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特許7451517HMEおよび加熱式空気送達管を用いた加湿
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】HMEおよび加熱式空気送達管を用いた加湿
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61M16/00 305A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021526333
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2019059741
(87)【国際公開番号】W WO2020100054
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】62/767,149
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ロデリック・バス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・リャン・ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ・エバール
(72)【発明者】
【氏名】スカイ・キンバリー・ショート
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・アンドリュー・スタニスラス
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-531124(JP,A)
【文献】特表平08-509883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に呼吸治療のための陽圧の空気を提供するためのCPAPシステムであって、前記CPAPシステムは:
空気流れを治療圧力において供給するように構成されたRPTデバイスと、
治療圧力まで加圧可能なプレナムチャンバを形成する患者インターフェースであって、前記患者インターフェースは、患者の気道への入口を包囲する患者の顔領域に対してシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含む、患者インターフェースと、
前記治療圧力における空気流れを、前記RPTデバイスから前記患者インターフェースへと通過させるように構成された空気送達管と、
患者からの呼気流れから水分を保持するように構築および配置された熱水分交換器(HME)であって、HMEの保持水分は、加湿のために空気流れに戻る、熱水分交換器と、
HMEに設けられて、HMEを直接加熱するような構成および配置にされた制御可能なヒータと、
前記制御可能なヒータの加熱を調節して、加湿のためにHMEから空気流れに戻る水分を調節するように構成されたコントローラと、を含む、CPAPシステム。
【請求項2】
前記HMEは、前記患者インターフェースのプレナムチャンバ内に設けられる、請求項に記載のCPAPシステム。
【請求項3】
前記HMEは、前記患者インターフェースのプレナムチャンバの上流に設けられる、請求項に記載のCPAPシステム。
【請求項4】
前記HMEは、前記空気送達管と前記患者インターフェースとの間に配置されたアダプタに設けられる、請求項に記載のCPAPシステム。
【請求項5】
前記患者インターフェースのシール形成構造は、鼻プロングを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のCPAPシステム。
【請求項6】
前記患者インターフェースのシール形成構造は、鼻クッションを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のCPAPシステム。
【請求項7】
前記RPTデバイス、患者インターフェースおよび/または空気送達管は、1つ以上のセンサを含み、それぞれのセンサは、コントローラと通信する1つ以上の出力信号を生成するように構成され、前記制御可能なヒータの調整は、前記1つ以上のセンサからの前記1つ以上の出力信号に少なくとも部分的に基づく、請求項1~のいずれか一項に記載のCPAPシステム。
【請求項8】
前記空気送達管は、ガス温度センサを含む、請求項に記載のCPAPシステム。
【請求項9】
前記RPTデバイスは、圧力センサ、流れセンサ、湿度センサ、および/または温度センサを含む、請求項7または8に記載のCPAPシステム。
【請求項10】
前記RPTデバイスは、患者入力を含み、前記制御可能なヒータの調整は、前記患者入力に少なくとも部分的に基づく、請求項のいずれか一項に記載のCPAPシステム。
【請求項11】
前記患者入力は、要望のガス温度設定を含む、請求項10に記載のCPAPシステム。
【請求項12】
記コントローラは、制御可能なヒータの加熱を調整して患者インターフェース内の凝結を調整するように構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載のCPAPシステム。
【請求項13】
前記RPTデバイスに設けられる加熱式パスオーバー(passover)加湿器をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のCPAPシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許局および特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
【0002】
1 関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月14日に出願された米国仮出願第62/767,149号の恩恵を主張する。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【背景技術】
【0003】
2 技術の背景
2.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連疾患のスクリーニング、診断、監視、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。
【0004】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 ヒトの呼吸器系およびその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口腔は、患者の気道への入口を形成する。
【0005】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、伝導のための気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸領域と呼ぶ。以下を参照されたい:「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2012。
【0006】
一定範囲の呼吸器疾患が存在している。特定の疾患は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0007】
呼吸器疾患の例には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)および胸壁疾患が含まれる。
【0008】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の1つの形態であり、睡眠時の上通気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられる。これは異常に小さい上気道と、舌の領域の筋緊張の通常の喪失、睡眠時の軟口蓋および後口咽頭壁の正常損失の組み合わせの結果である。このような状態に起因して、罹患患者の呼吸停止が典型的には30~120秒にわたり、ときには一晩に200~300回も呼吸が停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候は一般的な疾患であり、特に中年の過体重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。米国特許第4,944,310号(Sullivan)を参照されたい。
【0009】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠呼吸障害である。CSRは、患者の呼吸調節器の疾患であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付けられる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によっては、CCRは、重症不眠、交感神経活動の増加、および後負荷の増加の原因となる、反復性睡眠覚醒を随伴する。米国特許第6,532,959号(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0010】
呼吸不全とは、呼吸器障害の総称であり、患者の需要を満たすための充分な酸素吸気または充分なCO呼気を肺が行うことができていないことを指す。呼吸不全は、以下の疾患のうちいくつかまたは全てを包含し得る。
【0011】
呼吸不全(一種の呼吸不全)の患者は、運動時に異常な息切れを経験することがある。
【0012】
肥満過換気症候群(OHS)は、低換気の原因が他に明確に無い状態における、重症肥満および覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状には、呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0013】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0014】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾病および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋力低下に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋肉障害は、以下の急速進行性と緩徐進行性とに区分され得る:(i)急速進行性障害:数ヶ月かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、数年内に死亡に繋がる(例えば、ティーンエージャーにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変性または緩徐進行性障害:数年かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、平均余命が若干低減するだけである(例えば、肢帯、顔面肩甲上腕型および筋強直性筋ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全症状を以下に挙げる:全身衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難。
【0015】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症および/または脊柱後側弯症は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症状を以下に挙げる:労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振。
【0016】
このような状態を治療または改善するために、一定範囲の治療が用いられている。さらに、その他の点では健常人も、呼吸器疾患の予防治療を有利に利用することができる。しかし、これらにおいては、複数の欠陥がある。
【0017】
2.2.2 治療法
多様な療法(例えば、持続的気道陽圧(CPAP)治療法、非侵襲的換気(NIV)および侵襲的換気(IV))が上記の呼吸器疾患の1つ以上の治療のために用いられている。
【0018】
持続的気道陽圧(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用機構としては、例えば軟口蓋および舌を押して後口咽頭壁へ前進または後退させることにより、持続陽圧呼吸療法が空気スプリントとして機能し、これにより上気道の閉鎖を防止し得る。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が治療の提供に用いられるデバイスについて以下のうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある:不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さ。
【0019】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助および/または身体中の適切な酸素レベルの維持を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0020】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気管切開管を用いて提供され得る。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0021】
2.2.3 治療システム
これらの治療は、治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾患を治療することなくスクリーニング、診断、または監視するためにも、用いられ得る。
【0022】
治療システムは、呼吸圧力治療デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、およびデータ管理を含み得る。
【0023】
別の形態の治療システムとして、下顎再位置決めデバイスがある。
【0024】
2.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻および/または口腔へのマスク、口腔への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域とのシールを形成し得、これにより、療法実行のための雰囲気圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば雰囲気圧力に対して約10cmHOの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmHOの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
【0025】
特定の他のマスクシステムは、本分野において機能的に不適切であり得る。例えば、純然たる装飾目的のマスクの場合、適切な圧力を維持することができない場合がある。水中水泳またはダイビングに用いられるマスクシステムは、外部からのより高い圧力からの水侵入から保護することと、周囲よりも高い圧力において内部の空気を維持しないこととを行うように、構成され得る。
【0026】
特定のマスクは、本技術において臨床的に好ましく無い場合があり得る(例えば、マスクが鼻を介して気流を遮断し、口を介した気流のみを通過させる場合)。
【0027】
特定のマスクにおいて、患者がマスク構造の一部を口に挿入し、唇を介して密閉状態を生成および維持しなければならない場合、本技術において不快であるかまたは非実際的である場合がある。
【0028】
特定のマスクは、睡眠時(例えば、横向きにベッドに寝て枕の上に頭を置いた状態で睡眠する場合)における使用においては非実際的である場合がある。
【0029】
患者インターフェースの設計においては、複数の課題がある。顔は、複雑な三次元形状を有する。鼻および頭のサイズおよび形状は、個人によって大きく異なる。頭部には骨、軟骨および軟組織が含まれるため、顔の異なる領域は、機械的力に対して異なる反応を示す。すなわち、顎部または下顎は、頭蓋骨の他の骨に相対して動き得る。頭部全体は、呼吸治療期間を通じて動き得る。
【0030】
これらの課題に起因して、いくつかのマスクの場合、特に装着時間が長い場合または患者がシステムに不慣れである場合、押しつけがましい、美観的に望ましくない、コストが高い、フィット感が悪い、使用が困難、および不快感があるなどの理由のうち1つ以上がある。誤ったサイズのマスクが用いられた場合、コンプライアンスの低下、快適性の低下および患者予後の低下に繋がり得る。飛行士専用のマスク、個人用保護装具(例えば、フィルターマスク)、SCUBAマスクの一部として設計されたマスク、または麻酔投与用マスクは、その元々の用途には耐えられるものの、このようなマスクの場合、長時間(例えば、数時間)にわたって装着するには望ましくないほど不快な場合がある。このような不快感に起因して、治療に対する患者のコンプライアンスが低下する可能性がある。これは、マスクを睡眠時に装着する必要がある場合、特に当てはまる。
【0031】
CPAP治療は、患者が治療を承諾している場合、特定の呼吸器疾患の治療においては極めて効果的である。マスクが不快である場合または使用が難しい場合、患者は、治療を承諾しない場合がある。患者はマスクを定期的に洗浄するよう推奨されることが多いため、マスクの清浄が難しい(例えば、組立または分解が困難である場合)、患者は、マスクを清浄することができず、患者のコンプライアンスに影響が出る場合がある。
【0032】
他の用途(例えば、飛行士)用のマスクの場合、睡眠呼吸障害の治療の使用には不適である場合があるため、睡眠呼吸障害の治療の使用のために設計されたマスクは、他の用途に適している場合がある。
【0033】
これらの理由のめ、睡眠時のCPAP送達のための患者インターフェースは、明瞭な分野を形成する。
【0034】
2.2.3.1.1 シール形成構造
患者インターフェースは、シール形成構造を含み得る。患者インターフェースは、患者の顔と直接接触するため、シール形成構造の形状および構成は、患者インターフェースの有効性および快適性に直接影響を持ち得る。
【0035】
患者インターフェースは、使用時にシール形成構造を顔と係合させる場所の設計意図に従って、部分的に特徴付けられ得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、左鼻孔の周囲にシールを形成するための第1のサブ部分と、右鼻孔の周囲にシールを形成するための第2のサブ部分とを含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時において双方の鼻孔を包囲する単一の要素を含み得る。このような単一の要素は、例えば顔の上唇領域および鼻ブリッジ領域上に載置されるように、設計され得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に例えば顔の下唇領域上にシールを形成することにより口腔領域を包囲する要素を含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に双方の鼻孔および口領域を包囲する単一の要素を含み得る。これらの異なる種類の患者インターフェースは、その製造業者によって鼻マスク、フルフェイスマスク、鼻枕、鼻パフおよび口鼻マスクなどの多様な名称によって公知であり得る。
【0036】
患者の顔の一領域において有効であり得るシール形成構造は、例えば患者の顔の異なる形状、構造、変化性および感受性領域に起因して、別の領域において不適切であり得る。例えば、患者の前額上に載置される水泳用ゴーグルの密閉部は、患者の鼻上における使用には不適切である場合がある。
【0037】
特定のシール形成構造は、広範囲の異なる顔形状およびサイズに対して1つの設計が適合し、快適でありかつ有効になるように、大量製造用に設計され得る。密閉部を形成するためには、患者の顔の形状と、大量製造された患者インターフェースのシール形成構造との間の不整合がある範囲まで、一方または双方を適合させる必要がある。
【0038】
1つの種類のシール形成構造は、患者インターフェースの周囲を包囲して延び、シール形成構造が患者の顔に対向して係合している状態で力が患者インターフェースへ付加された際、患者の顔を密閉することを意図する。このシール形成構造は、空気または流体充填クッションを含み得るか、または、ゴムなどのエラストマーによって構成された弾力性のある密閉要素が成形されたかまたは形成された表面を含み得る。この種のシール形成構造により、フィット感が不適切である場合、シール形成構造と顔との間に隙間が発生し、密閉を達成するには、患者インターフェースを顔に押しつけるためにさらなる力が必要になる。
【0039】
別の種類のシール形成構造は、陽圧がマスク内に付加された際に患者の顔に対して自己気密作用を提供するように、マスクの周囲の周辺に配置された薄材のフラップシールを使用する。先述の種類のシール形成部分と同様に、顔とマスクとの間の整合が良くない場合、密閉を達成するために必要なさらなる力が必要になり得るか、またはマスクから漏洩が発生し得る。さらに、シール形成構造の形状が患者の形状と整合しない場合、使用時においてシール形成部分に折り目または座屈が発生し、漏洩の原因になる。
