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特許7451518物理的に違いのある構成要素を溶接するための自動超音波プレスシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】物理的に違いのある構成要素を溶接するための自動超音波プレスシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20240311BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B29C65/08
B23K20/10
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021526382
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2019061287
(87)【国際公開番号】W WO2020102428
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】62/760,700
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/352,062
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519092897
【氏名又は名称】デューケイン アイエーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラインシュタイン レオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルコ ポール ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド チャールズ リロイ
(72)【発明者】
【氏名】ディトリッヒ マシュー ジェームス
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-339634(JP,A)
【文献】特開2009-297786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354974(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106238898(CN,A)
【文献】特開2001-088220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
B23K 20/00 - 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波溶接スタックを第1の対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧し、その結果、前記押圧に応じて、前記第1の被加工物が、前記第1の対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触するステップと、
前記超音波溶接スタックから前記第1の対の被加工物のうちの前記第1の被加工物にエネルギを出力することによって溶接段階を開始させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて溶接力の変化率を監視するステップであって、前記溶接力は、前記超音波溶接スタックの前記第1の被加工物に対する前記押圧によって生じる力である、ステップと、
前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップと、
前記溶接力の変化率が前記所定のレベルに達したとの決定に基づいて、前記溶接段階を終了させるステップと、
を含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波溶接方法であって、前記監視するステップが時間遅延後に行われ、前記時間遅延が前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に行われることを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記第1の対の被加工物のうちの前記第1の被加工物が、前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に所定の距離移動する時間の長さを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波溶接方法であって、前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力の変化率を決定して第1の溶接力の変化率をもたらすステップを含み、前記所定のレベルが前記第1の溶接力の変化率に基づくことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項5】
請求項2に記載の超音波溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記溶接段階を前記開始させるステップ後に、前記溶接段階のエネルギ出力が所定のエネルギレベルに達する時間の長さを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波溶接方法であって、前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力の変化率を決定して第1の溶接力の変化率をもたらすステップを含み、前記所定のレベルが前記第1の溶接力の変化率に基づくことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項7】
請求項3に記載の超音波溶接方法であって、
前記超音波溶接スタックを第2の対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧し、その結果、前記押圧に応じて、前記第1の被加工物が、前記第2の対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触するステップと、
前記超音波溶接スタックから前記第2の対の被加工物のうちの前記第1の被加工物にエネルギを出力することによって第2の溶接段階を開始させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて前記第2の溶接段階に対する溶接力の変化率を監視するステップと、
前記第2の溶接段階に対する前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップと、
前記第2の溶接段階に対する前記溶接力の変化率が前記所定のレベルに達したとの決定に基づいて、前記第2の溶接段階を終了させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波溶接方法であって、前記第1の対の被加工物および前記第2の対の被加工物のそれぞれのうちの少なくとも1つの被加工物が、前記第1の対の被加工物および前記第2の対の被加工物のうちの少なくとも1つの他の被加工物と形状および大きさの物理的な違いを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波溶接方法であって、前記所定のレベルが、前記第1の対の被加工物および前記第2の対の被加工物に対して同一のレベルであることを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項10】
