(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ケタミンパモエート及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 225/20 20060101AFI20240311BHJP
C07C 65/11 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240311BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240311BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C07C225/20 CSP
C07C65/11
A61K31/14
A61K31/192
A61P11/06
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/06
A61P25/04
A61P25/16
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/36
A61P25/18
A61P27/16
(21)【出願番号】P 2021540341
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2020071404
(87)【国際公開番号】W WO2020143762
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-09-13
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519087332
【氏名又は名称】▲ユ▼展新藥生技股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】Alar Pharmaceuticals Inc.
【住所又は居所原語表記】Rm. 312, 3F., No. 19, Keyuan Rd. Xitun Dist. Taichung City 40763 TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】林 東和
(72)【発明者】
【氏名】文 永順
(72)【発明者】
【氏名】陳 嘉憲
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ウェイ▼如
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196292(JP,A)
【文献】特表2011-524409(JP,A)
【文献】特表2003-519698(JP,A)
【文献】国際公開第2018/122626(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035892(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/167180(WO,A1)
【文献】川口洋子ら,医薬品と結晶多形,生活工学研究,2002年,Vol.4, No.2,p.310-317
【文献】"新医薬品の規格及び試験方法の設定について",医薬審発第568号,2001年05月01日
【文献】PHARM STAGE,2007年
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
【文献】山野光久,医薬品のプロセス研究における結晶多形現象への取り組み,有機合成化学協会誌,2007年,65(9),p.907-913
【文献】BYRN S,PHARMACEUTICAL SOLIDS: A STRATEGIC APPROACH TO REGULATORY CONSIDERATIONS,PHARMACEUTICAL RESEARCH,米国,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1995年07月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケタミン対パモエートの化学量論が2:1である、ケタミンパモエート塩。
【請求項2】
以下の式(I)で表されるR,S-ケタミンパモエート塩、
【化1】
以下の式(II)で表されるS-ケタミンパモエート塩、又は
【化2】
以下の式(III)で表されるR-ケタミンパモエート塩である、
【化3】
請求項1に記載のケタミンパモエート塩。
【請求項3】
ケタミン対パモエートの2:1の化学量論を有する、ケタミンパモエート塩の非晶質
体。
【請求項4】
ケタミン対パモエートの2:1の化学量論を有するケタミンパモエート塩の結晶体であって、6.0、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、19.6、22.2、25.2及び30.3から選択される1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する
、ケタミンパモエート塩の結晶体。
【請求項5】
以下の式(I)
【化1】
で表されるR,S-ケタミンパモエート塩
の結晶体であって、
(i)6.0、8.6、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、15.3、17.9、18.6、19.6、20.0、21.1、21.6、22.2、23.3、24.4、25.2、25.9、26.9、28.6、29.7、30.3、32.4、34.0及び36.6から選択された1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むXRPDパターン、及び
(ii)
以下の図2A
【表1】
に示すXRPDパターン
を有する、R,S-ケタミンパモエート塩の結晶体。
【請求項6】
以下の式(II)
【化2】
で表されるS-ケタミンパモエート塩
の結晶体であって、
(i)6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.1、18.2、19.2、19.7、20.1、22.0、22.8、23.3、23.7、24.1、24.7、25.2、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2から選択された1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むXRPDパターン、及び
(ii)
以下の図2B
【表1】
に示すXRPDパターン
を有する、S-ケタミンパモエート塩の結晶体。
【請求項7】
以下の式(III)
【化3】
で表されるR-ケタミンパモエート塩
の結晶体であって、
(i)6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.0、18.2、19.3、19.7、20.6、22.0、22.9、23.6、24.1、24.7、25.2、25.9、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2から選択された1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むXRPDパターン、及び
(ii)
以下の図2C
【表3】
に示すXRPDパターン
を有する、R-ケタミンパモエート塩の結晶体。
【請求項8】
95%を超える純度を有する、請求項1
または2に記載のケタミンパモエート塩。
【請求項9】
有効量の医薬組成物を必要とする対象に投与することを含む中枢神経系(CNS)疾患の治療に使用されるための医薬組成物であって、請求項1
