(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ミネラル充填ポリカーボネート-ポリアルキレンテレフタレート組成物、成形コンパウンド及び良好な衝撃靭性をもつ成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240311BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240311BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240311BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240311BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/02
C08K3/34
C08K3/013
C08K3/32
(21)【出願番号】P 2021503110
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2019071125
(87)【国際公開番号】W WO2020030640
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ、フーフェン
(72)【発明者】
【氏名】アヒム、フェルダーマン
(72)【発明者】
【氏名】マリウス、ノルト
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-542471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0215140(US,A1)
【文献】特開2002-265770(JP,A)
【文献】国際公開第2007/074603(WO,A1)
【文献】特開平10-139996(JP,A)
【文献】特開2013-032538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物であって、以下の成分:
A)少なくとも1つの芳香族ポリカーボネートを50~70重量%、
B)少なくとも1つのポリアルキレンテレフタレートを16~40重量%、
C)少なくとも1つのタルク系ミネラルフィラーを8~22重量%、
D)
固体として用いられる亜リン酸を0.0110~0.0280重量%、
E)少なくとも1つの添加剤を0~8.0重量%
含有するか、又はこれらのみからなる組成物。
【請求項2】
前記成分Aが、ビスフェノールA系ポリカーボネートを標準として使用した塩化メチレン中のゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、22~28kg/molの重量平均分子量M
Wを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分Bが、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分Bとして、0.58dl/g~0.68dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートが用いられることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
成分Cとして、0.7重量%未満のAl
2O
3含有量を有するタルクが用いられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分C)が、6μm未満の上限粒径d
95を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分Dの成分Bに対する重量比が、0.0003:1~0.0010:1であることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
成分Cと異なるフィラー及び強化剤を含有しない、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記成分Aを54~66重量%、
前記成分Bを20~26重量%、
前記成分Cを12~18重量%、
前記成分Dを0.0120~0.0220重量%、
前記成分Eを0.3~6重量%
含有するか、又はこれらのみからなる、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
成分A~Eのみからなる請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物の前記成分を、200℃~320℃の温度で互いに混合し、続いて冷却し、ペレット化することを特徴とする、成形コンパウンドの製造方法。
【請求項12】
成形品を製造するための、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物から得られうる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性成形コンパウンドを製造するためのポリカーボネート及びポリアルキレンテレフタレートをベースとするミネラル充填組成物、その成形コンパウンド自体、成形品を製造するための該組成物又は成形コンパウンドの使用、並びにその成形品自体に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品は、好ましくは自動車製造に使用され、より好ましくは外装部品として使用される。
【0003】
半結晶性ポリエステル及びミネラルフィラーを含有するフィラー含有ポリカーボネート成形コンパウンド(PC成形コンパウンド)が知られている。
【0004】
欧州特許出願公開第1 992 663A1号には、更なる熱可塑性物質及びタルクを含有するポリカーボネート組成物が開示されている。ポリエステルは、更なる熱可塑性物質としても開示されている。この組成物は、押出法での複雑でない製造、剛性、難燃性、靭性及び熱安定性を特徴とする。
【0005】
米国特許第5,637,643号には、ポリカーボネート、ポリエステル及び表面修飾タルク、さらにホスファイト系酸化防止剤を含有する組成物が開示されている。この組成物は、良好な機械的特性及び良好な熱安定性を特徴とする。
【0006】
特開1995-101623号公報には、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリレートゴム及びタルク、さらに酸化防止剤を含有する組成物が開示されている。この組成物は、車両部品の製造に適しており、高い剛直性及び良好な表面平滑性を特徴とする。
【0007】
特開1994-097985号公報には、ポリカーボネート、タルク、芳香族ポリエステル及び有機リン酸エステルを含有する組成物が開示されている。その組成物は、高剛性、良好な表面特性及び高靭性を有し、高い熱安定性及び機械的強度を有する成形品を製造するのに適している。
