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特許7451533ジルコニア系複合酸化物、及び、ジルコニア系複合酸化物の製造方法
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  • 特許-ジルコニア系複合酸化物、及び、ジルコニア系複合酸化物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ジルコニア系複合酸化物、及び、ジルコニア系複合酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20240311BHJP
   C01G 27/00 20060101ALI20240311BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20240311BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C01G25/00
C01G27/00
B01J21/06 A
B01J32/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021536905
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027337
(87)【国際公開番号】W WO2021020104
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019140119
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 大志
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/115436(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/145787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
C01G 27/00
B01J 21/06
B01J 32/00
C04B 35/488
C01G 35/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含み、
ジルコニア系複合酸化物全体を100質量%としたとき、ジルコニアの含有量が30質量%以上95質量%以下であり、セリアの含有量が0質量%以上70質量%以下であり、セリア以外の希土類酸化物の含有量が0質量%以上30質量%以下であり、その他の元素の酸化物の含有量が0質量%以上20質量%以下であり、
前記その他の元素の酸化物は、
A)In、Si、Sn、Bi及びZnからなる群から選ばれる1種以上の酸化物、
B)遷移金属酸化物(但し、希土類元素及び貴金属元素の酸化物を除く)、及び、
C)アルカリ土類金属酸化物
からなる群から選ばれる1種以上の酸化物であり、
タップかさ密度が0.75g/ml以上であり、
1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上であることを特徴とするジルコニア系複合酸化物(ただし、アルミニウムを含む場合を除く)。
【請求項2】
前記タップかさ密度が0.8g/ml以上1.3g/ml以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア系複合酸化物。
【請求項3】
前記タップかさ密度が0.83g/ml以上1.27g/ml以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア系複合酸化物。
【請求項4】
前記1000℃3時間熱処理後の比表面積が47m/g以上100m/g以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のジルコニア系複合酸化物。
【請求項5】
1100℃3時間熱処理後の比表面積が15m/g以上70m/g以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載のジルコニア系複合酸化物。
【請求項6】
比表面積が45m/g以上150m/g以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1に記載のジルコニア系複合酸化物。
【請求項7】
水銀圧入法に基づく細孔分布において、全細孔容積に対する100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積の割合が、全細孔容積の17%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載のジルコニア系複合酸化物。
【請求項8】
粒子径D50が5μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれ
【請求項9】
請求項1~のいずれか1に記載のジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
撹拌レイノルズ数400以上2000以下で撹拌しながら、温度100℃以上のジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤を添加する工程と、前記硫酸塩化剤を添加した後、60℃以下になるまで冷却する工程とを含む第1工程と、
前記第1工程にて得た冷却された溶液を撹拌レイノルズ数10以上350以下で撹拌しながら、温度100℃以上に加熱する工程を含む第2工程とを有することを特徴とするジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項10】
前記第2工程における撹拌レイノルズ数が50以上300以下であることを特徴とする請求項に記載のジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項11】
前記第1工程における撹拌レイノルズ数が600以上1800以下であることを特徴とする請求項又は10に記載のジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項12】
前記第1工程における撹拌時の温度が105℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項11のいずれか1に記載のジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項13】
前記第2工程における撹拌時の温度が105℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項12のいずれか1に記載のジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア系複合酸化物、及び、ジルコニア系複合酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関やボイラー等の燃焼機関から排出される排気ガス中には、大気汚染等の原因となる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)といった有害物質が含まれている。これらの有害物質を効率良く浄化させることは、環境汚染防止等の観点から重要な課題であり、上記三成分の有害物質を同時に浄化することが可能な排気ガス浄化技術の研究も盛んに行われている。
【0003】
また、近年の排ガス規制強化に伴い、粒子状物質を捕集するフィルター(例えば、GPF(gasoline particulate filter)やDPF(Diesel Particulate Filter))に、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物を浄化する三元触媒性能を持たせたハニカム構造体の開発が進められている。触媒材料は、スラリー化された状態でハニカム構造体にコーティングして使用される。
【0004】
特許文献1には、BJH法に基づく細孔分布において、8~20nm及び30~100nmの気孔径にピークを有し、かつ、全気孔容量が0.4cc/g以上であるジルコニア系多孔質体や、BJH法に基づく細孔分布において、20~110nmの気孔径にピークを有し、かつ、全気孔容量が0.4cc/g以上であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。また、特許文献1には、1000℃で3時間焼成後の比表面積が、少なくとも30m/gであることが開示されている(特に請求項6参照)。
【0005】
特許文献2には、1000℃で3時間熱処理後の全細孔容積が少なくとも0.75ml/gであり、且つ、1000℃で3時間熱処理後の10~100nmの直径を有する細孔の細孔容積が全細孔容積の少なくとも30%であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。また、特許文献2には、1000℃で3時間熱処理後の比表面積が少なくとも35m/gであることが開示されている(特に請求項2参照)。
【0006】
