(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】折り畳み食品の成形装置、成形システムおよび成形方法
(51)【国際特許分類】
A21C 11/00 20060101AFI20240311BHJP
A21C 9/06 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A21C11/00 Z
A21C9/06 A
(21)【出願番号】P 2021551721
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2020038308
(87)【国際公開番号】W WO2021070937
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2019186664
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115924
【氏名又は名称】レオン自動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄也
(72)【発明者】
【氏名】濱本 薫
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-135828(JP,A)
【文献】特開2008-068546(JP,A)
【文献】特開平11-232421(JP,A)
【文献】特開2014-151371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0099749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
B25J 1/00-21/02
B65H 3/08
B65H 45/00-45/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地片の一端部を他端部の上に移動させて生地片を折り畳むように移動可能な成形装置であって、
生地片の一端部を、その上方から吸引して持ち上げることにより保持する吸引具と、
前記吸引具の下方に移動可能な支持部を含む支持具と、含み、
前記吸引具と前記支持具は、前記吸引具と前記支持具を互いに近づけることにより、生地片の一端部を前記吸引具と前記支持部との間に把持するように構成されると共に、生地片を折り畳んで重ね合わせるために、生地片の一端部を、前記吸引具と前記吸引具の下方の前記支持部とによって把持したまま、生地片が前記支持部の下側に位置するように生地片の他端部に向かって移動させるように構成される成形装置。
【請求項2】
前記支持具は、前記吸引具を上昇させて生地片の一端部の把持を解除した後、前記支持部を生地片の他端部に向かって移動させることにより、生地片の一端部を他端部の上に重ねて押し付けて、生地片の一端部と他端部を結着させるように構成される、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記支持部は回転可能なローラを含む、請求項1又は2に記載の成形装置。
【請求項4】
更に、生地片を折り畳むことにより重ね合わされた生地片の周縁部を押圧する押圧具を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の成形装置と、
前記成形装置を移動させる移動機構と、を含む成形システム。
【請求項6】
生地片を折り畳み成形する方法であって、
搬送面上の生地片の一端部を、その上方から吸引具によって吸引しながら保持して持ち上げる持ち上げ工程と、
支持部を、持ち上げた生地片の一端部の下方に移動させ、前記吸引具と前記支持部を互いに近づけて、生地片の一端部を、前記吸引具と前記支持部の間に把持する把持工程と、
生地片の一端部を、前記吸引具と前記吸引具の下方の前記支持部とによって把持したまま、生地片が前記支持部の下側に位置するように生地片の他端部に向かって移動させて、生地片を折り畳んで重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記吸引具を上昇させて、生地片の一端部の把持を解除し、前記支持部を生地片の他端部に向かって移動させることにより、生地片の一端部を搬送面上の他端部の上に重ねて押し付けて、生地片の一端部と他端部を結着させる結着工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記支持部は、フリーローラであり、前記フリーローラを転動させて、生地片の一端部を搬送面上の他端部の上に重ねて押し付けて、生地片の一端部と他端部を結着させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記持上げ工程よりも前に、内材を生地片の上面に吐出する、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記重ね合わせ工程において、生地片の一端部を、前記吸引具と前記支持部とによって把持したまま、生地片の他端部に向かって山型の曲線の移動軌跡に沿って移動させる、請求項
6又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記重ね合わせ工程の後、更に、重ね合わせた生地片の周縁部を押圧具によって押圧する押圧工程を含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品を折り畳む成形装置、成形システム、および成形方法に関する。特に、パン生地などの粘弾性生地の偏平な生地片上に、クリームやジャム等の内材を載置し、生地片を折り畳んで内材を包み込むことによって、折り畳み食品を成形する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み食品を成形するシステムが従来から知られている。特許文献1に記載された成形システムは、対向する凹部が設けられた1対の板体を備える。偏平状のパン生地を凹部内に載置し、餡やクリーム等の内材を一方の板体の上方に位置するパン生地の上に載置する。蝶番機構を回動中心として他方の板体を一方の板体の上方に反転させることによって、内材を包み込むようにパン生地を折り畳むとともに、凹部により型付を行う。
【0003】
特許文献2には一端が持ち上がる機構を有するキャタピラコンベヤと、パン生地片の一端を把持して引き延ばし、回動することによって他端にかぶせるメカニカルフィンガー機構が記載されている。パン生地はその進行方向の一端をキャタピラコンベヤのプレートからはみ出すように載置され、パン生地の上に内材が吐出される。キャタピラコンベヤが停止し、前記プレートが上昇すると、メカニカルフィンガーはパン生地の一端を把持して旋回させ重ね合わせを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭42-3838号公報
