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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】アイスクリーム調製装置
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/12 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A23G9/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021508323
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 IL2019050938
(87)【国際公開番号】W WO2020039439
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】261320
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516183462
【氏名又は名称】ソロ ジェラート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ベス ハラチミ,バラク
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507920(JP,A)
【文献】国際公開第2012/122594(WO,A1)
【文献】米国特許第04332145(US,A)
【文献】特表2003-505011(JP,A)
【文献】特開平06-319462(JP,A)
【文献】特開2017-195877(JP,A)
【文献】米国特許第05463878(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結していない材料の混合物から、調製中に相変化温度で少なくとも部分的な相変化を受ける種類の冷凍または半冷凍の含気の1つの食用製品を1回分調製するための装置であって、
チャンバの壁の間に規定される冷却及び処理チャンバであって、前記チャンバ内に材料を導入するための少なくとも1の材料入口と、少なくとも1の完成品出口と、調製段階で混合物を混合および空気混入するための攪拌器とを含む冷却及び処理チャンバと、
前記チャンバに結合され、前記チャンバを冷却するように構成された冷却ユーティリティであって、前記調製段階で放出される熱エネルギーよりも少ない冷却能力を有する冷却ユーティリティと、を備え、
前記チャンバは、前記チャンバの質量前記食用製品の質量との間の質量の比率が5~40の範囲である熱質量を有しており、
前記チャンバが、前記混合物の前記相変化温度未満のデューティ温度に前記冷却ユーティリティによって冷却されて、前記相変化を誘発したときに、ヒートシンクとして機能して、前記チャンバの熱質量が、前記混合物を冷却して前記相変化中にデューティ温度に維持するために必要な熱エネルギーの少なくとも50%を十分に吸収することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置の装置において、
前記熱質量が、前記混合物を冷却して前記相変化中にデューティ温度に維持するために必要な熱エネルギーの少なくとも70%を吸収するのに十分であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記相変化温度が-0.5℃~-6℃であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記相変化温度が、-l℃~-4℃であることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項3に記載の装置において、
前記相変化温度が、-l.5℃~-3℃であることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、
前記チャンバの壁が金属で作られていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
前記金属がアルミニウムであることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項に記載の装置において、
デューティサイクルで作動するように構成され、前記デューティサイクルが、
充填段階であって、前記混合物が前記チャンバ内に導入されて、前記冷却ユーティリティが前記チャンバの壁を前記デューティ温度未満の温度に冷却する、充填段階と、
調製段階であって、前記チャンバをほぼデューティ温度に維持するのに必要な熱エネルギーの一部を吸収するように前記冷却ユーティリティが作動している間に、前記混合物が冷却される、調製段階とを含むことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項に記載の装置において、
デューティサイクルで作動するように構成され、前記デューティサイクルが、
充填前段階であって、前記冷却ユーティリティが前記チャンバの壁を前記デューティ温度未満に冷却する、充填前段階と、
充填段階であって、前記混合物が前記チャンバ内に導入される、充填段階と、
調製段階であって、前記チャンバをほぼデューティ温度に維持するのに必要な熱エネルギーの一部を吸収するように前記冷却ユーティリティが作動している間に、前記混合物が前記相変化温度まで冷却される、調製段階とを含むことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項に記載の装置において、
前記充填前段階では、前記チャンバがスタンバイ温度に維持され、前記製品を調製するために前記装置が作動すると、充填前または充填中に前記デューティ温度まで冷却されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アイスクリーム、シャーベット、フローズンヨーグルト、ソフトクリーム、スラッシュ、シェイク、ブレンドフローズンコーヒー飲料などを含む、調製中に少なくとも部分的に相変化を受ける種類の冷凍または半冷凍の含気食用製品を調製するための装置に関し、特に、家庭用、オフィス用または小規模事業者用の装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本開示の主題の背景として関連性があると考えられる文献を以下に列挙する。
[1]国際公開第2013/121421号
[2]国際公開第2015/022678号
[3]国際公開第2018/109765号
[4]国際公開第2018/008028号
【0003】
本明細書に記載の上記文献は、これらが、本開示の主題の特許性に何らかの形で関連していることを意味するものとして推認されるべきではない。
【0004】
