IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マルチフォー アーベーの特許一覧

<>
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図1
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図2
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図3
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図4
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図5
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図6
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図7
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図8
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図9
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図10
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図11
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図12
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図13
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図14
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図15
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図16
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図17
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図18
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図19
  • 特許-内視鏡下手術用装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】内視鏡下手術用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021533838
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083436
(87)【国際公開番号】W WO2020120219
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】1851591-6
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521251475
【氏名又は名称】マルチフォー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ブラキヤ,ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ウルベガード,ハネス
(72)【発明者】
【氏名】アクセルソン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】メリー ハンナ,マイデン
(72)【発明者】
【氏名】アルトゲルデ,ノーミ
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0303472(US,A1)
【文献】特開2007-029194(JP,A)
【文献】特表2008-528109(JP,A)
【文献】特表2002-505904(JP,A)
【文献】特開平06-269402(JP,A)
【文献】特開2009-107087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側チューブ端(14)および反対側の遠位側チューブ端(13)を有するチューブ(3)と、その間を延びる少なくとも1つの長手方向延在チャネル(9,10,15,16)と、
前記遠位側チューブ端(13)に設けられたエンドエフェクタ(21)と、
前記近位側チューブ端(14)に設けられた装置操作部(4)と、
を備える内視鏡下手術用装置(1)であって、同内視鏡下手術用装置(1)は、
前記チューブ(3)が、前記エンドエフェクタ(21)に液体を供給するための第1の長手方向延在チャネル(9)と、前記エンドエフェクタ(21)からまたは前記エンドエフェクタ(21)で組織標本を除去するための第2の長手方向延在チャネル(10)と、ジアテルミーを行うべく電流を流すために前記エンドエフェクタ(21)に接続された電線(76)を収容するための第3の長手方向延在チャネル(15)とを少なくとも有し、
前記内視鏡下手術用装置(1)が、少なくとも前記チューブ(3)の前記遠位側チューブ端(14)で前記チューブ(3)を包囲するとともに少なくとも前記チューブ()の前記遠位側チューブ端(13)で往復運動するように構成されたエフェクタスリーブ(17)をさらに備え、
前記装置操作部(4)は、摺動レール組立体(5)を含み、同摺動レール組立体(5)は、エンドエフェクタ摺動部(47)および接合摺動部(48)を摺動自在に収容する主摺動ガイド本体(46)を少なくとも備え、
前記主摺動ガイド本体(46)は、近位側ガイド端(52)および反対側の遠位側ガイド端(53)を有するとともに前記チューブ(3)を受け入れるガイドウェイ(54)を有しており、
前記エンドエフェクタ摺動部(47)は、前記遠位側ガイド端(53)において前記ガイドウェイ(54)内を往復摺動するように構成されるとともに前記エフェクタスリーブ(17)に接続されており、
前記接合摺動部(48)は、前記近位側ガイド端(52)と前記エンドエフェクタ摺動部(47)との間の前記ガイドウェイ(54)内を往復摺動するように構成されており、前記接合摺動部(48)は、前記チューブ(3)に接続され、少なくとも前記チューブ(3)の前記第1の長手方向延在チャネル(9)、前記第2の長手方向延在チャネル(10)、および前記第3の長手方向延在チャネル(15)は、前記エンドエフェクタ(21)と連通することを特徴とする内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項2】
前記摺動レール組立体(5)が、前記近位側ガイド端(52)において前記接合摺動部(48)の前で前記ガイドウェイ(54)内に往復動可能に配置された針摺動部(49)をさらに有し、同針摺動部(49)が、これに固定された針(22)すなわちノズルを有し、前記針(22)すなわちノズルは、前記チューブ(3)の第4の長手方向延在チャネル(16)内で、前記針すなわちノズルが格納位置にある第1の針位置と、前記針すなわちノズルが前記エンドエフェクタ(21)から露出している第2の針位置との間で、往復動可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項3】
前記接合摺動部(48)が、
前記第1の長手方向延在チャネル(9)と流体連通し、前記エンドエフェクタ(21)押し流し液を供給するか、前記エンドエフェクタ(21)に対して押し流し液を供給するかのうちの少なくともいずれかのための入口ポート(94)と、
前記第3の長手方向延在チャネル(15)と連通するジアテルミーポート(5)と、
組織標本収集装置(8)と結合するため、および生検部位から組織標本を除去するため、および前記エンドエフェクタ(21)内に閉じ込められた、または前記エンドエフェクタ(21)によって保持された組織標本を前記内視鏡下手術用装置(1)の外に移送するためのうちの少なくともいずれかのための、前記第2の長手方向延在チャネル(10)と連通する標本ポート(72)と、
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1または2に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項4】
前記針(22)すなわちノズルが、前記近位側チューブ端(14)から前記接合摺動部(48)を通って延び、前記針摺動部(49)に接続されることを特徴とする請求項2または3に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項5】
前記針摺動部(49)が、前記針(22)すなわちノズルに液体を注入するための注入(101)を有することを特徴とする請求項2、3または4のうちのいずれか一項に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項6】
前記摺動レール組立体(5)が、前記エンドエフェクタ摺動部(47)と前記接合摺動部(48)との間に挿入された第1のばね部材(55)、および前記接合摺動部(48)と前記針摺動部(49)との間に挿入された第2のばね部材(56)をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項7】
前記装置操作部(4)は、前記摺動レール組立体(5)を操作するための遠隔駆動組立体(6)を備え、同遠隔駆動組立体(6)は、摺動部(47,48,49)を操作するために割り当てられたボタン(125,126,129)を備えた遠隔操作ハンドル(120)を有し、対応する操作ストリング(116,117,118)を介して前記摺動部(47,48,49)に動作可能に接続されていることを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項8】
前記遠隔駆動組立体(6)は、滑車組立体(78)を備え、同滑車組立体(78)は、前記遠隔操作ハンドル(120)の各ボタン(125,126,129)を操作して前記操作ストリング(116,117,118)を張引することに応答して、前記接合摺動部(48)と一体的に移動するように、前記接合摺動部(48)に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項9】
前記遠隔駆動組立体(6)が、
前記エンドエフェクタ摺動部(47)に固定された第1の近位側ストリング端(116a)、および前記遠隔操作ハンドル(120)のトリガボタン(126)に固定された反対側の第1の遠位側ストリング端(116b)を有する第1の操作ストリング(116)と、
前記主摺動ガイド本体(46)の管状ガイドハウジング(50)の遠位側ガイド端(53)に固定された第2の遠位側ストリング端(117b)を有する第2の操作ストリング(117)であって、同第2の操作ストリング(117)は、前記遠隔操作ハンドル(120)のホイールボタン(125)を介して前記滑車組立体(78)の第1のトラック(114)の周囲を延び、前記ホイールボタン(125)から前記滑車組立体(78)の第2のトラック(115)を介して前記主摺動ガイド本体(46)の前記管状ガイドハウジング(50)の前記近位端(52)に戻り、前記管状ガイドハウジング(50)の近位側ガイド端(53)に固定された第2の近位側ストリング端(117a)を有する、第2の操作ストリング(117)と、
針摺動部(49)に固定された第3の近位側ストリング端(118a)、並びに前記針摺動部(49)および前記針(22)を移動させるために、前記遠隔操作ハンドル(120)の摺動ボタン(129)に固定された反対側の第3の遠位側ストリング端(118b)を有する第3の操作ストリング(118)と、
を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項10】
前記装置操作部(4)が、内視鏡(2)の内視鏡流体バルブポートおよび内視鏡吸引バルブポートに取り付けられるように構成された第1の操作端部(18)と、前記摺動レール組立体(5)および前記内視鏡(2)の処置具ポートと流体連通するように設定されるように構成された反対側の第2の操作端部(27)とを有する押し流し要素(7)をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項11】
前記内視鏡下手術用装置(1)は、第1のアダプタ端部(34)および反対側の第2のアダプタ端部(36)を有する管状のアダプタ本体(33)を有するアダプタ(28)を含み、前記第1のアダプタ端部(34)は、第1のアダプタ端(35)を有し、かつ前記処置具ポートのエンドキャップを交換する寸法となっており、前記第2のアダプタ端部(36)は、前記摺動レール組立体(5)と結合するように構成された第2のアダプタ端(37)を有ることを特徴とする請求項10に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項12】
前記第2のアダプタ端(37)は、前記押し流し要素(7)と結合するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項13】
前記第1のアダプタ端部(34)および前記第2のアダプタ端部(36)は、互いに角度をなしていることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項14】
前記アダプタ(28)は、前記処置具ポートの中心軸線を中心に少なくとも45°前記処置具ポート内で回転可能に配置されているか、または、前記摺動レール組立体(5)は、前記アダプタ(28)に対して前記内視鏡の前記処置具ポートの中心軸線を中心に回転可能に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項15】