【0040】
別の種類のシール形成構造は、例えば鼻孔中へ挿入される摩擦嵌め要素を含み得るが、これらのシール形成部分を不快であると感じる患者も存在する。
【0041】
別の形態のシール形成構造は、密閉を達成するために接着部を用い得る。患者の中には、常に接着部を自身の顔に貼り付けるかまたは取り外すことが不便であると感じる患者もいる。
【0042】
一定範囲の患者インターフェースシール形成構造の技術について、(ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願:WO1998/004,310;WO2006/074,513;WO2010/135,785)に開示がある。
【0043】
鼻枕の一形態が、Puritan Bennettによって製造されたAdam回路において見受けられる。別の鼻枕または鼻パフが、Puritan-Bennett Corporationへ譲渡された米国特許第4、782、832号(Trimbleら)の主題になっている。
【0044】
ResMed Limitedは、鼻枕を用いた以下の製品を製造している:SWIFT(登録商標)鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)II鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)LT鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)FX鼻枕マスクおよびMIRAGELIBERTY(登録商標)フルフェイスマスク。ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願において、鼻枕マスクの実施例についての記載がある:国際特許出願WO2004/073、778号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)鼻枕の様相を記載)、米国特許出願第2009/0044808号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)LT鼻枕の様相を記載);国際特許出願WO2005/063、328号およびWO2006/130、903号(特に、ResMed LimitedのMIRAGE LIBERTY(登録商標)フルフェイスマスクの様相を記載);国際特許出願WO2009/052、560号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)FX鼻枕の様相を記載)。
【0045】
2.2.3.1.2 位置決めおよび安定化
陽圧空気治療に用いられる患者インターフェースのシール形成構造は、密閉を妨害する空気圧力の対応する力を受ける。そのため、シール形成構造を位置決めすることと、顔の適切な部分に対して密閉を維持することとを行うために、多様な技術が用いられている。
【0046】
1つの技術において、接着部が用いられる。例えば、米国特許出願公開US2010/0000534号を参照されたい。しかし、接着部を用いた場合、不快感がある場合がある。
【0047】
別の技術において、1つ以上のストラップおよび/または安定化ハーネスが用いられる。多数のこのようなハーネスの場合、フィット感が悪い、かさばる、不快および扱いにくいなどの点のうち1つ以上が当てはまる。
【0048】
2.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)デバイス
呼吸圧力治療(RPT)デバイスは、例えばデバイスを作動させて気道へのインターフェースへの空気送達流れを生成することにより、上記した複数の治療のうち1つ以上の送達に個別的に、またはシステムの一部として用いられ得る。この空気流れは、加圧され得る。RPTデバイスの例を挙げると、CPAPデバイスおよび人工呼吸器がある。
【0049】
空気圧生成器は、広範な用途(例えば、工業規模通気システム)において公知である。しかし、医療用途のための空気圧生成器は、より一般的な空気圧生成器(例えば、医療機器の信頼性要件、サイズ要件および重量要件)では満足できない特定の要件を有する。加えて、医療治療向けに設計されたデバイスであっても、以下のうち1つ以上に関連して欠陥を免れない場合がある:快適性、ノイズ、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性。
【0050】
特定のRPTデバイスの特殊な要件の一例として、音響ノイズがある。
【0051】
従来のRPTデバイスのノイズ出力レベルの表(試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmHOにて測定)。
【表1】
【0052】
睡眠呼吸障害の治療に用いられる1つの公知のRPTデバイスとして、S9睡眠治療システム(製造元:ResMed Limited)がある。RPTデバイスの別の実施例として、人工呼吸器がある。人工呼吸器(例えば、成人および小児用人工呼吸器のResMed Stellar(登録商標)シリーズ)の場合、複数の状態(例を非限定的に挙げると、NMD、OHSおよびCOPD)の治療のための一定範囲のための患者のための侵襲的および非侵襲的な非依存的呼吸のための補助を提供し得る。
【0053】
ResMed Elisアクサンテギュee(登録商標)150人工呼吸器およびResMedVSIII(登録商標)人工呼吸器は、複数の状態の治療のための成人患者または小児用患者に適した侵襲的および非侵襲的な依存的呼吸の補助を提供し得る。これらの人工呼吸器により、単一または二重の肢回路を用いた容積通気モードおよび気圧通気モードが得られる。RPTデバイスは典型的には、圧力生成器(例えば、電動送風機または圧縮ガスリザーバ)を含み、患者の気道へ空気流れを供給するように構成される。場合によっては、空気流れは、患者の気道へ陽圧で供給され得る。RPTデバイスの出口は、空気回路を介して上記したような患者インターフェースへ接続される。
【0054】
デバイスの設計者には、無数の選択肢が提示され得る。設計基準同士が対立することが多くあるため、特定の設計選択肢が慣例からほど遠くなるかあるいは避けられないことがある。さらに、特定の態様の快適性および有効性は、1つ以上のパラメータの些細な変更から大きく影響を受ける可能性もある。
【0055】
2.2.3.3 加湿器
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。
【0056】
一定範囲の人工的加湿機器およびシステムが公知であるが、医療加湿器の特殊な要件を満たせていない。
【0057】
医療加湿器は、典型的には患者が(例えば病院において)睡眠時または安静時にあるときに、必要な場合に周囲空気に相対して空気流れの湿度および/または温度を増加させるように、用いられる。枕元に置かれる医療加湿器は、小型である場合がある。医療加湿器は、患者へ送達される空気流れの加湿および/または加熱のみを行うように構成され得、患者の周囲の加湿および/または加熱は行わない。例えば、部屋ベースのシステム(例えば、サウナ、エアコン、または蒸発冷却器)は、呼吸により患者体内に取り込まれる空気も加湿し得るものの、これらのシステムの場合、部屋全体も加湿および/または加熱するため、占有者にとって不快感であり得る。さらに、医療加湿器の場合、工業用加湿器よりも安全面での制約がより厳しい場合もある。
【0058】
多数の医療加湿器が公知であるものの、このような医療加湿器の場合、1つ以上の欠陥を被り得る。すなわち、このような医療加湿器の場合、加湿が不適切なものもあれば、患者にとって使用が困難または不便であるものもある。
【0059】
2.2.3.4 データ管理
臨床的理由により、呼吸治療が処方された患者が「コンプライアンスを遵守している」(例えば、患者が自身のRPTデバイスを1つ以上の「コンプライアンスルール」に則っているか)を決定するためのデータを入手する場合がある。CPAP治療についてのコンプライアンスルールの一例として、患者がコンプライアンスを遵守しているとみなすためには、患者が連続30日間のうち少なくとも21日間にわたってRPTデバイスを一晩あたり少なくとも4時間にわたって使用する必要がある。患者のコンプライアンスを決定するためには、RPTデバイスのプロバイダ(例えば、ヘルスケアプロバイダ)は、RPTデバイスを用いた患者の治療を記述するデータを手作業で入手し、所定期間にわたる使用率を計算し、これをコンプライアンスルールと比較し得る。ヘルスケアプロバイダが患者が自身のRPTデバイスをコンプライアンスルールに則って使用したと決定すると、当該ヘルスケアプロバイダは、患者がコンプライアンスを遵守している旨を第三者に通知し得る。
【0060】
患者の治療において、治療データの第三者または外部システムへの通信から恩恵を受ける他の態様があり得る。
【0061】
このようなデータを通信および管理するための既存のプロセスの場合、高コスト、時間がかかること、エラーの発生し易さのうち1つ以上が発生し得る。
【0062】
2.2.3.5 下顎の再位置決め
下顎再位置決めデバイス(MRD)または下顎前方固定デバイス(MAD)は、睡眠時無呼吸およびいびきの治療選択肢の1つである。これは、歯科医または他の供給業者から利用可能である調節可能な口腔用器具であり、下顎部(下顎)を睡眠時に前方位置に保持する。MRDは、取り外し可能なデバイスであり、患者の睡眠前に口腔内に挿入され、睡眠後に取り外される。そのため、MRDは、常時装着用途を想定した設計はされていない。MRDは、カスタム仕様にしてもよいし、あるいは、標準形態で製造してもよく、患者の歯に適合するように設計された咬合印象部位を含む。この下顎からの機械的突出部は、舌の後ろ側の空間を拡張させ、咽頭壁上へ張力を付加して、気道崩壊を低減させ、口蓋振動を低減させる。
【0063】
特定の実施例において、下顎前方固定デバイスは、上顎または上顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された上側スプリントと、上顎または下顎上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された下側スプリントとを含み得る。上側スプリントおよび下側スプリントは、一対の接続ロッドを介して相互に横方向に接続される。この1組の接続ロッドは、上側スプリントおよび下側スプリント上において対称に固定される。
【0064】
このような設計において、接続ロッドの長さは、MRDが患者の口腔中に配置されたときに下顎が前方位置に保持されるように、選択される。接続ロッドの長さは、下顎の突出レベルを変化させるように、調節され得る。歯科医は、突出レベルを下顎に合わせて決定することができ、その結果、接続ロッドの長さが決定される。
【0065】
下顎を上顎骨に対して前方に押し出すように構成されているMRDもあれば、ResMed Narval CC(登録商標)MRDなどの他のMADのように、下顎を前方位置に保持するように設計されているものもある。このデバイスにより、歯科的副作用および側頭/下顎間の関節(TMJ)の副作用も低下または最小化される。そのため、このデバイスは、歯のうち1つ以上の任意の移動を最小化または回避するように構成される。
【0066】
2.2.3.6 通気技術
いくつかの形態の治療システムは、吐き出された二酸化炭素を押し出すための通気部を含み得る。この通気部により、患者インターフェースの内部空間(例えば、プレナムチャンバ)から患者インターフェースの外部(例えば、周囲)へのガス流れが可能になり得る。
【0067】
この通気部は、オリフィスを含み得、マスク使用時において、ガスがオリフィスを通じて流れ得る。多数のこのような通気部の場合、音がうるさい。他の場合、使用時において閉塞し得るため、押し出しが不十分になる。いくつかの通気部の場合、例えば音または気流集中に起因して、患者1000と同床者1100の睡眠を妨げる場合がある。
【0068】
ResMed Limitedは、複数の向上したマスク通気技術を開発している。下記を参照されたい:国際特許出願公開第WO1998/034、665;国際特許出願公開第WO2000/078、381;米国特許第6、581、594号;米国特許出願公開第US2009/0050156;米国特許出願公開第2009/0044808。
【0069】
従来のマスクのノイズの表(ISO17510-2:2007、1mにおける10cmHO圧力)
【表2】
【0070】
(*試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmHOにて測定)
【0071】
多様な対象の音圧値を以下に羅列する
【表3】
【0072】
2.2.4 スクリーニング、診断、および監視システム
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断および監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な身体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのめには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。睡眠呼吸障害のスクリーニング/診断/監視は家庭において特に不向きである。
【0073】
一般に、スクリーニングおよび診断は、疾患の兆候と症状によって疾患を特定することである。通常、スクリーニングは、患者のSDBがさらなる調査を求める程であるかないかを示す真/偽結果を出すいっぽう、診断は、臨床で実行可能な情報を出すことが多い。スクリーニングおよび診断は、一回性手続きになる傾向であることに反して、疾患の経過をモニタリングすることは無限定に続けられる。いくつかのスクリーニング/診断システムは、スクリーニング/診断にのみ適合されているが、いくつかはモニタリングにも使用することができる。
【0074】
臨床専門家は、患者のスクリーニング、診断または監視をPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。患者の状態について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。さらに、或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0075】
3 技術の簡単な説明
本技術は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる医療機器の提供に関連し、これらの医療機器は、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0076】
本技術の第1の態様は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防に用いられる装置に関連する。
【0077】
本技術の別の態様は、呼吸障害のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる方法に関連する。
【0078】
本技術の特定の形態の一態様は、呼吸治療についての患者のコンプライアンスを向上させる方法および/または装置を提供することである。
【0079】
本技術の別の態様は、患者に呼吸治療のための陽圧の空気を提供するためのCPAPシステムに関する。CPAPシステムは、空気流れを治療圧力において供給するように構成されたRPTデバイスと、治療圧力まで加圧可能なプレナムチャンバを形成する患者インターフェースであって、患者の気道への入口を包囲する患者の顔領域に対してシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含む、患者インターフェースと、治療圧力における空気流れを、RPTデバイスから患者インターフェースへと通過させるように構成された空気送達管と、患者からの呼気流れから水分を保持するように構築および配置された熱水分交換器(HME)であって、HMEの保持水分は、加湿のために空気流れに戻る、熱水分交換器と、HMEを加熱しかつ/またHMEへの入来空気を加熱するような構成および配置にされた制御可能なヒータと、制御可能なヒータの加熱を調節して、加湿のためにHMEから空気流れに戻る水分を調節するように構成されたコントローラと、を含む。
【0080】
記載される方法、システム、デバイスおよび装置により、プロセッサにおける機能(例えば、特定目的用コンピュータのプロセッサ、呼吸モニターおよび/または呼吸治療装置の機能)の向上が可能となるように具現され得る。さらに、記載の方法、システム、デバイスおよび装置により、呼吸状態(例えば、睡眠障害呼吸)の自動管理、監視および/または治療の技術分野における向上が可能になる。
【0081】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/または態様のうち多様な1つを多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる態様または下位態様も構成し得る。
【0082】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【0083】
4 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一実施例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む:
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1A】4.1 治療システム:患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻枕の形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。同床者1100も図示される。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
図1B】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻マスクの形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。
図1C】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、フルフェイスマスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。患者は、側臥位睡眠位置において睡眠している。4.2 呼吸システムおよび顔の解剖学的構造
図2A】鼻腔および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸器系の概要を示す。
図2B】鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、鼻穴、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、口咽頭、舌、喉頭蓋、声帯ひだ、食道および気管を含むヒトの上気道の図である。4.3 患者インターフェース
図3A】本技術の一形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。
図3B】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、3Cに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3C】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、図3Bに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3D】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率の値はゼロである。
図3E】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Fに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3F】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Eに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3G】2つの枕を含むマスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。ドーム領域およびサドル領域が図示される。
図3H】マスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。点Aと点Bとの間の表面上の経路が図示される。AとBとの間の直線距離が図示される。2つのサドル領域およびドーム領域が図示される。
図3I】構造の表面を示し、この表面中には一次元穴が開いている。図示の平面曲線は、一次元穴の境界を形成する。
図3J図3Iの構造を通じた断面図である。図示の表面は、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける。