特許文献3には、1)BJH法に基づく細孔分布において、20~100nmの細孔径にピークを有し、測定した細孔分布曲線から求められるピークの半価幅をWとし、ピークの高さをPとしたときのP/W比が0.05以上であり、全細孔容量が0.5cm/g以上であり、(2)1000℃で12時間の熱処理後において、20~100nmの細孔径にピークを有し、前記P/W比が0.03以上であり、少なくとも40m/gの比表面積を有し、全細孔容量が0.3cm/g以上であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。また、特許文献3には、1100℃で12時間の熱処理後において、少なくとも20m/gの比表面積を有することが開示されている(特に請求項2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-036576号公報
【文献】特開2008-081392号公報
【文献】特開2015-189655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に開示されたジルコニア系多孔質体によれば、熱処理後においても高い比表面積を有する。そのため、これらのジルコニア系多孔質体を触媒担体として使用すれば、当該触媒は高温に晒された後も、高い触媒性能を有するといえる。特許文献1~3では、熱処理後においても高い比表面積を得るために、ジルコニア系多孔質体のメソ孔(直径2~50nm)~マクロ孔(直径50nm以上)の細孔容積を高容量化させている。
【0009】
特許文献1~3のジルコニア系多孔質体を用いる場合、高温に晒された後も高い触媒性能を有する一方、排ガス処理に充分に機能する量の触媒をハニカム構造体の壁に形成するには、触媒層をある程度の厚みとする必要がある。しかしながら、触媒層の厚みが増すと排気ガスの圧力損失が生じ、ハニカム構造体内の排ガス通気量が減少し、エンジン出力の低下や排ガス浄化性能の低下を招くといった問題がある。
【0010】
従来より、触媒層の厚みを薄くして圧力損失を低減する検討は行われているが、排ガス浄化能を一定以上の水準に保つ必要があり、厚みを薄くするにも限界がある。特許文献1~3においても、排ガス浄化能と圧力損失の低減との両立に観点おいて、改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、触媒層の厚さを薄くしても排ガス処理に充分に機能する量の触媒をハニカム構造体の壁に形成することを可能とするジルコニア系複合酸化物を提供することにある。また、当該ジルコニア系複合酸化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ジルコニア系複合酸化物について鋭意研究を行った。その結果、驚くべきことに、熱処理後においても高い比表面積を有し、且つ、タップかさ密度の高いジルコニア系複合酸化物を用いれば、触媒層の厚さを薄くしても排ガス処理に充分に機能する量の触媒をハニカム構造体の壁に形成することができることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係るジルコニア系複合酸化物は、
タップかさ密度が0.75g/ml以上であり、
1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上であることを特徴とする。
【0014】
一般に、触媒コンバーターの製造においては、貴金属等の触媒を担持した複合酸化物のスラリーをハニカム構造体にコーティングし、乾燥及び焼成工程を経て触媒層を形成する。本発明者らは、タップかさ密度に着目し、タップかさ密度を高くすれば、触媒層の厚さを薄くできると考えた。
前記構成によれば、タップかさ密度が0.75g/ml以上であるため、スラリー化し、ハニカム構造体に塗布する際に、コート厚を薄くしつつ、且つ、単位体積当たりの触媒担体量を増加させることができる。その結果、触媒層が薄くても充分な排ガス浄化能を有する。また、前記構成によれば、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上であるため、熱処理後においても高い比表面積を有するといえる。従って、高温に晒された後も、高い触媒性能を有するといえる。
以上より、前記構成によれば、触媒層の厚さを薄くしても排ガス処理に充分に機能する量の触媒をハニカム構造体の壁に形成することが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記タップかさ密度が0.8g/ml以上1.3g/ml以下であることが好ましい。
【0016】
前記構成において、前記タップかさ密度が0.83g/ml以上1.27g/ml以下であることが好ましい。
【0017】
前記構成において、前記1000℃3時間熱処理後の比表面積が47m/g以上100m/g以下であることが好ましい。
【0018】
前記構成において、1100℃3時間熱処理後の比表面積が15m/g以上70m/g以下であることが好ましい。
【0019】
1100℃3時間熱処理後の比表面積が15m/g以上であると、より高温に晒された後も、高い触媒性能を有するといえる。
【0020】
前記構成において、比表面積が45m/g以上150m/g以下であることが好ましい。
【0021】
比表面積が45m/g以上であると、熱処理前(高温に曝される前)の状態において比較的高い比表面積を有するといえる。
【0022】
前記構成においては、水銀圧入法に基づく細孔分布において、全細孔容積に対する100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積の割合が、全細孔容積の17%以下であることが好ましい。
【0023】
水銀圧入法に基づく細孔分布において、全細孔容積に対する100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積の割合が、全細孔容積の17%以下であると、タップかさ密度0.75g/ml以上、且つ、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積45m/g以上を容易に達成することができる。これは、本発明者らが以下を発見したことによる。
【0024】
本発明者らは、ジルコニア系複合酸化物の細孔径と物性との関係につき、次のことを発見した。
(1)直径10-100nmの細孔は一次粒子の凝集により形成される。
(2)直径10-100nmの細孔容積を多くすることにより、熱処理後の比表面積を高くすることができる。
(3)直径100nm以上の細孔の容積が熱処理後の比表面積に与える影響は小さい。
(4)直径100nm以上の細孔の容積は、ジルコニア系複合酸化物のタップかさ密度に大きく影響する。
【0025】
本発明者らは、以上の発見により、直径100nm以上の細孔容積を低減することでタップかさ密度を大きくできると考えた。つまり、ジルコニア系複合酸化物の直径10-100nmの細孔容積を多くし、100nm以上の細孔容積を少なくすることで、ジルコニア系複合酸化物の熱処理後の比表面積を高く維持でき、且つ、タップかさ密度を高くすることができると考えた。その結果、水銀圧入法に基づく細孔分布において、100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積が、全細孔容積の17%以下であると、タップかさ密度が0.75g/ml以上、且つ、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上を容易に達成することができることを見出した。
【0026】
前記構成において、粒子径D50が5μm以上25μm以下であることが好ましい。
【0027】
粒子径D50が5μm以上25μm以下であると、タップかさ密度を高くし易い。
【0028】
前記構成において、ジルコニア系複合酸化物全体を100質量%としたとき、ジルコニアの含有量が30質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0029】
ジルコニアの含有量が30質量%以上95質量%以下であると、触媒担体として好適に使用できる。
【0030】
前記構成においては、Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むことが好ましい。
【0031】
Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むと、比表面積の熱安定性を向上させることができる。すなわち、高温に晒される前後において、比表面積の変化量を少なくすることができ、その結果、触媒性能が大きく低下しないようにすることができる。
【0032】
また、本発明に係るジルコニア系複合酸化物の製造方法は、
前記ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
撹拌レイノルズ数400以上2000以下で撹拌しながら、温度100℃以上のジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤を添加する工程と、前記硫酸塩化剤を添加した後、60℃以下になるまで冷却する工程とを含む第1工程と、