前記アダプタ(28)が、1本以上のチューブ(23,25,31,32,45)を、ポンプ手段、液体タンク、排水タンク、前記接合摺動部(48)の前記入口ポート(94)、前記接合摺動部(48)の前記標本ポート(72)、収集装置ポート(71a)のうちの1つ以上に取り付けるための結合片(43,44)、または前記標本ポート(72)に固定された組織標本収集装置(8)、若しくは前記標本ポート(72)に固定された前記組織標本収集装置(8)からの液体出口(68)に取り付けるための結合片(71)を取り付けるように構成されていることを特徴とする請求項11乃至14のうちのいずれか一項に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項16】
前記組織標本収集装置(8)が、切除された組織標本を前記標本ポート(72)の出口で直接収集するためのマルチチャンバ収集装置であり、切除された順に前記組織標本を収容することを特徴とする請求項15に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項17】
前記エンドエフェクタ(21)が少なくとも部分的に前記エフェクタスリーブ(17)の外側にあるときに、弛緩した状態で前記エンドエフェクタ(21)の長手方向軸線から分岐するように配置された対向する顎部(19,20)を有することを特徴とする請求項1乃至16のうちのいずれか一項に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【請求項18】
前記エンドエフェクタ(21)が平坦な鼻部を有することを特徴とする請求項17に記載の内視鏡下手術用装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下手術用装置に関するものである。同内視鏡下手術用装置は、
近位側チューブ端および反対側の遠位側チューブ端を有するチューブと、その間に延在する少なくとも1つの長手方向延在チャネルと、
遠位側チューブ端に設けられたエンドエフェクタと、近位側チューブ端に設けられた装置操作部と、
を備える。
【背景技術】
【0002】
膀胱癌は、スウェーデンでも国際的にも、最も高額な癌の形態の1つである。米国では、新たに診断された人1人当たりの推定費用は約14万ドルである。スウェーデンでは毎年、新たに約2,400人が膀胱癌と診断されている。この20年間で患者数は合計35%増加しており、泌尿器系の癌は男性が女性の3倍の頻度で発症している。膀胱および尿路系の癌は、スウェーデンでは男性の癌の中で3番目に多い癌の形態である。
【0003】
約70%の患者は、粘膜に限局した表在性の膀胱癌の形態をしている。つまり、これらの患者は治る可能性があるのであるが、残念ながら再発および残存腫瘍のリスクがある。約3分の2の患者が新しい手術を必要としている。1人の同じ患者が数回の手術を受けることは珍しくなく、場合によっては最初の手術から数ヶ月後に手術を受けることもある。癌が大きくならないように再発を早期に発見するために、何度も定期的に泌尿器科を受診することになる。
【0004】
膀胱鏡検査は、膀胱癌の診断のための主要な診断手段である。通常の膀胱鏡は、膀胱内を観察するための光学ポート、および様々な装置を挿入するための処置具ポートの2つのポートを有する。本発明による内視鏡下手術用装置は、内視鏡の処置具ポートを介して挿入される種類のものであり、効果的には内視鏡下手術用生検装置であってもよい。
【0005】
膀胱鏡検査で癌や疑わしい部位が見つかった場合、通常は手術室での手術が計画され、泌尿器科病棟で1泊する。スウェーデンでは、この手術には約2週間の待ち時間が必要で、通常、患者は脊椎麻酔または全身麻酔を受けた後、外科で手術を受けることができる。生検処置の際には、硬い金属製の処置具で組織標本を採取し、また、経尿道的切除術も硬い金属製の処置具で行われる。一部の病院では、外来で可撓性を備えた膀胱鏡を用いて生検を行うことができるが、可撓性生検処置具では組織標本の質が十分ではないため、より良い組織標本を採取し、がんを切除可能とするためには、直径の大きな硬い処置具を使用する必要がある。
【0006】
膀胱鏡検査では、膀胱に癌の疑いがある場合、泌尿器科医は一般的にパンチ生検鉗子を用いて膀胱内の様々な部位から複数の膀胱組織標本を採取し、診断確定を支援し、潜在的な腫瘍の範囲を決定する。一般的に組織標本は、異常な外観を持つ尿路上皮のあらゆる部位、および腫瘍が疑われる部位から採取されるが、一般的には三半規管、膀胱穹窿部、左右前後の膀胱壁から採取される。処置の際、膀胱は流体で洗浄される。可撓性を備えた膀胱鏡を用いた経尿道的膀胱生検では、組織を採取する前に、標本部位に局所麻酔をかけるか、膀胱内に麻酔薬を注入して局所麻酔を行う。組織採取後、生検部位を焼灼して止血し、その手順を繰り返す。従来の膀胱鏡には、手術に必要な様々な装置を収納するための作業用チャネルが1つしかなかったため、膀胱から組織標本を採取するたびに、様々な装置を作業用チャネルに出し入れしていた。これまでは、1つの処置具のみで、麻酔をかけ、1つまたは複数の生検を行い、止血し、膀胱の小型の癌を破壊することはできなかった。また、顕微鏡で見なければならない膀胱壁の重要な層が含まれていないことにより、サイズが小さいため、生検の質が十分ではない。現在の生検は、顎部が組織に引っかかった際に処置具を引き抜いて採取するため、組織標本の縁部が破壊され、組織標本の質が低下し、正確な癌の診断に使うことができない。
【0007】
非特許文献1では、可撓性を備える内視鏡生検鉗子の新しいシステムについて説明しており、このシステムは、既存の単一の生検鉗子よりも大きく、かつ外傷の少ない生検を行うことができる。この装置は、片方の端にバーブ付き鉄線を備える中央ワイヤに、摺動式のばね付きの鋼製の顎部が取り付けられている。外側のプラスチック製スリーブが中央ワイヤを包囲し、従来型のハンドルで顎部を作動させる。この周知の装置を光ファイバ内視鏡の作業用チャンネルに通して、生検対象の組織を可視化する。鉗子の開閉は、外側のスリーブが内側のワイヤ上を摺動することで、ばね付きのスチール製顎部が開閉可能である。顎部を開いた状態でバーブを組織に押し込み、生検を行う。釣り針のようなバーブが組織を顎部内に引き寄せ、顎部が組織を斜めに噛み砕くことで、よりきれいで大きな組織標本を得ることができる。2回目の生検では、顎部を単純に再び開き、バーブ付きの鉄線が再び組織に突き刺さると、最初の標本が中央ワイヤに沿って押し出される。上述したように内視鏡に生検鉗子を1回通すだけで、最大6個の生検を保存することができる。光ファイバ内視鏡から装置を格納すると、すべての組織標本が装置と一緒に格納される。しかしながら、釣り針様バーブが組織標本を傷つけてしまうため、別の鉗子で釣り針様バーブを引き剥がしたり、バーブの先端をコルクに押し込んで標本を切り取ったりする必要がある。どちらの方法でも、各組織標本は小型化されるため、標本の完全性に影響を与え、臓器の生検部位に対する表面の正確な由来および配向が疑われる。そのため、組織標本をバーブから外して操作する必要があり、標本の由来および配向を制御するのが困難なことがある。さらに、バーブタイプの生検装置は、患者にも組織標本にも相当侵襲性が有り、局所麻酔の手段もなく、採取部位の局所出血を止める手段もなく、同時に6個の組織標本をバーブに沿って格納するため、前方端は相当大型である必要がある。
【0008】
非特許文献2には、生検鉗子および標準的な電気メスに適応するアクティブな電気コードを必要とする生検を得るためのモノポーラ技術が記載されている。患者の大腿部上に接地パッドを置く。生検を行うために、鉗子を膀胱鏡の作業用チャンネルに通す。直視下で鉗子の歯のついた顎部で対象部位を挟み、引き剥がしながら凝固電流を流して周囲の尿路上皮を白化させる。膀胱鏡および組織標本は一体となって取り出され、生検部位および出血の検査、さらなる組織標本の採取のためには、膀胱鏡を再び挿入する必要がある。
【0009】
このように、様々な種類のエフェクタツールを使用して組織標本を切除することが周知であり、最も一般的なのは鉗子である。膀胱鏡検査では、合併症のリスクを低減し、病理医にとってより良い組織標本を生成するために、単極電気焼灼システムが導入されているが、これまでの単極電気焼灼システムでは、組織標本に熱を加えすぎて、癌細胞を破壊してしまい、組織標本を癌診断には使えないものとする傾向にあった。
【0010】
本出願人は、内視鏡に内視鏡用の処置具を挿入して操作する際には、主操作者以外の複数の人の補助が必要であること、また、組織標本の採取およびその後の取り扱いは、患者ごと、外科医ごと、施設ごとに大きく異なることを認識した。
【0011】
2017年12月22日に出願された本出願人の特許文献1は、穏やかな生検処置で、例えば外来処置として診察室で代わりに、しばしば全身麻酔なしで組織標本を採取することができる改良された内視鏡下手術用装置に関するものである。
【0012】
切除した組織標本は直径約1.5mm、長さ20mm程度のものが多いが、切除した標本は直径1cmからそれ以上のものまである。本発明による内視鏡用処置具の閉じたエンドエフェクタおよび長手方向延在チャネルの寸法、並びに特許文献1に記載された装置の寸法により、内視鏡処置具によって得られる組織標本のサイズおよび長さの限界が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】スウェーデン国特許出願第1751639-4号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Thomas V. Taylorによる論文 “A system of multiple biopsy forceps”, Curr. Surg. 2004 Nov-Dec; 61(6): pages 594-596
【文献】Urology誌に掲載されたMarc Beaghler氏とMichael Grasso氏の論文”Flexible cystoscopic bladder biopsies: a technique for outpatient evaluation of lower urinary tract urothelium” 1994 Nov; 44(5):756-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
組織標本の採取、一時的な収容、その後の準備の仕方は、病理学的にも組織学的な結果にも劇的な影響を与える。組織標本の厚み、組織標本の配向、固定までの時間、および固定プロセス自体などの評価および標準化の失敗は、分析者が組織標本で可能な限りの組織形態学的診断を行うためのすべてのパラメータに関係している。
【0016】
疑わしい臓器が膀胱の場合、生検の手順では、腫瘤および/または組織に対して合計7回の生検を行うことが推奨されている。組織標本は、生検処置の前に適切にラベル付けされた個別のバイアルに次々と移される。ラベルに記載されている情報には、患者の識別情報、並びに任意で関連する組織標本の由来および正確な生検部位、またはバイアルと組織標本の特定の由来を結びつけるその他の識別情報が含まれる。
【0017】
可撓性を備える内視鏡などの内視鏡のアクセスチャネルを介して、体腔などの中空臓器や他の組織表面から組織標本を取得する際に、操作者が単独で、あるいは最小限の追加支援で作業できる、改良された内視鏡装置が当技術分野で必要とされていることがわかっている。可撓性を備えた内視鏡が膀胱鏡で、臓器が膀胱の場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のさらなる主たる態様では、冒頭で述べた種類の内視鏡下手術用装置が提供され、この装置は、装置が内視鏡の作業チャネルに挿入されたままの状態で起動できる複数の機能を有しており、これにより、必要な数の生検を非破壊的かつ安全な方法で完了するために、装置を作業チャネルから何度も出し入れする必要がないようになっている。
【0019】
本発明のさらなる一態様では、冒頭で述べた種類の内視鏡下手術用装置が提供され、この装置は、体腔内に挿入された内視鏡を介して複数の生検を行うために操作することができ、組織標本が採取されるたびに内視鏡を体腔内に再挿入する必要がない。
【0020】
本発明のさらなる別の態様では、冒頭で述べたような種類の内視鏡下手術用装置であって、単純で、安価に製造でき、かつ使い捨て可能な内視鏡下生検鉗子の形態のものが提供される。
【0021】
本発明のさらなる一態様では、操作機能が改善された、冒頭で述べた種類の内視鏡下手術用装置が提供される。
【0022】
本発明のさらなる一態様では、同じ目的のための従来の装置に比べてより少ない人数で操作することができる、冒頭で述べた種類の内視鏡下手術用装置が提供される。
【0023】
本発明のさらなる一態様では、冒頭で述べた種類の内視鏡下手術用装置のための生検標本収集装置および標本収集システムが提供される。
【0024】
本発明のさらなる別の態様では、複数の組織標本を採取するための、特に膀胱から組織標本を採取するための多機能内視鏡下手術用装置が提供される。
【0025】
本発明によれば、これらの態様および他の態様が達成される新規かつユニークな方法では、内視鏡下手術用装置は、
エンドエフェクタに液体を供給するための第1の長手方向延在チャネルと、エンドエフェクタからまたはエンドエフェクタで物質を除去するための第2の長手方向延在チャネルと、エンドエフェクタに接続されてジアテルミーを行うための電流を流す電線を収容するための第3の長手方向延在チャネルとを少なくとも有するチューブと、
少なくともチューブの遠位側チューブ端でチューブを包囲するとともに少なくともチューブの遠位側チューブ端で往復運動するように構成されたエフェクタスリーブと、を備え、
装置操作部は、少なくともエンドエフェクタ摺動部および接合摺動部を収容する主摺動ガイド本体を備えた摺動レール組立体で構成されている。
【0026】
主摺動ガイド体は、近位側ガイド端および反対側の遠位側ガイド端を有するとともにチューブを受け入れるガイドウェイを有しており、
エンドエフェクタ摺動部は、遠位側ガイド端でガイドウェイ内を往復摺動するように構成され、エンドエフェクタに対してエフェクタスリーブを操作し、
接合摺動部は、近位側ガイド端とエンドエフェクタ摺動部との間のガイドウェイ内を往復摺動するように構成され、この接合摺動部は、少なくともチューブの第1の長手方向延在チャネル、第2の長手方向延在チャネル、および第3の長手方向延在チャネルがエンドエフェクタと連通するようにチューブに接続されている。