【0008】
独国特許出願公開第19 753 541A号には、半芳香族ポリエステル、グラフト共重合体及びミネラルフィラーを含有するポリカーボネート成形コンパウンドが開示されており、該成形コンパウンドは車体外装部品として十分な靭性を示す。しかしながら、クレームされた成形コンパウンドは不十分な耐熱性を示す。
【0009】
欧州特許出願公開第135 904A号には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエン系グラフト共重合体及び4重量%以下の量のタルクを含有するポリカーボネート成形コンパウンドが記載されている。開示された利点は、低い反りと良好な靭性との有利な特性の組合せである。
【0010】
特開平8-176339A号公報には、ミネラルフィラーとしてタルクを含有するポリカーボネート成形コンパウンドが記載されている。ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが、更なる配合成分として使用されうる。成形コンパウンドは、良好な衝撃強度及び表面品質という利点を有すると考えられている。
【0011】
特開平7-025241A号公報には、高い剛性と良好な表面品質とを有するポリカーボネート成形コンパウンドが記載されている。その成形コンパウンドは、ポリカーボネートを60~70重量%、ポリエステルを20~30重量%、アクリレートゴムを5~10重量%、及びタルクを5~10重量%含有し、さらに酸化防止剤を(ポリマー成分100部に対して)0.1~1重量部含有する。
【0012】
国際公開第85/02622号には、リン系酸を用いた、黄変に対して安定化されたポリカーボネート-ポリエステル組成物が開示されている。
【0013】
独国特許出願公開第2414849A1号には、リン化合物を用いた、変色から保護されたポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂との混合物が開示されている。
【0014】
欧州特許出願公開第0417421A1号には、ポリカーボネート-ポリアルキレンテレフタレート組成物用の安定剤として亜リン酸のエステルが開示されている。
【0015】
プラスチック製の車体外装部品は、一般に塗装されなければならない。塗布された塗料層は一般に、高温で焼成及び硬化されなければならない。そのために必要な温度及び期間は、使用される塗料系に依存する。理想的には、車体付属部品のプラスチック材料は、硬化/焼成工程中に、例えば不可逆変形などの変化を示さないものでなければならない。したがって、高い耐熱性を有する熱可塑性ポリカーボネート成形コンパウンドを提供する必要がある。
【0016】
そのような用途では、低い熱膨張率(CLTE)、すなわち高い寸法安定性とともに高い剛性を達成することが、さらにくわえて必要とされることが多い。
【0017】
プラスチック製の車体付属部品に求められる更なる要求は、衝撃を受けたとき、特に低温でも良好な靭性である。
【0018】
くわえて、車体外装部品を製造するために使用される成形コンパウンドは、溶融物において良好な流動性を示さなければならない。
【0019】
ポリカーボネート-ポリエステル成形コンパウンドの製造における溶融混練中及び/又は成形コンパウンドの加工中、例えば射出成形中に、ポリカーボネートとポリエステルとの間の望ましくないエステル交換反応がしばしば起こる。そのような反応は、特に、高い温度、長い滞留時間などの好ましくない条件下及び溶融混練中又は射出成形中の高い機械応力下で起こる。
【0020】
これにより、重要な特性が損なわれる可能性がある。例えば、成形品の耐熱性又は靭性が低下しうる。くわえて、形態的特性が変化する可能性があり、すなわち、ポリエステルの結晶化挙動が乱され、成分であるポリカーボネート及びポリエステルのガラス転移温度が低い値にシフトする可能性がある。したがって、エステル交換反応を大きく抑制することが望ましい。
【0021】
したがって、上述の要件を満たすことを可能にする熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物を提供することが望ましかった。
【0022】
特に、溶融流動性が良好で、衝撃強度が向上し、及び耐熱性が良好な成形品の製造に適した熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物を提供することが望ましかった。
【0023】
さらに、好ましくはポリカーボネートとポリエステルとの間のエステル交換反応が減少し、したがって、好ましくない製造及び加工条件下でも耐熱性及びモルフォロジーが保持されなければならない。
【発明の概要】
【0024】
驚くべきことに、今般、熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物であって、以下の成分:
A)50~70重量%、好ましくは52~68重量%、より好ましくは54~66重量%の、少なくとも1つの芳香族ポリカーボネート、
B)16~40重量%、好ましくは18~30重量%、特に好ましくは20~26重量%の、少なくとも1つのポリアルキレンテレフタレート、
C)8~22重量%、好ましくは10~20重量%、特に好ましくは12~18重量%の、少なくとも1つのタルク系ミネラルフィラー、
D)0.0110~0.0280重量%、好ましくは0.0115~0.0250重量%、特に好ましくは0.0120~0.0220重量%の亜リン酸、
E)0~8.0重量%、好ましくは0.1~7重量%、特に好ましくは0.3~6重量%の、少なくとも1つの添加剤
を含有するか、又はこれらのみからなる組成物によって、上記有利な特性が示されることが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましい実施形態では、組成物は、90重量%の程度まで、より好ましくは95重量%の程度まで、特に好ましくは100重量%の程度まで成分A~Eのみからなる。
【0026】
好ましい実施形態では、組成物は、ゴム変性グラフトポリマーを含まない。
【0027】
好ましい実施形態では、組成物は、ビニル(共)重合体、特にSAN(スチレン-アクリロニトリル)を含まない。
【0028】
好ましい実施形態では、組成物は、リン系難燃剤を含まない。
【0029】
好ましい実施形態では、組成物は、炭素繊維を含まない。
【0030】
成分を含まないとは、その成分が0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0重量%で組成物中に存在することを意味すると理解されるべきである。
【0031】
成分Dの成分Bに対する重量比は、好ましくは0.0003:1~0.0010:1、特に好ましくは0.0004:1~0.0008:1である。これは、良好な機械的特性と、上記エステル交換反応の効果的な抑制との特に有利な組合せをもたらす。
