(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】がんの治療用の薬学的組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240311BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
A61K 45/06 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/06
(21)【出願番号】P 2021517299
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019053651
(87)【国際公開番号】W WO2020069439
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-26
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507208277
【氏名又は名称】ムスク・ファウンデイション・フォー・リサーチ・ディベロップメント
【氏名又は名称原語表記】MUSC FOUNDATION FOR RESEARCH DEVELOPMENT
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー・ディモア
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527299(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150312(WO,A1)
【文献】Mol. Cancer Ther.,2013年,vol.12, issue 5,p.685-695
【文献】J. Clin. Oncol.,2018年05月,vol.15, suppl.,Abstract 3530,https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2018.36.15_suppl.3530
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/06
A61K 39/395
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療する方法における使用のための、
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体を含む医薬組成物であって、前記方法が治療有効量のPD-1
抗体と組み合わせて治療有効量の
前記ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体をヒト患者に投与することを含む、医薬組成物。
【請求項2】
PD-1
抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、またはアテゾリズマブである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
がんが、乳がん、血管肉腫、肺がん、骨肉腫、黒色腫、非小細胞肺がん、または腎臓がんである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体の前記投与が、PD-1
抗体の前記投与に先行する;PD-1
抗体の前記投与が、
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体の前記投与に先行する;
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体が、PD-1
抗体に付随して投与される;またはPD-1
抗体が、
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体に付随して投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体が、3日毎に1回、週毎に1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回投与される;および/またはPD-1
抗体が、3日毎に1回、週毎に1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記PD-1
抗体がニボルマブであり、かつ前記対象に投与されるニボルマブの量が3週毎の3mg/kg体重、2週毎の240mgまたは4週毎の480mgである;前記PD-1
抗体がペムブロリズマブであり、かつ前記対象に投与されるペムブロリズマブの量が、3週毎の200mgである;前記PD-1
抗体がアベルマブであり、かつ前記対象に投与されるアベルマブの量が2週毎の800mgである;前記PD-1
抗体がデュルバルマブであり、かつ前記対象に投与されるデュルバルマブの量が2週毎の10mg/kg体重である;前記PD-1
抗体がセミプリマブであり、かつ前記対象に投与されるセミプリマブの量が3週毎の250mgである;前記PD-1
抗体がアテゾリズマブであり、かつ前記対象に投与されるアテゾリズマブの量が2週毎の840mg、3週毎の1200mgまたは4週毎の1680mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記対象が
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体療法を開始する前にPD-1
抗体療法を与えられている、または前記対象がPD-1
抗体療法を開始する前に
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体療法を与えられている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記対象が、第2の療法を開始する前に第1の療法を少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも24週間、少なくとも28週間、少なくとも48週間または少なくとも52週間与えられている、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体ならびに/またはPD-1
抗体の周期投与が少なくとも3日間、少なくとも30日間、少なくとも42日間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも24週間または少なくとも6か月間継続される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記患者が、前記併用療法を与えられる前にPD-1
抗体療法を以前に与えられ、かつPD-1
抗体療法を与えることを中止された患者である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記患者が以前にPD-1
抗体療法に応答しなかったか、または前記PD-1
抗体が前記患者の治療に失敗した、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ある量のPD-1
抗体およびある量の
ヒト化SFRP2
モノクローナル抗体を含む、請求項1-
11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月27日に出願された米国仮出願第62/737,155号の優先権を主張し、該仮出願の全内容はこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、それを必要とする患者への単剤療法としてのまたは同時もしくは逐次的にPD-1アンタゴニストと組み合わせたSFRP2アンタゴニストの投与を含むがんの治療のための療法を対象とする。
【0003】
本出願において参照される全ての刊行物、特許、特許出願、および他の参考文献は、各個々の刊行物、特許、特許出願または他の参考文献が、全ての目的のために参照により全体が組み込まれることを特に個別的に指し示されたのと同じ程度まで全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献の参照は、そのようなものが本発明の先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。
【背景技術】
【0004】
Wntリガンドは、frizzled受容体として公知の細胞表面Gタンパク質共役膜貫通型受容体への結合を通じて下流のエフェクターを活性化させる分泌性糖タンパク質である。Wntシグナル伝達の活性化は正常な胚発生に関与するが、この経路の調節異常は様々ながんについて腫瘍進行に関連付けられている(1、2)。分泌性frizzled関連タンパク質(SFRP)は以前に、カノニカルなWnt-ベータ(β)-カテニン経路の阻害因子と認識されており(1)、SFRP2は腫瘍抑制因子である可能性を示唆する。しかしながら、いくつかの追加の研究は、SFRP2はアンタゴニストではなくβ-カテニンアゴニストとして作用できることを示しており(3~7)、腫瘍促進における役割を示唆する。
【0005】
実質的な証拠は現在、乳がん(5、8~11)、血管肉腫(9、10)、骨肉腫(12)、横紋筋肉腫(13)、肺胞軟部肉腫(14)、悪性神経膠腫(15)、多発性骨髄腫(16)、腎細胞癌(2)、前立腺がん(17)、肺がん(18)、および黒色腫(19)において腫瘍成長を促進するSFRP2の寄与を強く支持する。追加的に、インビボ(in vivо)SFRP2分子イメージングは、SFRP2発現が腫瘍サイズと比例して増加することを示しており(20)、本発明者らは、マウスSFRP2モノクローナル抗体はインビボで血管肉腫および乳がんの成長を阻害することを示した(21)。さらには、Techavichit et alは、SFRP2が転移性骨肉腫において高度に過剰発現され、低転移性骨肉腫細胞における過剰発現はインビボで転移を増加させる一方、高転移性骨肉腫におけるSFRP2のノックダウンはインビトロ(in vitrо)で細胞遊走および浸潤を減少させることを示した(12)。腫瘍細胞に対するSFRP2の直接的な効果に加えて、SFRP2は腫瘍血管新生に関与する(9、10、19、22~24)。したがって、SFRP2は、腫瘍成長の直接的な活性化および血管新生の活性化に対する二次的な効果において二重の役割を果たす。
【0006】
内皮細胞において、SFRP2は、カノニカルなβ-カテニン経路ではなく非カノニカルなWnt/Ca2経路を活性化させて血管新生を刺激する(22、24)。Wnt/Ca2+経路は、Gタンパク質およびホスホリパーゼの活性化を通じて媒介される。これは、細胞質の遊離カルシウムの一過性の増加、および活性化T細胞核因子(NFAT)を脱リン酸化するホスファターゼ、カルシニューリンの活性化に繋がり、NFATは次に細胞質から核に移動する。増加しつつあるデータは、細胞成長、生存、浸潤および血管新生を含む腫瘍成長の媒介におけるNFATの不可欠な役割を支持する(25)。NFATタンパク質はまた、T細胞の活性化を含む、免疫系の発生および機能において決定的な役割を有する。特に核内NFATは他の転写因子と協同して、IL2およびシクロオキシゲナーゼ2(27)を含む免疫系の機能に関与する色々な遺伝子を調節する(26)。
【0007】
併用療法
がんなどの所与の状態を治療するための2つの薬物の投与は多数の潜在的な問題を生じさせる。2つの薬物の間のインビボ相互作用は複雑である。任意の単一の薬物の効果はその吸収、分布、および排除と関係する。2つの薬物が身体に導入された場合、各薬物は他方の吸収、分布、および排除に影響し、それゆえ他方の効果を変更させることがある。例えば、1つの薬物は、他の薬物の排除の代謝経路に関与する酵素の産生を阻害し、活性化させまたは誘導し得る(44)。一例では、グラチラマー酢酸塩(GA)およびインターフェロン(IFN)の併用投与は、いずれかの療法の臨床的有効性を妨げることが実験的に示されている(49)。別の実験において、IFN-βとの併用療法におけるプレドニゾンの添加はその上方調節因子効果をアンタゴナイズすることが報告された(48)。そのため、同じ状態を治療するために2つの薬物が投与される場合、それぞれが対象において他方の治療活性を補うのか、それに対して効果を有しないのか、それともそれに干渉するのかは予測することができない。
【0008】
2つの薬物の間の相互作用は各薬物の意図される治療活性に影響し得るだけでなく、相互作用は毒性代謝物のレベルを増加させ得る(44)。相互作用はまた、各薬物の副作用を上昇または低下させることがある。それゆえ、疾患を治療するための2つの薬物の投与において、どのような変化が各薬物の負の側面のプロファイルにおいて起こるのかは予測することができない。一例では、ナタリズマブおよびインターフェロンβ-1aの組合せは、予期されない副作用のリスクを増加させることが観察された(47、45、46)。
【0009】
追加的に、2つの薬物の間の相互作用の効果がいつ現れるのかを正確に予測することは困難である。例えば、薬物間の代謝相互作用は、第2の薬物の初期投与時、2つの薬物が安定状態濃度に達した後または薬物のうちの1つの中止時に明らかとなり得る(44)。
【0010】
したがって、出願時の当該技術分野の状態は、2つの薬物、特にPD-1アンタゴニストと共にSFRP2アンタゴニストのアドオン(add-on)または併用療法の効果は、併用研究の結果が利用可能となるまで何らかの合理的な確実性を以って予測することはできないというものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、治療有効量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストを含む、薬学的組合せを対象とする。本発明はまた、それを必要とする患者への治療有効量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストの同時のまたは逐次的な投与を含む、がんの治療方法を対象とする。本発明はまた、それを必要とする患者への治療有効量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの投与を含む、ある特定のがんの治療方法を対象とする。
【0012】
以下に説明される図面は、実例的な目的のものに過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】Gp100反応性マウス脾臓T細胞を単独で、またはHs578T(上行)もしくはRF420細胞(下行)の存在下で3日間培養し、3日間処理した。強度をFACS分析により各条件について測定した。抗CD3および抗CD28抗体(TCR刺激)を陽性対照としてこの実験のために使用した。抑制パーセントを分裂指数(division index)法に基づいて算出した。分裂指数は、増殖指数に分裂細胞のパーセンテージを掛けることにより算出され、そのため集団全体の分裂状態を表す。実験を3回繰り返した。代表的なオーバーレイを左に表し、全ての反復からの累積データを棒グラフに提示する(*p<0.01)。