【0027】
本発明の文脈で「ジアテルミー」という用語を使用することは、内視鏡下手術用装置のエンドエフェクタ、例えば顎部が、高周波電磁電流によって臓器組織に熱を発生させるように構成されていることを意味する。高周波電磁電流が組織を通過し、メスの刃のように正確に手術の切開を行い、これによって、手術用ジアテルミーにより、微細かつ正確な切開および組織標本が得られる。
【0028】
エンドエフェクタ摺動部は、ガイドウェイ内を摺動して、チューブの外側にあるコイル部材などのチューブの周囲にある往復可能な接続手段、またはチューブの内側にある往復可能な接続手段、例えば、長手方向延在チャネルの1つの内側にあるエフェクタワイヤを介してエフェクタスリーブに接続されることによって、エンドエフェクタに対してエフェクタスリーブを操作するように構成される。
【0029】
チューブは、その遠位側チューブ端にエフェクタスリーブを有し、このエフェクタスリーブは、エンドエフェクタの対向する顎部を開閉するなど、エンドエフェクタの構成を変更するために、チューブの長手部分に沿って往復するように構成されている。エフェクタスリーブは、エンドエフェクタから接合摺動部までの全長を電気的に絶縁されたスリーブの形態で一体的に設けられ得る。また、エフェクタスリーブは、電気絶縁チューブで囲まれたコイル部材などの別の管状部材を介してエンドエフェクタ摺動部と動作可能に接続されたり、エフェクタスリーブとエンドエフェクタワイヤとの間を長手方向延在チャネル内で延びるエフェクタワイヤを介してエンドエフェクタ摺動部と動作可能に接続されたりすることもできる。
【0030】
エフェクタスリーブがどのように構成され、エンドエフェクタ摺動部に接続されているかにかかわらず、エンドエフェクタ摺動部を摺動させてエフェクタスリーブをチューブに沿って移動させることで、長手方向に変位させることができる。このようにして、エンドエフェクタを、エンドエフェクタがエフェクタスリーブから少なくとも部分的に露出している標本採取位置と、エンドエフェクタがエフェクタスリーブ内に少なくとも部分的に位置している閉じ込め位置とに交互に配置することができる。
【0031】
接合摺動部は、エフェクタスリーブで包囲されたエンドエフェクタで、チューブを内視鏡の遠位側開口部から移動させ、これにより組織標本の摘除を準備するようにエンドエフェクタを特定の目的の部位の望ましい位置に移動させる役割を果たす。エンドエフェクタ摺動部を近位側ガイド端に向けて引くと、エフェクタスリーブが後退してエンドエフェクタが露出し、エンドエフェクタの顎部が開く。エンドエフェクタ摺動部を再び遠位側ガイド端に向けて前進させると、エフェクタスリーブが前進し、顎部が組織標本の周囲に閉じられる。
【0032】
したがって、エンドエフェクタが、対向する顎部を有する鉗子型である場合、エンドエフェクタ摺動部を操作することにより、例えば、エンドエフェクタとエンドエフェクタ摺動部との間に延びるエフェクタワイヤを用いて、あるいは、チューブの周囲に補強コイルなどの補強部材を用いて、エフェクタスリーブを張引したり押圧したりすることにより、対向する顎部を離すことができる。これらの補強部材のいずれも、エンドエフェクタとエンドエフェクタ摺動部とにそれぞれ反対側の両端部で固定することができる。
【0033】
エンドエフェクタがエフェクタスリーブから外れた位置では、ジアテルミーを適用して顎部が組織標本を把持し、切断することができる。顎部を再び閉じる際には、エンドエフェクタ摺動部を操作して、エンドエフェクタをエフェクタスリーブ内に戻す。組織標本は閉じた顎部の間に閉じ込められる。
【0034】
エフェクタスリーブを往復させることに代えて、エンドエフェクタをエフェクタスリーブ内外に往復させることも可能である。
【0035】
エンドエフェクタがエフェクタスリーブ内に完全に、または実質的に完全に入っているとき、鉗子の形態のエンドエフェクタの顎部は閉じて、閉じた生検カップを形成する。エフェクタスリーブは、エンドエフェクタの閉じた顎部の周囲の隙間を効果的にシールする。
【0036】
エフェクタスリーブは、例えば、鋼製のスリーブであったり、弾性を備えるものであってもよい。内視鏡下手術用装置は、エフェクタスリーブの内面とチューブの外面との間がしっかりと適合し、液体が面の間の隙間に沿って摺動レール組立体に向かってチューブの外部に流れるのを防ぐことが好ましい場合がある。これに代えて、ガスケットをチューブの前記表面に対するシールとして使用することもできる。このような適合やシールは、エフェクタスリーブがチューブに沿って往復することを可能にする種類のものである。通常、エンドエフェクタと接合摺動部とを動作可能な状態で結合するために使用されるエンドエフェクタおよび/またはさらなる管状部材は、摺動接触している。
【0037】
効果的に、エフェクタスリーブとエンドエフェクタ摺動部とを接続するコイル部材などの管状部材は、管の補強部材として機能し、内視鏡の作業チャネルに沿ってコイルやキンクなしに案内されるように、必要な剛性および構造を内視鏡下手術用装置に与えることができる。エフェクタスリーブは、例えば、屈曲可能なチューブや管状部材の曲げ特性を奪わない材料から形成可能であり、断熱特性などを有する管状部材であり得る。エンドエフェクタから接合摺動部まで延びる長手のエフェクタスリーブを有する実施形態では、補強部材がエフェクタスリーブとして機能してもよい。また、補強部材は、エフェクタスリーブに接続され、エフェクタスリーブと一体的にチューブに沿って移動してもよい。
【0038】
さらなる別の実施形態では、エフェクタスリーブをワイヤで接合摺動部に接続し、これにより、接合摺動部がガイドウェイに沿って移動する際に、エフェクタスリーブを変位させることができる。
【0039】
補強部材、あるいはコイル状の部材や螺旋状の部材などの他のチューブを、このようにチューブの周囲に使用して、チューブに内視鏡の作業チャネルに出し入れするのに十分な剛性を持たせつつ、屈曲したり操舵したりすることができる。例えば、補強用の螺旋状の部材やコイル状の部材を使用してチューブを支持する場合は、この部材を外部の熱収縮チューブやシースで効果的に包囲してもよい。熱収縮チューブは、効果的に、その長手部分に沿って内視鏡下手術用装置をシールして絶縁し、例えば、洗浄液が漏れないようにするだけでなく、摩擦が少ないために内視鏡下手術用装置を作業チャネルに通しやすくし、また、チューブが作業チャネルと電気的に接触しないようにする。
【0040】
補強部材の遠位端をエフェクタスリーブの近位端に接合して、補強部材をエフェクタスリーブに結合し、補強部材がチューブに沿ってエフェクタスリーブを移動できるようにして、エンドエフェクタ摺動部を操作してエンドエフェクタをエフェクタスリーブから出し入れすることができるようにしてもよい。外側の熱収縮チューブまたはシースは、エフェクタスリーブおよび補強部材を端から端まで組み合わせるために使用することができる。
【0041】
接合摺動部は、チューブ内の第1、第2、第3の長手方向延在チャネルと連通している。
【0042】
組織標本を摘除するとともに採取する目的部位を洗浄するための液体は、接合摺動部の流れチャネルを介して第1の長手方向延在チャネルに供給するのが便利である。そして、第3の長手方向延在チャネル内の電線を介して、ジアテルミー生成装置からエンドエフェクタに電流を流すことにより、組織にジアテルミーを適用する。電線は、チューブの第3の長手方向延在チャネル内を延び、摺動レール組立体の接合摺動部で終わる。
【0043】
これに代えて、電線を誘導する第3の長手方向延在チャネルの機能を、チューブの他の長手方向延在チャネルのうちの1つで実現することもでき、この他の長手方向延在チャネルは2つの機能を有し、その場合、電線は他の長手方向延在チャネル内の流体と接触しないように遮断されている。
【0044】
エフェクタスリーブまたはエンドエフェクタを操作するためにエフェクタワイヤを利用する実施形態では、このようなエフェクタワイヤは、第1または第2の長手方向延在チャネルに配置されてもよい。
【0045】
エンドエフェクタは、エンドエフェクタの長手方向の軸線から分岐するように配置された、枢動可能な対向する顎部を有していてもよく、その条件として、エンドエフェクタがエフェクタスリーブの外に少なくとも部分的に出ている状態で、顎部は大きな組織標本にかかることができるようになっている。エンドエフェクタがエフェクタスリーブ内に格納されたとき、またはエフェクタスリーブが前方に移動してエンドエフェクタを包囲したときに顎部が閉じ、それによって顎部が閉じた生検カップを形成する。ジアテルミーの適用後、穏やかに切除された組織標本は、生検カップ内の顎部の間に閉じ込められ、チューブの第1の長手方向延在チャネルおよび第2の長手方向延在チャネルは、チューブの遠位端で液体連通となり、これにより、第1の長手方向延在チャネルが洗浄されると、または、第2の長手方向延在チャネルが吸引されると、組織標本は第2の長手方向延在チャネルに押し込まれ、組織標本を収集可能な接合摺動部に送られる。
【0046】
一実施形態によるエンドエフェクタの2つの対向する分岐した顎部は、大きな組織標本を得ることができるように、例えば約5mm開くことができ、ジアテルミーを使用することにより、本発明による内視鏡下手術用生検装置を使用して採取されたこれらの組織標本は、きれいな切断縁部を有する。縁部の焼き付きおよび焦げ付きが低減され、さらには解消される。
【0047】
ジアテルミーを使ってきれいでやや大きな組織を切除することが容易になるのみならず、もう1つの大きな効果は、切除された組織標本の配向が周知の装置を使用した周知の生検手順よりも高いレベルの制御下に保持されることにある。ジアテルミーを適用して切除した組織標本を、対象組織から採取したときと略同じ配向で、エンドエフェクタの顎部の間に閉じ込めておくことができる。組織標本は、閉じた生検カップの中を実質的に満たしており、位置がずれないようになっている。接合摺動部から第1の長手方向延在チャネルに洗浄液を圧力をかけて注入したり、第2の長手方向延在チャネルに吸引をかけると、組織標本はその配向を保持したまま第2の長手方向延在チャネルに押し込まれる。そのため、組織標本がチューブの近位端に到達した時点で、その配向がなおわかるようになされている。組織標本は、続いて周知の配向で接合摺動部から収集することができ、それにより、組織標本の部位固有の起源および配向に関する知識を有することで、組織標本の細胞構造に関する貴重な診断情報が得られる。この配向制御能力の向上により、高度の特異性および信頼性の高い診断が可能となり、また、対象組織の臨床的および解剖的な正常および異常の特徴に関連する結果の関連性を容易に評価することができる。
【0048】
第2の長手方向延在チャネルは、単純な洗浄、好ましくは圧力下、または吸引によって、組織標本を穏やかに排出および移送することができ、組織標本が振り回されて配向を失うことがないような直径を有するように選択される。生検カップの相関した寸法および第2の長手方向延在チャネルの直径を慎重に決めることで、組織標本の可能な動きを非常に高いレベルで制限することができる。
【0049】
接合摺動部は、ガイドウェイに対して摺動可能に配置されており、遠位側チューブ端にあるエンドエフェクタを作業チャネルから移動させて、目的の組織に遭遇させる。
【0050】
ジアテルミーを使用した市販の周知の鉗子装置では、熱で組織標本が破壊され、対向する顎部の対向する刃先の間に組織標本が挟まってしまうため、手動で組織標本を鉗子から取り出す必要がある。本発明による内視鏡下手術用装置にジアテルミーを使用する場合、組織標本は器官および顎部から容易に離脱するため、また、任意に洗浄流体によって開始される顎部の即時冷却により、組織標本は重大な損傷を受けず、また、顎部は効果的に外部から遮断されることができる。
【0051】
エフェクタワイヤを利用するいくつかの実施形態では、エフェクタワイヤは、エンドエフェクタに電流を供給するために使用される電線であってもよく、この場合、第3の長手方向延在チャネル内に延びる電線は、任意に、接合摺動部ではなくエンドエフェクタ摺動部に関連付けられていてもよい。さらなる別の方法として、エフェクタワイヤをマルチチャネルチューブの個別の長手方向延在チャネルに設けてもよい。
【0052】
摺動レール組立体は、効果的に、近位側ガイド端の接合摺動部の前でガイドウェイ内に往復動可能に配置された針摺動部をさらに備えていてもよく、この針摺動部は、それに固定された針またはノズルを有していてもよく、この針またはノズルは、針またはノズルが格納位置にある第1の針位置と、針またはノズルがエンドエフェクタから露出する第2の針位置との間で、チューブの第4の長手方向延在チャネル内に往復動可能に配置されていてもよく、例えば、エンドエフェクタの開いた顎部の間に配置されていてもよい。
【0053】
生検処理では、針やノズルは、例えば切除により組織標本が採取される1つ以上の標的部位や局所領域に、局所麻酔薬やその他の薬剤、溶液などを適用する役割を果たす。切除されるべき組織領域に液体を注入すると、当該組織領域が拡大され、それによって、内視鏡の光ファイバの両者に組織が表示され、本発明による内視鏡下手術用装置の操作者がエンドエフェクタを使用するとともに操作する際に、関連する組織をアクセスしやすい標的として提供することができる。このように組織を拡張してから採取する技術は、1つの組織標本につき、内視鏡の作業用チャネルの処置具を少なくとも2回は追加で挿入および収納する必要があるため、あまり普及していない。
【0054】
本発明の一実施形態によるエンドエフェクタの顎部は、閉じた構成において、針の針先端またはノズルのノズル先端を完全に包囲してもよい。そのため、生検カップを閉じたときに、ノズルや針の一部が当該生検カップの外に出ないようになっている。
【0055】
本発明の別の実施形態によるエンドエフェクタでは、エンドエフェクタの対向する顎部の1つが、顎部が閉じられたときに針またはノズルを露出させるように構成された開口部を有する。開口部は、針やノズルによってシールにより閉じられ塞がれていてもよい。
【0056】