【文献】特開昭59-135828号公報
【文献】特許第3980414号公報
【文献】特開2018-14905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置は、あらかじめ所定の大きさに分割した生地を板体上の所定の位置に載置する作業が必要である。偏平状のパン生地が所定の位置からずれて載置されると成形後の合わせ目がずれて成形不良が発生するため、通常人手を介して生地の載置を行う工程が必要となる。また、パン生地を所定の位置に載置したとしても、折り畳み成形の際にパン生地は保持されることなく反転するため、位置ずれが発生し、折り畳み食品の形状と品質にばらつきを生じる場合がある。
【0006】
特許文献2に記載された装置は、メカニカルフィンガーによるパン生地の把持が安定しないという問題がある。生地の種類や状態によってプレートからはみ出す生地の分量にばらつきが生じたり、プレートが生地を持ち上げる際に生地の自重によって位置ずれが生じたりするため、メカニカルフィンガーが生地の把持すべき一端が捉えられない場合がある。
【0007】
また、特許文献1および特許文献2に記載された装置は、いずれも構成が複雑であり、特定の折り畳み成形のみに特化した装置である。折り畳み食品の寸法、折り畳みの方向、重ね合わせの分量などは予め機械的に定められた通りにしか処理できない。また、いずれの装置も成形工程において生地の搬送を停止することが必要であるため、1回の成形に要する時間が比較的長く、時間あたりの生産個数を上げることが難しい。これらの理由により、上記の各装置は、多くの品種を効率良く生産することが求められる今日の食品製造ラインでは運用し難い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生地片の一端部を他端部の上に移動させて生地片を折り畳むように移動可能な成形装置であって、生地片の一端部を、その上方から吸引して持ち上げることにより保持する吸引具と、前記吸引具の下方に移動可能な支持部を含む支持具と、含み、前記吸引具と前記支持具を互いに近づけることにより、生地片の一端部を前記吸引具と前記支持部との間に把持することを特徴とする。
【0009】
また、上記の成形装置において、好ましくは、前記支持部は回転可能なローラを含む。また、上記の成形装置において、好ましくは、更に、生地片を折り畳むことにより重ね合わされた生地片の周縁部を押圧する押圧具を含む。
【0010】
また、上記の成形装置において、好ましくは、複数の前記吸引具を含み、少なくとも2つの前記吸引具は、生地片の一端部から他端部に向かう方向においてずらして配置され、更に好ましくは、少なくとも1つの前記吸引具は、生地片の周縁部の上方に配置される。
【0011】
また、本発明は、上記のいずれかの成形装置と、前記成形装置を移動させる移動機構と、を含む成形システムである。
【0012】
また、本発明は、生地片を折り畳み成形する方法であって、生地片の一端部を、その上方から吸引具によって吸引して持ち上げる持ち上げ工程と、持ち上げた生地片の一端部を、前記吸引具と前記吸引具の下方に配置された支持部とによって挟んで把持する把持工程と、生地片の一端部を、前記吸引具と前記支持部とによって把持したまま、生地片の他端部に向かって移動させて、生地片を折り畳んで重ね合わせる重ね合わせ工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記の方法において、好ましくは、前記重ね合わせ工程の後、更に、重ね合わせた生地片の周縁部を押圧する押圧工程を含み、更に好ましくは、前記押圧工程の後、更に、把持していた生地片の一端部を解放し、生地片の一端部を他端部の上に重ねて結着させる結着工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明による成形装置によれば、例えば、搬送装置の搬送面やトレイの上に平坦に載置された生地片の一端部を他端部の上に移動させて生地片を折り畳む際、生地片の一端部を吸引して持ち上げ、生地片の一端部を吸引具と支持部との間に把持するので、生地片の一端部が成形装置によってしっかりと把持される。このため、折り畳み成形の間、生地片は常に成形装置にしっかりと把持(保持)された状態が保たれ、折り畳み成形を精度良く安定して行うことが可能である。加えて、折り畳みの方向、重ね合わせの分量などの成形条件の変更が比較的容易である。
【0015】
また、本発明に係る成形装置は、生地片を上方から吸引してその一端部を持ち上げるため、複数列かつ複数行に隙間なく敷き詰められた生地片でも連続的に折り畳み成形が可能である。加えて、生地片の搬送を停止することなく折り畳み成形を行なうことができる。したがって、時間あたりの生産個数を上げることができる。また、本発明は比較的簡易な構成であり、特殊な搬送装置を用いらずとも成形が可能であるため、既存の食品成形ラインに導入することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による成形システムの第1の実施形態を用いた食品生産ラインの概略的な側面図である。
【
図2】把持工程における
図1の成形システムの斜視図である。
【
図3】把持工程における
図1の成形システムの正面図である。
【
図4】把持工程における
図1の成形システムの側面図である。
【
図6A】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6B】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6C】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6D】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6E】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6F】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6G】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6H】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6I】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図6J】
図1の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図7】本発明による成形システムの第1の実施形態の変形例を示す平面図である。