【
図2】A)FZD5タンパク質はT細胞中に存在する。B~C)T細胞をSFRP2(30nM)を用いて1h処理し、(B)核および(C)細胞質画分を単離した。指し示されるタンパク質マーカーに対する抗体を用いて試料をプロービングした。D)T細胞を単独または組合せで抗原gp100(0.87μM)またはhSFRP2 mAb(10μM)を用いて60分間処理し、核画分を単離した。SFRP2処理細胞中のNFATc3のタンパク質レベルを非処理細胞におけるものと比較した
。A~
C)アクチン:細胞質画分用のローディングコントロール;ヒストンH3およびTATA:核画分用のローディングコントロール。B~D)ImageJを使用してデンシトメトリーを行い、平均強度に各バンドの表面を掛けることにより密度を算出した。ローディングコントロールを使用して試料内のばらつきを排除した。各値を非処理対照(B~D)または抗原処理試料(D)に対して正規化することにより最終結果を得た。
【
図3】A)脾臓T細胞をIL2、IL2+TCR抗原、IL2+TCR抗原+TGFb、またはIL2+TCR抗原+TGFbおよびhSFRP2 mAbのいずれかを用いて処理した。タンパク質溶解液を抽出し、SFRP2のためのウエスタンブロットプロービングに供した。これは、SFRP2は、TCRおよびTGFbと共に増加し、hSFRP2 mAbと共に減少することを示す。B)NAD+濃度 マウス脾臓細胞を、TCR/TGFβ(5ng/ml)有りまたは無し、およびhSFRP2 mAb(10nM)有りまたは無しで3日間IL-2(6,000u/ウェル)を用いて処理した(n=3/群)。hSFRP2 mAbは、非処理対照と比較してNAD+濃度を増加させた(*p=0.02)。C)CD38+細胞の数(Z軸)。36時間であることを除いて上記のように細胞を処理した。TCR/TGFβの添加と共にCD38+細胞が増加し、それはhSFRP2 mAbにより有意に阻害された(n=3、** p<0.001)。
【
図4】SFRP2 mAbはT細胞においてPD-1を阻害する。脾臓(Spleenic)T細胞をIL2単独、またはTCR抗原およびTGFBと共にIL2、またはTCR抗原およびTGFBおよびhSFRP2 mAbと共にIL2を用いて処理する。細胞をFACSにより分析した。TCRおよびTGFBはPD-1を増加させ棒グラフ、それはhsFRP2 mAbを用いて逆転される。
【
図5】A)骨肉腫RF420細胞をC57BL6マウスの静脈内に注射した。IgG1対照またはhSFRP2 mAbを用いる処置(3日毎の4mg/kg)を腫瘍細胞の注射の10日後に開始した。3週後に動物を安楽死させ、肺を切除し、表面小結節をカウントした*:p≦0.0001;n=12)。B)腫瘍転移を伴う代表的な肺。C)RF420細胞を注射され、IgG1対照またはhSFRP2 mAbを用いて処置されたC57BL/6マウスの脾臓から単離されたT細胞。細胞をCD38、蛍光色素を用いて染色し、平均蛍光強度(MFI)をFACSにより分析した。各処置についての4つの異なる脾臓から単離されたT細胞から得られた蛍光の測定値を示す棒グラフ(n=4)。CD38は、脾臓細胞およびTILの両方においてhSFRP2 mAbと共に統計的に異なっていた* p≦0.001。
【
図6】RF420マウス骨肉腫細胞をC57BL/6マウスの尾静脈に注射した。7日目に開始してマウスをIgG1対照、hSFRP2 mAb、マウスPD-1 mAb、または両方の抗体の組合せのいずれかを用いて21日間処置した。マウスを安楽死させ、肺を回収した。H&Eによる表面転移および微小転移の数を各群においてカウントした。PD-1 mAb処置に伴う転移(mets)の数の減少は無かった。単剤療法としてのhSFRP2と共に転移数の有意な減少があり(p<0.001)、それは組合せを用いてさらに増加した(p<0.001)。
【
図7】ヒト化SFRP2 mAbインビトロ活性。(A)濃度応答曲線EC
50:半数最大有効濃度;Kd:平衡解離定数;Hill:ヒル係数。(B)棒グラフ(C~H)Hs578T乳がん細胞(C~E)、およびSVR血管肉腫細胞(F~H)におけるアポトーシス(C、F;n=8)、および壊死(D、G;n=8)増殖(E、H;n=12)に対する増加性濃度のhSFRP2 mAb(0~10μM)の効果を示す棒グラフ。*:p≦0.05;**:p≦0.001。増殖はCyquant(登録商標)を使用して測定し、アポトーシスおよび壊死はアネキシンVおよびヨウ化プロピジウムを使用して測定した。アポトーシスおよび壊死についての結果は、それぞれ4つのウェルを含有する2つの独立した実験の集計である、n=8)。増殖について提示される結果は、それぞれ4つの反復を含有する3つの実験の集計である(n=12)。
【
図8】血管肉腫および乳がんにおける腫瘍成長におけるヒト化SFRP2 mAbの効果。A)AUC:曲線下面積;T1/2:半減期;CL:クリアランス;Vd:分布容積;Cmax:最大血清濃度。各データ点は、少なくとも3つの独立した試料の測定値の平均±SEMを表す(n=3/時点)。A~C)日は、腫瘍接種から30日であるベースライン日からカウントされる。
【
図9】ヒト化SFRP2 mAb処置は腫瘍においてアポトーシスを促進する。上の棒グラフは、IgG1対照処置腫瘍(黒棒)と比較してhSFRP2 mAbを用いて処置された腫瘍(白棒)におけるアポトーシス細胞の数の増加を示す。*:p≦0.05。下の画像:パラフィン包埋SVR(上パネル)およびHs578T(下パネル)腫瘍を切片化し、TUNEL染色のために処理した。各腫瘍について、計5つの視野を写真撮影し、アポトーシス細胞(褐色)の数を各視野においてカウントし、各腫瘍について平均化した。処置(n=10)当たり計10の腫瘍を分析のために使用した。
【
図10】ヒト化SFRP2 mAbは転移性骨肉腫成長を低減する。A)処置後の肺表面小結節の数。B)脾臓細胞およびTILをIgG1対照およびhSFRP2 mAbを用いて処置されたマウスから回収し、フローサイトメトリーに供した。
【
図11】ヒト化SFRP2 mAbおよびニボルマブの組合せは転移性骨肉腫成長を阻害する。A)様々な処置後の肺表面小結節の数。B)各処置について4つの異なる脾臓から単離されたT細胞から得られた蛍光の測定値を示すグラフ(n=4)、*** p≦0.001。平均蛍光強度(MFI)。
【
図12】変異型抗体を使用したSFRP2競合ELISA。
【
図13】SDS Page。4~12%のNuPAGE-SDSゲル上の1μgの精製されたリードhSFRP2 mAb。
【
図14】試験抗体に対する健常ドナーT細胞増殖応答。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において用いられる学術用語は、特定の実施形態を記載する目的のために過ぎず、限定的であることは意図されないことが理解されるべきである。さらに、本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法、デバイスおよび材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、ある特定の方法、デバイスおよび材料がこれより記載される。
【0015】
本発明は、がんを治療する方法であって、それを必要とする対象にある量のSFRP2アンタゴニストおよびある量のPD-1アンタゴニストを投与することを含み、量が、合わさった場合に、対象を治療するために有効なものである、方法を提供する。本発明はまた、ある量のSFRP2アンタゴニスト、例えばSFRP2 mAb、およびある量のPD-1アンタゴニスト、例えば抗PD-1抗体を含む、薬学的組合せを提供する。一実施形態では、インビボで脾臓細胞および腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)におけるCD38を低減し、かつインビボでの腫瘍成長の阻害においてPD-1抗体と優れた随伴性効果を有する、新規のヒト化SFRP2モノクローナル抗体(hSFRP2 mAb)が提供される。別の実施形態では、ヒト化SFRP2モノクローナル抗体はインビトロでリンパ球におけるPD-1を低減する。そのため、本発明のhSFRP2 mAbは、複数の細胞種において非カノニカルなWNT経路を阻害することにより細胞機能に影響する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2アンタゴニスト、CD38アンタゴニスト、および/またはPD-1アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2アンタゴニスト、CD38アンタゴニスト、およびPD-1アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2アンタゴニストおよび/またはCD38アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2アンタゴニストおよびCD38アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2アンタゴニストまたはCD38アンタゴニストおよび治療有効量のPD-1アンタゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2アンタゴニストおよび治療有効量のPD-1アンタゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0022】
一実施形態では、SFRP2アンタゴニストは、(a)特異的にSFRP2受容体に結合してその活性化を阻害する抗体、もしくは抗体の抗原結合断片、または(b)特異的にSFRP2リガンドに結合してSFRP2リガンドのSFRP2受容体への結合を阻害する可溶性形態のSFRP2受容体である。
【0023】
一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、(a)特異的にPD-1受容体に結合してその活性化を阻害する抗体、もしくは抗体の抗原結合断片、または(b)特異的にPD-1リガンドに結合してPD-1リガンドのPD-1受容体への結合を阻害する可溶性形態のPD-1受容体である。
【0024】
肉腫は、それぞれが独特の臨床的および病理学的な質を有する50より多くの異なるサブタイプを含む悪性腫瘍の不均質群である。一般に、50%の死亡率であり、ほとんどの治癒は、放射線療法有りまたは無しでの完全な外科的切除を用いて達成される。切除不能性または転移性疾患に対する化学療法剤からの結果は、最小の長期利益および転移性疾患を有する患者についてのわずか15%の5年生存との失望的なものであった(34)。ドキソルビシンは、20%~25%の奏効率を生じさせている。PD-1阻害剤が最近、肉腫に対して研究されている。ニボルマブを用いて処置された転移性軟組織肉腫を有する28人の患者のレトロスペクティブ研究において、50%の患者は部分的な応答または安定した疾患を有した(35)。肉腫において標的化剤の何らかの活性があるが、応答および転帰を向上させるために、向上した治療剤、および治療法の新規の組合せが必須である。この研究において本発明者らは、免疫原性でなくかつ高い親和性でSFRP2に結合するヒト化SFRP2 mAbの開発を報告する。hSFPR2 mAbは3つの腫瘍細胞系(血管肉腫、骨肉腫、および乳癌-肉腫)において単剤として腫瘍成長を抑制するだけでなく、骨肉腫においてこの効果はPD-1阻害剤単独よりはるかに優れていた。
【0025】
PD-1受容体またはそのリガンドPD-L1のいずれかの遮断は、黒色腫、非小細胞肺がん、および腎臓がんを有する患者におけるフェーズIII試験において全生存を向上させた。早期研究は、PD-1経路遮断は多くの他の種類のがんにおいて患者のサブセットに利益を与え得ることを示唆する。それにもかかわらず、患者の大部分はPD-1経路遮断に応答せず、奏効率の向上への洞察が不可欠に必要とされる(36)。
【0026】
本発明者らおよび他の者らは以前に、血管新生および腫瘍細胞に対するSFRP2の役割を示したが(9、10、19、20、22、24)、本発明者らの本研究は、新たな機序:SFRP2は内皮細胞および腫瘍細胞においてだけでなく、T細胞においてもNFATを刺激することを明らかにする。カルシニューリン/NFAT経路阻害剤サイクロスポリンAはPD-1を遮断できるので、CD4およびCD8 T細胞のTCR刺激後のPD-1誘導はNFATを要求する(37、38)ことを考慮して、本発明者らは、SFRP2の遮断はエフェクターT細胞の疲弊を低減し、より良好な腫瘍制御に繋がるという仮説を立てた。本発明者らのデータは、疲弊マーカー、CD5、およびCD103発現は変更されなかったが、T細胞上でのその発現が腫瘍制御と逆相関することが最近示された非カノニカルなエクトヌクレオチダーゼCD38(39)の発現における低減があったことを示す。CD38は抗腫瘍T細胞応答を調節し、T細胞上のCD38の遺伝子アブレーションまたは抗体媒介性標的化は腫瘍制御を向上させる。追加的に、CD38の発現が低減したT細胞はまた、高いエフェクターサイトカイン分泌能力を維持することが示され、PD-1を発現するにもかかわらず機能不全でなかった。CD38発現はまた、固定されたクロマチン状態を有する初期化不可能なPD1hi機能不全T細胞上に高発現されることが示された(40)。追加的に、組み合わせたPD-1およびCTLA-4遮断は、マウスにおいてCD38欠損腫瘍を根絶し、組み合わせたPD-1およびCTLA-4遮断抗体を用いて処置された腫瘍保有マウスは、CD38の上方調節を通じて抵抗性を発生させる(41)。そのため、CD38発現の低下は、腫瘍誘導性疲弊からT細胞をレスキューし得る。
【0027】
カルシウムおよびNFATシグナル伝達は様々な細胞種においてCD38発現を調節することが示されているので(42)、SFRP2のその阻害はT細胞においてCa2+/NFATシグナル伝達の減少に繋がってCD38発現の低減を結果としてもたらした可能性がある。B細胞において、NFATc1はCD38発現のために不可欠であることが報告されており(43)、それにより本発明者らは、hSFRP2 mAbはT細胞においてNFATc3に対するその阻害効果を介してCD38を低減し得るという仮説を立てた。しかしながら、本発明者らのデータは、PD-1と共にSFRP2の阻害はより良好な腫瘍制御に繋がることを支持し、これはT細胞におけるCD38に起因する免疫抑制の低減および腫瘍におけるWntシグナル伝達経路の両方を標的化することに起因する可能性がある。本発明者のデータが無ければ、そのような組合せがより良好な腫瘍制御を有することを予期する理由は無かった。
【0028】
一実施形態では、対象は、対象の身体中の任意の細胞、例えば、T細胞が、そのような増加した発現を有しない対応する健常対象またはがん対象よりも高いCD38および/またはPD-1の発現を有する場合に、CD38および/またはPD-1の増加した発現を有する。
【0029】
定義
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的対象の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本開示において使用される。