生検カップが開いた後に閉じられ、針またはノズルが麻酔薬を標的に適用するために露出されると、針またはノズルは、チューブの第4の長手方向延在チャネル内を往復して戻り、顎部を閉じることができる。
【0057】
しかしながら、本発明による内視鏡下手術用装置は、全身麻酔をせずに、例えば、外来患者や受け入れ病棟の患者に効果的に使用することもできる。生検中のどの段階でも、患者に迷惑をかけることなく、外科医の判断で麻酔をかけることができる。この内視鏡下手術用装置により、外科医は様々な選択を行い、組織標本を摘除するたびに一連の異なるツールを内視鏡の作業チャネルに挿入することを繰り返すことなく、疑わしい対象部位から直接複数の組織標本を採取することができる。内視鏡下手術用装置を患者の体内に入れたまま、ジアテルミーを照射して癌細胞を破壊することができる。患者は、カテーテルの挿入も手術の生検処置前の絶食も必要なく、その後迅速に帰宅できる。
【0058】
接合摺動部は、
第1の長手方向延在チャネルと流体連通し、エンドエフェクタで、かつ/またはエンドエフェクタに洗浄液を供給するための入口ポート、
第3の長手方向延在チャネルと連通するジアテルミーポート、および/または
組織標本収集装置と結合するため、および/または生検部位から物質を除去するため、および/またはエンドエフェクタ内に閉じ込められた、またはエンドエフェクタによって保持された物質を内視鏡下手術用装置の外に移送するための、第2の長手方向延在チャネルと連通する標本ポートのうちの少なくとも1つを有してもよい。
【0059】
本発明の文脈では、「近位側」という用語は何かに最も近いことを意味し、「遠位側」という用語は何かから最も遠いことを意味する。一例として、近位側チューブ端は、使用時に内視鏡の操作端の最も近傍の端部であり、遠位側チューブ端は、内視鏡の作動部の先端の最も近傍の端部である。「近位側」および「遠位側」という用語は、本出願の明細書全体で、この配向の意味で使用されている。
【0060】
接合摺動部の入口ポートには、様々な方法で洗浄液のタンクを簡単に接続することができる。1つの方法は、液体供給チューブに結合された段付きの先端ほど細くなるコネクタを入口ポートに挿入することであり、この場合、入口ポートは雌の結合部品として機能する。これに代えて、液体供給チューブを入口ポートに取り付けることができ、その場合、入口ポートは雄型の結合部品として機能する。
【0061】
電線は、近位側チューブ端の第2の長手方向延在チャネルからジアテルミーポート内に延びて、ジアテルミー生成装置に電気的接触を生じさせることができる。このような電気的接触は、ジアテルミー生成装置につながるケーブルの電気プラグを挿入することで、非常に簡単に得ることができる。
【0062】
接合摺動部には標本ポートがさらに設けられ、第2の長手方向延在チャネルと連通することで、切除された組織標本を生検カップからチューブを経由して摺動レール組立体から搬送し、診断することができる。組織標本は、第1の長手方向延在チャネルを介して閉じた生検カップに液体を流すことにより、標本ポートから単純に洗い出され、固定された方向の組織標本を第2の長手方向延在チャネルに押し込むことができる。洗浄流体の送出チャネルとして使用されている第1の長手方向延在チャネルが、第3の長手方向延在チャネルとしても使用されている場合、電線は絶縁されている必要がある。別の方法として、第2の長手方向延在チャネルに吸引を行い、組織標本を当該チャネルに沿って搬送することも可能である。
【0063】
第2の長手方向延在チャネルは、第1の長手方向延在チャネルよりも大きな断面を有し、洗浄または吸引による組織標本の排出を本質的にさらに促進することができる。好ましくは、第2の長手方向延在チャネルは、他の長手方向延在チャネルの寸法およびチューブの全体的な直径を考慮して、可能な限り最大の断面を有していてもよい。これにより、組織標本は、チューブから出て自由に移動する間にできるだけ穏やかに扱われるが、組織標本が第2の長手方向延在チャネル内で旋回して配向が変わることがないようになっている。
【0064】
組織標本は、粘膜固有層および粘膜筋板の両者を含むように十分な深さ、すなわち3乃至5mmの深さが必要である。組織標本は、第1の長手方向延在チャネルの洗浄流体の圧力によって、第2の長手方向延在チャネルのより大きな、または同じ断面に向かって自動的に押し動かされる。組織標本は、洗浄流体または吸引することによって当該第2の長手方向延在チャネルに押し込まれ、それに沿って移動する。これは、第2の長手方向延在チャネルが、組織標本を内部に滑り込ませ、洗浄流体とともに標本ポートの出口から退出させることができる唯一のチャネルだからである。組織標本が洗浄流体の圧力または吸引にさらされると、第2の長手方向延在チャネルの内腔にわずかに適合して、当該第2の長手方向延在チャネルを最も簡単に通過できる形状になってもよい。
【0065】
エンドエフェクタ摺動部、接合摺動部、および/または針摺動部は、好都合な実施形態では、摺動レール組立体の主摺動ガイド本体のガイドウェイに沿って往復することができる。このような構成の摺動レール組立体では、針やノズルが近位側チューブ端から接合摺動部を通って延び、針摺動部に接続することができるため、摺動レール組立体を最小のサイズで構成することができる。これに代えて、針やノズルは、接合摺動部の外側にこれに平行な第3の長手方向延在チャネル内を延びる。本発明の範囲内では、接合摺動部および針摺動部は直列ではなく並列に配置することができるが、その場合、針摺動部に固定するためには、針またはノズルの近位端を近位側チューブ端からの出口で摺動レール組立体の長手方向の軸線から離れるように屈曲する必要がある。接合摺動部と針摺動部とを平行に配置することにより、摺動レール組立体の容積が大きくなり、外科医による内視鏡および内視鏡下手術用装置の操作性に支障をきたす恐れがある。第3の長手方向延在チャネルの中心軸線は、チューブの中心軸線から半径方向にずれており、これにより、針もチューブの中心軸線から半径方向にずれて配置される。実際、針はチューブの周方向の主壁部のすぐ近傍に設けられていてもよい。
【0066】
摺動レール組立体は、エンドエフェクタ摺動部と接合摺動部との間に配置される第1のばね部材であって、接合摺動部に対してエンドエフェクタ摺動部をばねで往復運動させるための第1のばね部材をさらに有していてもよい。摺動レール組立体は、接合摺動部と針摺動部との間に配置され、接合摺動部に対する針摺動部のばね付勢による往復運動のための第2のばね部材をさらに、あるいは追加的に備えていてもよい。一時的に摺動部を相互に緊張または圧縮状態に保つことができる代替的配置は、本発明の範囲内である。そのような配置としては、協働する窪みおよびビーズ、または、例えば摺動部の遠位端の前でガイドウェイを横断する手動式の往復動可能なピン、または摺動部に係合するピンなどが考えられる。
【0067】
保管状態時、および内視鏡の作業チャネルへの内視鏡下手術用装置の挿入時には、いずれのばね部材も付勢されない。一旦内視鏡の遠位端が疑わしい組織標的の位置に来ると、内視鏡下手術用装置および患者は生検の準備が整い、内視鏡の光ファイバを使用して光学的に検知される組織標本を切除できるように、作業チャネルにチューブを挿入することで、内視鏡下手術用装置は組織標本を切除する準備が整う。接合摺動部を操作して、エンドエフェクタを内視鏡の外に出す。その後、エンドエフェクタ摺動部を操作してエフェクタスリーブを後退させることで、エンドエフェクタの対向する顎部が離れ、組織標本を挟んで把持することができる。内視鏡の遠位側開口部からエンドエフェクタおよびエフェクタスリーブを備えた遠位側チューブ端を露出させるために、接合摺動部は、ばね部材を圧縮することなくガイドウェイ内を移動する。生検部位に麻酔薬が必要な場合は、針摺動部を接合摺動部に向けて前進させることで、第2のばね部材を圧縮する。
【0068】
また、第2のばね部材を圧縮することにより針摺動部をばね付勢することで、針やノズルが前方に露出している状態でエンドエフェクタがエフェクタスリーブ内に収納されるリスクを除くことができる。
【0069】
また、少なくとも第2のばね部材が圧縮されることで、露出した針の周囲を誤って閉じてしまい、臓器内で顎部が破損することを防ぐことができる。圧縮力が緩和されると、針は自動的に格納される。
【0070】
さらなる安全対策として、ばね部材は、効果的に、コイルなどの圧縮ばねであり、単位長さあたりのコイル数が異なり、任意により、異なるコイル直径および異なるワイヤの太さから選択された1つまたは複数の異なるパラメータを有し、これにより、異なる圧縮の荷重となり、例えば第2のばね部材は、第1のばね部材の圧縮および荷重が解放されると、第1のばね部材よりも迅速に跳ね返る。上述したように、このばね部材の配置により、針やノズルが再び生検カップ内に引き込まれる前に、エンドエフェクタが誤って意図せずに閉じてしまうことに対する安全性が得られる。エンドエフェクタが露出した針やノズルを捕捉しないようにするための適切な構造的および機能的予防措置は、第2のばね部材を第1のばね部材よりも大きな圧縮力で構成することにより、第1のばね部材がエンドエフェクタ摺動部と接合摺動部との間の圧縮力から解放されるよりも迅速に第2のばね部材が針摺動部を後退させることで、容易に実現することができる。
【0071】
摺動レール組立体の摺動部は、外科医が手動で操作したり、把持したりすることができる。しかしながら、これは摺動レール組立体の操作としてはやや不器用であり、安全性および信頼性に欠ける場合がある。摺動レール組立体を介してエンドエフェクタを操作するための、より安全かつ実用的な方法としては、対応する摺動部および機能を操作するために割り当てられたボタンを備えた遠隔操作ハンドルを有し、対応する操作ストリングを介して摺動部に動作可能に接続された遠隔駆動組立体が挙げられる。操作用ストリングは、例えば金属線などのワイヤであるが、本発明の範囲内であれば、同じ強度を持ち、破断することなく屈曲したり可撓性を備える能力を持つあらゆる種類のストリングを使用することができる。金属線に代わるものとしては、例として、例えば繊維強化ストリングのような丈夫な高分子ストリングが挙げられる。
【0072】
遠隔駆動組立体は、滑車組立体を含んでいてもよく、この滑車組立体は、遠隔操作ハンドルの対応するボタンを操作して操作ストリングを引くことに応答して、接合摺動部と一体的に移動するように、接合摺動部に配置することができる。操作ストリングは、滑車組立体の滑車の周囲を1回または複数回ループしてもよい。回数が多いほど、より大きな機械的効果が得られる。ボタンの小さなストロークは、そのため、摺動部のより長い変位を生じさせる。
【0073】
遠隔操作ハンドルのボタンによって摺動レール組立体を操作するために、遠隔駆動組立体は、便宜上、
エンドエフェクタ摺動部に固定された第1の近位側ストリング端と、遠隔操作ハンドルのトリガボタンに固定された反対側の第1の遠位側ストリング端とを有する第1の操作ストリングであって、エフェクタスリーブを操作して、エンドエフェクタの対向する顎部を開閉したり、その逆を行ったりするための第1の操作ストリングと、
主摺動ガイド本体の管状ガイドハウジングの遠位側ガイド端に固定された第2の遠位側ストリング端を有する第2の操作ストリングであって、この第2の操作ストリングは、滑車組立体の第1のトラックの周囲を延び、好ましくはチューブガイドを通って、遠隔操作ハンドルのホイールボタンの固定点を経由して、ホイールボタンから戻り、好ましくはチューブガイドを介して、滑車組立体の第2のトラックを経由して主摺動ガイド本体の管状ガイドハウジングの近位端に至り、第2の近位側ストリング端が管状ガイドハウジングの近位側ガイド端に固定されて、エンドエフェクタに対してエフェクタスリーブを長手方向に移動させるようになっている、第2の操作ストリングと、
針摺動部に固定される第3の近位側ストリング端と、遠隔操作ハンドルの摺動ボタンに固定される反対側の第3の遠位側ストリング端とを有する第3の操作ストリングであって、針摺動部を移動させ、これにより、針をエンドエフェクタから露出させる、第3の操作ストリングとを備えてもよい。
【0074】
第1、第2、第3の操作ストリングはすべて、効果的に、操作ストリングを遠隔操作ハンドルに向かって、またその内部に組み合わせて案内するボーデン導管のような同じガイドチューブの中を延びてもよい。滑車組立体およびガイドチューブは任意であるが、好ましい。
【0075】
遠隔操作ハンドルのさらなる効果的な特徴は、遠隔操作ハンドルが、内視鏡の遠位部、例えば、内視鏡の可撓性を備えた部分に変位可能かつ着脱可能に取り付けるためのスナップオン手段を有することができ、それによって、当該遠隔操作ハンドルが、生検処置の間、常に外科医の手元に容易に置かれる点にある。遠隔操作ハンドルは、外科医または操作者の好みに応じて、平行または垂直の両者で内視鏡の遠位側チューブ部にスナップオン/スナップオフでき、遠位側チューブ部に沿って摺動することができる。
【0076】
外科医が希望すれば、内視鏡の遠位部から遠隔操作ハンドルを取り外し、摺動レール組立体を自分の好きな位置で操作することができる。また、外科医は、遠隔操作ハンドルを遠位部に沿って長手方向に摺動させたり、使用しないときに遠隔操作ハンドルを一時的に収納したりして、内視鏡の近位部で邪魔にならないようにすることもできる。本発明による遠隔操作ハンドルは、外科医に人間工学的により優れた操作環境を提供し、従来の内視鏡下生検処置の際に必要とされていた一部の追加物を必要としない。本出願の文脈では、「遠隔」という用語は、摺動レール組立体に直接触れることなく、かつ/または摺動レール組立体から離間した位置で内視鏡下手術用装置を操作するために、ガイドチューブによって設けられる距離だけレール組立体から隔てられていることを意味する。
【0077】
組織標本を切除する前に、患者は生検の準備をされる。このような準備には、生理食塩水などの洗浄剤を内視鏡を通してまたは内視鏡下手術用装置を通して流して、臓器や体腔を洗浄したり、任意に拡張したりすることが含まれ得る。臓器が膀胱の場合は、膀胱鏡を使用し、膀胱を生理食塩水で膨らませて膀胱壁がはっきり見えるレベルまで洗い流す。臓器や体腔は、ジアテルミーで組織を採取する前に、導電性の洗浄液やリンス液を空にしておくのが一般的である。洗浄液/リンス液は、組織学および病理診断のために回収することができる。
【0078】