【
図8】本発明による成形システムの第2の実施形態を用いた食品生産ラインの概略的な側面図である。
【
図9】
図8の成形システムによる折り畳み成形の工程の一部の説明図である。
【
図10】本発明による成形システムの第3の実施形態の正面図である。
【
図11】本発明による成形装置の吸引具の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~
図5を参照して、本発明による成形システム及び成形装置の第1の実施形態を説明する。第1の実施形態に係る成形装置10は、食品成形ライン100内に含まれるロボット6用のエンドエフェクタとして構成される。また、第1の実施形態では、略正方形状の生地片Pを、その対角線(折り目)に沿って折り畳むことによって、略直角2等辺3角形状の折り畳み食品PPを成形する。また、本実施形態では、折り畳み成形の一連の工程により、3列の生地片Pから3つの折り畳み食品PPを成形する。
【0018】
図1に示すように、食品成形ライン100は、搬送装置9と、食品生地シートPSを搬送装置9の搬送面91の上に供給する生地供給装置92と、食品生地シートPSを切断することによって生地片Pを成形する生地切断装置8と、内材Fを生地片Pの上に吐出する内材吐出装置7と、内材Fを包むように生地片Pを折り畳む成形システム110と、上述した一連の装置及び成形システム110を制御する制御装置5を含む。成形システム110は、成形装置10と、成形装置10を移動させる移動機構を含む。移動機構は、第1の実施形態では、搬送装置9の近傍に設置されたロボット6である。成形装置10は、エンドエフェクタとしてロボット6に連結され且つ搬送装置9の上方に懸架される。
【0019】
搬送装置9は、既知のベルトコンベヤであり、生地供給装置92から供給された食品生地シートPSが搬送面91上に載置され且つ食品生地シートPSを食品成形ライン100の下流側に向かって搬送するように構成される。生地供給装置92は、食品生地をシート状に成形する既知の機構を有する装置であり、例えば、本出願人による特許出願に係る特許文献3に記載された生地延展装置である。以下の記載では、食品生地シートPSあるいは後述する生地片P等が搬送される方向を「搬送方向X」と称する。
【0020】
生地切断装置8は、食品生地シートPSを搬送方向Xに沿って切断するサーキュラーカッタ81と、搬送方向Xに沿って切断した食品生地シートPSを搬送方向Xと直交する方向Yに沿って切断するギロチンカッタ82を含み、即ち、食品生地シートPSから略正方形状の生地片Pを成形(切断)するように構成される。また、生地切断装置8は、ギロチンカッタ82の動作信号を制御装置5に発信するように構成された信号送信部83を含む。
【0021】
内材吐出装置7は、生地切断装置8の下流側に配置され且つロボット6を含む成形システム110の上流側に配置された既知のデポジタであり、例えば、本出願人による特許出願に係る特許文献4に記載された吐出装置である。内材吐出装置7は、所定の分量の内材Fを生地片P上の所定の位置に吐出可能である。
【0022】
成形システム110のロボット6は、内材吐出装置7の下流側に且つ搬送装置9に近接した位置に配置される。ロボット6は、既知の産業用多関節ロボットであり、水平方向X、Yと上下方向Zに移動自在なアーム61を備える。成形装置10は、アーム61の先端に連結されるので、搬送装置9の上方でX方向、Y方向及びZ方向に移動自在である。
【0023】
図2~
図5に示すように、成形装置10は、キャリア1と、上顎部2と、下顎部3と、押圧部4を含む。キャリア1は、上顎ベース11と、上顎ベース11の上面に設けられた連結部12と、上顎ベース11の下面に設けられ且つ上下方向に伸縮可能な第1エアシリンダ13と、第1エアシリンダ13のロッドの先端部に取り付けられた下顎ベース14を含む。成形装置10は、連結部12によってロボット6のアーム61に連結される。下顎ベース14は、第1エアシリンダ13のロッドを上下方向に伸縮させることによって、上顎ベース11に対して上下方向に移動するように構成される。
【0024】
上顎部2は、キャリア1の上顎ベース11の下面に取り付けられ且つ上下方向に伸縮可能である第3エアシリンダ21と、第3エアシリンダ21のロッドの先端部に固着された上顎フレーム22と、搬送面91と対向するように上顎フレーム22に取り付けられた吸引具23を含む。したがって、吸引具23は、第3エアシリンダ21を用いて上顎フレーム22を上下方向に移動させることによって、上顎ベース11に対して上下方向に移動するように構成される。吸引具23は、第1の実施形態では、非接触チャックであり、その先端部の周縁から圧縮空気を放射状に噴出させることによって、先端部の中心に負圧を発生させ、生地片Pを非接触で保持することができるように構成される。吸引具23の数は、生地片Pの列数に応じて定められ、本実施形態では、生地片Pが3列で供給されるため、吸引具23の数は3つである。各吸引具23の構成と機能は、同一であるので、以下の記載では、各吸引具23を特に区別しないで説明する。
【0025】
下顎部3は、下顎ベース14に取り付けられ且つ水平斜め方向に伸縮可能な第2エアシリンダ31と、第2エアシリンダ31のロッドの先端部に取り付けられた取り付けベース32と、取り付けベース32の下面に取り付けられた支持具33を含む。下顎部3は、キャリア1の第1エアシリンダ13を上下に伸縮させることによって、上顎ベース11に対して上下方向に移動可能である。支持具33は、第2エアシリンダ31を搬送面91と略平行に伸長させて取り付けベース32を搬送面91と略平行に移動させることによって、支持具33を、吸引具23から離れた位置から吸引具23の近くの位置に移動可能である。支持具33は、吸引具23と共に生地片Pを保持する支持部33aを含み、支持部33aは、フリーローラである。フリーローラ33aの数は、吸引具23の数に応じて定められ、第1の実施形態では、3つである。各支持具33の構成と機能は、同一であるので、以下の記載では、各支持具33を特に区別しないで説明する。フリーローラ33aの回転軸は、搬送面91と略平行にかつ第2エアシリンダ31の伸縮方向に対して略直交するように配置される。また、吸引具23が生地片Pを吸引する時に支持具33が搬送面91と干渉しないようにするため、第1エアシリンダ13及び第3エアシリンダ21を収縮させた(引っ込めた)状態において、支持具33の最下点は、吸引具23の最下点よりも上方に位置するように定められる(
図3、
図6A~
図6C参照)。
【0026】
押圧部4は、下顎ベース14に取付けられ且つ上下方向に伸縮可能な第4エアシリンダ41と、第4エアシリンダ41のロッドの先端部に取り付けられた押圧ベース42と、押圧ベース42の下面に取付けられた押圧具43を含む(