【0030】
「対象」はヒトであり、「対象」および「患者」という用語は本明細書において交換可能に使用される。
【0031】
対象に関する「治療する」という用語は、例えば、疾患もしくは障害の阻害、退縮、もしくは静止を誘導すること、または障害を治癒し、改善させ、もしくは少なくとも部分的に寛解させること、または疾患もしくは障害の重症度を和らげ、減少させ、抑制し、阻害し、低減し、その症状を排除もしくは実質的に排除し、もしくは寛解させることを包含する。対象における疾患進行または疾患合併症の「阻害」は、対象において疾患進行および/または疾患合併症を予防または低減することを意味する。
【0032】
がんと関連付けられる「症状」は、がんと関連付けられる任意の臨床的または実験所見を含み、対象が感知または観察できるものに限定されない。
【0033】
「対象への投与」または「(ヒト)患者への投与」は、状態、例えば、病理学的状態と関連付けられる症状を緩和、治癒、または低減するために対象/患者に薬剤、薬物、または治療薬を与え、分注し、または塗布することを意味する。投与は周期投与であることができる。
【0034】
本明細書において使用される場合、「周期投与」は、期間により分離された繰返し/反復投与を意味する。投与間の期間は、好ましくは、回毎に一貫している。周期投与は、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、週毎、週2回、週3回、および週4回などの投与を含むことができる。
【0035】
本明細書において使用される場合、「単位用量」(unit dose)、「単位用量」(unit doses)および「単位投薬形態」は、単一の薬物投与実体を意味する。
【0036】
本明細書において使用される場合、PD-1アンタゴニストおよび/またはSFRP2アンタゴニストの量を指す場合の「有効な」または「治療的に有効な」は、所望の治療奏功をもたらすために十分なPD-1アンタゴニストおよび/またはSFRP2アンタゴニストの量を指す。ある特定の実施形態では、有効量は、所望の治療的または予防的な結果を達成するための、必要な投薬量および期間での、有効な量を指す。本発明のSFRP2アンタゴニストおよび/またはPD-1/PD-L1アンタゴニストもしくは阻害剤の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する1つまたは複数の抗体の能力などの要因にしたがって変動し得る。治療有効量は、1つまたは複数の抗体の任意の毒性または有害効果を治療的に有益な効果が凌ぐ量を包含する。一実施形態では、SFRP2アンタゴニストの量およびPD-1アンタゴニストの量は、組合せで投与される場合に、対象を治療するために有効なものである。ある特定の実施形態によれば、本発明の抗体は、0.lmg/kg体重~100mg/kg体重の量で投与される。他の実施形態によれば、本発明の抗体は、0.5mg/kg体重~20mg/kg体重の量で投与される。追加の実施形態によれば、本発明の抗体は、1.0mg/kg体重~10mg/kg体重の量で投与される。
【0037】
本明細書において使用される一般用語の以下の略語は、問題とする用語が単独で現れるのか、それとも他の群と組み合わせて現れるのかにかかわらず適用される:
曲線下面積(AUC);ウシ血清アルブミン(BSA);カルシウム(Ca2+);カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE);クリアランス(CL);解離定数(Kd);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);ウシ胎仔系(Fetal Bovine System;FBS);蛍光活性化細胞選別(FACS);Frizzled 5(FZD5);ヒト化SFRP2モノクローナル抗体(hSFRP2 mAb);ヒト組換え分泌性frizzled関連タンパク質2(hrSFRP2);ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP);半数最大有効濃度(EC50);静脈内(i.v.);腹腔内(i.p.);改変基礎イーグル培地(DMEM);平均蛍光強度(MIF);ノンコンパートメント解析(NCA);活性化T細胞核因子(NFAT);薬物動態(PK);プログラム細胞死タンパク質1(PD-1);分泌性frizzled関連タンパク質2(SFRP2);T細胞受容体(TCR);消失半減期(T1/2);および分布容積(Vd)。
【0038】
本発明の組合せは、少なくとも本明細書に記載されるような薬学的に許容される担体、添加剤、佐剤または媒体と共に、その同時、別々または逐次の投与のために製剤化されてもよい。そのため、2つの活性化合物の組合せは、
・同じ医薬製剤の部分である組合せ(2つの活性化合物は同時に投与される)として、または
・それぞれが活性物質のうちの1つを有する2つの単位の組合せ(同時、逐次もしくは別々の投与の可能性を生じさせる)
として投与されてもよい。
【0039】
本明細書において使用される場合、「組合せ」(併用)は、同時投与または同期間投与のいずれかによる療法において使用するための試薬の集合体を意味する。同時投与は、PD-1アンタゴニストならびにSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの混合物(真の混合物、懸濁液、エマルションまたは他の物理的組合せのいずれであれ)の投与を指す。この場合、組合せは、混合物または投与の直前に組み合わせられるPD-1アンタゴニスト SFRP2、CD38、および/もしくはPD-1アンタゴニストの別々の容器であってもよい。同期間投与、または随伴的な投与は、PD-1アンタゴニストならびにSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの同時での、またはPD-1アンタゴニスト単独 SFRP2、CD38、および/もしくはPD-1アンタゴニスト単独のいずれかの活性と比べて相乗的な活性が観察される十分に近い時点における、または各剤の個々の治療効果が重なり合うことを可能とする十分な時間的近接性での別々の投与を指す。
【0040】
本明細書において使用される場合、「アドオン」または「アドオン療法」は、療法を与えられる対象が、1つまたは複数の試薬の第1の治療レジメンを始めた後に第1の治療レジメンに加えて1つまたは複数の異なる試薬の第2の治療レジメンを始めることにより、療法において使用される試薬の全てが同時に開始されない療法において使用するための試薬の集合体を意味する。例えば、SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニスト療法を既に与えられている患者に対してPD-1アンタゴニスト療法が加えられる。
【0041】
任意の公知のPD-1アンタゴニストが本発明の実施において利用されてもよく、広範なPD-1アンタゴニストが当該技術分野において公知かつ開示されている。PD-1アンタゴニストは、好ましくは、結合後に生物学的機能を中和する。PD-1アンタゴニストは、好ましくは、ヒトPD-1アンタゴニストである。適宜、PD-1アンタゴニストは、抗体、例えば、モノクローナル抗体またはその断片;キメラモノクローナル抗体(ヒト-マウスキメラモノクローナル抗体など);完全ヒトモノクローナル抗体;組換えヒトモノクローナル抗体;ヒト化抗体断片;小分子PD-1遮断剤を含む可溶性PD-1アンタゴニストであってもよい。適宜、PD-1アンタゴニストは、機能性断片またはモノクローナル抗体の機能性断片を含む融合タンパク質、例えば、Fab、F(ab’)2、Fvおよび好ましくはFabである。好ましくは、断片はペグ化または被包されている(例えば、安定性および/または持続放出のため)。PD-1アンタゴニストはまた、ラクダ科動物抗体であってもよい。本明細書において使用される場合、PD-1アンタゴニストとしては、PD-1受容体阻害剤が挙げられるがそれに限定されない。
【0042】
PD-1アンタゴニストは、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、もしくはアテゾリズマブ、またはその機能性断片のうちの1つまたは組合せから選択されてもよい。
【0043】
任意の公知のSFRP2および/またはCD38アンタゴニストが本発明の実施において利用されてもよく、広範なSFRP2および/またはCD38アンタゴニストが当該技術分野において公知かつ開示されている。SFRP2および/またはCD38アンタゴニストは、好ましくは、結合後に生物学的機能を中和する。SFRP2および/またはCD38アンタゴニストは、好ましくは、ヒトSFRP2および/またはCD38アンタゴニストである。適宜、SFRP2および/またはCD38アンタゴニストは、抗体、例えば、モノクローナル抗体またはその断片;キメラモノクローナル抗体(ヒト-マウスキメラモノクローナル抗体など);完全ヒトモノクローナル抗体;組換えヒトモノクローナル抗体;ヒト化抗体断片;小分子SFRP2および/またはCD38遮断剤を含む可溶性SFRP2および/またはCD38アンタゴニストであってもよい。適宜、SFRP2および/またはCD38アンタゴニストは、機能性断片またはモノクローナル抗体の機能性断片を含む融合タンパク質、例えば、Fab、F(ab’)2、Fvおよび好ましくはFabである。好ましくは、断片はペグ化または被包されている(例えば、安定性および/または持続放出のため)。SFRP2および/またはCD38アンタゴニストはまた、ラクダ科動物抗体であってもよい。本明細書において使用される場合、SFRP2および/またはCD38アンタゴニストとしては、SFRP2および/またはCD38受容体阻害剤が挙げられるがそれに限定されない。例えば、SFRP2アンタゴニストは、米国特許第8,734,789号明細書、および同第9,073,982号明細書に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
本発明をこれより以下の実施例においてさらに記載し、該実施例は、実例としてのみ意図され、本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0045】
本開示を以下の実施例によりさらに実例を示し、実施例は、本明細書に記載の特有の手順に本開示の範囲または精神を限定するものとして解釈されるべきではない。実施例は、ある特定の実施形態の実例を示すために提供されることおよび本開示の範囲に対する限定はそれにより意図されないことが理解されるべきである。本開示の精神および/または添付の請求項の範囲から離れることなく当業者に示唆され得るその様々な他の実施形態、改変、および均等物に頼ることができることがさらに理解されるべきである。
【実施例1】
【0046】
ヒト化SFRP2 mAbはT細胞増殖の腫瘍細胞阻害をレスキューする。SFRP2はNFATc3を活性化させ、NFATタンパク質はT細胞増殖を調節する(28)ので、本発明者らは、hSFRP2 mAbはTCR刺激(抗CD3/抗CD28抗体)を用いた活性化後にT細胞増殖に影響するのかどうかを調べた(
図1)。T細胞を単独で、TCR刺激と共に、TCR刺激+腫瘍細胞と共に、TCR刺激+腫瘍細胞+IgG1対照と共に、またはTCR刺激+腫瘍細胞+hSFRP2 mAbと共にインキュベートした。T細胞単独の集団において観察された増殖と比較して、TCR抗原(陽性対照)は増殖を増加させた。増殖は、ヒト化生性乳がん細胞系であるHs578Tの存在下で低減された(
図1)。共培養物へのIgG1対照の添加は効果を有しなかった。比較的に、共培養物へのhSFRP2 mAbの添加はT細胞増殖を部分的にレスキューした。この効果はまた、T細胞をRF420マウス骨肉腫細胞の存在下で共培養した場合に見られ、その場合にhSFRP2 mAbの存在は、腫瘍細胞により媒介される増殖の抑制を実質的にレスキューした(
図1)。再び、IgG1対照の添加は、RF420細胞の存在下でTCRを用いて処理されたT細胞と比較して増殖に影響しなかった。
【0047】
SFRP2はT細胞においてWntシグナル伝達を誘導する。FZD5受容体は内皮細胞中のSFRP2に結合してNFATc3活性化および血管新生を刺激する(23)。しかしながら、T細胞活性化およびWntシグナル伝達におけるSFRP2の役割は以前に評価されていない。T細胞溶解液のウエスタンブロット解析は、FZD5タンパク質がT細胞中に存在することを示した(
図2A)。マウス脾臓T細胞をSFRP2(30nM)を用いて1時間刺激し、核および細胞質画分を単離した。細胞質画分において、SFRP2処理と共にCD38における増加があった(
図2B)。核画分において、SFRP2処理と共にNFATc3における増加があった(
図2C)。次にT細胞をhSFRP2 mAb有りまたは無しでコグネイト抗原を用いて3日間処理し、核画分を収集した。コグネイト抗原を用いて刺激された場合に核画分においてNFATc3における増加があり、hSFRP2 mAb処理と共に核画分においてNFATc3が減少した(
図2D)。
【0048】
hSFRP2 mAbはT細胞においてPD-1およびCD38を阻害し、NADを回復させる。次に、インビトロでのT細胞のhSFRP2 mAb処理がTGFβ曝露T細胞においてCD38を阻害し、NAD+レベルを回復させるのかどうかを評価した。TGFβは、T細胞からのCD38を増加させる腫瘍微小環境中に存在するサイトカインである。
図3Aは、IL2、TCR抗原、およびTGFβを用いる脾臓T細胞の処理はウエスタンブロットによりSFRP2の増加を結果としてもたらすことを示す。FACS分析は、TCR/TGFβの添加と共にCD38+細胞の統計的に有意な増加を示し、それはhSFRP2 mAbにより有意に阻害された(
図3c、n=3、p<0.001)。これと共に、hSFRP2処理と共にNAD+濃度の逆性の増加があった(
図3b、n=3、p=0.02)。さらに、SFRP2 mAbは脾臓T細胞においてPD-1を直接的に阻害するのかどうかを検討した。PD-1を増加させるIL2、TCR抗原およびTGFβを用いてCD8+およびCD4+ 脾臓T細胞を処理した。これはSFRP2 mAbの添加と共に逆転された(
図4)。
【実施例2】
【0049】
骨肉腫の予後および治療オプション。骨肉腫(OS)は、通常青少年および若年成人に影響する、骨の最も一般的な原発性悪性腫瘍である。実行可能な場合、原発性腫瘍は、ネオアジュバント化学療法およびアジュバント化学療法の両方のデリバリーと共に、外科的に切除される。しかしながら、化学療法を用いた場合であっても、初期に切除可能な疾患を有する患者の3分の2のみが治癒し、長期生存は転移性または再発性腫瘍を有する患者の30%未満においてのみ起こる。肺は、転移性疾患を有する症例の約80%に関与し、その後の呼吸窮迫は致死のほとんどの原因となる(29)。免疫療法は一部の腫瘍種において有効性を示しているが、ペムブロリズマブの投与はフェーズII試験(SARC028)において骨肉腫の治療における有効性の欠如を結果としてもたらしており、該試験において転移性骨肉腫を有する患者の5%のみがペムブロリズマブに対して客観的な応答を有した(30)。新たな活性剤の欠如は、30年にわたり骨肉腫患者の生存の増加のいかなる進歩も遮断しており、新規の治療アプローチが強く必要とされる(31)。
