid)(30重量%)を攪拌しながら水に添加し、これを前記混合物に添加し、120分間攪拌する。さらに24時間後、25%アンモニア溶液(本例では6.2g)を攪拌しながら添加することにより、pH値をpH値=7に上げる。
【0072】
さらに2時間攪拌した後、80gの水を添加し30分間再攪拌してから、この懸濁液を攪拌せずに4時間静置する。
【0073】
この待機時間後、バインダー成分を含む水相と、エタノール相とが、分離する。そして、水相を分離漏斗で取り出す。これにより、水性無機コーティング液が得られる。
【0074】
次に、50gの得られた水性無機コーティング液(固形分:52%)を、20gのポリウレタン水溶液(Alberdingk U 3251)(固形分:35%)と混ぜ合わせる。
【0075】
このコーティング液混合物は、フォームローラーまたはピペットでエッジに塗布して熱硬化(例えば、100℃で5分間)させることが可能である。
【0076】
(実施例2:UF接着剤およびプレポリマーを有するHDF)
7.4mmHDF(比重=約850kg/m)に対し、キャスティング装置によってプレポリマー(量=1.2kg/m)をキャスティングする。このボードを真空ステーションに移送することで、前記プレポリマーが真空でHDF内に吸収される。3日間静置した後、当該ボードにショートサイクルプレスでメラミン樹脂含浸紙(オーバーレイ、加飾および裏打)を加圧加温下でコーティングする(p=40bar、T=200℃、t=15秒)。
【0077】
このボードを熟成庫に移送して冷却し、3日後に、床材製造ラインで厚板へと切断する。そして、当該厚板に実と溝を設けた後、その輪郭部に対して実施例1の組成物を連続流でスプレー塗布する(塗布量:100gfl./m;固形分:約42%)。赤外線放射機により、シランを乾燥させた。また、比較用として、同じボードを用いて、エッジをシーリングすることなく厚板へと切断した。
【0078】
(実施例3:PMDI接着剤を有するMDF)
HDFボードを、MDFラインでPMDI結合剤を用いて製作した。接着剤比率=8%、嵩比重=850kg/mとした。プレス後、HDFを冷却しサンディングした。そして、3日間静置した後、当該ボードにショートサイクルプレスでメラミン樹脂含浸紙(オーバーレイ、加飾および裏打)を加圧加温下でコーティングした(p=40bar、T=200℃、t=15秒)。
【0079】
このボードを熟成庫に移送して冷却し、3日後に、床材製造ラインで厚板へと切断する。そして、当該厚板に実と溝を設けた後、その輪郭部に対して実施例1の組成物を連続流でスプレー塗布する(塗布量:100gfl./m;固形分:約42%)。赤外線放射機により、シランを乾燥させた。また、比較用として、同じボードを用いて、エッジをシーリングすることなく厚板へと切断した。
【0080】
(実施例4:MUF接着剤を有するHDF)
HDFボードを、MDFラインでMUF結合剤を用いて製作した。接着剤比率=25%、メラミン補強率=24%、嵩比重=850kg/mとした。プレス後、HDFを冷却しサンディングした。そして、3日間静置した後、当該ボードにショートサイクルプレスでメラミン樹脂含浸紙(オーバーレイ、加飾および裏打)を加圧加温下でコーティングさせた(p=40bar、T=200℃、t=15秒)。
【0081】
このボードを熟成庫に移送して冷却し、3日後に、床材製造ラインで厚板へと切断する。そして、当該厚板に実と溝を設けた後、その輪郭部に対して実施例1の組成物を連続流でスプレー塗布する(塗布量:100gfl./m;固形分:約42%)。赤外線放射機により、シランを乾燥させた。また、比較用として、同じボードを用いて、エッジをシーリングすることなく厚板へと切断した。
【0082】
(実施例5:エッジ膨張試験)
エッジ膨張試験用に、コーティング済みの各ボードから2×2個の試料(150×50mm×厚さ)を切断した。そして、半分の試料について、その切断エッジを実施例1の組成物でシーリングした(塗布量はどれも約100g/mとした)。次に、エッジ膨張試験をISO 24 336:2005に準拠して実施した。
【0083】
膨張は、DIN EN 13329:2016又はISO 24336: 2005に準拠したいわゆるエッジ膨張試験を用いて測定する。同試験では、コーティング済み且つ輪郭部なしの試料(150×50mm)を水浴(20℃)中に垂直に50mm浸漬させ、24時間後に、浸漬部分の3箇所でエッジ膨張を測定する。結果を、下記の表にまとめる。
【0084】
【表1】
【0085】
*シラン系エッジシーリング剤の塗布量は、約100gfl./mとした。
**このHDFは、比重を約850kg/mとし、標準的な床構造物(オーバーレイ、加飾および裏打)でコーティングした。
***このHDFは、嵩比重を850kg/m、繊維に対する接着剤比率(Beleimung)を約8%とし、標準的な床構造物(オーバーレイ、加飾および裏打)でコーティングした。
****このHDFは、比重を約850kg/m、メラミン修飾(24%)UF接着剤の接着剤比率を25%とし、標準的な床構造物(オーバーレイ、加飾および裏打)でコーティングした。
*****このWPCは、約50重量%のPET繊維および約50重量%の木質繊維で構成した。同ボードには、0.4mm厚のPETフィルムをPUホットメルトで接着した。
******このHDFは、嵩密度を850kg/mとした。同HDFには、0.5mm厚のPVCフィルムをPUホットメルトで接着する。
【0086】
表から分かるように、使用する接着剤の種類およびパネル組成に関係なくエッジ膨張を多かれ少なかれ抑制できることは明らかである。したがって、このシーリング類は、幅広い様々なパネルタイプに適用することが可能である。
なお、本発明は実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
木質繊維ボードのエッジをシーリング/コーティングする組成物であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
SiX (4-a) (I)
(式中、
-Xは、H、OH、あるいは、アルコキシ基、アリールオキシ基およびアシルオキシ基からなる群から選択される加水分解性基であり、
-R は、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基を含む群から選択され、-O-または-NH-が挿入されていてもよい有機基であり、
