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特許7451547偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡
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  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図1
  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図2
  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図3
  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図4
  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図5
  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図6
  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図7
  • 特許-偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】偏光分離装置、かかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉光学顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20240311BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20240311BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240311BHJP
   G01B 9/02 20220101ALI20240311BHJP
   G01B 9/04 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G02B27/28 Z
G02B21/00
G02B5/30
G01B9/02
G01B9/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021549206
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 FR2020050500
(87)【国際公開番号】W WO2020183107
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】1902638
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520356906
【氏名又は名称】オリバ フランス エス.アー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】アシェ オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】リシャール シモン
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/156784(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210222(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108803031(CN,A)
【文献】特表2002-541512(JP,A)
【文献】特表2016-519327(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009044910(DE,A1)
【文献】国際公開第2019/004295(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194019(WO,A1)
【文献】特開2000-028406(JP,A)
【文献】特開平11-218679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
G02B 21/00
G02B 5/30
G01B 9/02
G01B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光ビーム(100)を受けることを意図された偏光分離装置(1)であって、第一の光学中心(O)、第一の光軸(Z)並びに第一の円偏光状態について正の第一の焦点距離(F)及び前記第一の円偏光状態と直交する他の円偏光状態について反対の焦点距離(-F)を有する第一の幾何学的位相レンズ(L)と、第二の光学中心(O)、第二の光軸(Z)並びに前記第一の円偏光状態について正の第二の焦点距離(F)及び前記他の円偏光状態について反対の焦点距離(-F)を有する第二の幾何学的位相レンズ(L)とを含み、前記第一の光軸(Z)と前記第二の光軸(Z)とは、数度未満の角度を形成し、前記第一及び第二の幾何学的位相レンズは、前記第一の光軸(Z)に従って第一の距離(D)だけ相互に分離され、
前記装置(1)は、前記第二の幾何学的位相光学レンズ(L)上への前記第一の光軸(Z)に従った前記第一の光学中心(O)の投射(P)が前記第二の光学中心(O)から非ゼロの第二の距離(e)に配置されるように構成され且つ方向付けられ、前記第一の距離(D)は、前記第一の焦点距離(F)及び前記第二の焦点距離(F)より小さい、偏光分離装置(1)。
【請求項2】
前記第一の焦点距離(F)と前記第二の焦点距離(F)とは、10%以下の差を有する、請求項1に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項3】
前記第二の光軸(Z)は、前記第一の光軸(Z)に対して第二の距離(e)だけオフセットされる、請求項1又は2に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項4】
前記第一及び第二の幾何学的位相レンズ間の並進移動手段(5)を含み、前記並進移動手段(5)は、前記第二の光学中心(Z)を、前記第一の光軸(Z)を横断する方向に従って前記第一の光学中心(O)に対してオフセットするように適合される、請求項3に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項5】