図4参照)。押圧部4は、キャリア1の第1エアシリンダ13を伸縮させることによって、下顎部3と一緒に上下方向に移動可能である。押圧部4は、第4エアシリンダ41を伸長させて、押圧具43を上位置から下位置に移動させることによって、折り畳まれて重なった生地片Pの縁部を、押圧具43と搬送面91の間に挟んで搬送面91に向かって押圧するように構成される。第1の実施形態においては、押圧具43は、略直角2等辺3角形の折り畳み食品PPの等しい2辺の縁部を押圧するように形状決めされ且つ配置される。また、支持具33のフリーローラ33aが、吸引具23によって保持された生地片Pの下方に入る前、押圧具43が搬送面91と干渉しないようにするため、第4エアシリンダ41を収縮させた(引っ込めた)状態における押圧具43の最下点は、支持具33の最下点よりも上方に位置するように定められる(
図6D参照)。
【0027】
図1に示すように、制御装置5は、記憶部51と、演算部52と、制御部53を備える。記憶部51は、成形装置10の基礎プログラム、成形する製品データ(製品寸法、搬送速度等)、製品データに関連付けられたアーム61の動き及び各エアシリンダの動作タイミング等の設定を記憶するように構成される。演算部52は、ギロチンカッタ82の信号送信部83から発信された動作信号を受信すると、記憶部51に記憶された情報を参照して制御指令を生成し、制御指令を制御部53に出力するように構成される。制御部53は、制御指令に従って、アーム61、第1エアシリンダ13、第2エアシリンダ31、第3エアシリンダ21、第4エアシリンダ41を動作させるように構成される。
【0028】
次に、
図1及び
図6A~
図6Iを参照して、本発明による成形システム110を含む食品成形ライン100の作動を説明する。生地片Pは、例えば、パン生地層と油脂層を積層させたデニッシュ生地である。生地片Pは、偏平な略正方形状であり、例えば、各辺の長さは12センチメートル、厚みは5ミリメートルである。以下、
図2及び
図5に示す生地片Pにおいて、下流側の辺を辺PD、上流側の辺を辺PU、搬送方向Xに見て右側の辺を辺PR、左側の辺を辺PLと称する。また、搬送方向Xに対して下流側且つ左側の角部(辺PDと辺PLの間の角部)を角部DL、下流側且つ右側の角部(辺PDと辺PRの間の角部)を角部DR、上流側且つ右側の角部(辺PUと辺PRの間の角部)を角部UR、上流側且つ左側の角部(辺PUと辺PLの間の角部)を角部ULと称する。内材Fは、例えば、カスタードクリームである。
【0029】
第1の実施形態においては、内材Fが載置された生地片Pの角部DLを角部URの上に重ねることによって、内材Fを包み込んだ略直角2等辺3角形状の折り畳み食品PPを成形する。また、第1の実施形態では、生地片Pは、3列に並んで成形システム110に供給され成形される。すべての列の生地片Pは同一寸法であり、同一の折り畳み成形の工程をすべての列の生地片Pに行う。したがって、煩雑を避けるために、個々の生地片Pを区別せず、図面符号は任意の1つの生地片Pに付すに留め、以下、任意の1つの生地片Pを例示的に説明する。
【0030】
生地供給装置92から供給された食品生地シートPSを、搬送装置9によって搬送しながら、まずサーキュラーカッタ81によって搬送方向Xに沿って3列に切断し、次にギロチンカッタ82によって搬送方向Xと直角の方向(Y方向)に沿って切断する。それにより、所定の寸法の生地片Pを成形する。信号送信部83は、ギロチンカッタ82の1回の切断ごとに、動作信号を演算部52に送信する。生地片Pは、搬送装置9の搬送面91にほぼ隙間なく敷き詰められた状態で、連続的に搬送方向Xに搬送される。また、生地の結着を促進させる流体(例えば水)を、生地片Pの周縁部に塗布することが好ましい。この塗布は、点滴装置やスプレーノズル等の既知の装置によって行われ、食品生地シートPSを切断して生地片Pを成形する前に行われてもよいし、生地片Pを成形した後に行われてもよい。
【0031】
内材吐出装置7を用いて、内材Fを生地片Pの上面に吐出する。折り畳み成形時に生地片Pからはみ出さない適宜の分量の内材Fを、角部DLと角部URを結ぶ対角線上に且つ生地片Pの中心と角部URとの間の中点付近に吐出することが好ましい。内材吐出装置7を、生地切断装置8や成形装置10と独立したタイミングで動作させてもよいし、ギロチンカッタ82の信号送信部83が送信する動作信号に基づいて動作させてもよい。また、内材Fは、ジャム類やミートソース等の他の食品であってもよいし、かかる食品と果実や卵等の固形物と組み合わされてもよい。内材Fを載置した生地片Pを、さらに搬送方向Xに搬送する。
【0032】
次いで、成形システム110を用いて、生地片Pを折り畳む折り畳み成形を行う。第1の実施形態では、生地片Pの角部DL(以下、「一端部PS」とも称する。)を、角部DLと角部UR(以下、「他端部PT」とも称する。)を結ぶ対角線に沿って移動させ、角部URの上に載せる。折り畳み成形の開始時、成形装置10の第1エアシリンダ13、第2エアシリンダ31、第3エアシリンダ21及び第4エアシリンダ41は収縮位置(引っ込み位置)にある。
【0033】
演算部52は、ギロチンカッタ82の動作信号を受信すると、記憶部51に記憶された製品データ(製品寸法、搬送速度等)を参照して、成形システム110によって折り畳み成形を行う制御指令を生成し、制御指令を制御部53に出力する。制御部53は、制御指令に基づき、ロボット6および成形装置10の各部に動作信号を送信して、折り畳み成形を行う。
【0034】
成形装置10を生地片Pと位置合せさせる位置合わせ工程を行う。具体的には、ロボット6を用いて、成形装置10を、吸引具23が生地片Pの一端部PS(角部DL)の上方に位置する初期位置に移動させる(
図6A参照)。また、生地片Pを搬送装置9によって搬送方向Xに連続的に搬送しているため、成形装置10を搬送装置9と同じ速度で生地片Pに追従させ、吸引具23が一端部PSの上方からずれることを防止する。この追従動作を、搬送装置9に設けられたエンコーダから得られる情報を演算部52に送信することによって行ってもよいし、他の方法によって行ってもよい。以下の説明で特に記載しないが、折り畳み成形の各工程を、追従動作を行いながら行う。
【0035】
位置合わせ工程の後、生地片Pの一端部PSを持ち上げる持ち上げ工程を行う。具体的には、ロボット6を用いて、成形装置10全体を下降させ、吸引具23を一端部PSに接近させる(
図6B参照)。次いで、圧縮空気を吸引具23の先端部周縁から放射状に噴出させて、負圧を先端部中心付近に発生させると、吸引具23は、一端部PSを上方から吸引しながら非接触で保持する。次いで、一端部PSを吸引具23によって非接触で保持したまま、成形装置10全体をロボット6によって上昇させて、生地片Pの一端部PSを搬送面91から持ち上げる。このとき、一端部PSと搬送面91の間に間隙が生じる(