前記第1工程にて得た冷却された溶液を撹拌レイノルズ数10以上350以下で撹拌しながら、温度100℃以上に加熱する工程を含む第2工程とを有することを特徴とする。
【0033】
前記構成においては、第1工程において撹拌レイノルズ数400以上2000以下で撹拌しながら、温度100℃以上のジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤を添加する。
第1工程は、一次粒子の生成・凝集を制御する工程であり、換言すると直径10-100nmの細孔容積を制御する工程である。従って、第1工程の反応条件は、比表面積の耐熱性(熱処理した後の比表面積)に大きく影響する。一次粒子の凝集状態は反応温度等の化学的な要因と、乱流によるせん断応力等の物理的な要因が支配する。第1工程では、温度100℃以上、撹拌レイノルズ数400以上2000以下に制御することで一次粒子の凝集状態を制御し、直径10-100nmの細孔容積を好適な範囲となるように(多くなるように)制御する。
また、前記構成においては、第2工程において前記第1工程にて得た冷却された溶液を撹拌レイノルズ数10以上350以下で撹拌しながら、温度100℃以上に加熱する。
第2工程は、第1工程で得られた塩基性硫酸ジルコニウムスラリーの凝集状態をさらに制御する工程である。第2工程では、撹拌を撹拌レイノルズ数10以上350以下の層流とすることで二次粒子以上の高次粒子の大きさを制御し、直径100nm以上の細孔容積を好適な範囲となるように(少なくなるように)制御する。
以上より、前記ジルコニア系複合酸化物の製造方法によれば、直径10-100nmの細孔容積が多く、直径10-100nmの細孔容積が少ないジルコニア系複合酸化物を容易に製造できるため、タップかさ密度が0.75g/ml以上であり、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上であるジルコニア系複合酸化物を容易に製造することが可能となる。
【0034】
前記構成において、前記第2工程における撹拌レイノルズ数が50以上300以下であることが好ましい。
【0035】
前記構成において、前記第1工程における撹拌レイノルズ数が600以上1800以下であることが好ましい。
【0036】
前記構成において、前記第1工程における撹拌時の温度が105℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0037】
前記構成において、前記第2工程における撹拌時の温度が105℃以上180℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、触媒層の厚さを薄くしても排ガス処理に充分に機能する量の触媒をハニカム構造体の壁に形成することを可能とするジルコニア系複合酸化物を提供することができる。また、当該ジルコニア系複合酸化物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施例1、及び、比較例1のジルコニア系複合酸化物の細孔分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、ジルコニアとは一般的なものであり、ハフニアを含めた10質量%以下の不純物金属化合物を含むものである。
【0041】
[ジルコニア系複合酸化物]
本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物は、詳しくは後述するが、ジルコニアを必須成分とし、ジルコニア以外の酸化物(他の金属酸化物)との複合酸化物である。本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物の用途は、特に限定されないが、排ガス浄化用触媒担体として有用である。排ガス浄化用触媒担体として使用する場合、担持し得る触媒としては、貴金属触媒などが挙げられる。
【0042】
<タップかさ密度>
本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物は、タップかさ密度が0.75g/ml以上である。タップかさ密度が0.75g/ml以上であるため、スラリー化し、ハニカム構造体に塗布する際に、コート厚を薄くしつつ、且つ、単位体積当たりの触媒担体量を増加させることができる。その結果、触媒層が薄くても充分な排ガス浄化能を有する。
なお、ジルコニア系複合酸化物をスラリーとして塗布した後の触媒層中の単位体積当たりの触媒担体量は、ジルコニア系複合酸化物のタップかさ密度と比例関係にあることを本発明者らは確認している。
前記タップかさ密度は、好ましくは0.8g/ml以上、より好ましくは、0.83g/ml以上、さらに好ましくは0.85g/ml以上、特に好ましくは0.9g/ml以上である。前記タップかさ密度は、上限値に特に制限はないが、好ましくは1.3g/ml以下、より好ましくは1.27g/ml以下、さらに好ましくは1.25g/ml以下、特に好ましくは1.2g/ml以下、特別に好ましくは1.15g/mlである。
【0043】
<比表面積>
前記ジルコニア系複合酸化物は、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上である。1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上であるため、熱処理後においても高い比表面積を有するといえる。つまり、担体としてのジルコニア系複合酸化物に坦持した貴金属の劣化(凝集・肥大化)を抑制できる。従って、高温に晒された後も、高い触媒性能を有するといえる。
【0044】
前記1000℃で3時間熱処理した後の比表面積は、好ましくは47m/g以上、より好ましくは50m/g以上、さらに好ましくは53m/g以上である。
前記1000℃で3時間熱処理した後の比表面積は、上限値に特に制限はないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは95m/g以下、さらに好ましくは90m/g以下である。
なお、前記1000℃3時間熱処理した後の比表面積は、一般的に、熱処理前の比表面積と比較して低くなる。
【0045】
前記ジルコニア系複合酸化物は、1100℃3時間熱処理後の比表面積が15m/g以上であることが好ましい。1100℃3時間熱処理後の比表面積が15m/g以上であると、より高温に晒された後も、高い触媒性能を有するといえる。
【0046】
前記1100℃3時間熱処理後の比表面積は、より好ましくは17m/g以上、さらに好ましくは20m/g以上、特に好ましくは23m/g以上である。
前記1100℃3時間熱処理後の比表面積は、上限値に特に制限はないが、好ましくは70m/g以下、より好ましくは65m/g以下、さらに好ましくは60m/g以下である。
なお、前記1100℃3時間熱処理した後の比表面積は、一般的に、熱処理前の比表面積や、1000℃3時間熱処理した後の比表面積と比較して低くなる。
【0047】
前記ジルコニア系複合酸化物は、比表面積(初期の比表面積)が45m/g以上150m/g以下であることが好ましい。前記比表面積が45m/g以上150m/g以下であると、熱処理前(高温に曝される前)の状態において比較的高い比表面積を有するといえる。ここで、比表面積(初期の比表面積)とは、ジルコニア系複合酸化物を製造した後の、加熱処理や粉砕処理等を行っていない状態での比表面積をいう。
【0048】
前記比表面積(初期の比表面積)は、好ましくは45m/g以上、より好ましくは50m/g以上、さらに好ましくは55m/g以上である。
前記比表面積は、上限値に特に制限はないが、好ましくは150m/g以下、より好ましくは145m/g以下、さらに好ましくは140m/g以下、特に好ましくは135m/g以下、特別に好ましくは130m/g以下である。
【0049】
前記1000℃で3時間熱処理した後の比表面積、前記1100℃で3時間熱処理した後の比表面積、及び、前記比表面積(初期の比表面積)は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0050】
<細孔容積>
本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物は、全細孔容積に対する100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積の割合(以下、「細孔容積率A」ともいう)が、全細孔容積の17%以下であることが好ましい。前記細孔容積率Aが、全細孔容積の17%以下であると、タップかさ密度が0.75g/ml以上、且つ、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上を容易に達成することができる。このことは、実施例からも明らかである。
【0051】
前記細孔容積率Aは、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下、特に好ましくは10%以下である。前記細孔容積率Aは、下限値に特に限定はないが、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上である。
【0052】
前記全細孔容積は、好ましくは0.5ml/g以上、より好ましくは0.7ml/g以上、さらに好ましくは0.8ml/g以上である。