生理食塩水が代表的な灌漑用溶液である。しかしながら、生理食塩水は導電性であるため、ジアテルミーとの互換性は無い。そこで、生理食塩水を非導電性の洗浄液、例えばグリシン溶液や他の非導電性アミノ酸の溶液、あるいはマンニトール溶液などの糖溶液に置き換える。生理食塩水の代わりに1.5%のグリシン溶液を、ジアテルミーの際の洗浄液として、また、生検の準備で臓器を膨張させるために、使用することができる。
【0079】
装置操作部は、内視鏡の内視鏡流体バルブポートおよび内視鏡吸引バルブポートに取り付けられるように構成された第1の操作端部と、内視鏡の処置具ポートの位置またはその近傍で摺動レール組立体および内視鏡に結合するように構成された反対側の第2の操作端部とを有する洗浄部品をさらに含んでいてもよい。
【0080】
最初に生理食塩水、従来の手順、および内視鏡の吸引/洗浄チャネルを使用して臓器や組織の部位を洗浄する。
【0081】
これに代えて、洗浄要素は、流体バルブポート、吸引バルブポート、処置具ポートの間の内視鏡の吸引チャネルおよび液体チャネルの近位部をバイパスするシャントと同じ目的で最初に使用することもでき、これに代えて処置具ポートを経由して内視鏡の関連付けられたチャネルの遠位端から外に液体を流し、これにより例えば作業チャネルおよびチューブを経由して目的の臓器や組織を洗浄し、後の段階で注入した液体を内視鏡またはチューブ経由で再び排出することで、生検前に臓器を洗浄し、排出された洗浄液を回収することができる。
【0082】
反対側の第2の操作端部は、好都合に、内視鏡装置の操作部の処置具ポートに結合されたアダプタを介して、処置具ポートに結合されるように構成されてもよい。別の方法では、アダプタは第2の操作端部と一体的に設けられる。
【0083】
アダプタは、第1のアダプタ端を有する第1のアダプタ端部と、第2のアダプタ端を有する反対側の第2のアダプタ端部とを有する管状のアダプタ本体を含んでいてもよい。第1のアダプタ端部は、処置具ポートのエンドキャップを置き換える寸法であってもよく、好ましくは内視鏡下手術用装置のチューブを導入するための膜を含む。第2のアダプタ端部は、摺動レール組立体と結合して、摺動レール組立体を内視鏡とともに処置具ポートに保持するように構成されていてもよい。
【0084】
第1のアダプタ端部および第2のアダプタ端部は、摺動レール組立体が内視鏡の長手方向軸線から少なくともわずかに離れる方向に向けられ、それによって外科医によるアクセス性および操作性が高くなるように、互いに対して角度をつけてもよい。第1のアダプタ端部は、本発明による内視鏡下手術用装置のチューブを内視鏡の作業チャネルに挿入することができる膜を備えた内視鏡の処置具ポートと同様に構成すると便利であり、液体を第1の長手方向延在チャネルに供給し、第2の長手方向延在チャネルを介して退出させることができる。
【0085】
好ましくは、アダプタは、内視鏡の処置具ポートの中心軸線を中心に、少なくとも45°など、処置具ポート内で回転することもでき、外科医や他の操作者の操作条件をさらに改善することができる。これに代えて、摺動レール組立体は、内視鏡の処置具ポートの中心軸線を中心に同様にアダプタに対して回転し、それによってエンドエフェクタも回転させることができる。
【0086】
液体タンク、排出物を収集するための容器、チューブの第1および第2の長手方向延在チャネル、並びに摺動レール組立体の接合摺動部のうちの1つ以上の間の流体連通を確立するために、これらの間にチューブが必要とされる。このように、アダプタが、1つ以上のポンプ手段、液体タンク、排水タンク、接合摺動部の入口ポート、接合摺動部の標本ポート、標本ポートに固定された組織標本収集装置への入口ポート、または標本ポートに固定された組織標本収集装置からの出口からなる群から選択された1つ以上の構成要素に、1つ以上のチューブを取り付けるための結合片のための座部を有していれば、それぞれのそのような部品の間に液体の連通および流れのチャネルを得ることができ、また、外科医が組織標本を得るために内視鏡下手術用装置を操作する際に、チューブが外科医の邪魔にならないようにチューブ管理し続けることができ、好都合である。
【0087】
組織標本収集装置は、標本ポートの出口で切除された組織標本を専用チャンバに直接採取し、切除された順に組織標本を収容するためのマルチチャンバ収集装置であってもよく、好ましくは、組織標本が採取される対象部位での配向を考慮して、専用チャンバに周知の配向で組織標本を採取する。本発明の範囲内では、「専用チャンバ」という用語は、組織標本が専用のチャンバを有することを意味する。本明細書では、「チャンバ」および「専用チャンバ」という用語は、収集装置ラックの文脈で相互に交換可能に使用されている。
【0088】
組織標本を専用チャンバに次々と回収するために、組織標本収集装置は、主収集装置ハウジングと、組織標本を収容するための一連の隣接したチャンバを有する収集装置ラックと、収集装置ラックを主収集装置ハウジングの長手方向軸線に沿って長手方向に移動させて、接合摺動部の標本ポートの下方に専用チャンバを次々と配置する手段とを備え、それにより、組織標本の切除順序と接合摺動部の標本ポートの下方に配置された専用チャンバの順序とを簡単に対応させることができるようになっている。一旦専用チャンバが組織標本で満たされると、新たな専用チャンバを移動させて、次の組織標本を受け入れる準備をした標本ポートと液体連通させる。この手順は、すべての組織標本のサンプリングマップが完成するまで続けられ、その場合、すべての専用チャンバが典型的に満たされる。しかしながら、収集装置ラックは追加のチャネルを有してもよい。膀胱生検の場合、収集装置ラックは7つ以上の専用チャンバを有してもよい。
【0089】
専用チャンバは、組織標本が到着してチャンバに収容されると、組織標本が移動できないようなサイズおよび寸法に形成されてもよい。組織標本は、生検カップから出て、第2の長手方向延在チャネルに沿って移動し、標本ポートから出るまでの間、配向を変える機会がほとんどないため、外科医の助手が組織標本を次々と単純に採取し、組織標本が流れていくラベル付きの個別のバイアルに手動で入れる従来の技術と比べて、組織標本の配向が変わるリスクが大幅に低減する。
【0090】
本発明による組織標本収集装置を使用すると、1つの処置からのすべての組織標本が単一のカセットまたはカートリッジ、すなわち収集装置ラックに収集されるという点で、1回のラベリング動作のみが必要とされる。このラベリング動作は、例えば、患者ID、番号、または専用チャンバ内の組織標本を生検処置マップ上の部位に割り当てる他の情報を有することによって、生検部位を本質的に知らせる。収集装置ラック全体を直接組織分析に送ることができる。
【0091】
主収集装置ハウジングの長手方向軸線に沿って収集装置ラックを長手方向に移動させるための手段は、単に外側にねじ山を有するねじ棒であってもよく、このねじ棒は、収集装置ラックのねじ穴またはボアの内部により深くねじ込まれるようになっており、またはその逆になっており、それにより、収集装置ラックは、これに沿って、例えば主摺動ガイド本体の遠位側ガイド端から離れるように輸送される。ねじ棒は、収集装置ラックと反対側を向いた自由端にノブが付いていて、そのノブを回転させることで、棒を穴やボアにねじ込んだり出したりすることができる。接合摺動部の標本ポートの下にある収集装置ラックの専用チャンバの位置を段階的に順に固定するための他の配置は、ラチェット機構、または収集装置ラックおよび主収集装置ハウジングに沿って適切な距離にある対向する雄/雌の係合部品であってもよい。
【0092】
主収集装置ハウジングは、任意により接合摺動部の標本ポートと主収集装置ハウジングの収集装置ポートとの間に延びる結合片を介して、接合摺動部の標本ポートと流体的に結合するための収集装置ポートと、洗浄によって生検カップから組織標本を排出する際に、結合片を介して主収集装置ハウジングに入る液体を標本ポートから、したがって第2の長手方向延在チャネルから排出するための液体排出口とを有していてもよい。収集装置ラックの専用チャンバは、これにより、標本ポートに結合された結合片に容易に整列させることができ、組織標本をチャンバ内に捕捉して受け取ることができる。組織標本を第2の長手方向延在チャネルから、標本ポートを介して、結合片を経由して、収集装置ラックのチャンバ内に押し出すために使用された液体の余剰分は、液体排出口を介して組織標本収集装置から流出して、任意の適切な種類のタンクまたは容器に収集され、任意に、さらなる組織学的分析や、安全な寄託または安全な排出のために使用することができる。
【0093】
収集装置ラックは、例えば、チャンバの内部から収集装置ラックの外部に延びる複数の貫通孔または水路、および/または、隣接するチャンバの共通壁および収集装置ラックの外壁を通って延びる貫通開口部を有することによって、液体が通過できるように構成されていてもよい。別の実施形態では、収集装置ラックは、濾過材料で形成可能であるか、多孔質であり得るか、または液体が主収集装置ハウジングに入り、主収集装置ハウジングの液体排出口から出て、例えばタンクに回収されるような間隙を有することができる。
【0094】
鉗子の種類のエンドエフェクタの対向する顎部は、2つの長手方向のパイプ部分を長手方向に部分的に結合して得られ、エンドエフェクタの長手方向の軸線からずれた顎部を有することにより、エフェクタスリーブが顎部を閉じたままにしないときに顎部が離れて跳ね上がるような固有の弾力性を当該顎部に与えることができる。2017年12月22日に出願された本出願人のスウェーデン特許出願第1751639-4号および本出願人の2018年12月14日に出願された国際特許出願PCT/SE2018/051315号に記載されたエンドエフェクタのいずれも本発明による内視鏡下手術用装置の一部とすることができる。その中に記載されているエンドエフェクタの開示内容は、参照により本願に組み込まれている。
【0095】
生検カップは、エンドエフェクタ摺動部の往復運動によって誘発されるエフェクタスリーブの往復運動によって、開放された後にシールされて閉じられ、閉じられた生検カップから洗浄流体が逃げて洗浄圧力が低下することを防ぎ、したがって、閉じられた生検カップから組織標本が洗い出されるときに、対向する閉じられた顎部の間の隙間および/または間隙を介して洗浄流体が臓器内に流入すること、または生検部位に流出することを実質的に防ぐことができる。
【0096】
チューブの外径は、一旦熱収縮絶縁補強コイルをチューブに巻いた後に、内視鏡の作業チャネル内に移動可能に収まるように、内視鏡下手術用装置に対して2mm以下とすることができる。しかしながら、他の種類の内視鏡は、より大きな作業チャネルを有してもよく、その場合、筐体付きチューブの全体的な外径は、約2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、またはさらに約5mm以上の幅にすることができる。長手方向延在チャネルの内径は、長手方向延在チャネルのルーメン間の最大距離として測定される、全体の内側チューブ直径よりも小さい。
【0097】
洗浄液の押し流し圧力は、チューブの長手方向に延びる第1および第2の長手方向延在チャネルの直径と、エンドエフェクタの顎部および閉じた生検カップによって定義される組織標本のサイズとを考慮して設定され、これにより、組織標本が第2の長手方向のチャネル内に閉じ込められないようにして、当該第2の長手方向のチャネルの詰まりを回避および/または防止することができる。すべての機能を備えた全体外径2mmのチューブを実装し、膀胱鏡との併用を目的とした内視鏡下手術用装置の場合、第2の長手方向チャネルを介して少なくとも5バール(約500kPa)のかなり高い洗浄液供給圧力が必要となる可能性がある。しかしながら、流体輸送圧力は、10バール(約1MPa)、20バール(約2MPa)、あるいはそれ以上の高さになることもある。例えば26バール(約2.6MPa)の流体輸送圧力は、十分に効率的であることが実証されている。同様の吸引レベルであれば、同じ目的で使用することができる。
【0098】
顎部のカップ状の第2の端の対向する自由縁は、エフェクタワイヤを張引したりエフェクタスリーブを移動させてエンドエフェクタをエフェクタスリーブ内に閉じ込めて配置するなどして、顎部を互いに移動させたときに、ジアテルミーを適用する際に組織に接触する導電性の挟み込み面を形成する。
【0099】
ジアテルミーは、組織標本を機械的に切除するために、外科医がエンドエフェクタを広範囲に張引する必要性を改善する。組織標本を切除した後に熱を加えて止血する必要性が非常に低減され、あるいはその必要性さえもなくなる。外科医は、適用された熱が組織標本を自由にするのを数秒待つだけで、患者にはほとんど不快感を与えず、外科医には最小限の手順で行うことができる。一旦組織標本が解放されると、エフェクタスリーブに力が加わり、生検カップを完全に閉じることができる。これに代えて、エンドエフェクタ摺動部に連結されたエフェクタワイヤによって、顎部を積極的に閉じることもできる。一旦エンドエフェクタが閉じられると、洗浄液は、生検カップが顕著に漏れて洗浄圧が低下することなく、あるいは吸引が低下することなく、エンドエフェクタを通過することができる。組織標本は組織標本収集装置の専用チャンバに採取され、組織標本は密閉された環境で分析装置に持ち込むことができる。組織標本を臓器外へ、または臓器から運び出して、従来のバイアルのようなバイアルに回収する際に、人間が汚染するようなやりとりは必要ない。サンプリングから採取までの間、汚染のリスクはゼロであり、組織標本の混合もない。
【0100】
エフェクタスリーブがエンドエフェクタ摺動部によって前進すると、顎部で組織標本を挟み、ジアテルミーのステップでは、顎部がジアテルミーによって組織標本を臓器から穏やかに切断し、生検部位に残された傷口を焼いたり、かつ/または焼灼したりして止血する。このようにして、組織標本は臓器から解放され、顎部に付着することはない。エンドエフェクタがエフェクタスリーブ内にあるときに、組織標本は、閉じた顎部によって形成された生検カップ内の顎部の間に自由に収容されるとともに保護されるようになる。エフェクタスリーブは、顎部を互いに押し付けて一体的に緊密に保持し、生検カップを、組織標本の周囲に実質的に漏れないように、また組織標本が切除された後も通常は変更されない特定の配向になるように閉じる。