前記第一の光軸(Z)は、前記装置(1)への前記入射光ビームの伝搬軸に対して角度(θ)を形成する、請求項1~4の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項6】
前記第一及び第二の幾何学的位相レンズを回転させるための手段(7)を含み、前記第一の幾何学的位相レンズ(L)と前記第二の幾何学的位相レンズ(L)とは、相互に平行に保持され、前記回転手段(7)は、前記第一及び第二の幾何学的位相レンズを前記入射光ビーム(100)に対して同時に傾斜させるように適合される、請求項5に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項7】
前記第一の距離(D)は、前記第一の焦点距離(F)及び前記第二の焦点距離(F)の20%未満である、請求項1~6の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項8】
前記第一の幾何学的位相レンズ(L)及び前記第二の幾何学的位相レンズ(L)は、球面又は円柱屈折力を有する、請求項1~7の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項9】
発散光学レンズ(9)を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項10】
1/4波長遅延板(11)を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項11】
第三の光学中心(O)、第三の光軸(Z)及び第三の焦点距離(F)を有する第三の幾何学的位相レンズ(L)と、第四の光学中心(O)、第四の光軸(Z)及び第四の焦点距離(F)を有する第四の幾何学的位相レンズ(L)とを含み、前記第三の幾何学的位相レンズ(L)と前記第四の幾何学的位相レンズ(L)とは、前記第一の円偏光状態について同じ符号の、且つ前記他の直交する円偏光状態について反対の符号の屈折力を有するように配置され、前記第三の光軸(Z)及び前記第四の光軸(Z)は、前記第一の光軸(Z)と数度未満の角度を形成し、前記第三及び第四の幾何学的位相レンズは、前記第三の光軸(Z)に従って第三の距離(D’)だけ相互に分離され、前記第四の幾何学的位相レンズ(L)上への前記第三の光軸(Z)に従った前記第三の光学中心(O)の投射は、前記第四の光学中心(O)から非ゼロの第四の距離(e’)に配置され、前記第三の距離(D’)は、前記第三の焦点距離(F)及び前記第四の焦点距離(F)より小さい、請求項1~10の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)を含む差動式干渉計(50、52)。
【請求項13】
求項1~11の何れか一項に記載の偏光分離装置(1)を含む微分干渉光学顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、偏光分離光学部品の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、偏光分離装置並びにかかる装置を含む差動式干渉計及び微分干渉顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0003】
偏光分離装置は、入射光ビームを異なる偏光状態に従って2つの偏光成分に分離することを可能にする光学部品である。
【0004】
例えば、既知の偏光分離装置は、ロションプリズム及びウォラストンプリズムを含む。これらは、複屈折材料で製作された2つのプリズムの使用に基づく。これらのプリズムは、入射光ビームを、それぞれ直線偏光を有する2つの射出光ビームに分離し、2つの射出光ビームの偏光は、直交する。2つの射出光ビーム間の角度は、プリズムを形成する材料の複屈折特性、複屈折軸のプリズム面に対する方位及びプリズムの角度に依存する。
【0005】
ノマルスキプリズムは、ウォラストンプリズムの変形である。これらにより、入射光ビームの2つの直線偏光への角度分離が得られるだけでなく、相互に直交する方向に偏光された2つの射出光ビームの交点を空間的に画定することもできる。
【0006】
偏光分離キューブ(「マクニールキューブ」とも呼ばれる)は、他のタイプの偏光分離装置である。これらは、異方性材料で製作された2つのプリズムを含み、これらは、それぞれの斜辺により接続されている。斜辺は、入射偏光に応じて反射及び透過特性を有するコーティングを含む。
【0007】
しかしながら、これらの偏光分離装置の全てについて、射出光ビームの分離角度は、構造によって与えられる。部品が製造されると、この分離角度を調整することができない。加えて、プリズムに基づくこれらの部品は、入射光ビームに対して斜めの表面を含むため、かなりの厚さを有する。プリズムに基づくこれらの部品の断面は、限定されているため、射出光ビームの断面も限定的な大きさを有する。最後に、これらの部品の射出側では、射出光ビームは、直線偏光を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術の上述の欠点を克服するために、本発明は、分離角度を容易に調整できる薄型の偏光分離装置を提供する。
【0009】
より具体的には、本発明によれば、入射光ビームを受けるための偏光分離装置が提供される。本発明によれば、装置は、第一の光学中心、第一の光軸並びに第一の円偏光状態について正の第一の焦点距離及び第一の円偏光状態と直交する他の円偏光状態について反対の焦点距離を有する第一の幾何学的位相レンズと、第二の光学中心、第二の光軸並びに第一の円偏光状態について正の第二の焦点距離及び他の円偏光状態について反対の焦点距離を有する第二の幾何学的位相レンズとを含み、第一の光軸と第二の光軸とは、数度未満の角度を形成し、第一及び第二の幾何学的位相レンズは、第一の光軸に従って第一の距離だけ相互に分離される。本発明によれば、装置は、第二の幾何学的位相光学レンズ上への第一の光軸に従った第一の光学中心の投射が第二の光学中心から非ゼロの第二の距離に配置されるように構成され且つ方向付けられ、前記第一の距離は、前記第一の焦点距離及び前記第二の焦点距離より小さい。
【0010】