前記全細孔容積は、好ましくは2.0ml/g以下、より好ましくは1.9ml/g以下、さらに好ましくは1.8ml/g以下である。
【0053】
100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積は、好ましくは、0.01ml/g以上、より好ましくは0.02ml/g以上、さらに好ましくは0.03ml/g以上である。
100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積は、好ましくは0.20ml/g以下、より好ましくは0.19ml/g以下、さらに好ましくは0.18ml/g以下である。
【0054】
10nm以上100nm未満の直径を有する細孔の細孔容積は、好ましくは、0.20ml/g以上、より好ましくは0.25ml/g以上、さらに好ましくは0.30ml/g以上である。10nm以上100nm未満の直径を有する細孔の細孔容積が0.20ml/g以上であると、1000℃3時間熱処理を行った後の比表面積をより高めることができる。
10nm以上100nm未満の直径を有する細孔の細孔容積は、好ましくは1.00ml/g以下、より好ましくは0.95ml/g以下、さらに好ましくは0.90ml/g以下である。
【0055】
前記全細孔容積、前記10nm以上100nm未満の直径を有する細孔の細孔容積、前記100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積の求め方の詳細は、実施例に記載の方法による。
【0056】
<粒子径>
前記ジルコニア系複合酸化物の粒子径D50は、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは8μm~90μm、さらに好ましくは10μm~80μmである。粒子径D が5μm以上100μm以下であると、タップかさ密度を高くし易い。つまり、粒子径D50が小さすぎるとタップかさ密度が低くなる傾向となるが、本実施形態のように、粒子径D50を比較的大きく(例えば、5μm~100μm)することにより、タップかさ密度を高くし易くなる。
なお、前記ジルコニア系複合酸化物においては、粒子径D50が小さいほど密に充填されやすくなることはない。むしろ、ジルコニア系複合酸化物は多孔質状であるために単位体積当たりの質量が軽いことや、形状が真球ではないこと等のために、粒子径D50が小さいほどタップかさ密度は小さくなる傾向にある。
前記粒子径D50は、前記ジルコニア系複合酸化物を製造した後、粉砕や熱処理されていない状態での粒子径をいう。上記の「粉砕」とは、細かく砕くことをいい、遊星ミル、ボールミル、ジェットミル等の一般的な手法で粉砕することをいう。
【0057】
前記粒子径D50は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0058】
<組成>
前記ジルコニア系複合酸化物は、ジルコニアを含有する。前記ジルコニアの含有量は、前記ジルコニア系複合酸化物全体を100質量%としたとき、好ましく30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上である。前記ジルコニアの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記ジルコニアの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。前記ジルコニアの含有量が30質量%以上95質量%以下であると、触媒担体として好適に使用できる。
【0059】
前記ジルコニア系複合酸化物は、希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むことが好ましい。
【0060】
前記希土類元素とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいう。ただし、前記ジルコニア系複合酸化物は、Pmを含まないことが好ましい。つまり、前記ジルコニア系複合酸化物は、Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むことがより好ましい。
【0061】
Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むと、比表面積の熱安定性を向上させることができる。すなわち、高温に晒される前後において、比表面積の変化量を少なくすることができ、その結果触媒性能が大きく低下しないようにすることができる。
【0062】
前記希土類元素の中でも、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)が好ましい。これらの中でもY、La、Ceがより好ましく、La、Ceがさらに好ましく、Ceが特に好ましい。すなわち、前記ジルコニア系複合酸化物は、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、及び、酸化イットリウムからなる群から選ばれる1種以上の酸化物を含有することが好ましい。
【0063】
前記ジルコニア系複合酸化物は、ジルコニア、及び、前記希土類元素の酸化物以外に、
A)In、Si、Sn、Bi及びZnからなる群から選ばれる1種以上の酸化物
B)遷移金属酸化物(但し、希土類元素及び貴金属元素の酸化物を除く)、及び、
C)アルカリ土類金属酸化物
からなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物を含むことができる。
以下、A)~C)で示した元素を、本明細書では、「その他の元素」ということとする。前記ジルコニア系複合酸化物が前記その他の元素の酸化物を含む場合、前記その他の元素の酸化物の含有量は、前記ジルコニア系複合酸化物全体を100質量%としたとき、酸化物換算で0.1質量%以上とすることができる。前記その他の元素の酸化物の含有量は、上限に制限は特にないが、20質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下等とすることができる。
前記遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W等が挙げられる。前記アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。
【0064】
前記ジルコニア系複合酸化物の好ましい組成比率としては、下記(1)~(4)に例示される合計100%を超えない組合せが挙げられる。
(1) ジルコニア;30%以上95%以下
セリア;0%以上70%以下
セリア以外の希土類酸化物;0%以上30%以下
その他の元素の酸化物;0%以上20%以下
(2) ジルコニア;35%以上92%以下
セリア;5%以上65%以下
セリア以外の希土類酸化物;0%以上25%以下
その他の元素の酸化物;0%以上10%以下
(3) ジルコニア;40%以上90%以下
セリア;10%以上60%以下
セリア以外の希土類酸化物;0%以上20%以下
その他の元素の酸化物;0%以上7%以下
(4) ジルコニア;45%以上85%以下
セリア;10%以上55%以下
セリア以外の希土類酸化物;0%以上20%以下
その他の元素の酸化物;0%以上5%以下
【0065】
前記ジルコニア系複合酸化物の組成は、実施例記載の方法により特定される。
【0066】
本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物によれば、タップかさ密度が0.75g/ml以上であり、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m/g以上であるため、触媒層の厚さを薄くしても排ガス処理に充分に機能する量の触媒をハニカム構造体の壁に形成することが可能となる。その結果、触媒層の厚さに起因する圧損を低減でき、自動車等の燃費を向上させることができる。また、単位体積当たりにコートできる触媒量が増加するため、単位体積当たりの酸素貯蔵能(OSC)を向上させることができる。単位体積当たりのOSCを向上させることで、その結果として、触媒性能を向上させることができる。
【0067】
[ジルコニア系複合酸化物の製造方法]
以下、ジルコニア系複合酸化物の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明のジルコニア系複合酸化物の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0068】
本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物の製造方法は、
撹拌レイノルズ数400以上2000以下で撹拌しながら、温度100℃以上のジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤を添加する工程と、前記硫酸塩化剤を添加した後、60℃以下になるまで冷却する工程とを含む第1工程と、
前記第1工程にて得た冷却された溶液を撹拌レイノルズ数10以上350以下で撹拌しながら、温度100℃以上に加熱する工程を含む第2工程とを有する。
【0069】
<第1工程>