【0050】
増加しつつある証拠は、骨肉腫転移に対する分泌性SFRP2の寄与を強く支持する。SFRP2は、非転移性骨肉腫と比較して転移性骨肉腫において過剰発現される(32)。OS患者試料におけるSFRP2の高い発現は不良な生存と相関し、SFRP2過剰発現は正常な骨芽細胞分化を抑制し、OSの特徴を促進し、血管新生を促す(33)。機能研究は、局在化したヒトおよびマウスOS細胞内のSFRP2の安定な過剰発現は、インビトロで細胞遊走および浸潤能力を有意に増加させ、インビボで転移潜在能力を増強することを明らかにした。転移性OS細胞内のSFRP2をノックダウンする追加の研究は、インビトロで細胞遊走および浸潤能力の減少を示し、そのため、SFRP2により実行される不可欠な生物学的表現型を裏付けた(12)。そのため、SFRP2は骨肉腫に対する潜在的な治療標的として現れた。SFRP2はまた、乳がん(5、8~11)、血管肉腫(9、10)、横紋筋肉腫(13)、肺胞軟部肉腫(14)、悪性神経膠腫(15)、多発性骨髄腫(16)、腎細胞癌(2)、前立腺がん(17)、肺がん(18)、および黒色腫(19)において腫瘍成長に寄与することが示されている。骨肉腫における免疫療法の有効性の欠如および本出願の他の箇所において詳述される本発明者のデータを考慮して、本発明者らは、ヒト化SFRP2モノクローナル抗体(hSFRP2 mAb)の組合せがPD-1阻害剤の活性を増強するのかどうかを調べた。
【0051】
ヒト化SFRP2 mAbはインビボで転移を阻害する。免疫適格マウスにおいてhSFRP2 mAbの抗腫瘍活性を評価するために、C57BL/6マウスにおいて、腫瘍転移のモデル、RF420マウス骨肉腫においてhSFRP2 mAbを試験した。RF420細胞をC57BL/6マウスの尾静脈に注射した。肺における転移の存在を腫瘍細胞の初期注射の7日後に検証した。第1の実験において、hSFRP2 mAbを用いる処置(4mg/kgをi.v.で3日毎に注射)を腫瘍注射後10日目に開始し、IGg1対照を用いる処置と比較した。エンドポイントにおいて、対照と比較してhSFRP2 mAb処置と共に肺表面小結節の数における有意な減少があった(n=7、p<0.01、
図5)。疲弊に関する細胞表面マーカーの評価の際に、PD-1と緊密に共発現されることが示されているCD38(41)は、IgG1対照を用いて処置されたものと比較した場合に、hSFRP2 mAbを用いて処置されたマウスからの脾臓細胞において有意に低減していること(n=4、p<0.01)に気付いた(
図5)。
【0052】
マウスPD-1阻害剤を伴うhSFRP2 mAbの投与はインビボで転移性骨肉腫成長の阻害において有効である。RF420マウス骨肉腫細胞をC57BL/6マウスの尾静脈に注射した。7日後に、マウスを週毎のIgG1対照4mg/kg iv、3日毎のhSFRP2 mAb 4mg/kg iv、3日毎のマウスPD-1 mAb(200ug/マウス)、または両方の抗体の組合せのいずれかを用いて処置した。処置の21日後にマウスを安楽死させ、肺を回収した。表面転移の数を各群においてカウントした。hSFRP2 mAbの組合せは、IgG1対照と比較して表面小結節の数を75%低減した(
図6)。
【0053】
実施例1~2の方法
抗体およびタンパク質。対照IgG1、オマリズマブはNovartis(Basel、Switzerland)から購入した。ヒトSFRP2組換えタンパク質(SFRP2)は以前に記載されたように(23)調製され、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のthe Protein Expression and Purification Core Labにより提供された。ヒト化SFRP2モノクローナル抗体(hSFRP2 mAb)は、以前に記載され、実施例4に記載されるように製造し、エンドトキシンから精製した。
【0054】
以下の一次抗体をウエスタンブロットにおいて使用した:ウサギ抗CD38(#14637s)およびウサギ抗ヒストンH3抗体(#2650s)はCell Signaling(Danvers、MA、USA)からのものであり、ウサギ抗FZD5(#H00007855-D01P、Abnova、Taipei city、Taiwan)、マウス抗PD1(#66220-1、Proteintech、Rosemont、IL、USA)、ウサギ抗NFATc3(#SAB2101578)およびウサギ抗アクチン(#A2103、Sigma-Aldrich、St Louis、MO、USA)。二次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)共役抗マウス(#7076、Cell Signaling);HRP共役抗ウサギ(#403005、Southern Biotech、Birmingham、AL、USA)であった。FACS分析のために、ラット抗CD38-PE抗体(#102707)はBioLegend(San Diego、CA、USA)からのものであった。抗マウスCD3(#BE00011)および抗マウスCD28(#BE0015-1)はBioXCell(West Lebanon、NH、USA)からのものであった。以下の抗体をBiolegend、San Diego、CAから購入し、フローサイトメトリーのために使用した:抗CD103(クローン2E7、カタログ番号121435)、抗CD5:gp100抗原断片はAnaSpec(#AS-62589)からのものであった。
【0055】
細胞培養。遺伝子操作された骨肉腫マウスモデルから確立されたRF420およびマウス骨肉腫細胞(32)を得た。加湿された5%のCO2-95%の室内空気雰囲気中37℃で細胞を培養した。細胞系はATCC(登録商標)により認証されたものであり、マウス細胞は、インビボで使用される場合は常にマイコプラズマを含む齧歯動物病原体についてCharles River Research Animal(Wilmington、MA、USA)により試験されたものであった。
【0056】
カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)シグナル強度の測定による細胞増殖の蛍光活性化細胞選別(FACS)分析。CFSEシグナルの希釈は細胞増殖の増加と緊密に相関する。CellTrace(商標) CFSE Cell Proliferation Kit(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)の指示にしたがってCFSE色素を用いて脾臓T細胞を事前標識した。細胞を次に未処理のままとしたか、または単独で、もしくは2:1の比の腫瘍細胞(RF420もしくはHs578T乳癌-肉腫)の存在下で3日間、可溶性抗CD3(#BE0001-1、BioXCell、West Lebanon、NH、USA;2μg/ml)/抗CD28抗体(#BE0015-1、BioXCell;2μg/ml)を用いて活性化させた。追加的に、一部の共培養物を対照IgG1(10μM)、またはhSFRP2 mAb(10μM)を用いて処理した。3日後に、共培養物からのT細胞を使用してCFSE強度を測定した。平均蛍光強度(MFI)をFACSにより測定し、FlowJoソフトウェアを使用して解析を行った。
【0057】
ウエスタンブロット。脾臓T細胞をSFRP2(30nM)またはhSFRP2 mAb(10μM)の有りまたは無しで1時間処理した。SFRP2用の対照細胞には単独で培地を与え、hSFRP2 mAb実験用のものにはIgG1 10μMを与えた。細胞を次に1000rpmで10分間遠心分離した。培地を除去し、細胞を処理前に-80℃で凍結貯蔵した。製造者のマニュアル(Pierce Biotechnology、Rockford、IL)に記載されるようにNE-PER核および細胞質抽出試薬を使用して核抽出物を調製した。トランスジェニックPmel1マウス(The Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME、USA)から得られた脾臓T細胞をrhSFRP2(30nM)またはhSFRP2 mAb(10μM)の有りまたは無しで1時間処理した。rhSFRP2用の対照細胞には単独で培地を与え、hSFRP2 mAb実験用のものにはIgG1 10μMを与えた。細胞を次に1000rpmで10分間遠心分離した。培地を除去し、細胞を処理前に-80℃で凍結貯蔵した。製造者のマニュアル(Pierce Biotechnology、Rockford、IL)に記載されるようにNE-PER核および細胞質抽出試薬を使用して核抽出物を調製した。Bio-Rad Protein Assay(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA、USA)を使用してタンパク質濃度を測定した。等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードした。タンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜に転写し、以下の一次抗体を使用してウエスタンブロッティングを実行した:ウサギ抗CD38およびウサギ抗ヒストンH3抗体、ウサギ抗FZD5、マウス抗PD1、ウサギ抗NFATc3およびウサギ抗アクチン。以下の二次抗体を使用した:HRP共役抗マウス、およびHRP共役抗ウサギ。ECL Advance substrateを視覚化のために使用した(GE Healthcare Bio-Sciences、Piscataway、NJ、USA)。
【0058】
次に、インビトロでのhSFRP2 mAb処理がTGFβ曝露T細胞においてCD38を阻害し、NAD+レベルを回復させるのかどうかを評価した。脾臓をC57/BL6マウスから獲得し、単一細胞懸濁液を作製し、PBSと共にACK溶解緩衝液に1分間再懸濁した。1%のFCSを加えて反応を停止させた。単一細胞懸濁液中で、以下の抗体:TCR119、CD25、GR1、NK1.1、CD11C、CD11B、CD19のミックスを使用することによる陰性サブトラクションによりCD4+およびCD8+細胞を単離し、氷上で15分間インキュベートした。細胞を200μLのストレプトアビジン結合ビーズ溶液と共にインキュベートした。単離後に、細胞をカウントし、400,000個の細胞を抗CD3(2μg/mL)および抗CD28(5μg/mL)プレコーティングプレートにプレーティングした。陰性対照は、IL-2富化培地中の単離された細胞のみを含有し、抗CD3/Cd28(TCR)コーティングを含有しなかった。細胞を含む各実験ウェルはTCRおよびIL-2((6,000U/mL)ならびに以下の実験条件:TGFβ(5ng/ml)の有りまたは無しでのhSFRP2 mAb(10uM)のうちの1つを含有した。全ての条件を3連で行い、3日間培養した。実験後に細胞をカウントし、FACSについて染色したか、またはNAD/NADH細胞ベースのアッセイキットを用いてNAD分析のために処理した。NAD分析のために、少なくとも250,000個の細胞が要求され、それをNADプロトコールにしたがって直ちに処理した。細胞を遠心分離し、撹拌下で透過処理緩衝液と共にインキュベートした。追加の遠心分離後に、試料および標準品を反応緩衝液と共に撹拌下で1h30分インキュベートした。プレートリーダーを使用して光学密度を最後に450nmで読み取った。FACs分析のために、300,000個の細胞をPBSに再懸濁し、製造者のプロトコールの通りにLive dead stain中でインキュベートし、次にPBSを用いて洗浄し、遠心沈降させ、上清を除去した。細胞を次に抗CD38 PE/Cy5(1/200)、抗CD4 FITC(1/100)、抗CD8 APC(1/200)、抗PD1 PE(1/200)、緩衝液を含有する抗体および染色緩衝液(50μL/試料)のマスターミックスに室温で20分間懸濁し、光から保護した。細胞を最後に4%のパラホルムアルデヒド中で10~15分固定した後に250μlの染色緩衝液に再懸濁した。
【0059】
インビボでの転移性骨肉腫成長。第1の実験において、無菌PBSに懸濁したRF420骨肉腫細胞(5×105)を6~8週齢C57BL/6マウス(10匹の雌および13匹の雄)の尾静脈を介してi.v.で注射した。7日目に、2匹のマウスを屠殺し、肺を除去し、10%のホルマリンに固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色した。切片を転移の存在について顕微鏡下でスクリーニングした。転移の存在が確認されたら、10日目に、マウスをIgG1対照4mg/kgまたはhSFRP2 mAb 4mg/kgを用いて処置した(n=10)。3週の処置後に、動物を屠殺し、肺および脾臓を除去した。肺表面小結節を次にカウントし、処置群の間で比較した。脾臓をフローサイトメトリー用のT細胞単離のために新鮮な状態で収集した。
【0060】
次に、無菌PBSに再懸濁したRF420細胞(5×105)をEnvigo(Indianapolis、IN、USA)から購入した6~8週齢C57Bl/6雄および雌マウス(系統コード044)の尾静脈にi.v.で注射した。マウスを無作為に4つの群に分けた:対照(オマリズマブ、n=13);hSFRP2 mAb(n=11);マウスPD-1 MAb(n=12);PD-1m Ab+hSFRP2 mAb(n=12)。処置を腫瘍細胞接種の10日後に開始した。投薬量、デリバリー経路および頻度は以下であった:対照(オマリズマブ)4mg/kg i.v. 週毎に1回;hSFRP2 mAb 4mg/kg i.v. 3日毎;pd-1 mab 8mg/kg 腹腔内(intraperitonealy)(i.p.)3日毎。23日の処置後に、動物を屠殺し、肺を切除し、表面小結節をカウントした。切除の直後に得られた全肺の画像から表面小結節をカウントした。肺をホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。それらを切片化し、H&Eを用いて染色した。
【0061】
フローサイトメトリー。CD38についての染色は、尾静脈中のRF420骨肉腫注射を伴う実験からの脾臓細胞をCD38に対する一次抗体と共にFACS緩衝液(PBS中の0.1%のウシ血清アルブミン(BSA))中4℃で30分間インキュベートすることにより行った。試料を平均蛍光強度(MFI)レベルについてLSRFortessaでスクリーニングし、FlowJoソフトウェア(Tree Star、OR)を用いて解析した。
【0062】
統計。全ての検定力および試料サイズの算出はPASSバージョン08.0.13を使用して行った。インビトロ実験は3連で行い、3回繰り返した。定量的な測定は、潜在的なバイアスを軽減するために技師を実験条件に対して盲検として収集した。連続的な測定の群比較は、2または多群比較のためにそれぞれ2サンプルt検定またはANOVAを使用して行った。
【実施例3】
【0063】