したがって、本発明によれば、第一の幾何学的位相レンズの第一の光学中心と、第二の幾何学的位相レンズの第二の光学中心との間に横方向のオフセットが導入される。それらの特性から、2つの幾何学的位相レンズは、光ビームの左右2つの円偏光成分を分離できる。構成時、これらの2つの成分は、本発明による装置の射出側において、2つの光学中心間の横方向のオフセットに依存する特定の分離角度で発散される。本発明によれば、このオフセットは、調整可能であり、したがって第二の幾何学的位相レンズを、光軸を横断する方向に変位させることにより、2つの円偏光成分に対応する2つのビーム間の分離角度を調整できる。本発明によれば、2つの幾何学的位相レンズの組合せは、したがって、装置の射出側における偏光の分離角度を調整するのに有利である。加えて、幾何学的位相レンズの厚さがより薄いため、薄型装置を得ることができる。
【0011】
個別に又は何れの技術的に実現可能な組合せでも考えられる、本発明による偏光分離装置の他の非限定的で有利な特徴は、以下のとおりである:
- 第一焦点距離と第二の焦点距離とは、10%以下の差を有し;
- 第二の光軸は、第一の光軸に対して第二の距離だけオフセットされ;
- 第一及び第二の幾何学的位相レンズ間の並進移動手段が提供され、前記並進移動手段は、第二の光学中心を、第一の光軸を横断する方向に従って第一の光学中心に対してオフセットするように適合され;
- 第一の光軸は、前記装置への入射光ビームの伝搬軸に対して角度を形成し;
- 第一及び第二の幾何学的位相レンズを回転させるための手段が提供され、第一の幾何学的位相レンズと第二の幾何学的位相レンズとは、相互に平行に保持され、前記回転手段は、前記第一及び第二の幾何学的位相レンズを入射光ビームに対して同時に傾斜させるように適合され;
- 第一の距離は、第一の焦点距離及び第二の焦点距離の20%未満であり;
- 第一の幾何学的位相レンズ及び/又は第二の幾何学的位相レンズは、球面又は円柱屈折力を有し;
- 発散光学レンズが提供され;
- 1/4波長遅延板が提供され;及び
- 第三の光学中心、第三の光軸及び第三の焦点距離を有する第三の幾何学的位相レンズが提供され、且つ第四の光学中心、第四の光軸及び第四の焦点距離を有する第四の幾何学的位相レンズが提供され、第三の幾何学的位相レンズと第四の幾何学的位相レンズとは、第一の円偏光状態について同じ符号の、且つ他の円偏光状態について反対の符号の屈折力を有するように配置され、第三の光軸及び第四の光軸は、第一の光軸と数度未満の角度を形成し、第三及び第四の幾何学的位相レンズは、第三の光軸に従って第三の距離だけ相互に分離され、第四の幾何学的位相レンズ上への第三の光軸に従った第三の光学中心の投射は、第四の光学中心から非ゼロの第四の距離に配置され、前記第三の距離は、前記第三の焦点距離及び前記第四の焦点距離より小さい。
【0012】
本発明は、上述の偏光分離装置を含む差動式干渉計も提供する。
【0013】
本発明は、上述の偏光分離装置を含む微分干渉光学顕微鏡も提供する。
【0014】
非限定的な例として提供される添付の図面に関する以下の説明は、本発明の目的及びそれを実行する方法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による偏光分離装置の様々な要素の概略的表現である。
図2】本発明による偏光分離装置の第一の例の概略的表現である。
図3】本発明による偏光分離装置の第二の例の概略的表現である。
図4】本発明による第一又は第二の偏光分離装置の変形形態の概略的表現である。
図5】本発明による偏光分離装置の他の例の概略的表現である。
図6】本発明による偏光分離装置を含む差動式干渉計の第一の例の概略的表現である。
図7】本発明による偏光分離装置を含む差動式干渉計の第二の例の概略的表現である。
図8】例えば、微分干渉顕微鏡に組み込まれるように意図された本発明による偏光分離装置の概略的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、偏光分離装置1(以下では装置1とも呼ばれる)に関する。
【0017】
この説明では、「幾何学的位相レンズ」と呼ばれる光学部品が導入される。幾何学的位相レンズは、幾何学的位相ホログラム及び/又は液晶から製作される。幾何学的位相レンズの製作については、Optimisation of aspheric geometric-phase lenses for improved field-of-view,Kathryn J.Hornburg et al.(SPIE Optical Engineering and Applications,Proceedings Volume 10743,Optical Modeling and Performance Predicions X:1074305,2018)に記載されている。
【0018】
幾何学的位相レンズは、液晶から製造される。液晶の配向レイアウトから部品の各点において異なる位相が画定される。
【0019】
これらの部品の動作に関して、これらの幾何学的位相レンズの1つを通る光ビームを考える。知られているように、光ビームは、右円偏光成分と左円偏光成分とに分解され得る。その設計から、円偏光の1つ(例えば、右円偏光)では、幾何学的位相レンズは、焦点距離+fの収束レンズのように動作する。他の偏光(ここでは左円偏光)では、幾何学的位相レンズは、焦点距離-fの発散レンズのように動作する。換言すれば、幾何学的位相レンズは、1つの円偏光で正の屈折力を有し、且つ他の円偏光で負の屈折力を有する。加えて、幾何学的位相レンズを通ると、右円偏光状態は、左円偏光に変換され、その逆でもある。
【0020】
1つの単独の幾何学的位相レンズでは、2つの直交する円偏光を空間的に分離できない。一般に、幾何学的位相レンズは、所与の波長範囲、例えば450~600nmで動作する。
【0021】
例えば、本発明で使用される幾何学的位相レンズは、Edmund Optics社又はImagineOptix社により「偏光ディレクトフラットレンズ」の名称で市販されている部品の種類のものである。
【0022】
実際に、幾何学的位相レンズは、平坦面を有し、すなわち物理的な曲率半径を有さない。幾何学的位相レンズの厚さは、薄く、典型的には0.4ミリメートル(mm)の範囲内である。幾何学的位相レンズの直径は、典型的には25mmの範囲内である。例えば、幾何学的位相レンズの表面積は、120×120mmである。
【0023】
図1は、入射光ビーム100を受けるように意図された本発明による偏光分離装置1の様々な要素を表す。一般に、この入射光ビーム100は、コリメートされる。代替的に、入射光ビーム100は、装置1の入射側でコリメートされない。
【0024】
装置1は、第一の幾何学的位相レンズLと、第二の幾何学的位相レンズLとを含む。任意選択により、装置1は、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの間の並進移動手段5及び/又は第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとを回転させるための手段7と、レンズ9及び/又は1/4波長遅延板11とを含む。