請求項1に記載の超音波溶接方法であって、前記溶接段階が、溶接される前記被加工物に超音波エネルギが加えられている期間であることを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項11】
異なる材料または異なる幾何学的特性を含む異なる物理特性を有する1対の被加工物を溶接するための超音波溶接方法であって、
超音波溶接スタックを前記対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧するステップであって、前記押圧に応じて、前記第1の被加工物が、前記対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触する、ステップと、
前記超音波溶接スタックから前記第1の被加工物にエネルギを出力することによって
前記第1の被加工物と前記第2の被加工物のそれぞれの接触面を溶融する溶接段階を開始させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて溶接力を監視するステップであって、前記溶接力は、前記超音波溶接スタックの前記第1の被加工物に対する前記押圧によって生じる力である、ステップと、
前記溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップと、
前記超音波溶接スタックから前記第1の被加工物への前記エネルギの出力を終了させることによって、前記溶接段階を終了させるステップと、
を含み、
前記第1の被加工物と前記第2の被加工物が異なる物理特性を有し、
前記超音波溶接スタックから前記第1の被加工物への前記エネルギの出力を終了させることは、前記溶接力が前記所定のレベルに達したとの決定に基づく、
とを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波溶接方法であって、前記監視するステップが時間遅延後に行われ、前記時間遅延が前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に行われることを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項13】
請求項12に記載の超音波溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記第1の被加工物が、前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に所定の距離移動する時間の長さを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項14】
請求項13に記載の超音波溶接方法であって、前記溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力を決定して第1の溶接力をもたらすステップを含み、前記所定のレベルが前記第1の溶接力に基づくことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項15】
請求項12に記載の超音波溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に、前記溶接段階のエネルギ出力が所定のエネルギレベルに達する時間の長さを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項16】
請求項15に記載の超音波溶接方法であって、前記溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力を決定して第1の溶接力をもたらすステップを含み、前記所定のレベルが前記第1の溶接力に基づくことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項17】
請求項14に記載の超音波溶接方法であって、前記方法が、複数の対の被加工物に対して、押圧、開始、監視、決定、および終了の前記各ステップを実施することをさらに含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項18】
請求項17に記載の超音波溶接方法であって、前記複数の対の被加工物のそれぞれのうちの少なくとも1つの被加工物が、前記複数の対の被加工物のうちの少なくとも1つの他の被加工物と形状および大きさの物理的な違いを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項19】
請求項18に記載の超音波溶接方法であって、前記所定のレベルが、前記複数の対の被加工物のうちのそれぞれの対の被加工物に対して同一のレベルであることを特徴とする超音波溶接方法。
【請求項20】
超音波切断およびシール溶接方法であって、
電動リニアアクチュエータを使用して、超音波溶接スタックを第1の対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧し、その結果、前記押圧に応じて、前記第1の被加工物が、前記第1の対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触するステップと、
前記超音波溶接スタックから前記第1の対の被加工物のうちの前記第1の被加工物にエネルギを出力することによって切断およびシール溶接段階を開始させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて溶接力の変化率を監視するステップであって、前記溶接力は、前記超音波溶接スタックの前記第1の被加工物に対する前記押圧によって生じる力である、ステップと、
前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップと、
前記溶接力の変化率が前記所定のレベルに達したとの決定に基づいて、前記第1の対の被加工物を同時に切断およびシールする前記切断およびシール溶接段階を終了させるステップと、
を含むことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項21】
請求項20に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記監視するステップが時間遅延後に行われ、前記時間遅延が前記切断およびシール溶接段階を開始させる前記ステップ後に行われることを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項22】
請求項21に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記第1の対の被加工物のうちの前記第1の被加工物が、前記切断およびシール溶接段階を開始させる前記ステップ後に所定の距離移動する時間の長さを含むことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項23】
請求項22に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力の変化率を決定して第1の溶接力の変化率をもたらすステップを含み、前記溶接力の変化率の前記所定のレベルが前記第1の溶接力の変化率に基づくことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項24】
請求項21に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記切断およびシール溶接段階を前記開始させるステップ後に、前記切断およびシール溶接段階のエネルギ出力が所定のエネルギレベルに達する時間の長さを含むことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項25】