SFRP2 mAbのヒト化。キメラ抗体ならびに複合物(composite)重鎖および軽鎖の組合せ(計16の抗体)を競合ELISAアッセイにおいてSFRP2への結合について試験した。特に、希釈系列の精製された完全ヒト複合物IgG変異型をSFRP2 Peptide Bへの結合について固定濃度のビオチン化マウス抗体に対して競合させた。次に、結合したビオチン化mAb 80.8.6(マウスSFRP2 mAb)をストレプトアビジンHRPおよびTMB基質を使用して検出した。これは、SFRP2に対する全ての複合物抗体の結合効率はキメラ抗体のそれと大まかに同等であり、全てのバリアントはマウス抗体と比較して向上を示すことを実証した(
図12)。抗SFRP2のキメラ抗体および複合物変異型をプロテインAセファロースカラム上で細胞培養上清から精製し、PBS pH7.4に緩衝液交換し、予測されるアミノ酸配列に基づいて消散係数(Ec(0.1%)=1.76)を使用してOD280nmにより定量化した。リードhSFRP2 mAbのエンドトキシン試験はエンドトキシン<0.5EU/mを示した。リードhSFRP2 mAbのSDS-PAGEは、重鎖および軽鎖に対応する2つのバンドを示した(
図13)。
図13において、SDS Page。1μgの精製されたリードhSFRP2 mAbを4~12%のNuPAGE-SDSゲルにロードした。PageRuler Plus事前染色ラダーをロードしてバンドのサイズ決定を可能とした。レーン1はβ-メルカプトエタノールを用いて還元されており、試料について重鎖および軽鎖に対応する2つのバンドが存在する。レーン2は非還元であった。
【0064】
hSFRP2 mAbの免疫原性試験。免疫原性の相対リスクを決定するためにEpiScreen(商標) time course T-cell assayを使用してリード完全ヒト化およびキメラ抗SFRP2抗体を22人の健常ドナーのコホートに対して試験した。完全ヒト化抗SFRP2抗体は、増殖アッセイにおいていずれのドナーにおいてもSI≧2.0、p<0.05の閾値を使用して陽性の応答を誘導しなかった一方、キメラ抗SFRP2抗体はドナーの23%において陽性のT細胞増殖応答を誘導した。対照抗原KLHを用いた結果は、反復研究における陽性および陰性の結果の間に良好な相関(<10%のアッセイ内ばらつき)があったことを示し、これはアッセイにおける高いレベルの再現性を指し示す(
図14)。
図14において、バルク培養物からのPBMCをサンプリングし、3つの試験試料とのインキュベーション後5、6、7および8日目に増殖について評価した。対応のない2サンプルスチューデントt検定を使用して有意(p<0.05)である点線により指し示されるSI≧2.0(p<0.05)の増殖応答をこの図において陽性であると考えた。
【0065】
ヒト化SFRP2 mAbは高い親和性でSFRP2に結合する。SFRP2に対するリードhSFRP2 mAbの結合親和性を決定するために、rhSFRP2(1μM)をマイクロプレート固相タンパク質結合ELISAアッセイにおいて増加性濃度のhSFRP2 mAbと共にインキュベートした。hSFRP2 mAbは8.72nMのEC50および74.1nMのKdでrhSFRP2に結合した。ヒト化SFRP2 mAbはELISAアッセイ(n=16)において高い親和性でrhSFRP2に結合し、予め設定された濃度の1μM rhSRP2への増加性濃度のhSFRP2 mAbの結合後に測定された480nmの吸光度を示す濃度応答曲線を生じることを
図1Aは示す。
【0066】
ヒト化SFRP2 mAbは内皮管形成、腫瘍細胞増殖を阻害し、腫瘍アポトーシスを促進する。先行する報告と合致して、rhSFRP2は対照細胞と比較して分岐点の数における増加を誘導した(n=4、p≦0.05)。
図7Bは、2H11内皮管形成に対するrhSFRP2およびhSFRP2 mAbの効果を示す棒グラフである。このデータを得るために、2H11細胞をインキュベートし、IgG1対照のみ(5μM)、またはIgG1(5μM)+rhSFRP2タンパク質(30nM)、またはrhSFRP2(30nM)およびhSFRP2 mAb(0.5~10μM)の組合せを用いて処理した。n=4 *:p≦0.05;**:p≦0.001。反対に、増加性濃度のhSFRP2 mAbは管形成に対するrhSFRP2の効果を有意に相殺した(n=4、p≦0.05)。SFRP2刺激性管形成のhSFRP2 mAb阻害についてのIC
50は4.9±2μMであった。
【0067】
Hs578Tヒト癌腫/肉腫乳がんおよびマウスSVR血管肉腫細胞における腫瘍細胞増殖、アポトーシスおよび壊死に対するrhSFRP2 mAbの効果をインビトロで評価した。hSFRP2 mAbを用いた処理は、Hs578T乳がん(
図7C;5μMおよび10μMのhSFRP2 mAbについてそれぞれp≦0.05およびp≦0.001)ならびにSVR血管肉腫細胞(
図7F;5μMおよび10μMのhSFRP2 mAbの両方についてp≦0.001)の両方において腫瘍アポトーシスを有意に増加させ、壊死における変化は無かった。hSFRP2 mAbを用いた処理はSVR増殖に対する効果を有しなかったが(
図7H)、Hs578T乳がん細胞の腫瘍細胞増殖を有意に低減した(
図7E、5μM p≦0.05、10μM p≦0.001)。
【0068】
インビボでのhSFRP2 mAbの有効性および毒性の決定。SVR血管肉腫細胞を接種されたマウスを3日毎のi.v.での2、4、10および20mg/kgのhSFRP2 mAb用量、またはIgG1対照を用いて21日間処置した。抗体処置マウスのいずれにおいても体重損失も嗜眠も無かった。20mg/kgの用量においても、肝臓または肺における病理学的変化は無かった。実験の終了時に体重は群の間で類似したままであった(対照について32.2±1.4g;2mg/kgについて31.3±1.1g;4mg/kgについて32.1±0.5g;10mg/kgについて31.8±0.9gおよび20mg/kgについて32.7±1.0g。最大効果を有する用量は4mg/kgであり、腫瘍体積の69%の低減があった(n=5/群、p=0.05)。
【0069】
抗体の薬物動態特性を研究するために、尾静脈を介してhSFRP2 mAb 4mg/kgの単回用量をヌードマウスに注射し、血液試料を異なる時点において収集した(
図8)。組換えhSFRP2処置は膜CD38および核NFATc3タンパク質の増加に繋がった一方、hSFRP2 mAbはT細胞において核NFATc3の蓄積を阻害する。
図8Aにおけるデータは、FZD5タンパク質がT細胞中に存在することを実証する。
図8Aは、4mg/kgの単回i.v.注射後の経時的なマウスの血清中のhSFRP2 mAbの濃度の減少を示す薬物動態プロットである。動物の血清中の抗体の半減期は4.1±0.5日であり、7.8±1.0mg/Lの最大血清濃度(Cmax)および13.0±0.6mL/時間のクリアランス(CL)であった。
【0070】
MTD実験において同定された用量の有効性を確認するために、本発明者らは、より多数の動物(n=10の動物/群)でのSVR血管肉腫腫瘍を用いる実験を繰り返し、4mg/kgのhSFRP2 mAbを用いるそれらの処置を開始した。T細胞をrhSFRP2(30nM)を用いて1h処理し、細胞質および核画分を分離するためにNE-PERキットを使用して処理した(
図8B)。指し示されるタンパク質マーカーに対する抗体を用いて試料をプロービングし、処理された細胞におけるタンパク質のレベルを非処理細胞におけるものと比較した。3週後に、hSFRP2 mAbを用いて処置された腫瘍は、IgG1対照を用いて処置された腫瘍よりも43%小さかった(対照について1,631.3±283mm
3、hSFRP2 mAbについて928.5±148mm
3;p≦0.05)。
【0071】
次に、本発明者らは、hSFRP2 mAbは他の腫瘍種の成長に影響し得るのかどうかを検討した。Hs578T乳癌-肉腫異種移植片を有するマウスをhSFRP2 mAbまたはIGg1対照を用いて処置した。抗原gp100(0.87μM)またはhSFRP2 mAb(10μM)を単独または組合せで用いてT細胞を60分間処理し、核画分を単離した(
図8C)。rhSFRP2処理細胞中のNFATc3のタンパク質レベルを非処理細胞におけるものと比較した。各時点における対照および各処置群の間の比較は、ベースラインからの処置22日目、25日目、および31日目からの全ての時点が統計的に有意であることを示した(p=0.05)。実際に、hSFRP2 mAb処置マウスにおける腫瘍体積において61%の低減があった、n=11、*P<0.05)。追加的に、処置マウスのいずれにおいても体重損失も嗜眠も無かった。
【0072】
ヒト化SFRP2 mAbはインビボで腫瘍においてアポトーシスを誘導する。hSFRP2 mAbはインビトロでアポトーシスを誘導し、乳がん細胞において増殖を阻害し、本発明者らは、これらの表現型がインビボで保持されるのかどうかを調べた。増殖性(Ki67陽性)細胞の割合は、IgG1対照腫瘍と比較してhSFRP2 mAb処置により影響されなかったが(SVR腫瘍について23±1.6%対29±4.2%;Hs578T腫瘍について18±2.7%対18±2.8%、p=NS)、アポトーシス細胞の割合はSVR腫瘍において188%(IgG1対照において8.4±0.9、hSFRP2 mAb腫瘍において24.2±3.5;n=10、p≦0.05)、Hs578T腫瘍において181%(IgG1対照において15.1±4.9、hSFRP2 mAb腫瘍において42.4±3.9;n=10、p≦0.05)増加した(
図9)。
【0073】
免疫適格マウスにおいてhSFRP2 mAbの抗腫瘍活性を評価するために、本発明者らは、腫瘍転移のモデルにおいてC57BL/6マウスにおいてRF420マウス骨肉腫におけるhSFRP2 mAbを試験した。RF420骨肉腫細胞をC57BL/6マウスの尾静脈に注射した。10日目にIgG1対照またはhSFRP2 mAbを用いる処置を始めた。マウスを処置の21日目に安楽死させ、表面小結節をカウントした。対照と比較してhSFRP2 mAbを用いて処置されたマウスにおいて表面小結節の数における有意な低減があった(n=7、p<0.01、
図10A)。疲弊についての細胞表面マーカーの評価の際に本発明者らは、PD-1と緊密に共発現することが示されているCD38は、IgG対照からのものと比較した場合にhSFRP2 mAbを用いて処置されたマウスにおいて脾臓細胞(n=4、p<0.01)およびTIL(n=4、p<0.01)上で有意に低減したが、PD-1、CD103、およびCD5(n=3)においては有意差が無かったことに気付いた(
図6B)。PD-1、CD103、TNFα、またはCD5などの他の疲弊マーカーの発現は、脾臓細胞でもTILでも有意でなかった(n=4、p=NS)。
【0074】
第2の骨肉腫実験において、骨肉腫RF420細胞を免疫適格マウスの静脈内に注射した。研究を4つの群に分けた。第1の群は3日毎のhSFRP2 mAb 4mg/kg i.v.を用いて処置した。IGg1対照群、3日毎8mg/kg i.v.でのニボルマブ、抗PD-1抗体を投与される群、ならびにhSFRP2 mAbおよび抗PD-1抗体の両方を与えられる群もあった。処置を注射後10日目に開始し、3週後に動物を安楽死させ、肺を切除し、表面小結節をカウントした*:p≦0.0001;**:p≦0.01、n=12)。これらの群を比較して肺転移の発生を測定した。各個々の処置は、IgG1対照と比較して表面小結節の数を低減した(IgG1対照について43.6±6.8、hSFRP2 mAbについて18.3±3.4、ニボルマブについて16.3±1.1;p≦0.0001、
図11A)。hSFRP2 mAbおよびニボルマブの組合せを用いて処置されたマウスをIgG1対照を用いて処置されたマウスと比較して転移性病変の発生における80%の低減があった(IRR=0.20、95% CI=0.13~0.32;p<0.0001)。hSFRP2 mAbおよびニボルマブの組合せを用いて処置されたマウスを単剤hSFRP2 mAbを用いて処置されたマウスと比較して転移性病変の発生において51%の低減がある(IRR=0.49、95% CI=0.31~0.77;p=0.0021)。hSFRP2 mAbおよびニボルマブの組合せを用いて処置されたマウスを単剤ニボルマブを用いて処置されたマウスと比較して転移性病変の発生において45%の低減がある(IRR=0.55、95% CI=0.35~0.86;p=0.0084)(
図11A)。
【0075】
本発明者らは、マウスT細胞におけるCD38レベルに対する、個々の処置としてまたは組合せで与えられたニボルマブおよびhSFRP2 mAbの影響力を測定した。特に、RF420細胞を注射され、IgG1対照、hSFRP2 mAb、ニボルマブ、またはhSFRP2 mAbおよびニボルマブの組合せを用いて処置されたC57BL/6マウスの脾臓からT細胞を単離した。細胞を次に、蛍光色素を用いて標識されたCD38を用いて染色し、平均蛍光強度(MFI)をFACSにより分析した。ニボルマブ処置は単独ではCD38レベルに対して効果を有しなかった。しかしながら、hSFRP2 mAbは、対照IgG抗体を用いて処置された群から得られたT細胞と比較した場合にT細胞においてCD38表面発現を低減し(p<0.001、
図11B)、SFRP2の標的化はT細胞上のCD38の発現を低減するために十分であることを指し示した。これらの結果は、hSFPR2 mAb投与はT細胞免疫応答を回復させ、腫瘍成長を予防し得るという提案を支持する。ニボルマブはヒト抗体であるので、マウスモデルにおける処置のために最適なものではないことが留意されるべきである。
【0076】
SFRP2モノクローナル抗体のヒト化。マウスSFRP2モノクローナル抗体80.8.6をコードするV領域遺伝子(21)を最初にクローニングし、それを使用して、ヒトIgG1重鎖定常領域、およびκ軽鎖定常領域と組み合わせたマウスV領域を含むキメラ抗体を構築した。キメラ抗体および複合物重鎖および軽鎖の組合せ(計16の抗体)をNS0またはHEK293細胞中で発現させ、精製し、競合ELISAアッセイにおいてSFRP2ペプチドへの結合について試験した。
【0077】
免疫原性試験。EpiScreen(商標) time course T-cell assayを使用してリード完全ヒト化抗SFRP2抗体(VH2/VK5)および参照キメラ抗SFRP2抗体を免疫原性潜在能力について評価し、それにおいてCD8+枯渇PBMCを使用してバルク培養物を確立し、試料の添加後の[3H]-チミジンの組込みにより様々な時点においてT細胞増殖を測定した。非特異的免疫原性の相対リスクを決定するためにEpiScreen(商標) time course T-cell assayを使用してリード完全ヒト化およびキメラ抗SFRP2抗体を22人の健常ドナーのコホートに対して試験した。検出可能な抗体特異的T細胞応答を刺激するために50μg/mlの飽和濃度は十分であることを示すAntitopeの先行する研究に基づいて試料を50μg/mlの最終濃度において試験した。各試料の免疫原性潜在能力を評価するために、T細胞活性化を測定するための増殖の分析と共にEpiScreen(商標) time course T-cell assayを使用した。試料はPBMCベースのアッセイにおいて以前に評価されていないので、PBMC生存能に対する試料の任意の全体的な毒性効果の初期評価が決定された。試験試料との培養の7日後に、PBMCのトリパンブルー色素除外を使用して細胞生存能を算出した。