または2に記載のケタミンパモエート塩
、請求項3に記載のケタミンパモエート塩の非晶質体、請求項4に記載のケタミンパモエート塩の結晶体、請求項5に記載のR,S-ケタミンパモエート塩の結晶体、請求項6に記載のS-ケタミンパモエート塩の結晶体または請求項7に記載のR-ケタミンパモエート塩の結晶体とその薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項10】
前記のCNS疾患は、大うつ病性障害(MDD)、自殺念慮の差し迫ったリスクを伴うMDD、治療抵抗性うつ病(TRD)、双極性障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、自閉症スペクトラム障害、耳鳴り、難治性慢性片頭痛、喘息、不安、物質使用障害、アルコール使用障害、摂食障害、難治性てんかん重積状態、脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症及び痛みからなる群から選択される、請求項9に記載の使用されるための医薬組成物。
【請求項11】
有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む必要とする対象の麻酔に使用されるための医薬組成物であって、請求項1
または2に記載のケタミンパモエート塩
、請求項3に記載のケタミンパモエート塩の非晶質体、請求項4に記載のケタミンパモエート塩の結晶体、請求項5に記載のR,S-ケタミンパモエート塩の結晶体、請求項6に記載のS-ケタミンパモエート塩の結晶体または請求項7に記載のR-ケタミンパモエート塩の結晶体とその薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項12】
前記のCNS疾患の治療又は麻酔は、前記の医薬組成物の投与後24時間以内に始まり、かつ少なくとも10日間続く、請求項9~11のいずれかに記載の使用されるための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬品化学の分野に関する。より具体的には、本開示は、結晶又は非晶質形のケタミンの塩及びその医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ケタミンは、等量のS-ケタミンとR-ケタミンとを含むラセミ混合物であり、S-ケタミン及びR-ケタミンは、ケタミンのS-異性体及びR-異性体とも呼ばれ、次の式で表される。
【0003】
【0004】
ケタミンは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体(NMDAR)拮抗薬である。その薬力学的特性は、麻酔、鎮痛、又は抗うつ薬として報告されており、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中と外傷性脳損傷(TBI)、及び多発性硬化症(MS)などを含む、NMDARを介した興奮毒性及び炎症性神経変性作用に関連する病因などのいくつかの中枢神経系(CNS)疾患の治療にも関連している[1-3]。
【0005】
ケタミンは、麻酔薬及び抗うつ薬として使用されてきた。さらに、それはまた、治療後24時間以内に抑うつ症状を改善できる即効性(rapid onset)という特定の特徴を持っている。たとえば、1970年以来、R,S-ケタミンHClは、麻酔用のケタラール注射剤(ファイザー)として販売されている。さらに、S-ケタミンHClの鼻腔内製品であるSpravato鼻スプレーは、治療抵抗性うつ病(TRD)について2019年にFDAによって承認された。
【0006】
現在、ケタミン(S-異性体とR-異性体を含む)は、麻酔、鎮痛、抗うつ薬、抗炎症薬に使用されることが知られているだけではなく[4]、臨床的又は非臨床的研究によって、大うつ病性障害(MDD)、自殺念慮の差し迫ったリスクを伴うMDD、TRD、双極性障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(以下、PTSDと略す)、自閉症スペクトラム障害、耳鳴り、難治性慢性片頭痛、喘息、不安、物質使用障害、アルコール使用障害、摂食障害、難治性てんかん重積状態、及び脳虚血に注目を集めている薬の1つである[5-23]。
【0007】
しかし、ケタミンには、幻覚、妄想、依存、乱用傾向のような精神病症状を含む副作用の問題がある。また、解離のような精神病系の影響、めまいや鎮静、記憶や認知障害のような神経系の影響、頻脈、軽度の呼吸抑制、高血圧、動悸のような直接又は間接的な末梢系の影響、筋骨格系の影響(ミオクローヌス、単収縮、攣縮、運動失調、線維束性収縮)、及び泌尿器系の合併症(排尿障害、排尿の頻度と緊急性の増加、失禁、痛み、血尿、及び潰瘍性膀胱炎)を含む臨床的悪影響が発見される[4、24]。悪影響の主要な発生は、解離や鎮静を含む精神病や神経系障害である[4]。さらに、ケタミン関連の動物毒性影響には、神経毒性、膀胱と腎臓毒性、及び心臓関連毒性が含まれる[25]。
【0008】
したがって、本開示は、患者にとって安全であり、患者の身体機能に悪影響を与えることなく治療効果を効果的に提供する医薬組成物を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0009】
上記に鑑み、本開示は、ケタミンパモエート塩及びその多形体を提供する。本開示の一つの実施形態において、前記ケタミンパモエート塩は、ケタミン対パモエートの化学量論が2:1である。別の実施形態において、前記ケタミンは、S-ケタミン、R-ケタミン又はR,S-ケタミン(等量のS-ケタミン及びR-ケタミンを含むラセミ混合物)であってもよい。
【0010】
本開示の一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、以下の式(I)、(II)及び(III)でそれぞれ表されるR,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート又はR-ケタミンパモエートである。
【化2】
【化3】
【化4】
【0011】
本開示の一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、非晶質形又は結晶形であってもよい。別の実施形態において、ケタミンパモエート塩の結晶形態は、6.0、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、19.6、22.2、25.2及び30.3(±0.2 2θ)から選択される1つ以上の2θ値を含むX線粉末回折(XRPD)パターンで表される。
【0012】
本開示の一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、6.0、8.6、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、15.3、17.9、18.6、19.6、20.0、21.1、21.6、22.2、23.3、24.4、25.2、25.9、26.9、28.6、29.7、30.3、32.4、34.0及び36.6(±0.2 2θ)から選択される1つ以上の2θ値を含むXRPDパターンで表される結晶形態のR,S-ケタミンパモエートである。
【0013】
本開示の一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.1、18.2、19.2、19.7、20.1、22.0、22.8、23.3、23.7、24.1、24.7、25.2、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2(±0.2 2θ)から選択される1つ以上の2θ値を含むXRPDパターンで表される結晶形のS-ケタミンパモエートである。