図6C参照)。
【0036】
持ち上げ工程の後、生地片Pの一端部PSを把持する把持工程を、成形装置10の上顎部2と下顎部3によって行う。具体的には、第1エアシリンダ13を伸長させて、下顎ベース14を上顎ベース11に対して下降させることにより、支持具33を吸引具23に対して下降させる(
図6D参照)。このときの支持具33のフリーローラ33aの高さが、一端部PSと搬送面91の間の間隙の範囲内になるように、下顎ベース14を下降させる距離は予め設定されている。次に、第2エアシリンダ31を伸長させて、取り付けベース32に取り付けられた支持具33を搬送面91と略平行に移動させて、支持具33のフリーローラ33aを、吸引具23によって吸引されている一端部PSの下方に移動させる(
図6E参照)。フリーローラ33aを吸引具23の直下に移動させたら、第3エアシリンダ21を伸長させて、上顎フレーム22に取付けられた吸引具23を支持具33に対して下方に移動させて、吸引具23と支持具33を互いに近づけることにより、生地片Pの一端部PSをフリーローラ33aと吸引具23の間に挟んで把持する(
図6F参照)。この後、吸引具23による生地片PSの吸引は不要であり、吸引具23からの圧縮空気の噴出を停止させる。
【0037】
把持工程の後、生地片Pの重ね合わせ工程を行う。具体的には、ロボット6を用いて、成形装置10全体を、角部DLと角部URを結んだ対角線に沿って角部URに向かって移動させる。ロボット6による成形装置10の移動の制御指令は、X方向、Y方向、Z方向の座標を記憶部51に入力することによって定められる。成形装置10の上下方向Zの移動軌跡は、把持した一端部PSが内材Fに接触しないように、山型の曲線であることが好ましい。成形装置10の移動により、フリーローラ33aと吸引具23とによって把持された一端部PSを他端部PTに接近させて(
図6G参照)、生地片Pを、角部DRと角部ULを結ぶ対角線(折り目)まで徐々に折り曲げて、内材Fを生地片Pによって包み込む。生地片Pが略3角形に折り曲げられた時点で、ロボット6による生地片Pに対する成形装置10の移動を停止させる(上述した追従動作は継続している)。このとき、フリーローラ33aの下側に位置する生地片Pの部分は、搬送面91上の生地片Pの部分と接触している。生地片Pは、把持されている一端部PSと搬送面91上の他端部PTを除いて、角部DRと角部ULを結ぶ対角線(折り目)に沿って折畳まれた状態で重なり合っている(
図6H参照)。
【0038】
生地片Pの重ね合わせ工程の後、生地片Pの周縁部を押圧する押圧工程を行う。具体的には、第4エアシリンダ41を伸長させて、押圧ベース42に取り付けられた押圧具43を吸引具23及び支持具33に対して下降させ、折り畳まれた生地片Pの辺PD、PRおよび辺PL、PUに沿った周縁部を押圧する。即ち、生地片Pの重なり合った周縁部を押圧具43と搬送面91との間で押圧する(
図6I参照)。その後、第4エアシリンダ41を収縮させて(引っ込めて)、押圧具43を吸引具23及び支持具33に対して上昇させる。押圧具43は、まだ把持されている一端部PS及び他端部Pと干渉しないように形状決めされ、吸引具23及び支持具33と干渉しないように配置される。
【0039】
生地片Pの周縁部の押圧工程の後、生地片Pの一端部PS(角部DL)と他端部PT(角部UR)を結着する結着工程を行う。具体的には、第3エアシリンダ21を収縮させ、上顎フレーム22に取り付けられている吸引具23を上昇させることにより、一端部PSの把持を解除する。その後、ロボット6を用いて、成形装置10全体を搬送面91と平行に他端部PT(角部UR)に向かって移動させる。このとき、支持具33のフリーローラ33aが、把持が解除された一端部PSを搬送面91上の他端部PTの上に重ねて、押し付けながら転動し、一端部PSと他端部PTを結着させる(
図6J参照)。かくして、折り畳み食品PPが成形される。
【0040】
折り畳み食品PPの成形後、次の行の生地片Pを用いて折り畳み食品PPを成形するために、ロボット6の追従動作を停止させ、次の行の生地片Pの折り畳み成形の各工程に移行する。即ち、成形装置10を次の行の生地片Pと位置合せする位置合せ工程及びそれに続く各工程を、制御部53の制御指令によって行う。また、折り畳み食品PPを、下流に搬送し、折り畳み食品PPの焼成工程あるいは冷凍工程等を行う。
【0041】
以上、本発明による成形システム及び成形装置の第1の実施形態を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、所望の折り畳み食品PPの形状に応じた種々の変更が可能である。例えば、アーム61のX方向、Y方向、及びZ方向の移動は、所望の折り畳み成形に応じて変更可能である。また、押圧具43は、折り畳まれる生地片Pの周縁部に対応した形状に形成される。押圧具43の下面(生地片Pと接する面)は、傾斜していてもよいし、段差が設けられていてもよい。それにより、折り畳み食品PPの周縁部の結着の程度を調整することが可能である。例えば、生地片Pの周縁部を押圧する押圧具43の下面が、内側から外周に向かって下方へ突き出すように傾斜していれば、押圧工程時、折り畳まれている生地片Pの外周が、内材Fが漏れないようにしっかり結着されると共に、外周からなだらかに盛り上がった形状の折り畳み食品PPを得ることができる。
【0042】
図7は本発明の第1の実施形態の変形例に係る成形装置101を示す。生地片の各部および同一の効果を奏する構成要素には第1の実施形態と同一の符号を付し、説明を省略する。成形装置101及び成形システム111は、略正方形の生地片Pから略長方形の折り畳み食品PPを成形するように構成される。生地片Pは、辺PRの中点と辺PLの中点を結ぶ線分(折り目)に沿って折り曲げられ、辺PDと辺PUが重なるように折り畳み成形される。角部DRは角部URに重なり、角部DLは角部ULに重なる。また、折り畳み食品PPはその周縁部に溝状の模様を有する。以下の記載では、生地片Pにおける辺PD付近を辺部PDD(生地片Pの一端部PDD)と称し、辺PU付近を辺部PUU(生地片Pの他端部PUU)と称する。
【0043】
折り畳み食品PPの形状に合わせて、押圧具431は、上面視において略C字形状を有し、押圧具431の下面は、模様を形成するための溝状の凹凸を有する。押圧具431と支持具331の干渉を防ぐため、支持具331は、C字形状の開口部(
図7おいて上流側)に配置される。支持具331は、フリーローラ331aを含み、フリーローラ331aは、吸引具23によって持ち上げられた一端部PDDと搬送面91の間に生じる間隙に進入することができるように構成される。また、フリーローラ331aの外周は、押圧具431と同様、溝状の凹凸を有する。1つの生地片Pの一端部PDDを持ち上げるために、3つの吸引具23がY方向に沿って設けられる(図示せず)。