請求項24に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力の変化率を決定して第1の溶接力の変化率をもたらすステップを含み、前記溶接力の変化率の前記所定のレベルが前記第1の溶接力の変化率に基づくことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項26】
請求項23に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、
前記電動リニアアクチュエータまたは他の電動リニアアクチュエータを使用して、前記超音波溶接スタックを第2の対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧し、その結果、前記押圧に応じて、前記第1の被加工物が、前記第2の対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触するステップと、
前記超音波溶接スタックから前記第2の対の被加工物のうちの前記第1の被加工物にエネルギを出力することによって第2の切断およびシール溶接段階を開始させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて前記第2の切断およびシール溶接段階に対する溶接力の変化率を監視するステップと、
前記第2の切断およびシール溶接段階に対する前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップと、
前記第2の切断およびシール溶接段階に対する前記溶接力の変化率が前記所定のレベルに達したとの決定に基づいて、前記第2の対の被加工物を同時に切断およびシールする前記第2の切断およびシール溶接段階を終了させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項27】
請求項26に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記第1の対の被加工物および前記第2の対の被加工物のそれぞれのうちの少なくとも1つの被加工物が、前記第1の対の被加工物および前記第2の対の被加工物のうちの少なくとも1つの他の被加工物と形状および大きさの物理的な違いを含むことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項28】
請求項27に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記所定のレベルが、前記第1の対の被加工物および前記第2の対の被加工物に対して同一のレベルであることを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項29】
請求項21に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力の変化率を決定して第1の溶接力の変化率をもたらすステップを含み、前記溶接力の変化率の前記所定のレベルが前記第1の溶接力の変化率に基づくことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【請求項30】
請求項20に記載の超音波切断およびシール溶接方法であって、前記溶接力の変化率を監視するステップが前回決定された溶接力の変化率に対して相対的に前記溶接力の変化率を監視するステップを含むことを特徴とする超音波切断およびシール溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、プラスチック部品を振動接合するための超音波溶接または他のシステムで使用するためのプレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2019年3月13日出願の米国特許出願第16/352,062号、および2018年11月13日出願の米国仮特許出願第62/760,700号の優先権を主張し、それぞれ、その内容全体を本願に引用して援用する。
【0003】
超音波溶接サイクルにおいて、溶接段階は、接合される部品に超音波エネルギが加えられている期間として定義される。伝統的に、(1)溶接の開始から経過した時間、(2)所定のプレス位置に達している、(3)溶接の開始から所定の距離移動している、(4)溶接の開始からの超音波エネルギが所定のレベルに達している、および(5)超音波パワーが所定のレベルに達している、を含む様々な条件が、溶接段階を終了させるために用いられてきた。
【0004】
ときには、溶接段階に続いて保持段階があり、保持段階では、超音波スタックが、接合される部品に対して引き続き押圧する間、溶融した材料が冷えて固まる。伝統的に、(1)溶接の終了から経過した時間、(2)所定のプレス位置に達している、および(3)溶接の終了から特定の距離移動している、を含む様々な条件が、保持段階の終了を規定するために用いられてきた。
【0005】
接合プロセスの溶接段階および保持段階を終了させるためのこれらの伝統的な方法はいくつかの用途では、特に、溶接される部品に物理的な違いがある場合には適切でない。例えば、溶接される部品のエネルギダイレクタの高さ、幅、体積、大きさ、および形状は、成形プロセスが一定していないことにより変わり得る。溶接される部品の材料も変わり得る、またはその他の幾何学的特性も変わり得る。第1のより短いエネルギダイレクタでは、第1の被加工物が設定距離移動すると、超音波溶接プロセスは溶接段階を終了することができる。しかしながら、第2のより長いエネルギダイレクタが次に溶接され、超音波溶接プロセスが第1の被加工物の距離に基づいて終了する場合、第2の被加工物は、このより大きなエネルギダイレクタを溶接するために追加の時間とエネルギが必要であることにより、適切に溶接されない。溶接段階および保持段階を終了するために上で列挙した残りの条件はすべて、正確な溶接を保ちながら物理的に異なる被加工物に対応できない。
【0006】
さらに、超音波プレスが繰り返し被加工物を溶接するように動作しているとき、第2の被加工物が第1の被加工物と物理的な違いがあると、超音波プレスを頻繁に再校正する必要があり得る。この頻繁な再校正は効率を低下させ、特に、校正が第1の組の被加工物に基づき、第2の組の物理的特性が異なるときには、溶接プロセスにさらなる誤差を招き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、超音波溶接において、物理的に異なる被加工物を正確に溶接するためのシステムおよび方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本コンセプトの1つの実施形態によれば、本開示は、1対の被加工物のための超音波溶接方法を提供することができる。本方法は、まず、超音波溶接スタックを1対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧することを含むことができる。これによって、第1の被加工物が、1対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触することができる。本方法は、次いで、超音波溶接スタックから第1の被加工物にエネルギを出力することによって溶接段階を開始させることを提供することができる。本方法は、次いで、少なくとも1つのセンサを用いて溶接力を監視することを提供することができる。本方法は、次いで、溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定することを提供することができる。溶接力が所定のレベルに達したとの決定に基づいて、本方法は、溶接段階を終了させることを提供することができる。