図3K】二次元穴および一次元穴を含む図3Iの構造の斜視図である。また、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける表面が図示される。
図3L】クッションとしての可膨張性ブラダーを有するマスクを示す。
図3M図3Lのマスクの断面図であり、ブラダーの内面を示す。内面により、マスク中の二次元穴が境界付けられる。
図3N図3Lのマスクを通じたさらなる断面を示す。内面も図示される。
図3O】左手の法則を示す。
図3P】右手の法則を示す。
図3Q】左耳螺旋を含む左耳を示す。
図3R】右耳螺旋を含む右耳を示す。
図3S】右手螺旋を示す。
図3T】マスクの異なる領域内の密閉膜の縁部によって規定された空間曲線のねじれのサインを含むマスクの図である。
図3U】正中矢状面および中央接触面を示す、プレナムチャンバ3200の図である。
図3V図3Uのプレナムチャンバの後方の図である。図中の方向は、中央接触面に対して垂直である。図3V中、正中矢状面により、プレナムチャンバが左手側および右手側に二等分される。
図3W図3Vのプレナムチャンバを通じた断面図であり、この断面は、図3Vに示す正中矢状面においてとられる。「中央接触」面が図示される。中央接触面は、正中矢状面に対して垂直である。中央接触面の方位は、腱3210の方位に対応する。腱3210は、正中矢状面上に載置され、正中矢状面上の2点(すなわち、上点3220および下点3230)においてプレナムチャンバのクッションのみと接触する。この領域におけるクッションのジオメトリに応じて、中央接触面は、上点および下点双方に接し得る。
図3X図3Uのプレナムチャンバ3200が顔面上の使用位置にある状態を示す。プレナムチャンバ3200の正中矢状面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、顔の正中矢状面と概して一致する。中央接触面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、「顔の面」に概して対応する。図3Xにおいて、プレナムチャンバ3200は鼻マスクのものであり、上点3220はほぼセリオン上に載置され、下点3230は上唇上に載置される。4.4 呼吸波形
図4】睡眠時のヒトの典型的な呼吸波形のモデルを示す。4.5 RPTデバイスおよび加湿器
図5A】本技術の一形態によるRPTデバイス4000の分解斜視図を示す。
図5B】本技術の一形態による出口マフラー4124を含むRPTデバイス4000の斜視図を示す。
図5C】技術の一形態による水リザーバ5110を含む一体型加湿器5000を備えたRPTデバイス4000の斜視図を示す。
図5D】本技術の一形態によるRPTデバイスの空気圧経路の模式図である。上流および下流の方向が、送風機および患者インターフェースに対して示される。任意の特定の瞬間における実際の流れ方向に関係無く、送風機は患者インターフェースの上流にあるものとして規定され、患者インターフェースは送風機の下流にあるものとして規定される。送風機と患者インターフェースとの間の空気圧経路内に配置されたアイテムは、送風機の下流および患者インターフェースの上流にある。
図5E】本技術の一態様に従ったRPTデバイスの電気部品の概略図である。
図5F】本技術の1つの形態によるRPTデバイス中において実行されるアルゴリズムの概略図である。
図5G】本技術の一形態による加湿器の模式図である。4.6 HMEおよび加熱式空気送達管を有するCPAPシステム
図6】本技術の一実施例による、RPTデバイス、加熱式空気送達管、患者インターフェース、およびHMEを有するアダプタを含むCPAPシステムの斜視図である。
図7C】本技術の一実施例による加熱式空気送達管およびアダプタを示す上面図である。
図8】本技術の一実施例による加熱式空気送達管およびアダプタの断面図である。
図9】本技術の一実施例による加熱式空気送達管のカフ内に設けられたサーミスタを示す斜視図である。
図10】本技術の一実施例による患者インターフェースおよびアダプタの上面図である。
図11】本技術の一実施例による患者インターフェースおよびアダプタの断面図である。
図12】本技術の一実施例によるRPTデバイス内の圧力センサを示す断面図である。
図13】本技術の一実施例によるRPTデバイス内の流れセンサを示す断面図である。
図14】本技術の一実施例による、RPTデバイス、加熱式空気送達管、およびHMEを有する患者インターフェースを含むCPAPシステムの斜視図である。
図15】本技術の一実施例によるHMEを有する患者インターフェースの断面図である。
図16】本技術の一実施例による、RPTデバイス、加湿器、加熱式空気送達管、患者インターフェース、およびHMEを有するアダプタを含むCPAPシステムの斜視図である。
図17】本技術の一実施例による、加熱式管と非加熱式管配置構成に対するHME温度対露点温を示すチャートである。
図18】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図19】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図20】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図21】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図22】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図23】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図24】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図25】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図26】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図27】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図28】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図29】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図30】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図31】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図32】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図33】本技術の実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0085】
5 本技術の実施例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の実施例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の実施例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0086】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な実施例に関連して提供される。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの実施例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成し得る。
【0087】
5.1 治療法
一形態において、本技術は、呼吸器疾患の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧を付加するステップを含む。
【0088】
本技術の特定の実施例において、陽圧における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0089】
本技術の特定の実施例において、口呼吸が制限されるか、限定されるかまたは妨げられる。
【0090】
5.2 治療システム
1つの形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、加圧空気を患者インターフェース3000への空気回路4170を介して患者1000へ供給するRPTデバイス4000を含み得る(例えば、図1A~1Cを参照されたい)。
【0091】
5.3 患者インターフェース
図3Aは、シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気部3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700を含む、本技術の一態様による非侵襲的患者インターフェース3000を示す。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能様態を提供し得る。使用時において、シール形成構造3100は、気道への陽圧での空気供給を促進するように、患者の気道の入口を包囲するように配置される。
【0092】
患者インターフェースが最低レベルの陽圧を快適に気道へ送達できない場合、患者インターフェースは呼吸圧力治療に不適切であり得る。
【0093】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも6cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0094】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも10cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0095】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも20cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0096】
5.4 RPTデバイス
本技術の一形態によるRPTデバイス4000の分解図を図5Aに示す。RPTデバイス4000は、機械式部品、空気圧式部品、および/または電気部品を含み得、1つ以上のアルゴリズムを実行するように構成される。RPTデバイス4000は、例えば本文書中のいずれか一項に記載の呼吸状態のうち1つ以上の治療のために患者の気道へ送達される空気流れを生成するように構成され得る。
【0097】
一形態において、RPTデバイス4000は、少なくとも6cmHOまたは少なくとも10cmHOまたは少なくとも20cmHOの陽圧を維持しつつ、空気流れを-20L/分~+150L/分の範囲で送達できるように構築および配置される。
【0098】
RPTデバイス4000は、1つ以上のパネル(単数または複数)(例えば、主パネル4010、前面パネル4012、および側面パネル4014)を有する外部ハウジングを含み得る。RPTデバイス4000は、図5Aおよび図5Bに示すように、出口マフラー4124も含み得る。出口マフラー4124は、取り外し可能であってよく、水リザーバ5110(図5Cを参照)と交換してよい。かかる形態において、RPTデバイス4000は、一体型加湿器5000を含むと考えてよい。よって、RPTデバイス4000は、水リザーバ5110または出口マフラー4124がそれぞれ取り付けられているか否かに応じて加湿ありまたは無しで使用され得る。好適には、RPTデバイス4000は、RPTデバイス4000の1つ以上の内部コンポーネントを支持するシャーシ4016を含む。一形態において、RPTデバイス4000は、圧力生成器4140を含み、これは、シャーシ4016に結合された空気圧ブロック4020内に受容され得る。
【0099】
例示的なRPTデバイスのさらなる実施例および詳細について、PCT公報第WO2015/089582号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0100】
RPTデバイス4000の空気圧経路(例えば、図5Dに示すもの)は、入口空気フィルタ4112、入口マフラー4122、空気を陽圧で供給することが可能な圧力生成器4140(好適には、送風機4142)、および出口マフラー4124(もしくは、加湿が要求される場合には、水リザーバ5110)を含み得る。1つ以上の変換器4270(例えば、圧力センサおよび流れセンサが、空気圧経路内に設けられ得る。空気圧経路は、アンチスピルバック弁4160を含むことにより、水が加湿器5000からRPTデバイス4000の電気部品に逆流することを防止もよい。
【0101】
図5Eに示すように、RPTデバイス4000は、電力供給4210、1つ以上の入力デバイス4220、中央コントローラ4230、治療デバイスコントローラ4240、圧力生成器4140、1つ以上の保護回路4250、メモリ4260、変換器4270、データ通信インターフェース4280、および1つ以上の出力デバイス4290を有することができる。電気部品4200は、シングルプリント回路基板アセンブリ(PCBA)4202上に取り付けられ得る(例えば、図5Aを参照)。一代替形態において、RPTデバイス4000は、1つよりも多くのPCBA4202を含み得る。
【0102】
5.4.1 RPTデバイス機械および空気圧式コンポーネント
RPTデバイスは、以下のコンポーネントのうち1つ以上を一体ユニット中に含み得る。一代替形態において、以下のコンポーネントのうち1つ以上が、それぞれの別個のユニットとして配置され得る。
【0103】
5.4.1.1 空気フィルタ(単数または複数)
本技術の一形態によるRPTデバイスは、空気フィルタ4110または複数の空気フィルタ4110を含み得る。
【0104】
一形態において、入口空気フィルタ4112は、圧力生成器4140の空気圧経路上流の始まり部に配置される。
【0105】
一形態において、出口空気フィルタ4114(例えば抗菌ファクタ)は、空気圧ブロック4020の出口と、患者インターフェース3000との間に配置される。
【0106】
5.4.1.2 マフラー(単数または複数)
本技術の一形態によるRPTデバイスは、マフラー4120または複数のマフラー4120を含み得る。
【0107】
本技術の一形態において、入口マフラー4122は、空気圧経路内において圧力生成器4140の上方に配置される。
【0108】
本技術の一形態において、出口マフラー4124は、空気圧経路内において圧力生成器4140と患者インターフェース3000との間に配置される。
【0109】
5.4.1.3 圧力生成器
本技術の一形態において、空気の流れまたは供給を陽圧において生成する圧力生成器4140は、制御可能な送風機4142である。例えば、送風機4142は、1つ以上のインペラを備えたブラシレスDCモータ4144を含み得る。インペラが、ボリュート内へ配置され得る。送風機は、空気供給の送達を例えば約120リットル/分までの速度で、約4cmHO~約20cmHOの範囲の陽圧で、または他の形態において約30cmHOまで行うことができる。送風機については、以下の特許または特許出願のうちいずれか1つに記載があり得。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する:米国特許第7,866,944号、米国特許第8,638、014号、米国特許第8,636,479号およびPCT特許出願公開WO2013/020167。
【0110】
圧力生成器4140は、治療デバイスコントローラ4240の制御下にある。
【0111】
他の形態において、圧力生成器4140は、ピストン駆動ポンプ、高圧源(例えば、圧縮空気リザーバ)へ接続された圧力調節器、またはベローズであり得る。
【0112】
5.4.1.4 変換器(単数または複数)
変換器は、RPTデバイスの内部に設けてもよいし、あるいはRPTデバイスの外部に設けてもよい。外部変換器は、例えば空気回路上に配置してもよいし、あるいは空気回路の一部を形成してもよい(例えば、患者インターフェース)。外部変換器は、非接触センサの形態をとり得る(例えば、データRPTデバイスを送るかまたは移動させるドップラーレーダー移動センサ)。
【0113】
本技術の一形態において、1つ以上の変換器4270が、圧力生成器4140の上流および/または下流に配置され得る。1つ以上の変換器4270は、空気流れの特性を示す信号(例えば、空気圧経路中の当該ポイントにおける流量、圧力または温度)を生成するように、構築および配置され得る。
【0114】
本技術の一形態において、1つ以上の変換器4270は、患者インターフェース3000の近隣に配置され得る。
【0115】
一形態において、変換器4270からの信号が、(例えば、ローパス、ハイパスまたはバンドパスフィルタリングによって)フィルタリングされ得る。
【0116】
5.4.1.4.1 流量センサ
本技術による流量センサ4274は、差圧変換器(例えば、SENSIRIONからのSDP600シリーズ差圧変換器)に基づき得る。
【0117】
一形態において、流量センサ4274からの流量を示す信号が、中央コントローラ4230によって受信される。
【0118】
5.4.1.4.2 圧力センサ
本技術による圧力センサ4272は、空気圧経路と流体連通して配置され得る。適切な圧力センサの一実施例として、HONEYWELL ASDXシリーズからの変換器がある。別の適切な圧力センサとして、GENERAL ELECTRICからのNPAシリーズからの変換器がある。
【0119】
1つの形態において、圧力センサ4272からの信号は、中央コントローラ4230によって受信される。
【0120】
5.4.1.4.3 モータ速度変換器
本技術の一形態において、モータ4144および/または送風機4142の回転速度を決定するために、モータ速度変換器4276が用いられ得る。モータ速度変換器4276からのモータ速度信号は、治療デバイスコントローラ4240へ提供され得る。モータ速度変換器4276は、例えば速度センサであり得る(例えば、ホール効果センサ)。
【0121】
5.4.1.5 アンチスピルバック弁
本技術の一形態において、アンチスピルバック弁4160が、加湿器5000と、空気圧ブロック4020との間に配置され得る。アンチスピルバック弁は、水が加湿器5000から上流に(例えば、送風機のモータ4144へ)流れる危険性を低減させるように、構築および配置される。
【0122】
5.4.2 RPTデバイス電気部品
5.4.2.1 電源
電源4210は、RPTデバイス4000の外部ハウジング4010の内部または外部に配置され得る。
【0123】
本技術の一形態において、電源4210は、RPTデバイス4000にのみ電力を供給する。本技術の別の形態において、電源4210から、電力がRPTデバイス4000および加湿器5000双方へ提供される。
【0124】
5.4.2.2 入力デバイス
本技術の一形態において、RPTデバイス4000は、人間がデバイスと相互作用を可能にするためのボタン、スイッチまたはダイヤルの形態をとる1つ以上の入力デバイス4220を含む。ボタン、スイッチまたはダイヤルは、タッチスクリーンを介してアクセスすることが可能な物理的デバイスまたはソフトウェアデバイスであり得る。ボタン、スイッチまたはダイヤルは、一形態において外部ハウジング4010に物理的に接続させてもよいし、あるいは、別の形態において中央コントローラ4230と電気接続された受信器と無線通信してもよい。
【0125】
一形態において、入力デバイス4220は、人間が値および/またはメニュー選択肢を選択することを可能にするように、構築および配置され得る。
【0126】
5.4.2.3 中央コントローラ
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、RPTデバイス4000の制御に適した1つまたは複数のプロセッサである。
【0127】
適切なプロセッサは、ARM HoldingsからのARM(登録商標)Cortex(登録商標)-Mプロセッサに基づいたプロセッサであるx86INTELプロセッサを含み得る(例えば、ST マクロ電子からのS(登録商標)32シリーズのマイクロコントローラ)。本技術の特定の代替形態において、32ビットRISC CPU(例えば、ST MICRO電子SからのSTR9シリーズマクロコントローラ)または16ビットRISC CPU(例えば、TEXAS INSTRUMENTSによって製造されたマクロコントローラのMSP430ファミリーからのプロセッサ)も適切であり得る。
【0128】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、専用電子回路である。
【0129】
一形態において、中央コントローラ4230は、特定用途向け集積回路である。別の形態において、中央コントローラ4230は、個別電子コンポーネントを含む。
【0130】
中央コントローラ4230は、1つ以上の変換器4270、1つ以上の入力デバイス4220および加湿器5000から入力信号(単数または複数)を受信するように、構成され得る。
【0131】