本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、まず、撹拌レイノルズ数400以上2000以下で撹拌しながら、温度100℃以上のジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤を添加する(第1-1工程)。
【0070】
ここで、攪拌レイノルズ数(Re)について説明する。
攪拌レイノルズ数(Re)は、以下の式で表される。
Re=ρnd/μ
d:翼径[m]
n:翼回転数[s-1
ρ:密度[kg/m
μ:粘度[Pas]
【0071】
通常、撹拌レイノルズ数が10以下では、撹拌液は回転方向の流れが主に発生する厳密な層流流動状態にある。撹拌レイノルズ数が10を上回ると次第に翼からの吐出流が発生し、槽内に循環流が起こる。さらに、撹拌レイノルズ数が400以上となると、乱流が発生し始める。撹拌レイノルズ数が数百から数千の範囲は遷移状態と考えられ、翼近傍で乱流が発生しはじめ、翼から離れた槽壁、槽底近傍では層流的な流れが残っている状態である。
【0072】
第1-1工程は、一次粒子の生成・凝集を制御する工程であり、換言すると直径10-100nmの細孔容積を制御する工程である。従って、第1工程の反応条件は、比表面積の耐熱性(熱処理した後の比表面積)に大きく影響する。一次粒子の凝集状態は反応温度等の化学的な要因と、乱流によるせん断応力等の物理的な要因が支配する。第1工程では、温度100℃以上、撹拌レイノルズ数400以上2000以下に制御することで一次粒子の凝集状態を制御し、直径10-100nmの細孔容積を好適な範囲となるように(多くなるように)制御する。
【0073】
上述したように、第1-1工程では、微細な一次粒子が生じやすいように、乱流となる撹拌レイノルズ数400以上2000以下で撹拌しながら、温度100℃以上のジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤を添加する。
前記第1-1工程における撹拌レイノルズ数は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上、特に好ましくは800以上である。前記第1-1工程における撹拌レイノルズ数は、好ましくは1900以下、より好ましくは1800以下、さらに好ましくは1700以下、特に好ましくは1600以下である。
【0074】
前記第1-1工程における撹拌の温度は、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上である。前記第1-1工程における撹拌の温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。
ジルコニウム塩溶液と硫酸塩化剤とは、通常65℃以上の温度において反応し、塩基性硫酸ジルコニウムが生成する。そこで、本実施形態では、第1工程における撹拌時の温度を100℃以上とすることにより、適度に硫酸塩化反応を促進させ、微細な一次粒子が形成され易くなるようにしている。第1工程における撹拌時の温度が低すぎると、硫酸塩化反応が遅くなり、大きな凝集粒子が生成され易くなる傾向となる。
【0075】
前記第1-1工程における圧力は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.2×10以上である。また、前記圧力は、特に限定されないが、好ましくは1.5×10Pa以下、より好ましくは1.4×10Pa以下である。
【0076】
硫酸塩化剤の添加は、ジルコニウム塩溶液と同温度としてから行うことが好ましい。ジルコニウム塩溶液は硫酸塩化剤と反応し、塩基性硫酸ジルコニウムが生成する。
【0077】
ジルコニウム塩としては、ジルコニウムイオンを供給するものであればよく、例えば、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等を使用できる。これらは1種又は2種以上で使用できる。この中でも、工業的規模での生産性が高い点でオキシ塩化ジルコニウムが好ましい。
【0078】
ジルコニウム塩溶液を作るための溶媒としては、ジルコニウム塩の種類に応じて選択すればよい。通常は水(純水、イオン交換水、以下同様)が好ましい。
【0079】
ジルコニウム塩溶液の濃度は特に制限されないが、一般的には溶媒1000g中に酸化ジルコニウム(ZrO)として5~250g(特に20~150g)含有されることが望ましい。
【0080】
硫酸塩化剤としては、ジルコニウムイオンと反応して硫酸塩を生成させるもの(すなわち、硫酸塩化させる試薬)であれば限定されず、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等が例示される。硫酸塩化剤は、粉末状、溶液状等のいずれの形態でもよいが、溶液(特に水溶液)が好ましい。溶液を用いる場合の溶液の濃度は適宜設定できる。
【0081】
硫酸塩化剤は、硫酸根(SO 2-)/ZrOの重量比が0.3~0.6となるように添加することが好ましい。また、混合液のフリーの酸濃度は、0.2~2.2N(規定)とすることが好ましい。フリーの酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等が例示される。フリーの酸の種類は限定されないが、塩酸が工業的規模での生産性が高い点で好ましい。
【0082】
硫酸塩化剤を添加した後(第1-1工程の後)、反応液を10~60分保持し、生成した塩基性硫酸ジルコニウムを熟成させることが好ましい(第1-2工程)。塩基性硫酸ジルコニウムとしては限定されないが、例えば、ZrOSO・ZrO、5ZrO・3SO、7ZrO・3SO等の化合物の水和物が例示される。なお、塩基性硫酸ジルコニウムは、これらの1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0083】
反応液を10~60分保持する工程(第1-2工程)の際、前記第1-1工程での攪拌をそのまま継続して行うことが好ましい。
【0084】
その後(前記第1-2工程の後)、反応液を60℃以下になるまで冷却する(第1-3工程)。
【0085】
前記冷却は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。前記冷却は、下限温度は特に制限はないが、反応液が凍結しない程度が好ましく、例えば、10℃以上、20℃以上等が挙げられる。前記冷却の速度は、特に制御する必要はなく、自然放冷としてよい。ただし、スケールが大きい場合には、自然冷却に時間がかかるため、熱交換器等を使用して冷却してもよい。この場合、冷却速度は、例えば、0.1℃/分以上20℃/分以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0086】
以上、第1工程について説明した。
【0087】
<第2工程>
第1工程の後、前記第1工程にて得た冷却された溶液を撹拌レイノルズ数10以上350以下で撹拌しながら、温度100℃以上に加熱する(第2-1工程)。
【0088】
第2-1工程は、第1工程で得られた塩基性硫酸ジルコニウムスラリーの凝集状態をさらに制御する工程である。第2工程では、撹拌を撹拌レイノルズ数10以上350以下の層流とすることで二次粒子以上の高次粒子の大きさを制御し、直径100nm以上の細孔容積を好適な範囲となるように(少なくなるように)制御する。
【0089】
上述したように、第2-1工程では、粒子の凝集を促進させるために、乱流を発生させずに層流のみが起きるように撹拌レイノルズ数10以上350以下で撹拌しながら、温度100℃以上に加熱する。
【0090】
加熱速度としては、特に制限はないが、0.1℃/分以上10℃/分以下の範囲で適宜設定すればよい。
【0091】
前記第2-1工程における撹拌レイノルズ数は、10以上であり、好ましくは20以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。前記第2-1工程における撹拌レイノルズ数は、350以下であり、好ましくは300以下、より好ましくは250以下、さらに好ましくは220以下である。
前記第2-1工程においては撹拌レイノルズ数10以上350以下で撹拌することにより反応槽内を層流とし、硫酸塩化反応において凝集を促進させることができる。その結果、直径100nm以上の細孔容積を低減でき、タップかさ密度の高い粉末となる。
【0092】
前記第2-1工程における加熱温度は、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上である。前記第2-1工程における撹拌の温度は、好ましくは180℃以下、より好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。
【0093】
前記第2-1工程における圧力は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.2×10以上である。また、前記圧力は、特に限定されないが、好ましくは1.5×10Pa以下、より好ましくは1.4×10Pa以下である。
【0094】
温度が100℃以上となった後、反応液を10~60分保持し、生成した塩基性硫酸ジルコニウムを熟成させることが好ましい(第2-2工程)。
【0095】
反応液を10~60分保持する工程(第2-2工程)の際、前記第2-1工程での攪拌をそのまま継続して行うことが好ましい。