【0009】
第1の実施形態のいくつかの例では、監視は時間遅延後に行われ得る。時間遅延は溶接段階の開始後に行われ得る。
【0010】
いくつかの例では、時間遅延は、第1の被加工物が、溶接段階の開始後に所定の距離移動する時間の長さであり得る。
【0011】
いくつかの例では、溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定することは、時間遅延の終了時に溶接力を決定することを含むことができる。これは第1の溶接力をもたらすことができる。所定のレベルは第1の溶接力に基づくことができる。
【0012】
いくつかの例では、時間遅延は、溶接段階の開始後に、溶接段階のエネルギ出力が所定のレベルに達する時間の長さであり得る。これらの例では、溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定することは、時間遅延の終了時に溶接力を決定することを含むことができる。これは第1の溶接力をもたらすことができる。所定のレベルは第1の溶接力に基づくことができる。
【0013】
第1の実施形態のいくつかの例では、本方法は、複数の対の被加工物に対して、押圧、開始、監視、決定、および終了の各ステップを実施することをさらに含むことができる。
【0014】
いくつかの例では、複数の対の被加工物のそれぞれのうちの少なくとも1つの被加工物は少なくとも1つの物理的な違いを有することができる。物理的な違いは、複数の対の被加工物のうちの少なくとも1つの他の被加工物とは異なる形状および/または大きさであり得る。
【0015】
いくつかの例では、所定のレベルは、複数の対の被加工物のうちのそれぞれの対の被加工物に対して同一のレベルであり得る。
【0016】
本開示の第2の実施形態は、1対の被加工物のための別の超音波溶接方法を提供することができる。本方法は、まず、超音波溶接スタックを1対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧することを含むことができる。これによって、第1の被加工物は、1対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触することができる。本方法は、次いで、超音波溶接スタックから第1の被加工物にエネルギを出力することによって溶接段階を開始させることを提供することができる。本方法は、次いで、少なくとも1つのセンサを用いて溶接力の変化率を監視することを提供することができる。本方法は、次いで、溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定することを提供することができる。溶接力の変化率が所定のレベルに達したとの決定に基づいて、本方法は、溶接段階を終了させるステップを提供することができる。
【0017】
第1の実施形態のいくつかの例では、監視は時間遅延後に行われ得る。時間遅延は溶接段階の開始後に行われ得る。
【0018】
いくつかの例では、時間遅延は、第1の被加工物が、溶接段階の開始後に所定の距離移動する時間の長さであり得る。
【0019】
いくつかの例では、溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定することは、時間遅延の終了時に溶接力の変化率を決定することを含むことができる。これは第1の溶接力の変化率をもたらすことができる。所定のレベルは第1の溶接力の変化率に基づくことができる。
【0020】
いくつかの例では、時間遅延は、溶接段階の開始後に、溶接段階のエネルギ出力が所定のレベルに達する時間の長さであり得る。これらの例では、溶接力の変化率が所定のレベルに達したかどうかを決定することは、時間遅延の終了時に溶接力の変化率を決定することを含むことができる。これは第1の溶接力の変化率をもたらすことができる。所定のレベルは第1の溶接力の変化率に基づくことができる。
【0021】
第1の実施形態のいくつかの例では、本方法は、複数の対の被加工物に対して、押圧、開始、監視、決定、および終了の各ステップを実施することをさらに含むことができる。
【0022】
いくつかの例では、複数の対の被加工物のそれぞれのうちの少なくとも1つの被加工物は少なくとも1つの物理的な違いを有することができる。物理的な違いは、複数の対の被加工物のうちの少なくとも1つの他の被加工物とは異なる形状および/または大きさであり得る。
【0023】
いくつかの例では、所定のレベルは、複数の対の被加工物のうちのそれぞれの対の被加工物に対して同一のレベルであり得る。
【0024】
本発明は、添付の図面を参照し、好ましい実施形態の以下の説明からよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】超音波溶接機械の正面斜視図である。
図1B】リニアアクチュエータを含む内部構造を明らかにするためにハウジング壁の一部を取り除いた、図1Aに示された超音波溶接機械の一部分の拡大側面斜視図である。
図1C図1に示された超音波溶接機械の超音波「スタック」の拡大分解立面図である。
図2A】溶接される1組の部品の図面表示である。
図2B】溶接されるキャップの断面拡大図である。
図2C】溶接プロセス前の、溶接される部品の例示的な配置の図である。
図2D】完了し成功した例示的な溶接プロセスの図である。
図3A】溶接される部品の例示的な第1の幾何形状の図である。
図3B】溶接される部品の例示的な、第1の幾何形状と異なる第2の幾何形状の図である。
図4】本開示の実施形態による例示的な超音波溶接方法の図である。
図5】本開示の実施形態による、時間の経過における溶接プロセス中の力の例の図である。
図6A】本開示の実施形態による、力、および力の変化率のデータの例示的なグラフである。
図6B】本開示の実施形態による、力、および力の変化率のデータの例示的なグラフである。
図7A】本開示の実施形態による、超音波ステーキングによって接合されるように設計された2つの部品の断面拡大図である。
図7B】本開示の実施形態による、下側の部品の柱が上側の部品の穴に挿入されている図である。
図7C図7Bの柱が完全に成形された図である。
図8A】本開示の実施形態による、2つの異なる溶接サイクルに対する力対時間の図である。
図8B】本開示の実施形態による、図8Aのグラフに対する、結果として生じた力の変化率対時間の図である。
図9A】本開示の実施形態による、力および距離対時間のデータの例示的なグラフである。
図9B】本開示の実施形態による、力および距離対時間のデータの例示的なグラフである。
図10A】本開示の実施形態による、被検知パラメータが所定のレベルに達したかどうかを評価するプロセスを遅らせる例の図である。
図10B】本開示の実施形態による、被検知パラメータが所定のレベルに達したかどうかを評価するプロセスを遅らせる例の図である。
図11A】本開示の実施形態による、溶接の開始から移動する距離のグラフを示す。
図11B】本開示の実施形態による、最適な溶接接合になる2つの異なる接合サイクルの溶接段階に対する力対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、特定の好ましい実施形態と関連付けて説明されるが、本発明はこれら特定の実施形態に限定されるものではないことは理解されよう。逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の主旨および範囲に含まれる可能性のある代替物、変更物、および均等構成をすべて包含するように意図されている。
【0027】