【0078】
抗体およびタンパク質。以下の一次抗体をウエスタンブロットにおいて使用した:ウサギ抗CD38(#14637s)およびウサギ抗ヒストンH3抗体(#2650s)はCell Signaling(Danvers、MA、USA)から購入、ウサギ抗FZD5(#H00007855-D01P、Abnova、Taipei city、Taiwan)、マウス抗PD1(#66220-1、Proteintech、Rosemont、IL、USA)、ウサギ抗NFATc3(#SAB2101578)およびウサギ抗アクチン(#A2103、Sigma-Aldrich、St Louis、MO、USA)。二次抗体は、HRP共役抗マウス(#7076、Cell Signaling);HRP共役抗ウサギ(#403005、Southern Biotech、Birmingham、AL、USA)であった。ELISAのために、Abcam、Cambridge、MA、USAからのHRP共役ヤギ抗ヒトIgG。FACS分析のために、ラット抗CD38-PE抗体(#102707)はBioLegend(San Diego、CA、USA)からのものであった。抗マウスCD3(#BE00011)および抗マウスCD28(#BE0015-1)はBioXCell(West Lebanon、NH、USA)からのものであった。対照IgG1、オマリズマブはNovartis(Basel、Switzerland)から購入した。ヒトSFRP2タンパク質(rhSFRP2)は、以前に記載されたように調製した。gp100抗原断片はAnaSpec(#AS-62589)からのものであった。
【0079】
hSFRP2 mAbに対するrhSFRP2の結合親和性を決定するためのマイクロプレート固相タンパク質結合(ELISA)アッセイ。マイクロプレート固相タンパク質結合アッセイを使用してrhSFRP2およびhSFRP2 mAbについてのEC50を決定した。平底Ni2+コーティング96ウェルマイクロプレート(#15442、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、#BP399-1、Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)中の0.05%のウシ血清アルブミン(albumen)(BSA、#001-000-162、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、USA )を用いて4℃で終夜ブロッキングした。PBS(pH7.4)中に希釈された1μMのhisタグ付加rhSFRP2を、ブロッキングされたプレート上で37℃で終夜インキュベートした。250μl/ウェルのPBSを用いてプレートを3回洗浄した。PBS中の増加性用量のhSFRP2 mAb(0pM、100pM、200pM、400pM、800pM、1.6nM、3.15nM、6.3nM、12.5nM、25nM、50nM、100nM)をプレート上でrhSFRP2と共に37℃で終夜インキュベートした。プレートを3回洗浄し、PBS中の0.1%のBSA中室温で1時間ブロッキングした後に、PBS中に1:40,000で希釈した100μl/ウェルの二次抗体(HRP共役ヤギ抗ヒトIgG)と共に37℃で1時間インキュベートした。プレートを5回洗浄した後に、各ウェルを100μlのK-Blue TMB substrate(#308176、Neogen、Lexington、KY、USA)と共に暗所で5分間インキュベートした。100ulの2N H2SO4を用いて反応を停止させた。450nmにおいて吸光度を読み取った。正規化された応答に対するGraphPad Prism log(inhibitor)(トップを100%に制限した可変傾斜関数)を使用して可変傾斜を用いる非線形回帰分析を介してEC50算出を決定した。アゴニスト濃度およびEC50が等しいチェン-プロソフ式(40)を使用してEC50をKdに変換した。結果を平均±平均の標準誤差として表す。各データ点は8つの独立した測定の結果である(n=8)。
【0080】
細胞培養。5%の熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS、#FB-12、Omega Scientific、Biel/Bienne、Switzerland)および1%のペニシリン/ストレプトマイシン(v/v)を含むOpti-MEM(#22600134、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)中で2H11マウス内皮細胞(#CRL-2163、ATCC(登録商標)、Manassas、VA、USA)を培養した。10%のFBS、0.01mg/mlのウシインスリン(#I0516、Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)および1%のペニシリン/ストレプトマイシン(#MT30009C、Thermo Fisher Scientific)を含むDMEM(ATCC(登録商標))中でHs578Tヒト乳癌-肉腫トリプルネガティブ細胞(#30-202、ATCC(登録商標)、Manassas、VA、USA)を培養した。SVR血管肉腫細胞をAmerican Type Culture Collection(#CRL-2280、ATCC(登録商標))から得、8%のFBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシン(v/v)を含むOpti-MEM(Thermo Fisher Scientific)中で培養した。遺伝子操作された骨肉腫マウスモデルから確立されたRF420マウス骨肉腫細胞(41)をDr. Jason T. Yustein(Texas Children’s Cancer and Hematology Centers、Department of Pediatrics、Baylor College of Medicine、Houston、TX、USA)から得、10%の熱不活化FBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシン(v/v)を含むDMEM(ATCC(登録商標))中で培養した。加湿された5%のCO2-95%の室内空気雰囲気中37℃で全ての細胞系を培養した。全ての細胞系はATCC(登録商標)により認証されたものであり、マウス細胞は、インビボで使用される場合は常にマイコプラズマを含む齧歯動物病原体についてCharles River Research Animal(Wilmington、MA、USA)により試験されたものであった。C57BL/6マウスおよびJackson Laboratory(Bar Harbor、ME、USA)から得られたC57BL/6バックグラウンドのgp100反応性TCR保有PmelトランスジェニックマウスからマウスT細胞を単離した。
【0081】
内皮管形成アッセイ。5%のFBSを含むOpti-MEMに2H11内皮細胞をプレーティングし、24時間静置した。2.5%のFBSを含むOpti-MEM中に細胞を終夜維持することにより静止状態を誘導した。インビトロ血管新生アッセイプロトコールにしたがって96ウェルプレートのウェル中でMatrigel(商標)(#ECM625、Millipore、Bedford、MA、USA)を重合させた。このアッセイにおいて、9つの処理条件を調製した:IgG1単独(5μM;オマリズマブ);IgG1(5μM)と共にrhSFRP2タンパク質(30nM);または増加性濃度のhSFRP2 mAb(0.5、1、5、10もしくは20μM)と組み合わせたrhSFRP2(30nM)。2.5%のFBSを含むOpti-MEMに再懸濁された処理を、ロッカー上37℃、5%のCO2で90分間プレインキュベートした後にそれらを細胞に加えた。150μlのプレインキュベートされた処理物に1.9×104個の細胞を再懸濁し、次にロッカー上、37℃、5%のCO2でさらに30分間インキュベートした。最後に、重合したMatrigel(商標)を用いて既にコーティングされた各ウェルに細胞懸濁液を加えた。各実験をn=4/条件で4つの独立した回数繰り返した。2.5%のFBSおよび5μMのIgG1を含む新鮮なOpti-MEMを対照細胞に与えた。各処理条件について、37℃、5%のCO2での4hのインキュベーション後に、EVOS FL Digital Imaging System(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)の4X対物レンズを使用して画像を獲得した。ImageJ Angiogenesis Analysisソフトウェア(National Institutes of Health、Bethesda、MD、USA)を使用して分岐点をカウントした。GraphPad Prismソフトウェアにおいて、非線形回帰およびDose-response-Inhibitionファミリーの式を使用してデータを解析してIC50を決定した。
【0082】
増殖アッセイ。Hs578T乳癌-肉腫およびSVR血管肉腫細胞を96ウェルプレートに3,000細胞/ウェルでプレーティングした。4時間後に、指し示される濃度においてhSFRP2 mAb(1、5、または10μM)を増殖培地に加えた。細胞を37℃、5%のCO2で72時間インキュベートした。Cyquant Direct Cell Proliferation Assay Kit(#C35011、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を使用して増殖を評価した。EVOS FLc Digital Imaging System(Thermo Fisher Scientific)を使用して画像を獲得した。FIJI細胞カウンティングソフトウェアを使用して細胞をカウントした。
【0083】
アポトーシス/壊死。Hs578T乳癌-肉腫乳房およびSVR血管肉腫細胞を16ウェルチャンバースライド(#178599、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)にそれぞれ2×104、3×104、および7.5×103細胞/ウェルでプレーティングした。翌日、増殖培地を含む懸濁液中で1、5もしくは10μMのhSFRP2 mAbまたは5μMのIgG1対照と共に37℃、5%のCO2で細胞を2時間インキュベートした。Apoptotic/Necrotic Detection kit(#PK-CA707-30017、PromoCell、GmbH、Heidelberg、Germany)のプロトコールにしたがって壊死およびアポトーシスを決定した。EVOS FLc Digital Imaging System(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を使用して画像を獲得した。ImageJ細胞カウンティングソフトウェアを使用して細胞をカウントした。各データ点は、それぞれが4つの別々のウェルを含有する2つの独立した実験的反復の結果であった(計n=8)。
【0084】
ウエスタンブロット。トランスジェニックPmel1マウス(The Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME、USA)から得られた脾臓T細胞をrhSFRP2(30nM)またはhSFRP2 mAb(10μM)の有りまたは無しで1時間処理した。rhSFRP2用の対照細胞には単独で培地を与え、hSFRP2 mAb実験用のものにはIgG1 10μMを与えた。細胞を次に1000rpmで10分間遠心分離した。培地を除去し、細胞を処理前に-80℃で凍結貯蔵した。製造者のマニュアル(Pierce Biotechnology、Rockford、IL)に記載されるようにNE-PER核および細胞質抽出試薬を使用して核抽出物を調製した。Bio-Rad Protein Assay(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA、USA)を使用してタンパク質濃度を測定した。等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードした。タンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜に転写し、以下の一次抗体を使用してウエスタンブロッティングを実行した:ウサギ抗CD38およびウサギ抗ヒストンH3抗体、ウサギ抗FZD5、マウス抗PD1、ウサギ抗NFATc3およびウサギ抗アクチン。以下の二次抗体を使用した:HRP共役抗マウス、およびHRP共役抗ウサギ。ECL Advance substrateを視覚化のために使用した(GE Healthcare Bio-Sciences、Piscataway、NJ、USA)。
【0085】
CFSEシグナル強度の測定による細胞増殖のFACS分析。CFSEシグナルの希釈は細胞増殖における増加と緊密に相関する。CellTrace(商標) CFSE Cell Proliferation Kit(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)の指示にしたがってCFSE色素を用いてPmel1トランスジェニックマウスからの脾臓T細胞を事前標識した。細胞を次に未処理のままとしたか、または単独で、もしくは2:1の比の腫瘍細胞(SVR血管肉腫もしくはHs578T乳癌-肉腫)の存在下で3日間、可溶性抗CD3(#BE0001-1、BioXCell、West Lebanon、NH、USA;2μg/ml)/抗CD28抗体(#BE0015-1、BioXCell;2μg/ml)を用いて活性化させた。追加的に、一部の共培養物を対照IgG1(10μM)、またはhSFRP2 mAb(10μM)を用いて処理した。3日後に、共培養物からのT細胞を使用してCFSE強度を測定した。平均蛍光強度(MFI)をFACSにより測定し、FlowJoソフトウェアを使用して解析を行った。
【0086】
インビボでのhSFRP2 mAbの最大耐用量(MTD)。動物実験プロトコールは、実験動物の管理および使用についてのNIHガイドラインと合致するものであった。Charles River(Wilmington、MA、USA)から得られた6週齢ヌード雄および雌マウスの右脇腹の皮下に106個のSVR血管肉腫細胞を注射した。翌日、3日毎に尾静脈を介して注射される様々な濃度の精製されたhSFRP2 mAb(2、4、10、および20mg/kg)を用いてPBS対照と共にi.v.でマウス(n=5/群)を処置した。動物を処置し、終点として定義された2cmの平均直径に対照腫瘍が達するまで3日毎に腫瘍体積を測定した。安楽死後に、腫瘍、肺および肝臓を回収し、10%のホルマリンに固定した。
【0087】