【0025】
図2~4に示されているように、第一の幾何学的位相レンズLは、第一の光学中心O、第一の光軸Z及び第一の焦点距離Fを有する。第一の光軸Zは、第一の幾何学的位相レンズL1の平坦面と直交し、第一の光学中心Oを通る。第二の幾何学的位相レンズLは、第二の光学中心O、第二の光軸Z及び第二の焦点距離Fを有する。第二の光軸Zは、第二の幾何学的位相レンズLの平坦面と直交し、第二の光学中心Oを通る。好ましくは、第一の焦点距離F及び第二の焦点距離Fは、焦点距離Fと等しく、ビームは、コリメートされた状態に保たれる。装置は、第一の焦点距離Fと第二の焦点距離Fとが異なるが、例えば10%以下の差で近接している場合にも動作する。
【0026】
ここで、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、球面屈折力を有する。第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、1つの円偏光で収束し、他の円偏光で発散する。この場合、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、それぞれ第一の光軸Z上の焦点F及び-F並びに第二の光軸Z上の焦点F及び-Fで合焦する。代替的に、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、円柱屈折力を有し、1つの円偏光で収束し、他の円偏光で発散する。円柱屈折力を有するレンズの場合、例えば第一の幾何学的位相レンズLが円柱屈折力を有する場合、第一の光軸Zに平行な軸を有するコリメートされた入射光ビームは、1つの円偏光では、焦点Fを通る第一の光軸Zと直交する線分に従って、且つ他の円偏光では、焦点-Fを通る第一の光軸Zと直交する他の線分に従って合焦する。これらが球面屈折力を有するか又は円柱屈折力を有するかを問わず、これらの幾何学的位相レンズは、従来の球面又はシリンドリカルレンズが非球面又は非球面シリンドリカルレンズと呼ばれる場合にあり得るように異なる幾何学収差を有する。その設計に応じて、幾何学的位相レンズの幾何学収差は、より小さいことができる。幾何学的位相レンズは、所定のスペクトルバンドにわたる色収差についても補正され得る。
【0027】
第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、同じ方向に位置付けられる。
【0028】
第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、第一の光軸Zに従って相互に接触するか又は第一の距離Dだけ分離される。実際に、この第一の距離Dは、第一の焦点距離F及び第二の焦点距離Fより小さい。例えば、第一の距離Dは、第一の焦点距離F及び第二の焦点距離Fの20%未満である。好ましくは、第一の距離Dは、例えば、第一の焦点距離F及び第二の焦点距離Fの10%未満である。換言すれば、第一の距離Dは、できるだけ小さい。第一の焦点距離F及び第二の焦点距離Fが焦点距離Fと等しい場合、第一の距離Dは、焦点距離Fより小さく、実際には焦点距離Fの20%未満である。好ましくは、第一の距離Dは、焦点距離Fの10%未満である。好ましくは、第一の距離Dは、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの間の干渉の形成を回避するために非ゼロである。図2において、第一の距離Dは、例えば、0.5mmの範囲内である。
【0029】
一般に、第一の光軸Zと第二の光軸Zとは、数度未満の角度を形成する。以下において、第一の光軸Zと第二の光軸Zとは、例えば、平行である。
【0030】
装置1は、第二の光学中心Oが、第一の光軸Zに従い、図2~4に表される正規直交準拠枠XYZにより画定される軸Zを横断するように、第二の幾何学的位相レンズL上への第一の光学中心Oの投射P1に対して第二の距離eだけオフセットされる(したがって、この場合、第二の距離eは、固定される)ように構成される。
【0031】
例えば、第二の距離eは、装置1の製造時に固定され得る。
【0032】
任意選択により、装置1は、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの間の並進移動手段5をさらに含む。並進移動手段5は、第一の光軸Zを(及び例えば第一の光軸Zと第二の光軸Zとが平行である場合、第一の光軸Zと第二の光軸Zとが平行である場合には第二の光軸Zも)横断する方向に従って第二の距離eを調整するように適合される。実際に、並進移動手段5は、したがって、第二の幾何学的位相レンズLを、第一の光軸Zを横断する方向に従って第二の距離eだけオフセットするように適合される。この例において、第二の幾何学的位相レンズL上への第一の光軸Zに従った第一の光学中心Oの投射Pは、第二の光学中心Oから第二の距離eに配置される。この場合、第二の距離eは、例えば、5mmの範囲内である。
【0033】
任意選択により、装置1は、いわゆる補償レンズ(その機能については、後に説明する)を含む。例えば、このレンズ9は、従来の発散レンズである。図5に表されているように、レンズ9は、第一の幾何学的位相レンズL及び第二の幾何学的位相レンズLの後に位置付けられる。代替的に、レンズ9は、装置1の入射側に位置付けられ得る。
【0034】
さらに任意選択により、装置1は、1/4波長遅延板11を含む。図6及び7に表されているように、1/4波長遅延板11は、第一の幾何学的位相レンズL及び第二の幾何学的位相レンズLの後、ここでは補償レンズ9の後に位置付けられる。
【0035】
図2は、本発明による偏光分離装置1の第一の実施形態を表す。好ましくは、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、同じ焦点距離Fを有する。例えば、焦点距離Fは、40~100mm、典型的には50mmの範囲内である。
【0036】
ここで、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、相互に接触して又は近接して設置される。したがって、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの間の第一の距離Dは、焦点距離Fと比較して小さい。例えば、第一の距離Dは、3mmの範囲内である。
【0037】
この第一の実施形態において、入射光ビーム100の伝搬方向は、第一の光軸Z及び第二の光軸Zに平行である。