【0044】
成形装置101の動作を説明する。ロボット6を用いて、成形装置101を、吸引具23が生地片Pの一端部(生地片P1の辺部PDD)の上方に位置する初期位置に移動させる(位置合わせ工程)。その後、ロボット6を用いて成形装置101全体を下降させ、一端部PDDを吸引具23によって上方より吸引して非接触で保持する。次いで、ロボット6を用いて、成形装置101全体を上昇させ、一端部PDDを搬送面91から持ち上げる。このとき、一端部PDDと搬送面91の間に間隙が生じる(持ち上げ工程)。第1エアシリンダ13を伸長させて、支持具331を吸引具23に対して下降させた後、下顎部3の第2エアシリンダ31を伸長させて、下顎部3の支持具331のフリーローラ331aを、一端部PDDと搬送面91の間に移動させる。第3エアシリンダ21を伸長させて、吸引具23を支持具331に対して下方に移動させることにより、一端部PDDをフリーローラ331aと吸引具23の間に挟んで把持する(把持工程)。
【0045】
次いで、ロボット6を用いて、成形装置101全体をX方向上流側に移動させることにより、成形装置101に把持されている一端部PDDを、他端部PUUに接近させ、生地片Pを、辺PRの中点と辺PLの中点を結んだ線(折り目)まで徐々に折り曲げて、2つ折りにする。生地片Pが略長方形に折り曲げられた時点で、ロボット6による生地片Pに対する成形装置101の移動を停止させる(上述の追従動作は継続している)(重ね合わせ工程)。
【0046】
次いで、第4エアシリンダ41を伸長させて、押圧部4の押圧具431を吸引具23及び支持具331に対して下降させ、折り畳まれた生地片Pの周縁部を押圧する(押圧工程)。このとき、押圧具431の下面は溝状の凹凸を有するので、生地片Pの周縁部に溝状の模様が付される。
【0047】
次いで、吸引具23による一端部PDDの吸引を解除し、第3エアシリンダ21を収縮させて、吸引具23を上昇させることにより、一端部PDDの把持を解除する。その後、ロボット6を用いて、成形装置101全体を上流側に移動させる。このとき、支持具331のフリーローラ331aは、一端部PDDを他端部PUUの上に重ねて押し付けながら上流側へ転動し、一端部PDDと他端部PUUを結着させる。又、フリーローラ331aの周面に溝が設けられているので、生地片Pの周縁部に溝状の模様が付される(結着工程)。
【0048】
図8および
図9を参照して、本発明による成形システム及び成形装置の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態に係る成形装置20は、概略的には、食品成形ライン200内に含まれるロボット用のエンドエフェクタとして構成される。食品成形ライン200は、搬送装置9と、生地供給装置92と、生地切断装置8と、内材吐出装置7と、成形システム112と、制御装置5を含む。成形システム112は、成形装置20と、成形装置20を移動させる移動機構を含む、移動機構は、第2の実施形態では、搬送装置9の上方に懸架されるロボット60である。成形装置20は、エンドエフェクタとしてロボット60に連結され且つ搬送装置9の上方に懸架される。ロボット60は、既知のパラレルリンク式ロボットであり、水平方向X、Yと上下方向Zに移動自在なアーム61を備える。成形装置20は、アーム61の先端部に連結される。第2の実施形態では、偏平で略円形状の生地片Pを、半分に折り畳むことによって、その略半円形であり且つ端部に溝状の模様を有する折り畳み食品PPを成形する。また、第2の実施形態では、成形システム112は、連続的に供給される生地片P1、P2、P3・・・を整列させながら、折り畳み成形するように構成される。生地片の各部および同様の効果を奏する構成には、第1の実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
成形装置20は、キャリア1と、上顎部2と、下顎部3と、押圧部4を含む。上顎部2は、上顎フレーム22に取り付けられた吸引具232を含む。下顎部3は、取り付けベース32の下面に取り付けられた支持具332を含む。吸引具232の数は、第2の実施形態では1つであり、それに応じて、支持具332の数も1つである。吸引具232は、既知の真空パッドであり、生地片Pを吸着(吸引)して保持するように構成される。支持具332は、吸引具232と共に生地片P1等を保持する支持部332aを含み、支持部332aは、フリーローラである。フリーローラ332aは、その周面に溝状の凹凸を有する。押圧部4は、押圧ベース42の下面に取付けられた押圧具432を含む。押圧具432は、成形される折り畳み食品PPの形状に従って、上面視において略半円状部分の縁部を押圧するように弧状に形状決めされ、押圧具432の下面は、支持具332のフリーローラ332aと同様の溝状の凹凸を有する。押圧具432と支持具332の干渉を防ぐため、押圧具432の略半円状の弧は一部中断している。
【0050】
制御装置5は、記憶部51と、演算部52と、制御部53と、検知部54を備える。検知部54は、ロボット60の搬送方向上流側に配置される上流側検知部541と、ロボット60の搬送方向下流側に配置される下流側検知部542を備える。上流側検知部541は、生地片Pを検知したとき、演算部52に検知信号を送信する。演算部52は、検知信号と搬送装置9のエンコーダからの情報に従って、生地片Pの位置情報を算出し、記憶部51を参照して制御部53に制御指令を出力する。下流側検知部542は折り畳み食品PPを検知し、演算部52に検知信号を送信する。演算部52は下流側検知部542による折り畳み食品PPの位置情報を参照することにより、制御部53に出力する制御指令を補正する。
【0051】
第2の実施形態において、生地切断装置8は、型抜き式のロータリーカッタであり、生地シートPSから生地片P1等を成形(切断分割)する。内材Fが載置された生地片P1等は、搬送方向Xに沿って1列に並び、1つずつ成形システム112に供給される。動作信号に従って、ロボット60を用いて、成形装置20を、吸引具232が生地片P1の一端部PA(生地片P1の円周部の下流端部)の上方に位置する初期位置に移動させる(位置合わせ工程)。生地片Pを搬送装置9によって搬送方向Xに連続的に搬送しているため、成形装置20を搬送装置9と同じ速度で生地片P1に追従させ、吸引具232が一端部PAからずれることを防止する。以下の説明で特に記載しないが、折り畳み成形の各工程を、追従動作を行いながら行う。
【0052】
次いで、成形システム112を用いて、生地片P1を折り畳む折り畳み成形を行う。第2の実施形態では、生地片P1の円周部下流端部PA(以下、「一端部PA」とも称する。)を、搬送方向Xと逆方向に移動させ、生地片P1の円周部上流端部PB(以下、「他端部PB」とも称する。)の上に載せる。
【0053】