薬物動態研究。雄および雌C57BL/6マウスに異なる時点(0、5分、1、2、7、14、21、28、35、および42日)において4mg/kgのhSFRP2 mAbを注射した。3匹のマウスを各時点のために使用した(n=3)。エンドポイントにおいて、血液試料を門脈を通じて採取し、セパレーターチューブ(#367981、Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ、USA)に入れた。試料を1300×gで15分間遠心分離した。
【0088】
hSFRP2 mAbの薬物動態(PK)のためのマイクロプレート固相タンパク質結合(ELISA)アッセイ。PBS中の0.05%のBSAを用いて4℃で終夜、平底Ni2+コーティング96ウェルマイクロプレートをブロッキングした。PBS(pH7.4)に希釈された1μMのhisタグ付加rhSFRP2を37℃で終夜インキュベートした。250μl/ウェルのPBSを用いてプレートを3回洗浄した。次に、1:50の希釈のマウス血清をプレートに加え、穏やかに振盪しながら37℃で終夜インキュベートした。プレートを3回洗浄し、PBS中の0.1%のBSA中室温で1時間ブロッキングした後、PBS中に1:40,000で希釈された100μl/ウェルの二次抗体(HRP共役ヤギ抗ヒトIgG)と共に37℃で1時間インキュベートした。プレートを5回洗浄した後に、各ウェルを100μlのK-Blue TMB基質と共に暗所で5分間インキュベートした。100μlの2N H2SO4を用いて反応を停止させた。450nmにおいて吸光度を読み取った。AUCのPK推定のために、EXCELおよび(42)において非コンパートメント解析(NCA)を使用してt1/2、CL、Vd、TmaxおよびCmaxを決定した。NCAは、血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)を決定するために線形台形公式を使用する。T1/2は消失半減期を表す。AUC算出のために、ELISAからのnMの濃度をmg/Lに変換した。
【0089】
インビボでの血管肉腫同種移植片。Charles River(Wilmington、MA、USA)から得られた6週齢ヌード雄および雌マウスの右脇腹の皮下に106個のSVR血管肉腫細胞を注射した。翌日、マウス(n=10の動物/群)に尾静脈を介してhSFRP2 mAb(4mg/kg)またはIgG1対照(オマリズマブ4mg/kg)をi.v.で注射し、3日毎に処置した。週に2回行われる垂直直径の連続的なキャリパー測定を使用し、以下の式:[(L(mm)×W(mm)×H(mm))×0.5]を使用して腫瘍体積を算出した。身体コンディショニングスコアおよび体重についてマウスを1日毎にモニターした。対照が2cmの直径に達した時にマウスを屠殺し、腫瘍を切除し、ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。
【0090】
インビボでのHs578T乳癌-肉腫異種移植片。Hs578T異種移植片をCharles River(Wilmington、MA、USA)からの5~6週齢ヌード雌マウス中に確立した。マウスの乳房脂肪パッド中に106個の細胞を接種し、平均腫瘍サイズが約100mm3となった時(30日目)に処置を始めた。対照腫瘍が2cmの直径に達する終点まで、3日毎にi.v.で注射される4mg/kgのhSFRP2 mAb(n=11)または4mg/kgのIgG1対照(n=11)を用いて動物を処置した。キャリパーを使用して腫瘍を週に2回測定し、腫瘍体積を次に上記のように算出した。腫瘍を切除し、ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。
【0091】
インビボでのRF420転移性骨肉腫。第1の実験において、無菌PBS中に懸濁されたRF420骨肉腫細胞(5×105)を6~8週齢C57BL/6マウス(10匹の雌および13匹の雄)の尾静脈を介してi.v.で注射した。7日目に、2匹のマウスを屠殺し、肺を除去し、10%のホルマリンに固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色した。切片を転移の存在について顕微鏡下でスクリーニングした。転移の存在が確認されたら(10日目、IgG1対照4mg/kgまたはhSFRP2 mAb 4mg/kg(n=10)を用いてマウスを処置した。3週の処置後に、動物を屠殺し、肺を除去した。表面小結節をカウントした。第2の実験において、無菌PBSに再懸濁したRF420細胞(5×105)をEnvigo(Indianapolis、IN、USA)から購入した6~8週齢C57Bl/6雄および雌マウス(系統コード044)の尾静脈にi.v.で注射した。マウスを無作為に4つの群に分けた:対照(オマリズマブ、n=13);hSFRP2 mAb(n=11);ニボルマブ(NDC# 0003-3772-11、Bristol-Meyers Squibb、Princeton、NJ)(n=12);ニボルマブ+hSFRP2 mAb(n=12)。処置を腫瘍細胞接種の10日後に開始した。投薬量、デリバリー経路および頻度は以下であった:対照(オマリズマブ)4mg/kg i.v. 週毎に1回;hSFRP2 mAb 4mg/kg i.v. 3日毎;ニボルマブ 8mg/kg i.p. 3日毎。23日の処置後に、動物を屠殺し、肺を切除し、表面小結節をカウントした。切除の直後に得られた全肺の画像から表面小結節をカウントした。T細胞単離、免疫組織化学およびtunnelアッセイのために脾臓を新鮮な状態で収集した。
【0092】
免疫組織化学。ホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍切片をキシレン中で2回、10分間脱パラフィンし、無水エタノール中で2回、95%のエタノール中で2回、次に水道水中で水和させた。スライドを3%の過酸化水素中で室温で10分間インキュベートした後、PBS 1X中で2回洗浄した。10分の冷却と共に40分間キットVector Antigen Retrieval Citrate Buffer pH6(H-3300)を使用して野菜スチーマー中でクエン酸緩衝液抗原賦活化ステップを行った。加湿されたスライドチャンバー中室温で1時間、Vector Rabbit IMPRESS HRP Kit(MP-4100)において提供されるブロッキング血清中でスライドをインキュベートした。ブロッキング血清を次に排出し、スライドを1:40希釈のKi67抗体(PA1-21520)と共に4℃で終夜インキュベートした。翌日、スライドをPBS中で3回、洗浄当たり5分間リンスした。Vector Rabbit IMPRESS HRP Kitからの二次抗体を加え、スライドをRTで30分間インキュベートし、次にPBS中で3回、洗浄当たり5分間リンスした。DAB溶液を調製し、Vector DAB kit(SK-4100)において指示されるようにスライドに5分間加え、PBS中でリンスし、ヘマトキシリンを用いて30秒間対比染色した。スライドを次に蒸留水、続いてアンモニアアルコール中で洗浄し、95%のエタノール中で2回、100%のエタノール中で2回、キシレン中で2回脱水し、次にカバーガラスをのせた。スライス当たり3つの視野の平均を使用して、単位面積当たりの陽性染色細胞の数として腫瘍増殖を定量化した。
【0093】
TUNELアッセイ。Apoptag(登録商標) Peroxidase In Situ Apoptosis Detection Kit(#S7100)用の製造者のプロトコールにしたがってHs578TおよびSVR腫瘍からの切片をアポトーシス細胞について染色した。Histoclear(#HS-200、National Diagnostics、Atlanta、GA、USA)を用いて全ての切片を脱パラフィンした。以下の材料はTUNELキットには供給されておらず、別々に購入した:30%の過酸化水素(#5155-01、J. T. Baker、Phillipsburg、NJ、USA)、プロテイナーゼK(#21627、Millipore、Burlington、MA、USA)、金属増強性DAB基質キット(#34065、Thermoscientific、Waltham、MA、USA)、安定ペルオキシダーゼ基質緩衝液1X(#1855910、Thermoscientific、Waltham、MA、USA)および1-ブタノール(#B7908、Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)。各試料中で5つの視野を無作為に選択し、EVOS FLc顕微鏡(Life Technologies Inc.、Waltham、MA、USA)を使用して写真撮影した。各視野において、アポトーシス核/HPFの数として腫瘍アポトーシスを定量化した。
【0094】
フローサイトメトリー。CD38表面発現についての染色は、尾静脈中のRF420骨肉腫注射を伴う実験からの脾臓細胞をラット抗CD38-PE抗体(1:200;#102707、Biolegend、San Diego、CA、USA)と共にFACS緩衝液(PBS中0.1%のBSA)中4℃で30分間インキュベートすることにより行った。LSRFortessaでCD38平均蛍光強度(MFI)レベルについて試料をスクリーニングし、FlowJoソフトウェア(Tree Star、OR)を用いて解析した。
【0095】
統計。インビトロアッセイのために、両側スチューデントt検定を使用してIgG1およびhSFRP2 mAb処理の間の統計的差異を算出し、p≦0.05を有意であると考えた。血管肉腫におけるインビボ腫瘍研究(処置を腫瘍接種の後の日に開始した)のために、両側スチューデントt検定を使用した。腫瘍が触知可能である30日目に処置を開始したHs578Tについて、34~82日目からの腫瘍体積を各群のベースライン(30日目)腫瘍体積で割ることにより、データを正規化してベースライン腫瘍体積における差異について調整した。各時点のために2サンプルt検定を使用し、処置および対照動物の間で腫瘍体積を比較した。t検定についての正規性仮定を満たすために、正規化された腫瘍体積をlog変換する。骨肉腫研究における多重比較のために、本発明者らは、負二項一般化線形モデル(negative binomial generalized linear model;NBGLM)を使用して処置群の関数としてマクロ転移性病変の数をモデル化した。処置群比較は、モデルベースの線形コントラストを使用して行った。全ての解析はRバージョン3.2.3を使用して行った。本発明者らは、IgG1、hSFRP2 mAbおよびニボルマブをhSFRP2 mAbおよびニボルマブの組合せに対して比較する発生率比(IRR)および対応する95%信頼区画(CI)を要約した。本発明者らは、併用療法は単剤療法と比べてマクロ転移性病変の発生を低減することを想定し、したがって、処置(IgG1、hSFRP2 mAbまたはニボルマブ)が分母に現れるIRRを構築して、単剤と比べた併用療法の影響力の解釈を促した。
【0096】
(参考文献)
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0097】
本発明は、上記の本発明の特定の実施形態に限定されず、特定の実施形態の変形を行うことができ、それは依然として添付の請求項の範囲内に入ることが理解されるべきである。
【0098】
本発明は、以下の番号付けられたパラグラフにより、限定されることなく、さらに記載される:
1.治療有効量のSFRP2アンタゴニスト、CD38アンタゴニスト、および/またはPD-1アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストを含む、薬学的組合せ。
2.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストが、
a.特異的にSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1受容体に結合してその活性化を阻害する抗体、もしくは抗体の抗原結合断片、または
b.特異的にSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1リガンドに結合して前記SFRP2、CD38、および/もしくはPD-1リガンドの前記SFRP2、CD38、および/もしくはPD-1受容体への結合を阻害する可溶性形態のSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1受容体
である、パラグラフ1に記載の薬学的組合せ。
3.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストがSFRP2、CD38、および/またはPD-1モノクローナル抗体(mAb)である、パラグラフ1~2のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
4.前記SFRP2モノクローナル抗体がヒトまたはヒト化抗体である、パラグラフ3に記載の薬学的組合せ。
5.前記PD-1アンタゴニストが、
a.特異的にPD-1受容体に結合してその活性化を阻害する抗体、もしくは抗体の抗原結合断片、または
b.特異的にPD-1リガンドに結合して前記PD-1リガンドの前記PD-1受容体への結合を阻害する可溶性形態のPD-1受容体
である、パラグラフ1~4のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
6.前記PD-1アンタゴニストが前記可溶性形態のPD-1受容体であり、かつ前記PD-1リガンドがPD-L1またはPD-L2である、パラグラフ5に記載の薬学的組合せ。
7.前記PD-1アンタゴニストがPD-1モノクローナル抗体である、パラグラフ1~5のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
8.前記PD-1アンタゴニストがニボルマブである、パラグラフ1~5のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
9.前記PD-1アンタゴニストがペムブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、またはアテゾリズマブである、パラグラフ1~5のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
10.SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの前記治療有効量が0.1mg/kg体重~100mg/kg体重である、パラグラフ1~9のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
11.SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの前記治療有効量が0.2~3、0.27~2.70、0.27、0.54、1.35、または2.70mg/kg体重である、パラグラフ1~9のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
12.SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの前記治療有効量が10mg~200mg、17mg、33mg、84mg、または167mgである、パラグラフ1~11のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