【0038】
この第一の実施形態によれば、第二の光学中心Oは、第一の光軸Z及び第二の光軸Zに平行な入射光ビーム100の伝搬軸を横断する方向において、第一の光軸Zに対して第二の距離eだけオフセットされている。第二の距離eは、100μm~数ミリメートルである。
【0039】
例えば、図2に示されているように、並進移動手段により又は第二の距離が構成時に固定される場合、構成時、第二の光軸Zは、第一の光軸Zに対して第二の距離eだけオフセットされる。第一の光軸Zに対する第二の光軸Zのオフセット方向は、正規直交準拠枠XYZにおいて第一の光軸Zに対する第二の光学中心Oの位置からも画定される。例えば、オフセット方向は、軸Zと直交する平面XY内の第二の光学中心Oの位置から画定される。代替的に、オフセット方向は、入射光ビーム100の伝搬軸に対する第二の光学中心Oの位置から画定され得る。
【0040】
実際に、例えば入射光ビーム100の右円偏光成分を考えると、その動作及びその方位により、第一の幾何学的位相レンズLは、例えば、焦点距離Fの収束レンズのように動作する。他方では、第二の幾何学的位相レンズLは、左円入射偏光で焦点距離-Fの発散レンズのように動作するように方向付けられる。換言すれば、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、第一の円偏光状態について同じ符号の屈折力及び第一の円偏光状態と直交する他の円偏光状態について反対の符号の屈折力を有するように配置される。
【0041】
第一の幾何学的位相レンズLの射出側において、入射光ビーム100の右円偏光成分は、第一の幾何学的位相レンズLの特性により左円偏光を有する第一の中間光ビーム115に変換される。第一の中間光ビーム115は、焦点Fの平面内で合焦される。焦点Fは、第二の幾何学的位相レンズLの焦点Fに近いため、後者は、第二の偏光ビーム120を形成し、これは、一般に、コリメートされる。焦点Fと焦点Fとの間に第二の距離eのオフセットが存在するため、第二の偏光ビーム120は、軸Oに従って角度的に発散する。したがって、この第一の中間光ビーム115は、第二の偏光ビーム120に変換され、これは、第二の幾何学的位相レンズLの特性により右円偏光を有する。
【0042】
幾何光学の法則により、入射光ビーム100の右円偏光成分の展開をプロットして、右円偏光を有する第二の偏光ビーム120を得ることができる。右円偏光成分の経路は、図2において実線で示されている。
【0043】
対称的に、入射光ビーム100の左円偏光成分を考えると、第一の幾何学的位相レンズLは、焦点距離-Fの発散レンズのように動作する。他方では、第二の幾何学的位相レンズLは、焦点距離Fの収束レンズのように動作する。
【0044】
第一の幾何学的位相レンズLの射出側において、入射光ビーム100の左円偏光成分は、第一の幾何学的位相レンズLの特性により右円偏光を有する第二の中間光ビーム105に変換され、焦点-Fの平面に合焦される。その後、この第二の中間光ビーム105は、第一の偏光ビーム110に変換され、これは、第二の幾何学的位相レンズLの特性により左円偏光を特徴とする。第二の中間光ビーム105は、焦点-Fの平面内に合焦される。焦点-Fは、第二の幾何学的位相レンズLの焦点-Fに近いため、後者は、第一の偏光ビーム110を形成し、これは、一般に、コリメートされる。焦点-Fと焦点-Fとの間に第二の距離eのオフセットがあるため、第一の偏光ビーム110は、平面YZ内の軸-Fに従って角度的に発散する。偏光角度
【数1】
は、e/Fの範囲内である。
【0045】
幾何光学の法則により、左円成分の展開をプロットして、左円偏光を有する第一の偏光ビーム110を得ることができる。左円偏光成分の経路は、図2において点線で表されている。
【0046】
図2に示されるように、本発明によれば、有利には、入射光ビーム100は、第一の偏光ビーム110と第二の偏光ビーム120とに角度的に分離される。本発明によれば、有利には、第一の偏光ビーム110と第二の偏光ビーム120とは、直交する偏光を有する。本明細書では、例えば、第一の偏光ビーム110は、左円偏光を有し、第二の偏光ビーム120は、右円偏光を有する。分離角度δは、第一の偏光ビーム110と第二の偏光ビーム120との間に画定される。この分離角度δは、第二の距離e及び焦点距離Fに依存する。第一の距離Dが焦点距離Fと比較して短すぎ、第二の距離eが焦点距離Fと比較して短すぎる場合、分離角度δは、以下の関係により近似的に与えられる。
[式1]
【数2】
【0047】
本発明によれば、入射光ビーム100の右円偏光及び左円偏光の分離面は、入射光ビーム100の伝搬軸及び第一の光学中心Oと第二の光学中心Oとを結ぶ線に平行である。
【0048】
焦点距離Fが50mmの範囲内である例において、したがって角度分離の法則により、40mrad/mm(すなわち2.3度/mm)の範囲内である、2つの偏光ビーム間のオフセットδ/eが得られる。
【0049】
したがって、分離角度δは、第一の光学中心Oと第二の光学中心Oとの間の第二の距離eを変化させることによって調整可能である。実際に、分離角度δは、第二の幾何学的位相レンズLを変位させて第二の距離eを変化させることによって調整可能である。本発明によれば、2つの幾何学的位相レンズの組合せは、固定された分離角度を有する既知の偏光分離器と対照的に、装置1の射出側における偏光の分離角度を調整できる。第一の幾何学的位相レンズL及び第二の幾何学的位相レンズLの相対位置に対する平面XY内の第二の距離eの方位によっても偏光ビーム110、120の分離平面を方向付けることができる。実際に、偏光ビーム110、120の分離は、第一の光軸Z及び第二の光軸Zを含む平面において見られる。加えて、偏光分離装置1は、幾何学的位相レンズの嵩が小さいため、薄型である。例えば、装置1の厚さは、1.5mm未満、典型的には1.3mmの範囲内である(既知の装置の約20mmと対照的)。
【0050】
本発明による装置1は、厚さを増大させずに、イメージング応用に有益な大径光ビームを操作するように適合される。例えば、0.5mmに距離において且つ光軸を5mmオフセットして設置された直径25mm、厚さ0.4mmの2つの幾何学的位相レンズを含み、したがって全体の厚さが1.3mmの本発明による偏光分離装置により、直径20mmのビームの偏光分離を行うことができる。一般に、この種の光ビームを処理できる既知の偏光分離器の厚さは、20mmの範囲内である。
【0051】
図3は、本発明による偏光分離装置1の第二の実施形態を表す。
【0052】