【0014】
本開示の一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.0、18.2、19.3、19.7、20.6、22.0、22.9、23.6、24.1、24.7、25.2、25.9、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2(±0.2 2θ)から選択される1つ以上の2θ値を含むXRPDパターンで表される結晶形のR-ケタミンパモエートである。
【0015】
本開示の一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、
図2A、
図2B又は
図2Cに示されるパターンと実質的に一致するXRPDパターンで表される結晶形態である。
【0016】
本開示の一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、95%を超える純度を有する。別の実施形態において、ケタミンパモエートは、99%を超え、例えば、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%及び実質的に100%の純度を有する。
【0017】
また、本開示は、抗うつ剤、抗炎症剤、麻酔剤及び鎮痛剤の投与に適用可能な医薬組成物を提供する。本開示の一つの実施形態において、医薬組成物は、上記のケタミンパモエート塩及びその薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0018】
本開示の一つの実施形態において、医薬組成物は、有効量の医薬組成物がそれを必要とする対象に投与されることによるCNS疾患の治療のために使用される。
【0019】
本開示の一つの実施形態において、医薬組成物は、有効量の医薬組成物が対象に投与されることによるそれを必要とする対象の麻酔のために使用される。
【0020】
本開示の一つの実施形態において、CNS疾患の治療は、医薬組成物の投与後少なくとも10日間続く。別の実施形態において、医薬組成物は、抗うつ、抗炎症、麻酔又は鎮痛効果を少なくとも約10日間提供し続けることができる。
【0021】
本開示では、ケタミンパモエート塩及びその多形体が提供され、これらは抗うつ薬、抗炎症剤、麻酔薬又は鎮痛薬として使用でき、ケタミン又はケタミンHClよりも向上された安全性を有するため、ケタミンの適用制限を克服できる。したがって、本開示で提供されるケタミンの塩及びその多形体は、製薬用途のための優れた特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示は、添付の図面を参照し、実施形態の以下の説明を閲覧することにより、より完全に理解できる。
【0023】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、それぞれ、結晶形及び非晶質形であるR,S-ケタミンパモエート塩の顕微鏡画像を示す。
【0024】
【0025】
【
図3】
図3A~
図3Cは、それぞれ、結晶形のR,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートの
1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【0026】
【
図4】
図4A及び
図4Bは、それぞれ、結晶形のS-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートの
13C核磁気共鳴スペクトルを示す。
【0027】
【
図5】
図5A~
図5Eは、それぞれ、結晶形(
図5A及び
図5B)又は非晶質形(
図5C及び
図5D)のS-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエート、ならびに非晶質形(
図5E)であるR,S-ケタミンパモエートのフーリエ変換(FT)赤外スペクトルを示す。
【0028】
【
図6】
図6A~
図6Fは、それぞれ、結晶形(
図6A~
図6C)又は非晶質形(
図6D~
図6F)のR,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートの示差走査熱量測定パターンを示す。
【0029】
【
図7】
図7A~
図7Cは、それぞれ、結晶形のS-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエート、並びに非晶質形のR,S-ケタミンパモエートの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析の結果を示す。
【0030】
【
図8】
図8は、ケタミンHCl(KET)、R,S-ケタミンパモエート(KEP)、S-ケタミンパモエート(S-KEP)及びR-ケタミンパモエート(R-KEP)の抗うつ効果を評価するためのデキサメタゾン(DEX)誘発性うつ病様動物モデルのプロトコルを示す図である。ICRマウスは、生後1~3日目(P1~P3)に、それぞれ、生理食塩水又は0.5mg/kg、0.3mg/kg及び0.1mg/kgの投与量減少でのDEXが腹腔内注射された。各群の薬剤又は生理食塩水は、生後35日目であるP35(すなわち、投与日0、D0)に皮下投与され、強制水泳試験(FST)は、投与日1(D1、P36)及び投与日10(P45)に実施された。鎮静行動の評価は、注射直後から薬物投与後14日目(P49)までの鎮静評価スケールによっても実施された。
【0031】
【
図9】
図9は、薬物投与後1日目と10日目の強制水泳試験(FST)によるケタミンHCl(KET)、R,S-ケタミンパモエート(KEP)、S-ケタミンパモエート(S-KEP)及びR-ケタミンパモエート(R-KEP)の抗うつ効果を示すグラフである。*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001は、生理食塩水群と比べて有意差があることを示す。
【0032】
【
図10】
図10は、注射直後から14日までの生理食塩水(Saline)、ケタミンHCl(KET)、R,S-ケタミンパモエート(KEP)、S-ケタミンパモエート(S-KEP)及びR-ケタミンパモエート(R-KEP)で処置されたマウスの鎮静評価スコアを示すグラフである。
【0033】
【
図11】
図11は、雌のスプラーグドーリーラット(SD)ラットにおける対照群(Saline)、ケタミンHCl(KET)及びR,S-ケタミンパモエート(KEP)の3ヶ月反復投与毒性試験のプロトコルを示す図である。KET群は、60mg/kg体重を週2回皮下注射し(s.c)、KEP群は、480mg/kg体重を毎月皮下注射した。組織病理学的分析のために、84日目に動物を犠牲にした。INJs:注射。
【0034】
【
図12】
図12A~
図12Fは、ラットの注射部位組織のヘマトキシリン及びエオシン(HE)染色された画像であり、
図12A、
図12C及び
図12Eは、それぞれ、×40、×100及び×400の倍率でのケタミンHCl注射部位組織の代表的な画像であり、
図12B、
図12D及び
図12Fは、それぞれ、×40、×100及び×400の倍率でのR,S-ケタミンパモエート注射部位組織の代表的な画像である。黒い星は炎症細胞を示す。
【0035】
【
図13】
図13A~
図13Fは、ラット膀胱組織のHE染色画像であり、
図13A及び
図13Dは、それぞれ、×400及び×40の倍率での対照ラットの膀胱組織の代表的な画像であり、
図13B及び
図13Eは、それぞれ、×400及び×40の倍率でのKETラット膀胱組織の代表的な画像であり、
図13C及び