【0101】
また、対向する顎部の外面が外部で電気的に絶縁され、組織標本を臓器から放出させるジアテルミー装置を構成してもよい。顎部の外面の電気的絶縁は、好ましくは、外面にコーティングを施すことによって得ることができる。このようなコーティングは、低摩擦コーティング、例えばパリレン(登録商標)コーティングやダイヤモンド様炭素(DLC)コーティングであることが好ましく、顎部の導電性表面、例えばニチノール、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属表面に容易に蒸着することができる。パリレン(登録商標)という商品名は、化学蒸着されたポリ(p-キシリレン)ポリマを対象としており、水分や誘電体のバリアとして使用されている。本発明の範囲内では他の種類の絶縁コーティングも使用できる。
【0102】
チューブは、プラスチックチューブのような非導電性のチューブであってもよい。
【0103】
好ましくは、臓器は膀胱であるが、他の臓器も同様の解剖原理、収集原理で生検処置を行うことができる。例えば、臓器は、腸、胃、食道などの消化管、肺などの気道、または膣などであり得る。
【0104】
出血が多い場合は、局所的にジアテルミーを繰り返すことができる。ジアテルミーはモノポーラであってもよい。
【0105】
第3の長手方向延在チャネル内に関連付けられる針やノズルは、麻酔以外の目的で利用することができる。例えば、臓器や組織の部位に拡張液を供給したり、局所麻酔やアドレナリンなどの薬を注入して止血したりすることができる。他の選択肢としては、第4の長手方向延在チャネルに外科用レーザーやクランプツールを使用することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
組織標本を採取するための本発明による内視鏡下手術用装置を用いた外科的処置のステップは、
a) 好ましくは、光ファイバなど、臓器の内部を可視化する手段を有する内視鏡である内視鏡を挿入するステップと、
b) 任意に、内視鏡の作業用チャネルまたは他のチャネルを介して供給される液体で、組織標本を切除する器官を拡張するステップと、
c) 請求項1乃至19のうちのいずれか一項に記載の内視鏡下手術用装置のチューブを内視鏡の作業チャネルに挿入するステップであって、任意にステップb)で行わなかった場合に、内視鏡下手術用装置の長手方向延在チャネルを通して供給される非導電性の液体で、組織標本が切除されるべき器官を拡張する、チューブを挿入するステップと、
d) 針摺動部を介して内視鏡下手術用装置の針またはノズルを操作することにより、癌が疑われるすべての部位に任意で麻酔をかけるか、または標本採取部位の局所に任意で麻酔をかけるステップであって、組織標本の採取を容易にするために任意で膨張を誘発する、麻酔をかけるステップと、
e) 接合摺動部を操作して、エフェクタスリーブがエンドエフェクタを包囲した状態で、内視鏡の作業用チャンネルからチューブの遠位端を露出させるステップと、
f) エンドエフェクタ摺動部を操作して、エンドエフェクタおよびエフェクタスリーブを相互に変位させ、それによりエンドエフェクタの顎部を開閉して組織標本を挟み込む、変位させるステップと、
g) 接合摺動部のジアテルミーワイヤを介してジアテルミーを作動させるステップであって、エンドエフェクタに電流を供給して、組織標本を生検カップ内に収容できるように自由にする、作動ステップと、
h) 接合摺動部から、非導電性の液体を高圧で第1の長手方向延在チャネルに流し、さらにエンドエフェクタの閉じた生検カップに流して、チューブの第2の長手方向延在チャネルを介してチューブから組織標本を流し、この第2の長手方向延在チャネルは接合摺動部で終わり、近位側チューブ端で組織標本を収集し、好ましくは、組織標本をホルマリンを含むバイアルまたは組織標本収集装置、任意により前記請求項のいずれかで定義された組織標本収集装置に収集するステップと、
i) 癌の疑いのある部位すべてに麻酔をかけた場合はステップe)乃至h)を、局所麻酔の場合は、ステップd)乃至h)を、必要な数の組織標本を採取するまで繰り返すステップと、
j) 任意で、破壊される組織に顎部を移動させることにより、燃焼機能によって癌の残りの領域を破壊するステップと、
k)内視鏡下手術用装置を引き出すステップと、
l) 内視鏡を引き出すステップとを含む。
【0107】
ステップj)は、生検手順のどの段階でも実施することができ、実際、内視鏡の作業チャネルに内視鏡装置を1回挿入する間に同じ内視鏡下手術用生検装置が使用されるので、作業チャネルから内視鏡下手術用生検装置を取り外すことなく、外科医の選択に従って、任意の所望のステップを実施し、繰り返すことができる。このように、手術方法に示された手順の順序は、限定的で強制的なものとして解釈されるべきではない。
【0108】
次に、本発明の例示的な一実施形態による内視鏡下手術用装置により、図面を参照して本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1図1は、本発明による内視鏡下手術用装置を、膀胱鏡を用いた生検処置に使用する準備が整った手術用設定環境に置いた状態を示す斜視図である。
図2図2は、図1のチューブのII-II線に沿った拡大断面図である。
図3図3は、エンドエフェクタを示す断片的な斜視端面図である。
図4図4は、図1の内視鏡下手術用装置を膀胱鏡の近位側ハンドル部に取り付けた状態の斜視拡大図であるが、ジアテルミー発生装置への電気コードが省略され、液体供給チューブおよび排出チューブが省略されている。
図5図5は、摺動レール組立体、組織標本収集装置、およびアダプタを斜視図および部分分解図で示している。
図6図6は、組み立てられた状態の同製品を示している。
図7図7は、機器作動部のアダプタを側面から見た拡大図である。
図8図8は、洗浄要素をホルダ端部および第1の操作端部から見た図である。
図9図9は、その態様を第2の操作端部から見た図である。
図10図10および図11は、主摺動ガイド本体の遠位側ガイド端および近位側ガイド端から見た、ばね部材、アダプタおよび洗浄部材を除いた、内視鏡下手術用装置の分解拡大図である。
図11図10および図11は、主摺動ガイド本体の遠位側ガイド端および近位側ガイド端から見た、ばね部材、アダプタおよび洗浄部材を除いた、内視鏡下手術用装置の分解拡大図である。
図12図12は、図15および図16の右にある丸で囲った断片を遠位側チューブ端からの遠隔駆動組立体を備えた内視鏡下手術用装置の斜視拡大図である。
図13図13は、遠隔操作ハンドルを上から見た斜視図である。
図14図14は筐体の半部を取り除いた状態を示す図である。
図15図15は、内視鏡下手術用装置の開始状態を示す図である。
図16図16は、内視鏡の作業チャネルから内視鏡下手術用装置の作動端を露出させた状態の内視鏡下手術用装置を示す。
図17図17は、エンドエフェクタからエフェクタスリーブを後退させた状態の内視鏡下手術用装置を示す。
図18図20は、図17の内視鏡下手術装置の丸で囲った作動端を拡大した図である。
図19図19は、エンドエフェクタの顎部の間に針が露出している状態の内視鏡下手術用装置を示す。
図20図20は、図19の内視鏡下手術用装置の丸で囲った作動端を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
以下では、例として、内視鏡が膀胱鏡であり、組織標本が切除される器官が膀胱であることを想定している。例は非限定的であり、本発明による内視鏡下手術用装置は、他の多くの種類の内視鏡と組み合わせて使用することができ、標的組織は多くの異なる種類の組織であり得ることを理解すべきである。図面において使用される縮尺は、本発明の要素を可能な限り例示するために行われていることを強調しておく。縮尺の拡大・縮小率は、各図面間で異なる場合がある。縮尺は、本発明の構成要素を最もよく表現できるように任意に選択される。ハサミや他の鉗子などの他のエンドエフェクタも、本発明による内視鏡下手術用装置に使用することができる。
【0111】
図1は、本発明の内視鏡下手術用装置1を、膀胱鏡2の形態の内視鏡を用いた生検処置に使用する準備が整った手術用設定環境に置いた状態を示す斜視図である。生検処置には、従来の複数のジアテルミー発生装置、液体源、およびタンクを使用することができる。図1にはこれらは示されていない。さらに、視覚的にわかりやすくするために、膀胱鏡の遠位側挿入チューブおよび光ファイバは省略している。マルチチャネルチューブ3は、内視鏡の遠位側挿入部に覆われていない状態で示されている。
【0112】
内視鏡下手術用装置1は、装置操作部4を有しており、この装置操作部4は、少なくとも摺動レール組立体5、遠隔駆動組立体6、洗浄要素7、および組織標本収集装置8を含む複数のサブ要素から構成されている。これらのサブ要素7、8のそれぞれについて、以下の図で個別に、および組み合わせてさらに詳しく説明するとともに、それらの動作関係を説明し、議論する。
【0113】
図2に、図1の内視鏡下手術用装置1に使用されている可撓性マルチチャネルチューブ3(以下、単にチューブと呼ぶ)を拡大断面図で示す。
【0114】
チューブ3は、4つの長手方向延在チャネル、すなわちチューブ3の遠位側チューブ端13に液体を供給するための第1の長手方向延在チャネル9と、近位側チューブ端14を介してチューブ3から組織標本などの液体やその他の物質を例えば排出または吸引して外に出すための第2の長手方向延在チャネル10と、ジアテルミーワイヤ76を通すための第3の長手方向延在チャネル15と、針を往復させるための第4の長手方向延在チャネル16とを有している。長手方向延在チャネルは、内視鏡の作業チャネルを複数のサブチャネルに「分割」するものであり、これにより、内視鏡の機能性がこれまで知られていなかったほど向上し、内視鏡の作業用チャネルに異なる処置具を何度も挿入および収納する必要がなくなり、生検の時間を短縮し、患者に快適さを与えることができると言える。
【0115】
図3に一実施形態によるエンドエフェクタ21を拡大して示す。図3に示すエフェクタスリーブ17は、例えば、チューブ3の遠位側チューブ端14のエンドエフェクタ17をエフェクタスリーブ17の中に出し入れするよう往復運動させることに応じて、あるいはエフェクタスリーブ17をエンドエフェクタ21を覆うように、および離間するように往復運動させ、これにより、一旦エフェクタスリーブに包囲されたエンドエフェクタ21が標的部位の前の生検位置に配置されると、エンドエフェクタおよびエフェクタスリーブを互いに対して往復運動させることによって、エンドエフェクタ21が当該エフェクタスリーブ17の内外に緊密に移動するように選択された内径を有する。エンドエフェクタが標的部位のこの生検位置にあるとき、エフェクタスリーブを後退させることにより、顎部19,20が開かれ、任意で、内視鏡下手術用装置を標的の組織にさらに接触させる。次に、エフェクタスリーブをエンドエフェクタの上方で逆方向に変位させることにより、顎部19,20を閉じて組織標本を把持する。エフェクタスリーブ17は、金属製のパイプまたは高分子材であってもよく、チューブ3は、内視鏡の作業チャネルに挿入されるのに十分な構造をチューブ3に与え、任意にエフェクタスリーブ17に対して長手方向の移動を可能にするために、コイル部材のような外部構造補強材を有していてもよい。エンドエフェクタ17の図3では、針22は、第3の長手方向延在チャネル16から露出している。外側の構造補強材は、エフェクタスリーブに端から端まで固定され、同時に往復することができる。
【0116】
エンドエフェクタは、2本のパイプ片に先端ほど細くなる鼻部または鈍い鼻部をつけたものを使用する。パイプ片は、個別のパイプから、例えば、レーザーで長手方向に切断して、可撓性部材19a,20a、すなわちヒンジ部材19a,20aを設けることができる。続いて、例えば、パイプ片を接合して、ばね付勢のヒンジ式顎部19,20を備えた主管状本体を得ることで、エンドエフェクタ21を得ることができる。それぞれのヒンジ部材19a,20aは、エフェクタスリーブがエンドエフェクタを覆っていないときに、それ自体で撓んで湾曲して離間することができ、これにより、エンドエフェクタは弾力的に開閉する。
【0117】
図4は、図1に示す内視鏡下手術用装置1の拡大斜視図であるが、内視鏡下手術用装置1をジアテルミー発生装置に接続する電線がなく、プライミングポンプ(図示しない)への洗浄チューブおよび排出チューブ23,24がなく、液体タンクおよび液体源がない状態である。プライミングポンプは、ジアテルミー発生装置に関連付けられ、摺動レール組立体5を介した第1の長手方向延在チャネル9の非導電性液体による洗浄を含め、チューブ3に結合されたチューブシステムを充填し、第2の長手方向延在チャネル10から組織標本を排出することに関連して吸引/排出された非導電性液体を回収するように構成されてもよい。
【0118】
洗浄要素7は、第1の押圧駆動バルブ25を用いて内視鏡の流体バルブポートに取り付けられ、第2の押圧駆動バルブ26を用いて膀胱鏡2の内視鏡吸引バルブポートに取り付けられるように構成された第1の操作端部18を有し、内視鏡バルブポートに洗浄要素を作動的に接続させる。洗浄要素7の反対側の第2の操作端部27は、当該第2の操作端部27に設けられたアダプタ28によって、摺動レール組立体5と、膀胱鏡2の処置具ポートと、流体連通している。
【0119】
第2の押圧駆動バルブ26は、洗浄要素7の輸液チューブ31を介して膀胱鏡を介して液体を注入するために注入接続片38に結合された液体の供給源(図示しない)、例えばドリップバッグからの液体の供給のために開閉する。同様に、第1の押圧駆動バルブ25は、吸引チューブ32を介した内視鏡を介した吸引のために開閉し、この吸引チューブ32は、吸引接続片39を介して真空源に結合されている。
【0120】
把持部29により、外科医は、把持部29を介して膀胱鏡上に手を置くだけで、内視鏡下手術用装置と膀胱鏡とを同時に容易に保持することができる。把持部29は、生検を行う前に、生理食塩水などの液体を、膀胱などの中空器官や他の組織表面から、例えばチューブ3を介して膀胱鏡2の作業用チャネルを介して、あるいは上記目的のために特別に割り当てられた膀胱鏡2の液体チャネル(図示しない)を介して、それぞれ流すための内部灌流チューブを組み込んだり、外部灌流チューブ31,32を有していてもよい。ジアテルミーの際、事故による燃焼を防ぐために使用する非導電性の液体も、同様の方法で注入および吸引することができる。