中央コントローラ4230は、出力信号(単数または複数)を出力デバイス4290、治療デバイスコントローラ4240、データ通信インターフェース4280および加湿器5000のうち1つ以上へ提供するように、構成され得る。
【0132】
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、本明細書中に記載の1つ以上の方法を具現するように、構成される(例えば、非一時的なコンピュータで読出可能な記録媒体のような(例えば、メモリ4260)中に記録されたコンピュータプログラムとして表現された1つ以上のアルゴリズム4300)。本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、RPTデバイス4000と一体化され得る。しかし、本技術のいくつかの形態において、いくつかの方法が、遠隔配置されたデバイスによって行われ得る。例えば、遠隔配置されたデバイスは、記録されたデータ(例えば、本明細書中に記載のセンサのうちいずれかからのもの)の分析により、人工呼吸器の制御設定を決定し得るか、または、呼吸関連イベントを検出し得る。
【0133】
5.4.2.4 時計
RPTデバイス4000は、中央コントローラ4230へ接続された時計4232を含み得る。
【0134】
5.4.2.5 治療デバイスコントローラ
本技術の一形態において、治療デバイスコントローラ4240は治療制御モジュール4330であり、中央コントローラ4230によって実行されるアルゴリズム4300の一部を形成する。
【0135】
本技術の一形態において、治療デバイスコントローラ4240は、専用モータ制御集積回路である。例えば、一形態において、ONSEMIによって製造されたMC33035ブラシレスDCモータコントローラが用いられる。
【0136】
5.4.2.6 保護回路
本技術による1つ以上の保護回路4250は、電気保護回路、温度および/または圧力安全回路を含み得る。
【0137】
5.4.2.7 メモリ
本技術の一形態によれば、RPTデバイス4000は、メモリ4260(例えば、不揮発性メモリ)を含む。いくつかの形態において、メモリ4260は、電池式スタティックRAMを含み得る。いくつかの形態において、メモリ4260は、揮発性RAMを含み得る。
【0138】
メモリ4260は、PCBA4202上に配置され得る。メモリ4260は、EEPROMまたはNANDフラッシュの形態をとり得る。
【0139】
追加的にまたは代替的に、RPTデバイス4000は、取り外し可能なメモリ4260(例えば、セキュアデジタル(SD)規格に従って作製されたメモリカード)を含む。
【0140】
本技術の一形態において、メモリ4260は、非一時的コンピュータで読出可能な記録媒体として機能する。この記録媒体上に、本明細書中に記載の1つ以上の方法を表現するコンピュータプログラム命令(例えば、1つ以上のアルゴリズム4300)が記録される。
【0141】
5.4.2.8 データ通信システム
本技術の一形態において、データ通信インターフェース4280が設けられ、中央コントローラ4230へ接続される。データ通信インターフェース4280は、遠隔外部通信ネットワーク4282および/またはローカル外部通信ネットワーク4284へ接続可能であり得る。遠隔外部通信ネットワーク4282は、遠隔外部デバイス4286へ接続可能であり得る。ローカル外部通信ネットワーク4284は、ローカル外部デバイス4288へ接続可能であり得る。
【0142】
一形態において、データ通信インターフェース4280は、中央コントローラ4230の一部である。別の形態において、データ通信インターフェース4280は、中央コントローラ4230と別個であり、集積回路またはプロセッサを含み得る。
【0143】
一形態において、遠隔外部通信ネットワーク4282はインターネットである。データ通信インターフェース4280は、インターネットへ接続するために、(例えば、イーサネットまたは光ファイバーを介して)有線通信を用得るかまたは無線プロトコル(例えば、CDMA、GSM、LTE)を用い得る。
【0144】
一形態において、ローカル外部通信ネットワーク4284は、1つ以上の通信規格(例えば、ブルートゥース(登録商標)またはコンシューマー赤外線プロトコル)を用いる。
【0145】
一形態において、遠隔外部デバイス4286は、1つ以上のコンピュータ(例えば、ネットワーク化コンピュータのクラスタ)である。一形態において、遠隔外部デバイス4286は、物理的コンピュータではなく仮想コンピュータであり得る。いずれの場合も、このような遠隔外部デバイス4286は、適切に権限を付与された人間(例えば、臨床医)からのアクセスが可能であり得る。
【0146】
ローカル外部デバイス4288は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレットまたはリモートコントロールであり得る。
【0147】
5.4.2.9 任意選択のディスプレイ、警報を含む出力デバイス
本技術による出力デバイス4290は、視覚、音声および触覚ユニットのうち1つ以上の形態をとり得る。視覚ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイであり得る。
【0148】
5.4.2.9.1 ディスプレイドライバ
ディスプレイドライバ4292は、ディスプレイ4294上へ表示されるべき文字、記号または画像を入力として受信し、ディスプレイ4294にこれらの文字、記号または画像を表示させるコマンドへ変換する。
【0149】
5.4.2.9.2 ディスプレイ
ディスプレイ4294は、ディスプレイドライバ4292から受信されたコマンドに応答して、文字、記号または画像を視覚的に表示するように構成される。例えば、ディスプレイ4294は8セグメントディスプレイであり得、その場合、ディスプレイドライバ4292は、各文字または記号(例えば、数字「0」)を、特定の文字または記号を表示するために各8個のセグメントを活性化させるべきかを示す8個の論理信号へ変換する。
5.4.3 RPTデバイスアルゴリズム
【0150】
上記したように、本技術のいくつかの形態において、中央制御装置4230は、非一時的なコンピュータで読出可能な記録媒体(例えば、メモリ4260)中に記録されたコンピュータプログラムとして表現された1つ以上のアルゴリズム4300を具現するように構成され得る。このアルゴリズム4300は、モジュールと呼ばれるグループにグループ付けられることが一般的だ(例えば、図5Fを参照)。
【0151】
5.4.3.1 事前処理モジュール
本技術の一形態による事前処理モジュール4310は、変換器4270(例えば流量センサ4274または圧力センサ4272)からの信号を入力として受信し、1つ以上の出力値を計算するための1つ以上のプロセスステップを行う。これらの出力値は、別のモジュール(例えば、治療エンジンモジュール4320)への入力として用いられる。
【0152】
本技術の一形態において、出力値は、インターフェースまたはマスク圧力Pm、呼吸流量Qrおよび漏洩流量Qlを含む。
【0153】
本技術の多様な形態において、事前処理モジュール4310は、以下のアルゴリズムのうち1つ以上を含む:圧力補償4312、通気流量推定4314、漏洩流量推定4316および呼吸流量推定4318。
【0154】
5.4.3.1.1 圧力補償
本技術の一形態において、圧力補償アルゴリズム4312は、空気圧ブロックの出口の近位の空気圧経路中の圧力を示す信号を入力として受信する。圧力補償アルゴリズム4312は、圧力低下を空気回路4170を通じて推定し、患者インターフェース3000中の推定圧力Pmを出力として提供する。
【0155】
5.4.3.1.2 通気流量の推定
本技術の一形態において、通気流量推定アルゴリズム4314は、患者インターフェース3000中の推定圧力Pmを入力として受信し、患者インターフェース3000中の通気孔3400からの空気の通気流量Qvを推定する。
【0156】
5.4.3.1.3 漏洩流量の推定
本技術の一形態において、漏洩流量推定アルゴリズム4316は、全体流量Qtおよび通気流量Qvを入力として受信し、漏洩流量Qlの推定を出力として提供する。一形態において、漏洩流量推定アルゴリズムは、いくつかの呼吸サイクル(例えば、約10秒)を含むくらいに充分に長い期間にわたって全体流量Qtと通気流量Qvとの間の差平均を計算することにより、漏洩流量Qlを推定する。
【0157】
一形態において、漏洩流量推定アルゴリズム4316は、漏洩流量Qlを出力として提供し、漏洩コンダクタンスを計算することおよび漏洩流量Qlを漏洩コンダクタンスおよび圧力Pmの関数となるように決定することにより、患者インターフェース3000中の全体流量Qt、通気流量Qv、および推定圧力Pmを入力として受信する。漏洩コンダクタンスは、全体流量Qtと通気流量Qvとの間の差に等しいローパスフィルタされた非通気流量の商と、圧力Pmのローパスフィルタされた平方根として計算され、ローパスフィルタ時定数は、いくつかの呼吸サイクル(例えば、約10秒)を含むだけの充分な値を有する。漏洩流量Qlは、漏洩コンダクタンスの積および圧力Pmの関数として推定され得る。
【0158】
5.4.3.1.4 呼吸流量推定
本技術の一形態において、呼吸流量推定アルゴリズム4318は、全体流量Qt、通気流量Qvおよび漏洩流量Qlを入力として受信し、通気流量Qvおよび漏洩流量Qlを全体流量Qtから減算することにより、患者への空気呼吸流量Qrを推定する。
【0159】
5.4.3.2 治療エンジンモジュール
本技術の一形態において、治療エンジンモジュール4320は、患者インターフェース3000中の圧力Pmおよび患者への空気呼吸流量Qrのうち1つ以上を入力として受信し、1つ以上の治療パラメータを出力として提供する。
【0160】
本技術の一形態において、治療パラメータは、治療圧力Ptである。
【0161】
本技術の一形態において、治療パラメータは、圧力変化の振幅、ベース圧力および目標換気のうち1つ以上である。
【0162】
多様な形態において、治療エンジンモジュール4320は、以下のアルゴリズムのうち1つ以上を含む:フェーズ決定4321、波形決定4322、換気決定4323、吸気流制限決定4324、無呼吸/呼吸低下決定4325、いびき決定4326、気道開通性決定4327、目標換気決定4328、および治療パラメータ決定4329。
【0163】
5.4.3.2.1 フェーズ決定
本技術の一形態において、RPTデバイス4000は、フェーズを決定しない。
【0164】
本技術の一形態において、フェーズ決定アルゴリズム4321は、呼吸流量Qrを示す信号を入力として受信し、患者1000の現在の呼吸サイクルのフェーズを出力Φとして提供する。
【0165】
いくつかの形態において、離散フェーズ決定として知られるフェーズ出力Φは、離散変数である。離散フェーズ決定の一具現例により、吸息または呼息の値を持つ二値フェーズ出力Φが得られる。この値は、自発吸息および呼息それぞれの開始が検出された際に例えば0回転および0.5回転の値としてそれぞれ表される。「トリガ」および「サイクル」するRPTデバイス4000は、離散フェーズ決定を有効に行う。なぜならば、トリガ点およびサイクル点は、フェーズが呼息から吸息へおよび吸息から呼息へそれぞれ変化する瞬間であるからである。二値フェーズ決定の一具現例において、フェーズ出力Φは、呼吸流量Qrが正の閾値を超える値を有するときに、離散値0を有し(これによりRPTデバイス4000を「トリガ」する)、呼吸流量Qrの値が負の閾値よりもより大きな負の値であるときに0.5回転の離散値(これにより、RPTデバイス4000を「サイクルさせる」)を有するように、決定される。吸息時間Tiおよび呼息時間Teは、(吸気を示す)0および(呼気を示す)0.5それぞれに等しいフェーズΦと共に費やされた時間の多くの呼吸器サイクルにわたって推定された典型的値であり得る。
【0166】
離散フェーズ決定の別の具現例により、吸息、吸気中の一時停止および呼息のうち1つの値を備えた3値フェーズ出力Φが得られる。
【0167】
他の形態において、連続フェーズ決定として知られるフェーズ出力Φは連続する変数であり、例えば0回転~1回転または0~2πラジアンの間で変動する。連続フェーズ決定を行うRPTデバイス4000は、連続フェーズが0回転および0.5回転それぞれに到達したときに、トリガおよびサイクルし得る。連続フェーズ決定の一具現例において、フェーズの連続値Φは、呼吸流量Qrのファジー論理分析を用いて決定される。本具現例において決定されたフェーズの連続値は、「ファジーフェーズ」と呼ばれることが多い。ファジーフェーズ決定アルゴリズム4321の一具現例において、以下の規則が呼吸流量Qrへ適用される:
1.呼吸流量がゼロになった後に急激に増加した場合、フェーズは0回転である。
2.呼吸流量が大きな正の値でありかつ安定している場合、フェーズは0.25回転である。
3.呼吸流量がゼロであり急激に低下する場合、フェーズは0.5回転である。
4.呼吸流量が大きな負の値でありかつ安定している場合、フェーズは0.75回転である。
5.呼吸流量がゼロでありかつ安定しており、呼吸流量の5秒のローパスフィルタされた絶対値が大きい場合、フェーズは0.9回転である。
6.呼吸流量が正であり、フェーズが呼気である場合、フェーズは0回転である。
7.呼吸流量が負であり、フェーズが吸気であり、フェーズは0.5回転である。
8.呼吸流量の5秒のローパスフィルタされた絶対値が大きい場合、フェーズは、時定数20秒によってローパスフィルタされた患者の呼吸速度に等しい一定速度で増加する。
【0168】
各規則の出力は、フェーズが規則の結果でありかつ大きさが規則が真となるファジー範囲となるベクトルとして表され得る。呼吸流量が「大きい」、「安定している」などのファジー範囲は、適切なメンバシップ関数によって決定される。規則の結果は、ベクトルとして表され、その後、セントロイドをとるなどのいくつかの関数により、組み合わされる。このような組み合わせにおいて、規則は、等しく重み付けしてもよいし、あるいは異なる様態で重み付けしてもよい。
【0169】
連続フェーズ決定の別の具現例において、フェーズΦは、吸息時間Tiおよび呼息時間Teと同様、上記のように先ず呼吸流量Qrから個別に推定される。その後、任意の瞬間における連続フェーズΦは、先行トリガ瞬間から経過した吸息時間Tiの割合の半分または0.5回転に先行サイクル瞬間から経過した呼息時間Teの割合を加算した値(これらのうち、より直近の瞬間)として決定される。
【0170】
5.4.3.2.2 波形決定
本技術の一形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、患者の呼吸サイクル全体を通じてほぼ一定の治療圧力を提供する。
【0171】
本技術の他の形態において、治療制御モジュール4330は、圧力生成器4140を制御して、波形テンプレートΠ(Φ)に従って患者呼吸サイクルのフェーズΦの関数として変動する治療圧力Ptを提供させる。
【0172】
本技術の一形態において、波形決定アルゴリズム4322は、波形テンプレートΠ(Φ)を提供する。波形テンプレートは、治療パラメータ決定アルゴリズム4329によって用いられる予定のフェーズ決定アルゴリズム4321によって提供されるフェーズ値Φの変域について[0,1]の範囲内の値を有する。
【0173】
一形態において、離散的または連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は矩形波テンプレートであり、0.5回転までのフェーズ値に対して1の値を有し、0.5回転を超えるフェーズ値に対して0の値を有する。一形態において、連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は、2つの平滑に曲線状の部分を含む(すなわち、0.5回転までのフェーズ値に対して平滑に曲線状の(例えば、上昇コサインの)0から1への上昇、および0.5回転を超えるフェーズ値に対して1から0への平滑に曲線状の(例えば、指数関数的)低下)。一形態において、連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は矩形波に基づくが、0.5回転よりも低い「立上がり時間」までのフェーズ値に対して0~1の平滑な上昇を持ち、0.5回転後の「下降時間」内のフェーズ値に対して1から0への、0.5回転よりも低い「下降時間」をもつ平滑な下降を有する。
【0174】
本技術のいくつかの形態において、波形決定アルゴリズム4322は、RPTデバイスの設定に応じて、波形テンプレートΠ(Φ)を波形テンプレートのライブラリから選択する。ライブラリ中の各波形テンプレートΠ(Φ)は、フェーズ値Φに対する値Πのルックアップテーブルとして提供され得る。他の形態において、波形決定アルゴリズム4322は、恐らくは1つ以上のパラメータ(例えば、指数曲線部分の時間定数)によってパラメータ化された所定の関数形態を用いて、波形テンプレートΠ(Φ)を「オンザフライ」で計算する。関数形式のパラメータは、所定のものであってもよりし、あるいは患者1000の現在の状態に依存してもよい。
【0175】
吸息(Φ=0回転)または呼息(Φ=0.5回転)の離散二値フェーズに適した本技術のいくつかの形態において、波形決定アルゴリズム4322は、最も直近のトリガ瞬間から測定された離散フェーズΦおよび時間tの関数として、波形テンプレートΠを「オンザフライ」で計算する。1つのこのような形態において、波形決定アルゴリズム4322は、波形テンプレートΠ(Φ,t)を2つの部分(吸気および呼気)において以下のように計算する。
【0176】
ここで、Πi(t)およびΠe(t)は、波形テンプレートΠ(Φ,t)の吸気部分および呼気部分である。1つのこのような形態において、波形テンプレートの吸気部分Πi(t)は、立上がり時間によってパラメータ化された0から1への平滑な上昇であり、波形テンプレートの呼気部分Πe(t)は、下降時間によってパラメータ化された1から0への平滑な下降である。
【0177】
5.4.3.2.3 換気決定
本技術の一形態において、換気決定アルゴリズム4323は、呼吸流量Qrを入力として受信し、現在の患者換気Ventを示す測定を決定する。
【0178】
いくつかの具現例において、換気決定アルゴリズム4323は、実際の患者換気の推定値である換気Ventの測定を決定する。このような一具現例として、呼吸流量Qrの絶対値の半値をとることがあり、これは、任意選択的にローパスフィルタ(例えば、コーナ周波数が0.11Hzである2次ベッセルローパスフィルタ)によってフィルタリングされる。
【0179】
他の具現例において、換気決定アルゴリズム4323は、実際の患者換気に大きく比例する換気Ventの測定を決定する。このような一具現例において、ピーク呼吸流量Qpeakが、サイクルの吸気部分において推定される。呼吸流量Qrのサンプリングを含む上記および他の多数の手順により、換気に大きく比例する測定が得られるが、これらの測定の場合、流量波形形状の変動がそれほど大きくない(ここで、2つの呼吸の形状は、時間および振幅において正規化された呼吸の流量波形が類似するときと同様のものとしてとられる)。いくつかの簡単な例を挙げると、正の呼吸流量の中央値、呼吸流量の絶対値の中央値、および流量の標準偏差がある。正の係数を用いた呼吸流量の絶対値の任意次数の統計の任意の線形的組み合わせ(およびさらには正の係数および負の係数双方を用いたいくつかのもの)は、換気におおむね比例する。別の例として、吸気部分の(時間について)中央K割合における呼吸流量の平均であり、ここで、0<K<1である。流量形状が一定である場合、換気に高精度に比例する任意の多数の測定がある。
【0180】
5.4.3.2.4 吸気流制限の決定
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、吸気流制限の範囲の決定について、吸気流制限決定アルゴリズム4324を実行する。
【0181】
一形態において、吸気流制限決定アルゴリズム4324は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、呼吸の吸気部分が吸気流制限を示す範囲の計量を出力として提供する。
【0182】
本技術の一形態において、各呼吸の吸気部分は、ゼロ交差検出器によって特定される。均等に間隔を空けて配置された複数の(例えば、65個の)点は、時点を示し、各呼吸について吸気流量-時間曲線に沿って補間器によって補間される。その後、これらの点によって記述された曲線をスケーラーによって単位長さ(持続期間/期間)および単位面積を持つようにスケールすることにより、呼吸数および深さの変化による影響を除去する。次に、スケーリングされた呼吸を通常の非閉塞呼吸を示す(図6Aに示す呼吸の吸気部分と同様の)事前保存されたテンプレートと比較器において比較する。吸気時の任意の時において、試験要素によって決定されたような例えば咳、吐息、嚥下およびしゃっくりに起因したこのテンプレートからの呼吸の逸脱が指定閾(典型的には、1スケール単位)を超える場合、当該呼吸は拒否される。拒否の無かったデータについて、第1のこのようなスケーリングされた点の移動平均を中央コントローラ4230によって先行するいくつかの吸気事象について計算する。これを同一吸気事象にわたって第2のこのような点について繰り返し、以降同様に繰り返す。そのため、例えば、65個のスケーリングされたデータ点が中央コントローラ4230によって生成され、先行するいくつかの吸気事象(例えば、3つの事象)の移動平均を示す。本明細書中以下、連続的に更新された(例えば、65個の)点の値の移動平均を「スケーリングされた流量」と呼び、Qs(t)によって示す。あるいは、移動平均の代わりに単一の吸気事象を用いてもよい。