ロボット60を用いて、成形装置20全体を下降させ、一端部PAを吸引具232によって上方より吸着して保持する。次いで、ロボット60を用いて、成形装置20全体を上昇させ、一端部PAを搬送面91から持ち上げる。このとき、一端部PAと搬送面91の間に間隙が生じる(持ち上げ工程)。
【0054】
第1エアシリンダ13を伸長させて、支持具332を吸引具232に対して下降させた後、第2エアシリンダ31を伸長させて、下顎部3の支持具332のフリーローラ332aを、一端部PAと搬送面91の間に移動させる。次いで、第3エアシリンダ21を伸長させて、吸引具232を支持具332に対して下方に移動させることにより、一端部PAをフリーローラ332aと吸引具232の間に挟んで把持する(把持工程)。
【0055】
次いで、第2の実施形態では、ロボット60を用いて、把持している生地片P1全体を移動させるように、成形装置20全体を移動させる。ロボット60による成形装置20の移動(目的地点、通過点又は軌跡)の制御指令は、あらかじめX方向、Y方向、Z方向の座標を記憶部51に入力することによって定められる。第2の実施形態においては、成形装置20に把持された生地片P1等を、搬送面91上においてX方向(搬送方向)下流側に移動させると共に、生地片P等が1列から2列に再配列されるように、例えば、最初の生地片P1を搬送面91の中心よりY方向左側にずらし、次の生地片P2を搬送面91の中心よりY方向右側にずらす(
図9参照)。
【0056】
次いで、ロボット60を用いて、成形装置20全体をX方向上流側に移動させることにより、成形装置20に把持されている一端部PAを他端部PBに接近させ、生地片P1をそのY方向の径のところの線分(折り目)まで徐々に折り曲げて、2つ折りにする。生地片P1が略半円形に折り曲げられた時点で、ロボット60による生地片P1に対する成形装置20の移動を停止させる(上述した追従動作は継続している)(重ね合わせ工程)。
【0057】
次いで、第4エアシリンダ41を伸長させて、押圧部4の押圧具432を吸引具232及び支持具332に対して下降させ、折り畳まれた生地片P1の周縁部を押圧する(押圧工程)。このとき、押圧具432の下面は溝状の凹凸を有するので、生地片P1の周縁部に溝状の模様が付される。
【0058】
次いで、吸引具232による一端部PAの吸着(吸引)を解除し、第3エアシリンダ21を収縮させて、吸引具232を上昇させることにより、一端部PAの把持を解除する。その後、ロボット60を用いて、成形装置20全体を上流側に移動させる。このとき、支持具332のフリーローラ332aは、一端部PAを他端部PBの上に重ねて押し付けながら転動し、一端部PAと他端部PBを結着させる。また、フリーローラ332aの周面に溝が設けられているので、生地片P1の周縁部に溝状の模様が付される(結着工程)。かくして、折り畳み食品PP1が成形される。
【0059】
折り畳み食品PP1の成形後、次の行の生地片P2を用いて折り畳み食品PP2を成形するために、ロボット60の追従動作を停止させ、次の行の生地片P2の折り畳み成形の各工程に移行する。生地片P2の折り畳み成形は、上流側検知部541からの信号によって開始されてもよいし、生地片P1と生地片P2の間隔が固定されていれば、あらかじめ記憶部51に座標や時間間隔を入力することによって連続的に行われてもよい。
【0060】
生地片P2の折り畳み成形は、生地片P1の折り畳み成形と同様である。生地片P2を搬送面91の中心よりY方向右側にずらすとき、把持している生地片P2を折り畳み食品PP1とY方向に整列させるように、ロボット60を用いて、成形装置20全体を移動させることが好ましい。移動の目的地点およびその軌跡は、あらかじめX方向、Y方向の座標を記憶部51に入力することによって定められる。成形装置20の移動停止後に、生地片P1と同様に生地片P2の重ね合わせ工程を行い、折り畳み食品PP2を成形する。
【0061】
Y方向に整列させた折り畳み食品PP1およびPP2が得られた後、ロボット60を用いて成形装置20を次の生地片P3の初期位置に移動させる。一方、下流側検知部542は、折り畳み食品PP1およびPP2の位置情報を検知して、位置情報を演算部52に出力する。演算部52は、かかる位置情報に参照することにより、制御部53に出力する制御指令を補正する。例えば、折り畳み食品PP2が、実際には、折り畳み食品PP1に対してX方向下流側にずれている場合、後続の生地片P3およびP4の折り畳み成形において、生地片P4を移動するときの目的地点の座標をX方向上流側に補正する。かかる補正は、行ごとに行ってもよいし、列ごとに行ってもよい。また、下流側検知部542が画像センサーであれば、折り畳み食品の重ね合わせのズレを補正してもよい。
【0062】
第1の実施形態および第2の実施形態において、ロボットは予め記憶部に入力されたX方向、Y方向、Z方向の設定移動距離に従って成形装置を移動させるため、成形装置の移動軌跡を比較的複雑にしてもよい。例えば、内材Fの分量や保形性に合わせて、内材が成形装置や生地片の重ね合わせ面に付着しない移動軌跡を設定することが可能である。また、このような移動軌跡により、内材がはみ出ないように生地片を折り畳むことを可能にする。また、生地片の性質及び状態に起因する厚みの僅かな変化に対応して、重ね合わせ動作を微調整し、得られる折り畳み食品の形状を安定させて生産することが好ましい。さらに、所望の折り畳み食品の形状に応じて、生地片の重ね合わせる分量と方向を調整自在である。
【0063】
次に、
図10を参照して、本発明による成形システム及び成形装置の第3の実施形態を説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態と同様、略正方形状の生地片Pを、その対角線(折り目)に沿って折り畳むことによって、略直角2等辺3角形状の折り畳み食品PPを成形する。生地片の各部および同様の効果を奏する構成要素には第1の実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
食品成形ライン300は、搬送装置9と、食品生地シートPSを搬送装置9の搬送面91の上に供給する生地供給装置92と、食品生地シートPSを切断することによって生地片Pを成形する生地切断装置8と、内材Fを生地片Pの上に吐出する内材吐出装置7と、搬送装置9上に配置された成形システム113と、制御装置5を含む。成形システム112は、搬送装置9の上に配置されたフレームに取付けられた移動機構63と、移動機構63に取り付けられた成形装置30を含む。成形装置30は、第1の実施形態の成形装置10と同じ構成を有している。移動機構63は、X方向移動機構301と、Y方向移動機構302と、Z方向移動機構303を備える。X方向移動機構301とY方向移動機構302は、典型的には、リニアガイドを含み、それぞれX方向、Y方向に成形装置30を移動可能である。