【0096】
その後(前記第2-2工程の後)、反応液を50℃以下になるまで冷却する(第2-3工程)。以上により、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーが得られる。
【0097】
前記冷却は、前記第1-2工程と同様とすればよい。
【0098】
以上、第2工程について説明した。
【0099】
その後、前記ジルコニア系複合酸化物に希土類元素、及び、その他の元素からなる群から選択される1種以上の酸化物を含有させる場合には、第2工程の後であって後述する中和工程の前に、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに、所定量の希土類元素、及び、その他の元素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属の塩溶液、又は、化合物を添加する。
【0100】
前記第1工程、前記第2工程(特に、前記第1-1工程、前記第2-1工程)は、温度、及び、圧力の管理が容易であるオートクレーブ中で行うことが好ましい。
【0101】
次に、前記塩基性硫酸ジルコニウムを中和することにより水酸化ジルコニウムを生成させる。具体的には、塩基性硫酸ジルコニウムをアルカリで中和することにより、水酸化ジルコニウムとする。アルカリとしては限定されず、例えば、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。この中でも、工業的なコスト面から水酸化ナトリウムが好ましい。
【0102】
アルカリの添加量は、塩基性硫酸ジルコニウムの溶液から沈殿物として水酸化ジルコニウムを生成させることができれば特に限定されない。通常は上記溶液のpHが11以上、好ましくは12以上となるように添加する。
【0103】
中和反応後は、水酸化ジルコニウム含有溶液を35~60℃で1時間以上保持することが好ましい。これにより、生成した沈殿が熟成されるとともに、濾別が容易となる。
【0104】
次に、水酸化ジルコニウムを固液分離法により回収する。例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション等が利用できる。
【0105】
水酸化ジルコニウムを回収後、水酸化ジルコニウムを水洗し、付着している不純物を除去することが好ましい。
【0106】
水酸化ジルコニウムは、自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥してもよい。
【0107】
次に、前記水酸化ジルコニウムを熱処理(焼成)することによりジルコニア系複合酸化物を得る。熱処理温度は特に限定されないが、400~900℃程度で1~5時間程度が好ましい。熱処理雰囲気は、大気中又は酸化性雰囲気中が好ましい。
【0108】
得られたジルコニア系複合酸化物は、必要に応じてハンドリング性向上などの目的で、凝集を解す処理をしてもよい。
【0109】
以上、本実施形態に係るジルコニア系複合酸化物の製造方法について説明した。
【実施例
【0110】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において得られたジルコニア系複合酸化物中には、不可避不純物として酸化ハフニウムを酸化ジルコニウムに対して1.3~2.5質量%含有(下記式(X)にて算出)している。
<式(X)>
([酸化ハフニウムの質量]/([酸化ジルコニウムの質量]+[酸化ハフニウムの質量]))×100(%)
【0111】
[ジルコニア系複合酸化物の作製]
(実施例1)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物144g(ZrO換算:55g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0112】
<第1工程>
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れ、撹拌レイノルズ数が1000となるように撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始時の温度は室温(25℃)であり、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0113】
120℃に達した後、ただちに、120℃、2×10Paの条件を保ったオートクレーブ内において、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)828gを添加し、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。
【0114】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。
【0115】
以上が第1工程である。
【0116】
<第2工程>
自然放冷した後、攪拌条件を、撹拌レイノルズ数が200となるように変更し、撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0117】
120℃に達した後、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。
【0118】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。以上により、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーを得た。
【0119】
以上が第2工程である。
【0120】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液400g(CeO換算:40g)、硝酸ランタン溶液50g(La換算:5g)を添加した。
【0121】
さらに、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0122】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中600℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF 10.2 ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例1に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0123】
(実施例2)
第2工程における攪拌条件を、撹拌レイノルズ数100に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0124】
(実施例3)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物155g(ZrO換算:60g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0125】
<第1工程>
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れ、撹拌レイノルズ数が1000となるように撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始時の温度は室温(25℃)であり、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0126】
120℃に達した後、ただちに、120℃、2×10Paの条件を保ったオートクレーブ内において、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)888gを添加し、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。
【0127】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。
【0128】
以上が第1工程である。
【0129】
<第2工程>
自然放冷した後、攪拌条件を、撹拌レイノルズ数が200となるように変更し、撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0130】
120℃に達した後、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。
【0131】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。以上により、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーを得た。
【0132】
以上が第2工程である。
【0133】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液250g(CeO換算:25g)、硝酸ランタン溶液50g(La換算:5g)及び硝酸イットリウム溶液100g(Y換算:10g)を添加した。
【0134】