任意選択により、装置1は表して第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとを回転させるための手段7も含む。回転手段7は、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとを同時に傾斜させるように適合され、それにより、第一の光軸Zは、入射光ビーム100の伝搬軸に対して角度θを形成する。回転手段7は、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとを同時回転中に相互に平行に保つ。
【0053】
この第二の実施形態によれば、第一の光学中心Oと第二の光学中心Oとの間に導入されるオフセットは、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの共同傾斜のみで得ることができる。図3に示される例において、第一の光軸Zと第二の光軸Zとは、一致している。第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、例えば、回転手段7を介して同時に傾斜され、それにより入射光ビーム100の伝搬軸と第一の光軸Z(本明細書では第二の光軸Zと一致している)との間に傾斜角度θが導入される。したがって、入射光ビーム100の伝搬方向は、第一の光軸Z及び第二の光軸Zに対して傾斜角度θだけ傾斜される。傾斜角度θは、0~90度(すなわち0~1.57ラジアン)であり、好ましくは20度未満である(傾斜角度が小さい場合)。
【0054】
第二の光学中心Oは、第二の幾何学的位相レンズL上への第一の光軸Zに従った第一の光学中心Oの投射Pに対して、正規直交準拠枠XYZにより画定される軸Zを横断する方向に第二の距離eだけオフセットされる。
【0055】
この場合、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの共同回転により導入されるオフセットは、第二の幾何学的位相レンズL上への第一の光軸Zに従った第一の光学中心Oの投射Pに対応し、D.tan(θ1)と等しい。最後に、分離角度δは、以下の近似関係により与えられる。
[式2]
【数3】
【0056】
3mmの範囲内の第一の距離D及び傾斜角度θの小さい値(数度の範囲内であり、実際には20度未満)の場合、角度分離の法則δ/θは、0.12の範囲内である。
【0057】
この例において、入射光ビーム100の右円偏光及び左円偏光の分離平面は、入射光ビーム100の伝搬軸及び第一の光学中心Oと第二の光学中心Oとにつながる線に平行である。
【0058】
代替的に、第一の光学中心Oと第二の光学中心Oとの間に導入されるオフセットは、前述のような横方向のオフセット及び入射光ビーム100に対する第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの共同傾斜の組合せによって得ることができる。第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、回転手段7によって同時に傾斜され、それにより入射光ビーム100の伝搬軸と第一の光軸Zとの間に傾斜角度θが導入される。第一の光軸Zと第二の光軸Zとは、平行であるため、入射光ビーム100の伝搬軸と第二の光軸Zとの間に同じ角度θが見られる。傾斜角度θは、0~90°(すなわち0~1.57ラジアン)、好ましくは20°未満(小さい傾斜角度の場合)である。
【0059】
図4は、本発明による偏光分離装置1のこの変形形態を示す。これは、第一の実施形態の変形形態に対応し、第一の幾何学的位相レンズL及び第二の幾何学的位相レンズLによって形成されるセットが傾けられる。換言すれば、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとは、入射光ビーム100の伝搬軸を横断する方向に第二の距離eだけオフセットされ、その後、例えば回転手段7によって傾けられ、それにより、入射光ビーム100の伝搬軸と第一の光軸Zとは、他の傾斜角度θを形成する。したがって、入射光ビーム100の伝搬方向は、第一の光軸Z及び第二の光軸Zに対して他方の傾斜角度θだけ傾けられる。実際に、傾斜角度θは、20°未満である。
【0060】
この場合、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの共同回転により導入される、第一の光学中心Oの投射Pと第二の光学中心Oとの間のオフセットは、D.tan(θ)と等しい。また、最後に、第一の偏光ビーム110と第二の偏光ビーム120との間の分離角度δは、以下の関係により与えられる。
[式3]
【数4】
【0061】
第二の距離eは、構成時に固定され得る。有利には、この変形形態では、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの共同傾斜により、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの間において、横断方向への調整可能なオフセットをより低コストで導入できる。
【0062】
前述のように且つまた図5に示されるように、装置1は、任意選択により、レンズ9を含み得る。このレンズ9は、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの間において、第一の距離Dにより定量化される長さ方向の距離を空けることから生じるデフォーカス現象を補償するように適合される。したがって、このレンズ9により、偏光ビームもコリメートされること、すなわちその曲率半径が無限大となることが確実となる。レンズ9は、装置1の射出側における収差の導入を限定するように選択される。例えば、レンズ9は、従来の発散レンズである。
【0063】
実際に、第一の幾何学的位相レンズLと第二の幾何学的位相レンズLとの間の第一の距離Dは、第一の偏光ビーム110と第二の偏光ビーム120との間の焦点ずれの原因となり得る。
【0064】
2つの偏光ビーム間の相対的焦点ずれΔは、各偏光に関連する曲率半径に依存し、2つの対応する屈折力間の偏差として表現される。
【0065】
実際に、入射光ビーム100(例えば、図5に示される光源2により発せられる)の右円偏光成分に関して、関連する曲率半径は、以下の関係により与えられる。
[式4]
【数5】
【0066】
入射光ビーム100の左円偏光成分に関して、関連する曲率半径は、以下の関係により与えられる。
[式5]
【数6】
【0067】
したがって、場合により補償される相対的焦点ずれΔは、以下の関係により与えられる。
[式6]
【数7】
【0068】