【0032】
さらに好ましい実施形態では、成分Dの割合は、0.0120~0.0160重量%である。
【0033】
なお、相異なる成分の個々の上記の好ましい範囲と好ましい実施形態とは、互いに自由に組み合わせることができる。
【0034】
成分A
本発明において好適な成分Aの芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートは、文献公知であるか、又は文献公知の方法によって製造可能である(芳香族ポリカーボネートの製造については、例えば、Schnell、「ポリカーボネートの化学と物理(Chemistry and Physics of Polycarbonates)」、Interscience Publishers、1964、さらにDE-AS 1 495 626、独国特許出願公開第2 232 877A号、独国特許出願公開第2 703 376A号、独国特許出願公開第2 714 544A号、独国特許出願公開第3 000 610A号、独国特許出願公開第3 832 396A号を参照。芳香族ポリエステルカーボネートの製造については、例えば、独国特許出願公開第3 007 934A号を参照。)。
【0035】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、ジフェノールと、カルボニルハライド(好ましくはホスゲン)及び/又は芳香族ジカルボニルジハライド(好ましくはベンゼンジカルボン酸のジハライド)との反応により、界面法によって、任意選択で連鎖停止剤(例えばモノフェノール)を使用して、かつ任意選択で三官能性以上の分岐剤(例えばトリフェノール又はテトラフェノール)を使用して、製造される。ジフェノールと例えばジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合法を用いた製造も、同様に可能である。
【0036】
芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートを製造するためのジフェノールは、好ましくは式(I)のものである。
【0037】
【0038】
式中、
Aは、単結合、C1~C5-アルキレン、C2~C5-アルキリデン、C5~C6-シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO2-、任意選択でヘテロ原子を含有する芳香環がさらに縮合していてもよいC6~C12-アリーレン、
又は、式(II)若しくは(III)の基であり、
【0039】
【0040】
Bは、いずれの場合も、C1~C12-アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素であり、
xは、出現毎に独立して、0、1又は2であり、
pは、1又は0であり、
R5及びR6は、各X1に対して個々に選択可能であり、互いに独立して、水素又はC1~C6-アルキルであり、好ましくは水素、メチル又はエチルであり、
X1は、炭素であり、
mは、4~7の整数、好ましくは4又は5であり、但し、少なくとも1つの原子X1、R5及びR6は同時にアルキルである。
【0041】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)-C1~C5-アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)-C5~C6-シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン及びα,α-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、さらにこれらの環臭素化及び/又は環塩素化誘導体である。
【0042】
特に好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシビフェニルスルホン、さらにこれらの二-及び四臭素化又は塩素化誘導体、例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン若しくは2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)がとりわけ好ましい。
【0043】
ジフェノールは、個々に、又は任意の所望の混合物の形態で使用することができる。ジフェノールは、文献公知であるか、又は文献公知の方法によって得ることができる。
【0044】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に適した連鎖停止剤としては、例えば、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノール又は2,4,6-トリブロモフェノール、さらに独国特許出願公開第2 842 005A号による4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]フェノール、4-(1,3-テトラメチルブチル)フェノールなどの長鎖アルキルフェノール、並びにアルキル置換基中に合計8~20の炭素原子を有するモノアルキルフェノール又はジアルキルフェノール、例えば、3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、p-イソオクチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール及び2-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール及び4-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノールが挙げられる。連鎖停止剤の使用量は、いずれの場合も使用されるジフェノールの総モルに対して、一般に0.5モル%~10モル%である。
【0045】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、平均分子量(重量平均値MW、ビスフェノールA系ポリカーボネート標準を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定)が、20~40kg/mol、好ましくは20~32kg/mol、特に好ましくは22~28kg/molである。好ましい範囲は、本発明の組成物における機械的特性及びレオロジー的特性の特に有利なバランスを達成する。
【0046】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知の方法で、好ましくは、三官能性以上の化合物、例えば3つ以上のフェノール基を有するものを、使用されるジフェノールの合計に対して0.05~2.0モル%組み込むことによって分岐されうる。直鎖状ポリカーボネートを用いることが好ましく、ビスフェノールA系直鎖状ポリカーボネートを用いることがより好ましい。