さらに、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0135】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中500℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF 10.2 ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例3に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0136】
(実施例4)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物126g(ZrO換算:48g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0137】
<第1工程>
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れ、撹拌レイノルズ数が1500となるように撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始時の温度は室温(25℃)であり、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0138】
120℃に達した後、ただちに、120℃、2×10Paの条件を保ったオートクレーブ内において、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)696gを添加し、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1500)を継続して行った。
【0139】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1500)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。
【0140】
以上が第1工程である。
【0141】
<第2工程>
自然放冷した後、攪拌条件を、撹拌レイノルズ数が200となるように変更し、撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0142】
120℃に達した後、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。
【0143】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。以上により、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーを得た。
【0144】
以上が第2工程である。
【0145】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液480g(CeO換算:48g)、硝酸ランタン溶液40g(La換算:4g)を添加した。
【0146】
さらに、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0147】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中600℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF 10.2 ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例4に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0148】
(実施例5)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物209g(ZrO換算:80g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0149】
<第1工程>
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れ、撹拌レイノルズ数が1000となるように撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始時の温度は室温(25℃)であり、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0150】
120℃に達した後、ただちに、120℃、2×10Paの条件を保ったオートクレーブ内において、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)1200gを添加し、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。
【0151】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。
【0152】
以上が第1工程である。
【0153】
<第2工程>
自然放冷した後、攪拌条件を、撹拌レイノルズ数が300となるように変更し、撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0154】
120℃に達した後、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:300)を継続して行った。
【0155】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:300)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。以上により、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーを得た。
【0156】
以上が第2工程である。
【0157】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸ネオジム溶液100g(Nd換算:10g)、硝酸プラセオジム溶液100g(Pr11換算:10g)を添加した。
【0158】
さらに、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0159】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中500℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF 10.2 ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例5に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0160】
(実施例6)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物84g(ZrO換算:32g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0161】
<第1工程>
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れ、撹拌レイノルズ数が500となるように撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始時の温度は室温(25℃)であり、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0162】
120℃に達した後、ただちに、120℃、2×10Paの条件を保ったオートクレーブ内において、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)475gを添加し、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:500)を継続して行った。
【0163】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:500)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。
【0164】
以上が第1工程である。
【0165】
<第2工程>
自然放冷した後、攪拌条件を、撹拌レイノルズ数が200となるように変更し、撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0166】
120℃に達した後、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。
【0167】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:200)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。以上により、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーを得た。
【0168】
以上が第2工程である。