図13Fは、それぞれ、×400及び×40の倍率でのKEPラット膀胱組織の代表的な画像である。
【0036】
【
図14】
図14A~
図14Fは、前頭前野におけるラット脳組織のHE染色画像であり、
図14A及び
図14Dは、それぞれ、×100及び×400の倍率での対照ラット脳組織の代表的な画像であり、
図14B及び
図14Eは、それぞれ、×100及び×400の倍率でのKETラット脳組織の代表的な画像であり、
図14C及び
図14Fは、それぞれ、×100及び×400の倍率でのKEPラット脳組織の代表的な画像である。黒い星は顆粒細胞を示す。黒い矢印は錐体細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の実施例は、本開示を説明するために使用される。当業者は、本明細書の開示に基づいて、本開示の他の利点及び効果を容易に想像することができる。本開示は、異なる実施例に記載されるように実施又は適用することもできる。異なる態様及び用途について、その範囲に違反することなく本開示を実施するために、上記の例を修正又は変更することができる。
【0038】
さらに、本開示で使用される場合、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「当該、前記(the)」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべき。「又は」という用語は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、「及び/又は」という用語と交換可能に使用される。
【0039】
本開示は、ケタミン対パモ酸の比が2:1であるケタミンパモエート塩に関する。
【0040】
一つの実施形態において、ケタミンパモエート塩は、非晶質であるか、あるいは6.0、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、19.6、22.2、25.2及び30.3(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むXRPDパターンを特徴とする結晶形態であってもよい。別の実施形態において、2θ値は、室温でのCuKα放射線を使用することによって測定される。
【0041】
一つの実施形態において、本開示は、6.0、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、19.6、22.2、25.2及び30.3(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むか、あるいは8.6、15.3、17.9、18.6、20.0、21.1、21.6、23.4、24.4、25.9、26.9、28.6、29.7、32.4、34.0及び36.6(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むXRPDパターンを有する結晶形R,S-ケタミンパモエート塩を提供する。別の実施形態において、結晶形R,S-ケタミンパモエート塩は、以下の少なくとも1つで表されるXRPDパターンを有する:(i)6.0、8.6、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、15.3、17.9、18.6、19.6、20.0、21.1、21.6、22.2、23.3、24.4、25.2、25.9、26.9、28.6、29.7、30.3、32.4、34.0及び36.6(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むXRPDパターン;(ii)
図2Aに示すXRPDパターン。さらに別の実施形態において、結晶形R,S-ケタミンパモエート塩は、
図2Aに示されるXRPDパターンを有する。
【0042】
一つの実施形態において、本開示は、6.0、10.8、11.7、12.0、13.1、14.6、15.1、19.7、22.0、25.2及び30.1(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むか、あるいは12.6、18.2、19.2、20.1、22.8、23.3、23.7、24.1、24.7、27.3、31.6、45.4、56.4及び75.2(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むXRPDパターンを有する結晶形S-ケタミンパモエート塩を提供する。別の実施形態において、結晶形S-ケタミンパモエート塩は、以下のうちの少なくとも1つで表されるXRPDパターンを有する:(i)6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.1、18.2、19.2、19.7、20.1、22.0、22.8、23.3、23.7、24.1、24.7、25.2、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むXRPDパターン;(ii)
図2Bに示すXRPDパターン。さらに別の実施形態において、結晶形S-ケタミンパモエート塩は、
図2Bに示されるXRPDパターンを有する。
【0043】
一つの実施形態において、本開示は、6.0、10.8、11.7、12.0、13.1、14.6、15.0、19.7、22.0、25.2及び30.1(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むか、あるいは12.6、18.2、19.3、20.6、22.9、23.6、24.1、24.7、25.9、27.3、31.6、45.4、56.4及び75.2(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むXRPDパターンを有する結晶形R-ケタミンパモエート塩を提供する。別の実施形態において、結晶形R-ケタミンパモエート塩は、以下のうちの少なくとも1つで表されるXRPDパターンを有する:(i)6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.0、18.2、19.3、19.7、20.6、22.0、22.9、23.6、24.1、24.7、25.2、25.9、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2(±0.2 2θ)から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上の2θ値を含むXRPDパターン;(ii)
図2Cに示すXRPDパターン。さらに別の実施形態において、結晶形R-ケタミンパモエート塩は、
図2Cに示されるXRPDパターンを有する。
【0044】
本開示は、ケタミンパモエート塩及びその薬学的に許容される賦形剤を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することも含む、CNS疾患に罹患している対象を治療する方法にも関する。
【0045】
一つの実施形態において、CNS疾患には、MDD、自殺念慮の差し迫ったリスクを伴うMDD、TRD、双極性障害、強迫性障害、PTSD、自閉症スペクトラム障害、耳鳴り、難治性慢性片頭痛、喘息、不安、物質使用障害、アルコール使用障害、摂食障害、難治性てんかん重積状態、脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症及び痛みが含んでもよいが、これらに限定されない。
【0046】
本開示は、ケタミンパモエート塩及びその薬学的に許容される賦形剤を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象を麻酔する方法にも関する。