【0047】
ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの両方が好適である。また、本発明における成分Aのコポリカーボネートの製造において、使用されるジフェノールの全量に対して、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを1~25重量%、好ましくは2.5~25重量%用いることができる。これらは公知であり(米国特許第3 419 634号)、文献公知の方法によって製造することができる。同様に好適なのは、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートであり、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの製造は、例えば独国特許出願公開第3 334 782A号に記載されている。
【0048】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための芳香族ジカルボニルジハライドは、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’-ジカルボン酸及びナフタレン-2,6-ジカルボン酸のジアシルジクロリドである。
【0049】
イソフタル酸のジアシルジクロリドとテレフタル酸のジアシルジクロリドとの混合物であって、これらの比が1:20~20:1の混合物が特に好ましい。
【0050】
さらに、ポリエステルカーボネートの製造は、二官能性酸誘導体としてカルボニルハライド、好ましくはホスゲンを併用する。
【0051】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のために検討される連鎖停止剤は、上記のモノフェノールだけでなく、それらのクロロ炭酸エステル、さらに、任意選択でC1~C22-アルキル基又はハロゲン原子による置換を有することができる芳香族モノカルボン酸のアシルクロリドである。脂肪族C2~C22-モノカルボニルクロリドも連鎖停止剤として使用することができる。
【0052】
それぞれの場合の連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合はジフェノールのモル数に対して、モノカルボニルクロリド連鎖停止剤の場合はジカルボニルジクロリドのモル数に対して、0.1~10モル%である。
【0053】
また、1つ以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を、芳香族ポリエステルカーボネートの製造に使用することができる。
【0054】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖状でもよく、又は公知の方法で分岐されてもよく(独国特許出願公開第2 940 024A号及び独国特許出願公開第3 007 934A号を参照)、直鎖状ポリエステルカーボネートが好ましい。
【0055】
使用できる分岐剤は、例えば、(使用されるジカルボニルジクロリドに対して)0.01~1.0モル%の量の、トリメソイルトリクロリド、シアヌロイルトリクロリド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボニルテトラクロリド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボニルテトラクロリド若しくはピロメリトイルテトラクロリドなどの三官能性若しくは多官能性の塩化カルボニル、又は使用されるジフェノールに対して0.01~1.0モル%の量の、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプト-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4-[4-ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4-ビス[4,4’-ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンなどの三官能性若しくは多官能性フェノールである。フェノール系分岐剤は、最初にジフェノールとともに装入することができ、酸塩化物分岐剤は、酸二塩化物とともに導入することができる。
【0056】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の割合は、所望により変えることができる。カーボネート基の割合は、エステル基とカーボネート基との合計に対して、好ましくは100モル%以下、特に80モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル部及びカーボネート部はともに、重縮合物中でブロックの形態で存在してもよく、又はランダムに分布して存在してもよい。
【0057】
熱可塑性芳香族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、単独で、又は任意の所望の混合物で使用することができる。
【0058】
成分AとしてビスフェノールA系ポリカーボネートを用いることが好ましい。
【0059】
成分B
本発明によれば、成分Bとしてポリアルキレンテレフタレート又はポリアルキレンテレフタレートの混合物が用いられる。
【0060】
好ましい実施形態では、それらは、テレフタル酸又はその反応性誘導体(例えばジメチルエステル若しくは無水物)と、脂肪族、脂環式若しくは芳香脂肪族ジオールとの反応生成物、並びにこれらの反応生成物の混合物である。
【0061】
したがって、ポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸と、脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族ジオールとに由来する構造単位を含有する。
【0062】
本発明の文脈では、ポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基だけでなく、50モル%以下、好ましくは25モル%以下の量で更なる芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸の部分も含有するポリエステルも包含すると理解されるべきである。これらは、例えば、8~14個の炭素原子を有する芳香族若しくは脂環式ジカルボン酸、又は4~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸、を含有することができる。
【0063】
テレフタル酸及びイソフタル酸のみを用いることが好ましい。