半凍結または凍結した含気食用製品(例えば、アイスクリーム)の調製は、一般に、混合物を形成するための食用材料の混合と、混合物の食感を軟らかくするための混合物へのガス/空気の添加(混合物自体の副産物の場合もある)と、混合物の冷却とを含む。
【0005】
現在、アイスクリームの大部分は、工業的なプロセスで製造されている。このプロセスでは、アイスクリームが大量に製造され、その後、様々なサイズのパッケージに分割され、出荷されてエンドユーザに販売される。
【0006】
また、アイスクリームを家庭内で調製するための機械も知られており、ユーザが自分の好みの食用材料の混合物からアイスクリームを調製することができる。
【0007】
原理的には、そのような家庭用アイスクリーム機械では、ユーザは、材料の混合物を準備し、その混合物を機械に導入し、その後、混合中に混合物を冷却する。一部の機械には、冷却装置が組み込まれているが、他の機械は混合のみを実行するものであるため、ユーザは混合物または機械自体を冷凍庫(または他の冷却チャンバ)内に移動させる必要がある。
【0008】
半凍結または凍結された含気食用製品の規定数食分、典型的には、1回分を準備する装置も知られている[1-3]。そのような機械は、食用製品の1回分を調製するのに適した量の材料を含むカプセルまたは容器[4]を使用する(1回分は、例えば、連邦規則集(CFR)の21章に記載されているように、許容可能なFDAの規定に従って規定されるものであってもよい)。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、非冷凍材料の混合物から、その調製中に少なくとも部分的な相変化を受ける種類の凍結または半凍結の含気食用製品を調製するための装置を提供する。冷凍または半冷凍の含気食用製品は、アイスクリーム、フローズンヨーグルト、ソフトクリーム、ソルベ、シャーベット、グラニテ、ジェラート、シェイク、ブレンドフローズンコーヒー飲料などである。
【0010】
本装置は、チャンバの壁の間に規定される冷却及び処理チャンバを備え、この冷却及び処理チャンバが、チャンバ内に材料を導入するための少なくとも1の材料入口と、少なくとも1の完成品出口(ユーザ/消費者に完成品を分配するための分配出口であってもよい)と、製品の調製段階で混合物を混合および空気混入するための攪拌器とを含む。本装置は、処理チャンバに結合され、処理チャンバを冷却するように構成された冷却ユーティリティも備える。冷却ユーティリティは、それ自体が既知の様々な冷凍原理のうちの1つによって作動する種類のものであってもよい。
【0011】
本開示の装置の特有な特徴は、処理チャンバが、ヒートシンクとして機能するように意図された熱質量を有し、それにより調製段階中に混合物の冷却に積極的に加わることである。すなわち、材料の混合物の相変化を誘導する相変化温度に冷却ユーティリティによって冷却されると、処理チャンバは、混合物を冷却して、調製段階を通して相変化温度に維持するために必要な熱エネルギーの少なくとも50%、多くの場合、55%、60%、65%、70%、75%、そして時には少なくとも80%を受動的に吸収するように機能する。
【0012】
「相変化温度」という用語は、材料の混合物が液体から半固形または粘性状態に相変化する温度を指しており、この温度で、製品が販売されることになる。相変化温度は、材料の性質および製品の所望の食感に固有のものであり、それらに依存する。混合物の性質を考慮すると、明らかに、相変化温度は、固定温度ではなく、温度の低下に伴ってより顕著な相変化を伴う温度の範囲にわたって発生する可能性がある。混合物を相変化温度以下の温度に冷却するためには、処理チャンバの壁を相変化温度未満の温度に冷却し、維持する必要がある。これを本明細書では「デューティ温度」と呼ぶことにする。なお、デューティ温度は、固定温度ではなく、混合物が相変化温度以下の温度に冷却されるが、製品に空気混入して製品を分配することが困難になる程度に製品を固化させるまで冷却し過ぎない温度範囲であることに留意されたい。
【0013】
デューティ温度が調製を通じて維持されるのは、処理チャンバの熱質量によるところが大きい。したがって、冷却ユーティリティは、それ自体、混合物および生成された冷却食用製品を調製段階中に相変化温度以下に維持するために必要な熱エネルギー全体を吸収するのに十分な冷却を提供する能力を必要としないため、電力が比較的低いものとなり得る。比較的低い電力の冷却ユーティリティの要件により、全体のサイズ、容量を大幅に低減することができ、いくつかの実施形態では、装置のエネルギー消費量を削減することができる。
【0014】
相変化温度は、通常、約-0.5℃~約-6℃の範囲であり、典型的には約-l℃~約-4℃の範囲であり、好ましくは約-l.5℃~約-3℃の範囲である。材料を投入する前のチャンバおよびその壁の初期温度は、典型的には、相変化温度よりも遥かに低く、例えば約-6℃~約-24℃であり、材料がチャンバ内に投入されると、壁の温度がデューティ温度まで上昇する。
【0015】
チャンバの壁は、通常は金属、例えばアルミニウム、ステンレス鋼などで作られており、他の金属、セラミックまたはポリマーでコーティングされるものであってもよい。
【0016】
一実施形態では、本装置は、1回分の製品を調製するように構成されている。そのような製品は、典型的には約75~200g、通常は約100~170g、望ましくは約110~150gの質量を有する。そのような用途の場合、主にアルミニウムで作られたチャンバは、約1~3kg、典型的には約1.5~2.5kgの全体的な質量を有し得る。したがって、金属チャンバと食品との間の質量の比率は、典型的には約5~40の範囲であり、望ましくは約10~30の範囲である。
【0017】
本装置は、典型的には、デューティサイクルで作動するように構成され、このデューティサイクルが、冷却ユーティリティが処理チャンバの壁をデューティ温度未満に冷却する充填前段階と、混合物を処理チャンバ内に導入する充填段階と、処理チャンバをデューティ温度に維持するのに必要な熱エネルギーの一部のみを吸収するように冷却ユーティリティが作動している間に、混合物を相変化温度まで冷却する調製段階とを含む。いくつかの実施形態では、充填前段階において、処理チャンバが所定のスタンバイ温度に維持され、その後、製品を調製するために装置が作動されると、処理チャンバが、充填前または充填中に、デューティ温度まで冷却される。
【0018】
本明細書において、「約」という用語は、温度、圧力、濃度などのパラメータの具体的に言及した値から±20%の偏差を包含することを意味する。
【0019】
本明細書で数値範囲が示されているときはいつでも、それは、示された範囲内で引用された任意の数値(端数または整数)を含むことを意味する。本明細書では、第1の表示数字と第2の表示数字と「の間の範囲」という表現と、第1の表示数字「から」第2の表示数字「までの範囲」という表現は、互換的に使用されるものであり、第1および第2の表示数字、並びに、それらの間のすべての端数および整数を含むことを意味している。