【0047】
本明細書において、治療の文脈において交換可能に使用される「患者」又は「対象」という用語は、治療又は予防的ケアのレシピエントとしてのヒト又は非ヒト動物を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「治療する(treating)」又は「治療(treatment)」という用語は、ケタミンパモエート塩、その多形体又はそれを含む医薬組成物を、疾患、その症状又はそれに対する素因を、治癒(cure)、緩和(alleviate)、解す(relieve)、矯める(remedy)、改善(ameliorate)又は予防(prevent)するために、それを必要とする対象に有効量で投与することを指す。そのような対象は、任意の適切な診断方法からの結果に基づいて、医療専門家によって識別され得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、CNS疾患及びその1つ以上の症状の発展、再発、又は発症の予防をもたらすこと、別の治療法の予防効果を強化又は改善すること、疾患の重症度又は期間を減らすこと、疾患の1つ以上の症状を改善すること、精神病性障害又は炎症性障害の進行を防ぐこと、及び/又は別の治療法の治療効果を強化又は改善することに十分な治療量を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語とは、毒物学的観点から医薬用途での使用に許容され、有効成分と不利な相互作用をしない物質を指す。
【0051】
医薬的に許容される賦形剤は、医薬組成物のタイプに応じて、当技術分野で知られている賦形剤のいずれか1つ又は組み合わせから選択することができる。薬学的に許容される賦形剤の選択は、使用される所望の投与方法に部分的に依存する。本開示の医薬組成物について、賦形剤は、結晶性であるかどうかにかかわらず、活性化合物(例えば、ケタミンパモエート塩)の特定の形態を実質的に維持するように選択されるべし。言い換えれば、賦形剤は、活性化合物の形態を実質的に変化させないであろう。また、賦形剤は、例えば、望ましくない生物学的効果を生み出すか、又はそうでなければ医薬組成物の他の成分と有害な方法で相互作用することなどにより、活性化合物の形態と相溶性がなくなることもない。
【0052】
本開示の特定の実施形態において、医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、鼻腔内投与、直腸投与、髄腔内投与、粘膜内投与、又は眼内投与で対象に投与される。
【0053】
本開示の特定の実施形態において、本開示の医薬組成物は、経口投与に適した形態で処方されるので、医薬組成物は、経口送達によって対象に投与されてもよい。あるいは、医薬組成物は、乾燥粉末、錠剤、トローチ、カプセル、顆粒、又はピルの形態で処方されてもよい。
【0054】
本開示の医薬組成物は、麻酔薬の使用及びCNS疾患の治療のための有効成分として、ケタミンパモエート塩のみを含んでもよい。言い換えれば、ケタミンパモエート塩は、組成物中に、麻酔薬としての、又はCNS疾患の予防若しくは治療としての唯一の有効成分として役立つことが可能である。この実施形態において、本開示は、有効成分としてケタミンパモエート塩のみを使用することにより、CNS疾患の治療又は麻酔のための安全で効果的な治療法を提供する。あるいは、別の実施形態において、医薬組成物は、本開示の効果が阻害されない限り、別の有効成分を含むか又は別の有効成分と組み合わせて、対象に投与することができる。
【0055】
一つの実施形態において、本開示のケタミンパモエート塩により提供される治療効果は、医薬組成物の投与後24時間以内に開始する。別の実施形態において、本開示のケタミンパモエート塩は、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも1週間、少なくとも10日、又は少なくとも2週間持続する治療効果を示す。
【0056】
本開示を説明するために、異なる例が使用された。以下の実施例は、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【実施例】
【0057】
実施例1.ケタミンパモエートのS-及びR-エナンチオマーの調製
S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートの調製の流れを以下のスキーム1に示す。
【0058】
【0059】
実施例1-1.R,S-ケタミン遊離塩基の調製(1)
10gのR,S-ケタミンHClを100mLの水に溶解し、次に150mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液を10分間撹拌しながら加えた。反応混合物をジクロロメタン(100mL×2)で抽出した。分離された有機層を合わせ、減圧下で蒸留し、R,S-ケタミン遊離塩基(1)を得た。
【0060】
実施例1-2.R-ケタミンの(-)-O,O’-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩(2)の調製
ジ-p-トルオイル-L-酒石酸(13g、33.6mmol)及びR,S-ケタミン遊離塩基(8g、33.6mmol)を5分間撹拌しながらエタノール(EtOH、160mL)に溶解した。室温で10mLの水を溶液に滴下し、続いて1時間撹拌し、沈殿物を得た。吸引ろ過後にろ液溶液を収集し、真空下で乾燥させた。残留物を60℃で100mLの60%エタノール溶液(すなわち、EtOH:H2O=3:2)に溶解し、室温に1時間冷却して固体を得た後、真空下で乾燥させた。
【0061】
得られた粉末を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、示差走査熱量測定(DSC)、旋光度、核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び文献情報によって分析した。R-ケタミンの(-)-O,O'-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩(2)の特性は、以下に示すように、比旋光度、融点(m.p.)及びHPLCキラル純度によって確認された。
m.p.=133.5-141.3℃, [α]25° D=-75°, c=1.0, ジメチルホルムアミド、キラル純度=98.4%.1H-NMR(DMSO-d6):7.87(d, 4H, J=8.0Hz), 7.68(d, 1H, J=6.8Hz), 7.44(m, 3H), 7.36(d, 4H, J=8.0Hz), 5.74(s, 2H), 2.66-2.32(m, 2H), 2.39(s, 6H), 2.04(s, 3H), 1.90-1.58(m, 6H)。
【0062】
実施例1-3.S-ケタミンのジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩(3)の調製
実施例1-2からの沈殿物を減圧下で乾燥させた。固体を100mLの40%エタノール溶液(すなわち、EtOH:H2O=2:3)に60℃で溶解し、室温に1時間冷却して固体を得た後、真空下で乾燥させた。
【0063】
得られた粉末を、HPLC、DSC、旋光度、NMRスペクトル及び文献情報によって分析した。S-ケタミンの(-)-O,O’-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩(3)の特性は、以下に示すように、比旋光度、融点(m.p.)及びHPLCキラル純度によって確認された。