【0169】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液500g(CeO換算:50g)、硝酸ランタン溶液60g(La換算:6g)及び硝酸イットリウム溶液120g(Y換算:12g)を添加した。
【0170】
さらに、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0171】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中500℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF 10.2 ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例6に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0172】
(実施例7)
第1工程における昇温温度を150℃まで昇温に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0173】
(実施例8)
第2工程における昇温温度を150℃まで昇温に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0174】
(比較例1)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物145g(ZrO換算:56g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0175】
<第1工程>
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れ、撹拌レイノルズ数が1000となるように撹拌しながら120℃まで昇温した。この間、圧力を2×10Paに保った。なお、昇温開始時の温度は室温(25℃)であり、昇温開始してから120℃に達するまでの時間は、1.5時間であった。
【0176】
120℃に達した後、ただちに、120℃、2×10Paの条件を保ったオートクレーブ内において、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)828gを添加し、そのまま15分間保持した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。
【0177】
その後、50℃になるまで自然放冷した。この間も攪拌(撹拌レイノルズ数:1000)を継続して行った。なお、50℃になるまでの自然放冷に要した時間は、6時間であった。
【0178】
以上が第1工程である。
【0179】
ここまでは、実施例1と同じである。その後、第2工程を行うことなく、以下の工程を行った。
【0180】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液400g(CeO換算:40g)、硝酸ランタン溶液40g(La換算:4g)を添加した。
【0181】
さらに、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0182】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中600℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF 10.2 ハンマー式ヘッド)でほぐし、比較例1に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0183】
(比較例2)
第2工程を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして比較例2に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0184】
(比較例3)
第2工程を行わなかったこと以外は、実施例4と同様にして比較例3に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0185】
(比較例4)
第2工程における攪拌条件を、撹拌レイノルズ数1000に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0186】
(比較例5)
第1工程における昇温温度を80℃まで昇温に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例5に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0187】
(比較例6)
第2工程における昇温温度を80℃まで昇温に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例6に係るジルコニア系複合酸化物を得た。
【0188】
(比較例7)
第1工程における攪拌条件を、撹拌レイノルズ数200に変更したこと以外は、実施例1と同様にして第一工程を行ったが、均一なスラリーが得られず、目的生成物が得られなかった。
【0189】
[ジルコニア系複合酸化物の組成測定]
実施例、比較例のジルコニア系複合酸化物の組成(酸化物換算)を、ICP-AES(「ULTIMA-2」HORIBA製)を用いて分析した。結果を表1、表2に示す。
【0190】
[細孔容積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系複合酸化物について、細孔分布測定装置(「オートポアIV9500」マイクロメリティクス製)を用い、水銀圧入法にて細孔分布を得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:細孔分布測定装置(マイクロメリティクス製オートポアIV9500)
測定範囲:0.0036~10.3μm
測定点数:120点
水銀接触角:140degrees
水銀表面張力:480dyne/cm
【0191】
得られた細孔分布を用い、全細孔容積、10nm以上100nm未満の直径を有する細孔の細孔容積、及び、100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積を求めた。結果を表1、表2に示す。表1、表2には、全細孔容積に対する100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積の率(細孔容積率)も合わせて示した。
(細孔容積率)=[(100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積)/(全細孔容積)]×100(%)
また、実施例1、及び、比較例1については、得られたジルコニア系複合酸化物の細孔分布を図1に示す。
【0192】
[粒子径D50の測定]
実施例、比較例のジルコニア系複合酸化物(粉末)0.15gと40mlの0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液とを50mlビーカーに投入し、超音波ホモジナイザー「ソニファイアーS-450D」(日本エマソン株式会社)で5分間分散した後、装置(レーザー回折式粒子径分布測定装置(「SALD-2300」島津製作所社製))に投入し測定した。結果を表1、表2に示す。
【0193】
[タップかさ密度の測定]
タップかさ密度の測定装置として、株式会社セイシン企業製 TAPDENSER KYT-3000(セイシン企業製)を用いた。試料粉末(実施例、比較例に係るジルコニア系複合酸化物)15gをタッピングセルに充填し、スペーサーの高さを3cmに設定した。タッピングセルをタッピングテーブルにセットし、前記測定装置にて800回タッピングした。タッピング終了後、セルの目盛りを読み取り、[(粉末重量)/(体積)]を算出してタップかさ密度を得た。より詳細な測定条件は、以下の通りとした。結果を表1、表2に示す。
<タップかさ密度の測定条件>
タッピングストローク:3cm
タッピングスピード:100回/50秒
【0194】
[加熱処理前の比表面積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系複合酸化物の比表面積を、比表面積計(「マックソーブ」マウンテック製)を用いてBET法にて測定した。結果を表1、表2に示す。
【0195】
[1000℃で3時間熱処理した後の比表面積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系複合酸化物について、大気圧(0.1013MPa)下、1000℃で3時間熱処理した。1000℃で3時間熱処理した後のジルコニア系複合酸化物の比表面積を、「加熱処理前の比表面積の測定」と同様にして測定した。結果を表1、表2に示す。
【0196】
[1100℃で3時間熱処理した後の比表面積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系複合酸化物について、大気圧(0.1013MPa)下、1100℃で3時間熱処理した。1100℃で3時間熱処理した後のジルコニア系複合酸化物の比表面積を、「加熱処理前の比表面積の測定」と同様にして測定した。結果を表1、表2に示す。
【0197】
【表1】
【0198】
【表2】
図1