【0064】
本発明におけるポリアルキレンテレフタレートの製造に用いられるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、テトラメチルシクロブタンジオール、イソソルビトール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、3-エチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、並びにこれらの混合物(独国特許出願公開第2 407 674A号、同第2 407 776A号、同第2 715 932A号)が挙げられる。
【0065】
これらのポリアルキレンテレフタレートの慣用名は、例えば、PET、PBT、PETG、PCTG、PEICT、PCT又はPTTである。
【0066】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に対して、テレフタル酸基を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%含有し、かつジオール成分に対して、エチレングリコール基及び/又はブタン-1,4-ジオール基を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%含有する。
【0067】
好ましい実施形態では、テレフタル酸及びその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル)と、エチレングリコール及び/又はブタン-1,4-ジオールとのみから製造されるポリアルキレンテレフタレート、並びにこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が、成分Bとして使用される。
【0068】
特に好ましい実施形態では、成分Bとしてポリエチレンテレフタレートが用いられる。
【0069】
ポリアルキレンテレフタレートは、例えば、独国特許出願公開第1 900 270A号及び米国特許第3 692 744B号に従って、比較的少量の三価若しくは四価アルコール又は三塩基性若しくは四塩基性カルボン酸の取り込みによって分岐されうる。好ましい分岐剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン、並びにペンタエリスリトールである。
【0070】
テレフタル酸及びその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル)と、エチレングリコール及び/又はブタン-1,4-ジオールとのみから製造されたポリアルキレンテレフタレート、並びにこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0071】
好ましく用いられるポリアルキレンテレフタレートの固有粘度は、好ましくは0.52dl/g~0.95dl/g、特に好ましくは0.56dl/g~0.80dl/g、非常に特に好ましくは0.58dl/g~0.68dl/gである。固有粘度を求めるために、まず、ウベローデ粘度計でDIN53728-3に従って、ジクロロ酢酸中の比粘度を1重量%の濃度で25℃にて測定する。
【0072】
次いで、求められるべき固有粘度は、測定された比粘度×0.0006907+0.063096から計算される(×は乗算を表す)。
【0073】
好ましい固有粘度を有するポリアルキレンテレフタレートは、本発明の組成物において機械的特性及びレオロジー的特性の有利なバランスを達成する。
【0074】
ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法(例えば、Kunststoff-Handbuch、第VIII巻、695ページ及びそれ以降、Carl-Hanser-Verlag、ミュンヘン 1973年を参照)によって製造することができる。
【0075】
成分C
成分Cとして、熱可塑性成形コンパウンドは、強化剤としてタルク及び/又はタルク系ミネラルフィラー、あるいは上記強化剤と少なくとも1つの更なる非タルク系強化剤との混合物を含有する。
【0076】
更なる強化剤は、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラス球、セラミック球、珪灰石及びガラス繊維からなる群より選択される。
【0077】
好ましい実施形態では、タルク又はタルク系ミネラルフィラーが唯一の強化剤である。
【0078】
本発明の文脈では、当業者がタルク又はタルカム(talcum)と関連付ける任意の粒状フィラーが、タルク系ミネラルフィラーとして好適である。また、市販され、その製品説明に特色としてタルク又はタルカムという用語が含まれるすべての粒状フィラーが好適である。
【0079】
DIN55920に従ったタルクの含有量が、フィラーの総質量に対して、50重量%超、好ましくは80重量%超、特に好ましくは95重量%超、とりわけ好ましくは98重量%超であるミネラルフィラーが好ましい。
【0080】
タルクとは、天然に存在する又は合成で作られたタルクを意味するものと理解される。
【0081】
純粋なタルクの化学組成は3MgO・4SiO2・H2Oであり、したがって、MgO含有量は31.9重量%、SiO2含有量は63.4重量%、化学的結合水の含有量は4.8重量%である。純粋なタルクは、層状構造を有するケイ酸塩である。
【0082】
天然に存在するタルク材料は、他の元素によるマグネシウムの部分的な置換を通じて、例えばアルミニウムによるケイ素の部分的な置換を通じて、及び/又は他の鉱物(例えばドロマイト、マグネサイト及び緑泥石)との相互成長を通じて汚染されているので、一般に上記の理想的な組成を有しない。
【0083】
成分Cとして特に好ましく用いられるタルクのグレードは、特に高い純度を備え、MgOの含有量が28~35重量%、好ましくは30~33重量%、とりわけ好ましくは30.5~32重量%であり、SiO2の含有量が55~65重量%、好ましくは58~64重量%、とりわけ好ましくは60~62.5重量%であることを特徴とする。
【0084】
特に好ましいタルクのグレードは、さらに、Al2O3含有量が5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、とりわけ0.7重量%未満であることをさらに特徴とする。
【0085】
特に、平均粒径d50が0.1~20μm、好ましくは0.2~10μm、より好ましくは0.5~5μm、さらにより好ましくは0.7~2.5μm、特に好ましくは1.0~2.0μmの微粉砕グレードの形態での本発明におけるタルクを使用することが、有利であり、したがって好ましい。
【0086】