【0183】
スケーリングされた流量から、部分的閉塞の決定に関連する2つの形状要素が計算され得る。
【0184】
形状要素1は、中間(例えば、32個の)スケーリングされた流量点の平均の全体的(例えば、65個の)スケーリングされた流量点の平均に対する比である。この比が1を超える場合、呼吸は正常であるとみなされる。この比が1未満である場合、呼吸に閉塞が有るとみなされる。比が約1.17である場合、部分的閉塞と非閉塞呼吸との間の閾としてみなされ、典型的な患者における適切な酸素付加の維持を可能にする一定レベルの閉塞に等しい。
【0185】
形状要素2は、中間(例えば、32個の)点にわたって単位スケーリングされた流量からの平均二乗偏差として計算される。平均二乗偏差が約0.2単位である場合、正常とみなされる。平均二乗偏差がゼロである場合、全体的に流れが制限された呼吸とみなされる。平均二乗偏差がゼロに近づくほど、当該呼吸は、流れが制限されたものとみなされる。
【0186】
形状要素1および2は、代替として用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。本技術の他の形態において、サンプルされた点の数、呼吸および中間点は、上記したものと異なり得る。さらに、閾値も上記したものと異なり得る。
【0187】
5.4.3.2.5 無呼吸および呼吸低下の決定
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、無呼吸および/または呼吸低下の存在の決定のために、無呼吸/呼吸低下決定アルゴリズム4325を実行する。
【0188】
一形態において、無呼吸/呼吸低下検出アルゴリズム4325は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、無呼吸または呼吸低下が検出されたかを示すフラッグを出力として提供する。
【0189】
一形態において、無呼吸とは、呼吸流量Qrの関数が所定の期間にわたって流量閾値を下回ったときに検出されるものとされる。この関数は、ピーク流量、比較的短期間の平均流量、または比較的短期間の平均およびピーク流量の流量中間値を決定し得る(例えば、RMS流量)。流量閾値は、流量の比較的長期間の測定値であり得る。
【0190】
一形態において、呼吸低下とは、呼吸流量Qrの関数が所定の期間にわたって第2の流量閾値を下回ったときに検出されるものとする。この関数は、ピーク流量、比較的短期間の平均流量、または比較的短期間の平均およびピーク流量の流量中間値を決定し得る(例えば、RMS流量)。第2の流量閾値は、流量の比較的長期の測定値であり得る。第2の流量閾値は、無呼吸の検出に用いられる流量閾値よりも高い。
【0191】
5.4.3.2.6 いびきの決定
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、いびき範囲の決定のために、1つ以上のいびき決定アルゴリズム4326を実行する。
【0192】
一形態において、いびき検出アルゴリズム4326は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、いびきが存在している範囲の測定値を出力として提供する。
【0193】
いびき検出アルゴリズム4326は、流量信号の強度を30~300Hzの範囲内において決定するステップを含み得る。さらに、いびき決定アルゴリズム4326は、バックグラウンドノイズ(例えば、送風機からのシステム中の気流音)を低減するために呼吸流量信号Qrをフィルタリングするステップを含み得る。
【0194】
5.4.3.2.7 気道開通性の決定
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、気道開通性の範囲の決定のために、1つ以上の気道開通性決定アルゴリズム4327を実行する。
【0195】
一形態において、気道開通性決定アルゴリズム4327は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、信号の出力を約0.75Hz~約3Hzの周波数範囲内において決定する。この周波数範囲内におけるピークの存在は、気道開放を示すものとしてみなされる。ピークの不在は、気道閉鎖の兆候とみなされる。
【0196】
一形態において、ピークが求められる周波数範囲は、治療圧力Ptにおける小さな強制オシレーションの周波数となる周波数範囲である。一具現例において、強制オシレーションは、振幅が約1cmHOである周波数2Hzである。
【0197】
一形態において、気道開通性決定アルゴリズム4327は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、心臓発生信号の存在または不在を決定する。心臓発生信号の不在は、気道閉鎖の兆候としてみなされる。
【0198】
5.4.3.2.8 目標換気の決定
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、現在の換気Ventの測定を入力としてとり、換気測定のための目標値Vtgtの決定のために、1つ以上の目標換気決定アルゴリズム4328を実行する。
【0199】
本技術のいくつかの形態において、目標換気決定アルゴリズム4328は存在せず、目標値Vtgtは所定のものであり、例えばRPTデバイス4000の構成時におけるハードコーディングによりまたは入力デバイス4220を通じた手入力により得られる。
【0200】
適応型サーボ換気(ASV)などの本技術の他の形態において、目標換気決定アルゴリズム4328は、患者の典型的な最近の換気を示す値Vtypから目標値Vtgtを計算する。
【0201】
適応型サーボ換気のいくつかの形態において、目標換気Vtgtは、高割合でありかつ典型的な最近の換気Vtyp未満の値として計算される。このような形態の高割合は、範囲(80%、100%)、または(85%、95%)、または(87%、92%)内にあり得る。
【0202】
適応型サーボ換気の他の形態において、目標換気Vtgtは、典型的な最近の換気Vtypの1の倍数を若干上回る値として計算される。
【0203】
典型的な最近の換気Vtypは、いくつかの所定の時間スケールにわたる複数の時間的瞬間にわたる現在の換気Ventの測定が付近に分布する値であり、密集する傾向がある(すなわち、最近の履歴における現在の換気の測定の中央傾向の測定)。目標換気決定アルゴリズム4328の一具現例において、最近の履歴は、数分のオーダーであるが、どんなも場合もチェーン・ストークス漸増サイクルおよび漸減サイクルの時間スケールよりも長くなければならない。目標換気決定アルゴリズム4328は、中央傾向の多様な周知の測定のいずれかを用いて、典型的な最近の換気Vtypを現在の換気Ventの測定から決定し得る。1つのこのような測定として、現在の換気Ventの測定についてのローパスフィルタ出力であり、時定数が100秒に等しい。
【0204】
5.4.3.2.9 治療パラメータの決定
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、治療エンジンモジュール4320中のその他のアルゴリズムのうち1つ以上から返送された値を用いて、1つ以上の治療パラメータの決定のための1つ以上の治療パラメータ決定アルゴリズム4329を実行する。
【0205】
本技術の一形態において、治療パラメータは、瞬間治療圧力Ptである。この形態の一具現例において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、以下の方程式を用いて治療圧力Ptを決定する。
【0206】
ここで:
・ Aは振幅であり、
・ Π(Φ,t)は、フェーズの現在の値Φおよび時間のtにおける(0から1の範囲の)波形テンプレート値であり、
・ P0はベース圧力である。
【0207】
波形決定アルゴリズム4322がフェーズΦによってインデックスされた値Πのルックアップテーブルとして波形テンプレートΠ(Φ)を提供する場合、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、フェーズ決定アルゴリズム4321から返送されたフェーズの現在の値Φに対して最近接ルックアップテーブル入力をロケートすることまたはフェーズの現在の値Φにまたがる2つの入力間の他により、方程式(1)を適用する。
【0208】
振幅Aおよびベース圧力P0の値は、下記のようにして選択された呼吸圧力治療モードに応じて、治療パラメータ決定アルゴリズム4329によって設定され得る。
【0209】
5.4.3.3 治療制御モジュール
本技術の一態様による治療制御モジュール4330は、治療エンジンモジュール4320の治療パラメータ決定アルゴリズム4329からの治療パラメータを入力として受信し、これらの治療パラメータに従って圧力生成器4140から空気流れを送達させるように、圧力生成器を制御する。
【0210】
本技術の一形態において、治療パラメータは治療圧力Ptであり、治療制御モジュール4330は、患者インターフェース3000におけるマスク圧力Pmが治療圧力Ptに等しい空気流れを圧力生成器4140から送らせるように、圧力生成器を制御する。
【0211】
5.4.3.4 故障状態の検出
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、故障状態の検出のための1つ以上の方法4340を実行する。1つ以上の方法4340によって検出された故障状態は、以下のうち少なくとも1つを含み得る:
・ 停電(電力無しまたは電力不足)
・ 変換器故障の検出
・ コンポーネントの存在を検出できない
・ 動作パラメータが推奨範囲から外れている(例えば、圧力、流量、温度、PaO2)
・ 検出可能な警告信号を生成するための試験警告の不履行。
【0212】
故障状態が検出されると、対応するアルゴリズム4340信号は、以下のうち1つ以上により、故障の存在を信号伝達する:
・ 可聴、視覚および/または動力学的(例えば、振動的)警告の開始
・ 外部デバイスへのメッセージ送信
・ インシデントのロギング
【0213】
5.5 空気回路
本技術の一態様による空気回路4170は、使用時において空気流れが2つのコンポーネント(例えば、RPTデバイス4000および患者インターフェース3000)間に移動するように、構築および配置された導管またはチューブである。
【0214】
詳細には、空気回路4170は、空気圧ブロック4020の出口および患者インターフェースと流体接続し得る。空気回路は、空気送達管と呼ばれ得る。いくつかの場合において、吸息および呼息のための回路の別個の肢があり得る。他の場合において、単一の肢が用いられる。
【0215】
いくつかの形態において、空気回路4170は、(例えば空気温度の維持または上昇のために)空気回路中の空気を加熱するように構成された1つ以上の加熱要素を含み得る。加熱要素は、加熱ワイヤ回路の形態をとり得、1つ以上の変換器(例えば、温度センサ)を含み得る。一形態において、加熱ワイヤ回路は、空気回路4170の軸周囲にらせん状に巻かれ得る。加熱要素は、コントローラ(例えば、中央コントローラ4230)と連通し得る。加熱ワイヤ回路を含む空気回路4170の一実施例について、米国特許出願第8,733,349号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0216】
5.5.1 酸素送達
本技術の一形態において、補充用酸素4180が、空気圧経路における1つ以上のポイント(例えば、空気圧ブロック4020の上流)、空気回路4170および/または患者インターフェース3000へ送達され得る。
【0217】
5.6 HMEおよび加熱式空気送達管を用いた加湿
5.6.1 HMEの概要
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。熱水分交換器(HME)は、患者の気道から呼気された気体に存在する熱と湿気を部分的に回収するためにPAP療法で用いられてもよい。熱と湿気は、呼吸可能なガス流れが吸気に前もってHMEを通過しながら受動的な方式で保持されかつ患者に再循環され得る。よって、HMEの使用により、PAP療法の際に大多数の患者に要求される水分および湿気(一般的に、10mg/Lと認識される)を提供して、加湿されない周囲空気を用いたPAP療法にかかわる任意の有害効果を最小化することができる。
【0218】
HMEは一般的に、発泡体、紙、または凝結および吸着表面として機能する能力がある物質で製造する。該材料は、吸湿性塩を担持して保水容量を増大し得る。好ましい塩には、塩化カルシウムが含まれる。
【0219】
PAP療法におけるHMEの使用にかかわる一般的な問題は、低温環境での患者インターフェース内の凝結に関する。寒い部屋でPAP療法中に患者が寝ている場合に、部屋の空気が患者インターフェースと空気送達管の外部表面を冷やせ、患者の吸息ごとに入来する冷たい空気が患者インターフェースの内部表面を冷やす。患者インターフェースが冷たくなるほど、患者の高温多湿の呼吸は、患者が呼息を重なる度に患者インターフェースの内部表面に凝結されていくだろう。この現象はHMEに空気送達管を付着することにより悪化するが、これは患者インターフェース内で水分を保持してさらなる凝結を引き起こすからである。
【0220】
また、HMEは、水分保持のための異なる容量を含み得、その中で周囲湿度に適する適切なHME容量を選択することか必要である。例えば、1つのHMEモデルは適度の環境に適するように構成し、もう1つのHMEモデルは乾燥環境に適するように構成してもよい。周囲湿度が上昇する場合に、HMEを通じて吸入する水分の量も増加し、これは患者インターフェース内の凝結を悪化し得る。
【0221】
よって、好ましい患者加湿を達成しつつも、寒い環境がHMEシステムに及ぼす影響を軽減するPAP療法におけるHME使用を提供する必要がある。
【0222】
5.6.2 HMEおよび加熱式空気送達管
本技術の一態様は、HMEおよび加熱式空気送達管を用いた加湿に関する。後述するように、加熱式空気送達管は、入来空気を温めて、これにより、患者インターフェースの内部表面が温まって患者吸息ごとに患者インターフェースの内部表面が冷たくなる現象を軽減する。さらに、HMEへの入来空気が温まると、HMEから戻される水分が減少する。その結果、加熱式空気送達管によって提供される上昇した空気温度は、患者インターフェースの内部表面上の凝結を減少させ、患者が吸入する水分レベルのバランスを取るように制御され得る。
【0223】
図6図13は、本技術の一実施例によるCPAPシステム7000を示す。図示のように、CPAPシステム7000は、RPTデバイス4000、患者インターフェース3000、HME6500を含むアダプタ6000、および加熱式空気送達管4170を含む。加熱式空気送達管4170およびアダプタ6000は、協同してRPTデバイス4000から患者インターフェース3000へと空気流れを送達する。
【0224】
上述のように、RPTデバイス4000は、外部ハウジング内に支持されている空気圧ブロック4020を含む。空気圧ブロック4020の送風機4142は、空気の流れまたは供給を陽圧(例えば、2~50cmHOの範囲)において生成するように構造および配置構成にされる。一実施例において、送風機は、単一段設計または多段設計(例えば、2段以上の設計)も含み得る。送風機は、空気の供給を外部ハウジング内に(例えば、外部ハウジングの1つ以上の取入口を通じて)、そしてその入口(送風機入口)に引き入れて、出口(送風機出口)で加圧された空気の供給を提供するように作動可能である。例示的なRPTデバイスの実施例および詳細について、PCT公報第WO2015/089582号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。送風機出口は、加熱式空気送達管4170と連通する。
【0225】
空気送達管4170は、管部4172、空気送達管4170をRPTデバイス4000の出口に接続するに適合されているRPTデバイスコネクタ/カフ(出口コネクタ)4174、および空気送達管4170を患者インターフェース3000の入口に接続する(例えば、図6図8に示すようにアダプタ6000を介して)に適合されている患者インターフェース・コネクタ/カフ(入口コネクタ)4176を含む。
【0226】
一実施例において、RPTデバイスコネクタ4174は、RPTデバイス4000と空気圧式、機械式、および電気式接続を形成するような構造および配置にされる。これら接続により、加圧ガスがRPTデバイス4000から患者インターフェース3000へと流れることが可能になり、空気送達管4170をRPTデバイス4000に位置させかつ固定し、そして空気送達管4170の変換器および加熱要素に電力と信号(signalling)を提供する。これら接続は、同時に形成されてよく、または連続して、例えば、空気圧式、機械式、または電気式接続の一つが他のものの以前に完了するように形成されてもよい。
【0227】
例示的な加熱式空気送達管の実施例および詳細について、PCT公報第WO2015/089582号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0228】
一実施例において、空気送達管4170は、空気送達管4170の軸に螺旋巻きされた複数のワイヤ(例えば、空気送達管4170内の空気を加熱しかつ/または1つ以上の変換器(例えば、温度センサ、流れセンサ)から信号を送信するように構成される)を含み得る。
【0229】
例えば、図9に示すように、ガス温度センサ、例えば、サーミスタ4178は、気流の温度を測定するために患者インターフェース・コネクタ4176内に設けられ得る。サーミスタ4178によって感知された温度は、空気送達管4170のワイヤを通じて信号としてコントローラに提供され得る。
【0230】
例示的なセンサおよび加熱式空気送達管の実施例および詳細について、米国特許第9,903,371号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0231】
患者インターフェース3000は、シール形成構造3100(例えば、鼻枕)、プレナムチャンバ3200、および接続ポート3600を含む。HME 6500を含むアダプタ6000は、接続ポート3600に接続され得る(例えば、短尺管アセンブリおよび/またはエルボーアセンブリを介して)。ガス洗い流しのためにプレナムチャンバ3200またはアダプタ6000に通気部が設けられてよい。
【0232】
図示の実施例において、図6図8および図10図11に示すように、アダプタ6000は、HME 6500を支持しかつガス洗い流しのための拡散通気部配置構成を提供するような構成および配置にされた多数のコンポーネントを含む。例えば、アダプタ6000は、通気部およびHMEアセンブリ6050、通気部およびHMEアセンブリ6050と患者インターフェース3000との接続を提供するための短尺管アセンブリ6010、および通気部およびHMEアセンブリ6050と加熱式空気送達管4170との接続を提供するための短尺管アセンブリ6020を含む。
【0233】
図示の実施例において、通気部およびHMEアセンブリ6050は、通気部およびHMEアセンブリ6050と短尺管アセンブリ6010とを接合するためのコネクタ6060、ハウジング6070、通気流れのためのオリフィスを提供するコア構造6080、およびコア構造6080から通気流れを拡散させるためのディフューザ6095を支持するディフューザカバー6090を含む。HME 6500は、通気部およびHMEアセンブリ6050内に保持され得る(例えば、ハウジング6070およびコネクタ6060によって)。
【0234】
短尺管アセンブリ6010は、管6012、管6012と患者インターフェース3000の接続部3600との間に接続を提供するためのコネクタ6014、および管6012と通気部およびHMEアセンブリ6050との間に接続を提供(例えば、コネクタ6060を介して)するためのコネクタ6016を含む。
【0235】
短尺管アセンブリ6020は、管6022、管6022と通気部およびHMEアセンブリ6050との間に接続を提供(例えば、コア構造6080を介して)するためのコネクタ6024、管6022と加熱式空気送達管4170との間に接続を提供(例えば、患者インターフェース・コネクタ4176を介して)するためのコネクタ6026を含む。
【0236】
例示的なHMEを含むアダプタおよび患者インターフェースの実施例および詳細について、PCT公報第WO2018/126295号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0237】
別の実施例において、図14および図15に示すように、HME6500は、患者インターフェース3000のプレナムチャンバ3200内に位置決めされ得る。図示のように、患者インターフェース3000は、シール形成構造3100(例えば、鼻クッション)、プレナムチャンバ3200、および接続ポート3600を含む。通気部3400は、ガス洗い流しのために設けられる。本実施例において、HME6500は、患者インターフェース3000のプレナムチャンバ3200内の呼吸可能なガスの流路に、患者の気道の入口に近接して位置決めされる。