m.p.=157.1-163.3℃, [α]25° D=-108°, c=1.0, ジメチルホルムアミド、キラル純度=100%.1H-NMR(DMSO-d6):7.87(d, 4H, J=7.6Hz), 7.67(d, 1H, J=7.6Hz), 7.44(m, 3H), 7.36(d, 4H, J=8.0Hz), 5.74(s, 2H), 2.64-2.31(m, 2H), 2.39(s, 6H), 2.03(s, 3H), 1.91-1.59(m, 6H)。
【0064】
実施例1-4.R-ケタミンパモエート(6)(結晶)の調製
2℃~10℃で撹拌することにより、R-ケタミンのジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩(2)を10倍のテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。溶液に塩酸(37%)を添加し、沈殿物を得、吸引ろ過により沈殿物を集めて、R-ケタミンHCl(4)を得た。R-ケタミンHCl(4)とパモ酸二ナトリウムをそれぞれ10倍の水に溶解した。その後、減圧により反応混合物から水を蒸留した。残留物を60℃で撹拌しながらエタノールに溶解し、温度を下げることにより再結晶させた。
【0065】
得られた粉末を、HPLC、DSC、赤外線(IR)、X線回折パターン(XRD)及びNMRスペクトルで分析した。R-ケタミンパモエート(6)の結晶形の特性は、[α]25° D=+67°のR-ケタミンパモエート(6)の比旋光度と分析結果によって確認された。
【0066】
実施例1-5.S-ケタミンパモエート(7)(結晶)の調製
2℃~10℃で撹拌することにより、S-ケタミンのジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩(3)を10倍のテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。溶液にハイドロクロライド(37%)を添加し、沈殿物を得、吸引ろ過により沈殿物を集めて、S-ケタミンHCl(5)を得た。S-ケタミンHCl(5)とパモ酸二ナトリウムをそれぞれに10倍の水に溶解した。その後、減圧により反応混合物から水を蒸留した。残留物を60℃で撹拌しながらエタノールで再結晶し、真空ろ過により単離した。
【0067】
得られた粉末を、HPLC、DSC、旋光度、IR、XRD及びNMRスペクトルで分析した。S-ケタミンパモエート(7)の結晶形の特性は、[α]25° D=-67°のS-ケタミンパモエート(7)の比旋光度と分析結果によって確認された。
【0068】
実施例1-6.R-ケタミンパモエート(非晶質)の調製
R-ケタミンパモエート(6)をメタノールに溶解し、溶媒を減圧下で除去し、R-ケタミンパモエートの非晶質形を得た。
【0069】
得られた粉末を、HPLC、DSC、旋光度、IR、XRD及びNMRスペクトルで分析した。R-ケタミンパモエートの非晶質形の特性は、[α]25° D =+67°のR-ケタミンパモエートの比旋光度と分析結果によって確認された。
【0070】
実施例1-7.S-ケタミンパモエート塩(非晶質)の調製
S-ケタミンパモエート(7)をメタノールに溶解し、溶媒を減圧下で除去し、非晶質形のS-ケタミンパモエートを得た。
【0071】
得られた粉末を、HPLC、DSC、旋光度、IR、XRD及びNMRスペクトルで分析した。S-ケタミンパモエートの非晶質形の特性は、[α]25° D=-67のS-ケタミンパモエートの比旋光度と分析結果によって確認された。
【0072】
実施例1-8.R,S-ケタミンパモエート(結晶)の調製
ケタミンHClと脱イオン水を加えて溶液を形成し、それを丸底フラスコ中で撹拌しながらパモ酸二ナトリウム一水和物水溶液に滴下して添加した。混合物を室温で1時間撹拌し続けた。この反応混合物をろ過し、粉末を収集し、減圧下で乾燥させた。得られた粉末を、HPLC、DSC、IR、XRD及びNMRスペクトルで分析した。
【0073】
実施例1-9.R,S-ケタミンパモエート(非晶質)の調製
実施例1-8から収集した粉末をメタノールに溶解した。さらに、溶媒を減圧下で除去し、乾燥させ、非晶質形のR,S-ケタミンパモエートを得た。得られた粉末を、HPLC、DSC、IR、XRD及びNMRスペクトルで分析した。
【0074】
実施例2.ケタミンパモエートの特性
実施例1から得られたケタミンパモエート塩は、結晶形又は非晶質形であった。オリンパスCX41偏光顕微鏡により、このような緻密な結晶性粉末と非晶質性粉末をそれぞれ
図1Aと
図1Bに示す。
【0075】
さらに、非晶質形又は結晶形のR,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートの特性を、HPLC、DSC、IR、XRD及びNMRスペクトルによって分析した。その分析プロセス及びケタミンパモエートの特性は、以下のように詳細に説明された。
【0076】
実施例2-1.XRPD分析
X線粉末回折(XRPD)パターンは、波長(λ=1.54056Å)、40kV及び40mAで動作したCuKα放射線源を備えるBruker D8 Discover X線粉末回折計で得られた。
【0077】
各サンプルは、2θにおいて2°~80°の間で0.02°のステップサイズ及び走査速度0.6秒/ステップで走査された。2θの角度ピーク位置と、最大ピークの10%以上の強度を持つすべての結晶形のケタミンパモエートピークに対応するI/Ioデータを、以下の表1に示す。
【0078】
S-ケタミンパモエート、R-ケタミンパモエート及びR,S-ケタミンパモエートの結晶形及び非晶質形をXRDで特性を確認し、結果を
図2A~
図2Fに示す。
【0079】
【0080】
実施例2-2.NMR分析
R,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートの塩を重水素溶媒(DMSO)に溶解し、Bruker Ascend TM 400MHz NMR分光計を使用してNMRスペクトルを得た。
【0081】
R,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートの塩の特性は、
1H-NMR分光法により確認された(表2及び
図3A~
図3Cに示されているように)。さらに、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートを
13C-NMR分光法に供し、ppmでケミカルシフトを報告した(表3及び
図4A及び
図4Bに示すように)。
【0082】
【0083】
【0084】
実施例2-3.フーリエ変換赤外(FT-IR)分光分析
ケタミンパモエートの多形体は、Bruker FPA-FTIR Vertex70V、Hyperion3000システムを使用して、ディスクで得られた赤外線(IR)分光法によってさらに特性を確認し、結果は
図5A~
図5Eに示される。ケタミンパモエートのS-、R-エナンチオマーの結晶形及び非晶質形を同定するのに十分なIR吸光度(波数、cm
-1)は以下の表4に報告された。
【0085】
【0086】
実施例2-4.DSC分析
R,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートのサンプルの示差走査熱量測定(DSC)分析により、約233℃、212℃及び214℃でガラス転移を示し、それらのサンプルが結晶形であることを示した(
図6A~
図6Cを参照)。R,S-ケタミンパモエートのサンプルのDSC分析により、約213℃でガラス転移を示し、当該サンプルが非晶質形であることを示した(
図6Dを参照)。S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートのサンプルのDSC分析により、約210℃及び193℃でガラス転移を示し、それらのサンプルが非晶質形であることを示した(