13.PD-1アンタゴニストの前記治療有効量が0.1mg/kg体重~100mg/kg体重である、パラグラフ1~12のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
14.PD-1アンタゴニストの前記治療有効量が0.02~1.2、0.027~1.08、0.027または1.08mg/kg体重である、パラグラフ1~12のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
15.PD-1アンタゴニストの前記治療有効量が1~80、1.6~67、1.6または67mg/kg体重である、パラグラフ1~14のいずれか1つに記載の薬学的組合せ。
16.がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストならびに治療有効量のPD-1アンタゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む、方法。
17.前記投与が同時または逐次的なものである、パラグラフ16に記載の方法。
18.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストが、
a.特異的にSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1受容体に結合してその活性化を阻害する抗体、もしくは抗体の抗原結合断片、または
b.特異的にSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1リガンドに結合して前記SFRP2、CD38、および/もしくはPD-1リガンドの前記SFRP2、CD38、および/もしくはPD-1受容体への結合を阻害する可溶性形態のSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1受容体
である、パラグラフ16または17に記載の方法。
19.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストがSFRP2、CD38、および/またはPD-1モノクローナル抗体(mAb)である、パラグラフ16~18のいずれか1つに記載の方法。
20.前記SFRP2モノクローナル抗体がヒトまたはヒト化抗体である、パラグラフ19に記載の方法。
21.前記PD-1アンタゴニストが、
a.特異的にPD-1受容体に結合してその活性化を阻害する抗体、もしくは抗体の抗原結合断片、または
b.特異的にPD-1リガンドに結合して前記PD-1リガンドの前記PD-1受容体への結合を阻害する可溶性形態のPD-1受容体
である、パラグラフ16~20のいずれか1つに記載の方法。
22.前記PD-1アンタゴニストが前記可溶性形態の前記PD-1受容体であり、かつ前記PD-1リガンドがPD-L1またはPD-L2である、パラグラフ21に記載の方法。
23.前記PD-1アンタゴニストがPD-1モノクローナル抗体である、パラグラフ16~22のいずれか1つに記載の方法。
24.前記PD-1アンタゴニストがニボルマブである、パラグラフ16~23のいずれか1つに記載の方法。
25.前記PD-1アンタゴニストがペムブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、またはアテゾリズマブである、パラグラフ16~23のいずれか1つに記載の方法。
26.前記がんが乳がんである、パラグラフ16~25のいずれか1つに記載の方法。
27.前記がんが血管肉腫、肺がん、骨肉腫、黒色腫、非小細胞肺がん、または腎臓がんである、パラグラフ16~26のいずれか1つに記載の方法。
28.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの前記投与が前記PD-1アンタゴニストの前記投与に先行する、パラグラフ16~27のいずれか1つに記載の方法。
29.前記PD-1アンタゴニストの前記投与がSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの前記投与に先行する、パラグラフ16~27のいずれか1つに記載の方法。
30.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストが前記PD-1アンタゴニストに付随して投与される、パラグラフ16~29のいずれか1つに記載の方法。
31.前記PD-1アンタゴニストが前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストに付随して投与される、パラグラフ16~29のいずれか1つに記載の方法。
32.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストが1日毎、1日1回より高い頻度または1日1回より低い頻度で投与される、パラグラフ16~31のいずれか1つに記載の方法。
33.前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストが3日毎に1回、週毎に1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回投与される、パラグラフ16~31のいずれか1つに記載の方法。
34.前記PD-1アンタゴニストが1日毎、1日1回より高い頻度または1日1回より低い頻度で投与される、パラグラフ16~33のいずれか1つに記載の方法。
35.前記PD-1アンタゴニストが3日毎に1回、週毎に1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回投与される、パラグラフ16~33のいずれか1つに記載の方法。
36.前記PD-1アンタゴニストがニボルマブであり、かつ前記対象に投与される前記ニボルマブの量が3週毎の3mg/kg体重、2週毎の240mgまたは4週毎の480mgである、パラグラフ16~35のいずれか1つに記載の方法。
37.前記PD-1アンタゴニストがペムブロリズマブであり、かつ前記対象に投与される前記ペムブロリズマブの量が3週毎の200mgである、パラグラフ16~35のいずれか1つに記載の方法。
38.前記PD-1アンタゴニストがアベルマブであり、かつ前記対象に投与される前記アベルマブの量が2週毎の800mgである、パラグラフ16~35のいずれか1つに記載の方法。
39.前記PD-1アンタゴニストがデュルバルマブであり、かつ前記対象に投与される前記デュルバルマブの量が2週毎の10mg/kg体重である、パラグラフ16~35のいずれか1つに記載の方法。
40.前記PD-1アンタゴニストがセミプリマブであり、かつ前記対象に投与される前記セミプリマブの量が3週毎の250mgである、パラグラフ16~35のいずれか1つに記載の方法。
41.前記PD-1アンタゴニストがアテゾリズマブであり、かつ前記対象に投与される前記アテゾリズマブの量が2週毎の840mg、3週毎の1200mgまたは4週毎の1680mgである、パラグラフ16~35のいずれか1つに記載の方法。
42.前記対象が、SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニスト療法を開始する前にPD-1アンタゴニスト療法を与えられている、パラグラフ16~41のいずれか1つに記載の方法。
43.前記対象が、PD-1アンタゴニスト療法を開始する前にSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニスト療法を与えられている、パラグラフ16~41のいずれか1つに記載の方法。
44.前記対象が、第2の療法を開始する前に第1の療法を少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも24週間、少なくとも28週間、少なくとも48週間または少なくとも52週間与えられている、パラグラフ42または43に記載の方法。
45.前記SFRP2、CD38、および/もしくはPD-1アンタゴニストならびに/または前記PD-1アンタゴニストの周期投与が少なくとも3日間、少なくとも30日間、少なくとも42日間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも24週間または少なくとも6か月間継続される、パラグラフ16~44のいずれか1つに記載の方法。
46.単独で摂取される場合のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの量のそれぞれ、ならびに単独で摂取される場合のPD-1アンタゴニストの量が、前記対象を治療するために有効なものである、パラグラフ16~45のいずれか1つに記載の方法。
47.単独で摂取される場合のSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1アンタゴニストの量、単独で摂取される場合のPD-1アンタゴニストの量、または単独で摂取される場合の各そのような量のいずれかが、前記対象を治療するために有効なものではない、パラグラフ16~45のいずれか1つに記載の方法。
48.単独で摂取される場合のSFRP2、CD38、および/もしくはPD-1アンタゴニストの量、単独で摂取される場合のPD-1アンタゴニストの量、または単独で摂取される場合の各そのような量のいずれかが、前記対象を治療するのに有効性が低い、パラグラフ16~45のいずれか1つに記載の方法。
49.前記対象がヒト患者である、パラグラフ16~48のいずれか1つに記載の方法。
50.前記患者が、前記併用療法を与えられる前にPD-1アンタゴニスト療法を以前に与えられ、かつPD-1アンタゴニスト療法を与えることを中止された患者である、パラグラフ16~49のいずれか1つに記載の方法。
51.前記患者が以前にPD-1アンタゴニスト療法に応答しなかったか、またはPD-1アンタゴニスト単剤療法の前記投与が前記対象の治療に失敗した、パラグラフ16~50のいずれか1つに記載の方法。
52.がんを患う患者を治療するためのキットであって、治療有効量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニスト、治療有効量のPD-1アンタゴニスト、ならびに前記キットの使用のための指示を含む挿入物を含む、キット。
53.ある量のPD-1アンタゴニスト、ならびにある量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストを含む、医薬組成物。
54.ある量のPD-1アンタゴニスト、ならびにある量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストを本質的に含む、パラグラフ53に記載の医薬組成物。
55.がんに罹患した対象の治療において使用するための、前記量の前記PD-1アンタゴニスト、ならびにある量(an amount)の前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストが同時に、同期間にまたは随伴的に投与される、パラグラフ53または54に記載の医薬組成物。
56.がんに罹患した対象への分注のため、または前記分注における使用のための、治療用パッケージであって、a)1つまたは複数の単位用量であって、各そのような単位用量が、i)ある量のPD-1アンタゴニストおよびii)ある量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストを含み、前記単位用量中の前記PD-1アンタゴニストおよび前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストの前記各々の量が、前記対象への随伴的な投与において、前記対象を治療するために有効なものである、前記単位用量、ならびにb)そのための仕上げられた薬学的容器であって、前記容器が、前記1つまたは複数の単位用量を含有し、前記容器が、前記対象の前記治療における前記パッケージの使用を指示するラベリングをさらに含有するかまたは含む、前記容器を含む、前記パッケージ。
57.がんに罹患した対象の治療においてPD-1アンタゴニストとのアドオン療法としてまたはそれと組み合わせて使用するための、SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニスト。
58.がんに罹患した対象の治療においてSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストとのアドオン療法としてまたはそれと組み合わせて使用するための、PD-1アンタゴニスト。
59.がんに罹患した対象を治療するための組合せの調製におけるある量のSFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニスト、ならびにある量のPD-1アンタゴニストの使用であって、前記SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストならびに前記PD-1アンタゴニストが、同時に、同期間にまたは随伴的に投与されるために調製される、使用。
60.医薬の製造において使用するための、SFRP2、CD38、および/またはPD-1アンタゴニストならびにPD-1アンタゴニストの組合せ。
61.前記医薬ががんの治療、予防、またはその症状の緩和のためのものである、パラグラフ60に記載の組合せ。
62.がんの治療方法であって、治療有効量のSFRP2モノクローナル抗体(mAb)をそれを必要とする対象に投与することを含み、前記対象がCD38および/またはPD-1の増加した発現を有する、方法。
63.前記対象のT細胞がCD38および/またはPD-1の増加した発現を有する、パラグラフ62に記載の方法。
64.前記SFRP2モノクローナル抗体がヒトまたはヒト化抗体である、パラグラフ62または63に記載の方法。
65.前記がんが乳がんである、パラグラフ62~64のいずれか1つに記載の方法。
66.前記がんが血管肉腫、肺がん、骨肉腫、黒色腫、非小細胞肺がん、または腎臓がんである、パラグラフ62~64のいずれか1つに記載の方法。
67.前記SFRP2モノクローナル抗体が1日毎、1日1回より高い頻度または1日1回より低い頻度で投与される、パラグラフ62~66のいずれか1つに記載の方法。
68.前記SFRP2モノクローナル抗体が3日毎に1回、週毎に1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回投与される、パラグラフ62~67のいずれか1つに記載の方法。
69.前記SFRP2モノクローナル抗体の周期投与が少なくとも3日間、少なくとも30日間、少なくとも42日間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも24週間または少なくとも6か月間継続される、パラグラフ62~67のいずれか1つに記載の方法。
70.前記対象がヒト患者である、パラグラフ62~69のいずれか1つに記載の方法。