本開示は、溶接および保持終了点を規定するための新しい条件を提供する。接合プロセスの最終目標が、当接しようとする部品機能部が、確実に、互いに完全に接触することである用途において、これらの条件は特に有用である。これらの新しい方法が役に立つであろうさらなる用途には、限定するものではないが、超音波切断およびシール、超音波インサート、超音波支援加工、超音波ステーキング、ならびに当該技術で知られているような他の同様なプロセスが含まれる。本開示は、溶接される部品に制御された力、速度、または力と速度との組合せを印加する移動可能な超音波溶接スタックを含む伝統的な単体の超音波溶接プレスまたは任意の他の装置を含む超音波溶接システムに適用可能であり得る。これらのコンセプトは、超音波溶接スタックが静止し、接合される部品が、制御された力、速度、または力と速度との組合せでスタックに対して移動するシステムに同様に適用可能である。
【0028】
次に図面に目を向けると、まず、図1A図1Cを参照して、本開示の様々な実施形態に使用することができる例示的な超音波溶接機械を説明する。例えば、この例示的な超音波溶接機械は、二方向、電動リニアアクチュエータ11(図1B)によって鉛直方向に制御されて動くように取り付けられた超音波溶接「スタック」10を含むことができる。スタック10は、図1Cと関連して、下でより詳細に説明される。主ハウジング12内にはアクチュエータ11を取り付けることができ、主ハウジング12はまた、溶接プレス用の電源および電子制御装置を含む補助ハウジング13を支持する。このコンセプトの変形例では、ハウジング12と補助ハウジング13とは、組み合わされて1つの構造体にすることができる。溶接される被加工物W1およびW2(図1C)は、超音波スタック10の下方の静止固定具に取り付けることができ、アクチュエータ11はスタック10を上側の被加工物W1に対して下方に前進させることができる。スタック10の下端は、被加工物W1に対して下方へ押圧されて、下側の被加工物W2に対して上側の被加工物W1を押圧し、一方で、被加工物W1に機械的振動を加えて、2つの被加工物W1とW2とを互いに接合する所望の溶接をもたらす。
【0029】
主ハウジング12は、基部15から上方へ延在する鉛直柱14を含むフレームに取り付けられ、基部15は、溶接される被加工物を受けて支持するための固定具を担持する。ハウジング12は、典型的には、柱14に調節可能に取り付けられて、異なる被加工物に対してハウジング12全体の鉛直位置を調節することを可能にする。制御パネル16は基部15の前部に設けられる。
【0030】
超音波溶接スタック10は、以下の3つ構成要素を含む(図1C参照)。すなわち、電気エネルギを機械的振動に変換する電気機械トランスデューサ20、トランスデューサ20によって生成される機械的振動のゲイン(すなわち出力振幅)を変えるブースタ21、およびブースタ21から溶接される部品へ機械的振動を伝えるホーン22を含む。
【0031】
図1Cに示されるように、トランスデューサ20は、トランスデューサ20を励起するための高周波電気信号を送出する高電圧同軸ケーブル24を取り付けるためのコネクタ23を含むことができる。この信号は、別個の超音波信号発生器(図示せず)によって供給することができる。代替の接続方法を用いて、トランスデューサをより簡単に取り外したり取り付けたりすることもできる。トランスデューサ20は、電気エネルギを機械的な動きに変換するランジュバン型圧電コンバータとして超音波振動を生成することができる。トランスデューサ20に加えられる電力は、20kHzの典型的な周波数で、50ワット未満から最高5000ワットまでの範囲とすることができる。同じコンセプトが、本発明の溶接プロセスで定常的に使用される他の周波数および電力レベルのトランスデューサに対しても有効であることに留意されたい。
【0032】
トランスデューサ20は、薄い金属板によって隔てられた、高圧で互いに締め付けられたいくつかの標準的な圧電セラミック素子で作ることができる。交流電圧がセラミック素子に加えられると、それに対応する電界が生成され、その結果、セラミック素子の厚さが変化する。この厚さの変化は、材料を通じて伝播してトランスデューサの金属塊の端部によって反射される圧力波を引き起こす。組立体の長さがその励起周波数に合うと、組立体が共振して定在波源になる。20kHzのトランスデューサからの出力振幅は、典型的には、約20μm(0.0008インチ)である。この振幅は、部品W1およびW2に有用に働くように、ブースタ21およびホーン22によって増幅する必要がある。ブースタおよびホーンは、音響導波路または変換器として機能して、超音波振動を被加工物に増幅して集中させる。
【0033】
ブースタ21の主要機能は、スタック10のゲイン(すなわち出力振幅)を変化させることである。ブースタは、そのゲインが1よりも大きい場合には増幅であり、1よりも小さい場合には減衰である。20kHzでのゲインは、典型的には、1/2未満から約3までの範囲にある。
【0034】
ホーン22は、自由に振動させなければならないので、通常は固定することができず、したがって、トランスデューサ20およびブースタ21だけが固定される。したがって、ブースタの二次機能(時には単独の目的)は、プレス機に固定したときに、スタックの増幅を変化させることなく、追加の取付け場所を提供することである。中立または連結ブースタは、トランスデューサとホーンとの間に加えられ、節点(定在波が最小の縦方向の振幅を有するところ)に配置された取付けリングによってプレス機に取り付けられる。
【0035】
ホーン22は3つの主要機能を有する。まず、ホーン22は、超音波の機械的振動エネルギ(トランスデューサ20で生じる)を熱可塑性の被加工物(W1およびW2)に直接物理的に接触して伝達し、溶融を生じさせる領域にエネルギを集中させる。2番目に、ホーン22は、熱可塑性の被加工物および溶接プロセス要件に対して望ましい先端振幅を与えるように振動の振幅を増幅する。3番目に、ホーン22は、接合面が溶融されたときに溶接部を押し付けるのに必要な圧力を加える。
【0036】
ホーンは、精密機械加工され、典型的には、15kHz、20kHz、30kHz、40kHz、50kHz、または70kHzで振動するように設計される。周波数が高くなればなるほど、音響波長は短くなり、その結果、ホーンは短くなる。ホーンの同調は、典型的には、電子的な周波数測定を用いて達成される。ホーンは、通常、高強度アルミニウム合金またはチタンから製造されるが、これらはどちらも優れた音響特性を有して、ほとんど減衰することなく超音波エネルギを伝達する。
【0037】
プロセス要件に応じて、多数の異なるホーンの形状およびスタイルが存在する。ホーンの設計に影響を与える要因は、溶接される材料および組立方法である。振幅が熱可塑性の被加工物をそれらの境界面で溶融させるのに十分となるように、ホーンは機械的振動を増幅しなければならず、ホーンのゲインはそのプロファイルによって決定される。ホーンの先端での振幅は、典型的には、20kHzで、ピークツーピークが30から125μm(1000分の1.2から5.0インチ)の範囲である。代替の変形例では、ホーンは、ブースタの形態を取り、安定化および溶接の機能を兼ね備えるように設計することができる。この変形例では、ブースタが取り除かれ、ホーンは、ブースタ取付けリング領域の位置でプレス機に固定される。
【0038】
周波数が高くなるにつれて、振動の振幅は小さくなる。大きな振幅を必要としない薄い材料および壊れやすい部品のシーミングには、より高い周波数が用いられる。ホーンは周波数が高くなると小さくなるので、間隔をより狭くすることもできる。
【0039】