【0238】
図14に示すように、短尺管アセンブリ6025は、患者インターフェース3000の加熱式空気送達管4170との接続を提供するために設けられ得る。例えば、短尺管アセンブリ6025は、加熱式空気送達管4170との接続を提供(例えば、患者インターフェース・コネクタ4176を介して)するためのコネクタ6027を含み得る。
【0239】
HMEをプレナムチャンバ内に含む例示的な患者インターフェースの実施例および詳細について、PCT公報第WO2015/013761号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0240】
患者インターフェースおよびHMEは、他の適切な構成および配置にされることができるということを理解するべきである。例えば、本技術の態様は、他の適切なインターフェース配置構成およびタイプ(例えば、フルフェイス/口鼻インターフェース、鼻インターフェース、鼻プロング)との使用に適合され得ることを理解すべきである。また、本技術の態様は、他の適切なHME配置および類型、例えば、患者インターフェースのプレナムチャンバの上流に位置決めされたHME(例えば、エルボーアセンブリ、短尺管アセンブリなどの内に)、患者インターフェースのプレナムチャンバ内に直接位置決めされたHMEとの使用のために適合されてよいことを理解すべきである。
【0241】
RPTデバイス4000、加熱式空気送達管4170、および/または患者インターフェース3000それぞれは、1つ以上の変換器(センサ)、例えば、温度センサ、湿度センサ、流れセンサ、呼吸率センサを含み得る。センサは、1つ以上の出力信号を生成し得るが、これは、コントローラと通信されて患者インターフェース内の凝結のレベルおよび患者が吸入する空気の温度と水分を制御し得る。例えば、コントローラは、HMEシステムにおける温度および湿度の測定を入力として受信し得る。コントローラは、アルゴリズムを実行または具現しかつ/または、1つ以上の出力信号(例えば、加熱式空気送達管の温度を制御する)を伝達するように構成され得る。
【0242】
一実施例において、図12および図13に示すように、RPTデバイス4000の空気圧ブロック4020は、圧力センサ4090および流れセンサ4095を含み得る。図12に示すように、圧力センサ4090は、空気圧ブロック4020の出口4093に隣接する圧力ポート4092と通信し得る(例えば、気流方向に垂直となる静圧力を測定する)。図13に示すように、流れセンサ4095は、流れセンサポート4096、4097と通信し得る(例えば、空気圧ブロック4020内の第1および第2チャンバの間の圧力降下を測定する)。センサのさらなる実施例および詳細について、PCT公報第WO2015/089582号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。RPTデバイスは、温度センサおよび/または湿度センサを含み得る。加熱式空気送達管4170は、温度センサ、例えば、上述のように、加熱式空気送達管4170の患者インターフェース・コネクタ4176内に設けられたサーミスタ4178を含み得る。代替実施例において、温度センサおよび/または湿度センサは、HME6500の下流側に、すなわち、患者に近いHME6500の側に設けられ得る。コントローラは、これらセンサのうち1つ以上(例えば、周囲温度、周囲湿度、患者セッティング、および/または管温度)からのフィードバックに基づいて加熱式空気送達管4170への電力を制御し、吸入された空気の温度/水分および凝結を調節するように構成され得る。RPTデバイス4000、加熱式空気送達管4170、および/または患者インターフェース3000に1つ以上の代替センサが設けられ、制御を容易にすることができるといくことを理解すべきである。
【0243】
患者インターフェース3000内の温度(例えば、HMEの患者側で測定した温度)が露点未満まで下がる環境において、患者インターフェース3000内で凝結が形成されるであろう(例えば、プレナムチャンバ3200の内面上および/またはHMEをプレナムチャンバ3200に接続させるエルボー/短尺管の内面に沿って(例えば、短尺管アセンブリ6010を沿って))。本技術の一態様によれば、加熱式空気送達管4170を以て入来空気を温めることによって凝結を低減するか、完全に除去する。すなわち、温かい入来空気が患者インターフェース3000の内面を温めるから、そのような内面の温度は露点以上にとどまるであろう。
【0244】
図17は、10℃未満の周囲温度でテストした場合の、HME温度対加熱した管(例えば、「30℃の加熱式管」)および非加熱管(例えば、「オフ」の加熱式管)の露点配置構成の例を示すチャートである。図示のように、患者インターフェース内の温度(例えば、HMEの患者側で測定されたHME温度)は、HMEが加熱式空気送達管とともに運用されたときに露点以上または近似に保たれた。加熱式空気送達管がHMEと使用されなかった場合、患者インターフェース内の温度が露点未満までよく下がり、したがって患者インターフェース内で凝結が起こることになる。
【0245】
また、HMEへの入来空気が温まると、HMEから戻された水分が減る(例えば、温度に応じたHME材料による水分吸着)。そのため、HMEによって空気に戻る水分は、加熱式空気送達管4170内の空気温度を上げることにより減量することができる。すなわち、コントローラは、加熱式空気送達管4170内の空気温度を上げることにより上昇する周囲湿度に対して補償することができ、これにより、戻されるHME水分を減少させかつ患者が吸入する水分レベルのバランスを取る。すなわち、HMEの出力は、入来空気の温度によって制御され得る。
【0246】
かかる配置構成の1つ以上の態様は、患者便宜性(例えば、より温かい空気、水分のある空気、および/または凝結の減少)を向上することができ、かつ/またHME加湿が寒い周囲温度により適合になることを可能にする。また、かかる配置構成の1つ以上の態様は、HMEの1つの変形が(例えば、高用量HMEモデル)、様々な周囲条件に適することを可能にし、これにより、多数の変形から選択する必要を回避することができ、在庫を低減し、かつ/または広範囲にわたって患者便宜性を向上する。
【0247】
患者インターフェース内の凝結のレベルおよび患者が吸入する空気の水分と温度は、患者の趣向によって異なり、例えば、少なくとも数レベルの凝結は、患者に好まれることもある。すなわち、一部の患者は、じめじめした感じを嫌がるいっぽう、他の患者は、かなりぬれぬれした鼻になっても構わないと感じる。また、患者インターフェースの内部幾何学形状と患者の就寝姿勢は、凝結よる水滴が流れてたまり、水滴が通気部から漏れ出るか、もしくは水滴が患者の鼻および/または口に流れ込む場合に影響し得るが、すなわち、凝結による水滴の一部は、妨げにならない。本技術の態様は、凝結のレベルおよび患者は吸入する空気の温度と水分が患者フィードバックに基づいて制御される(すなわち、患者により提供された患者入力または設定に少なくとも部分的に基づいて制御される)ことを可能にするものである。
【0248】
図18図33は、本技術の代替実施例による制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【0249】
図18において、患者が要望の、または目標ガス温度を設定し(例えば、幾度で)、コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、要望のガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。例えば、フィードバック制御は、加熱式空気送達管4170への電力を上昇させてガス温度センサ4178によって測定されたガス温度が要望のガス温度設定よりも低い時に、ガス温度を上げる。
【0250】
図19において、目標ガス温度は、周囲湿度に関連して決定される。例えば、周囲湿度が周囲湿度センサ(例えば、RPTデバイスに提供される)によって測定され、目標ガス温度は測定された周囲湿度に基づいて設定される(例えば、湿度が高いほど、ガス温度は高く設定される)。測定された周囲湿度と設定された目標ガス温度の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0251】
図20において、患者の要望のガス温度設定は、測定された周囲湿度とともに制御入力として用いられ得る。例えば、目標ガス温度は、患者の要望のガス温度設定および測定された周囲湿度に基づいて設定される。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0252】
図21において、目標ガス温度は、周囲湿度に関連して決定される。例えば、周囲温度が周囲温度センサ(例えば、RPTデバイスに提供される)によって測定され、目標ガス温度は測定された周囲温度に基づいて設定される(例えば、周囲温度が低いほど、ガス温度は高く設定される)。測定された周囲温度と設定された目標ガス温度の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0253】
図22において、患者の要望のガス温度設定は、測定された周囲温度とともに制御入力として用いられ得る。例えば、目標ガス温度は、患者の要望のガス温度設定および測定された周囲温度に基づいて設定される。一実施例において、患者が設定した最小ガス温度は、周囲温度センサに基づいて非常に寒い周囲では上げることもできる。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0254】
図23において、周囲湿度は、患者の要望のガス温度設定および測定された周囲温度とともに制御入力として用いられ得る。例えば、目標ガス温度は、患者の要望のガス温度設定、測定された周囲温度、および測定された周囲湿度に基づいて設定される。一実施例において、患者が設定したガス温度は、周囲温度および/または周囲湿度に基づいて調整されることもできる。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0255】
図24において、目標ガス温度は、ガス流れに関連して決定される。例えば、平均ガス流量が流量センサ(例えば、RPTデバイスに設けられる流れセンサ4095)によって測定され、目標ガス温度は測定されたガス流量に基づいて設定される。測定されたガス流量と設定された目標ガス温度の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0256】
図25において、目標ガス温度は、呼吸率および/または呼吸深さに関連して決定される。例えば、呼吸率および/または呼吸深さは、センサによって測定され、目標ガス温度は、測定された呼吸率および/または呼吸深さに基づいて設定される。測定された呼吸率および/または呼吸深さと設定された目標ガス温度の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0257】
図26において、患者の要望のガス温度設定、周囲温度、ガス流量、呼吸率および/または呼吸量、および周囲湿度は、目標ガス温度に対する制御入力として用いられる。例えば、目標ガス温度は、患者の要望のガス温度設定、測定された周囲温度、測定されたガス流量、測定された呼吸率および/または呼吸量、および測定された周囲湿度に基づいて設定される。一実施例において、患者が設定したガス温度は、周囲温度、ガス流量、呼吸率および/または呼吸量および/または周囲湿度に基づいて調整されることもできる。コントローラによってフィードバック制御が提供されて加熱式空気送達管4170に提供されたガス温度センサ4178により測定されたガス温度と、目標ガス温度設定との間の任意の差を修正するに要求されるくらいに加熱式空気送達管4170に提供される電力を調整する。
【0258】
図27において、加熱式空気送達管4170への目標電力は、制御入力として用いられる。本実施例において、加熱式空気送達管4170が温度センサ無しに設けられ、そのため、加熱式空気送達管4170のフィードバック制御は提供されない。患者が要望の温かさ水準(例えば、低い温かさ、中間温かさ、高い温かさ)を設定し、目標電力が該温かさ設定に基づいて設定される。温かさ設定と設定された目標電力の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。
【0259】
図28において、加熱式空気送達管4170への目標電力は、周囲湿度に関連して決定される。例えば、周囲温度が周囲温度センサ(例えば、RPTデバイスに提供される)によって測定され、目標電力は測定された周囲温度に基づいて設定される(例えば、周囲温度が低いほど、電力は高く設定される)。測定された周囲温度と設定された目標電力の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。
【0260】
図29において、要望の温かさ設定および周囲温度は、制御入力として用いられる。例えば、目標電力は、要望の温かさ設定および測定された周囲温度に基づいて設定される。設定された温かさ設定と連動する電力は、測定された周囲温度を考慮して充分でない場合に更新され得る(例えば、寒い周囲温度に対して電力が調整される)。
【0261】
図30において、周囲湿度は、制御入力として用いられる。例えば、周囲湿度が周囲湿度センサ(例えば、RPTデバイスに提供される)によって測定され、目標電力は測定された周囲湿度に基づいて設定される(例えば、周囲湿度が高いほど、電力は高く設定される)。測定された周囲湿度と設定された目標電力の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。
【0262】
図31において、ガス流れは、制御入力として用いられる。例えば、平均ガス流量が流量センサ(例えば、RPTデバイスに設けられる流れセンサ4095)によって測定され、目標電力は測定されたガス流量に基づいて設定される。測定されたガス流量と設定された目標電力の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。
【0263】
図32において、呼吸率および/または呼吸深さは、制御入力として用いられる。例えば、呼吸率および/または呼吸深さは、センサによって測定され、目標電力は、測定された呼吸率および/または呼吸深さに基づいて設定される。測定された呼吸率および/または呼吸深さと設定された目標電力の関係は、例えば、ルックアップテーブルを以て事前決定され得る。
【0264】
図33において、要望の温かさ設定、周囲温度、ガス流れ、呼吸率および/または呼吸深さ、および周囲湿度は、制御入力として用いられる。例えば、目標電力は、要望の温かさ設定、測定された周囲温度、測定されたガス流量、測定された呼吸率および/または呼吸深さ、および測定された周囲湿度に基づいて設定される。設定された温かさ設定と連動する電力は、測定された周囲温度、測定されたガス流量、測定された呼吸率および/または呼吸深さ、および/または測定された周囲湿度を考慮して充分でない場合に更新され得る(例えば、寒い周囲温度と高い周囲湿度に対して電力が調整される)。
【0265】
別の実施例において、加熱式空気送達管4170に固定電力が提供され得る。かかる配置構成は温度感知を必要としないだろうが、例えば、患者便宜性のための調整能力は劣っている。
【0266】
別の実施例において、HMEは、加熱式空気送達管を介した方式ではない、別の方式で加熱され得る。例えば、ヒータが患者インターフェースに設けられて患者インターフェースとHMEを加熱し得る(例えば、患者インターフェースのプレナムチャンバを沿ったヒータ)。別の実施例において、ヒータがHMEに設けられ、例えば、HME直接加熱し得る。加熱式空気送達管への電力を制御する上述した制御アルゴリズムのうち1つ以上は、HMEに設けられたヒータへの電力を制御することにも適用可能である。別の実施例において、高熱容量材料をHMEに設けて受動熱保存力を増加させてよい。
【0267】
別の実施例において、図16に示すように、HMEは、加熱式パスオーバー(passover)加湿器と併用してよい。図示のように、図16のCPAPシステムは、水リザーバ5110を含む一体型加湿器を備えるRPTデバイス4000、患者インターフェース3000、HME6500を含むアダプタ6000、および加熱式空気送達管4170を含む。加湿器は、周囲温度および湿度を上昇させ、HMEは、さらに患者から水分を捕捉する。加湿器出力は、HMEが検出されたときに更新され得る。
【0268】
5.7 加湿器
5.7.1 加湿器の概要
本技術の一形態において、患者へ送達されるべき空気またはガスの絶対湿度を周囲空気に相対して変化させるための加湿器5000が提供される(例えば、図5Cに示すようなもの)。典型的には、加湿器5000は、患者気道へ送達される前に空気流れの(周囲空気に相対する)絶対湿度を増加させかつ温度を増加させるために、用いられる。
【0269】
加湿器5000は、加湿器リザーバ5110と、空気流れを受容する加湿器入口と、加湿された空気流れを送達させるための加湿器出口とを含み得る。加湿器5000は、加湿器ベースをさらに含み得る。加湿器ベースは、加湿器リザーバ5110を受容するように適合され得、加熱要素を含み得る。
【0270】
5.7.2 加湿器コンポーネント
5.7.2.1 水リザーバ
1つの配置構成によれば、加湿器5000は、空気流れの加湿のために蒸発させるべき一定量の液体(例えば、水)を収容または保持するように構成された水リザーバ5110を含み得る。水リザーバ5110は、少なくとも呼吸治療セッション期間(例えば、一晩の睡眠)にわたって適切な加湿を提供するための所定の最大量の水を収容するように、構成され得る。典型的には、リザーバ5110は、数百ミリリットルの水(例えば、300ミリリットル(ml)、325ml、350mlまたは400ml)を収容するように、構成される。他の形態において、加湿器5000は、外部水源(例えば、建物の水供給システム)から水供給を受容するように、構成され得る。
【0271】
一態様によれば、水リザーバ5110は、空気流れがRPTデバイス4000を通過する際にRPTデバイス4000からの空気流れを加湿するように、構成される。一形態において、水リザーバ5110は、空気流れがリザーバ5110中の一定量の水と接触しつつ、空気流れのリザーバ5110中の蛇行経路の移動を促進するように、構成され得る。
【0272】
一形態によれば、リザーバ5110は、例えば横方向において加湿器5000から取り外し可能であり得る。
【0273】
リザーバ5110は、例えばリザーバ5110がその通常の動作方向(例えば、任意のアパチャを通じておよび/またはそのサブコンポーネント間に)から変位および/または回転した時にリザーバ5110からの液体放出を抑制するようにも構成され得る。加湿器5000によって加湿すべき空気流れは加圧されていることが多いため、リザーバ5110は、漏洩および/または流れインピーダンスを通じた空気圧の損失を防止するようにも、構成され得る。
【0274】
5.7.2.2 伝導性部位
1つの配置によれば、リザーバ5110は、加熱要素からリザーバ5110中の一定量の液体への効率的な熱伝達を可能にするように構成された伝導性部位を含む。一形態において、伝導性部位はプレートとして配置され得るが、他の形状も適切であり得る。伝導性部位の全体または一部は、アルミニウムなどの熱伝導性材料(例えば、厚さおよそ2mm(例えば、1mm、1.5mm、2.5mmまたは3mm))、別の熱伝導金属また何らかのプラスチックによって構成され得る。いくつかの場合において、適切な熱伝導性が、適切なジオメトリのより低伝導性の材料により、達成され得る。
【0275】
5.7.2.3 加湿器リザーバドック
一形態において、加湿器5000は、加湿器リザーバ5110を受容するように構成された加湿器リザーバドックを含み得る。いくつかの配置において、加湿器リザーバドックは、ロック機能を含み得る(例えば、リザーバ5110を加湿器リザーバドック内に保持するように構成されたロックレバー)。
【0276】
5.7.2.4 水位インジケータ
加湿器リザーバ5110は、水位インジケータを含み得る。いくつかの形態において、水位インジケータは、加湿器リザーバ5110中の水の量についての1つ以上の兆候を患者1000または介護者などのユーザへ提供し得る。水位インジケータから提供されるこれら1つ以上の兆候は、最大の所定量の水、その任意の一部の通知を含み得る(例えば、25%、50%または75%または量(例えば、200ml、300mlまたは400ml))。
【0277】
5.7.2.5 加湿器変換器(単数または複数)
加湿器5000は、上記した変換器4270の代わりにまたは上記した変換器4270に加えて1つ以上の加湿器変換器(センサ)5210を含み得る。加湿器変換器5210は、図5Gに示すような空気圧センサ5212、空気流量変換器5214、温度センサ5216または湿度センサ5218のうち1つ以上を含み得る。加湿器変換器5210は、1つ以上の出力信号を生成し得る。これらの出力信号は、コントローラ(例えば、中央コントローラ4230および/または加湿器コントローラ5250)へ通信され得る。いくつかの形態において、加湿器変換器は、出力信号をコントローラへ通信しつつ、加湿器5000の外部に(例えば、空気回路4170内に)配置され得る。