【0121】
図5の斜視図、分解図および図6の組立図は、摺動レール組立体5、組織標本収集装置8、およびアダプタ28を示すものである。アダプタ28は、第1のアダプタ端35を有する第1のアダプタ端部34を備えた管状のアダプタ本体33を有し、この第1のアダプタ端部34は、チューブ3を挿入するための膜(図示しない)を有し、また、アダプタ28は、摺動レール組立体5と結合するように構成された第2のアダプタ端37を有する反対側の第2のアダプタ端部36を有する。
【0122】
第1のアダプタ端部34および第2のアダプタ端部36は、図7の側面図に最もよく示すように、互いに対して所定の角度をなしており、これにより、第2のアダプタ端部36に固定されている摺動レール組立体5は、膀胱鏡2から遠ざかるようになっている。角度は、管状アダプタ本体33を通る屈曲または湾曲した流れチャネルを形成するために、例えば、少なくとも45°である。
【0123】
把持部29に付随する灌漑チューブ31,32は、輸液チューブ31および吸引チューブ32である。吸引チューブ32は、膀胱を空にするための吸引を行う部分であり、輸液チューブ31は、生検の前に膀胱を洗浄したり、非導電性の液体を膀胱に注入するなど、液体を注入する部分である。
【0124】
アダプタ28は、シート41,42を備えた突出したフランジ40を有している。シート41,42は、吸引チューブ32および輸液チューブ31それぞれ、また、これにより真空源(図示しない)および液体源(図示しない)にそれぞれ流体連通するための第1の結合片43および第2の結合片44を取り付けるように構成されている。第1の結合片43および第2の結合片44は、例えば、バーブ付きバヨネット雄型コネクタであってもよく、対応するバーブ付きの先端ほど細くなる第1の結合端部43a,44aおよび反対側の第2の結合端部43b,44bを有し、結合端部43a,44a;43b,44bの間に拡大された直径のフランジ43c,44cを備え、これにより、結合片43,44は、突出したフランジ40の対応するシート41,42に留まることが促進される。
【0125】
図8および図9の拡大詳細図によく示されるように、洗浄要素7は、当該洗浄要素7の第1の操作端部18と第2の操作端部27との間に延びる長手方向の把持部29を有している。第2の操作端部27において、洗浄要素7は、摺動レール組立体5のためのホルダ30を有している。組織標本収集装置8に結合された摺動レール組立体5は、ホルダ30にドッキングされて、膀胱鏡2から突出した状態で保持される。このようにして、摺動レール組立体5および組織標本収集装置8の両者が、膀胱鏡2の近位端の近傍に配置され、外科医の手の届く、視界に入る便利な場所に配置される。
【0126】
内視鏡下手術用装置1の使用時には、アダプタ28が処置具ポートに固定され、洗浄要素7の第2の操作端部27がアダプタ28に固定され、組織標本収集装置組立体8に接続された摺動レール組立体5がホルダ30に取り付けられ、針22、エンドエフェクタ21、エフェクタスリーブ17、およびジアテルミーワイヤ76を備えたチューブ3がアダプタ28の膜を介して挿入される。吸引チューブ32は、第1の結合片43のバーブ付きの先端ほど細くなる第1の結合端43aに接続されている。輸液チューブ31は、第2の結合片44の第2の結合端44bに接続されている。中間チューブ45は、組織標本収集装置8を第1の結合片43のバーブ付き結合端43aに接続して、把持部29の吸引チューブ32への液体連通を確立し、組織標本収集装置8から液体を排出するものである。
【0127】
洗浄チューブ24は、第2の結合片44のチューブ結合端44aに接続され、プライミングポンプ(図示しない)への液体連通を確立する。第2の結合片44の反対側のチューブ結合端44bは、把持部29の輸液チューブ31を介して非導電性液体の供給源に接続し、それにより、プライミングポンプ(図示しない)と非導電性液体の供給源(図示しない)との間の液体連通を確立する。非導電性液体は、このように、組織標本収集装置8への吸引の適用によって閉鎖された生検カップが排水された後に、洗浄要素7を介して輸液チューブ32に結合された同じかまたは別の供給源から連続的に補充することができる。
【0128】
図5および図6に示すように、摺動レール組立体5は、エンドエフェクタ摺動部47、接合摺動部48、および針摺動部49を摺動可能に懸架する主摺動ガイド本体46を有する。主摺動ガイド本体46は、内部に対向する長手方向延在内部トラック51を備えた管状ガイドハウジング50から構成されている。この対向する内部トラック51により、エンドエフェクタ摺動部47、接合摺動部48、および針摺動部49は、主摺動ガイド本体46の近位側ガイド端52と、その反対側の遠位側ガイド端53との間を多かれ少なかれ往復することができる。そして、内部トラック51を備えた主摺動ガイド本体46は、摺動部47,48,49がこれに沿って往復するためのガイドウェイ54を形成する。
【0129】
管状ガイドハウジング50には、エンドエフェクタ摺動部47と接合摺動部48との間に第1のばね部材55が挿入され、接合摺動部48と針摺動部49との間に第2のばね部材56が挿入され、摺動部47,48,49のいずれかがガイドウェイ54の長手部分に沿って摺動する際にばね付勢するようになっている。内部トラック51に加えて、主摺動ガイド本体46の壁部57は、内部トラック51よりも短く、エンドエフェクタ摺動部47の長さも考慮して、接合摺動部48および針摺動部49の可能な最大ストローク距離を規定しつつ、エンドエフェクタ摺動部47が主摺動ガイド本体46の遠位側ガイド端53の近傍を摺動することを可能にする、長手方向に延びる開口部85をさらに有している。
【0130】
エンドエフェクタ摺動部47は、補強コイル77を介してエフェクタスリーブに接続されており、エンドエフェクタ摺動部47を作動させることで、補強コイル77をチューブ3に対して移動させることにより、エフェクタスリーブ17がエンドエフェクタ17に対して長手方向に移動し、顎部19,20が開閉することになる。
【0131】
接合摺動部48は、チューブ3の近位端14に接続されており、チューブ3の第1の長手方向延在チャネル9および第2の長手方向延在チャネル10と流体連通している。また、接合摺動部48は、チューブ3の第3の長手方向延在チャネル15を通る電線76によって、エンドエフェクタ21とジアテルミー生成装置(図示しない)との間の電気的な通信を提供する。電線76は、周囲のチューブ3の壁部によって、第1および第2の長手方向延在チャネル9,10の内部を流れる液体から絶縁された状態に保たれている。電線76は、接合摺動部48を介して外部に出て、ジアテルミー生成装置(図示しない)と電気的に接触し、エンドエフェクタ21に電流を流してジアテルミーを行う。
【0132】
以下、エンドエフェクタ摺動部47、接合摺動部48、針摺動部49の構造についてさらに詳しく説明する。
【0133】
図5に部分的に分解して示すとともに図6に分解して示す組織標本収集装置8は、主収集装置ハウジング58と、組織標本を収容するための一連の隣接するチャンバ60を備える収集装置ラック59と、収集装置ラック59を主収集装置ハウジング58の長手方向軸線に沿って長手方向に移動させるための手段61とを有し、本例示的実施形態における手段61は、収集装置ラック59のねじ穴63またはボアと係合するねじ棒62である。ねじ棒62は、収集装置ラック59から離間する方に面する自由端65に回転ノブ64と、回転ノブ64を回転させることに応答して当該収集装置ラック59を変位させるために収集装置ラック59にねじ式に係合する反対側の端部66とを有している。
【0134】
主収集装置ハウジング58は、管状であり、着脱可能なキャップ69を取り付けるためにねじ付き近位側ハウジング端部67と、例えば図4に示すように、第2の長手方向延在チャネル10が洗浄されているか、または組織標本をチューブ3から運び出すために排出されているときに、摺動レール組立体5の接合摺動部48から組織標本収集装置8に入る洗浄液を排出するために、中間チューブ45に結合される軸線方向に反対側の液体出口68とを有している。
【0135】
また、主収集装置ハウジング58と着脱式キャップ69との間の結合手段としては、雄および雌のスナップ結合のような他の種類のものも本発明の範囲内において好適である。着脱可能なキャップ69により、生検手順の完了後に、組織標本を有する収集装置ラック59を主収集装置ハウジング58から容易に取り出すことができる。ねじ棒62の自由端65は、回転ノブ64が主収集装置ハウジング58の外側からアクセスできるように、着脱式キャップ69のキャップ穴70を通過する。好ましくは、キャップ穴70は、ねじ棒62が回転できるように、取り外し可能なキャップ69の中心にあり、このキャップ穴70は、したがって、チャンバ70の位置が容易に移動され、収集装置ラック59が主収集装置ハウジング58内での並進運動中に斜めになったり、位置がずれたりしないように、手術中にねじ棒62を実質的に中心に保つ役割も果たす。
【0136】
主収集装置ハウジング58には、接合摺動部48の標本ポート72に流体的に結合するための突出した結合片71に結合される収集装置ポート71aが設けられており、標本ポート72は、主摺動ガイド本体46の管状ガイドハウジング50の長手方向延在開口部85から突出している。
【0137】
主収集装置ハウジング58は、少なくとも2つの長手方向延在部、すなわちその延長線上にある近位側管状ハウジング端部74および遠位側管状ハウジング端部75を有する。近位側管状ハウジング端部74は、ねじ棒62を収容し、また、結合片71を介して標本ポート72と連通する収集装置ラック59の一連のチャンバのうちのどのチャンバ60かに応じて、当該収集装置ラック59の長手部分を大なり小なりさらに収容している。近位側管状ハウジング端部74は、近位側ハウジング端67で終わっている。近位側ハウジング端67の反対側には、近位側管状ハウジング端部74が遠位側管状ハウジング端部75に延びており、この遠位側管状ハウジング端部75は、結合片71を介して標本ポート72と連通される収集装置ラック59の一連のチャンバのうちどのチャンバ60かに応じて、収集装置ラック59全体または収集装置ラック59の一部のみを収容する。遠位側管状ハウジング端部75の断面は、収集装置ラック59がその長手方向軸線を中心に遠位側管状ハウジング端部75の内部で回転して、チャンバ60が接合摺動部48の標本ポート72と整列できなくなることを回避するために、収集装置ラック59の断面に実質的に対応してもよい。
【0138】
図10および図11の斜視図に摺動部47,48,49を示し、図12に摺動レール組立体5の組み立てた状態を示す。また、図10および図11には、チューブ3およびチューブ3用の補強コイル部材77が斜視図で示されており、この補強コイル部材77は、例えば、外部の熱収縮チューブによってエフェクタスリーブ17に対して端から端の接合によって遠位側に固定されていてもよい。さらに、図10および図11は、針22、ジアテルミーワイヤ76、および滑車組立体78を異なる端部から示している。摺動部47,48,49と主摺動ガイド本体46の構造的特徴をよりよく概観するために、ばね部材55,56は省略されている。
【0139】
エンドエフェクタ摺動部47は、管状の前部接続片80を備えた第1の分岐した本体79を有し、これにより、チューブ3は、前部接続片80の内腔を通過して前部接続片80が取り付けられている接合摺動部48に到達可能であり、接合摺動部は、チューブ3、補強コイル部材77、エフェクタスリーブ21、エンドエフェクタ21の全てを組み合わせて同時に摺動させることができる。
【0140】
補強コイル部材77は、エンドエフェクタ摺動部47の管状の前部接続片80に、また、対向してエフェクタスリーブ21に接続され、エフェクタスリーブ21を往復させて顎部19,20を開閉させる。
【0141】
第1のばね部材55は、第1の分岐した本体79の対向する第1の脚部81,82の間に配置されて、摺動部47,48,49のいずれかをばねで付勢するのを支援することができる。接合摺動部48は、主摺動ガイド本体46の管状ガイドハウジング50の長手方向延在開口部85内を、エンドエフェクタ摺動部47の第1の脚部81,82の間で当該主摺動ガイド本体46の遠位側ガイド端53に向かって、主摺動ガイド本体46の長手方向延在開口部85の遠位端84によって構成される端部係止部83に当たるまで移動することが可能である。エンドエフェクタ摺動部47の外壁部86には、主摺動ガイド本体46の管状ガイドハウジング50の内部トラック51内を摺動する対向する長手方向延在突出部87が設けられている。第1の操作ストリング固定アーム88は、第1の分岐した本体79の下方の平面において、管状の前部接続片80の近傍のエンドエフェクタ摺動部47から突出している。図11乃至14を参照してさらに詳しく説明するように、第1の操作ストリング固定アーム88は、遠隔駆動組立体6の遠隔操作ハンドル120のトリガボタン125に接続された第1の操作ストリング116を固定または通過させるための第1の目または穴89を有している。
【0142】
接合摺動部47は、内部トラック51に沿って、かつガイドウェイ54に沿って、接合摺動部48の円滑な摺動を制御するとともに促進するように選択された寸法の、摺動部90および突出した第1の摺動シュー91を有する。また、接合摺動部47は、エンドエフェクタ摺動部47の第1の脚部81,82の間を摺動することができる。接合摺動部48は、第1の長手方向延在チャネル9が接合摺動部48の入口ポート94と流体連通し、第2の長手方向延在チャネル10が接合摺動部48の標本ポート72と流体連通するように、チューブ3を受け入れる貫通した軸方向に延びるボア93を有する主接合本体92をさらに備えている。なお、摺動部90は、主接合本体92の前部であってもよい。対向する第1の摺動シュー91は、主接合本体92から突出して内部トラック51内を摺動する。滑車組立体78の滑車部材73用の軸受119は、主摺動ガイド本体46の長手方向延在開口部85を介して、主接合本体92から突出している。軸受119には、遠隔駆動組立体6の滑車組立体78を取り付けるための結合穴121が設けられており、例えば、シャフトやピンを取り付けることができる。滑車部材は、軸受119に回転可能に配置されていても、固定されていてもよい。