プラスチック溶接は、超音波組立の最も一般的な用途である。超音波プラスチック溶接を実行するために、図1Cに示されるように、ホーンの先端を、上側の被加工物W1と接触させる。圧力がかけられ、超音波エネルギが上側の加工物を通り、それによって、2つの被加工物の接触点における運動エネルギ(または熱)が増大する。熱は、被加工物のうちの一方のプラスチックの成形隆起部を溶融させ、溶融された材料は2つの表面の間を流れる。振動が止まると、材料は凝固して永続的な接合部を形成する。
【0040】
本用途のために、例示的な超音波溶接を上で論じているが、本開示のシステムおよび方法のために任意の超音波溶接を用いることができる。溶接プロセスの物理的な構成要素および制御システムのさらなる議論は、例えば、クリンスタイン(Klinstein)らの米国特許第8,052,816(B1)号に見出すことができる。
【0041】
図2A図2Dは、溶接される部品の1つ以上に起こり得る例示的な物理的な違いの一部を示す。
【0042】
図2Aは、キャップ102および本体104からなる1組の溶接される部品の図形表示である。キャップはエネルギダイレクタ102aを含み、図2Bはその断面拡大図である。図2Cの断面拡大図に示すように、溶接の前に、これらの部品は互いに当てて配置される。接合プロセスの目標は、エネルギダイレクタが溶接段階で完全に消耗または溶融したとき、図2Dに示されるように、本体104の表面108にキャップ102の表面106が当接することである。実際には、エネルギダイレクタの幾何形状は、図3A図3Bに示されるように、部品ごとに変わり得る。ここで、図3Aは、公称高さXを有する完全に成形されたエネルギダイレクタを示し、図3Bは、より低い高さYを有する成形が不十分なエネルギダイレクタを示し、これは、成形プロセスの一貫性のないことの結果として起こり得る。
【0043】
溶接を終了させるための従来の技法のいずれも、あらゆる部品の組に対して表面106と表面108とが互いに接触するという溶接目標を、一貫性をもって達成することができない。例えば、溶接の開始から所定の距離を移動したという条件を用いて溶接を終了する場合、および、この距離が公称エネルギダイレクタの高さに設定される場合、エネルギダイレクタがより短い部品では、溶接の終了時に表面106と表面108との間に隙間ができる。溶接プロセスが、溶接の開始からある経過時間を待つという条件を用いる場合、表面106と表面108との間には同様に隙間ができる。溶接の開始から、超音波パワーが所定のレベルに達したとき、またはエネルギ出力が所定のレベルに達したとき、溶接を終了させることさえ、不正確であり得る。超音波パワーは、使用中の超音波溶接スタックの温度変化などの理由で、時間とともにドリフトすることがあり、それは、一貫性のある溶接結果をもたらさず、その場合、溶接された組立体の部品は、ある場合には完全に着座しており、他の場合には隙間を有している。
【0044】
別の例では、溶接を、所定のプレス位置に達するという条件を用いて終了させる場合、他のエネルギダイレクタよりも基部で表面106に沿って広いエネルギダイレクタは、表面106が表面108に直接当接するようには均等に溶接されない。
【0045】
図2A図3Bは、接合プロセスの溶接および保持段階を終了させるための伝統的な方法が不適切である先行技術の例示的な状況を示す。物理的な違いの一部が、図2A図3Bに関して上で説明されているが、他の違いは高さ、幅、体積、大きさ、および形状の違いを含み得る。溶接される部品はまた、異なる材料であり得る、または他の異なる幾何学的特性を有し得る。図2A図3Bは主にエネルギダイレクタの違いを論じているが、超音波溶接の当業者であれば知っているように、違いは、プラスチック部品の任意の高さ、穴の直径、被加工物の密度、穴の中の破片の量、および他の同様な違いに生じ得る。これらの違いは、例えば、成形プロセスの違い、または部品の発送または出荷中の損傷により生じ得る。溶接プロセスのさらなる違いは、当業者であれば知っているように、溶接される部品の任意の他の幾何学的特性または材料特性の違いであり得る。すべてのこれらの違いは、溶接段階および保持段階を終了させるための従来の条件が用いられるときに、一貫性のない溶接プロセスを生じさせ得る。
【0046】
本開示は、第1の被加工物の第1の表面が第2の被加工物の第2の表面に滑らかに当接するように、異なる物理的特性を有する部品を、一貫性をもって溶接することができる自動溶接プロセスを提供する。図4は、本開示の実施形態による、超音波溶接方法用の例示的な方法論400を提供する。
【0047】
方法論400は、超音波溶接スタックを第1の被加工物に対して押圧するステップ410で開始する。それによって、第1の被加工物は第2の被加工物と接触することができる。
【0048】
第1の被加工物と第2の被加工物との接触後、方法論400はステップ420に進んで溶接段階を開始させることができる。溶接段階は、超音波溶接スタックから第1の被加工物にエネルギを出力することによって開始させることができる。
【0049】
溶接段階の開始後、方法400は、ステップ430において、被検知パラメータを監視するステップを提供することができる。この監視するステップは、少なくとも1つのセンサによって行うことができる。この少なくとも1つのセンサは、溶接スタックに、またはその近くに、あるいは、被加工物の対の少なくとも一方に、またはその近くに配置することができる。この少なくとも1つセンサは、溶接力、溶接力の変化率、超音波パワー、超音波パワーの変化率、超音波エネルギ、超音波エネルギの変化率、速度、または速度の変化率のうちの少なくとも1つを含む様々なパラメータを測定するように構成することができる。
【0050】
ステップ430のいくつかの例では、監視するステップは時間遅延後に起こり得る。時間遅延は、条件が成立するのに十分な時間の長さであり得る。例えば、時間遅延の長さは、溶接段階の開始後、第1の被加工物が所定の距離を移動するための時間の長さであり得る。他の例では、時間遅延は、溶接の開始からの所定の経過時間であり得る。他の例では、時間遅延の長さは、超音波溶接スタックが設定されたプレス位置まで移動する時間の長さであり得る。他の例では、時間遅延の長さは、溶接段階の開始後に、溶接段階のエネルギ出力が所定のエネルギレベルに達する時間の長さを含む。
【0051】
被検知パラメータのいずれかを監視するステップは、時間遅延が終わるまで遅らせることができる。
【0052】
ステップ430において監視するステップを完了させた後、本方法は、ステップ440において、被検知パラメータが所定のレベルに達したかどうかを決定するステップを提供することができる。
【0053】
ステップ440のいくつかの例では、被検知パラメータが所定のレベルに達したかどうかを決定するステップは、時間遅延の終了時に被検知パラメータを決定するステップを含むことができる。これは、被検知パラメータの「第1の」値をもたらすことができる。所定のレベルは、被検知パラメータの「第1の」値に基づくことができる。
【0054】
被検知パラメータが所定のレベルに達したことを決定するステップの後、本方法は、ステップ450において、溶接段階を終了させるステップを提供することができる。
【0055】
方法400のいくつかの例では、本方法は、複数の被加工物に対して、押圧、印加、開始、監視、決定、および終了のステップを実施するステップをさらに含む。これら複数の被加工物のうちのそれぞれの被加工物は、複数の被加工物のうちの少なくとも1つの他の被加工物とは形状および大きさの物理的な違いを有し得る。所定のレベルは、複数の被加工物のうちのそれぞれの被加工物に対して同一のレベルであり得る。これは、超音波プレスが、被加工物の対と対との間で再校正される必要がないことを意味する。
【0056】
したがって、本開示の実施形態による例示的な方法論は、従来の方法より小さな許容誤差、より高い精度、およびより低い誤り率で部品を溶接することができる。
【0057】