本発明において用いるタルク系ミネラルフィラーは、その上限粒径(particle size)又は上限粒径(grain size)d95が好ましくは10μm未満、好ましくは7μm未満、特に好ましくは6μm未満、とりわけ好ましくは4.5μm未満である。フィラーのd95及びd50の値は、ISO13317-3に従ってSEDIGRAPH D 5 000沈降分析によって測定される。
【0087】
タルク系ミネラルフィラーは、任意選択で、ポリマーマトリックスとのより良好な結合を達成するために表面処理を受けていてもよい。それらは、例えば、官能化シランをベースとする接着促進剤系を備えることができる。
【0088】
粒状フィラーの平均アスペクト比(厚さに対する直径)は、好ましくは1~100、特に好ましくは2~25、とりわけ好ましくは5~25の範囲であり、これらは最終生成物の超薄切片の電子顕微鏡写真及びフィラー粒子の代表量(約50)の測定によって決定される。
【0089】
成形コンパウンド/成形品を得るための加工の結果として、成形コンパウンド/成形品中の粒状フィラーのd95/d50は、最初に使用されたフィラーよりも小さい場合がある。
【0090】
成分D
成分Dとして、組成物は亜リン酸H3PO3を含有する。亜リン酸は固体又は水溶液として使用することができる。固体として使用することが望ましい。本発明の組成物では、これにより、使用されるポリマー成分のコンパウンディング中の安定性が向上し、したがって組成物の機械的特性が向上する。くわえて、酸水溶液よりもコンパウンディングユニットへの計量が容易であり、機械部品の腐食する可能性のあるリスクも大幅に低減する。
【0091】
成分Dはまた、有機又は無機の吸着剤又は吸収剤に結合されていてもよく、この形態で使用することができる。例えばこれは、成分Dを吸着剤又は吸収剤と混合して、組成物のコンパウンディング前に流動性粉末を形成することによって行われる。これらの吸収剤又は吸着剤は、好ましくは、大きな外部及び/又は内部表面積を有する、微細化された、及び/又は多孔質の材料である。
【0092】
これらの材料は、好ましくは熱的に不活性な無機材料、例えば、酸化物又は混合酸化物、ケイ酸塩、シリカ、金属又は遷移金属の硫化物、窒化物である。特に好ましい実施形態では、これらは、微細化された、及び/又は微孔性の、天然若しくは合成起源の、シリカ若しくは酸化ケイ素又はケイ酸塩である。
【0093】
亜リン酸は、ポリカーボネート又はポリエステルをベースとするマスターバッチの形態で使用することも可能である。マスターバッチという用語は、組成物中の意図された使用濃度よりも多い量で亜リン酸が熱可塑性物質(ポリカーボネート又はポリエステル)と予め混合されていることを意味するものとして理解されるべきである。次いで、この混合物を、組成物中の所望の酸濃度が達成されるように、適切な量で組成物に加えられる。
【0094】
成分E
組成物は、成分Eとして市販のポリマー添加剤を含有することができる。
【0095】
成分Eの市販のポリマー添加剤としては、例えば、以下の添加剤が挙げられる。内部潤滑剤、外部潤滑剤及び離型剤(例えばペンタエリスリトールテトラステアレート、モンタンワックス又はポリエチレンワックス)、導電性添加剤(例えば導電性カーボンブラック又はカーボンナノチューブ)、UV/光保護剤、安定剤(例えば熱安定剤)、核剤(例えばフェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、芳香族カルボン酸の塩)、酸化防止剤、エステル交換抑制剤、加水分解保護剤、耐引っ掻き性改良剤(例えばシリコーンオイル)、IR吸収剤、光学的光沢剤、蛍光添加剤、さらに染料及び顔料(例えば二酸化チタン、群青、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン及びアントラキノン)、並びに成分C)と異なるフィラー及び強化剤、あるいは他の複数の上記添加剤の混合物。
【0096】
組成物は、好ましくは、成分Cと異なるフィラー及び強化剤を含有しない。
【0097】
本発明の組成物は、好ましくは少なくとも1つの離型剤、好ましくはペンタエリスリトールテトラステアレートを含有する。
【0098】
好ましい態様では、組成物は、成分Eとして、潤滑剤及び離型剤、UV/光保護剤、安定剤、帯電防止剤、染料、顔料並びに成分C)と異なるフィラー及び強化剤を含んでなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含有する。
【0099】
添加剤は、単独で、又は混合物で/マスターバッチの形態で使用することができる。
【0100】
成形コンパウンド及び成形品の製造
本発明の組成物は、熱可塑性成形コンパウンドを製造するために使用することができる。本発明の熱可塑性成形コンパウンドは、例えば、内部混練機、押出機及び二軸押出機などの慣用の装置で、組成物のそれぞれの成分を、好ましくは200℃~320℃、特に好ましくは240℃~310℃、非常に特に好ましくは260℃~300℃の温度で、よく知られた様式で混合並びに溶融混練及び溶融押出して製造することができる。本出願の文脈において、このプロセスは一般に、コンパウンディングと呼ばれる。
【0101】
したがって、「成形コンパウンド」という用語は、組成物の成分を溶融混練及び溶融押出したときに得られる生成物を意味するものとして理解されるべきである。
【0102】
組成物の個々の成分の混合は、連続的に又は同時に、約20℃(室温)又はより高い温度で既知の方法で実施することができる。これは、例えば、いくつかの成分が、押出機の主取入れ口を介して計量でき、残りの成分が、のちにコンパウンディング工程で側方押出機を介して供給できることを意味する。
【0103】
本発明の成形コンパウンドは、任意の種類の成形品及び半製品を製造するために使用することができる。これらは、例えば、射出成形法、押出法及びブロー成形法によって製造することができる。加工の更なる形態は、前もって製造されたシート又はフィルムから熱成形によって成形品を製造することである。本発明の成形コンパウンドは、押出法、ブロー成形法及び深絞り法による加工に特に適している。
【0104】
半製品としては、例えば、シートが挙げられる。
【0105】
組成物の成分は、射出成形機又は押出装置に直接計量し、成形品に加工することができる。
【0106】
本発明の組成物及び成形コンパウンドから製造できるそのような成形品の例は、フィルム、プロファイル、任意の種類の筐体部品、モニター、フラットスクリーン、ノートブック、プリンター、コピー機などの事務機器用;シート、パイプ、電気設備ダクト、窓、ドア及び他の建設分野向けプロファイル、さらにスイッチ、プラグ及びソケットなどの電気及び電子部品、及び車両向け、特に自動車分野向けの部品である。本発明の組成物及び成形コンパウンドはまた、次の成形品又は成形物の製造に適する。鉄道車両、船舶、航空機、バス及び他の自動車向け内部装具部品、自動車用車体構成部品、小型変圧器を有する電気機器の筐体、情報処理及び伝送用機器の筐体、医療機器用の筐体及び表面仕上げ、マッサージ機及びそのための筐体、子ども用自動車玩具、平面壁要素、安全装置用筐体、断熱輸送コンテナ、衛生及び風呂道具用の成型品、送風機ベント用保護格子、並びに庭道具用筐体。