図6E及び
図6Fを参照)。DSC分析は、Mettler Toledo DSC3を標準条件下で使用して行った。
【0087】
ケタミンパモエートのS-、R-エナンチオマーの結晶形及びラセミ体のDSC分析を以下の表5にまとめた。
【0088】
【0089】
実施例2-5.HPLC分析
S-ケタミンパモエート又はR-ケタミンパモエートのキラル純度は、室内条件で、キラルカラム(Agilent Poroshell 120 Chiral-V2.7μm、4.6×150mm)を備えたAgilent1260 InfinityII高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用して得られた。HPLC分析によると、S型のキラル純度は100%(保持時間(RT):9.0分)、R型のキラル純度は100%(RT:9.5分)であった。S-ケタミンパモエート、R-ケタミンパモエート及びR,S-ケタミンパモエートのHPLC分析の結果を
図7A~
図7Cに示す。
【0090】
実施例2-6.カールフィッシャー分析
カールフィッシャー分析により、これらの実施例で使用されたサンプルが水を含まず、水和形態ではなかったことを示した(水分含有量:ケタミンパモエートの場合は0.329%)。カールフィッシャー分析は、Metrohm 870 KF Titrino plusを使用して標準条件下で実行された。
【0091】
実施例3.生体内(in vivo)での抗うつ効果
デキサメタゾン(以下、DEXと略す)によって誘発されたうつ病様動物モデルを使用し、同等の投与量(120mg/kgのケタミン遊離塩基)でのケタミンHCl(KET)、R,S-ケタミンパモエート(KEP)、S-ケタミンパモエート(S-KEP)及びR-ケタミンパモエート(R-KEP)の抗うつ効果を評価した。この研究のプロトコルを
図8に示し、以下に説明する。
【0092】
新生児ICRマウス(BioLASCO、台北、台湾)について、生後1日目、2日目及び3日目(P1、P2及びP3)に、生理食塩水又はDEXを0.5mg/kg、0.3mg/kg及び0.1mg/kgの投与量でそれぞれ腹腔内注射した。生理食塩水が投与されたマウスを対照群とし、DEXが投与されたマウスをKET、KEP、S-KEP、R-KEP及び生理食塩水の群に分けた(各群でn=10~14匹のマウス)。次に、生後35日目に、対応する群のマウスには薬物を皮下注射し、対照群と生理食塩水群のマウスには等量の0.9%生理食塩水を注射した。投与用薬剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で調製され、注射前に高速ボルテックスで十分に混合された。
【0093】
抗うつ効果は、薬物投与後の1日目(P36)と10日目(P45)に実施された強制水泳試験(FST)によって評価された。すべての群のマウスは、薬物投与前に水泳のために訓練された。FST期間内、マウスをそれぞれ4Lの水(23±1℃)で充填された5Lのガラスシリンダー(高さ27cm、直径18cm)に配置した。FST中の5分間の無動時間(immobility time)の合計期間を観察した。結果は平均±SEMとして表された。スチューデントのt検定を利用し、生理食塩水群(生理食塩水で注射されたDEX処理マウス群)と他の群を各時点で分析した。*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001は、生理食塩水群と比べて有意差があることを示す。
【0094】
新生児期にDEXに曝露されたマウスは、対照群と比べてFSTでの無動時間の有意な増加を示した。
図9のFSTの結果は、KET、KEP、S-KEP及びR-KEPがいずれも投与後1日目と10日目の無動時間を短縮させるが、DEX処理マウスでは増加したことを示した。
【0095】
さらに、鎮静行動は、薬物投与直後からの14日間においてげっ歯類鎮静評価スケール(表6)によっても評価された。
図10に示すように、KET群のマウスは、注射後すぐに強い鎮静関連行動を示し、この作用は投与後2時間まで完全に回復した。KEP、S-KEP及びR-KEPで処置されたマウスは、注射後0~14日目で正常な行動を示した。
【0096】
【0097】
その結果、KET、KEP、S-KEP及びR-KEPはいずれも、同等の投与量(120mg/kgのケタミン遊離塩基)での単回注射後にFSTに対する即効性抗うつ効果を示し、この効果は少なくともDEX治療マウスでは10日間持続した。驚いたことに、KEP、S-KEP及びR-KEPの群では、鎮静又はその他のケタミン関連の精神模倣作用(psychotomimetic)及び神経系障害は、投与後に発生せず、これは、KEP、S-KEP及びR-KEPが、KETに比べて、抗うつ薬として使用される別の有益な特性を有することを意味する。
【0098】
実施例4.生体内での反復投与毒性試験
ケタミンHCl(KET)及びR,S-ケタミンパモエート(KEP)の毒性反応を評価するために、10週齢のメスSprague Dawley(SD)ラット(BioLASCO、台北、台湾)に3ヶ月間の反復投与毒性試験を実施し、同等の総投与量(1440mg/kgのケタミン遊離塩基)で12週間行った。この研究のプロトコルを
図11に示し、以下に説明する。
【0099】
KET群のラットは、60mg/kg体重が週2回、12週間で皮下投与された。皮下注射あたり60mg/kgの投与量を選択したのは、より高い投与量ではラットにとって致命的であることが試験されたからである。対照群のラットは、等量(KET群と同様)の0.9%生理食塩水が皮下投与された。KEP群のラットは、毎月に480mg/kg体重が12週間皮下投与された。最終毒性分析のために、すべての動物を犠牲した。
【0100】
注射部位の評価について、ケタミンHClが投与されたラットは注射部位紅斑を示し、これは投与後に徐々に開放創傷となったが、対照群及びKEP群のラットは注射後に正常な皮膚表面を示した。
【0101】
組織病理学的分析において、KET注射部位は、表皮、真皮、皮下組織及び筋肉組織の形態損傷を示し(
図12A)、より高い拡大画像では、結合組織における炎症細胞の浸潤が見られた(
図12C及び
図12E)。KEP群の場合、組織病理学的分析により、注射部位の皮膚スライスの正常な形態を示した(
図12B)。より拡大された画像により、KEPによる結合組織の炎症細胞の浸潤も見られたが、顕微鏡視野下の炎症細胞の密度は、KET群よりもはるかに低かった(
図12D及び
図12F)。400倍の拡大視野(
図12F)では、KEP群の注射部位がいくつかの限局性の空の嚢胞様空間を引き起こし、そこにR,S-ケタミンパモエート粒子が存在し、循環系に拡散又は排除される可能性があることが見出された。ケタミンパモエート粒子は、炎症細胞の凝集又はカプセル化を誘発しなかった。
【0102】
ケタミンの乱用は、膀胱炎を引き起こすことが報告されている[26]。したがって、この実施例では、膀胱組織の組織病理学的分析も行われた。膀胱頂端上皮表面は、対照群及びKEP群では粗かった(
図13A及び
図13C;倍率:×400)が、KET群では滑らかであった(
図13B;倍率:×400)。また、対照群とKEP群は薄い粘膜のひだを有していたが(
図13Dと
図13F;倍率:×40)、KET群は突出かつ拡大した粘膜のひだを示し(
図13E;倍率:×40)、結合組織の線維性拡張を示した。
【0103】
中枢神経系を評価するために、全体的病理学的検査のためのラット脳スライスを収集した。KET群ラットにおいて、前頭前野では、顆粒細胞が不足であり、錐体細胞の形態は、分解過程のように小さく又は縮小するように変化した(
図14B及び
図14E)。一方、対照群及びKEPラットの前頭前野のニューロン形態は正常であった(