-R は、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、アルコキシ基、アルデヒド基、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基、シアノ基、イソシアノ基およびエポキシ基を含む群から選択される少なくとも1つの官能基Q を有しており、
-aは、0、1、2または3、特には0または1である。)と、
-一般式(II)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
SiX (4-b) (II)
(式中、
-Xは、上記の意味であり、
-R は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基およびシクロアルケニル基を含む群から選択される非加水分解性有機基であり、
-bは、1、2、3または4である。)と、
-少なくとも1種のポリマーの水性分散液と、
から得られる、組成物。
〔態様2〕
態様1に記載の組成物において、Xは、H、OH、C 1~6 アルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基およびブトキシ基)、C 6~10 アリールオキシ基(特には、フェノキシ基)ならびにC 2~7 アシルオキシ基(特には、アセトキシ基またはプロピオノキシ基)を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
〔態様3〕
態様1または2に記載の組成物において、Xは、H、OHまたはアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)であることを特徴とする、組成物。
〔態様4〕
態様1から3のいずれか一つに記載の組成物において、R は、C ~C 30 アルキル基(特には、C ~C 25 アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C シクロアルキル基およびC ~C シクロアルケニル基)を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一つに記載の組成物において、少なくとも1つの官能基Q は、エポキシ基および/またはヒドロキシ基および/またはエーテル基および/またはアクリル基および/またはアクリロキシ基および/またはメタクリル基および/またはメタクリロキシ基および/またはアミノ基および/またはアルコキシ基および/またはシアノ基および/またはイソシアノ基を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一つに記載の組成物において、一般式(I)の化合物は、式:SiX (式中、特には、XはOHまたはアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)である。)に対応することを特徴とする、組成物。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一つに記載の組成物において、非加水分解性有機R は、C ~C 15 アルキル基(特には、C ~C 10 アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C アルキニル基およびC ~C 10 アリール基)を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
〔態様8〕
態様1から7のいずれか一つに記載の組成物において、非加水分解性有機R は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基およびナフチル基からなる群から選択されることを特徴とする、組成物。
〔態様9〕
態様1から8のいずれか一つに記載の組成物において、当該組成物は、一般式(I)の少なくとも1種の化合物と、一般式(II)の少なくとも2種の(好ましくは少なくとも3種の)化合物と、を含有していることを特徴とする、組成物。
〔態様10〕
態様1から9のいずれか一つに記載の組成物において、一般式(I)の化合物は、0.08~0.2モル、好ましくは0.1~0.15モル、特に好ましくは0.1~0.12モルのモル量で含有されており、一般式(II)の化合物は、0.05~0.1モル(好ましくは0.06~0.09モル、特に好ましくは0.07~0.08モル)のモル量で含有されていることを特徴とする、組成物。
〔態様11〕
態様1から10のいずれか一つに記載の組成物において、少なくとも1種のポリマーは、ポリウレタン類(特には、ポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI))、エポキシ樹脂類、メラミン樹脂類およびポリアクリレート類を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
〔態様12〕
態様1から11のいずれか一つに記載の組成物において、無機粒子(特には、SiO 粒子、Al 粒子、ZrO 粒子、TiO 粒子)が含有されていてもよいことを特徴とする、組成物。
〔態様13〕
態様1から12のいずれか一つに記載の組成物を製造する方法であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および一般式(II)の少なくとも1種の化合物を用意する工程と、
-任意で、少なくとも無機粒子の分散液を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも1種の化合物との混合物に、少なくとも1種の触媒(特には、酸)を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも1種の化合物との反応混合物の水相を分離する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも1種の化合物との分離した水性反応混合物に、少なくとも1種のポリマーを添加する工程と、
を備える、方法。
〔態様14〕
態様1から12のいずれか一つに記載の組成物の、木質繊維ボード、HDFボードまたはMDFボードのエッジをコーティング/シーリングするための使用。
〔態様15〕
態様1から12のいずれか一つに記載の組成物を少なくとも1種有する木質繊維ボード。