【0107】
本発明はさらに、上記組成物から製造される成形品、好ましくは、シートなどのシート状成形物、及びミラーハウジング、フェンダー、スポイラー、フードなどの車体部品に関する。
【0108】
成形品は、小さくても大きくてもよく、外部又は内部用途に用いられる。車両構造、とりわけ自動車分野向けの大型成形物を製造することが好ましい。本発明の成形コンパウンドは、とりわけ車体外装部品、例えば、フェンダー、トランクリッド、エンジンフード、バンパー、ロードベッド、ロードベッド用カバー、車両屋根又は他の車体付属部品を製造するために使用することができる。
【0109】
本発明の成形コンパウンド/組成物から作られた成形品/半製品は、更なる材料(例えば金属又はプラスチック)との複合物中に配置することもできる。例えば車体外装部品の任意の塗装の後、本発明の成形コンパウンド及び/又は複合物に使用される材料上に直接、塗料層を配置することができる。本発明の成形コンパウンド及び本発明の成形コンパウンドで作られた成形物/半製品は、例えば共押出、フィルムインサート成形、インサートのオーバーモールディング、接着結合、溶接、ねじ込み又はクランプなどの、いくつかの構成要素又は部品を結合及び接合する慣用の技術を介して、例えば他の材料又はそれ自体との複合物における車体外装部品などの完成部品を製造するために使用することができる。
【0110】
本発明の組成物は、優れた耐熱性及び安定性を特徴とする。本発明の組成物は、さらに、良好な衝撃強度、高い弾性率、良好な流動性、高い耐熱性、及び熱可塑性加工において減少した収縮と併せて、低いCLTEを有する。
【0111】
本発明の更なる実施形態1~38を以下に記載する。
1.熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物であって、以下の成分:
A)少なくとも1つの芳香族ポリカーボネートを50~70重量%、
B)少なくとも1つのポリアルキレンテレフタレートを16~40重量%、
C)少なくとも1つのタルク系ミネラルフィラーを8~22重量%、
D)亜リン酸を0.0110~0.0280重量%、
E)少なくとも1つの添加剤を0~8.0重量%
含有するか、又はこれらのみからなる組成物。
【0112】
2.成分Aが、ビスフェノールA系ポリカーボネートを標準として使用した塩化メチレン中のゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、20~40kg/molの重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、実施形態1による組成物。
【0113】
3.成分Aが、ビスフェノールA系ポリカーボネートを標準として使用した塩化メチレン中のゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、20~32kg/molの重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0114】
4.成分Aが、ビスフェノールA系ポリカーボネートを標準として使用した塩化メチレン中のゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、22~28kg/molの重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0115】
5.成分Aとして、ビスフェノールA系ポリカーボネートが用いられることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0116】
6.成分Bが、テレフタル酸に由来する構造単位と、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸に由来する構造単位50モル%以下とを含有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0117】
7.成分Bが、テレフタル酸及びイソフタル酸以外の酸の構造単位を含有しないことを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0118】
8.成分Bが、テレフタル酸以外の酸の構成単位を含有しないことを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0119】
9.成分Bが、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、プロパンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオール及びイソソルビトールに由来する構造単位を含有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0120】
10.成分Bが、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選択されることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0121】
11.成分Bとして、ポリエチレンテレフタレートが用いられることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0122】
12.成分Bが、0.52dl/g~0.95dl/gの固有粘度を有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0123】
13.成分Bが、0.56dl/g~0.80dl/gの固有粘度を有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0124】
14.成分Bが、0.58dl/g~0.68dl/gの固有粘度を有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0125】
15.成分Bとして、0.58dl/g~0.68dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートが用いられることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0126】
16.成分Cとして、0.7重量%未満のAl2O3含有量を有するタルクが用いられることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0127】
17.成分C)が、6μm未満の上限粒径d95を有することを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0128】