レンズ9の焦点距離は、特定された相対的焦点ずれΔを縮小するように特定される。ここで、レンズ9は、偏光ビームの偏光及び角度分離δに影響を与えない。
【0069】
例えば、幾何学的位相レンズの焦点距離がF=50mmと等しく、2つの幾何学的位相レンズ間の長さ方向の距離がD=3mmと等しい場合、2つの偏光に関連する曲率半径は、R=-783mm、R=-883mmの範囲内である。関連する相対的焦点ずれΔは、Δ=0.146ディオプトリの範囲である。例えば、焦点距離f=-1000mmの発散レンズ9が射出側において第二の幾何学的位相レンズLを背景にして位置付けられる。したがって、補正された曲率半径は、R=-3608mm、R=-7547mmと推定される。
【0070】
代替的に、第一の距離Dの値を、相対的焦点ずれΔを補償するように特定することができる。この目的のために、平均曲率半径Ravの値が事前に固定され得る。この固定値は、選択されたレンズによって補償できるように選択される。平均曲率半径は、以下の関係により与えられる。
[式7]
【数8】
【0071】
第一の距離Dは、平均曲率半径Ravの固定値から特定される。例えば、平均曲率半径RavがRav=1000mmに固定され、幾何学的位相レンズの焦点距離がF=50mmと等しい場合、得られる第一の距離Dは、D=2.5mmと等しい。2つの偏光に関連する曲率半径は、したがって、R=950mm、R=1050mmと等しくなる。焦点距離がf=-1000mmと等しい発散レンズ9が導入され、変更された曲率半径がR=-19000mm、R=21000mmと等しいと、相対的焦点ずれΔ)を軽減させることができる。
【0072】
偏光分離装置2は、任意選択により、1/4波長遅延板11も含み得る。1/4波長遅延板は、第二の幾何学的位相レンズLの射出側に位置付けられる。1/4波長遅延板11により、直交円偏光を直交直線偏光に変換できる。したがって、入射光ビームを、直交直線偏光を有する2つの光ビームに角度的に分離する偏光分離装置が得られる。したがって、2つの幾何学的位相レンズ及び1/4波長遅延板の組合せにより、薄型装置の形態でウォラストンプリズムを再現できる。
【0073】
差動式干渉計の応用では、1/4波長遅延板により、偏光ビームを、例えばこれらのビームが検査対象の表面で反射する場合に再結合することができる。
【0074】
これは、特に偏光分離装置1が差動式干渉計システムに組み込まれる場合(図6及び7)に当てはまる。この技術により、2つの光路の相対的ばらつきを測定することができる。例えば、表面20のプラズマエッチング又はエロージョンの場合、偏光ビームの一方は、腐食領域22によって反射され、他方の偏光ビームは、保護された領域25により反射される。
【0075】
この場合、装置1は、反射ビームのコンバイナの役割を果たし、これらが装置1によって再び分離されないように、1/4波長遅延板11により、順方向と逆方向とで偏光を反転させることができる。
【0076】
図6に示される差動式干渉計システム50の第一の例によれば、装置1は、前述の第一の実施形態により製作される。差動式干渉計システム50は、光源2、(非偏光型)分離装置30及び検出ユニット40を含む。これらの要素は、従来使用されているものと同じであり、ここで詳細に説明しない。
【0077】
装置1において、1/4波長遅延板11は、例えば、焦点ずれを補償するためにレンズ9の後に位置付けられる。したがって、1/4波長板11により、入射ビームの直線偏光への変換及び反射ビームの円偏光への変換が可能となる。
【0078】
図7に示される差動式干渉計システム52の第二の例によれば、装置1は、第二の実施形態により製作され、この場合、幾何学的位相レンズの横方向のオフセットは見られず、2つの幾何学的位相レンズの共同回転のみで第一の光学中心Oと第二の光学中心Oとの間のオフセットが得られる。
【0079】
さらに代替的に(図示せず)、差動式干渉計システムは、図4に示されるような偏光分離装置1を含み得る。
【0080】
図8は、本発明による偏光分離装置1の他の実施形態を表す。この他の実施形態によれば、装置1は、幾何学的レンズの2つの対、すなわち一方では第一の幾何学的位相レンズL及び第二の幾何学的位相レンズL並びに他方では第三の幾何学的位相レンズL及び第四の幾何学的位相レンズLを含む。幾何学的位相レンズL、L、L及びLは、入射光ビーム100の伝搬軸上で直列に位置付けられ、第二の幾何学的位相レンズLと第三の幾何学的位相レンズLとの間に第五の距離Sが空けられている。
【0081】
例えば、第三の幾何学的位相レンズLは、第三の光学中心O、第三の光軸Z及び第三の焦点距離Fを有する。第四の幾何学的位相レンズLは、第四の光学中心O、第四の光軸Z及び第四の焦点距離Fを有する。好ましくは、第三の焦点距離F及び第四の焦点距離Fは、焦点距離Fと等しい(第一の焦点距離F及び第二の焦点距離Fと同様)。代替的に、第三の焦点距離F及び第四の焦点距離Fは、焦点距離F(第一の焦点距離F及び第二の焦点距離Fがこれと等しい)と異なる他の焦点距離Fと等しいことができる。装置は、第三の焦点距離Fと第四の焦点距離Fとが相互に異なるが、依然として例えば10%以下の差で近い場合にも動作する。
【0082】
ここで、第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、球面屈折力を有する。第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、それぞれ1つの円偏光で収束し、他の円偏光で発散するように方向付けられる。この場合、第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、それぞれ第三の光軸Z上の焦点F及び-F並びにまた第四の光軸Z上の焦点F及び-Fで合焦する。代替的に、第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、円柱屈折力を有し、1つの円偏光で収束し、他の円偏光で発散する。円柱屈折力を有するレンズの場合、例えば第三の幾何学的位相レンズLが円柱屈折力を有する場合、第三の光軸Zと平行な軸を有するコリメートされた入射光ビームは、円偏光について焦点Fを通る第三の光軸Zと直交する線分に従って、且つまた他の円偏光では、焦点-Fを通る第三の光軸Zと直交する他の線分に従って合焦される。これらが球面屈折力を有するか又は円柱屈折力を有するかを問わず、これらの幾何学的位相レンズは、従来の球面又はシリンドリカルレンズが非球面又は非球面シリンドリカルレンズと呼ばれる場合にあり得るように異なる幾何学的収差について補正できる。
【0083】