【0143】
電気的なジアテルミーワイヤ76は、第3の長手方向延在チャネル15の内部を延び、接合摺動部47のジアテルミーポート95を介して外部に出ており、このジアテルミーポート95は、さらにジアテルミー生成装置(図示しない)の電気プラグ(図示しない)を差し込むように構成されている。
【0144】
貫通ボア93は、チューブ3の第4の長手方向延在チャネル16内の主接合本体92を長手方向に延びて、これにより、針22が通過して針摺動部49に到達できるようになっている。チューブ3の第4の長手方向延在チャネル16は、チューブの長手方向の軸線に対して半径方向にずれており、任意に、すべての長手方向延在チャネルは、チューブの長手方向の軸線に対して半径方向にずれている。
【0145】
第2の操作ストリング固定アーム96は、主接合本体92の下方の面で接合摺動部48から突出している。図12に示すように、第2の操作ストリング固定アーム96は、遠隔駆動組立体6の操作ストリングを案内するための第2の目の穴97を有している。
【0146】
また、針摺動部49は、針22と液体連通する注入口101で合流する対向する第2の脚部99,100によって構成される第2の分岐した本体98を有するという点でも分岐している。第2の脚部99,100は、接合摺動部48の標本ポート72の周囲を把持して、これにより、標本ポート72を当該第2の脚部99,100の間に摺動させることができるように構成されている。
【0147】
接合摺動部48および針摺動部49に結合するために、チューブ3をそれぞれのサブチューブに分割して、第1の長手方向延在チャネル9を接合摺動部48の入口ポート94と連通させ、第2の長手方向延在チャネル10を接合摺動部48の標本ポート72と連通させ、第3の長手方向延在チャネル15を接合摺動部48のジアテルミーポート95と連通させ、第4の長手方向延在チャネル16を、接合摺動部48を介して針摺動部49の注入ポート101内部にまたは注入ポート101に向ける。チューブ3の第4の長手方向延在チャネル16は、チューブ3の第4の長手方向延在チャネル16の内部を延びる針22の周囲をシールしてもよい。なお、針22のみ、あるいは第4の長手方向延在チャネル16および針12が、注入ポート101に続いていてもよい。注入ポート101と針22との間の液体連通を得るための他の配置は、本発明の範囲内にある。薬剤は、例えば、皮下注射針を用いて注入ポートの膜(図示しない)を貫通させることにより、注入ポート101を介して針22に注入することができる。
【0148】
針摺動部49は、主摺動ガイド本体46の管状ガイドハウジング50の外壁部の周囲に適合する、突出するとともに湾曲した可撓性を備えるクランプ102を有している。したがって、針摺動部49は、主摺動ガイド本体46に摺動可能にスナップすることができる。また、突出する湾曲した可撓性を備えるクランプ102は、第2の分岐した本体98の下方に第3の穴の目104を有し、針摺動部49を遠隔駆動組立体6と作動的に連絡させるための第3の操作ストリング118の固定アーム103としても機能し、これにより、針22をエンドエフェクタ22に出し入れすることができる。
【0149】
着脱可能なカバーまたはプラグ105は、主摺動ガイド本体46の近位側ガイド端52を開閉して、摺動部47,48,49およびばね部材55,56をガイドウェイ54に装着することができる。着脱可能なカバーまたはプラグ105は、ホルダ30のホルダ自由端108にある嵌合手段107と堅固に嵌合するための窪みまたは同様の結合部材106を有していてもよい。そのような観点から、ホルダ30のホルダ自由端108および反対側の端部109には、チューブ3を挿入し、当該チューブ3をアダプタ28を介して膀胱鏡2の処置具ポートに案内するための穴110が設けられている。
【0150】
管状ガイドハウジング50は、近位側ガイド端52に第4の目111を有し、反対側の遠位側ガイド端53に第5の目112を有している。
【0151】
滑車組立体78は、第1の滑車トラック114および第2の滑車トラック115を有する滑車部材113と、第1の操作ストリング116と、第2の操作ストリング117と、第3の操作ストリング118とを含む。滑車部材113は、接合摺動部48の軸受119に懸架され、主摺動ガイド本体46の管状ガイドハウジング50の長手方向延在開口部85を通って、当該管状ガイドハウジング50の下方を延び、第2の操作ストリング117を制御下に置き、第1の操作ストリング116および第3の操作ストリング118と絡まないようにしている。
【0152】
第2の操作ストリング117は、主摺動ガイド本体46の管状ガイドハウジング50の遠位側ガイド端53において、第5の目112に固定された第2の遠位側ストリング端117aを有する。次に、第2の操作ストリング117は、ボーデン導管のようなガイドチューブ122のさらに内側にある接合摺動部48の第2の目97を通って滑車組立体78の滑車部材113の第1のトラック114の周囲を延び、遠隔操作ハンドル120のサムホイールやローラのようなホイールボタン125に固定される。第2の操作ストリング117は、ホイールボタン125での固定点から、滑車組立体78の滑車部材113の第2のトラック115を介してガイドチューブ122内に再び戻り、その第2の近位側ストリング端117bが、主摺動ガイド本体46の管状ガイドハウジング50の近位側ガイド端52の第4の目111に固定される。次に、第2の操作ストリング117は、接合摺動部48を往復させて、本発明による内視鏡下手術用装置1の操作端131、ひいては、エフェクタスリーブ17に包囲されたエンドエフェクタ21を有する遠位側チューブ端13を、膀胱鏡の作業チャネルの遠位側開口部に出入りさせて、当該操作端を目標部位に向けて位置決めすることができる。
【0153】
第2の操作ストリング117のこのような配置により、弛みおよび遊びが最小限に抑えられ、例えばボーデン導管であるガイドチューブ122の必要な寸法は、圧縮して使用する場合よりもはるかに小さくなり、それによりガイドチューブ122の座屈や、その内部を延びる操作ストリング116,117,118の閉じ込めを回避することができる。
【0154】
遠隔駆動組立体8の遠隔操作ハンドル120を側面から見た斜視図であり、同図14の内部図では、トリガボタン126、ホイールボタン125および摺動ボタン129および操作ストリング116,117,118の配置を可視化するために、遠隔操作ハンドル120の筐体128の対向する筐体半部128a,128bのうちの筐体半部128aが省略されている。筐体128には、遠隔操作ハンドル120を膀胱鏡2の遠位側チューブ部(図示しない)にスナップオンするためのスナップオン手段132が最前部に設けられている。スナップオン手段132の反対側の筐体には、チューブガイド122のための入口が設けられている。スナップオン手段132は、遠隔操作ハンドル120を、膀胱鏡2の遠位側チューブ部に、そこから直交して突出するように、着脱自在にスナップオンするのに適している。遠隔操作ハンドル120の他のスナップオン方向を容易にするために、筐体にさらに、または他のスナップオン手段を設けることもできる。
【0155】
ホイールボタン125は、その回転軸がばねで付勢されていてもよい。通常の位置では、ホイールボタン125が筐体128に係合することで、ホイールボタン125は、遠隔操作ハンドル120の筐体128に対してロックされる。ホイールボタン125をその操作開口部127に再び押し下げると、回転軸の軸線が移動し、ホイールボタン125は筐体128との係合が解除され、再び回転できるようになる。図14にホイールボタン125の筐体128に対するロック配置を、その操作開口部127の内側および自由側から見た拡大図を示す。遠隔操作ハンドルは、図13に示すように組み立てられた状態になっている。
【0156】
なお、いずれのばね部材55,56も、本発明による内視鏡下手術用装置1の操作端131を膀胱鏡2の作業チャネルから露出させることには関与していない。
【0157】
第1の操作ストリング116は、遠隔操作ハンドル120においてトリガボタン126に固定された第1の遠位側ストリング端116bを有する。第1の操作ストリング116は、ガイドチューブ122を介してその近位側ストリング固定端116aに向かって延び、エンドエフェクタ摺動部47に、例えば第1の目89に取り付けられる。トリガボタン126を作動させてエンドエフェクタ摺動部47を後方に移動させると、エンドエフェクタ21がエフェクタスリーブ17から解放され、第1のばね部材55が接合摺動部48に対して圧縮され、それによってエンドエフェクタ21の顎部19,20がばねで離れることができる。トリガボタン126を解放すると、第1のばね部材55のばね力がエンドエフェクタ21の顎部19,20を限られた力で閉じて、エンドエフェクタ21への損傷を回避し、それによって電気外科的切除シーケンスの再現可能な条件を確保することができる。
【0158】
第3の操作ストリング118は、針摺動部49の第3の目104に固定された第3の近位側ストリング端118aと、対向する第3の遠位側ストリング端118bを遠隔操作ハンドル120の摺動ボタン129に固定して、対向する顎部19,20の間で針摺動部49を往復させる。摺動ボタン129を接合摺動部48に向かって前進させると、第2のばね部材56が圧縮され、これにより針摺動部にばね力がかかり、一旦摺動ボタンが第2のばね部材56上の圧縮力を解除すると、針摺動部49を後退させて針22を格納することができる。
【0159】
摺動ボタン129の動作、ひいては第2のばね部材55の圧縮力の解除がいつ行われるかの制御を維持するために、摺動ボタン129は、トリガボタン126に面したラチェット延長部130を有していてもよい。ラチェット延長部130は、トリガボタン126上の嵌合ラチェットと係合して、摺動ボタン129およびトリガボタン126を連動させ、これにより、トリガボタン126は第1のばね部材55のばね力を意図せずに解放せず、針がまだ当該顎部19,20の間に露出している間に、エフェクタスリーブ17を意図せず前方に押して顎部19,20を閉じることがないようにすることができる。
【0160】
図15は、内視鏡下手術用装置をその開始位置に置いた状態を示す。いずれのばね部材55,56も付勢されておらず、エンドエフェクタ21はエフェクタスリーブ17の内部にあり、ホイールボタン125はその操作開口部127で筐体128にロックされている。
【0161】
図16の状況では、ホイールボタン125のロックが解除され、回転して内視鏡(図示しない)の遠位端から内視鏡下手術用装置1の操作端を前進させている。この前進中に、接合摺動部48の滑車部材73に第2の操作ストリング117が結合されることにより、接合摺動部48が前進する。針摺動部49に接続された針22は、接合摺動部がガイドウェイ54内を移動する際に、接合摺動部48の内部またはそれに沿って摺動する。
【0162】
図17の状況では、トリガボタン126が作動してエフェクタスリーブ17からエンドエフェクタ21を露出させ、それによってエンドエフェクタ21の対向する顎部19,20が開く。トリガボタン126を押し下げると、第1の操作ストリング116が引っ張られ、第1の操作ストリング116がエンドエフェクタ摺動部47を近位側ガイド端52に向かって引っ張る。それにより、接合摺動部は、エンドエフェクタ摺動部47の対向する脚部81,82の間の少なくとも一部の位置にあり、このエンドエフェクタ摺動部47は、エフェクタスリーブが端から端まで取り付けられている補強コイルを引っ込め、それにより、エンドエフェクタ21を自由にし、対向する顎部19,20は、内視鏡下手術用装置1の作動端131の図18の拡大図に示すように、本質的に開放可能になっている。
【0163】
第3の操作ストリング118が摺動ボタン129および針摺動部49の両者に固定されているため、摺動ボタン129を前方に摺動させることで、針摺動部49を接合摺動部48に向かって移動させることができ、それによって、図19および図20に示すように、針22を開いた顎部19,20の間およびそれを越えて移動させ、注射を行うことができる。針22が露出している間に顎部が意図せずして確実に閉じないようにするために、摺動ボタン129およびトリガボタン126が注射中に係合する。
【0164】
摺動ボタンを反対方向に動かすと針が後退し、トリガボタンを離してエフェクタスリーブを前進させると、顎部が続いて組織の周囲に閉じられる。そして、組織標本を切除するために、例えばジアテルミー生成装置のフットペダルを操作することによって、ジアテルミーが適用される。
【0165】
エンドエフェクタ21に関して、当該エンドエフェクタは、可撓性を備えた部材19a,20aにより、エンドエフェクタ21がエフェクタスリーブ17の外に少なくとも部分的に出ているときの弛緩状態において、エンドエフェクタの長手方向の軸線から分岐するように配置された対向する顎部19,20を有している。
【0166】
外側プラスチックチューブを内視鏡下手術用装置の長手方向に熱収縮させて接合部をシールし、内視鏡下手術用装置を作業チャネルから絶縁し、コイル状の補強部材をエフェクタスリーブに端から端まで熱融着で結合して、エフェクタスリーブを長手方向に移動させ、エンドエフェクタ摺動部を操作して顎部を開閉できるようにしてもよい。
【0167】
本発明による多機能内視鏡下手術用装置は、中空の臓器から生検を行う全く新しい方法を提案している。このような患者の治療には、まったく新しい条件が必要である。コストを大幅に削減でき、患者の利益も非常に高いものになる。外来患者の癌を数分で診断し、修正することが定期的にできるようになる。手術後はカテーテル治療が不要になるため、カテーテルによる尿路感染のリスクもなくなる。医師および看護師がいれば十分であり、様々な部門のスタッフが参加する必要がなくなるため、大幅なコスト削減になり、患者はより迅速に癌治療を受けることができ、手術のキャパシティも他の目的のために解放される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20