18.成分Dが、固体として用いられることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0129】
19.成分Dが、有機若しくは無機の吸着剤又は吸収剤に結合されて用いられることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0130】
20.成分Dが、シリカに結合されて用いられることを特徴とする、実施形態20による組成物。
【0131】
21.成分Dの成分Bに対する重量比が、0.0003:1~0.0010:1であることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0132】
22.成分Dの成分Bに対する重量比が、0.0004:1~0.0008:1であることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0133】
23.成分Cと異なるフィラー及び強化剤を含有しない、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0134】
24.ゴム変性グラフトポリマーを含まないことを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0135】
25.ビニル(共)重合体を含まないことを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0136】
26.スチレン-アクリロニトリル共重合体を含まないことを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0137】
27.リン系難燃剤を含まないことを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0138】
28.炭素繊維を含まないことを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0139】
29.成分Aを52~68重量%、
成分Bを18~30重量%、
成分Cを10~20重量%、
成分Dを0.0115~0.0250重量%、
成分Eを0.1~7重量%
含有するか、又はこれらのみからなる、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0140】
30.成分Aを54~66重量%、
成分Bを20~26重量%、
成分Cを12~18重量%、
成分Dを0.0120~0.0220重量%、
成分Eを0.3~6重量%
含有するか、又はこれらのみからなる、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0141】
31.成分Dを0.0120~0.0160重量%含有する、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0142】
32.90重量%の程度までの成分A~Eのみからなる、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0143】
33.95重量%の程度までの成分A~Eのみからなる、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0144】
34.成分A~Eのみからなる、前述の実施形態のいずれかによる組成物。
【0145】
35.実施形態1~34のいずれかによる組成物の成分を、200℃~320℃の温度で互いに混合し、続いて冷却し、ペレット化することを特徴とする、成形コンパウンドの製造方法。
【0146】
36.実施形態35による方法によって得られうる成形コンパウンド。
【0147】
37.成形品を製造するための、実施形態1~34のいずれかによる組成物又は実施形態36による成形コンパウンドの使用。
【0148】
38.実施形態1~34のいずれかによる組成物又は実施形態36による成形コンパウンドから得られうる成形品。
【実施例】
【0149】
成分A
分子量(重量平均値MW、ビスフェノールA系ポリカーボネート標準を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定)が24kg/molのビスフェノールA系直鎖状ポリカーボネート
成分B
固有粘度が0.623dl/gのポリエチレンテレフタレート(例えば、ドイツ、Invista製のPET)
比粘度は、ジクロロ酢酸中、1重量%の濃度、25℃で測定する。固有粘度は、次式に従って比粘度から算出する。
固有粘度=比粘度×0.0006907+0.063096
成分C
セディグラフを使用して測定して、平均粒径d50が1.2μm、d95が3.5μmであり、かつAl2O3含有量が0.5重量%であるタルク
成分D
固体としての亜リン酸H3PO3
成分E-1
ブラックパール(Black Pearls)(商標)800カーボンブラック
成分E-2
潤滑剤/離型剤としてのモンタン酸エステルワックス(リコワックス(Licowax)(商標)E)
成分E-3
潤滑剤/離型剤としてのペンタエリスリトールテトラステアレート
【0150】
成形コンパウンドの製造
成分A~Eを含有する本発明の成形コンパウンドは、コペリオン、ヴェルナー及びフライデラー(Coperion,Werner and Pfleiderer)(ドイツ)製のZSK25二軸スクリュー押出機で、270℃~290℃の溶融温度で製造する。
【0151】
試験片の作製と試験
それぞれのコンパウンディングから得られたペレットを射出成形機(例えばアーバーグ(Arburg)製)で270℃の溶融温度、70℃の金型温度で試験片に加工した。
【0152】
溶融流動性は、ISO1133(2012年版)に従って、270℃の温度、5kgの金型荷重で測定したメルトボリュームフローレイト(MVR)によって評価する。
【0153】
耐熱性は、片側から射出成形した、寸法が80×10×4mmの試験片について、DIN ISO306(ビカット軟化温度、荷重50N及び加熱速度120K/時の方法B、2013年版)に従って測定した。
【0154】
衝撃強度は、ISO180/1U(1982年版)に従って、室温(23℃)又は-30℃で、10回の測定(10-fold determination)により、寸法が80mm×10mm×4mmのテストバーについて決定する。
【0155】
以下の例は、本発明の更なる説明に役立つものである。
【0156】
【0157】
表1は、本発明の組成物により、良好な流動性(MVR)を有する成形コンパウンドと、室温及び-30℃での向上した衝撃強度と併せて、高い耐熱性(ビカット)を有する成形品との製造が可能になることを示す。成分Dの濃度がクレームされた範囲外の場合、衝撃強度は不十分である。23℃での衝撃強度が最も向上した実施例2及び3の組成物が、特に好ましい。