第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、同じ方向に位置付けられる。例えば、第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、第一の幾何学的位相レンズL及び第二の幾何学的位相レンズLと同じ方向に位置付けられる。代替的に、第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、第一の幾何学的位相レンズL及び第二の幾何学的位相レンズLと反対方向に位置付けられ得る。
【0084】
一般に、第三の光軸Zと第四の光軸Zとは、数度未満の角度を形成する。以下において、第三の光軸Zと第四の光軸Zとは、平行である。代替的に、第三の光軸Zと第四の光軸Zとは、一致している。
【0085】
第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、第一の光軸Zに従って接触するか又は第三の距離D’だけ相互に分離される。実際に、この第三の距離D’は、第三の焦点距離F及び第四の焦点距離Fより小さい。第三の距離D’は、第三の焦点距離F及び第四の焦点距離Fの20%未満である。好ましくは、第三の距離D’は、例えば、第三の焦点距離F及び第四の焦点距離Fの10%未満である。換言すれば、第三の距離D’は、できるだけ小さい。第三の焦点距離F及び第四の焦点距離Fが焦点距離Fと等しい場合、第三の距離D’は、焦点距離Fより小さい。
【0086】
ここで、第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとは、相互に近接して設置される(第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとの間の距離D’は、したがって、焦点距離Fと比較して小さい)。例えば、第三の距離D’は、3mmの範囲内である。
【0087】
この第三の実施形態によれば、第四の光学中心Oは、入射光ビーム100の伝搬軸を横断する方向に第一の光軸Zに対して非ゼロの第四の距離e’だけオフセットされる。実際に、ここで、装置1は、例えば、第三の幾何学的位相レンズLと第四の幾何学的位相レンズLとの間の他の並進移動手段を含む。第四の距離e’は、100μm~数ミリメートルである。構成時、第四の幾何学的位相レンズL上への第三の光軸Zに従った第三の光学中心Oの投射Pは、第四の光学中心Oから第四の距離e’に配置される。
【0088】
他の並進移動手段は、第四の光学中心Oを、第一の光軸Zを横断する方向に従って第三の光学中心Oに対して第四の距離e’だけオフセットするように適合される。実際に、他の並進移動手段は、したがって、第四の幾何学的位相レンズLを、第一の光軸Zを横断する方向に従って第四の距離e’だけオフセットするように適合される。実際に、線分Pは、軸Zに直交する平面XY内に含まれ、線分Pは、軸Zと直交する他の平面ZY内に含まれる。構成時、線分Pは、線分Pと反対の方向を有する。
【0089】
例えば、図8に示されるように、他の並進移動手段により、第四の光軸Zは、第三の光軸Zに対して第四の距離e’だけオフセットされる。第三の光軸Zに対する第四の光軸Zの他のオフセット方向は、第一の光軸Zに対する第四の光学中心Oの位置から画定される。例えば、他のオフセット方向は、第三の光軸Zに対する平面XY内の第四の光学中心Oの位置から画定される。代替的に、他のオフセット方向は、入射光ビーム100の伝搬軸に対する第四の光学中心Oの位置から画定され得る。
【0090】
図8に示されるように、幾何学的位相レンズ(L、L)の第一の対は、幾何学的位相レンズ(L、L)の第二の対から第五の距離Sだけ分離される。実際に、第一の光学中心Oと第四の光学中心Oとは、第五の距離Sだけ分離される。
【0091】
図8に示されるように、本発明によれば、有利には、入射光ビーム100は、まず、角度的に第一の偏光ビーム110及び第二の偏光ビーム120への偏光に分離される。本発明によれば、有利には、第一の偏光ビーム110と第二の偏光ビーム120とは、直交する円偏光を有する。第一の分離角度δは、コリメートされた第一の偏光ビーム110と第二の偏光ビーム120との間に画定される。その後、第一の偏光ビーム110は、したがって、第二の分離角度δだけ発散されて、第三の偏光ビーム114を形成する。第一の偏光ビーム110と第三の偏光ビーム114とは、同じ偏光を有する。第二の分離角度δは、第一の偏光ビーム110と第三の偏光ビーム114との間に画定される。
【0092】
対称的に、第二の偏光ビーム120は、したがって、第二の分離角度δ/2だけ発散されて、第四の偏光ビーム122を形成する。第四の偏光ビーム122と第二の偏光ビーム120とは、同じ偏光を有する。同様に、第二の分離角度δ/2は、第四の偏光ビーム122と第二の偏光ビーム120とを分離する。
【0093】
図8に示される装置1の射出側の全体的な角度分離δは、したがって、δ=δ+δと等しい。
【0094】
図8に示されるように、第三の偏光ビーム114及び第四の偏光ビーム122の軸は、装置1の射出側で第六の距離Sの点Iにおいて光学中心Oと交差する。第六の距離Sは、以下の関係により与えられる。
[式8]
【数9】
【0095】
したがって、第三の偏光ビーム114と第四の偏光ビーム122との交差は、一方では第一及び第二の幾何学的位相レンズ間の横方向のオフセット、他方では第三及び第四の幾何学的位相レンズ間の横方向のオフセット及び幾何学的位相レンズの2つの対を分離する第五の距離Sに依存する。
【0096】
有利には、この第三の実施形態は、微分干渉光学顕微鏡に関連して使用され得る。この技術は、低い異質性を強調するために使用される。この目的のために、入射光ビームを角度的に分離することの他に、分離された2つの偏光が分離装置の外で交差することを確実にすることも興味深い。このような既知の装置は、ノマルスキプリズムに基づく。この既知の装置と比較して、本発明による偏光分離装置1の第三の実施形態は、より小型である。加えて、それは、偏光ビームの分離角度及び射出ビームの交差位置の調整が可能になるという利点を有する。また、顕微鏡の対物レンズが交換されるとき又は倍率可変対物レンズが使用されるとき、微分干渉モードの品質を保持できる。最後に、一種類の幾何学的位相レンズのみで複数の分離角度及び交差位置を実現できるため、製造が簡単になる。
【0097】
代替的に、装置1は、幾何学的位相レンズLの一部及び幾何学的位相レンズLの一部を含み得る。この場合、幾何学的位相レンズのそれらの部分は、フレネルレンズのように動作する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8