方法400のさらなる実施形態は、溶接プロセスの保持段階を終了させるときを決定するステップを提供することができる。例えば、いくつかの用途では、完全な接合深さに達する前に溶接段階を終了させて、その代わりに、超音波エネルギを停止した後、ホーンが部品を一緒に押圧し続ける保持段階中に完全な深さを達成することが望ましい。これらの用途のいずれに対しても、(ステップ430~450に関する上記の)溶接段階を終了させるステップを参照して説明された本コンセプトは、保持段階を終了させるステップに同様に適用可能である。プレス力が制御されている溶接システムに対して、速度、または速度の変化率に基づいて保持を終了させるための条件は、プレス速度が制御されているシステムに対する力、または力の変化率に基づく条件と同様に用いることができる。
【0058】
いくつかの例では、保持段階は、力が所定のレベルに達したとき、力の変化率が所定のレベルに達したとき、速度が所定のレベルに達したとき、および/または速度の変化率が所定のレベルに達したときに終了することができる。
【0059】
いくつかの例では、保持段階は、被検知パラメータが所定の相対レベルに達したときに終了することができる。相対レベルは、溶接段階の終了時に検知される被検知パラメータのレベルを基準にすることができる。これらの例では、被検知パラメータは、力、力の変化率、速度、および/または速度の変化率であり得る。
【0060】
方法論400のステップの様々なさらなる実施形態は、下で、図5図11Bに関してさらに論じられる。
【0061】
図5は、時間の経過における溶接プロセス中の力の図示例を示す。図5は、時刻ttで始まり時刻tweで終わる典型的な溶接に対して、溶接される部品に印加された力を時間に対して示す。この例において溶接を終了させるための条件は、力が所定のレベルFweに達することである。溶接を終了させるためのこの方法は、図2A図3Bを参照して説明された部品の溶接において一貫性のある結果を達成するのに有利である。接合プロセスの目標が、表面106と表面108とが当接することである用途において、これらの表面が互いに接触すると比較的急激に力が増大する。表面106と表面108とが完全に互いに対して着座することを確実にする適切な力の所定のレベルを特定して、力がこのレベルに達したときに溶接を終了させることによって、エネルギダイレクタの幾何形状、特にその高さに違いがあっても、接合プロセスの目標は組立体ごとに一貫性をもって達成される。
【0062】
したがって、図5は、力が所定のレベル(例えばFwe)に達したときに基づいてどのように溶接段階が終了することができるかを示している。
【0063】
図6A図6Bは、力、および力の変化率のデータの例示的なグラフを示す。本開示のいくつかの例では、図6A図6Bに関して上で論じられたように、本開示は、力の変化率が所定のレベルに達したときに溶接段階を終了させるステップを提供することができる。図6Aは、時刻ttで始まり時刻tweで終わる典型的な溶接に対して、溶接される部品に印加された力を時間に対して示す。図6Bは、これに対応する力の変化率(図6Aの傾きである)を時間に対して示す。この例において、溶接を終了させるための条件は、力の変化率が所定のレベルF’weに達することである。
【0064】
このコンセプトが、一貫性のある溶接結果を得るのに有利となる1つの用途は超音波ステーキング(超音波かしめ)である。図7Aは、超音波ステーキングによって接合されるように設計された2つの部品の断面拡大図である。下側の部品704は柱704aを含み、上側の部品702は穴702aを含み、図7Bに示すように、柱は、ステーキングの前に穴に挿入される。ステーキング動作中、振動している超音波ホーンは、柱の頂部に対して押圧され、先端で柱を溶融するようにエネルギを与える。溶接動作の終了時に、柱は、図7Cに示されるように、完全に成形されて上側の部品をつかまえる。ステーキングプロセスの目標は、柱を完全に成形し、上側の部品をしっかりとつかまえ、成形された柱を取り囲む上側の部品の領域が、接合プロセスによって変形されないように保護することを含む、良好な美観の接合を提供することである。
【0065】
このタイプの用途では、図7Aに示されるように、上側の部品702の厚さ708、下側の部品704の柱の高さ710および直径706、ならびに両方の部品の材料特性を含む部品の違い(ばらつき)はしばしば生じる。その結果、部品が、プレス速度が制御されている電動プレスを用いて接合されるとき、図8A図8Bに示されるように、溶接サイクル中の力は部品の組ごとに変わることがある。
【0066】
図8Aは、最適な溶接接合になる2つの異なる溶接サイクルに対する力対時間を示し、この場合、サイクル1において接合される部品の組は、サイクル2の部品の組と比べて幾何形状が異なっている。図8Bは、結果として生じた力の変化率対時間を示す。溶接は時刻tで始まり、サイクル1に対してはt1weで終わり、サイクル2に対してはt2weで終わる。力の曲線は、両方のサイクルに対して同じ初期値Ftで始まり、次いで、部品の違いにより分かれて、溶接の完了時には異なるレベルで終わる。しかしながら、力の曲線の全体的な形状、特に溶接の後半は類似している。両方の溶接の終了近くで、成形された柱が上側の部品の頂部と接触すると、力は急激に上昇する。結果として生じる力の変化率の曲線は類似している。両方の溶接の終了近くで、これらの曲線は事実上同一であり、わずかな時間のずれがあるが、それによって、最適の点で両方の溶接を終了させるために同じ所定のレベルの力の変化率F’weを用いることができる。したがって、溶接を終了させるために所定の力の変化率に達するという条件を用いることによって、接合される部品に違いがあっても、超音波ステーキング動作の目標を、一貫性をもって達成することができる。
【0067】
図9図9Bは、力および距離対時間のデータの例示的なグラフを示す。本開示のいくつかの例では、図6A図6Bに関して上で論じられたように、本開示は、溶接プロセスを、ある遅延時間後に完了させるべきかどうか評価するステップを提供することができる。例えば、方法論400に関して上で論じたように、溶接プロセスは、溶接段階のある部分が完了するまで、被検知パラメータが所定のレベルに達したかどうかを評価することを遅らせることができる。図9Aは、溶接の開始から移動した距離が所定の距離D1に達したときに遅延時間を終えることができる場合の例を示す。図9Aは、時刻ttで始まりtweで終わる典型的な溶接に対して、溶接の開始から移動する距離を時間に対して示す。図9Bは、遅延時間を、設定された時間とすることができ、力が、t1後に所定のレベルFweに達するときに溶接プロセスが終了することができる場合の例を示す。図9Bは、図9Aに対応するデータを提供する。本開示のいくつかの例では、溶接プロセスは、溶接の開始から移動した距離がt1で所定値D1に達するまで待機することができ、次いで、力が所定のレベルFweに達すると溶接を終了させる。
【0068】
このコンセプトは、溶接を終了させるために望ましい基準が、所定のレベルに力が達することであるが、溶接の初期に、力が所定の力より高い場合の用途において、特にプレス速度が制御されている電動プレスでは非常に有用である。図9A図9Bを参照して言及される例では、溶接段階の早期の力は、溶接を終了させるための所定のレベルの力(Fwe)を超える。この用途で溶接を終了させるために用いられる基準が、力が所定のレベルFweに達することだけからなる場合、溶接は、早まって時刻tpで終了し、部品間の接合は不完全になる。しかしながら、力が所定値Fweに達したかどうかを評価するプロセスを、溶接がすでにある程度完了した後まで、この場合は、溶接の開始から移動する距離がD1に達するまで遅らせることによって、溶接は所望の時点で終了し、その結果完全な接合となる。
【0069】