図14A、
図14C、
図14D及び
図14F)。
【0104】
その結果、皮下注射によるKETの最大耐量(MTD)は、ラットにおける60mg/kgのケタミン遊離塩基であった。ケタミン遊離塩基でのKEPの単回皮下注射は480mg/kgであり、ケタミンのLD50投与量(229mg/kg)よりも高かったが、ラットでは十分に許容された。12週間のKEPの高投与量亜慢性治療は、ラットにおいて病理学的な膀胱及び脳の変化を引き起こさなかったが、KETラットは、膀胱線維症及び脳の神経形態変化を含む変化を示した。これらの発見によれば、KEPは、特に、全同等投与量では、KETよりもはるかに少ない毒性作用を表現した。
【0105】
実施例5.生体内での注射部位評価
KEPの注射部位反応を評価するために、特定の生体内研究がビーグル犬(北山ラベス株式会社、伊那、日本)で実施された。4匹のオス犬に同等の投与量(44mg/kgのケタミン遊離塩基)でKEPを注射した。ドレイズ皮膚紅斑/痂皮スコア(以下の表7)を使用し、KEP投与後1日目、2日目、4日目、8日目及び15日目の注射部位反応を評価した。
【0106】
【0107】
従来、ラットの反復投与毒性学研究は、KEPが、局所的部位観察及び病理学的分析の両方により、注射部位の応答が少ないことを証明した。この実施例は、犬におけるKEPの注射部位の安全性に関するさらなるサポートする証拠を示した。ドレイズスケール評価により、KEPの単回高投与量投与後1日目から15日目まで、4匹のビーグル犬はいずれも注射部位に紅斑が観察されなかった(表8)。
【0108】
【0109】
以上のことから、本開示で提供されるR,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートを含むケタミンの塩並びにそれらの多形体は、ケタミンHClと同様の即効性及び類似の抗うつ効果を有する。
【0110】
驚くべきことに、R,S-ケタミンパモエート、S-ケタミンパモエート及びR-ケタミンパモエートで処置されたマウスは、抗うつ効果が鎮静行動を伴わないが、ケタミンHClが投与されたマウスは、すぐ鎮静行動を起こり、投与後2時間持続した。ラットにR,S-ケタミンパモエートを12週間投与した場合の亜慢性毒性は、膀胱と脳の病理学的変化を引き起こしないが、ラットにケタミンHClを投与した場合は、膀胱線維症と脳の神経形態変化を含む変化を示す。また、R,S-ケタミンパモエートは、ケタミンHClに比べて、より穏やかな皮下注射部位反応を示す。
【0111】
これらの結果は、本開示で提供されるケタミンの塩及びその多形体は、副作用が少なく、許容投与量が高い、すなわち、ケタミンHClよりも安全性が高いので、製薬用途に有用であることを示している。
【0112】
本開示の実施形態のいくつかは上記の通り詳細に説明されたが、当業者は、本開示の教示及び利点から実質的に逸脱することなく、示された特定の実施形態に様々な修正及び変更を加えることができる。そのような修正及び変更は、添付の特許請求の範囲に記載されるように、本開示の範囲に含まれる。
【0113】
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さらに、本発明は次の態様を包含する。
1. ケタミン対パモエートの化学量論が2:1である、ケタミンパモエート塩。
2. 以下の式(I)で表されるR,S-ケタミンパモエート塩、
【化6】
以下の式(II)で表されるS-ケタミンパモエート塩、又は
【化7】
以下の式(III)で表されるR-ケタミンパモエート塩である、
【化8】
項1に記載のケタミンパモエート塩。
3. 非晶質である、項1に記載のケタミンパモエート塩。
4. 6.0、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、19.6、22.2、25.2及び30.3から選択される1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する結晶形である、項1に記載のケタミンパモエート塩。
5. 前記R,S-ケタミンパモエート塩は、以下の少なくとも1つで表されるXRPDパターンを有する結晶形である、項2に記載のケタミンパモエート塩。
(i)6.0、8.6、10.7、11.6、12.0、13.0、14.7、15.0、15.3、17.9、18.6、19.6、20.0、21.1、21.6、22.2、23.3、24.4、25.2、25.9、26.9、28.6、29.7、30.3、32.4、34.0及び36.6から選択された1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むXRPDパターン、及び
(ii)図2Aに示すXRPDパターン。
6. 前記S-ケタミンパモエート塩は、以下の少なくとも1つで表されるXRPDパターンを有する結晶形である、項2に記載のケタミンパモエート塩。
(i)6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.1、18.2、19.2、19.7、20.1、22.0、22.8、23.3、23.7、24.1、24.7、25.2、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2から選択された1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むXRPDパターン、及び
(ii)図2Bに示すXRPDパターン。
7. 前記R-ケタミンパモエート塩は、以下の少なくとも1つで表されるXRPDパターンを有する結晶形である、項2に記載のケタミンパモエート塩。
(i)6.0、10.8、11.7、12.0、12.6、13.1、14.6、15.0、18.2、19.3、19.7、20.6、22.0、22.9、23.6、24.1、24.7、25.2、25.9、27.3、30.1、31.6、45.4、56.4及び75.2から選択された1つ以上の2θ値±0.2 2θを含むXRPDパターン、及び
(ii)図2Cに示すXRPDパターン。
8. 95%を超える純度を有する、項1~7のいずれか一項に記載のケタミンパモエート塩。
9. 有効量の医薬組成物を必要とする対象に投与することを含む中枢神経系(CNS)疾患の治療に使用されるための医薬組成物であって、項1~7のいずれか一項に記載のケタミンパモエート塩とその薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
10. 前記のCNS疾患は、大うつ病性障害(MDD)、自殺念慮の差し迫ったリスクを伴うMDD、治療抵抗性うつ病(TRD)、双極性障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、自閉症スペクトラム障害、耳鳴り、難治性慢性片頭痛、喘息、不安、物質使用障害、アルコール使用障害、摂食障害、難治性てんかん重積状態、脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症及び痛みからなる群から選択される、項9に記載の使用されるための医薬組成物。
11. 有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む必要とする対象の麻酔に使用されるための医薬組成物であって、項1~7のいずれか一項に記載のケタミンパモエート塩とその薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
12. 前記のCNS疾患の治療又は麻酔は、前記の医薬組成物の投与後24時間以内に始まり、かつ少なくとも10日間続く、項9~11のいずれかに記載の使用されるための医薬組成物。