【0278】
5.7.2.5.1 圧力変換器
1つ以上の圧力変換器5212が、RPTデバイス4000内に設けられた圧力センサ4272に加えてまたはRPTデバイス内に設けられた圧力センサ4272の代わりに加湿器5000へ設けられ得る。
【0279】
5.7.2.5.2 流量変換器
RPTデバイス4000内に設けられた流量センサ4274に加えてまたはRPTデバイス内に設けられた流量センサ4274の代わりに、1つ以上の流量変換器5214が加湿器5000へ設けられ得る。
【0280】
5.7.2.5.3 温度変換器
加湿器5000は、1つ以上の温度変換器5216を含み得る。1つ以上の温度変換器5216は、1つ以上の温度(例えば、加熱要素5240の温度および/または加湿器出口の空気流れ下流の温度)を測定するように構成され得る。いくつかの形態において、加湿器5000は、周囲空気の温度を検出する温度センサ5216をさらに含み得る。
【0281】
5.7.2.5.4 湿度変換器
一形態において、加湿器5000は、周囲空気などのガスの湿度を検出する1つ以上の湿度センサ5218を含み得る。いくつかの形態において、湿度センサ5218は、加湿器5000から送達されるガスの湿度を測定するように、加湿器出口に向かって配置され得る。湿度センサは、絶対湿度センサであってもよいし、あるいは相対湿度センサであってもよい。
【0282】
5.7.2.6 加熱要素
いくつかの場合において、加熱要素5240は、加湿器リザーバ5110中の水量および/または空気流れへの水量のうち1つ以上へ熱入力を提供する加湿器5000へ設けられ得る。加熱要素5240は、電気抵抗加熱トラックなどの熱生成コンポーネントを含み得る。加熱要素5240の1つの適切な実施例として、例えばPCT特許出願公開第WO2012/171072号に記載の層状加熱要素がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0283】
いくつかの形態において、加熱要素5240は、加湿器ベース中へ設けられ得る。加湿器ベース5006において、主に伝導により熱が加湿器リザーバ5110へ送られ得る。
5.7.2.7 加湿器コントローラ
【0284】
本技術の1つの配置によれば、加湿器5000は、図5Gに示すような加湿器コントローラ5250を含み得る。一形態において、加湿器コントローラ5250は、中央コントローラ4230の一部であり得る。別の形態において、加湿器コントローラ5250は、中央コントローラ4230と通信し得る別個のコントローラであり得る。
【0285】
一形態において、加湿器コントローラ5250は、特性(例えば、温度、湿度、圧力および/または流量)の測定を入力として受信し得る(例えばリザーバ5110中および/または加湿器5000中の空気流れ、水の測定)。加湿器コントローラ5250は、加湿器アルゴリズムの実行または実施ならびに/あるいは1つ以上の出力信号の送達を行うようにも、構成され得る。
【0286】
図5Gに示すように、加湿器コントローラ5250は、1つ以上のコントローラを含み得る(例えば、中央加湿器コントローラ5251、加熱空気回路4171の温度を制御するように構成された加熱空気回路コントローラ5254および/または加熱要素5240の温度を制御するように構成された加熱要素コントローラ5252)。
【0287】
5.8 呼吸波形
図4は、睡眠時のヒトの典型的な呼吸波形のモデルを示す。水平軸は時間であり、垂直軸は呼吸流量である。パラメータ値は変動し得るため、典型的な呼吸は、以下のおおよその値を持ち得る:一回換気量、Vt、0.5L、吸息時間、Ti、1.6秒、ピーク吸気流量、Qピーク、0.4L/秒、呼息時間、Te、2.4s、ピーク呼気流量、Qピーク、-0.5L/秒。呼吸の全持続時間Ttotは約4秒である。人間は典型的には、1分あたり呼吸を約15回行い(BPM)、換気Ventは約7.5L/minである。典型的な負荷サイクル、TiとTtotの比は約40%である。
【0288】
5.9 用語集
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0289】
5.9.1 一般
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0290】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0291】
例えば、加湿器に対する雰囲気湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような雰囲気湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0292】
別の実施例において、雰囲気圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0293】
特定の形態において、雰囲気(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中の背景ノイズレベルとみなすことができる。雰囲気ノイズは、部屋の外の発生源から発生し得る。
【0294】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の兆候の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0295】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼息時において若干上昇し、吸息時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の兆候の検出に応答して増加され、部分的な上気道閉塞の通知の不在時において低減される)。
【0296】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」と呼ぶ場合もある。
【0297】
患者の呼吸の実施例において、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに陽圧であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。通気流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするために通気孔から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムまたは他の場所からの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系中に受容される空気の流量である。
【0298】
加湿器:「加湿器」という単語は、患者の医療呼吸状態を改善するために治療上有益な量の水(HO)蒸気を空気流れへ提供することが可能な物理的構造を備えて構築、配置または構成された加湿装置を意味するものとして解釈される。
【0299】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一実施例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の実施例において、漏洩は、周囲に対するスイベルエルボーにおいて発生し得る。
【0300】
ノイズ伝導(音響):本文書において、伝導ノイズとは、空気圧式経路(例えば、空気回路および患者インターフェースおよびその内部の空気)によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、伝導ノイズは、空気回路の端部における音圧レベルを測定することにより、定量化され得る。
【0301】
ノイズ放射(音響):本文書において、放射ノイズとは、周囲空気によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、放射ノイズは、当該対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することにより、定量化され得る。
【0302】
ノイズ通気(音響):本文書において、通気ノイズとは、任意の通気(例えば、患者インターフェース中の通気孔)を通じた空気流れにより生成されるノイズを指す。
【0303】
患者:呼吸器疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0304】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現され得る(例えば、cmHO、g-f/cm、及びヘクトパスカル)。1cmHOは、1g-f/cmに等しく、およそ0.98ヘクトパスカルである。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmHOの単位で付与される。
【0305】
患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてマスク圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0306】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0307】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
【0308】
5.9.1.1 材料
シリコーンまたはシリコーンエラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコーンについて言及される場合、液体シリコーンゴム(LSR)または圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態として、Dow Corningによって製造されるSILASTIC(この登録商標下において販売される製品群に含まれる)がある。別のLSR製造業者として、Wackerがある。他に逆の明記無き限り、例示的形態のLSRのASTMD2240によって測定した場合のショアA(またはタイプA)押込み硬さは、約35~約45である。
【0309】
ポリカーボネート:ビスフェノールAカーボネートの熱可塑性ポリマーである。
【0310】
5.9.1.2 機械的特性
弾性:弾性変形時にエネルギーを吸収することおよび除荷時にエネルギーを解放することが可能な材料の能力。
【0311】
弾性のある:除荷時に実質的に全てのエネルギーを解放する。例えば特定のシリコーンおよび熱可塑性エラストマーを含む。
【0312】
硬度:材料自体の変形に抵抗する能力(例えば、ヤング係数または規格化されたサンプルサイズ上において測定された押込硬さスケールによって記述されたもの)。
・ 「軟性」材料は、シリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)を含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得る。
・ 「硬質」材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、鋼またはアルミニウムを含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得ない。
【0313】
構造または構成要素の剛度(または剛性):構造または構成要素が負荷を受けたときに変形に抵抗する能力。負荷は、力またはモーメントであり得る(例えば、圧縮、伸張、屈曲またはねじれ)。構造または構成要素は、異なる方向において異なる抵抗を提供し得る。
【0314】
フロッピー構造または構成要素:自重を支持させられた際に比較的短期間(例えば、1秒)以内に形状を変化させる(例えば、屈曲する)構造または構成要素。
【0315】
剛性の構造または構成要素:使用時において典型的に遭遇する負荷を受けた際に実質的に形状変化の無い構造または構成要素。このような用途の実施例として、患者インターフェースを例えばおよそ20~30cmHOの圧力の負荷において患者気道入口に対して密閉した様態でセットアップおよび維持することがあり得る。
【0316】
一実施例として、I形ばりは、第2の直交方向と比較した第1の方向において、異なる曲げ剛性(曲げ負荷に対する抵抗)を含み得る。別の実施例において、構造または構成要素は、第1の方向においてはフロッピーであり得、第2の方向においては剛性であり得る。
【0317】
5.9.2 呼吸サイクル
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば10秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉塞性無呼吸とは、患者の労作にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気の流れが許されないときに発生すると言われる。中枢性無呼吸とは、気道が開通しているにも関わらず呼吸努力の低下または呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合型無呼吸とは、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0318】
呼吸速度:患者の自発呼吸速度であり、通常は毎分あたりの呼吸回数で測定される。
【0319】
負荷サイクル:吸息時間Tiの合計呼吸時間Ttotに対する比。
【0320】
労作(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとしている人の自発呼吸によって行われる動きを指すと言われる。
【0321】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流れの開始から吸気流れの開始までの期間。
【0322】
流れ制限:流れ制限は、患者による労作の増大が流量の対応する増大を引き起こさない患者の呼吸における状況であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分において流量制限が発生した場合、当該流量制限は吸気流量制限と称することができる。呼吸サイクルの呼気部分において流量制限が発生した場合、当該流量制限は呼気流量制限と称することができる。
【0323】
流れ制限吸気の波形の種類:
(i) 平坦化:上昇の後に比較的平坦な部位が続いた後、下降が発生すること。
(ii) M字型:立ち上がりにおいて1つおよび立ち下がりにおいて1つの2つの局所的ピークを持ち、これら2つのピークの間に比較的平坦な部位がある。
(iii) 椅子状:単一の局所的ピークを持ち、このピークが立ち上がり部分に発生した後、比較的平坦な部位が続く。
(iv) 逆椅子状:比較的平坦な部位の後に単一の局所的ピークが続き、このピークが立ち下がり部分に発生する。
【0324】
呼吸低下:一部の定義によれば、呼吸低下は、流れの中断ではなく、流れの低下を意味する。一形態において、閾値速度を下回った流れ低下が継続期間にわたって続いた場合、呼吸低下が発生したと言われる。呼吸努力の低下に起因して呼吸低下が検出された場合、中枢性呼吸低下が発生したと言われる。成人の一形態において以下のうちいずれかが発生した場合、呼吸低下と見なされ得る:
(i)患者呼吸の30%の低下が少なくとも10秒+関連する4%の脱飽和、または、
(ii)患者呼吸の(50%未満の)低下が少なくとも10秒間継続し、関連して脱飽和が少なくとも3%であるかまたは覚醒が発生する。
【0325】
過呼吸:流れが通常の流量よりも高いレベルまで増加すること。
【0326】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から呼気流れの開始までの期間が、呼吸サイクルの吸気部分としてとられる。
【0327】
開通性(気道):気道が開いている度合いまたは気道が開いている範囲。気道開通性とは、開口である。気道開通性の定量化は、例えば、開通性を示す値(1)と、閉鎖(閉塞)を示す値(0)で行われ得る。
【0328】
呼吸終末陽圧(PEEP):肺中の大気を越える圧力であり、呼気終了時に存在する。
【0329】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流れ波形の吸気部分における流量最大値。
【0330】
呼吸気流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸気空気流量(Qr):これらの用語は、RPTデバイスの呼吸空気流量の推定を指すものとして理解され得、通常リットル/分で表される患者の実際の呼吸流量である「真の呼吸流量」または「真の呼吸気流量」と対照的に用いられる。
【0331】
1回換気量(Vt):余分な努力をせずに通常の呼吸時に吸い込まれたかまたは吐き出された空気の量である。原則的に、吸気量Vi(吸気された空気の量)は、呼気量Ve(呼気された空気の量)に等しいため、単一の一回換気量Vtは、いずれかの量に等しいものとして規定され得る。実際には、一回換気量Vtは、何らかの組み合わせ(例えば、吸気量Viと呼気量Veの平均)として推定される。
【0332】
(吸息)時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続期間。
【0333】
(呼息)時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続期間。
【0334】
(合計)時間(Ttot):呼吸流量波形の一つの吸気部分の開始と呼吸流量波形の次の吸気部分の開始との間の合計継続期間。
【0335】
典型的な最近の換気:所定の時間スケールにわたる換気Ventの直近値が密集する傾向となる換気値(すなわち、換気の直近値の中心の傾向の度合い)。
【0336】
上気道閉塞(UAO):部分的な上気道閉塞および合計上気道閉塞両方を含む。上気道上の圧力差の増加(スターリングレジスタ挙動)と共に流量がわずかに増加するかまたは低下し得る流量制限の状態と関連し得る。
【0337】
換気(Vent):患者の呼吸器系によって行われるガス交換率の測定。換気の測定は、単位時間あたりの吸気および呼気流のうち片方または双方を含み得る。1分あたりの体積として表される場合、この量は、「分換気」と呼ばれることが多い。分換気は、単に体積として付与されることもあり、1分あたりの体積として理解される。
【0338】
5.9.3 換気
適応サーボ人工呼吸器(ASV):一定の目標換気を持つのではなく変更が可能なサーボ人工呼吸器。変更可能な目標換気は、患者の何らかの特性(例えば、患者の呼吸特性)から学習され得る。
【0339】
バックアップレート:人工呼吸器のパラメータであり、(自発呼吸努力によってトリガされない場合に)人工呼吸器から患者へ送達される最小呼吸速度(典型的には、1分あたりの呼吸数)を確立させる。
【0340】
サイクル:人工呼吸器の吸気フェーズの終了。自発呼吸をしている患者へ人工呼吸器から呼吸を送達する場合、呼吸サイクルの吸気部分の終了時において、当該人工呼吸器は、呼吸送達を停止するようサイクルされると言われる。
【0341】
呼気の気道陽圧(EPAP):、人工呼吸器が所与の時期に達成しようとする所望のマスク圧力の生成のために、呼吸内において変化する圧力が付加される基本圧力。
【0342】
終了時呼気圧力(EEP):呼吸の呼気部分の終了時において人工呼吸器が達成しようとする所望のマスク圧力。圧力波形テンプレートΠ(Φ)が呼気終了時にゼロの値である(すなわち、Φ=1のときにΠ(Φ)=0である場合)、EEPはEPAPに等しい。
【0343】
吸息の気道陽圧(IPAP):呼吸の吸気部分時に人工呼吸器が達成しようとする最大の所望のマスク圧力。
【0344】
圧力補助:人工呼吸器吸気時における当該人工呼吸器呼気時における圧力増加を示す数であり、吸気時の最大値と、基本圧力との間の圧力差を主に意味する(例えば、PS=IPAP-EPAP)。いくつかの文脈において、圧力補助とは、(人工呼吸器が実際に達成する差ではなく)人工呼吸器が達成しようとする差を意味する。
【0345】
サーボ人工呼吸器:患者換気を有しかつ目標換気を有する人工呼吸器であり、患者換気を目標換気に近づけるために圧力補助レベルを調節する。
【0346】
自発/タイミング(S/T):自発呼吸している患者の呼吸の開始を検出しようとする、人工呼吸器または他のデバイスのモード。しかし、デバイスが所定期間の間に呼吸を検出できない場合、デバイスは、呼吸送達を自動的に開始する。
【0347】
スイング:圧力補助に相当する用語。
【0348】
トリガ:人工呼吸器が自発呼吸する患者へ空気の呼吸を送達する場合、患者自身が呼吸サイクルの呼吸部分を開始したとき、当該人工呼吸器が呼吸送達を行うようトリガされたと言う。
【0349】
5.9.3.1 呼吸器系の解剖学的構造
横隔膜:シート状の筋肉であり、胸郭下部上に延びる。横隔膜は、心臓、肺および肋骨を含む胸腔を腹腔から分離させる。横隔膜が収縮すると、胸腔の容量が増加し、肺中に空気が引き込まれる。
【0350】
喉頭:声帯ひだを収容する喉頭または発声器であり、咽頭の下部(下咽頭)を気管へ接続させる。
【0351】
肺:ヒトにおける呼吸臓器。肺の伝導性ゾーンは、気管、気管支、気管支、および終末細気管支を含む。呼吸領域は、呼吸細気管支、肺胞管および肺胞を含む。
【0352】