本開示の例示的な実施形態が、図9A図9Bに対して、力に関して論じられているが、被検知パラメータは力の変化率でもあり得る。力を測定するときに溶接段階の監視するステップを遅らせることと同様に、本開示は、力の変化率が所定の相対レベルに達したときに溶接段階を終了させるステップを提供することができ、その場合、力の変化率が所定の相対レベルに達したかどうかを評価するプロセスは、溶接段階がある程度すでに完了するまで遅らされる。ここでは、相対レベルは、遅延時間の終了時に検知されるレベルのことを指す。いくつかの例では、遅延は、溶接の開始から移動した距離が所定の値に達したときに終えることができる。
【0070】
本開示の例示的な実施形態が、図9A図9Bに対して、力、および力の変化率に関して論じられているが、本開示はまた、被検知パラメータが超音波パワーの変化率、超音波エネルギの変化率、速度、または速度の変化率であり得ると考える。
【0071】
図10A図10Bは、被検知パラメータが所定のレベルに達したかどうかを評価するプロセスを遅らせる別の例を示す。図10Aは、時刻ttで始まりtweで終わる典型的な溶接に対して、溶接の開始から移動する距離を時間に対して示す。図10Bはそれに対応する力を時間に対して示す。溶接中、溶接の開始から移動した距離が時刻t1でD1の値に達し、その時点で力はF1である。この例の溶接を終了させる条件は、遅延時間の終了時に、つまり溶接の開始から移動する距離が所定の値D1に達したときにサンプリングされた力のレベル(F1)よりΔFweだけ高く力が増大することである。
【0072】
このコンセプトを用いることによって、接合される部品の幾何形状および材料特性の違いによって溶接プロセス中の力が部品の組ごとに変わる用途において、特にプレス速度が制御されている電動プレスにおいては、一貫性のある溶接結果を得ることができる。
【0073】
図11A図11Bは、溶接の開始から移動する距離対時間、および最適な溶接接合になる2つの異なる接合サイクルの溶接段階に対する力対時間のグラフを示す。力の曲線は、両方のサイクルに対して同じ初期値F1で始まり、次いで分かれて、溶接の完了時には異なるレベルで終わる。しかしながら、力の曲線の全体的な形状は、特に溶接の終了の近くでは類似している。それぞれのサイクルの力は、遅延時間の終了時(この場合は、(t1において)溶接の開始から移動する距離がD1に達するのと一致する)にサンプリングされる。サイクル1では、この時点の力はF1であり、サイクル2ではF2である。この点から溶接の最適な終了までの力の相対的な変化は両方のサイクルで本質的に同じであるという事実のため、力の相対的変化に基づいて溶接を終了させるために同じ条件を用いて両方の溶接を終了させることができる。この例における条件は、遅延時間の終了時にサンプリングされたレベルを基準にして、力の所定の相対レベルΔFweに達することである。したがって、サイクル1の溶接は、力がF1からΔFweだけ増大したときに終了し、サイクル2の溶接は、力がF2から同じ量のΔFweだけ増大したときに終了する。溶接中の力、特に溶接の終了時の力が異なっていても、両方のサイクルは最適な結果となった。
【0074】
力の絶対レベルではなく所定の相対レベルを用いる第2の有利な点は、力センサの不正確さの面に対して自動的に補償されるという点である。多くのタイプのセンサの場合と同様に、力センサは、その出力範囲にわたって測定値すべてで、ずれが出てくるなど、時間とともにドリフトし得る。例えば、初期校正後、10lbおよび30lbの荷重を正確に測定し、次に、同じ物理的荷重に対して、12lbおよび32lbを表示する力センサは、その測定値すべてに対してそれぞれ、2lbずれが生じたことになる。溶接を終了させるための基準に力の絶対レベルを用いるとき、このドリフトは問題になり得る。しかしながら力の相対レベルを用いると、測定レベルと基準レベルとの間の力の正味の変化は、ずれの有無にかかわらず同じである。上記の例では、30lbと10lbとの差は20lbであり、これは32lbと12lbとの差に等しい。したがって、溶接品質は、このタイプのドリフトによって悪影響を受けない。
【0075】
本コンセプトは、超音波溶接に限定されるものではなく、限定するわけではないが、摩擦溶接または拡散溶接などの他の溶接プロセスおよび溶接機器に有利に組み込まれてもよい。
<付記>
[11]
1対の被加工物のための超音波溶接方法であって、
超音波溶接スタックを前記対の被加工物のうちの第1の被加工物に対して押圧するステップであって、前記押圧に応じて、前記第1の被加工物が、前記対の被加工物のうちの第2の被加工物と接触する、ステップと、
前記超音波溶接スタックから前記第1の被加工物にエネルギを出力することによって溶接段階を開始させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて溶接力を監視するステップと、
前記溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップと、
前記溶接力が前記所定のレベルに達したとの決定に基づいて、前記溶接段階を終了させるステップと、
を含むことを特徴とする超音波溶接方法。
[12]
上記[11]項に記載の超音波溶接方法であって、前記監視するステップが時間遅延後に行われ、前記時間遅延が前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に行われることを特徴とする超音波溶接方法。
[13]
上記[12]項に記載の超音波溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記第1の被加工物が、前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に所定の距離移動する時間の長さを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
[14]
上記[13]項に記載の超音波溶接方法であって、前記溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力を決定して第1の溶接力をもたらすステップを含み、前記所定のレベルが前記第1の溶接力に基づくことを特徴とする超音波溶接方法。
[15]
上記[12]項に記載の超音波溶接方法であって、前記時間遅延の長さが、前記溶接段階を開始させる前記ステップ後に、前記溶接段階のエネルギ出力が所定のエネルギレベルに達する時間の長さを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
[16]
上記[15]項に記載の超音波溶接方法であって、前記溶接力が所定のレベルに達したかどうかを決定するステップが、前記時間遅延の終了時に溶接力を決定して第1の溶接力をもたらすステップを含み、前記所定のレベルが前記第1の溶接力に基づくことを特徴とする超音波溶接方法。
[17]
上記[14]項に記載の超音波溶接方法であって、前記方法が、複数の対の被加工物に対して、押圧、開始、監視、決定、および終了の前記各ステップを実施することをさらに含むことを特徴とする超音波溶接方法。
[18]
上記[17]項に記載の超音波溶接方法であって、前記複数の対の被加工物のそれぞれのうちの少なくとも1つの被加工物が、前記複数の対の被加工物のうちの少なくとも1つの他の被加工物と形状および大きさの物理的な違いを含むことを特徴とする超音波溶接方法。
[19]
上記[18]項に記載の超音波溶接方法であって、前記所定のレベルが、前記複数の対の被加工物のうちのそれぞれの対の被加工物に対して同一のレベルであることを特徴とする超音波溶接方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B