【0065】
生地片Pが成形装置30の下方に供給されると、折り畳み成形を開始する。開始タイミングは、第1の実施形態と同様に生地切断装置8の動作信号に基づいていてもよいし、成形装置30の上流側に設けられた検知部(図示せず)による生地片Pの検知に基づいていてもよい。
【0066】
移動機構63を用いて、成形装置30を、吸引具23が生地片Pの一端部PSの上方に位置する初期位置に移動させる(位置合わせ工程)。成形装置30を搬送装置9と同じ速度で生地片Pに追従させる。吸引具23は、一端部PSを上方より非接触で保持するように構成されている。
【0067】
次いで、生地片Pの一端部PSを吸引具23によって上方より吸引して非接触で保持する。Z方向移動機構303を用いて、成形装置30全体を上昇させ、生地片Pの一端部PSを搬送面91から持ち上げる。このとき、一端部PSと搬送面91の間に間隙が生じる(持ち上げ工程)。
【0068】
次いで、第1実施形態と同様にして、一端部PSをフリーローラ33aと吸引具23の間に挟んで把持する(把持工程)。
【0069】
生地片Pの一端部PSの把持工程の後、生地片Pの重ね合わせ工程を行う。具体的には、X方向移動機構301とY方向移動機構302とZ方向移動機構303を用いて、成形装置30全体を、一端部PSから他端部PTの方向に移動させ、把持した一端部PSを、その対角線方向にある他端部PTに接近させる。生地片Pを、角部DRと角部ULを結ぶ対角線(折り目)まで徐々に折り曲げる(重ね合わせ工程)。その後、第1実施形態と同様にして、生地片Pの周縁部を押圧する(押圧工程)。
【0070】
生地片Pの周縁部の押圧工程の後、生地片Pの一端部PS(角部DL)と他端部PT(角部UR)の結着工程を行う。第3エアシリンダ21を収縮させ、上顎フレーム22に取り付けられている吸引具23を上昇させることにより、一端部PSの把持を解除する。その後、X方向移動機構301とY軸方向移動機構302を用いて、成形装置10全体を搬送面91と平行に他端部PT(角部UR)に向かって移動させる。このとき、支持具33のフリーローラ33aが、把持が解除された一端部PSを他端部PTの上に重ねながら一端部PSの上を転動し、一端部PSと他端部PTを結着させる。かくして、折り畳み食品PPが成形される。
【0071】
その後、次の行の生地片Pから折り畳み食品PPを成形するために、Z方向移動機構303を用いて、成形装置30全体を上昇させると共に、X方向移動機構301とY方向移動機構302を用いて、成形装置30を上流側に移動させ、次の行の生地片Pの初期位置に移動させる。
【0072】
以上、本発明による成形システム及び成形装置の実施形態を説明したけれども、本発明は、説明した実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。
【0073】
第1の実施形態及び第3の実施形態では、1つの生地片Pの角部DLの上方に1つの吸引具23が配置されたけれども、角部DLの上方に複数の吸引具23が配置されてもよい。例えば、内材Fの重量が大きいとき又は内材Fを角部の比較的近くに配置したとき、持ち上げ工程中、吸引具23に保持されている生地片Pが下方に引っ張られ、生地片Pを吸引具23から剥がす力が生じる。これにより、吸引具23の一部と生地片Pの間の間隙が大きくなると、吸引具23の吸引力が低下して、吸引具23に対する生地片Pの位置がずれたり、生地片Pが吸引具から23から離れたりすることがある。この場合、折り畳み成形が安定しない。
図11に示す変形例では、生地片Pの角部DLの上方に、3つの吸引具23A、23B、23Cが三角形をなすように配置される。吸引具23Aは、第1の実施形態の吸引具23と同じ位置(一端部の上方)に配置され、補助的な吸引具23B、23Cは、生地片の一端部から他端部に向かう方向においてずらして配置され、具体的には、辺PDおよび辺PLの近く(一端部であり且つ周縁部)の上方に配置される。この場合、生地片Pを吸引具23から剥がす力は、補助的な吸引具23B、23Cに作用し、吸着具23Aに及ばないため、吸着具23Aによる吸引力(保持力)が確保される。かくして、生地片Pが吸引具23からずれたり離れたりすることが防止され、折り畳み成形が安定する。
【0074】
本発明による成形システム及び成形装置に使用される吸引具は、生地片Pを上方より保持可能であれば、非接触式の吸引具23であってもよいし、接触式の吸引具でもよい。また、吸引具23に負圧センサー等の検出センサーを追加することによって、生地片Pの保持状態を検出してもよい。例えば、吸引具23が生地片Pを保持できなかったことを検出したとき、折り畳み成形を中止するように制御する。この場合、成形不良によって成形装置に内材Fが付着することを防ぐことができる。
【0075】
また、第2の実施形態で用いた検知部54を、第1の実施形態又は第3の実施形態に導入して、折り畳み成形の精度を向上させてもよい。例えば、上流側検知部541によって生地片PのX方向に沿った長さ(辺PL、PRの長さ)を計測し、その情報に基づいて重ね合わせ工程の移動機構の移動距離を補正することができる。また、上流側検知部541が内材Fを検知しなかったとき、折り畳み成形を行わないように制御して、内材Fが存在しない不良品を目視で容易に確認することができる。また、食品成形ラインは、生地片Pの折り目に予め筋目を付ける装置を含んでいてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態の成形システム及び成形装置はいずれも、食品成形ラインに含まれていたけれども、本発明による成形システム及び成形装置これに限らず、例えばトレイなどに敷き詰めた生地片Pを折り畳み成形するために生地片Pを成形装置の下方に人手によって載置するシステムに使用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
100、200、300 食品成形ライン
110、111、112、113 成形システム
10、101、20,30 成形装置
1 キャリア
11 上顎ベース
12 連結部
13 第1エアシリンダ
14 下顎ベース
2 上顎部
21 第3エアシリンダ
22 上顎フレーム
23,232 吸引具
3 下顎部
31 第2エアシリンダ
32 取り付けベース
33,331,332 支持具
33a,331a,332a フリーローラ(支持部)
4 押圧部
41 第4エアシリンダ
42 押圧ベース
43,431,432 押圧具
5 制御装置
51 記憶部
52 演算部
53 制御部
54 検知部
6,60 ロボット(移動機構)
61 アーム先端
63 移動機構
7 内材吐出装置
8 生地切断装置
81 サーキュラーカッタ
82 ギロチンカッタ
83 信号送信部
9 搬送装置
91 搬送面
PS 生地シート
P 生地片
PP 折り畳み食品