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央の鼻の上方および後方の空気が充填された大きな空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直フィンによって2つに分割される。鼻腔の側部には、鼻甲介または鼻介骨と呼ばれる3つの水平伸長物がある。鼻腔の前方には鼻があり、後方は後鼻孔を介して鼻咽頭内に繋がる。
【0353】
咽頭:鼻腔の直接下側(下方)に配置されかつ食道および喉頭の上方に配置された咽喉の部分。咽頭は、従来から以下の3つの部分へ区分される:鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部分)、口咽頭(中咽頭)(咽頭の口部分)、および咽喉(下咽頭)。
【0354】
5.9.4 患者インターフェース
窒息防止弁(AAV):マスクシステムの構成要素またはサブアセンブリであり、フェールセーフ様態での雰囲気中への開口により、患者による過度のCOの再呼吸の危険性を低減させる。
【0355】
エルボー:エルボーは、内部を移動する空気の流れの軸を方向付けて、角度を通じて方向を変化させる構造の実施例である。一形態において、角度はおよそ90度であり得る。別の形態において、角度は、90度超過または未満であり得る。エルボーは、ほぼ円形の断面を持ち得る。別の形態において、エルボーは、楕円または矩形の断面を持ち得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素に対して例えば約360度で回転可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素から例えばスナップ接続を介して取り外すことが可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、製造時にワンタイムスナップを介して噛み合い構成要素へ組み付けることが可能である一方、患者が取り外すことはできない。
【0356】
フレーム:フレームは、ヘッドギアを接続する2つ以上の点間の引張荷重を支持するマスク構造を意味するものとしてとられる。マスクフレームは、マスク中の非気密負荷支持構造であり得る。しかし、いくつかの形態のマスクフレームは、気密であってもよい。
【0357】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭部上において使用されるように設計された、一形態の位置決めおよび安定化構造を意味するものとしてとられる。例えば、ヘッドギアは、患者インターフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔上の所定位置に配置および保持するように構成された1つ以上の支柱、タイおよび補剛材の集合を含み得る。いくつかのタイは、柔らかい可撓性の弾性材料(例えば、発泡材料および布地の層状複合材)によって形成される。
【0358】
膜:膜は、典型的には肉薄の要素を意味するものとしてとられ、好適には屈曲に対して実質的に抵抗せずかつ伸縮に対しては抵抗する。
【0359】
プレナムチャンバ:マスクプレナムチャンバは、空間の容積を少なくとも部分的に封入する壁を有する患者インターフェースの一部を意味するものとしてとられ、容積中の空気は、加圧されて使用時において気圧を超える。シェルは、マスクプレナムチャンバの壁の一部を形成し得る。
【0360】
シール:名詞(「シール」)として用いられる場合は構造を指し得、動詞(「密閉(する)」)として用いられる場合はその効果を指し得る。2つの要素は、別個の「シール」要素自体を必要とすることなく両者間において「シール」するかまたは「密閉」効果を得るように、構築および/または配置され得る。
【0361】
シェル:シェルは、屈曲、引っ張りおよび圧縮剛性を有する曲線状の比較的肉薄構造を意味するものとしてとられる。例えば、マスクの曲線状構造壁は、シェルであり得る。いくつかの形態において、シェルはファセットされ得る。いくつかの形態において、シェルは気密であり得る。いくつかの形態において、シェルは気密でない場合もある。
【0362】
補剛材:補剛材は、別の構成要素の剛軟度を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0363】
支柱:支柱は、別の構成要素の圧縮抵抗を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0364】
スイベル(名詞):構成要素のサブアセンブリであり、共通軸の周囲において好適には独立して好適には低トルク下において回転するように構成される。一形態において、スイベルは、少なくとも360度の角度で回転するように構成され得る。別の形態において、スイベルは、360度未満の角度で回転するように構成され得る。空気送達導管の文脈において用いられる場合、構成要素のサブアセンブリは好適には、一対組み合わせの円筒導管を含む。使用時において、スイベルからの空気流れの漏れはほとんど無い。
【0365】
タイ(名詞):張力に抵抗するように設計された構造。
【0366】
通気:(名詞):マスクまたは導管の内部の周囲空気への空気流れを可能にする構造であり、吐き出されたガスの臨床的に有効な洗い流しを可能にする。例えば、臨床的に有効な洗い流しにおいては、約10リットル/分~約100リットル/分の流量がマスク設計および治療圧力に応じて用いられ得る。
【0367】
5.9.5 構造の形状
本技術による製品は、1つ以上の三次元機械構造(例えば、マスククッションまたはインペラ)を含み得る。三次元構造は、二次元表面によって制限され得る。これらの表面は、関連付けられた表面の方向、位置、機能または他の何らかの特性を記述するためのラベルを用いて区別され得る。例えば、構造は、前表面、後表面、内面および外面のうち1つ以上を含み得る。別の実施例において、シール形成構造は、顔接触(例えば、外側の)表面と、別個の非顔接触(例えば、下側または内側の)表面を含み得る。別の実施例において、構造は、第1の表面および第2の表面を含み得る。
【0368】
三次元構造の形状および表面の説明を容易にするために、構造の表面を通じた点pにおける断面について先ず検討する。図3B図3Fを参照されたい。図3B図3Fは、表面上における点pにおける断面例と、その結果得られる平面曲線の例とを示す。図3B図3Fは、pにおける外向き法線ベクトルも示す。pにおける外向き法線ベクトルは、表面から離隔方向に延びる。いくつかの実施例において、架空の小さな人が表面上に直立している観点から、この表面について説明する。
【0369】
5.9.5.1 一次元における曲率
pにおける平面曲線の曲率は、符号(例えば、正、負)および大きさ(例えば、pにおいて曲線に接する円形の1/半径)を持つものとして記述され得る。
【0370】
正の曲率:pにおける曲線が外向き法線に向かって曲がる場合、その点における曲率は、正の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上り坂を歩行する必要がある)。図3B図3Cと比較して比較的大きな正の曲率)および図3C図3Bと比較して比較的小さな正の曲率)を参照されたい。このような曲線を、凹状と呼ぶことが多い。
【0371】
ゼロ曲率:pにおける曲線が直線である場合、曲率はゼロとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上向きでも下向きでもない水平面を歩行することができる)。図3Dを参照されたい。
【0372】
負の曲率:pにおける曲線が外向き法線から離隔方向に曲がる場合、その点およびその方向における曲率は、負の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、下り坂を歩行する必要がある)。図3E図3Fと比較して比較的小さな負の曲率)および図3F図3Eと比較して比較的大きな負の曲率)を参照されたい。このような曲線は、凸状と呼ばれることが多い。
【0373】
5.9.5.2 二次元表面の曲率
本技術による二次元表面上の所与の点における形状の記述は、複数の垂直断面を含み得る。複数の断面は、外向き法線(「法平面」)を含む面において表面を切断し得、各断面は、異なる方向においてとられ得る。各断面の結果、対応する曲率を有する平面曲線が得られる。その点における異なる曲率は、同一符号または異なる符号を持ち得る。その点における曲率はそれぞれ、(例えば、比較的小さな)大きさを有する。図3B図3F中の平面曲線は、特定の点におけるこのような複数の断面の例であり得る。
【0374】
主要な曲率および方向:曲線の曲率が最大値および最小値をとる法平面の方向を主要な方向と呼ぶ。図3B図3Fの実施例において、最大曲率は図3Bにおいて発生し、最小は図3Fにおいて発生するため、図3Bおよび図3Fは、主要な方向における断面である。pにおける主要な曲率は、主要な方向における曲率である。
【0375】
表面の領域:表面上の連結された点の集合。領域内のこの1組の点は、類似の特性(例えば、曲率または符号)を持ち得る。
【0376】
サドル領域:(上り坂または下り坂を歩行し得る架空の人が向く方向に応じて)各点において主要な曲率が反対の符号(すなわち、片方が正の符号および他方が負の符号)を有する領域。
【0377】
ドーム領域:各点において主要な曲率が同一符号(双方とも正(「凹状ドーム」)または双方とも負(「凸状ドーム」))を持つ領域。
【0378】
円筒型領域:1つの主要な曲率がゼロ(または、例えば製造公差内のゼロ)をとり、他方の主要な曲率が非ゼロである領域。
【0379】
平面領域:主要な曲率双方がゼロであるか(または例えば製造交差内のゼロである)表面の領域。
【0380】
表面の縁部:表面または領域の境界または限界。
【0381】
経路:本技術の特定の形態において、「経路」は、数学的-トポロジー的意味合いにおける経路(例えば、表面上におけるf(0)からf(1)への連続空間曲線)を意味するものとしてとられる。本技術の特定の形態において、「経路」は、例えば表面上の1組の点を含むルートまたはコースとして記述され得る。(架空の人の経路は、表面上において歩行する場所であり、庭の経路に類似する)。
【0382】
経路長さ:本技術の特定の形態において、「経路長さ」とは、表面に沿ったf(0)からf(1)への距離(すなわち、表面上の経路に沿った距離)を指すものとしてとられる。表面上の2つの点間において1つよりも多くの経路があり得、このような経路は、異なる経路長さを持ち得る。(架空の人の経路長さは、表面上を経路に沿って歩行する距離である)。
【0383】
直線距離:直線距離は、表面上の2つの点間の距離であるが、表面は考慮しない。平面領域上において、表面上の2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する表縁上の距離がある。非平面表面上において、2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する経路は存在し得ない。(架空の人にとって、直線距離は、「カラスが飛ぶ」距離に対応する)。
【0384】
5.9.5.3 空間曲線
空間曲線: 平面曲線と異なり、空間曲線は、任意の特定の平面内に必ずしも存在しない。空間曲線は閉鎖され得る。すなわち、終点を有さない。空間曲線は、三次元空間の一次元ピースとみなされ得る。DNA螺旋の鎖上を歩行している架空の人物は、空間曲線に沿って歩行する。典型的なヒトの左耳は、左手螺旋を含む(図3Qを参照)。典型的なヒトの右耳は、右手螺旋を含む(図3Rを参照)。図3Sは、右手螺旋を示す。構造の縁部(例えば、膜またはインペラの縁部)は、空間曲線をたどり得る。一般的に、空間曲線は、空間曲線上の各点における曲率およびねじれによって記述され得る。ねじれとは、平面から発生する曲線の様態の尺度である。ねじれは、符号および大きさを有する。空間曲線上の点におけるねじれは、当該点における接線ベクトル、法線ベクトルおよび従法線ベクトルに対して特徴付けられ得る。
【0385】
接線単位ベクトル(または単位接線ベクトル):曲線上の各点について、当該点におけるベクトルは、当該点からの方向および大きさを指定する。接線単位ベクトルとは、当該点における曲線と同じ方向を向く単位ベクトルである。架空の人物が曲線に沿って飛行しており、特定の点において自身の車両から落ちた場合、接線ベクトルの方向は、その人物が移動しているはずの方向である。
【0386】
単位法線ベクトル:架空の人物が曲線に沿って移動している場合、この接線ベクトルそのものが変化する。接線ベクトルが変化している方向と同じ方向を向く単位ベクトルは、単位主法線ベクトルと呼ばれる。これは、接線ベクトルに対して垂直である。
【0387】
従法線単位ベクトル:従法線単位ベクトルは、接線ベクトルおよび主法線ベクトル双方に対して垂直である。その方向は、右手の法則(例えば図3Pを参照)または表すあるいは左手の法則(図3O)によって決定され得る。
【0388】
接触平面:単位接線ベクトルおよび単位主法線ベクトルを含む平面。図3Oおよび図3Pを参照されたい。
【0389】
空間曲線のねじれ:空間曲線の点におけるねじれとは、当該点における従法線単位ベクトルの変化速度の大きさである。これは、曲線の接触平面からの逸脱の程度を測定する。平面内にある空間曲線のねじれはゼロである。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的少量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的小さい(例えば、緩やかに傾斜する螺旋状経路)。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的大量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的大きい(例えば、急勾配に傾斜する螺旋状経路)。図3Sを参照して、T2>T1であるため、図3Sの螺旋の最上部コイルの近隣のねじれの大きさは、図3Sの螺旋の最下部コイルのねじれの大きさよりも大きい。
【0390】
図3Pの右手の法則を参照して、右手従法線の方向に向かって曲がる空間曲線は、右手方向に正のねじれとしてみなされ得る(例えば、図3Sに示すような右手螺旋)。右手従法線方向から離隔方向を向く空間曲線は、右手の負のねじれを持つものとしてみなされ得る(例えば、左手螺旋)。
【0391】
同様に、左手の法則(図3Oを参照)を参照して、左手従法線方向を向く空間曲線は、左手の正のねじれ(例えば、左手螺旋)を持つものとしてみなされ得る。よって、左手の正の方向は、右手の負の方向に相当する。図3Tを参照されたい。
【0392】
5.9.5.4 穴
表面は、一次元穴を持ち得る(例えば、平面曲線または空間曲線によって境界付けられた穴)。穴を含む肉薄構造(例えば、膜)の場合、この構造は、一次元穴を有するものとして記述され得る。例えば、図3Iに示す構造の表面中の一次元穴が平面曲線によって境界付けられる様子を参照されたい。
【0393】
構造は、二次元穴(例えば、表面によって境界付けられた穴)を持ち得る。例えば、可膨張性タイヤは、タイヤ内面によって境界付けられた二次元穴を有する。別の実施例において、空気またはゲルのための空洞を備えたブラダーは、二次元穴を持ち得る。例えば図3Lのクッション、および二次元穴を境界付ける内面が示される図3Mおよび図3Nにおける図3Lの例示的断面を参照されたい。さらに別の実施例において、導管は、(例えばその入口またはその出口において)一次元穴を含み得、導管の内面によって境界付けられた二次元穴を含み得る。図3Kに示す構造を通じておりかつ図示のように表面によって境界付けられた二次元穴も参照されたい。
【0394】
5.10 他の注意事項
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0395】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として具現される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0396】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的方法および材料が本明細書中に記載される。
【0397】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0398】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0399】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/または材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していない、認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0400】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0401】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0402】
本明細書中の技術について、特定の実施例を参照して述べてきたが、これらの実施例は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「first(第1の)」および「second(第2の)」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありかつ/またはその様態を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0403】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0404】
1000 患者
1100 同床者
3000 患者インターフェース
3100 シール形成構造
3200 プレナムチャンバ
3300 位置決めおよび安定化構造
3400 通気部
3600 接続ポート
3700 前額支持部
4000 RPTデバイス
4010 主パネル
4012 前面パネル
4014 側面パネル
4016 シャーシ
4020 空気圧ブロック
4090 圧力センサ
4092 圧力ポート
4093 出口
4095 流量センサ
4096 流れセンサポート
4097 流れセンサポート
4110 空気フィルタ
4112 入口空気フィルタ
4114 出口空気フィルタ
4120 マフラー
4120 マフラー
4122 入口マフラー
4124 出口マフラー
4140 圧力生成器
4142 送風機
4144 モータ
4160 アンチスピルバック弁
4170 空気送達管
4171 空気回路
4172 チューブ部位
4174 RPTデバイスコネクタ
4176 患者インターフェース・コネクタ
4178 ガス温度センサ
4180 補充酸素
4200 電気部品
4202 PCBA
4210 電源
4220 入力デバイス
4230 中央コントローラ
4232 時計
4240 治療デバイスコントローラ
4250 保護回路
4260 メモリ
4270 変換器
4272 圧力センサ
4274 流量センサ
4276 モータ速度変換器
4280 データ通信インターフェース
4282 遠隔外部通信ネットワーク
4284 ローカル外部通信ネットワーク
4286 遠隔外部デバイス
4288 ローカル外部デバイス
4290 出力デバイス
4292 ディスプレイドライバ
4294 ディスプレイ
4300 アルゴリズム
4310 事前処理モジュール
4312 圧力補償アルゴリズム
4314 通気流量推定アルゴリズム
4316 漏洩流量推定アルゴリズム
4318 呼吸流量推定アルゴリズム
4320 治療エンジンモジュール
4321 フェーズ決定アルゴリズム
4322 波形決定アルゴリズム
4323 換気決定アルゴリズム
4324 吸気流制限決定アルゴリズム
4325 無呼吸/呼吸低下決定アルゴリズム
4326 いびき決定アルゴリズム
4327 気道開通性決定アルゴリズム
4328 目標換気決定アルゴリズム
4329 治療パラメータ決定アルゴリズム
4330 治療制御モジュール
4340 方法
5000 加湿器
5110 水リザーバ
5210 加湿器変換器
5212 圧力変換器
5214 流量変換器
5216 温度変換器
5218 湿度センサ
5240 加熱要素
5250 加湿器コントローラ
5251 中央加湿器コントローラ
5252 加熱要素コントローラ
5254 空気回路コントローラ
6000 アダプタ
6010 短尺管アセンブリ
6012 管
6014 コネクタ
6016 コネクタ
6020 短尺管アセンブリ
6022 管
6024 コネクタ
6025 短尺管アセンブリ
6026 コネクタ
6027 コネクタ
6050 通気部およびHMEアセンブリ
6060 コネクタ
6070 ハウジング
6080 コア構造
6090 拡散器カバー
6095 拡散器
6500 HME
7000 CPAPシステム
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図3O
図3P
図3Q
図3R
図3S
図3T
図3U
図3V
図3W
図3X
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33